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特許7498705環境制御システム、畜舎、体感温度演算方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】環境制御システム、畜舎、体感温度演算方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240605BHJP
   A01K 1/00 20060101ALI20240605BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20240605BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240605BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20240605BHJP
   F24F 7/007 20060101ALN20240605BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20240605BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20240605BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20240605BHJP
   F24F 110/30 20180101ALN20240605BHJP
   F24F 120/12 20180101ALN20240605BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20240605BHJP
【FI】
F24F7/06 K
A01K1/00 F
F24F11/46
F24F11/64
F24F11/72
F24F7/007 B
F24F110:10
F24F110:12
F24F110:20
F24F110:30
F24F120:12
F24F140:00
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021522201
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019296
(87)【国際公開番号】W WO2020241284
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2019098883
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019148767
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤司 陽介
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 祐司
(72)【発明者】
【氏名】蓑島 国彦
(72)【発明者】
【氏名】西山 徹
【審査官】梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-181013(JP,A)
【文献】特開2012-063055(JP,A)
【文献】特開2015-094527(JP,A)
【文献】特開2011-102670(JP,A)
【文献】実公平06-023865(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007、7/06
A01K 1/00
F24F 11/46
F24F 11/64
F24F 11/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜が飼育される畜舎において前記家畜が存在する空間の環境を表す環境情報を用いて前記空間の環境分布を演算する第1演算部と、前記第1演算部で演算された前記環境分布を用いて前記家畜の体感温度分布を演算する第2演算部と、を備える、体感温度演算システムと、
建物の内部空間を換気する換気設備と共に用いられ、前記建物の給気口から給気され前記内部空間を通して前記建物の排気口から前記建物の外部へ排気される空気の風速を制御する制御システムと、を備え、
前記給気口は、前記建物の長手方向の第1端側において前記建物の長手方向に沿った側壁の下端部に設けられており、
前記排気口は、前記建物の長手方向の第2端側に設けられており、
前記制御システムは、
前記内部空間において、前記給気口と前記排気口との間に設けられ、下端と前記建物の床面との間に空間を有するように前記建物の天井から吊り下げられる少なくとも1つのバッフル部材を備え、
前記バッフル部材の下端の高さは、前記給気口の高さより高く、前記排気口の上端の高さより低い、
環境制御システム。
【請求項2】
前記環境情報は、温度、湿度及び風速のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項3】
前記環境情報は、前記空間の少なくとも1つの代表点における環境を表す、
請求項1又は2に記載の環境制御システム。
【請求項4】
前記代表点は複数存在し、
前記複数の代表点は、
前記空間における風上の位置と、
前記空間における風下の位置と、を含む、
請求項3に記載の環境制御システム。
【請求項5】
前記第2演算部は、前記家畜の存在を表す生体検出情報と前記環境分布とを用いて前記体感温度分布を演算する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の環境制御システム。
【請求項6】
前記空間の環境を制御するための環境設備を制御する設備制御部を更に備え、
前記設備制御部は、前記生体検出情報を用いて、前記家畜が実際に存在する領域の環境を制御するように、前記環境設備を制御する、
請求項5に記載の環境制御システム。
【請求項7】
前記家畜の位置を表す位置情報を用いて前記家畜の位置を追跡する追跡演算部を更に備え、
前記設備制御部は、前記追跡演算部で追跡された前記家畜の位置の環境を制御するように、前記環境設備を制御する、
請求項6に記載の環境制御システム。
【請求項8】
前記第2演算部は、前記体感温度分布を3次元分布として演算する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の環境制御システム。
【請求項9】
異常環境の空間に存在する家畜を検出する異常検出部と、
前記異常検出部で前記異常環境の空間に存在する家畜が検出された場合、前記異常環境の空間に存在する家畜及び前記異常環境の空間に存在する家畜の位置の少なくとも一方を、報知装置を介して報知するように前記報知装置を制御する報知制御部と、を更に備える、
請求項1~8のいずれか1項に記載の環境制御システム。
【請求項10】
前記第1演算部及び前記第2演算部の少なくとも1つは、機械学習が行われた分類器によって演算を行う、
請求項1~9のいずれか1項に記載の環境制御システム。
【請求項11】
前記環境情報を計測し前記環境情報を前記体感温度演算システムに出力する計測装置と、
前記体感温度分布に基づいて前記空間の環境を制御する環境設備と、を備える、
請求項1~10のいずれか1項に記載の環境制御システム。
【請求項12】
前記バッフル部材は、前記建物の前記内部空間のうち前記バッフル部材と前記排気口との間の領域において位置ごとの前記風速の差を小さくするように、配置されている、
請求項1~11のいずれか1項に記載の環境制御システム。
【請求項13】
前記給気口は、前記建物の長手方向の第1端側において前記建物の長手方向に沿った側壁の下端部に設けられており、
前記排気口は、前記建物の長手方向の第2端側に設けられており、
前記換気設備は、前記給気口に設けられており上下に回動して開閉する開閉窓を含む、
請求項1~12のいずれか1項に記載の環境制御システム。
【請求項14】
前記バッフル部材は3以上設けられており、
前記3以上のバッフル部材において隣接する2つのバッフル部材の間隔は不均一である、
請求項1~13のいずれか1項に記載の環境制御システム。
【請求項15】
前記バッフル部材は2以上設けられており、
前記2以上のバッフル部材の前記下端の前記床面からの高さは不均一である、
請求項1~14のいずれか1項に記載の環境制御システム。
【請求項16】
前記換気設備は、前記排気口に設けられており前記内部空間の空気を前記建物の外部に排気する換気扇を含む、
請求項1~15のいずれか1項に記載の環境制御システム。
【請求項17】
前記建物外の外気温の入力を受け付ける制御装置を更に備え、
前記換気扇は複数設けられており、
前記制御装置は、
前記制御装置に入力された前記外気温が高くなるほど、前記複数の換気扇のうち稼働させる換気扇の数を増やし、
前記制御装置に入力された前記外気温が低くなるほど、前記複数の換気扇のうち稼働させる換気扇の数を減らす、
請求項16に記載の環境制御システム。
【請求項18】
前記建物は畜舎である、
請求項1~17のいずれか1項に記載の環境制御システム。
【請求項19】
前記バッフル部材の前記下端を前記建物の高さ方向に移動可能な吊り機構を更に備える、
請求項1~18のいずれか1項に記載の環境制御システム。
【請求項20】
前記バッフル部材は前記建物から取り外し可能である、
請求項1~19のいずれか1項に記載の環境制御システム。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の環境制御システムと、
前記バッフル部材及び前記換気設備が取り付けられている建物本体と、を備える、
畜舎。
【請求項22】
家畜が飼育される畜舎において前記家畜の存在する空間の環境を表す環境情報を用いて前記空間の環境分布を演算する第1演算ステップと、
前記第1演算ステップで演算した前記環境分布を用いて前記家畜の体感温度分布を演算する第2演算ステップと、
換気設備によって換気される建物の内部空間において、前記建物の給気口から給気され前記内部空間を通して前記建物の排気口から前記建物の外部へ排気される空気の風速を制御する制御ステップと、を有し、
前記給気口は、前記建物の長手方向の第1端側において前記建物の長手方向に沿った側壁の下端部に設けられており、
前記排気口は、前記建物の長手方向の第2端側に設けられており、
前記制御ステップでは、
前記内部空間において、前記給気口と前記排気口との間に設けられ、下端と前記建物の床面との間に空間を有するように前記建物の天井から吊り下げられる少なくとも1つのバッフル部材の下端の高さは、前記給気口の高さより高く、前記排気口の上端の高さより低い、
体感温度演算方法。
【請求項23】
請求項22に記載の体感温度演算方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、環境制御システム、畜舎、体感温度演算方法及びプログラムに関し、より詳細には、家畜が存在する空間に用いられる体感温度演算システムを備える環境制御システム、畜舎、体感温度演算方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オープン型鶏舎において鶏舎内外の環境制御を行う環境制御システムが記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された環境制御システムが用いられる鶏舎には、温湿度センサ、風速センサ、アンモニア等ガスセンサが設けられている。環境制御システムは、個々の検出値を制御手段を介して制御用コンピュータに入力し、あらかじめインプットしてある制御プログラムと比較し、照合・解析した結果を制御手段を介して、鶏舎の制御端末から出力して、各制御機器を総合的にコントロールする。
【0004】
特許文献1には、鶏卵の生産性において大きな要因を占める項目として、体感温度・体感湿度・体感照度・体感ガス濃度・体感風速などが記載されている。さらに、特許文献1には、上記の項目のすべてをクリアできるように各種センサで検出し、制御プログラムを有する制御用コンピュータによりコントロールを実行できる点が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の環境制御システムでは、空間に存在する家禽の体感温度を示しているため、空間の環境の精度が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-225599号公報
【発明の概要】
【0007】
本開示は上記の点に鑑みてなされており、本開示の目的は、空間全体において家畜の実際の体感温度が家畜に適した温度となるように、空間の環境を制御することができる環境制御システム、畜舎、体感温度演算方法及びプログラムを提供することにある。
【0008】
本開示の一態様に係る環境制御システムは、体感温度演算システムと、制御システムと、を備える。体感温度演算システムは、第1演算部と、第2演算部とを備える。前記第1演算部は、家畜が飼育される畜舎において前記家畜が存在する空間の環境を表す環境情報を用いて前記空間の環境分布を演算する。前記第2演算部は、前記第1演算部で演算された前記環境分布を用いて前記家畜の体感温度分布を演算する。前記制御システムは、建物の内部空間を換気する換気設備と共に用いられ、前記建物の給気口から給気され前記内部空間を通して前記建物の排気口から前記建物の外部へ排気される空気の風速を制御する。前記給気口は、前記建物の長手方向の第1端側において前記建物の長手方向に沿った側壁の下端部に設けられている。前記排気口は、前記建物の長手方向の第2端側に設けられている。前記制御システムは、少なくとも1つのバッフル部材を備える。前記バッフル部材は、前記内部空間において、前記給気口と前記排気口との間に設けられ、下端と前記建物の床面との間に空間を有するように前記建物の天井から吊り下げられる。前記バッフル部材の下端の高さは、前記給気口の高さより高く、前記排気口の上端の高さより低い。
【0010】
本開示の一態様に係る体感温度演算方法は、第1演算ステップと、第2演算ステップと、制御ステップとを有する。前記第1演算ステップでは、家畜が飼育される畜舎において前記家畜の存在する空間の環境を表す環境情報を用いて空間の環境分布を演算する。前記第2演算ステップでは、前記第1演算ステップで演算した前記環境分布を用いて前記家畜の体感温度分布を演算する。前記制御ステップでは、換気設備によって換気される建物の内部空間において、前記建物の給気口から給気され前記内部空間を通して前記建物の排気口から前記建物の外部へ排気される空気の風速を制御する。前記給気口は、前記建物の長手方向の第1端側において前記建物の長手方向に沿った側壁の下端部に設けられている。前記排気口は、前記建物の長手方向の第2端側に設けられている。前記制御ステップでは、少なくとも1つのバッフル部材の下端の高さは、前記給気口の高さより高く、前記排気口の上端の高さより低い。前記バッフル部材は、前記内部空間において、前記給気口と前記排気口との間に設けられ、下端と前記建物の床面との間に空間を有するように前記建物の天井から吊り下げられる。
【0011】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記体感温度演算方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0013】
本開示の一態様に係る畜舎は、前記制御システムと、建物本体とを備える。前記建物本体には、前記バッフル部材及び前記換気設備が取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態1に係る環境制御システムのブロック図である。
図2図2は、同上の環境制御システム及び建物の概略図である。
図3図3は、同上の建物における空間の概略図である。
図4図4は、同上の環境制御システムの動作を説明するための概略図である。
図5図5は、実施形態2に係る制御システムの概略図である。
図6図6は、同上の制御システムの断面図である。
図7図7Aは、同上の制御システムが設けられている建物の内部空間における風速の分布図である。図7Bは、バッフル部材がない場合の建物の内部空間における風速の分布図である。
図8図8は、実施形態2の変形例1に係る制御システムのブロック図である。
図9図9は、実施形態2の変形例2に係る制御システムの概略図である。
図10図10は、実施形態2の変形例3に係る制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
以下、実施形態1に係る体感温度演算システム、環境制御システム、体感温度演算方法及びプログラムについて、図面を参照して説明する。下記の実施形態等において参照する図2及び図3は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比は、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0016】
(1)体感温度演算システム
実施形態1に係る体感温度演算システム1の構成について、図面を参照して説明する。
【0017】
実施形態1に係る体感温度演算システム1は、図1に示すように、取得部11と、処理部12と、設備制御部13と、記憶部14と、報知制御部15とを備える。
【0018】
体感温度演算システム1は、家畜9(図3参照)が存在する建物6(図2参照)の空間7(図2参照)において、家畜9の体感温度分布を求めるために用いられる。空間7には、多数の家畜9が存在する(図3参照)。
【0019】
(2)建物
体感温度演算システム1が用いられる建物6について、図面を参照して説明する。なお、図2に示す建物6は一例であり、体感温度演算システム1が用いられる建物6は、図2の例に限定されない。
【0020】
建物6は、図2に示すように、例えば直方体状の建物本体61を含む。また、建物6は、空間7を有する。
【0021】
図2の例では、建物6は、家畜9が飼育される畜舎である。建物6が畜舎である場合、建物本体61は畜舎本体である。建物6では、空間7において、多数の家畜9が飼育されている(図3参照)。畜舎は、例えば、鶏が飼育される鶏舎である。ただし、畜舎は、鶏舎であることに限定されず、家畜9として豚が飼育される豚舎であってもよいし、家畜9として牛が飼育される牛舎であってもよい。
【0022】
建物本体61は、2つの第1側壁62,63と、2つの第2側壁64,65とを有する。
【0023】
2つの第1側壁62,63は、例えば長方形状であり、建物6の長手方向D1に沿って設けられている。そして、2つの第1側壁62,63は、空間7を介して、建物6の短手方向D2において互いに対向する。
【0024】
2つの第2側壁64,65は、例えば長方形状であり、建物6の短手方向D2に沿って設けられている。そして、2つの第2側壁64,65は、空間7を介して、建物6の長手方向D1において互いに対向する。
【0025】
空間7は、建物本体61で囲まれている空間である。より詳細には、空間7は、高さ方向D3の平面視において2つの第1側壁62,63及び2つの第2側壁64,65で囲まれている空間である。
【0026】
また、建物6は、複数(図示例では2つ)の給気口66と、排気口67とを有する。複数の給気口66の各々では、建物6の外部から空間7へ空気が給気される。排気口67では、空間7から建物6の外部へ空気が排気される。
【0027】
複数の給気口66(給気口661,662)は、建物6の長手方向D1に沿った第1側壁62,63の下端部に設けられている。より詳細には、一方の給気口661は、長手方向D1の第1端側(第2側壁64側)において第1側壁62の下端部に設けられている。他方の給気口662は、長手方向D1の第1端側(第2側壁64側)において第1側壁63の下端部に設けられている。一方の給気口661と他方の給気口662は、建物6の短手方向D2において、互いに対向する。
【0028】
排気口67は、建物6の長手方向D1の第2端側(第2側壁65側)に設けられている。排気口67は、高さ方向D3において第2側壁65の中央付近に設けられている。なお、排気口67は、第2側壁65の上端付近に設けられてもよい。
【0029】
なお、給気口66の数は、2つであることに限定されず、1つのみであってもよいし、3つ以上であってもよい。要するに、給気口66の数は、1つ以上であればよい。排気口67の数は、1つであることに限定されず、2つ以上であってもよい。要するに、排気口67の数は、1つ以上であればよい。
【0030】
(3)環境制御システム
実施形態1に係る環境制御システム2は、図1に示すように、体感温度演算システム1と、複数(図示例では2つ)の計測装置3と、制御装置4と、環境設備5とを備える。また、実施形態1に係る環境制御システム2は、検出装置33と、報知装置21とを更に備える。
【0031】
(3.1)計測装置
複数の計測装置3は、図2に示すように、空間7の環境を表す環境情報を計測する。複数の計測装置3は、上記環境情報として、空間7の代表点71,72における環境に関する物理量を計測する。複数の計測装置3は、計測した環境情報を体感温度演算システム1に出力する。
【0032】
複数の計測装置3は、空間7の代表点71の環境に関する物理量を計測する計測装置31と、空間7の代表点72の環境に関する物理量を計測する計測装置32とを含む。空間7の代表点71は、空間7における風上の位置である。代表点71は、建物6の長手方向D1において、排気口67よりも給気口66に近い位置である。長手方向D1において、代表点71と給気口66との間に距離は、代表点71と排気口67との間の距離よりも短い。空間7の代表点72は、空間7における風下の位置である。代表点72は、建物6の長手方向D1において、給気口66よりも排気口67に近い位置である。長手方向D1において、代表点72と排気口67との間の距離は、代表点72と給気口66との間の距離よりも短い。
【0033】
空間7の環境に関する物理量の例としては、温度、湿度、風速、二酸化炭素濃度、アンモニア濃度、粉塵濃度が挙げられる。例えば、温度を計測する場合、各計測装置3は、温度センサを含む。湿度を計測する場合、各計測装置3は、湿度センサを含む。また、風速を計測する場合、各計測装置3は、風速センサを含む。なお、各計測装置3は、空間7の環境に関する物理量として、温度、湿度、風速、二酸化炭素濃度、アンモニア濃度及び粉塵濃度の全てを計測することに限定されない。各計測装置3は、空間7の環境に関する物理量として、温度、湿度、風速、二酸化炭素濃度、アンモニア濃度及び粉塵濃度のうちの少なくとも1つを計測すればよい。つまり、各計測装置3は、少なくとも1つのセンサを含んでいればよい。
【0034】
粉塵濃度とは、単位体積当たりの空間に含まれる粉塵量をいう。家畜9が存在する空間7では、多量の粉塵が発生する傾向にある。粉塵は、家畜9の体組織の形成に影響を及ぼすことがある。このため、空間7の粉塵濃度を計測することが好ましい。
【0035】
(3.2)制御装置
制御装置4は、図1及び図2に示すように、環境設備5に制御信号を出力して環境設備5を制御する。より詳細には、制御装置4は、環境設備5の制御内容(制御パラメータ)を体感温度演算システム1から取得する。制御装置4は、体感温度演算システム1から取得した制御内容を含む制御信号を環境設備5に出力することによって、環境設備5を制御する。
【0036】
(3.3)環境設備
図1に示す環境設備5は、空間7(図2参照)の環境を制御するための設備である。図1に示すように、環境設備5は、複数(図示例では2つ)の開閉窓51と、複数(図示例では3つ)の換気扇52とを含む。環境設備5は、制御装置4の制御に従って、空間7の環境を制御する。
【0037】
(3.3.1)開閉窓
複数の開閉窓51は、図2に示すように、建物6の給気口66に設けられている。より詳細には、複数の開閉窓51(開閉窓511,512)のうち、一方の開閉窓511は、第1側壁62の給気口661に設けられており、他方の開閉窓512は、第1側壁63の給気口662に設けられている。
【0038】
複数の開閉窓51は、いわゆるトンネルドアとも称されており、上下に回動することによって開閉する。開閉窓51が開くことにより、給気口66を通って建物6の外部から空間7に空気を入れることができる。
【0039】
(3.3.2)換気扇
複数の換気扇52は、図2に示すように、排気口67に設けられている。より詳細には、複数の換気扇52は、長手方向D1において、開閉窓51とは反対側に設けられている。つまり、複数の換気扇52は、第2側壁65に設けられている。
【0040】
また、複数の換気扇52は、短手方向D2において一列に並んでいる。より詳細には、短手方向D2において、換気扇521、換気扇522及び換気扇523が、第1側壁63側から、この順に並んでいる。
【0041】
複数の換気扇52は、建物6の空間7の空気を建物6の外部に排気する。より詳細には、複数の換気扇52は、空間7の空気を略全て同じ向きに排気するように設けられている。これにより、空間7内の排気側(風下)の位置において、空間7の空気を吸気して建物6の外部に排気することができる。
【0042】
(3.4)検出装置
図1に示す検出装置33は、家畜9(図3参照)の存在を検出する。検出装置33は、例えば、空間7を撮像する撮像装置を含み、撮像画像から家畜9を抽出する機能を有する。あるいは、検出装置33は、例えば赤外線センサを含み、家畜9から放射される赤外線を受光する機能を有する。検出装置33は、上記の機能を有することにより、空間7における家畜9が存在する領域、家畜9が多く存在する領域を検出することができる。検出装置33は、このような検出結果を生体検出情報として体感温度演算システム1に出力する。
【0043】
(3.5)報知装置
図1に示す報知装置21は、異常環境の空間に存在する家畜9(図3参照)、及び、異常環境の空間に存在する家畜9の位置を報知する。報知装置21は、体感温度演算システム1の制御に従って、報知すべき情報を報知する。
【0044】
報知装置21は、例えば、所定の情報を表示する表示機能を有するディスプレイを有する。報知装置21がディスプレイを有する場合、報知装置21は、異常環境の空間に存在する家畜9、及び、異常環境の空間に存在する家畜9の位置を、視覚的に報知することができる。
【0045】
報知装置21は、例えば、所定の情報を音声で出力する音声出力機能を有するスピーカを有する。報知装置21がスピーカを有する場合、報知装置21は、異常環境の空間に存在する家畜9、及び、異常環境の空間に存在する家畜9の位置を、聴覚的に報知することができる。
【0046】
(4)体感温度演算システムの各構成要素
以下、実施形態1に係る体感温度演算システム1の各構成要素について、図面を参照して説明する。
【0047】
(4.1)取得部
取得部11は、図1に示すように、家畜9(図3参照)が存在する空間7(図2参照)の環境情報として計測装置3の計測結果を計測装置3から取得する。より詳細には、取得部11は、有線による通信又は無線による通信によって、空間7の2つの代表点71,72(図2参照)における環境を表す環境情報を取得する。ここで、環境情報は、温度、湿度、風速、二酸化炭素濃度、アンモニア濃度及び粉塵濃度のうちの少なくとも1つを含む。
【0048】
(4.2)処理部
処理部12は、図1に示すように、第1演算部121と、第2演算部122とを有する。処理部12は、コンピュータのプロセッサの1つの機能として構成されている。
【0049】
(4.2.1)第1演算部
図1に示す第1演算部121は、空間7(図2参照)の環境情報を用いて空間7の環境分布を演算する。実施形態1では、環境情報は、空間7の複数の代表点71,72(図2参照)における環境を表す情報を含む。具体的には、代表点71,72は2つ存在する。そして、2つの代表点71,72は、空間7における風上の位置、及び、空間7における風下の位置である。より詳細には、図2に示すように、代表点71は、空間7における風上の位置であり、代表点72は、空間7における風下の位置である。
【0050】
図1に示す第1演算部121は、建物6の空間7のレイアウト、空間7における代表点71,72の位置を考慮して、代表点71,72の環境情報から空間7の環境分布を演算する。例えば、空間7のレイアウト、空間7における代表点71,72の位置を考慮した関数があらかじめ用意されている。第1演算部121は、上記関数に、代表点71,72の環境情報を入力することで、空間7の環境分布を演算する。上記関数は、記憶部14にあらかじめ記憶されている。なお、第1演算部121による環境分布の演算手法は、上記のような関数を用いる手法に限定されず、他の手法であってもよい。
【0051】
(4.2.2)第2演算部
図1に示す第2演算部122は、第1演算部121で演算された環境分布と演算モデルとを用いて、家畜9の体感温度分布を演算する。
【0052】
ここで、家畜9の体感温度分布とは、空間7において家畜9が体感するであろう温度の分布をいう。家畜9の実際の体感温度を計測することは難しく、空間7に多数の家畜9が存在する場合、個々の家畜9の実際の体感温度を計測することは更に難しい。一方、家畜9が存在する領域の環境温度を計測するためには、空間7の多数の箇所に温度センサを設置する必要がある。
【0053】
また、家畜9が成長するにつれて、家畜9の高さが異なるため、建物6の上方から見たときの2次元エリアでの体感温度分布では十分でない。そこで、第2演算部122は、平面方向だけでなく高さ方向D3を含めた3次元分布として、家畜9の体感温度分布を演算する。これにより、家畜9の各成長段階での大きさを考慮することができるので、家畜9の体感温度分布の精度を高めることができる。
【0054】
(4.2.3)処理部の応用
図1に示す処理部12において、第2演算部122は、機械学習が行われた分類器によって演算を行う。なお、第2演算部122のみが、機械学習が行われた分類器によって演算を行うことに限定されない。第1演算部121のみが、機械学習が行われた分類器によって演算を行ってもよいし、第1演算部121及び第2演算部122の両方が、機械学習が行われた分類器によって演算を行ってもよい。要するに、第1演算部121及び第2演算部122の少なくとも1つが、機械学習が行われた分類器によって演算を行うことが好ましい。
【0055】
ところで、実施形態1では、図1に示す第1演算部121及び第2演算部122は、空間7(図2参照)の気流を考慮して演算を行う。空間7の気流は、建物6(図2参照)のレイアウト、開閉窓51(図2参照)の開き具合、換気扇52(図2参照)の換気能力、風上の風速、風下の風速に基づいている。空間7の気流に関する情報は、記憶部14にあらかじめ記憶されている。なお、第1演算部121及び第2演算部122の両方が空間7の気流を考慮して演算を行うことに限定されない。第1演算部121のみが空間7の気流を考慮して演算を行ってもよいし、第2演算部122のみが空間7の気流を考慮して演算を行ってもよい。要するに、第1演算部121及び第2演算部122の少なくとも1つが空間7の気流を考慮して演算を行うことが好ましい。
【0056】
また、図1に示す処理部12の第2演算部122は、家畜9の体感温度分布を、空間7の全体において演算することに限定されず、空間7の一部のみにおいて演算してもよい。例えば、空間7のうち、家畜9が存在する領域のみにおいて、第2演算部122は、家畜9の体感温度分布を演算する。第2演算部122は、生体検出情報と空間7の環境分布とを用いて、家畜9の体感温度分布を演算する。生体検出情報は、空間7内において家畜9の存在を表す情報である。第2演算部122は、検出装置33から生体検出情報を取得する。
【0057】
例えば、図3の例では、空間7のうち、家畜9が多い領域A1,A4のみに対して、第2演算部122は、家畜9の体感温度分布を演算する。一方、領域A2,A3についての体感温度分布は演算されない。
【0058】
さらに、図1に示す処理部12は、家畜9の位置を追跡する機能を有してもよい。図1に示すように、処理部12は、追跡演算部123を有する。追跡演算部123は、家畜9の位置を表す位置情報を用いて家畜9の位置を追跡する。追跡演算部123は、検出装置33から位置情報を取得する。
【0059】
処理部12は、図1に示すように、異常検出部124を更に有する。異常検出部124は、空間7において異常環境の空間に存在する家畜9を検出する。より詳細には、異常検出部124は、検出装置33の検出結果を用いて、異常環境の空間に存在する家畜9を検出する。
【0060】
(4.3)設備制御部
図1に示す設備制御部13は、環境設備5(複数の開閉窓51及び複数の換気扇52)を制御する。より詳細には、設備制御部13は、処理部12の第2演算部122で演算された体感温度に基づいて、家畜9の実際の体感温度が家畜9に適する温度になるように、環境設備5を制御する。実施形態1では、設備制御部13は、環境設備5の制御内容(制御パラメータ)を制御装置4に出力する。環境設備5は、家畜9の実際の体感温度が家畜9に適する温度になるように、第2演算部122で演算された体感温度分布に基づいて、空間7の環境を制御する。
【0061】
ところで、第2演算部122において生体検出情報を用いて体感温度分布が演算された場合、設備制御部13は、生体検出情報を用いて、家畜9が実際に存在する領域の環境を制御するように、環境設備5を制御する。これにより、空間7において、家畜9が存在しない領域よりも、家畜9が実際に存在する領域を優先させて、上記領域の環境を制御することができる。その結果、効率よく環境を制御することができる。
【0062】
また、設備制御部13は、追跡演算部123で追跡された家畜9の位置の環境を制御するように、環境設備5を制御する。これにより、家畜9が実際に存在する領域の環境を精度よく制御することができる。
【0063】
(4.4)報知制御部
図1に示す報知制御部15は、異常検出部124で異常環境の空間に存在する家畜9が検出された場合、異常環境の空間に存在する家畜9、及び、異常環境の空間に存在する家畜9の位置を、報知装置21を介して報知するように報知装置21を制御する。これにより、異常環境の空間に存在する家畜9への対応を早期に行わせることができる。
【0064】
(4.5)記憶部
図1に示す記憶部14は、処理部12で用いられる演算モデルを記憶する。より詳細には、記憶部14は、演算モデルに用いる複数のパラメータを記憶する。
【0065】
また、記憶部14は、第1演算部121で演算された空間7の環境分布を記憶する。記憶部14は、空間7の環境分布(第1演算部121の演算結果)の履歴データを記憶する。空間7の環境分布の履歴データは、例えば、空間7の環境分布と、上記環境分布の演算に用いられた環境情報に関する物理量が計測された時点との組み合わせである。
【0066】
さらに、記憶部14は、第2演算部122で演算された家畜9の体感温度分布を記憶する。記憶部14は、家畜9の体感温度分布(第2演算部122の演算結果)の履歴データを記憶する。家畜9の体感温度分布の履歴データは、例えば、空間7の環境分布と、上記環境分布が得られる時点における家畜9の体感温度分布との組み合わせを含む。
【0067】
(4.6)演算モデル
図1に示す処理部12で用いられる演算モデルは、複数のデータを用いて学習された学習済みモデルである。演算モデルは、例えば、空間7(図2参照)の環境分布がニューラルネットワーク(Neural Network)8(図4参照)の入力層81(図4参照)に入力され、家畜9の体感温度分布をニューラルネットワーク8の出力層82(図4参照)から出力するよう、1以上のプロセッサを機能させるためのモデルである。
【0068】
演算モデルは、複数の履歴データを用いて学習される。複数の履歴データの各々は、空間7の環境分布と、上記環境情報が得られる時点における家畜9の体感温度分布との組合せを含む。
【0069】
演算モデルは、図4に示すニューラルネットワーク8の場合、複数の履歴データを教師ありデータとして用いて学習される。ニューラルネットワーク8の入力層81に環境分布を入力したときに、ニューラルネットワーク8の出力層82から体感温度分布を出力するように、各パラメータが調整される。
【0070】
このような演算モデル(学習済みモデル)を用いることによって、空間7全体において家畜9の実際の体感温度を家畜9に適する温度に近づけることができる。
【0071】
(5)環境制御システムの動作
以下、実施形態1に係る環境制御システム2の動作(体感温度演算方法)について、図4を参照して説明する。
【0072】
第1ステップでは、複数の計測装置3が空間7の環境情報を計測する(図4のS1)。より詳細には、計測装置31が、空間7の複数の代表点71における環境に関する所定の物理量を計測し、計測装置32が、空間7の複数の代表点72における環境に関する所定の物理量を計測する。
【0073】
第2ステップでは、体感温度演算システム1において、処理部12が、計測装置31,32のセンサのセンサ値(代表点71,72の環境情報)を用いて、空間7の環境分布を演算する(図4のS2)。処理部12は、空間7の環境分布として、例えば、空間7の温度分布、空間7の湿度分布、空間7の風速分布を演算する。第2ステップは、第1演算ステップに相当する。
【0074】
第3ステップでは、第2ステップで演算した環境分布と演算モデルとを用いて、空間7内における家畜9の体感温度分布を演算する。第3ステップは、第2演算ステップに相当する。
【0075】
具体的には、第3ステップでは、処理部12は、空間7の環境分布をニューラルネットワーク8の入力層81に入力し、空間7内における家畜9の体感温度分布をニューラルネットワーク8の出力層82から出力する(図4のS3)。
【0076】
第4ステップでは、処理部12で演算された体感温度分布に基づく制御内容を、設備制御部13が制御装置4に出力することによって、環境設備5(複数の開閉窓51及び複数の換気扇52)を制御する(図4のS4)。
【0077】
第5ステップでは、環境設備5が、制御装置4による制御に従って動作する(図4のS5)。
【0078】
第2ステップと第3ステップと第4ステップとを有する体感温度演算方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムは、体感温度演算システム1の記憶部14に記憶されている。
【0079】
(6)効果
実施形態1に係る体感温度演算システム1は、空間7の環境分布を用いて、空間7における家畜9の体感温度分布を演算する。第1演算部121で演算された体感温度分布を考慮して空間7の環境を制御することによって、空間7全体において家畜9の実際の体感温度を家畜9に適する温度に近づけることができる。
【0080】
実施形態1に係る体感温度演算システム1では、環境情報が、温度、湿度及び風速のうちの少なくとも1つを含む。これにより、家畜9の体感温度分布を演算する際に、家畜9の体感温度に影響を及ぼしやすい物理量を用いることで、家畜9の体感温度分布の精度を高めることができる。
【0081】
実施形態1に係る体感温度演算システム1では、環境情報が、空間7の少なくとも1つの代表点71,72における環境を表す。これにより、環境情報の計測点を少なくすることができるので、環境情報を計測する計測装置3の個数を減らすことができる。
【0082】
実施形態1に係る体感温度演算システム1では、複数の代表点71,72が、空間7における風上の位置と、空間7における風下の位置とを含む。これにより、空間7の環境分布の精度を高めることができるので、家畜9の体感温度分布を精度よく演算することができる。
【0083】
実施形態1に係る体感温度演算システム1は、家畜9の存在を表す生体検出情報と空間7の環境分布とを用いて家畜9の体感温度分布を演算する。これにより、家畜9の体感温度分布を演算する際に、空間7において、家畜9が存在しない領域よりも、家畜9が実際に存在する領域を優先させることができる。
【0084】
実施形態1に係る体感温度演算システム1は、生体検出情報を用いて、家畜9が実際に存在する領域の環境を制御するように、環境設備5を制御する。これにより、空間7において、家畜9が存在しない領域よりも、家畜9が実際に存在する領域を優先させて、環境を制御することができる。その結果、効率よく環境を制御することができる。
【0085】
実施形態1に係る体感温度演算システム1は、空間7において、家畜9の位置を検出して追跡する。これにより、家畜9が実際に存在する領域の環境を精度よく制御することができる。
【0086】
実施形態1に係る体感温度演算システム1では、第2演算部122が家畜9の体感温度分布を3次元分布として演算する。これにより、家畜9の各成長段階での大きさを考慮することができるので、家畜9の体感温度分布の精度を高めることができる。
【0087】
実施形態1に係る体感温度演算システム1では、異常環境の空間に存在する家畜9を検出して、異常環境の空間に存在する家畜9及び異常環境の空間に存在する家畜9の位置の少なくとも一方を報知するように報知装置21を制御する。これにより、異常環境の空間に存在する家畜9への対応を早期に行わせることができる。
【0088】
実施形態1に係る体感温度演算システム1では、第1演算部121及び第2演算部122の少なくとも1つが、機械学習が行われた分類器によって演算を行う。これにより、これまでの履歴に沿った体感温度分布を短時間で演算することができる。
【0089】
(7)変形例
以下、実施形態1の変形例について説明する。
【0090】
実施形態1の変形例として、環境情報に含まれる環境の代表点の数は複数に限定されず、1つであってもよい。要するに、代表点の数は少なくとも1つであればよい。環境情報は、空間7の少なくとも1つの代表点における環境を表す情報を含む。
【0091】
実施形態1の他の変形例として、環境設備5は、空調機器を含んでもよい。空調機器は、建物6に設置されており、建物6の空間7に暖気又は冷気を排出することによって、空間7の温度を調整する。
【0092】
実施形態1の更に他の変形例として、空間7は、建物6の内部空間であることに限定されず、開放型の空間であってもよい。
【0093】
実施形態1の変形例として、報知制御部15は、異常環境の空間に存在する家畜9が検出された場合、異常環境の空間に存在する家畜9、及び、異常環境の空間に存在する家畜9の位置の両方を報知するように報知装置21を制御することに限定されない。報知制御部15は、異常環境の空間に存在する家畜9のみを報知するように報知装置21を制御してもよいし、異常環境の空間に存在する家畜9の位置のみを報知するように報知装置21を制御してもよい。要するに、報知制御部15は、異常検出部124で異常環境の空間に存在する家畜9が検出された場合、異常環境の空間に存在する家畜9、及び、異常環境の空間に存在する家畜9の位置の少なくとも一方を報知するように報知装置21を制御することが好ましい。
【0094】
報知装置21は、報知制御部15の指示に従って情報を報知するため、報知装置21は、異常環境の空間に存在する家畜9、及び、異常環境の空間に存在する家畜9の位置の両方を報知することに限定されない。報知装置21は、異常環境の空間に存在する家畜9のみを報知してもよいし、異常環境の空間に存在する家畜9の位置のみを報知してもよい。要するに、報知装置21は、異常環境の空間に存在する家畜9、及び、異常環境の空間に存在する家畜9の位置の少なくとも一方を報知することが好ましい。
【0095】
なお、実施形態1では、上述したように、処理部12にて用いられる演算モデル(学習済みモデル)は、機械学習により生成される。処理部12は、いかなるタイプの人工知能又はシステムとして実装されてもよい。ここで、機械学習のアルゴリズムは、一例として、ニューラルネットワークである。ただし、機械学習のアルゴリズムは、ニューラルネットワークに限定されず、例えば、XGB(eXtreme Gradient Boosting)回帰、ランダムフォレスト(Random Forest)、決定木(decision tree)、ロジスティック回帰(Logistic Regression)、サポートベクターマシン(SVM:Support vector machine)、単純ベイズ(Naive Bayes)分類器、又はk近傍法(k-nearest neighbors)等であってもよい。さらに、機械学習のアルゴリズムは、例えば、混合ガウスモデル(GMM:Gaussian Mixture Model)、又はk平均法(k-means clustering)等であってもよい。
【0096】
また、学習方法は、実施形態1では一例として、教師あり学習である。ただし、学習方法は、教師あり学習に限らず、教師なし学習又は強化学習であってもよい。
【0097】
上記の各変形例に係る体感温度演算システムにおいても、実施形態1に係る体感温度演算システム1と同様の効果を奏する。
【0098】
本開示における体感温度演算システム1又は体感温度演算方法の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における体感温度演算システム1又は体感温度演算方法の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよいし、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0099】
また、実施形態1では、体感温度演算システム1は、取得部11と、処理部12と、設備制御部13と、記憶部14と、報知制御部15とを備えているが、取得部11、設備制御部13、記憶部14及び報知制御部15は、体感温度演算システム1に必須の構成ではない。すなわち、体感温度演算システム1は、処理部12を備えていればよく、取得部11、設備制御部13、記憶部14及び報知制御部15の少なくとも1つは、体感温度演算システム1の構成要素に含まれていなくてもよい。
【0100】
体感温度演算システム1は、1つの筐体に収まる1つの装置で実現されてもよいし、2つ以上の装置で実現されてもよい。取得部11、処理部12、設備制御部13、記憶部14及び報知制御部15のうちの少なくとも1つが、取得部11、処理部12、設備制御部13、記憶部14及び報知制御部15のうちの残りと分散して設けられてもよい。例えば、処理部12が設備制御部13と分散して設けられてもよい。また、取得部11、処理部12、設備制御部13、記憶部14及び報知制御部15の各々の機能が、複数の装置に分散して設けられていてもよい。例えば、第1演算部121、第2演算部122、追跡演算部123及び異常検出部124の少なくとも1つが、第1演算部121、第2演算部122、追跡演算部123及び異常検出部124の残りと分散して設けられてもよい。体感温度演算システム1の少なくとも一部の機能は、例えば、クラウド(クラウドコンピューティング)によって実現されてもよい。
【0101】
(実施形態2)
以下、実施形態2に係る制御システムについて、図面を参照して説明する。下記の実施形態等において参照する図5図6図7A図7B図9及び図10は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比は、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0102】
(1)制御システム
実施形態2に係る制御システム100の構成について、図面を参照して説明する。
【0103】
実施形態2に係る制御システム100は、図5及び図6に示すように、複数(図示例では3つ)のバッフル部材2Aと、環境設備(換気設備)5と、制御装置4とを備える。実施形態2に係る制御システム100は、内部空間(空間7)の空気の風速を制御する。
【0104】
制御システム100は、建物6の内部空間(空間7)の空気の風速を制御するシステムである。制御システム100は、家畜9が飼育される畜舎等に用いられる。畜舎は、例えば、鶏が飼育される鶏舎である。ただし、畜舎は、鶏舎であることに限定されず、家畜9として豚が飼育される豚舎であってもよいし、家畜9として牛が飼育される牛舎であってもよい。
【0105】
(2)建物
制御システム100が設けられている建物6について、図面を参照して説明する。
【0106】
建物6は、図5及び図6に示すように、例えば直方体状の建物本体61を含む。また、建物6は、内部空間(空間7)を有する。また、建物6は、制御システム100を備える。
【0107】
図5の例では、建物6は畜舎である。建物6が畜舎である場合、建物本体61は畜舎本体である。建物6では、内部空間(空間7)において、多数の家畜9が飼育されている。
【0108】
建物本体61は、2つの第1側壁62,63と、2つの第2側壁64,65とを有する。建物本体61には、複数のバッフル部材2A及び環境設備(換気設備)5が取り付けられている。
【0109】
2つの第1側壁62,63は、例えば長方形状であり、建物6の長手方向D1に沿って設けられている。そして、2つの第1側壁62,63は、内部空間(空間7)を介して、建物6の短手方向D2において互いに対向する。
【0110】
2つの第2側壁64,65は、例えば長方形状であり、建物6の短手方向D2に沿って設けられている。そして、2つの第2側壁64,65は、内部空間(空間7)を介して、建物6の長手方向D1において互いに対向する。
【0111】
内部空間(空間7)は、建物本体61で囲まれている空間である。より詳細には、内部空間(空間7)は、2つの第1側壁62,63及び2つの第2側壁64,65で囲まれている空間である。
【0112】
また、建物6は、複数(図示例では2つ)の給気口66と、排気口67とを有する。複数の給気口66の各々では、建物6の外部から内部空間(空間7)へ空気が吸気される。排気口67では、内部空間(空間7)から建物6の外部へ空気が排気される。
【0113】
複数の給気口66(給気口661,662)は、建物6の長手方向D1に沿った第1側壁62,63の下端部に設けられている。より詳細には、一方の給気口661は、長手方向D1の第1端側(第2側壁64側)において第1側壁62の下端部に設けられている。他方の給気口662は、長手方向D1の第1端側において第1側壁63の下端部に設けられている。一方の給気口661と他方の給気口662は、建物6の短手方向D2において、互いに対向する。
【0114】
排気口67は、建物6の長手方向D1の第2端側(第2側壁65側)に設けられている。より詳細には、排気口67は、第2側壁65の中央付近に設けられている。なお、排気口67は、第2側壁65の上端付近に設けられてもよい。
【0115】
なお、給気口66の数は、2つであることに限定されず、1つのみであってもよいし、3つ以上であってもよい。要するに、給気口66の数は、1つ以上であればよい。排気口67の数は、1つであることに限定されず、2つ以上であってもよい。要するに、排気口67の数は、1つ以上であればよい。
【0116】
(3)制御システムの各構成要素
以下、実施形態2に係る制御システム100の各構成要素について、図面を参照して説明する。
【0117】
(3.1)バッフル部材
複数のバッフル部材2Aは、図5及び図6に示すように、建物6の内部空間(空間7)において、給気口66と排気口67との間に設けられている。図5の例では、バッフル部材2Aの数は3つである。各バッフル部材2Aは、バッフル部材2Aの下端20Aと建物6の床面68との間に空間73を有するように、建物6の天井69から吊り下げられている。言い換えると、各バッフル部材2Aは、建物6の床面68に触れない範囲で天井69から吊り下げられている。各バッフル部材2Aは、例えば、透光性を有する部材又は透明部材で形成されている。
【0118】
複数のバッフル部材2Aの各々は、内部空間(空間7)において長手方向D1の一部を遮るように設けられている。つまり、複数のバッフル部材2Aは、長手方向D1に沿って空気が流れることを遮る。
【0119】
内部空間(空間7)において、バッフル部材2Aが設けられている位置を通る空気の風速は、バッフル部材2Aが設けられていない位置を通る空気の風速よりも高くなる。また、建物6の床面68とバッフル部材2Aの下端20Aとの間の空間73が大きいほど、空間73を通る空気の風速が低い。
【0120】
実施形態2の各バッフル部材2Aは、建物6の高さ方向D3と直交する方向(長手方向D1)に法線方向が沿うように建物6の内部空間(空間7)に設けられる板である。これにより、空気が当たってもバッフル部材2Aが変形しにくいので、空気の風速を安定に制御することができる。
【0121】
複数のバッフル部材2Aは、第1バッフル部材21Aと、第2バッフル部材22Aと、第3バッフル部材23Aとを含む。第1バッフル部材21A、第2バッフル部材22A及び第3バッフル部材23Aは、建物6の長手方向D1において、間隔をあけて、第2側壁64側からこの順に並んで設けられている。第1バッフル部材21Aは、複数のバッフル部材2Aのうち、長手方向D1において最も給気口66の近くに設けられている。一方、第3バッフル部材23Aは、複数のバッフル部材2Aのうち、長手方向D1において最も排気口67の近くに設けられている。
【0122】
ところで、バッフル部材2Aは、建物6の内部空間(空間7)のうちバッフル部材2Aと排気口67との間の領域において風速が均一になるように、配置されている。言い換えると、バッフル部材2Aは、建物6の内部空間(空間7)のうちバッフル部材2Aと排気口67との間の領域において位置ごとの風速の差を小さくするように、配置されている。これにより、建物6の内部空間(空間7)の熱をスムーズに建物6の外部に排出することができる。
【0123】
ここで、「風速が均一になる」とは、風速のばらつきが1.0m/s以下であることをいう。より好ましくは、風速のばらつきが0.5m/s以下であることである。また、上記風速のばらつきは、平均風速の20%以下であることが好ましい。
【0124】
上述したように、バッフル部材2Aは3以上設けられている。そして、3以上のバッフル部材2Aにおいて隣接する2つのバッフル部材2Aの間隔は均一である。言い換えると、第1バッフル部材21Aと第2バッフル部材22Aの間隔L1は、第2バッフル部材22Aと第3バッフル部材23Aの間隔L2と同じである。
【0125】
なお、3以上のバッフル部材2Aにおいて隣接する2つのバッフル部材2Aの間隔は不均一であってもよい。言い換えると、第1バッフル部材21Aと第2バッフル部材22Aの間隔L1は、第2バッフル部材22Aと第3バッフル部材23Aの間隔L2と異なってもよい。これにより、建物6及び建物6の内部空間(空間7)の状態に応じた風速制御を行うことができる。
【0126】
また、バッフル部材2Aは2以上設けられており、2以上のバッフル部材2Aの高さは均一である。言い換えると、第1バッフル部材21Aの高さT1は、第2バッフル部材22Aの高さT2及び第3バッフル部材23Aの高さT3と同じである。ここで、「バッフル部材の高さ」とは、建物6の床面68からバッフル部材2Aの下端までの高さをいう。より詳細には、第1バッフル部材21Aの高さT1は、建物6の床面68から第1バッフル部材21Aの下端210Aまでの高さである。第2バッフル部材22Aの高さT2は、建物6の床面68から第2バッフル部材22Aの下端220Aまでの高さである。第3バッフル部材23Aの高さT3は、建物6の床面68から第3バッフル部材23Aの下端230Aまでの高さである。
【0127】
なお、2以上のバッフル部材2Aの高さは不均一であってもよい。言い換えると、第1バッフル部材21Aの高さT1、第2バッフル部材22Aの高さT2及び第3バッフル部材23Aの高さT3は、互いに異なってもよい。あるいは、第1バッフル部材21Aの高さT1、第2バッフル部材22Aの高さT2及び第3バッフル部材23Aの高さT3のうちのいずれか1つが、残りの2つと異なってもよい。これにより、建物6及び建物6の内部空間(空間7)の状態に応じた風速制御を行うことができる。特に、排気口67に換気扇52が設けられている場合、排気口67に近い領域の空気の方が給気口66に近い領域の空気に比べて、運動エネルギーが高い。このため、第3バッフル部材23Aと床面68との間の空間733(図7参照)が大きくても、空間733を通る空気の方が第1バッフル部材21Aと床面68との間の空間731(図7参照)を通る空気及び第2バッフル部材22Aと床面68との間の空間732(図7参照)を通る空気に比べて、風速が高い。
【0128】
バッフル部材2Aの数は、3つであることに限定されない。バッフル部材2Aの数は、1つのみであってもよいし、2つのみであってもよいし、4つ以上であってもよい。要するに、制御システム100は、少なくとも1つのバッフル部材2Aを備えていればよい。
【0129】
(3.2)環境設備(換気設備)
環境設備(換気設備)5は、図5及び図6に示すように、複数(図示例では2つ)の開閉窓51と、複数(図示例では5つ)の換気扇52とを含む。
【0130】
(3.2.1)開閉窓
複数の開閉窓51は、図5及び図6に示すように、建物6の給気口66に設けられている。より詳細には、複数の開閉窓51(開閉窓511,512)のうち、一方の開閉窓511は、長手方向D1に沿って設けられている第1側壁62の給気口661に設けられており、他方の開閉窓512は、長手方向D1に沿って設けられている第1側壁63の給気口662に設けられている。
【0131】
複数の開閉窓51は、いわゆるトンネルドアとも称されており、上下に回動することによって開閉する。開閉窓51が開くことにより、給気口66を通って建物6の外部から内部空間(空間7)に空気を入れることができる。
【0132】
(3.2.2)換気扇
複数の換気扇52は、図5及び図6に示すように、排気口67に設けられている。より詳細には、複数の換気扇52は、長手方向D1において、開閉窓51とは反対側に設けられている。つまり、複数の換気扇52は、第2側壁65に設けられている。
【0133】
また、複数の換気扇52は、短手方向D2において一列に並んでいる。より詳細には、短手方向D2において、換気扇521、換気扇522、換気扇523、換気扇524及び換気扇525が、第1側壁63側から、この順に並んでいる。
【0134】
複数の換気扇52は、建物6の内部空間(空間7)の空気を建物6の外部に排気する。より詳細には、複数の換気扇52は、内部空間(空間7)の空気を略全て同じ向きに排気するように設けられている。これにより、内部空間(空間7)の空気を排気側で吸気して建物6の外部に排気することができる。
【0135】
(3.3)制御装置
図5に示す制御装置4は、複数の換気扇52を制御する機能を有する。より詳細には、制御装置4は、複数の換気扇52を個別に制御する。また、制御装置4は、建物6外の外気温の入力を受け付ける機能を有する。
【0136】
制御装置4は、制御装置4に入力された外気温に応じて、複数の換気扇52を制御する。より詳細には、制御装置4は、外気温に応じて、複数の換気扇52のうち稼働させる換気扇52の数を調整する。
【0137】
具体的には、制御装置4は、制御装置4に入力された外気温が高くなるほど、複数の換気扇52のうち稼働させる換気扇52の数を増やす。一方、制御装置4は、制御装置4に入力された外気温が低くなるほど、複数の換気扇52のうち可動させる換気扇52の数を減らす。これにより、建物6外の外気温が変動しても、建物6の内部空間(空間7)における空気の風速を所望の速度範囲に維持することができる。
【0138】
なお、制御装置4は、手動入力で外気温を取得してもよいし、建物6の外部近傍に設けられている気温センサから自動入力で外気温を取得してもよい。制御装置4が手動入力で外気温を取得する場合のほうが、建物6の外気温を人が手動で補正入力できるので、外気温の精度が高い場合が多い。一方、制御装置4が気温センサから自動入力で外気温を取得する場合、24時間、内部空間(空間7)の空気の風速を自動で制御することが可能となる。
【0139】
(4)制御方法
以下、実施形態2に係る制御方法について、図7A及び図7Bを参照して説明する。実施形態2に係る制御方法は、建物6の内部空間(空間7)の空気の風速を制御する方法である。図7Aは、実施形態2に係る制御方法による風速の分布を示す。図7Bは、比較例による風速の分布を示す。建物6の床面68(図6参照)から各バッフル部材2Aの下端20A(図6参照)までの高さは、1.5mである。図7A及び図7Bに示されている風速は、床面68からの高さが300mmである位置の風速である。
【0140】
比較例は、図7Bに示すように、建物6Aの内部空間(空間7A)にバッフル部材2Aが設けられていない例である。比較例では、バッフル部材2Aが設けられていないため、内部空間(空間7A)における空気の風速が低い。例えば、内部空間(空間7A)の主領域において、床面68からの高さが300mmにおける空気の風速は約1.0m/sである。ここで、「内部空間(空間7A)の主領域」とは、内部空間(空間7A)のうち給気口66(図5参照)及び排気口67(図5参照)が設けられている領域を除く領域であって、短手方向D2における中央付近の領域という。つまり、短手方向D2における両端の領域は、内部空間(空間7A)の主領域には含まれない。建物6Aが畜舎である場合、内部空間(空間7A)の主領域は、多数の家畜9が存在する領域である。
【0141】
一方、実施形態2に係る制御方法では、図6に示すように、複数のバッフル部材2Aが設けられている。複数のバッフル部材2Aは、建物6の内部空間(空間7)のうち、給気口66(図5参照)と排気口67(図5参照)との間において、バッフル部材2Aを、バッフル部材2Aの下端20Aと建物6の床面68との間に空間73を有するように建物6の天井69から吊り下げる。給気口66は、上述したとおり、建物6の外部から内部空間(空間7)へ空気が給気される開口である。排気口67は、上述したとおり、内部空間(空間7)から建物6の外部へ空気が排気される開口である。
【0142】
この場合、バッフル部材2Aが設けられている空間73において、空間73の断面積が残りの空間の断面積よりも小さくなるため、図7Aに示すように、空間73を通る空気の風速が高くなる。より詳細には、図7Aの場合、建物6の内部空間(空間7)のうち、給気口66に最も近い第1バッフル部材21Aと排気口67に最も近い第3バッフル部材23Aとの間の空間において、空気の風速を高めることができる。例えば、内部空間(空間7)の主領域において、床面68からの高さが300mmにおける空気の風速は約2.5m/sである。これにより、バッフル部材2Aが設けられてない場合に比べて、内部空間(空間7)の空気の風速を高めることができるので、内部空間(空間7)に滞留する熱を外部に排出しやすくなる。ここで、「内部空間(空間7)の主領域」とは、内部空間(空間7)のうち、給気口66に最も近い第1バッフル部材21Aと排気口67に最も近い第3バッフル部材23Aとの間の領域であって、短手方向D2における中央付近の領域をいう。つまり、短手方向D2における両端の領域は、内部空間(空間7)の主領域には含まれない。建物6が畜舎である場合、内部空間(空間7)の主領域は、多数の家畜9が存在する領域である。
【0143】
実施形態2において、開閉窓51から吸入される吸気を換気扇52から吸い出して排気する場合に、内部空間(空間7)において螺旋気流が発生する。この螺旋気流が開閉窓51から換気扇52へ向かう過程で、バッフル部材2Aの下端20Aに当たって風速が増す。さらに、次のバッフル部材2Aに至るまでに失速するが、次のバッフル部材2Aに当たって風速が増す。これにより、細長い建物6の内部空間(空間7)において、螺旋気流を建物6内のどの位置でも略一定の風速に制御することができる。
【0144】
例えば建物6が鶏舎である場合、鶏にとって快適な風速が3.0~4.0m/sくらいであるという指標が業界の養鶏業者育成指導マニュアルに掲示されている。このため、内部空間(空間7)の風速が上記の数値範囲を維持できることが望ましい。図7Aの例では、床面68からの高さが300mmにおける空気の風速が1.0m/sから2.5m/sと高くなる。床面68から300mmの高さは、鶏頭の高さと近似する。これにより、鶏を冷却する効果を高めることができる。
【0145】
この際に、複数のバッフル部材2Aによって、内部空間(空間7)のうち第1バッフル部材21Aと第3バッフル部材23Aとの間の空間において、空気の風速を均一にすることができる。図7Bの例では、床面68からの高さが300mmにおける風速が1.0m/s~2.0m/sであるのに対し、図7Aの例では、床面68からの高さが300mmにおける風速が2.5m/s~3.0m/sである。図7Aの例では、図7Bの例に比べて、風速のばらつきが小さくなっている。
【0146】
(5)効果
実施形態2に係る制御システム100では、下端20Aと建物6の床面68との間に空間73を有するように建物6の天井69から吊り下げられるバッフル部材2Aが建物6の内部空間(空間7)に設けられる。これにより、バッフル部材2Aの下端20Aと床面68との間の空間73を狭くすることができるので、空気が空間73を通る際に風速を高くすることができる。その結果、建物6の内部空間(空間7)に滞留している熱を建物6の外部に排出しやすくすることができる。
【0147】
家畜9を飼育する畜舎に制御システム100が用いられる場合、内部空間(空間7)に滞留する熱による家畜9へのストレスを低減させることができる。特に、鶏は、全身が羽毛で覆われていて、汗腺を有しないため、家畜9が鶏である場合、内部空間(空間7)が高温になることを避けるために、内部空間(空間7)に滞留する熱を排出することが重要である。
【0148】
実施形態2に係る制御システム100では、バッフル部材2Aと排気口67との間の領域において位置ごとの風速の差を小さくするように、バッフル部材2Aが配置されている。これにより、建物6の内部空間(空間7)の熱をスムーズに建物6の外部に排出することができる。
【0149】
実施形態2に係る制御システム100では、建物6の長手方向D1に沿った第1側壁62,63の下端に設けられている給気口66に開閉窓51が設けられている。これにより、開閉窓51の開閉度に応じて、給気口66から内部空間(空間7)に給気される空気の量を調整することができる。
【0150】
実施形態2に係る制御システム100では、隣接する2つのバッフル部材2Aの間隔は不均一であってもよいこととした。これにより、建物6及び建物6の内部空間(空間7)の状態に応じた風速制御を行うことができる。
【0151】
実施形態2に係る制御システム100では、2以上のバッフル部材2Aの高さが不均一であってもよいこととした。これにより、建物6及び建物6の内部空間(空間7)の状態に応じた風速制御を行うことができる。
【0152】
実施形態2に係る制御システム100では、内部空間(空間7)の空気を建物6の外部に排気する換気扇52が排気口67に設けられている。これにより、内部空間(空間7)の空気を排気側で吸気して建物6の外部に排気することができる。
【0153】
実施形態2に係る制御システム100では、建物6外の外気温が高くなるほど、稼働させる換気扇52の数を増やし、上記外気温が低くなるほど、稼働させる換気扇52の数を減らす。これにより、建物6外の外気温が変動しても、建物6の内部空間(空間7)における空気の風速が所望の速度範囲を維持することができる。
【0154】
実施形態2に係る制御システム100では、建物6が畜舎である。これにより、畜舎の内部空間(空間7)においても、熱の滞留を低減させることができるので、暑さに起因する家畜9のストレスを低減させることができる。その結果、家畜9に快適な育成環境を提供することができる。
【0155】
なお、赤外線よりも禽舎内(建物の内部空間)や家禽(建物)の温度の上昇を抑えることが可能な550nm~650nmの光を照射するというシステムがあるが、上記システムは、禽舎内の熱を排出する機能を有していない。つまり、上記のようなシステムは、禽舎内の空気の流れを制御するという機能を有していない。
【0156】
実施形態2に係る制御システム100によれば、建物6の内部空間(空間7)における空気の風速を高くすることができる。
【0157】
(6)変形例
以下、実施形態2の変形例について説明する。
【0158】
実施形態2の変形例1として、制御システム100aは、図8に示すような複数(図示例では3つ)の吊り機構9Aを更に備えてもよい。複数の吊り機構9Aは、複数のバッフル部材2Aを建物6(図6参照)の高さ方向D3(図6参照)に移動可能である。
【0159】
変形例1の場合、各バッフル部材2Aは、ビニールシートのような可撓性を有する部材である。各バッフル部材2Aの例としては、ロールカーテン、緞帳のような構造が挙げられる。
【0160】
複数の吊り機構9Aは、複数のバッフル部材2Aと一対一に対応している。より詳細には、複数の吊り機構9Aは、第1吊り機構91Aと、第2吊り機構92Aと、第3吊り機構93Aとを含む。第1吊り機構91Aは第1バッフル部材21Aと対応し、第2吊り機構92Aは第2バッフル部材22Aと対応し、第3吊り機構93Aは第3バッフル部材23Aと対応する。各吊り機構9Aは、対応するバッフル部材2Aを建物6の高さ方向D3に移動させる機能を有する。バッフル部材2Aがロールカーテンである場合、各吊り機構9Aは、対応するバッフル部材2Aを巻き取ることによって、高さ方向D3におけるバッフル部材2Aの下端20A(図6参照)の位置を変えることができる。バッフル部材2Aが緞帳のような構造である場合、各吊り機構9Aは、対応するバッフル部材2Aの下端部を上下に移動させることによって、高さ方向D3におけるバッフル部材2Aの下端20Aの位置を変えることができる。
【0161】
また、変形例1では、制御システム100aは、制御装置4に代えて、図8に示すような制御装置4aを備える。
【0162】
制御装置4aは、複数(図示例では5つ)の換気扇52を制御する機能と共に、複数の吊り機構9Aを制御する機能を有する。より詳細には、制御装置4aは、複数の吊り機構9Aを個別に制御するように構成されている。バッフル部材2Aごとに、バッフル部材2Aの下端20A(図6参照)の高さを変える場合、制御装置4aは、複数の吊り機構9Aを個別に制御する。
【0163】
上記のように、変形例1に係る制御システム100aでは、バッフル部材2Aを建物6(図6参照)の高さ方向D3(図6参照)に移動可能な吊り機構9Aが設けられている。これにより、バッフル部材2Aの高さを容易に変更することができる。言い換えると、建物6の床面68(図6参照)からバッフル部材2Aの下端20Aまでの高さを容易に変更することができる。その結果、季節、時間又は建物6の内部空間(空間7)(図6参照)の温度に応じて、バッフル部材2Aの配置を調整することができる。例えば内部空間(空間7)に家畜9が存在する場合、家畜9の育成状況に応じて、バッフル部材2Aの高さを調整することができる。
【0164】
実施形態2の変形例2として、制御システム100bは、環境設備(換気設備)5(図5参照)に代えて、図9に示すような環境設備(換気設備)5bを備えてもよい。
【0165】
環境設備(換気設備)5bは、排気口67に設けられている複数の換気扇52(図5参照)に代えて、給気口66に設けられている複数(図示例では6つ)の換気扇52bを含む。複数の換気扇52bは、例えば、2つの給気口66に同じ数だけ設けられている。より詳細には、給気口661には、換気扇52b、換気扇522b及び換気扇523bが長手方向D1においてこの順に並んでいる。給気口662には、換気扇524b、換気扇525b及び換気扇526bが長手方向D1においてこの順に並んでいる。複数の換気扇52bは、建物6の外部の空気を内部空間(空間7)に給気する。
【0166】
また、環境設備(換気設備)5bは、給気口66に設けられている開閉窓51(図5参照)に代えて、排気口67に設けられている開閉窓51bを含む。
【0167】
変形例2に係る制御システム100bの制御装置4bは、複数の換気扇52bを制御する機能を有する。より詳細には、制御装置4bは、複数の換気扇52bを個別に制御する。なお、制御装置4bに関して、実施形態2の制御装置4と同様の機能については説明を省略する。
【0168】
変形例2に係る制御システム100bでは、建物6の外部の空気を内部空間(空間7)に給気する換気扇52bが給気口66に設けられている。これにより、給気口66から吸気することによって、内部空間(空間7)の空気を排気口67から押し出すように排気させることができる。
【0169】
実施形態2の変形例3として、制御システム100cは、図10に示すような環境設備(換気設備)5cを備えてもよい。環境設備(換気設備)5cは、排気口67に設けられている複数の換気扇52と、給気口66に設けられている複数の換気扇52bとの両方を含む。
【0170】
変形例3に係る制御システム100cの制御装置4cは、複数の換気扇52及び複数の換気扇52bを制御する機能を有する。より詳細には、制御装置4cは、複数の換気扇52及び複数の換気扇52bを個別に制御する。なお、制御装置4cに関して、実施形態2の制御装置4と同様の機能については説明を省略する。
【0171】
変形例3に係る制御システム100cでは、建物6の外部の空気を内部空間(空間7)に給気する換気扇52,52bが給気口66及び排気口67の両方に設けられている。これにより、給気口66から吸気することによって、内部空間(空間7)の空気を排気口67から押し出すように排気させることができ、かつ、排気口67側で吸気することによって、内部空間(空間7)の空気を吸い込むように外部に排気することができる。その結果、空気の給入及び排気の能力を高めることができる。
【0172】
なお、実施形態2の他の変形例として、バッフル部材2Aは建物6から取り外し可能である。これにより、バッフル部材2Aの必要性に応じて、バッフル部材2Aを建物6に取り付けたり、建物6から取り外したりすることができる。例えば内部空間(空間7)に家畜9が存在する場合、家畜9の育成状況に応じて、バッフル部材2Aを建物6に取り付けたり、建物6から取り外したりすることができる。
【0173】
また、実施形態2の他の変形例として、バッフル部材2Aは、可撓性を有するビニールシートであってもよい。
【0174】
建物6は、畜舎に限定されず、人が存在する建物であってもよい。建物6は、例えば、学校等の体育館であってもよい。一般的には、人に対して風を常時当てることは避けたい風潮にある。ところが、例えば体育館で運動中である場合、熱中症にならないように、少なくとも1つのバッフル部材2Aを設置して、建物6の内部空間(空間7)における任意の高さ(人の頭の高さ)で、空気の風速を所望の風速にすることが好適である。
【0175】
また、実施形態2の他の変形例として、複数のバッフル部材2Aの各々を、建物6の長手方向D1に移動させる機構が設けられていてもよい。これにより、隣接するバッフル部材2Aの間隔を容易に変更することができる。
【0176】
また、実施形態2の他の変形例として、給気口66が建物6の第2側壁64に設けられ、排気口67が建物6の第1側壁62,63に設けられていてもよい。
【0177】
上記の各変形例に係る制御システムにおいても、実施形態2に係る制御システム100と同様の効果を奏する。
【0178】
以上説明した実施形態及び変形例は、本発明の様々な実施形態及び変形例の一部に過ぎない。また、実施形態及び変形例は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0179】
(態様)
本明細書には、以下の態様が開示されている。
【0180】
第1の態様に係る体感温度演算システム(1)は、第1演算部(121)と、第2演算部(122)とを備える。第1演算部(121)は、家畜(9)が存在する空間(7)の環境を表す環境情報を用いて空間(7)の環境分布を演算する。第2演算部(122)は、第1演算部(121)で演算された環境分布を用いて家畜(9)の体感温度分布を演算する。
【0181】
第1の態様に係る体感温度演算システム(1)によれば、第1演算部(121)で演算された体感温度分布を考慮して空間(7)の環境を制御することによって、空間(7)全体において家畜(9)の実際の体感温度を家畜(9)に適する温度に近づけることができる。
【0182】
第2の態様に係る体感温度演算システム(1)では、第1の態様において、環境情報は、温度、湿度及び風速のうちの少なくとも1つを含む。
【0183】
第2の態様に係る体感温度演算システム(1)によれば、家畜(9)の体感温度分布を演算する際に、家畜(9)の体感温度に影響を及ぼしやすい物理量を用いることで、家畜(9)の体感温度分布の精度を高めることができる。
【0184】
第3の態様に係る体感温度演算システム(1)では、第1又は2の態様において、環境情報は、空間(7)の少なくとも1つの代表点(71;72)における環境を表す。
【0185】
第3の態様に係る体感温度演算システム(1)によれば、環境情報の計測点を少なくすることができるので、環境情報を計測する計測装置(3)の個数を減らすことができる。
【0186】
第4の態様に係る体感温度演算システム(1)では、第3の態様において、代表点(71,72)は複数存在する。複数の代表点(71,72)は、空間(7)における風上の位置と、空間(7)における風下の位置と、を含む。
【0187】
第4の態様に係る体感温度演算システム(1)によれば、空間(7)の環境分布の精度を高めることができるので、家畜(9)の体感温度分布を精度よく演算することができる。
【0188】
第5の態様に係る体感温度演算システム(1)では、第1~4の態様のいずれか1つにおいて、第2演算部(122)は、家畜(9)の存在を表す生体検出情報と環境分布とを用いて体感温度分布を演算する。
【0189】
第5の態様に係る体感温度演算システム(1)によれば、家畜(9)の体感温度分布を演算する際に、空間(7)において、家畜(9)が存在しない領域よりも、家畜(9)が実際に存在する領域を優先させることができる。
【0190】
第6の態様に係る体感温度演算システム(1)は、第5の態様において、設備制御部(13)を更に備える。設備制御部(13)は、空間(7)の環境を制御するための環境設備(5;5b;5c)を制御する。設備制御部(13)は、生体検出情報を用いて、家畜(9)が実際に存在する領域の環境を制御するように、環境設備(5;5b;5c)を制御する。
【0191】
第6の態様に係る体感温度演算システム(1)によれば、空間(7)において、家畜(9)が存在しない領域よりも、家畜(9)が実際に存在する領域を優先させて、環境を制御することができる。その結果、効率よく環境を制御することができる。
【0192】
第7の態様に係る体感温度演算システム(1)は、第6の態様において、追跡演算部(123)を更に備える。追跡演算部(123)は、家畜(9)の位置を表す位置情報を用いて家畜(9)の位置を追跡する。設備制御部(13)は、追跡演算部(123)で追跡された家畜(9)の位置の環境を制御するように、環境設備(5;5b;5c)を制御する。
【0193】
第7の態様に係る体感温度演算システム(1)によれば、家畜(9)が実際に存在する領域の環境を精度よく制御することができる。
【0194】
第8の態様に係る体感温度演算システム(1)では、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、第2演算部(122)は、体感温度分布を3次元分布として演算する。
【0195】
第8の態様に係る体感温度演算システム(1)によれば、家畜(9)の各成長段階での大きさを考慮することができるので、家畜(9)の体感温度分布の精度を高めることができる。
【0196】
第9の態様に係る体感温度演算システム(1)は、第1~8の態様のいずれか1つにおいて、異常検出部(124)と、報知制御部(15)とを更に備える。異常検出部(124)は、異常環境の空間に存在する家畜(9)を検出する。報知制御部(15)は、異常検出部(124)で異常環境の空間に存在する家畜(9)が検出された場合、異常環境の空間に存在する家畜(9)及び異常環境の空間に存在する家畜(9)の位置の少なくとも一方を、報知装置(21)を介して報知するように報知装置(21)を制御する。
【0197】
第9の態様に係る体感温度演算システム(1)によれば、異常環境の空間に存在する家畜(9)への対応を早期に行わせることができる。
【0198】
第10の態様に係る体感温度演算システム(1)では、第1~9の態様のいずれか1つにおいて、第1演算部(121)及び第2演算部(122)の少なくとも1つは、機械学習が行われた分類器によって演算を行う。
【0199】
第10の態様に係る体感温度演算システム(1)によれば、これまでの履歴に沿った体感温度分布を短時間で演算することができる。
【0200】
第11の態様に係る環境制御システム(2)は、第1~10の態様のいずれか1つの体感温度演算システム(1)と、計測装置(3)と、環境設備(5;5b;5c)とを備える。計測装置(3)は、環境情報を計測し、環境情報を体感温度演算システム(1)に出力する。環境設備(5;5b;5c)は、体感温度分布に基づいて空間(7)の環境を制御する。
【0201】
第11の態様に係る環境制御システム(2)によれば、体感温度演算システム(1)において、第1演算部(121)で演算された体感温度分布を考慮して空間(7)の環境を制御することによって、空間(7)全体において家畜(9)の実際の体感温度を家畜(9)に適する温度に近づけることができる。
【0202】
第12の態様に係る体感温度演算方法は、第1演算ステップと、第2演算ステップとを有する。第1演算ステップでは、家畜(9)の存在する空間(7)の環境を表す環境情報を用いて空間(7)の環境分布を演算する。第2演算ステップでは、第1演算ステップで演算した環境分布を用いて家畜(9)の体感温度分布を演算する。
【0203】
第12の態様に係る体感温度演算方法によれば、第1演算ステップで演算した体感温度分布を考慮して空間(7)の環境を制御することによって、空間(7)全体において家畜(9)の実際の体感温度を家畜(9)に適する温度に近づけることができる。
【0204】
第13の態様に係るプログラムは、第12の態様に係る体感温度演算方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0205】
第13の態様に係るプログラムによれば、第1演算ステップで演算した体感温度分布を考慮して空間(7)の環境を制御することによって、空間(7)全体において家畜(9)の実際の体感温度を家畜(9)に適する温度に近づけることができる。
【0206】
第14の態様に係る環境制御システム(2)は、第1~10の態様のいずれか1つの体感温度演算システム(1)と、において、制御システム(100;100a;100b;100c)とを備える。制御システム(100;100a;100b;100c)は、建物(6)の内部空間(空間7)を換気する環境設備(5;5b;5c)と共に用いられる。制御システム(100;100a;100b;100c)は、建物(6)の給気口(66)から給気され内部空間(空間7)を通して建物(6)の排気口(67)から建物(6)の外部へ排気される空気の風速を制御する。制御システム(100;100a;100b;100c)は、少なくとも1つのバッフル部材(2A)を備える。バッフル部材(2A)は、内部空間(空間7)において、給気口(66)と排気口(67)との間に設けられ、下端(20A)と建物(6)の床面(68)との間に空間(73)を有するように建物(6)の天井(69)から吊り下げられる。
【0207】
第14の態様に係る環境制御システム(2)によれば、バッフル部材(2A)の下端(20A)と床面(68)との間の空間(73)を狭くすることができるので、空気が空間(73)を通る際に風速を高くすることができる。その結果、建物(6)の内部空間(空間7)に滞留している熱を建物(6)の外部に排出しやすくすることができる。
【0208】
第15の態様に係る環境制御システム(2)では、第14の態様において、バッフル部材(2A)は、建物(6)の内部空間(空間7)のうちバッフル部材(2A)と排気口(67)との間の領域において位置ごとの風速の差を小さくするように、配置されている。
【0209】
第15の態様に係る環境制御システム(2)によれば、建物(6)の内部空間(空間7)の熱をスムーズに建物(6)の外部に排出することができる。
【0210】
第16の態様に係る環境制御システム(2)では、第14又は15の態様において、給気口(66)は、建物(6)の長手方向(D1)の第1端側において建物(6)の長手方向(D1)に沿った側壁(第1側壁62;63)の下端に設けられている。排気口(67)は、建物(6)の長手方向(D1)の第2端側に設けられている。環境設備(5;5b;5c)は、開閉窓(51)を含む。開閉窓(51)は、給気口(66)に設けられており、上下に回動して開閉する。
【0211】
第16の態様に係る環境制御システム(2)によれば、開閉窓(51)の開閉度に応じて、給気口(66)から内部空間(空間7)に給気される空気の量を調整することができる。
【0212】
第17の態様に係る環境制御システム(2)では、第14~16の態様のいずれか1つにおいて、バッフル部材(2A)は3以上設けられている。3以上のバッフル部材(2A)において隣接する2つのバッフル部材(2A)の間隔は不均一である。
【0213】
第17の態様に係る環境制御システム(2)によれば、建物(6)及び建物(6)の内部空間(空間7)の状態に応じた風速制御を行うことができる。
【0214】
第18の態様に係る環境制御システム(2)では、第14~17の態様のいずれか1つにおいて、バッフル部材(2A)は2以上設けられている。2以上のバッフル部材(2A)の高さは不均一である。
【0215】
第18の態様に係る環境制御システム(2)によれば、建物(6)及び建物(6)の内部空間(空間7)の状態に応じた風速制御を行うことができる。
【0216】
第19の態様に係る環境制御システム(2)では、第14~18の態様のいずれか1つにおいて、環境設備(5;5b;5c)は、換気扇(52)を含む。換気扇(52)は、排気口(67)に設けられており、内部空間(空間7)の空気を建物(6)の外部に排気する。
【0217】
第19の態様に係る環境制御システム(2)によれば、内部空間(空間7)の空気を排気側で吸気して建物(6)の外部に排気することができる。
【0218】
第20の態様に係る環境制御システム(2)は、第19の態様において、制御装置(4;4a;4c)を更に備える。換気扇(52)は複数設けられている。制御装置(4;4a;4c)は、建物(6)外の外気温の入力を受け付ける。制御装置(4;4a;4c)は、制御装置(4;4a;4c)に入力された外気温が高くなるほど、複数の換気扇(52)のうち稼働させる換気扇(52)の数を増やす。制御装置(4;4a;4c)は、制御装置(4;4a;4c)に入力された外気温が低くなるほど、複数の換気扇(52)のうち可動させる換気扇(52)の数を減らす。
【0219】
第20の態様に係る環境制御システム(2)によれば、建物(6)外の外気温が変動しても、建物(6)の内部空間(空間7)における空気の風速を所望の速度範囲に維持することができる。
【0220】
第21の態様に係る環境制御システム(2)では、第14~20の態様のいずれか1つにおいて、建物(6)は畜舎である。
【0221】
第21の態様に係る環境制御システム(2)によれば、畜舎の内部空間(空間7)においても、熱の滞留を低減させることができるので、暑さに起因する家畜(9)のストレスを低減させることができる。その結果、家畜(9)に快適な育成環境を提供することができる。
【0222】
第22の態様に係る環境制御システム(2)は、第14~21の態様のいずれか1つにおいて、吊り機構(9A)を更に備える。吊り機構(9A)は、バッフル部材(2A)の下端(20A)を建物(6)の高さ方向(D3)に移動可能である。
【0223】
第22の態様に係る環境制御システム(2)によれば、季節、時間又は建物(6)の内部空間(空間7)の温度に応じて、バッフル部材(2A)の配置を調整することができる。
【0224】
第23の態様に係る環境制御システム(2)では、第14~22の態様のいずれか1つにおいて、バッフル部材(2A)は建物(6)から取り外し可能である。
【0225】
第23の態様に係る環境制御システム(2)によれば、バッフル部材(2A)の必要性に応じて、バッフル部材(2A)を建物(6)に取り付けたり、建物(6)から取り外したりすることができる。例えば内部空間(空間7)に家畜(9)が存在する場合、家畜(9)の育成状況に応じて、バッフル部材(2A)を建物(6)に取り付けたり、建物(6)から取り外したりすることができる。
【0226】
第24の態様に係る畜舎(建物6)は、第14~23の態様のいずれか1つの環境制御システム(2)と、建物本体(61)とを備える。建物本体(61)には、バッフル部材(2A)及び環境設備(5;5b;5c)が取り付けられている。
【0227】
第24の態様に係る畜舎(建物6)によれば、制御システム(100;100a;100b;100c)において、バッフル部材(2A)の下端(20A)と床面(68)との間の空間(73)を狭くすることができるので、空気が空間(73)を通る際に風速を高くすることができる。その結果、建物(6)の内部空間(空間7)に滞留している熱を建物(6)の外部に排出しやすくすることができる。
【0228】
家畜(9)を飼育する畜舎に制御システム(100;100a;100b;100c)が用いられる場合、内部空間(空間7)に滞留する熱による家畜(9)へのストレスを低減させることができる。特に、鶏は、全身が羽毛で覆われていて、汗腺を有しないため、家畜(9)が鶏である場合、内部空間(空間7)が高温になることを避けるために、内部空間(空間7)に滞留する熱を排出することが重要である。
【0229】
第25の態様に係る制御方法は、建物(6)の給気口(66)から給気され内部空間(空間7)を通して建物(6)の排気口(67)から建物(6)の外部へ排気される空気の風速を制御する制御方法である。上記制御方法では、内部空間(空間7)のうち、給気口(66)と排気口(67)との間において、バッフル部材(2A)を、バッフル部材(2A)の下端(20A)と建物(6)の床面(68)との間に空間(73)を有するように建物(6)の天井(69)から吊り下げる。
【0230】
第25の態様に係る制御方法によれば、バッフル部材(2A)の下端(20A)と床面(68)との間の空間(73)を狭くすることができるので、空気が空間(73)を通る際に風速を高くすることができる。その結果、建物(6)の内部空間(空間7)に滞留している熱を建物(6)の外部に排出しやすくすることができる。
【0231】
第26の態様に係る制御システム(100;100a;100b;100c)は、建物(6)の内部空間(空間7)を換気する環境設備(5;5b;5c)と共に用いられ、建物(6)の給気口(66)から給気され内部空間(空間7)を通して建物(6)の排気口(67)から建物(6)の外部へ排気される空気の風速を制御する。制御システム(100;100a;100b;100c)は、少なくとも1つのバッフル部材(2A)を備える。バッフル部材(2A)は、内部空間(空間7)において、給気口(66)と排気口(67)との間に設けられ、下端(20A)と建物(6)の床面(68)との間に空間(73)を有するように建物(6)の天井(69)から吊り下げられる。
【符号の説明】
【0232】
1 体感温度演算システム
121 第1演算部
122 第2演算部
123 追跡演算部
124 異常検出部
13 設備制御部
15 報知制御部
2 環境制御システム
21 報知装置
3,31,32 計測装置
5 環境設備
7 空間
71,72 代表点
9 家畜
100,100a,100b,100c 制御システム
2A バッフル部材
20A 下端
5,5b,5c 環境設備(換気設備)
6 建物
61 建物本体
66 給気口
67 排気口
68 床面
69 天井
7 空間(内部空間)
73 空間
51,51b 開閉窓
52,52b 換気扇
4,4a,4b,4c 制御装置
9A 吊り機構
D1 長手方向
D3 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10