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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】関節機能部
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20240605BHJP
   B25J 18/06 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
A61B17/29
B25J18/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020122343
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018904
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】保戸田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 正紘
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-106606(JP,A)
【文献】特開2015-156906(JP,A)
【文献】米国特許第09545727(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/29
B25J 18/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動側部材が固定側部材に対して屈曲位置及び伸展位置間で変位可能に支持された関節機能部であって、
前記軸方向の一側が前記可動側部材に固定された固定部であり、前記軸方向の他側が前記固定側部材に支持された被支持部である複数の索状部材と、
前記複数の索状部材の前記被支持部を前記固定側部材に支持し前記被支持部を前記固定部に対する前記軸方向の反対側に付勢し前記索状部材に張力を付加する弾性体と、
を備え
前記複数の索状部材は、それぞれ前記固定部と前記被支持部との間で前記固定側部材を挿通し、
前記弾性体は、前記複数の索状部材の前記被支持部と前記固定側部材との間に介設された、
関節機能部。
【請求項2】
請求項1記載の関節機能部であって、
前記弾性体は、前記複数の索状部材と並列に配置された、
関節機能部。
【請求項3】
請求項記載の関節機能部であって、
前記弾性体は、前記複数の索状部材をそれぞれ挿通して同軸上に設けられた、
関節機能部。
【請求項4】
請求項記載の関節機能部であって、
前記複数の索状部材の前記被支持部間にわたる支持部材を備え、
前記弾性体は、前記支持部材と前記固定側部材との間に介設された、
関節機能部。
【請求項5】
可動側部材が固定側部材に対して屈曲位置及び伸展位置間で変位可能に支持された関節機能部であって、
前記軸方向の一側が前記可動側部材に固定された固定部であり、前記軸方向の他側が前記固定側部材に支持された被支持部である複数の索状部材と、
前記複数の索状部材の前記被支持部を前記固定側部材に支持し前記被支持部を前記固定部に対する前記軸方向の反対側に付勢し前記索状部材に張力を付加する弾性体と、
前記複数の索状部材の一方をガイドして前記複数の索状部材の前記被支持部を同軸上に位置させるガイド部とを備え、
前記弾性体は、前記複数の索状部材の前記被支持部間を接続する、
関節機能部。
【請求項6】
可動側部材が固定側部材に対して屈曲位置及び伸展位置間で変位可能に支持された関節機能部であって、
前記軸方向の一側が前記可動側部材に固定された固定部であり、前記軸方向の他側が前記固定側部材に支持された被支持部である複数の索状部材と、
前記複数の索状部材の前記被支持部を前記固定側部材に支持し前記被支持部を前記固定部に対する前記軸方向の反対側に付勢し前記索状部材に張力を付加する弾性体と、を備え、
前記固定側部材は、前記軸方向において前記複数の索状部材の前記被支持部を挟んで前記固定部とは反対側に位置する支持部を備え、
前記弾性体は、前記支持部と前記複数の索状部材の前記被支持部との間に介設された、
関節機能部。
【請求項7】
請求項5又は6記載の関節機能部であって、
前記弾性体は、前記複数の索状部材と並列に配置された、
関節機能部。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の関節機能部であって、
前記弾性体は、コイルばねである、
関節機能部。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の関節機能部であって、
前記索状部材は、前記可動側部材を前記固定側部材に対して変位させるために前記被支持部が前記軸方向に操作される駆動ワイヤーである、
関節機能部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットやマニピュレーター等に供される関節機能部に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット、マニピュレーター、或はアクチュエータ等には、屈曲・伸展を可能とする関節機能部を備えたものがある。このような関節機能部としては、例えば、特許文献1に記載の外科用器具に適用されたものがある。
【0003】
この関節機能部は、可動側部材であるエンドエフェクタが固定側部材である管に対して曲げ可能な部材によって結合されている。
【0004】
エンドエフェクタには、索状部材である起動ケーブルの一側が固定されている。この起動ケーブルの他側を引張操作することにより、曲げ可能な部材を屈曲させて、エンドエフェクタを軸に対して変位させることが可能となっている。
【0005】
しかし、上記従来の関節機能部は、エンドエフェクタ等に外力が加わると、曲げ可能な部材が強制的に曲げられ、エンドエフェクタの意図しない変位を発生させてしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2009-538186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、外力によって可動側部材に意図しない変位が生じていた点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、可動側部材が固定側部材に対して屈曲位置及び伸展位置間で変位可能に支持された関節機能部であって、前記軸方向の一側が前記可動側部材に固定された固定部であり、前記軸方向の他側が前記固定側部材に支持された被支持部である複数の索状部材と、前記複数の索状部材の前記被支持部を前記固定側部材に支持し、前記被支持部を前記固定部に対する前記軸方向の反対側に付勢し前記索状部材に張力を付加する弾性体と、を備え、前記複数の索状部材は、それぞれ前記固定部と前記被支持部との間で前記固定側部材を挿通し、前記弾性体は、前記複数の索状部材の前記被支持部と前記固定側部材との間に介設された、ことを関節機能部の最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、弾性体によって付加された張力により索状部材に緩みがなくなり、関節機能部の曲げ剛性が向上するため、可動側部材に外力が作用しても、可動側部材の意図しない変位を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施例1に係る関節機能部を適用したマニピュレーターの要部を示す斜視図である。
図2図2は、図1のマニピュレーターの断面図である。
図3図3は、図2の要部を示す概略図である。
図4図4(A)及び(B)は、図1のマニピュレーターの概念図であり、図4(A)は、平常時、図4(B)は屈曲時を示す。
図5図5は、外力に対する変位量と弾性体の荷重との関係を示すグラフである。
図6図6は、関節機能部の荷重と屈曲角度との関係を示すグラフである。
図7図7は、本発明の実施例2に係る関節機能部を適用したマニピュレーターを示す概念図である。
図8図8は、本発明の実施例3に係る関節機能部を適用したマニピュレーターを示す概念図である。
図9図9は、本発明の実施例4に係る関節機能部を適用したマニピュレーターを示す概念図である。
図10図10(A)は、本発明の実施例4の変形例に係る関節機能部を適用したマニピュレーターを示す概念図であり、図10(B)は、図10(A)を90度異なる方向から見た概念図である。
図11図11は、本発明の実施例5に係る関節機能部を適用したマニピュレーターを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
可動側部材の意図しない変位を抑制するという目的を、可動側部材を変位させるための索状部材に弾性体によって張力を付与することで実現した。
【0012】
すなわち、関節機能部(1)は、可動側部材(13)が固定側部材(11)に対して屈曲位置及び伸展位置間で変位可能に支持され、複数の索状部材(19)と、弾性体(21)とを備える。索状部材(19)は、軸方向の一側が可動側部材(13)に固定された固定部27であり、軸方向の他側が固定側部材(11)に支持された被支持部(29)である。弾性体(21)は、複数の索状部材(19)の被支持部(29)を前記固定側部材(11)に支持し、被支持部(29)を固定部(27)に対して軸方向に付勢し、索状部材に張力を付加する。
【0013】
弾性体(21)は、複数の索状部材(19)と並列に配置された構成としても良い。
【0014】
複数の索状部材(19)は、それぞれ固定部(27)と被支持部(29)との間で固定側部材(11)を挿通し、弾性体(21)は、複数の索状部材(19)の被支持部(29)と固定側部材(11)との間に介設された構成としても良い。
【0015】
弾性体(21)は、複数の索状部材(19)をそれぞれ挿通して同軸上に設けられた構成としても良い。
【0016】
関節機能部(1)は、複数の索状部材(19)の被支持部(29)間にわたる支持部材(35)を備え、弾性体(21)は、支持部材(35)と固定側部材(11)との間に介設された構成としても良い。
【0017】
関節機能部(1)は、複数の索状部材(19)の一方をガイドして複数の索状部材(19)の被支持部(29)を同軸上に位置させるガイド部(33)を備え、弾性体(21)は、複数の索状部材(19)の被支持部(29)間を接続する構成としても良い。
【0018】
固定側部材(11)は、軸方向において複数の索状部材(19)の被支持部(29)を挟んで固定部(27)とは反対側に位置する支持部(41)を備え、弾性体(21)は、支持部(41)と複数の索状部材(19)の被支持部(29)との間に介設された構成としても良い。
【0019】
弾性体(21)は、コイルばねとしても良い。
【0020】
索状部材(19)は、可動側部材(13)を固定側部材(11)に対して変位させるために被支持部(29)が軸方向に操作される駆動ワイヤーとしてもよい。ただし、索状部材は、駆動ワイヤーとは別に設けてもよい。
【実施例1】
【0021】
[マニピュレーター]
図1は、本発明の実施例1に係る関節機能部を適用したマニピュレーターの要部を示す斜視図、図2は、同断面図、図3は、図2の要部を示す概略図である。
【0022】
本実施例では、関節機能部1を有する機器として、マニピュレーター3を例に説明する。マニピュレーター3は、医療用の鉗子であり、手術ロボットに取り付ける鉗子の他、手術ロボットに取り付けない内視鏡カメラや手動鉗子等として用いられるものである。
【0023】
なお、関節機能部1を有する機器としては、関節機能を要する機器であればよく、各種分野のロボット、マニピュレーター、或はアクチュエータ等とすることが可能である。
【0024】
マニピュレーター3は、シャフト5、関節機能部1、エンドエフェクタ7によって構成されている。
【0025】
シャフト5は、例えば円筒形状に形成されている。シャフト5の先端側には、関節機能部1を介してエンドエフェクタ7が可動支持されている。関節機能部1については後述する。
【0026】
エンドエフェクタ7は、医療用の鉗子であり、後述する関節機能部1の可動部13に対して一対の把持部7aが開閉可能に軸支されている。このエンドエフェクタ7は、シャフト5及び関節機能部1を挿通したプッシュプルケーブル9が接続されている。このプッシュプルケーブル9の軸方向移動(進退動作)により、把持部7aが開閉するように構成されている。
【0027】
なお、把持部7aの駆動は、エアー等によって行っても良い。また、エンドエフェクタ7は、例えば、鋏、把持レトラクタ、及び針ドライバ等のように、鉗子以外のものとすることも可能である。
【0028】
[関節機能部]
関節機能部1は、基部11と、可動部13と、可撓部材15と、可撓チューブ17と、駆動ワイヤー19と、弾性体21とを備えている。
【0029】
基部11は、樹脂や金属等によって形成された柱状体、特に円柱体である。この基部11は、シャフト5の先端に取り付けられ、固定側部材を構成する。なお、シャフト5も固定側部材の一部を構成している。
【0030】
基部11は、柱状体に限られず、板状体等としてもよく、後述する駆動ワイヤー19を挿通する壁状であれば良い。また、基部11は、関節機能部1が適用される機器に応じて適宜の形態とすることが可能である。
【0031】
可動部13は、樹脂や金属等によって形成された柱状体、特に円柱体である。可動部13は、エンドエフェクタ7に取り付けられ、可動側部材を構成する。なお、エンドエフェクタ7も可動部側部材の一部を構成している。
【0032】
可動部13も、柱状体に限られず、板状体等としてもよく、エンドエフェクタ7を取付け可能な部材であればよい。また、可動部13も、関節機能部1が適用される機器に応じて適宜の形態とすることが可能である。
【0033】
かかる可動部13は、可撓部材15によって軸方向に対して屈曲位置及び伸展位置間で変位可能に基部11に支持されている。なお、単に軸方向というときは、関節機能部1の軸心に沿った方向を意味し、厳密に軸心に平行な方向の他、僅かに傾斜した方向も含まれる。屈曲位置とは、可動部13の軸が軸方向と交差し、関節機能部1の屈曲が最大となる位置である。伸展位置とは、可動部13の軸が軸方向に沿った位置である。進展位置において、可動部13の軸が軸方向に厳密に沿っている必要はなく、僅かにずれた場合も含まれる。
【0034】
可撓部材15は、関節機能部1の軸心部に配置され、基部11に可動部13を変位可能に支持するものである。本実施例の可撓部材15は、内可撓チューブ16と外可撓チューブ17とで構成されている。
【0035】
内可撓チューブ16は、軸方向に対して屈曲自在な二重コイルであり、外コイル部23と、内コイル部25とを備えている。なお、内可撓チューブ16は、基部11に可動部13を変位可能に支持することができれば、二重コイルを用いたものに限られるものではない。
【0036】
外コイル部23及び内コイル部25は、コイルばねである。外コイル部23及び内コイル部25の材質は、いずれも金属や樹脂等とすることが可能である。また、外コイル部23及び内コイル部25の素線の断面形状は、円形となっている。ただし、この断面形状は、円形に限られるものではない。
【0037】
内コイル部25は、外コイル部23よりも径の小さく、外コイル部23内に螺合されている。外コイル部23及び内コイル部25の径は、軸方向の一端から他端に至るまで一定となっている。ただし、この外コイル部23の径は、軸方向で変化させることも可能である。
【0038】
外コイル部23は、軸方向で隣接する巻部間を軸方向で離間させた複数の隙間(ピッチ)を有している。この複数の隙間には、内コイル部25の巻部が内側から嵌合している。
【0039】
かかる可撓部材15は、外コイル部23及び内コイル部25がコイル状の軸方向に対して湾曲及び復元が可能な弾性を有しており、全体として軸方向に対して湾曲及び復元が可能な弾性を有している。
【0040】
可撓部材15の周囲は、基部11と可動部13との間に介設された外可撓チューブ17によって覆われている。
【0041】
外可撓チューブ17は、断面波形状の管体からなるベローズによって構成されている。可撓チューブ17は、金属や樹脂等によって構成されている。なお、外可撓チューブ17は、コイルばねや他の筒体等を用いることも可能であり、弾性を有するチューブ状を呈していれば、特に限定されるものではない。
【0042】
この外可撓チューブ17は、基部11に対する可動部13の変位に応じて弾性的に屈曲及び復元する。これにより、外可撓チューブ17は、屈曲角度の増加に応じて荷重が増加する線形の荷重特性を関節機能部1に対して付与する。荷重特性については後述する。
【0043】
従って、可撓部材15は、自身の湾曲及び復元により可動部13及びエンドエフェクタ7を基部11及びシャフト5に対して変位させるようになっている。かかる変位は、駆動ワイヤー19によって行われる。
【0044】
駆動ワイヤー19は、金属等からなる索状部材であり、本実施例において関節機能部1の周方向の4か所に90度毎に設けられている。関節機能部1の径方向に対向する駆動ワイヤー19は対をなしている。従って、本実施例では、二対の駆動ワイヤー19を備えている。
【0045】
ただし、一方の対の駆動ワイヤー19を省略することも可能であり、関節機能部1は、複数の駆動ワイヤー19を備えていればよい。例えば、駆動ワイヤー19は、三本設けてもよい。この場合、駆動ワイヤー19は、周方向に120度毎に配置するのが好ましい。また、駆動ワイヤー19は、索状部材であれば、撚り線、NiTi(ニッケルチタン)単線、ピアノ線、多関節ロッド、鎖、紐、糸、縄等とすることが可能である。
【0046】
これら駆動ワイヤー19は、軸方向に引かれることによって関節機能部1を屈曲させるものであり、直接又は間接的に図示しない操作機構に接続され、軸方向に操作されるようになっている。なお、軸方向に操作とは、軸方向で駆動ワイヤー19を進退させることを意味する。
【0047】
各駆動ワイヤー19の一側は、可動部13に固定された固定部27となっている。なお、固定部27に適用する固定手段は問わない。
【0048】
各駆動ワイヤー19は、固定部27から軸方向に沿って伸び、可撓チューブ17及び基部11を挿通し、他側がシャフト5の内部を通っている。この各駆動ワイヤー19の他側は、被支持部29となっている。
【0049】
被支持部29は、駆動ワイヤー19の他側に設けられ、基部11に支持される部分である。本実施例の被支持部29は、駆動ワイヤー19の他端のカシメ部であり、接続ワイヤー31の端部にカシメにより結合されている。この接続ワイヤー31を介し、対となる駆動ワイヤー19の被支持部29間が接続される。なお、対をなす駆動ワイヤー19は、ループ状に一体的に設けることも可能である。
【0050】
接続ワイヤー31は、ガイド部33を介して両端部がそれぞれ対となる駆動ワイヤー19の他端に同軸上に配置されて被支持部29に至る。本実施例のガイド部33は、プーリーであり、シャフト5内や操作機構等に支持されている。なお、接続ワイヤー31及びガイド部33を省略して被支持部29を操作機構に結合することも可能である。
【0051】
弾性体21は、駆動ワイヤー19の被支持部29を基部11に支持し、被支持部29を同一駆動ワイヤー19の固定部27に対して軸方向の反対側へ付勢する。これにより、弾性体21は、各駆動ワイヤー19に張力を付与し、各駆動ワイヤー19の曲げ剛性を向上する。
【0052】
本実施例の弾性体21は、コイルばね、特にピッチを有する圧縮ばねによって構成されている。なお、弾性体21は、金属や樹脂等によって構成することができ、弾性係数等に応じて適宜の形状を採用することが可能である。例えば、ゴム等の場合は、弾性体を柱状や筒状等としても良い。
【0053】
この弾性体21は、駆動ワイヤー19の被支持部29と基部11との間に介設されている。具体的には、弾性体21は、駆動ワイヤー19毎に設けられ、それぞれ駆動ワイヤー19を挿通して同軸上に配置されている。弾性体21の両端は、それぞれ基部11と被支持部29とに当接する。
【0054】
従って、弾性体21は、軸方向に弾性力を働かせるように、駆動ワイヤー19に対し並列に配置された構成となっている。ここでの並列とは、軸方向と弾性力が作用する方向とを平行になるように弾性体21を配置することをいう。ただし、両方向の厳密な平行は必要なく、両方向の一方が他方に対してわずかに傾斜する場合も並列に含まれる。なお、被支持部29と基部11との間の弾性体21を省略し、ガイド部33を弾性体21により引っ張る構成としてもよい。
【0055】
各弾性体21は、自由状態の軸方向寸法が被支持部29と基部11との間の軸方向寸法よりも小さく設定されている。このため、各弾性体21は、被支持部29と基部11との間で、寸法差に応じて圧縮されている。この圧縮により、各弾性体21には荷重が付加され、駆動ワイヤー19には荷重に応じた張力が付与される。
【0056】
かかる弾性体21は、可撓部材15と共に、屈曲角度の増加に応じて荷重が増加する線形の荷重特性を関節機能部1に対して付与することができる。荷重特性については後述する。
【0057】
[動作]
図4(A)及び(B)は、図1のマニピュレーターの概念図であり、図4(A)は、平常時、図4(B)は屈曲時を示す。
【0058】
本本実施例では、駆動ワイヤー19が操作されていない平常時において、駆動ワイヤー19が弾性体21により張力が付加されて緩みがなくなり曲げ剛性が向上している。
【0059】
このため、可動側部材であるエンドエフェクタ7や関節機能部1の可動部13に軸方向に対する交差方向(図4(A)の左右方向)に外力Fが加わっても、可動部13及びエンドエフェクタ7の意図しない変位を抑制することができる。
【0060】
医師等の操作者がマニピュレーター3を操作する際は、何れか一つの駆動ワイヤー19が引かれることにより関節機能部1が屈曲する。そして、関節機能部1は、異なる対の駆動ワイヤー19を組み合わせて引かれることにより、360度全方位に屈曲することが可能となる。これにより、エンドエフェクタ7を所望の方向に指向させることができる。
【0061】
何れか一つの駆動ワイヤー19を引いて関節機能部1を屈曲させる際、図4(B)のように、屈曲内側部分では、駆動ワイヤー19(内ワイヤー19と称する)の被支持部29が軸方向で基部11との間を広げるように変位する。これに応じ、内ワイヤー19の固定部27が基部11側に引かれる。
【0062】
このとき、内ワイヤー19には、関節機能部1を屈曲させこれを維持する関係上、平常時よりも大きい張力がかかる。この結果、内ワイヤー19は、曲げ剛性が向上した状態となっている。
【0063】
一方、屈曲外側部分では、内ワイヤー19と対をなす駆動ワイヤー19(外ワイヤー19と称する)が屈曲に伴って固定部27に引かれると共に、被支持部29が軸方向で基部11との間を狭くするように変位して押される。
【0064】
このとき、外ワイヤー19と同軸の弾性体21は、自身の弾性力に抗して圧縮され、弾性体21が自身の弾性力により被支持部29と基部11との間で伸びようとする。このため、外ワイヤー19は、被支持部29が張力を失わせる方向の基部11側に変位しても、緩まずに張力が付与される。結果として、外ワイヤー19も、内ワイヤー19と共に曲げ剛性が向上している状態となっている。
【0065】
このように、本実施例のマニピュレーター3では、駆動ワイヤー19が操作された屈曲時においても、屈曲の内外において駆動ワイヤー19の曲げ剛性が向上している。
【0066】
このため、エンドエフェクタ7や関節機能部1の可動部13に軸方向に対する交差方向(図4(B)の上下方向)に外力Fが加わっても、エンドエフェクタ7の意図しない変位を抑制することができる。
【0067】
なお、外ワイヤー19と同軸の弾性体21を圧縮する操作力は、内ワイヤー19と同軸の弾性体21が伸びる弾性力によって補助できる。このため、関節機能部1を屈曲させるための全体としての操作力の増加を抑制し、関節機能部1の屈曲を容易に行わせることができる。
【0068】
[変位特性]
図5は、外力に対する変位量と弾性体の荷重との関係を示すグラフである。
【0069】
図5は、平常時において、エンドエフェクタ7に軸方向に対する交差方向に2Nの外力Fを加え、そのときのエンドエフェクタ7の変位量を測定したものである。図5の荷重は、平常時において、弾性体21に付加されている荷重を示している。
【0070】
図5のように、弾性体21に荷重が付加されていない状態から弾性体21の荷重の大きさが外力Fと等しくなるまでは、エンドエフェクタ7の変位量の低減の割合が大きい。一方、外力Fよりも弾性体21の荷重が上回っても、変位量の低減の割合が小さくなる。また、弾性体21の荷重を大きくするほど、駆動ワイヤー19の曲げ剛性が向上して関節機能部1を曲げにくくなる。従って、各弾性体21の荷重を、想定される外力Fと同等に設定するのが好ましい。
【0071】
[荷重特性]
図6は、関節機能部の荷重と屈曲角度との関係を示すグラフである。図6では、対となる駆動ワイヤー19を操作し、関節機能部1を屈曲角度が0度から90度となるまで屈曲させた後に0度まで戻すときの関節機能部1、可撓部材15、及び駆動ワイヤー19の荷重を示す。
【0072】
本実施例では、弾性体21及び可撓部材15が屈曲角度の増加と共に荷重が増加する線形の荷重特性を有し、関節機能部1が弾性体21及び可撓部材15を合わせた線形の荷重特性を有する。
【0073】
従って、関節機能部1は、耐荷重性及び曲げ性が優れたものとなっている。また、弾性体21及び可撓部材15の荷重特性を調整することにより、関節機能部1の荷重特性を調整・設定することができる。
【0074】
[実施例1の効果]
以上説明したように、本実施例では、可動部13が基部11に対して屈曲位置及び伸展位置間で変位可能に支持された関節機能部1であって、軸方向の一側が可動部13に固定された固定部27であり、軸方向の他側が基部11に支持される被支持部29である複数の駆動ワイヤー19と、複数の駆動ワイヤー19の被支持部29を基部11に支持し、被支持部29を固定部27に対する軸方向の反対側に付勢し駆動ワイヤー19に張力を付加する弾性体21とを備える。
【0075】
従って、本実施例では、弾性体21によって付加された張力に応じ、駆動ワイヤー19の緩みがなくなり曲げ剛性が向上するため、可動部13やエンドエフェクタ7に外力Fが作用しても、可動部13やエンドエフェクタ7の意図しない変位を抑制することができる。
【0076】
弾性体21は、複数の駆動ワイヤー19と並列に配置されたため、容易且つ確実に駆動ワイヤー19に張力を付加することができる。
【0077】
複数の駆動ワイヤー19は、それぞれ固定部27と被支持部29との間で基部11を挿通し、弾性体21は、複数の駆動ワイヤー19の被支持部29と基部11との間に介設された。
【0078】
従って、本実施例では、簡単な構成で駆動ワイヤー19に張力を付加することができる。
【0079】
また、弾性体21は、複数の駆動ワイヤー19をそれぞれ挿通して同軸上に設けられたため、簡単な構成で被支持部29と基部11との間に保持できる。
【実施例2】
【0080】
図7は、本発明の実施例2に係る関節機能部を適用したマニピュレーターを示す概念図である。なお、実施例2では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0081】
実施例2では、関節機能部1の対となる駆動ワイヤー19に対して単一の弾性体21が用いられている。具体的には、対となる駆動ワイヤー19の被支持部29間にわたる支持部材35を備え、弾性体21が支持部材35と基部11との間に介設されている。その他は実施例1と同一である。
【0082】
支持部材35は、対となる駆動ワイヤー19の被支持部29間にわたって設けられた板状体である。支持部材35には、駆動ワイヤー19が挿通している。この支持部材35は、弾性体21によって被支持部29に押し付けられている。
【0083】
実施例2においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例3】
【0084】
図8は、本発明の実施例3に係る関節機能部を適用したマニピュレーターを示す概念図である。なお、実施例3では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0085】
実施例3では、関節機能部1の対となる駆動ワイヤー19を弾性体21によって接続されている。具体的には、対となる駆動ワイヤー19の一方をガイドして対となる駆動ワイヤー19の被支持部29を同軸上に位置させるガイド部33を備え、弾性体21が対となる駆動ワイヤー19の被支持部29間を接続する。その他は実施例1と同一である。
【0086】
ガイド部33は、実施例1と同様に構成されている。対となる駆動ワイヤー19の一方は、対となる駆動ワイヤー19の他方よりも長く形成され、両駆動ワイヤー19の被支持部29が同軸上に位置するようにガイド部に巻き回されている。
【0087】
本実施例の弾性体21は、一対設けられ、それぞれ被支持部29に結合されている。弾性体21間は、一対の連結部材37によって連結されている。連結部材37は、弾性体21が一体的に結合された部材である。これら連結部材37は、狭持部37aが駆動軸39を狭持することによって係合している。
【0088】
弾性体21は、連結部材37を狭持部37aによる駆動軸39を狭持する方向に付勢し、狭持部37aによる駆動軸39の狭持状態を保持している。駆動軸39は、操作機構に連結され、操作機構の操作に応じて軸方向に変位する。
【0089】
従って、実施例3でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例4】
【0090】
図9は、本発明の実施例4に係る関節機能部を適用したマニピュレーターを示す概念図、図10(A)は、同変形例を示す概念図であり、図10(B)は、図10(A)を90度異なる方向から見た概念図である。なお、実施例4では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0091】
実施例4では、関節機能部1の可撓部材15がユニバーサルジョイントによって構成されている。その他は、実施例1と同一である。なお、可撓部材15は、相互に揺動自在な部材を複数連結したものであれば、ユニバーサルジョイントに限られるものではない。例えば、図10(A)及び(B)のように、基部11に対して揺動自在に第1揺動部材40aを連結し、この第1揺動部材40aに対して直行方向に揺動自在に揺動部材40bを連結し、揺動部材40bに可動部13を結合することも可能である。
【0092】
実施例4でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。また、実施例4では、線形の荷重特性を有さない関節機能部1に対し、弾性体21によって線形の荷重特性を付与することができる。
【実施例5】
【0093】
図11は、本発明の実施例5に係る関節機能部を適用したマニピュレーターを示す概念図である。なお、実施例5では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0094】
実施例5では、弾性体21が固定側部材としてのシャフト5の支持部41と駆動ワイヤー19の被支持部29との間に設けられている。具体的には、シャフト5が軸方向において各駆動ワイヤー19の被支持部29を挟んで固定部27とは反対側に位置する支持部41を備え、弾性体21が支持部41と被支持部29との間に介設されている。なお、実施例5では、接続ワイヤー31及びガイド部33が省略され、被支持部29が操作機構に結合されている。この結合により、本実施例では駆動ワイヤー19に張力Tが付与される。ただし、実施例1と同様に接続ワイヤー31及びガイド部33を備えてもよい。その他は、実施例1と同一である。
【0095】
支持部41は、シャフト5の端部やシャフト5内に設けることができる。支持部41の形状は、弾性体21を支持可能なものであれば良い。本実施例の弾性体21は、引張ばねとなっている。
【0096】
かかる実施例5でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 関節機能部
3 マニピュレーター
5 シャフト
7 エンドエフェクタ(可動側部材)
11 基部(固定側部材)
13 可動部(可動側部材)
19 駆動ワイヤー(索状部材)
21 弾性体
27 固定部
29 被支持部
33 ガイド部
35 支持部材
41 支持部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11