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特許7498632モータ制御回路、モータ駆動制御装置、モータユニット、及びモータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】モータ制御回路、モータ駆動制御装置、モータユニット、及びモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/08 20160101AFI20240605BHJP
【FI】
H02P6/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020158823
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052427
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】海津 浩之
(72)【発明者】
【氏名】青木 政人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 智敬
(72)【発明者】
【氏名】岡淵 良久
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-118745(JP,A)
【文献】特開2013-183632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された、駆動対象のモータの目標回転速度を指示する速度指令信号のデューティ比を計測する速度指令解析部と、
前記速度指令信号のデューティ比と前記目標回転速度との関係を示す速度カーブを規定するためのパラメータ情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記パラメータ情報と、前記速度指令解析部による前記速度指令信号のデューティ比の計測結果とに基づいて、前記目標回転速度を決定する目標回転速度決定部と、
前記目標回転速度決定部によって決定された前記目標回転速度に基づいて、前記モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部と、を備え、
前記パラメータ情報は、前記速度指令信号のデューティ比の分解能を示す分解能情報と、前記速度カーブにおける変曲点の回転速度を示す回転速度情報と、を含み、
前記目標回転速度決定部は、前記速度指令信号が取り得るデューティ比の範囲を前記分解能情報に基づいて等分して得られたデューティ比毎に前記変曲点を設定し、設定した前記変曲点と前記回転速度情報に基づいて、前記速度指令解析部によって計測された前記速度指令信号のデューティ比に対応する回転速度を算出し、算出した前記回転速度を前記目標回転速度として決定し、
前記分解能情報は、前記速度カーブにおいて等間隔に設けられる前記変曲点の数の情報を含み、
前記速度指令解析部は、前記変曲点の数に基づく分解能で前記速度指令信号のデューティ比を計測し、
前記目標回転速度決定部は、設定した前記変曲点の中から前記速度指令解析部によって計測された前記速度指令信号のデューティ比に対応する前記変曲点を特定し、前記回転速度情報に基づいて、特定した前記変曲点の回転速度を算出し、算出した前記回転速度を前記目標回転速度とする
モータ制御回路。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ制御回路において、
前記記憶部は、前記パラメータ情報の書き換えが可能に構成されている
モータ制御回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモータ制御回路において、
前記分解能情報は、前記速度指令信号のデューティ比の第1の分解能としての前記変曲点の数の情報、前記速度指令信号のデューティ比の、前記第1の分解能より高い第2の分解能としての速度指令数の情報、および隣り合う前記変曲点間に等間隔に設けられ、当該変曲点間を直線で補間するための直線補間点の数の情報のうち少なくとも2つの情報を含み、
前記目標回転速度決定部は、前記速度指令信号が取り得るデューティ比の範囲を前記変曲点の数に基づいて等分することによって得られるデューティ比毎に前記変曲点を設定するとともに、前記速度指令信号が取り得るデューティ比の範囲を前記速度指令数に基づいて等分することによって得られるデューティ比毎に速度指令の配列番号を設定し、設定した前記速度指令の配列番号の中から前記速度指令解析部によって計測された前記速度指令信号のデューティ比に対応する前記速度指令の配列番号を特定し、
前記目標回転速度決定部は、特定した前記速度指令の配列番号の直前にある前記変曲点の回転速度と特定した前記速度指令の配列番号の直後にある前記変曲点の回転速度との差に基づいて、前記直前の変曲点と前記直後の変曲点との間に存在する前記直線補間点間の回転速度の増加分を算出し、当該算出した前記直線補間点間の回転速度の増加分の値と前記直線補間点の数とに基づいて、特定した前記速度指令の配列番号に対応する回転速度を算出し、算出した前記回転速度を前記目標回転速度として決定する
モータ制御回路。
【請求項4】
請求項に記載のモータ制御回路において、
前記目標回転速度決定部は、特定した前記速度指令の配列番号を前記直線補間点の数に1を加えた数で除算して得られた余りの値に、前記直線補間点間の回転速度の増加分を乗算し、乗算によって得られた値に前記直前の変曲点の回転速度を加算し、加算して得られた値を前記目標回転速度として決定する
モータ制御回路。
【請求項5】
請求項3または4に記載のモータ制御回路において、
nを1以上の整数としたとき、前記直線補間点の数は、(2n-1)である
モータ制御回路。
【請求項6】
請求項3乃至5の何れか一項に記載のモータ制御回路において、
前記目標回転速度決定部は、前記変曲点の数の情報と前記速度指令数の情報とに基づいて、前記直線補間点の数を算出する
モータ制御回路。
【請求項7】
請求項1乃至の何れか一項に記載のモータ制御回路と、
前記モータ制御回路によって生成された前記駆動制御信号に基づいて、前記モータを駆動するモータ駆動回路と、を備える
モータ駆動制御装置。
【請求項8】
請求項に記載のモータ駆動制御装置と、
前記モータ駆動制御装置によって駆動される前記モータと、を備える
モータユニット。
【請求項9】
駆動対象のモータの目標回転速度を指示する速度指令信号のデューティ比と前記目標回転速度との関係を示す速度カーブを規定するためのパラメータ情報を記憶する記憶部を備えたモータ制御回路によるモータ制御方法であって、
入力された前記速度指令信号のデューティ比を計測する第1ステップと、
前記記憶部に記憶された前記パラメータ情報と、前記第1ステップにおいて計測された前記速度指令信号のデューティ比とに基づいて、前記目標回転速度を決定する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて決定された前記目標回転速度に基づいて、前記モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する第3ステップと、を含み、
前記パラメータ情報は、前記速度指令信号のデューティ比の分解能を示す分解能情報と、前記速度カーブにおける変曲点の回転速度を示す回転速度情報と、を含み、
前記第2ステップは、前記速度指令信号が取り得るデューティ比の範囲を前記分解能情報に基づいて等分して得られたデューティ比毎に前記変曲点を設定し、設定した前記変曲点と前記回転速度情報に基づいて、前記第1ステップにおいて計測された前記速度指令信号のデューティ比に対応する回転速度を算出し、算出した前記回転速度を前記目標回転速度として決定するステップを含み、
前記分解能情報は、前記速度カーブにおいて等間隔に設けられる前記変曲点の数の情報を含み、
前記第1ステップは、前記変曲点の数に基づく分解能で前記速度指令信号のデューティ比を計測するステップを含み、
前記第2ステップは、設定した前記変曲点の中から前記第1ステップによって計測された前記速度指令信号のデューティ比に対応する前記変曲点を特定し、前記回転速度情報に基づいて、特定した前記変曲点の回転速度を算出し、算出した前記回転速度を前記目標回転速度とするステップを含む
モータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御回路、モータ駆動制御装置、モータユニット、及びモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上位装置等の外部機器から入力された速度指令信号に応じて、モータの回転速度を制御するモータ制御回路が知られている。例えば、ファンモータ等では、速度指令信号として、モータの目標回転速度に対応するデューティ比を有する、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)された信号(以下、単に「PWM信号」とも称する。)が用いられることがよく知られている。
【0003】
例えば、特許文献1,2には、上位装置から速度指令信号としてのPWM信号が入力された場合に、そのPWM信号のデューティ比を測定し、測定したデューティ比に基づいて目標回転速度を算出し、モータが目標回転速度で回転するようにモータを制御するモータ駆動制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-283908号公報
【文献】特開2016-226263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、不揮発性メモリに記憶された、速度指令信号のデューティ比とモータの目標回転速度(目標回転数)との関係を表す関数(以下、「速度カーブ」とも称する。)のパラメータが変更可能なモータ制御回路としての集積回路(以下、「ドライバIC」とも称する。)が知られている。このドライバICによれば、パーソナルコンピューター(PC)等の情報処理端末から集積回路内の不揮発性メモリに書き込まれた上記パラメータを変更することにより、モータを適用するアプリケーションに応じて、上記関数を変更することが可能となる。
【0006】
しかしながら、従来のドライバICは、搭載可能な不揮発メモリの容量や処理速度の低下防止等の制約から、設定可能な速度カーブが制限されている。従来のドライバICは、数点のポイント、例えば、4ポイントを直線で結んだ折れ線グラフのように決められた速度カーブしか設定することができず、自由度が高い速度カーブを設定することができない。
【0007】
本発明は、上述した課題を解消するためのものであり、モータの駆動制御において、モータの目標回転速度に関する速度カーブの自由度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ制御回路は、入力された、駆動対象のモータの目標回転速度を指示する速度指令信号のデューティ比を計測する速度指令解析部と、前記速度指令信号のデューティ比と前記目標回転速度との関係を示す速度カーブを規定するためのパラメータ情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記パラメータ情報と、前記速度指令解析部による前記速度指令信号のデューティ比の計測結果とに基づいて、前記目標回転速度を決定する目標回転速度決定部と、前記目標回転速度決定部によって決定された前記目標回転速度に基づいて、前記モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部と、を備え、前記パラメータ情報は、前記速度指令信号のデューティ比の分解能を示す分解能情報と、前記速度カーブにおける変曲点の回転速度を示す回転速度情報と、を含み、前記目標回転速度決定部は、前記速度指令信号が取り得るデューティ比の範囲を前記分解能情報に基づいて等分して得られたデューティ比毎に前記変曲点を設定し、設定した前記変曲点と前記回転速度情報に基づいて、前記速度指令解析部によって計測された前記速度指令信号のデューティ比に対応する回転速度を算出し、算出した前記回転速度を前記目標回転速度として決定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、モータの駆動制御において、モータの目標回転速度に関する速度カーブの設定の自由度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るモータ駆動制御装置の構成の一例を示す図である。
図2A】実施の形態1に係る、速度指令信号Scのデューティ比と目標回転速度との関係を示す速度カーブの一例を示す図である。
図2B図2Aに示される速度カーブの領域aの拡大図である。
図3】実施の形態1に係るモータ制御回路による目標回転速度の算出方法を説明するための図である。
図4】実施の形態1に係るモータ制御回路による目標回転速度の算出方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2に係るモータ駆動制御装置の構成の一例を示す図である。
図6】実施の形態2に係る目標回転速度の算出方法を説明するための図である。
図7】速度指令数、直線補間点数、および変曲点数の相互関係の一例を示す図である。
図8】実施の形態2に係るモータ制御回路による目標回転速度の算出方法を説明するための図である。
図9】実施の形態2に係るモータ制御回路による目標回転速度の算出方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0012】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ制御回路(11,11A)は、入力された、駆動対象のモータ(50)の目標回転速度を指示する速度指令信号(Sc)のデューティ比を計測する速度指令解析部(24,24A)と、前記速度指令信号のデューティ比と前記目標回転速度との関係を示す速度カーブ(201,203)を規定するためのパラメータ情報(300,300A)を記憶する記憶部(26,26A)と、前記記憶部に記憶された前記パラメータ情報と、前記速度指令解析部による前記速度指令信号のデューティ比の計測結果とに基づいて、前記目標回転速度を決定する目標回転速度決定部(25,25A)と、前記目標回転速度決定部によって決定された前記目標回転速度に基づいて、前記モータの駆動を制御するための駆動制御信号(Sd)を生成する駆動制御信号生成部(14)とを備え、前記パラメータ情報は、前記速度指令信号のデューティ比の分解能を示す分解能情報(301,301A)と、前記速度カーブにおける変曲点(In)の回転速度を示す回転速度情報(302)と、を含み、前記目標回転速度決定部は、前記速度指令信号が取り得るデューティ比の範囲を前記分解能情報に基づいて等分して得られたデューティ比毎に前記変曲点を設定し、設定した前記変曲点と前記回転速度情報に基づいて、前記速度指令解析部によって計測された前記速度指令信号のデューティ比に対応する回転速度を算出し、算出した前記回転速度を前記目標回転速度として決定することを特徴とする。
【0013】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ制御回路(11)において、前記記憶部は、前記パラメータ情報の書き換えが可能に構成されていてもよい。
【0014】
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のモータ制御回路(11)において、前記分解能の情報は、前記速度カーブにおいて等間隔に設けられる前記変曲点の数の情報(303)を含み、前記速度指令解析部(24)は、前記変曲点の数に基づく分解能で前記速度指令信号のデューティ比を計測し、前記目標回転速度決定部(25)は、設定した前記変曲点の中から前記速度指令解析部によって計測された前記速度指令信号のデューティ比に対応する前記変曲点(In(k))を特定し、前記回転速度情報に基づいて、特定した前記変曲点の回転速度を算出し、算出した前記回転速度を前記目標回転速度としてもよい。
【0015】
〔4〕上記〔1〕または〔2〕に記載のモータ制御回路(11A)において、前記分解能の情報(301A)は、前記速度指令信号のデューティ比の第1の分解能としての前記変曲点の数の情報(303)、前記速度指令信号のデューティ比の、前記第1の分解能より高い第2の分解能としての速度指令数の情報(304)、および隣り合う前記変曲点間に等間隔に設けられ、当該変曲点間を直線で補間するための直線補間点の数の情報(305)のうち少なくとも2つの情報を含み、前記目標回転速度決定部(25A)は、前記速度指令信号が取り得るデューティ比の範囲を前記変曲点の数に基づいて等分することによって得られるデューティ比毎に前記変曲点を設定するとともに、前記速度指令信号が取り得るデューティ比の範囲を前記速度指令数に基づいて等分することによって得られるデューティ比毎に速度指令の配列番号(p)を設定し、設定した前記速度指令の配列番号の中から前記速度指令解析部(24A)によって計測された前記速度指令信号のデューティ比に対応する前記速度指令の配列番号(j)を特定し、前記目標回転速度決定部(25A)は、特定した前記速度指令の配列番号(j)の直前にある前記変曲点の回転速度(Rl)と特定した前記速度指令の配列番号(j)の直後にある前記変曲点の回転速度(Rh)との差(|Rh-Rl|)に基づいて、前記直前の変曲点と前記直後の変曲点との間に存在する前記直線補間点間の回転速度の増加分を算出し、当該算出した前記直線補間点間の回転速度の増加分の値と前記直線補間点の数(q)とに基づいて、特定した前記速度指令の配列番号に対応する回転速度を算出し、算出した前記回転速度を前記目標回転速度として決定してもよい。
【0016】
〔5〕上記〔4〕に記載のモータ制御回路において、前記目標回転速度決定部(25A)は、特定した前記速度指令の配列番号(j)を前記直線補間点の数(q)に1を加えた数(2)で除算して得られた余りの値(r)に、前記直線補間点間の回転速度の増加分(|Rh-Rl|)を乗算し、乗算によって得られた値(r×|Rh-Rl|)に前記直前の変曲点の回転速度(Rl)を加算し、加算して得られた値を前記目標回転速度として決定してもよい。
【0017】
〔6〕上記〔4〕または〔5〕に記載のモータ制御回路において、nを1以上の整数としたとき、前記直線補間点の数は、(2-1)であってもよい。
【0018】
〔7〕上記〔4〕乃至〔6〕の何れか一項に記載のモータ制御回路において、前記目標回転速度決定部(25A)は、前記変曲点の数の情報(303)と前記速度指令数の情報(304)とに基づいて、前記直線補間点の数を算出してもよい。
【0019】
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(10,10A)は、上記〔1〕乃至〔7〕の何れか一項に記載のモータ制御回路(11,11A)と、前記モータ制御回路によって生成された前記駆動制御信号に基づいて、前記モータを駆動するモータ駆動回路(12)とを備えていることを特徴とする。
【0020】
〔9〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータユニット(2,2A)は、上記〔8〕に記載のモータ駆動制御装置(10,10A)と、前記モータ駆動制御装置によって駆動される前記モータ(50)と、を備えてもよい。
【0021】
〔10〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ制御方法は、駆動対象のモータの目標回転速度を指示する速度指令信号のデューティ比と前記目標回転速度との関係を示す速度カーブを規定するためのパラメータ情報を記憶する記憶部を備えたモータ制御回路によるモータ(50)の制御方法である。本モータ制御方法は、入力された前記速度指令信号のデューティ比を計測する第1ステップ(S13,S24)と、前記記憶部に記憶された前記パラメータ情報と前記第1ステップにおいて計測された前記速度指令信号のデューティ比とに基づいて、前記目標回転速度を決定する第2ステップ(S11,S14~S16,S21,S22,S25~S34)と、前記第2ステップにおいて決定された前記目標回転速度に基づいて、前記モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する第3ステップとを含む。前記パラメータ情報は、前記速度指令信号のデューティ比の分解能を示す分解能情報と、前記速度カーブにおける変曲点の回転速度を示す回転速度情報と、を含み、前記第2ステップは、前記速度指令信号が取り得るデューティ比の範囲を前記分解能情報に基づいて等分して得られたデューティ比毎に前記変曲点を設定し、設定した前記変曲点と前記回転数情報に基づいて、前記第1ステップにおいて計測された前記速度指令信号のデューティ比に対応する回転速度を算出し、算出した前記回転速度を前記目標回転速度として決定するステップを含むことを特徴とする。
【0022】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0023】
≪実施の形態1≫
図1は、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10の構成の一例を示す図である。
図1に示されるモータ駆動制御装置10は、駆動対象としてのモータ50の駆動を制御するための装置である。モータ50は、例えば、3相のブラシレスモータである。なお、モータ50の種類は特に限定されず、相数も3相に限定されない。モータ50の出力軸には、例えば、インペラ(羽根車)51が接続されている。
【0024】
インペラ51は、風を発生させる部品であり、モータ50の回転力によって回転可能に構成されている。例えば、インペラ51の回転軸は、モータ50の出力軸に同軸に連結されている。
【0025】
本実施の形態では、例えば、インペラ51とモータ50とが一つのファン(ファンモータ)5を構成している。また、モータ50とモータ駆動制御装置10とは一つのモータユニット2を構成し、ファン5とモータ駆動制御装置10とは一つのファンユニット1を構成している。ファンユニット1は、例えば、サーバ内の閉ざされた空間に配置されて、当該サーバを構成する各種の電子部品等を冷却する冷却システムを構成しているものとする。ファンユニット1は、上位装置4からの各種指令に基づいて動作する。
【0026】
上位装置4は、ファンユニット1の駆動を制御する制御装置である。例えば、ファンユニット1がサーバ用の冷却システムを構成している場合、上位装置4は、サーバとしての主たる機能を実現するためのプログラム処理装置である。
【0027】
例えば、上位装置4は、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力I/F回路等の周辺回路とが、バスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えばマイクロコントローラ)が、ファンユニット1とともに一つの筐体内に収容されることによって実現されている。
【0028】
上位装置4は、例えば、環境変化(処理負荷の変化やサーバ内部の温度の変化など)に応じてファン(モータ)の風量が適切になるように、ファン5を制御する。
【0029】
図1に示すように、上位装置4は、例えば、サーバとしての主たる機能を実現するためのデータ処理制御部41と、ファンユニット1と通信を行うための通信部42とを備えている。データ処理制御部41および通信部42は、例えば、上位装置4を構成するプログラム処理装置において、プロセッサが、メモリに記憶されたプログラムに従って各種演算処理を実行するとともに、カウンタやA/D変換回路等の周辺回路を制御することによって実現される。
【0030】
データ処理制御部41は、例えば、サーバ内に配置されたファン5から供給される風量を調整するために、ファン5のモータ50の目標となる回転速度(目標回転速度)を指示する速度指令信号Scを、通信部42を介してファンユニット1に送信する。
【0031】
速度指令信号Scは、例えば、指定する目標回転速度に応じたデューティ比を有するPWM信号である。速度指令信号Scの送受信は、例えば、上位装置4とファンユニット1とを接続する専用線を用いて実現される。
【0032】
また、データ処理制御部41は、ファンユニット1から出力されるモータ50の実際の回転速度(回転数)を表す回転速度信号So(例えばFG(Frequency Generator)信号)を、通信部42を介して受信することにより、ファンユニット1のモータ50の回転状態を監視する。回転速度信号Soの送受信は、例えば、上位装置4とファンユニット1とを接続する専用線を用いて実現される。
【0033】
更に、データ処理制御部41は、通信部42を介して、ファンユニット1との間で各種データの送受信を行う。例えば、データ処理制御部41は、通信部42を介してファンユニット1にアクセスすることにより、モータ制御回路11に後述するパラメータ情報300を書き込むとともに、モータ制御回路11に記憶されているパラメータ情報300を書き換える。この場合の上位装置4(通信部42)とファンユニット1(モータ駆動制御装置10)との間の通信は、例えば、シリアル通信によって実現される。なお、ファンユニット1と上位装置4との間の通信は有線通信であってもよいし、無線通信であってもよく、通信方式は特に限定されない。
【0034】
モータ駆動制御装置10は、上位装置4からの速度指令(速度指令信号Sc)に応じて駆動制御信号Sdを生成して、モータ50の各相(例えば3相)のコイルに周期的に正弦波状の駆動電流を流してモータ50を回転させる。モータ駆動制御装置10は、モータ制御回路11と、モータ駆動回路12と、位置検出装置13とを備えている。
【0035】
位置検出装置13は、モータ50のロータの回転位置を検出する装置であり、例えば、ホール素子である。位置検出装置13は、モータ50のロータの位置に応じて位置検出信号(ホール信号)を出力する。
【0036】
モータ制御回路11は、上位装置4からの速度指令と位置検出装置13からの位置検出信号に基づいて、モータ50の駆動を制御する。具体的には、モータ制御回路11は、位置検出装置13からの位置検出信号に基づいてモータ50の回転速度を計測し、その回転速度が、外部(上位装置4)から入力された速度指令信号Scで指定された目標回転速度と一致するように駆動制御信号Sdを生成する。駆動制御信号Sdは、例えばPWM(Pulse Width Modulation)信号である。なお、モータ制御回路11の詳細については後述する。
【0037】
モータ駆動回路12は、モータ制御回路11によって生成された駆動制御信号Sdに基づいてモータ50を駆動する。例えば、モータ駆動回路12は、インバータ回路及びプリドライブ回路(不図示)を有している。
【0038】
インバータ回路は、プリドライブ回路から出力された出力信号に基づいてモータ50に駆動信号を出力し、モータ50が備えるコイルに通電する。インバータ回路は、例えば、直流電源の両端に設けられた2つのスイッチ素子の直列回路の対が、各相のコイルに対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点に、モータ50の各相の端子が接続されている。
【0039】
プリドライブ回路は、駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路を駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路に出力する。プリドライブ回路は、例えば、駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路の各スイッチ素子を駆動する駆動信号を生成して出力する。この駆動信号がインバータ回路を構成する各スイッチ素子をオン/オフさせることにより、モータ50の各相に電力が供給されてモータ50のロータが回転する。
【0040】
次に、モータ制御回路11について詳細に説明する。
モータ制御回路11は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM,フラッシュメモリ等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力I/F回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えばマイクロコントローラ)によって実現されている。
【0041】
なお、モータ制御回路11とモータ駆動回路12とは、それぞれ個別の集積回路装置(IC)として別々にパッケージ化された構成であってもよいし、一つの集積回路装置(IC)としてパッケージ化された構成であってもよい。
【0042】
上述したように、モータ制御回路11は、モータ50の回転速度が速度指令信号Scによって指定された目標回転速度に一致するように駆動制御信号Sdを生成する。このとき、モータ制御回路11は、外部から入力された速度指令信号ScとしてのPWM信号を解析して、速度指令信号Scのデューティ比を計測する。モータ制御回路11は、モータ制御回路11内の記憶装置に予め記憶されている、速度指令信号Scのデューティ比と目標回転速度との関係を示す速度カーブを規定するためのパラメータ情報300を用いて、計測した速度指令信号Scのデューティ比に対応する目標回転速度を算出する。
【0043】
モータ制御回路11は、上述したモータ50の駆動制御に係る機能を実現するための機能ブロックとして、例えば、駆動制御信号生成部14、回転速度計測部17、FG信号生成部18、通信部20、速度指令解析部24、目標回転速度決定部25、および記憶部26を有している。これらの機能部は、例えば、上述したプログラム処理装置においてCPUがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算処理を実行し、その処理結果に基づいて周辺回路を制御することによって、実現される。
【0044】
以下、モータ制御回路11の各機能部について詳細に説明する。
【0045】
駆動制御信号生成部14は、駆動制御信号Sdを生成するための機能部である。駆動制御信号生成部14は、例えば、上位装置4から出力された速度指令信号Scを受信した場合に、後述する目標回転速度決定部25によって速度指令信号Scに基づいて算出された目標回転速度とモータ50の実際の回転速度とが一致するように、駆動制御信号Sdを生成する。
【0046】
図1に示すように、駆動制御信号生成部14は、例えば、デューティ比決定部15および通電制御部16を有している。デューティ比決定部15は、目標回転速度決定部25から出力された目標回転速度と後述する回転速度計測部17によって計測されたモータ50の回転速度の計測値とに基づいて、駆動制御信号SdとしてのPWM信号のデューティ比を決定する。例えば、デューティ比決定部15は、目標回転速度とモータ50の回転速度の計測値との差が小さくなるようにモータ50の制御量を算出し、その制御量に応じたPWM信号のデューティ比を決定する。通電制御部16は、デューティ比決定部15によって決定したデューティ比を有するPMW信号を生成し、駆動制御信号Sdとして出力する。
【0047】
回転速度計測部17は、モータ50の回転速度を計測する機能部である。回転速度計測部17は、例えば、位置検出装置13(例えば、ホール素子)から出力された位置検出信号に基づいて、モータ50の回転速度を計測し、その計測結果を出力する。
【0048】
FG信号生成部18は、モータ50の回転速度を示す回転速度信号SoとしてのFG信号を生成する。FG信号生成部18は、例えば、位置検出装置13から出力された位置検出信号に基づいて、モータ50の回転速度に比例する周期(周波数)を有する信号(FG信号)を生成して出力する。FG信号生成部18から出力されたFG信号は、回転速度信号Soとして上位装置4に入力される。
なお、FG信号生成部18は、例えば、モータ50が搭載される基板(プリント基板)上に形成されたFGパターンによって実現してもよい。
【0049】
通信部20は、外部と通信を行うための機能部である。通信部20は、例えば、外部装置としての上位装置4との間でデータの送受信を行う。通信部20は、送信部21、受信部22、および通信制御部23を有する。
【0050】
送信部21は、外部(例えば、上位装置4等の外部装置)に信号を送信する。受信部22は、外部(例えば、上位装置4等の外部装置)から信号を受信する。送信部21および受信部22は、例えば、通信制御部23に制御されて、所定のシリアル信号を生成して通信線路に送信するとともに通信線路からシリアル信号を受信するシリアル通信用インターフェース回路である。
【0051】
通信制御部23は、送信部21にエンコードしたデータを送り、また、受信部22によって受信したデータをデコードすることにより、上位装置4との間でデータの送受信を実現する。通信制御部23は、例えば、上述したモータ駆動制御装置10を構成するプロセッサによるプログラム処理によって実現される。
【0052】
また、通信制御部23は、上位装置4等の外部装置から送信されたデータを記憶部26に記憶する。例えば、上位装置4から、後述するパラメータ情報300の書き込み要求と書き込み対象のパラメータ情報300のデータとが送信された場合には、通信制御部23は、受信部22によって受信したパラメータ情報300を記憶部26に記憶させる。その後、通信制御部23は、上記書き込み要求に対する応答として、パラメータ情報300の書き込みが完了したことを示すデータを送信部21から上位装置4(通信部42)に送信する。
【0053】
実施の形態1に係るモータ制御回路11において、モータ50の目標回転速度は、上位装置4等から入力された速度指令信号Scと、速度指令信号Scのデューティ比と目標回転速度との関係を示す速度カーブを規定するためのパラメータ情報300とに基づいて、算出される。具体的には、モータ制御回路11は、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲(例えば、0%~100%)において設定すべき速度カーブの変曲点の数と、各変曲点の回転速度とを予め設定しておき、入力された速度指令信号Scのデューティ比を変曲点の数に基づく分解能で計測し、速度指令信号Scのデューティ比の計測結果に対応する変曲点の回転速度に基づいてモータ50の目標回転速度を決定する。
【0054】
ここで、変曲点とは、任意の速度カーブを規定するための、速度指令信号Scのデューティ比とモータの回転速度から成る2次元直交座標系における点である。変曲点を設定することにより、速度カーブの傾きを任意に設定することが可能となる。後述するように、本実施の形態では、各変曲点における回転速度の値が予め設定されている一方で、各変曲点における速度指令信号Scのデューティ比の値は、設定された変曲点の数に基づく分解能で決まる。
以下、モータ制御回路11による目標回転速度の決定方法について詳細に説明する。
【0055】
図2Aは、実施の形態1に係る、速度指令信号Scのデューティ比と目標回転速度との関係を示す速度カーブの一例を示す図である。図2Bは、図2Aに示される速度カーブ201の領域aの拡大図である。図2Aおよび図2Bにおいて、縦軸は目標回転速度〔rpm〕を表し、横軸は速度指令信号Scのデューティ比〔%〕を表している。
【0056】
図2Aおよび図2Bに示される速度カーブ201は、速度指令信号ScとしてのPWM信号が取り得るデューティ比の範囲(例えば、0%~100%)において、デューティ比とモータ50の目標回転速度(目標回転数)との対応関係を表すグラフである。速度カーブ201は、変曲点の数を“50個”とし、デューティ比が0%から10%の区間とデューティ比が80%から100%の区間においてデューティ比に対する回転速度の変化の割合(傾き)が変化するように設定されている。
【0057】
例えば、変曲点数(変曲点の数)m(mは1以上の整数)が“50”の場合、図2Bに示すように、2%(=(100%-0%)/50)毎に変曲点Inが設定されるとともに、各変曲点Inに任意の回転速度が設定される。例えば、変曲点In(1)には回転速度“800”が設定され、変曲点In(2)には回転速度“1200”が設定されている。
【0058】
実施の形態1に係るモータ制御回路11は、変曲点数mの情報および各変曲点の回転速度の情報をパラメータ情報300として記憶装置に予め記憶しておき、記憶しておいたパラメータ情報300と、変曲点数mに基づく分解能で解析した速度指令信号Scのデューティ比とに基づいて、モータ50の目標回転速度を算出する。具体的に、モータ制御回路11は、モータ50の目標回転速度を決定するための機能部として、速度指令解析部24、記憶部26、および目標回転速度決定部25を有している。
【0059】
記憶部26は、速度指令信号Scに基づいてモータ50の目標回転速度を算出するために必要なパラメータ情報300を記憶する機能部である。
【0060】
パラメータ情報300とは、速度指令信号Scのデューティ比と目標回転速度との関係を示す速度カーブを規定するためのデータである。具体的には、パラメータ情報300は、分解能情報301と回転速度情報302とを含む。
【0061】
分解能情報301は、速度指令信号Scのデューティ比の分解能を示す情報である。本実施の形態において、分解能情報301は、速度カーブにおいて等間隔に設けられる変曲点の数の情報(以下、「変曲点数」とも称する。)303を含む。回転速度情報302は、各変曲点の回転速度の値を含む情報である。回転速度情報302は、例えば、分解能情報301によって指定された変曲点数303に基づいて各変曲点に付与される変曲点の配列番号mと回転速度の値とが互いに対応付けられたデータ対である。
【0062】
記憶部26は、パラメータ情報300の書き換えが可能に構成されている。例えば、記憶部26は、モータ制御回路11としてのプログラム処理装置に搭載されたフラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリの記憶領域によって実現されており、その記憶領域にパラメータ情報300が記憶されている。上述したように、上位装置4やその他の情報処理装置(例えばPC)が通信部20を介してモータ制御回路11と通信を行うことにより、記憶部26に記憶されたパラメータ情報300は書き替え可能である。
【0063】
速度指令解析部24は、駆動対象のモータ50の目標回転速度をデューティ比によって指示する速度指令信号Sc(PWM信号)を外部(上位装置4)から受信し、受信した速度指令信号Scを解析する機能部である。速度指令解析部24は、パラメータ情報300に含まれる分解能情報301で指定された分解能で速度指令信号Scのデューティ比を計測し、その計測値を出力する。
【0064】
具体的には、速度指令解析部24は、分解能情報301としての変曲点数(変曲点の数)mに基づく分解能で速度指令信号Scのデューティ比を計測し、その計測結果を出力する。例えば、変曲点数m=50の場合、2%(=デューティ比の範囲/分解能=(100%-0%)/50)の分解能(単位)で速度指令信号Scのデューティ比を計測する。例えば、デューティ比が1%の速度指令信号Scが入力された場合には、速度指令解析部24は、速度指令信号Scのデューティ比の計測値を“0%”として出力し、デューティ比が3%の速度指令信号Scが入力された場合には、速度指令信号Scのデューティ比の計測値を“2%”として出力する。このように、速度指令解析部24は、変曲点の数に基づく分解能で、速度指令信号Scのデューティ比を解析する。
【0065】
目標回転速度決定部25は、記憶部26に記憶されたパラメータ情報300と、速度指令解析部24による速度指令信号Scのデューティ比の計測結果とに基づいて、目標回転速度を決定する。具体的に、目標回転速度決定部25は、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲(例えば、0%~100%)を分解能情報301(変曲点数m)に基づく分解能で等分して得られたデューティ比毎に変曲点Inを設定し、設定した変曲点Inと回転速度情報302に基づいて、速度指令解析部24によって計測された速度指令信号Scのデューティ比に対応する回転速度を算出し、算出した回転速度を目標回転速度として決定する。
【0066】
本実施の形態において、変曲点は、上述したように、速度カーブの傾きを変化させることが可能な点であるが、必ずしも変曲点において傾きが変化しなくてもよい。例えば、図2Aに示す速度カーブ201における点202(デューティ比が30%)では速度カーブの傾きは変化していないが、本実施の形態では、点202も変曲点として設定される。すなわち、本実施の形態では、各変曲点において傾きが変化するか否かは、回転速度情報302によって任意に設定可能な回転速度の値に依存する。
【0067】
次に、目標回転速度の具体的な算出処理の流れについて説明する。
ここでは、図2Aおよび図2Bの場合と同様に、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲が0%~100%であり、分解能情報301としての変曲点数(変曲点Inの数)mが“50”に設定され、回転速度情報302として、50個の各変曲点Inに図2Aおよび図2Bに示すような所定の回転速度の値が設定されている場合を例にとり、説明する。
【0068】
図3は、実施の形態1に係るモータ制御回路11による目標回転速度の算出方法を説明するための図である。図4は、実施の形態1に係るモータ制御回路11による目標回転速度の算出方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0069】
例えば、モータ制御回路11の起動後、目標回転速度決定部25は、記憶部26からパラメータ情報300を読み出して初期設定を行う。具体的には、先ず、目標回転速度決定部25が、記憶部26に記憶されている分解能情報301(変曲点数303)と回転速度情報302とに基づいて、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲(0%~100%)において等間隔に変曲点Inを設定する(ステップS11)。具体的には、目標回転速度決定部25は、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲(0%~100%)を変曲点数mに基づいて等分して得られたデューティ比毎に、変曲点Inを設定する。
【0070】
上述の例の場合、変曲点数303としてm=50が設定されているため、図2Bおよび図3に示すように、目標回転速度決定部25は、0%から100%までのデューティ比の範囲において、2%(=デューティ比の範囲/変曲点数=(100%-0%)/50)毎に変曲点Inを設定し、各変曲点Inに0から50までの配列番号mをそれぞれ付与する。
【0071】
次に、モータ制御回路11が、外部(上位装置4)から速度指令信号ScとしてのPWM信号がモータ制御回路11に入力されたか否かを判定する(ステップS12)。速度指令信号Scが入力されていない場合には(ステップS12:NO)、モータ制御回路11は速度指令信号Scが入力されるまで待機する。
【0072】
速度指令信号Scが入力された場合には(ステップS12:YES)、速度指令解析部24が、速度指令信号Scのデューティ比を計測する(ステップS13)。具体的には、速度指令解析部24は、記憶部26に記憶されている分解能情報301(変曲点数303)で指定された分解能で速度指令信号Scのデューティ比を計測する。例えば、上述の例の場合、分解能情報301によって変曲点の数が“50”に設定されているため、速度指令信号Scが取り得る0%から100%のデューティ比の範囲において、2%(=(100%-0%)/50)の分解能(単位)で、速度指令信号Scのデューティ比を計測する。ここでは、入力された速度指令信号Scのデューティ比の計測値が6%であったとする。
【0073】
次に、目標回転速度決定部25が、設定した変曲点Inと回転速度情報302とに基づいて、速度指令解析部24によって計測された速度指令信号Scのデューティ比に対応する回転速度を算出する。具体的には、先ず、目標回転速度決定部25が、設定した変曲点Inの中から、ステップS11において取得したデューティ比の計測値に対応する変曲点Inの配列番号kを特定する(ステップS14)。上述の例の場合、ステップS12において計測された速度指令信号Scのデューティ比が“6%”であるため、目標回転速度決定部25は、図3に示すように、入力された速度指令信号Scに対応する変曲点の配列番号kをデューティ比=6%に対応する配列番号“3”とする(k=3)。
【0074】
次に、目標回転速度決定部25が、ステップS14で特定した配列番号kの変曲点の回転速度を算出する(ステップS15)。上述の例の場合、目標回転速度決定部25は、図3に示すように、ステップS14で特定した配列番号k=3の変曲点の回転速度の値“1520”を、回転速度情報302から読み出す。
【0075】
そして、目標回転速度決定部25が、ステップS13で取得した回転速度を目標回転速度として決定する(ステップS16)。上述の例の場合、目標回転速度決定部25は、ステップS15において取得した回転速度の値“1520”を目標回転速度として、駆動制御信号生成部14に与える。
以上の処理手順により、速度指令信号Scから目標回転速度が算出される。
【0076】
以上、実施の形態1に係るモータ制御回路11は、速度指令信号Scのデューティ比とモータ50の目標回転速度との関係を示す速度カーブを規定するためのパラメータ情報300として、速度指令信号Scのデューティ比の分解能を示す分解能情報301と、速度カーブにおける変曲点In(k)の回転速度を示す回転速度情報302とを記憶している。モータ制御回路11は、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲を分解能情報301に基づいて等分して得られたデューティ比毎に変曲点In(k)を設定し、設定した変曲点In(k)と回転速度情報302とに基づいて、入力された速度指令信号Scのデューティ比の計測結果に対応する回転速度を算出し、算出した回転速度を目標回転速度として決定する。
【0077】
これによれば、分解能情報301で指定された速度指令信号Scのデューティ比の分解能と、当該分解能に基づいて等間隔に配置される変曲点Inの回転速度の値をユーザが任意に設定することにより、自由度の高い速度カーブを設定することができる。
【0078】
具体的には、モータ制御回路11は、分解能情報301として、速度カーブにおいて等間隔に設けられる変曲点数(変曲点Inの数)mの情報(変曲点数303)を記憶し、変曲点数mに基づく分解能で速度指令信号Scのデューティ比を計測する。そして、モータ制御回路11は、設定した変曲点Inの中から計測した速度指令信号Scのデューティ比に対応する変曲点In(k)を特定し、回転速度情報302に基づいて特定した変曲点In(k)の回転速度を算出し、算出した回転速度を目標回転速度とする。
【0079】
このように、実施の形態1に係るモータ制御回路11によれば、速度指令信号のデューティ比の分解能(変曲点の配列番号)の情報と各変曲点の回転速度の情報を記憶しておくだけで、自動的に、変曲点を等間隔に設定し、各変曲点に所望の回転速度を割り当てることができる。これにより、従来の速度カーブの設定方法のように速度指令信号のデューティ比の値と回転速度の値とをセットにした変曲点のデータを予め記憶しておく場合に比べて、より簡単に、自由度の高い速度カーブを設定することが可能となる。
【0080】
また、実施の形態1に係るモータ制御回路11によれば、各変曲点のデューティ比の値は分解能情報301(変曲点の配列番号)に基づいて算出されるので、各変曲点のデューティ比の情報を予め記憶しておく必要がなく、モータ制御回路11に搭載するフラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリの容量を削減することができる。これにより、モータ制御回路11のコストを抑えることができる。
【0081】
また、モータ制御回路11は、従来方法のように、実際に速度カーブを表す関数を導出し、その関数を用いて目標回転速度を算出するのではなく、変曲点の数に応じた分解能で速度指令信号Scのデューティ比を計測し、速度指令信号のデューティ比の計測値に対応する変曲点の回転速度を回転速度情報302から読み出すことによって目標回転速度を決定するので、複雑な演算が不要であり、CPUの処理負荷を抑えることが可能となる。
【0082】
≪実施の形態2≫
図5は、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置10Aの構成の一例を示す図である。
実施の形態2に係るモータ駆動制御装置10Aは、変曲点In間を直線で補間した速度カーブにしたがって目標回転速度を算出する機能を有する点において、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10と相違し、その他の点においては、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10と同様である。
【0083】
実施の形態2に係るモータ制御回路11Aは、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲(例えば、0%~100%)において等間隔に変曲点を設定し、各変曲点In間を直線で補間するための直線補間点Crを各変曲点In間に等間隔に設定した速度カーブにしたがって、目標回転速度を算出する。
【0084】
図6は、実施の形態2に係る目標回転速度の算出方法を説明するための図である。
図6には、実施の形態2に係る速度指令信号Scのデューティ比と目標回転速度との関係を示す速度カーブ203の一例が示されている。図6において、縦軸は目標回転速度〔rpm〕を表し、横軸は速度指令信号Scのデューティ比〔%〕を表している。
【0085】
図6に示される速度カーブ203は、図2Aに示した速度カーブ201と同様に、速度指令信号ScとしてのPWM信号が取り得るデューティ比の範囲(本例では、0%~100%)において、変曲点の数を“50個”とし、2%(=デューティ比範囲/変曲点数=(100%-0%)/50)毎に変曲点Inが設定され、各変曲点Inに所定の回転速度が割り当てられている。また、速度カーブ203は、速度カーブ201と同様に、デューティ比が0%から10%の区間とデューティ比が80%から100%の区間において速度指令信号Scのデューティ比に対する回転速度の変化の割合(傾き)が変化するように設定されている。また、速度カーブ203は、隣り合う変曲点In間に等間隔にq(=7)個の直線補間点Cr(1)~Cr(7)が設定されている。
なお、図6には、図2Bと同様に、速度カーブ203における速度指令信号Scのデューティ比が0%から8%までの範囲が拡大して示されている。
【0086】
モータ制御回路11Aは、図6に示すような速度カーブ203を規定するために、第1の分解能としての変曲点数mと、各変曲点に設定された回転速度の値と、第1の分解能よりも高い第2の分解能としての速度指令数p(p≧m)とを用いる。
【0087】
モータ制御回路11Aは、入力された速度指令信号Scのデューティ比を速度指令数pで計測し、計測された速度指令信号Scのデューティ比に対応する速度指令の配列番号を特定する。モータ制御回路11Aは、特定した配列番号の速度指令の直前に存在する変曲点と特定した配列番号の速度指令の直後に存在する変曲点との間の回転速度の差を算出する。
【0088】
モータ制御回路11Aは、第1の分解能(変曲点数m)と第2の分解能(速度指令数p)に基づく直線補間点数qと、算出した二つの変曲点In間の回転速度の差とに基づいて、当該二つの変曲点In間に存在する直線補間点Cr間の回転速度の増加分を算出する。
【0089】
モータ制御回路11Aは、特定した速度指令信号Scの配列番号と、直線補間点数qと、直線補間点Cr間の回転速度の増加分とに基づいて、特定した速度指令信号Scの配列番号に対応する回転速度を算出し、算出した回転速度を目標回転速度として決定する。
以下、モータ制御回路11Aによる目標回転速度の決定方法について具体的に説明する。
【0090】
図5に示すように、モータ制御回路11Aは、モータ50の目標回転速度を決定するための機能部として、速度指令解析部24A、記憶部26A、および目標回転速度決定部25Aを有している。
【0091】
記憶部26Aは、実施の形態1に係る記憶部26と同様に、速度指令信号Scに基づいてモータ50の目標回転速度を算出するために必要なパラメータ情報300Aを記憶する。
【0092】
パラメータ情報300Aは、回転速度情報302と分解能情報301Aを含む。分解能情報301Aは、第1の分解能としての変曲点数303と、第2の分解能としての速度指令数304と、直線補間点数305とを含む。なお、変曲点数303、速度指令数304、および直線補間点数305のうち、少なくとも2つの情報が分解能情報301Aとして記憶部26Aに予め記憶されていればよく、残りの一つの情報は他の2つの情報から算出可能である。
【0093】
変曲点数303は、実施の形態1と同様に、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲(例えば、0%~100%)において設定すべき変曲点数(変曲点Inの数)mである。
【0094】
速度指令数304は、速度指令信号Scのデューティ比の分解能を示す値(速度指令数pとも称する。)である。換言すれば、速度指令数304(p)は、速度指令信号Scのデューティ比によって特定される速度指令の総数を表している。後述するように、各速度指令には、速度指令数pにしたがって配列番号が付与される。速度指令数pは、第1の分解能としての変曲点数m以上の値である。
【0095】
直線補間点数305は、隣り合う変曲点In間に等間隔に設けられ、当該変曲点In間を直線で補間するための直線補間点Crの数(直線補間点数qとも称する。)である。直線補間点数qは、2のべき乗より1少ない値に設定することが好ましい。例えば、nを1以上の整数とし、直線補間点数qは、q=(2-1)である。
【0096】
図7は、速度指令数、直線補間点数、および変曲点数の相互関係の一例を示す図である。図7には、速度指令信号Scのデューティ比の分解能(速度指令数p)を256、400、512とした場合における直線補間点数q(=2n-1)および変曲点mの数値例が示されている。
【0097】
図7に示すように、速度指令数p、変曲点数m、および直線補間点数qの間には相関があり、速度指令数p、変曲点数m、および直線補間点数qのうち2つの値が決まれば、もう一つの値も決まる。例えば、速度指令数(速度指令の配列数)p=400、変曲点の配列数(変曲点数)m=50としたとき、直線補間点数q=7(=速度指令数/変曲点数=(400/50)+1)となる。また、例えば、速度指令数(速度指令の配列数)p=256、直線補間点数q=2―1=15としたとき、変曲点数m=速度指令数/(直線補間点数+1)=256/(15+1)=16となる。
【0098】
本実施の形態では、一例として、分解能情報301Aとして、変曲点数303と速度指令数304の2つの情報が記憶部26Aに予め記憶されているものとして説明する。
【0099】
記憶部26Aは、例えば、記憶部26と同様に、モータ制御回路11Aとしてのプログラム処理装置に搭載されたフラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリの記憶領域によって実現されており、その記憶領域にパラメータ情報300Aが記憶されている。上位装置4やその他の情報処理装置(例えば、PC)が通信部20を介してモータ制御回路11Aと通信を行うことにより、記憶部26Aに記憶されたパラメータ情報300Aは書き替え可能である。
【0100】
速度指令解析部24Aは、分解能情報301Aで指定された速度指令数p(第2の分解能)で速度指令信号Scのデューティ比を計測し、その計測値を出力する。具体的には、速度指令解析部24Aは、速度指令数pに基づく第2の分解能で速度指令信号Scのデューティ比を計測し、その計測結果を出力する。例えば、図7に示すように、速度指令数p=256の場合、速度指令解析部24Aは、0.391%(=デューティ比範囲/速度指令数=(100%-0%)/256)の分解能(単位)で速度指令信号Scのデューティ比を計測する。
【0101】
目標回転速度決定部25Aは、記憶部26Aに記憶されたパラメータ情報300Aと、速度指令解析部24による速度指令信号Scのデューティ比の計測結果とに基づいて、目標回転速度を決定する。
【0102】
目標回転速度決定部25Aは、速度指令信号ScとしてのPWM信号が取り得るデューティ比の範囲(例えば、0%~100%)において等間隔に設けられる変曲点Inと、変曲点In間に等間隔に設けられる直線補間点Crと基づいて図6に示すような速度カーブを規定し、その速度カーブにしたがって目標回転速度を決定する。
【0103】
以下、目標回転速度決定部25Aによる目標回転速度の具体的な算出処理の流れについて、図8および図9を用いて説明する。
【0104】
図8は、実施の形態2に係るモータ制御回路11Aによる目標回転速度の算出方法を説明するための図である。図9は、実施の形態2に係るモータ制御回路11Aによる目標回転速度の算出方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0105】
ここでは、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲が0%~100%であり、変曲点数303としての変曲点Inの数(変曲点数m)が“50”に設定され、回転速度情報302として、50個の各変曲点Inに図6に示すような所定の回転速度の値が設定され、速度指令数304としてのデューティ比の第2の分解能(速度指令数)pの値が“400”に設定されている場合を例にとり、説明する。
【0106】
例えば、モータ制御回路11Aの起動後、目標回転速度決定部25Aは、記憶部26Aからパラメータ情報300Aを読み出して初期設定を行う。具体的には、先ず、目標回転速度決定部25Aは、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲を第2の分解能としての速度指令数304(p)に基づいて等分することによって得られるデューティ比毎に速度指令の配列番号を設定する(ステップS21)。例えば、上述の例の場合、速度指令数304によって第2の分解能(速度指令数p)が“400”に設定されているため、図8に示すように、0~100%のデューティ比を“400”で等分した0.25%(=デューティ比範囲/速度指令数=(100%-0%)/400)毎に、各速度指令に0から400までの配列番号pが付与される。
【0107】
次に、目標回転速度決定部25Aは、実施の形態1と同様に、記憶部26Aに記憶されている分解能情報301A(変曲点数303)と回転速度情報302とに基づいて、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲(0%~100%)において等間隔に変曲点In(m)を設定する(ステップS22)。具体的には、目標回転速度決定部25Aは、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲(0%~100%)を第1の分解能としての変曲点数mに基づいて等分することによって得られるデューティ比毎に変曲点Inを設定する。
【0108】
上述の例の場合、変曲点数303を示す第1の分解能mの値が“50”に設定されているため、図6および図8に示すように、目標回転速度決定部25Aは、0%から100%までのデューティ比の範囲において、2%(デューティ比範囲/変曲点数=(100%-0%)/50)毎に変曲点Inを設定し、各変曲点Inに配列番号m(mは0以上の整数)を付与する。
【0109】
次に、外部(上位装置4)から速度指令信号ScとしてのPWM信号がモータ制御回路11Aに入力されたか否かを判定する(ステップS23)。速度指令信号Scが入力されていない場合には(ステップS23:NO)、モータ制御回路11Aは速度指令信号Scが入力されるまで待機する。
【0110】
速度指令信号Scが入力された場合には(ステップS23:YES)、速度指令解析部24Aが、速度指令信号Scのデューティ比を計測する(ステップS24)。具体的には、速度指令解析部24Aは、記憶部26Aに記憶されている分解能情報301A(速度指令数304)で指定された速度指令数(第2の分解能)pで速度指令信号Scのデューティ比を計測する。例えば、上述の例の場合、速度指令数304によって速度指令数pが“400”に設定されているため、0.25%(=デューティ比範囲/速度指令数=(100%-0%)/400)の分解能で、速度指令信号Scのデューティ比を計測する。ここでは、入力された速度指令信号Scのデューティ比の計測値が“3%”であったとする。
【0111】
次に、目標回転速度決定部25Aは、ステップS21で設定した速度指令の配列番号の中から、ステップS24において取得したデューティ比の計測値に対応する速度指令の配列番号jを特定する(ステップS25)。上述の例の場合、ステップS24において計測された速度指令信号Scのデューティ比が“3%”であるため、目標回転速度決定部25は、図8に示すように、入力された速度指令信号Scに対応する速度指令の配列番号jを、デューティ比=3%に対応する配列番号“12”とする(j=12)。
【0112】
次に、目標回転速度決定部25Aが、速度指令数pと変曲点数mが一致するか否かを判定する(ステップS26)。p=mの場合には(ステップS26:Yes)、速度指令の配列番号と変曲点の配列番号とが一致するため、ステップS25で特定した配列番号jの速度指令は、何れかの変曲点Inを示すことになる。したがって、この場合には、目標回転速度決定部25Aは、実施の形態1と同様に、ステップS25において特定した速度指令の配列番号jと一致する配列番号mの変曲点In(j)を特定し、特定した変曲点In(j)の回転速度の値を回転速度情報302から取得する(ステップS27)。そして、目標回転速度決定部25Aは、ステップS27で取得した回転速度を目標回転速度として決定する(ステップS34)。なお、上述の例の場合には、p≠mである(速度指令数pと変曲点数mが一致しない)ため、ステップS27の処理は行われない。
【0113】
一方、p≠mの場合(速度指令数pと変曲点数mが一致しない場合)には(ステップS26:NO)、目標回転速度決定部25Aは、ステップS25において特定した速度指令の配列番号jの速度指令の直前に存在する変曲点Inの回転速度Rlを算出する(ステップS28)。例えば、上述の例の場合、図8に示すように、目標回転速度決定部25Aは、ステップS25において特定した配列番号j=12の速度指令の直前に存在する変曲点In(1)の回転速度“800”を回転速度情報302から読み出す。
【0114】
次に、目標回転速度決定部25Aは、ステップS25において特定した配列番号jの速度指令の直後に存在する変曲点Inの回転速度Rhを算出する(ステップS29)。例えば、上述の例の場合、目標回転速度決定部25Aは、ステップS25において特定した配列番号j=12の速度指令の直後に存在する変曲点In(2)の回転速度“1200”を回転速度情報302から読み出す。
【0115】
次に、目標回転速度決定部25Aは、ステップS28で算出した配列番号jの速度指令の直前に存在する変曲点Inの回転速度と、ステップS29で算出した配列番号jの速度指令の直後にある変曲点Inの回転速度との差を算出する(ステップS30)。上述の例の場合、配列番号jの速度指令の直前にある変曲点In(1)の回転速度は“800”であり、配列番号jの速度指令の直後にある変曲点In(2)の回転速度は“1200”であるので、変曲点In(1)と変曲点In(2)の回転速度の差分|Rh-Rl|は“400”となる。
【0116】
次に、目標回転速度決定部25Aが、配列番号jの速度指令の直前にある変曲点Inと配列番号jの速度指令の直後にある変曲点Inとの間の設定された直線補間点Cr間の回転速度の増加分を算出する(ステップS31)。具体的には、目標回転速度決定部25Aは、ステップS30で算出した変曲点In(1)と変曲点In(2)の回転速度の差分|Rh-Rl|を、直線補間点数qに1を加えた値(=2)で除して、直線補間点Cr間の回転速度の単位増加分を算出する。上述の例の場合、ステップS30で算出した回転速度の差分|Rh-Rl|が“400”であり、直線補間点数q=7(2-1)であるため、配列番号j=12の速度指令の直前にある変曲点In(1)と配列番号j=12の速度指令の直後にある変曲点In(2)との間の直線補間点Cr間の回転速度の増加分は400/2=50となる。
【0117】
このとき、直線補間点数qに1を加えた値(=2)は、以下のように算出される。例えば、変曲点数303および速度指令数304が分解能情報301Aとして記憶部26Aに予め記憶されている場合には、目標回転速度決定部25Aは、速度指令数304(p=400)を変曲点数303(m=50)で除算することによって、直線補間点数qに1を加えた値(2=8)を算出する。一方、直線補間点数qが分解能情報301Aとして記憶部26Aに記憶されている場合には、記憶されている値を用いればよい。
【0118】
次に、目標回転速度決定部25Aは、ステップS25で特定した配列番号jの速度指令が、配列番号jの速度指令の直前の変曲点In(1)と配列番号kの速度指令の直後の変曲点In(2)との間に存在する直線補間点Crのうち、どの直線補間点Crに一致するかを特定する(ステップS32)。
【0119】
具体的には、目標回転速度決定部25Aは、ステップS25で特定した配列番号jを、直線補間点数qに1を加えた値(2=8)で除算して、その余りrを算出する。上述の例の場合、ステップS25で特定した配列番号j=12であり、直線補間点数q=7(2-1)であるため、12を8(=2)で除したときの余りr=4を算出する。これにより、目標回転速度決定部25Aは、図8に示すように、ステップS25で特定した配列番号j=12の速度指令が変曲点In(1)から“4番目”の直線補間点Crに対応すると判定する。
【0120】
次に、目標回転速度決定部25Aが、ステップS32で特定した、配列番号jの速度指令に対応する直線補間点Crの回転速度Rjを算出する(ステップS33)。例えば、目標回転速度決定部25Aは、ステップS32で算出した余りrにステップS31で算出した回転速度の増加分を乗じた値に、ステップS28で特定した配列番号jの速度指令の直前の変曲点In(1)の回転速度Rlを加算して、ステップS25で特定した配列番号jの速度指令に対応する回転速度Rjを算出する(R(j)=Rl+r×|Rh-Rl|/2)。上述の例の場合、配列番号j=12の回転速度R(j)=800+4×(1200-800)/8=1000となる。
【0121】
そして、目標回転速度決定部25Aは、ステップS33で算出した回転速度Rjを目標回転速度として決定する(ステップS34)。
以上の処理手順により、速度指令信号Scから目標回転速度が算出される。
【0122】
以上、実施の形態2に係るモータ制御回路11Aは、上述したように、分解能情報301Aとして、速度指令信号Scのデューティ比の第1の分解能としての変曲点数303、速度指令信号Scのデューティ比の第1の分解能よりも高い第2の分解能を示す速度指令数304、および隣り合う変曲点In間に等間隔に設けられ、当該変曲点In間を直線で補間するための直線補間点数305の情報のうち少なくとも2つの情報を予め記憶している。
【0123】
モータ制御回路11Aは、上述したように、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲(例えば0%~100%)を変曲点数303(m)に基づいて等分することによって得られるデューティ比毎に変曲点Inを設定するとともに、速度指令信号Scが取り得るデューティ比の範囲(例えば0%~100%)を第2の分解能としての速度指令数304(p)に基づいて等分することによって得られるデューティ比毎に速度指令の配列番号pを設定し、設定した配列番号pの中から、入力された速度指令信号Scのデューティ比の計測結果に対応する配列番号jを特定する。
【0124】
そして、モータ制御回路11Aは、上述したように、特定した配列番号jの速度指令の直前にある変曲点の回転速度と特定した配列番号jの速度指令の直後にある変曲点の回転速度との差(|Rh-Rl|)に基づいて、直前の変曲点と直後の変曲点との間に存在する直線補間点Cr間の回転速度の増加分を算出し、当該算出した増加分と直線補間点数(直線補間点の数)qとに基づいて、特定した配列番号jの速度指令に対応する回転速度Rjを算出し、算出した回転速度Rjを目標回転速度として決定する。
【0125】
このように、実施の形態2に係るモータ制御回路11Aによれば、変曲点In間を直線補間することができるので、より自由度の高い速度カーブを規定することが可能となる。例えば、従来の速度カーブの設定方法によれば、変曲点の数を増やすことにより速度カーブの自由度を高めることができるが、変曲点を単純に増やした場合、目標速度の計算が複雑になり、プロセッサによる処理速度が遅くなるおそれがある。これに対し、実施の形態2に係るモータ制御回路11Aによれば、変曲点In間に直線補間点を設けることにより、変曲点の数を増やすことなく速度カーブの自由度を高めることが可能となる。
【0126】
また、実施の形態2に係るモータ制御回路11Aにおいて、直線補間点数を2のべき乗より1少ない数に設定することで、上述したように、割り算ではなくシフト演算によって、直線補間点における回転速度を算出することが可能となるため、除算器の無い安価なマイクロコントローラをモータ制御回路11Aとして採用することが可能となるとともに、安価なマイクロコントローラであっても、除算を行うことによる処理速度の低下を防ぐことが可能となる。また、場合によってはROMの容量の削減も期待できる。
【0127】
また、実施の形態2に係るモータ制御回路11Aによれば、分解能情報301Aとして、変曲点数303、速度指令数304、および直線補間点数305のうち少なくとも2つのデータを予め記憶しておけば、残りの1つのデータを算出することができるので、予めマイクロコントローラに格納しておくべきデータ量を抑えることができる。これにより、モータ制御回路11Aとしてのマイクロコントローラが搭載する不揮発性メモリの容量を削減することができ、モータ制御回路11Aのコスト削減に資する。
【0128】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0129】
例えば、上記実施の形態において、目標回転速度決定部25,25Aが速度指令解析部24,24Aによって計測された速度指令信号のデューティ比に対応する変曲点または速度指令の配列番号を特定する場合を例示したが、これに限られない。例えば、速度指令解析部24,24Aが、測定した速度指令信号のデューティ比に対応する変曲点または速度指令の配列番号を特定し、特定した配列番号の値を、目標回転速度決定部25,25Aに与えるようにしてもよい。
【0130】
また、実施の形態2において、予め分解能情報301Aとして記憶部26Aに記憶される情報として変曲点数303および速度指令数304を例示し、変曲点数303および速度指令数304から直線補間点数305を算出する場合を例示したが、これに限られない。例えば、モータ制御回路11Aは、変曲点数303および直線補間点数305を予め記憶部26Aに記憶し、これら2つの情報に基づいて速度指令数304を算出しても良いし、速度指令数304および直線補間点数305を予め記憶部26Aに記憶し、これら2つの情報に基づいて変曲点数303を算出してもよい。
【0131】
また、上述のフローチャートは具体例であって、これらのフローチャートに限定されるものではない。例えば、上記フローチャートにおいて、各処理の順番が入れ替わってもよい。また、上記フローチャートにおいて、各ステップ間に他の処理が挿入されていてもよいし、一部の処理が並列化されていてもよい。
【0132】
上述の実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータの相数は3相に限られない。また、ホール素子の個数は特に限定されない。
【0133】
モータの回転速度の検出方法は特に限定されない。例えば、ホール素子などの位置検出器を用いず、モータコイルに誘起する逆起電圧を用いて回転速度を検出する位置センサレス方式によって回転速度を検出してもよい。
【符号の説明】
【0134】
1…ファンユニット、2,2A…モータユニット、4…上位装置、5…ファン(ファンモータ)、10,10A…モータ駆動制御装置、11,11A…モータ制御回路、12…モータ駆動回路、13…位置検出装置、14…駆動制御信号生成部、15…デューティ比決定部、16…通電制御部、17…回転速度計測部、18…FG信号生成部、20…通信部、21…送信部、22…目標回転速度決定部、22…受信部、22A…目標回転速度決定部、23…通信制御部、24,24A…速度指令解析部、25,25A…目標回転速度決定部、26,26A…記憶部、41…データ処理制御部、42…通信部、50…モータ、51…インペラ(羽根車)、201,203…速度カーブ、300,300A…パラメータ情報、301,301A…分解能情報、302…回転速度情報、303,m…変曲点数(変曲点の数の情報.第1の分解能の一例)、304,p…速度指令数(第2の分解能の一例)、305,q…直線補間点数(直線補間点の数)、Cr,Cr(1)~Cr(7)…直線補間点、In…変曲点、Sc…速度指令信号、Sd…駆動制御信号、So…回転速度信号。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9