(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】塗料ミスト除去装置及び塗装設備
(51)【国際特許分類】
B01D 46/00 20220101AFI20240605BHJP
B05B 14/43 20180101ALI20240605BHJP
B05B 16/60 20180101ALI20240605BHJP
B05C 15/00 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
B01D46/00 C
B01D46/00 E
B05B14/43
B05B16/60
B05C15/00
(21)【出願番号】P 2020028998
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 茂樹
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-004266(JP,A)
【文献】特開2002-159814(JP,A)
【文献】実開昭60-031323(JP,U)
【文献】特表2016-538118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0207669(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00 - 46/90
B05B 12/16 - 12/36
B05B 14/00 - 16/80
B05C 7/00 - 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料ミストを含む空気が内部を通過するダクトと、
前記ダクトに設けられ、前記塗料ミストを除去するためのフィルタ部をフィルタケースに収容してなるフィルタエレメントが嵌合されるエレメント嵌合部と、
前記ダクトの内面から張り出し、前記フィルタケースのうちその内側に流れ込んだ空気の全てが排出されるケース出口の開口縁の全周に当接する環状突部と、
前記ダクトの側面に開口しかつ通常は扉部材により閉じられ、前記エレメント嵌合部に前記フィルタエレメントを出し入れする際に開放されるダクト側面開口と、
前記ダクトのうち前記エレメント嵌合部より上流側の内面から張り出して、前記フィルタエレメントと前記ダクトとの間の隙間を覆う環状庇部と、を備え、
前記環状庇部は、前記フィルタエレメントに向かうに従って徐々に窄んだ構造をなしている塗料ミスト除去装置。
【請求項2】
前記ダクトは、断面四角形をなし、
前記フィルタケースは、前記ダクト内に嵌合される直方体構造をなしている請求項1に記載の塗料ミスト除去装置。
【請求項3】
前記ダクトには、水平に延びる下流側直線部と、前記下流側直線部の上流側端部に直交する上流側直線部とが含まれ、
前記環状突部は、前記上流側直線部と前記下流側直線部との共有部分から前記下流側直線部への入口を包囲するように形成されている請求項2に記載の塗料ミスト除去装置。
【請求項4】
水平に延びる下流側直線部と、前記下流側直線部の上流側端部に直交する上流側直線部とを含み、塗料ミストを含む空気が内部を通過する断面四角形のダクトと、
前記下流側直線部と前記上流側直線部との共有部分に設けられ、前記塗料ミストを除去するためのフィルタ部を直方体構造のフィルタケースに収容してなるフィルタエレメントが嵌合されるエレメント嵌合部と、
前記ダクトの側面に開口しかつ通常は扉部材により閉じられ、前記エレメント嵌合部に前記フィルタエレメントを出し入れする際に開放されるダクト側面開口と、を備え、
前記フィルタエレメントのうち前記フィルタケース内に空気を取り込むケース入口は、上面のみに開口する一方、前記フィルタケース内に流れ込んだ空気が排出されるケース出口は、一側面のみに開口し、
前記ダクトには、その内面から張り出し、前記共有部分から前記下流側直線部への入口を包囲するように形成されて、前記フィルタケースにおける前記ケース出口の開口縁の全周に当接する環状突部が設けられている塗料ミスト除去装置。
【請求項5】
前記ダクト側面開口は、前記ダクトのうち前記環状突部との対向面に形成され、
前記扉部材は、横長の帯板状をなし、前記ダクト側面開口の開口縁の下辺部にヒンジ連結されて、前記ダクト側面開口の下端部を塞ぐ縦回動扉と、
前記ダクト側面開口の開口縁の両側縁部にヒンジ連結されて、前記ダクト側面開口のうち下端部を除く全体の半分ずつを閉塞する1対の横回動扉と、からなる請求項4に記載の塗料ミスト除去装置。
【請求項6】
前記フィルタケースのうち上流側を向いた上流面のうち前記ケース出口から離れた側に前記フィルタケース内に空気を取り込むケース入口が偏在している請求項3から5の何れか1の請求項に記載の塗料ミスト除去装置。
【請求項7】
前記扉部材は、前記ダクト側面開口の開口縁にヒンジ連結され、
前記扉部材の内面には、前記フィルタエレメントを前記環状突部側に押圧するエレメント押圧部が設けられている請求項3から6の何れか1の請求項に記載の塗料ミスト除去装置。
【請求項8】
前記エレメント押圧部は
、前記フィルタエレメント側を向く面が弾性部材で覆われている、請求項7に記載の塗料ミスト除去装置。
【請求項9】
前記ダクトは、上面が開口する箱状をなして、前記共有部分を含む前記上流側直線部を構成する上流側ダクト構成ボックスと、前記上流側ダクト構成ボックスの一側壁の上端部を除く略全体に一側面全体を重ねて固定され、前記一側面とそれに対向する側面の全体が開口して前記下流側直線部を構成する下流側ダクト構成ボックスと、を備えてなり、
前記一側壁には、前記下流側ダクト構成ボックスの一側面より一回り小さい開口が形成されて、その開口の周囲に残る前記一側壁が前記環状突部になっている請求項3から7の何れか1の請求項に記載の塗料ミスト除去装置。
【請求項10】
前記上流側ダクト構成ボックスの内側下面には、前記フィルタエレメントを搬送するためのローラコンベアが敷かれている請求項9に記載の塗料ミスト除去装置。
【請求項11】
塗装ラインを覆う塗装ブースと、
前記塗装ラインの長手方向の複数位置において前記塗装ブースに下方から接続され、前記塗装ブースから塗料ミストを含む空気が流れ込む請求項3から9の何れか1の請求項に記載の複数の塗料ミスト除去装置と、
前記塗装ラインと平行に延び、前記複数の塗料ミスト除去装置の前記ダクトの下流側端部が接続される排気ダクトと、を備える塗装設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダクト内にフィルタを収容してダクト内を通過する空気から塗料ミストを除去する塗料ミスト除去装置及びそのような塗料ミスト除去装置を備える塗装設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の塗料ミスト除去装置として、例えば、ダクトの内部に嵌め込まれる四角形のフレームの内側に紙又はスポンジを膜状に張った構造のフィルタを使用するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、別の従来の塗料ミスト除去装置として、ダクトに出し入れされる直方体構造の立体フレームに、複数の容器構造のフィルタをそれらの開口が上流側を向くようにして組み付けて使用するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-300370号(
図2,段落[0017])
【0004】
【文献】米国特許第4225328号(
図3,4,8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の塗料ミスト除去装置では、フィルタを交換する際に、使用済みのフィルタから塗料が飛散し易く、フィルタの交換作業に手間が掛かるという問題があった。このため、フィルタの交換作業を容易に行うことができる塗料ミスト除去装置及び塗装設備の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明の態様1の発明は、塗料ミストを含む空気が内部を通過するダクトと、前記ダクトに設けられ、前記塗料ミストを除去するためのフィルタ部をフィルタケースに収容してなるフィルタエレメントが嵌合されるエレメント嵌合部と、前記ダクトの内面から張り出し、前記フィルタケースのうちその内側に流れ込んだ空気の全てが排出されるケース出口の開口縁の全周に当接する環状突部と、前記ダクトの側面に開口しかつ通常は扉部材により閉じられ、前記エレメント嵌合部に前記フィルタエレメントを出し入れする際に開放されるダクト側面開口と、を備える塗料ミスト除去装置である。
【0007】
発明の態様2の発明は、前記ダクトのうち前記エレメント嵌合部より上流側の内面から張り出して、前記フィルタエレメントと前記ダクトとの間の隙間を覆う環状庇部を有する発明の態様1に記載の塗料ミスト除去装置である。
【0008】
発明の態様3の発明は、前記環状庇部は、前記フィルタエレメントに向かうに従って徐々に窄んだ構造をなしている発明の態様2に記載の塗料ミスト除去装置である。
【0009】
発明の態様4の発明は、前記ダクトは、断面四角形をなし、前記フィルタケースは、前記ダクト内に嵌合される直方体構造をなしている発明の態様1乃至3の何れか1の発明の態様に記載の塗料ミスト除去装置である。
【0010】
発明の態様5の発明は、前記ダクトには、水平に延びる下流側直線部と、前記下流側直線部の上流側端部に直交する上流側直線部とが含まれ、前記環状突部は、前記上流側直線部と前記下流側直線部との共有部分から前記下流側直線部への入口を包囲するように形成されている発明の態様4に記載の塗料ミスト除去装置である。
【0011】
発明の態様6の発明は、前記フィルタケースのうち上流側を向いた上流面のうち前記ケース出口から離れた側に前記フィルタケース内に空気を取り込むケース入口が偏在している発明の態様5に記載の塗料ミスト除去装置である。
【0012】
発明の態様7の発明は、前記扉部材は、前記ダクト側面開口の開口縁にヒンジ連結され、前記扉部材の内面には、前記フィルタエレメントを前記環状突部側に押圧するエレメント押圧部が設けられている発明の態様5又は6に記載の塗料ミスト除去装置である。
【0013】
発明の態様8の発明は、前記ダクトは、上面が開口する箱状をなして、前記共有部分を含む前記上流側直線部を構成する上流側ダクト構成ボックスと、前記上流側ダクト構成ボックスの一側壁の上端部を除く略全体に一側面全体を重ねて固定され、前記一側面とそれに対向する側面の全体が開口して前記下流側直線部を構成する下流側ダクト構成ボックスと、を備えてなり、前記一側壁には、前記下流側ダクト構成ボックスの一側面より一回り小さい開口が形成されて、その開口の周囲に残る前記一側壁が前記環状突部になっている発明の態様5から7の何れか1の発明の態様に記載の塗料ミスト除去装置である。
【0014】
発明の態様9の発明は、前記上流側ダクト構成ボックスの内側下面には、前記フィルタエレメントを搬送するためのローラコンベアが敷かれている発明の態様8に記載の塗料ミスト除去装置である。
【0015】
発明の態様10の発明は、前記ダクト側面開口は、前記ダクトのうち前記環状突部との対向面に形成され、前記扉部材は、横長の帯板状をなし、前記ダクト側面開口の開口縁の下辺部にヒンジ連結されて、前記ダクト側面開口の下端部を塞ぐ縦回動扉と、前記ダクト側面開口の開口縁の両側縁部にヒンジ連結されて、前記ダクト側面開口のうち下端部を除く全体の半分ずつを閉塞する1対の横回動扉と、からなる発明の態様5から9の何れか1の発明の態様に記載の塗料ミスト除去装置である。
【0016】
発明の態様11の発明は、塗装ラインを覆う塗装ブースと、前記塗装ラインの長手方向の複数位置において前記塗装ブースに下方から接続され、前記塗装ブースから塗料ミストを含む空気が流れ込む発明の態様5から10の何れか1の発明の態様に記載の複数の塗料ミスト除去装置と、前記塗装ラインと平行に延び、前記複数の塗料ミスト除去装置の前記ダクトの下流側端部が接続される排気ダクトと、を備える塗装設備である。
【発明の効果】
【0017】
本開示の塗料ミスト除去装置で使用されるフィルタエレメントは、フィルタケースにフィルタ部を収容してなり、塗料ミスト除去装置のダクトには、フィルタケースのうちその内側に流れ込む空気の全てが排出されるケース出口の開口縁の全周に当接する環状突部が備えられている。これにより、塗料ミストを含む空気の略全てがフィルタケースの内側を通り、フィルタケースの外面に対する塗料ミストの付着が抑えられ、そのフィルタケース内のフィルタ部で塗料ミストを回収することができる。そして、塗料ミストが付着したフィルタ部をフィルタケースに収容した状態のまま使用済みのフィルタエレメントを、ダクトから取り出して新品のフィルタエレメントに交換することができるので、フィルタ交換作業時の塗料の飛散が防がれる。即ち、本開示の塗料ミスト除去装置では、従来より容易にフィルタ交換作業を行うことができる。また、フィルターケース内を通過する空気の流体圧力によりフィルタケースが環状突部に押し付けられるので、簡素な構造でフィルタエレメントをダクト内にセットすることができ、この点においても、従来より容易にフィルタ交換作業を行うことができる。
【0018】
なお、フィルタエレメントは、使い捨て可能なものが好ましいが、再利用されるものでもよい。また、使い捨て可能なフィルタエレメントとしては、焼却処分を考慮して全体又は大部分が紙製又は樹脂製であることが好ましい。さらに、一部又は全部を再利用するフィルタエレメントでは、再利用される部分を金属製とすれば、塗料の洗浄を容易に行うことができる。また、フィルタエレメントを紙等で構成した場合には、補強するためにフィルタエレメントを金属製又は樹脂製のトレイの上に乗せて使用することが好ましい。
【0019】
また、ダクト及びフィルタエレメントは、互いに嵌合するものであれば、どのような形状でもよい。具体的には、ダクト及びフィルタエレメントは、断面が円形、楕円形、三角形でもよいし、発明の態様4の構成のように、断面四角形でもよい。
【0020】
発明の態様5の構成によれば、ダクトが直角に屈曲する部分を利用して、ダクト内にエレメント嵌合部と環状突部とダクト側面開口とを容易に設けることができる。この場合、フィルターケースの上流側を向いた上流面と、ケース出口を有し下流側を向いた下流面とが隣合う配置になる。そこで、発明の態様6の構成のように、ケース入口をフィルタケースの上流面のうちケース出口から離れた側に偏在させれば、フィルタケースの上流面にも塗料ミストが衝突して回収される。なお、フィルタケースの上流面は、搬送時に他の部位に接触しにくい部分であるので、塗料ミストが付着してもフィルタエレメントの搬送時の妨げにはなり難い。
【0021】
発明の態様7の構成では、扉部材のエレメント押圧部によってフィルタエレメントが環状突部側に押圧されて、環状突部とフィルタエレメントとの隙間の発生が抑えられる。
【0022】
発明の態様8の構成によれば、上流側ダクト構成ボックスと下流側ダクト構成ボックスという2つのボックスを合体させて環状突部を備えたダクトを容易に製造することができる。
【0023】
発明の態様9の構成では、ローラコンベアを利用してフィルタエレメントをダクトに対して容易に出し入れすることができる。
【0024】
また、扉部材は、ダクト側面開口に対して1つでもよいし、発明の態様10の構成のように、複数であってもよい。扉部材が複数に分割されていれば、扉部材の可動範囲がコンパクトになり、塗料ミスト除去装置の周囲の部材と扉部材の干渉を容易に回避することができる。
【0025】
なお、発明の態様2の構成のように、ダクトの内面から張り出す環状庇部を設けて、フィルタエレメントとダクトとの間の隙間を覆えば、フィルタエレメントの側面に対する塗料ミストの付着がより確実に抑えられる。また、発明の態様3の構成のように、環状庇部を、フィルタエレメントに向かうに従って徐々に窄んだ構造とすれば、空気が環状庇部に案内されてフィルタエレメント内にスムーズに流れ込むので、このことによっても、フィルタエレメントの側面に対する塗料ミストの付着がより確実に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る塗装設備の側断面図
【
図3】フィルタエレメントを取り出した状態の塗料ミスト除去装置の斜視図
【
図9】第3実施形態に係る塗料ミスト除去装置の側断面図
【
図10】フィルタエレメントを取り出した状態の塗料ミスト除去装置の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態]
以下、
図1~
図6を参照して本開示の第1実施形態の塗料ミスト除去装置10と塗装設備90とについて説明する。
図1には、本実施形態の塗装設備90の断面が示されている。塗装設備90は、
図1の紙面と直交する方向に延びる架台91の上に塗装ライン92を備える。塗装ライン92は、
図1の紙面と直交する方向に延びる搬送路92Aの両脇に複数の塗装ロボット92Bを並べて備える。そして、搬送路92A上を搬送されるワーク99(例えば、自動車部品等)に対し、各塗装ロボット92Bに備えられた塗装ガンから塗料ミストが吹き付けられて、ワーク99が塗装される。
【0028】
塗装ライン92の全体は塗装ブース93によって覆われている。また、塗装ブース93の長手方向の両端部はワーク99の搬出入口をなし、エアーカーテンによって閉塞されている。さらに、塗装ブース93の底壁94より上方には、メッシュ構造の床板93Mが備えられている。一方、塗装ブース93の図示しない上面壁より下方には、図示しないメッシュ構造の天井板が備えられている。天井壁もメッシュ構造をなし、その上面には例えば不織布が敷設されている。そして、天井板より上方に圧縮エアーが供給され、天井壁の全体から空気が流下している。また、底壁94の長手方向(
図1の紙面と直交する方向)の複数位置には、底壁94の幅方向の中央に複数の排出口94Aが備えられ、それら排出口94Aに複数の塗料ミスト除去装置10を介して排気ダクト95が接続されている。
【0029】
具体的には、排気ダクト95は、例えば、塗装ブース93と平行に延び、塗装ブース93の幅方向の一側部の下方に配置されている。また、排気ダクト95には図示しないブロワーが接続されて、内部が負圧状態になっている。さらに、排気ダクト95のうち塗装ブース93の幅方向の中央側を向いた一側面には、その上下方向の中央に、塗装ブース93の複数の排出口94Aに対応した複数の接続口95Aが備えられている。そして、塗装ブース93の幅方向の中央の真下に設けられた支持台80の上に複数の塗料ミスト除去装置10が配置されて、それら塗料ミスト除去装置10が有するダクト11が、塗装ブース93の排出口94Aと排気ダクト95の接続口95Aとの間を接続している。これにより、ワーク99に付着しなかった塗料ミストを含む空気が塗装ブース93から塗料ミスト除去装置10へと排出される。
【0030】
このように、本実施形態の塗装設備90は、塗装ライン92を覆う塗装ブース93に複数の塗料ミスト除去装置10を接続して備えた構造をなしている。以下、排気ダクト95と直交する水平方向を前後方向とし、排気ダクト95の接続口95Aが開口する一側面が向く方向を前側、その反対側を後側として、塗料ミスト除去装置10の構造について詳説する。
【0031】
図2に示すように、塗料ミスト除去装置10のダクト11は、上面が開口した箱状の上流側ダクト構成ボックス12と、前後の両面が開口した下流側ダクト構成ボックス13とを接続してなる。上流側ダクト構成ボックス12と下流側ダクト構成ボックス13とは同じ横幅をなし、上流側ダクト構成ボックス12が下流側ダクト構成ボックス13より僅かに高くなっている。そして、上流側ダクト構成ボックス12の後側壁12A(特許請求の範囲の「第1側壁」に相当する)のうち上端部
を除く略全体に、下流側ダクト構成ボックス13の前面が重ねられた状態に固定されている。
【0032】
図3に示すように、上流側ダクト構成ボックス12の後側壁12Aには、下流側ダクト構成ボックス13の前面の開口より一回り小さい開口15Wが形成され、後側壁12Aのうち開口15Wの周囲に残る部分が、ダクト11のうち下流側ダクト構成ボックス13側の内面全体から内側に張り出す環状突部15になっている。
【0033】
上流側ダクト構成ボックス12には、環状突部15に対向する前側壁12Bにダクト側面開口11Wが形成されている。ダクト側面開口11Wは、上流側ダクト構成ボックス12の前側壁12Bのうち上端寄り位置から下端に亘る範囲を、僅かに両側縁部と下縁部とを残して全体的に切除してなる。
【0034】
なお、ダクト側面開口11Wの上側開口縁は、環状突部15の内側の開口15Wの上側開口縁より上方に位置し、ダクト側面開口11Wの下側開口縁は、環状突部15の内側の開口15Wの下側開口縁より下方に位置している。
【0035】
ダクト側面開口11Wは、縦回動扉41と1対の横回動扉42とからなる扉部材40にて開閉される。縦回動扉41は、横長の帯板状をなし、ダクト側面開口11Wの開口縁の下辺部にヒンジ連結されて、ダクト側面開口11Wの下端部を塞ぐ。1対の横回動扉42は、ダクト側面開口11Wの開口縁の両側縁部にヒンジ連結されて、ダクト側面開口11Wのうち下端部の除く全体の半分ずつを塞ぐ。
【0036】
上流側ダクト構成ボックス12内の下面の前縁部中央からはストッパ片41Kが起立している。そして、閉状態の縦回動扉41とストッパ片41Kとが重なる。また、ストッパ片41Kには、螺子孔41Mが形成され、それに対応して縦回動扉41にはボルト41Nの一端に操作部を備えた螺合操作部品41Hが回転可能に支持されている。そして、縦回動扉41を閉状態にして螺合操作部品41Hのボルト41Nをストッパ片41Kの螺子孔41Mに螺合することで、縦回動扉41が閉状態に保持される。
【0037】
図2に示すように、一方の横回動扉42の先端には、他方の横回動扉42の先端に前側から重なる隙間カバープレート42Fが備えられ、その隙間カバープレート42Fの外面における長手方向の2箇所に、
図4に示されたフック44が対をなして備えられている。それら1対のフック44は、隙間カバープレート42Fから前方に張り出す帯板を下方に直角曲げしてなる。
【0038】
図2に示すように、1対のフック44を備えない側の横回動扉42の前面には、1対のフック44に対応させて1対のロックレバー43が備えられている。
図4に示すように、ロックレバー43は、横回動扉42に対して回動可能に支持され、横回動扉42の前面と略平行に延びる操作バー43Aと作用バー43Bとを有する。そして、操作バー43Aにてロックレバー43が回動操作されて、作用バー43Bがフック44の内側に進入することで1対の横回動扉42が閉状態にロックされる。
【0039】
図2に示すように、上流側ダクト構成ボックス12の前面におけるダクト側面開口11Wの上側開口縁の横方向の2箇所と、縦回動扉41の前面の横方向の2箇所とには、トグルクランプ45がそれぞれ取り付けられている。
図5に示すように、トグルクランプ45は、ダクト11の横方向に延びる回動軸を中心に回動する操作バー45A及び作用バー45Bと、それらの間を連結するトグル機構とを有する。そして、操作バー45Aを回動操作することで、横回動扉42の前面から突出する被押圧部材45Dが作用バー45Bの先端の押圧部材45Cに押されて、閉状態の横回動扉42の回動が規制される。
【0040】
図3に示すように、各横回動扉42の後面には、上端寄り位置と下端寄り位置との2箇所にエレメント押圧部46が備えられている。各エレメント押圧部46は、例えば、横方向に延びる帯板状をなし、
図6に示すように後面を弾性部材46A(例えば、発泡ウレタンシート)で覆われている。
【0041】
図3に示すように、上流側ダクト構成ボックス12の下面には、前後方向に延びる1対のローラコンベア19が取り付けられている。
図6に示すように、ローラコンベア19の複数のローラ19Rに上方から接する共通の接触面は、前述のストッパ片41Kより上方でかつ環状突部15の内側の開口15Wの下側開口縁より下方に位置している。
【0042】
上流側ダクト構成ボックス12のうちダクト側面開口11Wより上側部分には、環状庇部17が取り付けられている。環状庇部17は、環状をなして上流側ダクト構成ボックス12の内面から張り出し、先端に向かうに従って内側の斜め下方に向かうように窄んだロート構造をなしている。具体的には、環状庇部17のうち上流側ダクト構成ボックス12の各内側面に配置される各辺は、水平に延びかつ幅方向が上下方向を向いた帯板を、上下方向の途中位置で略鈍角に折り曲げ、その屈曲部より上側部分が上流側ダクト構成ボックス12の各内側面に重ねて固定された構造になっている。
【0043】
上流側ダクト構成ボックス12のうち環状庇部17とローラコンベア19との間は、ダクト側面開口11Wを通してフィルタエレメント50が嵌合されるエレメント嵌合部11Kになっている。
図3に示すように、フィルタエレメント50は、直方体状のフィルタケース51の内部にフィルタ部52を収容してなり、例えば全体を段ボール紙で構成されて焼却可能なっている。
【0044】
具体的には、フィルタケース51は、上流側ダクト構成ボックス12内に嵌合する直方体状をなし、上面全体に開口するケース入口54と、後面の一部に開口するケース出口53とを有する。ケース出口53は、フィルタケース51の後面のうち下寄りに配置され、環状突部15の内側の開口15Wより僅かに一回り小さい四角形をなしている。そして、ケース入口54からフィルタケース51内に流れ込んだ空気の全てが、ケース出口53から排出されるようになっている。
【0045】
フィルタ部52は、天井壁52Aとフィルタ本体52Bとからなり、ケース出口53全体をフィルタケース51の内側から覆っている。具体的には、天井壁52Aは、フィルタケース51の内側の平断面形状である四角形を、前後に2分割した形状の段ボール紙で構成され、フィルタケース51内の後側に配置されて、三辺をフィルタケース51の内面に接続されている。また、フィルタ本体52Bは、例えば、上下の両端部を天井壁52Aとフィルタケース51の底面とに接続された複数の段ボール紙で構成され、それら複数の段ボール紙が例えば前後方向で山部と谷部が繰り返されるように波形に折り曲げられることで、それら複数の段ボール紙の間に蛇行した流路を備えた構造をなしている。
【0046】
フィルタケース51の前面の上端寄り位置からはハンドル部56が突出している。ハンドル部56は、段ボール紙を折り重ねて横長の板状にしたものをフィルタケース51の外面に貼り付けてなる。
【0047】
フィルタエレメント50は、トレイ59の上に載置されて使用される。トレイ59は、フィルタエレメント50の下面と同じ大きさの平板部59Aの前縁部から傾斜部59Bが斜め上方に曲げ起こされた形状をなしている。
【0048】
本実施形態の塗料ミスト除去装置10及び塗装設備90の構成に関する説明は以上である。次に、この実施形態の作用効果について説明する。
【0049】
塗料ミスト除去装置10は、適宜、フィルタエレメント50を交換して使用される。塗料ミスト除去装置10へのフィルタエレメント50のセットは、塗装設備90が停止されている状態で行われる。新規のフィルタエレメント50は、トレイ59上に載置した状態で例えば、
図1に示すように、支持台80と同じ高さの台車81
に搭載されて塗料ミスト除去装置10の手前位置まで搬送される。そして、塗料ミスト除去装置10の扉部材40が開かれた状態で、支持台80の上面のうち塗料ミスト除去装置10の手前位置にフィルタエレメント50が移動される。そこから、フィルタエレメント50は、塗料ミスト除去装置10のダクト側面開口11Wを通してダクト11のエレメント嵌合部11Kに嵌合される。ここで、台車81の上面と、支持台80の上面における塗料ミスト除去装置10の手前位置とに、例えばローラーコンベア83を敷設しておけば、台車81と塗料ミスト除去装置10との間のフィルタエレメント50の移動を容易に行うことができる。また、フィルタエレメント50はトレイ59の上に載置されているので、フィルタエレメント50はローラーコンベア83上をスムーズに移動する。さらに、本実施形態の塗料ミスト除去装置10は、扉部材40が縦回動扉41と1対の横回動扉42とに複数分割されているので、扉部材40の可動範囲がコンパクトなり、塗料ミスト除去装置10の周囲の部位と扉部材40との干渉の問題が発生し難い。
【0050】
フィルタエレメント50が、エレメント嵌合部11Kに嵌合したら扉部材40が閉じられる。すると、
図6に示すように、扉部材40の1対の横回動扉42に備えたエレメント押圧部46にフィルタエレメント50が押されて、環状突部15がフィルタエレメント50におけるケース出口53の開口縁の全周に当接し、ケース出口53の全体が環状突部15の内側の開口15Wに対向する。また、1対の横回動扉42は、フィルタエレメント50から押し返されても、トグルクランプ45(
図5参照)を使用することで容易に閉じることができる。そして、ロックレバー43(
図4参照)にて1対の横回動扉42を閉じた状態にロックすることができる。また、フィルタエレメント50の側面とダクト11の内面との隙間は、環状庇部17によって上方(ダクト11の上流側)から覆われた状態になる。
【0051】
上述の作業により、塗料ミスト除去装置10へのフィルタエレメント50のセットが完了すると塗装設備90が稼働され、塗装ブース93から塗料ミストを含んだ空気が塗料ミスト除去装置10のダクト11に流れ込み、ダクト11内のフィルタエレメント50のケース入口54からフィルタケース51に流れ込む。そして、フィルタケース51に流れ込んだ空気の全てがケース出口53から排出される。その途中で、塗料ミストを含んだ空気はフィルタ部52内の複数の蛇行した流路を通過し、塗料ミストがフィルタ部52の内面に衝突して付着する。
【0052】
また、本実施形態では、
図6に示すように、フィルタエレメント50のケース入口54が、実質的にはフィルタケース51の上面のうちケース出口53から離れた側に偏在している。これにより、フィルタケース51において空気はクランク状に屈曲して流れ、フィルタ部52以外でも、フィルタケース51の内面や実質的な上面(具体的には、フィルタ部52の上面)に塗料を付着させることができる。これらにより、空気から塗料ミストが除去される。
【0053】
一方、フィルタエレメント50とダクト11との隙間は、袋小路状態になって空気が滞留しているので、その隙間への塗料ミストを含んだ空気の流れ込みは抑えられる。しかも、その隙間は上流側から環状庇部17によって覆われているので、このことによっても、同隙間への塗料ミストを含んだ空気の流れ込みは抑えられ、フィルタケース51の外面への塗料ミストの付着は抑えられる。
【0054】
フィルタエレメント50に付着した塗料ミストの量が基準に達した場合には、フィルタエレメント50が新品と交換される。なお、フィルタエレメント50に付着した塗料ミストの量は、塗料ミスト除去装置10内に重量計を設けてフィルタエレメント50の重量変化から検出してもよいし、フィルタエレメント50の使用時間、又は、フィルタエレメント50を通過した風量から推定してもよい。また、塗料ミスト除去装置10に圧力センサを設置してフィルタエレメント50の前後の圧力差に基づいて、フィルタエレメント50に付着した塗料ミストの量を推定してもよい。
【0055】
フィルタエレメント50を交換するには、塗装設備90が停止した状態で、先ずは、空の台車81を塗料ミスト除去装置10の前側に配置しておくと共に、その横に新品のフィルタエレメント50を乗せた台車81を配置しておく。そして、塗料ミスト除去装置10の扉部材40を開き、例えば、フィルタエレメント50のハンドル部56を把持してダクト11から引っ張り出して、台車81に乗せばよい。
【0056】
つまり、本実施形態の塗料ミスト除去装置10では、塗料ミストが付着したフィルタ部52をフィルタケース51に収容した状態のまま使用済みのフィルタエレメント50を、ダクト11から取り出して搬送することができ、塗料の飛散が防がれる。そして、新品のフィルタエレメント50に前述と同じ操作でダクト11内にセットすれば、フィルタエレメント50の交換が完了する。また、使用済みのフィルタエレメント50は、例えば、焼却場に搬送してトレイ59から降ろし、焼却すればよい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の塗料ミスト除去装置10で使用されるフィルタエレメント50は、フィルタケース51にフィルタ部52を収容してなり、塗料ミスト除去装置10のダクト11には、フィルタケース51のうちその内側に流れ込む空気の全てが排出されるケース出口53の開口縁の全周に当接する環状突部15が備えられている。これにより、塗料ミストを含む空気の略全てがフィルタケース51の内側を通り、フィルタケース51の外面に対する塗料ミストの付着が抑えられ、そのフィルタケース51内のフィルタ部52で塗料ミストを回収することができる。そして、塗料ミストが付着したフィルタ部52をフィルタケース51に収容した状態のまま使用済みのフィルタエレメント50を、ダクト11から取り出して新品のフィルタエレメント50に交換することができるので、フィルタ交換作業時の塗料の飛散が防がれる。つまり、本開示の塗料ミスト除去装置10では、従来より容易にフィルタ交換作業を行うことができる。また、フィルターケース51内を通過する空気の流体圧力によりフィルタケース51が環状突部15に押し付けられるので、簡素な構造でフィルタエレメント50をダクト11内にセットすることができ、この点においても、従来より容易にフィルタ交換作業を行うことができる。
【0058】
[第2実施形態]
本実施形態の塗料ミスト除去装置10Vは、
図7及び
図8に示されている。
図7に示すように、本実施形態の塗料ミスト除去装置10Vのダクト11Vは、断面四角形をなして上下方向に延びている。ダクト11Vの一側面には、その長手方向の中間部分を幅方向の略全体に亘って切除して四角形のダクト側面開口11Wが形成され、そのダクト側面開口11Wの下端となる位置には、ダクト11Vの内面から張り出す環状突部15が備えられている。また、ダクト側面開口11Wは、1対の横回動扉42からなる扉部材40Vによって開閉される。
【0059】
フィルタエレメント50Vは、フィルタケース51Vの上面全体に開口するケース入口54Vを備える。また、フィルタケース51Vの下面の外縁部には枠形壁53Gが備えられ、その枠形壁53Gの内側がケース出口53Vになっている。さらに、フィルタ部52Vは、フィルタケース51の上端寄り位置から下端寄り位置に亘って配置されている。また、フィルタ部52Vは、例えば上下方向で山部と谷部が繰り返されるように波形に折り曲げられた複数の段ボール紙を水平方向に隙間を空けて並べた構造をなしている。
【0060】
なお、ダクト側面開口11Wの前側には、図示しない支持台が備えられると共に、その上にローラコンベアが敷設されている。そして、ローラコンベアの上面と環状突部15の上面とが略面一に配置されている。その他の構成に関しては、第1実施形態と同一の部位に同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0061】
図8に示すように、本実施形態の塗料ミスト除去装置10Vでも、環状突部15がケース出口53Vの開口縁の全周に亘って当接し、塗料ミストを含む空気の略全てがフィルタケース51Vの内側を通る。これにより、前記第1実施形態の塗料ミスト除去装置10と同様の効果を奏する。
【0062】
なお、本実施形態のフィルタエレメント50Vは、前記第1実施形態のトレイ59の平板部59Aを枠形壁53Gと同一の枠形状にした図示しないトレイの上に載置して搬送してもよい。また、例えば、枠形状の平板部を、枠形状の二枚の板が隙間を介して対向する二重板構造とし、使用済みのフィルタエレメント50Vを搬送する際に、枠形状の二枚の板の間に蓋板を挿入してもよい。
【0063】
また、上記したダクト11Vを水平方向に延びた構造にして、その上面、又は、下面に、又は、上面と下面との間の一側面に、ダクト側面開口11Wを形成して、そこからフィルタエレメント50Vを出し入れする構造としてもよい。また、水平に延びるダクト11Vの下面にダクト側面開口11Wを設ける場合には、そのダクト側面開口11Wの扉部材にフィルタエレメント50Vを載置して昇降させること可能なリフト機構を設けることが好ましい。
【0064】
[第3実施形態]
本実施形態の塗料ミスト除去装置10Wは、
図9及び
図10に示されている。
図9に示すように、本実施形態の塗料ミスト除去装置10Wは、上下方向に対して傾斜して延びるダクト11Xを有する。ダクト11Xのうち斜め下方を向く一側面には、その長手方向の中間部分を、幅方向の略全体に亘って切除して四角形のダクト側面開口11Wが形成され、そのダクト側面開口11Wの下端となる位置には、ダクト11Vの内面から張り出す環状突部15が備えられている。
【0065】
ダクト側面開口11Wには、下縁部に扉部材40Wがヒンジ連結されている。また、ダクト側面開口11Wの下方には、扉部材40Wが水平姿勢になる開位置で当接する支持台80Wが備えられている。そして、扉部材40Wは、例えば図示しないモータ又はエアーシリンダ等により開位置と閉位置とに回動される。また、ダクト側面開口11Wの開口縁には、扉部材40Wを閉位置に固定するための図示しないロックレバーが設けられている。
【0066】
また、本実施形態のフィルタエレメント50Wは、前記第2実施形態のフィルタエレメント50Vからハンドル部56を排除した構造になっている。そして、
図10に示すように、フィルタエレメント50Vは、ケース入口54V及びケース出口53Vが水平方向を向いた状態で開位置の扉部材40Wの上に載置され、扉部材40Wが閉位置まで回動されると、
図9に示すように、ケース出口53Vの開口縁の全周に環状突部15が当接する。
【0067】
本実施形態の構成によっても第1及び第2の実施形態と同様の作用効果を奏する。なお、扉部材40Wの内面と支持台80Wの上面とにローラキャスタを敷設してもよい。
【0068】
[他の実施形態]
(1)前記第1~第3の本実施形態のフィルタエレメント50,50V,50Wは、使い捨て可能であったが、一部又は全体が再利用されてよい。また、フィルタエレメントを使い捨て可能とする場合には、焼却処分を考慮して全体又は大部分が紙製又は樹脂製であることが好ましい。さらに、一部又は全部を再利用するフィルタエレメントでは、再利用される部分を金属製とすれば塗料の洗浄を容易に行うことができる。また、フィルタエレメントを紙等で構成した場合には、本実施形態のように、補強するためにトレイの上に乗せて使用することが好ましい。
【0069】
(2)前記第1~第3の実施形態のダクト11,11V,11X及びフィルタエレメント50,50V,50Wは、断面四角形になっていたが、ダクト及びフィルタエレメントは、互いに嵌合するものであれば、どのような断面形状でもよい。具体的には、ダクト及びフィルタエレメントの断面は、例えば、円形、楕円形、三角形でもよい。
【0070】
(3)前記第1実施形態のフィルタエレメント50のフィルタ部52は、波形に屈曲した複数の段ボール紙を隣接配置して蛇行した流路を備えていたが、例えば、複数の板状の段ボール紙を千鳥配置して蛇行した流路を備えてもよいし、複数の貫通孔を有する複数の段ボール紙をフィルタケース51のケース入口54とケース出口53との間に間隔を開けて並べて、それら並び方向で貫通孔同士が対向しないようにずらした配置として蛇行した流路を備えてもよい。また、フィルタ部52は、蛇行した流路を備えた構造でなくてもよく、例えば、不織布や裁断された紙屑を網目構造の対向壁の間に納めた構造としてもよい。
【0071】
(4)前記第1実施形態の環状庇部17は、フィルタエレメント50とダクト11との間の隙間の全体を上方から覆っていたが、隙間のうちダクト11側の一部を覆う構成でもよい。また、前記環状庇部17はロート構造をなしていたが、環状庇部17はダクト11から直角に張り出した構造であってもよい。さらには、環状庇部を有していなくてもよい。
【0072】
(5)前記第1~第3の実施形態の扉部材40,40V,40Wは、回動式であるが、スライド式であってもよい。
【0073】
(6)前記第1~第3の実施形態の塗料ミスト除去装置10,10V,10Wでは、フィルタとしてフィルタエレメント50,50V,50Wのみを備えていたが、フィルタエレメント50,50V,50W以外にフィルタを備えてもよい。具体的には、前記第1~第3の実施形態の塗料ミスト除去装置10,10V,10Wのフィルタエレメント50,50V,50Wより下流側にフィルタケースに収容されていない従来のフィルタを備えてもよい。そのような構成としても、フィルタケースに収容されていないフィルタを交換する頻度は従来に比べて減るので、フィルタ交換の作業効率は向上する。
【0074】
(7)前記第1~第3の実施形態において、互いに当接する環状突部15とケース出口53,53Vの開口縁とは、板状の壁部同士が、それらの厚さ方向で重なる構成になっていたが、環状突部15とケース出口53,53Vの開口縁との何れか一方から環状リブを突出させて、他方に当接させてもよい。また、環状突部15とケース出口53,53Vの開口縁との何れか一方に、例えば発泡樹脂製又はゴム製のパッキンを敷設してもよい。
【0075】
(8)前記第1実施形態の塗料ミスト除去装置10のダクト11は、鉛直下方に向かって流れてきた空気を水平方向に向けるように屈曲していたが、鉛直上方に向かって流れてきた空気を水平方向に向けるように屈曲していてもよいし、第1水平方向に流れてきた空気を、それと直交する第2水平方向に向けるように屈曲していてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10,10V,10W 塗料ミスト除去装置
11,11V,11X ダクト
11K エレメント嵌合部
11W ダクト側面開口
12 上流側ダクト構成ボックス
13 下流側ダクト構成ボックス
15 環状突部
17 環状庇部
19 ローラコンベア
40 扉部材
41 縦回動扉
42 横回動扉
46 エレメント押圧部
50,50V,50W フィルタエレメント
51 フィルタケース
52 フィルタ部
53 ケース出口
54 ケース入口
90 塗装設備
92 塗装ライン
93 塗装ブース
94A 排出口
95 排気ダクト
99 ワーク