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  • 特許-柱主筋の位置決め方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】柱主筋の位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20240605BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20240605BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240605BHJP
   E04C 3/34 20060101ALI20240605BHJP
   E04C 5/02 20060101ALI20240605BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
E04G21/18 A
E04B1/21 C
E04B1/58 503C
E04C3/34
E04C5/02
E04G21/12 105D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020123568
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020201
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】森田 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】勝野 潤
(72)【発明者】
【氏名】窪田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】矢野 哲也
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-120035(JP,A)
【文献】特開2002-256654(JP,A)
【文献】特開2011-001729(JP,A)
【文献】特開平06-057819(JP,A)
【文献】実開昭61-108759(JP,U)
【文献】中国実用新案第206625580(CN,U)
【文献】中国実用新案第209760597(CN,U)
【文献】中国実用新案第210316616(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/22
E04B 1/21
E04B 1/58
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方柱と上方柱との接続箇所において、下方柱の柱主筋を位置決めする柱主筋の位置決め方法において、
前記下方柱は、現場打ちコンクリート柱であり、
前記上方柱は、プレキャストコンクリート柱であり、
前記下方柱のコンクリート打設領域において、上下方向に延びる状態で移動不能な不動体が備えられ、
その不動体の位置を基準として、位置決め用治具を用いて、下方柱の柱主筋を位置決めする位置決め工程を行い
前記不動体は、前記下方柱の下方側部位におけるコンクリート打設により、前記下方柱の上方側部位のコンクリート打設領域において、上下方向に延びる状態で移動不能に備えられる柱主筋の位置決め方法。
【請求項2】
下方柱と上方柱との接続箇所において、下方柱の柱主筋を位置決めする柱主筋の位置決め方法において、
前記下方柱は、現場打ちコンクリート柱であり、
前記上方柱は、プレキャストコンクリート柱であり、
前記下方柱のコンクリート打設領域において、上下方向に延びる状態で移動不能な不動体が備えられ、
その不動体の位置を基準として、位置決め用治具を用いて、下方柱の柱主筋を位置決めする位置決め工程を行い、
前記位置決め用治具は、前記下方柱の柱主筋に取付自在なテンプレートと、そのテンプレートと前記不動体とを連結する連結材とが備えられ、
前記位置決め工程では、前記連結材の長さを調整することで、下方柱の柱主筋の位置決めを行う柱主筋の位置決め方法。
【請求項3】
前記テンプレートとして、テンプレート連結材にて連結され、上下方向に間隔を隔てた上側テンプレートと下側テンプレートとが備えられている請求項に記載の柱主筋の位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下方柱と上方柱との接続箇所において、下方柱の柱主筋を位置決めする柱主筋の位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下方柱と上方柱との接続箇所等において、下方柱を構築するためのコンクリート打設を行う場合に、位置決め用治具を用いて、下方柱の柱主筋の位置決めを行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のものでは、位置決め用治具として、平面視で矩形枠状に組付けられ、矩形の各辺に複数の円形の挿通孔部が形成されたテンプレートが備えられている。柱主筋と挿通孔部とを位置合わせした状態で、柱主筋に対してテンプレートを上方側から嵌め込み、テンプレートにおける複数の挿通孔部の夫々に柱主筋を配置させることで、柱主筋を所望位置に位置決めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5105551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上方柱がプレキャストコンクリート柱である場合には、そのプレキャストコンクリート柱に、下方柱の柱主筋を挿入して下方柱と上方柱とを接続するための柱主筋挿入孔が工場等で予め形成されている。よって、下方柱の柱主筋の位置決めを行う際には、上方柱のプレキャストコンクリート柱における柱主筋挿入孔の位置に合わせて、下方柱の柱主筋の位置決めを行うことが求められる。
【0006】
そこで、従来では、型枠の位置を基準にして、位置決め用治具を用いて、上方柱のプレキャストコンクリート柱における柱主筋挿入孔の位置に合わせるように、下方柱の柱主筋の位置決めを行っている。しかしながら、型枠は、その型枠を支持する支保工等の位置を調整する度に移動するものであり、コンクリートの打設によっても多少移動することから、型枠の位置が一定の位置に固定されていない。よって、型枠の位置を基準とすると、その基準位置がずれてしまい、上方柱のプレキャストコンクリート柱における柱主筋挿入孔の位置に合わせるように、下方柱の柱主筋を精度よく位置決めすることができ難い。また、型枠の位置が移動する度に、下方柱の柱主筋の位置決めをやり直す必要が生じてしまい、施工性の低下を招くことになる。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、下方柱を構築するためのコンクリート打設を行う場合に、下方柱の柱主筋の位置決めを精度よく行うことができながら、施工性の向上を図ることができる柱主筋の位置決め方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、下方柱と上方柱との接続箇所において、下方柱の柱主筋を位置決めする柱主筋の位置決め方法において、
前記下方柱は、現場打ちコンクリート柱であり、
前記上方柱は、プレキャストコンクリート柱であり、
前記下方柱のコンクリート打設領域において、上下方向に延びる状態で移動不能な不動体が備えられ、
その不動体の位置を基準として、位置決め用治具を用いて、下方柱の柱主筋を位置決めする位置決め工程を行い、
前記不動体は、前記下方柱の下方側部位におけるコンクリート打設により、前記下方柱の上方側部位のコンクリート打設領域において、上下方向に延びる状態で移動不能に備えられる点にある。
【0009】
本構成によれば、不動体は、下方柱のコンクリート打設領域において、上下方向に延びる状態で移動不能に備えられているので、位置決め工程では、不動体の位置を基準とすることで、その基準位置が移動することなく、位置決め用治具を用いて、下方柱の柱主筋を精度よく位置決めすることができる。また、不動体の位置が移動不能であるので、不動体の移動に伴って、下方柱の柱主筋の位置決めをやり直すことも必要ない。これにより、下方柱を構築するためのコンクリート打設を行う場合に、下方柱の柱主筋の位置決めを精度よく行うことができながら、施工性の向上を図ることができる。しかも、不動体自体は、下方柱のコンクリート打設領域において、上下方向に延びる状態で移動不能なものであればよく、不動体の配設位置については精度が求められていない。よって、不動体の設置についても簡易に行うことができ、施工性の面でより有用なものとなる。
【0011】
更に、本構成によれば、下方柱の下方側部位をコンクリート打設することで、下方柱の上方側部位のコンクリート打設領域において、不動体が、上下方向に延びる状態で移動不能に備えられるこれにより、不動体を設置するための作業を、下方柱を構築する作業とは別に行う必要もなく、施工性の向上を図ることができる。
【0012】
本発明の第特徴構成は、下方柱と上方柱との接続箇所において、下方柱の柱主筋を位置決めする柱主筋の位置決め方法において、
前記下方柱は、現場打ちコンクリート柱であり、
前記上方柱は、プレキャストコンクリート柱であり、
前記下方柱のコンクリート打設領域において、上下方向に延びる状態で移動不能な不動体が備えられ、
その不動体の位置を基準として、位置決め用治具を用いて、下方柱の柱主筋を位置決めする位置決め工程を行い、
前記位置決め用治具は、前記下方柱の柱主筋に取付自在なテンプレートと、そのテンプレートと前記不動体とを連結する連結材とが備えられ、
前記位置決め工程では、前記連結材の長さを調整することで、下方柱の柱主筋の位置決めを行う点にある。
【0013】
本構成によれば、不動体は、下方柱のコンクリート打設領域において、上下方向に延びる状態で移動不能に備えられているので、位置決め工程では、不動体の位置を基準とすることで、その基準位置が移動することなく、位置決め用治具を用いて、下方柱の柱主筋を精度よく位置決めすることができる。また、不動体の位置が移動不能であるので、不動体の移動に伴って、下方柱の柱主筋の位置決めをやり直すことも必要ない。これにより、下方柱を構築するためのコンクリート打設を行う場合に、下方柱の柱主筋の位置決めを精度よく行うことができながら、施工性の向上を図ることができる。しかも、不動体自体は、下方柱のコンクリート打設領域において、上下方向に延びる状態で移動不能なものであればよく、不動体の配設位置については精度が求められていない。よって、不動体の設置についても簡易に行うことができ、施工性の面でより有用なものとなる。
更に、位置決め工程では、連結材の長さを調整するという簡易な作業によって、下方柱の柱主筋を精度よく位置決めすることができ、施工性の向上をより一層図ることができる。
【0014】
本発明の第特徴構成は、前記テンプレートとして、テンプレート連結材にて連結され、上下方向に間隔を隔てた上側テンプレートと下側テンプレートとが備えられている点にある。
【0015】
本構成によれば、テンプレートとして、上側テンプレートと下側テンプレートとが備えられているので、上側テンプレートと下側テンプレートとの両方で下方柱の柱主筋の位置決めを行うことができ、位置決め精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】上方柱と下方柱との接続箇所において柱主筋を位置決めする状態を示す側面図
図2】上方柱と下方柱との接続箇所において柱主筋を位置決めする状態を示す平面図
図3】上方柱と下方柱との接続箇所において柱主筋を位置決めする状態を示す斜視図
図4】上方柱と下方柱とを接続した状態を示す側面図
図5】テンプレートを示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る柱主筋の位置決め方法の実施形態について図面に基づいて説明する。
この柱主筋の位置決め方法は、図1図3に示すように、現場打ちコンクリート柱の下方柱1とプレキャストコンクリート柱の上方柱2との接続箇所において、位置決め用治具3を用いて下方柱1の柱主筋11を位置決めするものである。
【0018】
図1及び図2では、下方柱1の下方側部位1aをコンクリート打設により構築したのち、下方柱1の上方側部位1bをコンクリート打設する際に、下方柱1の柱主筋11を位置決めする状態を示している。図1において、下方柱1の上方側部位1b、及び、上方柱2を一点鎖線にて示しており、柱主筋11の位置決め状態を分かり易くするために、複数の柱主筋11のうち、一部の柱主筋11を省略して図示している。図2においても、下方柱1の上方側部位1bを一点鎖線にて示している。また、図3では、下方柱1のコンクリート打設領域12(図1参照)の周囲を囲むように型枠4及びその型枠4を支持する支保工5を設置した状態を示している。
【0019】
上述の如く、下方柱1は、現場打ちコンクリート柱とし、上方柱2は、プレキャストコンクリート柱としている。プレキャストコンクリート柱である上方柱2には、図1に示すように、下方柱1の柱主筋11を挿入して下方柱1と上方柱2とを接続するための柱主筋挿入孔21が工場等で予め形成されている。柱主筋挿入孔21は、上方柱2の柱主筋22に対応する位置に配設されており、図4に示すように、柱主筋挿入孔21に下方柱1の柱主筋11を挿入して、その下方柱1の柱主筋11と上方柱2の柱主筋22とを接合する状態で下方柱1と上方柱2とを接続している。
【0020】
下方柱1の柱主筋11の位置決めを行う場合には、図1に示すように、上方柱2の柱主筋挿入孔21の位置に合わせて、下方柱1の柱主筋11の位置決めを行うことが必要となる。そこで、図1図3に示すように、下方柱1のコンクリート打設領域12(図1中一点鎖線にて囲む領域)の中央部において、上下方向に延びる状態で移動不能な不動体6を備え、その不動体6の位置を基準として、位置決め用治具3を用いて、下方柱1の柱主筋11を上方柱2の柱主筋挿入孔21の位置に合わせて位置決めする位置決め工程を行っている。不動体6の配設位置については、下方柱1の柱主筋11の邪魔にならない箇所であればよく、不動体6の配設位置を適宜変更することができる。
【0021】
この位置決め工程では、不動体6の位置が基準位置となるが、その基準位置がどこに位置するかが重要ではなく、その基準位置が移動しないことが重要となっている。よって、不動体6としては、その設置位置や建て方については精度が求められておらず、下方柱1のコンクリート打設領域12(下方柱1の上端部)よりも上方側に延びる状態で、上下方向や水平方向に移動不能であることが求められている。
【0022】
不動体6は、例えば、H形鋼等の鉄骨製の仮設材(図2及び図3参照)であり、図1に示すように、下方柱1の下方側部位1aを構築するためのコンクリート打設を行うことで、下方柱1における上方側部位1bのコンクリート打設領域12に不動体6が設置されている。下方柱1の下方側部位1aのコンクリート打設により、不動体6の下方側部位6aを下方柱1の下方側部位1aに埋設させて、不動体6を移動不能としている。不動体6は、下方柱1の上方側部位1bのコンクリート打設領域12(下方柱1の下方側部位1aよりも上方側領域)の全体とそれよりも上方側領域まで延びる状態で備えられている。
【0023】
下方柱1の下方側部位1aのコンクリート打設を行う場合には、支持部材7(図1中点線参照)にて不動体6が上下方向に延びる起立姿勢に支持されており、コンクリート打設する際に、不動体6が大きく姿勢変更したり、不動体6が転倒するのを防止している。ちなみに、下方柱1の下方側部位1aのコンクリート打設により、下方柱1の下方側部位1aとスラブ8とを一体的に構築しているが、下方柱1の下方側部位1aとは別にスラブ8を構築することもできる。
【0024】
位置決め用治具3は、図1図3に示すように、下方柱1の柱主筋11に取付自在なテンプレート31と、そのテンプレート31と不動体6とを連結する連結材32とが備えられている。
【0025】
テンプレート31として、図1図3及び図5に示すように、テンプレート連結材33にて連結され、上下方向に間隔を隔てた上側テンプレート34と下側テンプレート35とが備えられている。上側テンプレート34と下側テンプレート35とは、ともに、図2に示すように、平面視で中央部が開口された矩形枠状の同じ形状及び同じ大きさに形成されている。よって、上側テンプレート34の全体と下側テンプレート35の全体とが上下に重複する状態で備えられている。
【0026】
上側テンプレート34と下側テンプレート35とは、同様の構成となっているので、上側テンプレート34を中心に説明し、下側テンプレート35を省略しながら説明する。上側テンプレート34には、図2に示すように、矩形の各辺に複数の円形の挿通孔部36が形成され、複数の挿通孔部36の夫々が下方柱1の柱主筋11を挿通自在に備えられている。図示は省略するが、下側テンプレート35にも、上側テンプレート34と同様に、矩形の各辺に複数の挿通孔部が形成されている。上側テンプレート34の挿通孔部36と下側テンプレート35の挿通孔部とは、上下に重複しており、水平方向で同一又は略同一位置に配設されている。よって、下方柱1の柱主筋11は、上側テンプレート34の挿通孔部36と下側テンプレート35の挿通孔部との両方に対して挿通自在となっている。
【0027】
柱主筋11において挿通孔部36を挿通する部位には、図3に示すように、柱主筋11に外嵌自在な固定具37が備えられ、その固定具37にて柱主筋11が上側テンプレート34に固定されている。複数の挿通孔部36の夫々に柱主筋11を挿通させて固定具37にて柱主筋11を上側テンプレート34に固定させた状態で、上側テンプレート34の水平方向での位置を調整することで、柱主筋11の水平方向での位置調整を行うようにしている。また、図示は省略するが、上側テンプレート34と同様に、柱主筋11において下側テンプレート35の挿通孔部を挿通する部位にも固定具が備えられており、この固定具によって柱主筋11が下側テンプレート35に固定されている。
【0028】
連結材32は、図2及び図3に示すように、例えば、ターンバックル等、長さを調整自在な部材にて構成されている。連結材32の一端部が溶接等により不動体6に連結され、連結材32の他端部が連結孔部38に係合して上側テンプレート34に連結されている。連結材32の長さを調整することで、不動体6に対して、上側テンプレート34の位置を接近させる又は離間させて、上側テンプレート34の位置を調整自在としている。
【0029】
下側テンプレート35は、図5に示すように、テンプレート連結材33にて上側テンプレート34に連結されており、上側テンプレート34と一体的に移動する。よって、位置決め工程では、図2及び図3に示すように、上側テンプレート34の位置を調整することで、下側テンプレート35の位置も同時に位置調整することができ、上側テンプレート34と下側テンプレート35とを有するテンプレート31の位置調整を行うことによって、下方柱1の柱主筋11の位置を調整して位置決めしている。
【0030】
連結材32としては、図2及び図3に示すように、水平方向において、第1方向(図2中上下方向)の位置調整を行うための第1連結材39と第1方向に直交する第2方向(図2中左右方向)の位置調整を行うための第2連結材40とが備えられ、直交する第1方向と第2方向との両方向において、上側テンプレート34の位置調整を行うことができる。例えば、図2に示すように、第1方向(図2中上下方向)に直交する第1ケガキ線K1を上側テンプレート34の上面部に引き、その第1ケガキ線K1が所望位置となるように、第1連結材39の長さを調整することで、第1方向での上側テンプレート34(テンプレート31)の位置調整を行って、第1方向での柱主筋11の位置決めを行うことができる。また、第2方向(図2中左右方向)に直交する第2ケガキ線K2を上側テンプレート34の上面部に引き、その第2ケガキ線K2が所望位置となるように、第2連結材40の長さを調整することで、第2方向での上側テンプレート34の位置調整を行って、第2方向での柱主筋11の位置決めを行うことができる。
【0031】
以下、下方柱1の構築、及び、下方柱1と上方柱2との接続等の施工手順について説明する。
図1に示すように、下方柱1における下方側部位1aのコンクリート打設領域においてコンクリート打設を行い、下方柱1の下方側部位1aを構築するとともに、その下方側部位1aに埋設させる状態で仮設材である不動体6を起立姿勢にて設置する下方側部位構築・不動体設置工程を行う。
【0032】
この下方側部位構築・不動体設置工程により、図1に示すように、下方柱1における上方側部位1bのコンクリート打設領域12に不動体6が移動不能な状態で設置されるので、図1図3に示すように、不動体6の位置を基準として、位置決め用治具3を用いて、下方柱1の柱主筋11を上方柱2の柱主筋挿入孔21の位置に合わせて位置決めする位置決め工程を行う。このとき、下方柱1の柱主筋11については、本来必要な長さよりも長くしている。
【0033】
この位置決め工程では、図3に示すように、下方柱1の柱主筋11を、上側テンプレート34の挿通孔部36及び下側テンプレート35の挿通孔部の両方に挿通させ、上側テンプレート34及び下側テンプレート35を柱主筋11に固定させてテンプレート31を設置する。そして、図2及び図3に示すように、第1連結材39を上側テンプレート34に連結し、第1ケガキ線K1(図2参照)が所望位置となるように、第1連結材39の長さを調整して、第1方向でのテンプレート31の位置調整を行うとともに、第2連結材40を上側テンプレート34に連結し、第2ケガキ線K2(図2参照)が所望位置となるように、第2連結材40の長さを調整して、第2方向でのテンプレート31の位置調整を行っている。このように、第1方向及び第2方向でのテンプレート31の位置調整を行うことで、柱主筋11の位置調整を行って、柱主筋11を所望位置(上方柱2の柱主筋挿入孔21の位置と合致する位置)に位置決めしている。
【0034】
位置決め工程にて、下方柱1の柱主筋11を位置決めすると、図3に示すように、型枠4を設置し、下方柱1における上方側部位1bのコンクリート打設領域12にコンクリートを打設して下方柱1の上方側部位1bを構築する上方側部位構築工程を行う。ちなみに、位置決め工程は、型枠4を設置した状態でも行うことができるので、位置決め工程を行ったのち型枠4を設置するか、型枠4を設置した状態で位置決め工程を行うかは、施工状況等に応じて適宜変更が可能である。
【0035】
下方柱1における上方側部位1bのコンクリート打設後に、下方柱1の柱主筋11から、上側テンプレート34の挿通孔部36及び下側テンプレート35の挿通孔部を通してテンプレート31を取り外し、不動体6において下方柱1の上端部よりも上方側に延びる部位を切断する。複数の柱主筋11については、本来必要な長さよりも少し長くしておいたので、複数の柱主筋11の上端位置を揃えるように、複数の柱主筋11を精密切断する柱主筋切断工程を行う。
【0036】
柱主筋切断工程にて複数の柱主筋11の上端位置を揃えると、図4に示すように、柱主筋挿入孔21に下方柱1の柱主筋11を挿入して、その下方柱1の柱主筋11と上方柱2の柱主筋22とを接合する状態で下方柱1と上方柱2とを接続する接続工程を行う。この接続工程では、柱主筋挿入孔21に下方柱1の柱主筋11を挿入させる状態で下方柱1の上部に上方柱2を設置し、下方柱1の上端部と上方柱2の下端部との間の隙間や柱主筋挿入孔21にグラウト等の充填剤9を充填することで、下方柱1の柱主筋11と上方柱2の柱主筋22とを接合する状態で下方柱1と上方柱2とを接続している。
【0037】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0038】
(1)上記実施形態では、不動体6をH形鋼にて構成しているが、H形鋼に限らず、各種の形状の鋼材を適用することもできる。また、不動体6は、連結材32の長さを調整するときの反力を受けることができるものであればよく、鋼材に限らず、その他の材料にて構成されたものを適用することもできる。
【0039】
(2)上記実施形態では、テンプレート31として、上側テンプレート34と下側テンプレート35とが備えられているが、例えば、テンプレート31を上側テンプレート34のみから構成することもできる。
【0040】
(3)上記実施形態では、連結材32について、例えば、ターンバックルを例示しているが、長さを調整できる部材であればよく、ターンバックルに限るものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 下方柱
1a 下方側部位
1b 上方側部位
2 上方柱
3 位置決め用治具
6 不動体
11 柱主筋
12 コンクリート打設領域
31 テンプレート
32 連結材
33 テンプレート連結材
34 上側テンプレート
35 下側テンプレート
図1
図2
図3
図4
図5