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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20240605BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240605BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20240605BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20240605BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240605BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20240605BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240605BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
A61K8/63
A61K8/06
A61K8/27
A61K8/29
A61K8/37
A61K8/55
A61K8/81
A61Q17/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020035162
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021138620
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 豊大
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-002545(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065963(WO,A1)
【文献】特開2017-088599(JP,A)
【文献】特開平05-194185(JP,A)
【文献】特開2000-212020(JP,A)
【文献】特開2001-233754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)及び成分(B)を含有する、水中油型乳化化粧料であって、
成分(A):平均一次粒子径が100nm未満の疎水化処理された微粒子金属酸化物
成分(B):ステロールエステル
成分(A)の含有量が7質量%以上30質量%以下であり、
成分(C)として紫外線吸収剤の含有量が0質量%以上3質量%未満であり、
成分(D)として成分(B)及び成分(C)以外の他の油剤、成分(E)として界面活性剤、並びに成分(F)として水溶性高分子を更に含有し、
成分(D)の含有量が15質量%以上30質量%以下
成分(F)の含有量が0.1質量%以上5質量%以下である、水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
成分(A)の成分(B)に対する含有質量比[(A)/(B)]が3以上30以下である、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
成分(B)が、コレステロール脂肪酸エステル及びフィトステロール脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
成分(A)の金属酸化物が、酸化亜鉛及び酸化チタンからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
成分(A)の疎水化処理が、シリコーン処理、アルキルアルコキシシラン処理、及び脂肪酸処理からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
成分(D)が25℃で液体状の不揮発性油を含み、該液体状の不揮発性油が、エステル油、シリコーン油、炭化水素油、高級アルコール、及び高級脂肪酸からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1~5のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項7】
成分(F)が合成高分子を含み、該合成高分子が、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(メタクリル酸ベヘネス-25/アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム)クロスコポリマー、及び(メタクリル酸ラウリル/メタクリル酸ラウレス-4/アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマーからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~6のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項8】
日焼け止め用途に用いる、請求項1~のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線防御効果に優れた水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日常生活における紫外線からの防御の重要性が高まる中、日焼け止め化粧料のニーズも拡大している。このような市場のニーズから、さっぱりとした使用感で連用しやすい、水中油型乳化型の日焼け止め化粧料が開発されてきている。
【0003】
これらの水中油型乳化化粧料には、紫外線防御効果を高めるため、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が用いられており、特に紫外線散乱剤として、酸化亜鉛や酸化チタン等の金属酸化物粉末が用いられる。
しかしながら、金属酸化物粉末を水中油型乳化化粧料に配合すると、使用感触が悪く、安定性が十分でないという問題がある。このような問題を改善するため、例えば、特許文献1では、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステル、並びにN,N-ジメチルアクリルアミドを構成単位として含むクロスポリマーと、親水性処理粉体とを含有するメイクアップ化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-241002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、紫外線防御効果を高めるために、金属酸化物粉末を水中油型乳化化粧料に多く配合すると、十分な乳化安定性が得られず、塗布後に乾燥感を感じることがある。このような乾燥感は、油剤を配合することによりある程度改善することができるが、その反面、乳化安定性や塗布時の伸びが低下し、さらに塗布後にべたつきが生じることが判明した。
本発明は、優れた紫外線防御効果を有し、乳化安定性に優れ、塗布時の伸びが良好で、塗布後の乾燥感及びべたつきが抑制された使用感に優れる水中油型乳化化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、平均一次粒子径が所定の範囲である疎水化処理された微粒子金属酸化物及びステロールエステルを用い、かつ疎水化処理された微粒子金属酸化物の含有量を所定の範囲とすることにより、紫外線防御能に優れ、高い乳化安定性が得られると共に、塗布時の伸びが良好で、塗布後の乾燥感及びべたつきが抑制された使用感に優れる水中油型乳化化粧料が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の成分(A)及び成分(B)を含有する、水中油型乳化化粧料であって、
成分(A):平均一次粒子径が100nm未満の疎水化処理された微粒子金属酸化物
成分(B):ステロールエステル
成分(A)の含有量が7質量%以上30質量%以下である、水中油型乳化化粧料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、優れた紫外線防御効果を有し、乳化安定性に優れ、塗布時の伸びが良好で、塗布後の乾燥感及びべたつきが抑制された使用感に優れる水中油型乳化化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[水中油型乳化化粧料]
本発明の水中油型乳化化粧料(以下、「乳化化粧料」ともいう)は、下記の成分(A)及び成分(B)を含有する、水中油型乳化化粧料であって、
成分(A):平均一次粒子径が100nm未満の疎水化処理された微粒子金属酸化物
成分(B):ステロールエステル
成分(A)の含有量は7質量%以上30質量%以下である。
また、本発明において「疎水化処理された微粒子金属酸化物」とは、その表面が疎水化処理されてなる微粒子金属酸化物をいう。
【0010】
<成分(A):平均一次粒子径が100nm未満の疎水化処理された微粒子金属酸化物>
本発明の水中油型乳化化粧料は、成分(A)として平均一次粒子径が100nm未満の疎水化処理された微粒子金属酸化物を含有する。
成分(A)の金属酸化物は、紫外線を散乱させ、紫外線防御効果を高める観点から、好ましくは酸化亜鉛、酸化チタン、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは酸化亜鉛及び酸化チタンからなる群から選ばれる1種以上である。また、これらの微粒子金属酸化物は2価以上の金属を含有させることができ、鉄、ジルコニウム、カルシウム、マンガン、マグネシウム、イットリウム等の金属又はその酸化物を、単独又は2種以上を適宜組み合わせて、前記金属酸化物に含有させることができる。
【0011】
成分(A)の平均一次粒子径は、紫外線防御効果を高める観点、及び乳化安定性を向上させる観点から、100nm未満であり、好ましくは90nm以下、より好ましくは70nm以下、更に好ましくは50nm以下、より更に好ましくは40nm以下、より更に好ましくは30nm以下であり、そして、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上である。より具体的には、成分(A)の平均一次粒子径は、前記と同様の観点から、好ましくは1~90nm、より好ましくは1~70nm、更に好ましくは1~50nm、より更に好ましくは5~50nm、より更に好ましくは10~50nm、より更に好ましくは10~40nm、より更に好ましくは10~30nmである。
【0012】
成分(A)の形状は、例えば、球状、薄片状、棒状、紡錘状、針状、不定形状が挙げられるが、平均一次粒子径が前記範囲にあれば任意の形状のものを使用することができる。
本発明における成分(A)の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察画像から求めることができる。具体的にはTEMにより観察倍率50,000倍の条件にて観察し、観察画像中の300個の一次粒子の最大短径を測定し、その数平均値を算出することにより求められる。ここで、最大短径とは、成分(A)が薄片状以外の形状を有する場合には、長径と直交する短径のうち、最大長を有する短径を意味する。また、成分(A)が薄片状の形状を有する場合には、上記と同様の条件で観察される観察画像中の300個の一次粒子の厚さを測定し、その数平均値を算出することにより求められる。具体的には実施例に記載の方法により測定される。
【0013】
成分(A)の疎水化処理としては、シリコーン処理;アルキルアルコキシシラン処理;脂肪酸処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素含有化合物処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理;レシチン処理;金属石鹸処理;アルキルリン酸エステル処理;N-アシルアミノ酸金属塩(ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム)と塩化亜鉛とアルコキシチタニウムアルキレート(トリイソステアリン酸イソプロピルチタン)とによるASI処理などが挙げられる。
これらの表面処理は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。
これらの中でも、乳化化粧料中の微粒子金属酸化物の含有量を高め、紫外線防御効果、乳化安定性、及び塗布時の伸びのよさを向上させる観点、並びに塗布後の乾燥感及びべたつきを抑制させる観点から、好ましくはシリコーン処理、アルキルアルコキシシラン処理、及び脂肪酸処理からなる群から選ばれる1種以上である。
【0014】
シリコーン処理に用いられる表面処理剤としては、例えば、メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ジメチルシロキサン/メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン/メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン/メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン/メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン/メチルセチルオキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン/メチルステアロキシシロキサン共重合体、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)共重合体等の各種シリコーン油が挙げられる。これらの中でも、乳化化粧料中での成分(A)の分散性を高め、紫外線防御効果、乳化安定性、及び塗布時の伸びのよさを向上させる観点、並びに塗布後の乾燥感及びべたつきを抑制させる観点から、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0015】
アルキルアルコキシシラン処理に用いる表面処理剤は、乳化化粧料中での成分(A)の分散性を高め、紫外線防御効果、乳化安定性、及び塗布時の伸びのよさを向上させる観点、並びに塗布後の乾燥感及びべたつきを抑制させる観点から、炭素数6以上20以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するものが好ましく、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランがより好ましい。
【0016】
脂肪酸処理に用いる表面処理剤としては、炭素数12以上22以下の直鎖又は分岐鎖の高級脂肪酸等が挙げられる。これらの中でも、乳化化粧料中での成分(A)の分散性を高め、紫外線防御効果、乳化安定性、及び塗布時の伸びのよさを向上させる観点、並びに塗布後の乾燥感及びべたつきを抑制させる観点から、炭素数14以上22以下の直鎖又は分岐鎖の高級脂肪酸が好ましく、炭素数16以上20以下の直鎖又は分岐鎖の高級脂肪酸がより好ましく、ステアリン酸、イソステアリン酸が更に好ましい。
前述の表面処理剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0017】
疎水化処理された微粒子酸化亜鉛の市販品としては、FINEXシリーズ(堺化学工業株式会社製)、MZシリーズ、MZYシリーズ(以上、テイカ株式会社製)等が挙げられる。
疎水化処理された微粒子酸化チタンの市販品としては、STRシリーズ(堺化学工業株式会社製)、TTO-55シリーズ、TTO-51シリーズ(以上、石原産業株式会社製)、MTシリーズ、MTYシリーズ(以上、テイカ株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
成分(A)における疎水化処理の処理量は、乳化化粧料中での成分(A)の分散性を高め、紫外線防御効果、乳化安定性、及び塗布時の伸びのよさを向上させる観点、並びに塗布後の乾燥感及びべたつきを抑制させる観点から、成分(A)に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
なお、本発明において、成分(A)の質量及び平均一次粒子径は、表面処理剤を含めた質量及び平均一次粒子径を意味する。
【0019】
本発明の乳化化粧料中の成分(A)の含有量は、紫外線防御効果を高める観点から、7質量%以上であり、好ましくは9質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは13質量%以上であり、そして、乳化安定性を良好なものとする観点、及び乾燥感を抑制させる観点から、30質量%以下であり、好ましくは27質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは23質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。より具体的には、紫外線防御効果を高める観点、並びに、乳化安定性を良好なものとする観点、及び乾燥感を抑制させる観点から、好ましくは9~27質量%、より好ましくは10~25質量%、更に好ましくは10~23質量%、より更に好ましくは13~20質量%である。
【0020】
成分(A)は、肌に塗布した際の透明性の観点からは、疎水化処理された微粒子酸化亜鉛を含むことが好ましい。成分(A)が疎水化処理された微粒子酸化亜鉛を含む場合、成分(A)中の疎水化処理された微粒子酸化亜鉛の含有量は、前記と同様の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上である。
成分(A)は、紫外線防御能効果の観点からは、疎水化処理された微粒子酸化チタンを含むことが好ましい。成分(A)が疎水化処理された微粒子酸化チタンを含む場合、成分(A)中の疎水化処理された微粒子酸化チタンの含有量は、前記と同様の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上である。
【0021】
<成分(B):ステロールエステル>
本発明の水中油型乳化化粧料は、成分(B)としてステロールエステルを含有する。
ステロールエステルを構成するステロールとしては、例えば、コレステロール、ラノステロール、ジヒドロコレステロール、コレスタノール、コプロスタノール、エピコプロステロール、エピコプロスタノール、22-デヒドロコレステロール、デスモステロール、24-メチレンコレステロール、24,25-ジヒドロラノステロ-ル、ノルラノステロ-ル、スピナステロール、ジヒドロアグノステロール、アグノステロール、ロフェノール、ラトステロール等の動物性ステロール;カンペステロール、カンペスタノール、ブラシカステロール、22-デヒドロカンペステロール、スティグマステロール、スティグマスタノール、β-シトステロール、22-ジヒドロスピナステロール、22-デヒドロスチグマスタノール、7-デヒドロスチグマステロール、チルカロール、オイホール、フコステロール、イソフコステロール、コジステロール、クリオナステロール、ポリフェラステロール、クレロステロール、22-デヒドロクレロステロール、フンギステロール、コンドリラステロール、アベナステロール、ベルノステロール、ポリナスタノール等の植物性ステロール(フィトステロール);エルゴステロール、デヒドロエルゴステロール、22,23-ジヒドロエルゴステロール、エピステロール、アスコステロール、フェコステロール等の菌類ステロールが挙げられる。
これらの中でも、成分(B)のステロールエステルを構成するステロールは、塗布後の乾燥感を抑制する観点から、コレステロール及びフィトステロールからなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0022】
成分(B)のステロールエステルは、塗布後の乾燥感を抑制する観点から、好ましくは、ステロール脂肪酸エステル、アシルアミノ酸ステロール/高級アルコールエステル、及びダイマージリノール酸ステロール/高級アルコールエステルからなる群から選ばれる1種以上である。
【0023】
コレステロールエステルは、塗布後の乾燥感を抑制する観点から、好ましくは、コレステロール脂肪酸エステル、及びアシルアミノ酸コレステロール/高級アルコールエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはコレステロール脂肪酸エステルである。
【0024】
コレステロール脂肪酸エステルとしては、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ラノリン脂肪酸コレステリル、分岐脂肪酸(C12-31)コレステリル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、リシノール酸コレステリル、ノナン酸コレステリル等が挙げられる。
アシルアミノ酸コレステロール/高級アルコールエステルとしては、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)等が挙げられる。
【0025】
コレステロールエステルの市販品としては、例えば、「Ecolano CLE-S」、「Ecolano CLE-H」(ラノリン脂肪酸コレステリル)、「Ecolano CLE-NH」(分岐脂肪酸(C12-31)コレステリル)、「Ecolano LC-CN」(ノナン酸コレステリル)、「Ecolano-MAC」(マカデミアナッツ脂肪酸コレステリル)、(以上、日本精化株式会社製);「エルデュウCL-301」(ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル))、「エルデュウCL-202」(ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル))(以上、味の素株式会社製);「サラコス HS」(ヒドロキシステアリン酸コレステリル)(日清オイリオグループ株式会社製)が挙げられる。
【0026】
フィトステロールエステルは、塗布後の乾燥感を抑制する観点から、フィトステロール脂肪酸エステル、アシルアミノ酸フィトステロール/高級アルコールエステル、及びダイマージリノール酸フィトステロール/高級アルコールエステルからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0027】
フィトステロール脂肪酸エステルとしては、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、ラノリン脂肪酸フィトステリル、ステアリン酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、オレイン酸ジヒドロフィトステリル、リシノール酸フィトステリル、ノナン酸フィトステリル、コメヌカ油脂肪酸フィトステリル、パルミチン酸フィトステリル、2-エチルヘキサン酸フィトステリル、カプリン酸フィトステリル、ラウリン酸フィトステリル、酪酸フィトステリル等が挙げられる。
【0028】
アシルアミノ酸フィトステロール/高級アルコールエステルとしては、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ミリストイルメチル-β-アラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル)等が挙げられる。
【0029】
ダイマージリノール酸フィトステロール/高級アルコールエステルとしては、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)等が挙げられる。
【0030】
フィトステロールエステルの市販品としては、例えば、「Plandool-MAS」(マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル)、「Plandool-ISS」(イソステアリン酸フィトステリル)、「Plandool-S」、「Plandool-H」(ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル))、「Plandool-G」(ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル))、「Plandool-SUN」(オレイン酸フィトステリル)、「Plandool-LG1」、「Plandool-LG3」、「Plandool-LG4」(ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べへニル))、「Plandool-LG2」(ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル))、「LUSPLAN PI-DA」(ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル))(以上、日本精化株式会社製);「エルデュウPS-203」(ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル))、「エルデュウPS-304」、「エルデュウPS-306」(ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル))、「エルデュウAPS-307」(ミリストイルメチル-β-アラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル))(以上、味の素株式会社製);「サラコス FH」(ヒドロキシステアリン酸フィトステリル)、「サラコス PO(T)」(オレイン酸フィトステリル)(以上、日清オイリオグループ株式会社製)が挙げられる。
【0031】
成分(B)は、塗布後の乾燥感を抑制する観点から、好ましくはステロール脂肪酸エステルであり、より好ましくはコレステロール脂肪酸エステル及びフィトステロール脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは、分岐脂肪酸(C12-31)コレステリル及びマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルからなる群から選ばれる1種以上である。
【0032】
本発明の乳化化粧料中の成分(B)の含有量は、塗布後の乾燥感を抑制する観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、そして、乳化安定性及び塗布時の伸びを良好なものとし、塗布後のべたつきを抑制する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下である。より具体的には、好ましくは0.3~10質量%、より好ましくは0.5~7質量%、更に好ましくは1~5質量%、より更に好ましくは1~3質量%である。
【0033】
本発明の乳化化粧料中の成分(A)の成分(B)に対する含有質量比[(A)/(B)]は、乳化安定性及び塗布時の伸びを良好なものとし、塗布後のべたつきを抑制する観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、より更に好ましくは6以上であり、そして、塗布後の乾燥感を抑制する観点から、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは9以下である。より具体的には、好ましくは3~30、より好ましくは3~20、更に好ましくは4~15、より更に好ましくは5~10、より更に好ましくは6~9である。
【0034】
本発明の水中油型乳化化粧料は、成分(A)及び成分(B)の他、化粧料の用途に応じて使用される任意成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜含有してもよい。当該任意成分としては、成分(A)及び成分(B)以外の、紫外線吸収剤、油剤、界面活性剤、水溶性高分子、中和剤、pH調整剤、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、着色剤、キレート剤、美白剤、制汗剤、酸化防止剤、香料等が挙げられる。
【0035】
<成分(C):紫外線吸収剤>
本発明の水中油型乳化化粧料は、本発明の効果を阻害しない範囲で、成分(C)として紫外線吸収剤を含有してもよい。前記紫外線吸収剤としては、液体状の有機紫外線吸収剤、及び固体状の有機紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種以上の有機紫外線吸収剤が挙げられる。
本明細書において、「液体状」とは、1気圧下、25℃の環境下において、流動性を有している状態をいい、すなわち、融点以上の温度条件の下にある状態(融点を有さない非晶性物質においては溶融点以上の温度条件の下にある状態)をいう。また、「固体状」とは、1気圧下、25℃の環境下において、流動性を有してない状態をいい、すなわち、融点未満の温度条件の下にある状態(融点を有さない非晶性物質においては溶融点未満の温度条件の下にある状態)をいう。
【0036】
液体状の有機紫外線吸収剤としては、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エトキシエチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、パラジメチルアミノ酸安息香酸アミル、パラジメチルアミノ酸安息香酸2-エチルヘキシル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸2-エチルヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸ホモメンチル、オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート等が挙げられる。
【0037】
固体状の有機紫外線吸収剤としては、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0038】
これらの紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「UVINUL MC80」(パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル)、「UVINUL A PLUS」(2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル)、「TINOSORB S」(2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン)、「UVINUL T-150」(2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン)(以上、BASF社製);「ソフトシェードDH」(ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル)(味の素株式会社製);「PARSOL 1789」(4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン)、PARSOL SLX(ポリシリコーン-15(ジメチコジエチルベンザルマロネート))(以上、DSM社製)が挙げられる。
【0039】
本発明の乳化化粧料中の成分(C)の含有量は、肌への負担軽減の観点から、好ましくは3質量%未満、より好ましくは2質量%未満、更に好ましくは1質量%未満、より更に好ましくは0.5質量%未満、より更に好ましくは0質量%、すなわち成分(C)は含有しないことである。
本発明の乳化化粧料は、成分(C)の含有量が前記の範囲であっても、優れた紫外線防御効果を有し、乳化安定性に優れ、塗布時の伸びが良好で、塗布後の乾燥感及びべたつきが抑制された使用感に優れる効果を発現することができる。当該観点から、本発明の乳化化粧料は、肌に優しい化粧料として近年注目されている、有機紫外線吸収剤が配合されていないノンケミカルタイプの日焼け止め化粧料に適用することができる。
【0040】
<成分(D):成分(B)及び成分(C)以外の他の油剤>
本発明の水中油型乳化化粧料は、成分(A)を取り込んで、乳化安定性を良好なものとする観点から、成分(D)として、成分(B)及び成分(C)以外の他の油剤が更に含有することが好ましい。
成分(D)は、好ましくは不揮発性油であり、エステル油、シリコーン油、炭化水素油、高級アルコール、高級脂肪酸等が挙げられる。
前記不揮発性油は、25℃で、液体状、固体状のものが挙げられるが、25℃で液体状のものを含むことが好ましい。「液体状」及び「固体状」の定義は、前記のとおりである。
なお、本明細書における「不揮発性」とは、以下の方法により測定される、25℃、6時間での蒸発量が20%未満であることを意味する。
測定方法:直径120mmのガラス製シャーレの中に、直径90mmの濾紙を入れ、濾紙にサンプルを1gのせて、65%RHの室内(25℃)に6時間保存する。保存前後のサンプルの質量を測定し、下記式により蒸発量を算出する。
蒸発量(%)=(保存前サンプル質量-保存後サンプル質量)/保存前サンプル質量×100
【0041】
不揮発性の液体状のエステル油としては、例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ジエチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、及び安息香酸アルキル(C12~15)等の安息香酸アルキルからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0042】
上記の中でも、不揮発性の液体状のエステル油は、成分(A)を取り込んで、乳化安定性を良好なものとする観点から、好ましくは、炭素数8以上18以下の分岐脂肪酸と炭素数2以上22以下の分岐アルコールとのモノエステル、炭素数6以上18以下の分岐脂肪酸とグリセリンとのトリエステル、炭素数2以上18以下のジカルボン酸と炭素数2以上18以下の分岐アルコールとのジエステル、炭素数6以上18以下の脂肪酸と炭素数2以上10以下の分岐ジアルコールとのジエステル、及び安息香酸アルキル(C12~15)(例えば、「フィンソルブTN」(Innospec Active Chemicals LLC製))からなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは炭素数8以上18以下の分岐脂肪酸と炭素数2以上22以下の分岐アルコールとのモノエステルであり、更に好ましくはイソノナン酸イソノニル及びイソノナン酸イソトリデシルからなる群から選ばれる1種以上である。
【0043】
不揮発性の液体状のシリコーン油は、成分(A)を取り込んで、乳化安定性を良好なものとする観点から、好ましくはジメチルポリシロキサンであり、より好ましくは25℃における動粘度が20mm2/s以下のジメチルポリシロキサンである。
前記シリコーン油の25℃における動粘度は、ASTM D 445-46T又はJIS Z 8803に準じて、ウベローデ粘度計により測定することができる。
【0044】
不揮発性の液体状の炭化水素油としては、流動パラフィン、水添ポリイソブテン(流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン)、シクロパラフィン、流動オゾケライト、スクワレン、スクワラン、プリスタン、α-オレフィンオリゴマー、ポリブテン、イソヘキサデカン等が挙げられる。
【0045】
不揮発性の液体状の高級アルコールとしては、例えば、炭素数12以上24以下の高級アルコールが挙げられ、具体的には、オレイルアルコール、2-デシルテトラデシノール、ドデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール等が挙げられる。
不揮発性の液体状の高級脂肪酸としては、例えば、炭素数12以上22以下の脂肪酸が挙げられ、具体的には、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸等が挙げられる。
【0046】
また、本発明において、乳化安定性を良好なものとする観点から、成分(D)として用いられる不揮発性油は、25℃で固体状の不揮発性油を更に含むことが好ましい。
25℃で固体状の不揮発性油としては、モノステアリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル等の固体状のエステル油;アルキル変性シリコーン等の固体状のシリコーン油;ワセリン等の固体状の炭化水素油;セチルアルコール、ステアリルアルコール、べへニルアルコール等の固体状の高級アルコール;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ラノリン脂肪酸等の固体状の高級脂肪酸などが挙げられる。
【0047】
これらの中でも、成分(D)は、成分(A)を取り込んで、乳化安定性を良好なものとする観点から、好ましくはエステル油、シリコーン油及び高級アルコールからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
上記の油剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有させることができる。
【0048】
本発明の乳化化粧料中の成分(D)の含有量は、成分(A)を取り込んで、乳化安定性を良好なものとする観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましく10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは17質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは27質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。より具体的には、好ましくは5~30質量%、より好ましくは10~27質量%、更に好ましくは15~25質量%、より更に好ましくは17~25質量%である。
【0049】
<成分(E):界面活性剤>
本発明の水中油型乳化化粧料は、乳化安定性及び使用感を良好なものとする観点から、成分(E)として界面活性剤を更に含有することが好ましい。成分(E)としては、特に制限されず、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
成分(E)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有させることができる。
【0050】
成分(E)は、乳化安定性及び使用感を良好なものとする観点から、好ましくは両性界面活性剤である。
両性界面活性剤としては、ベタイン型界面活性剤、アミンオキサイド型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、乳化安定性及び使用感を良好なものとする観点から、ベタイン型界面活性剤が好ましい。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン等のカルボキシベタイン型;アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型;アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン系ベタイン型;レシチン、水添レシチン、ラウリルヒドロキシホスホベタイン等のホスホベタイン型が挙げられ、中でも、ホスホベタイン型が好ましく、水添レシチンがより好ましく、水素添加大豆レシチンが更に好ましい。
【0051】
本発明の乳化化粧料中の成分(E)の含有量は、乳化安定性及び使用感を良好なものとする観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。より具体的には、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.1~2質量%、更に好ましくは0.3~1質量%である。
【0052】
<成分(F):水溶性高分子>
本発明の水中油型化粧料は、良好な乳化安定性を得る観点から、成分(F)として、増粘作用を有する水溶性高分子を更に含有することが好ましい。
成分(F)としては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、天然高分子、半合成高分子、合成高分子のいずれも使用することができる。
【0053】
天然高分子の例としては、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸等が挙げられる。中でも、良好な乳化安定性を得る観点から、キサンタンガムが好ましい。
半合成高分子としては、例えば、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カチオン化セルロース等の変性多糖類が挙げられる。
【0054】
合成高分子としては、例えば、カルボマー(架橋ポリアクリル酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸/メタクリル酸アルキル)コポリマー、ポリアクリルアミド、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(メタクリル酸ベヘネス-25/アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム)クロスコポリマー、(メタクリル酸ラウリル/メタクリル酸ラウレス-4/アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマー、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、ポリアクリレート-13等のアクリル系ポリマー;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カチオン化ポリビニルピロリドンが挙げられる。中でも、良好な乳化安定性を得る観点から、好ましくはアクリル系ポリマーであり、より好ましくはカルボマー、(アクリル酸/メタクリル酸アルキル)コポリマー、ポリアクリルアミド、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(メタクリル酸ベヘネス-25/アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム)クロスコポリマー、(メタクリル酸ラウリル/メタクリル酸ラウレス-4/アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマー、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、及びポリアクリレート-13からなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(メタクリル酸ベヘネス-25/アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム)クロスコポリマー、及び(メタクリル酸ラウリル/メタクリル酸ラウレス-4/アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマーからなる群から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーである。
【0055】
カルボマーの市販品としては、「カーボポール910」、「カーボポール934」、「カーボポール940」、「カーボポール941」、「カーボポール980」、「カーボポール981」(以上、Lubrizol Advanced Materials社製)等が挙げられる。
(アクリル酸/メタクリル酸アルキル)コポリマーの市販品としては、「カーボポール1382」、「カーボポールETD2020」、「PEMULEN TR-1」、「PEMULEN TR-2」(以上、Lubrizol Advanced Materials社製)等が挙げられる。
ポリアクリルアミドの市販品としては、「SEPIGEL305」(SEPPIC社製)等が挙げられる。
(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの市販品としては、「SIMULGEL EG」(SEPPIC社製)等が挙げられる。
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの市販品としては、「SIMULGEL FL」、「SIMULGEL NS」、「SEPIPLUS S」、「SEPINOV EMT 10」(以上、SEPPIC社製)等が挙げられる。
(メタクリル酸ベヘネス-25/アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム)クロスコポリマーの市販品としては、「ARISTOFLEX HMB」(クラリアント社製)等が挙げられる。
(メタクリル酸ラウリル/メタクリル酸ラウレス-4/アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマーの市販品としては、「SEPIMAX ZEN」(SEPPIC社製)が挙げられる。
【0056】
本発明の乳化化粧料中の成分(F)の含有量は、良好な乳化安定性を得る観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、使用感を良好にする観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。より具体的には、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.05~3質量%、更に好ましくは0.1~1質量%である。
【0057】
(水性媒体)
本発明の水中油型乳化化粧料は、水性媒体として少なくとも水を含有する。
水以外の水性媒体としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数1以上3以下の飽和1価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子量650未満)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(平均分子量650未満)、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、好ましくは多価アルコールであり、より好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びグリセリンからなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びグリセリンからなる群から選ばれる1種以上である。これらのアルコールは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
本発明の乳化化粧料中の水性媒体の含有量は、水中油型の化粧料となりうる範囲であればよく、乳化安定性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは47質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。より具体的には、好ましくは40~90質量%であり、より好ましくは45~80質量%、更に好ましくは47~75質量%である。
本発明の乳化化粧料が多価アルコールを含む場合、該乳化化粧料中の多価アルコールの含有量は、乳化安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。より具体的には、好ましくは0.5~7質量%であり、より好ましくは1~5質量%、更に好ましくは2~4質量%である。
【0059】
本発明の乳化化粧料は、シャンプー、リンス、コンディショナー等の毛髪化粧料;洗顔料、クレンジング化粧料、日焼け止め化粧料、パック、マッサージ化粧料等の皮膚化粧料として好適に利用できる。これらの中でも、本発明の乳化化粧料は、紫外線防御効果に優れるため、日焼け止め用途として、日焼け止め化粧料(化粧水、クリーム、乳液、美容液等)、サンタン、化粧下地化粧料、ファンデーション等に適用することが好ましい。
本発明の乳化化粧料の剤形としては、液状、乳液状、クリーム状、ペースト状、固形状、多層状等に適応が可能であり、さらにシート剤、スプレー剤、ムース剤としても適用できる。
【0060】
(水中油型乳化化粧料の製造方法)
本発明の水中油型乳化化粧料の製造方法は、特に限定されず、水中油型乳化化粧料の剤形に応じて公知の方法を適宜用いることができる。例えば、成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて前述の任意成分を配合し、ホモミキサー等により均一に混合する工程を含む方法が挙げられる。
【0061】
本発明の乳化化粧料の製造方法としては、中でも、乳化化粧料中での成分(A)の分散性を高め、紫外線防御効果、乳化安定性、及び塗布時の伸びのよさを向上させる観点、並びに塗布後の乾燥感及びべたつきを抑制させる観点から、成分(B)及び必要に応じて前述の油溶性の任意成分を含む油相成分に成分(A)を分散させた分散物と、水性媒体及び必要に投じて前述の水溶性の任意成分を含む水相成分の調製物とを混合及び乳化させる工程を含む方法が好ましく、下記の工程I~工程IIIを含む方法がより好ましい。
工程I:成分(B)及び必要に応じて前述の油溶性の任意成分を含む油相成分に成分(A)を加え、均一に混合し、成分(A)を分散させた分散物(i)を得る工程
工程II:水性媒体及び必要に応じて前述の水溶性の任意成分を含む水相成分を均一に混合して調製物(ii)を得る工程
工程III:工程IIで得られた調製物(ii)に工程Iで得られた分散物(i)を加え、均一に混合し、乳化させて、水中油型乳化化粧料を得る工程
【0062】
工程Iは、乳化化粧料中での成分(A)の分散性を高める観点から、下記の工程I-1及び工程I-2を含むことが好ましい。
工程I-1:成分(B)及び必要に応じて前述の油溶性の任意成分を含む油相成分を均一に混合して調製物(i’)を得る工程
工程I-2:工程I-1で得られた調製物(i’)に成分(A)を加え、均一に混合し、成分(A)を分散させた分散物(i)を得る工程
【0063】
工程I-1における油相成分の混合、及び工程IIにおける水相成分の混合は、それぞれ、好ましくは40℃以上90℃以下の温度範囲で加熱しながら撹拌して行うことが好ましい。
工程IIにおいて、調製物(ii)は、好ましくは15℃以上35℃以下の温度範囲に冷却した後、更に均一に混合して得ることが好ましい。
工程IIIにおいて、工程IIで得られた調製物(ii)を撹拌しながら、工程Iで得られた分散物(i)を好ましくは40℃以上90℃以下に保持して加え、均一に混合し、乳化させることが好ましい。
【実施例
【0064】
以下、実施例及び比較例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
(成分(A)の平均一次粒子径)
成分(A)の平均一次粒子径は以下の方法により測定した。
測定試料が板状以外の形状を有する場合には、予め調製した測定試料の分散液を透過型電子顕微鏡(TEM)(商品名「JEM1400Plus」、日本電子(株)製)の試料台に載せて、風乾させた後、TEMにより観察倍率50,000倍の条件で観察した画像中の300個の一次粒子の最大短径を測定し、その数平均値をそれぞれの平均一次粒子径とした。ここで、最大短径とは、長径と直交する短径のうち、最大長を有する短径を意味する。
測定試料が板状の形状を有する場合には、上記と同様の方法及び観察倍率の条件で観察した画像中の300個の一次粒子の厚さを測定し、その数平均値をそれぞれの平均一次粒子径とした。
なお、測定試料の分散液は、測定試料5gに溶媒としてエタノール95gを加えて超音波分散して調製した。
【0066】
実施例1~7、比較例1~5
表1に示した配合に従い、以下の方法により各水中油型乳化化粧料を得た。
表1に示す成分5~12を均一に混合し、80℃に加熱し、溶解させて、調製物(i’)を得た(工程I-1)。次いで、得られた調製物(i’)を80℃に保持しつつ、表1に示す成分1~4を加え、均一に混合し、分散させて、分散物(i)を得た(工程I-2)。
別途、表1に示す成分13~17を40℃に加熱し、溶解させて、25℃まで自然冷却した後、均一に混合して、調製物(ii)を得た(工程II)。
得られた調製物(ii)を撹拌しながら、80℃に保持した分散物(i)を加え、ホモミキサーで均一に混合し、乳化させて水中油型乳化化粧料を得た(工程III)。
【0067】
得られた水中油型乳化化粧料を用いて、下記に示す(1)紫外線防御能、(2)乳化安定性、及び(3)使用感(塗布時の伸びの良さ、塗布後の乾燥感の無さ、塗布後のべたつきの無さ)を評価した。結果を表1に示す。
【0068】
(1)紫外線防御能
表1に示した水中油型乳化化粧料を正方形のPMMA板(HelioScreen社製「HD6」)上に1.3mg/cm2の塗布量にて均一に塗布し、15分間乾燥させて、測定用試料とした。同様にグリセリンをPMMA板に塗布し、15分間乾燥させたものを対照用試料とした。SPFアナライザー「UV-2000S」(Labsphere社製)を用いて、吸収スペクトル(測定波長290~450nm)の測定結果よりin vitro SPF値を算出し、各試料の9箇所のin vitro SPF値の平均を紫外線防御能(SPF値)とした。
【0069】
(2)乳化安定性
表1に示した水中油型乳化化粧料の調製直後及び40℃で1ヶ月間保存した後の外観を目視により観察し、下記判定基準により判定した。
〔判定基準〕
A:化粧料調製直後に分離及びゲル化が見られず、40℃で1ヶ月保存した後においても分離及びゲル化が見られない。
B:化粧料調製直後に分離及びゲル化が見られず、40℃で1ヶ月保存した後にわずかな分離又はゲル化が見られる。
C:化粧料調製直後に分離及びゲル化が見られなかったが、40℃で1ヶ月保存した後に明らかな分離又はゲル化が見られる。
D:化粧料調製直後から分離又はゲル化が見られる。
【0070】
(3)使用感(塗布時の伸びの良さ、塗布後の乾燥感の無さ、塗布後のべたつきの無さ)
表1に示した水中油型乳化化粧料を専門パネラー10名に使用してもらった。25℃、57%RH下で前腕内側に直径3cmの円を描くように、各水中油型乳化化粧料を0.02mL塗布し、1分間かけて塗り延ばした際の使用感として、「塗布時の伸びの良さ」、「塗布後の乾燥感の無さ」、「塗布後のべたつきの無さ」をそれぞれ下記評価基準に基づき評価し、10名の平均値から下記判定基準に基づきそれぞれ判定した。
また、塗り伸ばした後の透明性を目視で確認したところ、実施例1~3は、実施例4と比べて透明性がより高かった。
〔評価基準〕
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
〔判定基準〕
A:4.0点以上5.0点以下
B:3.0点以上4.0点未満
C:2.0点以上3.0点未満
D:1.0点以上2.0点未満
【0071】
【表1】
【0072】
表1において用いた成分の詳細を以下に示す。
*1:テイカ株式会社製「MZY-303M2O」(疎水化処理微粒子酸化亜鉛、平均一次粒子径30nm)
*2:堺化学工業株式会社製「STR-100W-OTS」(疎水化処理微粒子酸化チタン、平均一次粒子径10nm)
*3:大東化成工業株式会社製「BCASI TIO2 MP-701」(疎水化処理顔料級酸化チタン、平均一次粒子径270nm)
*4:堺化学工業株式会社製「STR-100W(G)」(親水化処理微粒子酸化チタン、平均一次粒子径10nm)
*5:日本精化株式会社製「Ecolano CLE-NH」
*6:日本精化株式会社製「Plandool-MAS」
*7:信越化学工業株式会社製「KF-96A-20CS」
*8:信越化学工業株式会社製「KF-96A-6CS」
*9:日本精化株式会社製「PhosphoLipid PCSH70」
*10:SEPPIC社製「SIMULGEL EG」((アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、有効分37.5質量%)
【0073】
表1から、本発明の実施例に係る水中油型乳化化粧料は、比較例の水中油型乳化化粧料と比べて、優れた紫外線防御能を有し、乳化安定性に優れ、塗布時の伸びが良好で、塗布後の乾燥感及びべたつきが抑制されていることがわかる。
比較例1は、水中油型乳化化粧料中の成分(A)の含有量が7質量%未満であるため、紫外線防御効果が低く、塗布後のべたつきが十分に抑制されていない。
比較例2は、金属酸化物粉末として疎水化処理された顔料級酸化チタンを用いているため、紫外線防御効果が低く、乳化安定性が不十分である。
比較例3は、金属酸化物粉末として親水化処理された微粒子酸化チタンを用いているため、紫外線防御効果が低く、乳化安定性及び塗布時の伸びが不十分であり、塗布後の乾燥感及びべたつきが十分に抑制されていない。
比較例4及び比較例5は、水中油型乳化化粧料中にステロールエステルが含まれないため、塗布後の乾燥感が十分に抑制されていない。