(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】バーナ及びその制御方法、並びに、燃焼炉
(51)【国際特許分類】
F23D 17/00 20060101AFI20240605BHJP
F23D 1/00 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
F23D17/00 103
F23D1/00 B
(21)【出願番号】P 2020204513
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 貞行
(72)【発明者】
【氏名】矢原 俊
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200144(JP,A)
【文献】特開2019-203631(JP,A)
【文献】国際公開第2020/054748(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110873326(CN,A)
【文献】特開2006-162208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 17/00
F23D 1/00
F23C 1/00- 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナ軸線方向に延びる円筒状を呈し、下流端に設けられた保炎板により形成された燃料噴出口を有し、固体燃料及び搬送空気が導入される燃料供給ノズルと、
前記燃料供給ノズルの外周側に配置され、燃焼用空気を前記燃料供給ノズルから噴出する混合気から分離して供給する少なくとも1つの流路と、
前記燃料供給ノズル内に挿入され、前記燃料噴出口より上流側に位置するガス燃料供給口を有し、前記燃料供給ノズル内に窒素分を含むガス燃料を供給するガス燃料供給管と、を備える、
バーナ。
【請求項2】
前記ガス燃料がアンモニアガスである、
請求項1に記載のバーナ。
【請求項3】
バーナ軸線方向に延びる円筒状を呈し、下流端に設けられた保炎板により形成された燃料噴出口を有し、固体燃料及び搬送空気が導入される燃料供給ノズルと、
前記燃料供給ノズルの外周側に配置され、燃焼用空気を前記燃料供給ノズルから噴出する混合気から分離して供給する少なくとも1つの流路と、
前記燃料供給ノズル内に挿入され、下流端に設けられたガス燃料供給口を有し、当該ガス燃料供給口から前記固体燃料及び前記搬送空気からなる混合気体へ窒素分を含むガス燃料を供給するガス燃料供給管と、
前記燃料噴出口に対し前記ガス燃料供給口が前記バーナ軸線方向に変位可能となるように、前記ガス燃料供給管を前記バーナ軸線方向に変位可能に支持するノズル支持装置と、を備える、
バーナ。
【請求項4】
前記ガス燃料供給管を前記バーナ軸線方向に変位させるアクチュエータを備える、
請求項3に記載のバーナ。
【請求項5】
前記バーナ軸線方向に沿った前記燃料噴出口に対する前記ガス燃料供給口の位置を検出する位置検出器と、
前記ガス燃料供給口から供給される前記ガス燃料の流量であるガス燃料供給量を検出する流量検出器と、
前記ガス燃料供給量が所定の範囲にあるときに、前記ガス燃料供給量の増加に従って前記ガス燃料供給口の位置が前記燃料噴出口から上流側へ離れるように、前記アクチュエータを動作させる制御装置と、を備える、
請求項4に記載のバーナ。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記燃料噴出口の下流側に形成される再循環領域の前記バーナ軸線方向の中心における前記ガス燃料の流速が一定となるように前記ガス燃料供給口の目標位置を求め、前記ガス燃料供給口の位置が前記目標位置となるように前記アクチュエータを動作させる、
請求項5に記載のバーナ。
【請求項7】
前記燃料噴出口の下流側に形成される再循環領域の火炎強度を検出する火炎強度検出装置と、
前記バーナ軸線方向に沿った前記燃料噴出口に対する前記ガス燃料供給口の位置を検出する位置検出器と、
検出された前記火炎強度に基づいて前記アクチュエータを動作させて前記ガス燃料供給口の位置を調整することにより、前記再循環領域の前記火炎強度が所定の値となるように制御する制御装置と、を備える、
請求項4に記載のバーナ。
【請求項8】
燃焼排ガスのNOx値を検出するNOxセンサと、
前記バーナ軸線方向に沿った前記燃料噴出口に対する前記ガス燃料供給口の位置を検出する位置検出器と、
前記NOx値に基づいて前記アクチュエータを動作させて前記ガス燃料供給口の位置を調整することにより、前記NOx値を所定の基準NOx値の範囲となるように制御する制御装置と、を備える、
請求項4に記載のバーナ。
【請求項9】
前記ガス燃料がアンモニアガスである、
請求項3~8のいずれか一項に記載のバーナ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のバーナが設けられた、還元雰囲気の高温還元ゾーンと、
前記高温還元ゾーンで生じた燃焼ガスが流入する、前記高温還元ゾーンよりも低温且つ酸化雰囲気の低温酸化ゾーンと、を備える、
燃焼炉。
【請求項11】
バーナ軸線方向に延びる円筒状を呈し、下流端に設けられた保炎板により形成された燃料噴出口を有し、固体燃料及び搬送空気が導入される燃料供給ノズルと、
前記燃料供給ノズルの外周側に配置され、燃焼用空気を前記燃料供給ノズルから噴出する混合気から分離して供給する少なくとも1つの流路と、
前記燃料供給ノズル内に挿入され、下流端に設けられたガス燃料供給口を有し、当該ガス燃料供給口から前記固体燃料及び前記搬送空気からなる混合気体へ窒素分を含むガス燃料を供給するガス燃料供給管と、
前記ガス燃料供給管を前記バーナ軸線方向に変位させるアクチュエータとを備えるバーナの制御方法であって、
前記バーナ軸線方向に沿った前記燃料噴出口に対する前記ガス燃料供給口の位置を検出し、
前記ガス燃料供給口から供給される前記ガス燃料の流量であるガス燃料供給量を検出し、
前記ガス燃料供給量が所定の範囲にあるときに、前記ガス燃料供給量の増加に従って前記ガス燃料供給口の位置が前記燃料噴出口から上流側へ離れるように、前記アクチュエータを動作させる、
バーナの制御方法。
【請求項12】
前記燃料噴出口の下流側に形成される再循環領域の前記バーナ軸線方向の中心における前記ガス燃料の流速が一定となるように前記ガス燃料供給口の目標位置を求め、前記ガス燃料供給口の位置が前記目標位置となるように前記アクチュエータを動作させる、
請求項11に記載のバーナの制御方法。
【請求項13】
前記燃料噴出口の下流側に形成される再循環領域の火炎強度を検出し、
前記再循環領域の火炎強度が所定の基準温度となるように、検出された前記火炎強度に基づいて前記ガス燃料供給口の位置を調整するように前記アクチュエータを動作させる、
請求項11に記載のバーナの制御方法。
【請求項14】
燃焼排ガスのNOx値を検出し、
前記NOx値が所定の基準NOx値の範囲となるように、前記NOx値に基づいて前記ガス燃料供給口の位置を調整するように前記アクチュエータを動作させる、
請求項11に記載のバーナの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料と窒素分を含むガス燃料とを混焼するバーナ及び当該バーナを備える燃焼炉に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO2)削減の時流から、二酸化炭素を発生させないCO2フリー燃料の使用が求められている。このような燃料の一つとして、アンモニア(NH3)が挙げられる。アンモニアは、難燃性の物質として知られるものの、メタンと同様に3つの水素原子を有する水素キャリア物質であり、加圧すると常温でも液化することから比較的扱い易く、CO2フリー燃料として注目されている。一方で、アンモニアは多くの窒素分を含むことから、NOxを生成しやすい。そこで、特許文献1では、NOxの上昇を抑えた固体燃料とアンモニアガスとの混焼が可能なバーナが提案されている。
【0003】
特許文献1のバーナは、微粉炭などの固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合気を噴き出す燃料供給ノズルと、燃料供給ノズルの外側に配置されて、燃焼用空気を混合気から径方向外側へ分離して噴き出す空気ノズルと、燃料供給ノズルの出口よりも下流側からアンモニアガスを噴き出すアンモニア供給ノズルとを備える。アンモニア供給ノズルは、燃料供給ノズルの出口の直ぐ下流側において燃料の燃焼によって酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域に向けて、アンモニアガスを供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、空気と予混合されていないアンモニアガスが酸素リーンな再循環領域(還元領域)に供給されることによって、優先的に窒素(N2)への還元反応が進行して炉内脱硝反応が促進される。この結果、燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物の濃度が抑制され得る。
【0006】
しかし、アンモニアガスは比較的に燃焼速度の遅いガスであることから、再循環領域へ直接的に供給されるアンモニアガスの量が過剰となると、再循環領域で燃え切らずに循環するガス燃料の量が増えて、再循環領域のガス温度が局所的に低下するおそれがある。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、固体燃料とガス燃料とを混焼するバーナ及びそれを備える燃焼炉であって、バーナの出口近傍に形成される再循環領域の局所温度低下を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るバーナは、
バーナ軸線方向に延びる円筒状を呈し、下流端に設けられた保炎板により形成された燃料噴出口を有し、固体燃料及び搬送空気が導入される燃料供給ノズルと、
前記燃料供給ノズルの外周側に配置され、燃焼用空気を前記燃料供給ノズルから噴出する混合気から分離して供給する少なくとも1つの流路と、
前記燃料供給ノズル内に挿入され、前記燃料噴出口より上流側に位置するガス燃料供給口を有し、前記燃料供給ノズル内に窒素分を含むガス燃料を供給するガス燃料供給管と、を備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成のバーナによれば、ガス燃料は燃料供給ノズル内で搬送空気と予混合されたうえで燃料噴出口から噴出する。よって、燃料噴出口の下流側に形成される再循環領域において、ガス燃料の燃焼速度の上昇に起因して燃え切れないガス燃料の増加を抑制することができる。その結果、再循環領域の局所温度低下を回避することができる。
【0010】
また、本発明の別の一態様に係るバーナは、
バーナ軸線方向に延びる円筒状を呈し、下流端に設けられた保炎板により形成された燃料噴出口を有し、固体燃料及び搬送空気が導入される燃料供給ノズルと、
前記燃料供給ノズルの外周側に配置され、燃焼用空気を前記燃料供給ノズルから噴出する混合気から分離して供給する少なくとも1つの流路と、
前記燃料供給ノズル内に挿入され、下流端に設けられたガス燃料供給口を有し、当該ガス燃料供給口から前記固体燃料及び前記搬送空気からなる混合気体へ窒素分を含むガス燃料を供給するガス燃料供給管と、
前記燃料噴出口に対し前記ガス燃料供給口が前記バーナ軸線方向に変位可能となるように、前記ガス燃料供給管を前記バーナ軸線方向に変位可能に支持するノズル支持装置と、を備えることを特徴している。
【0011】
上記構成のバーナによれば、ガス燃料供給口の燃料噴出口からの燃料供給ノズル内への後退量を調節することが可能である。よって、ガス燃料供給量が増加した場合に、ガス燃料供給口の後退量を増加させることにより、燃料噴出口の直ぐ下流側に形成される再循環領域の燃料ガスの流れの流速の増加が抑制され、再循環領域を保持することができる。これにより、再循環領域の局所温度低下を回避することができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係るバーナの制御方法は、
バーナ軸線方向に延びる円筒状を呈し、下流端に設けられた保炎板により形成された燃料噴出口を有し、固体燃料及び搬送空気が導入される燃料供給ノズルと、
前記燃料供給ノズルの外周側に配置され、燃焼用空気を前記燃料供給ノズルから噴出する混合気から分離して供給する少なくとも1つの流路と、
前記燃料供給ノズル内に挿入され、下流端に設けられたガス燃料供給口を有し、当該ガス燃料供給口から前記固体燃料及び前記搬送空気からなる混合気体へ窒素分を含むガス燃料を供給するガス燃料供給管と、
前記ガス燃料供給管を前記バーナ軸線方向に変位させるアクチュエータとを備えるバーナの制御方法であって、
前記バーナ軸線方向に沿った前記燃料噴出口に対する前記ガス燃料供給口の位置を検出し、
前記ガス燃料供給管からのガス燃料供給量を検出し、
前記ガス燃料供給量が所定の範囲にあるときに、前記ガス燃料供給量の増加に従って前記ガス燃料供給口の位置が前記燃料噴出口から上流側へ離れるように、前記アクチュエータを動作させることを特徴としている。
【0013】
上記構成のバーナの制御方法によれば、ガス燃料供給量が増加した場合に、ガス燃料供給口の後退量が増加することにより、燃料噴出口の直ぐ下流側に形成される再循環領域の燃料ガスの流れの流速の増加が抑制され、再循環領域を保持することができる。これにより、再循環領域の局所温度低下を回避することができる。よって、再循環領域において、燃え切れないガス燃料の増加を抑制することができる。
【0014】
また、本発明の別の一態様に係る燃焼炉は、少なくとも1つの前記バーナが設けられた、還元雰囲気の高温還元ゾーンと、
前記高温還元ゾーンで生じた燃焼ガスが流入する、前記高温還元ゾーンよりも低温且つ酸化雰囲気の低温酸化ゾーンと、を備えることを特徴としている。
【0015】
上記構成のバーナ及び燃焼炉によれば、高温還元ゾーンで固体燃料と窒素分を多く含むガス燃料との混焼が行われることにより、固体燃料及びガス燃料に含まれる窒素分から生成するNOxに対して炉内脱硝が行われ、NOxの排出を抑えることができる。更に、固体燃料及び/又はガス燃料に含まれる水素分から生成された水が活性ガスに変換される水性ガス化反応が生じることから燃焼効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、固体燃料とガス燃料とを混焼するバーナ及びそれを備える燃焼炉において、バーナの出口近傍に形成される再循環領域の局所温度低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るバーナを備えるボイラの概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係るバーナの概略断面図である。
【
図3】
図3は、燃料噴出口を基準とするガス燃料供給位置の演算方法を説明する図である。
【
図4】
図4は、ガス燃料供給量の変化に対するガス燃料供給位置の変化の第1例を表す図表である。
【
図5】
図5は、ガス燃料供給量の変化に対するガス燃料供給位置の変化の第2例を表す図表である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係るバーナの概略断面図である。
【
図7】
図7は、制御装置による制御の流れを示すブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3実施形態に係るバーナの概略断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4実施形態に係るバーナの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。まず、本発明の一実施形態に係るバーナを備えるボイラ10の概略構成から説明する。
【0019】
〔ボイラ10の概略構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係るバーナ5(5A~5D)を備えるボイラ10の概略構成を示す図である。
図1に示すボイラ10は、燃料を燃焼する燃焼炉2と、その燃焼熱を利用して蒸気を生成するボイラ本体40及び過熱器42とを備える。ボイラ10は、火力ボイラであって、粉体又は粒体状の化石燃料(固体燃料)を主燃料とする。
【0020】
燃焼炉2の内部には竪型の燃焼室20が形成されている。本実施形態に係る燃焼炉2では、燃焼室20の下部には高温還元ゾーン21が形成され、燃焼室20の上部には低温酸化ゾーン22が形成され、高温還元ゾーン21と低温酸化ゾーン22との間には絞り部23が形成されている。但し、燃焼炉2は、燃焼室20の上部に高温還元ゾーン21が形成され、燃焼室20の下部に低温酸化ゾーン22が形成された態様であってもよい。
【0021】
燃焼炉2の内壁のうち高温還元ゾーン21を形成している部分は耐火材25で覆われている。耐火材25は、約2000℃の高温に耐え得る。燃焼炉2の下部の炉壁には、高温還元ゾーン21へ燃料及び一段目燃焼用の空気を吹き出す複数のバーナ5が設けられている。各バーナ5から燃焼室20内へ燃料及び空気の混合気が吹き出して、火炎が生じる。
【0022】
複数のバーナ5は、対向する一対の炉壁の各々に設けられている。各炉壁には上下方向に少なくとも1段のバーナ段が設けられており、各バーナ段は水平方向に並ぶ複数のバーナ5で形成されている。このように対向配置された複数のバーナ5は、各バーナ5のバーナ軸線が交差しないように対向千鳥配置されている。
【0023】
高温還元ゾーン21の出口(即ち、高温還元ゾーン21の上部)は、絞り部23を介して低温酸化ゾーン22の入口(即ち、低温酸化ゾーン22の下部)と接続されている。絞り部23の最も小さい水平断面積は、高温還元ゾーン21の水平断面積の20~50%程度である。
【0024】
燃焼炉2の上部の炉壁には、複数の空気ノズル26が設けられている。各空気ノズル26から低温酸化ゾーン22へ二段目燃焼用の空気が吹き出す。本実施形態では、上下方向に複数段の空気ノズル段が設けられており、各空気ノズル段は水平方向に並ぶ複数の空気ノズル26で形成されている。
【0025】
低温酸化ゾーン22のうち絞り部23と複数の空気ノズル26との上下間は冷却部24となっている。冷却部24の炉壁は、ボイラ本体40の水管(図示略)が張り巡らされた水冷壁となっている。
【0026】
低温酸化ゾーン22の出口(即ち、低温酸化ゾーン22の上部)は煙道28の入口と接続されている。煙道28の上流部分には、過熱器42の過熱器管43が設けられている。また、煙道28の過熱器管43より下流部分の壁に、ボイラ本体40の水管(図示略)が張り巡らされていてもよい。煙道28の過熱器管43より下流側には、排煙脱硝装置41が設けられている。排煙脱硝装置41は、例えば、排ガスと接触する固体触媒を収納した容器と、触媒の上流側に薬剤を適量注入する装置とで構成される。煙道28において排煙脱硝装置41の上流側には第1NOxセンサ32が設けられており、排煙脱硝装置41の下流側には第2NOxセンサ33が設けられている。煙道28の出口には排ガス処理系統30が接続されている。排ガス処理系統30は、燃焼排ガスの余熱を利用してバーナ5へ送る空気を予熱する節炭器31が設けられている。
【0027】
上記構成のボイラ10において、高温還元ゾーン21に供給される燃料と一段目燃焼用の空気との空気比は、1未満(例えば0.7程度)に維持される。その上、耐火材25で覆われた高温還元ゾーン21は、炉の他の部分と比較して炉内温度が下がりにくい。これにより、高温還元ゾーン21は平均約1500℃の高温の還元雰囲気(空気量が理論空気量よりも低い空気不足の雰囲気)となっており、高温還元ゾーン21では燃料のガス化が促進される。
【0028】
高温還元ゾーン21では、燃料がガス化して燃焼ガスが生じる。生じた燃焼ガスは、絞り部23を通じて低温酸化ゾーン22に流入する。空気ノズル26から低温酸化ゾーン22へ供給される二段目燃焼用の空気によって、低温酸化ゾーン22の空気比は1以上(例えば、1.1程度)に維持される。これにより、低温酸化ゾーン22は酸化雰囲気となっており、低温酸化ゾーン22では燃焼ガスの燃焼が促進される。
【0029】
低温酸化ゾーン22では、燃焼ガス中の未燃分の燃焼が完結する(即ち、完全燃焼する)。低温酸化ゾーン22からの燃焼排ガスは、煙道28を通じて排ガス処理系統30へ流出する。煙道28や炉壁に設けられた水管で燃焼排ガスの熱が回収され、ボイラ本体40で蒸気が生成される。また、煙道28に設けられた過熱器管43で燃焼排ガスの熱が回収され、過熱器42で過熱蒸気が生成される。生成された過熱蒸気は、例えば、発電設備の蒸気タービン(図示略)で利用される。
【0030】
燃料が燃焼すると、燃料中に含まれる窒素分が酸化されてフューエルNOxが生成し、空気中の窒素が高温酸化されてサーマルNOxが生成する。還元雰囲気下では高温燃焼になるほどNOx発生量が少なく、酸化雰囲気下では低温燃焼になるほどNOx発生量が少ない。本実施の形態に係るボイラ10では、高温還元ゾーン21の高温還元雰囲気下で燃料を燃焼させることによりフューエルNOxの発生が抑制され、低温酸化ゾーン22の低温酸化雰囲気下で燃焼ガス中の未燃分を完全に燃焼させることによりサーマルNOxの発生が抑制される。本実施の形態に係るボイラ10では、上記のような二段燃焼方式を採用することにより、効果的にNOx発生量が低減されている。更に、高温還元ゾーン21では燃料の燃焼により水(H2O)が生成され、この水が水素(H2)や一酸化炭素(CO)といった活性ガスに変換される水性ガス化反応が生じ、燃焼効率が高められる。
【0031】
〔バーナ5〕
上記構成のボイラ10に備わるバーナ5は、固体燃料を主燃料とし、窒素分を含むガス燃料を補助燃料として利用する混焼バーナである。固体燃料は、例えば微粉炭などの、粉体又は粒体状の化石燃料である。上記構成のボイラ10においては、水性ガス化反応の作用により燃焼効率を向上させる観点から、ガス燃料は、水素分を多く含むことが望ましい。このようなガス燃料として、アンモニアガスが挙げられる。
【0032】
バーナ5によって生じる火炎は、還元条件の再循環領域を有する。この再循環領域の還元条件下で燃焼が行われることにより、NOxの発生が抑制される。バーナ5の定常火炎は、燃焼速度と混合気の流速の釣り合いのうえに形成されている。しかし、再循環領域に流れ込むガス燃料が過剰であったり、燃焼速度の遅いガス燃料であったりする場合には、再循環領域で燃え切れないガス燃料が増加して、再循環領域の温度が局所的に低下する。これは、水性ガス化反応が弱まることにもつながる。この事象は、再循環領域に流れ込むガス燃料の過剰分が多いほど、ガス燃料の燃焼速度が遅いほど、顕著に表れる。そこで、本実施形態に係るバーナ5では、ガス燃料の供給量やガス燃料の種類に応じて、ガス燃料の供給方法を最適化できる構造を有する。以下では、バーナ5の第1~4実施形態について説明する。
【0033】
〔第1実施形態〕
図2は、本発明の第1実施形態に係るバーナ5Aの概略断面図である。
図2に示すバーナ5Aは、燃料供給ノズル71を備える。燃料供給ノズル71は、所定のバーナ軸線70を軸心とする円筒状を呈する。このバーナ軸線70の延伸方向を「バーナ軸線方向X」と称する。燃料供給ノズル71には、粉末状の固体燃料と当該固体燃料を搬送する搬送空気とが導入される。搬送空気は、一次空気(一次燃焼用空気)となる。
【0034】
燃料供給ノズル71の下流端には、周方向に連続する第1保炎板77が設けられている。第1保炎板77は、燃料供給ノズル71の下流端へ進むに従ってラッパ状に拡径する。第1保炎板77によって燃料噴出口71aが形成されている。燃料供給ノズル71の下流端内部であって、第1保炎板77の上流側には、旋回度調整羽根711が設けられている。燃料供給ノズル71内であって、旋回度調整羽根711よりも上流側には分散羽根713が設けられている。
【0035】
燃料供給ノズル71の軸心部には、バーナ軸線70が通る重油バーナ79が挿入されている。重油バーナ79の下流側端部は燃料供給ノズル71の下流側端部の近傍に位置する。そのため、燃料供給ノズル71の下流端の流路断面は、バーナ軸線70を中心とする円環状(ドーナツ状)となっている。
【0036】
燃料供給ノズル71内には、少なくとも1本のガス燃料供給管91が挿入されている。ガス燃料供給管91の下流端は、バーナ軸線方向Xを向いたガス燃料供給口91aとなっている。ガス燃料供給管91には、高圧のガス燃料が導入され、ガス燃料供給口91aから燃料供給ノズル71内へ高圧のガス燃料が供給される。
【0037】
ガス燃料供給口91aは、燃料噴出口71aよりも気体の流れの上流側に位置する。つまり、ガス燃料供給口91aは、燃料噴出口71aからバーナ軸線方向Xに沿って燃料供給ノズル71内へ後退した位置にある。燃料噴出口71aに対するガス燃料供給口91aのバーナ軸線方向Xの位置を「ガス燃料供給位置xg」と称する。バーナ5Aは、ガス燃料供給管91をバーナ軸線方向Xに変位可能に支持する支持装置81を有する。或る例では、支持装置81は、ガス燃料供給管91を保持する治具と、当該治具に取り付けられたスライダと、スライダが走行するレールとから構成される。また別の例では、支持装置81は、ガス燃料供給管91を保持する治具と、当該治具に取り付けられたピニオンと、ピニオンが噛合するラックとから構成される。但し、支持装置81の態様は上記に限定されない。
【0038】
上記のようにガス燃料供給位置xgが燃料噴出口71aから後退しているため、ガス燃料供給口91aから供給されたガス燃料は、燃料供給ノズル71内で固体燃料及び搬送空気と混合する。燃料噴出口71aからは、固体燃料、ガス燃料、及び搬送気体から成る混合気51が噴出する。
【0039】
燃料供給ノズル71の外周には、内側スロート72が設けられている。内側スロート72と燃料供給ノズル71との間に形成された流路72fには、図示されない風箱から二次空気(二次燃焼用空気)が供給される。内側スロート72の下流端である二次空気出口72aは、燃料供給ノズル71の燃料噴出口71aの外周側に位置し、燃料供給ノズル71から噴出する混合気51の外周側において二次空気出口72aから二次空気52が噴き出す。
【0040】
内側スロート72の外周には外側スロート73が設けられている。外側スロート73と内側スロート72との間に形成された流路73fには、図示されない風箱から三次空気(三次燃焼用空気)が供給される。外側スロート73の出口73aは燃料供給ノズル71の燃料噴出口71aの外周側に位置し、内側スロート72から噴出する二次空気52の外周側において外側スロート73の出口73aから三次空気53が噴き出す。
【0041】
内側スロート72の下流端の開口縁には、下流側に進むに従ってラッパ状に拡径する第2保炎板72bが設けられている。更に、外側スロート73の下流端の開口縁には、下流側に進むに従ってラッパ状に拡径する外側ガイド73bが設けられている。第1保炎板77及び第2保炎板72bによって、二次空気出口72aから噴出する二次空気52は、燃料供給ノズル71から噴き出す混合気51から径方向外側へ離れるように誘導される。また、第2保炎板72b及び外側ガイド73bによって、外側スロート73から噴出する三次空気53は、内側スロート72から噴き出す二次空気52から径方向外側へ離れるように誘導される。このように、二次空気52と三次空気53とは、バーナ軸線70から径方向へ広がるように噴出する。
【0042】
上記構成のバーナ5Aでは、分散羽根713及び旋回度調整羽根711の作用によって、混合気51は燃料供給ノズル71の燃料噴出口71aから旋回流れとして噴出する。この混合気51の旋回流れ及び第1保炎板77の作用によって、燃料噴出口71aの直ぐ下流に再循環領域50が形成される。この再循環領域50では、燃料噴出口71aからの混合気51の噴出流を燃料噴出口71aへ向けて戻す循環流が生じ、高温の燃焼ガスと未燃の循環ガスとの交換が絶えず行われる。これにより、混合気51中の固体燃料の揮発成分が速やかに燃焼して、燃料供給ノズル71の燃料噴出口71aの直ぐ下流側且つ再循環領域50の径方向外側で外周着火炎55が生じる。このように、酸素との混合が比較的少ない早期の着火によって初期発生NOxが抑制される。更に、二次空気52、三次空気53の順に段階的に燃焼用空気と混合気51とが混合されることによって脱硝燃焼が生じ、NOxの発生が抑制される。
【0043】
再循環領域50は燃料の燃焼によって酸素が消費されて低酸素濃度となった高温の還元条件となっている。そのため、再循環領域50では、固体燃料中の窒素分から生成された窒素酸化物(NO)が窒素(N2)へと還元される。アンモニアは窒素酸化物に含まれる酸素と結合する性質がある。そのため、ガス燃料がアンモニアガス(NH3)である場合に、還元条件の再循環領域50へアンモニアガスが供給されると、優先的に窒素と水(H2O)への還元反応が進行する。このようにして、固体燃料とアンモニアガスとの混焼において、窒素酸化物の生成が抑制され、水素ガスシフト反応する水が生成される。
【0044】
〔ガス燃料供給位置x
gの演算方法〕
図3は、燃料噴出口71aを基準とするガス燃料供給位置x
gの演算方法を説明する図である。
図3に示すように、燃料噴出口71aのバーナ軸線方向Xの位置をx=0とする。燃料噴出口71aのバーナ軸線方向Xの位置は、保炎板77の下流端のバーナ軸線方向Xの位置である。燃料供給ノズル71内へ後退するに従ってxの数値は大きくなる。つまり、燃料供給ノズル71内へ後退した位置は正の値であり、燃料供給ノズル71外へ進出した位置は負の値である。ガス燃料供給口91aのバーナ軸線方向Xの位置(即ち、ガス燃料供給位置x
g)をx=x
gとする。燃料噴出口71aに対する再循環領域50の中心50cの位置は一定であると仮定し、ガス燃料供給口91aと再循環領域50の中心50cとのバーナ軸線方向Xの距離をLとする。ガス燃料供給口91aからのガス燃料供給量をQ、ガス燃料供給管91の管半径をr0、ガス燃料供給管91の管断面積をAとする。
【0045】
ガス燃料の噴流は再循環領域50の逆流領域に逆らって流れるので、ガス燃料の噴流速度が大きすぎると再循環領域50が損なわれるおそれがある。再循環領域50のはたらきは燃焼状態に直結することから、再循環領域50の中心50cにおけるガス燃料の流速Vには最適値が存在すると考えることができる。再循環領域50の中心50cにおけるガス燃料の流速Vを最適値に保持することにより、安定した再循環領域50が維持される。再循環領域50の中心50cにおけるガス燃料の流速Vは、次式(1)で表すことができる。
【0046】
【0047】
式(1)において変数は、ガス燃料供給量Q、及び、ガス燃料供給口91aと再循環領域50の中心50cとのバーナ軸線方向Xの距離Lである。再循環領域50の中心50cにおけるガス燃料の流速Vを所定の値に維持するために、例えば、ガス燃料供給量Qが2倍となれば、距離Lも2倍となる。つまり、ガス燃料供給量Qの変化に応じて距離Lを調整することにより、再循環領域50の中心50cにおけるガス燃料の流速Vを一定に保持することができる。
【0048】
再循環領域50の中心50cにおける最適なガス燃料の流速Vは、ガス燃料及び固体燃料の種類などに応じたバーナ5Aに固有の値であって、シミュレーションや実験等の結果に基づいて設定されてよい。ガス燃料供給量Qに基づいて再循環領域50の中心50cにおけるガス燃料の流速Vが一定となるような距離Lが求められ、この距離Lに基づいてガス燃料供給口91aのバーナ軸線方向Xの位置xgが求められる。
【0049】
なお、ガス燃料供給位置x
gの調整は、ガス燃料供給量Qが所定の範囲にある場合にのみ行われてもよい。つまり、
図4に示すように、ガス燃料供給量Qが所定の閾値Q
Aを超えるまでは、ガス燃料供給位置x
gを所定の基準位置x
0とし、ガス燃料供給量Qが所定の閾値Q
Aを超えてから、ガス燃料供給量Qの増加に伴って燃料噴出口71aからの距離が大きくなるようにガス燃料供給位置x
gが変化してよい。
【0050】
また、ガス燃料供給位置x
gの調整において、検出されたガス燃料供給量に基づくガス燃料供給量Qが所定の最小供給量Q
0を大幅に下回る場合に、
図5に示すように、ガス燃料供給位置x
gはマイナスの値をとってもよい。この場合、ガス燃料供給口91aが燃料噴出口71aより進出した状態となる。但し、ガス燃料供給管91の溶損が想定されることから、ガス燃料供給位置x
gに下限値が設けられる。なお、最小供給量Q
0は、燃焼を維持するために必要なガス燃料の最小の供給量であって、予め設定されている。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態を説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係るバーナ5Bの概略断面図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の第1実施形態に係るバーナ5Aと同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0052】
図6に示すように、第2実施形態に係るバーナ5Bは、前述の第1実施形態に係るバーナ5Aにおいて支持装置81に加えて、ガス燃料供給位置x
gをガス燃料供給量Qの検出値に応じて自動的に調整する位置調整装置8Bを備えたものである。よって、以下では位置調整装置8Bについて詳細に説明し余の説明を省略する。
【0053】
位置調整装置8Bは、アクチュエータ85と、位置検出器86と、流量検出器87と、制御装置88とからなる。
【0054】
アクチュエータ85は、ガス燃料供給管91をバーナ軸線方向Xに変位させる。アクチュエータ85は、例えば、空気圧シリンダ、電動シリンダ、電動モータとラックアンドピニオン、などのうち少なくとも1つが用いられてよい。なお、アクチュエータ85は、ガス燃料供給管91の全体を変位させるものに限らず、ガス燃料供給管91の下流側部分のみを変位させるものであってよい。アクチュエータ85の動作により、ガス燃料供給口91aのバーナ軸線方向Xの位置、即ち、ガス燃料供給位置xgが変位する。
【0055】
位置検出器86は、燃料噴出口71aを基準とするガス燃料供給位置xgを直接的又は間接的に検出する。位置検出器86は、アクチュエータ85のピストンのストロークやモータの回転位置などの動作量を検出するセンサであって、その検出値に基づいてガス燃料供給位置xgが間接的に検出されてよい。また、位置検出器86は、ガス燃料供給管91の変位量を直接的に検出する接触式又は非接触式の変位センサであってよい。
【0056】
流量検出器87は、ガス燃料供給管91から固体燃料と搬送空気の混合気へのガス燃料供給量Qを直接的又は間接的に検出する。流量検出器87は、ガス燃料供給管91又はガス燃料供給管91へのガス燃料供給系統に設けられて、ガス燃料供給管91へ導入されるガス燃料の流量を検出する流量センサであってよい。或いは、流量検出器87は、ガス燃料供給系統に設けられたバルブの開度や、圧縮ポンプの送出量を検出するセンサであって、その検出値に基づいてガス燃料供給量Qが間接的に検出されてよい。
【0057】
制御装置88は、流量検出器87で検出されたガス燃料供給量Qに基づいて、位置検出器86で検出されるガス燃料供給位置xgを調整するようにアクチュエータ85を動作させることにより、再循環領域50の中心50cにおける流速を一定に制御する。
【0058】
図7は、制御装置88による制御の流れを示すブロック図である。制御装置88は、流量検出器87で検出されたガス燃料供給量Qを取得する。続いて、制御装置88の目標位置演算器は、取得したガス燃料供給量Qに基づいて、ガス燃料供給口91aと再循環領域50の中心50cとの距離Lを求め、距離Lに基づいてガス燃料供給位置x
gの目標位置x
pを求める。そして、制御装置88は、位置検出器86で検出されるガス燃料供給位置x
gが目標位置x
pと等しくなるようにアクチュエータ85を動作させる。詳細には、制御装置88は、目標位置x
pと位置検出器86で検出されたガス燃料供給位置x
gとの偏差を求め、この偏差に基づいて制御量を求め、制御量に基づいてアクチュエータ85の操作量を求め、操作量をアクチュエータ85へ出力する。
【0059】
このように、本実施形態に係るバーナ5Bでは、位置調整装置8Bの動作により、再循環領域50の中心50cにおけるガス燃料の流速が所定の値に維持されるように、ガス燃料供給位置xgが自動調整される。よって、ガス燃料供給量Qに短期的または長期的な変動が生じた場合であっても、再循環領域50の適切な温度が維持され、再循環領域50の還元条件下でNOxの発生を抑制した燃焼を生じさせることができる。
【0060】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態を説明する。
図8は、本発明の第3実施形態に係るバーナ5Cの概略断面図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の第1実施形態及び第2実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0061】
ガス燃料の流量の変化によって再循環領域50で燃え切れない燃料が増加すると、再循環領域50において局所的な温度の低下が生じる。そこで、
図8に示すように、第3実施形態に係るバーナ5Cは、前述の第1実施形態に係るバーナ5Aにおいて、支持装置81に加えて、ガス燃料供給位置x
gを再循環領域50の火炎強度の変化に応じて自動的に調整する位置調整装置8Cを備えたものである。よって、以下では位置調整装置8Cについて詳細に説明し余の説明を省略する。
【0062】
位置調整装置8Cは、アクチュエータ85と、位置検出器86と、火炎強度検出装置90と、制御装置89とを備える。アクチュエータ85及び位置検出器86についての詳細な説明は、前述の第2実施形態の説明を引用して省略する。
【0063】
火炎強度検出装置90は、火炎から発せられる光(例えば、赤外線や紫外線)を検出する火炎センサと、火炎センサの検出値に基づいて火炎強度(発光強度)を計測する演算器とを有する(いずれも図示略)。例えば、火炎センサとして、火炎の色や波長などを検出する光学式火炎センサが用いられる。この場合には、火炎の色や波長などに基づいて火炎の火炎強度を演算で求めることができる。火炎強度検出装置90は、従来のバーナに使用されている公知の構成のものを採用することができる。
【0064】
制御装置89は、火炎強度検出装置90で検出された火炎強度に基づいて、ガス燃料供給位置xgを調整するようにアクチュエータ85を動作させることにより、再循環領域50の火炎強度を一定に制御する。より詳細には、制御装置89は、火炎強度検出装置90で検出される火炎強度が所定の基準強度となるように、ガス燃料供給位置xgの目標位置xpを求める。例えば、検出された火炎強度が基準強度より低くなる場合には、現在検出されたガス燃料供給位置xgよりも目標位置xpが燃料噴出口71aから離れるように、目標位置xpの値を演算する。ここで、制御装置89は、検出された火炎強度と目標位置xpとの関係を予め記憶しておき、これを利用して目標位置xpを求めてもよい。そして、制御装置89は、位置検出器86で検出されるガス燃料供給位置xgが目標位置xpと等しくなるようにアクチュエータ85を動作させる。
【0065】
このように、本実施形態に係るバーナ5Cでは、位置調整装置8Cの動作により、再循環領域50の適切な火炎強度が維持されるように、ガス燃料供給口91aの位置が自動調整される。よって、ガス燃料供給量に短期的または長期的な変動が生じた場合であっても、再循環領域50の適切な温度が維持され、再循環領域50の還元条件下でNOxの発生を抑制した燃焼を生じさせることができる。
【0066】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態を説明する。
図9は本発明の第4実施形態に係るバーナ5Dの概略断面図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0067】
ガス燃料の流量の変化によって再循環領域50で燃え切れない燃料が増加すると、高温還元燃焼が弱まり、燃焼排ガスに含まれるNOxが増加する。そこで、
図9に示すように、第4実施形態に係るバーナ5Dは、前述の第1実施形態に係るバーナ5Aにおいて支持装置81に加えて、ガス燃料供給位置x
gをボイラ10からの排ガスのNOx値に応じて自動的に調整する位置調整装置8Dを備えたものである。よって、以下では位置調整装置8Dについて詳細に説明し余の説明を省略する。
【0068】
位置調整装置8Dは、アクチュエータ85と、位置検出器86と、NOxセンサ(第2NOxセンサ33又は第1NOxセンサ32)と、制御装置92とを備える。アクチュエータ85及び位置検出器86についての詳細な説明は、前述の第2実施形態の説明を引用して省略する。
【0069】
図1に示すように、第2NOxセンサ33は、ボイラ10の出口に設けられて、ボイラ10からの排気のNOx値を検出する。但し、NOxセンサは、ボイラ10の煙道28において排煙脱硝装置41の上流側に設けられた第1NOxセンサ32であってもよい。
【0070】
制御装置92は、第2NOxセンサ33(又は第1NOxセンサ32)で検出されたNOx値に基づいて、位置検出器86で検出されるガス燃料供給口91aの位置xgを調整するようにアクチュエータ85を動作させることにより、排ガスに含まれるNOxの量(NOx値)を所定の基準NOx値の範囲に制御する。より詳細には、制御装置89は、第2NOxセンサ33(又は第1NOxセンサ32)で検出されるNOx値が所定の基準NOx値の範囲となるように、ガス燃料供給口91aの目標位置xpを求める。例えば、検出されたNOx値が基準NOx値より大きい場合には、検出されたガス燃料供給位置xgよりも目標位置xpの値が大きくなるように、目標位置xpを求める。ここで、制御装置92は、検出されたNOx値と目標位置xpとの関係を予め記憶しておき、これを利用して目標位置xpを求めてもよい。そして、制御装置92は、位置検出器86で検出されるガス燃料供給位置xgが目標位置xpとなるようにアクチュエータ85を動作させる。
【0071】
このように、本実施形態に係るバーナ5Dでは、位置調整装置8Dの動作により、NOx値が基準NOx値の範囲に収まるように、即ち、再循環領域50の適切な燃焼が維持されるように、ガス燃料供給口91aの位置が自動調整される。よって、ガス燃料供給量に短期的または長期的な変動が生じた場合であっても、ボイラ10の排ガスのNOx値が抑えられる。
【0072】
〔総括〕
以上に説明した通り、本実施形態に係る燃焼炉2は、少なくとも1つのバーナ5,5A~5Dが設けられた、還元雰囲気の高温還元ゾーン21と、高温還元ゾーン21で生じた燃焼ガスが流入する、高温還元ゾーン21よりも低温且つ酸化雰囲気の低温酸化ゾーン22と、を備える。
【0073】
そして、上記第1実施形態に係るバーナ5Aは、バーナ軸線方向Xに延びる円筒状を呈し、下流端に設けられた保炎板77により形成された燃料噴出口71aを有し、固体燃料及び搬送空気が導入される燃料供給ノズル71と、燃料供給ノズル71の外周側に配置され、燃焼用空気52,53を燃料供給ノズル71から噴出する混合気51から分離して供給する少なくとも1つの流路72f,73fと、燃料供給ノズル71内に挿入され、燃料噴出口71aより上流側に位置するガス燃料供給口91aを有し、燃料供給ノズル71内に窒素分を含むガス燃料を供給するガス燃料供給管91と、を備える。
【0074】
上記構成のバーナ5Aによれば、ガス燃料は燃料供給ノズル71内で搬送空気と予混合されたうえで燃料噴出口71aから噴出する。例えば、ガス燃料がアンモニアのように燃焼速度の遅い燃料である場合や、大量のガス燃料が一度に供給される場合に、ガス燃料供給位置xgを燃料噴出口71aよりも燃料供給ノズル71内へ後退させることにより、ガス燃料と搬送空気(一次空気)との混合時間を確保することができる。これにより、ガス燃料が部分的に予混合された状態となって、当量比(理論空燃比/実際の空燃比)が1に近づき、ガス燃料の燃焼速度を底上げすることができる。よって、燃料噴出口71aの下流側に形成される再循環領域50において、ガス燃料の燃焼速度が上昇して、燃え切れないガス燃料の増加を抑制することができる。その結果、再循環領域50の局所温度低下を回避することができる。
【0075】
また、別の観点から、第1実施形態に係るバーナ5Aは、バーナ軸線方向Xに延びる円筒状を呈し、下流端に設けられた保炎板77により形成された燃料噴出口71aを有し、固体燃料及び搬送空気が導入される燃料供給ノズル71と、燃料供給ノズル71の外周側に配置され、燃焼用空気52,53を燃料供給ノズル71から噴出する混合気51から分離して供給する少なくとも1つの流路72f,73fと、燃料供給ノズル71内に挿入され、下流端に設けられたガス燃料供給口91aを有し、当該ガス燃料供給口91aから固体燃料及び搬送空気からなる混合気体へ窒素分を含むガス燃料を供給するガス燃料供給管91と、燃料噴出口71aに対しガス燃料供給口91aがバーナ軸線方向Xに変位可能となるように、ガス燃料供給管91をバーナ軸線方向Xに変位可能に支持するノズル支持装置81と、を備える。上記構成のバーナ5Aは、ガス燃料供給管91をバーナ軸線方向Xに変位させるアクチュエータ85を更に備えてよい。
【0076】
上記構成のバーナ5Aによれば、ガス燃料供給口91aの燃料噴出口71aからの燃料供給ノズル71内への後退量(即ち、ガス燃料供給位置xg)を調節することが可能である。よって、ガス燃料供給量が増加した場合に、ガス燃料供給口91aの後退量を増加させることにより、再循環領域50の中心50cにおけるガス燃料の流速の増大を抑えることができ、再循環領域50を維持することができる。また、ガス燃料供給口91aが燃料噴出口71aよりも後退していることで、燃料供給ノズル71内でのガス燃料と搬送空気との予混合の度合いを高めることができる。よって、燃料噴出口71aの下流側に形成される再循環領域50において、ガス燃料の燃焼速度が上昇して、燃え切れないガス燃料の増加を抑制することができる。その結果、再循環領域50の局所温度低下を回避することができる。
【0077】
また、第2実施形態に係るバーナ5Bは、第1実施形態に係るバーナ5Aに加えて、バーナ軸線方向Xに沿った燃料噴出口71aに対するガス燃料供給口91aの位置xgを検出する位置検出器86と、ガス燃料供給管91からのガス燃料供給量を検出する流量検出器87と、検出されたガス燃料供給量に基づいて、ガス燃料供給量が所定の範囲にあるときに、ガス燃料供給量の増加に従ってガス燃料供給口91aの位置が燃料噴出口71aから上流側へ離れるように、アクチュエータ85を動作させる制御装置88とを、備える。
【0078】
第2実施形態に係るバーナ5Bの制御方法は、バーナ軸線方向Xに延びる円筒状を呈し、下流端に設けられた保炎板77により形成された燃料噴出口71aを有し、固体燃料及び搬送空気が導入される燃料供給ノズル71と、燃料供給ノズル71の外周側に配置され、燃焼用空気を燃料供給ノズル71から噴出する混合気51から分離して供給する少なくとも1つの流路72f,73fと、燃料供給ノズル71内に挿入され、下流端に設けられたガス燃料供給口91aを有し、当該ガス燃料供給口91aから固体燃料及び搬送空気からなる混合気体へ窒素分を含むガス燃料を供給するガス燃料供給管91と、ガス燃料供給管91をバーナ軸線方向Xに変位させるアクチュエータ85とを備えるバーナ5Bの制御方法であって、
バーナ軸線方向Xに沿った燃料噴出口71aに対するガス燃料供給口91aの位置を検出し、
ガス燃料供給管91からのガス燃料供給量を検出し、
ガス燃料供給量が所定の範囲にあるときに、ガス燃料供給量の増加に従ってガス燃料供給口91aの位置が燃料噴出口71aから上流側へ離れるように、アクチュエータ85を動作させるものである。
【0079】
上記構成のバーナ5B及びその制御方法によれば、第1実施形態に係るバーナ5Aの作用効果に加えて、以下のような作用効果を奏する。即ち、ガス燃料供給量が増加した場合に、再循環領域50におけるガス燃料の流速の増大が抑えられるように、ガス燃料供給口91aの位置が自動的に調整される。
【0080】
上記のバーナ5Bにおいて、制御装置88は、燃料噴出口71aの下流側に形成される再循環領域50のバーナ軸線方向Xの中心50cにおけるガス燃料の流速が一定となるようにガス燃料供給口91aの目標位置xpを求め、ガス燃料供給口91aの位置xgが目標位置xpとなるようにアクチュエータ85を動作させてよい。
【0081】
同様に、上記のバーナ5Bの制御方法において、燃料噴出口71aの下流側に形成される再循環領域50のバーナ軸線方向Xの中心50cにおけるガス燃料の流速が一定となるようにガス燃料供給口91aの目標位置xpを求め、ガス燃料供給口91aの位置xgが目標位置xpとなるようにアクチュエータ85を動作させてよい。
【0082】
これにより、再循環領域50のバーナ軸線方向Xの中心50cにおけるガス燃料の流速を一定とすることができ、安定した再循環領域50が維持される。
【0083】
また、上記第3実施形態に係るバーナ5Cは、第1実施形態に係るバーナ5Aに加えて、燃料噴出口71aの下流側に形成される再循環領域50の火炎強度を検出する火炎強度検出装置90と、バーナ軸線方向Xに沿った燃料噴出口71aに対するガス燃料供給口91aの位置xgを検出する位置検出器86と、検出された火炎強度に基づいてアクチュエータ85を動作させてガス燃料供給口91aの位置xgを調整することにより、再循環領域50の火炎強度が所定の値となるように制御する制御装置89と、を備える。
【0084】
同様に、第3実施形態に係るバーナ5Cの制御方法は、燃料噴出口71aの下流側に形成される再循環領域50の火炎強度を検出し、再循環領域50の火炎強度が所定の基準温度となるように、検出された火炎強度に基づいてガス燃料供給口91aの位置xgを調整するようにアクチュエータ85を動作させるものである。
【0085】
上記構成のバーナ5C及びその制御方法によれば、ガス燃料供給量の変動などによって、再循環領域50に局所的な低温箇所が生じた場合に、再循環領域50の火炎強度が適切に保たれるようにガス燃料供給口91aの位置xgが自動的に調整される。
【0086】
また、第4実施形態に係るバーナ5Dは、第1実施形態に係るバーナ5Aに加えて、燃焼排ガスのNOx値を検出するNOxセンサ33と、バーナ軸線方向Xに沿った燃料噴出口71aに対するガス燃料供給口91aの位置xgを検出する位置検出器86と、NOx値に基づいてアクチュエータ85を動作させてガス燃料供給口91aの位置xgを調整することにより、NOx値を所定の基準NOx値の範囲となるように制御する制御装置92と、を備える。
【0087】
同様に、第4実施形態に係るバーナ5Dの制御方法は、燃焼排ガスのNOx値を検出し、NOx値が所定の基準NOx値の範囲となるように、NOx値に基づいてガス燃料供給口91aの位置xgを調整するようにアクチュエータ85を動作させるものである。
【0088】
上記構成のバーナ5D及びその制御方法によれば、ガス燃料供給量の変動に起因する再循環領域50に局所温度低下が回避され、排ガスのNOx値の増加を抑制することができる。
【0089】
そして、上記構成のバーナ5A~5Dを備える燃焼炉2によれば、高温還元ゾーン21で固体燃料と窒素分を多く含むガス燃料との混焼が行われることにより、固体燃料及びガス燃料に含まれる窒素分から生成するNOxの炉内脱硝が行われ、NOxの排出を抑えることができる。更に、固体燃料及び/又はガス燃料に含まれる水素分から生成された水が活性ガスに変換される水性ガス化反応が生じることから燃焼効率を向上させることができる。ここで、ガス燃料がアンモニアガスである場合に、アンモニアは燃焼性に乏しいため単純に混焼すると燃焼効率が低下するが、本発明が適用されることにより燃焼効率の低下を抑えることができる。
【0090】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0091】
例えば、上記実施形態において、ボイラ10の燃焼炉2は高温還元ゾーン21と低温酸化ゾーン22とが形成されて二段燃焼が行われるものであるが、バーナ5(バーナ5A~D)が適用される燃焼炉は上記構成に限定されない。上記本実施形態に係るバーナ5(バーナ5A~D)は、低NOxを実現する固体燃料とガス燃料との混焼バーナとして広く適用することができる。
【0092】
また、上記実施形態の位置調整装置8B~8Dでは、ガス燃料供給管91が燃料供給ノズル71に抜き差しされることによってガス燃料供給口91aが変位するが、位置調整装置8B~8Dはこれに限定されない。例えば、ガス燃料供給管91が、燃料供給ノズル71に挿入された外筒と、当該外筒に内挿された内筒とからテレスコピックに伸長・短縮可能に構成され、内筒が外筒に対して進退変位することでガス燃料供給口91aが変位してもよい。
【符号の説明】
【0093】
2 :燃焼炉
5,5A~5D:バーナ
8B~8D:位置調整装置
10 :ボイラ
20 :燃焼室
21 :高温還元ゾーン
22 :低温酸化ゾーン
32,33 :NOxセンサ
50 :再循環領域
50c :中心
51 :混合気
52,53 :燃焼用空気
70 :バーナ軸線
71 :燃料供給ノズル
71a :燃料噴出口
72f,73f:(燃焼用空気の)流路
77 :保炎板
81 :ノズル支持装置
85 :アクチュエータ
86 :位置検出器
87 :流量検出器
88,89,92:制御装置
90 :火炎強度検出装置
91 :ガス燃料供給管
91a :ガス燃料供給口