(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】多層燃料ライン
(51)【国際特許分類】
B32B 1/08 20060101AFI20240605BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240605BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20240605BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240605BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240605BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240605BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240605BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20240605BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20240605BHJP
B29C 48/21 20190101ALI20240605BHJP
【FI】
B32B1/08 B
B32B27/30 D
B32B27/34
B32B27/18 Z
B32B27/20 A
B32B27/32 Z
B32B27/32 C
B32B27/32 101
C08K3/04
F16L11/04
B29C45/16
B29C48/21
(21)【出願番号】P 2021532831
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2019084541
(87)【国際公開番号】W WO2020120523
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-09-09
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521247869
【氏名又は名称】エムス-ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】カヴィーゼル ハインツ
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-030483(JP,A)
【文献】特許第4576782(JP,B2)
【文献】特開2012-107244(JP,A)
【文献】特開2018-065392(JP,A)
【文献】特開2004-245411(JP,A)
【文献】国際公開第01/065161(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0058123(US,A1)
【文献】特開2017-048382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08K 3/00-13/08
F16L 9/00-11/26
B29C 45/00-45/24、45/46-45/63、
45/70-45/72、45/74-45/84、
48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの層(3、4)を含むプラスチックライン(1、1’)であって、
内層(3)が、ライン(1)の内部空間(2)を直接的又は間接的に取り囲み、内層(3)の構造がフルオロポリマーをベースとし、
外層(4)が、内層(3)に直接隣接しており、かつ以下の構成成分:
(A)51~98質量パーセントの、以下の群:PA616、PA516、PA618、及びそれらの混合物、並びにまたこれらのポリアミドの少なくとも1種を少なくとも50質量パーセント含むコポリマー、並びにまたこれらのポリアミドの少なくとも1種とそれらとは異なるさらなる熱可塑性物質(A2)との混合物であって、そのような混合物中のこれらのポリアミドの割合が少なくとも50質量パーセントである混合物から選択されるポリアミドと;
(B)2~20質量パーセントの耐衝撃性改良剤及び/又は可塑剤と;
(C)0~29質量パーセントの(A)及び(B)とは異なる添加剤
であって、抗酸化剤、加工助剤、UV安定化剤、熱安定剤、顔料、マスターバッチキャリア、導電性添加剤、潤滑剤、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる添加剤と
から成り、
成分(A)~(C)の質量による割合が合計で外層(4)の材料の100質量パーセントとなる、前記プラスチックライン。
【請求項2】
外層(4)が、成分(A)を75~98質量パーセントの割合で含むことを特徴とする、請求項1に記載のプラスチックライン。
【請求項3】
外層(4)が、成分(C)を0~5質量パーセントの割合で含むことを特徴とする、請求項1に記載のプラスチックライン。
【請求項4】
成分(A)が、
PA616のみから成るか、又は
PA616の割合が少なくとも80質量パーセントであるコポリマーから成るか、又は
PA616と他方のポリアミドとの混合物を基準としてPA616の割合が少なくとも80質量パーセントである、PA616と別のポリアミドとの混合物から成る、
請求項1に記載のプラスチックライン。
【請求項5】
外層(4)がラインの外側の境界を定めるか、又は、
外層(4)の外側に、1つ又は2つのさらなる外層(8、9)が存在し、その最外層がラインの外側の境界を定める、
請求項1
~4のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項6】
外層(4)がラインの外側の境界を定め、成分(A)の割合が75~98質量パーセントの範囲であり、成分(C)の割合が0~5質量パーセントの範囲であるか、又は、
外層(4)の外側に、1つ又は2つのさらなる外層(8、9)が存在し、その最外層がラインの外側の境界を定め、これらのさらなる外層(8、9)の構成がPA612、PA6、PA616、又はそれらの混合物をベースとする、
請求項1~4のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項7】
成分(A)のさらなる熱可塑性物質(A2)が、PA616、PA516、PA618とは異なるポリアミド
である、
請求項1
~6のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項8】
成分(A)のさらなる熱可塑性物質(A2)が、PA616、PA516、PA618とは異なる脂肪族又は半芳香族ポリアミドである、
請求項1~7のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項9】
成分(A)のさらなる熱可塑性物質(A2)が、PA6、PA612、PA10T/6T、PA1212、PA66、PA11、PA106、PA1012、PA10T/612、PA10T/610、PA9Tから成る群から選択されるポリアミドである、
請求項1~8のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項10】
成分(A)が、PA12を含まないか、又はポリアミドエラストマーを含まないか、又はPA12だけでなくポリアミドエラストマーも含まない、
請求項1~9のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項11】
外層の材料における成分(A)の割合が、80~95質量パーセントの範囲内であるか、又はカーボンブラック
を含む導電性添加剤が成分(C)として使用され、外層の材料における成分(A)の割合が、55~85質量パーセントの範囲内である、
請求項1
~10のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項12】
外層の材料における成分(A)の割合が、84~88質量パーセントの範囲内であるか、又はカーボンブラックを含む導電性添加剤が成分(C)として使用され、外層の材料における成分(A)の割合が、60~75質量パーセントの範囲内である、
請求項1~10のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項13】
外層の材料における成分(B)の割合が5~18質量パーセントの範囲内の範囲内である、請求項1
~12のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項14】
外層の材料における成分(B)の割合が10~15質量パーセントの範囲内である、請求項1
~12のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項15】
外層の材料が、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤だけでなく少なくとも1種の可塑剤も含み、
耐衝撃性改良剤の存在する割合が、外層の組成全体を基準として2~10質量パーセントの範囲内であり、可塑剤の存在する割合が、外層の組成全体を基準として2~12質量パーセントの範囲内であり、
耐衝撃性改良剤が、酸修飾エチレン-α-オレフィンコポリマー、無水物グラフト化エチレン/α-オレフィンコポリマー、無水マレイン酸グラフト化エチレン/α-オレフィンコポリマー、
或いはこのように修飾/グラフト化されたエチレン/ブチレン、エチレン/プロピレン、又はエチレン-プロピレン/エチレン-ブチレンコポリマーであり、
及び/又は、可塑剤が、
BBSAを含む、N-置換スルホンアミド可塑剤のクラスからのものを含む、ヒドロキシ安息香酸エステル系及び/又はスルホンアミド系可塑剤として、選択される、
請求項1
~14のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項16】
外層の材料が、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤だけでなく少なくとも1種の可塑剤も含み、
耐衝撃性改良剤の存在する割合が、外層の組成全体を基準として4~8質量パーセントの範囲内であり、可塑剤の存在する割合が、外層の組成全体を基準として5~10質量パーセントの範囲内であり、
耐衝撃性改良剤が、酸修飾エチレン-α-オレフィンコポリマー、無水物グラフト化エチレン/α-オレフィンコポリマー、無水マレイン酸グラフト化エチレン/α-オレフィンコポリマー、或いはこのように修飾/グラフト化されたエチレン/ブチレン、エチレン/プロピレン、又はエチレン-プロピレン/エチレン-ブチレンコポリマーであり、
及び/又は、可塑剤が、BBSAを含む、N-置換スルホンアミド可塑剤のクラスからのものを含む、ヒドロキシ安息香酸エステル系及び/又はスルホンアミド系可塑剤として、選択される、
請求項1~14のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項17】
外層の材料における成分(C)の割合が、0.1~3質量パーセントの範囲内であり、
又は成分(C)が、フェノール、ホスホニット、又はHALS安定化剤をベースとする
ものを含む、有機熱安定剤の形態の熱安定剤を含み、
及び/又は、成分(C)が、カーボンブラックを
含む導電性添加剤を、外層の組成全体を基準として0.1~27質量パーセントの範囲内の割合で含む、
請求項1
~16のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項18】
外層の材料における成分(C)の割合が、0.5~1質量パーセントの範囲内であり、
又は成分(C)が、フェノール、ホスホニット、又はHALS安定化剤をベースとするものを含む、有機熱安定剤の形態の熱安定剤を含み、
及び/又は、成分(C)が、カーボンブラックを含む導電性添加剤を、外層の組成全体を基準として0.1~27質量パーセントの範囲内の割合で含む、
請求項1~16のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項19】
内層(3)の構造が、
カルボニル基を有し、かつアミド基、イミド基、ウレタン基、又はウレア基を含まないフッ素含有エチレン系ポリマーの形態であるものを含む、ヘキサフルオロプロピレンブロック
を含むプロピレンブロック、ペルフルオロヘキセンブロック
を含むヘキセンブロックの群から選択されるさらなるブロックを含むか又は含まない、少なくともエチレン及びテトラフルオロエチレンをベースとするフルオロポリマーをベースとし、
及び/又は、内層が以下の構成成分:
(a)少なくともエチレン及びテトラフルオロエチレンをベースとし、ヘキサフルオロプロピレンブロック及び/又はペルフルオロヘキセンブロックを含むか若しくは含まず、カルボニル基を有する、75~100質量パーセントのフルオロポリマーと;
(b)0~25質量パーセントの
前記添加剤と;
から成り、
成分(a)及び(b)が合わせて内層の材料の100質量パーセントとなる、
請求項1
~18のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項20】
内層(3)の構造が、カルボニル基を有し、かつアミド基、イミド基、ウレタン基、又はウレア基を含まないフッ素含有エチレン系ポリマーの形態であるものを含む、ヘキサフルオロプロピレンブロックを含むプロピレンブロック、ペルフルオロヘキセンブロックを含むヘキセンブロックの群から選択されるさらなるブロックを含むか又は含まない、少なくともエチレン及びテトラフルオロエチレンをベースとするフルオロポリマーをベースとし、
及び/又は、内層が以下の構成成分:
(a)少なくともエチレン及びテトラフルオロエチレンをベースとし、ヘキサフルオロプロピレンブロック及び/又はペルフルオロヘキセンブロックを含むか若しくは含まず、カルボニル基を有する、85~98質量パーセントのフルオロポリマーと;
(b)前記添加剤と;
から成り、
成分(a)及び(b)が合わせて内層の材料の100質量パーセントとなる、
請求項1~18のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項21】
成分(b)が、カーボンブラック粒子の形態である
ものを含む、電気伝導度を高めるための少なくとも1種の添加剤を含む、
請求項
20に記載のプラスチックライン。
【請求項22】
成分(b)が、内層の組成全体を基準として、0.1~20質量パーセントの範囲の割合で少なくとも1種の導電性添加剤を含む、請求項
19~21のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項23】
内層の厚さが0.08~1mmの範囲内であり、及び/又は外層の厚さが0.5~2mmの範囲内あり、ラインの総壁厚が0.9~3.0mmの範囲内である、請求項1
~22のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項24】
内層の厚さが0.08~1mmの範囲内であり、及び/又は外層の厚さが0.5~2mmの範囲内であり、ラインの総壁厚が1.0~2.0mmの範囲内である、請求項1~22のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項25】
内層の厚さが0.08~1mmの範囲内であり、及び/又は外層の厚さが0.6~1.75mmの範囲内であり、ラインの総壁厚が0.9~3.0mmの範囲内である、請求項1~22のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項26】
内層の厚さが0.08~1mmの範囲内であり、及び/又は外層の厚さが0.6~1.75mmの範囲内であり、ラインの総壁厚が1.0~2.0mmの範囲内である、請求項1~22のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項27】
内層の厚さが0.1~0.9mmの範囲内であり、及び/又は外層の厚さが0.5~2mmの範囲内であり、ラインの総壁厚が0.9~3.0mmの範囲内である、請求項1~22のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項28】
内層の厚さが0.1~0.9mmの範囲内であり、及び/又は外層の厚さが0.5~2mmの範囲内であり、ラインの総壁厚が1.0~2.0mmの範囲内である、請求項1~22のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項29】
内層の厚さが0.1~0.9mmの範囲内であり、及び/又は外層の厚さが0.6~1.75mmの範囲内であり、ラインの総壁厚が0.9~3.0mmの範囲内である、請求項1~22のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項30】
内層の厚さが0.1~0.9mmの範囲内であり、及び/又は外層の厚さが0.6~1.75mmの範囲内であり、ラインの総壁厚が1.0~2.0mmの範囲内である、請求項1~22のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項31】
内層及び外層のみから成る、請求項1
~30のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項32】
プラスチックラインが共押出法で製造されている、請求項1
~31のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項33】
ガソリンを含む燃料用、尿素、又は冷却剤用のラインを含む、自動車分野における内燃機関用のラインとしてのラインを含む、少なくとも部分的に波形管として構成することができるラインの形態である、請求項1
~32のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項34】
2つの層を、(ガス)内圧射出成形法、外装法、又は(共)押出法
を含む、押出ブロー成形法、タンデム押出法、射出成形法で行うことを含む、連続法及び/又はバッチ法で成形して
、ラインを得る、請求項1
~33のいずれか1項に記載の燃料ラインの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車分野の燃料のための、熱可塑性材料でできた多層ライン、及びこのタイプのラインの製造方法、及びそのようなラインの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック、特にポリアミドでできた層構造に基づく燃料ラインの使用は、既に古くからの先行技術であった。燃料の浸透性に関する要求、及びまた要求される機械的特性(例えば耐衝撃性又は引張破壊ひずみ)、並びに化学物質に対する内部及び外部の耐性のために、高い耐熱性、高い長手方向の安定性、及びまた導入される燃料に対する高い耐性を有する多層パイプの使用が好ましい。低い浸透性(浸透)の値がここでは特に関連性があり、この低い浸透性の値は燃料自体に適用されなければならないだけでなく、燃料中に存在する可能性がある添加剤又は他の少量の構成成分にも適用されなければならない。多層構造の構成成分の耐浸出性がさらに求められ、良好な層の接着性も求められる。
【0003】
これに関連して、独国特許第4326130号又は独国特許第4410148号に記載されるような構造を例として挙げる。これらの文献の各々はポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフルオロポリマーをベースとするバリア層とそれに隣接するポリアミドをベースとする層を有する多層構造を記載している。
独国特許第4326130号では、ポリアミドとPVDFとの良好な接着を確実にするために、特別に設計されたポリメタクリルイミドの形態の添加剤をPVDFへ加えている。層間の摩擦接合(frictional connection)が記載され、非常に幅広い種類のポリアミドが考えられるポリアミドとして引用されている。独国特許第4326130号は、第1にバリア層への特に良好な接着性の点で、第2に特定の化学物質に対する耐性の点で、特定のポリアミドの特定の好ましい選択に関するいかなる情報も提供していない。
独国特許第4410148号は同様に、ポリアミドでできた層及びPVDFでできた層を有する、摩擦接合した層構造を記載しており、ここではアクリレートコポリマーをPVDFと混合してポリアミドへの接合を改善する。独国特許第4410148号もやはり、第1にバリア層への特に良好な接着性の点で、第2に特定の化学物質に対する耐性の点で、特定のポリアミドの特定の好ましい選択に関するいかなる情報も提供していない。
独国特許第19908640号は、ポリアミド成形用組成物でできた第1の層及びポリエステル成形用組成物でできた第2の層を有する熱可塑性多層複合材を記載している。このタイプの多層複合材は、燃料ラインとしての使用のために例として提案され、ここでもやはり様々なポリアミドが第1の層のベースとして提案されている。この文献において、第1の層と第2の層との間の特定の接着促進層の使用が必要であるとみなされていることが重要である。
独国特許第10065177号は同様に、溶媒の輸送に適したものであることを意図している多層複合材を記載している。この文献におけるバリア層の説明は、他の系とともに、PVDFをさらに使用しまたさらにエチレン/ビニルアルコールコポリマー(EVOH)も使用する可能性を含む。多様な考えられるポリアミドがさらに引用され、これらは配置が接着促進層をさらに含む場合にのみ上記のタイプの層に接着すると考えられ、この接着促進層はポリアミド及びポリオレフィンの混合物であることを意図しており、その少なくとも一部はグラフトポリマー又は高度分岐コポリマーのいずれかの形態をとらなければならない。
欧州特許出願公開第1086962号及び欧州特許出願公開第1270209号は、ポリアミド系の外層を含み層間の優れた接着性を有する積層熱可塑性成形体、特にフッ素含有熱可塑性物質を内層として有する積層熱可塑性成形体を提供する。欧州特許出願公開第1270209号の発明は、ポリアミドをベースとする熱可塑性組成物を含む層(A)と、層(A)に積層されている層(B)とを含む積層熱可塑性成形体であり、ここで層(B)はカルボニル基を有するフッ素含有エチレン系ポリマーを含み、ポリアミドをベースとする熱可塑性組成物は、アミド基の他に、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、及びスルホンアミド基から成る群から選択される官能基をアミド基に対して0.05~80当量パーセントの総量で有する。
【0004】
欧州特許出願公開第3305523号は、樹脂で構成され高温条件下で優れた耐熱性並びに優れた可撓性及び機械的特性を有する積層体を提供するが、これは油、例えばエンジンオイルと長期間接触すると層の剥離がなくなるという問題もある。積層体は、フッ素化コポリマーを含む第1の層と、第1の層上に直接積層され、少なくとも220℃の高い融点を有するポリアミドを含む第2の層とを含み、ここでフッ素化コポリマーは、テトラフルオロエチレンに基づく単位、エチレン系単位、及びカルボニル基を含む及び含まない共重合性の他のモノマーに基づく単位を有する。
国際公開第2017121962(A)号は、特にガソリンの運搬を意図しており、最内層から最外層へ向かって、少なくとも1つの内側バリア層(1)及びその上に位置する少なくとも1つの外層(2)を含む、多層管状構造(MLT)に関する。ポリアミド12をベースとする外層及びポリフタルアミド又はフルオロポリマーをベースとする内層を有する2層構造が開示される。
【0005】
欧州特許出願公開第1217279号は、内層として導電性フッ素樹脂が使用され、ホースが高速で成形される場合であっても内層の内面が滑らかである、燃料ホースを記載している。導電性及び14~30(g/10分)のメルトフローレートを有する溶融流動性の高いフッ素樹脂が内層として使用される。うまく機能した実施例は、ポリアミド12をベースとする外層、接着促進剤としての中間層、及びフルオロポリマーをベースとする内層を必ず有する。
欧州特許出願公開第1260747号は、脂肪族ポリアミドでできた外層及びフッ素プラスチックでできた内側チューブ層を含む、多層構造の形態の燃料ラインを記載している。脂肪族ポリアミド及びフッ素vの1つ又は両方がそれぞれ修飾脂肪族PA及び修飾フッ素プラスチックである。うまく機能した実施例は、良好な層接着性を実現するために、特別に修飾されたポリアミド12でできた外層と、同様に修飾されたフルオロポリマーをベースとする内層とを使用している。
欧州特許出願公開第1897685号は、官能基を有するフッ素樹脂でできた層(I)と、フッ素樹脂の官能基との反応により化学結合に関与することができる官能基を有する熱可塑性樹脂から生成される層との、熱ラミネートなどによる直接的な接合によって形成される多層積層体を記載している。フッ素樹脂は120℃~230℃の低い融点を有する。ポリウレタンをベースとする層及びフッ素をベースとする層を有する層構造を加工する。
【0006】
独国特許出願公開第4434530号は、ポリアミドをベースとする外層、ポリフッ化ビニリデン若しくはそのコポリマーでできた内層、及びまた内層と外層との間の摩擦接合を実現する接着促進中間層も有する、多層ポリマーパイプラインを記載している。
欧州特許出願公開第1884356号は、熱可塑性の外層及び少なくとも1つのさらなる層を含む、押出中空プロファイルの形態の熱可塑性多層複合材を記載しており、外層は(A)80~20質量部の少なくとも1種のポリアミド(PA)と、(B)ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルエステルエーテルアミド、及びそれらの混合物の群から選択される、20~80質量部の少なくとも1種のポリアミドエラストマー(TPE-A)とをベースとする混合物で構成され、(A)及び(B)の全体が100質量部を提供し、中空プロファイルは比較的速い押出成形スピードで製造されており、その結果、押出成形スピードが遅いこと以外は同一である中空プロファイルと比較した場合に、製造される中空プロファイルは比較的高い引張破壊ひずみを有し、ここで引張破壊ひずみは、完成した中空プロファイルについてDIN EN ISO 527-2に従って測定される。報告される低温耐衝撃性はエラストマーの存在に依存する。
【0007】
欧州特許出願公開第1270209号は、ポリアミドをベースとする外層としての樹脂組成物を含み層間の優れた接着性を有する積層樹脂成形体、特に内層としてフッ素含有樹脂を含む積層樹脂成形体を記載する。本発明は、ポリアミドをベースとする樹脂組成物を含む層(A)と、層(A)上に積層された層(B)とを有する積層樹脂成形体に関し、層(B)はカルボニル基を有するフッ素含有エチレン系ポリマーを含み、ポリアミドをベースとする樹脂組成物は、アミド基の他に、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、及びスルホンアミド基から成る群から選択される官能基をアミド基に対して0.05~80当量パーセントの総量で有する。
米国特許出願公開第2013115401号は、高温で改善された加水分解耐性を有する熱可塑性組成物に関する。ポリヒドロキシポリマーを特定のポリアミド又はポリアミド混合物へ加えると、高温エチレングリコール水溶液との接触後のこれらの熱可塑性組成物の引張破壊ひずみを向上させる。熱可塑性組成物は、高温水性液体の輸送のためのホース及びパイプの製造に適している。主題にはフルオロポリマーを含む複合材は含まれない。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、内部空間を内包する中空体の形態である改善された多層複合材を提供することである。特定の目的は、可能な限り差の少ない層によって、すなわち接着促進層を避けることによって、特に燃料中に浸漬した期間後の良好な層接着性、良好な耐塩化亜鉛性、及びまた良好な圧力性能によって、並びにさらに耐低温衝撃性、引張破壊ひずみ、及び耐浸出性に関する有利な特性によって、良好なバリア効果を実現することである。
したがって本発明は、少なくとも2層を含む又は好ましくは2層から成るプラスチックラインを提供し、その内層はラインの内部空間を内包し、その外層は内層に直接隣接し、好ましくはラインの外側の境界を定める。したがって本発明は、好ましくは言及した2層のみから成るライン、すなわち内層がラインの内部空間を直接内包し、介在する接着促進層又はさらなる内層若しくは外層がないもの、又はこれらの2つの互いに隣接する層を内側に有しさらなる次の層も外側に有するラインを提供する。しかし、さらなる最内層が存在すること、例えばさらなる最内バリア層若しくは最内導電性層、例えばEVOH、ポリフタルアミド(PPA、例えばPA6T、PA6T/66、PA10T/6T)でできたもの若しくはそれらをベースとするものが存在すること、又は例えば添加物質を有する、例えば内層におけるものとは異なる導電性添加剤を有する、フルオロポリマーをベースとするさらなる追加の最内層の形態をとるその他が存在することも可能である。そのようなさらなる最内層が存在しないことが好ましい。
外層及び/又は内層の材料に接着促進物質が添加されていないことがさらに好ましい。
本発明における内層の構造は、フルオロポリマーをベースとし、好ましくは少なくともエチレン及びテトラフルオロエチレンをベースとする。
【0009】
本発明における外層はさらに、以下の構成成分:
(A)51~98質量パーセント又は69~98質量パーセント、好ましくは75~98質量パーセントの、以下の群:PA616、PA516、PA618、及びそれらの混合物、並びにまたこれらのポリアミドの少なくとも1種を少なくとも50質量パーセント含むコポリマー、並びにまたこれらのポリアミドの少なくとも1種とそれらとは異なるさらなる熱可塑性物質(A2)との混合物であって、そのような混合物中のこれらのポリアミドの割合が少なくとも50質量パーセントである混合物から選択されるポリアミドと;
(B)2~20質量パーセントの耐衝撃性改良剤及び/又は可塑剤と;
(C)(0~29質量パーセント又は0~5質量パーセントのA)及び(B)とは異なる添加剤と
から成り、成分(A)~(C)の質量による割合が合計で外層の材料の100質量パーセントとなる。
【0010】
したがって最も広い意味では、本発明は、互いに直接隣接し互いに密着した層(I)及び(II)を含む複合材を提供し、
層(I)は以下の構成成分:
(A)51~98質量パーセント、好ましくは75~98質量パーセントの、以下の群:PA616、PA516、及びそれらの混合物、並びにまたこれらのポリアミドの少なくとも1種を少なくとも50質量パーセント含むコポリマー、並びにまたこれらのポリアミドの少なくとも1種とそれらとは異なるさらなる熱可塑性物質(A2)との混合物であって、そのような混合物中のこれらのポリアミドの割合が少なくとも50質量パーセントである混合物から選択されるポリアミドと;
(B)2~20質量パーセントの耐衝撃性改良剤及び/又は可塑剤と;
(C)0~29質量パーセントの(A)及び(B)とは異なる添加剤と
とから成り、
成分(A)~(C)の質量による割合が合計で層(I)の材料の100質量パーセントとなり、
層(II)はその構造がフルオロポリマーに基づいている。
【0011】
内層及び外層における材料のこの特定の組み合わせにより、例えば外層がポリアミド612又はポリアミド12から成る場合に同じ組成では得ることができない予期しない良好な接着性を得ることが可能である。塩に対する高い耐性、特に塩化カルシウム又は塩化亜鉛に対する耐性を得ることがさらに可能であり、燃料ライン分野における慣例的な要求に関する他の値との良好な適合性も得られる。
外層は好ましくはラインの外側の境界を定め、好ましくは成分(A)の割合が75~98質量パーセントの範囲であり、成分(C)の割合が0~5質量パーセントの範囲である。
代替としては、外層の外側に、1つ又は2つのさらなる外層が存在し、その最外層はラインの外側の境界を定め、これらのさらなる外層の構成は好ましくはPA612、PA6、PA616又はそれらの混合物をベースとする。
【0012】
提案されるプラスチックラインの第1の好ましい実施形態は、成分(A)がPA616のみから成る、又はPA616の割合が少なくとも80質量パーセントであるコポリマーから成る、又はPA616の割合が少なくとも80質量パーセントであるPA616と別のポリアミドとの混合物から成ることを特徴とする。
成分(A)のさらなる熱可塑性物質(A2)がPA616、PA516、PA618とは異なるポリアミド、好ましくは脂肪族又は半芳香族ポリアミドであり、特に好ましくはPA6、PA11、PA612、PA10T/6T、PA1212、PA66、PA106、PA1012、PA10T/612、PA10T/610、PA9Tから成る群から選択されることが好ましい。成分(A)はポリアミド12及び/又はポリアミドエラストマーを含まないことが好ましい。
【0013】
外層の材料における成分(A)の割合は、80~95質量パーセントの範囲内、特に好ましくは84~88質量パーセントの範囲内であってもよい。別の好ましい実施形態は、外層の材料における成分(B)の割合が5~18質量パーセントの範囲内、特に好ましくは10~15質量パーセントの範囲内であることを特徴とする。代替としては、導電性添加剤、特にカーボンブラックが成分(C)として使用される場合、外層の材料における成分(A)の割合は、好ましくは55~85質量パーセントの範囲内、特に好ましくは60~75質量パーセントの範囲内である。
外層の材料は好ましくは、成分(B)の目的のために、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤だけでなく少なくとも1種の可塑剤も含む。
【0014】
耐衝撃性改良剤は、可塑剤と組み合わせて使用されるか又は可塑剤なしで使用され、外層の組成全体を基準として2~10質量パーセントの範囲内、特に4~8質量パーセントの範囲内の割合で存在してもよい。
可塑剤は、耐衝撃性改良剤と組み合わせて使用されるか又は耐衝撃性改良剤なしで使用され、外層の組成全体を基準として2~12質量パーセントの範囲内、好ましくは5~10質量パーセントの範囲内の割合で存在してもよい。
耐衝撃性改良剤は、酸修飾エチレン-α-オレフィンコポリマー、特に好ましくは無水物グラフト化、特に無水マレイン酸グラフト化されたエチレン/α-オレフィンコポリマー、特にこのように修飾/グラフト化されたエチレン/ブチレン、エチレン/プロピレン、又はエチレン-プロピレン/エチレン-ブチレンコポリマーであることが好ましい。
可塑剤は、好ましくはヒドロキシ安息香酸エステル系及び/又はスルホンアミド系可塑剤として、好ましくはN-置換スルホンアミド可塑剤のクラスから、特に好ましくはBBSAの形態から選択される。
【0015】
外層の材料における成分(C)の割合は、外層の組成全体を基準として好ましくは0.1~3質量パーセントの範囲内、好ましくは0.5~1質量パーセントの範囲内であり、これらの値は好ましくは導電性添加剤とは異なるあらゆる添加剤に適用される。成分(C)が導電性添加剤、好ましくはカーボンブラックを含む場合、その割合は、外層の組成全体を基準として好ましくは0.1~28質量パーセント、好ましくは10~27質量パーセントの範囲内である。添加剤が導電性添加剤を含む場合、成分(C)の割合はしたがって外層の組成全体を基準として好ましくは10~28質量パーセントの範囲内、非常に好ましくは12~27質量パーセントの範囲内である。
成分(C)は、以下の群:抗酸化剤、加工助剤、UV安定化剤、熱安定剤、顔料、染料、マスターバッチキャリア、導電性添加剤、潤滑剤、及びそれらの混合物からの少なくとも1種の添加物質から選択されてもよい。
成分(C)が、特にフェノール、ホスホニット、又はHALS安定化剤をベースとする、有機熱安定剤の形態の熱安定剤を含むことが特に好ましい。
少なくとも1種の耐衝撃性改良剤は、好ましくは酸修飾エチレン-α-オレフィンコポリマーとして、特に好ましくは無水物グラフト化、特に無水マレイン酸グラフト化されたエチレン/α-オレフィンコポリマーとして、特にこのようにして修飾/グラフト化されたエチレン/ブチレン、エチレン/プロピレン、又はエチレン-プロピレン/エチレン-ブチレンコポリマーとして選択される。
【0016】
成分(C)の添加剤は、さらに又は代わりに、一価又は二価の銅の化合物、第2級芳香族アミンをベースとする安定化剤、立体障害フェノールをベースとする安定化剤、ホスフィット/ホスホニット、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の熱安定剤を含んでいてもよい。
本発明の熱可塑性成形用組成物は好ましくは、成分(C)として、0~3質量%、好ましくは0.02~2.0質量%、特に好ましくは0.1~1.5質量%の少なくとも1種の熱安定剤をさらに含む(やはり各々の場合において、組成物全体、すなわち(A)~(C)の全体を基準とする)。
【0017】
好ましい実施形態において、熱安定剤は、以下から成る群から選択される。
・ 一価又は二価の銅の化合物、例えば一価若しくは二価の銅と無機酸若しくは有機酸、又は一価若しくは二価フェノールとの塩、一価若しくは二価の銅の酸化物、又は銅塩とアンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアニド、若しくはホスフィンとの錯体、好ましくはハロゲン化水素酸若しくはシアン化水素酸のCu(I)若しくはCu(II)塩、又は脂肪族カルボン酸の銅塩。一価の銅化合物であるCuCl、CuBr、CuI、CuCN、及びCu2O、並びにまた二価の銅化合物であるCuCl2、CuSO4、CuO、酢酸銅(II)、若しくはステアリン酸銅(II)も特に好ましい。銅化合物を使用する場合、銅の量は、成分(A)~(C)の全体を基準として好ましくは0.005~0.5質量%、特に0.006~0.3質量%、特に好ましくは0.01~0.25質量%である。
銅化合物は市販されており、又はその製造は当業者に既知である。銅化合物はそれ自体で又は濃縮物(マスターバッチ)の形態で使用できる。ここで濃縮物という用語は、高濃度の銅塩を含む、好ましくは成分(A)と同じ化学的タイプの、ポリマーを意味する。濃縮物の使用は慣例的な手順であり、非常に少量の出発物質を計ることを意図している場合に特にしばしば行われる。銅化合物はさらなる金属ハロゲン化物、特にアルカリ金属ハロゲン化物、例えばNaI、KI、NaBr、KBrと組み合わせて使用されるのが有利であり、ここで金属ハロゲン化物とハロゲン化銅とのモル比は0.5~20、好ましくは1~10、特に好ましくは3~7である。
・ 第2級芳香族アミンをベースとする安定化剤。これらの安定化剤の存在する量は好ましくは0.2~2質量%、好ましくは0.2~1.5質量%である。
・ 立体障害フェノールをベースとする安定化剤。これらの安定化剤の存在する量は好ましくは0.1~1.5質量%、好ましくは0.2~1.0質量%である。
・ ホスフィット及びホスホニット。並びにまた
・ 上記の安定化剤の混合物。
【0018】
本発明で使用することができ第2級芳香族アミンをベースとする安定化剤の特に好ましい例は、フェニレンジアミンとアセトンとの付加体(Naugard A)、フェニレンジアミンとリノレン(linolene)との付加体、Naugard 445、N,N’-ジナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-シクロヘキシル-p-フェニレンジアミン、及びそれらの2つ以上の混合物である。
【0019】
立体障害フェノールとして適切な化合物は、原理上は、フェノール環上に少なくとも1つの嵩高い基を有するフェノール構造を有するあらゆる化合物である。本発明で使用することができ立体障害フェノールをベースとする安定化剤の好ましい例は、N,N’-ヘキサメチレンビス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、ビス(3,3-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)ブタン酸)グリコールエステル、2,1’-チオエチルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、及びこれらの安定化剤の2つ以上の混合物である。
【0020】
好ましいホスフィット及びホスホニットは、トリフェニルホスフィット、ジフェニルアルキルホスフィット、フェニルジアルキルホスフィット、トリス(ノニルフェニル)ホスフィット、トリラウリルホスフィット、トリオクタデシルホスフィット、ジステアリルペンタエリトリトールジホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィット、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスフィット、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスフィット、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスフィット、ジイソデシルオキシペンタエリトリトールジホスフィット、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスフィット、ビス(2,4,6-トリス(tert-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスフィット、トリステアリルソルビトールトリホスフィット、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレンジホスホニット、6-イソオクチルオキシ-2-4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12H-ジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、6-フルオロ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12-メチルジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスフィット、及びビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスフィットである。トリス[2-tert-ブチル-4-チオ(2’-メチル-4’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル)フェニル-5-メチル]フェニルホスフィット、及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィット(Hostanox(登録商標)PAR24:Clariant社、Baselより市販されている製品)が特に好ましい。熱安定剤の好ましい実施形態は、有機熱安定剤の組み合わせ、特にフェノール、ホスホニット、及びHALS安定化剤をベースとする有機安定化剤、例えばHostanox O 3P、Sandostab P-EPQ、及びHostavin N 30 Pの組み合わせ、又は有機熱安定剤(特にHostanox PAR 24及びIrganox 1010)、ビスフェノール-A系エポキシド(特にEpikote 1001)、並びにCuI及びKIをベースとする銅安定化剤系の組み合わせで構成される。有機安定化剤及びエポキシドから成る市販の安定化剤混合物の例は、BASF社のIrgatec NC66である。
特に、CuI及びKIのみをベースとする熱安定剤系が好ましく、成形用組成物は好ましくはニグロシンを含まない。
【0021】
言い換えれば、成分(C)の添加剤は、好ましくは、ハロゲン化銅、又はハロゲン化銅とハロゲン化カリウムの混合物、好ましくはCuI及びKIの混合物の形態である少なくとも1種の安定化剤を含み、後者は好ましくは混合物中に4~20のモル過剰で存在し、ハロゲン化銅と任意のハロゲン化カリウムをベースとする安定化剤の割合は、各々の場合に100質量パーセントのポリアミド成形用組成物全体の(A)~(C)を基準として、好ましくは0.01~0.10質量パーセントの範囲内、好ましくは0.03~0.07質量パーセントの範囲内である。本発明の熱可塑性成形用組成物は、さらなる成分(C)として、慣例的な加工助剤、例えば安定化剤、酸化遅緩剤など、熱分解及び紫外線による分解を阻害するさらなる薬剤、潤滑剤及び離型剤、着色剤、例えば染料及び顔料など、核剤、可塑剤、難燃剤などを含んでいてもよい。
酸化遅緩剤及び熱安定剤について挙げることができる例は、熱可塑性成形用組成物の質量を基準として1質量%までの濃度の、ホスフィット及びさらなるアミン(例えばTAD)、ヒドロキノン、これらの群の様々な置換された代表物、並びにそれらの混合物である。
成形用組成物を基準として一般に2質量%までの量で使用される、UV安定化剤としては、様々な置換レゾルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、及びベンゾフェノンを挙げることができる。
【0022】
成分(C)として、無機顔料、例えば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄、及びカーボンブラック及び/又はグラファイト、並びにさらなる有機顔料、例えばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、並びにまた染料、例えば着色剤としてのアントラキノンを加えることがさらに可能である。
成分(C)は少なくとも1種の導電性添加剤も含んでいてもよい。導電性添加剤は好ましくはカーボンブラックである。しかし、単層、二層、若しくは多層カーボンナノチューブ、グラフェン若しくはグラフェン誘導体を使用すること、又はカーボンブラック、カーボンナノチューブ、及び/又はグラフェン、及び/又はグラフェン誘導体の組み合わせを使用することも可能である。成分(C)の一部としての導電性添加剤の割合は、各々の場合において組成全体を基準として、例えば(A)~(C)の全体を基準として、好ましくは1~27質量%の範囲内、特に好ましくは5~25質量%の範囲内である。
【0023】
ここで提案されるプラスチックラインの別の好ましい実施形態は、内層の構造が少なくともエチレン及びテトラフルオロエチレンをベースとするフルオロポリマーに基づいていることを特徴とする。フルオロポリマーは、さらなるプロピレンブロック及び/又はヘキセンブロック、好ましくはヘキサフルオロプロピレンブロック及び/又はペルフルオロヘキセンブロックをさらに含んでいてもよい。これらのブロックは一般に副次的な量で、典型的には出発モノマーの全モル量を基準として各々の場合で0.01~1mol%又は0.01~0.3mol%の範囲内で存在する。
フルオロポリマーは、好ましくはカルボニル基を有し、特に好ましくはアミド基、イミド基、ウレタン基、又はウレア基を含む、フッ素含有エチレン系ポリマーとして構成されている。
【0024】
内層が以下の構成成分:
(a)少なくともエチレン及びテトラフルオロエチレンをベースとし、ヘキサフルオロプロピレンブロック及び/又はペルフルオロヘキセンブロックを含むか若しくは含まず、好ましくはカルボニル基を有する、75~100質量パーセント、好ましくは85~98質量パーセントのフルオロポリマーと;
(b)0~25質量パーセントの添加剤と;
から成ることがさらに好ましく、成分(a)及び(b)は合わせて内層の材料の100質量パーセントとなる。
カルボニル基を有するフッ素含有エチレン系ポリマーのカルボニル基の含量は、好ましくは1×106個の主鎖炭素原子当たり合計で3~1000個の基である。カルボニル基を有するフッ素含有エチレン系ポリマーのカルボニル基は、過酸化物に由来していてもよい。フッ素含有エチレン系ポリマーは、カーボネート基、ハロゲン化カルボニル基、及びカルボキシ基から成る群から選択される少なくとも1種類のカルボニル基を、1×106個の主鎖炭素原子当たり3~1000個の基の総量で有するポリマーであってもよい。考えられる例は、カルボニル基を有し欧州特許出願公開第1270209号に記載のタイプのものである、フッ素含有エチレン系ポリマーである。
【0025】
内層の成分(b)は、以下の群:抗酸化剤、加工助剤、UV安定化剤、熱安定剤、顔料、マスターバッチキャリア、導電性添加剤、潤滑剤、及びそれらの混合物からの少なくとも1種の添加物質から選択することができる。内層の成分(b)は、特にフェノール、ホスホニット、又はHALS安定化剤をベースとする有機熱安定剤の形態の熱安定剤を特に含んでいてもよい。
内層が導電性添加剤を均一に備えているか又は導電性ポリマーの形態をとることが特に好ましい。別の好ましい実施形態は、成分(b)が、好ましくは内層の組成全体を基準として0.1~20質量パーセントの範囲の割合で少なくとも1種の導電性添加剤を含むことを特徴とする。導電性添加剤の目的のための導電性材料として、金属ファイバーで、金属粉末で、金属酸化物粉末で、導電性カーボンブラックで、導電性炭素繊維で、導電性カーボンナノチューブで、導電性グラファイト粉末で、導電性グラファイトファイバーで作られた粒子、グラフェン、青銅粉末、青銅ファイバー、鋼粉末、鋼ファイバー、鉄粉末、鉄ファイバー、銅粉末、銅ファイバー、銀粉末、銀ファイバー、アルミニウム粉末、アルミニウムファイバー、ニッケル粉末、ニッケルファイバー、タングステン粉末、タングステンファイバー、金粉末、金ファイバー、銅-マンガン合金粉末、銅-マンガンファイバー、及びそれらの組み合わせ、並びにそれらの混合物を成分(b)として内層へ混合することができる。電気伝導度がこのようにして内層に与えられる場合、内層の表面電気抵抗は好ましくは108Ω以下、又は106Ω以下、好ましくは10Ω以下である。導電性材料の割合は、好ましくは内層の表面電気抵抗が言及した範囲内になるように設定される。導電性添加剤の導電性粒子の平均断面直径は、好ましくは約0.1μm~約100μmである。被覆した導電性粒子を導電性粒子として提供するために、コーティングを導電性粒子に塗布してもよい。
【0026】
一般に、構造がフルオロポリマーでできた最内層とポリアミドでできた外層とを含むことが好ましい。その場合さらなる層が外側に存在していてもよく、すなわちポリアミドでできた外層が最外層として存在するか、又は外層の他に1つ若しくは2つのさらなる層、好ましくはポリアミドでできた層が存在する。
本発明は、さらなる実施形態、例えばフルオロポリマー最内層及び直接隣接するポリアミド層が請求項1のように配置され、これらの層がさらなるポリアミド層によってさらに内包されている3層構造を提供する。4層、5層、又は6層構造は同様に特許請求の範囲にしたがっており、内層及び直接隣接する外層は請求項1のように配置される。
構造は特に好ましくは、フルオロポリマーでできた最内層と、上記で記載されるようなポリアミドでできた外層とから成る。
【0027】
本発明は、内層の厚さが0.08~1mmの範囲内、好ましくは0.1~0.9mmの範囲内であり、及び/又は外層の厚さが0.5~2mmの範囲内、好ましくは0.6~1.75mmの範囲内であり、ラインの総壁厚が好ましくは0.9~3mmの範囲内、特に好ましくは1.0~2.0mmの範囲内であることを特徴とする、プラスチックラインをさらに提供する。
提案されるプラスチックラインは典型的には共押出法により製造される。
提案されるプラスチックラインは、少なくとも部分的に波形管として、好ましくは特に自動車分野における内燃機関用のラインとして、特に燃料用、特に好ましくはガソリン、尿素、又は冷却剤用のラインとして構成することができるラインとして構成される。
【0028】
本発明は、2層、すなわち内層及び外層を、連続法及び/又はバッチ法で、好ましくは押出ブロー成形法、タンデム押出法、外装法(sheathing process)、射出成形法、特に(ガス)内圧射出成形法(internal-(gas)-pressure injection-molding process)、又は(共)押出法で成形して中空体を得る、特に好ましくはラインを得ることを特徴とする、上記のプラスチックラインの製造方法をさらに提供する。
従属クレームはさらなる実施形態を示す。
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して下記で説明するが、図面は単に例証のために役立ち非制限的なものとして理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】流れ方向と垂直の断面図における燃料ラインを示す図である。
【
図2】主な流れ方向と垂直の断面における、本発明の燃料ライン1’の別の例を示す図である。この燃料ラインは5層を有し、外層4の外側にさらなる外層8及び最外層9があり、フルオロポリマー最内層(3)の及び直接隣接するポリアミド層(4)の構造は上記の通りであり、最も重要なことは、この構造が層3と4との間で著しい接着性を有することである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、主な流れ方向と垂直の断面における本発明の燃料ライン1の例を示す。このラインは特に車両の燃料用、具体的にはガソリン又はディーゼル用を意図している。このラインは好ましくはガソリン、すなわち炭化水素混合物のためのものである。ガソリンの主な構成成分は、主に1分子当たり5~11個の炭素原子を有し25℃~約210℃の沸点範囲を有するアルカン、アルケン、シクロアルカン、及び芳香族炭化水素である。これらの他に、様々なエーテル(MTBE、ETBEなど)及びアルコール(エタノール及び任意にメタノール)を非改質ガソリンと混合することができる。エーテル及び/又はエタノールはガソリンの耐ノッキング性を高める。ここで断面積は主な流れ方向に沿って一定とすることができ、すなわちパイプの形状は本質的に中空円筒形であってもよい。
しかし、断面積は主な流れ方向に沿って、例えば波形管の形態で、変動してもよい。
パイプの壁は内部空間2を内包する。内部空間2の半径方向外側に、最初に内層3が続き、その内面7は内部空間2に隣接し、内部空間2の境界を定める。この内層の構成はフルオロポリマーをベースとする。
内層3と直接隣接して、接触領域5において接着促進層を間に挟まずに、外層4が続き、その構成はポリアミド616に基づいており、好ましくは他のポリアミドから成るさらなる構成成分を含まない。外層4の外面6はラインの外側の境界を定める。
【0031】
使用される出発物質:
外層:
PA12:ポリアミド12:ηrel=2.2(m-クレゾール);ISO 11357(2011)に準拠してDSCにより測定されるTm=173℃、商標Grilamid L 25 W 40 X、EMS-CHEMIE AG社、スイスにより入手可能。
PA612:ポリアミド612:ηrel=2.3(m-クレゾール);ISO 11357(2011)に準拠してDSCにより測定されるTm=218℃、可塑化及び耐衝撃性改良済み、商標Grilamid 2D 25 W 20 X、EMS-CHEMIE AG社、スイスにより入手可能。
PA616:ポリアミド616:ηrel=2.2(m-クレゾール);ISO 11357(2011)に準拠してDSCにより測定されるTm=197℃、可塑化及び耐衝撃性改良済み。
【0032】
【0033】
PA616-ESD:ポリアミド616:η
rel=2.1(m-クレゾール);ISO 11357(2011)に準拠してDSCにより測定されるT
m=197℃、耐衝撃性改良済み、カーボンブラックを含む。
【表2】
【0034】
PA12-HV:接着性改良(エラストマー)及び耐衝撃性改良ポリアミド12:EMS-CHEMIE AG社、スイスよりGrilamid XE 4076として入手可能。
PA6:熱安定化、耐衝撃性改良済み、及び可塑化ポリアミド6、EMS-CHEMIE AG社、スイスよりGrilon BRZ 347 Wとして入手可能。
BBSA(N-ブチルベンゼンスルホンアミド)を可塑剤(P)として使用した。これはLanxess社の商標Uniplex 214により入手可能である。
耐衝撃性改良剤:酸修飾エチレン/α-オレフィンコポリマーを具体的には無水マレイン酸グラフト化エチレン-ブチレンコポリマー及び無水マレイン酸グラフト化エチレン-プロピレンコポリマー、並びにまたこれらの混合物を、耐衝撃性改良剤(IM)として使用した。
使用されるIM系:MVR値(230℃、2.16kgで測定される)が1.3g/10分(ASTM D1238)、ISO規格11357-2(2013)に準拠したDSCガラス転移温度が-60℃、三井化学株式会社のTafmer MC201として入手可能。
安定化剤:Hostanox O 3Pは、CAS No.32509-66-3のヒンダードフェノールをベースとする安定化剤であり、Sandosab P-EPQはジホスホニット安定化剤(CAS:119345-01-6)であり、Hostavin N 30 PはCAS No.202483-55-4のヒンダードアミンをベースとする安定化剤(HALS)であり、すべてClariant社より入手可能である。
Tinuvin 234は、BASF SE社より入手可能な、CAS No.70321-86-7のベンゾトリアゾールをベースとするUV安定化剤である。Barlocher GmbH社、ミュンヘンより購入したステアリン酸マグネシウムを潤滑剤として使用した。
カーボンブラック:Imerys社の商標ENSACO 250 Granulesのカーボンブラックを導電性添加剤として使用した。
【0035】
内層:
フルオロポリマー:内層に使用される材料は、エチレン及びテトラフルオロエチレン単位をベースとするフルオロポリマー(ETFE)、又はエチレン、ヘキサフルオロプロペン、及びテトラフルオロエチレン単位をベースとするフルオロポリマー(EFEP)のいずれかとした。
実施例のETFEは、FLUON(登録商標)ETFEの商標により入手可能なAGC Chemicals Europe,Ltd.社の製品とした。実施例のETFE-ESDは、同様にAGC Chemicals Europe,Ltd.社の製品ETFE AH 600-Cとした。
使用されるEFEPは、ダイキン工業株式会社(日本)の市販品Neoflon EFEP RP-5000とした。
【0036】
試験片の作成:
275~285℃(フルオロポリマー)及び240~255℃(ポリアミド)の溶融温度で、27~95mbarの減圧及び12.9m/分の押出スピードにおいて、Nokia Maillefer COEX5パイプ押出機でパイプを共押出した。8mmの外径及び1mmの壁厚さを有するパイプを試験片として使用した。パイプの長さを試験の必要に応じて調整した。内層の厚さは0.1又は0.2mmであり、外層の及びさらなる外層のそれぞれの厚さは、それぞれ0.9及び0.8mmであった。
【0037】
パイプ構造について行われる試験:
浸出:試験燃料FAM-B(SAE J1681(2000)に準拠)の96時間試験、閉鎖した200cmパイプによる、60℃でのSAE J2260に準拠した試験;VW TL 52712-Cに基づく最大抽出量6g/m2(この規格は0.2mm ETFE/0.8mm PA12におけるETFE-PA12の必要条件を決定する)。
低温性能:VW規格PV 3905に準拠したTL 52712-Cに基づいて試験する。球の落下高さは65cmである。少なくとも10点の試験試料を試験し、割れの数をパーセントで記載する。
【0038】
パイプ引張試験:パイプ引張試験をISO 527-2(2012)に準拠して行なった。試験では長さ150mm(押出方向の引張試験)又は10mm(押出方向と垂直の引張試験の場合)の試験片を使用した。試験温度は23℃、試験速度は100mm/分(押出方向の試験)、又は試験が押出方向と垂直に行われる場合は25mm/分であった。
ISO 527に準拠して行われる試験は具体的には、押出方向の引張破壊ひずみ、押出方向と垂直の引張破壊ひずみ、押出方向の降伏応力、及び押出方向と垂直の降伏応力であった。
破裂圧/比較応力(comparative stress):23℃にて、DIN 73378に準拠。
【0039】
層接着性:VW TL 52712の6.8節及びSAE J2260に準拠して試験した。
【0040】
相対粘度:DIN EN ISO 307(2007)、20℃の温度で、0.5質量%のm-クレゾール溶液中、又は1質量%の硫酸溶液中。
【0041】
耐塩化亜鉛性:SAE J2260、7.12.2項に準拠して試験片を一定期間浸漬させ、次いでクラックについて視覚評価した。次いで無傷のままであった試験試料に、DIN 73378に準拠して振子式衝撃試験及び破裂圧試験を行った。パーセンテージとして報告される振子衝撃値は、不合格の試験の割合に関する。
【0042】
【0043】
【0044】
結果の考察
本発明の実施例は特に、それらの優れた層接着性によって特徴づけられる。ジアミン及び二塩基酸から成る、類似脂肪族AABBポリマー、すなわちポリアミドは、驚くことにフルオロポリマー層への様々な接着性を示す。平均数で11個の炭素原子(11C)を有するポリアミド616は、類似物として当業者に知られるPA12(12C)又はPA612(9C)などの長鎖系よりも大幅に良好なフルオロポリマーへの接着性を有する。
【0045】
驚くことに、本発明の実施例は、燃料中の浸漬期間後に優れた圧力特性を示す。特許請求の範囲にしたがった構造の比較応力は、FAM-B中の500時間の浸漬時間後にわずかにのみ減少する。高い耐塩化亜鉛性は、自動車分野において本発明のラインを問題なく使用することを可能にする。そのようなラインはZnCl2溶液中の浸漬期間後にクラックを示さず、さらに、PA12又はPA612をベースとする既知の構造のものよりも有利である機械的特性を有する。
【0046】
符号の説明
1 燃料ライン
2 内部空間
3 内層
4 外層
5 3と4との間の接触領域
6 外面
7 内面
8 さらなる外層
9 最外層