(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】網膜色素上皮細胞組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/30 20150101AFI20240605BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240605BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240605BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240605BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240605BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240605BHJP
C12N 5/079 20100101ALN20240605BHJP
【FI】
A61K35/30
A61K9/08
A61K47/22
A61K47/36
A61K47/20
A61P27/02
C12N5/079
(21)【出願番号】P 2020536258
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(86)【国際出願番号】 IB2018001579
(87)【国際公開番号】W WO2019130061
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517230275
【氏名又は名称】セル キュア ニューロサイエンシズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンベルグ ベルメイカー リオル
(72)【発明者】
【氏名】ウィセル オフェル
(72)【発明者】
【氏名】ネッツァ ニル
(72)【発明者】
【氏名】ハユーン ネーマン ダナ
(72)【発明者】
【氏名】シャハーフ バト
(72)【発明者】
【氏名】ボハナ カシュタン オスナット
(72)【発明者】
【氏名】ガンブルグ オリット
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/021973(WO,A1)
【文献】特表2016-512955(JP,A)
【文献】特表2014-533289(JP,A)
【文献】特表2018-501281(JP,A)
【文献】特表2020-511539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その必要がある対象における、網膜の状態の処置のための、かつ、解凍直後に対象の網膜へそのまま投与するための組成物であって、アデノシン、デキストラン-40、(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)) HEPES、およびジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地;ならびに網膜色素上皮(RPE)細胞を含
み、ここで、前記網膜の状態の処置が、網膜変性疾患の進行を遅らせること、加齢黄斑変性症(AMD)の進行を遅らせること、網膜変性疾患を予防すること、AMDを予防すること、網膜色素上皮(RPE)を修復すること、RPEを増加させること、RPEを置換すること、またはRPE欠損を処置すること、のうちの1つまたは複数から選択される、前記組成物。
【請求項2】
解凍直後に対象の網膜へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法であって、
(a)細胞懸濁液を形成するために、アデノシン、デキストラン-40、(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)) HEPES、およびジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地中にRPE細胞を懸濁する工程;
(b)細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;
(c)凍結保存された細胞懸濁液を解凍する工程
を含み、
ここで、該組成物は、解凍直後に対象の網膜へ投与されるように製剤化される、
前記方法。
【請求項3】
細胞が、解凍後に、約100 Ω~約1300 Ωのバリア機能TEER;約3.5~約9.4のPEDF上部対下部比率;約1.2~約5のVEGF下部対上部比率;または約95%~約100%の純度のうちの1つまたは複数を示す、請求項2記載の方法。
【請求項4】
網膜下投与用である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
送達デバイスを使用した投与用である、請求項1または4記載の組成物。
【請求項6】
送達デバイスが、注射針、キャピラリーおよびチップを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
脈絡膜上注射による投与用である、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記細胞が、線維芽細胞増殖因子(bFGFおよびaFGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、色素上皮由来因子(PEDF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、または1つもしくは複数の抗炎症性サイトカイン、のうちの1つまたは複数を分泌する、請求項1および4~7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水、および網膜色素上皮(RPE)細胞を含む、請求項1および4~
8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
RPE細胞が、ベストロフィン1、小眼球症関連転写因子(MITF)、Z0-1、ペアードボックス遺伝子6(PAX-6)、細胞レチンアルデヒド結合タンパク質(CRALBP)、メラノサイト系列特異的抗原GP100(PMEL17)、RPE65、およびRPE一次繊毛についてのマーカー、の1つまたは複数を発現する、請求項1および4~
9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
培地組成物が、アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水を含む、請求項2または3記載の方法。
【請求項12】
工程(a)の前に、RPE細胞が、
RPE細胞を含む細胞の集団へ多能性細胞を分化させる工程;
酵素を用いてRPE細胞を酵素的に採取する工程;および
中和剤で酵素を中和する工程であって、中和剤がヒト血清を含まない、工程
によって得られる、請求項2、3、および
11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
RPE細胞が約1~約8時間中和剤中に保存され、生存能が約10%を超えて低下しない、請求項
12記載の方法。
【請求項14】
RPE細胞が、凍結保存前に約3時間培地組成物中に懸濁され、1時間未満培地中に懸濁されたRPE細胞と比較して、解凍後のパーセント生存能が約10%を超えて低下せず、解凍後のパーセント収率が20%を超えて低下せず、かつ、解凍後活力が10%を超えて低下しない、請求項2、3、および
11~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
RPE細胞が、凍結保存前に約3時間培地組成物中に懸濁され、1時間未満培地中に懸濁されたRPE細胞と比較して、解凍後バリア機能が低下せず、解凍後PEDF上部対下部比率が10%を超えて低下せず、かつ、解凍後VEGF下部対上部比率が低下しない、請求項2、3、および
11~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
中和する工程の後にRPE細胞を連続的に濾過する工程であって、パーセント生存能が少なくとも98%である、工程
をさらに含む、請求項
12記載の方法。
【請求項17】
中和する工程の後にRPE細胞を連続的に濾過し、RPE細胞を培地組成物中で約2~4時間インキュベートする工程であって、パーセントリカバリーが約80%~約95%である、工程
をさらに含む、請求項
12記載の方法。
【請求項18】
前記細胞の少なくとも約40%~約100%の細胞が解凍後に生存可能である、請求項2、3、および
11~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が、線維芽細胞増殖因子(bFGFおよびaFGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、色素上皮由来因子(PEDF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、または1つもしくは複数の抗炎症性サイトカイン、のうちの1つまたは複数を分泌する、請求項2、3、および
11~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
RPE細胞が、ベストロフィン1、小眼球症関連転写因子(MITF)、Z0-1、ペアードボックス遺伝子6(PAX-6)、細胞レチンアルデヒド結合タンパク質(CRALBP)、メラノサイト系列特異的抗原GP100(PMEL17)、RPE65、およびRPE一次繊毛についてのマーカー、の1つまたは複数を発現する、請求項2、3、および
11~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
L-グルタチオンをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項22】
糖酸、塩基、抗酸化物質、ハロゲン化物塩、塩基性塩、リン酸塩、糖、および糖アルコールのうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項
21記載の組成物。
【請求項23】
糖酸が、ラクトビオン酸、グリセリン酸、キシロン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ノイラミン酸、ケトデオキシオクツロソン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、ガラクツロン酸、イズロン酸、酒石酸、粘液酸、および/またはサッカリン酸を含む、請求項
22記載の組成物。
【請求項24】
塩基が、水酸化ナトリウム、および/または水酸化カリウムを含む、請求項
22または
23記載の組成物。
【請求項25】
ハロゲン化物塩が、塩化カリウム、塩化ナトリウム、および/または塩化マグネシウムを含む、請求項
22~24のいずれか一項記載の組成物。
【請求項26】
塩基性塩が、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、および/または酢酸ナトリウムを含む、請求項
22~25のいずれか一項記載の組成物。
【請求項27】
リン酸塩が、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、および/またはリン酸カリウムを含む、請求項
22~26のいずれか一項記載の組成物。
【請求項28】
糖が、デキストロース、および/またはスクロースを含む、請求項
22~27のいずれか一項記載の組成物。
【請求項29】
糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール、エリトリトール、および/またはキシリトールを含む、請求項
22~28のいずれか一項記載の組成物。
【請求項30】
RPE細胞濃度が約100,000~約10,000,000細胞/mlである、請求項
21~29のいずれか一項記載の組成物。
【請求項31】
組成物中の細胞数が約100,000~約500,000である、請求項
21~30のいずれか一項記載の組成物。
【請求項32】
ROCK阻害剤またはニコチンアミド(NA)のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項
21~31のいずれか一項記載の組成物。
【請求項33】
細胞が、解凍後に、約100 Ω~約1300 Ωのバリア機能TEER;約3.5~約9.4のPEDF上部対下部比率;約1.2~約5のVEGF下部対上部比率;または約95%~約100%の純度のうちの1つまたは複数を示す、請求項
21~32のいずれか一項記載の組成物。
【請求項34】
細胞が、線維芽細胞増殖因子(bFGFおよびaFGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、色素上皮由来因子(PEDF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、または1つもしくは複数の抗炎症性サイトカインのうちの1つまたは複数を分泌する、請求項
21~33のいずれか一項記載の組成物。
【請求項35】
ラクトビオン酸、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、および水をさらに含む、請求項
21~34のいずれか一項記載の組成物。
【請求項36】
約1%~約15%のDMSO、または約0.5%~約7%のDMSO、または約1.5%~約6.5%のDMSO、または約1.5%~約3%のDMSO、または約4%~約6%のDMSOを含む凍結保存培地をさらに含む、請求項
21~35のいずれか一項記載の組成物。
【請求項37】
細胞が、神経栄養因子:線維芽細胞増殖因子(bFGFおよびaFGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、色素上皮由来因子(PEDF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、および血管内皮増殖因子(VEGF)のうちの1つまたは複数を分泌する、請求項
21~36のいずれか一項記載の組成物。
【請求項38】
細胞が、1つまたは複数の抗炎症性サイトカインを分泌する、請求項
21~37のいずれか一項記載の組成物。
【請求項39】
以下を含む組成物を含む、それを必要とする対象における網膜の状態の処置のための、かつ、解凍直後に対象の網膜へそのまま投与するための医薬:
(a)アデノシン、デキストラン-40、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、L-グルタチオン、およびジメチルスルホキシド(DMSO);並びに
(b)RPE細胞
、
ここで、前記網膜の状態が、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、遺伝性または後天性の黄斑変性症、加齢黄斑変性症(AMD)、ベスト病、網膜剥離、脳回転状萎縮症、脈絡膜欠如、パターンジストロフィー、RPEジストロフィー、シュタルガルト病、光、レーザー、感染症、放射線、新生血管性または外傷性傷害のいずれか1つによって引き起こされたRPEおよび網膜損傷のうちの少なくとも1つより選択される網膜変性疾患である。
【請求項40】
組成物が網膜下腔内に投与されるように用いられることを特徴とする、請求項
39記載の医薬。
【請求項41】
約0.63 mmの外径および約0.53 mmの内径を有する注射針、約0.5 mmの外径および約0.25 mmの内径を有するキャピラリー、ならびに約0.12 mmの外径および約0.07 mmの内径を有するチップを含む送達デバイスを用いて組成物を送達するように用いられることを特徴とする、請求項
39または40記載の医薬。
【請求項42】
送達後のパーセント生存能が約85%~約99%であり、送達後のパーセントリカバリーが約65%~約99%であり、送達後のバリア機能TEERが約100~約600 Ωであり、PEDF頂端/基底比率が約2~約7であり、かつ、送達後のVEGF基底/頂端比率が約1.5~約3である、請求項
39~41のいずれか一項記載の医薬。
【請求項43】
組成物が、解凍され、解凍直後にそのまま注入されるように用いられることを特徴とする、請求項
39~42のいずれか一項記載の医薬。
【請求項44】
組成物が単回用量処置として投与されるように用いられることを特徴とする、請求項
39~43のいずれか一項記載の医薬。
【請求項45】
組成物が、投与された後に炎症を引き起こさない、請求項
39~44のいずれか一項記載の医薬。
【請求項46】
組成物が、硝子体切除術無しでかつ網膜に穴を開ける必要性無しで投与されるように用いられることを特徴とする、請求項
39~45のいずれか一項記載の医薬。
【請求項47】
組成物が、脈絡膜上注入によって投与されるように用いられることを特徴とする、請求項
39~46のいずれか一項記載の医薬。
【請求項48】
以下の工程を含む、請求項
21~38のいずれか一項記載の組成物を調製する方法:
(a)細胞懸濁液を形成するために、アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水を含む細胞保存培地中にRPE細胞を懸濁する工程;
(b)細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに
(c)凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、細胞の少なくとも約60%~約92%が解凍後に生存可能である、工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月29日に出願された米国仮特許出願第62/612,210号の恩典を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
網膜色素上皮(RPE)は、光受容体外節(POS)と脈絡膜血管系との間のブルッフ膜上にある神経上皮由来色素細胞の単層である。RPE単層は、光受容体の機能および健康に不可欠である。網膜色素上皮(RPE)細胞の機能不全、損傷、および喪失は、加齢黄斑変性症(AMD)、遺伝性黄斑変性症、例えば、ベスト病(卵黄様黄斑変性症の早期発症型)、および網膜色素変性症(RP)のサブタイプのような、ある眼疾患および障害の顕著な特徴である。そのような疾患に罹患した人の網膜中へのRPE(および光受容体)の移植は、RPEが変性した網膜疾患における細胞補充療法として使用することができる。
【0003】
ヒト胎児および成人RPEは、同種移植のためのドナー源として使用されてきた。しかし、十分な組織供給を得ることにおける実際的問題および中絶された胎児からの組織の使用に関する倫理的問題が、これらのドナー源の広範な使用を制限する。成人および胎児RPE移植片の供給における制限を考慮して、代替ドナー源の可能性が研究されてきた。
【0004】
ヒト多能性幹細胞は、移植についてのRPE細胞の供給源として顕著な利点を提供する。それらの多能性発生能は真正の機能性RPE細胞へのそれらの分化を可能にし、無限の自己再生についてのそれらの可能性を考慮すると、それらはRPE細胞の無制限のドナー源として役立つことができる。実際に、ヒト胚性幹細胞(hESC)およびヒト人工多能性幹細胞(iPSC)は、インビトロでRPE細胞へ分化し、網膜下移植後、網膜変性を軽減し、視覚機能を保存し得ることが実証された。従って、hESCは、細胞療法用のRPE細胞の製造についての無制限の供給源であり得る。
【0005】
しかし、大抵の細胞ベースの処置は、通常、身体中への直接投与に適合性ではない凍結溶液中に凍結状態で保存され、これは、臨床使用についての実際的問題を引き起こす。細胞は、それらが解凍された後数時間以内に移植されるべきであり、さもなければそれらは生存能および品質を失い始め得る。さらに、細胞は認定施設において投与前に調製されなければならず、これらの認定施設は、臨床現場、病院または他の処置施設に近接していない場合がある。最後に、各対象の処置用量は資格のある技術者によってリリースされなければならず、何故ならば、最終製剤の調製は細胞療法製造プロセスの一部であると見なされるためである。
【0006】
本開示は、再生医療およびRPE細胞療法の分野におけるこれらおよび他の欠点に取り組む。
【発明の概要】
【0007】
概要
一局面において、網膜変性疾患および損傷の処置のためのそのまま投与できる(ready to administer:RTA)網膜色素上皮(RPE)細胞療法組成物を提示する。解凍直後に対象へ投与するためのヒトRPE細胞を製剤化する方法、ならびに凍結保存および凍結保存された組成物の解凍後の対象への投与のためのRPE細胞療法組成物を製剤化する方法をさらに提示する。別の局面において、RTA組成物は、組成物が解凍後に注射によって投与される、解凍および注射(TAI)組成物として製剤化され得る。
【0008】
他の局面において、RPE細胞およびそのまま投与できる生体適合性凍結保存培地を含む組成物を対象へ投与することによって、対象において、網膜変性疾患の進行を遅らせること、加齢黄斑変性症(AMD)および/または地図状萎縮(GA)の進行を遅らせること、網膜変性疾患を予防すること、AMDを予防すること、GAを予防すること、網膜色素上皮(RPE)を修復すること、RPEを増加させること、RPEを置換すること、またはRPE欠損を処置すること、のうちの1つまたは複数を含む方法を提示する。
【0009】
本明細書に記載される凍結保存培地は、約2%のDMSO、5%のDMSO、約1%~約15%のDMSO、または約0.5%~約7%のDMSO、または約1.5%~約6.5%のDMSO、または約1.5%~約3%のDMSO、または約4%~約6%のDMSOを含み得る。
【0010】
いくつかの局面において、凍結保存培地は、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。
【0011】
他の局面において、網膜変性疾患は、RPE機能不全、光受容体機能不全、リポフスチンの蓄積、ドルーゼンの形成、または炎症のうちの1つまたは複数を含む。
【0012】
網膜変性疾患は、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、遺伝性または後天性の黄斑変性症、加齢黄斑変性症(AMD)、ベスト病、網膜剥離、脳回転状萎縮症、脈絡膜欠如、パターンジストロフィー、RPEジストロフィー、シュタルガルト病、光、レーザー、感染症、放射線、新生血管性または外傷性傷害のいずれか1つによって引き起こされたRPEおよび網膜損傷のうちの少なくとも1つより選択され得る。さらに、AMDは地図状萎縮(GA)を含み得る。
【0013】
別の局面において、RPE欠損は、高齢、喫煙、不健康な体重、抗酸化物質の低摂取、または心臓血管疾患のうちの1つまたは複数に起因する。さらに別の局面において、RPE欠損は先天性異常に起因する。
【0014】
いくつかの局面において、アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水、および網膜色素上皮(RPE)細胞を含む組成物を対象へ投与する工程を含む、その必要がある対象において視力を回復させる方法が記載される。
【0015】
他の局面において、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地;ならびにRPE細胞を含む組成物を対象へ投与する工程を含む、その必要がある対象において視力を回復させる方法が記載される。
【0016】
他の局面において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法が記載され、該方法は以下を含む:(a)細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地中にRPE細胞を懸濁する工程;(b)細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに(c)凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、細胞の少なくとも約60%~約92%が解凍後に生存可能である、工程。
【0017】
いくつかの局面において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法が記載され、該方法は以下を含む:(a)細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地中にRPE細胞を懸濁する工程;(b)細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに(c)凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、解凍後に少なくとも約50%~約120%の細胞収率がある、工程。
【0018】
いくつかの局面において、解凍後に少なくとも約65%~約70%の細胞収率;解凍後に少なくとも約64%~約97%の細胞収率;解凍後に少なくとも約59%~約82%の細胞収率があった。
【0019】
他の局面において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法が記載され、該方法は以下を含む:(a)細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地中にRPE細胞を懸濁する工程;(b)細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに(c)凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、解凍の約24時間後に少なくとも約30%~約112%の細胞活力が存在した、工程。
【0020】
いくつかの局面において、解凍の約24時間後に少なくとも約89%~約110%の細胞活力が存在した;解凍の約24時間後に少なくとも約76%~約112%の細胞活力が存在した。
【0021】
他の局面において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法が記載され、該方法は以下を含む:(a)細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地中にRPE細胞を懸濁する工程;(b)細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに(c)凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、解凍および培養の約8~18日後に少なくとも約3~約7倍の細胞増殖が存在した、工程。
【0022】
他の局面において、解凍および培養の約14日後に少なくとも約4.2~約5.4倍の細胞増殖が存在した。さらに他の局面において、解凍および培養の約14日後に少なくとも約4.2~約4.9倍の細胞増殖が存在した;解凍および培養の約14日後に少なくとも約4.5~約5.4倍の細胞増殖が存在した。
【0023】
他の局面において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法が記載され、該方法は以下を含む:(a)細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地中にRPE細胞を懸濁する工程;(b)細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに(c)凍結保存された細胞懸濁液を解凍する工程であって、細胞が、解凍後に、約100 Ω~約1300 Ωのバリア機能TEER;約3.5~約9.4のPEDF上部対下部比率;約1.2~約5のVEGF下部対上部比率;または約95%~約100%の純度のうちの1つまたは複数を示した、工程。
【0024】
いくつかの局面において、細胞は、約107~約402 Ω;または約241~約715 Ωのバリア機能を有した。他の局面において、細胞は、約5.1~約9.4;または約3.5~約9.4のPEDF上部対下部比率を有した。他の局面において、細胞は、約1.2~約1.7;または約1.2~約1.9のVEGF下部対上部比率を有した。
【0025】
いくつかの局面において、プリンヌクレオシド、分岐グルカン、緩衝剤、および極性非プロトン性溶媒のうちの1つまたは複数は、US FDAによって一般に安全と認められている。
【0026】
他の局面において、細胞保存は、糖酸(例えば、ラクトビオン酸)、1つまたは複数の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、抗酸化物質(例えば、L-グルタチオン)、1つまたは複数のハロゲン化物塩(例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム)、塩基性塩(例えば、炭酸水素カリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、1つまたは複数の糖類(例えば、デキストロース、スクロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール)、および水のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0027】
さらに他の局面において、糖酸は、ラクトビオン酸、グリセリン酸、キシロン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ノイラミン酸、ケトデオキシオクツロソン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、ガラクツロン酸、イズロン酸、酒石酸、粘液酸、またはサッカリン酸を含む。
【0028】
いくつかの局面において、1つまたは複数の塩基は、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムを含む。いくつかの局面において、抗酸化物質は、L-グルタチオン、アスコルビン酸、リポ酸、尿酸、aカロチン、α-トコフェロール、またはユビキノールを含む。いくつかの局面において、1つまたは複数のハロゲン化物塩は、塩化カリウム、塩化ナトリウム、または塩化マグネシウムを含む。いくつかの局面において、塩基性塩は、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、または酢酸ナトリウムを含む。いくつかの局面において、リン酸塩は、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、またはリン酸カリウムを含む。いくつかの局面において、1つまたは複数の糖類は、デキストロース、スクロースを含む。いくつかの局面において、糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール、エリトリトールまたはキシリトールを含む。いくつかの局面において、糖酸、塩基、ハロゲン化物塩、塩基性塩、抗酸化物質、リン酸塩、糖類、糖アルコールのうちの1つまたは複数は、US FDAによって一般に安全と認められている。
【0029】
他の局面において、RPE組成物は網膜下投与される。他の局面において、RPE組成物は、送達デバイスを使用して投与される。他の局面において、送達デバイスは、注射針、キャピラリーおよびチップを含む。他の局面において、送達デバイスは、約0.63 mmの外径および約0.53 mmの内径を有する注射針、約0.5 mmの外径および約0.25 mmの内径を有するキャピラリー、ならびに約0.12 mmの外径および約0.07 mmの内径を有するチップを含む。
【0030】
ある局面において、送達後のパーセント生存能は約85%~約99%であり、送達後のパーセントリカバリーは約65%~約99%であり、送達後のバリア機能TEERは約100~約600 Ωであり、PEDF頂端/基底比率は約2~約7であり、かつ、送達後のVEGF基底/頂端比率は約1.5~約3である。
【0031】
いくつかの局面において、組成物は網膜下腔内に投与される。いくつかの局面において、組成物は注射される。いくつかの局面において、組成物は単回用量処置として投与される。
【0032】
他の局面において、組成物は、それが投与された後に炎症を引き起こさない。さらに他の局面において、炎症は、炎症に関連する細胞の存在によって特徴付けられる。他の局面において、硝子体切除術無しでかつ網膜に穴を開ける必要性無しで、細胞組成物は投与される。いくつかの局面において、細胞組成物は脈絡膜上注射によって投与される。
【0033】
いくつかの局面において、細胞は、神経栄養因子:線維芽細胞増殖因子(bFGFおよびaFGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、色素上皮由来因子(PEDF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、および血管内皮増殖因子(VEGF)のうちの1つまたは複数を分泌する。いくつかの局面において、細胞は1つまたは複数の抗炎症性サイトカインを分泌する。
【0034】
他の局面において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法が記載され、該方法は以下を含む:(a)アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水を含む培地組成物中にRPE細胞を懸濁する工程;(b)凍結保存に適した温度で細胞懸濁液を保存する工程;ならびに(c)凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、細胞の少なくとも約60%~約95%が解凍後に生存可能である、工程。
【0035】
他の局面において、細胞の少なくとも約40%~約100%が解凍後に生存可能であり;細胞の少なくとも約45%~約95%が解凍後に生存可能であり;細胞の少なくとも約62%~約70%が解凍後に生存可能である。
【0036】
いくつかの局面において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法が記載され、該方法は以下を含む:(a)RPE細胞を含む細胞の集団へ幹細胞を分化させる工程;(b)RPE細胞を酵素的に採取する工程;(c)中和剤で酵素を中和する工程であって、中和剤がヒト血清を含まない、工程;(d)アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水を含む培地組成物中にRPE細胞を懸濁する工程;(e)凍結保存に適した温度で細胞懸濁液を保存する工程;ならびに(f)凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、細胞の少なくとも約70%が解凍後に生存可能である、工程。
【0037】
いくつかの局面において、RPE細胞は約1~約8時間中和剤中に保存され、生存能は約10%を超えて低下しない。いくつかの局面において、RPE細胞は、凍結保存前に約3時間培地組成物中に懸濁され、1時間未満培地中に懸濁されたRPE細胞と比較して、解凍後のパーセント生存能は約10%を超えて低下せず、解凍後のパーセント収率は20%を超えて低下せず、かつ、解凍後の活力は10%を超えて低下しない。
【0038】
いくつかの局面において、RPE細胞は、凍結保存前に約3時間培地組成物中に懸濁され、1時間未満培地中に懸濁されたRPE細胞と比較して、解凍後のバリア機能は低下せず、解凍後のPEDF上部対下部比率は10%を超えて低下せず、かつ、解凍後のVEGF下部対上部比率は低下しない。
【0039】
いくつかの局面において、RPE細胞は、凍結保存前に約2~3時間培地組成物中に懸濁され、解凍後のパーセント生存能は約50~約75であり、解凍後のパーセント収率は約50~約95であり、解凍後の活力は約80~約120であり、解凍後のバリア機能は約100~約750 Ωであり、解凍後のPEDF上部対下部比率は約3~約7であり、かつ、解凍後のVEGF下部対上部比率は約1~3である。
【0040】
いくつかの局面において、記載される方法は、工程(c)後にRPE細胞を連続的に濾過する工程であって、パーセント生存能が少なくとも98%である工程をさらに含む。いくつかの局面において、方法は、工程(c)後にRPE細胞を連続的に濾過し、RPE細胞を培地組成物中で約2~4時間インキュベートする工程であって、パーセントリカバリーが約80%~約95%である工程をさらに含む。
【0041】
いくつかの局面において、記載される方法は、工程(c)後にRPE細胞を連続的に濾過し、RPE細胞を中和溶液中で約2~約4時間インキュベートし、RPE細胞を培地組成物中で約2~4時間インキュベートする工程であって、パーセント生存能が約80%~約99%であり、かつ、パーセントリカバリーが約70%~約95%である工程をさらに含む。
【0042】
他の局面において、記載される方法は、工程(c)後にRPE細胞を連続的に濾過し、RPE細胞を中和溶液中で約2~約4時間インキュベートし、RPE細胞を培地組成物中で約2~4時間インキュベートする工程であって、解凍後のパーセント生存能が約80%~約99%であり、解凍後のパーセントリカバリーが約70%~約95%であり、かつ、PEDF分泌が約2,000 ng/ml/日~約3,000 ng/ml/日である工程をさらに含む。
【0043】
他の局面において、記載される方法は、RPE細胞を培地組成物中で室温にて約2~6時間インキュベートする工程であって、パーセント生存能が約80%~約99%であり、かつ、パーセントリカバリーが約80%~約120%である工程をさらに含む。
【0044】
他の局面において、(a)アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水;ならびに(b)RPE細胞を含む組成物が記載され、ここで、組成物は凍結温度で保存され得、かつ、組成物は解凍直後に対象へそのまま投与できる。
【0045】
他の局面において、(a)プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地;ならびに(b)RPE細胞を含む組成物が記載される。
【0046】
ある組成物において、プリンヌクレオシド、分岐グルカン、緩衝剤、および極性非プロトン性溶媒のうちの1つまたは複数は、US FDAによって一般に安全と認められている。
【0047】
他の局面において、本明細書に記載される治療用細胞組成物は、糖酸(例えば、ラクトビオン酸)、1つまたは複数の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、抗酸化物質(例えば、L-グルタチオン)、1つまたは複数のハロゲン化物塩(例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム)、塩基性塩(例えば、炭酸水素カリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、1つまたは複数の糖類(例えば、デキストロース、スクロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール)、および水のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0048】
記載される組成物の他の局面において、糖酸は、ラクトビオン酸、グリセリン酸、キシロン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ノイラミン酸、ケトデオキシオクツロソン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、ガラクツロン酸、イズロン酸、酒石酸、粘液酸、またはサッカリン酸を含む。記載される組成物の他の局面において、1つまたは複数の塩基は、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムを含む。記載される組成物の他の局面において、抗酸化物質は、L-グルタチオン、アスコルビン酸、リポ酸、尿酸、aカロチン、α-トコフェロール、またはユビキノールを含む。記載される組成物の他の局面において、1つまたは複数のハロゲン化物塩は、塩化カリウム、塩化ナトリウム、または塩化マグネシウムを含む。記載される組成物の他の局面において、塩基性塩は、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、または酢酸ナトリウムを含む。記載される組成物の他の局面において、リン酸塩は、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、またはリン酸カリウムを含む。記載される組成物の他の局面において、1つまたは複数の糖類は、デキストロース、スクロースを含む。記載される組成物の他の局面において、糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール、エリトリトールまたはキシリトールを含む。記載される組成物の他の局面において、糖酸、塩基、ハロゲン化物塩、塩基性塩、抗酸化物質、リン酸塩、糖類、糖アルコールのうちの1つまたは複数は、US FDAによって一般に安全と認められている。
【0049】
記載される組成物の他の局面において、RPE細胞濃度は約100,000~約10,000,000細胞/mlである。記載される組成物の他の局面において、前記組成物中の細胞の数は約100,000~約500,000である。
【0050】
記載される組成物の他の局面において、細胞保存培地は、糖酸(例えば、ラクトビオン酸)、1つまたは複数の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、抗酸化物質(例えば、L-グルタチオン)、1つまたは複数のハロゲン化物塩(例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム)、塩基性塩(例えば、炭酸水素カリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、1つまたは複数の糖類(例えば、デキストロース、スクロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール)、および水のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0051】
記載される組成物の他の局面において、組成物は、ROCK阻害剤またはNAのうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0052】
さらなる局面において、凍結保存培地は、アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水を含む。
【0053】
いくつかの態様において、凍結保存培地は約2%のDMSOを含む。他の態様において、凍結保存培地は約5%のDMSOを含む。さらに他の態様において、凍結保存培地は約1%~約15%のDMSOを含む。
【0054】
さらなる態様において、凍結保存培地は、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。なおさらなる態様において、プリンヌクレオシド、分岐グルカン、緩衝剤、および極性非プロトン性溶媒のうちの1つまたは複数は、US FDAによって一般に安全と認められている。
【0055】
いくつかの態様において、凍結保存培地は、糖酸(例えば、ラクトビオン酸)、1つまたは複数の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、抗酸化物質(例えば、L-グルタチオン)、1つまたは複数のハロゲン化物塩(例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム)、塩基性塩(例えば、炭酸水素カリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、1つまたは複数の糖類(例えば、デキストロース、スクロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール)、および水のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0056】
他の態様において、糖酸、塩基、ハロゲン化物塩、塩基性塩、抗酸化物質、リン酸塩、糖類、糖アルコールのうちの1つまたは複数は、US FDAによって一般に安全と認められている。
【0057】
ある態様において、網膜変性疾患は、RPE機能不全、光受容体機能不全、リポフスチンの蓄積、ドルーゼンの形成、または炎症のうちの1つまたは複数であり得る。
【0058】
他の態様において、網膜変性疾患は、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、遺伝性または後天性の黄斑変性症、加齢黄斑変性症(AMD)、ベスト病、網膜剥離、脳回転状萎縮症、脈絡膜欠如、パターンジストロフィー、RPEジストロフィー、シュタルガルト病、光、レーザー、感染症、放射線、新生血管性または外傷性傷害のいずれか1つによって引き起こされたRPEおよび網膜損傷のうちの少なくとも1つより選択される。さらに他の態様において、AMDは地図状萎縮(GA)である。
【0059】
ある態様において、RPE欠損は、高齢、喫煙、不健康な体重、抗酸化物質の低摂取、または心臓血管疾患のうちの1つまたは複数に起因し得る。他の態様において、RPE欠損は先天性異常に起因し得る。
【0060】
他の態様において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法は以下を含む:アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水を含む組成物中にRPE細胞を懸濁する工程、凍結保存に適した温度で細胞懸濁液を保存する工程、ならびに凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、細胞の少なくとも約70%が解凍後に生存可能である、工程。
【0061】
他の態様において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法は以下を含む:細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む培地中にRPE細胞を懸濁する工程;細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、細胞の少なくとも約60%~約75%が解凍後に生存可能である、工程。
【0062】
他の態様において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法は以下を含む:糖酸(例えば、ラクトビオン酸)、1つまたは複数の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、抗酸化物質(例えば、L-グルタチオン)、1つまたは複数のハロゲン化物塩(例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム)、塩基性塩(例えば、炭酸水素カリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、1つまたは複数の糖類(例えば、デキストロース、スクロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール)、および水のうちの1つまたは複数を製剤へ添加すること。
【0063】
いくつかの態様において、細胞の少なくとも約40%~約100%が解凍後に生存可能であり;細胞の少なくとも約45%~約95%が解凍後に生存可能であり;細胞の少なくとも約62%~約70%が解凍後に生存可能である。
【0064】
いくつかの態様において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法は以下を含む:細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む培地中にRPE細胞を懸濁する工程;細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、解凍後に少なくとも約59%~約92%の細胞収率があった、工程。
【0065】
いくつかの態様において、解凍後に少なくとも約65%~約70%の細胞収率;解凍後に少なくとも約64%~約92%の細胞収率;解凍後に少なくとも約59%~約82%の細胞収率があった。
【0066】
いくつかの態様において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法は以下を含む:細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む培地中にRPE細胞を懸濁する工程;細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、解凍の約24時間後に少なくとも約76%~約112%の細胞活力が存在した、工程。
【0067】
いくつかの態様において、解凍の約24時間後に少なくとも約89%~約110%の細胞活力が存在した;解凍の約24時間後に少なくとも約76%~約112%の細胞活力が存在した。
【0068】
他の態様において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法は以下を含む:細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む培地中にRPE細胞を懸濁する工程;細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、解凍および培養の約14日後に少なくとも約4.2~約5.4倍の細胞増殖が存在した、工程。
【0069】
いくつかの態様において、解凍および培養の約14日後に少なくとも約4.2~約4.9倍の細胞増殖が存在した;解凍および培養の約14日後に少なくとも約4.5~約5.4倍の細胞増殖が存在した。いくつかの態様において、解凍および培養の約8~18日後に少なくとも約3~約7倍の細胞増殖が存在した。いくつかの態様において、解凍および培養の約8日後に少なくとも約3~約5倍の細胞増殖が存在した。
【0070】
いくつかの態様において、解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法は以下を含む:細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む培地中にRPE細胞を懸濁する工程;細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、細胞が、解凍後に、約100~約720のバリア機能を有した;約3.5~約9.4のPEDF上部対下部比率を有した;約1.2~約2.7のVEGF下部対上部比率を有した;約95~約100%の純度を有した;約150~約900の効力を有した、のうちの1つまたは複数を示した、工程。
【0071】
いくつかの態様において、細胞は、約107~約402 Ω;または約241~約715 Ωのバリア機能を有した。
【0072】
いくつかの態様において、細胞は、約5.1~約9.4;または約3.5~約9.4のPEDF上部対下部比率を有した。
【0073】
いくつかの態様において、細胞は、約1.2~約1.7;または約1.2~約1.9のVEGF下部対上部比率を有した。
【0074】
いくつかの態様において、その必要がある対象において視力を回復させる方法は、アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水、および網膜色素上皮細胞を含む組成物を対象へ投与する工程を含む。
【0075】
いくつかの態様において、その必要がある対象において視力を回復させる方法は、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地;ならびにRPE細胞を含む組成物を対象へ投与する工程を含む。いくつかの態様において、細胞保存培地は、糖酸(例えば、ラクトビオン酸)、1つまたは複数の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、抗酸化物質(例えば、L-グルタチオン)、1つまたは複数のハロゲン化物塩(例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム)、塩基性塩(例えば、炭酸水素カリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、1つまたは複数の糖類(例えば、デキストロース、スクロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール)、および水のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0076】
いくつかの態様において、細胞組成物は網膜下腔内に投与される。他の態様において、細胞組成物は注射される。いくつかの態様において、細胞組成物は経硝子体的に網膜下腔中へ投与されてもよい。
【0077】
いくつかの態様において、細胞組成物は単回用量処置として投与される。いくつかの態様において、単回用量処置は、いくつかの注射を含む単回投与を含む。いくつかの態様において、注射はいくつかの網膜下ブレブの投与を含む。
【0078】
いくつかの態様において、硝子体切除術無しでかつ網膜に穴を開ける必要性無しで、細胞組成物を網膜下腔へ投与する。いくつかの態様において、細胞組成物は脈絡膜上注射によって投与される。
【0079】
いくつかの態様において、RPE細胞は、脈絡毛細管板内皮および光受容体の構造的完全性を維持するのを助ける、様々な神経栄養因子、例えば、線維芽細胞増殖因子(bFGFおよびaFGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、色素上皮由来因子(PEDF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血管内皮増殖因子(VEGF)などを分泌する。RPE細胞はまた、眼の免疫特権特性の確立において重要な、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-βのような抗炎症性サイトカインを分泌する。本明細書に記載されるRTA治療用細胞組成物中に使用されるRPE細胞は、神経栄養因子を分泌することができる。
【0080】
いくつかの態様において、細胞組成物は、それが投与された後に炎症を引き起こさない。いくつかの態様において、軽度炎症は、炎症に関連する細胞の存在によって特徴付けられ得る。
【0081】
いくつかの態様において、組成物は、(a)アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水;ならびに(b)RPE細胞を含み、ここで、組成物は凍結温度で保存され得、かつ、組成物は解凍直後に対象へそのまま投与できる。
【0082】
他の態様において、治療用細胞組成物は、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地;ならびにRPE細胞を含み得る。
【0083】
いくつかの態様において、細胞保存培地は、糖酸(例えば、ラクトビオン酸)、1つまたは複数の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、抗酸化物質(例えば、L-グルタチオン)、1つまたは複数のハロゲン化物塩(例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム)、塩基性塩(例えば、炭酸水素カリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、1つまたは複数の糖類(例えば、デキストロース、スクロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール)、および水のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0084】
さらに他の態様において、細胞保存培地は、ROCK阻害剤およびNAのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0085】
いくつかの態様において、RPE細胞組成物は、アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水;ならびにRPE細胞を約2,000,000~約5,000,000細胞/mlの細胞濃度で含む。組成物は凍結温度で保存され得、かつ、組成物は解凍直後に対象へそのまま投与できる。このRPE細胞組成物において、細胞の数は約200,000~約500,000であり得る。さらに、対象へ投与される体積は約50μl~約100μlであり得る。
【0086】
本明細書に記載される技術のさらなる局面は、本明細書の以下の部分において明らかとなるであろう。本明細書において、詳細な説明は、技術の好ましい態様を完全に開示する目的のためであり、それを限定するものではない。
[本発明1001]
対象において、網膜変性疾患の進行を遅らせること、加齢黄斑変性症(AMD)の進行を遅らせること、網膜変性疾患を予防すること、AMDを予防すること、網膜色素上皮(RPE)を修復すること、RPEを増加させること、RPEを置換すること、またはRPE欠損を処置すること、のうちの1つまたは複数を含む方法であって、RPE細胞およびそのまま投与できる生体適合性凍結保存培地を含む組成物を対象へ投与する工程を含む、前記方法。
[本発明1002]
前記凍結保存培地が、アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記凍結保存培地が約2%のDMSOを含む、本発明1002の方法。
[本発明1004]
前記凍結保存培地が約5%のDMSOを含む、本発明1002の方法。
[本発明1005]
前記凍結保存培地が、約1%~約15%のDMSO、または約0.5%~約7%のDMSO、または約1.5%~約6.5%のDMSO、または約1.5%~約3%のDMSO、または約4%~約6%のDMSOを含む、本発明1002の方法。
[本発明1006]
前記凍結保存培地が、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む、本発明1001の方法。
[本発明1007]
網膜変性疾患が、RPE機能不全、光受容体機能不全、リポフスチンの蓄積、ドルーゼンの形成、または炎症のうちの1つまたは複数を含む、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
網膜変性疾患が、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、遺伝性または後天性の黄斑変性症、加齢黄斑変性症(AMD)、ベスト病、網膜剥離、脳回転状萎縮症、脈絡膜欠如、パターンジストロフィー、RPEジストロフィー、シュタルガルト病、光、レーザー、感染症、放射線、新生血管性または外傷性傷害のいずれか1つによって引き起こされたRPEおよび網膜損傷のうちの少なくとも1つより選択される、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1009]
AMDが地図状萎縮(GA)を含む、本発明1008の方法。
[本発明1010]
RPE欠損が、高齢、喫煙、不健康な体重、抗酸化物質の低摂取、または心臓血管疾患のうちの1つまたは複数に起因する、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1011]
RPE欠損が先天性異常に起因する、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1012]
その必要がある対象において視力を回復させる方法であって、アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水、および網膜色素上皮(RPE)細胞を含む組成物を対象へ投与する工程を含む、前記方法。
[本発明1013]
その必要がある対象において視力を回復させる方法であって、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地;ならびにRPE細胞を含む組成物を対象へ投与する工程を含む、前記方法。
[本発明1014]
解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法であって、
(a)細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地中にRPE細胞を懸濁する工程;
(b)細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに
(c)凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、細胞の少なくとも約60%~約92%が解凍後に生存可能である、工程
を含む、前記方法。
[本発明1015]
解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法であって、
(a)細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地中にRPE細胞を懸濁する工程;
(b)細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに
(c)凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、解凍後に少なくとも約50%~約120%の細胞収率がある、工程
を含む、前記方法。
[本発明1016]
解凍後に少なくとも約65%~約70%の細胞収率;解凍後に少なくとも約64%~約97%の細胞収率;解凍後に少なくとも約59%~約82%の細胞収率があった、本発明1015の方法。
[本発明1017]
解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法であって、
(a)細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地中にRPE細胞を懸濁する工程;
(b)細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに
(c)凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、解凍の約24時間後に少なくとも約30%~約112%の細胞活力が存在した、工程
を含む、前記方法。
[本発明1018]
解凍の約24時間後に少なくとも約89%~約110%の細胞活力が存在した;解凍の約24時間後に少なくとも約76%~約112%の細胞活力が存在した、本発明1017の方法。
[本発明1019]
解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法であって、
(a)細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地中にRPE細胞を懸濁する工程;
(b)細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに
(c)凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、解凍および培養の約8~18日後に少なくとも約3~約7倍の細胞増殖が存在した、工程
を含む、前記方法。
[本発明1020]
解凍および培養の約14日後に少なくとも約4.2~約5.4倍の細胞増殖が存在した、本発明1019の方法。
[本発明1021]
解凍および培養の約14日後に少なくとも約4.2~約4.9倍の細胞増殖が存在した;解凍および培養の約14日後に少なくとも約4.5~約5.4倍の細胞増殖が存在した、本発明1019の方法。
[本発明1022]
解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法であって、
(a)細胞懸濁液を形成するために、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地中にRPE細胞を懸濁する工程;
(b)細胞懸濁液を凍結保存温度で保存する工程;ならびに
(c)凍結保存された細胞懸濁液を解凍する工程であって、細胞が、解凍後に、約100 Ω~約1300 Ωのバリア機能TEER;約3.5~約9.4のPEDF上部対下部比率;約1.2~約5のVEGF下部対上部比率;または約95%~約100%の純度のうちの1つまたは複数を示した、工程
を含む、前記方法。
[本発明1023]
前記細胞が、約107~約402 Ω;または約241~約715 Ωのバリア機能を有した、本発明1022の方法。
[本発明1024]
前記細胞が、約5.1~約9.4;または約3.5~約9.4のPEDF上部対下部比率を有した、本発明1022の方法。
[本発明1025]
前記細胞が、約1.2~約1.7;または約1.2~約1.9のVEGF下部対上部比率を有した、本発明1022の方法。
[本発明1026]
前記プリンヌクレオシド、分岐グルカン、緩衝剤、および極性非プロトン性溶媒のうちの1つまたは複数が、US FDAによって一般に安全と認められている、本発明1002または1013~1022のいずれかの方法。
[本発明1027]
前記細胞保存が、糖酸(例えば、ラクトビオン酸)、1つまたは複数の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、抗酸化物質(例えば、L-グルタチオン)、1つまたは複数のハロゲン化物塩(例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム)、塩基性塩(例えば、炭酸水素カリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、1つまたは複数の糖類(例えば、デキストロース、スクロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール)、および水のうちの1つまたは複数をさらに含む、本発明1002または1013~1022のいずれかの方法。
[本発明1028]
糖酸が、ラクトビオン酸、グリセリン酸、キシロン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ノイラミン酸、ケトデオキシオクツロソン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、ガラクツロン酸、イズロン酸、酒石酸、粘液酸、またはサッカリン酸を含む、本発明1027の方法。
[本発明1029]
1つまたは複数の塩基が、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムを含む、本発明1027の方法。
[本発明1030]
抗酸化物質が、L-グルタチオン、アスコルビン酸、リポ酸、尿酸、aカロチン、α-トコフェロール、またはユビキノールを含む、本発明1027の方法。
[本発明1031]
1つまたは複数のハロゲン化物塩が、塩化カリウム、塩化ナトリウム、または塩化マグネシウムを含む、本発明1027の方法。
[本発明1032]
塩基性塩が、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、または酢酸ナトリウムを含む、本発明1027の方法。
[本発明1033]
リン酸塩が、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、またはリン酸カリウムを含む、本発明1027の方法。
[本発明1034]
1つまたは複数の糖類が、デキストロース、スクロースを含む、本発明1027の方法。
[本発明1035]
糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール、エリトリトールまたはキシリトールを含む、本発明1027の方法。
[本発明1036]
糖酸、塩基、ハロゲン化物塩、塩基性塩、抗酸化物質、リン酸塩、糖類、糖アルコールのうちの1つまたは複数が、US FDAによって一般に安全と認められている、本発明1027の方法。
[本発明1037]
RPE組成物が網膜下投与される、本発明1001~1006、1012~1022のいずれかの方法。
[本発明1038]
RPE組成物が、送達デバイスを使用して投与される、本発明1001~1006、1012~1022のいずれかの方法。
[本発明1039]
送達デバイスが、注射針、キャピラリーおよびチップを含む、本発明1001~1006、1012~1022のいずれかの方法。
[本発明1040]
送達デバイスが、約0.63 mmの外径および約0.53 mmの内径を有する注射針、約0.5 mmの外径および約0.25 mmの内径を有するキャピラリー、ならびに約0.12 mmの外径および約0.07 mmの内径を有するチップを含む、本発明1039の方法。
[本発明1041]
送達後のパーセント生存能が約85%~約99%であり、送達後のパーセントリカバリーが約65%~約99%であり、送達後のバリア機能TEERが約100~約600 Ωであり、PEDF頂端/基底比率が約2~約7であり、かつ、送達後のVEGF基底/頂端比率が約1.5~約3である、本発明1038の方法。
[本発明1042]
前記組成物が網膜下腔内に投与される、本発明1001~1006、1012~1022のいずれかの方法。
[本発明1043]
前記組成物が注射される、本発明1001~1006、1012~1022のいずれかの方法。
[本発明1044]
前記組成物が単回用量処置として投与される、本発明1001~1006、1012~1022のいずれかの方法。
[本発明1045]
前記組成物が、それが投与された後に炎症を引き起こさない、本発明1001~1006、1012~1022のいずれかの方法。
[本発明1046]
炎症が、炎症に関連する細胞の存在によって特徴付けられる、本発明1045の方法。
[本発明1047]
硝子体切除術無しでかつ網膜に穴を開ける必要性無しで、前記細胞組成物が投与される、本発明1001~1006、1012~1022のいずれかの方法。
[本発明1048]
前記細胞組成物が脈絡膜上注射によって投与される、本発明1001~1006、1012~1022のいずれかの方法。
[本発明1049]
前記細胞が、神経栄養因子:線維芽細胞増殖因子(bFGFおよびaFGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、色素上皮由来因子(PEDF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ならびに血管内皮増殖因子(VEGF)のうちの1つまたは複数を分泌する、本発明1001~1006、1012~1022のいずれかの方法。
[本発明1050]
前記細胞が1つまたは複数の抗炎症性サイトカインを分泌する、本発明1001~1006、1012~1022のいずれかの方法。
[本発明1051]
解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法であって、
(a)アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水を含む培地組成物中にRPE細胞を懸濁する工程;
(b)凍結保存に適した温度で細胞懸濁液を保存する工程;ならびに
(c)凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、細胞の少なくとも約60%~約95%が解凍後に生存可能である、工程
を含む、前記方法。
[本発明1052]
前記細胞の少なくとも約40%~約100%が解凍後に生存可能であり;前記細胞の少なくとも約45%~約95%が解凍後に生存可能であり;前記細胞の少なくとも約62%~約70%が解凍後に生存可能である、本発明1014または1051の方法。
[本発明1053]
解凍直後に対象へ投与するためのヒト網膜色素上皮(RPE)細胞を製剤化する方法であって、
(a)RPE細胞を含む細胞の集団へ幹細胞を分化させる工程;
(b)RPE細胞を酵素的に採取する工程;
(c)中和剤で酵素を中和する工程であって、中和剤がヒト血清を含まない、工程;
(d)アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水を含む培地組成物中にRPE細胞を懸濁する工程;
(e)凍結保存に適した温度で細胞懸濁液を保存する工程;ならびに
(f)凍結保存された懸濁液を解凍する工程であって、細胞の少なくとも約70%が解凍後に生存可能である、工程
を含む、前記方法。
[本発明1054]
RPE細胞が約1~約8時間中和剤中に保存され、生存能が約10%を超えて低下しない、本発明1053の方法。
[本発明1055]
RPE細胞が、凍結保存前に約3時間培地組成物中に懸濁され、1時間未満培地中に懸濁されたRPE細胞と比較して、解凍後のパーセント生存能が約10%を超えて低下せず、解凍後のパーセント収率が20%を超えて低下せず、かつ、解凍後活力が10%を超えて低下しない、本発明1014、1015、1017、1019、1022、1051、または1053のいずれかの方法。
[本発明1056]
RPE細胞が、凍結保存前に約3時間培地組成物中に懸濁され、1時間未満培地中に懸濁されたRPE細胞と比較して、解凍後バリア機能が低下せず、解凍後PEDF上部対下部比率が10%を超えて低下せず、かつ、解凍後VEGF下部対上部比率が低下しない、本発明1014、1015、1017、1019、1022、1051、または1053のいずれかの方法。
[本発明1057]
RPE細胞が、凍結保存前に約2~3時間培地組成物中に懸濁され、解凍後のパーセント生存能が約50~約75であり、解凍後のパーセント収率が約50~約95であり、解凍後の活力が約80~約120であり、解凍後のバリア機能が約100~約750 Ωであり、解凍後のPEDF上部対下部比率が約3~約7であり、かつ、解凍後のVEGF下部対上部比率が約1~3である、本発明1014、1015、1017、1019、1022、1051、または1053のいずれかの方法。
[本発明1058]
工程(c)後にRPE細胞を連続的に濾過する工程であって、パーセント生存能が少なくとも98%である、工程
をさらに含む、本発明1053の方法。
[本発明1059]
工程(c)後にRPE細胞を連続的に濾過し、RPE細胞を培地組成物中で約2~4時間インキュベートする工程であって、パーセントリカバリーが約80%~約95%である、工程
をさらに含む、本発明1053の方法。
[本発明1060]
工程(c)後にRPE細胞を連続的に濾過し、RPE細胞を中和溶液中で約2~約4時間インキュベートし、RPE細胞を培地組成物中で約2~4時間インキュベートする工程であって、パーセント生存能が約80%~約99%であり、かつ、パーセントリカバリーが約70%~約95%である、工程
をさらに含む、本発明1053の方法。
[本発明1061]
工程(c)後にRPE細胞を連続的に濾過し、RPE細胞を中和溶液中で約2~約4時間インキュベートし、RPE細胞を培地組成物中で約2~4時間インキュベートする工程であって、解凍後のパーセント生存能が約80%~約99%であり、解凍後のパーセントリカバリーが約70%~約95%であり、かつ、PEDF分泌が約2,000 ng/ml/日~約3,000 ng/ml/日である、工程
をさらに含む、本発明1053の方法。
[本発明1062]
RPE細胞を培地組成物中で室温にて約2~6時間インキュベートする工程であって、パーセント生存能が約80%~約99%であり、かつ、パーセントリカバリーが約80%~約120%である、工程
をさらに含む、本発明1053の方法。
[本発明1063]
(a)アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水;ならびに
(b)RPE細胞
を含む組成物であって、凍結温度で保存され得、かつ解凍直後に対象へそのまま投与できる、前記組成物。
[本発明1064]
(a)プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン-40)、双性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)))、および細胞が耐えられる極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む細胞保存培地;ならびに
(b)RPE細胞
を含む、治療用細胞組成物。
[本発明1065]
前記プリンヌクレオシド、分岐グルカン、緩衝剤、および極性非プロトン性溶媒のうちの1つまたは複数が、US FDAによって一般に安全と認められている、本発明1064の治療用細胞組成物。
[本発明1066]
糖酸(例えば、ラクトビオン酸)、1つまたは複数の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、抗酸化物質(例えば、L-グルタチオン)、1つまたは複数のハロゲン化物塩(例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム)、塩基性塩(例えば、炭酸水素カリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、1つまたは複数の糖類(例えば、デキストロース、スクロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール)、および水のうちの1つまたは複数をさらに含む、本発明1064の治療用細胞組成物。
[本発明1067]
糖酸が、ラクトビオン酸、グリセリン酸、キシロン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ノイラミン酸、ケトデオキシオクツロソン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、ガラクツロン酸、イズロン酸、酒石酸、粘液酸、またはサッカリン酸を含む、本発明1066の治療用細胞組成物。
[本発明1068]
1つまたは複数の塩基が、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムを含む、本発明1066の治療用細胞組成物。
[本発明1069]
抗酸化物質が、L-グルタチオン、アスコルビン酸、リポ酸、尿酸、aカロチン、α-トコフェロール、またはユビキノールを含む、本発明1066の治療用細胞組成物。
[本発明1070]
1つまたは複数のハロゲン化物塩が、塩化カリウム、塩化ナトリウム、または塩化マグネシウムを含む、本発明1066の治療用細胞組成物。
[本発明1071]
塩基性塩が、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、または酢酸ナトリウムを含む、本発明1066の治療用細胞組成物。
[本発明1072]
リン酸塩が、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、またはリン酸カリウムを含む、本発明1066の治療用細胞組成物。
[本発明1073]
1つまたは複数の糖類が、デキストロース、スクロースを含む、本発明1066の治療用細胞組成物。
[本発明1074]
糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール、エリトリトールまたはキシリトールを含む、本発明1066の治療用細胞組成物。
[本発明1075]
糖酸、塩基、ハロゲン化物塩、塩基性塩、抗酸化物質、リン酸塩、糖類、糖アルコールのうちの1つまたは複数が、US FDAによって一般に安全と認められている、本発明1066の治療用細胞組成物。
[本発明1076]
RPE細胞濃度が約100,000~約10,000,000細胞/mlである、本発明1063または1064の組成物。
[本発明1077]
前記組成物中の細胞の数が約100,000~約500,000である、本発明1063または1064の組成物。
[本発明1078]
前記細胞保存培地が、糖酸(例えば、ラクトビオン酸)、1つまたは複数の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、抗酸化物質(例えば、L-グルタチオン)、1つまたは複数のハロゲン化物塩(例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム)、塩基性塩(例えば、炭酸水素カリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、1つまたは複数の糖類(例えば、デキストロース、スクロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール)、および水のうちの1つまたは複数をさらに含む、本発明1064の治療用細胞組成物。
[本発明1079]
ROCK阻害剤またはNAのうちの1つまたは複数をさらに含む、本発明1064の治療用細胞組成物。
【0087】
図面のいくつかの観点の簡単な説明
本明細書に記載される技術は、例示を目的とするに過ぎない、下記の図面への参照によりより完全に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図1】解凍後の網膜色素上皮(RPE)細胞の生存能および活力を示すグラフである。細胞を、解凍前に、5%のDMSOを含む凍結保存培地(CS5)中に凍結保存した。
【
図2】病理を示さないナイーブ動物(未処置動物)の眼の組織画像である(x4拡大視野でのH&E染色)。
【
図3】病理変化を示さない対照群における動物の右眼(未処置/対照眼)の組織画像である。(x4拡大視野でのH&E染色)。
【
図4】
図4Aは、強膜の軽度浸潤を伴う軽度炎症を示す、BSS Plusで処置されそして研究の1日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x4拡大視野でのH&E染色)。
図4Bは、軽度炎症ならびに僅かなルーズマクロファージおよびリンパ球を示す、BSS Plusで処置されそして研究の1日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x20拡大視野でのH&E染色)。
【
図5】
図5Aは、中程度炎症および強膜の浸潤を示す、CS5で処置されそして研究の1日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x4拡大視野でのH&E染色)。
図5Bは、いくつかのマクロファージおよび僅かな好中球を伴う中程度炎症を示す、CS5で処置されそして研究の1日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x20拡大視野でのH&E染色)。
【
図6】
図6Aは、角膜中のマクロファージおよび好中球を伴う中程度炎症を示す、CS2で処置されそして研究の1日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x4拡大視野でのH&E染色)。
図6Bは、マクロファージおよび好中球を伴う中程度炎症を示す、CS2で処置されそして研究の1日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x20拡大視野でのH&E染色)。
【
図7】
図7Aは、強膜の中程度浸潤を伴う強度炎症を示す、BSS PLUS:CS2で処置されそして研究の1日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x4拡大視野でのH&E染色)。
図7Bは、強膜中のリンパ球に隣接して右下隅に示される線維素を伴う強度炎症を示す、BSS PLUS:CS2で処置されそして研究の1日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x20拡大視野でのH&E染色)。
【
図8】
図8Aは、強膜の中程度浸潤を伴う中程度炎症を示す、BSS PLUSで処置されそして研究の3日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x4拡大視野でのH&E染色)。
図8Bは、いくつかのマクロファージを伴う中程度炎症を示す、BSS PLUSで処置されそして研究の3日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x20拡大視野でのH&E染色)。
【
図9】
図9Aは、巣状肉芽化反応を伴う強度炎症を示す、CS5で処置されそして研究の3日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x4拡大視野でのH&E染色)。
図9Bは、初期段階の一時的な異物反応を示す、いくつかのマクロファージおよび線維芽細胞を伴う強度炎症を示す、CS5で処置されそして研究の3日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x20拡大視野でのH&E染色)。
【
図10】
図10Aは、巣状肉芽化反応を伴う強度炎症を示す、CS2で処置されそして研究の3日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x4拡大視野でのH&E染色)。
図10Bは、初期段階の一時的な異物反応を示す、いくつかのマクロファージおよび線維芽細胞を伴う強度炎症を示す、CS2で処置されそして研究の3日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x20拡大視野でのH&E染色)。
【
図11】
図11Aは、軽度浮腫を伴う軽度炎症を示す、BSS PLUS:CS2で処置されそして研究の3日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x4拡大視野でのH&E染色)。
図11Bは、軽度炎症および僅かなマクロファージを示す、BSS PLUS:CS2で処置されそして研究の3日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x20拡大視野でのH&E染色)。
【
図12】
図12Aは、僅かなマクロファージを伴う軽度炎症を示す、BSS PLUSで処置されそして研究の10日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x4拡大視野でのH&E染色)。
図12Bは、僅かなマクロファージを伴う軽度炎症を示す、BSS PLUSで処置されそして研究の10日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x20拡大視野でのH&E染色)。
【
図13】
図13Aは、僅かなマクロファージを伴う軽度炎症を示す、CS5で処置されそして研究の10日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x4拡大視野でのH&E染色)。
図13Bは、僅かなマクロファージを伴う軽度炎症を示す、CS5で処置されそして研究の10日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x20拡大視野でのH&E染色)。
【
図14】
図14Aは、僅かなマクロファージを伴う軽度炎症を示す、CS2で処置されそして研究の10日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x4拡大視野でのH&E染色)。
図14Bは、僅かなマクロファージを伴う軽度炎症を示す、CS2で処置されそして研究の10日目に屠殺された動物から採取された左眼(処置眼)の組織画像である。(x20拡大視野でのH&E染色)。
【
図16】対照群G1と比較しての濾過後の経時的な4℃での群2(G2)(NUTS(-)+HSA)および群3(G3)(NUTS(-))の生存能のグラフである。濾過された細胞組成物を3つの時点:濾過後0時間、2時間後および4時間後でサンプリングおよびカウントした(n=3)。
【
図17】
図17Aは、凍結保存前の細胞生存能に対する、濾過後の治療用細胞組成物の0時間のインキュベーションとそれに続く凍結保存培地中での治療用細胞組成物の0、2、3、および4時間のインキュベーションの影響を示すグラフである。
図17Bは、凍結保存前の細胞リカバリーに対する、濾過後の治療用細胞組成物の0時間のインキュベーションとそれに続く凍結保存培地中での治療用細胞組成物の0、2、3、および4時間のインキュベーションの影響を示すグラフである。
【
図18】
図18Aは、凍結保存前の、細胞生存能に対する、濾過後の治療用細胞組成物の2時間のインキュベーションとそれに続く凍結保存培地中での治療用細胞組成物の0、2、3、および4時間のインキュベーションの影響を示すグラフである。
図18Bは、凍結保存前の、細胞リカバリーに対する、濾過後の治療用細胞組成物の2時間のインキュベーションとそれに続く凍結保存培地中での治療用細胞組成物の0、2、3、および4時間のインキュベーションの影響を示すグラフである。
【
図19】
図19Aは、凍結保存前の、細胞生存能に対する、濾過後の治療用細胞組成物の4時間のインキュベーションとそれに続く凍結保存培地中での治療用細胞組成物の0、2、3、および4時間のインキュベーションの影響を示すグラフである。
図19Bは、凍結保存前の、細胞リカバリーに対する、濾過後の治療用細胞組成物の4時間のインキュベーションとそれに続く凍結保存培地中での治療用細胞組成物の0、2、3、および4時間のインキュベーションの影響を示すグラフである。
【
図20】
図20Aは、解凍後の細胞生存能に対する、0、2、3、および4にわたる凍結培地中での細胞組成物の長期の凍結保存前インキュベーションの影響を示すグラフである。
図20Bは、解凍後の細胞リカバリーに対する、0、2、3、および4にわたる凍結培地中での細胞組成物の長期の凍結保存前インキュベーションの影響を示すグラフである。
【
図21】
図21Aは、凍結保存前に酵素中和溶液中でインキュベートされ、続いて凍結保存前に凍結培地中でインキュベートされた治療用細胞組成物の効果を示すグラフである。細胞を次いで凍結保存し、解凍し、解凍後生存能について分析した。
図21Bは、凍結保存前に酵素中和溶液中でインキュベートされ、続いて凍結保存前に凍結培地中でインキュベートされた治療用細胞組成物の効果を示すグラフである。細胞を次いで凍結保存し、解凍し、解凍後リカバリーについて分析した。
【
図22】濾過後ならびに約2~8℃およびRTでの2時間のインキュベーション後の治療用細胞のパーセントリカバリーを示すグラフである。
【
図23】
図23Aは、異なるインキュベーション条件下での凍結培地を含む治療用細胞組成物の生存能を示すグラフである。
図23Bは、異なるインキュベーション条件下での凍結培地を含む治療用細胞組成物の生存能を示すグラフである。
【
図24】
図24Aは、4時間の期間にわたって室温で維持された解凍されたRTA細胞組成物の生存能を示すグラフである。細胞を0、2、4時間の時点で試験した。
図24Bは、4時間の期間にわたって室温で維持された解凍されたRTA細胞組成物のリカバリーを示すグラフである。細胞を0、2、4時間の時点で試験した。
【
図25】
図25Aは、軽度炎症ならびに僅かなルーズマクロファージおよびリンパ球を示す、RTA(細胞+ CS5)で処置されそして研究の14日目に屠殺された動物から採取された処置眼の組織画像である。(x4拡大視野でのH&E染色)。
図25Bは、軽度炎症ならびに僅かなルーズマクロファージおよびリンパ球を示す、RTA(細胞+ CS5)で処置されそして研究の14日目に屠殺された動物から採取された処置眼の組織画像である。(x20拡大視野でのH&E染色)。
【発明を実施するための形態】
【0089】
詳細な説明
本明細書に記載される組成物は、対象の眼中への注射または移植前に洗浄または再構成のような調製手順を必要としない治療的使用に適している、そのまま投与できる(RTA)網膜色素上皮(RPE)細胞組成物として使用され得る。いくつかの態様において、細胞療法組成物は、無毒性凍結溶液中に保存され、臨床現場へ出荷され、解凍され、そして医療従事者によって対象の眼へ容易に投与される。投与前の調製手順、特に、GLP/GMP条件下で行われなければならない調製手順を排除することによって、製品安全性および品質を維持しながら、RPE細胞療法への幅広いアクセスを利用可能とすることができる。
【0090】
文脈が許すとき互換可能に使用され得る「網膜色素上皮細胞」、「RPE細胞」、「RPE」とは、網膜の色素上皮細胞層を形成する天然のRPE細胞の細胞型に、例えば、機能的に、後成的に、または発現プロフィールによって類似する(例えば、眼の中に移植、投与または送達されると、天然のRPE細胞の機能的活性に類似する機能的活性を示す)細胞型の細胞をいう。
【0091】
いくつかの態様によれば、RPE細胞は、成熟RPE細胞の少なくとも1個、2個、3個、4個または5個のマーカーを発現する。いくつかの態様によれば、RPE細胞は、成熟RPE細胞の少なくとも2個~少なくとも10個または少なくとも2個~少なくとも30個のマーカーを発現する。そのようなマーカーは、CRALBP、RPE65、PEDF、PMEL17、ベストロフィン1およびチロシナーゼを含むが、これらに限定されない。任意で、RPE細胞はまた、RPE前駆細胞のマーカー(例えば、MITF)を発現し得る。別の態様において、RPE細胞はPAX-6を発現する。他の態様において、RPE細胞は、Rx、OTX2またはSIX3を含むが、これらに限定されない、網膜前駆細胞の少なくとも1つのマーカーを発現する。任意で、RPE細胞はSIX6および/またはLHX2のいずれかを発現し得る。
【0092】
本明細書の中で使用される場合、語句「成熟RPE細胞のマーカー」とは、非RPE細胞または未熟なRPE細胞と比べて成熟RPE細胞中で(例えば、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍)増加する抗原(例えば、タンパク質)をいう。
【0093】
本明細書の中で使用される場合、語句「RPE前駆細胞のマーカー」とは、非RPE細胞と比べてRPE前駆細胞中で(例えば、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍)増加する抗原(例えば、タンパク質)をいう。
【0094】
他の態様によれば、RPE細胞は、網膜の色素上皮細胞層を形成する天然のRPE細胞の形態に類似する形態を有する。例えば、細胞は、色素を有し得、特徴的な多角形形状を有し得る。
【0095】
さらに他の態様によれば、RPE細胞は、黄斑変性症のような疾患を処置することができる。
【0096】
追加の態様によれば、RPE細胞は、本明細書中で先に挙げた要件の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはすべてを満たす。
【0097】
本明細書の中で使用される場合、語句「幹細胞」とは、培養中、特定の特別な機能を有する他の細胞型(例えば、完全に分化した細胞)へと分化するよう誘発されるまで長期間、未分化状態にとどまることができる細胞(例えば、多能性幹細胞または多分化能幹細胞)をいう。好ましくは、語句「幹細胞」は、胚性幹細胞(ESC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、成人幹細胞、間葉系幹細胞および造血幹細胞を包含する。
【0098】
いくつかの態様によれば、RPE細胞は多能性幹細胞(例えば、ESCまたはiPSC)から産生される。
【0099】
人工多能性幹細胞(iPSC)は、体細胞から、体細胞の遺伝子操作によって、例えば体細胞、例えば線維芽細胞、肝細胞、胃上皮細胞への転写因子、例えばOct-3/4、Sox2、c-MycおよびKLF4のレトロウイルス導入によって産生することができる[Yamanaka S, Cell Stem Cell. 2007, 1(1):39-49;Aoi T, et al., Generation of Pluripotent Stem Cells from Adult Mouse Liver and Stomach Cells. Science. 2008 Feb 14.(電子版が書籍よりも先);IH Park, Zhao R, West JA, et al. Reprogramming of human somatic cells to pluripotency with defined factors. Nature 2008;451:141-146;K Takahashi, Tanabe K, Ohnuki M, et al. Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors. Cell 2007;131:861-872]。他の胚様幹細胞は、レシピエント細胞が有糸分裂を阻止されるならば、卵母細胞への核移植、胚性幹細胞との融合または接合子中への核移植によって産生することができる。加えて、iPSCは、非統合法を使用して、例えば小分子またはRNAを使用して産生することができる。
【0100】
語句「胚性幹細胞」とは、3つの胚性胚葉(即ち、内胚葉、外胚葉、中胚葉)すべての細胞へと分化することもできるし、または未分化状態にとどまることもできる胚細胞をいう。語句「胚性幹細胞」は、妊娠後に形成する胚組織から得られる細胞(例えば胚盤胞)、胚の着床前に形成する胚組織から得られる細胞(即ち着床前胚盤胞)、着床後/原腸形成前段階の胚盤胞から得られる拡張胚盤胞(EBC)(WO2006/040763を参照)および妊娠中のいずれかの時点、好ましくは妊娠10週よりも前に胎児の生殖器組織から得られる胚性生殖(EG)細胞を含み得る。本開示のいくつかの態様の胚性幹細胞は、周知の細胞培養法を使用して得ることができる。例えば、ヒト胚性幹細胞はヒト胚盤胞から単離することができる。
【0101】
ヒト胚盤胞は一般に、ヒトのインビボ着床前胚または体外受精(IVF)胚から得られる。または、単一細胞ヒト胚を胚盤胞段階まで拡張することもできる。ヒトES細胞の単離の場合、胚盤胞から透明帯を取り出したのち、栄養外胚葉細胞を溶解し、穏やかなピペット操作によって無傷の内部細胞塊(ICM)から取り出す手法によってICMを単離する。次いで、ICMを、その増殖を可能にする適切な培地を含む組織培養フラスコ中にプレーティングする。9~15日後、ICM誘導増殖物を機械的解離または酵素的分解のいずれかによって凝集塊へと解離し、次いで、細胞を新しい組織培養培地上に再びプレーティングする。未分化形態を示すコロニーをマイクロピペットによって個々に選択し、凝集塊へと機械的に解離し、再びプレーティングする。次いで、得られるES細胞を規定どおり4~7日ごとに分割する。ヒトES細胞の調製方法に関するさらなる詳細に関しては、Reubinoff et al. Nat Biotechnol 2000, May: 18(5): 559;Thomson et al., [米国特許第5,843,780号;Science 282: 1145, 1998;Curr. Top. Dev. Biol. 38: 133, 1998;Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 7844, 1995];Bongso et al., [Hum Reprod 4: 706, 1989];およびGardner et al., [Fertil. Steril. 69: 84, 1998]を参照すること。
【0102】
本開示のいくつかの態様に従って市販の幹細胞を使用することもできることが理解されよう。ヒトES細胞は、NIHヒト胚性幹細胞レジストリwww.grants.nih.govstem_cellsから/または他のhESCレジストリから購入することができる。市販の胚性幹細胞株の非限定的な例は、HAD-C 102、ESI、BGO 1、BG02、BG03、BG04、CY12、CY30、CY92、CYIO、TE03、TE32、CHB-4、CHB-5、CHB-6、CHB-8、CHB-9、CHB-10、CHB-11、CHB-12、HUES 1、HUES 2、HUES 3、HUES 4、HUES 5、HUES 6、HUES 7、HUES 8、HUES 9、HUES 10、HUES 11、HUES 12、HUES 13、HUES 14、HUES 15、HUES 16、HUES 17、HUES 18、HUES 19、HUES 20、HUES 21、HUES 22、HUES 23、HUES 24、HUES 25、HUES 26、HUES 27、HUES 28、CyT49、RUES3、WAO 1、UCSF4、NYUES I、NYUES2、NYUES3、NYUES4、NYUES5、NYUES6、NYUES7、UCLA 1、UCLA 2、UCLA 3、WA077 (H7)、WA09 (H9)、WA 13 (H13)、WA14 (H14)、HUES 62、HUES 63、HUES 64、CT 1、CT2、CT3、CT4、MA135、Eneavour-2、WIBR 1、WIBR2、WIBR3、WIBR4、WIBR5、WIBR6、HUES 45、Shef 3、Shef 6、BJNhem19、BJNhem20、SAOO 1、SAOO1である。
【0103】
いくつかの態様によれば、胚性幹細胞株はHAD-C102またはESIである。
【0104】
加えて、ES細胞は、マウス(Mills and Bradley, 2001)、ゴールデンハムスター[Doetschman et al., 1988, Dev Biol. 127: 224-7]、ラット[Iannaccone et al., 1994, Dev Biol. 163: 288-92]、ウサギ[Giles et al. 1993, Mol Reprod Dev. 36: 130-8;Graves & Moreadith, 1993, Mol Reprod Dev. 1993, 36: 424-33]、いくつかの家畜種[Notarianni et al., 1991, J Reprod Fertil Suppl. 43: 255-60;Wheeler 1994, Reprod Fertil Dev. 6: 563-8;Mitalipova et al., 2001, Cloning. 3: 59-67]および非ヒト霊長類種(アカゲザルおよびマーモセット)[Thomson et al., 1995, Proc Natl Acad Sci U S A. 92: 7844-8;Thomson et al., 1996, Biol Reprod. 55: 254-9]を含む他の種からも得ることができる。
【0105】
拡張胚盤胞細胞(EBC)は、受精後少なくとも9日の、原腸形成よりも前の段階の胚盤胞から得ることができる。胚盤胞を培養する前に、透明帯を消化して[例えば酸性タイロード液(Sigma Aldrich, St Louis, MO, USA)によって]、内部細胞塊を露出させる。次いで、標準的な胚性幹細胞培養法を使用して、胚盤胞を胚全体として受精後少なくとも9日間(かつ好ましくは14日以内で)(即ち原腸形成イベントよりも前に)インビトロ培養する。
【0106】
ES細胞を調製するための別の方法がChung et al., Cell Stem Cell, Volume 2, Issue 2, 113-117, 7 February 2008に記載されている。この方法は、インビトロ受精工程中に胚から単一細胞を取り出す工程を含む。胚はこの工程中に破壊されない。
【0107】
EG(胚性生殖)細胞は、妊娠約8~11週(ヒト胎児の場合)の胎児から得られる始原生殖細胞から当業者に公知の実験室技術を使用して調製され得る。生殖隆起を分離し、小さな塊へと切り分け、その後、その塊を機械的解離によって細胞へと分ける。次いで、EG細胞を、適切な培地を含む組織培養フラスコ中で増殖させる。細胞は、一般には7~30日後または1~4回の継代後にEG細胞と合致する細胞形態が認められるまで、培地を毎日交換しながら培養する。ヒトEG細胞を調製する方法に関するさらなる詳細に関しては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入られる、Shamblott et al., [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 13726, 1998]および米国特許第6,090,622号を参照すること。
【0108】
ES細胞を調製するさらに別の方法は、単為生殖による方法である。この工程においても、胚は破壊されない。
【0109】
ES培養法は、幹細胞増殖に必要な因子を分泌すると同時にそれらの分化を阻害するフィーダー細胞層の使用を含み得る。培養は一般に、固体表面、例えばゼラチンまたはビメンチンでコートされた表面上で行われる。例示的なフィーダー層は、ヒト胚線維芽細胞、成人ファロピウス管上皮細胞、初代マウス胚線維芽細胞(PMEF)、マウス胚線維芽細胞(MEF)、マウス胎児線維芽細胞(MFF)、ヒト胚線維芽細胞(HEF)、ヒト胚性幹細胞の分化から得られるヒト線維芽細胞、ヒト胎児筋細胞(HFM)、ヒト胎児皮膚細胞(HFS)、ヒト成人皮膚細胞、ヒト包皮線維芽細胞(HFF)、ヒト臍帯線維芽細胞、臍帯または胎盤から得られるヒト細胞、ならびにヒト骨髄間質細胞(hMSC)を含む。ESCを未分化状態に維持するための増殖因子を培地に加えてもよい。そのような増殖因子はbFGFおよび/またはTGFを含む。別の態様において、hESCをナイーブな未分化状態に維持するための薬剤を培地に加えてもよい。例えば、Kalkan et al., 2014, Phil. Trans. R. Soc. B, 369: 20130540を参照すること。
【0110】
ヒト臍帯線維芽細胞は、ヒト血清(例えば20%)およびグルタミンで補足されたダルベッコ変法イーグル培地(例えばDMEM、SH30081.01、Hyclone)中で増殖させ得る。好ましくは、ヒト臍帯細胞は放射線を照射される。これは、当技術分野において公知の方法を使用して行われ得る(例えば、Gamma cell, 220 Exel, MDS Nordion 3,500 - 7500ラド)。ひとたび十分な細胞が得られたならば、それらを凍結(例えば凍結保存)し得る。ESCの増殖の場合、ヒト臍帯線維芽細胞を、約20%のヒト血清(およびグルタミン)で補足されたDMEM(例えばSH30081.01、Hyclone)中約25,000~100,000細胞/cm2の濃度で、ゼラチン(例えば組換えヒトゼラチン(RhG 100-001、Fibrogen)またはヒトビトロネクチンまたはラミニン521(Bio lamina)などの接着性基材で任意でコートされた固体表面(例えばT75またはT175フラスコ)上に播種し得る。hESCは、1~4日後、支持培地(例えば、ヒト血清アルブミンを含むNUTRISTEM(登録商標)またはNUT(+))中のフィーダー細胞上にプレーティングされ得る。ESCの分化を防ぐためのさらなる因子、例えばbFGFおよびTGFβが培地に添加されてもよい。ひとたび十分な量のhESCが得られたならば、細胞を機械的に分断し得る(例えば、無菌チップまたは使い捨て無菌幹細胞ツールを使用することにより;14602 Swemed)。例えば、細胞を毎週の継代中に機械的に拡張されてもよい。または、酵素的処理(例えばコラゲナーゼAまたはTrypLE Select)によって細胞を取り出してもよい。必要な濃度のhESCに達するまでこの工程を何回か繰り返してもよい。いくつかの態様によれば、1回目の増殖ののち、TrypLE Selectを使用してhESCを取り出し、2回目の増殖ののち、コラゲナーゼAを使用してhESCを取り出す。
【0111】
分化工程の前に、ESCをフィーダー上で増殖させてもよい。例示的なフィーダー層ベースの培養は本明細書中で先に記載されている。増殖は一般に、少なくとも2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、または10日間、行われる。増殖は、少なくとも1継代、少なくとも2継代、少なくとも3継代、少なくとも4継代、少なくとも5継代、少なくとも6継代、少なくとも7継代、少なくとも8継代、少なくとも9継代または少なくとも10継代にわたって行われ得る。いくつかの態様において、増殖は少なくとも2継代~少なくとも20継代にわたって行われる。他の態様において、増殖は少なくとも2~少なくとも40継代にわたって行われる。増殖後、多能性幹細胞(例えば、ESC)は、分化誘導剤を使用する分化誘導へ供され得る。
【0112】
フィーダー細胞フリーの系もまた、ES細胞の培養に使用され得る。そのような系は、フィーダー細胞層の代わりとして、血清代替品、サイトカインおよび増殖因子(IL6および可溶性IL6受容体キメラを含む)で補足されたマトリックスを利用する。幹細胞は、培地、例えばLonza L7系、mTeSR、StemPro、XFKSR、E8、NUTRISTEM(登録商標)の存在下、細胞外マトリックス(例えばMATRIGELR(商標)、ラミニン、またはビトロネクチン)のような固体表面上で増殖させることができる。フィーダー細胞と幹細胞との同時増殖を必要とし、混合細胞集団を生じさせ得るフィーダーベースの培養とは異なり、フィーダーフリー系で増殖させた幹細胞は表面から容易に分離する。幹細胞を増殖させるために使用される培地は、分化を効果的に阻害し、それらの増殖を促進する因子、例えばMEFならし培地およびbFGFを含有する。
【0113】
いくつかの態様において、増殖ののち、多能性ESCは接着性表面上で分化誘導に供される(スフェロイド体または胚様体の中間の産生なしで)。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、国際特許出願公開第WO 2017/072763号を参照のこと。
【0114】
従って、本開示の局面によれば、接着性表面上で分化誘導に供される細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%が未分化ESCであり、多能性のマーカーを発現する。例えば、細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%がOct4+TRA- I-60+である。未分化ESCは、多能性の他のマーカー、例えばNANOG、Rex-1、アルカリホスファターゼ、Sox2、TDGF-β、SSEA-3、SSEA-4、SSEA-5、OCT4、TRA-1-60および/またはTRA-1-81を発現し得る。
【0115】
1つの例示的な分化プロトコルにおいて、非分化胚性幹細胞は、第一の分化誘導剤を使用して接着性表面上でRPE細胞系へと分化させたのち、トランスフォーミング増殖因子-β(TGFβ)スーパーファミリーのメンバー(例えばTGF1、TGF2およびTGF3サブタイプ、ならびにアクチビン(例えばアクチビンA、アクチビンBおよびアクチビンAB)、結節性抗ミュラー管ホルモン(AMH)、いくつかの骨形成タンパク質(BMP)、例えばBMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6およびBMP7ならびに増殖分化因子(GDF)を含む相同性リガンド)を使用してRPE細胞へとさらに分化させる。特定の態様によれば、トランスフォーミング増殖因子-β(TGFβ)スーパーファミリーのメンバーはアクチビンA、例えば20~200ng/ml、例えば100~180ng/mlのアクチビンAである。
【0116】
いくつかの態様によれば、第一の分化誘導剤は、約1~100 mM、5~50 mM、5~20 mM、例えば、10 mMの濃度で使用されるニコチンアミド(NA)である。他の態様によれば、第一の分化誘導剤は3-アミノベンズミンである。
【0117】
「ナイアシンアミド」とも知られるNAは、β細胞機能を保存し、改善すると考えられるビタミンB3(ナイアシン)のアミド誘導体形態である。NAは化学式C6H6N20を有する。NAは、成長、および食品のエネルギーへの変換にとって不可欠であり、関節炎の処置ならびに糖尿病の処置および予防に使用されている。
【0118】
いくつかの態様によれば、ニコチンアミドは、ニコチンアミド誘導体またはニコチンアミド模倣体である。本明細書の中で使用される用語「ニコチンアミド(NA)の誘導体」とは、天然NAの化学的に修飾された誘導体である化合物をいう。1つの態様において、化学的修飾は、アミド部分の窒素または酸素原子を介する基本的なNA構造のピリジン環の置換(環の炭素または窒素員を介する)であり得る。置換されると、1つまたは複数の水素原子が置換基によって置換される、および/または置換基がN原子に結合して四価の正電荷窒素を形成し得る。従って、本発明のニコチンアミドは置換または非置換ニコチンアミドを含む。別の態様において、化学的修飾は、例えばNAのチオベンズアミド類似体を形成するための、1つの基の欠失または置換であり得、そのすべては有機化学の当業者によって理解されるとおりである。本発明に関連する誘導体はまた、NAのヌクレオシド誘導体(例えばニコチンアミドアデニン)を含む。多様なNA誘導体が、いくつかはまたPDE4酵素の阻害活性と関連して(WO 03/068233;WO 02/060875;GB2327675A)、またはVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤として(WOO I/55114)、記載されている。例えば、4-アリール-ニコチンアミド誘導体を調製する方法(WO 05/014549)。他の例示的なニコチンアミド誘導体がWOO I/55114およびEP2128244に開示されている。
【0119】
ニコチンアミド模倣体は、多能性細胞からのRPE細胞の分化および成熟におけるニコチンアミドの効果を再現するニコチンアミドの修飾形態およびニコチンアミドの化学的類似体を含む。例示的なニコチンアミド模倣体は、安息香酸、3-アミノ安息香酸および6-アミノニコチンアミドを含む。ニコチンアミド模倣体として作用し得る化合物の別のクラスがポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である。例示的なPARP阻害剤は、3-アミノベンズアミド、イニパリブ(BSI 201)、オラパリブ(AZD-2281)、ルカパリブ(AG014699、PF-01367338)、ベリパリブ(ABT-888)、CEP 9722、MK 4827およびBMN-673を含む。
【0120】
さらなる考慮される分化誘導剤は、例えば、ノギン、Wntのアンタゴニスト(Dkk1またはIWR1e)、nodalアンタゴニスト(Lefty-A)、レチノイン酸、タウリン、GSK3b阻害剤(CHIR99021)およびnotch阻害剤(DAPT)を含む。
【0121】
ある態様によれば、分化は以下のように行われる:(a)第一の分化誘導剤(例えばニコチンアミド)を含む培地中での、ESCの培養;および(b)TGFβスーパーファミリーのメンバー(例えばアクチビンA)および第一の分化誘導剤(例えばニコチンアミド)を含む培地中での、工程a)から得られた細胞の培養。工程(a)は、TGFβスーパーファミリーのメンバー(例えばアクチビンA)の非存在下で行われ得る。
【0122】
いくつかの態様において、工程(a)における培地は、TGFβスーパーファミリーのメンバーを完全に欠いている。他の態様において、培地中のTGFβスーパーファミリーのメンバーのレベルは、20ng/ml未満、10ng/ml未満、1ng/ml未満またはさらには0.1ng/ml未満である。
【0123】
上記プロトコルは、工程(b)で得られた細胞を、第一の分化誘導剤(例えばニコチンアミド)を含むがTGFβスーパーファミリーのメンバー(例えばアクチビンA)を欠く培地中で培養することによって続けてもよい。この工程を本明細書の中で工程(b*)と呼ぶ。
【0124】
以下、さらなる態様によって上記プロトコルをさらに詳細に説明する。
【0125】
工程(a):十分な量のESCが得られたならば、分化工程を開始する。ESCは一般に、細胞培養物から取り出し(例えばコラゲナーゼA、ディスパーゼ、TrypLE select、EDTAを使用することにより)、ニコチンアミドの存在下(かつアクチビンAの非存在下)で、非接着性基材(例えば細胞培養プレート、例えばHydrocellまたはアガロースコートされた培養皿もしくは細菌検査用ペトリ皿)上にプレーティングする。ニコチンアミドの例示的な濃度は、0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、および10mMである。ひとたび細胞が非接着性基材(例えば細胞培養プレート)上にプレーティングされると、細胞培養物は、細胞懸濁液、好ましくは懸濁培養物の浮遊クラスター、即ちヒト胚性幹細胞(hESC)に由来する細胞の凝集物と呼ばれ得る。細胞クラスターは任意の基材(例えば培養プレート、担体)に付着しない。浮遊性幹細胞の供給源は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるWO06/070370号にすでに記載されていた。この段階は、最低1日、より好ましくは2日間、3日間、1週間またはさらには14日間、行われ得る。好ましくは、細胞は、例えば0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mMのニコチンアミドとともに(かつアクチビンAの非存在下で)3週を超えては懸濁培養されない。1つの態様において、細胞は、例えば0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mMのニコチンアミドとともに(かつアクチビンAの非存在下で)6~8日間、懸濁培養される。
【0126】
いくつかの態様によれば、細胞が非接着性基材、例えば細胞培養プレート上で培養されるとき、大気酸素条件は20%である。しかし、大気酸素含有率が約20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%未満またはさらには約5%未満(例えば1%~20%、1%~10%または0~5%)になるように大気酸素条件を操作することもまた、考慮される。他の態様によれば、細胞は、非接着性基材上で、最初は通常大気酸素条件下、次いで通常未満に下げた大気酸素条件下で培養される。いくつかの態様において、細胞は、初期分化中により低い酸素レベル下で、次いで後期分化中により高い酸素レベル下で培養される。
【0127】
非接着性細胞培養プレートの例は、Nunc製のもの(例えばHydrocell Cat No. 174912)などを含む。
【0128】
クラスターは、少なくとも50~500,000個、50~100,000個、50~50,000個、50~10,000個、50~5000個、50~1000個の細胞を含み得る。1つの態様によれば、クラスター中の細胞は、層には編成されず、不規則な形状を形成する。1つの態様において、クラスターは多能性胚性幹細胞を欠いている。別の態様において、クラスターは少量の多能性胚性幹細胞(例えば、タンパク質レベルでOCT4およびTRA-1-60を共発現する5%以下または3%以下(例えば0.01~2.7%)の細胞)を含む。一般に、クラスターは、ニコチンアミドの影響下で部分的に分化している細胞を含む。そのような細胞は主として神経および網膜前駆体マーカー、例えばPAX6、Rax、Six3および/またはCHX10を発現する。
【0129】
クラスターは、当技術分野において公知の酵素的または非酵素的(例えば機械的)方法を使用して解離され得る。いくつかの態様によれば、細胞は、もはやクラスター状態ではない、例えば細胞2~100,000個、2~50,000個、2~10,000個、2~5000個、2~1000個、2~500個、2~100個、2~50個の凝集物または凝集塊になるように解離される。特定の態様によれば、細胞は単一細胞懸濁液の状態にある。
【0130】
その後、細胞(例えば解離された細胞)は、接着性基材上にプレーティングされ、例えば0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mMのニコチンアミドの存在下で(かつアクチビンAの非存在下で)培養され得る。この段階は、最低1日、より好ましくは2日間、3日間、1週間またはさらには14日間、行われ得る。好ましくは、細胞は、ニコチンアミドの存在下で(かつアクチビンの非存在下で)3週を超えては培養されない。例示的な態様において、この段階は6~7日間行われる。
【0131】
他の態様によれば、細胞が接着性基材、例えばラミニン上で培養されるとき、大気酸素条件は20%である。大気酸素条件は、含有率が約20%、15%、10%未満になるように、より好ましくは約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満になるように、より好ましくは約5%になるように(例えば1%~20%、1%~10%または0~5%)操作されてもよい。
【0132】
いくつかの態様によれば、細胞は、接着性基材上で、最初は通常大気酸素条件下で培養され、その後、酸素は通常未満の大気酸素条件へ下げられる。他の態様によれば、細胞は、接着性基材上で、最初は通常未満の大気酸素条件下で培養され、その後、酸素は通常大気酸素条件へ上げられる。
【0133】
接着性基材または物質の混合物の例は、フィブロネクチン、ラミニン、ポリD-リジン、コラーゲンおよびゼラチンを含み得るが、これらに限定されない。
【0134】
工程(b):第一の分化誘導段階(工程a;即ち、ニコチンアミド(例えば0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mM)の存在下での培養)ののち、部分的に分化した細胞を、次いで、接着性基材上でさらなる分化段階に供する、即ち、アクチビンA(例えば0.01~1000ng/ml、0.1~200ng/ml、1~200ng/ml、例えば140ng/ml、150ng/ml、160ng/mlまたは180ng/ml)の存在下で培養する。従って、アクチビンAは、0.1pM~10nM、10pM~10nM、0.1nM~10nM、1nM~10nM、例えば5.4nMの最終モル濃度で添加され得る。
【0135】
この段階でニコチンアミドを添加してもよい(例えば0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mM)。この段階は、1日~10週間、3日間~10週間、1週間~10週間、1週間~8週間、1週間~4週間、例えば少なくとも1日、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも1週間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、行われ得る。
【0136】
いくつかの態様によれば、この段階は約8日間~約2週間行われる。この分化段階は、本明細書中で先に詳述したように、低大気酸素条件または通常大気酸素条件で実施され得る。
【0137】
工程(b*):第二の分化誘導段階(即ち、ニコチンアミドおよびアクチビンAの存在下で、接着性基材上での培養;工程(b))ののち、さらに分化した細胞を、任意で、接着性基材上での後続の分化段階に供する、即ち、ニコチンアミド(例えば0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mM)の存在下で、かつアクチビンAの非存在下で、培養する。この段階は、少なくとも1日、2日間、5日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間またはさらには4週間、行われ得る。この分化段階はまた、本明細書中で先に詳述したように、低大気酸素条件または通常大気酸素条件で実施され得る。
【0138】
ESCが分化するところの基本培地は、インビトロでの細胞増殖を支持するための当技術分野において公知の任意の細胞培養培地、一般には、培養物中の細胞を生存可能な状態に維持するために必要な塩、糖、アミノ酸および任意の他の栄養素を含む、規定の基礎液を含む培地である。特定の態様によれば、基本培地はならし培地ではない。本発明に従って利用され得る市販の基本培地の非限定的な例は、NUTRISTEM(登録商標)(ESC分化の場合はbFGFおよびTGFを含まず、ESC増殖の場合はbFGFおよびTGFを含む)、NEUROBASAL(商標)、KO-DMEM、DMEM、DMEM/F12、CELLGRO(商標)幹細胞増殖培地またはX-VIVO(商標)を含む。基本培地は、細胞培養を扱う技術分野において公知の多様な薬剤で補足されもよい。以下は、本開示に従って使用される、培養物に含まれ得る様々な補足物質の非限定的な参照である:血清または血清代替品を含有する培地、例えば非限定的に、ノックアウト血清代替品(knock out serum replacement)(KOSR)、NUTRIDOMA-CS、TCH(商標)、N2、N2誘導体もしくはB27、または組み合わせ;細胞外マトリックス(ECM)成分、例えば非限定的に、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲンおよびゼラチン。この場合、ECMは、TGFβスーパーファミリーの増殖因子の1つまたは複数のメンバーを担持するために使用され得る;抗菌剤、例えば非限定的に、ペニシリンおよびストレプトマイシン;ならびに非必須アミノ酸(NEAA)、培養中のSCの生存を促進する際に役割を演じることが知られているニューロトロフィン、例えば非限定的にBDNF、NT3、NT4。
【0139】
いくつかの態様によれば、ESCを分化させるために使用される培地はNUTRISTEM(登録商標)(Biological Industries, 06-5102-01- IA)である。
【0140】
いくつかの態様によれば、ESCの分化および増殖はゼノフリー条件下で行われる。
【0141】
他の態様によれば、増殖/成長培地は、異種由来の混入物を含まない、即ち、動物由来成分、例えば血清、動物由来増殖因子およびアルブミンを含まない。従って、これらの態様によれば、培養は異種由来の混入物の非存在下で実施される。
【0142】
ゼノフリー条件下でESCを培養するための他の方法が、内容全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第20130196369号に提供されている。
【0143】
RPE細胞を含む調製物は、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則(Good Manufacturing Practice)(GMP)(例えば、調製物はGMP準拠調製物である)および/または現行の優良組織規則(Good Tissue Practice)(GTP)(例えば、調製物はGTP準拠調製物であり得る)に従って調製され得る。
【0144】
分化工程中、胚性幹細胞の分化状態がモニターされ得る。細胞分化は、分化を示すことが知られている細胞特異的マーカーまたは組織特異的マーカーの検査に基づいて判定することができる。
【0145】
組織/細胞特異的マーカーは、当技術分野において周知の免疫学的技術[Thomson JA et al., (1998). Science 282: 1145-7]を使用して検出することができる。例は、膜結合マーカーまたは細胞内マーカーの場合のフローサイトメトリー、細胞外マーカーおよび細胞内マーカーの場合の免疫組織化学的技術、ならびに分泌分子マーカーの場合の酵素イムノアッセイを含むが、これらに限定されない。
【0146】
本明細書中で先に記載された分化段階ののち、色素細胞および非色素細胞の両方を含む混合細胞集団が得られ得る。この局面によれば、混合細胞集団の細胞はプレートから取り出される。いくつかの態様において、これは酵素的に行われる(例えばトリプシン(TrypLE Select)を使用;例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、国際特許出願公開第WO 2017/021973号を参照のこと)。本発明のこの局面によれば、培養物から取り出される(およびその後、増殖が行われる)細胞の少なくとも10%、20%、30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%が非色素細胞である。他の態様において、これは機械的に、例えばセルスクレーパを使用して行われる。さらに他の態様において、これは化学的に行われる(例えばEDTA)。また、酵素的処理と化学的処理との組み合わせが考慮される。例えば、EDTAおよび酵素的処理が使用され得る。さらには、培養物から取り出される(およびその後、増殖が行われる)細胞の少なくとも10%、20%またはさらには30%が色素細胞である。
【0147】
本開示のこの局面によれば、培養物中の全細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%が取り出される(およびその後、増殖が行われる)。
【0148】
混合細胞集団の増殖は、細胞外マトリックス、例えばゼラチン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ラミニン(例えばラミニン521)、フィブロネクチンおよびポリD-リジン上で行われ得る。増殖のために、細胞は、無血清KOM、血清含有培地(例えば、20%ヒト血清を含むDMEM)またはNUTRISTEM(登録商標)培地(06- 5102-01- IA, Biological Industries)中で培養され得る。これらの培養条件下、適当な条件下で継代されたのち、色素細胞:非色素細胞の比が増して、精製されたRPE細胞集団が得られるようになる。そのような細胞は、RPE細胞に特徴的な多角形形状の形態および色素形成を示す。
【0149】
1つの態様において、増殖は、ニコチンアミド(例えば0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mM)の存在下かつアクチビンAの非存在下で行われる。
【0150】
混合細胞集団は、懸濁液(マイクロキャリヤを含む、または含まない)中または単層中で増殖させ得る。単層培養または懸濁培養における混合細胞集団の増殖は、当業者に周知の方法により、バイオリアクタまたはマルチ/ハイパースタック中での大規模増殖へと変形されてもよい。
【0151】
いくつかの態様によれば、増殖段階は、少なくとも1、20週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間またはさらには10週間、行われる。好ましくは、増殖段階は、1週間~10週間、より好ましくは2週間~10週間、より好ましくは3週間~10週間、より好ましくは4週間~10週間、または4週間~8週間、行われる。
【0152】
さらに他の態様によれば、混合細胞集団は、増殖段階中に少なくとも1回、増殖段階中に少なくとも2回、増殖段階中に少なくとも3回、増殖段階中に少なくとも4回、増殖段階中に少なくとも5回、または増殖段階中に少なくとも6回、継代される。
【0153】
本発明者らは、細胞が酵素的に収集されるとき、増殖を、8代を超える継代、9代を超える継代、さらには10代を超える継代(例えば11~15継代)にわたって継続させることが可能であることを示した。合計細胞倍加回数を、30よりも多く、例えば31、32、33、34またはそれより多くまで増やすことができる。(参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、国際特許出願公開第WO 2017/021973号を参照のこと)。
【0154】
本明細書に記載される方法に従って産生されるRPE細胞集団は、いくつかの異なるパラメータに従って特性決定され得る。従って、例えば、得られるRPE細胞は、多角形であり、色素を有し得る。
【0155】
本明細書に開示される細胞集団は未分化ヒト胚性幹細胞を概して含まないことが理解されよう。いくつかの態様によれば、例えばFACSによって計測して250,000個に対して1個未満の細胞がOct4+TRA-1-60+細胞である。細胞はまた、PCRによって計測して、下方制御(5,000倍超)されたGDF3またはTDGFの発現を有し得る。この局面のRPE細胞は胚性幹細胞マーカーを発現しない。前記1つまたは複数の胚性幹細胞マーカーは、OCT-4、NANOG、Rex-1、アルカリホスファターゼ、Sox2、TDGF-β、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、および/またはTRA-1-81を含み得る。
【0156】
治療用RPE細胞調製物は、非RPE細胞に対して実質的に精製されてもよく、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のRPE細胞を含む。治療用RPE細胞調製物は、非RPE細胞を本質的に含まなくてもよいし、またはRPE細胞のみからなってもよい。例えば、実質的に精製されたRPE細胞調製物は、約25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満の非RPE細胞型を含み得る。例えば、RPE細胞調製物は、約25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%、または0.0001%未満の非RPE細胞を含み得る。
【0157】
RPE細胞調製物は、非RPE細胞および他の成熟レベルのRPE細胞の両方に関して実質的に純粋であり得る。調製物は、非RPE細胞に関して実質的に精製され、成熟RPE細胞に関して濃縮され得る。例えば、成熟RPE細胞に関して濃縮されたRPE細胞調製物においては、RPE細胞の少なくとも約30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、または100%が成熟RPE細胞である。調製物は、非RPE細胞に関して実質的に精製され、成熟RPE細胞ではなく分化RPE細胞に関して濃縮されてもよい。例えば、RPE細胞の少なくとも約30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が、成熟RPE細胞ではなく分化RPE細胞であってもよい。
【0158】
本明細書に記載される調製物は、HIV I、HIV 2、HBV、HCV、HAV、CMV、HTLV 1、HTLV 2、パルボウイルスB19、エプスタイン・バルウイルス、またはヘルペスウイルス1および2、SV40、HHV5、6、7、8、CMV、ポリオーマウイルス、HPV、エンテロウイルスの存在を含むが、これらに限定されない、細菌、ウイルスまたは真菌の混入または感染を実質的に有しない状態であり得る。本明細書に記載される調製物は、マイコプラズマ混入または感染を実質的に有しない状態であり得る。
【0159】
本明細書に開示される細胞集団を特性決定する別の方法は、マーカー発現による方法である。従って、例えば、免疫染色によって計測して、細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または100%がベストロフィン1を発現し得る。1つの態様によれば、細胞の80~100%がベストロフィン1を発現する。
【0160】
他の態様によれば、免疫染色によって計測して、細胞の少なくとも80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%または100%が小眼球症関連転写因子(MITF)を発現する。例えば、細胞の80~100%がMITFを発現する。
【0161】
他の態様によれば、免疫染色によって計測して、細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%または100%が小眼球症関連転写因子(MITF)およびベストロフィン1の両方を発現する。例えば、細胞の80~100%がMITFとベストロフィン1とを共発現する。
【0162】
他の態様によれば、免疫染色によって計測して、細胞の少なくとも80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%または100%が小眼球症関連転写因子(MITF)およびZ0-1の両方を発現する。例えば、細胞の80~100%がMITFとZ0-1とを共発現する。
【0163】
他の態様によれば、免疫染色によって計測して、細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%または100%がZ0-1およびベストロフィン1の両方を発現する。例えば、細胞の80~100%がZ0-1とベストロフィン1とを共発現する。
【0164】
別の態様によれば、免疫染色またはFACSによって計測して、細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%または100%がペアードボックス遺伝子6(PAX-6)を発現する。
【0165】
別の態様によれば、免疫染色によって計測して、細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%または100%が細胞レチンアルデヒド結合タンパク質(CRALBP)を発現する。例えば、細胞の85~100%がCRALBPを発現する。
【0166】
別の態様によれば、免疫染色によって計測して、細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%または100%が細胞メラノサイト系列特異的抗原GP100(PMEL17)を発現する。例えば、細胞の85~100%がPMEL17を発現する。
【0167】
RPE細胞は一般に、終末分化を示すマーカー、例えば、ベストロフィン1、CRALBPおよび/またはRPE65を共発現する。加えて、本明細書に記載されるRPE細胞は、ARL13BおよびGT335のような、RPE一次繊毛についてのマーカーを発現し得る。
【0168】
増殖段階ののち、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはさらには100%がCRALBP+ PMEL17+であるRPE細胞を含む細胞集団が得られる。
【0169】
ある態様において、RPE細胞組成物は以下の方法に従って製造され得る:(1)NUT+およびヒト血清アルブミン(HSA)中にて2週間、センターウェル(CW)プレート中のhUCF上でhESCを培養する、(2)NUT+およびHSA中にて4~5週間(または所望の量の細胞まで)、CWプレート中のhUCF上でhESCを増殖させるために機械的に継代する、(3)NUT+およびHSA中にてさらに1週間、6 cmプレート中のhUCF上で(例えば、コラゲナーゼを使用して)hESCコロニーを増殖させ続ける、(4)NUT-およびニコチンアミド(NIC)中にて約1週間、約5個の6 cmプレートから1個のHydroCell中へコロニーを移すことによって、スフェロイド体(SB)を調製する、(5)NUT-およびNICにおいて約1週間、6-ウェルプレートの2~3個のウェルへSBを移すことによって、Lam511上でのSBの平板化を行い得る、(6)約1~2週間、NUT-およびNICおよびアクチビン中にてLam511上で接着細胞を培養し、NUT-およびNICで培地を交換し、1~3週間培養する、(7)例えばTrypLE Selectのような、酵素を使用して色素細胞について濃縮する、(8)20%ヒト血清およびNUT-において約2~9週間(培地を交換する)、フラスコ中のゼラチン上でRPE細胞を増殖させる、ならびに(9)RPE細胞を採取する。
【0170】
増殖したRPE細胞集団の採取は、当技術分野において公知の方法を使用して(例えば、トリプシンのような酵素を使用して、またはEDTAを使用して化学的になど)行われ得る。いくつかの態様において、RPE細胞は、PBSまたはBSS plusのような、適切な溶液を使用して洗浄され得る。いくつかの態様において、酵素中和溶液が、RPE細胞の採取または濃縮後に使用され得る。中和溶液は、例えば、ヒト血清またはヒト血清アルブミンを含むまたは含まない培地を含み得る。いくつかの態様において、HSまたはHASを含むまたは含まない酵素中和溶液中での長期インキュベーションは、細胞生存能または細胞リカバリーに対して影響を有さない。
【0171】
他の態様において、RPE細胞は、凍結保存および解凍直後の対象への投与のためのRPE細胞の製剤化の前に濾過され得る。いくつかの態様において、濾過後細胞のパーセント生存能は、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。いくつかの態様において、約0~約8時間中和溶液中で保存された濾過後細胞のパーセント生存能は、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0172】
採取後、増殖したRPE細胞集団は、特定の治療用量(例えば、細胞数)で製剤化され、病院への出荷のために凍結保存され得る。そのまま投与できる(RTA)RPE細胞療法組成物は、次いで、さらなる処理無しで解凍直後に投与することができる。凍結保存に適している培地の例としては、90%ヒト血清/10% DMSO、培地3 10% (CS10)、培地2 5% (CS5)および培地1 2% (CS2)、Stem Cell Banker、PRIME XV(登録商標)FREEZIS、HYPOTHERMASOL(登録商標)、CSB、トレハロースなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
いくつかの態様において、約0~約8時間凍結保存培地中で保存された濾過後細胞のパーセント生存能は、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。他の態様において、約0~約8時間凍結保存培地中で保存された濾過後細胞のパーセントリカバリーは、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0174】
さらなる態様において、約0~約8時間中和培地中に保存され、続いて約0~約8時間凍結保存培地中に保存された、濾過後細胞のパーセント生存能は、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。他の態様において、約0~約8時間中和培地中に保存され、続いて約0~約8時間凍結保存培地中に保存された、濾過後細胞のパーセントリカバリーは、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0175】
さらに他の態様において、約0~約8時間中和培地中で保存され、続いて約0~約8時間凍結保存培地中で保存され、凍結保存された組成物が解凍された後の、濾過後細胞のパーセント生存能は、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。さらに他の態様において、約0~約8時間中和培地中で保存され、続いて約0~約8時間凍結保存培地中で保存され、凍結保存された組成物が解凍された後の、濾過後細胞のパーセントリカバリーは、少なくとも約、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0176】
いくつかの態様において、約0~約8時間中和培地中で保存され、続いて約0~約8時間凍結保存培地中で保存され、凍結保存された組成物が解凍された後の、濾過後RPE細胞は、約1,500 ng/mL/日~約4,500 ng/mL/日、約2,000 ng/mL/日~約3,000 ng/mL/日でPEDFを分泌することができる。他の態様において、約0~約8時間中和培地中で保存され、続いて約0~約8時間凍結保存培地中で保存され、凍結保存された組成物が解凍された後の、濾過後RPE細胞は、14日間で少なくとも約1.2x106~5 x106、または約2.5x x106~約4 x106個の細胞へ増殖され得る。
【0177】
いくつかの態様において、室温で約0~約8時間中和培地中で保存された濾過後RPE細胞のパーセント生存能は、少なくとも約、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。いくつかの態様において、室温で約0~約8時間凍結保存培地中で保存された濾過後RPE細胞のパーセント生存能は、少なくとも約、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。さらなる態様において、室温で約0~約8時間中和溶液中で保存され、続いて室温で約0~約8時間凍結保存培地中で保存された、濾過後細胞のパーセント生存能は、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。なおさらなる態様において、室温で約0~約8時間中和溶液中で保存され、続いて室温で約0~約8時間凍結保存培地中で保存された、濾過後細胞のパーセントリカバリーは、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、140%、150%である。
【0178】
解凍後にそのまま投与できる(RTA)適用に適した凍結保存培地中に製剤化されたRPE細胞は、アデノシン、デキストラン-40、ラクトビオン酸、HEPES (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および水中に懸濁されたRPE細胞を含み得る。この凍結保存培地の例は、商標CRYOSTOR(登録商標)の下で市販されており、BioLife Solutions, Inc.によって製造されている。
【0179】
DMSOは、凍結保存プロセス中に細胞を死滅させる可能性がある氷晶の形成を防ぐための、凍結防止剤として使用することができる。いくつかの態様において、凍結保存可能なRPE細胞療法組成物は約0.1%~約2%のDMSO (v/v)を含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、約1%~約20%のDMSOを含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は約2%のDMSOを含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は約5%のDMSOを含む。
【0180】
いくつかの態様において、解凍後にそのまま投与できる(RTA)適用に適した凍結保存培地中に製剤化されたRPE細胞療法は、DMSOを含有しない凍結保存培地中に懸濁されたRPE細胞を含み得る。例えば、RTA RPE治療用細胞組成物は、DMSO(ジメチルスルホキシド、(CH3)2SO)または任意の他の二極性非プロトン性溶媒を含まない、トロロクス、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、c1-、H2PO4-、HEPES、ラクトビオン酸塩、スクロース、マンニトール、グルコース、デキストラン-40、アデノシン、グルタチオン中に懸濁されたRPE細胞を含み得る。この凍結保存培地の例は、商標HYPOTHERMOSOL(登録商標)またはHYPOTHERMOSOL(登録商標)-FRSの下で市販されており、また、BioLife Solutions, Inc.によって製造されている。他の態様において、解凍後にそのまま投与できる適用に適した凍結保存培地中に製剤化されたRPE細胞組成物は、トレハロース中に懸濁されたRPE細胞を含み得る。
【0181】
RTA RPE細胞療法組成物は、RPEの生着、組み込み、生存、効力などを支援するさらなる因子を含んでもよい。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、本明細書に記載されるRPE細胞調製物の機能の活性化剤を含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物はニコチンアミドを含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、ニコチンアミドを約0.01~100 mM、0.1~100 mM、0.1~50 mM、5~50 mM、5~20 mM、例えば、10 mMの濃度で含む。他の態様において、RTA RPE細胞療法組成物はレチノイン酸を含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、レチノイン酸を約0.01~100 mM、0.1~100 mM、0.1~50 mM、5~50 mM、5~20 mM、例えば、10 mMの濃度で含む。
【0182】
いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、ブルッフ膜への、本明細書に記載されるもののような、RPE細胞調製物の接着を増加させることが示された様々なインテグリンの活性化剤を含むように製剤化され得る。例えば、いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、細胞外マンガン(Mn2+)を約5μM~1,000μMの濃度で含む。他の態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、コンフォメーション特異的モノクローナル抗体TS2/16を含む。
【0183】
他の態様において、RTA RPE細胞療法組成物はまた、RPE細胞免疫調節活性の活性化剤を含むように製剤化され得る。
【0184】
いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物はROCK阻害剤を含み得る。
【0185】
いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、フリーラジカルの除去、pH緩衝化、膨張/浸透サポート、およびイオン濃度バランスの維持によって、凍結および解凍プロセス中の分子細胞ストレスを減少させる成分を含む培地中に製剤化され得る。いくつかの態様において、解凍後にそのまま投与できる適用に適した凍結保存培地中に製剤化されたRPE細胞療法は、1つまたは複数の免疫抑制化合物を含み得る。ある態様において、解凍後にそのまま投与できる適用に適した凍結保存培地中に製剤化されたRPE細胞療法は、1つまたは複数の免疫抑制化合物の徐放のために製剤化される1つまたは複数の免疫抑制化合物を含み得る。本明細書に記載される製剤と共の使用のための免疫抑制化合物は、免疫抑制薬の以下のクラスに属し得る:糖質コルチコイド、細胞増殖抑制剤(例えば、アルキル化剤または代謝拮抗物質)、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)、イムノフィリンに作用する薬剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムスまたはシロリムス)。さらなる薬物は、インターフェロン、オピオイド、TNF結合タンパク質、ミコフェノレートおよび小さな生物学的薬剤を含む。免疫抑制薬の例は、間葉系幹細胞、抗リンパ球グロブリン(ALG)ポリクローナル抗体、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)ポリクローナル抗体、アザチオプリン、BAS 1LI X IMAB(登録商標)(抗IL-2Ra受容体抗体)、シクロスポリン(シクロスポリンA)、DACLIZUMAB(登録商標)(抗IL-2Ra受容体抗体)、エベロリムス、ミコフェノール酸、RITUXIMAB(登録商標)(抗CD20抗体)、シロリムス、タクロリムス、タクロリムスおよびまたはミコフェノール酸モフェチルを含む。
【0186】
対象へ投与され得る生存細胞の数は、典型的に、1用量当たり少なくとも約50,000~約5x106個である。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は少なくとも100,000個の生存細胞を含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は少なくとも150,000個の生存細胞を含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は少なくとも200,000個の生存細胞を含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は少なくとも250,000個の生存細胞を含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は少なくとも300,000個の生存細胞を含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は少なくとも350,000個の生存細胞を含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は少なくとも400,000個の生存細胞を含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は少なくとも450,000個の生存細胞を含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は少なくとも500,000個の生存細胞を含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、少なくとも600,000、少なくとも700,000、少なくとも800,000、少なくとも900,000、少なくとも1,000,000、少なくとも2,000,000、少なくとも3,000,000、少なくとも4,000,000、少なくとも5,000,000、少なくとも6,000,000、少なくとも7,000,000、少なくとも8,000,000、少なくとも9,000,000、少なくとも10,000,000、少なくとも11,000,000、または少なくとも12,000,000個の生存細胞を含む。
【0187】
いくつかの態様において、対象へ投与されるRTA RPE製剤の量は、約50μL~約100μL、約25μL~約100μL、約100μL~約150μL、または約10μL~約200μLである。ある態様において、10μL~200μLのRTA RPE製剤の2つの用量を投与することができる。ある態様において、RTA RPE製剤の量を対象の眼の網膜下腔へ投与する。ある態様において、網膜下送達法は、経硝子体または脈絡膜上であり得る。いくつかの態様において、RTA RPE製剤の量を対象の眼中へ注射することができる。
【0188】
ある態様において、RTA RPE治療用細胞組成物は、約100,000細胞/ml~約1,000,000細胞/mlの細胞濃度で製剤化され得る。ある態様において、RTA RPE細胞療法は、約1,000,000細胞/ml、約2,000,000細胞/ml、約3,000,000細胞/ml、約4,000,000細胞/ml、約5,000,000細胞/ml、6,000,000細胞/ml、7,000,000細胞/ml、8,000,000細胞/ml、約9,000,000細胞/ml、約10,000,000細胞/ml、約11,000,000細胞/ml、約12,000,000細胞/ml、13,000,000細胞/ml、14,000,000細胞/ml、15,000,000細胞/ml、16,000,000細胞/ml、約17,000,000細胞/ml、約18,000,000細胞/ml、約19,000,000細胞/ml、または約20,000,000細胞/mlの細胞濃度で製剤化され得る。
【0189】
いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、約-4℃~約-200℃の温度で凍結保存および保管され得る。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、約-20℃~約-200℃の温度で凍結保存および保管され得る。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、約-70℃~約-196℃の温度で凍結保存および保管され得る。いくつかの態様において、凍結保存に適した温度または凍結保存温度は、約-4℃~約-200℃の温度、または約-20℃~約-200℃、-70℃~約-196℃の温度を含む。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または31日間、凍結状態で保存され得る。他の態様において、RPE細胞は、約1.5~48ヵ月間、凍結状態で保存され得る。他の態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、パーセント生存能または細胞リカバリーの減少無しに約1~約48ヵ月間、凍結状態で保存され得る。いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、安定性を維持したまま、2~8℃で少なくとも約38時間保存され得る。
【0190】
いくつかの態様において、RTA RPE細胞療法組成物は、パーセント生存能、パーセント細胞リカバリー、または効力の減少無しに8,000マイルにわたって凍結状態で出荷され得る。
【0191】
RPE細胞の誘導が非常に有益であることは当業者によって十分に理解されるであろう。RPE細胞は、それらの生存、再生および機能を促進するための新薬の開発のためのインビトロモデルとして使用され得る。RPE細胞は、RPE細胞に対して毒性または再生作用を有する化合物のハイスループットスクリーニングに役立ち得る。RPE細胞は、光受容体細胞の発生、分化、維持、生存および機能にとって重要である機構、新たな遺伝子、可溶性因子または膜結合因子を明らかにするために使用され得る。
【0192】
本明細書に記載されるRPE細胞はまた、網膜変性および他の変性疾患における機能不全RPE細胞または変性RPE細胞の移植、補充および支持のためのRPE細胞の無限の供給源としても役立ち得る。さらに、遺伝子改変されたRPE細胞は、移植後に眼および網膜中で遺伝子を担持し、発現させるためのベクターとして役立ち得る。
【0193】
RPE細胞が治療剤として働き得る眼の状態は、概して網膜機能不全、網膜傷害および/または網膜色素上皮の損失と関連する網膜疾患または障害を含むが、これらに限定されない。本発明に従って処置され得る状態の非限定的なリストは、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、遺伝性または後天性の黄斑変性症、加齢黄斑変性症(AMD)、非滲出性(乾性)AMD、地図状萎縮(GA)、ベスト病、網膜剥離、脳回転状萎縮症、脈絡膜欠如、パターンジストロフィーおよびRPEの他のジストロフィー、シュタルガルト病、光傷害、レーザー傷害、炎症性傷害、感染性傷害、放射線傷害、新生血管傷害または外傷性傷害のいずれか1つによって生じた損傷に起因するRPE損傷および網膜損傷を含む。
【0194】
本発明のこの局面の細胞を使用して処置することができる例示的な変性障害は、パーキンソン病、ALS、多発性硬化症、ハンチントン病、自己免疫性脳脊髄炎、糖尿病性神経障害、アルツハイマー病およびてんかんを含むが、これらに限定されない、神経変性障害を含む。
【0195】
処置され得る対象は、霊長類(ヒトを含む)、イヌ、ネコ、有蹄類(例えばウマ、ウシ、ブタ(swine)(例えば、ブタ(pig)))、トリおよび他の対象を含む。商業的に重要なヒトおよび非ヒト動物(例えば、家畜および飼育動物)が特に関心対象である。処置され得る例示的な哺乳動物は、イヌ;ネコ;ウマ;ウシ;ヒツジ;げっ歯類など、および霊長類、特にヒトを含む。非ヒト動物モデル、特に哺乳動物、例えば霊長類、ネズミ、ウサギなどを実験的調査のために使用してもよい。
【0196】
本明細書中に記載されるように産生されたRPE細胞は、対象の眼または他の部位内(例えば脳内)の様々な標的部位に移植され得る。1つの態様によれば、RPE細胞の移植は、RPEの通常の解剖学的位置(光受容体外節と脈絡膜との間の)である、眼の網膜下腔への移植である。加えて、細胞の移動能力および/またはポジティブな傍分泌効果に依存して、硝子体腔、網膜内層または外層、網膜周辺部および脈絡膜内を含むがこれらに限定されないさらなる眼の区画への移植を考慮することができる。
【0197】
移植は、当技術分野において公知の様々な技術によって実施され得る。RPE移植を実施する方法は、例えば、米国特許第5,962,027号、第6,045,791号および第5,941,250号ならびにEye Graefes Arch Clin Exp Opthalmol March 1997; 235(3): 149-58;Biochem Biophys Res Commun Feb. 24, 2000; 268(3): 842-6;Opthalmic Surg February 1991; 22(2): 102-8に記載されている。角膜移植を実施する方法は、例えば、米国特許第5,755,785号およびEye 1995; 9 (Pt 6 Su):6-12;Curr Opin Opthalmol August 1992; 3 (4): 473-81;Ophthalmic Surg Lasers April 1998; 29 (4): 305-8;Ophthalmology April 2000; 107 (4): 719-24;およびJpn J Ophthalmol November-December 1999; 43(6): 502-8に記載されている。主に傍分泌効果が利用される場合、細胞はまた、半透過性の容器に封入された状態で眼に送達され、維持され得、これもまた、宿主免疫系への細胞の曝露を減らす(Neurotech USA CNTF delivery system;PNAS March 7, 2006 vol. 103(10) 3896-3901)。投与工程は、それを必要とする眼へのRPE細胞の眼内投与を含み得る。眼内投与は、網膜下腔へのRPE細胞の注射を含み得る。
【0198】
1つの態様によれば、移植は、経毛様体扁平部硝子体切除術ののち、小さな網膜開口部を介して、または直接注入によって、細胞を網膜下腔の中に送達することによって実施される。
【0199】
ある態様において、投与は、硝子体切除術とそれに続く小さな網膜切開を介してのカニューレによる黄斑領域内の網膜下腔中へのRTA治療用細胞組成物の送達を含み得る。細胞用量に依存して、総体積50~100μLの細胞懸濁液を、GA拡大の潜在的リスクがある領域中に移植することができる。
【0200】
いくつかの態様において、GAの領域(存在する場合)とより良く保存された中心窩外の網膜およびRPE層との間の境界に沿って、黄斑領域内に作られた網膜下腔中へ、硝子体切除術に続いて、小さな網膜切開を通してRTA治療用細胞組成物が送達される、単一の外科的処置が実施される。開瞼器の配置後、標準3ポート硝子体切除術を実施することができる。これは、23Gまたは25G注入カニューレおよび2つの23Gまたは25/23Gポート(トロカール)の配置を含み得る。中心部硝子体切除術が、次いで、23Gまたは25G器具を用いて実施され得、続いて、後部硝子体面の剥離が実施され得る。好ましくはGA(存在する場合)の境界に近接して依然として比較的保存されている領域内の網膜を貫通して、RTA治療用細胞組成物は、後極内の所定の部位にて、網膜下腔中へ注入され得る。
【0201】
いくつかの態様において、細胞組成物は脈絡膜上注射によって投与される。
【0202】
RPE細胞は様々な形態で移植され得る。例えば、RPE細胞は、単一細胞懸濁液の形態で、マトリックスとともに、またはマトリックスもしくは膜、細胞外マトリックスもしくは基材、例えば細胞分解性ポリマーもしくはそれらの組み合わせに付着した状態で、標的部位に導入され得る。RPE細胞はまた、マトリックスまたはスキャフォールド上へ印刷されてもよい。RPE細胞はまた、他の網膜細胞、例えば光受容体と一緒に移植(共移植)されてもよい。処置の有効性は、視覚および眼の機能および構造の様々な尺度によって、とりわけ、最高矯正視力(BCVA)、暗順応および明順応状態でのペリメトリーもしくはマイクロペリメトリーにより計測される網膜感光度、全視野、多焦点、焦点またはパターン網膜電
図5 ERG)、コントラスト感度、読取り速度、色覚、臨床生体顕微鏡検査、眼底撮影、光干渉断層撮影(OCT)、眼底自発蛍光(FAF)、赤外およびマルチカラーイメージング、フルオレセインまたはICG血管造影、適応光学ならびに視覚機能および眼構造を評価するために使用されるさらなる手段によって評価され得る。
【0203】
対象は、RPE細胞の投与の前またはそれと同時に、プレドニゾロンまたはメチルプレドニゾロン、プレド・フォルテ(Predforte)のようなコルチコステロイドを投与されてもよい。別の態様によれば、対象は、RPE細胞の投与の前またはそれと同時に、プレドニゾロンまたはメチルプレドニゾロン、プレド・フォルテのようなコルチコステロイドを投与されない。
【0204】
処置の前、それと同時および/またはその後に、免疫抑制薬が対象に投与されてもよい。免疫抑制薬は以下のクラスに属し得る:糖質コルチコイド、細胞増殖抑制剤(例えば、アルキル化剤または代謝拮抗物質)、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)、イムノフィリンに作用する薬剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムスまたはシロリムス)。さらなる薬物は、インターフェロン、オピオイド、TNF結合タンパク質、ミコフェノレートおよび小さな生物学的薬剤を含む。免疫抑制薬の例は、間葉系幹細胞、抗リンパ球グロブリン(ALG)ポリクローナル抗体、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)ポリクローナル抗体、アザチオプリン、BAS 1LI X IMAB(登録商標)(抗IL-2Ra受容体抗体)、シクロスポリン(シクロスポリンA)、DACLIZUMAB(登録商標)(抗IL-2Ra受容体抗体)、エベロリムス、ミコフェノール酸、RITUXIMAB(登録商標)(抗CD20抗体)、シロリムス、タクロリムス、タクロリムスおよびまたはミコフェノール酸モフェチルを含む。
【0205】
あるいは、RTA RPE細胞療法組成物は、免疫抑制薬を使用することなく投与されてもよい。
【0206】
処置の前、それと同時および/またはその後に、抗生物質が対象に投与されてもよい。抗生物質の例は、オフロックス、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、トブレックス、ビガモックスまたは眼科用に認可された任意の他の局所抗生物質製剤を含む。
【0207】
本開示に従って製剤化されたRTA RPE細胞療法は、対象の眼中への注射の前に最終用量製剤の調製のためのGMP施設の使用を必要としない。本明細書に記載されるRTA RPE細胞療法製剤は、最終用量製剤を含む無毒性凍結溶液中に凍結保存され得、これは臨床現場へ直接出荷することができる。必要に応じて、製剤は、解凍され得、中間の調製工程を行う必要なしに対象の眼中へ投与することができる。
【0208】
RPE細胞は、栄養素、水およびイオン輸送、光吸収、落屑した光受容体外節(POS)の食作用、視サイクルのために不可欠である11-cis-レチナールへのオール-トランス-レチナールの再異性化、免疫調節、必須因子の分泌、ならびに血液網膜関門の形成を含む、光受容体生存に重要な多くのプロセスに関与する。
図15に示されるように、RPE単層は、PRと脈絡毛細管板(CC)との間の極性代謝ゲートキーパーとして作用する。RPEは、頂端対基底外側の構造的および機能的な極性を有する。頂端側において、RPE細胞は、POSとの直接接触を可能にする多数の絨毛を形成し、脈絡毛細管板からPRへグルコースおよびビタミンAのような分子を輸送する。基底側において、RPE細胞は、脈絡毛細管板へCO2、乳酸塩および水のような代謝産物を輸送し、脈絡膜からRPEを分離する下にある基底ブルッフ膜(BM)を作り、血液網膜関門をもたらす。側壁において、隣接するRPE細胞はタイトジャンクションを形成する。バリア機能は、細胞間に形成されたタイトジャンクションを測定することによってRPE細胞培養物の効力を決定するために使用することができる。RPEタイトジャンクションは、RPE単層を横切るイオンおよび水の傍細胞移動を制限し、RPE輸送体の正しい頂端-基底分配を維持する。本明細書に開示されるRPE細胞組成物は、100Ωを上回る経上皮電気抵抗(TEER)を生じさせる能力によって決定されるバリア機能を示す。
【0209】
さらに、RPE細胞は、脈絡毛細管板内皮および光受容体の構造的完全性を維持するのを助ける、様々な神経栄養因子、例えば、線維芽細胞増殖因子(bFGFおよびaFGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、色素上皮由来因子(PEDF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血管内皮増殖因子(VEGF)などを分泌する。RPE細胞はまた、眼の免疫特権特性の確立において重要な、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-βのような抗炎症性サイトカインを分泌する。本明細書に記載されるRTA治療用細胞組成物中に使用されるRPE細胞は、神経栄養因子を分泌することができる。本明細書に開示されるRPE細胞組成物はまた、それぞれ、RPE増殖および血管形成を増強する、PEDFおよびVEGF極性分泌を示す。
【0210】
種々の細胞培養培地が細胞の増殖効率に対して効果を有し得る。しかし、本明細書に開示されるRPE細胞組成物は、DMSOを含む培地製剤中に懸濁された後に増殖する能力を示す。
【0211】
本明細書に開示されるRPE細胞組成物はまた、死細胞を除去する必要なく、そのまま注射できる細胞療法として製剤が使用されることを可能にする、生存可能な解凍後細胞のパーセンテージを示す。1ミリリットル当たりの細胞によって測定されるような、本明細書に開示されるRPE細胞組成物のパーセント収率は、大規模臨床使用要件を満たすように最適化される製剤の特徴である。
【実施例】
【0212】
実施例1
ゼノフリーGMP製造条件下での分化誘導のプロセスによってヒト胚性幹細胞(hESC)から誘導された、RPE細胞の細胞懸濁液を本明細書において使用する。これらの細胞を放射線照射ヒト臍帯線維芽細胞フィーダー(hUCF)上で増殖させた。増殖されたhESCを、次いで、ニコチンアミドおよびアクチビンAを使用して網膜色素上皮(RPE)細胞へ分化させた。RPE細胞を次いで増殖させ、凍結保存培地中で凍結保存した。
【0213】
ゼノフリーなGMPグレードHAD-C 102 hESCを、組換えヒトビトロネクチン(rhVTN)上または組換えヒトゼラチン(rhゼラチン)上に播種された放射線照射ゼノフリーGMPグレードCRD008 hUCF上のコロニーとして増殖させた。hESC増殖を、増殖因子である塩基性FGFおよびTGFβ(Biological Industries)に加えてヒト血清アルブミンを含有するNUTRISTEM(登録商標)培地の存在下で行った。増殖したhESCを次いで懸濁培養へ移し、通常(大気)O2条件下にて分化を誘導的に開始させた。スフェロイド体(SB)が形成され、次いで、神経運命に向かい続いてRPE細胞運命に向かう連続的な分化誘導条件下で、接着性細胞培養物としてプレーティングした。
【0214】
分化段階の終了時に、以下の2つの技術を使用して細胞を採取し、増殖させた:1)非色素領域を手動で切除して除去し、残りの色素細胞領域を酵素的に収集した、ならびに2)細胞(色素および非色素)を酵素的に収集した。細胞を、次いで、ニコチンアミドの存在および非存在下において製造説明書に従ってrhゼラチン被覆細胞培養プレート上に、またはラミニン521、フィブロネクチン、コラーゲンIもしくはコラーゲンIV上に播種し、そして3継代にわたって増殖させた。90%のヒト血清および10%のDMSOからなる凍結培地において、ならびに血清フリーゼノフリーGMPグレード凍結培地(培地2 (CS5)および培地1 (CS2), BioLife Solutions)において、継代2代目(P2)で、細胞を採取しそして凍結保存した。
【0215】
実施例2
解凍後の活力および生存能を、1.5x106および5x106の細胞密度で5%ジメチルスルホキシド(DMSO)含有凍結保存培地(培地2, CS5)中に凍結保存された治療用RPE細胞について評価した。結果を、制御凍結機(例えば、イソプロパノール含有徐冷装置)を使用して、10% DMSO含有90%ヒト血清(HS)中に凍結保存された細胞の結果と比較した。各凍結保存培地中に凍結された各組成物の3つのバイアルの解凍後、細胞カウンターを使用して生存能を試験した。各バイアルの細胞を、次いで、37℃および5% CO2で24時間、1ウェル当たり20%ヒト血清含有DMEM 2 mLの最終体積中に、0.5 x 106生存細胞/ウェルの密度で、12-ウェルプレート中に播種した。インキュベーション期間の終了時に、培養物をPBSで洗浄した。TrypLE Select処理後、細胞カウンターを使用して細胞を数えた。パーセント活力を、次いで、1ウェル当たり播種された細胞の総数で生存可能な接着細胞の平均数を割り、そして結果に100を掛けることによって計算した。
【0216】
図1に示されるように、結果は、本明細書において使用される培地中に凍結保存されたRPE細胞が、90%のヒト血清および10%のDMSOから構成される凍結保存培地(HS/DMSO)と比較して、同様の解凍後生存能およびより優れた解凍後活力(解凍後24時間でのより優れた%細胞接着)を有したことを実証している。
【0217】
実施例3
治療用RPE細胞組成物を、実施例1に記載されるように、ゼノフリーGMPグレード試薬、ゼノフリーGMPグレード細胞(放射線照射CRD008上で増殖させたHAD-C 102-hESC)を使用して製剤化した。
【0218】
RPE純度の測定についてのCRALBP+PMEL17+細胞の評価を、分化段階の終了時に行った。表1aおよび表1bに示されるように、RPE細胞の純度は、CS2(培地1)またはCS5(培地2)で製剤化された全てのRTA RPE細胞療法組成物について少なくとも98.76%またはそれ以上であった。
【0219】
RPE細胞間で生じるタイトジャンクションは、血液網膜関門の生成ならびにPEDFおよびVEGF極性分泌を可能にする。PEDFは頂端側へ分泌され、そこではPEDFは血管新生抑制および神経向性増殖因子として作用する。VEGFは主に基底側へ分泌され、そこではVEGFは脈絡膜内皮に対して血管新生促進性増殖因子として作用する。製造プロセスの終了時に、細胞中、トランスウェルシステムにおいて、RPE極性化(バリア機能ならびにPEDFおよびVEGF極性分泌)を測定した。表1aおよび1bに示されるように、バリア機能/経上皮電気抵抗(TEER)ならびにPEDFおよびVEGFの極性分泌が実証された。
【0220】
対照サンプル(Ctrl)を10% DMSOおよび90%ヒト血清中に凍結保存した。
【0221】
(表1a)製造実行(Production Run:PR)1および2についての培地1(CS2)および培地2(CS5)中に凍結保存された治療用RPE細胞の特徴付け
【0222】
(表1b)実験(PR)3および4についての培地1(CS2)および培地2(CS5)中に凍結保存された治療用RPE細胞の特徴付け
【0223】
実施例4
安定性アッセイをRTA RPE細胞療法組成物に対して行った。実施例1中の方法に従って製造された細胞を、凍結保存前に最長3時間、2%のDMSOを含有する培地1(CS2)、または5%のDMSOを含有する培地2(CS5)中に懸濁した。CS2およびCS5中に3時間インキュベーションした後に凍結保存された治療用RPE細胞は、凍結保存前に1時間未満インキュベートされた細胞と同様の解凍後生存能、活力および収率を示した。安定性結果を表2に示す。
【0224】
(表2)解凍後の治療用RPE細胞の安定性(凍結保存前に培地1(CS2)および培地2(CS5)中でインキュベーション)
【0225】
さらに、凍結保存前に3時間CS2またはCS5中にインキュベートされた細胞は、表3に示されるように、100 Ωを上回る経上皮電気抵抗(TEER)を生じさせる能力によって測定される、バリア機能(RPE細胞間のタイトジャンクション)を生じさせ、極性化様式でVEGFおよびPEDFを分泌する能力を実証した(
図15も参照のこと)。
【0226】
(表3)解凍後(凍結保存前に培地中でインキュベーション)の培地1(CS2)および培地2(CS5)中の治療用RPE(登録商標)細胞のTEERならびにPEDFおよびVEGFの極性分泌
【0227】
解凍後安定性を上述のRPE細胞療法組成物について評価した。RPE細胞組成物を2%のDMSOを含有する培地1(CS2)または5%のDMSOを含有する培地2(CS5)中に製剤化し、凍結保存前に最長3時間インキュベートした。生存能、生存細胞収率、および効力を、およそ2~8℃にて、凍結保存後0時間、1時間、2時間、3時間、5時間、6時間および24時間の時点で、上述のように決定した。
【0228】
RPE細胞は、2%のDMSOを含有する培地1(CS2)または5%のDMSOを含有する培地2(CS5)中で、凍結保存前に少なくとも約3時間かつ凍結保存後少なくとも約1時間、または凍結保存前に少なくとも約2時間かつ凍結保存後少なくとも約5時間、安定であることが分かった。
【0229】
実施例5
そのまま投与できる(RTA)RPE細胞療法組成物製剤と共に使用するための3つの凍結保存溶液の安全性を、Balb/cマウス中への網膜下注射後に評価した。
【0230】
合計36匹のBalb/cマウスを利用し、各群中九(9)匹の四(4)つの群へ分割した(投与後1、3および10日である終了時点の各々について、n=3)。これらの群は、1つのビヒクル(BSS PLUS, Alcon Laboratories)対照群、ならびに試験アイテム(CS5、CS2、およびBSS PLUSで1:1 v/v希釈されたCS2)を受容した3つの処置群を含有した。全ての動物に、網膜下注射を介して左眼中へ様々な処置を投与した。手順を、75 mg/kgでケタミン/メデトミジンを使用する麻酔下で行い、これは注射2分前にIP投与した。
【0231】
研究中、病的状態および死、体重、および一般的な臨床観察、ならびに外部および内部眼検査を行った。眼評価は、順化中に1回(投薬前のベースライン測定)、およびその後の各終了日に、獣医眼科医によって行われた。眼評価は以下を含んだ:スリットランプ生体顕微鏡検査を使用する前眼部および水晶体の検査、ならびに倒像眼底検査を使用する眼底の検査。動物を投薬後1、3および10日目に屠殺し、組織病理学検査を注射眼に対して行った。
【0232】
獣医眼科医および公認の獣医病理学者の委員会によって行われた、臨床検査、眼科検査および組織病理学検査では、RTA RPE製剤の網膜下投与後10日間のフォローアップにおいて、主要な処置関連のまたは毒物学的に有意な影響は実証されなかった。炎症の組織病理学的評価は、以下の基準に従う好中球、リンパ球、マクロファージ、および肥満細胞の存在に基づいた:炎症細胞の非存在によって示されるような炎症無し、x10拡大視野当たり最大10個の細胞によって示されるような軽度炎症、x10拡大視野当たり約10~20個の細胞によって示されるような中程度炎症、およびx10拡大視野当たり20個を超える細胞によって示されるような強度炎症。
【0233】
未処置動物の未処置の眼および対照群中の動物の非処置右眼の組織病理学的評価は、
図2および
図3に示されるように、病理変化を全く示さなかった。
【0234】
処置眼(左眼)の組織病理学的評価は、終了日1日に、BSS PLUS:CS2 (1:1 v/v)で処置された群中の動物のみが強度炎症の徴候を示したことを明らかにした。BSS PLUS、CS5またはCS2のいずれかで処置された他の動物は全て、軽度炎症から中程度炎症のいずれかを示した。BSS Plusで処置されそして研究の1日目に屠殺された動物から採取された処置眼の組織病理学的スライドの画像を、
図4Aおよび
図4Bに示す。これらのスライドは、強膜の軽度浸潤ならびに僅かなルーズマクロファージおよびリンパ球を伴う軽度炎症を示す。(それぞれ、x4およびx20拡大視野でのH&E染色)。
図5Aおよび
図5Bは、CS5で処置されそして1日目に屠殺された動物から採取された処置眼の組織病理学的スライドの画像を示す。これらのスライドは、強膜の浸潤、いくつかのマクロファージおよび僅かな好中球を伴う中程度炎症を示す。(それぞれ、x4およびx20拡大視野でのH&E染色)。CS2で処置されそして研究の1日目に屠殺された動物から採取された処置眼の組織病理学的スライドの画像を、
図6Aおよび
図6Bに示す。これらのスライドは、角膜中のマクロファージおよび好中球を伴う中程度炎症を示す。(それぞれ、x4およびx20拡大視野でのH&E染色)。
【0235】
CS2またはBSS PLUS:CS2のいずれかで処置された大抵の動物は終了日1日で前眼房中に最小限の線維素沈着を示したが、これらの急性変化は短期的反応を示す。
図7Aは、BSS PLUS:CS2で処置されそして研究の1日目に屠殺された動物から採取された処置眼の組織病理学的スライドの画像を示し、これは、強膜の中程度浸潤を伴う強度炎症を示す。(x4拡大視野でのH&E染色)。
【0236】
図7Bは、強膜中のリンパ球に隣接しての右下隅での線維素沈着を示す。(x20拡大視野でのH&E染色)。
【0237】
終了日3日に、CS5またはCS2のいずれかで処置された全ての動物が、マクロファージおよび分裂線維芽細胞によって特徴付けられる巣状強膜肉芽腫性反応(軽度~中程度炎症)を示した。マクロファージはまた、BSS PLUSで処置された動物においても観察され、しかし、それらは、線維芽細胞活性化を伴わない細胞の異なるパターンおよび濃度を示し、注射された物質と関係がなかった。これらの結果は、概して異物に対する初期段階反応の典型的パターンを示す。従って、終了日10日において、BSS PLUS、CS5、またはCS2のいずれかで処置された動物の全てが、炎症無しまたは軽度炎症および線維素沈着無しを示した。さらに、BSS PLUS:CS2で処置された1匹の動物のみが中程度炎症を示し、一方、全ての他の動物は軽度炎症を示した。
【0238】
BSS PLUSで処置されそして研究の3日目に屠殺された動物中における強膜の中程度浸潤およびいくつかのマクロファージを伴う中程度炎症を示す組織病理画像を、
図8Aおよび
図8Bに示す。
図9Aおよび
図9Bは、CS5で処置されそして研究の3日目に屠殺された動物中における、初期段階の一時的な異物反応を示す、巣状肉芽化反応ならびにいくつかのマクロファージおよび線維芽細胞を伴う強度炎症の組織病理画像を示す。
図10Aおよび
図10Bは、これもまた初期段階の一時的な異物反応を示す、いくつかのマクロファージおよび線維芽細胞を伴う強度炎症を示す、CS2で処置されそして研究の3日目に屠殺された動物からの組織病理画像である。軽度炎症および軽度浮腫を伴う、BSS PLUS:CS2で処置されそして研究の3日目に屠殺された動物からの組織病理画像を、
図11Aおよび
図11Bに示す。
図12Aおよび
図12Bは、僅かなマクロファージを伴う軽度炎症を示す、BSS PLUSで処置されそして研究の10日目に屠殺された動物からの組織病理画像を示す。
図13Aおよび
図13Bは、僅かなマクロファージを伴う軽度炎症を示す、CS5で処置されそして研究の10日目に屠殺された動物からの組織病理画像を示す。
図14Aおよび
図14Bは、僅かなマクロファージを伴う軽度炎症を示す、CS2で処置されそして研究の10日目に屠殺された動物からの組織病理画像を示す。
【0239】
組織病理学的評価結果は、10日間のフォローアップ後、対照と比較して、BSS PLUS、CS5、CS2、またはBSS PLUS:CS2の網膜下投与後に、主要な処置関連の影響および/または毒物学的に有意な影響がなかったことを実証している。処置眼の組織病理学的評価は、BSS Plus、CS5およびCS2で処置された群において終了日3日に異物に対する典型的な初期段階反応を明らかにした。しかし、この反応は一過性であり、非常に少量のマクロファージ浸潤を注射部位中に残して10日目までに治まった。壊死はいずれの動物の網膜または他の場所にも存在しなかった。
【0240】
実施例6
RTA RPE細胞療法組成物を、色素細胞の酵素濃縮(単離/採取)ならびにNUTS(-)+ヒト血清アルブミン(HSA)およびNUTS(-)(ヒト血清(HS)無し)を含む酵素中和溶液を使用して製剤化し、凍結培地の添加前および後に安定性について分析した。
【0241】
細胞を継代4代目までT25、T75およびT175フラスコ中に播種しそして増殖させた。約90%を超える多角形性に達すると、細胞を37℃/5%CO2で最長約50分間TrypLE Select (1X)中にインキュベートした。細胞をプールし、氷上に静置した。フラスコを等体積のPBS(-)で1回洗浄し、洗浄液を細胞プールへ添加した。酵素中和の改善および細胞ストレスの減少のために、PBS(-)洗浄液をNUTS(-)で置き換えた。
【0242】
細胞プールを次いでサンプリングし(180μL PBS(-)中20μL)、例えば、NC-200細胞カウンターのような細胞カウンターを使用してカウントした。細胞プールを、次いで、群(G1、G2およびG3)についての様々なクエンチング溶液中へアリコートした。各群からの細胞をカウントし、濾過し、4℃での細胞組成物安定性分析のためにアリコートした。
【0243】
分析した酵素中和溶液タイプは以下を含んだ:
・群1(G1) - 20%ヒト血清(HS)/DMEM (HS陽性対照群)
・群2(G2) - Nutristem(-)およびヒト血清アルブミン(HSA)
・群3(G3) - Nutristem(-) (NUTS)
【0244】
クエンチング群G1、G2、およびG3の各々をタンデム500-200-40-ミクロン連続濾過システムに通した。濾過された細胞溶液を4℃で維持し、細胞生存能を濾過後0、2および4時間の時点で試験した。
【0245】
濾過後の各時点の終了時に、細胞をカウントし、約220gで約5分間遠心分離し、上澄みを廃棄し、そしてペレットを約5~10 mL CS5中に再懸濁し、サンプリングし、カウントした(180μL 20% HS/DMEM中20μL)。カウント結果に基づいて、細胞をCS5中に希釈し、2x106細胞/mlの最終濃度を得た。凍結保存前安定性分析のために異なる時間(0、2、3、または4時間)、細胞を4℃で静置し、この後、RPE細胞+凍結培地組成物をクライオバイアル中へアリコートした。3つのクライオバイアルを無作為にサンプリングし、細胞をカウントし、凍結保存した。
【0246】
バイアルを37℃水浴中で約2.5分間解凍した。細胞をカウントのために直ちにサンプリングし(180μL 20% HS/DMEM中20μL)、細胞懸濁液を暖かい20% HS/DMEM培養培地の滴下によって希釈した。細胞を次いで洗浄し、追加の分析のために氷上に静置した。
【0247】
リカバリーパーセンテージを2x106細胞/mlの標的最終濃度に基づいて計算した。
【0248】
連続濾過後、異なる酵素中和溶液中の濾過された細胞懸濁液を4℃で維持し、濾過後0、2および4時間で細胞生存能を評価した。
【0249】
【0250】
全ての時点での全ての群中の生存能は、表4に示されるように、98%または99%のままであった。有意差は、G1(対照群)の時点0時間と比較して、異なる時点(0、2および4時間)での2つの中和溶液製剤群G2およびG3間で認められなかった。
図16は、対照群G1と比較しての濾過後の経時的な4℃でのG2(NUTS(-)+HSA)およびG3(NUTS(-))群の生存能を示す。
【0251】
細胞リカバリーおよび生存能を、凍結プロセス前(凍結保存前)に凍結保存溶液中において評価した。細胞療法組成物(濾過後)を0、2および4時間の期間4℃で維持した。各溶液を次いで遠心分離し、2x106細胞/mlの最終濃度へ凍結保存溶液CS5中に再懸濁した。次に、凍結保存溶液中の細胞(凍結保存+細胞療法組成物、凍結保存前)を4℃で0、2、3および4時間維持し、その後、1 mLクライオバイアル中へアリコートした。各群からの3つのバイアルをサンプリングし、カウントし、バイアルが凍結保存される前の生存能およびリカバリーパーセンテージを評価した。
【0252】
インキュベーション時間0時間とそれに続く0、2、3、および4時間の凍結培地中でのインキュベーションでの細胞療法組成物の、凍結プロセス前の細胞生存能およびリカバリーを、表4Aに一緒に要約する。表4Bおよび4Cは、0、2、4時間インキュベートされそれに続いて凍結保存溶液(細胞 + CM)中で0、2、3、4時間インキュベートされた細胞組成物を含む。対照群(G1)を、細胞組成物について時点0時間かつ細胞+ CM(凍結保存前)について0時間についてのみ評価した。
【0253】
(表5A)中和溶液中0時間のインキュベーションとそれに続く凍結培地(細胞+ CM)中0、2、3、および4時間のインキュベーションでの細胞療法組成物の凍結保存前生存能およびリカバリー
【0254】
表5A、
図17A、および
図17Bに示されるように、0時間の治療用細胞組成物インキュベーションとそれに続く凍結培地中での0時間のインキュベーション(凍結保存前)の時点で、生存能およびリカバリーにおける有意差は、G1対照群と比較して、中和群G2およびG3の両方の間で検出されなかった。さらに、中和溶液中における0時間の治療用細胞組成物インキュベーションとそれに続く凍結培地中での2、3、および4時間のインキュベーション(凍結保存前)は、G1対照群と比較して、G2およびG3群の両方において細胞の生存能またはリカバリーの減少を示さなかった。生存能は、経時的に95%を上回ったままであり、有意差は3つの群間で観察されなかった。さらに、全ての群のリカバリーは75%~100%の範囲内のままであった。
【0255】
(表5B)2時間の治療用細胞組成物インキュベーションとそれに続く凍結培地中での0、2、3および4時間のインキュベーション(凍結保存前)後の凍結保存前細胞生存能および細胞リカバリー
【0256】
(表5C)4時間の治療用細胞組成物インキュベーションとそれに続く凍結培地中での0、2、3、4時間のインキュベーション(凍結保存前)後の凍結保存前細胞生存能および細胞リカバリー
【0257】
表5Bおよび5Cならびに
図18A、
図18B、
図19A、および
図19Bは、RPE治療用細胞組成物が、中和溶液中で2および4時間インキュベートされ、続いて凍結保存前に凍結培地中で0~4時間インキュベートされる場合、群G2(Nutistem(-)およびHSA中の細胞組成物)およびG3(Nutistem(-) (NUTS)中の細胞組成物)の両方について同様の細胞生存能およびリカバリー値が見られることを示している。このアッセイは、凍結保存前に、中和溶液中または凍結培地中で長期インキュベーションを行った場合、細胞生存能または細胞リカバリーに対して有意な影響はなかったことを実証した。
【0258】
実施例7
細胞は凍結保存中にストレスを経験し得、これは、解凍後の不十分な生存率をもたらし得る。さらに、採取手順中の細胞に対するストレスは、解凍後の細胞生存能およびリカバリーに影響を及ぼし得る。従って、RTA治療用細胞組成物の細胞生存能およびリカバリーを解凍後に評価した。異なる中和溶液(上述のような、G1、G2、およびG3)中で0時間インキュベートされ、続いて凍結保存前に0、2、3および4時間凍結培地中でインキュベートされた治療用細胞組成物を、凍結保存後の生存能およびリカバリーについて評価した。
【0259】
表6は、治療用細胞組成物を酵素中和溶液中で0時間インキュベートし、続いて凍結培地中で0、2、3、および4時間(凍結保存前)インキュベートし、凍結保存し、それから解凍した場合に得られた、生存能および安定性結果を要約する。
【0260】
(表6)0時間の細胞+中和溶液インキュベーションとそれに続く凍結培地中での0、2、3、および4時間のインキュベーションの、解凍後の生存能およびリカバリー
【0261】
凍結培地中での異なるインキュベーション時間を伴う凍結保存前の細胞生存能およびリカバリーの分析は、生存能が全ての時点での全ての群において約90%超に維持され、リカバリーは約75%~100%の範囲内であったことを明らかにした。
【0262】
図20Aに示されるように、群間で細胞生存能の有意差はなく、生存能は凍結保存前時間範囲全体にわたって約95%超のままであり、G1対照群の生存能に匹敵した。リカバリー結果の分析は、
図20Bに示されるように、群G4についてより高いリカバリー値を明らかにし、これは、凍結保存前2時間でピークに達し、次いで、凍結保存前3時間および4時間の後で僅かに減少した。しかし、リカバリーは約80%~100%の範囲内のままであった。
【0263】
治療用細胞組成物が中和溶液中で0、2、および4時間インキュベートされ、続いて凍結培地中で0、2、3、および4時間インキュベートされた場合に得られた解凍後の結果を、表7に示す。これらの結果は、凍結保存前のCS5への細胞の長期曝露に対する解凍後の生存能およびリカバリーの関係を示しており、これは、今度は、酵素中和溶液中での細胞の長期インキュベーションによって影響され得る。
【0264】
(表7)酵素中和溶液中で0、2、4時間インキュベートされ、続いて凍結培地(凍結保存前)中に0、2、3、および4時間インキュベートされた細胞の、解凍後の生存能およびリカバリー
【0265】
群G2およびG3の両方について測定された生存能は93%超でロバストであり、全ての時点にわたって群G2およびG3間で有意差はなかった。両方の群のリカバリーは有意差を示さなかった。群G2についてのリカバリーは75%±3.3であり、群G3についてのリカバリーは81%±7.1であった。
【0266】
これらの結果は、中和溶液(HSA有り(群G2)およびHSA無し(群G3)のNUT(-))が細胞リカバリーまたは細胞生存能を損なわなかったことを実証している。有意差は、HSA有りまたは無しの2つのクエンチング群(G2およびG3)間で認められなかった。HSを含まない酵素中和溶液についての細胞生存能および細胞リカバリー結果は、凍結保存前および凍結保存後の両方について、HSを含む酵素中和溶液(G1)に匹敵した。
【0267】
加えて、HS無しの酵素中和溶液および濾過工程を含む細胞採取手順は、細胞の生存能を損なわなかった(表4)。細胞リカバリーおよび生存能の凍結保存前および解凍後分析は、対照群(G1)と比較して群G2およびG3間で有意差を示さなかった(表5~7)。細胞を酵素中和溶液中で最長2時間インキュベートし、続いて凍結培地中で最長3時間インキュベートした場合、最大のパーセントリカバリーおよび生存能が認められた。しかし、酵素中和溶液中または凍結培地中のいずれかにおける少なくとも4時間のインキュベーション時間は、細胞生存能または細胞リカバリーの有意な減少を生じさせなかった。
【0268】
細胞を採取し、凍結保存し、そして解凍した後に、PEDF分泌および細胞増殖能力をさらに測定した。結果を表8に示す。
【0269】
(表8)酵素中和溶液(細胞)およびRTA RPE細胞組成物(細胞+CM)のインキュベーション時間を伴うRPE細胞組成物についての採取および凍結保存後の細胞のPEDF分泌および増殖能力
ND - データ無し
【0270】
表8に示されるように、解凍された後、細胞は、PEDFを分泌し、増殖するそれらの機能的な能力を保持していた。結果は、全ての測定時点でHSを含まない2つの酵素中和溶液群(G2、G3)間で、またはこれらの群とHSを含む酵素中和溶液群(G1)との間で、有意差を示さなかった。
【0271】
実施例8
治療用細胞組成物を、表9に示されるように、室温(RT)および約2~8℃の温度でのインキュベーション後の濾過後安定性(%生存能および%リカバリー)について分析した。
【0272】
【0273】
細胞を酵素的に採取した(例えば、TrypLE Select)。Nutristem(-) (NUTS)を使用して、酵素を中和した。連続濾過後、濾過された細胞懸濁液(細胞プール)を2つの群に分割し、第1群(「細胞2~8℃」)を約2~8℃で維持し、第2群(「細胞RT」)をRTで維持した。2つの群の細胞生存能および細胞濃度を、時間0および2時間のインキュベーション後に評価した。
【0274】
表10に示されるように、約2~8℃またはRTで凍結保存前にインキュベートされた細胞組成物の群間で細胞生存能および細胞濃度における有意差はなかった。同様に、
図22に示されるように、群間でパーセントリカバリーにおける有意差はなかった。
【0275】
(表10)2時間のインキュベーション後の細胞生存能および細胞濃度
【0276】
2時間のインキュベーション後、2つの群を遠心分離し、2x106細胞/mlの最終濃度へ凍結保存溶液CS5中に再懸濁した。「細胞2~8℃」群を4つのサブ群(細胞+CM-群1~4)へ分割し、これらを2~8℃でインキュベートした。細胞+CM-群1を、細胞濃度および細胞生存能について時点0時間でカウントし、凍結保存した(n=29クライオバイアル)。細胞+CM-群2を2~8℃での2時間のインキュベーション後にカウントし、細胞+CM-群3を4時間後にサンプリングし、細胞+CM-群4を細胞濃度および細胞生存能についてインキュベーションから6時間後にカウントした。様々なインキュベーション時点で、カウントが完了したら、細胞+CM-群2~4を、各クライオバイアル中へ1 mlずつアリコートすることによって凍結保存した(それぞれ、n= 30、30および29クライオバイアル)。「細胞+CM RT」を、2、4、および6時間の時点で生存能および細胞濃度についてサンプリングした。6時間のインキュベーション後、この群をさらに凍結保存した(n=22クライオバイアル)。
【0277】
(表11)凍結培地中の治療用細胞組成物:様々な時点での細胞濃度および細胞生存能
【0278】
表11ならびに
図23Aおよび
図23Bに示されるように、RTでの細胞組成物+凍結培地の群と約2~8℃での細胞組成物+凍結培地の群との間で生存能における有意差はなく、経時的に全ての群における細胞生存能の僅かな減少があった。結果は、両方の温度条件(約2~8℃およびRT)における少なくとも6時間にわたる全ての群内で、細胞リカバリーは安定したままであり、凍結プロセス前に約2~8℃でインキュベートされた細胞に、僅かにより高いリカバリーがあったことを示している。RTでインキュベートされた細胞は、2時間でリカバリーの15%減少を示し、しかし、リカバリーおよび生存能は少なくとも6時間安定したままであった。
【0279】
実施例9
一方が約37℃での水浴を含み、他方が自動細胞解凍ユニットを含む、2つの細胞解凍方法を、表12に示されるように、細胞生存能、リカバリー、無菌性、効力およびアイデンティティーに基づいて評価した。
【0280】
(表12)解凍後分析についての試験群およびアッセイ時点
V - 生存能%、R - リカバリー%、I - アイデンティティー、P - 効力、S - 無菌性
【0281】
RTA治療用細胞組成物の4つの群のうちの各々からの2つのバイアルを同時に解凍し;1つのバイアルは自動細胞解凍ユニット(例えば、Sigma-Aldrich製のThawSTAR自動解凍システム)を使用し、第2のバイアルは約37℃での標準水浴を使用した。解凍されたバイアルを次いで氷上に静置した。各バイアルから静かにピペッティングし、各バイアルから20μlの2つのサンプルを採取し、180μlのNUTS(-)中に希釈し、ボルテックスし、カウントした。平均生存能およびリカバリーパーセンテージを、各解凍されたバイアルについて計算した。
【0282】
最長4時間にわたって、解凍後の室温でのRTA治療用細胞組成物の安定性を、生存能、リカバリー、無菌性、効力およびアイデンティティーについて、解凍された細胞組成物をアッセイすることによって評価した。測定されたTEER、21日目での基底PEDF/VEGF比率分泌、および21日目での頂端VEGF/PEDF比率分泌によって、効力を決定した。2x106または5x106細胞/mlの標的最終濃度に基づいて、リカバリーパーセンテージを計算した。
【0283】
自動細胞解凍ユニットを使用して解凍されたRTA治療用細胞組成物の生存能およびリカバリー平均値は、表13に示されるように、両方の細胞濃度で、約37℃で従来の水浴を使用して達成されたものに匹敵した。
【0284】
(表13)異なる細胞濃度での、約37℃の水浴を使用する解凍と比較した自動細胞解凍ユニットを使用して解凍されたRTA治療用細胞組成物の平均生存能およびリカバリー
【0285】
表14に示されるように、0、2、および4時間の時点での各群についての平均パーセント生存能は少なくとも83%であった。全ての試験された群の平均パーセントリカバリーは、0、2、および4時間の時点で少なくとも約78%であった。2および4時間の室温インキュベーション後の全ての群の、生存能における約4%~10%の僅かな減少およびリカバリーにおける最大17%の減少があった。5x106細胞/mLの細胞濃度の平均リカバリーは、全ての時点で2x106細胞/ml濃度のそれよりも高かった。
【0286】
【0287】
図24Aおよび
図24Bは、室温での4時間のインキュベーション時間にわたる解凍されたRTA細胞組成物の生存能およびリカバリーを示すグラフである。
【0288】
実施例10
送達デバイスとのRTA治療用細胞組成物の適合性を評価した。送達デバイスの例としては、約0.63 mmの外径および約0.53 mmの内径を有する注射針、約0.5 mmの外径および約0.25 mmの内径を有するキャピラリー、ならびに約0.12 mmの外径および約0.07 mmの内径を有するチップを含むDutch Ophthalmic Research Center (D.O.R.C)によって製造されるデバイスが挙げられるが、これに限定されない。4つのバッチを含む送達デバイス放出RTA治療用細胞組成物を、自動解凍システムを使用した解凍後のRTでの2時間のインキュベーション時間の後に、生存能、リカバリーおよび効力についてアッセイした。RTA細胞組成物の全てを、群4(凍結保存前に濾過工程を適用しなかった)を除いて、実施例6に記載される通りに製剤化した。結果を表15に示す。
【0289】
(表15)送達デバイスからの放出前のRTA細胞組成物の安定性
【0290】
試験した群のCRALBP/PMEL17(アイデンティティー)値(表15)は、全ての時点で全ての試験したバッチについて98%超であった。正味TEER値(14日目)は、全ての群において100Ωを優に上回ったままであった。時間が進むにつれて、主に群1および4において4時間後に、漸減が明らかであった。群1および群2からのバッチを、室温での4時間のインキュベーション後、無菌性について試験し、両方のバッチについて増殖は検出されなかった。
【0291】
生存可能な、強力なRTA治療用細胞組成物を送達するための送達デバイスの適合性を、RTで2時間インキュベートされた解凍されたRTA治療用細胞組成物を送達デバイス内に放出することによって評価した。柔軟性を可能にするために、第1および第2の投薬量を試験した。細胞を生存能、リカバリー、および効力についてアッセイした。送達デバイス中へRTA治療用細胞組成物をロードする前にRTで2時間維持された後の生存能およびリカバリーパーセンテージについての結果。
【0292】
(表16)RTでの時間で2時間後の生存能およびリカバリー(送達デバイス前)
【0293】
全ての群の送達デバイス放出後の生存能およびリカバリーパーセンテージを、表17に示す。平均生存能は89%~95%であった。全ての群にわたる平均総リカバリーは約71%~94%であった。送達デバイス前リカバリー結果と比較しての、第1の100μlのリカバリーにおける最大8%の僅かな減少、および第2の100μl体積における最大16%減少があった(リカバリーが安定していた群2を除く)。
【0294】
(表17)送達デバイス放出後の細胞生存能およびリカバリー結果
【0295】
群4は凍結保存前に濾過工程無しで製剤化した。従って、減少したリカバリーは、細胞および細胞外マトリックス凝集体が送達デバイス中に存在することに関係があり得る。
【0296】
送達デバイス放出後の正味TEER(14日目について)値を表18に示す。正味TEER値は、約154Ω~約435Ωの範囲であった。PEDF頂端/基底比率(21日目)およびVEGF基底/頂端比率(21日目)についての結果も表18に示す。
【0297】
【0298】
群1および3についての2x106細胞投薬量についてのTEER値は、5x106細胞投薬量(群2および4)のTEER値よりも僅かに高かったが、全ての試験された送達デバイス後サンプル群が、効力アッセイ結果によれば、生物学的活性を示した。
【0299】
実施例11
クライオシッパーに液体窒素をロードし、輸送のために準備し、そして実施例10に記載された凍結保存したRTA治療用細胞組成物のバッチをロードした(群1~4)。RTA細胞組成物の全てを、群4(凍結保存前に濾過工程を適用しなかった)を除いて、実施例6に記載される通りに製剤化した。RTA治療用細胞組成物を、イスラエルのエルサレムから、メリーランド州のフレデリックにあるUS-バイオレポジトリーへ出荷し、液体窒素フリーザーの気相中に中間保管し、イスラエルのエルサレムへ製品を返送してもらった。出荷は、単一気相クライオシッパー中に保管された4つのバッチ(群1~4)の空輸および陸上輸送を含み、World Courierによって行われた。クライオシッパーはおよそ(-196℃)~(-150℃)の要求される保管状態を提供し、内部データロガーによってモニターされる。群1~4を、外観、生存能、リカバリー、効力および無菌性についてアッセイした。結果を表19に示す。
【0300】
(表19)凍結出荷されたRTA細胞組成物の外観、生存能、リカバリー、効力および無菌性
* 塊は、充填および仕上げ手順前に濾過無しで製剤化した結果であった。
【0301】
クライオシッパー中の温度は-196℃未満へ達したが、この温度は、細胞組成物の完全性および品質に対するリスクを生じさせず、液体窒素データロガーの較正範囲内である。
【0302】
結果は、CS5凍結培地中に製剤化された凍結保存したRTA細胞組成物の安定性、品質および完全性が、液体窒素フリーザーの気相中での中間保管およびイスラエルのエルサレムへの製品の返送を含む、イスラエルのエルサレムから、メリーランド州のフレデリックにあるUS-バイオレポジトリーへの管理された出荷の間、維持されることを示している。
【0303】
実施例12
RPE細胞および凍結保存溶液を含むRTA治療用細胞組成物の安全性を、NOD/SCIDマウス中への網膜下注射後に評価した。合計40匹の5~9週齢の雌性NOD/SCIDマウスを利用し、各群中に4匹または12匹の動物の四(4)つの群に分割した(投与後1、3、7、および14日である終了時点の各々について、n=1または3)。
【0304】
4つの組成物を評価した。表20に示されるように、群1にBSS Plusを投与し、群2にCS5凍結培地を投与し、群3にRTA治療用細胞組成物(RPE細胞およびCS5を含む)を投与し、群4にBSS Plus中のRPE細胞を投与した。
【0305】
【0306】
動物を、最初の24時間(投与後の最初の4時間の間、特別な注意を払った)の間、および、その後毎日、終了まで、定期的に観察した。局所注射部位、皮膚、柔皮、眼、粘膜、呼吸、分泌および排泄の発生(例えば、下痢)ならびに自律活動(例えば、流涙、唾液分泌、立毛、瞳孔径、異常な呼吸パターン)の変化について、観察を行った。歩行、姿勢、ならびに、奇妙な行動、震え、痙攣、睡眠および昏睡の存在のような、取り扱いに対する反応の変化も含まれる。観察された異常、有毒徴候、瀕死状態および予定外の死は記録されなかった。眼の検査が、順化中に1回、および各終了日に、獣医眼科医によって行われた。全ての群からの全ての右眼(未処置)において、目では見えない病変(no visible lesions:NVL)が観察された。
【0307】
終了時に、動物をCO2窒息によって屠殺し、肉眼所見を行い、種々の眼構造物を含む局所注射部位(眼)、主な組織および臓器系を検査した。視神経を含めて、動物から眼球除去し、Davidson溶液中に固定した。全ての眼を組織病理学検査へ供した。
【0308】
組織病理学的評価は、3日目および14日目において、群3および4からの少数の細胞処置動物におけるマクロファージ浸潤の存在を明らかにした(各終了日および群において3匹の動物のうちの1匹)。これらの所見は、恐らく、ヒトRPE細胞の注射に対する遅発免疫反応に起因する。しかし、細胞処置群中の大部分の動物(20/24)は、移植された細胞に対していかなる免疫反応も示さなかった。細胞で処置されなかった群1および2において、好中球が1、3および7日目に観察された(3匹の動物において)。好中球は免疫反応の初期段階によく見られ、一方、マクロファージの欠如は遅発反応を示さない。細胞処置マウスのうちの少数(4/24)におけるマクロファージの出現を除いて、全ての群が同様の病理を示し、これは、所見が手順誘発炎症に関係がある可能性が最も高いことを示している。
図25Aおよび
図25Bは、それぞれ、x4およびx20拡大での代表的な組織画像であり、RTA製剤(細胞+ CS5)で処置された動物における軽度炎症を示す。収集されたデータに基づくと、10日間のフォローアップ後、ビヒクルと比較して、治療用細胞組成物の網膜下投与後に、主要な処置関連の影響および/または毒物学的に有意な影響はなかった。
【0309】
実施例13
異なる生産実行中に製剤化されたRTA RPE治療用細胞組成物の比較可能性を評価するために、いくつかのバッチを調製した。先ずhESCの少なくとも1つのアンプルを解凍することによって、hESCを機械的に継代した。解凍後、アンプルから回収された10個の断片を、放射線照射されたヒト臍帯由来フィーダー細胞の単層を含有する2つのセンターウェル(CW)プレート上に播種し、37℃/5% CO2で「NutriStem Plus」+HAS培地(または等価物)中でインキュベートした(1アンプル → 10個のコロニー断片を含む2 CW)。
【0310】
合計45個のセンターウェルプレートに達するまでさらに約3週間、hESCコロニーを増殖させ、週1回継代した。コロニーを、次いで、約2:1の比でフィーダーを含む6 cmプレートへ移し(2 CW → 6 cmプレート)、37℃/5% CO2で「NutriStem Plus」+HAS培地中で約6日間培養した。
【0311】
スフェロイド体(SB)を形成しそしてRPE分化誘導プロセスを開始するために、hESCコロニーを6 cmプレートから収集し、約5:1の比でプレート(例えば、Hydrocell(商標)(Nunc))(非接着性表面)へ移し(5 x 6 cmプレート → プレート)、37℃/5% CO2 /5%O2で、ニコチンアミドが補われた「NutriStem Minus」培地中で約1週間培養した。SB形成から約1週間後、SBを収集し、ピペッティングによってより小さな断片へ破壊した。SB断片を、ラミニン511 (BioLamina, Stockholm, Sweden)または等価物がコーティングされた6ウェルプレート上に播種し、約37℃/5% CO2 /5% O2でNuriStem Minusまたは等価物中で約5週間、そして37℃/5% CO2で約1週間、ニコチンアミドおよびアクチビンA(分化段階に従って変えられたニコチンアミドおよびアクチビンAの組み合わせ)の存在下で培養した。分化段階の終了時に、色素細胞を酵素的に濃縮し、組換えヒトゼラチンコートT175 (175 cm2)フラスコへ移し(P0)、37℃/5% CO2でNutriStem Minus(最初の2~3日間について20%ヒト血清/DMEM)中でインキュベートした。
【0312】
細胞を、14日目あたりで採取し、rh-ゼラチンコートT175フラスコへ継代し、約37℃/5% CO2でNutriStem Minus(最初の2~3日間について20%ヒト血清/DMEM)中でインキュベートしてもよい(P1)。細胞を12日目に採取し、rh-ゼラチンコートT175フラスコへ継代し、37℃/5% CO2でNutriStem Minus(最初の2~3日間について20%ヒト血清/DMEM)中でインキュベートした(P2)。
【0313】
P2継代後の10日目に、T175フラスコを採取し、500-200-40μm細胞ストレーナーシステムの連続タンデムを使用して濾過し、次いでプールした。この時点での細胞の総数は少なくとも約551x106細胞であり得る。細胞を遠心分離し、凍結培地(例えば、CryoStor 5(BioLife Solutions Inc., Bothell, WA))中に再懸濁し、カウントし、約1x106細胞/ml、約2x106細胞/ml、約3x106細胞/ml、約4x106細胞/ml、約5x106細胞/ml、約6x106細胞/ml、約7x106細胞/ml、約8x106細胞/ml、または約9x106細胞/mlの最終濃度を達成した。この細胞懸濁液を、クライオバイアル中へ分配するまで、2~8℃で維持することができる。RTA治療用細胞組成物を、次いで、制御速度フリーザーを使用して凍結保存し、次いで、気相LN2フリーザーへ移すことができる。使用され得る凍結プロフィールの例は以下を含む:
・4℃で待機する
・4℃で1分間保持する
・1.00℃/分でサンプルを-11℃へ
・30.00℃/分でチャンバを-50℃へ
・15.00℃/分でチャンバを-25℃へ
・1.00℃/分でチャンバを-50℃へ
・10.00℃/分でチャンバを-90℃へ
・終了
または
・4℃で待機する
・1.00℃/分でサンプルを-4℃へ
・25.00℃/分でチャンバを-40℃へ
・10.00℃/分でチャンバを-12℃へ
・1.00℃/分でチャンバを-40℃へ
・10.00℃/分でチャンバを-90℃へ
・終了
【0314】
表21は、増殖させ、RPE細胞へ分化させ、RPE細胞として増殖さぜる場合の、hESCの形態および純度結果を提供する。表21に示されるように、hESCは、上述のプロセスを使用して首尾よく増殖および分化した。
【0315】
(表21)RTAバッチAについての増殖および分化段階中の細胞の分析
【0316】
さらに、パーセント生存能、細胞濃度、パーセントリカバリー、および純度をバッチAについて決定した。結果を表22に示す。
【0317】
(表22)RTAバッチAについてのパーセント生存能、細胞濃度、パーセントリカバリー、および純度
【0318】
バッチAについて記載されたように、追加のバッチを製造および分析した。各バッチについての細胞用量を表23に示す。
【0319】
【0320】
バッチB~Fについての結果を表24および表25に示す。
【0321】
(表24)バッチB~Fについての形態、無菌性、および純度
* 試験した細胞組成物
【0322】
(表25)バッチB~Fについてのパーセント生存能、細胞濃度、パーセントリカバリー、純度、無菌性、PEDF分泌およびVEGF分泌
【0323】
表24および表25に示されるように、RTA RPE治療用細胞組成物の製剤化方法は、細胞形態、無菌性、純度、パーセント生存能、細胞濃度、パーセントリカバリー、PEDF分泌およびVEGF分泌(効力)に関して再現可能かつロバストである。
【0324】
本明細書中の説明は多くの詳細を含むが、これらは開示の範囲を限定するとは解釈されるべきでなく、しかし、現在好ましい態様のいくつかの例示を提供するに過ぎないと解釈されるべきである。従って、開示の範囲は、当業者に明らかとなり得る他の態様を完全に包含することが、認識されるだろう。
【0325】
特許請求の範囲において、単数形での要素への参照は、明確にそのように指定されない限り、「唯一」を意味するように意図されず、むしろ、「1つまたは複数」を意味するように意図される。当業者に公知である開示される態様の要素の全ての構造的、化学的、および機能的等価物は、参照により本明細書に明示的に組み入れられ、特許請求の範囲によって包含されるように意図される。さらに、本開示中の要素、成分、または方法工程は、要素、成分、または方法工程が特許請求の範囲中に明確に記載されるかどうかにかかわらず、公衆に提供されるように意図されない。語句「のための手段」を使用して要素が明示的に記載されない限り、本明細書中の請求項要素は「ミーンズ・プラス・ファンクション」要素として解釈されないものとする。語句「のための工程」を使用して要素が明示的に記載されない限り、本明細書中の請求項要素は「ステップ・プラス・ファンクション」要素として解釈されないものとする。