(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】繊維と無機粒子の集合物
(51)【国際特許分類】
D21H 17/63 20060101AFI20240605BHJP
D21H 17/26 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
D21H17/63
D21H17/26
(21)【出願番号】P 2020003767
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】工藤 まどか
(72)【発明者】
【氏名】中田 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】大石 正淳
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-000782(JP,A)
【文献】特開2011-219892(JP,A)
【文献】特開平03-180585(JP,A)
【文献】特開2019-006899(JP,A)
【文献】特表平09-505099(JP,A)
【文献】特開2020-179365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
D04H 1/00-18/04
D21H 11/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子、
セルロース繊維、および、カルボキシメチルセルロースまたはその塩を含んでなり、
セルロース繊維を20重量%以上含有し、セルロース繊維の平均繊維径が3~50μmである、0.5mm以上の大きさに凝集した集合物。
【請求項2】
45メッシュ(目開き355μm)の篩で処理したとき、篩上に残る残渣の無機粒子量(B)と処理前の無機粒子量(A)の重量割合であるB/Aが0.7以上である、請求項
1に記載の集合物。
【請求項3】
大きさが100mm以下である、請求項
1または2に記載の集合物。
【請求項4】
含水率が60%未満である、請求項1~
3のいずれかに記載の集合物。
【請求項5】
大きさが100mm以下であり、含水率が60%未満である、請求項1~4のいずれかに記載の集合物。
【請求項6】
セルロース繊維の含有率が49重量%以下であり、セルロース繊維の平均繊維径が5~50μmである、請求項1~5のいずれかに記載の集合物。
【請求項7】
カルボキシメチルセルロースまたはその塩
を0.1~30重量%含有する、請求項1~6のいずれかに記載の集合物。
【請求項8】
前記無機粒子が、カルシウム、マグネシウム、バリウムあるいはアルミニウムの金属塩、チタン、銅あるいは亜鉛を含む金属粒子、またはケイ酸塩を含む、請求項1~7のいずれかに記載の集合物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の集合物を製造する方法であって、
セルロース繊維、無機粒子、および、カルボキシメチルセルロースまたはその塩を混合して攪拌する工程を含む、上記方法。
【請求項10】
集合物の含水率を60%未満まで乾燥する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維と無機粒子が凝集した集合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維は、その表面に無機粒子を付着させることによって、様々な特性を発揮させることができる。これについて、繊維の存在下で無機物を合成することにより、無機粒子と繊維との複合体を製造する方法が開発されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、繊維表面に炭酸カルシウムを定着させた複合繊維が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無機粒子と繊維を単に混合することによって得られる集合物は、液体と接触させた場合、容易に崩壊してしまう。そこで、本発明は、バインダーを適切に添加することにより、液体中で使用する際に、液体と接触後の無機粒子の残存率に優れる、繊維と無機粒子の組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、バインダーの種類や量をコントロールして一定の大きさの集合物にすることによって、水などの液体と接触した場合でも無機粒子が脱落しにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、これに限定されるものではないが、下記の態様を包含する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液体と接触後の無機粒子の残存性に優れる繊維と無機粒子の集合物を得ることができる。そのため、繊維と無機粒子の集合物を液体中で使用することができる。特に、吸着性能の高い無機粒子を用いた場合、高い吸着効果を付与することができる。また、繊維と無機粒子の集合物を製造する工程でバインダーを用いることで、液体中で使用する際に無機粒子の流出を抑えつつ、無機粒子の特性に応じた機能性を付与することができる。
(1) 無機粒子、繊維、および、カルボキシメチルセルロースまたはその塩を含んでなり、0.5mm以上の大きさに凝集した集合物。
(2) 前記繊維がセルロース繊維を含む、(1)に記載の集合物。
(3) 前記繊維を10重量%以上含有する、(1)または(2)に記載の集合物。
(4) 45メッシュ(目開き355μm)の篩で処理したとき、篩上に残る残渣の無機粒子量(B)と処理前の無機粒子量(A)の重量割合であるB/Aが0.7以上である、(1)~(3)のいずれかに記載の集合物。
(5) 大きさが100mm以下である、(1)~(4)のいずれかに記載の集合物。
(6) 含水率が60%未満である、(1)~(5)のいずれかに記載の集合物。
(7) カルボキシメチルセルロースまたはその塩の重量比率を0.1~30%含有する、(1)~(6)のいずれかに記載の集合物。
(8) 前記無機粒子が、カルシウム、マグネシウム、バリウムあるいはアルミニウムの金属塩、チタン、銅あるいは亜鉛を含む金属粒子、またはケイ酸塩を含む、(1)~(7)のいずれかに記載の集合物。
(9) (1)~(8)のいずれかに記載の集合物を製造する方法であって、繊維、無機粒子、および、カルボキシメチルセルロースまたはその塩を混合して攪拌する工程を含む、上記方法。
(10) 集合物の含水率を60%未満まで乾燥する工程をさらに含む、(9)に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、サンプル2とサンプル15の外観写真である(左:サンプル2、右:サンプル15)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一つの態様において、本発明は、無機粒子、繊維、カルボキシメチルセルロース又はその塩が一定の大きさに凝集した集合物に関しており、水などの液体と接触しても無機粒子が脱落しにくい。
【0011】
本発明の集合物は、無機粒子を単に繊維と混合しただけのものと比べて、繊維と無機粒子がカルボキシメチルセルロース又はその塩によってしっかりと定着し、水などの液体と接触した場合でも、無機粒子が繊維から脱落し難い。本発明において、繊維と無機粒子との定着の強さは、例えば、水などの液体と接触した場合の残存率(%)によって評価できる。
【0012】
好ましい態様において、残存率は60質量%以上であり、より好ましい態様において65質量%以上である。単に無機粒子を繊維と混合した場合や、ハイドロタルサイトなどによって無機粒子を繊維に定着させた場合と比較して、本発明の集合物は、無機粒子が繊維にしっかりと定着しており、無機粒子の脱落が抑制されている。本発明の一態様において、集合物の無機分(%)は、20%以上80%以下であることが好ましく、30%以上60%以下であることがより好ましい。
【0013】
本発明において、無機粒子、繊維、カルボキシメチルセルロース又はその塩が一定の大きさに凝集した集合物は、繊維と無機粒子をカルボキシメチルセルロース又はその塩と混合し、乾燥することによって製造することができる。
【0014】
本発明において、集合物の大きさは0.5mm以上である。好ましい態様において、集合物の大きさは100mm以下であり、10mm以下や5mm以下とすることもできる。大きさを10mm以下、小さくすると、液体と集合物との接触面積が大きくなるため、無機粒子の機能を発揮することができる。例えば、吸着性能の高い無機粒子を用いた場合、高い吸着効果を付与することができる。
【0015】
好ましい態様において、乾燥する際は、集合物の含水率(水分率)を40%以上や70%以上、90%以上とすることもできる。組成物の含水率を高くすることで、液体中で使用する際に無機粒子の流出を抑えることができるため好ましい。ここで、含水率(水分率)は下式で求めることができる。
(乾燥前の重量(g)-乾燥後の重量(g))/乾燥後の重量(g)×100
本発明に係る集合物を製造する際には、さらに公知の各種助剤を添加することができる。このような添加剤は、組成物全体に対して、好ましくは0.001~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%の量で添加することができる。
【0016】
カルボキシメチルセルロース又はその塩
本発明においては、繊維および無機粒子に加えてカルボキシメチルセルロース又はその塩を用いる。カルボキシメチルセルロース又はその塩は、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基がカルボキシメチルエーテル基に置換された構造を持つ。カルボキシメチルセルロースは、塩の形態であってもよい。カルボキシメチルセルロースの塩としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム塩などの金属塩などを挙げ得る。
【0017】
本発明においてセルロースとは、D-グルコピラノース(単に「グルコース残基」、「無水グルコース」とも言う。)がβ,1-4結合で連なった構造の多糖を意味する。セルロースは、一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。
【0018】
天然セルロースとしては、晒パルプまたは未晒パルプ(晒木材パルプまたは未晒木材パルプ);リンター、精製リンター;酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース、等が例示される。晒パルプ又は未晒パルプの原料は特に限定されず、例えば、木材、木綿、わら、竹等が挙げられる。また、晒パルプ又は未晒パルプの製造方法も特に限定されず、機械的方法、化学的方法、あるいはその中間で二つを組み合わせた方法でもよい。製造方法により分類される晒パルプまたは未晒パルプとしては例えば、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ、砕木パルプ、亜硫酸パルプ、クラフトパルプ等が挙げられる。さらに、製紙用パルプの他に溶解パルプを用いてもよい。溶解パルプとは、化学的に精製されたパルプであり、主として薬品に溶解して使用され、人造繊維、セロハンなどの主原料となる。
【0019】
再生セルロースとしては、セルロースを銅アンモニア溶液、セルロースザンテート溶液、モルフォリン誘導体など何らかの溶媒に溶解し、改めて紡糸されたものが例示される。
微細セルロースとしては、上記天然セルロースや再生セルロースをはじめとする、セルロース系素材を、解重合処理(例えば、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等)して得られるものや、前記セルロース系素材を、機械的に処理して得られるものが例示される。
【0020】
本発明において、カルボキシメチルセルロース又はその塩の製法は限定されず、公知のカルボキシメチルセルロース又はその塩の製法を適用することができる。即ち、原料であるセルロースをマーセル化剤(アルカリ)で処理してマーセル化セルロース(アルカリセルロース)を調製した後に、エーテル化剤を添加してエーテル化反応させることで本発明におけるカルボキシメチルセルロース又はその塩を製造することができる。
【0021】
原料のセルロースとしては、上述のセルロースであれば特に制限なく用いることができるが、セルロース純度が高いものが好ましく、特に、溶解パルプ、リンターを用いることが好ましい。これらを用いることにより、純度の高いカルボキシメチルセルロース又はその塩を得ることができる。
【0022】
マーセル化剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩等を使用することができる。エーテル化剤としてはモノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ソーダ等を使用することができる。
【0023】
水溶性の一般的なカルボキシメチルセルロースの製法の場合のマーセル化剤とエーテル化剤のモル比は、エーテル化剤としてモノクロロ酢酸を使用する場合では2.00~2.45が一般的に採用される。その理由は、2.00未満であるとエーテル化反応が不十分に行われない可能性があるため、未反応のモノクロロ酢酸が残って無駄が生じる可能性があること、及び2.45を超えると過剰のマーセル化剤とモノクロロ酢酸による副反応が進行してグリコール酸アルカリ金属塩が生成するおそれがあるため、不経済となる可能性があることにある。
【0024】
本発明において、カルボキシメチルセルロース又はその塩は、市販のものをそのまま、或いは必要に応じて処理してから用いてもよい。市販品としては、例えば、「サンローズ」(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、日本製紙)が挙げられる。
【0025】
無機粒子
本発明において無機粒子は特に制限されないが、水に不溶性または難溶性の無機粒子であることが好ましい。無機粒子の合成を水系で行う場合があり、また、水などの液体と接触させて使用することもあるため、無機粒子が水に不溶性または難溶性であると好ましい。
【0026】
ここで言う無機粒子とは、金属元素もしくは非金属元素の化合物のことを言う。金属元素の化合物とは、金属の陽イオン(例えば、Na+、Ca2+、Mg2+、Al3+、Ba2+など)と陰イオン(例えば、O2-、OH-、CO3
2-、PO4
3-、SO4
2-、NO3-、Si2O3
2-、SiO3
2-、Cl-、F-、S2-など)がイオン結合によって結合してできた、一般に無機塩と呼ばれるものを言う。非金属元素の化合物とは、ケイ酸(SiO2)などである。本発明において、無機粒子の少なくとも一部が、カルシウム、マグネシウムまたはバリウムの金属塩、または、無機粒子の少なくとも一部が、ケイ酸、またはアルミニウムの金属塩、あるいはチタン、銅、銀、鉄、マンガン、セリウムまたは亜鉛を含む金属粒子であることが好ましい。
【0027】
一つの好ましい態様として、本発明における無機粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)を、例えば、1.5μm以下とすることができるが、平均一次粒子径を1200nm以下や900nm以下にすることもでき、さらには平均一次粒子径が200nm以下や150nm以下にすることもできる。また、無機粒子の平均一次粒子径は10nm以上とすることも可能である。なお、平均一次粒子径は電子顕微鏡写真で測定することができる。
【0028】
これら無機粒子の合成法は公知の方法によることができ、気液法と液液法のいずれでも良い。気液法の一例としては炭酸ガス法があり、例えば水酸化マグネシウムと炭酸ガスを反応させることで、炭酸マグネシウムを合成することができる。液液法の例としては、酸(塩酸、硫酸など)と塩基(水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなど)を中和によって反応させたり、無機塩と酸もしくは塩基を反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法が挙げられる。例えば、水酸化バリウムと硫酸を反応させることで硫酸バリウムを得たり、硫酸アルミニウムと水酸化ナトリウムを反応させることで水酸化アルミニウムを得たり、炭酸カルシウムと硫酸アルミニウムを反応させることでカルシウムとアルミニウムが複合化した無機粒子を得ることができる。また、このようにして無機粒子を合成する際、反応液中に任意の金属や非金属化合物を共存させることもでき、この場合はそれらの金属もしくは非金属化合物が無機粒子中に効率よく取り込まれる。例えば、炭酸カルシウムにリン酸を添加してリン酸カルシウムを合成する際に、二酸化チタンを反応液中に共存させることで、リン酸カルシウムとチタンの複合粒子を得ることができる。
【0029】
(スメクタイトを含む粘土鉱物)
本発明の一つの態様では、無機粒子として、スメクタイトを含む粘土鉱物を用いる。スメクタイトは、水を吸収すると膨潤する性質(膨潤性)を有する粘土鉱物であり、イオン交換性が高い。
【0030】
スメクタイトの主成分はモンモリロナイトであり、副成分として、珪酸鉱物(石英、クリストバライト、オパール)、珪酸塩鉱物(長石、ゼオライト)、粘土鉱物(マイカ、イライト)、炭酸塩鉱物(カルサイト、ドロマイト)、硫酸塩鉱物(セッコウ)、硫化鉱物(パイライト)を含んでいてよい。
【0031】
スメクタイトの主成分であるモンモリロナイトは、層状ケイ酸塩鉱物の一種であり、一つの態様において、ケイ酸四面体層-アルミナ八面体層-ケイ酸四面体層の3層が積み重なった結晶構造を有する。モンモリロナイトは極めて薄い平板状であり、一つの態様において、その単位層は厚さ約10Å、幅100~1000nmである。モンモリロナイトは、アルミナ八面体層の中心原子であるAlの一部がマグネシウム(Mg)に置換されることで負電荷を帯びており、この負電荷の対イオンとして、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、H+などの陽イオン(交換性陽イオン)が層間に入り込んで、電荷的に安定な状態となる。本発明においてスメクタイトは、モンモリロナイトの含有量が50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上がより好ましい。
【0032】
スメクタイトを含む粘土鉱物としては、ベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ソーコナイト、ノントロナイト、活性白土、酸性白土等が挙げられる。
【0033】
本発明においては、粘土鉱物としてベントナイトを用いることが好ましい。ベントナイトとは、モンモリロナイトを主成分、珪酸鉱物、珪酸塩鉱物などを副成分とする粘土鉱物である。ベントナイトは、モンモリロナイト含有量が50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上がより好ましい。ベントナイトの特性は、モンモリロナイトの性質および含有量によって決定される。モンモリロナイトの層間イオンは容易に交換される性質があるが、交換性陽イオンとしてNa+が支配的なモンモリロナイトを含むものをNa型ベントナイト、Ca+が支配的なものをCa型ベントナイトと呼ぶ。ベントナイトは、吸油性、吸湿性、吸水性、陽イオン交換性、膨潤性、増粘性、吸着性に優れる。したがって、繊維中にベントナイトが効率よく定着させると、吸油性、吸湿性、吸水性、陽イオン交換性、膨潤性、増粘性、吸着性などに優れる。
【0034】
本発明に係る集合物において、ベントナイトなどの粘土鉱物の比率は、5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~45質量%や20~40質量%としてもよい。粘土鉱物の比率が高いほど、粘土鉱物の特性を付与することが可能であり、粘土鉱物がベントナイトである場合、高い吸油性や吸湿性を付与することができる。
【0035】
本発明においてベントナイトを粘土鉱物として用いる場合、ベントナイトとしては、工業用や実験用として一般に市販される任意の純度の製品を用いることができるが、吸油性や吸湿性を付与する観点から、ベントナイトを50質量%以上含有する粘土鉱物を用いることが好ましく、80質量%以上含有する粘土鉱物を用いることがより好ましい。
【0036】
粘土鉱物の粒子径は、200~8000nmであることが好ましく、300~5000nmであることがより好ましく、500~2000nmであることがさらに好ましい。粒子径をこの範囲とすることにより、より残存率を向上させることができる。
【0037】
スメクタイトを含む粘土鉱物は、表面処理を施したものを使用してもよい。表面処理剤としては、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛等の金属酸化物等が挙げられるがこれに限定されない。
【0038】
(炭酸カルシウム)
炭酸カルシウムは、例えば、炭酸ガス法、可溶性塩反応法、石灰・ソーダ法、ソーダ法などによって炭酸カルシウムを合成することができ、好ましい態様において、炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを合成する。
【0039】
一般に、炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを製造する場合、カルシウム源として石灰(ライム)が使用され、生石灰CaOに水を加えて消石灰Ca(OH)2を得る消和工程と、消石灰に炭酸ガスCO2を吹き込んで炭酸カルシウムCaCO3を得る炭酸化工程とによって炭酸カルシウムが合成される。この際、生石灰に水を加えて調製した消石灰の懸濁液をスクリーンに通して、懸濁液中に含まれる低溶解性の石灰粒を除去してもよい。また、消石灰を直接カルシウム源としてもよい。本発明において炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを合成する場合、キャビテーション気泡の存在下で炭酸化反応を行うこともできる。
【0040】
炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを合成する場合、消石灰の水性懸濁液の固形分濃度は、好ましくは0.1~40重量%、より好ましくは0.5~30重量%、さらに好ましくは1~20重量%程度である。固形分濃度が低いと反応効率が低く、製造コストが高くなり、固形分濃度が高すぎると流動性が悪くなり、反応効率が落ちる。本発明においては、キャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムを合成するため、固形分濃度の高い懸濁液(スラリー)を用いても、反応液と炭酸ガスを好適に混合することができる。
【0041】
消石灰を含む水性懸濁液としては、炭酸カルシウム合成に一般に用いられるものを使用でき、例えば、消石灰を水に混合して調製したり、生石灰(酸化カルシウム)を水で消和(消化)したりして調製することができる。消和する際の条件は特に制限されないが、例えば、CaOの濃度は0.05重量%以上、好ましくは1重量%以上、温度は20~100℃、好ましくは30~100℃とすることができる。また、消和反応槽(スレーカー)での平均滞留時間も特に制限されないが、例えば、5分~5時間とすることができ、2時間以内とすることが好ましい。当然であるが、スレーカーはバッチ式であっても連続式であってもよい。なお、本発明においては炭酸化反応槽(カーボネーター)と消和反応槽(スレーカー)とを別々にしてもよく、また、1つの反応槽を炭酸化反応槽および消和反応槽として用いてもよい。
【0042】
(炭酸マグネシウム)
炭酸マグネシウムを使用する場合、炭酸マグネシウムの合成方法は、公知の方法によることができる。例えば、水酸化マグネシウムと炭酸ガスから重炭酸マグネシウムを合成し、重炭酸マグネシウムから正炭酸マグネシウムを経て塩基性炭酸マグネシウムを合成することができる。炭酸マグネシウムは合成方法によって重炭酸マグネシウム、正炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウムなどを得ることができるが、塩基性炭酸マグネシムにすることが特に好ましい。なぜならば、重炭酸マグネシウムは安定性が比較的低く、柱状(針状)結晶である正炭酸マグネシウムは繊維へ定着しにくい場合があるためである。
【0043】
また本発明においては、反応槽の反応液を循環させて使用することができる。このように反応液を循環させて、反応液と炭酸ガスとの接触を増やすことにより、反応効率を上げ、所望の無機粒子を得ることが容易になる。
【0044】
本発明においては、二酸化炭素(炭酸ガス)などのガスが反応容器に吹き込まれ、反応液と混合することができる。本発明によれば、ファン、ブロワなどの気体供給装置がなくとも炭酸ガスを反応液に供給することができ、しかも、キャビテーション気泡によって炭酸ガスが微細化されるため反応を効率よく行うことができる。
【0045】
本発明において、二酸化炭素を含む気体の二酸化炭素濃度に特に制限はないが、二酸化炭素濃度が高い方が好ましい。また、インジェクターに導入する炭酸ガスの量に制限はなく適宜選択することができる。
【0046】
本発明の二酸化炭素を含む気体は、実質的に純粋な二酸化炭素ガスでもよく、他のガスとの混合物であってもよい。例えば、二酸化炭素ガスの他に、空気、窒素などの不活性ガスを含む気体を、二酸化炭素を含む気体として用いることができる。また、二酸化炭素を含む気体としては、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)の他、製紙工場の焼却炉、石炭ボイラー、重油ボイラーなどから排出される排ガスを二酸化炭素含有気体として好適に用いることができる。その他にも、石灰焼成工程から発生する二酸化炭素を用いて炭酸化反応を行うこともできる。
【0047】
(硫酸バリウム)
硫酸バリウムを使用する場合、硫酸バリウム(BaSO4)で表されるバリウムイオンと硫酸イオンからなるイオン結晶性の化合物であり、板状あるいは柱状の形態であることが多く、水には難溶性である。純粋な硫酸バリウムは無色の結晶であるが、鉄、マンガン、ストロンチウム、カルシウムなどの不純物を含むと黄褐色または黒灰色を呈し、半透明となる。天然の鉱物としても得られるが、化学反応によって合成することもできる。特に、化学反応による合成品は医薬用(X線造影剤)に用いられるほか、化学的に安定な性質を応用して塗料、プラスチック、蓄電池等に広く使用されている。
【0048】
本発明においては、繊維の存在下で、溶液中で硫酸バリウムを合成することができる。例えば、酸(硫酸など)と塩基を中和によって反応させたり、無機塩と酸もしくは塩基を反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法が挙げられる。例えば、水酸化バリウムと硫酸もしくは硫酸アルミニウムを反応させることで硫酸バリウムを得たり、硫酸塩の含まれる水溶液中に塩化バリウムを加えて硫酸バリウムを沈殿させたりすることができる。
【0049】
(ハイドロタルサイト)
ハイドロタルサイトを使用する場合、ハイドロタルサイトの合成方法は公知の方法によることができる。例えば、反応容器内に中間層を構成する炭酸イオンを含む炭酸塩水溶液とアルカリ溶液(水酸化ナトリウムなど)に繊維を浸漬し、次いで、酸溶液(基本層を構成する二価金属イオン及び三価金属イオンとを含む金属塩水溶液)を添加し、温度、pHなどを制御して共沈反応により、ハイドロタルサイトを合成する。また、反応容器内において、酸溶液(基本層を構成する二価金属イオン及び三価金属イオンを含む金属塩水溶液)に繊維を浸漬し、次いで、中間層を構成する炭酸イオンを含む炭酸塩水溶液とアルカリ溶液(水酸化ナトリウム等)を滴下し、温度、pH等を制御して共沈反応により、ハイドロタルサイトを合成することもできる。常圧での反応が一般的ではるが、それ以外にも、オートクレーブなどを使用しての水熱反応により得る方法もある(特開昭60-6619号公報)。
【0050】
本発明においては、基本層を構成する二価金属イオンの供給源として、マグネシウム、亜鉛、バリウム、カルシウム、鉄、銅、コバルト、ニッケル、マンガンの各種塩化物、硫化物、硝酸化物、硫酸化物を用いることができる。また、基本層を構成する三価金属イオンの供給源として、アルミニウム、鉄、クロム、ガリウムの各種塩化物、硫化物、硝酸化物、硫酸化物を用いることができる。
【0051】
本発明においては、層間陰イオンとして炭酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどを用いることができる。炭酸イオンを層間陰イオンとする場合、炭酸ナトリウムが供給源として使用される。ただし炭酸ナトリウムは、二酸化炭素(炭酸ガス)を含む気体で代替可能で、実質的に純粋な二酸化炭素ガスや、他のガスとの混合物であってもよい。例えば、製紙工場の焼却炉、石炭ボイラー、重油ボイラーなどから排出される排ガスを二酸化炭素含有気体として好適に用いることができる。その他にも、石灰焼成工程から発生する二酸化炭素を用いて炭酸化反応を行うこともできる。
【0052】
(アルミナ/シリカ)
アルミナおよび/またはシリカを使用する場合、アルミナおよび/またはシリカの合成方法は公知の方法によることができる。反応の出発物質として無機酸もしくはアルミニウム塩のいずれか1つ以上を用いた場合、珪酸アルカリ塩を添加して合成する。出発物質として珪酸アルカリ塩を用い、無機酸もしくはアルミニウム塩のいずれか1つ以上を添加して合成することもできるが、無機酸および/もしくはアルミニウム塩を出発物質として用いた場合の方が、生成物の繊維への定着は良好である。無機酸としては特に限定されるものではなく、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等を用いることができる。これらの中でもコストおよびハンドリングの点から硫酸が特に好ましい。アルミニウム塩としては、硫酸バンド、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ミョウバン、カリミョウバン等が挙げられ、中でも硫酸バンドを好適に用いることができる。珪酸アルカリ塩としては、珪酸ナトリウムもしくは珪酸カリウムなどが挙げられるが、入手しやすいため珪酸ナトリウムが好適である。珪酸とアルカリのモル比はいずれでも良いが、一般に3号珪酸として流通しているものはSiO2:Na2O=3~3.4:1程度のモル比のものであり、これを好適に用いることができる。
【0053】
本発明においては、反応液のpHを4.6以下に維持しながらシリカおよび/またはアルミナを合成することが好ましい。
(水酸化アルミニウム)
水酸化アルミニウムはAl(OH)3で表されるアルミニウムイオンと水酸化物イオンからなるイオン結晶性の化合物であり、粒状の形態であることが多く、水には難溶性である。化学反応による合成品は医薬品や吸着剤に用いられるほか、加熱時に水を放出する性質を利用して難燃化剤や不燃化剤として用いられる。
【0054】
本発明においては、繊維の存在下で、溶液中で水酸化アルミニウムを合成することができる。例えば、酸(硫酸など)と塩基を中和によって反応させたり、無機塩と酸もしくは塩基を反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法が挙げられる。例えば、水酸化ナトリウムと硫酸アルミニウムを反応させることで水酸化アルミウニウムを得たり、アルカリ塩の含まれる水溶液中に塩化アルミニウムを加えて水酸化アルミニウムを沈殿させたりすることができる。
【0055】
繊維
本発明を構成する繊維は、例えば、セルロース繊維が好ましい。セルロース繊維の原料としては、パルプ繊維(木材パルプ、非木材パルプ)、バクテリアセルロース、ホヤ等の動物由来セルロース、藻類が例示される。木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、針葉樹および/または広葉樹を用いることができ、針葉樹としては、例えば、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパインなどが挙げられ、広葉樹としては、例えば、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシアなどが挙げられる。
【0056】
木材原料(木質原料)等の天然材料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。
【0057】
非木材由来のパルプとしては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ、サトウキビ、トウモロコシ、稲わら、楮(こうぞ)、みつまた等が例示される。
【0058】
パルプ繊維は、未叩解であっても叩解済であってもよいが、叩解を行う方が好ましい。パルプ繊維の叩解によって、強度の向上だけでなく、パルプ繊維に対する粘土鉱物や無機バインダの定着促進が期待できる。また、パルプ繊維を叩解することにより、BET比表面積の向上効果が期待できる。なお、パルプ繊維の叩解の程度は、JIS P 8121-2:2012に規定されるカナダ標準濾水度(Canadian Standard freeness:CSF)によって表わすことができる。叩解が進むにつれてパルプ繊維の水切れ状態が低下し、濾水度は低くなる。
【0059】
セルロース繊維の濃度は10%以上とすることが好ましく、20%以上とすることや、30%以上とすることもできる。
また、セルロース原料はさらに処理を施すことで、微粉砕セルロース、酸化セルロース等の化学変性セルロースとして使用することもできる。
【0060】
また、セルロース繊維の他にも様々な、天然繊維、合成繊維、半合繊維、無機繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、ウール、絹糸、コラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維、アルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、半合繊維としてはレーヨン、リヨセル、アセテート等が挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維等が挙げられる。
【0061】
また、合成繊維とセルロース繊維との複合繊維も本発明の一態様において使用することができ、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維等とセルロース繊維との複合繊維も使用することができる。
【0062】
複合繊維を構成する繊維は、上記した繊維を単独で用いてもよいし、2以上の繊維を組み合わせて用いてもよい。複合繊維を構成する繊維は、以上に示した例の中でも、木材パルプを含むか、木材パルプのみからなることが好ましい。また、複合繊維を構成する繊維として、非木材パルプや合成繊維を木材パルプと併用することが好ましい。好ましい態様において、複合繊維を構成する繊維はパルプ繊維である。
【0063】
繊維の繊維長は特に制限されないが、例えば、平均繊維長が0.1μm~15mm程度とすることができ、10μm~12mm、50μm~10mm、200μm~8mmなどとしてもよい。このうち、本発明においては、平均繊維長が50μmより長いことが脱水やシート化が容易なため好ましい。平均繊維長が200μmより長いことが通常の抄紙工程で使用する脱水およびもしくは抄紙用のワイヤー(フィルター)のメッシュを使用して脱水やシート化が可能なためさらに好ましい。
【0064】
繊維の繊維径は特に制限されないが、例えば、平均繊維径が1nm~100μm程度とすることができ、10nm~100μm、150nm~100μm、1μm~90μm、3~50μm、5~30μmなどとしてもよい。このうち、本発明においては、平均繊維径が500nmより高いことが水やシート化が容易なため好ましい。平均繊維径が1μmより高いことが通常の抄紙工程で使用する脱水およびもしくは抄紙用のワイヤー(フィルター)のメッシュを使用して脱水やシート化が可能なためさらに好ましい。
【0065】
繊維の量は、繊維表面の15%以上が無機粒子で被覆されるような量とすることが好ましい。例えば、繊維と無機粒子との質量比を、25/75~95/5とすることが好ましく、30/70~90/10とすることがより好ましく、40/60~85/15とすることがさらに好ましい。
【0066】
集合物の用途など
本発明の集合物は、種々の用途に用いることができ、例えば、紙、繊維、不織布、セルロース系複合材料、フィルター材料、塗料、プラスチックおよびその他の樹脂、ゴム、エラストマー、セラミック、ガラス、金属、タイヤ、建築材料(アスファルト、アスベスト、セメント、ボード、コンクリート、れんが、タイル、合板、繊維板など)、各種担体(触媒担体、医薬担体、農薬担体、微生物担体など)、しわ防止剤、粘土、研磨材、改質剤、補修材、断熱材、防湿材、撥水材、耐水材、遮光材、シーラント、シールド材、防虫剤、接着剤、インキ、化粧料、医用材料、ペースト材料、食品添加剤、錠剤賦形剤、分散剤、保形剤、保水剤、濾過助材、精油材、油処理剤、油改質剤、電波吸収材、絶縁材、遮音材、防振材、半導体封止材、放射線遮断材、衛生用品、化粧品、肥料、飼料、香料、塗料・接着剤・樹脂用添加剤、変色防止剤、導電材、伝熱材等のあらゆる用途に広く使用することができる。また、前記用途における各種充填剤、コーティング剤などに用いることができる。
【0067】
本発明の集合物は、製紙用途に適用してもよい。本発明の集合物を含む紙も本発明の一態様である。紙としては、例えば、印刷用紙、新聞紙、インクジェット用紙、PPC用紙、クラフト紙、上質紙、コート紙、微塗工紙、包装紙、薄葉紙、色上質紙、キャストコート紙、ノンカーボン紙、ラベル用紙、感熱紙、各種ファンシーペーパー、水溶紙、剥離紙、工程紙、壁紙用原紙、メラミン化粧紙用原紙、不燃紙、難燃紙、積層板原紙、プリンテッドエレクトロニクス用紙、バッテリー用セパレータ、クッション紙、トレーシングペーパー、含浸紙、ODP用紙、建材用紙、化粧材用紙、封筒用紙、テープ用紙、熱交換用紙、化繊紙、減菌紙、耐水紙、耐油紙、吸油紙、吸湿紙、耐熱紙、光触媒紙、たばこ用紙、板紙(ライナー、中芯原紙、白板紙など)、紙皿原紙、カップ原紙、ベーキング用紙、研磨紙、合成紙などが挙げられる。
【0068】
本発明の集合物は、集合物を含む水性スラリーを抄紙して、シートを成形することができる。本発明に係る集合物を用いてシートを成形すると、シート化の際に無機粒子が繊維から脱落しにくく、無機粒子のシートへの歩留りが良好である。また、本発明によれば無機粒子を均一にシートに配合することができるので、表裏差が少ないシートを得ることができる。
【0069】
シートの坪量は、目的に応じて適宜調整でき、例えば、10~600g/m2であり、好ましくは20~500g/m2、より好ましくは30~400g/m2であり、50~200g/m2としてもよい。シートは、用途等に応じて、単層構造であっても、複数層を積層した多層構造であってもよく、多層構造においては各層の組成は同じであっても異なっていてもよい。
【0070】
シート製造に用いる抄紙機(抄造機)としては、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、多層抄紙機、これらの機器の抄紙方式を組合せた公知の抄紙機などが挙げられる。
【0071】
シート成形に際し、紙力剤(紙力増強剤)などの添加剤を使用することができ、湿潤紙力剤と乾燥紙力剤のいずれも使用することができる。その他、目的に応じて、濾水性向上剤、内添サイズ剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、嵩高剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等の填料等が挙げられる。各添加剤の使用量は特に限定されない。
【0072】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0073】
以下に具体例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、濃度や部などは質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0074】
実験1
1-1.サンプル1
無機粒子として酸化チタン(IV)(富士フイルム和光純薬製、ルチル型、平均粒子径5μm)、繊維としてとして、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いて広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、日本製紙製)のカナダ標準濾水度を400mlに調整したパルプ繊維(セルロース繊維)を用いた(平均繊維長:1.2mm、平均繊維径:25μm、パルプ繊維濃度:30%)。バインダーとして、1%の濃度に調製したカルボキシメチルセルロース(CMC、日本製紙製、商品名:サンローズ、銘柄:F1400MC)の水溶液を使用した。
【0075】
含水率が約70%のパルプ繊維(パルプ固形分10g)をミキサーで2分間破砕した後、無機粒子(10g)と1%CMC水溶液(25g)を添加し、5分間ミキサーで撹拌した。その後、乾燥機(自然対流式恒温器DSN-115S、いすゞ製作所製)を用いて含水率が約5%になるまで乾燥して、酸化チタン、セルロース繊維、CMCが一定の大きさに凝集した集合物を得た。
【0076】
1-2.サンプル2(
図1左)
無機粒子としてベントナイト(富士フイルム和光純薬製)を用いた以外は、サンプル1と同様にしてサンプルを調製した。
【0077】
1-3.サンプル3
無機粒子として炭酸カルシウム(試薬特級、富士フイルム和光純薬製)を用いた以外は、サンプル1と同様にしてサンプルを調製した。
【0078】
1-4.サンプル4
バインダーの使用量を変更した以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。
1-5.サンプル5
バインダーの使用量を変更した以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。
【0079】
1-6.サンプル6
繊維を変更した以外は、サンプル1と同様にしてサンプルを調製した。具体的には、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いて針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙製)のカナダ標準濾水度を400mlに調整したパルプ繊維を用いた(平均繊維長:1.8mm、平均繊維径:31μm、パルプ繊維濃度:30%)。
【0080】
1-7.サンプル7
繊維を変更した以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。具体的には、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いて針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙製)のカナダ標準濾水度を400mlに調整したパルプ繊維を用いた(平均繊維長:1.8mm、平均繊維径:31μm、パルプ繊維濃度:30%)。
【0081】
1-8.サンプル8
繊維を変更した以外は、サンプル3と同様にしてサンプルを調製した。具体的には、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いて針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙製)のカナダ標準濾水度を400mlに調整したパルプ繊維を用いた(平均繊維長:1.8mm、平均繊維径:31μm、パルプ繊維濃度:30%)。
【0082】
1-9.サンプル9
含水率が26%(固形分:74%)になるように乾燥した以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。
【0083】
1-10.サンプル10
含水率が55%(固形分:45%)になるように乾燥した以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。
【0084】
1-11.サンプル11
含水率が約70%のパルプ繊維(パルプ固形分10g)をミキサーで10分間破砕したした以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。
【0085】
1-12.サンプル12
含水率が約70%のパルプ繊維(パルプ固形分10g)をミキサーで30秒間破砕したした以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。
【0086】
1-13.サンプル13
繊維を変更した以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。具体的には、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、日本製紙製)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙製)とを1:9の質量比で混合し、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いてカナダ標準濾水度を400mlに調整したパルプ繊維を用いた(平均繊維長:1.3mm、平均繊維径:26μm、パルプ繊維濃度:30%)。
【0087】
1-14.サンプル14
繊維を変更した以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。具体的には、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、日本製紙製)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙製)とを5:5の質量比で混合し、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いてカナダ標準濾水度を400mlに調整したパルプ繊維を用いた(平均繊維長:1.5mm、平均繊維径:28μm、パルプ繊維濃度:30%)。
【0088】
1-15.サンプル15(
図1右)
繊維を変更した以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。具体的には、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、日本製紙製)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙製)とを1:9の質量比で混合し、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いてカナダ標準濾水度を400mlに調整したパルプ繊維を用いた(平均繊維長:1.7mm、平均繊維径:30μm、パルプ繊維濃度:30%)。
【0089】
1-16.サンプル16
繊維を変更した以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。具体的には、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いてマニラ麻(日本製紙パピリア製)のカナダ標準濾水度を400mlに調整したパルプ繊維を用いた(平均繊維長:4.6mm、平均繊維径:13μm、パルプ繊維濃度:30%)。
【0090】
1-17.サンプル17
繊維を変更した以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。具体的には、PET繊維(帝人フロンティア製、エコペット)をハサミで繊維長5mmに裁断し、水を加えて繊維濃度30%に調整したパルプ繊維を用いた。
【0091】
1-18.サンプル18
バインダーを使用しない以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。
1-19.サンプル19
バインダーとしてハイドロタルサイト(富士フイルム和光純薬製)を25重量%使用した以外は、サンプル2と同様にしてサンプルを調製した。
【0092】
実験2
実験1で得られたサンプルについて、下記の評価を行った。
(1)含水率
105℃で2時間以上乾燥させる前後のサンプルの重量をそれぞれ測定し、下式に基づいて含水率(%)を算出した。
{1-(105℃で乾燥させた後のサンプルの重量)/(乾燥前のサンプルの重量)}×100
(2)大きさ(直径)
0.5mm以上の大きさのサンプルを任意に50個選び、定規を用いてサンプルの最も径の長い部分を直径として測定した。
(3)残存率
第十七改正日本薬局方の崩壊性試験法に基づき、試験液(水)とサンプルを接触させた。その後、45メッシュの篩を通し、篩上に残存したサンプルを回収し、その無機分を測定した。無機分はJIS P 8251:2003に基づき、サンプルを525℃で2時間燃焼させた後の質量(灰分)を測定した。サンプルの無機物の残存率(%)は、下式に基づいて算出した。
(試験液と接触後の組成物に含まれる無機物の量)/(サンプルに配合した無機物の量)×100
【0093】
【0094】
上記の表に示したように、CMCの添加によって、液体と接触させた場合でも無機物の残存率を70%以上に高めることができた。また、CMCの配合量を増やすことで、無機物の残存率をさらに高めることができた(サンプル2,4,5)。
【0095】
木質由来のセルロース繊維として、LBKPを用いた場合、NBKPを用いた場合、LBKPとNBKPを併用した場合のいずれについても、本発明によって液体と接触後の無機物の残存率を高くすることができた。また、繊維が長いNBKPを配合することで、集合物の大きさ(直径)が大きくなった。さらに、木質由来のセルロース繊維ではない、マニラ麻やPET繊維を用いた場合でも、本発明によって無機物の残存率を向上させることができた。