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特許7498605セラミックス部材、保持装置、及びセラミックス部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】セラミックス部材、保持装置、及びセラミックス部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/02 20060101AFI20240605BHJP
   H01L 21/683 20060101ALN20240605BHJP
【FI】
C04B37/02 B
H01L21/68 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020113911
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022022673
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 和孝
(72)【発明者】
【氏名】駒津 貴久
(72)【発明者】
【氏名】辻他 雅夫
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/075240(WO,A1)
【文献】特開2018-016536(JP,A)
【文献】特開平11-220011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/02
H01L 21/68
H01L 21/302
H05B 3/02
C23C 14/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に設けられた内部電極、端子パッド、及び、前記内部電極と前記端子パッドとを電気的に接続するビア導体、を有するセラミックス基板と、
前記セラミックス基板の外部から第1方向に延び、前記端子パッドに接合された給電端子と、を備える
セラミックス部材において、
前記セラミックス基板は、
前記端子パッドが配置された内部空洞と、
前記セラミックス基板の表面に開口し、前記セラミックス基板の外部と前記内部空洞とを連通する連通孔であって、前記給電端子が挿入される連通孔と、を備え、
前記セラミックス基板を前記第1方向に平面視したときに、前記連通孔の外周、及び、前記端子パッドの外周が前記内部空洞の外周よりも内側に位置しており、
前記連通孔の外周面が、前記給電端子のうち前記連通孔の内側に配置される部位の外周面の全体にわたって近接または接触している
セラミックス部材。
【請求項2】
請求項1に記載するセラミックス部材と、
前記給電端子が内部に配置され、前記セラミックス部材の前記セラミックス基板のうち前記連通孔が開口する表面に接続された筒状の支持部材と、を有し、
前記セラミックス基板のうち、前記支持部材が接続された前記表面とは反対側の表面上に対象物が保持される
保持装置。
【請求項3】
内部に設けられた内部電極、及び、前記内部電極に電気的に接続された端子パッド、を有するセラミックス基板と、
前記セラミックス基板の外部から第1方向に延び、前記端子パッドに接合された給電端子と、を備える
セラミックス部材の製造方法において、
前記端子パッドが配置された内部空洞、表面に開口して外部と前記内部空洞とを連通する貫通孔、及び前記内部電極を備える、板状のセラミックス焼成体を準備する工程であって、
前記セラミックス焼成体を、
シート表面に露出した前記端子パッド、及び、シート内部に設けられた前記内部電極、を備える第1グリーンシート層と、
前記第1グリーンシート層との接触面側に開口し、焼成後に前記内部空洞となる凹部、及び、前記凹部が開口する面とは反対側の面から前記凹部にまで延び、焼成後に前記貫通孔となる孔部、を備える第2グリーンシート層と、
を圧着して焼成することにより作製する
準備工程と、
前記セラミックス焼成体に設けられた前記貫通孔を加工して、前記給電端子を挿入可能な加工孔にする工程であって、
前記加工孔の外周面が、前記給電端子のうち連通孔の内側に配置される部位の外周面の全体にわたって近接または接触するように加工する
孔加工工程と、
前記孔加工工程で形成された前記加工孔に前記給電端子を挿入し、前記給電端子を前記端子パッドに接合する端子接合工程と、を含み、
前記孔加工工程では、前記セラミックス焼成体を前記第1方向に平面視したときに、前記加工孔の外周が前記内部空洞の外周よりも内側に位置するように、前記貫通孔を加工する
セラミックス部材の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載するセラミックス部材の製造方法において、
前記準備工程で準備する前記セラミックス焼成体の前記貫通孔は、前記給電端子を挿入することができない大きさを有し、
前記孔加工工程では、前記貫通孔を、前記給電端子を挿入可能な大きさを有する前記加工孔に加工する
セラミックス部材の製造方法。
【請求項5】
請求項に記載するセラミックス部材の製造方法において、
前記孔加工工程では、前記端子接合工程において前記給電端子を前記端子パッドに接合する位置に配置したときに、前記加工孔の外周面が、前記給電端子のうち前記加工孔の内側に配置される部位の外周面の全体にわたって近接または接触するように、前記貫通孔を加工して前記加工孔にする
セラミックス部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内部電極と端子パッドを備えるセラミックス部材、セラミックス部材を用いた保持装置、及び、セラミックス部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部電極と端子パッドを備えるセラミックス部材が開示されている。このセラミックス部材は、内部に設けられた内部電極、及び、内部電極に電気的に接続された端子パッド、を有するセラミックス基板と、セラミックス基板の外部から第1方向(セラミックス基板の厚み方向)に延び、端子パッドに接合された給電端子とを備える。セラミックス基板は、端子パッドが配置された端子孔(凹部)を有する。この端子孔は、セラミックス基板の表面に開口する有底孔であって、給電端子が挿入され、当該有底孔の底部に端子パッドが配置された有底孔である。この端子孔は、直径が一定の直円筒形状をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-4946号公報
【0004】
上述のセラミックス基板は、例えば、以下のように製造される。具体的には、複数のセラミックスグリーンシートを用意し、所定のセラミックスグリーンシートにビアの形成や配線層の印刷等を行う。その後、これらのセラミックスグリーンシートを積層して、熱圧着して一体物とする。なお、この一体物には、前述の端子孔が形成されている。この一体物を焼成することで、上述のセラミックス基板が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述の端子孔は、セラミックスグリーンシートからなる一体物を焼成する前に形成される。一方、セラミックスグリーンシートからなる一体物は、焼成時に収縮するが、この収縮率(割り掛け率)にはバラツキがある。このため、焼成前に形成される端子孔の直径は、焼成時に最も収縮した場合でも給電端子を挿入することができるように、余裕を持って大きめに設定される。このため、焼成後のセラミックス基板では、端子孔の外周面と給電端子の外周面との隙間が大きくなることがあった。
【0006】
このため、従来のセラミックス部材では、給電端子に対して第1方向に交差する方向に外力が作用した場合に、給電端子と端子パッドとの接合部分を支点として、給電端子が第1方向に交差する方向に曲がることによって、給電端子と端子パッドとの接合部分において応力集中が生じ、給電端子と端子パッドとの接合部分に亀裂が発生する虞があった。
【0007】
本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、給電端子と端子パッドとの接合部分に亀裂が発生し難いセラミックス部材、保持装置、及びセラミックス部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、内部に設けられた内部電極、端子パッド、及び、前記内部電極と前記端子パッドとを電気的に接続するビア導体、を有するセラミックス基板と、前記セラミックス基板の外部から第1方向に延び、前記端子パッドに接合された給電端子と、を備えるセラミックス部材において、前記セラミックス基板は、前記端子パッドが配置された内部空洞と、前記セラミックス基板の表面に開口し、前記セラミックス基板の外部と前記内部空洞とを連通する連通孔であって、前記給電端子が挿入される連通孔と、を備え、前記セラミックス基板を前記第1方向に平面視したときに、前記連通孔の外周、及び、前記端子パッドの外周が前記内部空洞の外周よりも内側に位置しており、前記連通孔の外周面が、前記給電端子のうち前記連通孔の内側に配置される部位の外周面の全体にわたって近接または接触しているセラミックス部材である。
【0009】
上述のセラミックス部材は、セラミックス基板の外部から第1方向に延び、セラミックス基板の内部空洞に配置されている端子パッドに接合された給電端子を備えている。さらに、上述のセラミックス部材では、セラミックス基板が、端子パッドが配置された内部空洞と、セラミックス基板の表面に開口し、セラミックス基板の外部と内部空洞とを連通する連通孔であって、給電端子が挿入される連通孔とを備える。従って、給電端子が挿入される端子孔として、連通孔と内部空洞とを備える。
【0010】
さらに、上述のセラミックス部材では、セラミックス基板を第1方向に平面視したときに、連通孔の外周が内部空洞の外周よりも内側に位置する関係となっている。換言すれば、連通孔を通過する位置でセラミックス基板を第1方向に切断した切断面のいずれにおいても、(連通孔の幅寸法)<(内部空洞の幅寸法)の関係を満たす。なお、幅寸法は、第1方向に直交する方向の寸法である。
【0011】
従って、上述のセラミックス部材では、平面視で連通孔の外周が内部空洞の外周と一致する(例えば、連通孔と内部空洞の直径が同等である)場合に比べて、連通孔の外周面と給電端子の外周面との隙間が小さくなる。従って、上述のセラミックス部材では、従来(例えば、特許文献1)のように端子孔を直径一定の筒状とした場合に比べて、連通孔の外周面と給電端子の外周面との隙間が小さくなる。
【0012】
これにより、給電端子に対して第1方向に交差する方向に外力が作用して、給電端子と端子パッドとの接合部分を支点として、給電端子が第1方向に交差する方向に曲げられるような場合において、給電端子の外周面を連通孔の外周面で受け止めて保持することができる。これにより、給電端子と端子パッドとの接合部分への応力集中が低減されるので、給電端子と端子パッドとの接合部分において亀裂が発生し難くなる。
【0013】
また、連通孔に挿入された給電端子の外周面と連通孔の外周面との隙間が小さくなることで、給電端子の外周面と連通孔の外周面との隙間を通じて、外部から内部空洞内に外気が進入し難くなる。これにより、内部空洞内に配置されている端子パッドが酸化し難くなる。
【0015】
そして、連通孔の外周面(すなわち、セラミックス基板のうち連通孔を構成する筒状の孔構成面)が、給電端子のうち連通孔の内側に配置される部位(以下、孔内端子部ともいう)の外周面の全体にわたって近接または接触している。なお、この態様には、連通孔の外周面(孔構成面)の一部が孔内端子部の外周面に接触し、連通孔の外周面(孔構成面)の他の部位が孔内端子部の外周面に近接する態様も含まれる。ここで、近接した状態とは、連通孔の径をE3、連通孔に配置される端子の径をE1として、接触した状態をE1/E3=1(100%)とすると、0.95≦E1/E3<1の関係を満たす状態である。
【0016】
従って、連通孔の外周面と給電端子の外周面との隙間が極めて小さくなるので、前述のように、給電端子に対して第1方向に交差する方向に外力が作用した場合でも、給電端子の外周面が連通孔の外周面によって保持されるので、給電端子と端子パッドとの接合部分への応力集中を抑制することができる。これにより、給電端子と端子パッドとの接合部分における亀裂発生を抑制することができる。さらには、給電端子の外周面と連通孔の外周面との隙間を通じて、外部から内部空洞内に外気が進入し難くなるので、内部空洞内に配置されている端子パッドが酸化し難くなる。
【0017】
上記課題を解決するためになされた本開示の別形態は、前記いずれかのセラミックス部材と、前記給電端子が内部に配置され、前記セラミックス部材の前記セラミックス基板のうち前記連通孔が開口する表面に接続された筒状の支持部材と、を有し、前記セラミックス基板のうち、前記支持部材が接続された前記表面とは反対側の表面上に対象物が保持される保持装置である。
【0018】
上述の保持装置では、筒状の支持部材内に延びる給電端子は端子パッドの接続面積に対して端子長が長いので、特に給電端子に第1方向に交差する方向の外力が作用すると接合部分へ応力が集中し、破損する可能性がある。ところが、上述の保持装置は、対象物が保持されるセラミックス基板を有するセラミックス部材として、前述したセラミックス部材を備えている。このため、前述したように、給電端子に対して第1方向に交差する方向に外力が作用した場合でも、給電端子と端子パッドとの接合部分への応力集中が抑制されるので、給電端子と端子パッドとの接合部分における亀裂発生を抑制することができる。さらには、前述したように、給電端子の外周面と連通孔の外周面との隙間を通じて、外部から内部空洞内に外気が進入し難くなるので、内部空洞内に配置されている端子パッドが酸化し難くなる。
【0019】
上記課題を解決するためになされた本開示の別形態は、内部に設けられた内部電極、及び、前記内部電極に電気的に接続された端子パッド、を有するセラミックス基板と、 前記セラミックス基板の外部から第1方向に延び、前記端子パッドに接合された給電端子と、を備えるセラミックス部材の製造方法において、 前記端子パッドが配置された内部空洞、表面に開口して外部と前記内部空洞とを連通する貫通孔、及び前記内部電極を備える、板状のセラミックス焼成体を準備する工程であって、前記セラミックス焼成体を、シート表面に露出した前記端子パッド、及び、シート内部に設けられた前記内部電極、を備える第1グリーンシート層と、前記第1グリーンシート層との接触面側に開口し、焼成後に前記内部空洞となる凹部、及び、前記凹部が開口する面とは反対側の面から前記凹部にまで延び、焼成後に前記貫通孔となる孔部、を備える第2グリーンシート層と、を圧着して焼成することにより作製する準備工程と、前記セラミックス焼成体に設けられた前記貫通孔を加工して、前記給電端子を挿入可能な加工孔にする工程であって、前記加工孔の外周面が、前記給電端子のうち連通孔の内側に配置される部位の外周面の全体にわたって近接または接触するように加工する孔加工工程と、前記孔加工工程で形成された前記加工孔に前記給電端子を挿入し、前記給電端子を前記端子パッドに接合する端子接合工程と、を含み、前記孔加工工程では、前記セラミックス焼成体を前記第1方向に平面視したときに、前記加工孔の外周が前記内部空洞の外周よりも内側に位置するように、前記貫通孔を加工するセラミックス部材の製造方法である。
【0020】
上述の製造方法では、セラミックス焼成体を第1方向(例えば、セラミックス焼成体の厚み方向)に平面視したときに、加工孔の外周が内部空洞の外周よりも内側に位置する関係となるように、孔加工工程において、セラミックス焼成体に設けられた貫通孔を加工する。なお、上述の製造方法では、給電端子が挿入される端子孔として加工孔と内部空洞とを備えるセラミックス部材を製造する。また、孔加工工程後に、セラミックス焼成体が前述のセラミックス基板になる。
【0021】
従って、上述の製造方法によって製造されるセラミックス部材では、平面視で加工孔の外周が内部空洞の外周と一致する(例えば、加工孔と内部空洞の直径が同等である)場合に比べて、加工孔の外周面と給電端子の外周面との隙間が小さくなる。従って、従来(例えば、特許文献1)のように端子孔を直径が一定の筒状とする場合に比べて、連通孔の外周面と給電端子の外周面との隙間を小さくすることができる。
【0022】
従って、上述の製造方法により製造されたセラミックス部材では、給電端子に対して第1方向に交差する方向に外力が作用して、給電端子と端子パッドとの接合部分を支点として、給電端子が第1方向に交差する方向に曲げられるような場合において、給電端子の外周面を加工孔の外周面で受け止めて保持することができる。これにより、給電端子と端子パッドとの接合部分への応力集中が抑制されるので、給電端子と端子パッドとの接合部分における亀裂発生を抑制することができる。
【0023】
また、加工孔に挿入された給電端子の外周面と連通孔の外周面との隙間が小さくなることで、給電端子の外周面と加工孔の外周面との隙間を通じて、外部から内部空洞内に外気が進入し難くなる。これにより、内部空洞内に配置されている端子パッドが酸化し難くなる。
【0024】
また、上述の製造方法では、セラミックス焼成体に設けられた貫通孔を加工して、給電端子を挿入可能な加工孔にする。このように、焼成されたセラミックス焼成体に対して加工するため、給電端子の太さに合わせて加工孔を適切に形成することができる。
【0025】
ところで、従来(例えば、特許文献1)のように端子孔を直径が一定の筒状として、端子孔の外周面と給電端子の外周面との隙間が大きい場合には、給電端子を端子パッドに接合するために、端子孔に給電端子を挿入するとき、端子孔に対する給電端子の径方向の位置決めをするための位置決め治具が必要となる。
【0026】
これに対し、上述の製造方法では、前述のように、加工孔(端子孔のうちセラミックス基板の表面側の孔)の外周面と給電端子の外周面との隙間を小さくすることができる。これにより、給電端子を端子パッドに接合するために、セラミックス基板内(端子孔内)に給電端子を第1方向に挿入するとき、加工孔によって給電端子の位置決め(第1方向に直交する方向の位置決め)をすることが可能となる。従って、上述の製造方法では、別途、位置決め治具を用意することなく、適切に、セラミックス基板内(端子孔内)に給電端子を挿入して、給電端子を端子パッドに接合することが可能となる。これにより、セラミックス部材の生産効率が向上する。
【0028】
そして、準備工程において準備するセラミックス焼成体を、上述の第1グリーンシート層と第2グリーンシート層とを圧着して焼成することにより作製する。ここで、第2グリーンシート層には、凹部が開口する面とは反対側の面から凹部にまで延びる孔部が設けられている。この孔部は、焼成後に、セラミックス焼成体の外部と内部空洞とを連通する前記貫通孔となる。従って、上述の製造方法では、焼成前の第2グリーンシート層に孔部を設けておくことにより、孔部が焼成時にガス抜き孔として機能するため、焼
成時におけるセラミックス焼成体の破損を防止できる。また、焼成前に凹部と孔部を形成することで、焼成後に内部空洞と貫通孔(加工孔)を形成するよりも、加工が容易であり加工にかかる時間を短縮することができる。さらに、グリーンシートと焼成後のセラミックス部材では、焼成収縮の影響で第1の方向に直交する方向の寸法が異なるが、加工孔は焼成後に貫通孔を給電端子のサイズに合わせて加工するため、加工孔(端子孔のうちセラミックス基板の表面側の孔)の外周面と給電端子の外周面との隙間を小さくすることができる。
【0029】
また、第1方向の平面視で、孔部を凹部の中央に設けている場合(孔部の中心が凹部の中心に一致するように孔部を設けている場合)には、焼成後の貫通孔が、前述の孔加工工程において加工孔を形成する際のセンターマークになるため、孔加工工程における孔加工を簡単かつ精度良く行うことができる。
【0030】
さらに、前記いずれかのセラミックス部材の製造方法において、前記準備工程で準備する前記セラミックス焼成体の前記貫通孔は、前記給電端子を挿入することができない大きさを有し、前記孔加工工程では、前記貫通孔を、前記給電端子を挿入可能な大きさを有する前記加工孔に加工するセラミックス部材の製造方法とすると良い。
【0031】
上述の製造方法では、給電端子を挿入することができない大きさの貫通孔を、孔加工工程において加工して、給電端子を挿入可能な大きさを有する加工孔にする。このため、給電端子の太さに合わせて加工孔を適切に形成することができる。
【0032】
さらに、前記のセラミックス部材の製造方法において、前記孔加工工程では、前記端子接合工程において前記給電端子を前記端子パッドに接合する位置に配置したときに、前記加工孔の外周面が、前記給電端子のうち前記加工孔の内側に配置される部位の外周面の全体にわたって近接または接触するように、前記貫通孔を加工して前記加工孔にするセラミックス部材の製造方法とすると良い。
【0033】
上述の製造方法によって製造したセラミックス部材では、加工孔の外周面(すなわち、セラミックス基板のうち加工孔を構成する筒状の孔構成面)が、給電端子のうち連通孔の内側に配置される部位(以下、孔内端子部ともいう)の外周面の全体にわたって近接または接触する。なお、この態様には、連通孔の外周面(孔構成面)の一部が孔内端子部の外周面に接触し、連通孔の外周面(孔構成面)の他の部位が孔内端子部の外周面に近接する態様も含まれる。
【0034】
従って、上述の製造方法によれば、加工孔の外周面と給電端子の外周面との隙間が極めて小さくなるので、前述のように、給電端子に対して第1方向に交差する方向に外力が作用した場合でも、給電端子の外周面が連通孔の外周面によって保持されるので、給電端子と端子パッドとの接合部分への応力集中を抑制することができる。これにより、給電端子と端子パッドとの接合部分における亀裂発生を抑制することができる。さらには、給電端子の外周面と連通孔の外周面との隙間を通じて、外部から内部空洞内に外気が進入し難くなるので、内部空洞内に配置されている端子パッドが酸化し難くなる。
【発明の効果】
【0035】
本開示によれば、給電端子と端子パッドとの接合部分に亀裂が発生し難いセラミックス部材、保持装置、及びセラミックス部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施形態にかかる保持装置の斜視概略図である。
図2】同保持装置の縦半断面概略図である。
図3図2のB部拡大図である。
図4】セラミックス基板を厚み方向(第1方向)に平面視したときの連通孔と内部空洞との関係を示す図である。
図5図3のC-Cの位置でセラミックス基板を切断した断面図である。
図6】実施形態にかかるセラミックス部材の製造方法を説明する図である。
図7】同セラミックス部材の製造方法を説明する他の図である。
図8】同セラミックス部材の製造方法を説明する他の図である。
図9】同セラミックス部材の製造方法を説明する他の図である。
図10】同セラミックス部材の製造方法を説明する他の図である。
図11】同セラミックス部材の製造方法の流れを示すフローチャートである。
図12】準備工程の流れを示すフローチャートである。
図13】比較形態(従来)のセラミックス部材を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示に係る実施形態であるセラミックス部材5及び保持装置1について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、保持装置1の斜視概略図である。図2は、保持装置1の縦半断面概略図であり、保持装置1の軸線AXに沿う方向(軸線方向)に、軸線AXを含む位置で保持装置1を切断した半断面図である。なお、図2では、セラミックス基板10の端子孔18の中心線CLを通る位置で保持装置1を切断している。図3は、図2のB部拡大図である。
【0038】
まず、本実施形態の保持装置1について、図面を参照しながら説明する。保持装置1は、対象物W(例えば、半導体ウエハ、図1参照)を保持しつつ所定の温度(例えば、400~800℃程度)に加熱する装置であり、サセプタとも呼ばれる。保持装置1は、例えば、成膜装置(CVD成膜装置やスパッタリング成膜装置など)やエッチング装置(プラズマエッチング装置など)といった半導体製造装置を構成する半導体製造装置用部品として使用されている。
【0039】
この保持装置1は、図1及び図2に示すように、セラミックス部材5と、支持部材20とを有する。このうち、セラミックス部材5は、保持部材であるセラミックス基板10と、細長い棒状の給電端子40とを有する。なお、本実施形態では、セラミックス基板10の厚み方向(図2において上下方向)を、基板厚み方向D1とする。基板厚み方向D1は、保持装置1の軸線AXに沿う方向(以下、軸線方向ともいう)に一致する。
【0040】
セラミックス基板10は、円板形状をなし、対象物W(例えば、半導体ウエハ)を保持する第1表面11と、第1表面11とは反対側の第2表面12とを備える。このセラミックス基板10は、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックス焼成体により形成されている。セラミックス基板10の直径は、例えば、100~500mm程度であり、セラミックス基板10の厚さ(基板厚み方向D1の寸法)は、例えば、3~30mm程度である。なお、ここでいう主成分とは、含有割合の最も多い成分(例えば、体積含有率が90vol%以上の成分)を意味する。
【0041】
このセラミックス基板10は、図3に示すように、内部に設けられた内部電極48、及び、内部電極48に電気的に接続された端子パッド42を有する。内部電極48と端子パッド42とは、ビア導体46を通じて電気的に接続されている。端子パッド42には、給電端子40が接合されている。また、セラミックス基板10の内部には、セラミックス基板10を加熱する図示しない発熱抵抗体が配置されている。
【0042】
図3に示すように、セラミックス基板10には、給電端子40が挿入される端子孔18が形成されている。この端子孔18は、セラミックス基板10の第2表面12に開口する円筒状の有底孔である。端子孔18の底部18cには、前述の端子パッド42が配置されている。端子孔18は、端子孔18の底部18cを有する直円筒状の内部空洞16と、セラミックス基板10の第2表面12に開口する直円筒状の連通孔17とからなる。連通孔17は、セラミックス基板10の外部と内部空洞16とを連通する。本実施形態では、内部空洞16の底面(端子孔18の底部18cを構成する部位)に、端子パッド42が配置されている。
【0043】
支持部材20は、図1及び図2に示すように、基板厚み方向D1に延びる円筒状の部材である。この支持部材20は、セラミックス基板10のうち連通孔17が開口する第2表面12に接続されている。支持部材20は、例えば、窒化アルミニウムやアルミナ(Al)を主成分とするセラミックス焼成体により形成されている。支持部材20の長さ(基板厚み方向D1の寸法)は、例えば、100~300mm程度である。図2に示すように、支持部材20には、支持部材20の一端面21から他端面22まで基板厚み方向D1に延びる直円筒形状の貫通孔23が形成されている。
【0044】
支持部材20の貫通孔23内には、給電端子40が挿入されている。給電端子40は、円柱状の部材であり、ニッケルやチタン等の導電性材料により形成されている。給電端子40の直径は、例えば、3~8mm程度である。なお、給電端子40は、1つの部材であっても、複数の部材の組み合わせでも構わない。
【0045】
給電端子40は、支持部材20の貫通孔23を挿通する態様で、セラミックス基板10の外部から基板厚み方向D1(第1方向)に延び、セラミックス基板10の端子孔18(連通孔17と内部空洞16)に挿入されて、内部空洞16内に配置された端子パッド42に接合されている(図2及び図3参照)。なお、本実施形態では、給電端子40が延びる第1方向が、基板厚み方向D1に一致している。
【0046】
給電端子40と端子パッド42とは、ろう付け部44によって接合されている。ろう付け部44は、例えば、Ni合金(Ni-Cr系合金など)、Au合金(Au-Ni系合金など)、純Auといった金属ろう材を用いて形成されている。給電端子40は、ろう付け部44を介して端子パッド42と電気的に接続されている。
【0047】
セラミックス基板10と支持部材20とは、セラミックス基板10の第2表面12と支持部材20の一端面21とが基板厚み方向D1に対向するように、かつ、セラミックス基板10と支持部材20とが互いに同軸となるように配置されている。セラミックス基板10と支持部材20とは、公知の接合材料により形成された接合部30を介して接合されている。
【0048】
ところで、本実施形態のセラミックス部材5では、セラミックス基板10を基板厚み方向D1(第1方向)に平面視(平面透視)したときに、図4に示すように、連通孔17の外周(外周面17b)が内部空洞16の外周(外周面16b)よりも内側に位置する関係となっている。換言すれば、連通孔17を通過する位置でセラミックス基板10を基板厚み方向D1(第1方向)に切断した切断面のいずれにおいても、(連通孔17の幅寸法)<(内部空洞16の幅寸法)の関係を満たす(図3参照)。なお、幅寸法とは、基板厚み方向D1(第1方向)に直交する方向の寸法である。また、図4は、セラミックス基板10を、第2表面12側から基板厚み方向D1(第1方向)に平面視した部分拡大平面図である。
【0049】
詳細には、本実施形態のセラミックス部材5では、連通孔17は、一定の直径E3で基板厚み方向D1に延びる直円筒形状をなし、内部空洞16は、一定の直径E4で基板厚み方向D1に延びる直円筒形状をなしている(図3及び図4参照)。さらには、図4に示すように、連通孔17と内部空洞16とが同軸(中心線が同一となるよう)に形成されており、連通孔17の直径E3が内部空洞16の直径E4よりも小さくされている。
【0050】
従って、本実施形態のセラミックス部材5では、平面視で連通孔の外周が内部空洞の外周と一致する(例えば、連通孔と内部空洞の直径が同等である)場合に比べて、連通孔17の外周面17bと給電端子40の外周面との隙間が小さくなる。すなわち、セラミックス基板10のうち連通孔17を構成する筒状の孔構成面17cと、給電端子40のうち連通孔17の内側に配置される部位(孔内端子部41とする)の外周面41bと、の隙間が小さくなる(図3及び図4参照)。
【0051】
従って、本実施形態のセラミックス部材5では、従来(例えば、特許文献1)のように端子孔を直径が一定の筒状とした場合に比べて、連通孔17の外周面17bと給電端子40の外周面との隙間が小さくなる。ここで、従来のように端子孔を直径が一定の筒状としたセラミックス部材を、比較形態にかかるセラミックス部材105として図13に示す。
【0052】
比較形態にかかるセラミックス部材105は、給電端子40が挿入される端子孔として、直径が一定の円筒形状をなす端子孔118を有する(図13参照)。端子孔118は、焼成によりセラミックス基板110となる前のセラミックスグリーンシートからなる一体物の状態で形成される。一方、セラミックスグリーンシートからなる一体物は、焼成時に収縮するが、この収縮率(割り掛け率)にはバラツキがある。このため、焼成前に形成される端子孔118の直径は、焼成時に最も収縮した場合でも給電端子40を挿入することができるように、余裕を持って大きめに設定される。このため、焼成後のセラミックス基板110では、図13に示すように、端子孔118の外周面118bと給電端子40の外周面(孔内端子部141の外周面141b)との隙間が大きくなる。
【0053】
このため、比較形態(従来)のセラミックス部材105では、給電端子40に対して第1方向(基板厚み方向D1)に交差する方向(例えば、基板厚み方向D1に直交する方向)に外力が作用した場合に、給電端子40と端子パッド42との接合部分(例えば、ろう付け部44)を支点として、給電端子40が第1方向(基板厚み方向D1)に交差する方向に曲がることによって、給電端子40と端子パッド42との接合部分において応力集中が生じ、給電端子40と端子パッド42との接合部分(例えば、ろう付け部44)に亀裂が発生する虞があった。
【0054】
これに対し、本実施形態のセラミックス部材5では、前述したように、セラミックス基板10を基板厚み方向D1(第1方向)に平面視(平面透視)したときに、図4に示すように、連通孔17の外周(外周面17b)が内部空洞16の外周(外周面16b)よりも内側に位置している。詳細には、同軸に形成されている連通孔17と内部空洞16とにおいて、連通孔17の直径E3が内部空洞16の直径E4よりも小さくされている。
【0055】
従って、給電端子40に対して基板厚み方向D1(第1方向)に交差する方向に外力が作用して、給電端子40と端子パッド42との接合部分(例えば、ろう付け部44)を支点として、給電端子40が基板厚み方向D1に交差する方向に曲げられるような場合において、給電端子40の外周面(詳細には、孔内端子部41の外周面41b)を、連通孔17を構成する孔構成面17cで受け止めて保持することができる。これにより、給電端子40と端子パッド42との接合部分への応力集中が緩和されるので、給電端子40と端子パッド42との接合部分(例えば、ろう付け部44)における亀裂発生を低減することができる。
【0056】
また、連通孔17に挿入された給電端子40の外周面(詳細には、孔内端子部41の外周面41b)と連通孔17の外周面17b(孔構成面17c)との隙間が小さくなることで、給電端子40の外周面(詳細には、孔内端子部41の外周面41b)と連通孔17の外周面17b(孔構成面17c)との隙間を通じて、外部から内部空洞16内に外気が進入し難くなる。これにより、内部空洞16内に配置されている端子パッド42が酸化し難くなる。
【0057】
特に、本実施形態では、図5に示すように、連通孔17の直径E3と給電端子40の孔内端子部41の直径E1との差が極めて小さい。このため、連通孔17の外周面17b(孔構成面17c)が、給電端子40の孔内端子部41の外周面41bの全体にわたって近接または接触している。なお、この態様には、連通孔17の外周面17b(孔構成面17c)の一部が孔内端子部41の外周面41bに接触し、孔内端子部41の外周面41bの他の部位が孔内端子部41の外周面41bに近接する態様も含まれる。
【0058】
すなわち、図5には、給電端子40の軸線が連通孔17の中心線に一致している(換言すれば、給電端子40が連通孔17に対して同軸に配置されている)場合を例示しており、この場合は、連通孔17の外周面17b(孔構成面17c)が、給電端子40の孔内端子部41の外周面41bの全体にわたって近接している。しかしながら、本実施形態は、給電端子40の軸線が連通孔17の中心線に対して径方向にずれている(換言すれば、給電端子40が連通孔17に対して同軸に配置されていない)場合も含み、この場合は、連通孔17の外周面17b(孔構成面17c)の一部が孔内端子部41の外周面41bに接触し、孔内端子部41の外周面41bの他の部位が孔内端子部41の外周面41bに近接する。
【0059】
従って、本実施形態では、連通孔17の外周面17b(孔構成面17c)と給電端子40の孔内端子部41の外周面41bとの隙間が極めて小さくなるので、前述のように、給電端子40に対して基板厚み方向D1(第1方向)に交差する方向に外力が作用した場合でも、給電端子40の孔内端子部41の外周面41bが連通孔17の外周面17b(孔構成面17c)によって保持されるので、給電端子40と端子パッド42との接合部分(例えば、ろう付け部44)への応力集中を抑制することができる。これにより、給電端子40と端子パッド42との接合部分における亀裂発生を抑制することができる。さらには、給電端子40の孔内端子部41の外周面41bと連通孔17の外周面17b(孔構成面17c)との隙間を通じて、外部から内部空洞16内に外気が進入し難くなるので、内部空洞16内に配置されている端子パッド42が酸化し難くなる。
【0060】
次に、本実施形態のセラミックス部材5及び保持装置1の製造方法について説明する。図11は、セラミックス部材5の製造方法の流れを示すフローチャートである。まず、ステップS1(準備工程)において、端子パッド42が配置された内部空洞16、第2表面12に開口して外部と内部空洞16とを連通する貫通孔57、及び、内部電極48を備える板状のセラミックス焼成体50(図8参照)を準備する。なお、本実施形態では、セラミックス焼成体50を、以下のようにして作製している。図12は、準備工程の流れを示すフローチャートである。
【0061】
具体的には、図12に示すように、ステップS11において、第1グリーンシート層60を用意する。第1グリーンシート層60は、図6に示すように、複数のグリーンシート(グリーンシート60A~60F)が積層された積層体であり、第1表面61と、これとは反対側の第2表面62とを有する。この第1グリーンシート層60は、第2表面62に露出した端子パッド42、内部に設けられた内部電極48、及び、端子パッド42と内部電極48とを接続するビア導体46を備える。
【0062】
また、ステップS12において、第2グリーンシート層70を用意する。第2グリーンシート層70は、図6に示すように、複数のグリーンシート(グリーンシート70A~70D)が積層された積層体であり、第1表面71と、これとは反対側の第2表面72とを有する。この第2グリーンシート層70は、第1グリーンシート層60と接触する第1表面71(接触面)側に開口する凹部76、及び、凹部76が開口する第1表面71とは反対側の第2表面72から凹部76にまで延びる孔部77を備える。
【0063】
凹部76は、一定の直径で厚み方向(図6において上下方向)に延びる直円筒形状をなしている。また、孔部77も、一定の直径(凹部76よりも小径)で厚み方向に延びる直円筒形状をなしている。凹部76と孔部77とは同軸に(中心線が同一となるように)形成されている。なお、凹部76は、後述する焼成工程を行うことによって内部空洞16となる。また、孔部77は、後述する焼成工程を行うことによって貫通孔57となる。このように、焼成前に凹部76と孔部77を形成することで、焼成後に内部空洞と貫通孔(加工孔)を形成するよりも、加工が容易であり加工にかかる時間を短縮することができる。
【0064】
次いで、ステップS13(圧着工程)において、第1グリーンシート層60と第2グリーンシート層70とを圧着(熱圧着)して、図7に示す一体物80とする。具体的には、凹部76の中心線と端子パッド42の中心線とが一致する態様で、凹部76の内部に端子パッド42が収容されるように、第1グリーンシート層60の第2表面62と第2グリーンシート層70の第1表面71とを接触させる(図7参照)。この状態で、第1グリーンシート層60と第2グリーンシート層70とを熱圧着することで、一体物80を作製する。
【0065】
その後、ステップS14(焼成工程)において、所定の温度で一体物80を焼成することで、図8に示すようなセラミックス焼成体50が得られる。ところで、孔部77は、一体物80の外部と凹部76とを連通する孔である。このため、この孔部77が、ステップS14(焼成工程)において、焼成時のガス抜き孔として機能する。これにより、焼成時における一体物80(セラミックス焼成体50)の破損を防止できる。このステップS14(焼成工程)において、凹部76が内部空洞16となり、孔部77が貫通孔57となる。なお、内部空洞16と貫通孔57とは、同軸(中心線が同一)となる。
【0066】
また、ステップS1(準備工程)において準備されたセラミックス焼成体50の貫通孔57は、給電端子40を挿入することができない大きさを有する。具体的には、セラミックス焼成体50の貫通孔57は、一定の直径E2で基板厚み方向D1に延びる直円筒形状をなしている(図8参照)。また、給電端子40の孔内端子部41は、一定の直径E1で延びる直円柱形状をなしている(図10参照)。そして、(貫通孔57の直径E2)<(給電端子40の孔内端子部41の直径E1)の関係を満たしている。
【0067】
次に、ステップS2(孔加工工程)に進み、セラミックス焼成体50に設けられた貫通孔57を加工して、給電端子40を挿入可能な加工孔(前述の連通孔17)にする(図9参照)。具体的には、公知の機械加工によって、貫通孔57を拡径して、給電端子40を挿入可能な大きさを有する加工孔(連通孔17)にする。これにより、セラミックス焼成体50が、セラミックス基板10となる。
【0068】
より具体的には、ステップS2(孔加工工程)では、セラミックス焼成体50を厚み方向(基板厚み方向D1に一致する)に平面視したときに、加工孔17(連通孔17)の外周(外周面17b)が内部空洞16の外周(外周面16b)よりも内側に位置する関係となるように、セラミックス焼成体50に設けられた貫通孔57を加工する(図4参照)。詳細には、加工孔(連通孔17)と内部空洞16とが同軸(中心線が同一)となるようにして、加工孔(連通孔17)の直径E3が内部空洞16の直径E4よりも小さくなるように、セラミックス焼成体50に設けられた貫通孔57を加工して、加工孔(連通孔17)を形成する。これにより、グリーンシートと焼成後のセラミックス部材では、焼成収縮の影響でセラミックス基板10の厚み方向D1(第1方向)に直交する方向の寸法が異なるが、加工孔(連通孔17)は焼成後に貫通孔57を給電端子40のサイズに合わせて加工するため、加工孔の外周面17bと給電端子40の外周面(詳細には、孔内端子部41の外周面41b)との隙間を小さくすることができる。なお、貫通孔57を加工した加工孔が前述の連通孔17となり、連通孔17と内部空洞16とによって、端子孔18が形成される。
【0069】
詳細には、ステップS2(孔加工工程)では、後のステップS3(端子接合工程)において給電端子40を端子パッド42に接合する位置に配置したときに、加工孔(連通孔17)の外周面17bが、給電端子40の孔内端子部41の外周面41bの全体にわたって近接または接触するように、貫通孔57を加工して加工孔(連通孔17)にする。すなわち、ステップS2(孔加工工程)では、貫通孔57を機械加工して、給電端子40の孔内端子部41の直径E1よりも僅かに大きな直径E3を有する加工孔(連通孔17)を形成する(図5参照)。具体的には、例えば、0.95≦E1/E3<1の関係を満たすように加工孔(連通孔17)を形成する。
【0070】
従って、平面視で加工孔(連通孔17)の外周(外周面17b)を内部空洞16の外周(外周面16b)と一致させる(具体的には、加工孔である連通孔17の直径を内部空洞16の直径と同等にする)場合に比べて、加工孔(連通孔17)の外周面17bと給電端子40の孔内端子部41の外周面41bとの隙間が小さくなる。従って、従来(例えば、特許文献1)のように、端子孔118を直径が一定の筒状とする場合(図13参照)に比べて、連通孔17の外周面17b(孔構成面17c)と給電端子40の外周面(詳細には、孔内端子部41の外周面41b)との隙間を小さくすることができる。
【0071】
また、本実施形態では、第2グリーンシート層70において凹部76と孔部77とが同軸に(中心線が同一となるように)形成されているので、焼成後のセラミックス焼成体50において、内部空洞16と貫通孔57とが同軸(中心線が同一)となる。これにより、貫通孔57が、ステップS2(孔加工工程)において加工孔(連通孔17)を形成する際のセンターマークになるため、ステップS2(孔加工工程)における孔加工を簡単かつ精度良く行うことができる。
【0072】
また、本実施形態では、セラミックス焼成体50に設けられた貫通孔57を機械加工して、給電端子40を挿入可能な加工孔(連通孔17)にする。このように、焼成されたセラミックス焼成体50に対して加工するため、給電端子40の太さ(直径E1)に合わせて加工孔(連通孔17)を適切に形成することができる。
【0073】
また、本実施形態では、セラミックス焼成体50において、内部空洞16の深さH(基板厚み方向D1の寸法)を約1.0mm程度とすることで、貫通孔57の下端57d(貫通孔57と内部空洞16との境界)から端子パッド42の表面42b(上面)までの距離L(基板厚み方向D1の距離)を、0.5mm以上確保している(図8参照)。このような距離Lを確保していることで、第2表面12側から内部空洞16に向かって加工刃等によって貫通孔57を加工したときに、加工刃等が端子パッド42の表面42b(上面)に接触して端子パッド42が損傷することを防止できる。なお、端子パッド42の厚みは、20~30μm程度である。
【0074】
次に、ステップS3(端子接続工程)に進み、ステップS2(孔加工工程)で形成された加工孔(連通孔17)に給電端子40を挿入し、給電端子40を端子パッド42に接合する(図10参照)。具体的には、給電端子40の先端面40cに金属ろう材(ろう付け部44を形成する部材)を塗布した状態で、給電端子40の先端面40c側から、給電端子40を端子孔18(連通孔17及び内部空洞16)内に挿入し、金属ろう材を介して給電端子40の先端面40cを端子パッド42に接触させる。この状態で、金属ろう材を加熱溶融させた後、冷却固化させることで、金属ろう材からなるろう付け部44によって、給電端子40を端子パッド42に接合することができる(図10参照)。これにより、本実施形態のセラミックス部材5が完成する。
【0075】
ところで、従来(例えば、特許文献1)のように、端子孔118を直径が一定の筒状として、端子孔118の外周面118bと給電端子40の外周面(詳細には、給電端子40のうち端子孔118内に配置される孔内端子部141の外周面141b)との隙間が大きい場合(図13参照)には、給電端子40を端子パッド42に接合するために、端子孔118に給電端子40を挿入するとき、端子孔118に対する給電端子40の径方向の位置決めをするための位置決め治具が必要であった。
【0076】
これに対し、本実施形態の製造方法では、前述のように、連通孔17の直径E3を内部空洞16の直径E4よりも小さくすることによって、端子孔18のうちセラミックス基板10の第2表面12に開口する加工孔(連通孔17)の外周面17bと、給電端子40の孔内端子部41の外周面41bとの隙間を小さくすることができる。詳細には、加工孔(連通孔17)を、その外周面17bが給電端子40の孔内端子部41の外周面41bの全体にわたって近接または接触するような大きさとしている。すなわち、加工孔(連通孔17)を、給電端子40の孔内端子部41の直径E1よりも僅かに大きな直径E3を有する加工孔(連通孔17)としている(図5参照)。
【0077】
これにより、給電端子40を端子パッド42に接合するために、セラミックス基板10の端子孔18内に給電端子40を挿入するとき、加工孔(連通孔17)によって給電端子40の位置決め(基板厚み方向D1に直交する方向の位置決め)をすることができる。これにより、端子パッド42に対する給電端子40の位置(基板厚み方向D1に直交する方向の位置)を定めることができる。従って、本実施形態の製造方法では、別途、位置決め治具を用意することなく、適切に、セラミックス基板10の端子孔18内に給電端子40を挿入して、給電端子40を端子パッド42に接合することが可能となる。これにより、セラミックス部材5の生産効率が向上する。
【0078】
さらには、前述のように、給電端子40に対して基板厚み方向D1(第1方向)に交差する方向に外力が作用した場合でも、給電端子40の孔内端子部41の外周面41bが連通孔17の外周面17b(孔構成面17c)によって保持されるので、給電端子40と端子パッド42との接合部分(例えば、ろう付け部44)への応力集中を抑制することができる。これにより、給電端子40と端子パッド42との接合部分における亀裂発生を抑制することができる。さらには、給電端子40の孔内端子部41の外周面41bと連通孔17の外周面17b(孔構成面17c)との隙間を通じて、外部から内部空洞16内に外気が進入し難くなるので、内部空洞16内に配置されている端子パッド42が酸化し難くなる。
【0079】
また、セラミックス焼成体からなる円筒形状の支持部材20を用意し、セラミックス基板10と支持部材20とを接合する。具体的には、セラミックス基板10の第2表面12と支持部材20の一端面21とが基板厚み方向D1に対向するように、かつ、セラミックス基板10と支持部材20とが互いに同軸となるようにして、貫通孔23内に給電端子40が挿入された支持部材20の一端面21とセラミックス基板10の第2表面12とを、公知の接合材料により形成された接合部30によって接合する(図2参照)。これにより、本実施形態の保持装置1が製造される。
【0080】
以上説明した実施形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、実施形態では、本開示を保持装置1、及び、保持装置1に用いるセラミックス部材5に適用した場合を例示した。しかしながら、本開示は、保持装置1及びこれに用いるセラミックス部材5に限られることなく、表面に対象物を保持する保持装置全般、及び、これに用いられるセラミックス部材の全般について適用することができる。
【0081】
また、実施形態では、ステップS3(端子接続工程)を行った後、セラミックス基板10と支持部材20とを接合するようにした。しかしながら、セラミックス基板10と支持部材20とを接合した後、ステップS3(端子接続工程)を行うようにしても良い。この場合は、セラミックス部材5が完成すると同時に保持装置1が完成する。
【0082】
また、実施形態では、第1グリーンシート層60を6枚のグリーンシート(グリーンシート60A~60F)によって構成し、第2グリーンシート層70を4枚のグリーンシート(グリーンシート70A~70D)によって構成する例を示した。しかしながら、第1グリーンシート層60を構成するグリーンシートの枚数、及び、第2グリーンシート層70を構成するグリーンシートの枚数は、上記例に限定されるものではなく、いずれの枚数のグリーンシートによって構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0083】
1 保持装置
5 セラミックス部材
10 セラミックス基板(保持部材)
20 支持部材
11 第1表面
12 第2表面
16 内部空洞
16b 外周面(外周)
17 連通孔、加工孔
17b 外周面(外周)
17c 孔構成面
18 端子孔
40 給電端子
41 孔内端子部
41b 外周面
42 端子パッド
48 内部電極
50 セラミックス焼成体
57 貫通孔
60 第1グリーンシート層
62 第2表面(シート表面)
70 第2グリーンシート層
71 第1表面(接触面)
72 第2表面
76 凹部
77 孔部
D1 基板厚み方向(第1方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13