(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】ポリ(ファルネセン)を含むバイオベースの増粘組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20240605BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240605BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240605BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20240605BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20240605BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q17/04
A61Q1/00
A61Q1/04
A61Q1/14
A61K8/31
(21)【出願番号】P 2021538223
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 FR2020050031
(87)【国際公開番号】W WO2020144440
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-12-14
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505036674
【氏名又は名称】トータルエナジーズ マーケティング サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スワボダ,ベンジャマン
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-532142(JP,A)
【文献】特開2013-241609(JP,A)
【文献】特表2012-502136(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0251846(US,A1)
【文献】国際公開第2018/029143(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/180433(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚、唇または皮膚付属器への局所塗布を意図した増粘組成物であって、
-生物起源由来の少なくとも1種の油と、
-10,000~120,000g/molの範囲の数平均モル質量を有する少なくとも1種のポリ(ファルネセン)ポリマーと、を含み、前記ポリ(ファルネセン)ポリマーが部分的または完全に水素化されている、および/またはヒドロキシル基で官能化されている、増粘組成物。
【請求項2】
前記生物起源由来の油が、炭化水素油、酸、エステルまたはアミドの形態の植物油または動物油、およびそれらの混合物の中から選択される、請求項1に記載の増粘組成物。
【請求項3】
前記生物起源由来の油が炭化水素油であ
る、請求項1または2に記載の増粘組成物。
【請求項4】
前記炭化水素油が、炭化水素油の総重量に対して、90重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィン、0重量%~10重量%の範囲の含有量のノルマルパラフィンを含む、請求項3に記載の増粘組成物。
【請求項5】
前記炭化水素油が、14個~18個の炭素原子を含む非環状イソパラフィンの中から選択される、請求項3
または4に記載の増粘組成物。
【請求項6】
前記炭化水素油が、以下:
-前記炭化水素油の総重量に対して、95重量%~100重量%
若しくは98重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィン;および/または
-
90%以上、若しくは95%以上、
若しくは98%以上、
若しくは100%の含有量の生物起源由来の炭素、および/または
-前記炭化水素油の総重量に対して、10
重量%以下、
若しくは5重量%以下、
若しくは2重量%以下の含有量のノルマルパラフィン;および/または
-前記炭化水素油の総重量に対して、1重量%以下、
若しくは0.5重量%以下、
若しくは100重量ppm以下の含有量のナフテン系化合物;および/または
-前記炭化水素油の総重量に対して、500重量ppm以下、
若しくは300重量ppm以下、
若しくは100重量ppm以下、
若しくは50重量ppm以下、
若しくは20重量ppm以下の含有量の芳香族化合物、
を含む、請求項3~
5のいずれか一項に記載の増粘組成物。
【請求項7】
前記炭化水素油が、温度80℃~180℃、および気圧50bar~160barにおいて、脱酸素化および/または異性化された生物起源の供給原料の接触水素化の方法によって得られる、請求項3~
6のいずれか一項に記載の増粘組成物。
【請求項8】
前記ポリ(ファルネセン)ポリマーが、20,000~90,000g/mol、
または30,000~85,000g/mol、
または40,000~80,000g/mol、
または50,000~80,000g/molの範囲の数平均モル質量を有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の増粘組成物。
【請求項9】
前記増粘組成物の総重量に対して、
-10重量%~90重量%、
または20重量%~80重量%、
または30重量%~70重量%、
または40重量%~60重量%の生物起源由来の油(複数可)と、
-10重量%~90重量%、
または20重量%~80重量%、
または30重量%~70重量%、
または40重量%~60重量%のポリ(ファルネセン)ポリマー(複数可)と、を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の増粘組成物。
【請求項10】
化粧品組成物における、増粘剤、感覚剤、膜形成剤、テクスチャ剤、耐水性向上剤、保湿/水和剤、コンディショナー、
または粘性油
としての、請求項1~
9のいずれか一項に記載の増粘組成物の使用。
【請求項11】
前記化粧品組成物がさらに、少なくとも1種の脂肪物質を含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの増粘組成物を含む、
皮膚、唇または皮膚付属器に局所化粧品を塗布するための化粧品組成物。
【請求項13】
前記増粘組成物が、前記化粧品組成物の総重量に対して、1重量%~80重量%、または5重量%~70重量%、または10重量%~50重量%の範囲の量で存在する、請求項12に記載の化粧品組成物。
【請求項14】
前記増粘組成物の植物油以外の植物油;
前記増粘組成物の炭化水素油以外の炭化水素油;植物バター;脂肪エーテルおよび脂肪アルコール;油性エステル;アルカンおよびシリコーン油の中から選択される少なくとも1種の脂肪物質;および/
または少なくとも1種の添加剤を含む、請求項
12または13に記載の化粧品組成物。
【請求項15】
前記添加剤が乳化剤から選択される、請求項14に記載の化粧品組成物。
【請求項16】
局所塗布のための
、請求項1~
9のいずれかに記載の増粘組成物の使用、または請求項
12~15のいずれか一項に記載の化粧品組成物の使用。
【請求項17】
皮膚若しくは毛髪用のケア製品として、メイクアップ製品として、毛髪製品として、メイクアップリムーバ製品として、付香された製品として、日焼け止め製品として、またはリップケア製品として局所塗布するための、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の増粘組成物または請求項
12~15のいずれか一項に記載の化粧品組成物を、皮膚、唇または皮膚付属器
に塗布する少なくとも1つの工程を含む、皮膚、唇または皮膚付属器の美容処置のための美容処置方法。
【請求項19】
局所塗布のための日焼け止め組成物であって、前記日焼け止め組成物が、(i)少なくとも1種の日焼け止めフィルタと、(ii
)請求項1~
9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の増粘組成物と
、を含む、日焼け止め組成物。
【請求項20】
前記増粘組成物が、前記日焼け止め組成物の総重量に対して、1重量%~80重量%、または5重量%~70重量%、または10重量%~50重量%の範囲の量で存在する、請求項19に記載の日焼け止め組成物。
【請求項21】
日焼け止め製品として使用するための、請求項1~
9のいずれか一項に記載の増粘組成物または請求項
20に記載の日焼け止め組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物起源由来の少なくとも1種の油と、1種のポリ(ファルネセン)ポリマーと、を含む増粘組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、当該増粘組成物を含む化粧品組成物およびその使用に関する。
【0003】
本発明はまた、化粧品の処方ための当該増粘組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
化粧用製品は様々な異なる形態で存在する。それらの化粧用製品は、エマルジョン(水相と乳化剤によって安定化された脂肪相との混合物)、または完全に水性、若しくは完全に無水(脂肪相のみ)のいずれかの形態であり得る。エマルジョンまたは無水の製品のいずれかにおいて、脂肪相に質感を加えるか、または粘度を増加させるために、当業者は、ゲル、すなわち非極性の(または無極性の)油とゲル化剤との混合物であり得る脂肪相に対する増粘剤を使用する。これらのゲルは、リップグロス、リップクリーム(lip moisturiser)、スキンクリームまたは日焼け止め製品の処方に特に使用される。しかしながら、それらのゲルは、毛髪製品、脱毛クリーム、およびデオドラントにも見られる。
【0005】
したがって、非極性または無極性ゲルは、非極性油とゲル化剤との混合物である。非極性油は、鉱油、植物油、シリコーン油、またはイソパラフィンであり得る。ゲル化剤は、多くの場合、エチレン/プロピレンスチレンコポリマー、またはブチレン/エチレン/スチレンコポリマー、またはポリイソブテン、ポリデセン若しくはイソプレンのコポリマー等(またはさらにSEBS、SBS、SIS、TPE等)のポリマーである。これらのコポリマーは、典型的には、Kraton社またはKuraray社によって販売されている。
【0006】
最も一般的に使用されるゲルは、鉱油ベースのゲルである。これらの油とコポリマーとの間には非常に高度の相溶性があり、実際、コポリマーの非極性構造は、これらの油との高度な適合性がある。鉱油ベースのゲルは、以下の主な欠点を提示する:油は化石系の供給源に由来し、製品はややゆるい(runny)質感を有する。
【0007】
特許文献1の文献は、生物起源からの炭化水素油および化石系供給源からのゲル化ポリマーを含むゲル化組成物を記載している。炭化水素油およびゲル化ポリマーは、ゲル化組成物を得ることを可能にするために、40℃より高い温度で混合される。
【0008】
特許文献2および特許文献3の文献は、ポリ(ファルネセン)タイプのポリマーを含むゴム組成物を記載する。これらの組成物は、皮膚、爪または皮膚付属器への局所塗布には適していない。
【0009】
特許文献4の文献は、経口投与を意図したチューインガム組成物を記載している。この文献は、皮膚、爪または皮膚付属器への局所塗布を意図した組成物を開示していない。この文献は、450,000g/molを超える重量平均分子量を有するポリ(ファルネセン)ポリマーを含む組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開WO2018/172228号公報
【文献】米国特許第9,334,394号公報
【文献】米国特許出願公開第2015/0051332号公報
【文献】米国特許出願公開第2013/0251846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、周囲温度、典型的には40℃未満、より具体的には30℃未満の温度で混合することによって得ることができ、良好な光沢および官能特性を示す増粘組成物を提供する必要性が依然として存在する。
【0012】
本出願人は、驚くべき方法で、この必要性が、生物起源由来の脂肪相と、ポリ(ファルネセン)などのタイプのバイオ系(生物起源)ポリマーとを有する新規な増粘組成物によって満たされ得ることを見出した。
【0013】
本発明の目的はまた、特に脂肪相が生物起源由来の場合、生物起源由来の原料から製造される増粘組成物を提供することである。
【0014】
本発明の目的はまた、その使用に適した特性を有する安定な増粘組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
これらの目的は、新規な増粘組成物により達成される。
【0016】
本発明は、
-生物起源由来の少なくとも1種の油と、
-10,000g/mol~120,000g/molの範囲の数平均モル質量を有する少なくとも1種のポリ(ファルネセン)ポリマーと、を含む増粘組成物に関する。
【0017】
一実施形態によれば、生物起源由来の油は、炭化水素油、酸、エステルまたはアミドの形態の植物油または動物油、およびそれらの混合物の中から選択される。
【0018】
一実施形態によれば、生物起源由来の油は炭化水素油であり、好ましくは炭化水素油の総重量に対して、90重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィン、0重量%~10重量%の範囲の含有量のノルマルパラフィン、および好ましくは90%以上の含有量の生物起源由来の炭素を含む。
【0019】
好ましくは、炭化水素油は、14個~18個の炭素原子を含む非環状イソパラフィンの中から選択される。
【0020】
好ましくは、炭化水素油は、以下:
-炭化水素油の総重量に対して、95重量%~100重量%および優先的には98重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィン、および/または
-95%以上、好ましくは98%以上、優先的には100%の含有量の生物起源の炭素、および/または
-炭化水素油の総重量に対して、10以下、好ましくは5重量%以下、優先的には2重量%以下の含有量のノルマルパラフィン;および/または
-炭化水素油の総重量に対して、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、優先的には100重量ppm以下の含有量のナフテン系化合物;および/または
-炭化水素油の総重量に対して、500重量ppm以下、好ましくは300重量ppm以下、優先的には100重量ppm以下、より優先的には50重量ppm以下、有利には20重量ppm以下の含有量の芳香族化合物、を含む。
【0021】
好ましくは、炭化水素油は、温度80℃~180℃、および気圧50bar~160barにおいて、脱酸素化および/または異性化された生物起源の供給原料の接触水素化の方法によって得られる。
【0022】
一実施形態によれば、ポリ(ファルネセン)ポリマーは、20,000g/mol~110,000g/mol、好ましくは30,000g/mol~100,000g/mol、より好ましくは40,000g/mol~90,000g/mol、より優先的には50,000g/mol~80,000g/molの範囲の数平均モル質量を有する。
【0023】
一実施形態によれば、ポリ(ファルネセン)ポリマーは、10,000g/mol~95,000g/mol、好ましくは15,000g/mol~90,000g/mol、より好ましくは20,000g/mol~85,000g/mol、より優先的には30,000g/mol~80,000g/molの範囲の数平均モル質量を有する。
【0024】
一実施形態によれば、ポリ(ファルネセン)ポリマーは部分的もしくは完全に水素化されており、および/またはポリ(ファルネセン)ポリマーはヒドロキシル基で官能化されている。
【0025】
一実施形態によれば、増粘組成物は、増粘組成物の総重量に対して、
-10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、より好ましくは30重量%~70重量%、さらにより好ましくは40重量%~60重量%の生物起源源由来の油(複数可)と、
-10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、より好ましくは30重量%~70重量%、さらにより好ましくは40重量%~60重量%のポリ(ファルネセン)ポリマー(複数可)と、を含む。
【0026】
本発明はまた、少なくとも1種の脂肪物質を含むことが好ましい化粧品組成物における、増粘剤、感覚剤、膜形成剤、テクスチャ剤、耐水性向上剤、保湿/水和剤、コンディショナー、粘性油、または第2の皮膚効果を提供する作用物質としての、本発明による増粘組成物の使用に関する。
【0027】
また、本発明の目的は、化粧品組成物の総重量に対して、好ましくは、1重量%~80重量%、優先的には5重量%~70重量%、有利には10重量%~50重量%の範囲の量で、少なくとも1種の本発明による増粘組成物を含む、化粧品組成物に関する。
【0028】
一実施形態によれば、本発明による化粧品組成物は、適切な場合には上記増粘組成物の植物油以外の植物油、適切な場合には上記増粘組成物の炭化水素油以外の炭化水素油;植物バター;脂肪エーテルおよび脂肪アルコール;油性エステル;アルカンおよびシリコーン油の中から選択される少なくとも1種の脂肪物質;および/または好ましくは乳化剤の中から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。
【0029】
本発明の別の目的は、局所塗布のための、特に、皮膚または毛髪用のケア製品として、メイクアップ製品として、毛髪製品として、メイクアップリムーバ製品として、付香された製品として、日焼け止め製品として、リップグロスまたは唇用の保湿スティック等のリップケア製品としての、本発明による増粘組成物の使用、または本発明による化粧品組成物の使用に関する。
【0030】
最後に、本発明の目的は、本発明による増粘組成物または本発明による化粧品組成物を、皮膚、唇または皮膚付属器に、好ましくは展延により塗布する少なくとも1つの工程を含む、皮膚、唇または皮膚付属器の美容処置のための美容処置方法に関する。
【0031】
本発明による増粘組成物は、非刺激性で生分解性であり、無臭に分類される組成物を取得することを可能とする。
【0032】
本発明による増粘組成物は、生物ベース源由来である。
【0033】
本発明による増粘組成物は、生物起源由来の油と生物起源由来のポリマーとの周囲温度での単純な混合によって得ることができる。
【0034】
本発明による増粘組成物を、化粧品組成物中、特に化粧品組成物の脂肪相中の感覚剤として使用することができる。
【0035】
本発明による増粘組成物を、リップグロスなどの化粧品組成物中の光沢剤として使用することができる。
【0036】
本発明による増粘組成物を、膜形成剤、粘性油、増粘剤、テクスチャ剤として使用することができる。
【発明を実施するための態様】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明は、皮膚、爪または皮膚付属器(唇、毛髪および頭皮を含む)への局所塗布を意図した増粘組成物に関し、
当該増粘組成物は、該増粘組成物の総重量に対して、
-10重量%~90重量%の生物起源由来の少なくとも1種の油と、
-10重量%~90重量%の、10,000g/mol~120,000g/mol、好ましくは10,000g/mol~95000g/molの範囲の数平均モル質量を有する少なくとも1種のポリ(ファルネセン)ポリマーと、を含む。
【0038】
予備的事項として、以下の説明および特許請求の範囲において、「間に(含まれる)」という用語は、言及される制限または境界を含むものとして理解されるものであることに留意されたい。
【0039】
生物起源由来の油
【0040】
本発明による増粘組成物に使用される生物起源由来の油は、以下の中から選択することができる:
-生物起源由来の炭化水素油;
-酸、エステルまたはアミド形態、好ましくは酸またはエステル形態のC6~C24脂肪酸の中から選択される植物油または動物油;
-およびそれらの混合物。
【0041】
植物油または動物油
【0042】
一実施形態によれば、生物起源由来の油は、酸、エステルまたはアミド形態のC6~C24脂肪酸、好ましくは酸またはエステル形態のC6~C24脂肪酸の中から選択される植物油または動物油の中から選択される。
【0043】
「脂肪酸エステルまたはアミド」という用語は、以下のように定義される生成物を指すと理解される:
【0044】
-脂肪酸エステルは、少なくとも1種の脂肪酸と生物起源由来の少なくとも1種のアルコールとの間の反応生成物であり、このアルコールは、直鎖状もしくは分枝状にかかわらず1個~6個の炭素原子を含むモノアルコール、または直鎖状もしくは分枝状にかかわらず2個~5個のヒドロキシル基を含むポリオールであり得て、好ましくは、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、グリコールおよび/またはグリセロールである。したがって、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルまたはペンタエステルを得ることが可能である。この定義には、植物油自体およびそのエステル交換生成物が含まれる。
【0045】
脂肪酸アミドは、少なくとも1種の脂肪酸と、2個~6個のアミノ基を含む生物起源由来の少なくとも1種の第一級、第二級もしくは第三級アミンまたはポリアミンとの反応生成物である。
【0046】
植物起源の化合物の中で、以下が選択される:トール油、菜種油、ヒマワリ油、ヒマシ油、落花生油、亜麻油、コプラ油、オリーブ油、パーム油、綿油、トウモロコシ油、獣脂油(tallow oil)、ラード油、パーム核油、大豆油、カボチャ種子油、ブドウ種子油、アルガン油、ホホバ油、ゴマ油、クルミ油、ヘーゼルナッツ油、シナきり油、米油、ならびにハイブリッドまたは遺伝子組換え種に由来する同じ種類の油。
【0047】
動物起源の化合物の中でも、海洋動物、魚または海洋哺乳動物由来の脂肪、ならびにウマ、ウシおよびブタの脂肪などの陸上動物由来の脂肪の酸、エステルおよびアミドを挙げることができる。
【0048】
好ましい脂肪酸は、メタノール、エタノール、グリコールおよびグリセロール系である0.5重量%~10重量%の樹脂酸およびそのエステル誘導体を含有するトール油(一般的な用語によるトール油脂肪酸またはTOFA)である。
【0049】
ハイブリッドまたはその遺伝子組換え種の油を含む、大豆油および菜種油のトリグリセリドおよび他のエステルも好ましい。
【0050】
本発明に従って使用される植物または動物起源の油はまた、植物油メチルエステル(VOME)の中から選択されてもよい。
【0051】
したがって、特定の一実施形態によれば、本発明に従って使用される植物または動物起源の油は、植物油メチルエステル(VOME)、トール油の脂肪酸(一般的な用語によるトール油脂肪酸またはTOFA)およびそれらの混合物の中から選択される。
【0052】
本発明で使用される生物起源由来の油は、典型的には、少なくとも90%の生体材料含有量を有する。この含有量は有利にはより高く、特に95%以上、好ましくは98%以上であり、有利には100%に等しい。生体材料またはバイオ炭素含有量の決定は、標準ASTM D6866-12、B法(ASTM D6866-06)およびASTM D7026(ASTM D7026-04)に従ってなされる。
【0053】
「バイオ炭素」という用語は、以下に指定されるように、炭素が天然起源であって、生体材料に由来することを示すと理解される。「バイオ炭素含有量」および「生体材料含有量」という用語は、同じ値を示す表現である。再生可能な供給源または生体材料に由来する材料は、炭素が大気からの光合成によって(ヒューマンスケールで)最近固定されたCO2から得られる有機物である。生体材料(100%天然起源の炭素)は、10-12超、典型的には1.2×10-12の14C/12Cの同位体比を有するのに対し、化石原料は比が0である。実際、14C同位体は大気中で形成され、その後、最大で数十年のタイムスケールに基づいて光合成によって統合される。14Cの半減期は5730年である。したがって、光合成、主に一般的には植物に由来する材料は、必然的に最大含有量の同位体14Cを有する。
【0054】
炭化水素油
【0055】
好ましい一実施形態によれば、本発明による増粘組成物に使用される生物起源に由来する油は、炭化水素油である。
【0056】
好ましくは、炭化水素油は、8個~30個の炭素原子、好ましくは12個~30個の炭素原子、より好ましくは13個~19個の炭素原子、または実際には14個~18個の炭素原子を有する分子を含む。
【0057】
本発明による増粘組成物は、該組成物の総重量に対して、好ましくは、10重量%~90重量%、優先的には20重量%~80重量%、より優先的には30重量%~70重量%、有利には40重量%~60重量%の範囲の含有量の炭化水素油を含む。
【0058】
本発明による有意量の炭化水素油の存在は、増粘組成物の化粧学的な品質:皮膚に対する心地よい感触、ケア、光沢および保護に寄与する。
【0059】
本発明による増粘組成物の炭化水素油は、好ましくは、炭化水素油の総重量に対して、90重量%以上、好ましくは95重量%以上、有利には98重量%以上の含有量のイソパラフィン系化合物を含む。
【0060】
一実施形態によれば、本発明により使用される炭化水素油に存在するイソパラフィン系化合物は、12個~30個の炭素原子、好ましくは13個~19個の炭素原子、より好ましくは14個~18個の炭素原子を含有する。
【0061】
本発明による増粘組成物の炭化水素油は、好ましくは10重量%以下、優先的には5重量%以下、有利に2重量%以下の含有量のノルマルパラフィンを含む。
【0062】
本発明による増粘組成物の炭化水素油は、有利には、大部分がイソパラフィンであり、ノルマルパラフィンは少量である。これらのイソパラフィンは、有利には、非環状イソパラフィンである。好ましくは、増粘組成物の炭化水素油は、少なくとも12:1、優先的には15:1、より優先的には20:1のイソパラフィン対ノルマルパラフィンの質量比を有する。さらにより有利には、本発明による増粘組成物の炭化水素油は、ノルマルパラフィンを含まない。
【0063】
一実施形態によれば、本発明による炭化水素油は、好ましくは、90重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィン、および0%~10%の範囲の含有量のノルマルパラフィンを含み、優先的には95%~100%のイソパラフィンおよび0%~5%のノルマルパラフィンを含み、より優先的には98%~100%のイソパラフィンおよび0%~2%のノルマルパラフィンを含む。
【0064】
一実施形態によれば、本発明による増粘組成物の炭化水素油は、好ましくは、90重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンと、0%~10%の範囲の含有量のノルマルパラフィンと、を含み、優先的には12個~30個の炭素原子、好ましくは13個~19個の炭素原子、より好ましくは14個~18個の炭素原子を含むアルカンの中から選択されるイソパラフィンを95%~100%含む。
【0065】
一実施形態によれば、本発明により使用される炭化水素油は以下:
-炭化水素油の総重量に対して、15個の炭素原子を有するイソパラフィンおよび16個の炭素原子を有するイソパラフィンを合計で80重量%~98重量%の範囲の量で、または
-炭化水素油の総重量に対して、16個の炭素原子を有するイソパラフィン、17個の炭素原子を有するイソパラフィン、および18個の炭素原子を有するイソパラフィンを合計で80重量%~98重量%の範囲の量で、または
-炭化水素油の総重量に対して、17個の炭素原子を有するイソパラフィン、および18個の炭素原子を有するイソパラフィンを合計で80重量%~98重量%の範囲の量で含む。
【0066】
本発明による増粘組成物の炭化水素油は、好ましくは1重量%以下、優先的には0.5重量%以下、より優先的には100重量ppm以下の含有量のナフテン系化合物を含む。
【0067】
別の好ましい実施形態によれば、本発明による増粘組成物の炭化水素油は、90重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンと、0重量%~10重量%の範囲の含有量のノルマルパラフィンと、1重量%以下の含有量のナフテンとを含む。優先的には、炭化水素油は、95重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンと、0%~5%の範囲のノルマルパラフィンと、0.5重量%以下の含有量のナフテンとを含む。より優先的には、炭化水素油は、98重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンと、0%~2%の範囲のノルマルパラフィンと、100重量ppm以下の含有量のナフテンとを含む。
【0068】
本発明による増粘組成物に使用される炭化水素油は、有利には芳香族化合物を含まない。例えば、芳香族化合物の含有量は、例えばUV分光法によって測定される、500重量ppm以下、好ましくは300重量ppm以下、優先的に100重量ppm以下、より優先的に50重量ppm以下、有利には20重量ppm以下であることが意図される。
【0069】
炭化水素油中のイソパラフィン、n-パラフィン、ナフテンおよび/または芳香族化合物の重量による含有量は、当業者に周知の方法に従って決定され得る。非限定的な例として、ガスクロマトグラフィーを含む方法を挙げることができる。
【0070】
別の好ましい実施形態によれば、本発明による増粘組成物の炭化水素油は、90重量%~100重量%の含有量のイソパラフィンと、0重量%~10重量%の含有量のノルマルパラフィンと、1重量%以下の含有量のナフテンと、500重量ppm以下の含有量の芳香族化合物とを含む。優先的には、炭化水素油は、95重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンと、0%~5%のノルマルパラフィンと、0.5重量%以下の含有量のナフテンと、300重量ppm以下、好ましくは100重量ppm未満、優先的には50重量ppm未満、有利には20重量ppm未満の含有量の芳香族化合物とを含む。優先的には、炭化水素油はまた、95重量%~100重量%の含有量のイソパラフィンと、0%~5%のノルマルパラフィンと、100重量ppm以下の含有量の芳香族化合物と、を含む。より優先的には、炭化水素油は、98重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンと、0%~2%のノルマルパラフィンと、100重量ppm以下の含有量のナフテンと、100重量ppm以下の含有量の芳香族化合物と、を含む。
【0071】
また、本発明による増粘組成物において実施される炭化水素油は、好ましくは非常に低い含有量の硫黄化合物を有し、典型的には5重量ppm以下、優先的には3重量ppm以下、より優先的には0.5重量ppm以下であり、すなわち、従来の低硫黄分析器を用いて検出することができないほど低いレベルである。
【0072】
また、本発明による増粘組成物において実施される炭化水素油は、好ましくは、標準EN ISO2719に従って、110℃以上、優先的には120℃以上、より優先的には140℃以上の引火点を有する。一方で、典型的には110℃超の高い引火点は、炭化水素油の過敏な引火性を回避することにより、特に、貯蔵および輸送の間の安全性の問題を克服することを可能とする。
【0073】
また、炭化水素油は、好ましくは20℃で0.01kPa以下の蒸気圧を有する。
【0074】
一実施形態によれば、好ましくは、本発明による増粘組成物において実施される炭化水素油はまた、標準EN ISO 2719に従って110℃以上の引火点、および20℃で0.01kPa以下の蒸気圧を有する。優先的には、炭化水素油は、120℃以上の引火点、および20℃で0.01kPa以下の蒸気圧を有する。より優先的には、炭化水素油は、130℃以上の引火点、20℃で0.01kPa以下の蒸気圧を有する。
【0075】
本発明による増粘組成物において実施される炭化水素油は、可燃性、においおよび揮発性の問題を克服することを可能とする沸点温度、引火点および蒸気圧を呈する。
【0076】
本発明による増粘組成物の炭化水素油は、加えて、好ましくは、標準EN ISO3104に従って40℃で5cSt以下、優先的には4cSt以下、より優先的には3cSt以下の動粘度を有する。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、炭化水素油は、以下:
-標準ASTM D86に従って230℃~340℃、好ましくは235℃~330℃、より優先的には240℃~325℃の範囲の沸点、および/または
-標準OECD306に従って測定される、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、優先的には少なくとも75%、更に優先的には少なくとも80%の28日目の生分解性、および/または
-標準EN ISO2719に従って110℃以上の引火点、を有する。
【0078】
炭化水素油を得る方法
【0079】
炭化水素油のかかる組成物を以下の方法で得ることができる。本発明による炭化水素油は、バイオマスの変換に由来する炭化水素留分である。
【0080】
「バイオマスの変換に由来する」という用語は、生物起源由来の原料から生成された炭化水素留分を指すと理解される。
【0081】
好ましくは、生物起源に由来する炭化水素留分は、水素化脱酸素(HDO:hydrodeoxygenation)、および異性化(ISO:isomerisation)の工程を含む方法によって得られる。水素化脱酸素(HDO)工程は、生物学的なエステルまたはトリグリセリドの構成要素の構造の分解、酸素化されたリンおよび硫黄の化合物の排除、ならびにオレフィン性結合の水素化をもたらす。その後、水素化脱酸素反応から生じる生成物を異性化する。分留工程は、好ましくは水素化脱酸素、および異性化の工程に続いて行われ得る。有利な方法では、次いで、本発明による所望の炭化水素油の規格を得るため、目的の留分を水素化処理工程の後続いて、蒸留工程に供する。
【0082】
植物油、動物脂肪、魚油およびそれらの混合物からなる群から選択される、バイオマスまたは生物起源の原料としても知られる生物学的供給原料に対して、このHDO/ISO法を実施する。適切な生物起源の原料は、例えば、菜種油、キャノーラ油、トール油、ヒマワリ油、ダイズ油、ヘンプ油(hemp oil)、オリーブ油、アマニ油、カラシ油、ヤシ油、落花生油、ヒマシ油、ヤシ油、獣脂等の動物脂肪、再利用された食用脂肪(dietary fat)、遺伝子操作に由来する原料、ならびに藻類および細菌等の微生物によって産生された生物学的原料である。生物学的原料から得られた縮合生成物、エステルまたは他の誘導体も原料として役立ち得る。
【0083】
好ましくは、生物起源の原料は、エステルまたはトリグリセリド誘導体である。この材料を、構成成分であるエステルまたはトリグリセリドの構造を分解し、酸素化されたリンおよび硫黄化合物を除去するために、まず水素化脱酸素(HDO)工程、また同時にオレフィン結合の水素化に供する。生物起源の原料の水素化脱酸素(HDO)のこの工程の後、そのようにして得られた生成物の異性化を行って、炭化水素鎖の分岐を導き、低温でのパラフィンの特性が改善される。
【0084】
HDO工程中、水素および生物学的起源の原料を、並流または向流方式で、同時に水素化脱酸素触媒床を通過させる。HDO工程の間、気圧および温度は、それぞれ20bar~150bar、および200℃~500℃である。従来知られている水素化脱酸素触媒をこの工程の間に使用する。HDO工程の前に二重結合の二次反応を防止するため、任意に、生物起源の原料を穏やかな条件下で予備水素化に供することができる。水素化脱酸素工程の後、反応から生じる生成物を異性化工程(ISO)に供し、水素および生成物、ならびに必要に応じてn-パラフィンの混合物を、並流または向流方式で同時に異性化触媒床を通過させる。ISO工程の間、気圧および温度は、それぞれ20bar~150bar、および200℃~500℃である。従来知られている異性化触媒をこの工程の間に使用する。
【0085】
また、追加の二次的方法を実施してもよい(中間混合物、トラップ、または他の類似のいくつかの方法等)。
【0086】
目的の留分を得るため、HDO/ISO工程から生じる生成物を必要に応じて分留してもよい。
【0087】
様々なHDO/ISO方法が文献に記載されている。国際公開第2014/033762号は、予備水素化工程、水素化脱酸素(HDO)工程、および向流を流す異性化工程を含む方法が記載されている。欧州特許出願第1728844号は、植物および動物を起源とする化合物の混合物から炭化水素化合物を製造する炭化水素製造方法を記載する。この方法は、例えばアルカリ金属塩などの汚染物質を除去することを可能にする混合物を前処理するための前処理工程と、それに続く水素化脱酸素(HDO)工程および異性化工程とを含む。欧州特許出願公開第2084245号は、遊離脂肪酸、例えば、ヒマワリ油、菜種油、キャノーラ油、パーム油、またはトール油などの植物油と必要に応じて混合された脂肪酸のエステルを含有する生物起源由来の混合物の水素化脱酸素、続いて特定の触媒上での水素異性化によって、ガス油として、またはガス油組成物中で使用することができる、炭化水素混合物を製造するための炭化水素製造方法を記載している。欧州特許出願第2368967号は、かかる方法、およびこの方法によって得られる生成物を記載する。国際公開第2016/185046号の出願は、本発明により使用される炭化水素油を得る方法を記載し、該炭化水素油は、温度80℃~180℃、および気圧50bar~160barにおいて、脱酸素化および異性化された生物起源の供給原料の接触水素化の方法によって得られる。
【0088】
有利には、生物起源の原料は、標準EN ISO20846に従って、15ppm未満、好ましくは8ppm未満、好ましくは5ppm未満、より優先的には1ppm未満の硫黄を含む。理想的には、供給原料は、生物ベース源由来の原料として硫黄を含まない。
【0089】
水素化処理工程の前に、予備分留工程を行うことができる。水素化ユニットの入口におけるより狭い留分は、そのユニット出口で狭い留分を得ることを可能にする。実際、予備分留された留分の沸点は220℃~330℃に含まれるのに対し、予備分留されていない留分は、典型的には150℃~360℃に含まれる沸点を有する。
【0090】
次いで、HDO/ISO法からの脱酸素化および異性化された供給原料を水素化する。
【0091】
水素化ユニットで使用される水素は、典型的には高度精製水素である。「高度に精製された」という用語は、たとえ他のグレードも使用され得るとしても、例えば99%を超える純度を有する水素を指すと理解される。
【0092】
水素添加工程は、触媒を利用して行われる。典型的な水素化触媒はバルク触媒または担持触媒のいずれであってもよく、以下の金属:ニッケル、白金、パラジウム、レニウム、ロジウム、タングステン酸ニッケル、ニッケル-モリブデン、モリブデン、コバルト-モリブデンを含んでもよい。担体は、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナまたはゼオライトであってもよい。
【0093】
好ましい触媒は、比表面積が100m2/g~200m2/gで変化するアルミナ担持ニッケル系触媒またはニッケル系バルク触媒である。水素化条件は、典型的には以下の通りである:
-圧力:50bar~160bar、好ましくは80bar~150bar、より好ましくは90bar~120bar;
-温度:80℃~180℃、好ましくは120℃~160℃、より好ましくは150℃~160℃;
液体時空間速度(LHSV):0.2hr-1~5hr-1、好ましくは0.4hr-1~3hr-1、より好ましくは0.5hr-1~0.8hr-1;
-水素化処理(水素処理)速度:上記の条件に適合し、処理対象の供給原料の最大200Nm3/トンに及ぶことができる。
【0094】
リアクターの温度は、典型的には、約100barの気圧で150℃~160℃であり、一方、単位時間当たりの空間速度は、処理対象の供給原料の量および第1の水素化リアクターのパラメーターに従って適切に調整された処理速度で約0.6hr-1である。
【0095】
水素化は、1台または直列で数台のリアクターにおいて行われ得る。リアクターは、1つ以上の触媒床を含み得る。触媒床は、一般的には固定触媒床である。
【0096】
水素化法は、好ましくは2台または3台のリアクター、好ましくは3台のリアクターを含み、より優先的には直列の3台のリアクターにおいて行われる。
【0097】
第1のリアクターは、硫黄化合物のトラッピング、ならびに本質的に全ての不飽和化合物および最大約90%の芳香族化合物の水素化を可能とする。第1のリアクターに由来する生成物は、実質的に硫黄化合物を含んでいない。第2の段階では、すなわち第2にリアクターにおいて、芳香族の水素化が継続し、したがってこのため最大99%の芳香族が水素化される。
【0098】
第3のリアクターにおける第3の段階は、例えば300℃超の高い沸点を有する精製物の場合であっても、500ppm以下、好ましくは300ppm以下、優先的には100ppm以下、より優先的には50ppm以下、理想的には20ppm以下の芳香族含有レベルを得る手段を提供する、最終段階である。
【0099】
2台もしくは3台またはそれ以上の触媒床を含むリアクターを使用することもできる。触媒は、各リアクター内で可変または実質的に等しい量で存在してもよく、3台のリアクターについて、重量に応じた量は、例えば0.05~0.5/0.10~0.70/0.25~0.85、好ましくは0.07~0.25/0.15~0.35/0.4~0.78、より好ましくは0.10~0.20/0.20~0.32/0.48~0.70であり得る。
【0100】
また、3台のリアクターに代えて1台または2台の水素化リアクターを使用することもできる。
【0101】
第1のリアクターを、交互に運転される二重リアクターで構成することも可能である。この操作性の様式は、特に、第1のリアクターが最初に飽和された触媒を含む(実質的に全ての硫黄が触媒上におよび/または触媒中に捕捉される)場合に頻繁に変化させなければならない、触媒のローディングおよびアンローディングの促進を可能とする。
【0102】
2台、3台またはそれ以上の触媒床が設置される単一のリアクターを使用することもできる。
【0103】
各反応の温度および水熱平衡を制御するため、あるリアクターから別のリアクターまたはある触媒床から別の触媒床まで溶出物を冷却するように、リサイクリングシステムにまたはリアクター間にクエンチボックス(「反応のクエンチ」に関する)を挿入することが必要な場合がある。好ましい一実施形態によれば、冷却およびクエンチングの仲介は存在しない。
【0104】
一実施形態によれば、上記方法および/または分離された気体から生じる生成物は、少なくとも部分的には水素化リアクターのフィードシステムにおいて再利用される。この希釈は、制御される限度内で、特に第1の段階で上記反応の発熱性を維持するのに寄与する。さらに、再利用することは反応前の熱交換と並んで、より良好な温度制御を可能にするのに役立つ。
【0105】
水素化ユニットからの溶出物は、主に水素化生成物および水素を含む。フラッシュ分離器を使用して、溶出物を気相、主に残留水素、および液相、主に水素化炭化水素留分へと分離する。上記方法を、1台は高い気圧、1台は中間の気圧、そして1台は大気圧に非常に近い低い気圧で3台のフラッシュ分離器を使用して行うことができる。
【0106】
フラッシュ分離器の上部で収集される気体水素を、水素化ユニットの供給システム、またはリアクター間の水素化ユニットの様々な異なるレベルで再利用することができる。
【0107】
一実施形態によれば、最終生成物は、大気圧で分離される。次いで、最終生成物を真空分留ユニットに直接供給する。好ましくは、分留は、10mbar~50mbar、より優先的には約30mbarの気圧で行われる。
【0108】
分留は、様々な炭化水素流体を分留カラムから同時に取り出すことが可能であり、それらの沸点を予め決定することができるように行われ得る。
【0109】
したがって、初留点および終点を通して供給原料を適合させることにより、水素化リアクター、分離器および分留ユニットを、中間タンクを使用することを必要とせずに、直接に接続させてもよい。この水素化と分留の統合は、装置数の削減および省エネルギーの両方を合わせ持つ最適化された熱統合を可能とする。
【0110】
本発明の増粘組成物において実施される炭化水素油は、有利には、標準ASTM D86に従って測定される、230℃~340℃、好ましくは235℃~330℃、より優先的には240℃~325℃の範囲の蒸留範囲DR(℃単位)を有する炭化水素留分である。好ましくは、初留点と終点の違いは、80℃以下、好ましくは70℃以下、より優先的には60℃以下、有利には40℃~50℃である。炭化水素油は、上記に記載される範囲内に含まれる蒸留範囲の1つ以上の留分を含み得る。
【0111】
有利には、本発明の増粘組成物において実施される炭化水素油は、完全に飽和されている。好ましくは、炭化水素油の構成成分は、12個~30個の炭素原子、好ましくは13個~19個の炭素原子、より優先的には14個~18個の炭素原子を含むイソパラフィンの中から選択される。
【0112】
本発明による増粘組成物は、有利には、50重量%以下の含有量のイソヘキサデカンを含む。
【0113】
本発明による増粘組成物の炭化水素油は、理想的には、生物起源由来の原料の加工の結果として得られる。
【0114】
本発明による増粘組成物の炭化水素油は、典型的には、少なくとも90%の生体材料含有量を有する。この含有量は有利にはより高く、特に95%以上、好ましくは98%以上であり、有利には100%に等しい。
【0115】
特に高含有量の生体材料に加えて、本発明による増粘組成物の炭化水素油は、特に良好な生分解性を有する。有機化学物質製品の生物分解は、微生物の代謝活性による化学物質の複雑性の減少を指す。好気性条件下では、微生物は有機物質を転換し、二酸化炭素、水およびバイオマスに変換する。OECD306試験法は海水中の個々の物質の生分解性の評価に使用される。この方法によれば、炭化水素油は、28日目に少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より優先的には少なくとも80%の生物分解性を有する。
【0116】
ポリ(ファルネセン)ポリマー:
【0117】
本発明で実施されるポリ(ファルネセン)は、典型的には、部分的または完全に水素化されていてもよく、および/または特に鎖の末端で、例えばヒドロキシル基によって官能化されていてもよいファルネセンポリマーである。
【0118】
ファルネセンは、アルファ-ファルネセンおよびベータ-ファルネセンなどの異なる異性体の形態で存在する。ベータ-ファルネセンを、下記式(I)で表すことができる:
【化1】
【0119】
本発明によれば、ポリ(ファルネセン)は、10,000g/mol~120,000g/mol、好ましくは20,000g/mol~110,000g/mol、より好ましくは30,000g/mol~100,000g/mol、優先的には40,000g/mol~90,000g/mol、より優先的には50,000g/mol~80,000g/molの範囲の数平均モル質量を有する。一実施形態によれば、ポリ(ファルネセン)は、10,000g/mol~90,000g/mol、好ましくは20,000g/mol~80,000g/molの範囲の数平均モル質量を有する。数平均モル質量は、ポリスチレン標準を使用することにより、透過性ゲル上のクロマトグラフィー(「ゲル浸透クロマトグラフィー」)によって測定することができる。本発明で使用されるポリ(ファルネセン)は、25℃で20,000mPa.s~1,000,000mPa.s、好ましくは50,000mPa.s~800,000mPa.s、より好ましくは100,000mPa.s~600,000mPa.sの範囲の粘度を示し得る。
【0120】
典型的には、本発明で使用されるポリマーは、ベータ-ファルネセンのホモポリマーである。
【0121】
本発明に従って使用されるポリ(ファルネセン)は、式(II)を有するn個のモノマーおよび/または式(III)を有するm個のモノマーを含み得る。
【化2】
【化3】
【0122】
式中、nおよびmは互いに独立して、例えば40~600の範囲の整数である。
【0123】
特定の一実施形態によれば、本発明に従って使用されるポリ(ファルネセン)は、本明細書で上に定義される、式(II)を有するモノマー、および/または式(III)を有するモノマーからなる。
【0124】
本発明に従って使用されるポリ(ファルネセン)は、鎖末端で、例えば1つまたは2つのヒドロキシル官能基で官能化され得る。
【0125】
特定の一実施形態によれば、本発明に従って使用されるポリ(ファルネセン)は、部分的または完全に水素化されている。「部分的に水素化されたポリ(ファルネセン)」という用語は、少なくとも1つの不飽和を含むが、不飽和の一部が水素化されているポリ(ファルネセン)を指すために使用される。「完全に水素化されたポリ(ファルネセン)」という用語は、もはや不飽和を含まない飽和ポリ(ファルネセン)を指すために使用される。
【0126】
一実施形態により、本発明で使用されるポリマーは、完全に水素化されたポリ(ファルネセン)である。
【0127】
したがって、本発明の一実施形態によれば、本発明に従って使用されるポリ(ファルネセン)ポリマーは、式(II-2)を有するn個のモノマーおよび式(III-2)を有するm個のモノマーを含む:
【化4】
【化5】
【0128】
式中、nおよびmは、本明細書で上述したのと同じ意味を有する。
【0129】
特定の一実施形態によれば、本発明に従って使用されるポリ(ファルネセン)は、本明細書で上に定義される、式(II)を有するモノマー、および/または式(III)を有するモノマー、および/または式(II-2)を有するモノマー、および/または式(III-2)を有するモノマーからなる。
【0130】
本発明者らは、10,000g/mol~120,000g/mol、特に10,000g/mol~90,000g/molの範囲の数平均モル質量を有するポリ(ファルネセン)が、油、特に生物起源由来の油の光沢を増強するのに有効に役立つことを発見した。光沢の増強は、屈折率を増加させることによって評価することができる。
【0131】
ポリ(ファルネセン)ポリマーの製造方法:
【0132】
ポリ(ファルネセン)は、生物起源由来のファルネセンから得られる。ファルネセンは、昆虫もしくは植物から、または微生物を培養することによって得ることができる。生物起源由来のファルネセンは、例えば、Amyris社から市販されている。
【0133】
ポリ(ファルネセン)は、任意の公知の重合方法によって、例えば、得られるポリマーの分子量のより正確な制御を可能にするのに役立つアニオン重合によって得ることができる。重合は、可能な開始剤、モノマー、および可能な溶媒を順次添加して、バッチまたは連続プロセスで実施することができる。
【0134】
重合プロセス中の温度は、-80℃~80℃の範囲であり得る。
【0135】
ポリ(ファルネセン)は、国際公開第2018/052709号の5ページ3行目から6ページ17行目に記載されている方法によって得ることができる。
【0136】
増粘組成物:
【0137】
本発明の一実施形態によれば、本発明による増粘組成物は、増粘組成物の総重量に対して、
-10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、優先的には30重量%~70重量%、より優先的には40重量%~60重量%の生物起源由来の油(複数可)と、
-10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、優先的には30重量%~70重量%、より優先的には40重量%~60重量%の、10,000g/mol~120,000g/molの範囲の数平均モル質量を有するポリ(ファルネセン)ポリマー(複数可)と、
を含む。
【0138】
本発明の一実施形態によれば、本発明による増粘組成物は、増粘組成物の総重量に対して、
-10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、優先的には30重量%~70重量%、より優先的には40重量%~60重量%の上に定義される炭化水素油(複数可)と、
-10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、優先的には30重量%~70重量%、より優先的には40重量%~60重量%の、10,000g/mol~120,000g/molの範囲の数平均モル質量を有するポリ(ファルネセン)ポリマーと、
を含む。
【0139】
本発明の一実施形態によれば、本発明による増粘組成物は、増粘組成物の総重量に対して、
-10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、優先的には30重量%~70重量%、より優先的には40重量%~60重量%の生物起源由来の油と、
-10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、優先的には30重量%~70重量%、より優先的には40重量%~60重量%の、40,000g/mol~90,000g/molの範囲の数平均モル質量を有するポリ(ファルネセン)ポリマーと、
を含む。
【0140】
本発明の一実施形態によれば、本発明による増粘組成物は、増粘組成物の総重量に対して、
-10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、優先的には30重量%~70重量%、より優先的には40重量%~60重量%の上に先に定義される炭化水素油(複数可)と、
-10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、優先的には30重量%~70重量%、より優先的には40重量%~60重量%の、40,000g/mol~90,000g/molの範囲の数平均モル質量を有するポリ(ファルネセン)ポリマーと、
を含む。
【0141】
本発明の一実施形態によれば、増粘組成物は、40℃で測定した(例えば、標準ISO3104に従って測定した)300mPa.s~1000mPa.sの範囲の粘度を有する。
【0142】
したがって、本発明による増粘組成物は、好ましくは単一の脂肪相を含む。
【0143】
本発明による増粘組成物は、好ましくは非水性である。換言すれば、本発明による増粘組成物は、好ましくは10重量%未満の水、またはさらに5重量%未満の水、理想的には1重量%未満の水を含む。
【0144】
本発明の一実施形態によれば、増粘組成物は、上で定義した1種以上の炭化水素油および上で定義した1種以上のポリ(ファルネセン)ポリマーからなる。
【0145】
増粘組成物の調製:
【0146】
増粘組成物は、好ましくは周囲温度で、生物起源由来の1種以上の油とポリ(ファルネセン)ポリマーとを単に混合することによって調製され得る。
【0147】
添加剤:
【0148】
本発明による増粘組成物はまた、考慮される対象分野、特に化粧品分野で通常使用される任意のアジュバントまたは添加剤と混合されてもよい。当業者は、本発明による増粘組成物に本質的に付随する有利な特性が想定される可能性のある添加によって変更されないまたは実質的に変更されないことを確実にするように、本発明による組成物の任意の添加剤(複数可)を選択する際に注意を払うことが理解される。
【0149】
(これらのアジュバントの水溶性または脂溶性の性質に応じて)含まれる可能性が高い従来のアジュバントのうち、特に、アニオン性発泡界面活性剤(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルリン酸ナトリウム、トリデシルエーテル硫酸ナトリウム等)、両性界面活性剤(アルキルベタイン、ココアンホ二酢酸二ナトリウム等)、またはHLBが10超の非イオン性界面活性剤(例えば、POE/PPG/POE、アルキルポリグルコシド、ポリグリセリル-3ヒドロキシラウリルエーテル);塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤;金属イオン封鎖剤(EDTA);酸化防止剤;香料;染料/着色剤(可溶性染料、顔料および真珠光沢染料(nacre)等);艶消し充填剤、皮膚テンソル/引き締め剤、美白または角質除去充填剤;日焼け止めフィルタ;親水性または親油性にかかわらず、皮膚の化粧品特性を向上させる効果を提供する化粧品または皮膚科学的有効成分および薬剤;電解質を挙げることができる。これらの様々なアジュバントの量は、検討される分野で従来使用されているものであり、例えば、組成物の総重量の0.01%~20%である。本発明の増粘組成物において使用され得る有効成分として、ビタミンA(レチノール、すなわちベータ-カロテン)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB5(パンテノール)、ビタミンB3(ナイアシンアミド)等の水溶性または脂溶性のビタミン、これらのビタミンの誘導体(特にエステル)、およびそれらの混合物;防腐剤;2,4,4´-トリクロロ-2´-ヒドロキシジフェニルエーテル(またはトリクロサン)、3,4,4´-トリクロロカルバニリド(またはトリクロカルバン)等の抗菌性有効成分;抗脂漏薬;過酸化ベンゾイル、ナイアシン(vit.PP)等の抗菌剤;カフェイン等の痩身剤;蛍光増白剤、および組成物の最終目的に適した任意の有効成分、ならびにそれらの混合物の例を挙げることができる。
【0150】
増粘組成物は、例えば、特に生物起源由来の油が炭化水素油、すなわち低極性の油である場合、極性剤をさらに含んでもよい。極性剤は、トリグリセリドの中から選択されてもよい。上記極性剤は、増粘組成物の総重量に対して、1重量%~30重量%、または5重量%~25重量%の範囲の量で添加されてもよい。
【0151】
別の実施形態によれば、本発明の増粘組成物は、トリグリセリドを含まないか、または増粘組成物の総重量に対して0.01重量%未満の量のトリグリセリドを含む。
【0152】
別の実施形態によれば、本発明の増粘組成物は、極性剤を含まないか、または増粘組成物の総重量に対して0.01重量%未満の量の極性剤を含む。
【0153】
好ましい一実施形態によれば、本発明の増粘組成物は、本質的に生物ベース源に由来し、換言すれば、増粘組成物の総重量に対して、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、または実際には少なくとも99重量%の生物起源由来の成分を含む。
【0154】
本発明の一実施形態によれば、本発明による増粘組成物は、標準ASTM D1218に従って、例えば25℃で測定して、少なくとも1.445、好ましくは少なくとも1.450の屈折率を有する。
【0155】
本発明はまた、化粧品組成物における、特に増粘剤、感覚剤、膜形成剤、テクスチャ剤、耐水性向上(「防水」)剤、保湿/水和剤、コンディショナー、粘性油、または第2の皮膚効果を提供する作用物質として、若しくは実際には光沢向上剤として、または汚染防止剤としての、本発明による増粘組成物の使用に関する。
【0156】
化粧品組成物:
【0157】
本発明の目的はまた、本発明による増粘組成物と、
-適切な場合には、増粘組成物のものとは異なる植物油、植物バター、エーテルおよび脂肪アルコール、油性エステル、アルカンおよびシリコーン油、好ましくは油性エステルから選択される少なくとも1種の脂肪物質、
および/または
-上述の添加剤の中から、好ましくはアニオン性発泡界面活性剤(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルリン酸ナトリウム、トリデシルエーテル硫酸ナトリウム等)、両性界面活性剤(例えば、アルキルベタイン、ココアンホ二酢酸二ナトリウム)またはHLBが10超の非イオン性界面活性剤(例えば、POE/PPG/POE、アルキルポリグルコシド、ポリグリセリル-3ヒドロキシラウリルエーテル)から選択される少なくとも1種の添加剤と、を含む化粧品組成物に関する。
【0158】
脂肪物質は、極性の低い脂肪物質から選択されることが好ましい。
【0159】
植物油の例としては、特に、小麦胚芽、ヒマワリ、ブドウ種子、ゴマ、トウモロコシ、アンズ、ヒマシ、シア、アボカド、オリーブ、ダイズ、スイートアーモンド、パーム、菜種、綿実、ヘーゼルナッツ、マカダミア、ホホバ、アルファルファ、ケシ、カボチャ、ゴマ、スクアッシュ、菜種、クロフサスグリ、マツヨイグサ、キビ、オオムギ、キノア、ライムギ、ベニバナ、アサ、パッションフラワー、ローズヒップまたはツバキの油が挙げられる。
【0160】
植物バターは、植物油と同じ特性を有する脂肪物質である。両者の違いは、バターが周囲温度で固体形態であるという事実にある。また、植物油とは異なり、バターが抽出される原料(果肉、種子またはアーモンド)を、脂肪の抽出のため細かく挽いた後、加熱する。植物油と同様に、より良好な保存を提供し、臭気を中和し、色およびその稠度を高めるため、バターを精製され得る。栄養があり、酸化防止剤が豊富であるため、植物バターの化粧品特性は、皮膚の弾力性を改善するのに役立ち、表皮上に保護膜を残すことによって有害な環境要素から保護し、それによって脱水を減少させ、皮膚の天然の脂質膜(hydrolipidic film)を再生することによって皮膚を修復し、鎮静させる。植物性バターの例は、特にシアバター、カカオバター、マンゴーバター、ショレア(shorea)バター、さらにはオリーブバターである。
【0161】
脂肪族アルコールおよびエステルは、顕著な特性、特に膜形成、エモリエント、保湿、軟化および保護の特性を有する長鎖ワックス状脂肪物質である。それらの脂肪族アルコールおよびエステルは、保湿油および乳化剤として作用する。脂肪族アルコールまたはエーテルの例は、以下:セチルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール、セテアリルアルコール、ジカプリリルエーテル、ステアリルエーテル、またはオクチルドデカノール(それらの国際命名化粧品成分(INCI)名によって識別される)である。
【0162】
油性エステルまたはエステル化油は、脂肪酸(より長鎖の酸、例えばステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等)とアルコール(脂肪族アルコールまたはグリセロール等の多価アルコール)の間の反応の生成物である。これらの油は、イソプロピルパルミテートの場合のように石油化学製品に由来する物質を含む。油性エステルの例は、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、カプリル酸カプリン酸ヤシアルキル、エルカ酸オレイル、リノール酸オレイル、オレイン酸デシル、さらにはPPG-3ベンジルエーテルミリステート(それらのINCI名によって識別される)である。
【0163】
シリコーンオイルまたはポリシロキサンという用語は、少なくとも1つのケイ素原子を含む油、特に少なくとも1つのSi-O基を含む油を指すことが理解される。シリコーンオイルとして、特にフェニルプロピルジメチルシロキシシリケート、ジメチコン、またはシクロペンタシロキサン(それらのINCI名によって識別される)を挙げることができる。
【0164】
この化粧品組成物は、生理学的に許容可能な媒質、すなわち、いかなる有害な副作用も示さず、特に、使用者にとって赤み、発赤、緊張または刺すような感覚などの許容できない効果を生じない媒質を含む。この媒質は、任意に水および/または前述の増粘組成物に加えて脂肪性物質として少なくとも1種の油を含む。
【0165】
一実施形態によれば、化粧品組成物は、組成物の総重量に対して、1%~80%、好ましくは5%~70%、有利には10重量%~50重量%の範囲の上記の増粘組成物の含有量を有する。
【0166】
一実施形態によれば、化粧品組成物は、組成物の総重量に対して、1重量%~50重量%、好ましくは2重量%~40重量%、有利には3重量%~30重量%の範囲の上記の増粘組成物の含有量を有する。
【0167】
したがって、本発明による化粧品組成物は、化粧品組成物の総重量に対して、0.1重量%~15重量%のポリ(ファルネセン)、好ましくは0.5重量%~10重量%のポリ(ファルネセン)、有利には1重量%~5重量%のポリ(ファルネセン)を含むことができ、当該ポリ(ファルネセン)は、好ましくは20,000g/mol~90,000g/molの範囲の数平均モル質量を有する。
【0168】
したがって、本発明による化粧品組成物は、必要に応じて導入される添加剤に応じて、および/または必要に応じて導入される水相に応じて、無水組成物、油中水型(W/O)エマルジョン、水中油型(O/W)エマルジョン、もしくは多重エマルジョン(特にW/O/WまたはO/W/O)などのエマルジョン、ナノエマルジョン、または分散液であってもよい。
【0169】
本発明の化粧品組成物は、例えば、リップケア組成物(唇用のリップグロスまたは保湿スティックなど)、マスク組成物、修復用バーム組成物、顔ならびに手用のスクラブおよび/または角質除去組成物(角質除去粒子を含有する場合)、メイクアップ組成物、シェービング組成物、アフターシェーブバーム組成物、付香された組成物、ワイプ用組成物、メイクアップリムーバ組成物または皮膚および唇用クレンジング組成物、日焼け止め組成物(UVに対する保護)、または日焼け後の組成物、皮膚マッサージ組成物、シャワー(ケア)バーム用組成物、制汗剤組成物を構成し得る。
【0170】
本発明による組成物は、(i)抗UVAおよび/または抗UVBフィルタなどの少なくとも1つの日焼け止めフィルタと、(ii)本発明による少なくとも1つの増粘組成物とを、好ましくは日焼け止め組成物の総重量に対して1重量%~50重量%、好ましくは2重量%~40重量%、有利には3重量%~30重量%の範囲の量で含む、局所塗布のための日焼け止め組成物であり得る。
【0171】
本発明の組成物は、有利には、4週間以上、有利には6週間以上の持続時間にわたって安定性を示すことを特徴とし、安定性は、周囲温度、40℃および50℃で撹拌せずに保存した後に評価され、色および外観の視覚的評価、ならびに嗅覚評価、および/または粘度の測定に対応する。
【0172】
増粘組成物の使用:
【0173】
本発明の目的はまた、皮膚、唇または皮膚付属器(爪、頭皮、および毛髪を含む)への局所塗布のための、本明細書で上に定義される組成物の美容的使用に関する。
【0174】
本発明の目的はまた、スキンケア製品(セラム、クリーム、バームなど)として、衛生製品として、日焼け止め/日焼け後の製品として、化粧品として、メイクアップリムーバ製品として、付香された製品として、デオドラント製品として、リップグロスまたは唇用の保湿スティックなどのリップケア製品としての、上で定義した化粧品組成物の美容的使用に関する。
【0175】
本発明による増粘組成物は、それを含有する化粧品組成物の色の増強された知覚を得る手段を提供し、当該化粧品組成物に使用される顔料の量を減らすことを可能にする。
【0176】
本発明による化粧品組成物は、改善された水和特性または保湿特性、ならびに汚染防止特性および向上した光沢を示す。
【0177】
本発明による増粘組成物および本発明による化粧品組成物は、特に局所塗布のために、特に皮膚または毛髪のためのケア製品として、化粧品として、毛髪製品として、メイクアップリムーバ製品として、付香された製品として、日焼け止め製品として、リップグロスまたは唇用の保湿スティックなどのリップケア製品として使用され得る。
【0178】
本発明の目的は、実際に、本明細書で上に定義される組成物の皮膚、唇および/または皮膚付属器に塗布する少なくとも1つの塗布工程を含む、皮膚、唇または皮膚付属器を処置するための美容処置方法にも関する。
【0179】
本発明の組成物はまた、本明細書で上述したもの以外の他の構成成分または相を含む化粧品組成物の処方に使用することができる。これは、特にケア用、衛生用、またはメイクアップ用の組成物の処方となり得る。
【0180】
美容処置方法:
【0181】
最後に、本発明はまた、本発明による組成物を皮膚、唇または皮膚付属器に、好ましくは広げることによって塗布する少なくとも1つの塗布工程を含む美容処置方法を包含する。
【実施例】
【0182】
本明細書の残りの部分において、実施例は本発明の例示として与えられており、何らその範囲を限定することを意図するものではない。
【0183】
実施例1:増粘組成物の調製:
【0184】
実施例1~5で使用されるポリ(ファルネセン)は、完全に水素化され、ヒドロキシル基で官能化されている。ポリ(ファルネセン)は、71,000g/molの数平均モル質量を有する。国際公開第2018/052709号に記載されている操作方法に従って調製した。
【0185】
表1は、実施例で使用した炭化水素油の物理化学的特性をまとめたものである。
【表1】
【0186】
上記の特性を測定するために、以下の標準および方法を使用した:
-引火点:EN ISO2719
-15℃での密度:EN ISO1185
-40℃での粘度:EN ISO3104
-アニリン点:EN ISO2977
-沸点:ASTM D86
-生分解性:OECD306法
-20℃における屈折率:ASTM D1218
-蒸気圧:当業者に周知の方法に従って計算される。
【0187】
試験した増粘組成物を以下の表2に示す。パーセンテージは、増粘組成物の総重量に対する重量パーセントである。
【表2】
【0188】
実施例2:増粘組成物と脂肪物質との混和性の評価
【0189】
試験した脂肪性物質は、以下の通りである:
-植物油:20℃で0.91の密度を有し、
植物油の総重量に対して
〇58.0重量%~64.0重量%のガドレイン酸(C20:1)
〇10.0重量%~14.0重量%のエルカ酸(C22:1 d13)
〇3.0重量%~6.0重量%のドコセン酸(C22:1 d 5)
〇15.0重量%~21.0重量%のドコサジエン酸(C22:2)を含むメドウフォーム油。
-植物ワックス:ホホバ油。
-油性エステル:イソノニルイソノナノエート(INCI名による)、市販品。
-シリコーンオイル:シクロペンタシロキサン(INCI名による)、市販品。
-スクアラン(INCI名による)。
【0190】
操作は、重量パーセンテージ:10%、25%、50%、75%および90%を増加させて試験対象の脂肪物質を増粘組成物に添加しながら進行させることによる、増粘組成物(実施例1で調製された組成物1および組成物2)と脂肪物質との混和性の観察で構成される。これらの操作を継続して行う。混合の観察は、連続する添加の場合の間に行われる。添加を同じ容器で行う。
【0191】
実験を、45gのベースラインから開始し、450gで終了する増粘組成物の量で行う。実際、添加を、ビーカー内に存在する45gをベースにして行う:
-10%:5gの試験対象の脂肪物質添加。
-25%:先に得られた混合物において10gの試験対象の脂肪物質添加
((5+10)/(45+5+10)=0.25)。
-50%:先に得られた混合物において30gの試験対象の脂肪物質添加。
-75%:先に得られた混合物において90gの試験対象の脂肪物質添加。
-90%:先に得られた混合物において270gの試験対象の脂肪物質添加。
【0192】
最終混合物をガラス瓶に保管し、J+1に観察する。混合物は、沈降物を目視で観察したときに非混和性であると言われる。
【0193】
本発明による増粘組成物は、シリコーンオイルが50重量%までの範囲の量で存在する場合に、シリコーンオイルと混和性である。
【0194】
脂肪物質が90重量%までの範囲の量で存在する場合、本発明による増粘組成物は、試験した他の脂肪物質と混和性である。
【0195】
実施例3:本発明による増粘組成物を含む化粧品組成物の官能分析。
【0196】
4種類の化粧品組成物を調製し、試験した。化粧品組成物を以下の表3に記載する。パーセンテージは、化粧品組成物の総重量に対する重量パーセントである。
【表3】
【0197】
組成物を、専門家(5人)で構成された官能パネルによって、官能および感覚の観点から評価した。
【0198】
官能および感覚分析を以下のように行った:
-ガラスピペットを使用することによる、評価対象の製品の液滴の皮膚(前腕の下側)への堆積。
-指を使用することによる製品の塗布:皮膚上の外観(光沢)、塗布時の触感(感覚)、および塗布後の最終的な感触の評価。
【0199】
0~3.5の範囲の評価スコアを、皮膚の光沢および脂肪の2つの基準に対して与える。評価が高いほど、感覚が良好に感じられる。評価スコアを以下の表4に示す。
【表4】
【0200】
表4に示すように、本発明による増粘組成物を含む化粧品組成物は、皮膚および脂肪の光沢に関して非常に満足できるスコアを示す。
【0201】
実施例4:本発明による増粘組成物を含むエマルジョンの形態の化粧品組成物の官能分析
【0202】
エマルジョン形態の3種類の化粧品組成物を調製し、試験した。エマルジョンの組成を以下の表5に記載し、百分率をエマルジョンの総重量に対する重量百分率として表す。
【表5】
【0203】
各エマルジョンを以下の様式で調製する:
-成分を秤量し、均質相が得られるまで成分を撹拌および75℃での加熱下に置くことによる相Aの調製。
-相Bの調製:
〇相Bの水を秤量する。
〇撹拌せずに、Carbopol Ultrez21に振りかけ、撹拌せずに10分間水和させたままにする。
〇撹拌下に置き、75℃で加熱する。加熱中、激しく撹拌しながら、Rhodicare-tのプレミックスをグリセリンに注ぐ。
〇75℃で加熱し続けながら、均質相が得られるまで撹拌下で維持する。
-75℃で、激しく撹拌しながら、相Aを相Bに注ぐことによってエマルジョンを調製する。
-撹拌速度を維持しながら冷却を開始する。72℃で、9500rpmに設定したturrax(登録商標)分散機を用いて30秒間均質化し、中程度の撹拌下で冷却を継続する。
-50℃で、撹拌しながら、相Cの成分を連続的に導入し、中程度の撹拌下で冷却を継続する。
-30℃にて、撹拌しながら、相Dの構成成分を連続的に導入する。
-pHを測定し、必要に応じて調整する:5.00<pH<6.00。
【0204】
組成物を、専門家(5人)で構成された官能パネルによって、官能および感覚の観点から評価する。
【0205】
官能および感覚分析を以下のように行った:
-ガラスピペットを使用することによる、評価対象の製品の液滴の皮膚(前腕の下側)への堆積、および液滴の広がりの分析。
-指を使用することによる製品の塗布:皮膚上の広がりおよび外観(光沢)の評価。
【0206】
皮膚の光沢および広がりの2つの基準について、0~3.5の範囲の評価スコアが与えられる。評価が高いほど、感覚が良好に感じられる。評価スコアを以下の表6に示す。
【表6】
【0207】
表6に示すように、本発明による増粘組成物を含むエマルジョンは、皮膚の光沢および広がりに関して非常に満足できるスコアを示す。
【0208】
実施例5:屈折率の決定
【0209】
本発明による増粘組成物1~増粘組成物4(上記表2に記載)の屈折率を決定し、炭化水素油(上記表1に記載)の屈折率と比較した。
【0210】
屈折率を標準ASTM D1218に従って25℃で測定し、以下の表7に示す。
【表7】
【0211】
組成物の屈折率は、上記組成物の光沢の指標である。したがって、組成物の屈折率が高いほど、光沢度が高い組成物である。表7に示すように、本発明による増粘組成物は、高い屈折率を示し、これは、本発明による増粘組成物が非常に高い光沢を有することを証明している。
【0212】
実施例6:他の増粘組成物の調製:
【0213】
残りの実施例で使用されるポリ(ファルネセン)は、完全に水素化されており、ヒドロキシル基で官能化されていない。ポリ(ファルネセン)は、71,000g/molの数平均モル質量を有する。官能基の導入を除いて、特許文献である国際公開2018/052709号に記載されている操作方法に従って調製した。
【0214】
残りの実施例で使用される生物起源由来の油は、実施例1に記載の炭化水素油である。
試験した増粘組成物を以下の表8に示す。パーセンテージは、増粘組成物の総重量に対する重量パーセントである。
【表8】
【0215】
実施例7:メイクアップ製品または日焼け止め製品
【0216】
この実施例では、メイクアップまたは日焼け止め用途を意図した組成物の耐水性(防水性)および着色顔料分散特性を評価した。
【0217】
評価した組成物を以下の表9に記載する。パーセンテージは、組成物の総重量に対する重量パーセントである。
【表9】
【0218】
組成物実施例7.1、実施例7.2および実施例7.3を、CMC許容性システムに従って、比色分析による着色顔料分散特性に関して評価する。
【0219】
以下の表10に示すように、本発明による組成物実施例7.1および実施例7.2は、比較組成物実施例7.3よりも安定した色(dE-CMCの値を参照されたい)を示す。
【表10】
【0220】
本発明による増粘組成物は、特に色を維持するための良好な比色特性を有することを可能にし、例えばメイクアップ組成物において満足がゆくように使用することを可能にする。
【0221】
また、実施例7.1および実施例7.2(基準C)では、より飽和した/より強い色が観察されることに留意すべきである。これにより、色の知覚が向上し、化粧品組成物に使用される顔料の含有量レベルを低下させることが可能になり得る。
【0222】
組成物実施例7.4、実施例7.5、実施例7.6を、11名のボランティア参加者に対する臨床試験を通して耐水性に関して評価する。各組成物を各ボランティアのまつげに塗布し、次いで5分間乾燥させた後、顔を蒸気(Vapozoneから)に10分間曝露する。
【0223】
0~4の評価スコアを蒸気への10分間の曝露後の組成物のにじみ跡に基づいて専門家が割り当てる。スコアを以下とおり割り当てる:
-4 にじみがない場合、
-3 ごくわずかなにじみがある場合、
-2 わずかににじんでいる場合、
-1 中程度のにじみがある場合、
-0 著しくにじんでいる場合。
【0224】
残留率は、以下のように帰属されるスコアの平均から計算される:残留率%=スコアの平均/4*100。この割合は、耐水性を定量化する。
【0225】
本発明による組成物実施例7.4は、比較組成物の実施例7.5および実施例7.6よりもはるかに高い耐水性を示すことが観察された。実際、組成物実施例7.4は75%を超える残留性を示すが、組成物実施例7.5および実施例7.6はそれぞれ約45%および約52%の残留性しか示さない。
【0226】
本発明による増粘組成物は、化粧品組成物または日焼け防止組成物などの組成物の耐水特性を改善する手段を提供する。
【0227】
実施例8:毛髪製品
【0228】
この実施例では、毛髪に塗布することを意図した組成物の官能特性を評価した。
【0229】
評価した組成物を以下の表11に記載する。パーセンテージは、組成物の総重量に対する重量パーセントである。
【表11】
【0230】
組成物実施例8.1、実施例8.2、実施例8.3を、3人のボランティア参加者に対する臨床試験を通して、栄養を与えられた毛髪のしなやかさ、光沢、感覚に関して評価する。各組成物を各ボランティアの毛髪に塗布し、次いで乾燥させる。
【0231】
1~5の範囲の評価スコアを各基準(乾燥後の毛髪のしなやかさおよび栄養を与えられた毛髪の触感)に対して与える。評価スコアが高いほど、特性が良好である。
【0232】
【0233】
本発明による増粘組成物は、ヘアマスクなどの毛髪組成物の栄養特性を改善する手段を提供する。
【0234】
実施例9:スキンケア組成物
【0235】
この実施例では、本発明による増粘組成物の保湿効果を誘導する膜形成特性および汚染防止特性を評価した。
【0236】
評価した組成物を以下の表13に記載する。パーセンテージは、組成物の総重量に対する重量パーセントである。
【表13】
【0237】
11人のボランティア参加者に対する臨床試験中に、2時間の持続時間にわたる不感水分喪失(IWL)(すなわち、容認されている用語によれば「経皮水分喪失量(Transepidermal Water Loss)」またはTEWL)を評価することによって膜形成特性を評価した。不感水分喪失(IWL)は、皮膚/外部環境の交換を定量化するために最も一般的に使用される測定値である。この測定は、皮膚を通して蒸発した水の量を評価することを可能にし、皮膚表面の1時間当たりおよび1m2当たりのグラム数で表される。測定はTewameter TM300プローブ(Courage&Khazaka GmbH)を用いて行う。
【0238】
この研究は、手への組成物の塗布前(T0)および塗布後2時間(T2h)の処理対象領域および対照領域に対してIWLの速度を測定することにあった。
【0239】
組成物を、処理対象領域に2mg/cm2の投与量で16cm2の大きさの領域にわたって塗布し、16cm2の大きさの対照領域(組成物でコーティングされていない)の範囲も定めた。
【0240】
以下の表14は、試験した2つの組成物(実施例9.1および実施例9.2)のそれぞれについて、処理領域と対照領域との間のT0およびT2hでのg/m
2/hのIWL率(11名のボランティア参加者の平均)を要約する。T0とT2hとの間の変動のパーセンテージも表14に示す。
【表14】
【0241】
結果は、本発明による組成物実施例9.1によりほぼ16%の水損失の減少を示す。比較すると、本発明外の組成物実施例9.2(ジメチコン)は、14.5%の水損失の減少を提供する。
【0242】
本発明による増粘組成物による水分損失の有意な減少は、膜形成効果、したがって本発明による増粘組成物による保湿特性の改善を示す。
【0243】
本発明による増粘組成物を含む組成物実施例9.3(表13に記載)の汚染防止特性を、炭素微粒子堆積(空気汚染モデル)の制限における組成物の有効性を決定することによって評価した。評価を、以下のプロトコルに従い、10名のボランティア参加者を対象とした臨床試験により、ビデオダーモスコープC-Cubeを使用して取得した標準化された写真の画像分析によって実施した:
-前腕の16cm2を測定する2つの領域(処理対象領域および対照領域)の範囲を定める;
-15%濃度の合成皮脂のアルコール希釈物50μLの所定の領域への塗布;
-処理対象領域にわたる2mg/cm2の投与量での組成物実施例9.3の塗布;
-所定の領域上への50μLの1.2%炭素粒子の水-アルコール懸濁液の堆積;
-ビデオダーモスコープC-Cubeを用いた画像(T0)の取得;
-湿らせた綿棒またはディスクを使用し、次いで風乾させることによる2つの領域の標準化された拭き取り;
-ビデオダーモスコープC-Cubeを用いた画像(T1)の取得。
【0244】
以下の表15は、対照領域および処理対象領域の拭き取り前(T0)および拭き取り後(T1)に検出された暗ピクセルの数を示す。対照領域および処理対象領域との間の変動の割合も示される。
【表15】
【0245】
変動率は、本発明による化粧品組成物が、炭素粒子、したがって大気汚染を表すピクセルの99%超の低減を可能にすることから、汚染防止特性を有することを示す。