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特許7498564急性骨髄性白血病治療のための抗-CD70抗体ARGX-110の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】急性骨髄性白血病治療のための抗-CD70抗体ARGX-110の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240605BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20240605BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240605BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240605BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K31/706
A61P35/02
A61P43/00 121
C07K16/28 ZNA
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2019569314
(86)(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2018066144
(87)【国際公開番号】W WO2018229303
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】1709677.7
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517303085
【氏名又は名称】アルジェニクス ビーブイ
(73)【特許権者】
【識別番号】507052337
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ベルン
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス レウピン
(72)【発明者】
【氏名】ルク ヴァン ロムパエイ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス デ ハアルド
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン オチセンベイン
(72)【発明者】
【氏名】カーステン リエター
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-509861(JP,A)
【文献】国際公開第2017/079115(WO,A1)
【文献】Pharm Therap., 2015, Vol.155, p.1-10
【文献】Cell Comuun Signal., 2017 Mar, Vol.15, Article.13(p.1-14)
【文献】Eur J Cancer., 2017 Feb, Vol.74, p.55-72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)を治療する方法に使用するための、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片を含む医薬組成物であって、該方法は、該対象へ該抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を投与すること、及び該対象へアザシチジン又はデシタビンを投与することを含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
AML又はMDSの対象の骨髄及び/又は末梢血中の芽球の割合を減少させる方法に使用するための、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片を含む医薬組成物であって、該方法は、該対象へ該抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の治療有効量を投与すること、及び該対象へアザシチジン又はデシタビンを投与することを含む、前記医薬組成物。
【請求項3】
造血幹細胞移植(HSCT)に先立ちAML又はMDSの対象を前処置する方法に使用するための、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片を含む医薬組成物であって、該方法は、該対象へ該抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を投与すること、及び該対象へアザシチジン又はデシタビンを投与することを含む、前記医薬組成物。
【請求項4】
対象における急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)を治療する方法に使用するための、アザシチジン又はデシタビンを含む医薬組成物であって、該方法は、該対象へ抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を投与すること、及び該対象へアザシチジン又はデシタビンを投与することを含む、前記医薬組成物。
【請求項5】
AML又はMDSの対象の骨髄及び/又は末梢血中の芽球の割合を減少させる方法に使用するための、アザシチジン又はデシタビンを含む医薬組成物であって、該方法は、該対象へ抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の治療有効量を投与すること、及び該対象へアザシチジン又はデシタビンを投与することを含む、前記医薬組成物。
【請求項6】
造血幹細胞移植(HSCT)に先立ちAML又はMDSの対象を前処置する方法に使用するための、アザシチジン又はデシタビンを含む医薬組成物であって、該方法は、該対象へ抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を投与すること、及び該対象へアザシチジン又はデシタビンを投与することを含む、前記医薬組成物。
【請求項7】
前記方法が、前記対象の骨髄中の芽球の割合を減少させる、請求項1~6のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記方法が、前記対象の末梢血中の芽球の割合を減少させる、請求項1~7のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、1回の投薬あたり0.1mg/kg~25mg/kgの範囲の投与量で投与される、請求項1~8のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の各投薬が、10~20日、任意に12~18日、任意に14~17日隔てられている、請求項1~9のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項11】
アザシチジン又はデシタビンが、1日あたり50~100mg/m2の範囲の投与量で投与される、請求項1~10のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記方法が:
i)請求項1~11のいずれか一項記載の抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片、及びアザシチジン又はデシタビンの投与を含む、第一段階、並びに
ii)請求項1~9のいずれか一項記載の抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の投与、及び該第一段階で投与されるアザシチジン又はデシタビンの投与量よりもより少ない投与量のアザシチジン又はデシタビンの投与を含む、第二段階:
を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記対象が、治療前の標準強化化学療法に適格ではない、請求項1~12のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記方法が、前記対象において造血幹細胞移植を実行する工程を更に含む、請求項1~13のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記対象が、60歳以上、任意に75歳以上である、請求項1~14のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記方法が、前記対象へ、抗-CD33抗体、抗-CD123抗体、E-セレクチン阻害剤、FLT3阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、BCL-2阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤及びJAK/STAT阻害剤から選択された1種以上の活性物質を投与することを更に含む、請求項1~15のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記方法が、部分奏効(PR)、不完全血液学的回復を伴う完全奏効(CRi)、又は完全奏効(CR)を誘導する、請求項1~16のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記方法が、陰性である微小残存病変状態を誘導する、請求項1~17のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、CD70-CD27結合を阻害する、請求項1~18のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、CD70-発現細胞を枯渇する、請求項1~19のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、該VH及びVLドメインが、以下のCDR:
配列番号:3
【化1】
を含む又はこれからなるHCDR3、
配列番号:2
【化2】
を含む又はこれからなるHCDR2、
配列番号:1
【化3】
を含む又はこれからなるHCDR1、
配列番号:7
【化4】
を含む又はこれからなるLCDR3、
配列番号:6
【化5】
を含む又はこれからなるLCDR2、及び
配列番号:5
【化6】
を含む又はこれからなるLCDR1:
を含む、請求項1~20のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、配列番号:4と少なくとも90%同一であるVHドメインを含み、及び/又は配列番号:8と少なくとも90%同一であるVLドメインを含む、請求項21記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記抗-CD70抗体が、IgG1抗体である、請求項1~22のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記抗-CD70抗体が、ARGX-110である、請求項1~23のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項25】
更に医薬として許容し得る賦形剤又は担体を含有する、請求項1~24のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、CD70-CD27結合を阻害する、請求項1~25のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、CD70-発現細胞を枯渇する、請求項1~26のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、該VH及びVLドメインが、以下のCDR:
配列番号:3
【化7】
を含む又はこれからなるHCDR3、
配列番号:2
【化8】
を含む又はこれからなるHCDR2、
配列番号:1
【化9】
を含む又はこれからなるHCDR1、
配列番号:7
【化10】
を含む又はこれからなるLCDR3、
配列番号:6
【化11】
を含む又はこれからなるLCDR2、及び
配列番号:5
【化12】
を含む又はこれからなるLCDR1:
を含む、請求項1~27のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、配列番号:4と少なくとも90%同一であるVHドメインを含み、及び/又は配列番号:8と少なくとも90%同一であるVLドメインを含む、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記抗-CD70抗体が、IgG1抗体である、請求項1~29のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記抗-CD70抗体が、ARGX-110である、請求項1~30のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項32】
AMLを治療するための医薬の製造における、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の使用であって、該抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、アザシチジン又はデシタビンとの併用投与のためのものである、前記使用。
【請求項33】
AMLを治療するための医薬の製造における、アザシチジン又はデシタビンの使用であって、アザシチジン又はデシタビンが、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片との併用投与のためのものである、前記使用。
【請求項34】
AML又はMDSを治療するための医薬組成物であって、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片及びアザシチジン又はデシタビンを含む、前記医薬組成物。
【請求項35】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、CD70-CD27結合を阻害する、請求項34記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、CD70-発現細胞を枯渇する、請求項34又は35記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、該VH及びVLドメインが、以下のCDR:
配列番号:3
【化13】
を含む又はこれからなるHCDR3、
配列番号:2
【化14】
を含む又はこれからなるHCDR2、
配列番号:1
【化15】
を含む又はこれからなるHCDR1、
配列番号:7
【化16】
を含む又はこれからなるLCDR3、
配列番号:6
【化17】
を含む又はこれからなるLCDR2、及び
配列番号:5
【化18】
を含む又はこれからなるLCDR1:
を含む、請求項34~36のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、配列番号:4と少なくとも90%同一であるVHドメインを含み、及び/又は配列番号:8と少なくとも90%同一であるVLドメインを含む、請求項37記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記抗-CD70抗体が、IgG1抗体である、請求項34~38のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記抗-CD70抗体が、ARGX-110である、請求項34~39のいずれか一項記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、急性骨髄性白血病(AML)及び骨髄異形成症候群(MDS)の治療方法、並びに該方法における使用に適している組成物及び組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
急性骨髄性白血病(AML)は、造血前駆細胞の制御できないクローン性増殖により特徴付けられる不均一疾患である。AMLは、成人が罹患する最も一般的な急性白血病であり、欧州における成人の年間発生率は、100,000人あたり5~8症例であり、年齢70歳以上の集団においては急劇に増加し、発生率は年間15~25/100,000に達する。
【0003】
全ての年齢に関して2008~2010年の間に英国で診断されたAMLに関する英国癌リサーチ(Cancer Research UK)により公開された生存統計は、対象のおよそ20%は、診断後5年以上生存することを示している。転帰不良の予後因子としては、対象の年齢、治療が誘導したAML、及び骨髄異形成症候群又は別の先行する血液障害の既往歴が挙げられる。65歳以上の患者の5年生存率は、およそ5%である。
【0004】
単剤治療又は併用治療のいずれかの化学療法が、白血病のほとんどの型を治療するために使用される。好適な条件下では、高投与量化学療法に続く造血幹細胞移植も、使用され得る。AML成人のおよそ60%~70%は、適切な導入療法後、完全寛解(CR)状態に達し、CRに達した患者の約45%は、3年以上の生存が期待され、且つ治癒することができる(米国癌協会)。しかし化学療法の副作用は、患者にとって重大な負担となり得、且つ多くの患者は、標準強化化学療法に適合しない。従ってAMLの代替療法が望まれる。
【発明の概要】
【0005】
(発明の要約)
CD70は、活性化されたBリンパ球及びTリンパ球の小さいサブセットにおいて、並びに成熟樹状細胞上に、通常発現される細胞表面抗原であり、リンパ球分化、及びそのコグネート細胞表面受容体であるCD27への結合時の生存シグナル伝達に関与している。CD27のCD70-誘導したシグナル伝達は、CD27を発現する制御性T細胞の増大した生産及び活性化を生じる。
【0006】
CD70発現は、全ての生存に必要な臓器を含む正常組織においては、低いか又は発現されない。CD70は、いくつかの腫瘍型においては、時には血液学的悪性腫瘍においてCD27と一緒に過剰発現され、このことはCD70の悪性細胞の増殖及び生存との関与を示唆している。CD70はまた、Tregを誘導することによる免疫監視機構の回避において役割を果たし、結果的に腫瘍増殖を促進することも明らかである。
【0007】
制御性T細胞上のCD70-CD27シグナル伝達経路の阻害は、制御性T細胞の動員及び/又は活性化を妨げ、これにより腫瘍微小環境における対象の免疫監視を回復させる可能性があると考えられている。
【0008】
本発明は、抗-CD70抗体によるヒトにおけるAML及びMDSの効果的治療を最初に明らかにしている。本発明による治療は、抗-CD70抗体の単回投与量後に、更には驚くべきことに低投与量であっても、効果がある。単剤療法として投与される抗-CD70抗体は驚くべきことに、有効であるだけではなく、抗-CD70抗体のヌクレオシド代謝阻害剤(NMI)と一緒の併用療法は、更なる有効性を生じることも、本明細書において明らかにされている。本明細書において使用されるように、本発明による併用療法は、2種以上の活性物質の同時投与、又は2種以上の物質が単独の組成物に製剤化されることを必要としない。
【0009】
本明細書に提供される療法により治療されるAML患者は、90%を上回る奏功率を示し、患者3名毎に2名は、完全寛解を達成する。これらの結果は、全ての患者に関するAML療法の意味のある進歩を表している。
【0010】
添付の実施例において明らかにされるように、本発明による治療は、患者における骨髄芽球の割合を著しく減少した。既に記したように、本発明による治療は、患者が完全寛解に入る時点までに芽球の数を著しく減少した。また患者における骨髄芽球の割合の著しい減少は、患者が、治癒的であり得る治療である好結果の造血幹細胞移植(HSCT)を受ける場合に重要である。重要なことに、本発明による治療は、患者を移植へ進める。
【0011】
注目すべきことに、本発明による治療は、従来のNMI治療について報告された毒性と比べ、増大した毒性が認められることなく、AMLを効果的に治療する。
【0012】
このことは、全てのAML患者について意味がある。AMLのための標準強化化学療法は、著しい毒性を伴い、多くの患者が重篤な副作用を経験する。本発明による効果的な治療に関連した限定された毒性は、本明細書記載の療法が全ての患者について改善されたAML治療を提供する可能性を明らかにしている。
【0013】
本発明による治療の驚くべき有効性は、治験に動員される患者の特質を考えると、更に重要である。治療される患者は、従来の強化化学療法に関連した毒性に十分耐えることに合致しないので、彼等は標準化学療法に適格ではない。
【0014】
標準強化化学療法は、骨髄芽球を十分減少させるのに必要とされると考えられるので、HSCTは、これらの患者には現時点では利用可能ではない。しかし本明細書に明らかにされたように、本発明による単剤療法及び併用療法は、標準強化化学療法を受けることができない患者においてAML芽球を有意に減少させる。従って本明細書に従い提供される療法は、HSCTが先に推奨されなかった患者集団において好結果のHSCTの予測の局面を開く。抗-CD70抗体は、単剤療法として及びヌクレオシド代謝阻害剤との強力な併用療法においての両方でAMLを効果的に治療することができるという事実の更なる意味のある利点は、幅のある治療モデルの使用が可能であることである。例えば、ヌクレオシド代謝阻害剤(NMI)との併用療法は、NMIに対する反応において芽球上のCD70のアップレギュレーションにより増強されるCD70抗体の効果から生じる強力な療法を提供する(インビトロ及びインビボにおいて(図1))。これは、標準強化化学療法と比べ、毒性が低下した効果的療法を提供し、これは標準強化化学療法に耐えるのに十分な程健康でない患者にとって、特に重要である。CD70抗体による単剤療法は、NMIさえ必要でない、効果的治療を提供する。これは更に、非芽球細胞に対するNMIの効果を回避することにより、毒性を低下し、このことは血球減少を発症している患者のリスク低下に繋がり得る。血球減少のリスクを低下することにより、患者は、感染症リスクが低下し、且つ輸血の必要性が減る。
【0015】
本発明により利用可能に作製された更なる治療モデルは、「導入」及び「支持」モデルである。すなわち、抗-CD70にヌクレオシド代謝阻害剤を加えた組合せ(任意の負荷投与量の抗-CD70と共に)を使用する導入治療は、骨髄におけるAML芽球の割合を強力に減少するために使用することができる。次に患者は、抗-CD70単独又はより少ない投与量のNMIと組合せた支持治療に移ることができる。このモデルは、芽球の減少は、ヌクレオシド代謝阻害剤の長期投与からの可能性のある蓄積された毒性に対する患者の曝露の必要性を伴わず維持され得るという利点を有する。
【0016】
更にそのような抗-CD70抗体単独による支持治療は、他の細胞型(これは最小のCD70発現を有するか又は有さない)に対しては最小の効果で、芽球細胞(これはCD70を発現する)を特異的に抑制する。ヌクレオシド代謝阻害剤投与量は、停止又は減少することができるので、非芽球細胞型に対する細胞毒性の圧力は減少され、これらの細胞が増殖することを可能にする。これは、AML芽球はCD70抗体により標的化されると同時に、他の細胞型(例えば、血小板、赤血球、好中球)は回復することができるので、長期のNMI治療から生じる血球減少のリスクを低下するという利点を有する。
【0017】
更に抗-CD70抗体の、単独で又はNMIと組合せた投与は、骨髄細胞へのLSCの分化を促進することが、本明細書において明らかにされている。そのような分化の促進は、自己再生することができるLSCの集団を減少する。LSCは、疾患の伝播(propagation)及び維持へ著しく寄与し、悪性細胞の自己再生プールを提供する。従って抗-CD70抗体の単独での又はNMIと組合せた投与は、LSCの分化を誘導することにより、LSC集団を減らし、これにより寛解の見込みを増大し且つ再発のリスクを低下する。
【0018】
従って一態様において、本発明は、対象において急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)を治療する方法であって、対象へ、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を投与することを含む方法を提供する。
【0019】
更なる態様において、AML又はMDSの対象の骨髄及び/又は末梢血中の芽球の割合を減少する方法であって、対象へ、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を投与することを含む方法を提供する。
【0020】
更なる態様において、造血幹細胞移植(HSCT)のためにAML又はMDSの対象を準備する方法であって、対象へ、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0021】
更なる態様において、本発明は、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を対象へ投与することを含む、対象における急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)を治療する方法において使用するための、抗-CD70抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0022】
更なる態様において、本発明は、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を対象へ投与することを含む、対象においてAML芽球細胞を減少する方法において使用するための、抗-CD70抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0023】
更なる態様において、本発明は、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を対象へ投与することを含む、造血幹細胞移植(HSCT)のためにAML又はMDSの対象を準備する方法において使用するための、抗-CD70抗体を提供する。
【0024】
更なる態様において、本発明は、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片及び医薬として許容し得る賦形剤又は担体を含有する医薬組成物の1以上の投与量を対象へ投与することを含む、対象の急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)を治療する方法において使用するための医薬組成物を提供する。
【0025】
更なる態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を対象へ投与することを含む、対象におけるAML芽球細胞を減少する方法において使用するための医薬組成物を提供する。
【0026】
更なる態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を対象へ投与することを含む、造血幹細胞移植(HSCT)のためにAML又はMDSの対象を準備する方法において使用するための医薬組成物を提供する。
【0027】
更なる態様において、抗体又は抗原結合断片が、低メチル化剤、好ましくはアザシチジンと組合せて投与される、AMLの治療において使用するための抗-CD70抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0028】
本発明の方法の特定の実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片は、1回の投与量あたり0.1mg/kg~25mg/kgの範囲の投与量、任意に1mg/kg~20mg/kgの範囲の投与量で投与される。特定の実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片は、1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg又は20mg/kgの投与量で投与される。特定の好ましい実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片は、10mg/kgの投与量で投与される。
【0029】
本発明の方法の全ての態様の特定の実施態様において、本方法は、ヌクレオシド代謝阻害剤(NMI)、例えば、低メチル化剤(HMA)の投与を更に含む。特定の実施態様において、NMIは、アザシチジン又はデシタビンである。
【0030】
特定の実施態様において、本発明の方法は:(i)本明細書記載の投薬レジメンに従い、併用療法としての抗-CD70抗体及びヌクレオシド代謝阻害剤の投与を含む、第一段階、並びに(ii)本明細書記載の投薬レジメンに従う抗-CD70抗体の投与、及び第一段階で投与されるヌクレオシド代謝阻害剤の投与量よりもより少ない投与量のヌクレオシド代謝阻害剤の投与を含む、第二段階:を含む。
【0031】
特定の実施態様において、対象は、本発明による治療前の標準強化化学療法に適格ではない。
【0032】
特定の実施態様において、本方法は、対象において造血幹細胞移植を実行することを更に含む。
【0033】
特定の実施態様において、患者は、60歳以上、任意に75歳以上である。
【0034】
特定の実施態様において、本発明は、併用療法の一部として、抗-CD33抗体、抗-CD123抗体、E-セレクチン阻害剤、FLT3阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、BCL-2阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤及びJAK/STAT阻害剤から選択された1種以上の活性物質を投与することを更に含む。
【0035】
更なる態様において、本発明は、抗-CD70抗体又はその抗原結合断片及びNMIを含む組合せを提供する。特定の実施態様において、NMIは、低メチル化剤である。特定の好ましい実施態様において、低メチル化剤は、アザシチジン又はデシタビン、好ましくはアザシチジンである。
【0036】
更なる態様において、本発明は、AML又はMDSを治療する方法において使用するための、抗-CD70抗体又はその抗原結合断片並びにNMIを含む組合せを提供する。特定の実施態様において、NMIは、低メチル化剤である。特定の好ましい実施態様において、低メチル化剤は、アザシチジン又はデシタビン、好ましくはアザシチジンである。
【0037】
更なる態様において、本発明は、本発明による方法における使用のための、抗-CD70抗体又はその抗原結合断片並びにNMIを含む組合せを提供する。
【0038】
本発明の全ての態様において、抗-CD70抗体は、CD70のその受容体CD27との相互作用を阻害してよい。特定の実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片は、CD70-CD27結合を阻害してよい。特定の実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片は、CD70-CD27が誘導したシグナル伝達を阻害してよい。
【0039】
本発明の全ての態様において、抗-CD70抗体は、抗体エフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)及び/又は抗体依存性貪食(ADCP)を有してよい。特定の実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片は、例えば、抗体エフェクター機能を介し、CD70-発現細胞を枯渇してよい。
【0040】
特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、修飾された抗体、例えば、抗体薬物複合体(ADC)であってよい。本明細書別所記載のように、ADCは、細胞毒性物質などの活性物質へ複合された抗体である。ADCはまた、活性物質を標的へ送達することに加え、1以上の抗体エフェクター機能を有してよい。
【0041】
本発明の全ての態様の特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ここでVH及びVLドメインは、以下のCDR:
配列番号:3
【化1】
を含む又はこれからなるHCDR3
配列番号:2
【化2】
を含む又はこれからなるHCDR2
配列番号:1
【化3】
を含む又はこれからなるHCDR1
配列番号:7
【化4】
を含む又はこれからなるLCDR3
配列番号:6
【化5】
を含む又はこれからなるLCDR2、及び
配列番号:5
【化6】
を含む又はこれからなるLCDR1:
を含む。
【0042】
特定の実施態様において、抗-CD70抗体又は抗原-結合断片は、配列番号:4と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であるVHドメインを含み、及び/又は配列番号:8と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であるVLドメインを含む。抗体又は抗原結合断片のドメインが、参照配列と特定の割合の配列同一性により規定される実施態様に関して、VH及び/又はVLドメインは、参照配列に存在するものと同じCDR配列を維持してよく、その結果変動は、フレームワーク領域内にのみ存在する。
【0043】
特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、IgG1抗体である。
【0044】
本発明の全ての態様において、抗-CD70抗体は、好ましくはARGX-110である。
【0045】
本発明の全ての態様において、好ましい実施態様は、ARGX-110及びアザシチジンの組合せである。
【0046】
本発明の全ての態様において、対象又は患者は、ヒト対象又は患者である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
(図面の簡単な説明)
図1図1:αCD70/デシタビン併用療法は、マウス異種移植片において、ヒトCD34+CD38- AML幹/前駆細胞を根絶する。(a-i) 新たに診断されたAML患者(患者P10及びP21)のBM由来の5×106個FACS-精製したCD45dimSSClo細胞を、致死量を下回るよう放射線照射したNSGマウスの尾静脈へ、静脈内注射した。生着後(移植後32日目(P10)及び97日目(P25))、マウスを無作為化し、対照mAb及び10mg/kg αCD70mAb(41D12-D)の腹腔内的(合計3回注射)、又はデシタビン及び(1.5mg/kg/日)の連続5日間の単独又は併用による治療を施した。最終治療の1日後、動物を屠殺し、血液、脾臓及びBMを分析した。(a) 実験の設定。(b) CD34+CD38- AML幹/前駆細胞上のCD70発現。アイソタイプは、灰色;CD70染色は、黒色(P10)及び青色(P25)で示した。実線はビヒクルを、破線はAML幹/前駆細胞に対するデシタビン治療を表す。ΔMFI:MFI染色-MFIアイソタイプ。(c) 非-CD34+CD38- バルク及びCD34+CD38- AML幹/前駆細胞に対するCD70発現の倍率変化(ビヒクル対デシタビン)。(d) PDXマウスのBMにおけるヒトCD45+ AML細胞の生着の代表的FACSプロット。(e) PDX AMLマウスのBMにおけるヒトCD45+ AML細胞の頻度。(f) BM中のCD45dimSSClolin-CD90-CD34+AML幹/前駆細胞の絶対数。(g) 代表的FACSプロット、並びに(h) CD45dimSSClolin-CD90-CD34+AML幹/前駆細胞集団内のCD38- AML細胞の頻度を示す定量。(i) CD45dimSSClolin-CD90-CD34+CD38-AML幹/前駆細胞集団中のCD45RA+ 細胞の頻度。データは、平均±S.D.で表す。統計:(b、c) スチューデントt-検定;(e、f、h、i) 一元配置ANOVA;テューキー事後テスト;P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001。
図2図2:HMA治療は、初代AML幹/前駆細胞においてCD70発現を誘導する。(a) 0.5mMデシタビン(D)又はビヒクル(Veh)の存在又は非存在下での培養後の、lin-CD90+CD34+CD38- AML幹/前駆細胞上のCD70発現の代表的FACSプロット。アイソタイプ:灰色;CD70:黒色。(b) 細胞生存度。(c) ΔMFI CD70の倍率変化、及び(d) mRNA CD70発現の倍率変化(AML:n=9-15;健常:n=3)。(e) 代表的FACSプロット、並びに(f) 診断時及びデシタビン又はアザシチジン治療の1サイクル後の、AML患者の末梢血中の幹/前駆細胞上のΔMFI CD70の倍率変化(D(5)、20mg/kg、5日間毎日;A(7)、75mg/m2、7日間毎日)。
図3図3:αCD70/デシタビン共-治療は、ヒトCD34+CD38- AML幹/前駆細胞の再播種能を減少する。(a-b) 新たに診断されたAML患者(P6、P8、P11)のBM由来のFACS-精製したlin-CD90-CD34+CD38-幹/前駆細胞を、10mg/ml抗-CD70(αCD70)mAbの存在もしくは非存在又は0.5mMデシタビン単独もしくは併用で、3つ組で一晩培養し、その後αCD70及びデシタビン又は両方を含有するメチルセルロースへ播種した。コロニー及び細胞の数は、14日後カウントした。(a) 1×103個播種細胞あたりのコロニー数。(b) 1コロニーあたりの細胞数。(c) 連続再播種実験。(d-f) “健常”ドナーのBM由来のFACS-精製したlin-CD90+ CD34+CD38-幹/前駆細胞を、培養し、且つ(a-c)に記載したようにメチルセルロース中に播種した。(d) 1×103個播種細胞あたりのコロニー数。(e) 1コロニーあたりの細胞数。(f) 連続再播種実験。データは、平均±S.D.で表す。統計:一元配置ANOVA。ダネット事後テスト(aCD70/Dに対して);*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001。
図4図4:AZAと併用したARGX-110のコンセプトコホートのプルーフを伴う、オープンラベル、投与量-漸増試験に登録した患者に関する治療レジメンを示す概略図。
図5図5:(a) 治療終了(EOT):EOT日時は、ARGX-110が投与される最終日である。来院は、EOT後7日以内に計画する。(b) 時間ウインドウは、以下である:-投与前時点:ARGX-110注入(各サイクルの-14日目及び17日目)又はAZA投与(1、3及び7日目)の前最大4時間-0時(ARGX-110注入の終了時)±30分及び2時間(ARGX-110注入の終了後):±30分間-24時間:±4時間-投与後時点(X日目):ARGX-110注入終了後の2時間以内;(c) -14日目の、並びにサイクル1-4及びサイクル8(適用可能な場合)の3日目及び17日目のARGX-110注入前最大4時間、並びにEOT及び経過観察来院時;(d) 分子遺伝学試料は、疾患及び標的病理に対する治療効果の、CD70及びCD11aプロモーターメチル化の特徴決定及びゲノムDNA解析に使用することができる。サイクル≧3以降は、試料採取は、完全寛解(CR、CRi)まで、奇数サイクルの1日目(すなわち、C3D1、C5D1、・・・・)毎に、AZA投与前に行うべきである;(e) 遺伝子発現試料を、CD70のmRNAレベル、疾患及び薬物効果のマーカーの特徴決定に使用する。サイクル≧3以降は、試料採取は、完全寛解(CR、CRi)まで、奇数サイクルの1日目(すなわち、C3D1、C5D1、・・・)毎に、AZA投与前に行うべきである;(f) フローサイトメトリー(FACS)試料は、微小残存病変分析、CD70及びCD27発現、並びに薬物効果(例えば、芽球、NK細胞及びT細胞)の追加の特徴決定に使用してよい。サイクル≧3以降は、試料採取は、完全寛解(CR、CRi)まで、奇数サイクルの1日目(すなわち、C3D1、C5D1、・・・)毎に、AZA投与前に行うべきである;(g) 血清試料は、sCD27、疾患及び薬物効果のマーカー、炎症性サイトカイン分析の追加の特徴決定に使用してよい。サイクル≧3以降は、試料採取は、完全寛解(CR、CRi)まで、奇数サイクルの1日目(すなわち、C3D1、C5D1、・・・)毎に、AZA投与前に行うべきである;(h) 幹細胞性判定は、血液又は骨髄から精製した単核細胞について行う。収集された細胞の数に応じて、読み取りは、Numb染色(非対称/対称分裂の比を決定)、細胞及びインビボの試験(例えば、CFUメチルセルロースコロニーアッセイ又は患者単核細胞を注射したNSGマウスの生存試験により、幹細胞能を評価)を含むことができる;(i) 併用治療の奏効評価のための吸引液生検試料採取のタイミングは、臨床的に禁忌でない限りは、完全寛解(CR、CRi)まで、奇数サイクルの1日目(すなわち、C3D1、C5D1、・・・)毎に、及びEOT時に、行うべきである。CRMRD-に達する患者に関して、追加のBM吸引液/生検は、奏効を確認するためにCRMRD-後4週間よりも早くなく、収集する。追加の吸引液/生検試料は、治療担当医により指示されたように採取し、且つ試験関連試料として取り扱う;(j) 長期治療時のARGX-110の減少した血清曝露及び/又は増加したADAに関してエビデンスが得られる場合、追加のPK及び/又はADA試料を得ることができる;(k) 医学的に禁忌でない限り、骨髄試料が採取される;(l) 骨髄上清試料を使用し、sCD27濃度及び疾患及び標的病理に対する治療効果を評価する。
図6図6:骨髄(BM)芽球負荷は、細胞形態(A.)、並びに白血病-関連した免疫表現型(LAIP)ゲーティング(B.)、及び芽球ゲーティング(SSClowCD45dim;C.)を使用するフローサイトメトリーにより、評価した。後者の方法を使用し、患者の測定可能な/微小残存病変(MRD)状態を決定した。
図7図7:末梢血(PB)芽球負荷は、細胞形態(A.)、並びに白血病-関連した免疫表現型(LAIP)ゲーティング(B.)、及び芽球ゲーティング(SSClowCD45dim;C.)を使用するフローサイトメトリーにより、評価した。後者の方法を使用し、患者の測定可能な/微小残存病変(MRD)状態を決定した。
図8図8:精製したAML芽球(FACSゲート:CD45dim SSClow AV-CD4-CD8-CD19-)を固定し、透過処理し、且つ細胞をα-Numb抗体と共に一晩インキュベーションし、引き続き蛍光標識した二次抗体により染色した。DAPIを、DNAの対比染色に使用した。試料を、ImageStreamX(登録商標)Mark II造影フローサイトメーター(Amnis/EMD Millipore)上に獲得し、INSPIRE(商標)及びIDEAS(登録商標)ソフトウェア(Amnis/EMD Millipore)を用いて解析した。A.) 総Numb発現(平均蛍光強度)は、ベースライン時(“スクリーニング”)、ARGX-110 単剤療法後(C1D1)及び併用治療後(C4D1)に収集した患者1名の骨髄試料について、スライド越しに決定した。B.) 対称分裂(SD)及び非対称分裂(AD)の細胞を、ベースライン時(“前”)、及びARGX-110単剤療法後(αCD70後)の骨髄患者試料についてスコア化した。
図9図9:αCD70 mAb治療は、AML患者におけるCD34+CD38- AML幹/前駆細胞頻度を減少した。(a) P2のコロニー形成。診断(SCR)時及びARGX110の投与(1mg/kg i.v.、0時点、又はC1D1)後14日目の、患者P002の104個のBM MNCを、メチルセルロース中に播種し、コロニー形成を、2週間後に評価した。(b) ARGX110の指定された投与量で治療した異なる患者のコロニー形成の倍率変化。(c) P2からの限界希釈でのコロニー形成。(d) P2及びARGX110の指定された投与量で治療した異なる患者の増強された限界希釈実験において決定した、SCR及び0時点での幹細胞頻度。データは、平均±S.D.で表す。統計:(a、b、e)スチューデントt-検定;(d):χ2検定;**、P<0.01;***、P<0.001。(f) P2のコロニー形成。患者P002の診断時(SCR)、ARGX110の投与(1mg/kg i.v.、0時点、又はC1D1)後14日目、及び併用治療後(“併用”)に、104、5×103 、103 及び102個のBM MNCを、メチルセルロース中に播種し、コロニー形成を、2週間後に評価した。
図10図10:血清試料を、ELISA(Duoset ELISA、ヒトCD27/TNFRSF7(カタログ番号:DY382-05、R&D Systems)を用いて分析した。試料中の可溶性CD27の濃度は、較正曲線から計算する。この方法は、サンドイッチELISA法により、天然のヒト可溶性CD27の血清濃度の測定を可能にする。ヤギ抗-ヒトCD27捕獲抗体で、マイクロプレート表面をコートし、非特異的結合部位をブロッキングする。ヒト血清試料を適用し、結合したヒト可溶性CD27を検出し、ビオチン化したヤギ抗-ヒトCD27検出抗体、ストレプトアビジン-HRP、並びに呈色試薬H2O2及び発色性基質テトラメチルベンジジン(TMB)の混合物の引き続きの添加により可視化する。
図11図11:ARGX-110の血清濃度を、バリデートされた酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法を用いて分析した。個々の患者PKプロットを、10mg/kgコホートについて提供した。PKプロットは、ARGX-110サイクル1(D-14プレ-投与量からサイクル1 D1プレ-投与量まで)のデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(発明の詳細な説明)
いわゆる“7+3”標準強化化学療法(すなわち、シタラビンの集中投与量が7日間+アントラサイクリンの3日間、典型的にはそれに続けて地固め化学療法又は造血幹細胞移植(HSCT))を用いるAMLの従来の治療が、長年標準療法となっている。しかしこのレジメンの下では、年齢60歳以下のAML患者の大部分は、5年以上の生存に失敗している。標準強化化学療法に適合しないより高齢者において、より強度が低い治療の転帰は治癒的ではなく、HSCTは典型的には適さず、全生存期間の中央値は1年未満である。AMLは、不均一疾患であり、疾患再発は、療法に対し抵抗性である1種以上の白血病幹細胞(LSC)クローンに起因することが多い。代替療法を研究する前臨床試験は多いにもかかわらず、臨床へ移行されることはほとんどない。従って効果的新規AML療法、特に標準強化化学療法に適合しない患者に適している療法が、必要である。理想的には、新規療法は、骨髄及び血液中の芽球負荷の減少により疾患を除去するのみでなはく、不均一なLSC集団を減少するかもしくは根絶しさえもする。
【0049】
本明細書の最初に明らかにしたように、AML又はMDSを有するヒト対象は、抗-CD70抗体の投与により効果的に治療される。AML又はMDS患者のそのような治療は、標準強化化学療法による従来の治療は、著しい毒性及び副作用に関連しているので、特に望ましい。更に、多くの患者(例えば、高齢患者)は併存疾患を有し、その結果彼等は、標準強化化学療法に耐えられず、このことは彼等には効果の少ない療法のみが使用され得ることを意味している。低投与量であっても効果があり、副作用及び毒性が限定されており、このことはこれらが全ての患者への投与に適していることを意味するAMLの治療が、本明細書に提供される。これは、そうでなければ標準強化化学療法に不適格である患者の治療について、特に有利である。
【0050】
従って本発明によるAMLの治療は、現在利用可能な療法を上回る、驚くべき著しい恩恵を提供する。本発明の態様及び実施態様はここで、更に説明される。別に指摘しないか又は技術的に不適合でない限りは、本発明の各実施態様は、本発明の他のいずれかの実施態様と組合せて実行することができる。
【0051】
(定義)
急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄細胞に関与する造血系新生物を指す。AMLは、分化能が低下した骨髄前駆体のクローン性増殖により特徴付けられる。AML患者は、骨髄における芽球細胞の蓄積を示す。芽球細胞は典型的には、AML患者の末梢血中にも蓄積する。典型的には、患者が骨髄又は末梢血中に20%以上の芽球細胞を示す場合に、AMLと診断される。
【0052】
本明細書において使用される「芽球細胞」又は簡単に「芽球」とは、撹乱された分化能を示す、クローン性骨髄前駆細胞を指す。芽球細胞のサブセットは、白血病幹細胞(LSC)である。これらは、幹細胞特性を有する芽球細胞であり、従って免疫不全レシピエントへ移植される場合には、白血病疾患の始まりを可能にする。LSCは、白血病を生じることにより自己再生し、且つ原因疾患に似ているが自己再生することができない非-LSCの通常の芽球細胞へ部分的に分化することもできる。LSCは、初代AML芽球細胞の割合として10,000個中に1個から100万個に1個の範囲の頻度で生じる(Pollyea及びJordanの文献、Blood 2017 129:1627-1635、これは引用により本明細書中に組み込まれている)。LSCは、CD34+CD38-細胞、任意にまたCD45-及び/又はCD123+細胞として特徴付けられてよい。LSCはまた、CD45dim, SSClo, CD90+CD34+細胞としても特徴付けられる。
【0053】
AMLは、WHO 2008分類に従い、この分類への2016年改訂と組合せて、分類され且つ診断されることができる(Arberらの文献、Blood、2016年5月19日、127巻20号、これは引用により本明細書中に組み込まれている)。WHO分類に従い、一般にAMLは、以下の亜型を包含している:再発性の遺伝子異常を伴う急性骨髄性白血病;骨髄異形成関連変化を伴うAML;治療関連骨髄系腫瘍:骨髄肉腫;ダウン症候群関連骨髄増殖症;芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍;並びに、それ以外に分類されたAML(例えば、急性巨核芽球性白血病、急性好塩基球性白血病)。
【0054】
AMLはまた、French-American-British(FAB)分類に従い分類することもでき、以下の亜型を包含する:M0(急性骨髄芽球性白血病、最小の分化);M1(急性骨髄芽球性白血病、成熟を伴わない);M2(急性骨髄芽球性白血病、顆粒球の成熟を伴う);M3(前骨芽球性、又は急性前骨髄球性白血病(APL));M4(急性骨髄単球性白血病);M4eo(骨髄好酸球増加を伴う骨髄単球性);M5(急性単芽球性白血病(M5a)又は急性単球性白血病(M5b));M6(赤白血病(M6a)及び非常に稀な純粋な赤白血病(M6b)を含む、急性赤芽球性白血病);又は、M7(急性巨核芽球性白血病)。
【0055】
本明細書において使用される「AML」は、別に特定しない限りは、WHO及び/又はFAB分類により包含された状態のいずれかを指す。ある種のAML亜型は、比較的良好な予後、一部の中間予後及び一部の不良もしくは有害予後であると考えられる。当業者は、どの亜型がどのリスクカテゴリーに入るかを知っている。
【0056】
骨髄異形成症候群(MDS)は、異形成症、血球減少、並びに/又は骨髄の細胞充実性(cellurlarity)及び/もしくは骨髄分化の異常な変化、例えば増大した芽球細胞浸潤などにより特徴付けられる。MDSは、WHO 2008分類に従い、分類され且つ診断されることができる。WHO分類に従い、MDSは一般に、以下の亜型を包含している:一系統異形成を伴うMDS(これまで「一系統異形成を伴う不応性血球減少症」と称され、これは不応性貧血、不応性好中球減少症、及び不応性血小板減少症を含む);環状鉄芽球を伴うMDS、これは一系統異形成及び多系統異形成を伴う亜群を含む(これまで「環状鉄芽球陽性不応性貧血」と称される);多系統異形成を伴うMDS(これまで「多系統異形成性不応性血球減少症」と称される);過剰芽球のMDS(MDS-EB、これまで「芽球過剰性不応性貧血」と称される)、これは更に芽球の割合を基に、MDS-EB-1及びMDS-EB-2へ小分類される;単独5番染色体長腕の欠失(del(5q))を伴うMDS;並びに、分類不能のMDS。
【0057】
MDSはまた、French-American-British(FAB)分類に従い分類することもでき、以下の亜型を包含する:M9980/3(不応性貧血(RA));M9982/3(環状鉄芽球陽性不応性貧血(RARS));M9983/3(芽球過剰性不応性貧血(RAEB));M9984/3(移行期芽球過剰性不応性貧血(RAEB-T));並びに、M9945/3(慢性骨髄単球性白血病(CMML))。
【0058】
本明細書において使用される「MDS」は、別に特定しない限りは、WHO及び/又はFAB分類により包含された状態のいずれかを指す。AML及びMDSの両方に関して、WHO分類が、本明細書においては好ましい。
【0059】
「高リスク」MDS患者-すなわち、AMLに発展する高いリスクがあり且つ生存予後不良を伴うMDS患者を治療することは、特に望ましい。MDS患者が「高リスク」患者であるかどうかは、MDSに関する改訂国際予後判定システム、又はIPSS-R(Greenbergらの文献、Blood、2012年9月20日;120(12): 2454-2465、これは引用により本明細書中に組み込まれている)を用いて、決定することができる。IPSS-Rは、患者を予後カテゴリーにあてはめるために、患者の骨髄芽球割合、細胞遺伝学的異常、血球減少の数及び程度を考慮する。IPSS-Rスコアが4.5よりも大きい患者は、「高リスク」MDS患者であると考えられる。
【0060】
AML療法に対する対象の反応は、表1の判定基準に従い臨床的に特徴付けることができる:
表1
【表1】
【0061】
本明細書において使用される「投与量」は、活性物質の有効量を意味するように使用される。投与量の対象への投与は、1日あたりの特定の活性物質の有効量の投与である。「投与量」は、投与量の指定された有効量が対象へ投与されるならば、1日あたりの単回投与として、又は反復投与として投与されてよい。例えば、投与量1mg/kgは、1日1回の1mg/kg投与として、又は1日あたり2回投与し、2回の投与が合計1mg/kgに達するものとして投与することができる。
【0062】
本明細書において使用される用語「CD70タンパク質」又は「CD70抗原」又は「CD70」又は「TNFSF7」又は「CD27L」は、互換的に使用され、且つTNFRSF27/CD27のリガンドである、ヒトTNFリガンドファミリーのメンバーを指す。ヒトCD70の具体例は、NCBI参照配列寄託番号NP_001243に示されたアミノ酸配列又はその細胞外ドメインを有するポリペプチドを含む。
【0063】
本明細書において使用される用語「抗体」は、関心対象の抗原(例えば、ヒトCD70)に対し著しい特異的免疫反応活性を有する、2本の重鎖及び2本の軽鎖の組合せを有する免疫グロブリンを含む。用語「CD70抗体」は、ヒトCD70タンパク質に対し免疫特異性を示す抗体を指すように、本明細書において使用される。ヒトCD70への「特異性」は、CD70の種相同体との交差反応を排除しない。抗体は、軽鎖及び重鎖を、それらの間の鎖間共有結合を伴う又は伴わずに含む。抗体の抗原-結合断片は、その抗体と同じ抗原(例えば、CD70)に対する特異的免疫反応活性を示すペプチド断片を含む。抗原-結合断片の例は、以下を含む:抗体軽鎖可変ドメイン(VL);抗体重鎖可変ドメイン;単鎖可変領域断片又は一本鎖抗体(scFv);Fab断片;F(ab’)2断片;Fd断片;Fv断片;1アームの(一価の)抗体;ダイアボディ;トリアボディ;テトラボディ;又は、そのような抗原結合断片の組合せ、集成又は複合により形成された任意の抗原結合分子。断片は、例えば、無傷の又は完全な抗体又は抗体鎖の化学的又は酵素的処理によるか、或いは組換え手段により、得ることができる。
【0064】
本明細書において使用される「ヌクレオシド代謝阻害剤」(NMI)は、ヌクレオチド(DNA及び/又はRNA)のエピジェネティック修飾(例えば、メチル化、脱メチル化、アセチル化、又は脱アセチル化)を妨害する分子を指す。ヌクレオシド代謝阻害剤の例は、低メチル化剤(HMA)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、及びブロモドメインと末端外(BET)阻害剤を含む。好ましいヌクレオシド代謝阻害剤は、低メチル化剤である。低メチル化剤は、DNA及び/又はRNAの正常なメチル化を阻害する。低メチル化剤の例は、アザシチジン、デシタビン及びグアデシタビンである。
【0065】
本明細書において使用される「併用療法」として2種以上の活性物質が投与される場合、これは活性物質が、同時に投与されるか、又は単独の組成物に製剤化されることを必要とせず、これを除外することもない。併用療法は、投与される2種以上の活性物質のその従来の解釈で与えられ、その結果患者は、各薬剤の恩恵を誘導することができる。不確かさを避けるために、「併用療法」は、共投与、同時の投与又は固定された投与量の製剤を必要としない。
【0066】
本明細書において使用される「標準強化化学療法」は、7日間の高投与量シタラビン、それに続く3日間のアントラサイクリン投与(例えば、ダウノルビシン又はイダルビシン)により特徴付けられる、いわゆる“7+3”導入化学療法を指す。強化化学療法は、典型的には化学療法が成功した後に幹細胞移植を受ける患者の強化のため、AMLの完全寛解の誘導を目的として与えられる。
【0067】
標準強化化学療法は、著しい毒性及び副作用に関連しており、このことはこれらの効果に耐えることができない患者には適していないことを意味する。本明細書に使用されるように、これらの患者は、「標準強化化学療法に不適格」と称される。例えば、患者は1種以上の併存疾患を示し、これが彼等が毒性に耐えられないことを示すか、又はそれらの疾患を特徴付ける予後因子が、標準強化化学療法の好ましくない転帰を示すので、これらの患者は、標準強化化学療法に不適格であることがある。標準強化化学療法への個々の患者の適格性の決定は、個々の患者の病歴及び臨床指針(例えば、全米総合癌センターネットワーク(NCCN)のガイドライン、これは引用により本明細書中に組み込まれている)を考慮し、医師により行われる。60歳を超える年齢のAML患者は、標準強化化学療法に不適格と評価されることが多く、考慮すべき他の因子は、治療されるAMLの細胞遺伝学的異常及び/又は分子の異常を含む。
【0068】
標準強化化学療法に不適格の患者は、低投与量シタラビン(LDAC)などの、強度が低下した化学療法を代わりに受ける。標準強化化学療法に不適格であり及びそのLDACが適切でない患者は、ヒドロキシ尿素(HU)及び輸血サポートを含む、最善の対症療法(BSC)を受けることができる。
【0069】
本明細書において使用される「対象」及び「患者」は、ヒト個人を指すよう、互換的に使用される。
【0070】
(詳細な説明)
本明細書において明らかにされたように、AML及びMDSなどの骨髄新生物を罹患している患者は、抗-CD70抗体により治療することができる。抗-CD70抗体の単回投与後、対象の骨髄から単離することができる白血病幹細胞の数は、骨髄及び末梢血中に検出される芽球細胞の数と同様に、著しく減少された。この結果は、驚くべきことに低投与量の抗体であっても認められた。
【0071】
従って第一の態様において、本発明は、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を対象へ投与することを含む、対象において急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)を治療する方法を提供する。本発明は、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の治療有効量を対象へ投与することを含む、対象において急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)を治療する方法を提供する。
【0072】
更なる態様において、AML又はMDSの対象の骨髄及び/又は末梢血中の芽球の割合を減少する方法が提供され、この方法は、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の治療有効量を対象へ投与することを含む。
【0073】
更なる態様において、本明細書に提供される方法において使用するための抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が提供される。
【0074】
(抗-CD70抗体単剤療法及びaCD70+NMI併用療法は骨髄及び末梢血芽球細胞を減少する)
本明細書記載のように、本発明の方法は、骨髄中及び/又は末梢血中の、好ましくは骨髄及び末梢血の両方中の、芽球細胞の数及び/又は割合を減少する。
【0075】
骨髄又は末梢血中の芽球細胞の割合は、例えば、対象の骨髄生検、又は末梢血スメアから得られた細胞のフローサイトメトリー又は細胞形態学的評価など、当該技術分野において公知且つ本明細書記載の方法により評価され得る。芽球の割合は、試料中の総細胞に対し決定される。例えば、フローサイトメトリーを使用し、総細胞数に対するCD45dim,SSClow細胞の数を用い、芽球細胞の割合を決定することができる。更なる例のために、細胞形態学的評価を使用し、試験される視野中の細胞の総数に対する、形態学的に同定された芽球の数を決定することができる。
【0076】
特定の実施態様において、絶対項(absolute term)において少なくとも5%だけ骨髄中の芽球細胞の割合を減少する-すなわち、例えば、骨髄中の芽球細胞の割合を30%から25%以下に減少する-方法が提供される。特定の実施態様において、治療は、絶対項において少なくとも10%の、絶対項において好ましくは少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、好ましくは少なくとも60%だけの、骨髄中の芽球細胞の割合の減少として特徴付けることができる。特定の実施態様において、骨髄中の芽球細胞の割合は、治療前と比べ、少なくとも50%だけ減少される。
【0077】
特定の実施態様において、骨髄芽球の割合は、細胞の形態学的評価により測定される。特定の実施態様において、骨髄芽球の割合は、フローサイトメトリー評価により測定される。特定の実施態様において、骨髄芽球の割合は、微小残存病変(MRD)評価に従い測定される。
【0078】
特定の実施態様において、絶対項において少なくとも5%だけ末梢血中の芽球細胞の割合を減少する-すなわち、例えば、末梢血中の芽球細胞の割合を30%から25%以下に減少する-方法が提供される。特定の実施態様において、末梢血中の芽球細胞の割合を絶対項において少なくとも5%だけ、任意に絶対項において少なくとも10%、絶対項において好ましくは少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%減少する治療が提供される。特定の実施態様において、末梢血(PB)芽球の割合は、細胞の形態学的評価により測定される。特定の実施態様において、PB芽球の割合は、フローサイトメトリー評価により測定される。特定の実施態様において、PB芽球の割合は、微小残存病変(MRD)評価に従い測定される。
【0079】
特定の実施態様において、骨髄中の芽球細胞の割合を40%未満、任意に20%未満、例えば10%未満に減少する方法が提供される。特定の実施態様において、骨髄中の芽球細胞の割合を5%未満に減少する方法が提供される。
【0080】
特定の実施態様において、末梢血中の芽球細胞の割合を40%未満、任意に20%未満、例えば10%未満に減少する方法が提供される。特定の実施態様において、末梢血中の芽球細胞の割合を5%未満に減少する方法が提供される。
【0081】
特定の実施態様において、対象は、治療前の少なくとも20%、任意に少なくとも40%、任意に少なくとも60%、任意に少なくとも70%の骨髄芽球の割合を有する。
【0082】
特定の実施態様において、対象は、治療前の少なくとも5%、任意に治療前の少なくとも8%、任意に少なくとも10%、任意に少なくとも15%、任意に少なくとも20%、任意に少なくとも30%、任意に少なくとも40%、任意に少なくとも50%、任意に少なくとも60%の末梢血芽球の割合を有する。
【0083】
芽球細胞の割合の臨床決定に関しては、典型的には細胞形態学的(細胞形態としても公知)評価が、好ましい。
【0084】
(抗-CD70抗体単剤療法及びaCD70+NMI併用療法は、白血病幹細胞のレベルを低下し、分化を促進する)
AMLの芽球の重要なサブセットは、白血病幹細胞(LSC)である。LSCは、白血病を開始することが可能である癌幹細胞である。LSCは、白血病を生じることにより、自己再生することができ、且つ当初の疾患に類似しているが自己再生することができない非LSCの通常の芽球細胞へ部分的に分化することもできる。LSCは、CD34+CD38-、任意に同じくCD45-及び/又はCD123+である細胞として特徴付けられてよい。LSCはまた、CD45dim,SSClo,lin-CD90+CD34+細胞としても特徴付けられてよい。AML患者におけるLSC数の減少は、寛解の見込みを大きく改善し、且つ再発の可能性を低下する。
【0085】
本明細書において明らかにしたように、本発明による単剤療法及び併用治療は、患者におけるLSCの割合を、少なくとも2倍、一部の場合においてははるかに大きい程度減少する。従って本発明による治療は、患者における全体の芽球割合を減少するのみではなく、その後の疾患の再発の可能性も減少することが期待される。
【0086】
従って特定の実施態様において、本発明の方法は、単核細胞の割合としてのLSC数を減少する(またLSC頻度の減少とも称される)。特定の実施態様において、LSC頻度を少なくとも2分の1に減少する方法が提供される。
【0087】
特定の実施態様において、骨髄中のLSCの割合の評価は、例えばメチルセルロース上の、連続希釈播種により決定することができる。
【0088】
本発明による単剤療法及び併用治療はまた、骨髄細胞へのLSCの分化を促進する。そのような分化の促進は、自己再生することができるLSCの割合を減少し、これにより寛解の見込みを増大し且つ再発のリスクを低下する。
【0089】
LSCの骨髄分化は、2個の娘幹細胞を生じる対称細胞分裂とは対照的に、非対称細胞分裂により特徴付けられる。非対称分裂は、顕微鏡技術によるか、又はNumbタンパク質などの、細胞運命決定マーカーの測定により、評価することができる。本明細書において明らかにされたように、抗-CD70抗体単剤療法を受けた患者由来のLSCは、治療前と比べ、増大したNumb発現(従って増加した分化)を示す。Numb発現(従って分化)は、患者が、NMIと組合せて、抗-CD70抗体で治療された場合に、更に増加される。これらのデータは、抗-CD70抗体がインビボにおけるLSCの分化を増加することの最初の臨床的実証であり、これによりRietherらの文献、J. Exp. Med. 2017 Feb;214(2):359-380において報告されたインビトロデータを前進させる。
【0090】
特定の実施態様において、本発明による方法は、白血病幹細胞の分化を促進する。特定の実施態様において、本発明による方法は、白血病幹細胞の非対称分裂を促進する。特定の実施態様において、本発明による方法は、白血病幹細胞上のNumbの発現を促進する。
【0091】
(AMLは低投与量の抗-CD70抗体であっても効果的に治療される)
本明細書に提示された臨床試験からのデータは、CD70抗体により治療された患者は最低の投与量であっても、芽球細胞の割合が減少したことを明らかにしている。この投与量での抗体の患者への投与の強度は、簡単にこの抗体治療の安全性を確認し、且つ用量制限毒性(DLT)を確定した。従って、最低投与量の抗体の単回投与後であっても、芽球細胞の割合が大きく減少されたことは、非常に驚くべきことであった。
【0092】
従って本明細書に提示されるデータは、AML又はMDSは、予想外に低い投与量を含む、抗-CD70抗体の全ての試験した投与量で治療することができることを明らかにしている。
【0093】
従って本発明の全ての方法の特定の実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片は、1回の投与量あたり0.1mg/kg~25mg/kgの範囲の、例えば0.1mg/kg~20mg/kgの範囲の投与量で投与される。特定の実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片は、1回の投与量あたり1mg/kg~20mg/kgの範囲の投与量で投与される。本明細書記載の範囲は、別に指定しない限りは、その範囲のエンドポイントを含む(例えば、0.1~25mg/kgの範囲の投与量での投与は、0.1mg/kgの投与量での投与及び25mg/kgの投与量での投与、並びにこれら2つのエンドポイントの間の全ての投与量を含む)。
【0094】
本発明の方法の特定の実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片は、0.1~15mg/kgの範囲の投与量で投与される。特定の実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片は、0.5~2mg/kgの範囲の投与量で投与される。特定の実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片は、1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、又は20mg/kgの投与量で投与される。特定の好ましい実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片は、1mg/kgの投与量で投与される。特定の好ましい実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片は、10mg/kgの投与量で投与される。
【0095】
特定の実施態様において、CD70抗体又は抗原結合断片の複数投与量が、投与される。特定のそのような実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の各投与量は、10~20日間、任意に12~18日間隔てられる。特定の実施態様において、抗-CD70抗体の各投与量は、14~17日間隔てられる。
【0096】
特定の実施態様において、本発明による治療は、少なくとも部分寛解を生じる。特定の実施態様において、治療は、形態学的に無白血病状態を示す患者を生じる。特定の実施態様において、治療は、少なくとも不完全回復を伴う完全寛解(CRi)を生じる。特定の実施態様において、治療は、少なくとも完全寛解を生じる。
【0097】
従って本発明による治療は、骨髄中及び末梢血中の芽球細胞(白血病幹細胞を含む)の数を減少することにより、AML又はMDSを治療することができる。治療はまた、LSCレベルを特異的に減少する点で特に有効である。
【0098】
(患者の特徴)
本発明による治療は、標準強化化学療法に関連した著しい毒性及び病的状態を伴わずにAMLの寛解(部分又は完全)を誘導する効果的手段を提供するので、これは特に利点がある。これらの副作用を伴わない療法の提供は、本発明の著しい利点である。
【0099】
AML療法の副作用の減少は、全般的にAML患者の治療にとって明らかに望ましい。加えて、通常より強力なAML治療を受けることができない患者にとって、特に有利である。例えば、60歳以上の患者であるなど、患者の併存疾患のために、標準強化化学療法に不適格な患者について有効な療法の必要性が存在する。これらの患者についての代替療法(例えば、低投与量のシタラビン(LDAC))は利用可能であるが、これらは、寛解を達成する可能性が低く、且つ依然著しい副作用に関連している。対照的に、本発明による治療は、標準強化化学療法の毒性に耐えることができない患者により忍容され得るAMLのための効果的療法を提供する。
【0100】
従って本発明の特定の実施態様において、対象は、治療前に標準強化化学療法に適格ではない。特定のそのような実施態様において、対象は、少なくとも60歳、任意に少なくとも70歳である。
【0101】
更なるAMLのための従来の療法は、同種異系又は自家の幹細胞のいずれかを使用する造血幹細胞移植(HSCT)である。標準強化化学療法を受けることに不適格の患者は、通常はHSCTを受けることから除外される。これは、移植が成功する見込みが、低投与量の化学療法のみを受ける患者において低下されるからであり、その理由は、彼等は移植を受けるための準備において骨髄芽球を除去することを意図した標準強化化学療法を受け取ることができないからである。HSCTは、強度の低い化学療法を使用し行うことができるが、残存芽球が骨髄中に残留するより大きな可能性のために、成功の見込みは、より低い。
【0102】
HSCTに関する個々の患者の適合性は、移植が成功する見込み並びに残りの治療の選択肢及び生活の質などの他の要因を考慮した臨床医の症例評価により、症例によって決まるであろう。考慮すべき例証的であるが重要な要因は、患者により示された骨髄芽球の割合である。
【0103】
本明細書において明らかにされたように、本発明による治療は、骨髄芽球の割合を著しく低下することができる。標準強化化学療法に不適格である患者における骨髄芽球の割合を低下する手段を提供することにより、本発明の方法は、HSCTがこれまでは推奨されなかった患者集団におけるHSCTが成功する見込みを新たに開く。
【0104】
従って本発明の全ての態様の特定の実施態様において、対象は、治療前には標準強化化学療法に適格ではなく、本治療は、骨髄芽球の割合を低下し、その結果その対象をHSCTに適格とする。特定の実施態様において、本治療は更に、対象に造血幹細胞移植を行うことを含む。
【0105】
抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を対象へ投与することを含む、造血幹細胞移植(HSCT)のためにAML又はMDSの対象を準備する方法が、本明細書に提供される。
【0106】
特定の実施態様において且つ本明細書別所記載のように、本方法は、NMI(例えば、アザシチジンなどのHMA)を対象へ投与することを、更に含んでよい。
【0107】
特定の実施態様において、本方法は、HSCTを対象において実行することを更に含む。
【0108】
本発明による治療は、血清中の可溶性CD27が異常に高レベルの患者の治療に、特に効果があると予測される。
【0109】
理論に結びつけられることを欲するものではないが、これは、CD27-CD70結合は、シェディングにより、可溶性CD27(sCD27)の放出を生じることが理由であると考えられる。従って、可溶性CD27は、CD70/CD27相互作用の程度に関するバイオマーカーとして働く(Rietherらの文献、J. Exp. Med. 2017 Feb;214(2):359-380、これは引用により本明細書中に組み込まれている)。特にsCD27は、骨髄中の芽球細胞の割合と相関し、並びに患者の芽球の幹細胞性のマーカーとして働き、増大したsCD27は、増大したレベルの幹細胞性を示すと考えられる(Rietherらの文献、J. Exp. Med. 2017 Feb;214(2):359-380)。
【0110】
CD70/CD27-媒介したシグナル伝達は、異常な細胞分裂を促進し、且つ高レベルの血清sCD27は、AML患者の予後不良と相関していると考えられる。本発明による抗-CD70抗体の使用は、骨髄中の芽球細胞の割合を減少し(実施例参照)、且つCD27/CD70相互作用をブロックし、これにより芽球の幹細胞性のレベルを低下し、且つ分化を促進する。従って上昇したsCD27を示すAML患者は、本発明の抗-CD70抗体による治療から特定の恩恵を引き出すことができると期待される。
【0111】
選択された健常個人の試料は、血清中のsCD27のレベル10~200U/mlを示し、AML患者は、上昇した血清sCD27を示す(Rietherらの文献、J. Exp. Med. 2017 Feb;214(2):359-380)。従って本発明の特定の実施態様において、治療される患者は、200U/mlを上回る血清sCD27濃度を有する。年齢を超えた全てのAML患者及びAML亜型リスクカテゴリー(すなわち、良好、中間及び高リスク/有害の細胞遺伝学的分類の患者にわたる)について、閾値577U/mlを上回る血清sCD27レベルを伴う患者は、この閾値を下回るsCD27レベルを伴う患者の予後よりも、より予後不良であることも、決定されている。従って特定の実施態様において、治療される患者は、577U/mlを上回る血清sCD27濃度を有する。
【0112】
血清sCD27レベルが、AML亜型リスクカテゴリー内で分析される場合、閾値470U/mlを上回る血清sCD27レベルを有する良好な亜型のAML患者は、良好な亜型のAMLで且つこの閾値を下回るsCD27レベルを持つ患者よりも、より予後不良であることが確定された。従って特定の実施態様において、治療される患者は、良好な又は低リスクのAML亜型を有し、且つ470U/mlを上回る血清sCD27濃度を有する。
【0113】
中間リスク亜型のAML患者に関して、閾値586U/mlを上回る血清sCD27レベルを有する患者は、中間亜型のAMLで及びこの閾値を下回るsCD27レベルを伴う患者よりも、より予後不良である。従って特定の実施態様において、治療される患者は、中間リスクAML亜型を有し、且つ586U/mlを上回る血清sCD27濃度を有する。
【0114】
高リスク亜型のAML患者に関して、閾値714U/mlを上回る血清sCD27レベルを有する患者は、高リスク亜型のAMLで及びこの閾値を下回るsCD27レベルを伴う患者よりも、より予後不良である。従って特定の実施態様において、治療される患者は、高リスクAML亜型を有し、且つ714U/mlを上回る血清sCD27濃度を有する。
【0115】
本発明により治療される患者は、いずれか説明された閾値を上回る又は下回るよう先に決定されたそれらの血清sCD27濃度有し得ることは、明らかであろう。それにもかかわらず特定の実施態様において、本発明の治療及び方法は、患者の血清CD27濃度を測定する工程を更に含む。
【0116】
既に本明細書に記載のように、本発明による抗-CD70抗体の投与は、骨髄芽球の数を減少し、且つCD27とCD70の相互作用をブロックすることができる。CD27/CD70相互作用の阻害と並行した芽球細胞の減少は、実施例において明らかにされたように、sCD27シェディングのレベルを著しく減少する。
【0117】
特定の実施態様において、本発明による方法(例えば、抗-CD70抗体による単剤療法又は抗-CD70抗体+NMIの併用療法)は、治療前と比べ、血清sCD27を減少する。特定の実施態様において、血清sCD27は、少なくとも200pg/ml、任意に少なくとも500pg/mlだけ減少される。特定の実施態様において、血清CD27は、治療前と比べ、少なくとも1000pg/ml、少なくとも1500pg/ml又は少なくとも10,000pg/mlだけ減少される。
【0118】
本明細書の実施例において、sCD27のレベルは、抗-CD70抗体のその標的抗原との結合の相関として使用することができることが更に明らかにされている。可溶性CD27レベルは、CD70抗体投与に対する反応を減少し、その後療法が停止された場合、引き続き増大することができる。従って一部の実施態様において、本方法は更に、血清sCD27の検出により治療有効性をモニタリングすることを含む。
【0119】
本発明による抗-CD70抗体の投与は、単に芽球の割合を減少するのみではなく、CD70を発現する芽球細胞(CD70+芽球)の数を優先的に減少する。異常なAML芽球細胞は、正常前駆細胞と比べ、CD70を過剰発現すると理解される。従ってCD70-発現する芽球細胞の標的化は、病原性芽球の数を減少するが、正常前駆細胞に対しては無視できる効果を伴い、これにより血球減少を発症する患者のリスクを低下する。
【0120】
本発明の特定の実施態様において、CD70+芽球の割合は減少される。特定の実施態様において、CD70+芽球の割合は、絶対項において少なくとも5%だけ、任意に少なくとも10%だけ減少される。特定の実施態様において、CD70+細胞の割合は、20%未満、任意に10%未満に減少される。特定の実施態様において、CD70+芽球細胞の割合は、5%未満に減少される。CD70+芽球の割合は、骨髄及び/又は末梢血中の指定された量だけ減少されてよい。
【0121】
MDSの治療に関して、「高リスク」MDS患者-すなわち、生存予後不良、より早い疾患進行、及びAMLへの進行のより高い確率を伴うMDS患者-を治療することが、特に望ましい。従って特定の実施態様において、患者は、「高リスク」MDS患者である。特定の実施態様において、この患者は、4.5を上回るIPSS-Rスコアを有する。
【0122】
(ヌクレオシド代謝阻害剤(NMI)と組合せた抗-CD70抗体療法)
本明細書において既に説明したように、抗-CD70抗体による単剤療法は、AML又はMDSの効果的治療を提供し、芽球細胞割合の著しい低下を生じる。本明細書のデータは、効果的単剤療法を提供することに加え、ヌクレオシド代謝阻害剤(NMI)、例えばアザシチジン(本明細書においてアザサイチジン、AZA又はazaとも記す)又はデシタビンなどの低メチル化剤(HMA)との併用療法の一部として投与される場合の、抗-CD70抗体の更なる治療的有効性を明らかにしている。
【0123】
従って更なる態様において、抗-CD70抗体又はその抗原結合断片と、NMIを含有する組合せが提供される。特定の実施態様において、NMIは、低メチル化剤、好ましくはアザシチジンである。
【0124】
更なる態様において、AML又はMDSを治療する方法において使用するための、抗-CD70抗体又はその抗原結合断片と、NMIを含有する組合せが提供される。特定の実施態様において、NMIは、低メチル化剤、好ましくはアザシチジンである。
【0125】
更なる態様において、本発明の方法において使用するための、抗-CD70抗体又はその抗原結合断片と、NMIを含有する組合せが提供される。特定の実施態様において、NMIは、低メチル化剤、好ましくはアザシチジンである。
【0126】
以下の実施態様は、別に特定しない限りは、本明細書に提供される全ての態様及び本発明の方法に適応可能である。
【0127】
アザシチジンは、シチジンの類縁体であり、デシタビンは、そのデオキシ誘導体である。AZA及びデシタビンは、プロモーター低メチル化により遺伝子発現をアップレギュレートすることが知られているDNAメチル基転移酵素(DNMT)の阻害剤である。そのような低メチル化は、細胞機能を破壊し、これにより細胞毒性作用を生じる。
【0128】
理論に結びつけられることを欲するものではないが、CD70抗体及びAZAなどのヌクレオシド代謝阻害剤の両方による治療から生じる治療効果は、これら2種の活性物質の組合せからの増強された効果に起因すると考えられる。既に説明したように、抗-CD70抗体単独は、骨髄及び循環の芽球(すなわち、骨髄、末梢血、又は両方の中の芽球)を枯渇し、且つヌクレオシド代謝阻害剤(AZAなど)の単独は、細胞活性を破壊する。
【0129】
加えて、AML芽球及びLSCの表面上のCD70のアップレギュレーションは、ヌクレオシド代謝阻害剤(アザシチジン又はデシタビン)による治療により誘導される(実施例及び図1参照)。添付する実施例において明らかにされたように、抗原をアップレギュレートするこの効果は、アザシチジンなどのヌクレオシド代謝阻害剤と組合せて使用した場合の、抗-CD70抗体の有効性の増大と相関している。これは、いずれかの活性物質単独の投与後よりも更に減少されている芽球細胞の数を生じ、且つ抗-CD70抗体が低投与量で投与される場合の、併用治療の驚くべき有効性を説明することができる。
【0130】
従って特定の好ましい実施態様において、本発明の治療及び方法は、ヌクレオシド代謝阻害剤を対象へ投与することを更に含む。特定の実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤は、低メチル化剤である。特定の実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤は、アザシチジン又はデシタビンである。特定の好ましい実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤は、アザシチジンである。
【0131】
特定の実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤(例えばアザシチジン)は、1日あたり50~100mg/m2の範囲の投与量で投与される。既に注記したように、本明細書記載の範囲は、別に指定しない限りは、その範囲の端点を含み-例えば、1日あたり50~100mg/m2の範囲の投与量での投与は、1日あたり50mg/m2の投与量での投与及び1日あたり100mg/m2の投与量での投与、並びにこれら2つの端点の間の全ての投与量を含む。特定の実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤は、1日あたり70~80mg/m2の範囲の投与量で投与される。特定の好ましい実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤は、1日あたり75mg/m2の投与量で投与される。
【0132】
特定の実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤は、5~9日の1日量の投薬期間にわたり投与される。すなわち、ヌクレオシド阻害剤の投与量は、長さ5、6、7、8、又は9日の期間、毎日投与される。特定の好ましい実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤は、7日の1日量の投薬期間にわたり投与される。
【0133】
特定の実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤は、反復投薬期間の投薬レジメンに従い投与され、ここで1回の投薬期間の最後と次の投薬期間の最初は、18~25日隔てられる。すなわち、この投薬レジメンは、ヌクレオシド阻害剤の投与量が毎日投与される少なくとも2回の投薬期間(例えば、長さ5、6、7、8、又は9日の期間)を含み、ここで1回の投薬期間の最後と次の投薬期間の最初は、18、19、20、21、22、23、24、又は25日隔てられている。特定の実施態様において、1回の投薬期間の最後と次の投薬期間の最初は、21日隔てられている。
【0134】
特定の実施態様において、各投薬期間は、同じ長さ(例えば7日間)である。特定の実施態様において、各投薬期間の最後と次の投薬期間の最初は、同じ日数(例えば21日間)隔てられる。
【0135】
特定の実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤の初回投与量は、抗-CD70抗体又はその抗原結合断片の初回投与量後、7~21日間投与される。特定の実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤の初回投与量は、抗-CD70抗体又はその抗原結合断片の初回投与量後、10~17日間投与される。特定の実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤の初回投与量は、抗-CD70抗体又はその抗原結合断片の初回投与量後、14日間投与される。
【0136】
特定の実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤の1日量の1回は、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の投与量と同じ日に投与される。すなわち、抗-CD70抗体(又はその抗原結合断片)及びヌクレオシド代謝阻害剤の両方が対象に投与される本発明の方法の実施態様において、抗-CD70抗体及びヌクレオシド代謝阻害剤の両方の投薬レジメンは、抗-CD70抗体のスケジュールされた投与量の少なくとも1回は、ヌクレオシド代謝阻害剤のスケジュールされた1日量の1回と同じ日であるように設定される。その日は、ヌクレオシド代謝阻害剤の投薬期間の第1、第2、第3、第4、第5、第6又は第7日目であることができる。
【0137】
特定の実施態様において、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の投与量は、14~17日間毎日投与され、且つヌクレオシド代謝阻害剤は、7日の1日量の反復投薬期間の投薬レジメンに従い投与され、ここで1回の投薬期間の最後と次の投薬期間の最初は、21日隔てられており、且つここで第一の投薬期間の最初の1日量は、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の初回投与量後14日間投与される。
【0138】
併用療法の開始期間に続く、NMI(例えばaza)の投与は、漸減又は停止され得ることは、本発明の更なる利点である。例えば本明細書に明らかにしたように、CD70抗体及びNMIの併用療法の開始期間は、患者の芽球割合を著しく低下することができる。しかし、例えば非-芽球細胞型に対するNMIの効果から生じる血球減少などの、長いNMI治療期間から生じる蓄積された毒性の可能性が存在する。開始期間後NMIの投与量を漸減又は停止することにより、そのような毒性のリスクは低下され、且つ非-芽球細胞型を回復することができる。しかし芽球の割合は、抗-CD70抗体の投与量を維持することにより、依然制御されるであろう。別の言い方をすると、患者は、既に説明した併用治療の導入療法により治療することができ、その後NMIの漸減する投与量を伴う抗-CD70療法、又は単純にCD70抗体の単剤療法を含む維持療法へ移ることができる。
【0139】
従って特定の実施態様において、本発明による治療は、第一段階(導入療法)において先に説明した実施態様のいずれかによる併用療法として抗-CD70抗体及びNMIを患者へ投与すること、引き続きの第二段階において、抗-CD70抗体を患者へ投与し且つ第一段階で投与されたNMIの投与量を下回るNMIの投与量を投与すること(維持療法)を含む。第二段階でのNMIの投与量は、ゼロであってよく-すなわち第二段階は、抗-CD70抗体のみの投与に関与することができる。
【0140】
そのような実施態様において、第二段階(すなわち維持療法)で投与されるCD70抗体の投与量は、既に説明した実施態様に従う任意の投与量である。すなわち特定の実施態様において、この投与量は、0.1mg/kg~25mg/kg、例えば0.1mg/kg~20mg/kg、例えば1mg/kg~20mg/kgの範囲である。特定の実施態様において、この投与量は、1回の投与量あたり0.1mg/kg~15mg/kgの範囲である。特定の実施態様において、この投与量は、0.5mg/kg~2mg/kgの範囲である。特定の実施態様において、この投与量は、1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、又は20mg/kgである。特定の実施態様において、この投与量は、1mg/kgである。特定の実施態様において、この投与量は、10mg/kgである。
【0141】
第一段階(すなわち導入療法)の長さ、第二段階(すなわち維持療法)への移行のタイミング、及びNMIの投与量が漸減又は完全に停止されるまでの度合いは、個々の患者について調節され、且つ療法に対する個々の患者の反応及び患者の既往歴に従いその主治医により決定される要因である。従って以下の実施態様は、非限定的例として提供される。
【0142】
特定の実施態様において、導入療法は、患者の骨髄及び/又は末梢血の芽球割合が、10%未満、任意に5%未満になるまで、患者へ投与される。特定の実施態様において、導入療法は、少なくとも5のNMI投薬期間、任意に少なくとも6、7、8、9、又は少なくとも10のNMI投薬期間に、投与される。
【0143】
特定の実施態様において、維持期間のNMIの投与量は、1日あたり50mg/m2を超えず、任意に1日あたり40mg/m2を超えず、任意に1日あたり30mg/m2を超えず、任意に1日あたり20mg/m2を超えない。
【0144】
(医薬組成物)
同じく、本明細書記載の方法において使用するための医薬組成物も、本発明において提供される。従って本発明の更なる態様において、本発明による方法において使用するための、抗-CD70抗体及び医薬として許容し得る賦形剤又は担体を含有する医薬組成物が提供される。好適な医薬として許容し得る担体及び賦形剤を、当業者は熟知しているであろう。本発明の医薬組成物中への含有に適している医薬として許容し得る担体及び賦形剤の例としては、クエン酸ナトリウム、グリシン、ポリソルベート(例えばポリソルベート80)及び食塩水が挙げられる。
【0145】
本発明の組合せに関して、抗-CD70抗体又は抗原結合断片は、ヌクレオシド代謝阻害剤と比べ、同じ経路を介した又は異なる経路を介した投与のために、製剤化されてよい。
【0146】
特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、非経口的に、好ましくは静脈内で(i.v.)、対象へ投与される。特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、所望の投与量に到達するまで、連続i.v.注入として投与される。
【0147】
特定の実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤は、非経口に、好ましくは皮下(s.c.)投与される。
【0148】
(併用療法)
本発明による治療は、治療的物質又は緩和的物質(例えば、放射線治療、鎮痛薬又は抗生物質)などの、1以上の追加の活性物質との併用療法へ組込むことができる。そのような活性物質は、療法に対する患者の反応及び/又は患者の生活の質を改善するための治療薬として投与されてよい。従って特定の実施態様において、CD70抗体(任意にNMIとの併用療法において)は、1種以上の追加の活性物質との併用療法において、本発明で投与される。
【0149】
抗-CD70抗体(単剤療法として、又はazaなどのNMIとの併用療法として)によるAML又はMDSの治療は、驚くべきことに骨髄及び末梢血中の芽球を減少する点で特に効果があることが示されている。特定の利点は、CD70抗体は、他の細胞型よりも芽球のために選択され(CD70は正常組織において最小発現であるので)、且つ幹細胞分化を誘導し/それらの幹細胞性を減少する(例えば、CD27/CD70媒介したシグナル伝達を妨害することにより)ことができることである。
【0150】
芽球及び白血病幹細胞に対するこれらの効果は、本発明による治療は、同じく芽球及びLSCを標的化する物質と有利に組合せられることを示している。CD33は、主に骨髄芽球及びLSC上に発現されるが、正常な造血幹細胞上では存在しないか又は低レベルでのみ存在する受容体である。CD33は、AMLに余り関連のない様々な他の細胞型上で発現されるが、CD33はAML細胞の大半上で発現され、且つCD33のレベルは、その疾患予後と相関しているように見える。二重特異性抗体AMG330及び抗体薬物複合体(ADC)バダツキシマブタリリン(vadastuximab talirine)などの、CD33に対する抗体は、AMLを効果的に治療することが説明されており、且つバダツキシマブタリリン(Seattle Genetics社からのSGN-CD33Aとしても公知)は、臨床試験第III相において試験されている。従って抗-CD33抗体は、本発明による治療(抗-CD70抗体による単剤療法又は抗-CD70抗体及びNMI(例えばaza)の併用)と組合せ、AMLのための特に効果的療法を提供すると予想される。従って本発明の特定の実施態様において、患者は、本発明の抗-CD70抗体(及び任意にNMI)との併用療法の一部として、抗-CD33物質、例えば抗-CD33抗体が投与される。
【0151】
CD123は、骨髄芽球及びLSCに関連しているが、正常造血幹細胞及びリンパ球などの他の細胞型上では低レベルで発現する別の受容体である。高いCD123発現を伴うAML細胞は、CD123のより高い増殖を示し、且つAML芽球の中でもCD123のより高い発現は、より低い完全寛解率及びより不良の全生存期間に関連している。従ってCD123を標的化する物質は、本発明の治療による使用のための別の好適な組合せを表す。AML治療における使用に適している抗-CD123物質は、毒素-連結した天然のリガンド(例えば、DT388IL3)、並びにCSL360、CSL362及びMGD006などの抗体(修飾された抗体(DART))を含む。従って本発明の特定の実施態様において、患者は、本発明の抗-CD70抗体(及び任意にNMI)との併用療法の一部として、抗-CD123物質、例えば抗-CD123抗体が投与される。
【0152】
抗-CD70抗体(単剤療法として又はNMI(例えばaza)と一緒に)によるAMLの治療は、他のAML治療薬、例えば、E-セレクチン阻害剤、FMS-様チロシンキナーゼ受容体3(FLT3)阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、BCL-2阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤及びJAK/STAT阻害剤などとの併用療法において、更に有利に組合せることができる。
【0153】
既に説明したように、他のAML治療薬は、シタラビン、アントラサイクリン化合物(例えば、ダウノルビシン、イダルビシン)、及びヒドロキシ尿素を含む。
【0154】
(抗-CD70抗体又はその抗原結合断片)
本明細書記載の本発明の全ての態様において、治療される対象は、抗-CD70抗体又はその抗原結合断片が投与される。本明細書において使用される「抗体」は、関心対象の抗原(例えばヒトCD70)に対する特異的免疫反応活性を有する2本の重鎖及び2本の軽鎖の組合せを有する免疫グロブリンを指す。用語「CD70抗体」又は「抗-CD70抗体」は、ヒトCD70タンパク質に対する免疫特異性を示す抗体を指すよう、本明細書において互換的に使用される。この文脈においてヒトCD70に対する「特異性」は、CD70の種相同体との交差反応性を排除しない。
【0155】
本明細書において使用される「抗体」は、ヒトの任意のクラスの抗体(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE)、並びにそれらのサブクラス/アイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1)を包含している。本明細書において使用される抗体はまた、修飾された抗体も指す。修飾された抗体は、抗体の合成形態を含み、これは天然には存在しないよう変更され、例えば、少なくとも2つの重鎖部分を含むが2つの完全重鎖は含まない抗体(例えば、ドメイン欠失抗体又はミニボディ);2以上の異なる抗原に又は単独抗原上の異なるエピトープに結合するように変更された、抗体の多重特異性形態(例えば、二重特異性、三重特異性など);scFv分子及び同類のものに連結された重鎖分子がある。加えて用語「修飾された抗体」は、抗体の多価形態を含む(例えば、同じ抗原の3以上のコピーに結合する三価、四価などの抗体)。
【0156】
本明細書記載の抗体は、例えば1以上の抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性貪食(ADCP)などの、抗体エフェクター機能を持つことができる。
【0157】
本発明の全ての態様による使用に適しているCD70抗体は、WO2012123586(引用により本明細書中に組み込まれている)に説明されたARGX-110、及びSGN-70(WO2006113909、及びMcEarChernらの文献、Clin Cancer Res 2008;14(23) p7763、両方共引用により本明細書中に組み込まれている)を含む。
【0158】
本発明の全ての態様による使用に適したCD70抗体はまた、抗体薬物複合体(ADC)であってよい。ADCは、例えば、アウリスタチン及びマイタンシン又は他の細胞毒性物質などの活性物質に付着された抗体である。特定のADCは、抗体ブロッキング及び/又はエフェクター機能(例えば、ADCC、CDC、ADCP)を維持する一方で、複合された活性物質を標的(例えばCD70)を発現している細胞へ送達する。抗-CD70 ADCの例は、ボルセツズマブマフォドチン(vorsetuzumab mafodotin)(SGN-75としても公知、Seattle Genetics社)、SGN-70A(Seattle Genetics社)、及びMDX-1203/BMS936561(Britsol-Myers Squibb社)があり、これらの各々は本発明に従い使用されてよい。好適な抗-CD70 ADCはまた、その各々が引用により本明細書中に組み込まれているWO2008074004及びWO2004073656においても説明される。
【0159】
「抗原結合断片」とは、CD70への結合特異性を維持している、抗体のポリペプチド断片を指し、且つ以下を含む:抗体軽鎖可変ドメイン(VL);抗体重鎖可変ドメイン;単鎖可変領域断片又は一本鎖抗体(scFv);Fab断片;F(ab’)2断片;Fd断片:Fv断片:1アームの(一価の)抗体;ダイアボディ;トリアボディ;テトラボディ;又は、そのような抗原結合断片を含む任意の抗原結合分子(例えばキメラ抗原受容体)、又はそのような抗原結合断片の組合せ、集成もしくは複合により形成された任意の抗原結合分子。断片は、例えば、無傷の又は完全な抗体又は抗体鎖の化学的又は酵素的処理によるか、或いは組換え手段により、得ることができる。
【0160】
実施例に示したように、CD70抗体ARGX-110によるAML患者の効果的治療は、明らかにされている。ARGX-110は、CD70のその受容体CD27との相互作用を阻害することが示されているIgG1抗-CD70抗体である(Silenceらの文献、MAbs. 2014 Mar-Apr;6(2):523-32、これは引用により本明細書中に組み込まれている)。特にARGX-110は、CD70-誘導したCD27シグナル伝達を阻害することが示されている。CD27シグナル伝達のレベルは、例えば、Rietherらの文献(J. Exp. Med. 2017 Feb;214(2):359-380)に説明された血清可溶性CD27の測定、又はSilenceらの文献(MAbs. 2014 Mar-Apr;6(2):523-32)に説明されたIL-8発現の測定により決定されてよい。理論により結びつけられないが、CD27シグナル伝達の阻害は、Treg細胞の活性化及び/又は増殖を減少すると考えられ、これにより抗-腫瘍エフェクターT細胞の阻害を減少する。
【0161】
従って本発明の全ての態様において、抗-CD70抗体は、CD70のその受容体CD27との相互作用を阻害する抗体であってよい。特定のそのような実施態様において、抗-CD70抗体は、CD70結合についてCD27と競合してよい。特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、CD70-誘導したCD27シグナル伝達を阻害してよい。特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、Tregの活性化及び/又は増殖を阻害してよい。
【0162】
AGRX-110はまた、CD70-発現する腫瘍細胞を枯渇することが明らかにされている。特に、ARGX-110は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)により、CD70-発現する腫瘍細胞を溶解し、並びにCD70-発現している細胞の抗体依存性貪食(ADCP)を増大することが示されている(Silenceらの文献、MAbs. 2014 Mar-Apr;6(2):523-32)。
【0163】
従って特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、CD70-発現する細胞を枯渇する抗体であってよい。特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、CD70-発現する細胞の溶解を誘導してよい。特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、ADCC及び/又はCDC機能性を有してよい。特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、ADCPを誘導してよい。
【0164】
ARGX-110のFc領域は、Potelligent(商標)システムにより脱フコシル化されたFc領域であり、且つARGX-110は、フコシル化された対応物と比べ、増大したADCC機能性を示すとして説明されている(Silenceらの文献、MAbs. 2014 Mar-Apr;6(2):523-32)。従って特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、完全に又は部分的に脱フコシル化されている。
【0165】
特定の実施態様において、CD70抗体は、Lys433、Phe434及びTyr436(EUナンバリングに従う)を含むヒトIgG1由来のFcドメイン、CH3ドメイン又はFc-ヒンジを含む。特定の実施態様において、抗-CD70抗体は更に、Tyr252、Thr254及びGlu256(EUナンバリングに従う)の1以上を含む。これらの位置でのこれらの残基は、抗体の循環時間を延長することが明らかにされている。
【0166】
特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、IgG抗体、好ましくはIgG1抗体である。
【0167】
既に説明され且つ最初に本明細書に提供されるデータを考慮し、ARGX-110以外の抗-CD70抗体、例えば、CD70のCD27との相互作用を阻害し、CD70結合についてCD27と競合し、CD70-誘導したCD27シグナル伝達を阻害し、Treg活性化及び/又は増殖を阻害し、CD70-発現する細胞を枯渇し、CD70-発現する細胞の溶解を誘導し、ADCC、CDC機能性を保持し、並びに/又はADCPを誘導するCD70抗体は、本発明による効果的治療であると予想される。本発明による治療において有用であると予想される代替のCD70抗体、例えば、SGN-70並びに各々が引用により本明細書中に組み込まれているWO2006044643及びWO2007038637に説明されているものなどが、当該技術分野において公知である。ADCのSGN-75、SGN-70A及びMDX-1203/BMS936561などの、修飾されたCD70抗体は、本発明における治療において有効であると予想される抗-CD70抗体の更なる例である。
【0168】
特定の実施態様の非限定的実施態様において、抗-CD70抗体は、ARGX-110のCDR配列を含んでよい。すなわち、特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ここでVH及びVLドメインは、以下のCDR(Kabat定義による)を含む:
配列番号:3
【化7】
を含む又はこれからなるHCDR3
配列番号:2
【化8】
を含む又はこれからなるHCDR2
配列番号:1
【化9】
を含む又はこれからなるHCDR1
配列番号:7
【化10】
を含む又はこれからなるLCDR3
配列番号:6
【化11】
を含む又はこれからなるLCDR2、及び
配列番号:5
【化12】
を含む又はこれからなるLCDR1。
【0169】
特定の実施態様において、抗-CD70抗体のVH及び/又はVLドメインは、ARGX-110のVH及び/又はVLドメイン(VH:配列番号:4;VL:配列番号:8)と、各々、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を示す。抗体又は抗原結合断片のドメインが参照配列との特定の割合の配列同一性により規定されている実施態様に関して、VH及び/又はVLドメインは、参照配列中に存在するものと同一のCDR配列を維持してよく、その結果その変動は、フレームワーク領域内のみに存在する。特定の実施態様において、抗-CD70抗体は、ARGX-110である。
【0170】
表2
【表2】
【実施例
【0171】
(実施例)
(実施例1:マウスへ移植されたヒトAML LSCに対する抗-CD70抗体の単剤療法又はデシタビンとの併用の効果)
NSGマウスに、5×106個のCD45dimSSClo ヒトAML細胞を移植した。生着の32日後(PB中生着:14.45±0.95%)、NSGマウスを、ビヒクル(Veh)、aCD70 mAb(aCD70、ARGX-110、10mg/kg)、デシタビン(D、1.5mg/kg/日)又は組合せ(aCD70/D)による5日間の治療に無作為化し、且つ骨髄、脾臓及び血液を分析した。
【0172】
抗-CD70及びデシタビンの単独は両方共、骨髄、脾臓及び血液中の総生着の減少を生じた(図1)。抗-CD70とデシタビンの組合せは、いずれかの療法単独と比べ、生着されたヒト細胞の割合の減少の増強を生じた(図1)。
【0173】
併用療法はまた、デシタビン又は抗-CD70のいずれか単独よりもよりよく、骨髄におけるCD34+ AML細胞(前駆細胞のマーカー)を減少した(図1)。加えて抗-CD70治療は、CD34+CD38-細胞及びCD34+CD45-細胞の両方の数を減少し、両方の細胞集団は、白血病幹細胞(LSC)のマーカーであると考えられる。デシタビン単独はLSC数の減少に最小の効果を示したが、抗-CD70とデシタビンの組合せは、大きく増強されたLSC減少を生じた(図1)。
【0174】
(実施例2:低メチル化剤(HMA)と組合せた抗-CD70抗体によるAMLコロニー形成の増強された減少と相関する、エクスビボ及びインビボにおける初代AML幹細胞上のCD70発現をアップレギュレートするHMA)
ヌクレオシド代謝阻害剤(NMI)、例えば低メチル化剤デシタビンと組合せた抗-CD70抗体治療は、マウスにおけるAML芽球生着の減少の増強を生じるという知見を、初代ヒトAML LSCにおいて更に調べた。
【0175】
NMI治療(例えば、アザシチジン又はデシタビンなどのHMA)の、AML LSCによるCD70発現に対する効果を調べた。CD34+CD38-細胞を、AML患者から単離し、0.5mMデシタビン又はビヒクルの存在下で培養した。
【0176】
図2Aのデータは、AML LSC細胞によるCD70発現は、細胞がデシタビンと共に培養される場合に、増加されることを明らかにしている。デシタビンに反応したCD70発現におけるこの増加は、全ての疾患リスクカテゴリー(良好、中間及び有害)にわたるAML患者から採取した細胞において、タンパク質又は転写レベルを測定した場合に、生じる(図2C及び2D)。
【0177】
重大なことに、低メチル化剤(HMA)に反応したCD70発現の増加が、インビボにおいて認められた。AMLと新たに診断され且つデシタビン又はアザシチジンにより治療された患者から採取したLSCは、診断時の発現レベルと比べ、HMA治療に反応したCD70発現の増加を示した(図2E及び2F)。
【0178】
HMAに反応した増加したCD70の発現を考慮し、AML LSCに対する抗-CD70抗体/デシタビンの組合せの効果を、エクスビボにおいて調べた。
【0179】
図3Aは、抗-CD70及びデシタビンの単剤療法は両方共、コロニー播種アッセイにおいて、AML LSCにより形成されるコロニーの数を減少することを示している。注目すべきことに、抗-CD70とデシタビンの組合せは、いずれかの単剤療法単独よりも大きく、コロニー形成を減少した。この効果は、全ての疾患リスクカテゴリー(良好(P6)、中間(P8)及び有害(p11))にわたり認められた。AML LSCの再播種能も、減少された(図3C)。
【0180】
重大なことに、抗-CD70抗体は、正常幹細胞には有害な影響を及ぼさなかった。図3D-Fは、単剤療法としての抗-CD70は、ビヒクル単独と比べ、正常細胞に対し効果がないこと、及び併用した場合、単独使用したデシタビンと比べて効果がないことを示している。
【0181】
これらのデータは、AMLのための単剤療法としての抗-CD70の使用、並びに例えばアザシチジン又はデシタビンなどのHMAのような、ヌクレオシド代謝阻害剤(NMI)との組合せを裏付けている。
【0182】
(実施例3:過去未治療のAML及び高リスクMDSを伴う対象における、標準投与量AZAと組合せた抗-CD70抗体ARGX-110の第I/II相臨床試験)
第I/II相臨床試験を、AZA治療に適格である、過去未治療のAML及び高リスクMDSを伴う対象において、標準投与量のAZAと組合せた、ARGX-110の有効性/臨床上の恩恵及び安全性及び忍容性を調べるために、開始した。
【0183】
(治験レジメンプロトコール及び試料アッセイ)
本治験は、スクリーニング相(-35日目から-14日目の間)、ARGX-110の負荷投与量(-14日目)、及びその間に対象が被験薬投与のために治験施設に来院したオープンラベル治療相(疾患進行までの-14日目)、並びに最終ARGX-110治療後7日以内に実行した治療終了時(EOT)評価を含んだ。追加の経過観察評価は、EOT日以降30日及び60日(±7日)に計画した。60日目の経過観察来院はまた、治験終了時(EOS)来院であった。
【0184】
標準強化化学療法に適合しなかった、芽球数>20%である、組織学的に確認された(骨髄生検)AML又は高リスク骨髄異形成症候群(MDS)と新たに診断された、年齢が少なくとも18歳の男性及び女性対象が、本治験への登録に適格であった。対象は、平均余命3ヶ月以上、及びスクリーニング時に米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)の活動度0~2を有することを必要とした。対象は、ARGX-110の負荷投与量を-14日目に受け取り、その後AZAの標準投与量と組合せたARGX-110の投与を受けた。用量制限毒性を決定するために、標準投与量のAZAと組合せて、ARGX-110の投与量を、2週間毎に静脈内に投与した(負荷投与量を-14日目に及び更なる投与量を3日目及び17日目に)(図4参照)。各コホートの第一の患者は、第二の患者が含まれる前の7日目までモニタリングした。この時間枠内に著しい有害事象が生じなかったので、各コホートの他の患者を登録した。第I相の第一のコホートのARGX-110投与量レベルは、1mg/kg体重であった。
【0185】
本治験の全ての対象は、-14日目にARGX-110の単回負荷投与量を受け取り、同じ投与量レベルを週2回の投与量として受け取った。本治験の第I相の対象は、以下の治療の一つを受け取った:
・コホート1:1mg/kg体重、IV、28日サイクルの3日目及び17日目、
・コホート2:3mg/kg体重、IV、28日サイクルの3日目及び17日目、
・コホート3:10mg/kg体重、IV、28日サイクルの3日目及び17日目、
・コホート4:20mg/kg体重、IV、28日サイクルの3日目及び17日目。
【0186】
注入は、10mL/時の速度で開始した。その後この速度は、患者による薬物の忍容性に応じて増加した。
【0187】
治療に対する臨床反応を、表3に従い分類した:
表3
【表3】
*全ての判定基準が満たされることを必要とする;骨髄評価は、スピクラ(spicule)による吸引液中の200個の有核細胞のカウントを基にしなければならない;曖昧な場合は、5~7日後に試験を繰り返すことを考慮する;フローサイトメトリー評価は、持続性白血病と正常骨髄再生の間の識別を助けることができる;骨髄生検は、吸引不能症例において、又はスピクラが得られない場合に行う;最小反応期間は不必要である。
【0188】
ARGX-110の血清濃度は、バリデートされた酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法を用いて分析した。以下の薬物動態パラメータを評価した:
・Cmax:最大測定濃度;Ctrough:トラフ濃度;AUC∞:ゼロから無限までの血清濃度-時間曲線下面積;AUCtau:投薬間隔間の血清濃度-時間曲線下面積;Vd:みかけの分布容積;CL:IV投与後の薬物の全身クリアランス;t1/2:半減期。
【0189】
本治験における全ての対象に関して、抗-薬物抗体(ADA)を評価するために、静脈血試料を採血した。ARGX-110の免疫原性は、ADAのいずれかのクラスを検出することができるELISA法を用い、血清試料中で評価した。反応性試料は、特異性の検証のために確認アッセイにおいて分析した。
【0190】
バイオマーカーの評価は、図5に特定したような時点で収集した骨髄吸引液及び/又は全血において実行することができる。薬力学は、以下を含む一連のバイオマーカーを測定することにより、試験した:
分子遺伝学:再発するAMLゲノム異常を同定するため、並びに疾患及び標的病理に対する治療効果のゲノムDNA分析のための、CD70及びCD11aプロモーターメチル化の特徴決定。
遺伝子発現:CD70、疾患及び薬物効果マーカーのmRNAレベルの特徴決定。
フローサイトメトリー(FACS):CD70(例えば、ARGX-110治療前、再発後)及びCD27発現、及び薬物効果(例えば、芽球、NK細胞及びT細胞)の追加の特徴決定、並びに微小残存病変(MRD)分析。
血清タンパク質定量:sCD27、疾患及び薬物効果マーカー(例えばIL-8)の追加の特徴決定。注入-関連反応が、より早期のARGX-110治験における反応よりもより重篤である場合、炎症性サイトカイン分析を評価することができる。
【0191】
幹細胞性決定は、血液又は骨髄から精製した単核細胞上で行った。収集した細胞の数に応じて、測定は、Numb染色(非対称/対称分裂の比を決定するため)、細胞試験及びインビボ試験(例えばCFUメチルセルロースコロニーアッセイ又は患者の単核細胞を注射したNSGマウスの生存試験などにより、幹細胞能を評価するため)又は遺伝子発現分析を含んだ。
【0192】
微小残存病変(MRD)評価は、図5に特定した時点で収集した骨髄吸引液及び/又は全血において行った。フローサイトメトリーは、MRD分析の主要方法として利用した。MRD評価及びAML亜型決定に適したフローサイトメトリーマーカーとして、CD16、CD13、CD34、CD117、CD11b、CD10、HLA-DR、CD45、CD35、CD64、IREM-2、CD36、CD105、CD14、CD33、CD71、CD36、CD105、CD33、CD71、cTdT、CD56、CD7、CD19、cMPO、cラクトフェリン、cリゾチームが挙げられる。追加のパネルは、CD70、CD27発現、並びに幹細胞能又は骨髄分化の指標としてのマーカー:CD27、CD70、CD34、CD117、CD11b、HLA-DR、CD45、CD38、及びCD123に焦点を合わせ、本治験の一部として使用した。利用可能であるならば、フローサイトメトリー結果を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試験などの他の分子アプローチと比較した。
【0193】
骨髄吸引液又は全血を、NK細胞、及びT細胞、並びに他の可能性のある免疫細胞亜集団の分析を含む、免疫表現型検査(フローサイトメトリー又は質量細胞数測定により実行される)のために利用することができる。
【0194】
(結果)
(全般的臨床結果)
重大なことに、本治験に募集された患者の90%より多くは、抗-CD70療法に奏効した(奏効を評価するために十分な時間治療された患者は、11名中10名)。
【0195】
表4は、奏効を評価するために、本治験において十分な時間を費やしたこれらの患者の最良の奏効を示す。1mg/kg、3mg/kg及び10mg/kgコホートの各々にわたり、各コホートの患者3名中2名は、完全寛解を示した。コホート1において、第3の患者は、不完全な血液学的回復を伴う完全寛解に達した。
【0196】
aza単独により認められたおよそ25%の奏功率とは対照的に、90%を上回る奏効レベルが明確に認められる(Dombretらの文献、Blood 2015(Blood. 2015;126(3):291-299、これは引用により本明細書中に組み込まれている)。
【0197】
表4
【表4】
【0198】
注目すべきは、形態学的無白血病状態(MLFS)には、ARGX-110単独による単剤療法後に到達した。コホート2の募集時に20%骨髄芽球を示した71歳の患者は、到達し、且つコホート3の募集時に>50%骨髄芽球を示した74歳の患者は、時点C1D1までに-すなわち、ARGX-110の負荷投与量後及び初回aza投与量前に-芽球が存在しないことで特徴付けられるMLFSに到達した。
【0199】
これは、抗-CD70抗体療法単独は、AMLにとって効果的治療であり得ることを明確に明らかにしている。
【0200】
更に完全寛解も、ARGX-110/aza療法の併用により誘導された。コホート1-4の各々にわたる6名の患者は、併用療法後に完全寛解に達し、更なる2名の患者は、併用療法後CRiに達した。
【0201】
更に重要であるのは、この併用治療は、1名の患者が骨髄移植へ進むことを可能にしたという事実である。このことは、多くのAML患者、特に高齢患者は、移植判定基準に合致することが必要とされる従来の療法の侵襲的性質のために典型的には移植を受けることができないという事実のために、意義深い。この併用治療は、75歳のAML患者が移植に進むことを可能にするのに十分に効果的であったという事実は、この併用療法の従来の治療に勝る利点を示している。
【0202】
(単剤及び併用療法は骨髄及び末梢血中の芽球を減少する)
各患者に関して、骨髄及び末梢血中の芽球の数を、図5に概略したように、様々な時点で評価した。
【0203】
骨髄芽球を評価するために、様々な時点で採取した骨髄吸引液を分析した。FACS選別した単球(単核細胞(CD45dim)は、アネキシンV並びにCD19及びCD4/CD8の抗体を使用し、ダブレット、死滅細胞及びリンパ球を排除することにより、選択的に選別した)を使用するメチルセルロースコロニーアッセイを使用し、骨髄中のLSC数を評価した。加えて骨髄芽球割合はまた、細胞形態及びフローサイトメトリー分析により評価した。
【0204】
各患者に関する骨髄芽球の結果は、図6に照合し示した。これらのデータは、患者の大半に関して、骨髄芽球割合は、C1D1まで-すなわちARGX-110単剤療法後-に、少なくとも部分的に又は完全に減少したことを示している。
【0205】
更に、一旦aza療法が始まったならば(C1D1から)、骨髄芽球割合は、その治療の残りについて、更に減少され、低レベルを維持する。これは、細胞形態又はフローベースの芽球アッセイが使用されるかどうかとは無関係のケースである。
【0206】
微小残存病変(MRD)判定基準に従い測定された骨髄芽球は、ARGX-110単剤療法並びにARGX-110及びaza併用療法の両方により、著しく減少されることが示されたことは、MRD評価の臨床的重要性を考えると、特に注目に値する。2名の患者(コホート1の1名及びコホート2の1名)は、MRD状態に達した。
【0207】
同様の結果は、末梢血芽球割合が評価される場合にも認められる(図7)。患者の末梢血データの変化は、外部要因に対しより影響を受けやすく、従ってそのデータにおけるより大きい変動に繋がる。それにもかかわらず、末梢血(PB)結果は、単剤及び併用療法後に、骨髄において観察された変化に対応している(図7)。
【0208】
図7は、骨髄由来のデータ同様、PB芽球割合は概して、ARGX-110単剤療法後(すなわち、より早期のデータ点と比べC1D1で)減少され、その後併用療法下(C1D1以降)では更に減少されることを示している。再度、この効果は、細胞形態又はフローベースの芽球アッセイが使用されるかどうかとは無関係に認められ、且つMRD評価判定基準を使用する場合に、確かである。
【0209】
従って、抗-CD70抗体単剤療法及び抗-CD70にazaなどのHMAを加えた併用は各々、骨髄及び末梢血中の芽球割合を減少することができ、且つ併用療法の場合、この減少した割合を、数多くの時点にわたり維持する。
【0210】
(単剤及び併用療法はLSCの骨髄分化を増加する)
AMLにおける白血病幹細胞(LSC)の持続性は、AML患者の治療の成功に関する重大な障害を表している。LSCは、AMLにおける疾患再発の原因であり、それらの数は、対称細胞分裂のプロセス-すなわち、各LSCは対称的に分裂し、2個の娘LSCを作製するプロセス-を通じて維持される。そのような対称分裂は、AML増悪及び患者再発の駆動因子である。
【0211】
LSCに関する代りの細胞運命は、骨髄分化を受けることである。このプロセスにおいて、LSCは、非対称分裂を受け、骨髄分化した娘細胞を、娘幹細胞と共に作製する。
【0212】
そのような非対称分裂は、患者におけるLSCのプールを大きく減少し、且つ増加した非対称分裂は、患者による改善された反応の指標である。
【0213】
LSCの集団における非対称分裂のレベルは、Numbタンパク質などの細胞運命決定因子のレベルを測定することにより、決定することができる(Rietherらの文献、J Exp Med. 2017 Feb; 214(2): 359-380、これは引用により本明細書中に組み込まれている)。増加したNumb発現は、非対称分裂の増加の指標であり、従って骨髄分化の増加及び減少したLSC集団の指標である。
【0214】
図8は、Numb発現は、ARGX-110単剤療法後(C1D1)増加し、次に併用ARGX-110/AZA療法下で更に増加することを示し、これは両方の療法が、LSCの非対称分裂及び骨髄分化を増加することを示している。
【0215】
これらのデータは、抗-CD70単剤療法及びaza併用療法の投与量は、CD70-CD27経路を修飾する(これによりT細胞反応性を促進する)ことにより、患者の芽球カウントを減少するのみではなく、抗-CD70抗体はまた、LSC分化を促進することも示している。この分化は、幹細胞集団を減少し、従って本治験患者において観察された芽球の減少に更に寄与する。
【0216】
(単剤療法及び併用療法は両方共、エクスビボにおけるコロニー形成を減少する)
患者におけるLSC集団に対する単剤及び併用療法の影響を更に調べるために、エクスビボにおいてFACS選別された単球を使用するメチルセルロースコロニーアッセイを行った。単核細胞(CD45dim)はアネキシンV並びにCD19及びCD4/CD8の抗体を使用し、ダブレット、死滅細胞及びリンパ球を排除することにより、選択的に選別し、且つメチルセルロース上に14日間連続的に播種した。
【0217】
図9A-Eは、治療前(SCR)及びARGX-110による単剤療法後(C1D1に対応する時点0)の、1ウェルあたりのコロニー形成に関する代表的データ(従ってLSC数)を提供する。
【0218】
図9Fは、治療前及びARGX-110による単剤療法後(すなわちC1D1での)及び併用療法後(C4D1)の、1ウェルあたりのコロニー形成に関する代表的データ(従ってLSC数)を提供する。これらのデータは、LSC頻度の、ベースラインレベルと比較して、およそ24倍の減少に対応している。
【0219】
加えて、行った療法はLSC数を減少したのみではなく、1コロニーあたりの細胞数も減少し、このことはLSCの増殖能は、療法後も減少する(データは示さず)ことも指摘している。
【0220】
再度、これらのデータは、循環LSCレベルは、ARGX-110による単剤療法後も減少し、その後ARGX-110とazaの併用後も更に減少していることを明らかにしている。その上、これらのLSCの増殖能もまた、療法により減少される。
【0221】
(単剤療法及び併用療法は両方共可溶性CD27レベルを減少する)
可溶性CD27(sCD27)は、CD70/CD27相互作用の程度に関するバイオマーカーとして働くことができる。CD70/CD27-媒介性シグナル伝達は、異常な細胞分裂を促進し、且つ高レベルの血清sCD27は、AML患者の予後不良と相関すると考えられる。加えて、sCD27は、骨髄中の芽球細胞の割合に相関し、更には患者の芽球の幹細胞性のマーカーとして働き、増加したsCD27は、幹細胞性の増加したレベルを示すと考えられる(Rietherらの文献、J. Exp. Med. 2017 Feb;214(2):359-380)。
【0222】
CD27/CD70相互作用に対する抗-CD70単剤療法及び併用療法の効果を評価し、並びに芽球の割合及び幹細胞性に対する効果を更に調べるために、患者の可溶性CD27レベルも測定した。
【0223】
図10は、治療サイクル時の患者に関する代表的sCD27レベルを示す。ARGX-110による単剤療法(C1D1)は、治療前(「負荷」)と比べ、sCD27レベルを減少し、且つこの減少は、併用療法時も減少し続け、その結果これは健常患者の代表的レベルに達する。
【0224】
これらのデータは、他のアッセイからの結果と一致し、単剤及び併用療法は両方共、CD27/CD70相互作用を阻害し、且つ芽球の割合及び幹細胞性を減少することを明らかにしている。
【0225】
加えて、図10は、sCD27レベルは、治療終了時(EOT)以降に上昇することを示している。これはおそらく、一旦抗-CD70抗体が除去された場合の、CD27/CD70相互作用の増加により駆動され、且つsCD27を、患者における抗-CD70薬エンゲージメントの効果的マーカーとして使用することができることを示している。
【0226】
(ARGX-110療法は毒性を増加しない)
治療的レジメンの適合性における重要な因子は、患者に対する関連のある毒性である。有利なことに、抗-CD70抗体ARGX-110は、単剤療法として、又はazaと併用使用した場合のいずれにおいても、毒性の何らかの観察された増加を生じなかった。
【0227】
1mg/kg、3mg/kg、及び10mg/kgコホートの各々に関して、有害事象及び血液学的毒性は、通常のアザシチジン安全性プロファイルを反映するものと異ならない。併用治療薬の追加は毒性の増加を生じることが多いので、このことは特に驚くべき且つ有利な点である。しかし、ARGX-110/aza併用により、毒性の増加は認められず、且つ有効性の有意な増加が誘導された。
【0228】
表5
【表5】
【0229】
(薬物動態(PK)データ)
ARGX-110の血清濃度は、バリデートされた酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法を用いて分析した。図11は、10mg/kgコホートに関する個々の患者PKプロットを提供する。PKプロットは、ARGX-110のサイクル1(D-14プレ-投与量からサイクル1 D1プレ-投与量まで)に関するデータを表す。
【0230】
コホート全体で、ARGX-110の薬物動態は、試験した投与量範囲にわたりCmax及びAUCは投与量に比例し、及び10mg/kgでの半減期およそ9.2日を示した。
【0231】
骨髄吸引液中のARGX-110の濃度を、限定された試料において測定し、且つマッチする血漿試料と比較した。骨髄吸引液中のARGX-110濃度は、投与量コホート3mg/kg及び10mg/kgにおける、各々、患者1001005及び1001007に関して、血漿レベルと同等であった。
【0232】
表6
【表6】
【0233】
(患者特徴決定及び症例研究)
表7には、各コホートに募集された新たに診断されたAML患者のまとめを提供する:
表7
【表7】
【0234】
(以下は本治験に募集した個々の患者の症例研究である)
患者1001001は、80歳女性であり、乳癌のアジュバント化学療法後5年で療法に関連したAMLを罹患し、芽球カウントは、骨髄(BM)中90%及び末梢血(PB)中80%であり(39.5 G/L)、FAB亜型:M4骨髄単球性及びWHO 2016分類:暫定病型(Provisional subentity):変異したRUNX1を伴うAMLであった。患者は、1mg/kg療法アームのプロトコールに従い治療した。
【0235】
1日目に採取した骨髄吸引液を、ARGX-110負荷投与量の投与前に採取した骨髄吸引液と比較した。FACS選別した単球(単核細胞(CD45dim)はアネキシンV並びにCD19及びCD4/CD8の抗体を使用し、ダブレット、死滅細胞及びリンパ球を排除することにより、選択的に選別した)を使用するメチルセルロースコロニーアッセイを使用し、骨髄中のLSC数を評価した。
【0236】
これらの結果は、ARGX-110の単回投与量は、骨髄中のLSCの数を140,000分の1に減少したことを示した(ELDA:極度限界希釈分析により幹細胞頻度を計算(http://bioinf.wehi.edu.au;Hu及びSmythの文献、(2009) ELDA: Journal of Immunological Methods 347, 70-78)。
【0237】
加えて、芽球細胞集団の細胞形態及びフローサイトメトリー分析は、ARGX-110の単回投与量(負荷投与量)後の、骨髄中及び末梢血中の減少を明らかにしている。図5のスケジュールに従うAZAとの併用での継続治療後、BM芽球は、C3D1(すなわち、治療の2サイクル後)までに、2.8%まで減少した(フローサイトメトリーによる)。従ってこの時点でのこの患者の臨床奏効評価は、不完全な回復を伴う完全寛解(CRi)であった。微小残存病変分析(MRD)は、0.2%であると決定された。骨髄吸引液による及びMRD評価によるCRi状態は、少なくともC5D1まで、維持された。末梢血において、芽球は、最初の完全治療サイクル(C2D1)後までにクリアリングされた。C3D1までに、末梢血に関するMRDは0.3%であり、且つC4D1までに、末梢血芽球割合は、フローサイトメトリーにより0.8%芽球及び細胞形態により0%であった。C4D17に、末梢血中の芽球細胞数は、MRD-陰性とクラス分けするのに十分な程低かった。
【0238】
患者1001002は、骨髄異形成症に関連した変化を伴うAML(WHO分類:FAB分類に従いM1/M2 AML)の、75歳の男性であった。この患者は、治療前に40%骨髄芽球を示した。患者は、1mg/kg療法アームのプロトコールに従い治療した。
【0239】
1日目に採取した骨髄吸引液を、ARGX-110負荷投与量の投与前に採取した骨髄吸引液と比較し、且つ単球上についてのメチルセルロースコロニーアッセイを使用し、評価した。患者1001001と同様に、ARGX-110単剤療法の単回投与量は、骨髄中のLSC数を減少した。患者1001002において、LSCは、ARGX-110の負荷投与量後2分の1に減少した。コロニー形成は、全ての有意義な連続希釈濃度で50%を上回るまで減少し、且つ1コロニーあたりの細胞数も減少した。
【0240】
ARGX-110の単回投与量後、骨髄中の総芽球の割合は、フローサイトメトリーにより評価した場合に、減少したように見えたが、細胞形態により評価した場合は増加が認められた。
【0241】
患者1001001同様、末梢血中の全体的芽球の割合は、ARGX-110負荷投与量後下落し(C1D1、対、スクリーニング)、サイクル1の期間は減少し続け、サイクル1の終了時(C2D1)までにゼロに近づいた。C2D17までに、末梢血芽球割合は、フローサイトメトリーにより0.8%及び細胞形態により0%であった。3サイクル後(C3D17)、末梢血カウントは、回復し(Hb 10.2 g/dL;血小板128 G/L;絶対好中球カウント(ANC)0.97G/L)、且つC4D1での骨髄分析は、CRiを示した。
【0242】
患者1001003は、WHO分類により骨髄異形成症に関連した変化を伴うAML(FAC分類によりAML-M2)の、77歳の男性であり、24%骨髄芽球を示した。1サイクル(C2D1)までに、この患者は、末梢芽球を示さず、且つ短期の血小板減少及びリンパ球減少(血小板98 G/L;ANC 0.38 G/L;Hb 9.2 g/dL)の後、回復した。C1D1時に芽球の割合は、安定していた。
【0243】
これらの患者からのデータは、抗-CD70抗体(ARGX-110)による単剤療法での治療は、AML患者の骨髄中の白血病幹細胞の数を減少し、且つ骨髄中及び末梢血中の総芽球の割合を低下することができることを明らかにしている。抗-CD70抗体(ARGX-110)とヌクレオシド代謝阻害剤(アザシチジン)の併用療法は、骨髄中及び末梢血中の総芽球の割合を、アザシチジン療法単独によっては典型的には認められない転帰である、患者を微小残存病変がないと分類することができる程度にまで、更に低下する。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
対象において急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)を治療する方法であって、対象へ、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を投与することを含む、前記方法。
(態様2)
AML又はMDSの対象の骨髄及び/又は末梢血中の芽球の割合を減少する方法であって、対象へ、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の治療有効量を投与することを含む、前記方法。
(態様3)
造血幹細胞移植(HSCT)のためにAML又はMDSの対象を準備する方法であって、対象へ、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の1以上の投与量を投与することを含む、前記方法。
(態様4)
前記方法が、対象の骨髄中の芽球の割合を減少する、態様1~3のいずれか一項記載の方法。
(態様5)
前記方法が、対象の末梢血中の芽球の割合を減少する、態様1~4のいずれか一項記載の方法。
(態様6)
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、1回の投与量あたり0.1mg/kg~25mg/kgの範囲の投与量で投与される、態様1~5のいずれか一項記載の方法。
(態様7)
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、1回の投与量あたり1mg/kg~20mg/kgの範囲の投与量で投与される、態様1~6のいずれか一項記載の方法。
(態様8)
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、10mg/kgの投与量で投与される、態様1~7のいずれか一項記載の方法。
(態様9)
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の各投与量が、10~20日、任意に12~18日、任意に14~17日隔てられている、態様1~8のいずれか一項記載の方法。
(態様10)
前記対象へヌクレオシド代謝阻害剤を投与することを更に含む、態様1~9のいずれか一項記載の方法。
(態様11)
前記ヌクレオシド代謝阻害剤が、低メチル化剤、任意にアザシチジン又はデシタビンである、態様10記載の方法。
(態様12)
前記ヌクレオシド代謝阻害剤が、アザシチジンである、態様10又は11記載の方法。
(態様13)
前記ヌクレオシド代謝阻害剤が、1日あたり50~100mg/m 2 の範囲の投与量で投与される、態様10~12のいずれか一項記載の方法。
(態様14)
前記ヌクレオシド代謝阻害剤が、5~9日の毎日投与の投薬期間で投与される、態様10~13のいずれか一項記載の方法。
(態様15)
前記ヌクレオシド代謝阻害剤が、反復投薬期間の投薬レジメンに従い投与され、ここで1回の投薬期間の最後及び次の投薬期間の最初が、18~25日隔てられている、態様14記載の方法。
(態様16)
前記ヌクレオシド代謝阻害剤の初回投与量が、抗-CD70抗体又はその抗原結合断片の初回投与量後、7~21日投与される、態様10~15のいずれか一項記載の方法。
(態様17)
前記ヌクレオシド代謝阻害剤の1日量の1つが、抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片の投与量と同じ日に投与される、態様10~16のいずれか一項記載の方法。
(態様18)
前記方法が:
i)態様10~17のいずれか一項記載の抗-CD70抗体及びヌクレオシド代謝阻害剤の投与を含む、第一段階、並びに
ii)態様1~9のいずれか一項記載の抗-CD70抗体の投与、及び第一段階で投与されるヌクレオシド代謝阻害剤の投与量よりもより少ない投与量のヌクレオシド代謝阻害剤の投与を含む、第二段階:
を含む、態様10~17のいずれか一項記載の方法。
(態様19)
前記対象が、治療前の標準強化化学療法に適格ではない、態様1~18のいずれか一項記載の方法。
(態様20)
前記対象において造血幹細胞移植を実行する工程を更に含む、態様1~19のいずれか一項記載の方法。
(態様21)
前記対象が、60歳以上、任意に75歳以上である、態様1~20のいずれか一項記載の方法。
(態様22)
前記対象へ、抗-CD33抗体、抗-CD123抗体、E-セレクチン阻害剤、FLT3阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、BCL-2阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤及びJAK/STAT阻害剤から選択された1種以上の活性物質を投与することを更に含む、態様1~21のいずれか一項記載の方法。
(態様23)
前記対象の芽球数をモニタリングすることを更に含む、態様1~22のいずれか一項記載の方法。
(態様24)
部分奏効(PR)、不完全血液学的回復を伴う完全奏効(CRi)、又は完全奏効(CR)を含む、態様1~23のいずれか一項記載の方法。
(態様25)
陰性である微小残存病変状態を誘導する、態様1~24のいずれか一項記載の方法。
(態様26)
前記対象が適格であるための標準治療物質に対し生存を増加する、態様1~25のいずれか一項記載の方法。
(態様27)
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、CD70-CD27結合を阻害する、態様1~26のいずれか一項記載の方法。
(態様28)
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、CD70-発現細胞を除去する、態様1~27のいずれか一項記載の方法。
(態様29)
前記抗-CD70抗体が、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ここでこのVH及びVLドメインが、以下のCDR:
配列番号:3
(化1)
を含む又はこれからなるHCDR3
配列番号:2
(化2)
を含む又はこれからなるHCDR2
配列番号:1
(化3)
を含む又はこれからなるHCDR1
配列番号:7
(化4)
を含む又はこれからなるLCDR3
配列番号:6
(化5)
を含む又はこれからなるLCDR2、及び
配列番号:5
(化6)
を含む又はこれからなるLCDR1:
を含む、態様1~28のいずれか一項記載の方法。
(態様30)
前記抗-CD70抗体又は抗原-結合断片が、配列番号:4と少なくとも80%同一であるVHドメインを含み、及び/又は配列番号:8と少なくとも80%同一であるVLドメインを含む、態様1~29のいずれか一項記載の方法。
(態様31)
前記抗-CD70抗体が、IgG1抗体である、態様1~30のいずれか一項記載の方法。
(態様32)
前記抗-CD70抗体が、ARGX-110である、態様1~31のいずれか一項記載の方法。
(態様33)
態様1~32のいずれか一項記載の方法において使用するための、抗-CD70抗体。
(態様34)
態様1~33のいずれか一項記載の方法において使用するための医薬組成物であって、ここでこの医薬組成物が、抗-CD70抗体及び医薬として許容し得る賦形剤又は担体を含有する、前記医薬組成物。
(態様35)
AMLの治療において使用するための抗-CD70抗体又はその抗原結合断片であって、ここでこの抗体又は抗原結合断片が、低メチル化剤、好ましくはアザシチジンと組合せて投与される、前記抗-CD70抗体又はその抗原結合断片。
(態様36)
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、CD70-CD27結合を阻害する、態様33~35のいずれか一項記載の使用のための抗体又は医薬組成物。
(態様37)
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、CD70-発現細胞を枯渇する、態様33~36のいずれか一項記載の使用のための抗体又は医薬組成物。
(態様38)
前記抗-CD70抗体又は抗原-結合断片が、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ここでこのVH及びVLドメインが、以下のCDR:
配列番号:3
(化7)
を含む又はこれからなるHCDR3
配列番号:2
(化8)
を含む又はこれからなるHCDR2
配列番号:1
(化9)
を含む又はこれからなるHCDR1
配列番号:7
(化10)
を含む又はこれからなるLCDR3
配列番号:6
(化11)
を含む又はこれからなるLCDR2、及び
配列番号:5
(化12)
を含む又はこれからなるLCDR1:
を含む、態様33~37のいずれか一項記載の使用のための抗体又は医薬組成物。
(態様39)
前記抗-CD70抗体又は抗原-結合断片が、配列番号:4と少なくとも80%同一であるVHドメインを含み、及び/又は配列番号:8と少なくとも80%同一であるVLドメインを含む、態様33~38のいずれか一項記載の使用のための抗体又は医薬組成物。
(態様40)
前記抗-CD70抗体が、IgG1抗体である、態様33~39のいずれか一項記載の使用のための抗体又は医薬組成物。
(態様41)
前記抗-CD70抗体が、ARGX-110である、態様33~40のいずれか一項記載の使用のための抗体又は医薬組成物。
(態様42)
抗-CD70抗体又はその抗原結合断片及びNMIを含む、組合せ。
(態様43)
前記NMIが、低メチル化剤である、態様42記載の組合せ。
(態様44)
前記低メチル化剤が、アザシチジンである、態様43記載の組合せ。
(態様45)
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、CD70-CD27結合を阻害する、態様42~44のいずれか一項記載の組合せ。
(態様46)
前記抗-CD70抗体又はその抗原-結合断片が、CD70-発現細胞を枯渇する、態様42~45のいずれか一項記載の組合せ。
(態様47)
前記抗-CD70抗体が、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ここでこのVH及びVLドメインが、以下のCDR:
配列番号:3
(化13)
を含む又はこれからなるHCDR3
配列番号:2
(化14)
を含む又はこれからなるHCDR2
配列番号:1
(化15)
を含む又はこれからなるHCDR1
配列番号:7
(化16)
を含む又はこれからなるLCDR3
配列番号:6
(化17)
を含む又はこれからなるLCDR2、及び
配列番号:5
(化18)
を含む又はこれからなるLCDR1:
を含む、態様42~46のいずれか一項記載の組合せ。
(態様48)
前記抗-CD70抗体又は抗原-結合断片が、配列番号:4と少なくとも80%同一であるVHドメインを含み、及び/又は配列番号:8と少なくとも80%同一であるVLドメインを含む、態様42~47のいずれか一項記載の組合せ。
(態様49)
前記抗-CD70抗体が、IgG1抗体である、態様42~48のいずれか一項記載の組合せ。
(態様50)
前記抗-CD70抗体が、ARGX-110である、態様42~49のいずれか一項記載の組合せ。
(態様51)
AML又はMDSを治療する方法における使用のための、態様42~50のいずれか一項記載の組合せ。
(態様52)
態様1~32のいずれか一項記載の方法において使用するための、態様42~50のいずれか一項記載の組合せ。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
【配列表】
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