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  • 特許-親水性複合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】親水性複合体
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/02 20060101AFI20240605BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240605BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240605BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20240605BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240605BHJP
【FI】
E03B3/02 A
C08G18/00 L
C08G18/00 H
C08G18/48 033
C08G18/08 038
C08G101:00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021514546
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019051575
(87)【国際公開番号】W WO2020068496
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】62/738,227
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ショーナー、コディ
(72)【発明者】
【氏名】スリヴァスタヴァ、ヤスミン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】シャー、ヴィラジ ケー.
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-068685(JP,A)
【文献】特表2018-510796(JP,A)
【文献】特開2002-084889(JP,A)
【文献】特表2014-532397(JP,A)
【文献】特表2018-507962(JP,A)
【文献】特開2007-330208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08G101/00
E03B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)3次元ランダムループ(3DL)構造であって、3次元配向で一緒に配置および結合され、かつ前記3DL構造内に空間を画定する、熱可塑性ポリマーの複数のランダムループを含む、3次元ランダムループ(3DL)構造と、(b)前記3DL構造の実質的にすべての前記空間を占める親水性ポリウレタン発泡体と、を含み、
前記熱可塑性ポリマーは、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィンインターポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマーおよびポリプロピレンからなる群より選択される
水封じ込めシステムに使用するための複合体構造。
【請求項2】
前記3DL構造が、0.005g/cm~0.2g/cmの見掛けかさ密度を有する、請求項1に記載の水封じ込めシステムに使用するための複合体構造。
【請求項3】
前記親水性ポリウレタン発泡体が、i)少なくとも1つのポリイソシアネート、ii)水、iii)発泡体安定化界面活性剤、およびiv)任意選択で、水とは異なる1つ以上の少なくとも二官能性のイソシアネート反応性材料を含む、反応混合物の反応生成物であり、前記反応混合物が、成分i)およびiv)の合計重量に基づいて、30~75重量%のオキシエチレン単位を含有する、請求項1または2に記載の水封じ込めシステムに使用するための複合体構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の水封じ込めシステムに使用するための複合体構造を作製する方法であって、
(I)i)少なくとも1つのポリイソシアネート、ii)水、iii)発泡体安定化界面活性剤、およびiv)任意選択で、水とは異なる1つ以上の少なくとも二官能性のイソシアネート反応性材料を含む、反応混合物を形成するステップであって、前記反応混合物が、成分i)およびiv)の合計重量に基づいて、30~75重量%のオキシエチレン単位を含有する、ステップと、
(II)3DL構造に前記反応混合物を含浸させるステップであって、前記3DL構造が、3次元配向で一緒に配置および結合され、かつ前記3DL構造内に空間を画定する熱可塑性ポリマーの複数のランダムループを含んで、前記3DL構造に前記反応混合物を含浸させるステップと、
(III)前記反応混合物が膨張および硬化して、前記3DL構造の実質的にすべての前記空間を占める親水性ポリウレタン発泡体を形成するように、前記反応混合物を硬化させるステップと、を含み、
前記熱可塑性ポリマーは、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィンインターポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマーおよびポリプロピレンからなる群より選択される
方法。
【請求項5】
水封じ込めシステムに使用するための単層または多層マットであって、前記マットが、請求項1~3のいずれかに記載の水封じ込めシステムに使用するための複合体の少なくとも1つの層を含む、水封じ込めシステムに使用するための単層または多層マット。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載の水封じ込めシステムに使用するための複合体を含む、水封じ込めシステム。
【請求項7】
少なくとも1つの遮水層と、前記遮水層の少なくとも一部分の上に直接または間接的にある、請求項1~3のいずれかに記載の水封じ込めシステムに使用するための複合体構造の少なくとも1つの層と、前記親水性発泡体層の少なくとも一部分の上に直接または間接的に位置付けられた少なくとも1つの上面層と、を含む、水封じ込めシステムであって、前記水封じ込めシステムが、前記上面層に落下した水を前記親水性発泡体層に排出するための排出手段を含む、水封じ込めシステム。
【請求項8】
前記上面層が、土壌層および植生層を含み、前記排出手段が、前記複合体構造と流体連通する前記土壌層の細孔を含む、請求項7に記載の水封じ込めシステム。
【請求項9】
前記親水性ポリウレタン発泡体層が、底面に1つ以上のチャネルを有し、そのチャネルが、水が流れて前記水封じ込めシステムから除去され得る経路を形成する、請求項7または8に記載の水封じ込めシステム。
【請求項10】
前記遮水層の下に直接または間接的にある支持構造をさらに含む、請求項7~9のいずれかに記載の水封じ込めシステム。
【請求項11】
前記支持構造が、屋根構造である、請求項10に記載の水封じ込めシステム。
【請求項12】
支持構造と、前記支持構造の少なくとも一部分の上に直接または間接的にある少なくとも1つの遮水層と、前記遮水層の少なくとも一部分の上に直接または間接的にある、請求項1~のいずれかに記載の水封じ込めシステムに使用するための複合体構造の少なくとも1つの層と、前記親水性ポリウレタン発泡体層の少なくとも一部分の上に直接または間接的にある分離布と、前記分離布の少なくとも一部分の上に直接または間接的に位置付けられた少なくとも1つの上面層と、含む、水封じ込めシステムであって、前記水封じ込めシステムが、前記上面層に落下する水を前記親水性発泡体層に排出するための排出手段を含む、水封じ込めシステム。
【請求項13】
前記親水性ポリウレタン発泡体層が、底面に1つ以上のチャネルを有し、そのチャネルが、水が流れて前記水封じ込めシステムから除去され得る経路を形成する、請求項12に記載の水封じ込めシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性複合体、親水性複合体を作製するための方法、および親水性複合体成分を含有する水管理システムに関する。
【0002】
建築物もしくは他の構造の屋根上、または道路および駐車場構造などの他の大きな水平面上に溜まった降水は、その地域の下水道に排水されることが多い。これにより、特に大雨または雪もしくは氷の急速な融解がある場合に、下水道システムに負担がかかり、またはその容量が圧迫される可能性がある。これにより、洪水、未処理の流出水の排水、および他の問題が発生する可能性がある。
【0003】
これらの問題に対応して、この水の一部または全部を捕捉して、水を下水道システムに全く送らないこと、あるいは長期間にわたってよりゆっくりと排水することができることが提案されている。
【0004】
したがって、いわゆる「青」および「緑」の屋根構造が開発されている。「青」の屋根構造は、水を捕捉して貯留する湛水機構を含み、それにより、制御された速度で経時的に水を放出することが可能になる。「緑」の屋根構造は、水を捕捉し、その少なくとも一部を生きた植物が栽培されている植生層に提供する。植生は、代謝プロセスで水を使用し、さらに蒸散によって水を大気中に放散して戻す。青と緑の両方の屋根システムは、通常、植生が使用可能な量を超える、またはシステムの貯蔵容量を超える水の排水制御のための機構も含む。
【0005】
捕捉された水は、固定化されることが多いが、建築構造の上に大量の水が溜まることは、通常は望ましくない。さらに、屋根構造の上面は、歩行(例えば、修理およびメンテナンスのため)、HVAC、電源、および他のシステムなどの建築機械、レクリエーションデッキ、支持構造および設備の重量、ならびに緑の屋根の場合、土壌、その容器、および植生の重量に耐えるように、重量を支承しなければならない。
【0006】
捕捉された水の固定化に使用するために、親水性発泡体が提案されてきた。これらの発泡体は、水を吸収して貯留するための「スポンジ」として作用する。青い屋根システムでは、親水性発泡体は、屋根構造の全部または一部に連続層または不連続層を形成する。発泡体は柔軟かつ圧縮可能であるため、親水性発泡体の上に直接または間接的に硬い重量支承層を構築するのが一般的であり、屋根構造は、発泡体層を損傷せずに重量を支承することができる。緑の屋根システムでも、親水性発泡体層は、典型的には、そのような重量支承層ならびに上部植生層を含み得る他の屋根構造の下に位置する。
【0007】
親水性発泡体層が埋め込まれる場合、親水性発泡体層は、上にある構造の重量を支承しなければならない。ゆえに、発泡体は、いくらかの圧縮状態にあることが多い。多くのスポンジ状材料と同様に、そのような親水性発泡体層としての使用が提案されている親水性発泡体は、圧縮力の下に置かれると水を放出する傾向がある。これにより、その貯水容量が低下する。
【0008】
高い貯水容量を呈し、かつ圧縮力下でもその貯水容量の大部分を保持する、親水性ポリウレタン発泡体および構築層材料が望まれる。さらに、その層のうちの1つ以上で水を吸収し、かつそのような層が圧縮下にある間でもその吸収された水を貯留することができる多層構造を提供し、そのような多層構造を含む水管理システムを提供することが望ましい。
【0009】
本発明は、一態様では、(a)3次元ランダムループ(3DL)構造であって、3次元配向で一緒に配置および結合され、かつ3DL内に空間を画定する、熱可塑性ポリマーの複数のランダムループを含む、3次元ランダムループ(3DL)構造と、(b)3DL構造内の実質的にすべての空間を占める親水性ポリウレタン発泡体と、を含む、複合体構造である。
【0010】
第2の態様では、本発明は、
(I)i)少なくとも1つのポリイソシアネート、ii)水、iii)発泡体安定化界面活性剤、およびiv)任意選択で、水とは異なる1つ以上の少なくとも二官能性のイソシアネート反応性材料を含む、反応混合物を形成するステップであって、反応混合物が、成分i)およびiv)の合計重量に基づいて、30~75重量%のオキシエチレン単位を含有する、ステップと、
(II)3DL構造に反応混合物を含浸させるステップであって、3DL構造が、3次元配向で一緒に配置および結合され、かつ3DL構造内に空間を画定する熱可塑性ポリマーの複数のランダムループを含む、ステップと、
(III)反応混合物が膨張および硬化して、3DL構造内の実質的にすべての空間を占める親水性ポリウレタン発泡体を形成するように、反応混合物を硬化させるステップと、を実施することによって、複合体構造を作製する方法である。
【0011】
本発明はまた、単層または多層マットであり、マットは、本発明の第1の態様の複合体構造の少なくとも1つの層を含み、および/または本発明の第2の態様に従って作製される。
【0012】
本発明はまた、本発明の複合体構造を含む水封じ込めシステムである。水封じ込めシステムは、例えば、青の屋根、緑の屋根、青/緑の屋根、または駐車場、駐車ガレージ、駐機場、道路、橋などの他の構造に落下および/または流出する雨水を捕捉して封じ込めるためのシステムであり得る。
【0013】
特定の態様では、本発明の水封じ込めシステムは、少なくとも1つの遮水層と、遮水層の少なくとも一部分の上に直接または間接的にある本発明の複合体構造のうちの少なくとも1つの層と、複合体構造層の少なくとも一部分の上に直接または間接的に位置付けられた少なくとも1つの上面層とを含み、水封じ込めシステムは、上面層に堆積した水を複合体構造層に排出するための手段を含む。
【0014】
3DL材料は、ランダムループ内に形成されている熱可塑性ポリマー繊維を含む。ランダムループ状繊維は、3次元配向に配置され、接触点で一緒に結合されて3次元構造を形成する。そのような3DL材料を作製するための方法は、米国特許第5,639,543号、米国特許第6,378,150号、米国特許第7,625,629号、およびWO2013/130602に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が組み込まれる。そのようなプロセスでは、熱可塑性樹脂は、3次元配列(規則的、不規則、および/またはランダムであり得る)に配置された複数のオリフィスを通して下向きに押し出されて、複数の繊維を形成する。張力がほとんどまたは全くない場合、押し出された繊維は、自発的に丸まり、ランダムループ構造を形成する。ランダムループ構造を接触させて冷却すると、隣接するループ構造が接触点で互いに結合し、3DL材料が形成される。
【0015】
3DL材料は、好ましくは、少なくとも0.005~0.2g/cm、0.016~0.1g/cm、または0.016~0.05g/cmの見掛けかさ密度を有する。ランダムループを構成する繊維は、例えば、100~5000、200~3000、または300~3000のデニールを有し得る。ループは、0.1~3mm、0.25~1.6mm、または0.4~1.6mmの直径を有し得る。
【0016】
3DL材料は、熱可塑性有機ポリマーから作製される。熱可塑性ポリマーは、反応混合物を硬化させて親水性ポリウレタン発泡体を形成する条件下で融解、溶解、または分解しないものであり得る。熱可塑性ポリマーは、エラストマー(本発明の目的のために、少なくとも50%の破断伸びを呈し、その元の長さの少なくとも50%に伸びると、その元の寸法を回復する)、非エラストマー、または1つ以上のエラストマーおよび1つ以上の非エラストマーポリマーの組み合わせであり得る。
【0017】
好適な熱可塑性ポリマーの例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカプロラクトン、グリコール/アジペートポリエステル、コハク酸グリコールポリエステル、マレイン酸グリコールポリエステルなどのポリエステルが挙げられる。他の好適な熱可塑性ポリマーには、ポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミドなどのポリウレタンおよびポリアミドが含まれる。
【0018】
他の好適な熱可塑性ポリマーには、オレフィンポリマーおよびコポリマーが含まれる。これらの中には、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、米国特許第7,622,179号およびWO2016/130602に記載されているものを含むエチレン-α-オレフィンインターポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマーおよびポリプロピレンがある。
【0019】
3DL構造に加工することができる他の熱可塑性ポリマーも有用である。
【0020】
親水性ポリウレタン発泡体は、以下に記載の方法に従って測定した場合、少なくとも150g/2.54cmの厚さの貯水容量を有することを特徴とする。親水性ポリウレタン発泡体は、好ましくは、発泡体の総重量に基づいて、30~75重量%のオキシエチレン単位を含有する。親水性ポリウレタン発泡体は、好ましくは、ASTM D3574に従って測定した場合、16~144kg/m、好ましくは20~80kg/m、より好ましくは20~64kg/mの発泡体密度を有する。
【0021】
本発明の複合体構造は、
(I)i)少なくとも1つのポリイソシアネート、ii)水、iii)発泡体安定化界面活性剤、およびiv)任意選択で、水とは異なる1つ以上の少なくとも二官能性のイソシアネート反応性材料を含む、反応混合物を形成するステップであって、反応混合物が、成分i)およびiv)の合計重量に基づいて、30~75重量%のオキシエチレン単位を含有する、ステップと、
(II)反応混合物を3DL材料と接触させて、3DL構造に反応混合物を含浸させるステップと、
(III)反応混合物が膨張および硬化して、3DL構造内の実質的にすべての空間を占める親水性ポリウレタン発泡体を形成するように、反応混合物を硬化させるステップと、を含むプロセスで作製され得る。
【0022】
反応混合物の成分i)およびiv)(存在する場合)のうちの少なくとも1つは、オキシエチレン基を含有する。オキシエチレン基は、成分i)およびiv)の合計重量の少なくとも30重量%を構成し、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、または少なくとも55重量%を構成し得る。オキシエチレン基は、成分i)およびiv)の合計重量の最大75重量%を構成し、その最大70重量%、最大65重量%、または最大60重量%を構成し得る。
【0023】
いくつかの実施形態におけるポリイソシアネートは、350以下(滴定法によって測定した場合)の当量を有する過剰の1つ以上のポリイソシアネートの、エチレンオキシドのヒドロキシル含有ポリマーとの反応生成物であるイソシアネート末端プレポリマーを含む。そのような場合のポリイソシアネートは、例えば、少なくとも1重量%、少なくとも3重量%、または少なくとも5重量%、例えば、最大20重量%、最大15重量%のイソシアネート含有量を有し得る。そのような場合のポリイソシアネートは、プレポリマーと未反応の出発ポリイソシアネートとの混合物である準プレポリマーであり得る。
【0024】
そのようなプレポリマーを作製するために使用されるポリイソシアネートは、以下に記載のもののうちのいずれかであり得る。
【0025】
エチレンオキシドのヒドロキシル末端ポリマーは、エチレンオキシドのホモポリマー、またはエチレンオキシドと1,2-プロピレンオキシドとのヒドロキシル末端ランダムまたはブロックコポリマーであり得る。エチレンオキシドのヒドロキシル末端ポリマーは、ヒドロキシル末端ポリマーの重量に基づいて、少なくとも50%(コポリマーの場合)または最大100%(エチレンオキシドホモポリマーの場合)の平均オキシエチレン含有量を有し得る。エチレンオキシドポリマーまたは混合物のオキシエチレンオキシド含有量は、ポリマーまたは混合物中のオキシエチレン(-O-CH-CH-)単位の、ポリマーまたは混合物の総重量に対する重量比の100%倍である。
【0026】
特定の実施形態では、エチレンオキシドポリマーまたは混合物のオキシエチレン含有量は、例えば、少なくとも92重量%または少なくとも94重量%であり得、最大100%、最大99%、最大98%、または最大97%であり得る。エチレンオキシドポリマーの平均当量は、例えば、少なくとも350、少なくとも400、または少なくとも450であり得、いくつかの実施形態では、最大3000、最大2000、最大1500、最大1200、最大1000、または最大750であり得る。当量は、周知の滴定数を使用してmg KOH/gのポリマーでヒドロキシル数を測定し、当量=56,100÷ヒドロキシル数の関係に従ってヒドロキシル数から当量を計算することによって決定される。エチレンオキシドポリマーの平均公称ヒドロキシル官能基は、少なくとも2.0または少なくとも2.1であり得、例えば、最大3.0、最大2.7、最大2.5、最大2.4、または最大2.3であり得る。
【0027】
ポリイソシアネートは、最大200のイソシアネート当量を有する1つ以上のポリイソシアネートであり得るか、またはそれらを含み得る。これらは、芳香族、脂肪族、および/または脂環式ポリイソシアネートであり得る。200以下の分子量を有する有用なポリイソシアネートの具体的な例として、m-フェニレンジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4-4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PMDI)、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネートシクロヘキサンジイソシアネート、1,3-および/または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1-メチル-シクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、1-メチル-シクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、メチレンジシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ならびにヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。ウレタン、尿素、ビウレット、カルボジイミド、ウレトンイミン、アロファネート、またはイソシアネート基の反応によって形成される他の基を含有する修飾ポリイソシアネートも有用である。好ましい芳香族ポリイソシアネートは、MDIまたはPMDI(または一般に「ポリマーMDI」と呼ばれるそれらの混合物)、ならびにビウレット、カルボジイミド、ウレトンイミン、および/またはアロファネート結合を有するMDIおよびMDI誘導体の混合物である、いわゆる「液体MDI」生成物である。
【0028】
反応混合物は、少なくとも1つの発泡体安定化界面活性剤を含有する。発泡体安定化界面活性剤は、ポリマーが硬化するまで、発泡プロセス中に形成された気泡を安定化させることに役立つ。ポリウレタン発泡体の作製に通常使用されるような多種多様なシリコーン界面活性剤は、本発明の複合体の作製に使用することができる。自己分散性または水溶性である界面活性剤が好ましい。そのようなシリコーン界面活性剤の例は、Tegostab(商標)(Th.Goldschmidtand Co.)、Niax(商標)(GE OSi Silicones)、およびDabco(商標)(Air Products and Chemicals)の商品名で市販されている。他の有用な界面活性剤には、エチレンオキシドとプロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドとのブロックコポリマーが含まれ、1つまたは複数のポリ(エチレンオキシド)ブロックは、ブロックコポリマーの総重量の35~75%を構成する。そのようなブロックコポリマーは、1つ以上のヒドロキシル基を有し得る。界面活性剤は、反応混合物の100重量部当たり、0.25~5または0.5~2.5重量部の量で存在し得る。
【0029】
反応混合物の成分iv)は、ポリイソシアネートがオキシエチレン単位を含有しないか、または十分なオキシエチレン単位を含有しない場合を除いて、任意選択である。その場合、成分iv)は必要とされ、オキシエチレン単位が成分i)およびiv)の合計重量の30~75重量%を構成するような量で、上述のように少なくとも1つのエチレンオキシドポリマーを含む。
【0030】
そのようなエチレンオキシドポリマーの代替として、またはそれに加えて、成分iv)は、50重量%未満のオキシエチレン単位を含有するポリオール、ポリアミン、およびアミノアルコールなどの1つ以上の他の少なくとも二官能性のイソシアネート反応性材料を含み得る。そのような他のイソシアネート反応性材料の例として、鎖延長剤、架橋剤、50重量%未満のオキシエチレン単位を含有するポリエーテルポリオール、50%未満のオキシエチレン単位を含有するアミン末端ポリエーテル、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。そのような追加のイソシアネート反応性材料が存在する場合、それらは、好ましくは、水および成分iv)の総合計重量の最大25%、好ましくは最大10%などの少量で存在する。追加のイソシアネート反応性材料が、存在しなくてもよい。
【0031】
反応混合物は、水および/またはヒドロキシル基に対するイソシアネート基の反応のための触媒を含有し得る。好適な触媒として、例えば、第三級アミン、環状アミジン、第三級ホスフィン、様々な金属キレート、酸性金属塩、強塩基、様々な金属アルコレートおよびフェノレート、ならびに有機酸の金属塩が含まれる。金属含有触媒の例は、スズ、ビスマス、コバルト、および亜鉛の塩である。最も重要な触媒は、第三級アミン触媒、環状アミジン、亜鉛触媒およびスズ触媒である。第三級アミン触媒の例として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N-ジメチルピペラジン、1,4-ジアゾビシクロ-2,2,2-オクタン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、およびアルキル基が4~18個の炭素原子を含有するジメチルアルキルアミンが挙げられる。これらの第三級アミン触媒の混合物がしばしば使用される。
【0032】
DMEA(ジメチルエタノールアミン)もしくはDMAPA(ジメチルアミノプロピルアミン)などの反応性アミン触媒、または自己触媒ポリオールとして作用するアミン開始ポリオールも使用してもよい。
【0033】
スズ触媒には、塩化第二スズ、塩化第一スズ、オクタン酸第一スズ、オレイン酸第一スズ、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、リシノール酸スズ、および式SnR(OR)4-n(式中、Rは、アルキルまたはアリールであり、nは、0~4である)の他のスズ化合物などが含まれる。亜鉛触媒およびスズ触媒は、少しでも使用される場合、一般に1つ以上の第三級アミン触媒と共に使用される。
【0034】
触媒は、典型的には少量で使用され、例えば、各触媒は、少しでも存在する場合、準プレポリマーの100重量部当たり、約0.0015~約5または0.1~0.5重量部から用いられる。触媒は省略してもよい。
【0035】
反応混合物は、着色剤、殺菌剤、殺虫剤、顔料、選択性除草剤などの様々な液体機能性原料も含有し得る。存在する場合、これらは、好ましくは、反応混合物の総重量の最大10%または最大5%を構成する。
【0036】
原料の比率は、0.5~150のイソシアネート指数を提供するように選択される。イソシアネート指数は、反応混合物に(任意の反応の前に)提供されるイソシアネート反応性基に対するイソシアネート基の比率の100倍であり、水は2つのイソシアネート反応性基を有すると考えられる。イソシアネート指数は、例えば、0.5~50、0.5~25、1~20、または1~15であり得る。
【0037】
反応混合物中の水指数は、例えば、少なくとも25または少なくとも50であり得る。いくつかの実施形態では、過剰の水が存在し、そのような実施形態では、水指数は、少なくとも400、少なくとも500、または少なくとも650であり得、例えば、最大20,000、最大15,000、最大12,000、最大10,000、最大5,000、最大2500、最大1000、最大500、または最大100であり得る。水指数は、反応混合物に(任意の反応の前に)提供されるイソシアネート基の当量に対する水の当量の比率の100倍である。
【0038】
界面活性剤は、水とポリイソシアネートとを組み合わせて反応混合物を形成する前に、水と便宜的に組み合わせられる。代替として、界面活性剤は、水とポリイソシアネートとを組み合わせると同時に、他の原料と組み合わせることができる。界面活性剤は、水の一部分と組み合わせてから、残りの水とポリイソシアネートとを組み合わせることができる。
【0039】
3DL構造は、反応混合物を含浸させられる。「含浸」とは、反応混合物が3DL構造のループにより画定された空間の少なくとも一部分に組み込まれ、反応混合物が硬化および膨張すると、得られた発泡体が3DL構造内の実質的にすべてのそのような空間を占めることを意味する。発泡体は、3DL構造内のそのような空間の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらに100%を占め得る。
【0040】
含浸ステップは、様々な方式で実行することができる。3DL構造は、鋳型、トラフ、または他の制限領域内に配列され得る。次に、反応混合物を、3DL構造を含有する領域に注入、噴霧、そうでなければ導入し、反応混合物を、3DL構造の開口部に浸透させ、そこで膨張および硬化して発泡体を形成する。必要に応じて、3DL構造を、反応混合物と接触した後に圧縮して、反応物が膨張および硬化する前に3DL構造の内面をウェットアウトすることができる。
【0041】
硬化は、典型的には、水をポリイソシアネートと混合すると自然に発生するため、幅広い条件が反応の実行に好適である。硬化温度は、0℃まで低い、または例えば、100℃まで高くてもよい。室温に近い温度またはわずかに高い温度が完全に好適であり、一般的に好ましい。したがって、硬化温度は、少なくとも15℃または少なくとも20℃、最大50℃、40℃、または35℃であってもよい。硬化反応は、気泡を形成し、硬化が行われるにつれて反応混合物を膨張させる二酸化炭素ガスを生成する。
【0042】
硬化ステップは、前述のように鋳型またはトラフなどの制限領域で実行してもよく、これによって、反応混合物の膨張を制限して、反応混合物が3DL構造の開放空間内で膨張および硬化する。硬化した発泡体は、3DL構造を包み込む、すなわち、その外面を被覆し得る。
【0043】
硬化ステップは、反応混合物を、3DL構造を担持するベルトまたは移動基材上に分配し、所望の厚さまで測定し、ベルト上または基材上で硬化させてマットまたはロールストックを形成することによって実行することができる。
【0044】
反応混合物中の水の量がポリイソシアネートのイソシアネート基の量を超える場合、硬化した発泡体は、発泡体の気泡中に含有される、少なくとも部分的に液体の形態であり得る多量の水分を含有することが多い。この過剰な水の一部または全部を除去するために、乾燥ステップを実行してもよい。
【0045】
そのような乾燥ステップは、例えば、乾燥ガスを発泡体に通すことにより、発泡体を乾燥雰囲気下に置くことにより、および/または発泡体を、例えば50~150℃の温度に加熱することにより実行され得る。乾燥は、望ましい含水量が達成されるまで実行され得る。いくつかの実施形態では、乾燥は、一定の発泡体の重量が達成し、発泡体から残留水が除去されたことを示すまで実行される。
【0046】
親水性ポリウレタン発泡体は、例えば、親水性ポリウレタン発泡体および3DL構造の合計重量の少なくとも25%または少なくとも50%を構成し得る。発泡体は、例えば、その最大90%、最大80%、最大75%、または最大70%を構成し得る。
【0047】
本発明の複合体構造は、ASTM D3574に従って測定した場合、例えば40~288kg/mの密度を有し得る。一般に、複合体構造の密度は、親水性ポリウレタン発泡体自体の密度よりもいくらか高くなり得る。いくつかの実施形態では、複合体構造の密度は、48~160kg/mまたは48~128kg/mである。
【0048】
本発明の複合体構造は、一般に、親水性ポリウレタン発泡体自体に関して上述した量で水を吸収する。埋め込まれた3DL構造の存在は、吸水にほとんど影響を与えない。
【0049】
親水性ポリウレタン発泡体が、水を吸収する。発泡体は、好ましくは、10.16cm×10.16cm×2.54cmの厚さの発泡体試料で測定した場合、少なくとも150gの水/2.54cmの厚さの貯水を呈する。発泡体は、少なくとも165gの水/2.54cmの厚さまたは少なくとも180gの水/2.54cmの厚さの貯水を呈し得る。
【0050】
発泡体は、好ましくは、以下の実施例に記載の方法に従って測定した場合、水で飽和したときに、最大で150%、好ましくは最大で125%の膨潤を呈する。
【0051】
貯水および膨潤は各々、一定の重量が得られるまで(少なくとも15時間)、100°Cで直線状の発泡体試料(約4インチ×4インチ×1インチの厚さ(10.16cm×10.16cm×2.54cm)を乾燥させて、乾燥した発泡体の寸法および重量を測定することによって、測定される。次に、発泡体を22±3℃で少なくとも12時間水中に浸漬し、取り出し、火格子の上に置くか、または22±3℃で2時間排出して、過剰の水を排出させる。次に、試料を再び秤量し、その寸法を再び測定する。膨潤は、得られた体積(湿った試料および排出された試料の体積から乾燥した試料の体積を引いたもの)の100%倍に、乾燥した試料の体積で割ったものとして計算される。
【0052】
貯水は、試料の厚さの関数として、
貯水(g/in)=(重量2時間、乾燥-重量乾燥)÷厚さ2時間、乾燥のように計算され、
式中、重量2時間、乾燥は、2時間浸漬および排出された後の試料の重量であり、重量乾燥は、浸漬前の乾燥試料の重量であり、厚さ2時間、乾燥は、2時間浸漬および排出された後の試料の厚さである。
【0053】
本発明の親水性発泡体の利点は、圧縮力を受けた場合でも吸収された水を保持するその能力にある。この特徴は、発泡体が水封じ込めシステムの成分として使用される場合に非常に有益であり、この場合、発泡体は、発泡体の上に位置付けられた1つ以上の層または他の構造の重量を支承する。好ましくは、発泡体は、貯水測定方法に従って測定した場合、75lb/ft(3.591kPa)の印加された圧縮力の下で、吸収された水の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%を保持する。いくつかの実施形態では、発泡体は、150lb/ft(7.182kPa)の印加された圧縮力の下で、吸収された水の少なくとも75%を保持する。
【0054】
保水は、貯水と同じ一般的な方式で測定される。浸漬および排出された試料を秤量および測定した後、試料を3分間連続した負荷下に置く。各負荷が印加および除去された後、発泡体の重量を測定し、重量損失は、発泡体の圧縮による水の損失に起因する。任意の所定の圧縮力での保水は、浸漬および排出された発泡体の水の重量の割合として計算され、これは、重量2時間、乾燥-重量乾燥に等しい。
【0055】
圧縮力下にある場合でも吸収された水を貯留するこの能力により、本発明の複合体構造は、水封じ込めシステムの成分として使用されるときに特に利点を有する。そのような水封じ込めシステムでは、システムに入る水は、例えば、排出、ポンプ、またはその他の方法で複合体構造に移送され、そこで吸収および保持される。水は可逆的に吸収され、重力下、封じ込めシステムの他の層および/または成分を介した吸い上げ、乾燥などの様々な機構によって複合体構造から除去することができる。
【0056】
本発明の水封じ込めシステムは、例えば、青の屋根、緑の屋根、青/緑の屋根、または駐車場、駐車ガレージ、駐機場、道路、橋などの他の構造に落下および/または流出する降水を捕捉して封じ込めるためのシステムであり得る。
【0057】
特定の実施形態では、水封じ込めシステムは、水封じ込めシステム内に含有される1つ以上の層または本体の形態の本発明の複合体構造を含む。層の形態である場合、複合体構造は、例えば、少なくとも10mm、少なくとも25mm、または少なくとも50mm、例えば、最大1メートル以上、最大250cm、最大100cm、最大50cm、または最大25cmの厚さを有し得る。
【0058】
水封じ込めシステムは、複合体構造の少なくとも一部分の上に直接または間接的に位置付けられた少なくとも1つの上面層を含み得る。建築物、駐車場、道路などの屋外構造の場合のように、上面層は、降水(例えば、雨、雹、みぞれ、および雪)がその上に落下するように、大気に開放され得る。複合体構造は、上面層および/または存在する場合の任意の中間層の重量の一部または全部を直接または間接的に支承し得る。
【0059】
当然ながら、上面層の組成および構造は、特定の設備の機能に応じて選択される。上面層は、例えば、歩道または道路であり得る。そのような歩道または道路は、例えば、コンクリート、鉄筋コンクリート、石、セラミックタイル、マカダム、ポリマーコンクリート、鋼、アルミニウム、他の金属、木材、または他の好適な材料から構築され得る。
【0060】
上面層は、植生層であり得る。そのような植生層は、少なくとも土壌層を含み、土壌および植生自体(少なくとも成長期の間)を貯留するための1つ以上の容器を含有し得る。土壌層および/またはその容器は、本発明の複合体構造の上に直接存在し得る。代替として、1つ以上の追加の層または構造が、上面層と複合体構造の層との間に存在してもよい。これらには、上層の支持などの様々な構造層、または他の構造的もしくは機能的特徴が含まれ得る。
【0061】
水封じ込めシステムは、上面層に落下する水を本発明の複合体構造に排出するための手段を含み得る。いくつかの実施形態では、そのような手段は、それらの層に細孔または他の開口部を含み、水が層を通って下の複合体構造に浸透するようにする。例えば、水封じ込めシステムが緑の屋根システムの全部または一部を形成する場合、水は、土壌および土壌容器(存在する場合)を通って下にある複合体構造に浸出することによって、上部の植生層から排出され得る。他の実施形態では、そのような手段は、水がそこを通って複合体構造に流れ落ち得る、1つ以上の導管に任意選択で結合された排水管または他の開口部を含み得る。
【0062】
水封じ込めシステムは、複合体構造の下に直接または間接的ある少なくとも1つの遮水層をさらに含み、複合体構造から通り抜ける水を捕捉し、その水が下にある構造までさらに下向きに通り抜けることを防止し得る。例えば、緑または青の屋根では、この遮水材料は、例えば、屋根膜自体または他の遮断層であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図面は、本発明の水封じ込めシステムのある実施形態を示す。水封じ込めシステム9は、一般に、支持構造1、任意選択の絶縁/根遮断構造2、遮水層3、排出層4、フィルターまたは分離布5、成長培地層6、および植生層7を含む。本発明の複合体構造は、排出層4の全部または一部分を形成する。
【0064】
支持構造1は、上にある構造を支持する負荷支承層である。支持構造1は、コンクリート、鉄筋コンクリート、木材、または重ねられた重量を支承することができる他の建築材料から作られ得る。支持構造1は、例えば、屋根、舗装領域、地面、または他の要素の重量を支承する他の下にある構造であり得る。
【0065】
任意選択の絶縁/根遮断構造2は、存在する場合、水が下向きに通過して支持構造1に通過することを防止し、および/または植生層7で成長する植物の根が支持構造1におよび支持構造1内に浸透することを防止する役割を果たす。図示する例示的な実施形態では、絶縁/根遮断構造2は、防水膜2Aおよび絶縁板2Bを含む。防水膜2Aは、一般に、熱可塑性オレフィン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、およびポリ塩化ビニルなどの熱可塑性ゴムである。絶縁板2Bは、例えば、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリイソシアヌレートなどの発泡硬質ポリマー板であり得る。
【0066】
遮水層3は、例えば、防水膜2Aに関して記載したような防水膜であり得る。
【0067】
図示する例示的な実施形態では、排出システム4は、ジオテキスタイル、すなわち、水を水封じ込めシステムから下水道または他のシステムに除去することができる1つ以上の排出手段(図示せず)への水の流れを促進するように機能する半多孔質布の層4Aを含む。排出手段は、排出システム4を通過する水がそこを通って水封じ込めシステムから除去される、任意の排水管または他の導管システムを含み得る。排出手段は、排水管、パイプ、トラフ、または他の流体導管、ならびにプラグ、バルブ、ポンプ、流れ制御システムなどの関連する流れ管理デバイスからなり得る。
【0068】
ジオテキスタイルは、例えば、米国全州道路交通運輸行政官協会のクラス1またはクラス2のジオテキスタイルであり得る。好適なジオテキスタイルの例は、Optigreen Separation Fabricとして市販され、重量が50~500g/mであるポリプロピレン布である。層4Aは、任意選択であり、その機能は、複合体構造4Bによって実行することができる。例えば、複合体構造4Bは、その底面に1つ以上のチャネルを含んで生成することができ、これらのチャネルは、水が排出手段に向かって流れ、水封じ込めシステムから除去され得る経路を形成する。
【0069】
図示する例示的な実施形態では、排出システム4は、多孔質布4Cおよび機械的貯蔵システム4Dをさらに含み、それらの各々は任意選択であり、それらの各々は、複合体構造4Bに置き換えることができる。機械的貯蔵システム4Dは、例えば、水がディンプルに溜まるディンプル状シートまたは布であり得る。そのようなディンプル状シートは、「卵パック」構造と呼ばれることもあり、ディンプルが満たされたときに過剰な水が下層に流れることができる開口部を含んで設計され得る。
【0070】
したがって、排出システム4は、複合体構造4Bのみからなり得るか、または層4A、4C、および4Dのうちのいずれか1つ以上、ならびに望ましい場合には他の任意選択の層含む複合体構造4Bを含み得る。
【0071】
図示する例示的な実施形態では、水封じ込めシステム9の層5は、水を通過させながら土壌が下層に洗い流されることを防止するように機能する分離布である。ゆえに、分離布は、水に対して多孔質であるが、土壌が通過することを防止するのに十分小さい開口部を有する。分離布5は、上述のようなジオテキスタイル、または他の織布または不織布の繊維材料であり得る。
【0072】
層6は、有機物を含み、無機物を含み得る成長培地層である。層6は、好ましくは、ASTM E2399に従って測定した場合、少なくとも35%の最大貯留容量での含水量および少なくとも6%の最大貯水容量での多孔性を有する。
【0073】
以下の実施例は、本発明を例解するために提供されるが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。すべての部および割合は、特に指示がない限り重量による。
【0074】
実施例1および比較試料A~B
3DL Aは、1立方フィート当たり2ポンドの密度を有するエチレン-α-オレフィンコポリマーの3次元ループ構造である。これは、WO2016/130602.に記載されている一般的な方法に従って作製される。
【0075】
3DL Bは、1立方フィート当たり3ポンドの密度を有するエチレン-α-オレフィンコポリマーの3次元ループ構造である。これは、WO2016/130602に記載されている一般的な方法に従って作製される。
【0076】
発泡体配合物A(FF-A)は、イソシアネート末端準プレポリマー、水、および界面活性剤を含有する。準プレポリマーは、40%のオキシエチレン単位を含有し、約7%のイソシアネート含有量を有する。水指数は、約10,000である。
【0077】
発泡体配合物B(FF-B)は、イソシアネート末端準プレポリマー、水、および界面活性剤を含有する。準プレポリマーは、63%のオキシエチレン単位を含有し、約7%のイソシアネート含有量を有する。水指数は、約10,000である。
【0078】
発泡体配合物C(FF-C)は、イソシアネート末端準プレポリマー、水、および界面活性剤を含有する。準プレポリマーは、58%のオキシエチレン単位を含有し、約10%のイソシアネート含有量を有する。水指数は、約2,000である。
【0079】
比較発泡体A~Cおよび発泡体の実施例1~6を、それぞれの発泡体配合物の原料を混合して反応混合物を形成することによって調製する。各々の場合の得られた反応混合物を11.2cm×11.2cm×2.54cmの開放鋳型に注入し、自由に上昇させる。実施例1~6の場合、反応混合物を鋳型に注入するときに、鋳型は、3DL Aまたは3DL Bのいずれかを含有し、鋳型の内部空洞に適合するように切断される。3DL材料は、鋳型内の所定の位置に把持されているため、発泡体配合物が上昇しても上昇することはない。発泡体配合物は上昇して硬化し、3DL材料(存在する場合)の内部空間全体を占めて鋳型を満たす発泡体を形成する。発泡が完了した後、複合体を10分間静置させる。クラウンを取り出して、11.2cm×11.2cm×2.54cmの複合体構造を生成する。
【0080】
特性試験を実行する前に、複合体構造を、周囲温度および湿度で一晩調整する。貯水、保水、および膨潤を、上述のように測定する。試験の結果は、以下の表1~3に示す通りである。
【表1】
【表2】
【表3】
【0081】
表1~3のデータが示すように、発泡体配合物A~Cのいずれかによって生成された発泡体に3DL構造を組み込んでも、貯水にはほとんど影響がない。しかしながら、総膨潤は、対応する比較試料と比較して、実施例1~6で実質的に減少している。また、発泡体配合物が(発泡体配合物Bのように)圧力下で非常に良好な貯水力を有するように適合
されている場合でも、圧力下での貯水は、すべての事例において同等または改善されている。初期の貯水容量、圧力下で水を貯留する能力、および低い膨潤の組み合わせは非常に有益であり、親水性発泡体自体のいずれかでは得られない。

以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] (a)3次元ランダムループ(3DL)構造であって、3次元配向で一緒に配置および結合され、かつ前記3DL構造内に空間を画定する、熱可塑性ポリマーの複数のランダムループを含む、3次元ランダムループ(3DL)構造と、(b)前記3DL構造の実質的にすべての前記空間を占める親水性ポリウレタン発泡体と、を含む、複合体構造。
[2] 前記3DL構造が、0.005g/cm ~0.2g/cm の見掛けかさ密度を有する、[1]に記載の複合体構造体。
[3] 前記親水性ポリウレタン発泡体が、i)少なくとも1つのポリイソシアネート、ii)水、iii)発泡体安定化界面活性剤、およびiv)任意選択で、水とは異なる1つ以上の少なくとも二官能性のイソシアネート反応性材料を含む、反応混合物の反応生成物であり、前記反応混合物が、成分i)およびiv)の合計重量に基づいて、30~75重量%のオキシエチレン単位を含有する、[1]または[2]に記載の複合体構造。
[4] 前記熱可塑性ポリマーが、オレフィンポリマーまたはコポリマーである、[1]~[3]のいずれかに記載の複合体構造。
[5] 複合体構造を作製する方法であって、
(I)i)少なくとも1つのポリイソシアネート、ii)水、iii)発泡体安定化界面活性剤、およびiv)任意選択で、水とは異なる1つ以上の少なくとも二官能性のイソシアネート反応性材料を含む、反応混合物を形成するステップであって、前記反応混合物が、成分i)およびiv)の合計重量に基づいて、30~75重量%のオキシエチレン単位を含有する、ステップと、
(II)3DL構造に前記反応混合物を含浸させるステップであって、前記3DL構造が、3次元配向で一緒に配置および結合され、かつ前記3DL構造内に空間を画定する熱可塑性ポリマーの複数のランダムループを含んで、前記3DL構造に前記反応混合物を含浸させるステップと、
(III)前記反応混合物が膨張および硬化して、前記3DL構造の実質的にすべての前記空間を占める親水性ポリウレタン発泡体を形成するように、前記反応混合物を硬化させるステップと、を含む、方法。
[6] 単層または多層マットであって、前記マットが、[1]~[4]のいずれかに記載の、および/または[5]の方法に従って作製された、複合体の少なくとも1つの層を含む、単層または多層マット。
[7] [1]~[4]のいずれかに記載の、および/または[5]に記載の方法に従って作製された、複合体を含む、水封じ込めシステム。
[8] 少なくとも1つの遮水層と、前記遮水層の少なくとも一部分の上に直接または間接的にある、[1]~[4]のいずれかに記載の、および/または[5]に記載の方法に従って作製された、複合体構造の少なくとも1つの層と、前記親水性発泡体層の少なくとも一部分の上に直接または間接的に位置付けられた少なくとも1つの上面層と、を含む、水封じ込めシステムであって、前記水封じ込めシステムが、前記上面層に落下した水を前記親水性発泡体層に排出するための排出手段を含む、水封じ込めシステム。
[9] 前記上面層が、土壌層および植生層を含み、前記排出手段が、前記複合体構造と流体連通する前記土壌層の細孔を含む、[8]に記載の水封じ込めシステム。
[10] 前記親水性ポリウレタン発泡体層が、底面に1つ以上のチャネルを有し、そのチャネルが、水が流れて前記水封じ込めシステムから除去され得る経路を形成する、[8]または[9]に記載の水封じ込めシステム。
[11] 前記遮水層の下に直接または間接的にある支持構造をさらに含む、[8]~[10]のいずれかに記載の水封じ込めシステム。
[12] 前記支持構造が、屋根構造である、[11]に記載の水封じ込めシステム。
[13] 支持構造と、前記支持構造の少なくとも一部分の上に直接または間接的にある少なくとも1つの遮水層と、前記遮水層の少なくとも一部分の上に直接または間接的にある、[1]~[4]のいずれかに記載の、および/または[5]に記載の方法に従って作製された、複合体構造の少なくとも1つの層と、前記親水性ポリウレタン発泡体層の少なくとも一部分の上に直接または間接的にある分離布と、前記分離布の少なくとも一部分の上に直接または間接的に位置付けられた少なくとも1つの上面層と、含む、水封じ込めシステムであって、前記水封じ込めシステムが、前記上面層に落下する水を前記親水性発泡体層に排出するための排出手段を含む、水封じ込めシステム。
[14] 前記親水性ポリウレタン発泡体層が、底面に1つ以上のチャネルを有し、そのチャネルが、水が流れて前記水封じ込めシステムから除去され得る経路を形成する、[13]に記載の水封じ込めシステム。
図1