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特許7498627ワイパーディスペンサー及びワイパーディスペンサーの設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】ワイパーディスペンサー及びワイパーディスペンサーの設置方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/08 20060101AFI20240605BHJP
【FI】
B65D83/08 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020150596
(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公開番号】P2022045097
(43)【公開日】2022-03-18
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】薦田 和子
(72)【発明者】
【氏名】田村 剛
(72)【発明者】
【氏名】中島 亮
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-144340(JP,U)
【文献】特開2019-137419(JP,A)
【文献】登録実用新案第3219449(JP,U)
【文献】登録実用新案第3215742(JP,U)
【文献】登録実用新案第3210100(JP,U)
【文献】特開2006-027584(JP,A)
【文献】特開2014-031183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパーを収納するワイパーディスペンサーであって、
前記ワイパーディスペンサーは、
略矩形状の底面と、前記底面から立設された側壁と、を少なくとも有する、樹脂製又は金属製の容器本体と、
前記容器本体の前記側壁により構成される開口を閉塞可能である蓋体と、
前記容器本体の前記底面の外表面の一部に接着された支持材と、
を備え、
前記支持材は、
前記容器本体の前記底面の前記外表面に接着された、接着剤を含む接着層と、
前記接着層の表面のうち、前記外表面との接着面とは反対側の表面に積層された、異方性磁石を含む磁着層と、
を備え、
前記容器本体の前記底面の前記外表面は、前記支持材が接着された接着領域と、前記支持材が接着されていない非接着領域と、を有し、
前記外表面を、第一方向に等間隔にm分割(mは3~40の整数である)し、かつ、前記第一方向と直交する第二方向に等間隔にn分割(nは3~40の整数である)することにより、前記外表面を複数の区画に区切った場合に、前記非接着領域が、前記外表面の周縁に接している周縁区画を少なくとも含み、
前記接着領域が前記底面の前記外表面の中央に配置されると共に、前記接着領域が前記底面の四隅の区画の少なくとも1つを含む、
ワイパーディスペンサー。
【請求項2】
前記接着層は、さらに不織布を含む、
請求項1に記載のワイパーディスペンサー。
【請求項3】
前記磁着層の形状が、矩形、三角形、楕円、円、及び多角形からなる群より選ばれるいずれか一つであり、かつ、
前記磁着層の形状が、前記外表面の重心を通る中心線に対して線対称、又は前記重心に対して点対称となるよう配置されている、
請求項1又は2に記載のワイパーディスペンサー。
【請求項4】
前記支持材は、
前記接着層と、
前記接着層の表面に積層されたスペーサー層と、
前記スペーサー層の表面に積層された、別なる接着層と、
前記別なる接着層の表面に積層された、前記磁着層と、
を備え、
前記磁着層の厚さが、1~3mmであり、かつ、
前記支持材の厚さが、5~15mmである、
請求項1~3のいずれか一項に記載のワイパーディスペンサー。
【請求項5】
前記容器本体は、その前記底面及び前記側壁が接する周縁上に、前記底面及び前記側壁に向けて凹んだ凹部が少なくとも1つ形成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載のワイパーディスペンサー。
【請求項6】
略矩形状の底面と、前記底面から立設された側壁と、を少なくとも有する、樹脂製又は金属製の容器本体と、前記容器本体の前記側壁により構成される開口を閉塞可能である蓋体と、を備え、前記容器本体にワイパーを収納するワイパーディスペンサーの設置方法であって、
接着層と、前記接着層の表面に積層された、厚さが1~5mmである、異方性磁石を含む磁着層と、を備える支持材を準備する準備工程と、
前記支持材の前記接着層が、前記ワイパーディスペンサーの前記底面の外表面に接着するように、前記支持材を前記ワイパーディスペンサーに接着する接着工程と、
前記支持材の前記磁着層が、前記ワイパーディスペンサーの設置面に接するように、前記ワイパーディスペンサーを前記設置面に設置する設置工程と、
を含み、
前記接着工程は、前記ワイパーディスペンサーの前記外表面を、第一方向に等間隔にm分割(mは3~40の整数である)し、かつ、前記第一方向と直交する第二方向に等間隔にn分割(nは3~40の整数である)することにより、前記外表面を複数の区画に区切った場合に、前記接着層が接着されていない非接着領域が、前記外表面の周縁に接している周縁区画を少なくとも含み、かつ前記接着層が接着されている接着領域が前記底面の前記外表面の中央に配置されると共に、前記接着領域が前記底面の四隅の区画の少なくとも1つを含む、ように接着する、
ワイパーディスペンサーの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパーディスペンサー及びワイパーディスペンサーの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消毒用途、殺菌用途、又は除菌用途であるウェットワイパー又はドライワイパー(以下、これらを「ワイパー」と総称することがある。)を格納したワイパーディスペンサーが用いられている。ワイパーディスペンサーは多量のワイパーを保存することができる。
【0003】
図12は、従来のワイパーディスペンサーの一例の斜視図であり、図13は、図12のワイパーディスペンサーの使用状態の説明に供する断面模式図である。なお、図13は、図12のワイパーディスペンサーをA-A線において断面視し、これを設置台200に設置して使用する状態を模式的に示している。
【0004】
従来のワイパーディスペンサー100は、いわゆるポップアップ式のワイパーディスペンサーである。ワイパーディスペンサー100は、上端の開口13からワイパーWが収納可能な容器本体10と、第一のヒンジ部22を介して連結された第一の蓋体20と、を備える。第一のヒンジ部22は、容器本体10の上端の開口13の端部周辺に設けられており、これによって、第一の蓋体20は、第一のヒンジ部22を中心に回動可能となっている。そして、第一の蓋体20には第一の把持部21が設けられており、使用者はこれを摘まむことができるので、第一の蓋体20の開閉は容易となる。
【0005】
そして、第一の蓋体20は、その天面にワイパーWを取り出すための取り出し口23が形成されており、第二のヒンジ部26を介して連結された第二の蓋体24を備える。第一の蓋体20は、その天面に第二の蓋体24と嵌合可能な凹部27が設けられており、この凹部27の底面に取り出し口23が形成されている。この取り出し口23は、上面視において略楕円形状の貫通孔であり、容器本体10と連通しており、ここからワイパーWを取り出すことができる。
【0006】
第二の蓋体24を第一の蓋体20と連結する第二のヒンジ部26は、第一の蓋体20の取り出し口23の端部周辺に設けられており、これによって、第二の蓋体24は、第二のヒンジ部26を中心に回動可能となっている(図13の矢印R参照)。そして、第二の蓋体24には第二の把持部25が設けられており、使用者はこれを摘まむことができるので、第二の蓋体24の開閉は容易となる。
【0007】
ワイパーディスペンサー100は、例えば、以下のようにして使用される。
【0008】
まず、使用者が、ワイパーディスペンサー100にワイパーWの積層体を充填する場合(充填時)、使用者は、第一の蓋体20を開けて、容器本体10の上端の開口13を開放する。この上端の開口13からワイパーWを容器本体10に収納する。その後、第一の蓋体20を閉めて、容器本体10の上端の開口13を閉塞する。これによって、外部と接触することなくワイパーWを容器本体10に保管することができる。
【0009】
次に、使用者が、ワイパーディスペンサー100からワイパーを取り出す場合(使用時、図13参照)、使用者は、第二の蓋体24を開けて(図13の矢印R参照)、取り出し口23を開放する。この取り出し口23から突出している1枚目のワイパーW1の端部を摘み、上方に引っ張る(図13の矢印F1参照)。この動作を繰り返すことにより、使用者は必要な枚数だけワイパーW1,W2,W3を取り出し口23から順次取り出すことができる。ワイパーWを取り出した後は、使用者は、第二の蓋体24を閉めて(図13の矢印R参照)、取り出し口23を閉塞する。
【0010】
ワイパーWは、取り出し口23から連続して取り出すことができるよう、交互に折りたたまれて積層されている。例えば、ワイパーW2は、その上に隣接するワイパーW1及びその下に隣接するワイパーW3とかみ合うように、交互に折り畳まれて積層されている。このように積層されたワイパーWの積層体が、容器本体10に収納されている。
【0011】
このようなワイパーディスペンサーに関して、特許文献1が示されており、より使いやすいディスペンサー構造が提示されている。また、特許文献2には、このようなワイパーディスペンサーの改良技術として、ワイパーディスペンサーにアタッチメントを設けることが提案されている。例えば、特許文献2には、ディスペンサー本体に設けられ、ディスペンサー本体の取り出し口と積層体の間に配置されるアタッチメント本体と、ウェットワイパーが通過可能な切欠き又は貫通穴によってアタッチメント本体に形成され、取り出し口の開口面積よりも小さい開口面積を有するワイパー通過部と、を備えるアッタチメント等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2008-162638号公報
【文献】特開2017-024782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、発明者らが、ワイパーディスペンサーを更に改良すべく、従来のワイパーディスペンサー100におけるワイパーWの使用状態を観察したところ、使用者は、台上に設けたワイパーディスペンサー100の取り出し口23から垂直方向(例えば、図13における上下方向、矢印F2参照)にワイパーWを引き出すことは少なく、自分の体に引き寄せるように、やや斜め上方向に引き出すことが多いことがわかった。そのため、ワイパーディスペンサー100が設置面210上を意図せず動いてしまい(例えば、図13の矢印F2及び矢印F3参照)、ワイパーディスペンサー100が位置ずれすることに着目した。ひどい場合には、ワイパーディスペンサー100が設置台200から落下してしまう。特に、ワイパーディスペンサー100を構成する部品の一部が樹脂製であると、落下により破損する場合がある。また、ワイパーディスペンサー100を構成する部品の一部が金属製であると、落下により変形する場合がある。
【0014】
このような問題は、特に、業務用のディスペンサー等、大勢の使用者がワイパーディスペンサー100の四周からワイパーWを頻繁に取り出す使用態様において顕著となる。各人がワイパーWを各自の方向に引き出すと、ワイパーディスペンサー100が都度、台上でその引き出し方向に位置ずれを繰り返してしまうからである。定位置管理が望まれるワイパーディスペンサー100において、このような位置ずれは好ましくない。
【0015】
このようなワイパーディスペンサー100の位置ずれや落下を防ぐために、ワイパーディスペンサー100の底面11を、両面テープ又は接着剤によって設置台200に固着させる方法がとられている。しかし、このような両面テープ及び接着剤は接着力が強すぎるため、ワイパーディスペンサー100を設置台200から取り外すことが困難である。
【0016】
このように、ワイパーディスペンサー100の使用時には、ワイパーディスペンサー100が設置面210から位置ずれしないことが望まれている。その一方で、ワイパーディスペンサー100を設置面から容易に取り外して持ち運びできることも望まれている。しかし、このような要望全てを満たすことができていないのが現状である。
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、使用時には位置ずれすることがなく、かつ、設置面からの取り外し及び持ち運びが容易であるワイパーディスペンサー及びワイパーディスペンサーの設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、樹脂製又は金属製の容器本体の底面の外表面の一部に特定の構造を有する支持材を接着し、かつ、底面の外表面における支持材の接着領域と非接着領域の配置を制御することに知見を得て、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0020】
(1)
ワイパーを収納するワイパーディスペンサーであって、前記ワイパーディスペンサーは、略矩形状の底面と、前記底面から立設された側壁と、を少なくとも有する、樹脂製又は金属製の容器本体と、前記容器本体の前記側壁により構成される開口を閉塞可能である蓋体と、前記容器本体の前記底面の外表面の一部に接着された支持材と、を備え、前記支持材は、前記容器本体の前記底面の前記外表面に接着された、接着剤を含む接着層と、前記接着層の表面のうち、前記外表面との接着面とは反対側の表面に積層された、異方性磁石を含む磁着層と、を備え、前記容器本体の前記底面の前記外表面は、前記支持材が接着された接着領域と、前記支持材が接着されていない非接着領域と、を有し、前記外表面を、第一方向に等間隔にm分割(mは3~40の整数である)し、かつ、前記第一方向と直交する第二方向に等間隔にn分割(nは3~40の整数である)することにより、前記外表面を複数の区画に区切った場合に、前記非接着領域が、前記外表面の周縁に接している周縁区画を少なくとも含む、ワイパーディスペンサーである。
(2)
前記接着層は、さらに不織布を含む、(1)に記載のワイパーディスペンサーである。
(3)
前記磁着層の形状が、矩形、三角形、楕円、円、及び多角形からなる群より選ばれるいずれか一つであり、かつ、前記磁着層の形状が、前記外表面の重心を通る中心線に対して線対称、又は前記重心に対して点対称となるよう配置されている、(1)又は(2)に記載のワイパーディスペンサーである。
(4)
前記支持材は、前記接着層と、前記接着層の表面に積層されたスペーサー層と、前記スペーサー層の表面に積層された、別なる接着層と、前記別なる接着層の表面に積層された、前記磁着層と、を備え、前記磁着層の厚さが、1~3mmであり、かつ、前記支持材の厚さが、5~15mmである、(1)~(3)のいずれかに記載のワイパーディスペンサーである。
(5)
前記容器本体は、その前記底面及び前記側壁が接する周縁上に、前記底面及び前記側壁に向けて凹んだ凹部が少なくとも1つ形成されている、(1)~(4)のいずれかのワイパーディスペンサーである。
(6)
略矩形状の底面と、前記底面から立設された側壁と、を少なくとも有する、樹脂製又は金属製の容器本体と、前記容器本体の前記側壁により構成される開口を閉塞可能である蓋体と、を備え、前記容器本体にワイパーを収納するワイパーディスペンサーの設置方法であって、接着層と、前記接着層の表面に積層された、厚さが1~5mmである、異方性磁石を含む磁着層と、を備える支持材を準備する準備工程と、前記支持材の前記接着層が、前記ワイパーディスペンサーの前記底面の外表面に接着するように、前記支持材を前記ワイパーディスペンサーに接着する接着工程と、前記支持材の前記磁着層が、前記ワイパーディスペンサーの設置面に接するように、前記ワイパーディスペンサーを前記設置面に設置する設置工程と、を含み、前記接着工程は、前記ワイパーディスペンサーの前記外表面を、第一方向に等間隔にm分割(mは3~40の整数である)し、かつ、前記第一方向と直交する第二方向に等間隔にn分割(nは3~40の整数である)することにより、前記外表面を複数の区画に区切った場合に、前記接着層が接着されていない非接着領域が、前記外表面の周縁に接している周縁区画を少なくとも含むように接着する、ワイパーディスペンサーの設置方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、使用時には位置ずれすることがなく、かつ、設置面からの取り外し及び持ち運びが容易であるワイパーディスペンサー及びワイパーディスペンサーの設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、第一の実施形態に係るワイパーディスペンサーの断面模式図である。
図2図2は、図1のワイパーディスペンサーの支持材の説明に供する部分拡大図である。
図3図3は、第一の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の配置の説明に供する、底面側から見た模式図である。
図4図4は、第二の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の配置の説明に供する、底面側から見た模式図である。
図5図5は、第三の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の配置の説明に供する、底面側から見た模式図である。
図6図6は、第四の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の配置の説明に供する、底面側から見た模式図である。
図7図7は、第五の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の配置の説明に供する、底面側から見た模式図である。
図8図8は、第六の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の配置の説明に供する、底面側から見た模式図である。
図9図9は、第七の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の断面模式図である。
図10図10(A)及び(B)は、第八の実施形態に係るワイパーディスペンサーの容器本体の図面であり、図10(A)は、容器本体の部分斜視図であり、図10(B)は、容器本体の部分拡大図である。
図11図11は、第九の実施形態に係るワイパーディスペンサーの容器本体の部分斜視図である。
図12図12は、従来のワイパーディスペンサーの一例の斜視図である。
図13図13は、図12のワイパーディスペンサーの使用状態の説明に供する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0024】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
さらに、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0026】
<ワイパーディスペンサー>
【0027】
図1は、第一の実施形態に係るワイパーディスペンサーの断面模式図であり、図2は、図1のワイパーディスペンサーの支持材の説明に供する部分拡大図であり、図3は、第一の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の配置の説明に供する、底面側から見た模式図である。
【0028】
本実施形態に係るワイパーディスペンサー1は、略矩形状の底面11と、この底面11から立設された側壁12と、を少なくとも有する、樹脂製又は金属製の容器本体10と、容器本体10の側壁により構成される開口13を閉塞可能である第一の蓋体20と、容器本体10の底面11の外表面の一部に接着された支持材30と、を備える。容器本体10にワイパーWが積層された積層体を収納し、その開口13を第一の蓋体20によって閉塞して、保管する。
【0029】
(容器本体10及び第一の蓋体20)
【0030】
容器本体10及び第一の蓋体20は、上述した従来のワイパーディスペンサー100(図12図13参照)を使用することができる。さらに、容器本体10及び第一の蓋体20の構成は、図12及び図13に示すワイパーディスペンサー100と同一のものに限定されず、容器本体10の底面11に支持材30が接着可能なものであればよい。したがって、例えば、底面11と側壁12は曲面で接続されているが、これに限定されず、直角あるいは図1のような略直角の鈍角で、曲面を持たずに接続されていてもよいし、また、市販されている樹脂製又は金属製のワイパーディスペンサーを用いることもできるであろう。
【0031】
容器本体10に用いられる樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、PET樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリブチレンサクシネートをはじめとする生分解性樹脂等が挙げられる。また、容器本体10に用いられる金属は、例えば、ステンレス製、アルミ製、チタン製等が挙げられる。また、第一の蓋体20の材料は、特に限定されないが、上述した樹脂であってもよいし、透明なゴムであってもよいし、金属であってもよいし、これらの組合せであってもよい。
【0032】
(ワイパーW)
【0033】
容器本体10に収納するワイパーWは、ウェットワイパー及びドライワイパーのいずれであってもよい。ワイパーWは、例えば、医療現場、実験室、精密部品工場、食品加工工場、給食センター、及び飲食店等の様々な場所で使用される。そして、ワイパーWは、機材、備品、及び各種容器包装の拭き取り、並びに現場の清掃等に使用される。
【0034】
ワイパーWは、例えば、不織布で形成される基材と、基材に含浸される薬液と、を含む。例えば、基材に、アルコールや次亜塩素酸水等の殺菌能力、除菌能力、及び/又は抗菌能力を有する薬液を含浸させることにより、要求される衛生性を備えたウェットワイパーとすることができる。また、このワイパーWはウェットワイパーに限らず、ドライワイパーであってもよい。
【0035】
また、ワイパーWは、例えば、食品の製造工程において、ワイパーWが食品及びその包装体等に残置及び混入した場合に発見し易いよう、着色剤によって着色されていてもよい。
【0036】
ワイパーWを着色する着色剤としては、特に限定されず、一般に繊維・紙の着色に用いられる直接染料、カチオン染料、塩基性染料、酸性染料等の染料、天然色素、食用色素、染料ベース、顔料ベースのインキ等が挙げられる。これらの中でも、染着性及び耐候性の観点から、直接染料、カチオン染料、及び顔料ベースのインキであることが好ましい。色は、特に限定されず、赤、青、黄等、用途に応じて適宜選択することができる。
【0037】
基材である不織布の種類は、特に限定されず、例えば、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維、綿、ウール等の繊維を単独又は混合して積層し、一体化したものが挙げられる。一体化する方法としては、特に限定されず、ワイパーとして使用する際に糸屑等が発生しない程度の強度を保持できる方法であればよく、例えば、バインダー接着や熱融着、ウォータージェット、ニードルパンチを用いる方法等が挙げられる。
【0038】
(支持材30)
【0039】
支持材30は、容器本体10の底面11の外表面に接着された、接着剤を含む接着層31と、接着層31の表面のうち、外表面との接着面とは反対側の表面に積層された、異方性磁石を含む磁着層32と、を備える。接着層31は、容器本体10の底面11から脱落しないよう底面11に定着可能な接着力を有することが好ましい。一方、磁着層32は、例えば、金属製の設置面210に磁着でき、かつ、後述するように指又は指の爪を容器本体10の底面11に差し込むことによって設置面210から容易に取り外すことができる程度の磁着力を有することが好ましい。
【0040】
さらに、接着層31の容器本体10及び磁着層32への接着力との関係は、磁着層32の設置面210への磁着力よりも強いことが好ましい。ワイパーディスペンサー1を設置面210から取り外す際、磁着層32が設置面210から離れずに、接着層31と容器本体10との接着面、又は、接着層31と磁着層32との接着面が剥離してしまうことを防止できる。このような観点から、接着層31の接着力が磁着層32の磁着力よりも強いものであり、そのように各材料を選択することが好ましい。
【0041】
(接着層31)
【0042】
接着層31に含まれる接着剤の種類は、特に限定されず、樹脂製又は金属製である容器本体10と接着可能であればよい。容器本体10に対して高い接着力を有する接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、エチレン-酢酸ビニル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられる。これらの中でも、容器本体10の材料として使用される樹脂との接着力が高く、かつ、光及び酸素に対する安定性、耐熱性並びに耐薬品性に優れている観点から、アクリル系接着剤であることが好ましい。初期接着力に優れ、被着体(例えば、容器本体10及び磁着層32)の材質の制約が少なく、比較的多くの材質に接着させることができる観点からは、ゴム系接着剤であることが好ましい。さらに、幅広い温度域に対応可能であり、耐候性、耐薬品性、及び耐湿性に優れている観点からは、シリコーン系接着剤であることが好ましい。
【0043】
接着層31は、更に不織布を含むことが好ましい。この場合の好適な態様としては、両面テープが挙げられる。ワイパーディスペンサー1の使用では、ワイパーWを取り出し口23から取り出す度に、位置ずれに伴う衝撃が加わる。このため、耐衝撃性に優れる両面テープを接着層31として用いることが好ましく、とりわけ、基材の表裏面に接着剤が塗布されている両面テープがより好ましい。基材レスの両面テープは、接着剤のみの単層構造であるのに対し、基材を有する両面テープは、表から裏面に向けて、接着層、基材層、接着層の3層構造であるため、その分厚みがあるため、間隙緩衝機能を有する。容器本体10と磁着層32とを両面テープで接着する際、容器本体10と磁着層32との接触面に多少の凹凸や傾斜等の間隙が存在する場合でも、基材を含む両面テープの厚みが間隙充填機能を果たすことで、容器本体10と磁着層32とを高接触面積で接着させることができる。
【0044】
両面テープの厚さは、0.015~1.00mmであることが好ましい。0.015mm以上であると間隙充填機能がより向上する。一方、1.00mm以下であると、台上に設置したディスペンサーに水平方向の力が加わった場合であっても、接着層の厚みにより、両面テープの磁着層側の接着層34とディスペンサー底面側の接着層31が水平方向に捩じられる力を減殺でき、両面テープが磁着層表面又はディスペンサー表面から剥がれにくくすることができる。
【0045】
不織布及び接着剤を含む接着層31としては、例えば、基材(例えば、不織布、パルプ繊維シート、樹脂フィルム、アクリルフォーム等の多孔性シート、及びこれらの積層体等)の両面に、上述した接着剤を含む層を積層させた積層シートが挙げられる。この場合の接着剤としては、上述したアクリル系接着剤、ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤であることが好ましく、アクリル系接着剤がより好ましい。特にアクリル系接着剤は、不織布への接着力にも優れている点でも好適である。
【0046】
(磁着層32)
【0047】
磁着層32は、異方性磁石を用いて形成される。異方性磁石の異方性の結晶配列における結晶の向きが、磁化容易方向に一定方向であるため、当該方向に向けて強い磁気吸着力を確保することができる。これにより、磁力を特定の方向(例えば、図2の矢印F5参照)に指向させることができ、かつ、その磁力は同材料の等方性磁石に比して強力である。なお、異方性磁石は、片面着磁及び両面多極着磁のいずれでもよいが、片面着磁であることが好ましい。
【0048】
磁着層32として上述した異方性磁石を用いることにより、異方性磁石の磁性配向により、設置面210への磁気吸着力(以下、「磁着力」と略する場合がある。)が適度に強くなり、磁着層32と設置面210の接触面に対して水平方向の静摩擦係数及び動摩擦係数が高くなる。これにより、ディスペンサーの水平方向の位置ずれを効果的に抑制することができる。例えば、金属製(鉄製等)の設置台200や側壁である設置面210に、ワイパーディスペンサー1を安定的に設置することができる。そして、磁着層32の薄層化及び軽量化を図ることも可能である。
【0049】
このような観点から、磁着層32の磁気吸着力(磁着力)は、30~160g/cmであることが好ましい。磁気吸着力の下限は、40g/cm以上であることがより好ましく、88g/cm以上であることが更に好ましい。また、吸着力の上限は、160g/cm以下であることがより好ましく、145g/cm以下であることが更に好ましい。
【0050】
ここでいう磁気吸着力(磁着力)は、鉄板に対して磁石を接触させ、ロードセルを用いて縦軸に垂直に引き、磁石が鉄板から離脱した際の力を磁石の接触面積で除すことによって測定される値である。測定条件としては、鉄板の厚さ(T)は磁石の厚さ(H)以上とすること、磁石は鉄板の中心に設置すること、鉄板面積は磁石面積の3倍以上とすること、鉄板の材質は純鉄とすること、鉄板の表面は凹凸なく平面とすること、摩擦係数が無いものとすること、鉄板と磁石の間隙は密着し間隙が無いものとする。
【0051】
異方性磁石の種類は、例えば、フェライト系磁石、ネオジム系磁石、コバルト系磁石、アルニコ系磁石、及びこれらの複合磁石等が挙げられる。また、これらの磁石の粉末を、バインダー(例えば、樹脂及び/又はゴム)と混合した複合体であってもよい。
【0052】
磁力は、通常、ネオジム系磁石(強い)、コバルト系磁石、アルニコ系磁石、フェライト系磁石(弱い)の順に弱くなる傾向にある。このような傾向において、ネオジム系磁石、コバルト系磁石、アルニコ系磁石の磁力は、接着層31の接着力よりも強い傾向にあるため、本実施形態に用いる磁石としては、フェライト系磁石がより好ましい。フェライト系磁石は、上述した他のタイプの磁石よりも磁力が比較的弱いが、異方性タイプの磁石を用いることにより、設置面210への磁着を十分にすることができ、かつ、上述のように接着層31の接着力よりも低い磁着力となるよう制御することができる。
【0053】
また、磁石の耐薬品性は、通常、フェライト系磁石(高い)、コバルト系磁石、アルニコ系磁石、ネオジム系磁石(低い)の順に低くなる傾向にある。ワイパーディスペンサー1は、アルコールや次亜塩素酸水等の薬液と共に使用されることが多いため、使用時には薬液が磁着層32に付着する。しかし、フェライト系磁石は耐薬品性に優れるため、薬液の付着による錆び及び磁着力の低下をより効果的に防ぐことができる。
【0054】
上述した観点から、磁着層32の具体例としては、異方性マグネットシートであることが好ましく、異方性フェライト系マグネットシートであることがより好ましく、異方性フェライト系マグネットのラバーシートであることが更に好ましい。ここでいうラバーシートは、上述したバインダーを混合した複合体を用いることができる。
【0055】
さらに、ラバータイプのマグネットシートであれば、設置面210が凹凸を有する粗面であったとしても、追従性に優れるため、設置面210の全域に対して密着させることができる。また、設置面210の傷つきを防止することもできる。
【0056】
(接着領域S1及び非接着領域S2の配置)
【0057】
容器本体10への支持材30の接着は、底面11への指又は指の爪の差し込みが容易となるよう以下の要領でなされている。まず、容器本体10の底面11の外表面は、支持材30が接着された接着領域S1と、支持材30が接着されていない非接着領域S2と、を有するように接着される。そして、外表面を、第一方向(例えば、水平方向)に等間隔にm分割(mは3~40の整数である)し、かつ、第一方向と直交する第二方向(例えば、垂直方向)に等間隔にn分割(nは3~40の整数である)することにより、外表面を複数の区画に区切った場合に、非接着領域S2が、外表面の周縁に接している周縁区画を少なくとも含むように接着されている(例えば、図3参照)。
【0058】
なお、第一方向と第二方向の長さの比率は、ワイパー積層体の縦横比に合わせて、第一方向の長さ:第二方向の長さ=1:3~3:1とすることが好ましい。この範囲外の寸法比では、積層状態で収納可能なシートサイズが細長くなるため、ワイパーとして好ましくない。
【0059】
したがって、使用者がワイパーディスペンサー1を設置台200から持ち上げて、移動させようとする場合、指又は指の爪を容器本体10の底面11に差し込むことができる空間を確保することができる(図1の領域Bの部分拡大図に示した矢印F4参照)。これにより設置面210から取り外し、持ち上げることが容易となる。本実施形態では、接着領域S1及び非接着領域S2の配置を制御することにより、取り外し及び持ち上げを容易にすることができる。
【0060】
以下、一例として、図3を参照しつつ、接着領域S1及び非接着領域S2の配置を説明する。図3は、容器本体10の底面11の外表面が略長方形である態様を示しており、水平方向に等間隔に5分割(m=5の場合、図3のx1~x5参照)し、垂直方向に等間隔に7分割(n=7の場合、図3のy1~y7参照)することにより、合計35(5×7)の区画に区切っている。
【0061】
なお、本明細書では、便宜上、区画を横(水平方向)及び縦(垂直方向)の座標で特定することがある。例えば、図3の最左列かつ最下行に位置する区画を「(x1,y1)」等と呼ぶ。そして、底面11の周縁を含む区画を「周縁区画」という。また、当該区画の四周全てが囲まれている状態のことを「囲繞」といい、このように囲繞された区画を「囲繞区画」という。
【0062】
図3は、非接着領域S2が、周縁区画((x1,y1)、(x1,y2)、(x1,y3)、(x1,y4)、(x1,y5)、(x1,y6)、(x1,y7)、(x2,y1)、(x2,y7)、(x3,y1)、(x3,y7)、(x4,y1)、(x4,y7)、(x5,y1)、(x5,y2)、(x5,y3)、(x5,y4)、(x5,y5)、(x5,y6)、(x5,y7)の合計20区画)を全て包含している態様を例示している。そして、図3は、接着領域S1が、非接着領域S2によって囲繞されている囲繞区画である態様を例示している。この場合、底面11から指又は指の爪を差し込むことができる空間が四周のいずれにも確保されている。
【0063】
なお、本実施形態では、非接着領域S2は、周縁区画全てを包含していなくてもよく、周縁区画の少なくとも1つを包含していればよい。また、接着領域S1は、囲繞区画でなくてもよく、接着領域S1が周縁区画を包含していてもよい。このような変形例は、後述する他の実施形態において説明される。
【0064】
通常、人の指の爪の厚さは、約0.3~0.8mmといわれており、概ね1mm未満である。このことから、磁着層32の厚さは、1~3mmであることが好ましい。磁着層32の厚さの下限を1mm以上とすることにより、ワイパーディスペンサー1と設置面210との間に、少なくとも指の爪を差し込むことができる程度の隙間を形成させることができる(例えば、図1の領域Bの部分拡大図の矢印F4を参照)。また、磁着層32の厚さの上限を3mm以下とすることにより、適度な磁力を維持することができる。3mm以下であれば、磁力が強すぎて指の爪を利用して引き上げ難くなることがない。例えば、対向する2つの周縁区画(例えば、図3の(x1,y4)と(x5,y4)、(x3,y1)と(x3,y7))の隙間に左右の手を差し込んで、設置面210に対して垂直方向に引き上げることにより、ワイパーディスペンサー1を設置面210から取り外すことができる。さらに、上述した観点から、支持材30の厚さT1は、1~4mmであることが好ましい。厚さT1の下限は、1mmより大きいことがより好ましく、2mmより大きいことが好ましく、2.5mmより大きいことが更に好ましい。また、厚さT1の上限は、3.5mm以下であることがより好ましく、3.3mm以下であることが更に好ましく、3.1mm以下であることがより更に好ましい。
【0065】
m及びnの下限は、3以上である。3分割以上とすることにより、少なくとも1つの囲繞区画を形成することができる。また、m及びnの上限は、40以下である。40よりも細かく分割してしまうと、1区画あたりの長さが短くなる。その結果、非接着領域S2から指又は指の爪を差し込むことができる程度の十分な奥行きを確保することが難しくなる。このような観点から、m及びnの上限は、35以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、20以下であることが更に好ましく、15以下であることがより更に好ましく、13以下であることが一層更に好ましい。また、m及びnの下限は、5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましい。なお、m及びnは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
また、本実施形態によれば、底面11の外表面に占める接着領域S1の面積比(S1/(S1+S2))は、10~90%であることが好ましい。この面積比の下限は、30%以上であることがより好ましく、35%以上であることが更に好ましく、40%以上であることがより更に好ましく、60%以上であることが一層好ましく、65%以上であることが更に一層好ましい。また、この面積比の上限は、80%以下であることがより好ましく、70%以下であることが更に好ましい。
【0067】
指又は指の爪を差し込んで持ち上げることを容易とする観点から、非接着領域S2は、対向する1組以上の周縁区画を包含することが好ましく、更には2組以上の周縁区画を包含することがより好ましい。ここでいう「対向する1組の周縁区画」とは、例えば、図3において、(x1,y4)と(x5,y4)の1組、(x3,y1)と(x3,y7)の1組のような位置関係にあるものである。また、「対向する2組の周縁区画」とは、例えば、図3において、(x1,y4)(x1,y5)と(x5,y4)(x5,y5)の2組、(x3,y1)(x4,y1)と(x3,y7)(x4,y7)の2組のような位置関係にあるものである。この点、ワイパーディスペンサー1は、底面11の外表面の2組の対辺(図3における横の辺と縦の辺)のそれぞれにおいて、対向する周縁区画が非接着領域S2に包含されている。これにより、横辺からでも縦辺からでも両手の対向する指又は指の爪を差し込むことが容易であり、左右対称、上下対称、又は上下左右対称にディスペンサーを持って取り外すことができ、作業者は体勢を崩さずに壁面からディスペンサーを取り外すことができる。
【0068】
図4は、第二の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の配置の説明に供する、底面側から見た模式図である。
【0069】
図4は、接着領域S3及び非接着領域S4の配置が図3と相違しており、その他については同じである。ワイパーディスペンサー2は、接着領域S3が底面11の四隅の区画(例えば、(x1,y1)、(x1,y7)、(x5,y1)、(x5,y7))を包含する。例えば、ワイパーディスペンサー2を使用する作業現場では、指が濡れていることがある。その場合、底面11と設置面210との隙間に差し込んだ指又は指の爪が底面11の水平方向(図4の紙面方向)に滑ってしまうことがある。しかし、四隅の区画が接着領域S1であることにより、これらがストッパーとして機能し、指の滑りを防ぐことができる。四隅の区画の少なくとも1つが接着領域S1であればよいが、上述したストッパーとしての効果の観点から、本実施形態では、好ましくは四隅の区画の2以上、より好ましくは四隅の区画の3以上、更に好ましくは四隅全ての区画が接着領域S1に包含されている。
【0070】
図5は、第三の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の配置の説明に供する、底面側から見た模式図である。
【0071】
図5は、接着領域S5及び非接着領域S6の配置が図4と相違しており、その他については同じである。周縁区画のいずれか1つが、非接着領域S6であり、かつ、当該区画と隣接する区画がいずれも接着領域S5である。例えば、非接着領域S6である1区画(x1,y3)についてみると、これと隣接する(x1,y2)、(x1,y4)、(x2,y3)が接着領域S5である。このように底面11の外表面において、接着領域S5が占める面積比率が高いと、磁着力を一層向上させることができる。例えば、ワイパーディスペンサー3が比較的大型である場合には、このように接着領域S5の区画数を増やすことが好ましい。
【0072】
図6は、第四の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の配置の説明に供する、底面側から見た模式図である。
【0073】
図6は、接着領域S7及び非接着領域S8の配置が図3と相違しており、その他については同じである。具体的には、底面11の外表面の中央に配置された接着領域S7において、その内部に囲繞された別なる非接着領域S8(例えば、(x3,y3)、(x3,y4)、(x3,y5))を設けることによって接着領域S7の区画数を少なくしている。このように底面11の外表面において、接着領域S7が占める面積比率が低いので、磁着力をある程度抑え、設置面210から取り外すことが容易となる。例えば、非力な者が使用することが多い場合には、このように接着領域S7の区画数を減らすことが好ましい。その場合、図6のように、接着領域S7が非接着領域S8を囲繞するように配置されていることが好ましい。これにより、磁着力が適度な強さであり、かつ、底面11の外表面に対して均等に及ぶよう維持することができる。
【0074】
そして、図6に示すように、ワイパーディスペンサー4は接着領域S7が、底面11の外表面の重心を通る中心線に対して線対称となるよう配置されているので、接着領域S7の区画数が少なくとも、ワイパーディスペンサー4は十分な磁着力を維持することができる。
【0075】
図7は、第五の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の配置の説明に供する、底面側から見た模式図である。
【0076】
図7は、接着領域S9及び非接着領域S10の配置が図4と相違しており、その他については同じである。また、図7は、図4に示すワイパーディスペンサー2と比較して、底面11の外表面の中央に配置された接着領域S9において、その内部に囲繞された別なる非接着領域S10(例えば、(x3,y3)、(x3,y4)、(x3,y5))を設けることによって接着領域S9の区画数を減らしている。よって、このワイパーディスペンサー5は、図4のワイパーディスペンサー2と比較して、接着領域S9が占める面積比率が低いので、磁着力をある程度抑え、設置面210から取り外すことが容易となる。
【0077】
図8は、第六の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の配置の説明に供する、底面側から見た模式図である。
【0078】
図8は、接着領域S11及び非接着領域S12の配置が図3と相違しており、その他については同じである。図8に示すように、接着領域S11は外表面を分割した区画単位(1区画)の一部のみであってもよい(例えば、(x2,y2)等)。しかし、このような場合であっても、指又は指の爪を差し込むことができるだけの奥行を確保する観点から、非接着領域S12に包含される周縁区画の少なくとも1つ(好ましくは対向する2つ以上の周縁区画)は、当該単位区画の全域が非接着である。
【0079】
また、本実施形態では、磁着層32の形状は特に限定されないが、矩形、三角形、楕円、円、及び多角形からなる群より選ばれるいずれか一つであり、かつ、磁着層32の形状が、外表面の重心を通る中心線に対して線対称、又は重心に対して点対称となるよう配置されていることが好ましい。このような配置とすることにより、外表面全体にわたり磁着力を及ぼすことができるとともに、底面11の四周から取り出すことが容易となる。また、意匠性も優れる。図8は、一例として磁着層32の形状が楕円である態様を示している。
【0080】
特に、磁着層32が複雑な形状である場合、磁着層32として上述したマグネットシートを用いることが好ましい。マグネットシートを用いることによって、磁着層32を所望の形状となるよう容易にカットすることができる。
【0081】
図9は、第七の実施形態に係るワイパーディスペンサーの支持材の断面模式図である。
【0082】
ワイパーディスペンサー7は、その支持材40が、接着層31と、接着層31の表面に積層されたスペーサー層33と、スペーサー層33の表面に積層された別なる接着層34と、別なる接着層34の表面に積層された磁着層32と、を備える点で、図1のワイパーディスペンサー1と相違する。支持材40は、厚さを確保するためにスペーサー層33を更に備えるものである。
【0083】
磁着層32はその厚さが厚いほど、指又は指の爪を差し込み易い空間を形成できるが、設置面から取り出すのに適する磁着力を制御する観点や、比較的厚いマグネットシートは入手しづらいという観点から、磁着層32の厚さを厚くしたくない場合がある。そこで、スペーサー層33を磁着層32と底面11の間に介在させることで、このような要望を満たしつつ、指又は指の爪を差し込み易い高さの空間を確保することができる。スペーサー層33の材料は、接着層31,34と接着可能な材料であればよく、特に限定されない。例えば、樹脂(例えば、既知の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなるプラスチックや、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、EVA架橋発泡体、PET樹脂発泡体、フェノールフォーム等の発泡プラスチック等)でもよいし、金属(例えば、アルミニウム、真鍮、ステンレス、炭素鋼、チタン、銅、鉛等)でもよい。また、別なる接着層34は、接着層31について説明したものを適宜使用することができる。そして、接着層31と別なる接着層34は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0084】
さらに、指又は指の爪の差し込み易さ及び磁着力の制御の観点から、磁着層32の厚さは、1~3mmであることが好ましい。そして、支持材40の厚さT2が、5~15mmであることが好ましい。ここでいう支持材40の厚さとは、支持材40の全体の厚さT2であり、スペーサー層33及び別なる接着層34を有する支持材40における総厚さである。
【0085】
さらに、上述した本実施形態に係るワイパーディスペンサー1,2,3,4,5,6,7において、その容器本体10の底面11及び側壁12の形状に関して、その周縁端部に指が差し込み可能な凹部を設けてもよい。具体的には、凹部は容器本体10の底面11の周縁の一部に、底面11と側壁12とが接する周縁に設けられており、側壁12から見て、底面11から天面に向かって窪んだ構造であるとともに、底面11から見て、周縁から中央に向かって窪んだ構造である。
【0086】
この凹部は、底面11と側壁12とが接する周縁の少なくとも一部に設けられていればよいが、凹部が設けられた側壁12の端から端まで全幅に設け設けられてもよい。このような凹部を設けることによって、使用者が外側から凹部に指をひっかけることができるため、設置面210から取り外すことがさらに容易となる。なお、特に限定しないが、凹部は、周縁において支持材30,40が配された領域に設けてもよいし、支持材30,40が配されていない領域に設けてもよい。
【0087】
以下にその更なる変形例について説明する。
【0088】
図10(A)及び(B)は、第八の実施形態に係るワイパーディスペンサーの容器本体の図面であり、図10(A)は、容器本体の部分斜視図であり、図10(B)は、容器本体の部分拡大図である。図10(B)は、図10(A)のX-X線に沿った断面模式図である。
【0089】
図10に示すように、容器本体50は、その底面11及び側壁12が接する周縁51上に、底面11及び側壁12に向けて凹んだ凹部53が少なくとも1つ形成されていることが好ましい。凹部53の形状は、底面11と側壁12とが接する周縁51上に設けられており、側壁12から見て、底面11から天面(不図示、図10の図面の上方)に向かって窪んだ構造であるとともに、底面11から見て、周縁51から底面11の中央に向かって窪んだ構造である。これらの窪んだ構造は、直方体形状や凹局面形状を有する構造であってもよいが、凹曲面形状を有する構造であることが好ましい。このような構造にすることにより、曲面であることで鋭利な角を指を痛めることなく、指をスムーズに挿し込むことができる。このような凹部53を設けることによって、使用者が外側から凹部53に指をひっかけることができるため(矢印F4参照)、持ち上げることがより容易になる。
【0090】
また、凹部53の側壁12から最も遠く、かつ、中央に近い領域は、凹部53が底面11から天面(不図示、図10の図面の上方)に向かって、その他の領域よりも窪みが深くなっていることがより好ましい。このような構造にすることにより、挿入した指を凹部53の中央側に深く引っかけることができ、安定して持ち上げることがより容易となる。
【0091】
凹部53は、例えば、上述した第一~第七の実施形態に係るワイパーディスペンサー1,2,3,4,5,6,7の容器本体10に対して、その底面11と側壁12が接する周縁上に設けることができる。凹部53の寸法形状、個数、及び配置場所は、ワイパーディスペンサー1,2,3,4,5,6,7の寸法形状、及び支持材を構成する各部材の寸法形状等を考慮して、決定することができる。凹部53は支持材30,40が存在しない非接触領域に設けることが好ましい。このような構造にすることにより、支持材30,40の厚み分だけ凹部53の窪みがより深くなるため、より指を差し込み易くなる。
【0092】
凹部53の個数については、少なく1つ以上であればよく、好ましくは2つ以上である。さらに、凹部53の配置については、2つ以上の凹部53,54を設ける場合には、容器本体50の底面視において、一方の周縁51と、これと対向する周縁52とのそれぞれに、凹部53,54を設けることが好ましい。具体的には、容器本体50の底面視において、一方の周縁51上に設けられた少なくとも1つの凹部53と、この周縁51と対向する周縁52上に設けられた少なくとも1つの凹部54と、を備え、かつ、この凹部53及び凹部54は、対向配置されていることがより好ましい。2つの凹部53,54が対向配置されていることで、左右両側から指を差し込むことができるため(矢印F4参照)、持ち上げることがより容易になる。
【0093】
このような観点から、凹部53,54は、ディスペンサー底面の左右対称、上下対称、又は上下左右対称に設けることが好ましい。指を凹部53,54に差し込んで持ち上げるために、2個以上の凹部53,54を底面11の四周を構成する任意の同一辺(同一周縁)に沿って、指が嵌合するサイズで離間して設けてもよい。例えば、図10に示すように、1つの周縁51上に、2つ以上(例えば、3つ)の凹部53を連設することができる。そして、周縁51と対向する周縁52上にも、同数(例えば、3つ)の凹部54を連設することができる。このとき、連設される各凹部53,54は互いに一部が連接するように配置されてもよい。凹部53と凹部54とが間隙を設けることなく連接されることで、手の指を接触(例えば、同じ手の人差し指から薬指までの3本を接触)させたまま、凹部53,54を差し込むことができるため、持ち上げることがより容易となる。なお、上述したいずれの態様においても、指を差し込む凹部の幅、高さ、及び奥行きの寸法は、適宜選択できることはいうまでもない。
【0094】
図11は、第九の実施形態に係るワイパーディスペンサーの容器本体の部分斜視図である。
【0095】
図11に示す容器本体60は、その底面11及び側壁12が接する周縁61上に、底面11及び側壁12に向けて凹んだ凹部63が1つ形成されており、凹部63の形状は、側壁12から見て、底面11から天面(不図示、図11の図面の上方)に向かって窪んだ構造であるとともに、底面11から見て、周縁61から底面11の中央に向かって窪んだ構造であるが、図10に示す凹部53,54と比べて、幅広の凹部63である。同様に、凹部63と対向するように、周縁61と対向するもう一方の周縁62の上に、凹部64が設けられている。
【0096】
凹部63,64の形状がこのような幅広な凹形状であることにより、2本以上の指を凹部63,64に差し込むことができる。その結果、指が非凹部の間に挟まれること等から、ワイパーディスペンサーを取り外す際、指が滑らず、安定して取り外すことができる。
【0097】
このような観点から、凹部63,64の周縁61,62上の距離は、これらが設けられた周縁61,62の長さ(辺長)の1/4~2/3であることが好ましい。この比率の下限は、1/3以上であることがより好ましい。また、この比率の上限は、1/2以下であることがより好ましい。このような比率の幅広な凹部63,64とすることにより、上述した、指が滑らず安定して取り外すことができるといった利点が一層向上する。
【0098】
以上説明してきたように、本実施形態に係るワイパーディスペンサー1,2,3,4,5,6,7は、使用時には位置ずれすることなく、かつ、設置面210からの取り外し及び持ち運びが容易という利点を少なくとも有する。したがって、例えば、大勢の使用者が頻繁に使用する業務用のワイパーディスペンサーとして好適である。
【0099】
業務用のワイパーディスペンサーは、例えば、医療現場、実験室、精密部品工場、食品加工工場、給食センター、及び飲食店等では、反復して多量のワイパーWが使用される。そのため、上述した使用時の位置ずれ、さらには設置台200からの落下といった問題が起こりやすい。しかしながら、本実施形態によれば、このような位置ずれを防ぐことができ、かつ、設置面210からの取り外し及び持ち運びが容易であるため、特に好適である。
【0100】
<ワイパーディスペンサーの設置方法>
【0101】
本実施形態によれば、例えば、支持材30,40を備えていない、既存のワイパーディスペンサー100を、支持材30,40を用いて設置する方法を提供することもできる。例えば、本実施形態に係るワイパーディスペンサー100の設置方法は、略矩形状の底面11と、底面11から立設された側壁12と、を少なくとも有する、樹脂製又は金属製の容器本体10,50,60と、容器本体10,50,60の側壁12により構成される開口13を閉塞可能である第一の蓋体20と、を備え、容器本体10,50,60にワイパーWを収納するワイパーディスペンサー100の設置方法であって、以下の工程を含むものである。
【0102】
(1)接着層31と、接着層31の表面に積層された、厚さが1~3mmである、異方性磁石を含む磁着層32と、を備える支持材30,40を準備する準備工程と、
(2)支持材30,40の接着層31が、ワイパーディスペンサー100の底面11の外表面に接着するように、支持材30をワイパーディスペンサー100に接着する接着工程と、
(3)支持材30,40の磁着層32が、ワイパーディスペンサー100の設置台200に接するように、ワイパーディスペンサー100を設置台200に設置する設置工程と、を含む。
【0103】
そして、(3)接着工程は、ワイパーディスペンサー100の底面11の外表面を、第一方向に等間隔にm分割(mは3~40の整数である)し、かつ、第一方向と直交する第二方向に等間隔にn分割(nは3~40の整数である)することにより、外表面を複数の区画に区切った場合に、接着層31が接着されていない非接着領域S2が、外表面の周縁に接している周縁区画を少なくとも含むように接着する、
【0104】
本実施形態に係る設置方法によれば、例えば、図12及び図13に示すような従来のワイパーディスペンサー100を用いて、その底面11の外表面に支持材30,40を接着することによって、実施することもできる。このように、本実施形態に係る設置方法は、市販されている既存のワイパーディスペンサー100であっても、使用時には位置ずれすることなく、かつ、設置台200からの取り外し及び持ち運びが容易なものとすることができる点で、汎用性が高いという利点も有する。
【実施例
【0105】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0106】
(実施例1)
図1及び図2に示すワイパーディスペンサー1を作製した。支持材30を容器本体10の底面11に配置し、その際、図3に準じる矩形の支持体(縦110mm、横175mm)をディスペンサー底面表面(縦135mm、横210mm)の縦方向の中央81%、幅方向の中央83%に配置した。なお、ワイパーディスペンサー1の底面11は矩形状であり、それを縦方向に11分割(n=11、y1~y11)し、横方向に12分割(m=12、x1~x12)して単位区画とし、132の単位区画に領域を分割した。
【0107】
なお、使用した各部材は以下のとおりである。
・容器本体10及び第一の蓋体20として、図12及び図13に示す既存のワイパーディスペンサー100(縦156mm、幅226mm、高さ113mm、容器本体10はポリプロピレン製、第一の蓋体20はポリプロピレン製)を用いた。
・接着層31として、不織布(パルプ系不織布)の両面にアクリル系接着剤を塗布して接着層を形成した両面接着シート(接着層31の厚さ:16μm)を用いた。
・磁着層32として、異方性フェライト磁石にバインダーとしてニトリルゴムを混合した異方性フェライト系ラバーシート(片面着磁タイプ、磁着力:88g/cm、着磁ピッチ:3mm、磁着層32の厚さ:1mm)を用いた。
・支持材30の厚さT1は、1.016mmであった。
【0108】
(実施例2)
磁着層32として、厚さ3mmの異方性フェライト系ラバーシート(片面着磁タイプ、磁着力:145g/cm、着磁ピッチ:5mm、磁着層32の厚さ:3mm)を用いた以外は、実施例1のワイパーディスペンサー1と同じである。
支持材30の厚さT1は、3.016mmであった。
【0109】
(実施例3)
磁着層32として、厚さ5mmの異方性フェライト系ラバーシート(片面着磁タイプ、磁着力:1180g/cm、着磁ピッチ:5mm、磁着層32の厚さ:5mm)を用いた以外は、実施例1のワイパーディスペンサー1と同じである。
支持材30の厚さT1は、5.016mmであった。
【0110】
(実施例4)
磁着層32の配置が図4に準じたパターンとなるように、(x1,y1)、(x2,y1)、(x1,y2)、(x1,y11)、(x2,y11)、(x1,y10)、(x12,y11)、(x11,y11)、(x12,y10)、(x12,y1)、(x12,y2)、(x11,y1)の12区画区分を支持体の配置領域として追加する以外は、実施例1のワイパーディスペンサー1と同じである。
支持材30の厚さT1は、1.016mmであった。
【0111】
(実施例5)
磁着層32として、厚さ3mmの異方性フェライト系ラバーシート(片面着磁タイプ、磁着力:145g/cm、着磁ピッチ:5mm、磁着層32の厚さ:3mm)を用いた以外は、実施例4のワイパーディスペンサー1と同じである。
支持材30の厚さT1は、3.016mmであった。
【0112】
(比較例1)
図12及び図13に示すワイパーディスペンサー100を用いた。支持材30を備えない点以外は、実施例1のワイパーディスペンサー1と同じである。
【0113】
(比較例2)
磁着層32として、等方性フェライト磁石にバインダーとしてニトリルゴムを混合した等方性フェライト系ラバーシート(片面着磁タイプ、磁着力:47g/cm、磁着層32の厚さ:1mm)を用いた点以外は、実施例1のワイパーディスペンサー1と同じである。
【0114】
(比較例3)
磁着層32の配置を容器本体の外表面全面前面とした点以外は、比較例2のワイパーディスペンサー1と同じである。
【0115】
(評価)
【0116】
(1)設置面210からの位置ずれの評価:表1参照
【0117】
水平に設置した磁着可能な台(オカムラ社製、製品コードDS165P MB41の机)上にワイパーディスペンサー100の磁着層32が接するように載置し、不織布(日本製紙クレシア社製、ハイジェネ(商標)ブルーハンディワイパー100枚、100枚分の質量200g)をワイパーディスペンサー100の内部に静置し、第一の蓋体20を閉め、第二の蓋体24は閉めずに開放した状態にした。
【0118】
次に、第一の蓋体20に設けられた取り出し口23を通して最初のシートを引き出す。この状態で、作業者10人がディスペンサーを載置した水平方向に対して斜め45度上方に向けてシートをディスペンサーの長手方向又は幅方向に引っ張り出し、各シートを引き出した後の状態で、都度ディスペンサー四隅の内最も移動量が多かった状態の四隅の移動前後の変位量の最大値(mm)の平均値を確認することによって、設置面210からの位置ずれを評価した。
【0119】
位置ずれが5mm未満の場合は「○」、5mm以上20mm未満の場合は「△」、20mm以上の場合は「×」と評価した。なお、ワイパーWの引き出す方向は、ポップアップ式のシート積層体の内、引き出し方向に沿う縦方向と、引き出し方向と直交する横方向に対して行った。ワイパーWは薬液を付与しないドライ状態で行った結果を以下に示すが、ワイパーW(日本製紙クレシア社製、ハイジェネ(商標)ブルーハンディワイパー100枚、100枚分の質量200g)に薬液(ニイタカ社製、製品名:食品添加物エタノール製剤セーフコール58S)を800g付与したウェット状態で、かつ、取り出し口のワイパー対向する側に特許文献2に記載のアタッチメントを両面テープで貼り付け装着し行った場合でも、評価結果は同じであった。セーフコール58Sの薬液組成は、エタノール50.18質量%、DL-リンゴ酸0.35質量%、グリセリン脂肪酸エステル0.30質量%、DL-リンゴ酸Na0.06質量%、精製水49.11質量%である。なお、アタッチメントの寸法は、縦55mm、横130mmであり、厚さ1mm、素材はポリプロピレン、十字の縦横に延びる線幅は0.7cm、十字の縦線の長さは2.5cm、十字の横線の長さは4cmとした。
【0120】
(2)設置面210からの取り外し及び持ち運びの評価:表2参照
【0121】
垂直に載置した鉄板面上にワイパーディスペンサー100の磁着層32が接するように載置し、不織布をワイパーディスペンサー100の内部に静置し、第一の蓋体20及び第二の蓋体24を占める。次に、作業者10人(爪の黄線から爪先までの長さが0.5mm以上2.0mm以下の範囲である作業者)が支持材と鉄板の間に爪又は指を差し込んでディスペンサーを鉄板に対して垂直方向に取り外す際の作業のし易さを3段階評価することによって、設置面210からの取り外し及び持ち運びを評価した。
【0122】
容易に取り外せた場合は「◎」、取り外しにくかった場合は「○」、取り外せなかった場合は「△」と評価した。なお、10人の内異なる評価結果が出た場合は、「◎」を3、「○」を2、「△」を1とし、10人全体の合計を算出し、その値を10人で割り、平均値を求め、小数点を四捨五入した際、最近似の数値の一の位を「◎」、「○」、「△」で表し、評価結果とした。
【0123】
実施例1は、磁着層32の磁着力よりも、接着層31の接着力が強いものであり、設置面210からワイパーディスペンサー1を取り外す際に、容器本体10の底面11と接着層31の接着面や、磁着層32と接着層31の接着面が剥離することなく、容易に設置面210から磁着層32を取り外すことができた。
【0124】
(1)シートをディスペンサー斜め45度上方に向けて縦方向で引っ張った際の位置ずれの評価結果は、実施例1及び2は「○」であり、比較例1の評価は「×」であり、比較例2の評価は「△」であった。他方、(1)シートをディスペンサー斜め45度上方に向けて横方向で引っ張った際の位置ずれの評価結果は、実施例1が「△」、実施例2が「〇」、比較例1及び2は「×」であった。図12の取り出し口23は横方向に長い楕円形状であるため、(1)の結果は、斜め45度上方の縦方向に引っ張るよりも、斜め45度上方の横方向に引っ張る方が移動量は大きかった。これは、シートが楕円形の取り出し口の幅方向両端のすぼまった狭い領域にシートが皺を形成して集合し、取り出し抵抗が強まったためと考えられる。なお、比較例1では、指や爪を差し込む空間が確保できなかったため、「×」であった。
【0125】
(2)ディスペンサーの設置面210からの取り外し及び持ち運びの評価結果は、実施例1~3については、実施例2のマグネット厚さ3mmまでは取り外し及び持ち運びが「〇」又は「◎」であり、厚さ5mm以上になると取り外し及び持ち運びが「△」であった。さらに、手や爪が濡れている場合は、差し込んだ指や指が滑りやすいため、実施例1,2は「〇」となった。そして、マグネットの配置を図4に準じた配置をした実施例4及び5では、差し込んだ指や爪が差し込んだ空間で横滑りした際にも、周縁区画にマグネットが配されているためストッパーとなり、滑ったとしても、滑りを抑制することができ、「◎」であった。一方、比較例3では、乾いた状態及び濡れた状態のいずれも「△」であった。なお、実施例1~5はいずれも位置ずれの評価は良好な結果であった。すなわち、実施例1~5は、使用時の位置ずれを十分に防止できており、かつ、上述したように取り外し及び持ち運びの評価も良好な結果であった。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
以上より、本実施例のワイパーディスペンサー及びその設置方法は、使用時には位置ずれすることがなく、かつ、設置面からの取り外し及び持ち運びが容易であることが少なくとも確認された。
【符号の説明】
【0129】
1,2,3,4,5,6,7:ワイパーディスペンサー、10,50,60:容器本体、11:底面、12:側壁、13:開口、20:第一の蓋体、21:第一の把持部、22:第一のヒンジ部、23:取り出し口、24:第二の蓋体、25:第二の把持部、26:第二のヒンジ部、27:凹部、30,40:支持材、31,34:接着層、32:磁着層、33:スペーサー層、51,52,61,62:容器本体の周縁、53,54,63,64:容器本体の凹部、100(従来の)ワイパーディスペンサー、200:設置台、210:設置面、S1,S3,S5,S7,S9,S11:接着領域、S2,S4,S6,S8,S10,S12:非接着領域、T1,T2:厚さ、W,W1,W2,W3:ワイパー、R,F1,F2,F3,F4,F5:矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13