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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】建屋基礎集水枡装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/64 20060101AFI20240605BHJP
【FI】
E04B1/64 B
E04B1/64 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020165710
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057442
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】595106969
【氏名又は名称】大東建託株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 滋
(72)【発明者】
【氏名】阿野 夏希
(72)【発明者】
【氏名】松本 幹夫
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-079721(JP,A)
【文献】特開2007-146457(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0107694(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E03C 1/12-1/33
E03F 1/00-11/00
E02D 27/00-27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の基礎スラブ層(18)に埋設されて該基礎スラブ層に溜まった水を集水して排水する建屋基礎集水枡装置(1)であって、
集水枡部(2a)と、該集水枡部(2a)から下方へ突出する排水筒形部(2b)とを少なくとも有する集水枡部材(2)と、
前記排水筒形部(2b)に液密に且つ着脱可能に取付けられた蓋部材(4)と
前記基礎スラブ層(18)の鉛直下方に位置する、前記基礎スラブ層(18)とは異なる層に取り付けられ、前記集水枡部材(2)を支持する集水枡支持部材(9)と
を備え、
前記集水枡部材(2)の前記集水枡部(2a)は、略鉛直方向に延在する側壁部(2a2)と、前記側壁部(2a2)の下端に接続する底部(2a1)とを備えている、
建屋基礎集水枡装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建屋基礎集水枡装置であって、
前記集水枡支持部材(9)は、前記基礎スラブ層(18)の下層の捨てコンクリート層(17)に配置され、前記集水枡部材(2)の高さを調節可能であるように構成されている
建屋基礎集水枡装置。
【請求項3】
請求項2に記載の建屋基礎集水枡装置であって、
前記集水枡支持部材(9)は、集水枡部(2a)の複数のフランジ部(2c)の各孔(2d)を挿通する複数のボルト部材(11)と、複数のボルト部材(11)を支持するよう前記捨てコンクリート層(17)上に配置された支持部材(10)と、複数のボルト部材(11)を複数のフランジ部(2c)に対して高さ調節可能に取付けるナット部材(13)とから構成される、建屋基礎集水枡装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の建屋基礎集水枡装置であって、
前記集水枡部材(2)の排水筒形部(2b)内周に設けた第1の係合部(2h)と、前記蓋部材(4)に設けた第2の係合部(4c)とが互いに係合して、前記蓋部材(4)の係止を行う、建屋基礎集水枡装置。
【請求項5】
請求項4に記載の建屋基礎集水枡装置であって、
前記第1の係合部(2h)及び第2の係合部(4c)の何れか一方は、半径方向へ突出する係合凸部であり、また他方は略L字形の係合凹部であり、前記係合凸部が前記係合凹部のL字形に沿って係合する、建屋基礎集水枡装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の建屋基礎集水枡装置であって、
前記集水枡部材(2)の外周部と、前記排水筒形部(2b)及び蓋部材(4)間の境界部とに、それぞれ防蟻リング(3、5)が設けられた、建屋基礎集水枡装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の建屋基礎集水枡装置であって、
前記排水筒形部(2b)内において、前記排水筒形部(2b)の底部と蓋部材(4)下端部との間に、排水中の塵をフィルタリングするフィルター部材(6)を更に設けた、建屋基礎集水枡装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の建屋基礎集水枡装置であって、
前記排水筒形部(2b)の底部開口部に排水配管(19)が接続される、建屋基礎集水枡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建屋の基礎スラブに設置して雨水等の水を集めて地中へ排水する建屋基礎集水枡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建屋の基礎は一般に、基礎地面に対して砕石層を敷き、その上に捨てコンクリート層及び基礎スラブ層を順次重ねて打設し、その後に基礎スラブ層の上方に床板を設けて建屋を建築する。しかるに、基礎スラブ層の上面はほぼ水平であるために雨が降って床下の基礎スラブ層上面に水が溜まると集水する箇所がないのでこの残水を処理する手間が発生していた。このために、従来は要所で作業者が適当な箇所で床下にもぐり、ドライワイパーや吸水スポンジ等を使用して残水を処理していた。また、基礎スラブ層上方に建屋を建築する以前においても、雨水は基礎スラブ層の上面に溜まるので、この時点でも上記と同様の残水の処理が必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の方法によれば、作業者が床下にもぐって行う作業自体の負担が極めて大きく、またドライワイパーや吸水スポンジ等を使用する負担も大きかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、建屋の基礎スラブ層に集水枡装置を設けて雨水等を集水して効率的に排水し得る建屋基礎集水枡装置を提供することである。
【0005】
本発明の第1形態は、建屋の基礎スラブ層(18)に埋設されて該基礎スラブ層に溜まった水を集水して排水する建屋基礎集水枡装置(1)であって、
集水枡部(2a)と、該集水枡部(2a)から下方へ突出する排水筒形部(2b)とを少なくとも有する集水枡部材(2)と、
前記排水筒形部(2b)に液密に且つ着脱可能に取付けられた蓋部材(4)とを備える。
【0006】
本発明の第2の形態は、前記基礎スラブ層(18)の下層の捨てコンクリート層(17)に配置され、前記集水枡部材(2)に対して該集水枡部材(2)の高さを調節可能に取付け支持される集水枡支持部材(9)を更に備える。
【0007】
本発明の痔3の形態は、前記集水枡支持部材(9)は、集水枡部(2a)の複数のフランジ部(2c)の各孔(2d)を挿通する複数のボルト部材(11)と、複数のボルト部材(11)を支持するよう前記捨てコンクリート層(17)上に配置された支持部材(10)と、複数のボルト部材(11)を複数のフランジ部(2c)に対して高さ調節可能に取付けるナット部材(13)とから構成される。
【0008】
本発明の第4の形態は、前記集水枡部材(2)の排水筒形部(2b)内周に設けた第1の係合部(2h)と、前記蓋部材(4)に設けた第2の係合部(4c)とが互いに係合して、前記蓋部材(4)の位置決めを行う。
【0009】
本発明の第5の形態は、前記第1の係合部(2h)及び第2の係合部(4c)の何れか一方は、半径方向へ突出する係合凸部であり、また他方は略L字形の係合凹部であり、前記係合凸部が前記係合凹部のL字形に沿って係合する。
【0010】
本発明の第6の形態は、前記集水枡部材(2)の外周部と、又は前記排水筒形部(2b)及び蓋部材(4)間の境界部との少なくとも一方に防蟻リング(3、5)が設けられる。
【0011】
本発明の第7の形態は、前記排水筒形部(2b)内において、前記排水部(2b)の底部と蓋部材(4)下端部との間に、排水中の塵をフィルタリングするフィルター部材(6)を更に設けられる。
【0012】
本発明の第8の形態は、前記排水筒形部(2b)の底部開口部に排水配管(19)が接続される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の建屋基礎集水枡装置は、建屋の基礎スラブ層に設けた集水枡部材の筒形排水部に蓋部材を着脱可能に設けた構成とすることにより、基礎スラブ層に溜まった水を集水枡部材へ集水すると共に蓋部材の操作により集まった水をワンタッチで排水可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の建屋基礎集水枡装置の一実施例の組立斜視図である。
図2】同上、分解斜視図である。
図3】前記集水枡装置の平面図である。
図4図3中、IV―IV線に沿った断面図である。
図5図3中、V―V線に沿った断面図である。
図6図4中、Vi部分の拡大断面図である。
図7】前記集水枡装置の集水枡部材の平面図である。
図8】同上、集水枡部材の縦断面図である。
図9】前記集水枡装置の蓋部材の平面図である。
図10】同上、蓋部材のX-X線に沿った断面図である。
図11】同上、蓋部材のXI-XI線に沿った断面図である。
図12】集水枡部材の下方排水円筒部に収納するフィルター部材の平面図である。
図13】同上、フィルター部材のXIII-XIII線に沿った断面図である。
図14】本発明の集水枡装置を建屋基礎に取付けた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面と共に説明する。図1は、本発明の建屋基礎集水枡装置の一実施例の組立斜視図、図2はその分解斜視図、図3乃至図5は夫々、上記集水枡装置の平面図、図3中IV―IV線に沿った断面図及びV―V線に沿った断面図である。
【0016】
図1中、集水枡装置1は、大略、集水枡部材2と、蓋部材4と、支持部材9とを備える。集水枡部材2は、例えば硬質塩化ビニル等の耐候性を有する樹脂材料から形成され、図3乃至図8に示す如く、中心に向かって緩やかに傾斜した集水傾斜部2a1と円筒形壁部2a2とから一体的になる有底筒形状の集水枡部2aと、中央底部の排水円筒部2bと、集水枡部2aの外周4箇所に設けたフランジ部2c(孔2dを有する)とを一体的に備える。更に、集水枡部2a外周には外周溝2e(図2図8参照)が設けられる。また排水円筒形部2bには、図6及び図8に示す如く、上方内周段部2fと、底部段部2gと、内周面の一対の係合凸部2hとを有する。なお、集水枡部2aの外周溝2eにシロアリが登ってくるのを阻止するための防蟻リング3が取付けられる。(図1図2及び図8参照)
【0017】
蓋部材4は、図9乃至図11に示す如く、同じく硬質塩化ビニル等の耐候性を有する樹脂材料から形成された有底筒形状部材であり、上面の一対の摘まみ凹部4aと、上方外周段部4bと、下端から上方へ向かって伸びる一対のL字形係合凹部4cとを有する。なお、後述する如く、排水円筒部2b内周に防蟻リング5が取付けられる。(図2及び図6参照)なお、図3乃至図5においては、防蟻リング3、5の図示を省略する。また防蟻リングは例えばエチレンプロピレンゴム等の合成ゴム材料から形成する。
【0018】
6はフィルター部材で、図12及び図13に示す如く、ゴム製パッキンリング7に、樹脂又はステンレス等のフィルター網8を埋設したものである。
【0019】
支持部材9は、図1及び図2に示す如く一対分設けられ、各支持部材9は、耐食性金属(ステンレス等)の支持板10に一対のボルト11を、ナット12により取付けられて立設される。
【0020】
続いて、本発明集水枡装置1の組付けについて説明する。
最初に、フィルター部材6を集水枡2の排水円筒部2b内に上方から落とし込んで底部段部2gに当接させる。続いて、防蟻リング5を排水円筒部2bの内周段部2f上面に載置する。続いて、蓋部材4を排水円筒部2b内に同じく上方から落とし込み、蓋部材4の摘まみ凹部4aに指を差し込んで操作しながら、最初に一対のL字形係合凹部4cの軸方向溝部分の下端を一対の係合凸部2hに係合させつつ下方へ移動させる。そして、各係合凸部2hが各係合凹部4cの軸方向溝部分の上端に当接した時点で、今度は蓋部材4を図2中時計方向へ所定角度だけ回転させる。すると、蓋部材4は、各係合凸部2hが各L字形係合凹部4cの水平方向溝部分の端部に当接した時点で回転が停止される。かくして蓋部材4の排水円筒部2bへの落とし込み取付け(係止)が完了する。これにより、蓋部材4を単に下方向へ落とし込むだけでなく、落とし込んだ後に所定角度だけ回転させることにより、蓋部材4が意図しないで不慮に外れるのを防止できる。このとき蓋部材4の上方外周段部4bが排水円筒形部2bの上方内周段部2fに防蟻リング5を挟んで当接する(図6参照)。なお、上記実施例では、排水円筒部2bに係合凸部2hを設け且つ蓋部材4にL字形係合凹部4cを設けているが、これに限らず、排水円筒部2bにL字形係合凹部を設け且つ蓋部材4に係合凸部を設けても良く、また係合凸部及び係合凹部を夫々1つ設けてもよい。
【0021】
これにより、蓋部材4に取付けた防蟻リング5が蓋部材4外周と排水円筒部2b内周との間の間隙(境界部)を液密にシールするから、集水枡部2に溜まった水がここから漏水することはないし、排水円筒部2を経由してシロアリ等が登ってくるのを阻止し得る。
【0022】
続いて、一方の支持部材9の一対のボルト11の上端部が集水枡部材2の一対のフランジ部2cの孔2dを下方から上方へ挿通されて、ダブルナット13(図1及び図2参照)により締め付け固定される。他方の一方の支持部材9も他方の一対のフランジ部2cに同様に取付けられる。かくして集水枡装置1が完成する。従って、各支持部材9のダブルナット13を緩めたり締め付けたりして、各ボルト11が集水枡部材2のフランジ部2cから上方へ突出する寸法を調整することにより、集水枡部材2の高さ及び傾きを微調整的に適宜調整可能である。
【0023】
続いて、この集水枡装置1を建屋の基礎に取付ける手順について図14の基礎断面図を使用して説明するが、同図中、15は基礎地面であり、その上に砕石層16、捨てコンクリート層17が順次形成されている。この時点で、集水枡装置1が一戸の建屋について一箇所、例えばキッチンに該当する場所の捨てコンクリート層17の上面に一対の支持部材9を介して設置される。しかる後に、一対の支持部材9を上述した如く調整して、集水枡部材2の高さ及び傾きを調整することにより、集水枡部材2の上端部が、後に打設するコンクリート基礎スラブ層18の上面18aに合致する高さになるように設定する。次いで、排水円筒部2bに対して排水用配管19が接続される。なお、20はグラウンドレベルである。
【0024】
従って、基礎スラブ層18を打設した後に放置する期間において、例えば雨が降ると作業者が基礎スラブ層上面18a上の雨水を集水桝装置1に向かってかき集めることで留めることが出来る。この水が一定量に達したときに、作業者が蓋部材4を上記取付け時とは逆の反時計方向へ回転させて持ち上げると係合凸部2h及び係合凹部4cの係合が解除されて、蓋部材4を集水枡部2aから取り外すことができる。従って、集水枡部2aに溜まっていた水は排水円筒部2bを経由して配管19へ重力により排水されるか又は配管に接続したポンプ(図示を省略)により強制的に排水される。このとき、排水中に混入した比較的大きなゴミはフィルター部材6により濾過(フィルタリング)されるから作業者が取り除く。そして排水完了後は蓋部材4を再び取付ける。なお、水の量が少ない場合は、蓋部材4を取り外すことなく集水枡装置1は単に水を集めて溜める釜場として使用してもよい。
【0025】
続いて、建屋において、基礎スラブ層18の起ち上がり部に均しモルタル層21、基礎パッキン22、土台23が載せられ、更に建屋の床板24及び壁25が形成される。 なお、集水枡装置1は建屋完成後も設置されたままである。このため、床板24の床下点検口26の直下に集水枡装置1を配置しておけば、例えば大雨による床下浸水時等には上記床下点検口26から手を伸ばして蓋部材4を操作して簡単に排水を行うことができる。従って、集水枡装置1を設けていない場合に、床下に排水ポンプを運んで排水を行う等の面倒の必要がない。
【0026】
なお、上記排水ポンプは必ずしも設ける必要はない。
【符号の説明】
【0027】
1 集水枡装置
2 集水枡部材
2a 集水枡部
2a1 集水傾斜部
2a2 円筒形壁部
2b 排水円筒部
2c フランジ部
2d 孔
2e 外周溝
2f 内周段部
2g 底部段部
2h 係合凸部
3 防蟻リング
4 蓋部材
4a 摘まみ凹部
4b 外周段部
4c L字形係合溝(凹部)
5 防蟻リング
6 フィルター部材
7 パッキンリング
8 網フィルター
9 支持部材
10 支持板
11 ボルト
12 ナット
13 ダブルナット
15 基礎地面
16 砕石層
17 捨てコンクリート層
18 基礎スラブ層
18a 基礎スラブ層上面
19 排水配管
20 グラウンドレベル
21 均しモルタル層
22 基礎パッキン
23 土台
24 床板
25 壁
26 床下点検口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14