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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】変速機付モータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/46 20060101AFI20240605BHJP
   F03C 2/00 20060101ALI20240605BHJP
   F16D 1/02 20060101ALI20240605BHJP
   H02K 7/116 20060101ALN20240605BHJP
【FI】
F16H1/46
F03C2/00 A
F16D1/02 210
H02K7/116
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020120765
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022024281
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
(72)【発明者】
【氏名】松阪 慶太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-036147(JP,U)
【文献】特開2017-032083(JP,A)
【文献】特開2016-141311(JP,A)
【文献】特開2019-158112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/46
F03C 2/00
F16D 1/02
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸が回転駆動されるモータと、
前記モータ軸に連結されるドライブシャフトを有し前記ドライブシャフトを通じて伝達される前記モータ軸の回転を変速して出力する変速機と、を備え、
前記モータの前記モータ軸及び前記変速機の前記ドライブシャフトの一方には端部に係合部が形成され、他方には前記係合部が係合する係合凹部が端面に形成され、
前記係合部が形成される前記モータ軸及び前記ドライブシャフトの一方の外周には、前記係合凹部が形成される前記モータ軸及び前記ドライブシャフトの他方における前記端面に当接して前記モータ軸と前記ドライブシャフトとを前記モータ軸及び前記ドライブシャフトの軸方向において位置決めする当接部が設けられることを特徴とする変速機付モータ。
【請求項2】
前記当接部は、前記モータ軸及び前記ドライブシャフトの一方の外周に着脱可能に取り付けられるスナップリングであることを特徴とする請求項1に記載の変速機付モータ。
【請求項3】
前記当接部は、前記モータ軸及び前記ドライブシャフトの一方と一体に形成されて、前記モータ軸及び前記ドライブシャフトの一方の外周から径方向外側に突出する突起部であることを特徴とする請求項1に記載の変速機付モータ。
【請求項4】
前記係合部は、前記モータ軸及び前記ドライブシャフトの一方の外周に形成されるスプライン部であり、
前記当接部は、前記スプライン部の不完全部の外周に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の変速機付モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機付モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、油圧モータの出力側に遊星歯車機構を備えた減速機付モータが開示されている。この減速機付モータでは、遊星減速機構を備える減速機組立体の入力側部材である入力軸が、油圧モータのモータ軸に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平7-28440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の減速機付モータでは、遊星減速機構の入力軸が、油圧モータのモータ軸の端面に形成される凹部に挿入されて油圧モータのモータ軸に連結される。減速機構の入力軸の先端面が油圧モータのモータ軸の凹部の底面に当接することで、減速機構の入力軸と油圧モータのモータ軸とが軸方向に位置決めされている。
【0005】
このような構成において、減速機構の入力軸と油圧モータのモータ軸との位置決め精度を確保するには、互いに当接する減速機構の入力軸の先端面と油圧モータのモータ軸に形成される凹部の底面とを機械加工によって平坦面に精度よく加工する必要がある。しかしながら、一般に、凹部の底面の加工は、凹部内に工具を挿入して行うなどの必要があって煩雑なものであり、製造コストの増加を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、変速機付モータの製造コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、変速機付モータであって、モータのモータ軸及び変速機のドライブシャフトの一方には端部に係合部が形成され、他方には係合部が係合する係合凹部が端面に形成され、係合部が形成されるモータ軸及びドライブシャフトの一方の外周には、係合凹部が形成されるモータ軸及びドライブシャフトの他方における端面に当接してモータ軸とドライブシャフトとをモータ軸及びドライブシャフトの軸方向において位置決めする当接部が設けられることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、当接部が、モータ軸及びドライブシャフトの一方の外周に着脱可能に取り付けられるスナップリングであることを特徴とする。
【0009】
これらの本発明では、モータのモータ軸と変速機のドライブシャフトとは、一方の外周に設けられる当接部と他方の端面とが当接することで位置決めされる。これにより、モータ軸及びドライブシャフトの他方に形成される係合凹部の底面を、モータ軸及びドライブシャフトの一方に当接させて位置決めする必要がない。よって、精度確保のための係合凹部の底面への加工を省略することができる。
【0010】
また、本発明は、当接部が、モータ軸及びドライブシャフトの一方と一体に形成されて、モータ軸及びドライブシャフトの一方の外周から径方向外側に突出する突起部であることを特徴とする。
【0011】
この発明では、モータ軸及びドライブシャフトの一方への当接部の取付忘れの発生のおそれがないため、モータ軸及びドライブシャフトの他方と当接部との当接をより確実に行うことができる。
【0012】
また、本発明は、係合部が、モータ軸及びドライブシャフトの一方の外周に形成されるスプライン部であり、当接部は、スプライン部の不完全部の外周に設けられることを特徴とする。
【0013】
この発明では、スプライン結合の結合長さを確保しつつ、モータ軸の軸方向へ変速機付モータを小型化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、変速機付モータの製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る変速機付液圧モータの断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るモータのモータ軸と変速機のドライブシャフトとの連結構造を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態の変形例に係るモータのモータ軸と変速機のドライブシャフトとの連結構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る変速機付モータ100について説明する。
【0017】
変速機付モータ100は、例えば、油圧ショベルなどのクローラ式作業機の車軸部に設けられてクローラベルトを駆動する走行モータに用いられる。
【0018】
図1に示すように、変速機付モータ100は、ハウジング1と、駆動源としての油圧モータ20(モータ)と、油圧モータ20のモータ軸21の出力回転を変速する変速機30と、を備える。
【0019】
ハウジング1は、固定ハウジング10と、固定ハウジング10に対して回転作動する円筒状の回転ハウジング15と、を備える。回転ハウジング15の外周面にはスプロケット(図示せず)が連結される。回転ハウジング15とスプロケットとが共に回転することで、スプロケットに噛み合うクローラベルト(図示せず)が循環して車両が走行する。
【0020】
固定ハウジング10及び回転ハウジング15は、クローラベルトが循環する経路の内側に配置される。回転ハウジング15は、外部部材としての車体101に連結される固定ハウジング10に対してベアリング3を介して回転自在に支持され、その中心軸を中心として回転作動する。
【0021】
固定ハウジング10は、本体部11の外周面から突出して形成され車体101に取り付けられる固定フランジ部12を有する。
【0022】
回転ハウジング15の開口端15aの内周には、開口端15aを閉塞する円盤状の開口端カバー17が着脱可能に取り付けられる。
【0023】
回転ハウジング15の内面と、固定ハウジング10の本体部11の外面と、開口端カバー17と、によって後述する変速機構40を収容するギヤ室4が画成される。ギヤ室4には、変速機構40を潤滑する潤滑油が充填される。
【0024】
回転ハウジング15には、外周面から環状に突出する回転フランジ部16が形成される。上述のスプロケットは、複数のボルト(図示せず)によって回転フランジ部16に締結され、回転ハウジング15と共に回転作動する。
【0025】
固定ハウジング10と回転ハウジング15の間には、フローティングシール5が設けられる。フローティングシール5は、回転ハウジング15の回転作動時に、変速機30内の作動油が外部に漏出しないように密封するとともに、外部から異物が変速機30内に侵入することを防止する。
【0026】
また、固定ハウジング10と回転ハウジング15の間には、フローティングシール5の外側に外部からの泥などの異物が侵入することを防止するラビリンスシール6が形成される。ラビリンスシール6は、固定ハウジング10と回転ハウジング15の互いに対向する端面同士の間隙によって形成される。
【0027】
油圧モータ20は、固定ハウジング10の本体部11の内部に設けられる。油圧モータ20は、例えば、作動油(作動液)の給排によってモータ軸21が回転駆動される斜板式ピストンモータである。なお、モータは、油圧モータ20(液圧モータ)以外であってもよく、例えば、電動モータなどを用いてもよい。油圧モータ20は、公知の構成を採用できるため、図1ではモータ軸21を除いて簡略化して図示しており、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0028】
変速機30は、油圧モータ20のモータ軸21と同軸的に連結されモータ軸21の回転が伝達されるドライブシャフト31と、回転ハウジング15の内部に収容されドライブシャフト31を変速する変速機構40と、を有する。
【0029】
変速機構40は、遊星歯車機構である。変速機構40は、ドライブシャフト31に設けられるサンギヤ41と、回転ハウジング15の内壁に設けられるインナーギヤ42と、サンギヤ41とインナーギヤ42との双方に噛み合う複数のプラネタリギヤ43と、各プラネタリギヤ43を支持するプラネタリキャリア44と、プラネタリキャリア44と噛み合う2段目のサンギヤ45と、サンギヤ45とインナーギヤ42との双方に噛み合う複数のプラネタリギヤ46と、を備える。変速機構40は、ドライブシャフト31を通じて伝達される油圧モータ20のモータ軸21の出力回転を変速して回転ハウジング15に伝達する。
【0030】
次に、図2を参照して、油圧モータ20のモータ軸21と変速機30のドライブシャフト31との連結構造について説明する。
【0031】
モータ軸21とドライブシャフト31とは、スプライン結合によって互いに同軸的に連結される。これにより、油圧モータ20のモータ軸21が回転駆動されると、モータ軸21の回転に伴ってドライブシャフト31も回転する。なお、モータ軸21とドライブシャフト31との結合は、スプライン結合に限定されず、モータ軸21の回転に伴ってドライブシャフト31が回転するように構成される限り、任意の構成とすることができる。
【0032】
図2に示すように、ドライブシャフト31における油圧モータ20側の端部には、外周にスプライン歯32aが形成される係合部としてのスプライン部32が設けられる。また、油圧モータ20側のドライブシャフト31の端部の端面(以下、「先端面31a」とも称する。)は、ドライブシャフト31の中心軸に垂直な平坦面として形成される。ドライブシャフト31の先端面31aは、モータ軸21に対向する面(対向面)である。
【0033】
ドライブシャフト31側のモータ軸21の端面(以下、「先端面21a」とも称する。)には、ドライブシャフト31の端部が挿入され、内周にスプライン溝22aが形成される係合凹部としてのスプライン穴22が形成される。スプライン穴22は、底面22bを有する円形穴である。モータ軸21の先端面21a及びスプライン穴22の底面22bは、モータ軸21に垂直な平坦面である。また、先端面21aは、ドライブシャフト31に対向する面(対向面)である。
【0034】
ドライブシャフト31のスプライン部32がモータ軸21のスプライン穴22に係合(スプライン結合)することで、ドライブシャフト31とモータ軸21とが連結される。
【0035】
ドライブシャフト31の外周、具体的には、スプライン部32における不完全部32bの外周には、環状の取付溝31bが形成される。取付溝31bには、ドライブシャフト31の径方向外側に突出する円環状の当接部としてのスナップリング33が設けられる。スナップリング33は、ドライブシャフト31の取付溝31bに着脱可能に取り付けられる。なお、スプライン部32の不完全部32b(不完全スプライン部)とは、スプライン歯32aの加工によって形成される、スプラインとして機能しない部分であり、スプライン歯32aと当該スプライン歯32aが形成されていない部分との境界部に相当する部分である。図2では、二点鎖線及び矢印によって不完全部32bを模式的に示している。
【0036】
スナップリング33の外径は、ドライブシャフト31の外周に装着された状態で、モータ軸21のスプライン穴22の内径よりも大きく、モータ軸21の端部の外径よりも小さくなるように設定される。また、スナップリング33の外径は、ドライブシャフト31の外周に装着された状態で、サンギヤ45(図1参照)の内径よりも小さく形成される。これによれば、スナップリング33を装着した状態であってもドライブシャフト31をサンギヤ45の内周に挿入することができるので、変速機30の組み立て性が向上する。
【0037】
ドライブシャフト31のスプライン部32は、スナップリング33がモータ軸21の先端面21aに当接するまでモータ軸21のスプライン穴22に挿入される。このようにしてスナップリング33がモータ軸21の先端面21aに当接することで、ドライブシャフト31とモータ軸21との軸方向の位置決めがされる。スナップリング33によってドライブシャフト31とモータ軸21との軸方向の位置決めをすることで、スプライン結合の結合長さが確保され、結合長さの不足による応力集中の発生が防止されて耐久性が確保される。
【0038】
スナップリング33がモータ軸21の先端面21aに当接した状態では、ドライブシャフト31の先端面31aとモータ軸21のスプライン穴22の底面22bとは、互いに接触せず、モータ軸21(ドライブシャフト31)の軸方向(図2中左右方向)において離間している。よって、ドライブシャフト31の先端面31aとスプライン穴22の底面22bとの間には、隙間が形成される。
【0039】
ここで、ドライブシャフトとモータ軸とを軸方向に位置決めするには、スナップリングを設けず、スプライン穴に挿入されるドライブシャフトの先端面とスプライン穴の底面とを当接させることも考えられる。この場合には、位置決め精度を確保するために、ドライブシャフトの先端面とスプライン穴の底面とをそれぞれ精度よく平坦に機械加工(仕上げ加工)する必要がある。しかしながら、スプライン穴の底面への加工は、スプライン穴に工具を挿入して加工するなどの必要があり、煩雑である。また、スプライン穴の底面への加工は、例えば、モータ軸の外周の加工やスプライン穴のスプライン溝の加工に対して、工具変更や、工作機械におけるワーク(モータ軸)の取付姿勢の変更(再チャック)といった段取り替えの必要があり、段取り替えなしに連続して行うことができない場合がある。よって、スプライン穴の底面への加工を行うことで、製造工数が増加し、変速機付モータの製造コストの増加を招くおそれがある。
【0040】
これに対し、本実施形態では、ドライブシャフト31の外周に設けられるスナップリング33がモータ軸21の先端面21aに当接することでドライブシャフト31とモータ軸21が位置決めされる。このため、ドライブシャフト31の先端面31aとモータ軸21のスプライン穴22の底面22bとは接触せずに離間している。これにより、スプライン穴22の底面22bを平坦面に加工する仕上げ加工の必要がなくなる。また、スナップリング33の加工とモータ軸21の先端面21aの加工は、スプライン穴22の底面22bの加工と比べて容易に行うことができる。したがって、本実施形態では、変速機付モータ100の製造工程を簡略化できる。
【0041】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0042】
変速機付モータ100では、油圧モータ20のモータ軸21と変速機30のドライブシャフト31とは、ドライブシャフト31の外周に設けられるスナップリング33とモータ軸21の先端面21aとが当接することで位置決めされる。これにより、モータ軸21に形成されるスプライン穴22の底面22bを、モータ軸21とドライブシャフト31との位置決めのためにドライブシャフト31の先端面31aに当接させる必要がない。よって、精度確保のためのスプライン穴22の底面22bへの仕上げ加工を省略することができる。したがって、変速機付モータ100の製造コストを低減できる。
【0043】
また、スプライン穴22の底面22bへの仕上げ加工を省略でき、これに伴いドライブシャフト31の先端面31aを仕上げ加工する必要もなくなる。このため、スプライン穴22やスプライン部32を含めたドライブシャフト31の端部は、機械加工ではなく鍛造等の塑性加工によって形成することができる。これにより、材料歩留まりが向上し変速機付モータ100の製造コストをさらに抑制することができる。なお、ドライブシャフト31は、機械加工によって加工されてもよい。
【0044】
また、スナップリング33は、ドライブシャフト31のスプライン部32の不完全部32bの外周に設けられる。これにより、ドライブシャフト31においてスプライン部32が形成されていない部分の外周にスナップリング33が設けられる場合と比較して、モータ軸21の軸方向において変速機付モータ100を小型化することができる。また、スプラインとして機能しない(スプライン溝22aに係合しない)不完全部32bにスナップリング33が設けられるため、不完全部32bが占める軸方向の領域を有効に利用することができ、スプライン結合の結合長さを確保しつつ、変速機付モータ100を軸方向に小型化できる。また、不完全部32bにスナップリング33が設けられることで、スプライン穴22の内周のスプライン溝22aが不完全部32bに係合することを防止できる。
【0045】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0046】
上記実施形態では、スナップリング33は、スプライン部32の不完全部32bの外周に設けられるが、この構成は必須のものではない。スナップリング33は、モータ軸21とは反対側に向けてスプライン部32から離れた位置に設けられてもよい。また、スプライン部32とスプライン穴22の係合長さを充分に確保できる場合には、スナップリング33は、スプライン部32の外周に設けられてもよい。なお、スナップリング33をモータ軸21とは反対側へスプライン部32から離れた位置に設けると、その位置に応じて、モータ軸21やドライブシャフト31を長く構成する必要がある。よって、軸方向へ変速機付モータ100を小型化するには、スナップリング33をスプライン部32に近い位置に設けることが望ましく、上述のように不完全部32bの外周に設けることでより軸方向への小型化を実現できる。
【0047】
また、上記実施形態では、当接部は、ドライブシャフト31の外周に着脱可能に設けられるスナップリング33である。つまり、上記実施形態では、当接部は、ドライブシャフト31とは別体として構成される。これに対し、図3に示すように、当接部は、ドライブシャフト31と一体に形成されて、ドライブシャフト31の外周から径方向外側に突出する円環状の突起部133であってもよい。このような変形例によれば、スナップリングの付け忘れのおそれがないため、油圧モータ20のモータ軸21に対して当接部をより確実に当接させることができる。当接部が突起部133である場合であっても、スプライン部32の不完全部32bとなる位置に突起部133が設けられるのが望ましいが、これに限定されず、スプライン部32又はドライブシャフト31においてスプライン部32が設けられない領域に突起部133が設けられてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、変速機30のドライブシャフト31にスプライン部32が形成され、油圧モータ20のモータ軸21にスプライン穴22が形成される。つまり、ドライブシャフト31がオススプラインとして構成され、モータ軸21がメススプラインとして構成される。これに対し、スプライン結合の構成は、上記実施形態とは反対に構成してもよい。つまり、油圧モータ20のモータ軸21に係合部としてのスプライン部32が形成され、変速機30のドライブシャフト31の先端面31aに係合凹部としてのスプライン穴22を形成してもよい。この場合には、係合部が形成されるモータ軸21に当接部(スナップリング33、突起部133)を設け、当接部とドライブシャフト31の先端面31aとを当接させることでモータ軸21及びドライブシャフト31を位置決めすればよい。この変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0049】
また、上記実施形態では、変速機構40は、遊星歯車機構であるが、これに限定されるものではない。変速機構40は、その他の歯車機構であってもよいし、複数の歯車機構を組み合わせて構成されるものでもよい。
【0050】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0051】
変速機付モータ100は、モータ軸21が回転駆動される油圧モータ20と、モータ軸21に連結されるドライブシャフト31を有しドライブシャフト31を通じて伝達されるモータ軸21の回転を変速して出力する変速機30と、を備え、油圧モータ20のモータ軸21及び変速機30のドライブシャフト31の一方は端部に係合部(スプライン部32)が形成され、他方は係合部が係合する係合凹部(スプライン穴22)が端面に形成され、係合部が形成されるモータ軸21及びドライブシャフト31の一方の外周には、係合凹部が形成されるモータ軸21及びドライブシャフト31の他方における端面21aに当接してモータ軸21とドライブシャフト31との位置決めをする当接部(スナップリング33,突起部133)が設けられる。
【0052】
また、変速機付モータ100では、当接部は、モータ軸21及びドライブシャフト31の一方の外周に着脱可能に取り付けられるスナップリング33である。
【0053】
これらの構成では、油圧モータ20のモータ軸21と変速機30のドライブシャフト31とは、一方の外周に設けられる当接部と他方の端面とが当接することで位置決めされる。これにより、モータ軸21及びドライブシャフト31の他方に形成される係合凹部の底面22bを、位置決めのためにモータ軸21及びドライブシャフト31の一方に当接させる必要がない。よって、精度確保のための係合凹部の底面22bへの加工を省略することができる。したがって、変速機付モータ100の製造コストを低減できる。
【0054】
また、変形例に係る変速機付モータ100では、当接部は、ドライブシャフト31と一体に形成されて、ドライブシャフト31の外周から径方向外側に突出する突起部133である。
【0055】
この構成では、ドライブシャフト31への当接部の取付忘れの発生のおそれがないため、モータ軸21と当接部(突起部133)との当接をより確実に行うことができる。
【0056】
また、変速機付モータ100では、係合部は、モータ軸21及びドライブシャフト31の一方の外周に形成されるスプライン部32であり、当接部は、スプライン部32の不完全部32bの外周に設けられる。
【0057】
この構成では、スプライン結合の結合長さを確保しつつ、モータ軸21の軸方向へ変速機付モータ100を小型化することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0059】
100…変速機付モータ、20…油圧モータ(モータ)、21…モータ軸、21a…先端面(端面)、22…スプライン穴(係合凹部)、22b…底面、30…変速機、31…ドライブシャフト、31a…先端面(端面)、32…スプライン部(係合部)、32b…不完全部、33…スナップリング(当接部)、133…突起部(当接部)
図1
図2
図3