(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B62J 27/00 20200101AFI20240605BHJP
B62L 3/00 20060101ALI20240605BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20240605BHJP
B60K 23/00 20060101ALI20240605BHJP
F16H 61/24 20060101ALI20240605BHJP
F16H 61/68 20060101ALI20240605BHJP
B62M 25/08 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
B62J27/00
B62L3/00 Z
B60T7/12 B
B60T7/12 C
B60K23/00 J
F16H61/24
F16H61/68
B62M25/08
(21)【出願番号】P 2020023369
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】井苅 佳秀
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/185577(WO,A1)
【文献】特開2005-162173(JP,A)
【文献】特開2014-181781(JP,A)
【文献】特開2019-191861(JP,A)
【文献】特開2005-344634(JP,A)
【文献】特開2016-136332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 27/00
B62J 99/00
B62M 25/08
B62L 3/00
B60T 7/12
B60K 23/00
F16H 61/24
F16H 61/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動系統(20)の出力が多段変速機構(31)を介して車輪に伝達される鞍乗型車両(100)に搭載されるライダー支援システム(50)の制御装置(51)であって、
前記鞍乗型車両(100)の走行中に、該鞍乗型車両(100)のライダーに与える警告の必要性を判定する判定部(52)と、
前記判定部(52)で前記警告が必要であると判定された場合に、前記鞍乗型車両(100)に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を少なくとも1回実行するハプティクス動作実行部(53)と、
を備えており、
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記ハプティクス動作において、前記多段変速機構(31)の選択段を変更して前記インパクトを生じさ
せ、
更に、前記鞍乗型車両(100)の走行中に、前記駆動系統(20)の出力状態情報を取得する取得部(54)を備えており、
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記ハプティクス動作における前記選択段の変更において変更先となる段を、前記出力状態情報に応じて変化させる、
制御装置。
【請求項2】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記ハプティクス動作において、前記出力状態情報が前記駆動系統(20)に基準を上回る出力が生じていることを示す情報である場合に、前記変更先となる段として、前記選択段の変更において変更元となる段よりも変速比が低い段を選択し、該出力状態情報が該駆動系統(20)に該基準を下回る出力が生じていることを示す情報である場合に、該変更先となる段として、該変更元となる段よりも変速比が高い段を選択する、
請求項
1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、変速比を低下させる前記選択段の変更が行われる前記ハプティクス動作において、前記出力状態情報が前記駆動系統(20)に高い出力が生じていることを示す情報である場合に、該出力状態情報が該駆動系統(20)に低い出力が生じていることを示す情報である場合と比較して該変速比の低下量が大きい段を、前記変更先となる段として選択する、
請求項
1又は
2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、変速比を増加させる前記選択段の変更が行われる前記ハプティクス動作において、前記出力状態情報が前記駆動系統(20)に低い出力が生じていることを示す情報である場合に、該出力状態情報が該駆動系統(20)に高い出力が生じていることを示す情報である場合と比較して該変速比の増加量が大きい段を、前記変更先となる段として選択する、
請求項
1~
3の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、走行中の前記鞍乗型車両(100)の前方に位置する物体との衝突可能性が基準を上回る状態であることを示す情報が取得される場合に、前記ハプティクス動作に換えて、前記鞍乗型車両(100)の車輪を一瞬間だけ制動する別のハプティクス動作を少なくとも1回実行する、
請求項1~
4の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、走行中の前記鞍乗型車両(100)に生じている加減速度が基準を下回る状態であることを示す情報が取得される場合に、前記ハプティクス動作に換えて、前記鞍乗型車両(100)の車輪を一瞬間だけ制動する別のハプティクス動作を少なくとも1回実行する、
請求項1~
4の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
駆動系統(20)の出力が多段変速機構(31)を介して車輪に伝達される鞍乗型車両(100)に搭載されるライダー支援システム(50)の制御装置(51)であって、
前記鞍乗型車両(100)の走行中に、該鞍乗型車両(100)のライダーに与える警告の必要性を判定する判定部(52)と、
前記判定部(52)で前記警告が必要であると判定された場合に、前記鞍乗型車両(100)に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を少なくとも1回実行するハプティクス動作実行部(53)と、
を備えており、
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記ハプティクス動作において、前記多段変速機構(31)の選択段を変更して前記インパクトを生じさせ、
前記ハプティクス動作実行部(53)は、走行中の前記鞍乗型車両(100)に生じている加減速度が基準を下回る状態であることを示す情報が取得される場合に、前記ハプティクス動作に換えて、前記鞍乗型車両(100)の車輪を一瞬間だけ制動する別のハプティクス動作を少なくとも1回実行する、
制御装置。
【請求項8】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記別のハプティクス動作において、前記鞍乗型車両(100)の制動系統(10)及び前記駆動系統(20)のうちの少なくとも一つを制御して前記車輪を一瞬間だけ制動する、
請求項
5~7
の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、走行中の前記鞍乗型車両(100)の後方に位置する物体との衝突可能性が基準を上回る状態であることを示す情報が取得される場合に、前記ハプティクス動作を実行する、
請求項1~8の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記ハプティクス動作は、前記選択段が変更されて前記インパクトが生じた後、前記選択段が戻されて更なる瞬時的なインパクトが生じる動作である、
請求項1~9の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記ハプティクス動作は、前記選択段が変更されて前記インパクトが生じた後、前記選択段が戻されない動作である、
請求項1~9の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
駆動系統(20)の出力が多段変速機構(31)を介して車輪に伝達される鞍乗型車両(100)に搭載されるライダー支援システム(50)の制御方法であって、
制御装置(51)の判定部(52)が、前記鞍乗型車両(100)の走行中に、該鞍乗型車両(100)のライダーに与える警告の必要性を判定する判定ステップ(S101)と、
前記制御装置(51)のハプティクス動作実行部(53)が、前記判定ステップ(S101)で前記警告が必要であると判定された場合に、前記鞍乗型車両(100)に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を少なくとも1回実行するハプティクス動作実行ステップ(S103)と、
を備えており、
前記ハプティクス動作実行ステップ(S103)では、前記ハプティクス動作実行部(53)が、前記ハプティクス動作において、前記多段変速機構(31)の選択段を変更して前記インパクトを生じさ
せ、
更に、前記制御装置(51)の取得部(54)が、前記鞍乗型車両(100)の走行中に、前記駆動系統(20)の出力状態情報を取得する取得ステップ(S102)を備えており、
前記ハプティクス動作実行ステップ(S103)では、前記ハプティクス動作実行部(53)が、前記ハプティクス動作における前記選択段の変更において変更先となる段を、前記出力状態情報に応じて変化させる、
制御方法。
【請求項13】
駆動系統(20)の出力が多段変速機構(31)を介して車輪に伝達される鞍乗型車両(100)に搭載されるライダー支援システム(50)の制御方法であって、
制御装置(51)の判定部(52)が、前記鞍乗型車両(100)の走行中に、該鞍乗型車両(100)のライダーに与える警告の必要性を判定する判定ステップ(S101)と、
前記制御装置(51)のハプティクス動作実行部(53)が、前記判定ステップ(S101)で前記警告が必要であると判定された場合に、前記鞍乗型車両(100)に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を少なくとも1回実行するハプティクス動作実行ステップ(S103)と、
を備えており、
前記ハプティクス動作実行ステップ(S103)では、前記ハプティクス動作実行部(53)が、前記ハプティクス動作において、前記多段変速機構(31)の選択段を変更して前記インパクトを生じさせ、
前記ハプティクス動作実行ステップ(S103)では、前記ハプティクス動作実行部(53)が、走行中の前記鞍乗型車両(100)に生じている加減速度が基準を下回る状態であることを示す情報が取得される場合に、前記ハプティクス動作に換えて、前記鞍乗型車両(100)の車輪を一瞬間だけ制動する別のハプティクス動作を少なくとも1回実行する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に搭載されるライダー支援システムの制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハプティクス動作によって鞍乗型車両のライダーに警告を与える技術が公知である。制御装置は、鞍乗型車両の走行中に警告の必要性を判定する。制御装置は、警告が必要であると判定された場合に、車輪を一瞬間だけ制動して鞍乗型車両に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を少なくとも1回実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鞍乗型車両では、他の車両(例えば、自動車、トラック等)と比較して、安全面への配慮がより求められる。そして、ハプティクス動作によって鞍乗型車両のライダーに警告を与える技術を実現するにあたり、車輪を一瞬間だけ制動して鞍乗型車両に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を実行することが好ましくない様々な状況を想定する必要がある。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、ハプティクス動作によって鞍乗型車両のライダーに警告を与える技術の実用性を向上することが可能な制御装置及び制御方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、駆動系統の出力が多段変速機構を介して車輪に伝達される鞍乗型車両に搭載されるライダー支援システムの制御装置であって、前記鞍乗型車両の走行中に、該鞍乗型車両のライダーに与える警告の必要性を判定する判定部と、前記判定部で前記警告が必要であると判定された場合に、前記鞍乗型車両に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を少なくとも1回実行するハプティクス動作実行部と、を備えており、前記ハプティクス動作実行部は、前記ハプティクス動作において、前記多段変速機構の選択段を変更して前記インパクトを生じさせる。
【0007】
本発明に係る制御方法は、駆動系統の出力が多段変速機構を介して車輪に伝達される鞍乗型車両に搭載されるライダー支援システムの制御方法であって、制御装置の判定部が、前記鞍乗型車両の走行中に、該鞍乗型車両のライダーに与える警告の必要性を判定する判定ステップと、前記制御装置のハプティクス動作実行部が、前記判定ステップで前記警告が必要であると判定された場合に、前記鞍乗型車両に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を少なくとも1回実行するハプティクス動作実行ステップと、を備えており、前記ハプティクス動作実行ステップでは、前記ハプティクス動作実行部が、前記ハプティクス動作において、前記多段変速機構の選択段を変更して前記インパクトを生じさせる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る制御装置及び制御方法では、ハプティクス動作実行部が、多段変速機構の選択段を変更して鞍乗型車両に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を実行する。そのような制御により、車輪を一瞬間だけ制動して鞍乗型車両に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を実行することが好ましくない状況下でも、ハプティクス動作によって鞍乗型車両のライダーに警告を与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、鞍乗型車両への搭載状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、概略構成を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、制御装置における制御フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るライダー支援システムついて、図面を用いて説明する。
【0011】
なお、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係るライダー支援システムは、そのような構成、動作等である場合に限定されない。
【0012】
例えば、以下では、本発明に係るライダー支援システムが、自動二輪車に用いられる場合を説明しているが、本発明に係るライダー支援システムが、自動二輪車以外の他の鞍乗型車両に用いられてもよい。鞍乗型車両は、ライダーが跨って乗車する車両を意味する。鞍乗型車両には、例えば、モータサイクル(自動二輪車、自動三輪車)、バギー、自転車等が含まれる。モータサイクルには、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、自転車は、ペダルに付与されるライダーの踏力によって路上を推進することが可能な車両を意味する。自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。
【0013】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0014】
また、本発明における「加減速度」は、加速度が正の値として表現され、減速度が負の値として表現される概念である。つまり、本発明における「加減速度が低い」との表現は、加速度が低い状態又は減速度が高い状態を意味する。また、本発明における「加減速度が高い」との表現は、加速度が高い状態又は減速度が低い状態を意味する。
【0015】
実施の形態.
以下に、実施の形態に係るライダー支援システムを説明する。
【0016】
<ライダー支援システムの構成>
実施の形態に係るライダー支援システムの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、鞍乗型車両への搭載状態を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、概略構成を説明するための図である。
【0017】
図1及び
図2に示されるように、鞍乗型車両100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、制動系統10と、駆動系統20と、変速系統30と、を備えている。また、鞍乗型車両100は、制御装置51を含むライダー支援システム50を備えている。
【0018】
制動系統10は、前輪3を制動するための前輪制動機構11と、後輪4を制動するための後輪制動機構12と、を含む。前輪制動機構11に対応した入力部(例えば、ブレーキレバー13)がライダーによって操作されると、その操作量に応じた力で前輪制動機構11のブレーキパッド(図示省略)が前輪3と共に回転するロータ(図示省略)に押し付けられて、前輪3が制動される。また、後輪制動機構12に対応した入力部(例えば、ブレーキペダル14)がライダーによって操作されると、その操作量に応じた力で後輪制動機構12のブレーキパッド(図示省略)が後輪4と共に回転するロータ(図示省略)に押し付けられて、後輪4が制動される。
【0019】
制御装置51は、前輪制動機構11及び後輪制動機構12に生じさせる制動力を制御することが可能である。例えば、制御装置51は、前輪制動機構11のブレーキパッドのロータに対する相対位置を制御して、前輪3に生じさせる制動力を増減することが可能である。また、制御装置51は、後輪制動機構12のブレーキパッドのロータに対する相対位置を制御して、後輪4に生じさせる制動力を増減させることが可能である。つまり、制御装置51は、制動系統10を制御して、鞍乗型車両100の車輪(前輪3、後輪4)を一瞬間だけ制動することで、鞍乗型車両100に瞬時的なインパクトを生じさせることが可能である。
【0020】
駆動系統20は、駆動源(例えば、エンジン、モータ等)21の出力を変速系統30に伝達する。入力部(例えば、アクセルグリップ22)がライダーによって操作されると、その操作量に応じた出力が、変速系統30の多段変速機構31で変速されて駆動輪(例えば、後輪4)に伝達される。つまり、駆動系統20の出力は、多段変速機構31を介して駆動輪に伝達される。
【0021】
制御装置51は、駆動系統20の出力を制御することが可能である。制御装置51は、例えば、スロットル(図示省略)の開度、モータへの印加電圧等を制御して、駆動系統20の出力を増減させることが可能である。例えば、制御装置51は、スロットルを閉じるように制御することで、駆動輪に制動力(いわゆるエンジンブレーキ)を生じさせることも可能である。つまり、制御装置51は、駆動系統20を制御して、鞍乗型車両100の車輪(前輪3、後輪4)を一瞬間だけ制動することで、鞍乗型車両100に瞬時的なインパクトを生じさせることが可能である。
【0022】
制御装置51は、変速系統30の変速比を制御することが可能である。具体的には、制御装置51は、多段変速機構31の選択段を下げるように制御して、変速比を上げることが可能である。また、制御装置51は、多段変速機構31の選択段を上げるように制御して、変速比を下げることが可能である。つまり、制御装置51は、多段変速機構31の選択段を変更することで、鞍乗型車両100に瞬時的なインパクトを生じさせることが可能である。
【0023】
制御装置51は、判定部52と、ハプティクス動作実行部53と、を備えている。制御装置51の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されていてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュールであってもよい。また、制御装置51は、例えば、1つにまとめられていてもよく、また、複数に分かれていてもよい。
【0024】
判定部52は、鞍乗型車両100の走行中に、鞍乗型車両100のライダーに与える警告の必要性を判定する。判定部52は、例えば、鞍乗型車両100又はライダーの各部の状態を検出する各種センサの出力に基づいて警告の必要性を判定してもよく、また、鞍乗型車両100に搭載されている周囲環境センサの出力に基づいて警告の必要性を判定してもよく、また、他車両又はインフラストラクチャ設備との無線通信を介して取得される情報に基づいて警告の必要性を判定してもよい。
【0025】
ハプティクス動作実行部53は、判定部52で警告が必要であると判定された場合に、鞍乗型車両100に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を少なくとも1回実行する。ハプティクス動作において、ハプティクス動作実行部53は、多段変速機構31の選択段を変更することで、鞍乗型車両100に瞬時的なインパクトを生じさせる。そのハプティクス動作は、選択段が変更されてインパクトが生じた後、選択段が戻されて更なる瞬時的なインパクトが生じる動作であってもよく、また、選択段が変更されてインパクトが生じた後、選択段が戻されない動作であってもよい。
【0026】
ここで、制御装置51は、更に、鞍乗型車両100の走行中に、駆動系統20の出力状態情報を取得する取得部54を備えている。出力状態情報は、例えば、駆動源21の回転数等である。その出力状態情報は、駆動系統20の出力状態自体の情報であってもよく、また、駆動系統20の出力状態の推定を可能とする他の状態量(例えば、アクセルグリップ22の操作量、モータの制御パラメータ等)の情報であってもよい。ハプティクス動作実行部53は、ハプティクス動作における選択段の変更において変更先となる段を、取得部54で取得された出力状態情報に応じて変化させる。
【0027】
一例として、ハプティクス動作実行部53は、ハプティクス動作において、出力状態情報が駆動系統20に基準を上回る出力が生じていることを示す情報である場合に、変更元の段よりも変速比が低い段を変更先の段として選択する、つまり、多段変速機構31の段数を上げる。そのような制御により、ハプティクス動作に伴って駆動系統20の出力が過剰に高まることが抑制される。また、ハプティクス動作実行部53は、ハプティクス動作において、出力状態情報が駆動系統20に基準を下回る出力が生じていることを示す情報である場合に、変更元の段よりも変速比が高い段を変更先の段として選択する、つまり、多段変速機構31の段数を下げる。そのような制御により、ハプティクス動作に伴って駆動系統20の出力が過剰に低下することが抑制される。
【0028】
一例として、ハプティクス動作実行部53は、変速比を低下させる選択段の変更が行われるハプティクス動作において、出力状態情報が駆動系統20に高い出力が生じていることを示す情報である場合に、出力状態情報が駆動系統20に低い出力が生じていることを示す情報である場合と比較して、変速比の低下量が大きい段を変更先の段として選択する、つまり、多段変速機構31の段数を大きく変化させる。そのような制御により、ハプティクス動作における駆動系統20の出力の適正化が図られる。
【0029】
一例として、ハプティクス動作実行部53は、変速比を増加させる選択段の変更が行われるハプティクス動作において、出力状態情報が駆動系統20に低い出力が生じていることを示す情報である場合に、出力状態情報が駆動系統20に高い出力が生じていることを示す情報である場合と比較して、変速比の増加量が大きい段を変更先の段として選択する、つまり、多段変速機構31の段数を大きく変化させる。そのような制御により、ハプティクス動作における駆動系統20の出力の適正化が図られる。
【0030】
なお、ハプティクス動作実行部53が、走行中の鞍乗型車両100に生じている加減速度が基準を上回る状態であることを示す情報が取得される場合に、多段変速機構31の選択段を変更することで鞍乗型車両100に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を実行し、走行中の鞍乗型車両100に生じている加減速度が基準を下回る状態であることを示す情報が取得される場合に、そのハプティクス動作に換えて、鞍乗型車両100の前輪3及び後輪4の少なくとも一方を一瞬間だけ制動する別のハプティクス動作を実行するとよい。ハプティクス動作実行部53は、その別のハプティクス動作において、制動系統10及び駆動系統20のうちの少なくとも一つを制御して、前輪3及び後輪4の少なくとも一方を一瞬間だけ制動するとよい。鞍乗型車両100が減速中である、又は、低い加減速度で加速中である状態では、多段変速機構31の選択段を変更するハプティクス動作よりも、そもそもよりシャープなインパクトを生じ得るハプティクス動作、つまり、車輪を一瞬間だけ制動するハプティクス動作の方が、ライダーによる知覚を確実化できる。また、一方で、鞍乗型車両100が高い加減速度で加速中である状態では、その加速によってかき消されてしまいかねないハプティクス動作、つまり、車輪を一瞬間だけ制動するハプティクス動作よりも、多段変速機構31の選択段を変更するハプティクス動作の方が、ライダーによる知覚を確実化できる。そのため、そのような制御により、ライダーに対する警告の伝達を確実化することができる。
【0031】
また、ハプティクス動作実行部53が、走行中の鞍乗型車両100の前方に位置する物体(例えば、他車両、道路設備、落下物、人等)との衝突可能性が基準を下回る状態であることを示す情報が取得される場合に、多段変速機構31の選択段を変更することで鞍乗型車両100に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を実行し、走行中の鞍乗型車両100の前方に位置する物体との衝突可能性が基準を上回る状態であることを示す情報が取得される場合に、そのハプティクス動作に換えて、鞍乗型車両100の前輪3及び後輪4の少なくとも一方を一瞬間だけ制動する別のハプティクス動作を実行するとよい。ハプティクス動作実行部53は、その別のハプティクス動作において、制動系統10及び駆動系統20のうちの少なくとも一つを制御して、前輪3及び後輪4の少なくとも一方を一瞬間だけ制動するとよい。鞍乗型車両100が前方に位置する物体に衝突する可能性が高い状態では、多段変速機構31の選択段を変更するハプティクス動作よりも、鞍乗型車両100に早期に減速を生じさせ得るハプティクス動作、つまり、車輪を一瞬間だけ制動するハプティクス動作の方が、衝突回避の面で優利である。そのため、そのような制御により、ライダーを安全化することができる。
【0032】
また、ハプティクス動作実行部53が、走行中の鞍乗型車両100の後方に位置する物体(例えば、後続車等)との衝突可能性が基準を下回る状態であることを示す情報が取得される場合に、鞍乗型車両100の前輪3及び後輪4の少なくとも一方を一瞬間だけ制動する別のハプティクス動作を実行し、走行中の鞍乗型車両100の後方に位置する物体との衝突可能性が基準を上回る状態(例えば、後続車が基準を上回る相対速度で急接近している状態、後続車が基準を上回る近さで走行している状態等)であることを示す情報が取得される場合に、多段変速機構31の選択段を変更することで鞍乗型車両100に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を実行するとよい。ハプティクス動作実行部53は、その別のハプティクス動作において、制動系統10及び駆動系統20のうちの少なくとも一つを制御して、前輪3及び後輪4の少なくとも一方を一瞬間だけ制動するとよい。鞍乗型車両100が後方に位置する物体に衝突する可能性が高い状態では、車輪を一瞬間だけ制動するハプティクス動作よりも、鞍乗型車両100に大きな減速を生じさせることを避け得るハプティクス動作、つまり、多段変速機構31の選択段を変更するハプティクス動作の方が、衝突回避の面で優利である。そのため、そのような制御により、ライダーを安全化することができる。なお、判定部52が、走行中の鞍乗型車両100の後方に位置する物体との衝突可能性が基準を上回る状態であることを示す情報が取得される場合に、警告が必要であると判定してもよい。つまり、判定部52において、走行中の鞍乗型車両100の後方に位置する物体との衝突に対する警告が必要であると判定される場合に、その衝突可能性の高低に関わらず、多段変速機構31の選択段を変更することで鞍乗型車両100に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作が実行され、車輪を一瞬間だけ制動するハプティクス動作の実行の機会がなくてもよい。
【0033】
<ライダー支援システムの動作>
実施の形態に係るライダー支援システムの動作について説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、制御装置における制御フローの一例を示す図である。
【0034】
制御装置51は、ライダー支援動作が有効になっており、且つ、鞍乗型車両100が走行している間において、
図3に示される制御フローを繰り返し実行する。
【0035】
(判定ステップ)
ステップS101において、制御装置51の判定部52は、鞍乗型車両100のライダーに与える警告の必要性を判定する。判定部52が、警告の必要性があると判定すると、ステップS102に進み、そうではない場合には、S101に戻る。
【0036】
(取得ステップ)
ステップS102において、制御装置51の取得部54は、駆動系統20の出力状態情報を取得する。
【0037】
(ハプティクス動作実行ステップ)
ステップS103において、制御装置51のハプティクス動作実行部53は、鞍乗型車両100に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を少なくとも1回実行する。ハプティクス動作において、ハプティクス動作実行部53は、多段変速機構31の選択段を変更することで、鞍乗型車両100に瞬時的なインパクトを生じさせる。ハプティクス動作実行部53は、ハプティクス動作における選択段の変更において変更先となる段を、ステップS102で取得された出力状態情報に応じて変化させる。
【0038】
<ライダー支援システムの効果>
実施の形態に係るライダー支援システムの効果について説明する。
【0039】
ライダー支援システム50では、制御装置51が、鞍乗型車両100のライダーに与える警告の必要性を判定する判定部52と、判定部52で警告が必要であると判定された場合に、鞍乗型車両100に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を少なくとも1回実行するハプティクス動作実行部53と、を備えている。そして、ハプティクス動作実行部53は、ハプティクス動作において、多段変速機構31の選択段を変更してインパクトを生じさせる。そのような制御により、車輪(前輪3、後輪4)を一瞬間だけ制動して鞍乗型車両100に瞬時的なインパクトを生じさせるハプティクス動作を実行することが好ましくない状況下でも、ハプティクス動作によって鞍乗型車両100のライダーに警告を与えることが可能となる。
【0040】
好ましくは、制御装置51が、更に、駆動系統20の出力状態情報を取得する取得部54を備えており、ハプティクス動作実行部53が、ハプティクス動作における選択段の変更において変更先となる段を、出力状態情報に応じて変化させる。そのような制御により、駆動系統20を保護しつつハプティクス動作によって鞍乗型車両100のライダーに警告を与えることが可能となる。
【0041】
以上、実施の形態について説明したが、本発明は実施の形態の説明に限定されない。例えば、実施の形態の一部のみが実施されてもよい。また、例えば、
図3に示される制御フローにおいて、各ステップの順序が入れ替えられてもよく、また、他のステップが加えられてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 胴体、2 ハンドル、3 前輪、4 後輪、10 制動系統、11 前輪制動機構、12 後輪制動機構、13 ブレーキレバー、14 ブレーキペダル、20 駆動系統、21 駆動源、22 アクセルグリップ、30 変速系統、31 多段変速機構、50 ライダー支援システム、51 制御装置、52 判定部、53 ハプティクス動作実行部、54 取得部、100 鞍乗型車両。