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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】TLR8アゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20240605BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240605BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240605BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240605BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
C07D471/04 116
C07D471/04 CSP
A61K31/519
A61P31/20
A61P43/00 111
A61P37/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021515104
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 CN2019106687
(87)【国際公開番号】W WO2020057604
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】201811094969.4
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔡 哲
(72)【発明者】
【氏名】孫 飛
(72)【発明者】
【氏名】丁 照 中
(72)【発明者】
【氏名】陳 曙 輝
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509667(JP,A)
【文献】国際公開第2018/045150(WO,A1)
【文献】特表2014-516958(JP,A)
【文献】特表2011-513413(JP,A)
【文献】国際公開第2018/045144(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される化合物、その立体異性体または互変異性体またはその薬学的に許容される塩;

ここで、「*」を付けた炭素原子は、単独の(R)または(S)のエナンチオマーの形で存在するか、または1つのエナンチオマーリッチな形で存在するキラル炭素原子であり得、
Xは、N及びCHから選択され、
は、H、F、Cl、Br、I、CN、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、-N(R)(R)と-O(R)から選択され、前記C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルは、任意に1、2または3個のRで置換され、
は、C1-6アルキルから選択され、前記C1-6アルキルは、任意に1、2または3個のRで置換され、
a、b、c、及びRは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br、I、OH、CN、NH、CH

から選択され、前記CH

は、任意に1、2または3個のRで置換され、
各々Rは、独立してF、Cl、Br、I、OH、CN、NH、CH

から選択される。
【請求項2】
a、b、c、及びRは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br、I、OH、CN、NH、CH

から選択される、請求項1に記載の化合物、その立体異性体または互変異性体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
は、H、F、Cl、Br、I、CN、CH

から選択され、前記のCH

シクロペンチル及びシクロブチルは、任意に1、2または3個のRで置換される、請求項1または2に記載の化合物、その立体異性体または互変異性体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
は、H、F、Cl、Br、I、CH及び

から選択される、請求項1または2に記載の化合物、その立体異性体または互変異性体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
は、

から選択され、前記

は、任意に1、2または3個のRで置換される、請求項1または2に記載の化合物、その立体異性体または互変異性体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
は、

から選択される、請求項5に記載の化合物、その立体異性体または互変異性体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
下記式の化合物、その立体異性体または互変異性体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】

から選択される、請求項7に記載の化合物、その立体異性体または互変異性体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体または互変異性体またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項10】
TLR8を作動させる医薬組成物を製造するための請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体または互変異性体、その薬学的に許容される塩の使用。
【請求項11】
TLR8の作動に応答する疾患の治療用の医薬組成物を製造するための請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体または互変異性体、その薬学的に許容される塩の使用。
【請求項12】
前記TLR8の作動に応答する疾患がウイルス感染から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記ウイルス感染がB型肝炎ウイルス感染から選択される、請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月19日に中国国家知識産権局に提出された中国の特許出願第201811094969.4号の利益と優先権を主張し、その全内容は参照により全体で本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、新規な構造を有するTLR8(Toll様受容体8)アゴニストに関する。具体的には、式(I)で示される化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩、及び示される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬用組成物、及びTLR8の作動に応答する疾患の治療または予防における式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容される塩及び医薬用組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
Toll様受容体(Toll-like receptors、TLR)は、非特異的免疫(自然免疫)に関与する重要なタンパク質分子であり、非特異的免疫と特異的免疫をつなぐ架け橋でもある。TLRは、主に樹状細胞、マクロファージ、単球、T細胞、B細胞、NK細胞など、免疫細胞で発現する単一の膜貫通型非触媒タンパク質である。Toll様受容体は、微生物に由来する保存された構造を持つ分子を認識できる。微生物が皮膚や粘膜などの生体の物理的障壁を突破すると、TLRはそれらを認識し、免疫細胞からの応答を生成するために生体を活性化することができる。例えば、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5及びTLR6は主に細菌のリポ多糖、リポペプチド、フラジェリンなどの細胞外刺激を認識するが、TLR3、TLR7、TLR8、及びTLR9は細胞エンドソームで役割を果たし、食作用及びエンベロープ溶解後それらのリガンドへの結合し、微生物の核酸などの認識ができる。
【0004】
TLRのさまざまなサブタイプの中で、TLR8には独自の機能がある。TLR8は主に単球、マクロファージ、骨髄樹状細胞で発現している。TLR8的シグナル伝達経路は、細菌の一本鎖RNA、小分子アゴニスト及びmicroRNAsによって活性化される。TLR8の活性化により、IL-12、IL-18、TNF-aとIFN-γなどのTh1極性サイトカイン、およびCD80、CD86などのさまざまな共刺激因子が産生されることに繋がる。これらのサイトカインは、自然免疫応答と獲得免疫応答を活性化および増幅し、抗ウイルス、抗感染、自己免疫、腫瘍などを含む疾患に有益な治療を提供することができる。例えば、B型肝炎に関しては、肝臓抗原提示細胞や他の免疫細胞でのTLR8の活性化により、IL-12などのサイトカインが活性化され、ウイルスによって枯渇した特異的T細胞やNK細胞が活性化されることによって、肝臓の抗ウイルス免疫を再構築する。
【0005】
VentiRX Pharmaceuticalsの選択的TLR8アゴニストVTX-2337は、さまざまな腫瘍の評価に最初に臨床的に使用され、VTX-2337の投与方法は皮下注射である。ギリアド・サイエンシズは、現在臨床第II相にある慢性B型肝炎感染症の治療のための経口TLR8アゴニストを報告したが、その構造はまだ公開されていない。
【0006】
【0007】
一連のTLR8アゴニストは、GileadSciencesの保有した特許出願WO2016141092で報告されている。例えば、式1について、TLR8を作動させ特異的なサイトカインIL-12p40の産生を誘導するAC50が0.02μM(データはWO2016141092の表1から引用)であった。AC50は最大アゴニスト効果の半分に対応する化合物の濃度を表す。特許出願WO2016141092では、式2および式3などの5員窒素含有複素環を含む化合物も報告されている、だだし、式2および式3は、TLR8を作動させ、特異的なサイトカインIL-12p40の生成を誘導する活性が不十分で、AC50がそれぞれ21.5μMおよび3.4μMであった(データはWO2016141092の表1から引用)。式1、式2および式3は、それぞれWO2016141092に開示されている実施例61、55および56である。
【0008】
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
本発明は、式(I)で示される化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0010】
ここで、
「*」を付けた炭素原子は、単独の(R)または(S)エナンチオマーの形で存在するか、または1つのエナンチオマーリッチな形で存在するキラル炭素原子であり得る。
【0011】
Xは、N及びCHから選択される。
【0012】
は、H、F、Cl、Br、I、CN、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、-N(R)(R)と-O(R)から選択され、前記C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルは、任意に1、2または3個のRで置換される。
【0013】
は、C1-6アルキルから選択され、前記C1-6アルキルは、任意に1、2または3個のRで置換される。
【0014】
a、b、c、及びRは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br、I、OH、CN、NH、CH

から選択され、前記CH

は任意に1、2または3個のRで置換される。
【0015】
各々Rは、独立してF、Cl、Br、I、OH、CN、NH、CH

から選択される。
【0016】
本発明は、式(I’)で示される化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0017】
ここで、
Xは、N及びCHから選択される。
【0018】
は、H、F、Cl、Br、I、CN、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、-N(R)(R)と-O(R)から選択され、前記C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルは、任意に1、2または3個のRで置換される。
【0019】
は、C1-6アルキルから選択され、前記C1-6アルキルは、任意に1、2または3個のRで置換される。
【0020】
a、b、c、及びRは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br、I、OH、CN、NH、CH

から選択され、前記CH

は任意に1、2または3個のRで置換される。
【0021】
各々Rは、独立してF、Cl、Br、I、OH、CN、NH、CH

から選択される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、上記Ra、b、c、及びRは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br、I、OH、CN、NH、CH

から選択される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、上記Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、CH

から選択される。前記CH

シクロペンチル及びシクロブチルは、任意に1、2または3個のRで置換される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、上記Rは、H、F、Cl、Br、I、CH及び

から選択される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、上記Rは、

から選択される。前記

は、任意に1、2または3個のReで置換される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、上記Rは、

から選択される。
【0027】
本発明は、さらに、下記式の化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、上記化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩は、

から選択される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、上記Ra、b、c、及びRは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br、I、OH、CN、NH、CH

から選択される。他の変数は上記のように定義される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、上記Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、CH

から選択される。前記CH

シクロペンチル及びシクロブチルは、任意に1、2または3個のRで置換される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、上記Rは、H、F、Cl、Br、I、CH及び

から選択される。他の変数は上記のように定義される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、上記Rは、

から選択される。前記

は、任意に1、2または3個のRで置換される。他の変数は上記のように定義される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、上記Rは、

から選択される。他の変数は上記のように定義される。
【0034】
本発明の他のいくつかの実施形態は、上記の変数の任意の組み合わせによって得ることができる。
【0035】
一方、本発明は、本発明の化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される添加物をさらに含む。
【0036】
一方、本発明は、必要とする対象(好ましくはヒト)に治療上有効量の本発明の化合物、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物を投与することを含む、TLR8を作動させる方法を提供する。
【0037】
一方、本発明は、TLR8の作動に応答する疾患の治療または予防する方法であって、必要とする対象(好ましくはヒト)に治療上有効量の本発明の化合物、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0038】
一方、本発明は、TLR8の作動に応答する疾患を治療または予防ための薬物の調製における本発明の化合物、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物の使用を提供する。
【0039】
一方、本発明は、TLR8の作動に応答する疾患の治療または予防における本発明の化合物、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物の使用を提供する。
【0040】
一方、本発明は、TLR8の作動に応答する疾患を治療または予防ための本発明の化合物、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物を提供する。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、前記TLR8の作動に応答する疾患はウイルス感染から選択される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態では、前記ウイルス感染はB型肝炎ウイルス(HBV)感染から選択される。
【発明の効果】
【0043】
発明の効果
本発明の化合物は、TLR8に対して有意なアゴニスト活性を有する。本発明の化合物は、TLR8に対して望ましいアゴニスト活性および特異的選択性を示す。本発明の化合物は、望ましいTLR8経路に特異的なサイトカイン(IL-12p40、IFN-γ)誘導活性を示す。マウスでの薬物動態研究では、本発明の化合物が中程度の経口バイオアベイラビリティ及び薬物曝露量を有し、経口投与が実行可能である。TLR8アゴニストは免疫調節剤であり、その過剰な曝露は体の免疫過剰活性化を引き起こし、予測できない副作用を引き起こす可能性がある。
【0044】
定義と説明
本明細書で使用される以下の用語及び句は、特に断りのない限り、以下の意味を有することを意図している。一つの特定の用語または句は、定義されていない場合でも、不確実または不明確であると見なされるべきではなく、その一般的な意味に従って解釈されるべきである。本明細書で商品名が記載されている場合は、対応する商品または有効成分を指すことを意味する。
【0045】
ここで使用される「薬学的に許容される」という用語は、それらの化合物、材料、組成物及び/または剤型について、信頼できる医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題や合併症なしにヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適し、合理的な利益/リスク比に見合ったものである。
【0046】
「薬学的に許容される塩」という用語とは、本発明の化合物の塩という意味で、本発明で発見された特定の置換基を有する化合物と比較的毒性のない酸または塩基から調製される。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含む場合、塩基付加塩はこのような化合物の中性形態を純粋な溶液または適切な非活性溶媒で十分な量の塩基と接触することによって得ることができる。本発明の化合物が比較的相対塩基性の官能団を含む場合、酸付加塩はこのような化合物の中性形態を純粋な溶液または適切な非活性溶媒で十分な量の酸と接触することによって得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、無機酸塩、または有機酸塩が含まれる。
【0047】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、酸性または塩基性基を含有する親化合物から合成することができる。一般的には、このような塩は、水または有機溶媒またはその2つの混合物で、遊離の酸形態または塩基形態の化合物を化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させることによって調製することができる。
【0048】
「任意」または「任意に」という用語は、後で説明するイベントまたは状況が発生する可能性があることを意味しますが、必ずしもそうとは限らない。例えば、エチルは「任意」にハロゲンで置換されることは、エチルが非置換の(CHCH)、一置換の(例えばCHCHF)、多置換の(例えばCHFCHF、CHCHFなどの)または完全に置換の(CFCF)でありえる。1つまたは複数の置換基を含む任意の基について、空間に存在することが不可能である、および/または合成することができない任意の置換または置換パターンが導入されないことは、当業者によって理解される。当業者は、ある基が複数の置換基で置換される場合、置換が起こり得るすべての部位が置換されるまで、置換基の数は2、3、4、5個またはそれ以上であり得ることが理解される。例えば、エチルが複数のF原子で置換されている場合、2、3、4または5個のF原子で置換され得る。
【0049】
本明細書における「Cm-n」とは、その部分が所定の範囲内の整数個の炭素原子を有することを意味する。例えば「C1-6」とは、その基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子、または6個の炭素原子を有し得ることを意味する。
【0050】
本発明の化合物は、特定の幾何異性体または立体異性体の形態で存在し得る。本発明には、このような全ての化合物、シス体及びトランス体異性体、(-)-と(+)-エナンチオマー、(R)-と(S)-エナンチオマー、ジアステレオ異性体、(D)-異性体、(L)-異性体とそのラセミ混合物を含むこのような全ての化合物、及び、例えばエナンチオ異性体またはジアステレオ異性体に富む混合物などの他の混合物の全てのこれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。アルキルなどの置換基は、他の不斉炭素原子を有してもよい。これら全ての異性体、及びそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0051】
特に断りのない限り、「エナンチオ異性体」または「光学異性体」という用語は、互いの鏡像である立体異性体を指す。
【0052】
特に断りのない限り、「シス-トランス異性体」または「幾何異性体」という用語は、環炭素原子の単結合または二重結合が自由に回転できないことに起因する。
【0053】
特に断りのない限り、「ジアステレオ異性体」という用語は、分子がそれぞれ2つ以上のキラル中心を有し、互いの鏡像ではない立体異性体を指す。
【0054】
特に断りのない限り、「(D)」または「(+)」は右旋性を表し、「(L)」または「(-)」は左旋性を表し、「(DL)」または「(±)」はラセミ化を表す。
【0055】
特に断りのない限り、

で立体中心の絶対配置を表し、

で立体中心の相対配置を表し、

を表し、或いは

を表す。
【0056】
本発明の化合物は、特定の形態で存在し得る。特に断りのない限り、「互変異性体」または「互変異性体形態」という用語は、異なる官能性異性体が室温で動的平衡状態にあり、互いに迅速に変換できることを意味する。互変異性体が可能である場合(例えば、溶液中で)、互変異性体の化学平衡を達成することができる。例えば、プロトン互変異性体(proton tautomer)(プロトトロピック互変異性体(prototropic tautomer)とも呼ぶ)は、ケト-エノール異性化およびイミン-エナミン異性化などのプロトン移動による相互変換を含む。原子価異性体(valence tautomer)は、いくつかの結合電子の再結合による相互変換が含まれる。その中、ケト-エノール互変異性化の具体的な例は、互変異性体ペンタン-2,4-ジオンと4-ヒドロキシペント-3-エン-2-オンとの間の相互変換である。
【0057】
本発明に記載の「異性体」という用語は、立体異性体、シス-トランス異性体、および互変異性体が含まれる。
【0058】
特に断りのない限り、「一つの異性体に富む」、「異性体に富む」、「一つのエナンチオマーに富む」または「エナンチオマーに富む」という用語は、ある一種類の異性体またはエナンチオマーの含有量が100%未満であり、且つ、当該異性体またはエナンチオマー的含有量が60%以上、或いは70%以上、或いは80%以上、或いは90%以上、或いは95%以上、或いは96%以上、或いは97%以上、或いは98%以上、或いは99%以上、或いは99.5%以上、或いは99.6%以上、或いは99.7%以上、或いは99.8%以上、或いは99.9%以上である。
【0059】
特に断りのない限り、「異性体過剰率」または「エナンチオマー過剰率」という用語は、2つの異性体または2つの鏡像異性体の相対的なパーセンテージの差を指す。例えば、一方の異性体または鏡像異性体の含有量が90%で、もう一方の異性体または鏡像異性体の含有量が10%の場合、異性体または鏡像体過剰率(ee値)は80%である。
【0060】
光学活性体である(R)-と(S)-異性体、またはDとL異性体は、キラル合成またはキラル試薬または他の従来の技術によって調製することができる。例えば、本願に係るある化合物のあるエナンチオマーを取得しようとする場合、不斉合成またはキラル補助剤を使用する誘導体化によって調製することができる。そこでは、得られるジアステレオ異性体混合物が光学分割され、補助基が切断されて、所望の純粋なエナンチオマーが提供される。あるいは、分子が塩基性官能基(アミノ基など)または酸性官能基(カルボキシル基など)を含む場合、適切な光学活性である酸または塩基とジアステレオマー塩を形成し、次に当技術分野に周知の方法にて、ジアステレオ異性体を光学分割し、次に純粋なエナンチオマーを回収する。さらに、エナンチオマーとジアステレオマーの分離は、通常、キラル固定相を使用し、必要に応じて化学的誘導体化(たとえば、アミンからのカルバメートの形成)と組み合わせたクロマトグラフィーを使用して行われる。
【0061】
本発明の化合物は、化合物を構成する1つまたは複数の原子に不自然な比率の原子同位体を含み得る。例えば、化合物は、トリチウム(H)、ヨウ素-125(125I)、または、C-14(14C)などの放射性同位体で標識することができる。別の例として、水素を重水素で置換して重水素化薬物を形成することができ、重水素と炭素によって形成される結合は、一般的な水素と炭素によって形成される結合よりも強固である。重水素化されていない薬物と比較して、重水素化された薬物は、毒性副作用の低減、安定性の向上、効力の増強、生物学的半減期の延長などの利点を有している。放射性であるかどうかにかかわらず、本明細書に記載の化合物のすべての同位体変換は、本出願の範囲内に含まれる。「任意」または「任意に」という用語は、後に説明するイベントまたは状況が発生する可能性があることを意味しますが、必ずしもそうとは限りません。説明には、イベントまたは状況が発生する場合と発生しない場合が含まれる。
【0062】
「置換された」という用語は、特定の原子上の任意の1つ以上の水素原子が置換基によって置き換えられることを意味し、特定の原子の原子価が正常であり、置換された化合物が安定である限り、重水素および水素変異体を含み得る。置換基が酸素(すなわち=O)の場合、2つの水素原子が置換されていることを意味する。芳香族基では酸素置換が起こることはない。「任意に置換される」という用語は、それが置換または非置換であり得ることを意味する。特に明記しない限り、置換基のタイプおよび数は、それらが化学的に実現できることに基づいて任意であり得る。
【0063】
化合物の組成または構造に変数(Rなど)が複数回出現する場合、それぞれの場合の、その定義は、独立している。したがって、例えば、一つの基が0~2つのRで置換される場合、前記基はオプションで最大2つのRで置換でき、それぞれの場合のRの定義は独立している。まさらに、置換基および/またはその変異体の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみ許可される。
【0064】
特に断りのない限り、「C1-6アルキル」という用語は、1から6個の炭素原子を含む直鎖または分岐飽和炭化水素基を指す。前記C-アルキルには、C1-4、C1-3、C1-2、C2-6、C2-4、C及びCアルキルなどが含まれる。それは、一価(例えば、メチル)、二価(例えば、メチレン)または多価(例えば、メテニル)であり得る。C1-6アルキルの例には、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(n-プロピル及びイソプロピルを含む)、ブチル(n-ブチル、イソブチル、s-ブチル及びt-ブチルを含む)、ペンチル(n-ペンチル、イソペンチル及びネオペンチルを含む)、ヘキシルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
特に断りのない限り、「C3-6シクロアルキル」は、単環式および二環式である3~6個の炭素原子から構成される飽和環状炭化水素基を意味する。前記C3-6シクロアルキルは、C3-5、C4-5及びC5-6シクロアルキルなどが含まれ、それは一価、二価または多価であり得る。C3-6シクロアルキルの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
「医薬組成物」という用語は、本出願の1つまたは複数の化合物またはそれらの塩と薬学的に許容される添加物との混合物を指す。医薬組成物の目的は、本出願の化合物の生物への投与を容易にすることである。
【0067】
「薬学的に許容される添加物」という用語は、生体に対して明らかな刺激効果を有さず、活性化合物の生物学的活性および特性を損なわないものを指す。炭水化物、ワックス、水溶性および/または水膨潤性ポリマー、親水性または疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、および水などの適切な添加物は、当業者によく知られているものである。
【0068】
「治療」という用語は、疾患または疾患に関連する1つまたは複数の症状を改善または排除するために本明細書に記載の化合物または製剤を投与することを意味し、以下を含む:
(i)疾患または病状を抑制する、すなわちその進行を抑制する、
(ii)疾患または病状を緩和する、すなわちその寛解を導入する。
【0069】
「治療上有効量」という用語は、(i)特定の疾患、状態または障害を治療すること、(ii)特定の疾患、状態、または障害の1つまたは複数の症状の軽減、改善または排除できる本発明の化合物の量を意味する。「治療上有効量」を構成する本出願の化合物の量は、化合物、病状およびその重症度、投与方法、ならびに治療される哺乳動物の年齢に応じて変化するが、当業者であれば、それらの知識および本開示の内容によって決定することができる。
【0070】
「予防」という用語は、疾患または疾患に関連する1つまたは複数の症状を予防するために本出願に記載の化合物または製剤を投与することを意味し、特に、哺乳動物が当該病状にかかりやすいが診断されていない場合の、哺乳動物における当該疾患または病状の発生を予防することを含む。
【0071】
本発明には、次の略語が使用されている:

【0072】
本発明で使用した溶媒は市販されており、さらに精製する必要はない。反応については、一般に、窒素雰囲気下の無水溶媒中で行われる。プロトン核磁気共鳴データは、Bruker Avance III 400(400MHz)分光計で記録され、化学シフトはテトラメチルシランの高磁場での(ppm)で表される。マススペクトルは、Agilent 1200シリーズと6110(&1956A)で測定される。LC/MSまたはShimadzu MSには、一つのDAD:SPD-M20A(LC)とShimadzu Micromass 2020検出器が含まれる。質量分析計には、ポジティブモードまたはネガティブモードのいずれかで動作するエレクトロスプレーイオン源(ESI)が装備されている。
【0073】
ShimadzuSIL-20A自動サンプラーとShimadzuDAD:SPD-M20A検出器を備えたShimadzu LC20ABシステムを使用して、Xtimate C18(3mフィラー、規格:2.1×300mm)カラムを使用した高速液体クロマトグラフィーの解析を行った。
【0074】
発明を実施するための形態
以下、実施例によって本発明について詳細に説明するが、本発明に限定するわけではない。本明細書で詳細に説明され、特定の例も開示されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に対して様々な変更および修正を行うことができることは当業者には明らかである。
【0075】
実施例1
【0076】
中間体化合物1-10の調製:
【0077】
ステップA:20-30℃で化合物1-1(50g、412.54mmol)とチタン酸テトラエチル(94.10g、412.54mmol、85.55mL)をTHF(500mL)に溶解し、さらに2-ヘキサノン(41.32g、412.54mmol、51.01mL)を加えた。反応液を65℃に上昇し、48時間攪拌して、得られた反応液を直接に次のステップに用いた。
【0078】
ステップB:ステップAの反応液を室温まで冷却し、THF(1000mL)を追加し、さらに臭化アリル(196.33g、1.62mol)を加えた。その後バッチでゆっくりと亜鉛粉末(53.06g、811.43mmol)を加え、反応液を窒素雰囲気下で20-30℃で12時間撹拌した。反応液を珪藻土で濾過し、ろ液に飽和食塩水100mLを加え、撹拌した後再度珪藻土で濾過し、ろ液をスピン乾燥した。残存物を酢酸エチル(100mL)で溶解し、分離した有機相を飽和食塩水(300mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、PE/EtOAc=15/1から5/1)で精製して化合物1-3を得た。HNMR(400MHz、CDCl)δ5.96-5.75(m、1H)、5.23-5.08(m、2H)、3.20(s、1H)、2.39-2.20(m、2H)、1.74(br s、1H)、1.56-1.42(m、2H)、1.40-1.15(m、14H)、0.96-0.86(m、3H)。
【0079】
ステップC:化合物1-3(15g、61.12mmol)をメタノール(150mL)に溶解し、0℃まで冷却し、ジオキサン・塩酸溶液(4M、91.68mL)を0から20℃でゆっくりと加え、反応液を25℃で2時間撹拌した。反応液を直接に減圧下で濃縮して化合物1-4を得た。
【0080】
ステップD:化合物1-4(塩酸塩、13g、73.15mmol)と炭酸水素ナトリウム(55.31g、658.36mmol)をジオキサン(90mL)とHO(60mL)に溶解し、0℃まで冷却した。その後CbzCl(74.87g、438.91mmol、62.40mL)をゆっくりと滴下した。反応液を20から30℃まで上昇し、2時間撹拌して、酢酸エチルで100ml/回、計2回抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水(150mL)で一回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、PE/EtOAc=1/0から100/1)で精製して化合物1-5を得た。HNMR(400MHz、CDCl)δ7.30-7.26(m、5H)、5.76-5.62(m、1H)、5.08-4.91(m、4H)、2.47-2.34(m、1H)、2.32-2.20(m、1H)、1.72-1.57(m、1H)、1.50-1.42(m、1H)、1.30-1.10(m、7H)、0.76-0.76(m、1H)、0.76-0.76(m、1H)、0.82(t、J=7.0Hz、2H)。
【0081】
ステップE:化合物1-5(20.8g、75.53mmol)をアセトニトリル(100mL)、HO(150mL)とテトラクロロメタン(100mL)に溶解し、0℃まで冷却し、過ヨウ素酸ナトリウム(64.62g、302.12mmol)をゆっくりと加え、さらに三塩化ルテニウム三水和物(394.99mg、1.51mmol)を加え、反応液を25℃まで上昇し、2時間撹拌した。反応液を珪藻土で濾過し、その後DCM(200mL)で一回抽出し、有機相を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(200mL)で一回洗浄し、さらに飽和食塩水(200mL)で一回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して減圧下で濃縮して粗化合物1-6を得、直接に次のステップに用いた。HNMR(400MHz、CDCl)δ7.40-7.35(m、5H)、5.19(s、1H)、5.08(s、2H)、2.89(br d、J=14.5Hz、1H)、2.69(br d、J=14.4Hz、1H)、1.90-1.77(m、1H)、1.74-1.62(m、1H)、1.43-1.20(m、7H)、0.90(t、J=6.9Hz、3H)。
【0082】
ステップF:化合物1-6(20g、68.18mmol)とトリエチルアミン(10.35g、102.26mmol、14.23mL)をTHF(250mL)に溶解し、窒素雰囲気下-10℃でクロロギ酸イソブチル(9.78g、71.59mmol、9.40mL)を滴下し、-10から0℃で30分間撹拌した。続いで、アンモニア水(63.70g、454.41mmol、70mL、25%)をゆっくりと加え、0から5℃下で30分間撹拌して反応させた。反応液を減圧下で濃縮して、その後、酢酸エチル(200mL)で一回抽出し、有機相を飽和食塩水で100mL/回、計二回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、PE/EtOAc=10/1から1/1)で精製して化合物1-7を得た。HNMR(400MHz、CDCl)δ7.41-7.28(m、5H)、5.62(br s、1H)、5.30-5.12(m、2H)、5.11-5.01(m、2H)、2.76(d、J=13.2Hz、1H)、2.44(d、J=13.3Hz、1H)、1.85-1.74(m、1H)、1.73-1.62(m、3H)、1.39-1.29(m、5H)、0.90(t、J=7.0Hz、3H)。LCMS(ESI)m/z:293.3[M+H]+
【0083】
ステップG:化合物1-7(15.34g、52.47mmol)とN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(134.55g、1.13mol、150mL)を120℃下で2時間撹拌し、減圧下で濃縮して後さらに酢酸(250mL)に溶解、ヒドラジン水和物(25.75g、504.09mmol、25mL、98%)をゆっくりと加え、窒素雰囲気下90℃で2時間撹拌した。反応液を減圧下で濃縮して、HO(400mL)を加えた後、DCMで200mL/回、計二回抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水で200mL/回、計二回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して減圧下で濃縮して粗化合物1-8を得た。HNMR(400MHz、CDCl)δ7.95(s、1H)、7.43-7.29(m、5H)、5.08(s、2H)、4.90(br s、1H)、3.42(br d、J=13.9Hz、1H)、3.12(d、J=14.3Hz、1H)、1.87-1.77(m、1H)、1.68-1.58(m、1H)、1.41-1.17(m、7H)、0.90(br t、J=6.5Hz、3H)。LCMS(ESI)m/z:317.2[M+H]+
【0084】
ステップH:化合物1-8(15.20g、48.04mmol)とDIPEA(12.42g、96.08mmol、16.74mL)をDCM(160mL)に溶解し、トリフェニルクロロメタン(20.09g、72.06mmol)をゆっくりと加え、反応液を25℃で2時間撹拌した。反応液にHO(100mL)を加えて2N希塩酸でpH7~8に調整した。さらに、100mLのDCMで一回抽出し、有機相を飽和食塩水で100mL/回、計二回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、PE/EtOAc=20/1から5/1)で精製して化合物1-9を得た。HNMR(400MHz、CDCl)δ7.89(s、1H)、7.37-7.27(m、14H)、7.18-7.07(m、6H)、5.72(br s、1H)、5.16-4.93(m、2H)、3.07(d、J=14.2Hz、1H)、2.90(d、J=14.2Hz、1H)、1.80-1.61(m、4H)、1.33(s、3H)、0.90-0.84(m、3H)。LCMS(ESI)m/z:559.3[M+H]+
【0085】
ステップI:化合物1-9(12.75g、22.82mmol)をイソプロパノール(300mL)に溶解し、窒素雰囲気下Pd/C(6g)を加え、懸濁液を真空脱気し、水素で3回置換し、水素雰囲気(15psi)下で25℃で16時間撹拌した。反応液を珪藻土で濾過し、300mLのDCMで洗浄し、ろ液を減圧下で濃縮して化合物1-10を得た。HNMR(400MHz、CDCl)δ7.91(s、1H)、7.37-7.28(m、9H)、7.17-7.11(m、6H)、2.87(s、2H)、1.45-1.24(m、6H)、1.12(s、3H)、0.92-0.84(m、3H)。LCMS(ESI)m/z:425.2[M+H]+
【0086】
実施例1の合成:
【0087】
ステップA:化合物1-10(1.91g,4.50mmol)と化合物1-11(900mg,4.50mmol)をTHF(9mL)に溶解し、さらにDIPEA(9.00mmol,1.57mL)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で70℃で3時間撹拌して反応させた。反応液を減圧下で濃縮して粗化合物1-12を得た。LCMS(ESI)m/z:588.42[M+H]+
【0088】
ステップB:粗化合物1-12(3.60g,6.12mmol)と2,4-ジメトキシベンジルアミン((3.01mg,18.00mmol,2.71mL)を1,4-ジオキサン(30mL)に溶解し、窒素雰囲気下でDIPEA(8.99mmol,1.57mL)さらにを加えた。混合物を100℃下で12時間撹拌して反応させた。反応液に水(20mL)と酢酸エチル(50mL)を加え、液-液分離し、有機相を飽和食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO、DCM/MeOH=100/1から15/1)で精製して化合物1-13を得た。LCMS(ESI)m/z:719.7[M+H]+
【0089】
ステップC:化合物1-13(2.00g,2.78mmol)、トリエチルシラン(970.50mg,8.35mmol,1.33mL)をTFA(41.81mL)に溶解した後、28℃で12時間撹拌して反応させた。反応液を直接減圧下で濃縮し、p-HPLC(カラム:Phenomenex luna C18 250*50mm*10μm;移動相:[水(0.05%HCl)-アセトニトリル];アセトニトリル%:10%-40%,28min,50%min)で精製し、実施例1の塩酸塩を得た。HNMR(400MHz,CD OD)δ9.15(s,1H),8.90(s,1H),8.59(d,J=5.6Hz,1H),8.26(d,J=5.5Hz,1H),4.11(d,J=14.8Hz,1H),3.53(d,J=14.9Hz,1H),2.60(dt,J=4.1,12.8Hz,1H),1.79(dt,J=4.2,12.8Hz,1H),1.58(s,3H),1.52-1.19(m,4H),0.92(t,J=7.2Hz,3H)。LCMS(ESI)m/z:327.1 [M+H]+
【0090】
実験例1:人Toll様受容体7(TLR7)と人Toll様受容体8(TLR8)のinvitroでの受容体結合活性に関するスクリーニング実験
【0091】
本実験で使用したHEK-Blue TMhTLR7(製品番号:hkb-htlr7)とHEK-Blue TMhTLR8(製品番号:hkb-htlr8)細胞株は、InvivoGen社から購入した。これらの2つの細胞株は、hTLR7またはhTLR8をヒト胚性腎臓293細胞株へ安定的にコトランスフェクトするとともに、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子の発現を誘導することによって構築されたものであり、SEAPレポーター遺伝子はIFN-βプロモーターによって制御されていた。当該プロモーターはNF-κBおよびAP-1結合部位と融合し、hTLR7またはhTLR8は、NF-κBとAP-1を活性化させ、分泌型塩基性ホスファターゼ(SEAP)の発現と分泌を誘導する。QUANTI-BlueTM試薬を使用してSEAPの発現レベルを測定することにより、hTLR7およびhTLR8受容体に対する化合物のアゴニスト活性を同定した。
【0092】
実験ステップ:
1. 化合物を3倍の勾配で細胞板に添加し、最終濃度は5000nM、1667nM、556nM、185nM、62nM、21nM、6.9nM、2.3nM、0.76nM、0.25nM、でした。そして、各濃度に対して2連で行う。ネガティブコントロールとして、DMSOを各ウェルに1μL加えた。
【0093】
2. T150フラスコで培養した細胞をCOインキュベーターから取り出し、細胞培養上清を廃棄し、得られた細胞をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で1回洗浄した。フラスコに約10mLの培地を加え、軽くたたいて細胞を剥がし、得られた細胞塊を穏やかに均一にピペッティングした。細胞数をカウントし、細胞懸濁液を培地で500,000細胞/mLに調整した。次に、100μLの希釈済細胞(50,000細胞/ウェル)を、化合物を含む96ウェルプレートの各ウェルに加えた。
【0094】
3. 化合物と細胞を37℃の5%COインキュベーターで24時間インキュベートした。
【0095】
4. 化合物活性の検出:誘導後、各ウェルから20マイクロリットルの細胞上清を採取し、180μLのQUANTI-Blue TM試薬を含む細胞培養プレートに加え、37°Cで1時間インキュベートし、多機能マイクロプレートリーダーで各ウェルの650ナノメートル(OD650)での光学濃度値(OD650)を測定した。
【0096】
5. 細胞生存率の検出:ATPlite 1Stepの指示に従って操作し、多機能マイクロプレートリーダーでルシフェラーゼシグナル(RLU)を検出した。
【0097】
6. データ解析:化合物活性:GraphPadPrismソフトウェアを使用してOD650値を解析し、化合物の用量効果曲線を適合させ、化合物のEC50値(最大効果濃度の半分)を計算した。
【0098】
実験の結果:表1に示した。
【表1】

【0099】
結論:本願化合物は、理想的なTLR8アゴニスト活性を示し、TLR8とTLR7の間でTLR8の特異的な選択性を示した。
【0100】
実験例2:末梢血単核細胞の実験手順
【0101】
TLR8は、外因性病原体を感知する自然免疫系の受容体であり、外因性ウイルス一本鎖RNAを認識し、TNF-α、IL-12、IFN-γなどの一連のサイトカインの放出を引き起こして抗ウイルス免疫を誘発する。TLR7は、自然免疫系が外来病原体を感知するための別のタイプの受容体であり、活性化された後、主にIFN-αなどの抗ウイルス性サイトカインを産生する。本実験では、TLR8アゴニストとしての潜在的な化合物を使用して、ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を刺激し、上記のTNF-α、IL-12p40、IFN-γ、およびIFN-αのレベルを検出することで、TLR8受容体に対する化合物の活性化とTLR8/TLR7の選択性を反映している。
【0102】
実験ステップ:
1. 健康なボランティアの新鮮な血液を採取し、EDTA-K2抗凝固チューブ(製品番号:BD-8516542)で抗凝固処理した。
【0103】
2. フィコール密度勾配遠心分離して、中央の雲状層のhPBMC細胞を分離し、10%血清を含むRPMI1640(出典:Gibco、製品番号:224400-089)で2回洗浄し、10mLになるように培地で再懸濁した。Vi-cell cell counterで細胞数をカウントした後、細胞懸濁液の濃度を2×10/mLに調整した。
【0104】
3. 化合物を100mMでDMSOに溶解して、DMSOで50mMおよび2mMに希釈し、これらを初期濃度として使用した。次に、溶液をそれぞれ3倍のグラジエント(直前の濃度のサンプル(5μL)+ DMSO(10μL))で順次希釈して、8つのグラジエントを得た。得られた溶液をそれぞれ培地で500倍希釈して、化合物の作業溶液を調製した。
【0105】
4. U底96ウェルプレートで、100μLのhPBMC懸濁液と100μLの化合物の作業溶液を各ウェルに加え、最終濃度が2000nM、666.7nM、222.2nM、74.1nM、24.7nM、8.2nM、2.7nM、0.9nMであった。24時間インキュベートした後、上清を収集し、TNF-α、IFN-gamma、IL-12p40サイトカインの検出まで-20°C凍結した。もう一つのグループの最終濃度が50μM、16.7μM、5.6μM、1.9μM、0.6μM、0.2μM、0.1μM、0.02μMであった。24時間インキュベートした後、上清を収集し、IFN-alphaサイトカインの検出まで-20°C凍結した。
【0106】
5. フローサイトメトリービーズマイクロアレイ(CBA)を使用して、上清中のIL-12p40、TNF-α、IFN-γを検出した。酵素結合免疫測定法(ELISA)にて、細胞上清中のIFN-αを検出した。
【0107】
6. データ解析:化合物活性:EC50値(最大効果濃度の半分)をGraphPad Prismソフトウェアで解析し、化合物の用量効果曲線をフィティングさせて、化合物のEC50値を計算した。
【0108】
実験の結果:表2に示した。
【表2】

【0109】
結論:本発明の化合物は、理想的なTLR8経路に特異的なサイトカインIL-12p40、TNF-α及びIFN-γ誘導活性を有し、TLR7経路に特異的なサイトカインIFN-αに対する比較的低い誘導活性を有し、TLR8経路の作動に対する理想的な特異的選択性を示した。
【0110】
実験例3:マウスの薬物動態に関する研究
【0111】
この実験は、マウスへの単回静脈内注射または胃内投与後の化合物の薬物動態学的挙動を評価することを目的としている。静脉注射投与:試験化合物は0.5mg/mlの透明な溶液に調整され、溶媒は5%DMSO/5%ポリエチレングリコール-15ヒドロキシステアレート/90%水である。胃内投与:試験化合物が2mg/ml懸濁液に調整され、溶媒は0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム/0.2%Tween 80/99.3%水である。
【0112】
試験化合物の血中濃度は、高速液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS/MS)によって測定した。化合物と内部標準の保持時間、クロマトグラムの取得とクロマトグラムの積分はソフトウェアAnalyst(Applied Biosystems)によって処理され、データの統計解析はソフトウェアWatson LIMS(Thermo Fisher Scientific)またはAnalyst(Applied Biosystems)によって処理された。
【0113】
血漿濃度は、WinNonlinTMバージョン6.3(Pharsight、Mountain View、CA)という薬物動態ソフトウェアにおける非コンパートメントモデルを使用して処理され、薬物動態パラメーターは、線形対数台形法を使用して計算された。
【0114】
実施例1の塩酸塩について、1mg/Kg静脈内注射および5mg/Kg経口胃内投与でのマウスにおける薬物動態パラメータを以下の表3に示した。
【0115】
【表3】