(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】マルチビーム粒子顕微鏡を含むシステムおよび同システムを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/28 20060101AFI20240605BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
H01J37/28 B
H01J37/22 502H
(21)【出願番号】P 2021542463
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2020000012
(87)【国際公開番号】W WO2020151904
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】102019000470.1
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521126944
【氏名又は名称】カール ツァイス マルティセム ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】ザイドラー ディルク
(72)【発明者】
【氏名】カマー ニコ
(72)【発明者】
【氏名】クリューガー クリスティアン
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0348749(US,A1)
【文献】国際公開第2018/145983(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/28
H01J 37/244
H01J 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、前記システムは、
3Dサンプルを結像するためのマルチビーム粒子顕微鏡と、
多層アーキテクチャを備えたコンピュータシステムとを含み、
前記マルチビーム粒子顕微鏡は、
複数の第1の粒子ビームの第1のアレイを発生するように構成されたマルチビーム源と、
前記第1の粒子ビームが対象物上の、第2のアレイを形成する入射場所に入射するように、前記対象物に前記第1の粒子ビームを方向付けるように構成された第1の粒子光学系と、
複数の検出領域を含む1つの検出器、または、それぞれが少なくとも1つの検出領域を含む複数の検出器であって、前記検出領域は第3のアレイとして配置され、前記1つまたは複数の検出器は複数のトランスデューサを含み、トランスデューサが、各検出領域に割り当てられ、前記検出領域に入射する粒子強度を表す電気信号を発生するように構成され、前記複数の検出領域と割り当てられた前記複数のトランスデューサとはそれぞれ複数の検出チャネルを形成し、前記検出チャネルは複数の検出チャネルグループに割り当てられる、前記検出器と、
前記第3のアレイとして配置された前記検出領域のうちの少なくとも1つの検出領域に各第2の粒子ビームが入射するように、前記第2のアレイ内の入射場所から放出された第2の粒子ビームを検出領域の前記第3のアレイに方向付けるように構成された第2の粒子光学系と、
前記マルチビーム粒子顕微鏡を制御するための制御コンピュータシステムとを含み、前記多層アーキテクチャを備えた前記コンピュータシステムは、
データを処理するための第1の複数の処理システムを含む第1の層と、
データを処理するための第2の複数の処理システムを含む第2の層とを含み、
前記第1の複数の処理システムのうちの各処理システムは、割り当てられた検出チャネルグループからのみ検出信号を受け取るように構成され、前記第1の層の前記第1の複数の処理システムは、基本的にまたは完全に、前記第1の複数の処理システムのうちの異なる処理システム間のいかなるデータ交換もなしにデータの処理を行うように構成され、
前記第2の層の前記第2の複数の処理システムは、前記第1の層の前記
第1の複数
の処理システムのうちの少なくとも1つの第1の処理システムからデータを受け取るように構成され、前記第2の層の異なる処理システム間
のデータ交換を含むデータの処理を行うように構成された、システム。
【請求項2】
前記多層アーキテクチャを備えた前記コンピュータシステムは、データを処理するための第3の複数の処理システムを有する第3の層をさらに含み、
前記第3の層の前記第3の複数の処理システムは、前記第2の層の前記
第2の複数
の処理システムのうちの少なくとも1つの第2の処理システムからデータを受け取るように構成され、前記第3の層の異なる処理システム間のデータ交
換を含む、データの処理を行うように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
処理システムが中央演算処理装置(CPU)、グローバルプロセッシングユニット(GPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/またはデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、あるいはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
処理システムが多重処理ユニットを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の層の前記第1の複数の処理システムのうちの少なくとも1つの第1の処理システムが、複数のトランスデューサから前記電気信号を受け取るように構成され、複数の検出チャネルの像処理を行うように構成され、前記複数の検出チャネルのデータが少なくとも1つの処理システムの同じメモ
リに記憶される、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
それぞれの検出チャネルグループへの前記検出チャネルの前記割り当ては、トポロジ設計上の考慮に基づいて像処理中の異なる処理システム間のデータ交換を最小限にするように構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の層、前記第2の層、および/または前記第3の層の実現および/または分散は少なくとも部分的に仮想的である、請求項
2に記載のシステム。
【請求項8】
前記多層アーキテクチャを備えた前記コンピュータシステムは、パイプライン処理を行うように構成された、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の層は、前記マルチビーム粒子顕微鏡の前記制御コンピュータシステムにフィードバック信号を送るように構成された、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の層は、前記マルチビーム粒子顕微鏡の前記制御コンピュータシステム、および/または前記第1の層にフィードバック信号を送るように構成された、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御コンピュータシステムに送られる前記フィードバック信号は、前記マルチビーム粒子顕微鏡による前記3Dサンプルのレイヤの少なくとも一部の即時再結像を引き起こす、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第3の層は、前記マルチビーム粒子顕微鏡の前記制御コンピュータシステム、および/または前記第2の層にフィードバック信号を送るように構成された、請求項
2に記載のシステム。
【請求項13】
前記3Dサンプルをディレイヤリングするためのディレイヤリングユニットをさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のシステムによって、3Dサンプルをレイヤごとに結像する方法であって、
a.3Dサンプルをディレイヤリングし、それによって結像する前記3Dサンプルのレイヤを作成することと、
b.マルチビーム粒子顕微鏡によって前記3Dサンプルの前記レイヤを結像し、それによってレイヤデータセットを取得することと、
c.前記レイヤデータセットの妥当性をリアルタイムで検査することと、
肯定的な妥当性の場合にステップa.~c.を繰り返し実行することとを含む、方法。
【請求項15】
前記レイヤデータセットの前記妥当性の検査は、非妥当の場合、次のディレイヤリングステップが実行される前に前記3Dサンプルの現在のレイヤの即時再結像をトリガする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記レイヤデータセットの前記妥当性の検査は、次のディレイヤリングが実行される前に前記3Dサンプルの再ディレイヤリングをトリガする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記レイヤデータセットの前記妥当性の検査は、非妥当の場合、次のディレイヤリングステップが実行される前に前記マルチビーム粒子顕微鏡の再キャリブレーションをトリガする、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記レイヤデータセットの前記妥当性の検査が、後の検査のためのフラグの設定をトリガする、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項14~18のいずれか1項に記載の方法を行うためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームシステムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、3Dサンプルを結像する(image:イメージング)ためのマルチビーム粒子顕微鏡と固有コンピュータシステムアーキテクチャとを含むシステムに関する。さらに、本発明は、3Dサンプルをレイヤ(layer:層)ごとに結像する方法および対応するコンピュータプログラム製品に関する。本発明は、集積回路のリバースエンジニアリングに特に適する。
【背景技術】
【0002】
シングル(単独)ビーム粒子顕微鏡はかなり以前から知られている。シングルビーム粒子顕微鏡では、粒子光学系を介して被検対象物上に単一ビームが集束され、被検対象物上で走査される。粒子ビームは、イオンビームまたは電子ビームの場合がある。例えば、粒子ビームが入射する場所から放出される電子などの二次粒子が検出され、検出された粒子強度が対象物の走査粒子ビームが現在向けられている場所に割り当てられる。このようにして、その対象物の粒子光学像を生成することができる。粒子ビームによる粒子顕微鏡の視野の走査は時間を要する。視野の範囲は限られている。対象物の比較的広い部分を走査しようとする場合、さらなる視野を走査するには対象物を粒子顕微鏡に対して相対的に移動させる必要がある。これにもまた時間を要する。多くの対象物および比較的大きな対象物をより短時間で走査することができる粒子顕微鏡が必要である。このような課題のために、複数の対象物を同時に走査するように並行して動作する、より多くのシングルビーム粒子顕微鏡を設けることが考えられる。しかし、これは、各個別粒子ビームのために粒子光学系を備えた専用粒子顕微鏡を設ける必要があるため、きわめて費用がかかる解決策である。
【0003】
ここで、粒子ビームの束によって被検対象物を同時に走査するために、複数の粒子ビームが一緒に単一の粒子光学系機構を通って誘導されるため、マルチビーム粒子顕微鏡が有望な手法となる。
【0004】
シングルビーム粒子顕微鏡およびマルチビーム粒子顕微鏡の典型的な用途は、3Dサンプルの構造解析であり、特にリバースエンジニアリングにおける用途である。3Dサンプルの構造解析の場合、結像プロセスとディレイヤリング(delayering:層除去)プロセスとが組み合わされ得る。その場合、3Dサンプルの結像が1レイヤごとに行われる。完全なレイヤのスタック(積層)を結像することにより得られたデータによって、3Dサンプルの3Dデータセットを再構築することができる。しかし、例えばナノメートルの領域のボクセルサイズを実現するために、結像の際に高解像度が必要な場合、膨大な量のデータを収集し、処理する必要がある。これにより、きわめて長い処理時間が生じる。特に、レイヤごとの結像プロセスと破壊的ディレイヤリング技術とが組み合わさった場合、このような長い処理時間が再構築速度のボトルネックとなる。ここで、1つの特定のレイヤについて収集されたデータが、そのレイヤが不可逆的に破壊される前に検証されることが重要である。したがって、次のディレイヤリング工程の前にデータを検証することができるようにオーバーヘッド像処理時間を短縮するのは難題である。
【0005】
米国特許出願公開第2015/0348749号は、大量のデータが処理されるマルチビーム粒子顕微鏡およびそれを動作させる方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、3Dサンプルをレイヤごとに結像するためのマルチビーム粒子顕微鏡を含む高速化されたシステムと、対応する方法およびコンピュータプログラム製品を提供することである。このようなシステムは、3Dサンプルのリバースエンジニアリング、および、特に集積回路のリバースエンジニアリングに特に適するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、独立請求項によって解決される。従属請求項は有利な実施形態を目的としている。
【0008】
本発明の第1の態様によると、本発明は、
3Dサンプルをレイヤごとに結像するためのマルチビーム粒子顕微鏡と、
多層(multi-tier)アーキテクチャを備えたコンピュータシステムとを含むシステムであって、
上記マルチビーム粒子顕微鏡は、
- 複数の第1の粒子ビームの第1のアレイを発生するように構成されたマルチビーム源と、
- 上記第1の粒子ビームが対象物上の、第2のアレイを形成する入射場所に入射するように、上記対象物に上記第1の粒子ビームを方向付けるように構成された第1の粒子光学系と、
-複数の検出領域を含む1つの検出器、または、それぞれが少なくとも1つの検出領域を含む複数の検出器であって、上記検出領域は第3のアレイとして配置され、上記1つまたは複数の検出器は複数のトランスデューサを含み、トランスデューサ(transducer)が、各検出領域に割り当てられ、上記検出領域に入射する粒子強度を表す電気信号を発生するように構成され、上記複数の検出領域と割り当てられた上記複数のトランスデューサとはそれぞれ複数の検出チャネルを形成し、上記検出チャネルは複数の検出チャネルグループに割り当てられる、上記検出器と、
- 第3のアレイとして配置された上記検出領域のうちの少なくとも1つの検出領域に各第2の粒子ビームが入射するように、上記第2のアレイ内の入射場所から放出された第2の粒子ビームを検出領域の上記第3のアレイに方向付けるように構成された第2の粒子光学系と、
- 上記マルチビーム粒子顕微鏡を制御するための制御コンピュータシステムとを含み、
上記多層アーキテクチャを備えた上記コンピュータシステムは、
- データを処理するための第1の複数の処理システムを含む第1の層(tier)と、
- データを処理するための第2の複数の処理システムを含む第2の層とを含み、
- 上記第1の複数の処理システムのうちの各処理システムは、割り当てられた検出チャネルグループからのみ検出信号を受け取るように構成され、上記第1の層の上記第1の複数の処理システムは、基本的にまたは完全に、上記第1の複数の処理システムのうちの異なる処理システム間のいかなるデータ交換もなしにデータの処理を行うように構成され、
- 上記第2の層の上記第2の複数の処理システムは、上記第1の層の上記複数の第1の処理システムのうちの少なくとも1つの第1の処理システムからデータを受け取るように構成され、上記第2の層の異なる処理システム間の、特に最近取得されたデータに対するデータ交換を含むデータの処理を行うように構成された、システムを目的とする。好ましくは、第2の粒子光学系は、互いに異なる第2の粒子ビームが、互いに異なる検出領域に入射するように構成される。あるいは、この要件は部分的にのみ満たされてもよい。
【0009】
したがって、高速システムを提供するための重要な要素は、上記の特徴を含む多層アーキテクチャを備えたコンピュータシステムを提供することである。コンピュータシステムがいくつかの処理システムを含む場合、データ処理を並列化することができ、それによって処理全体が高速化される。しかし、異なる処理システム間でデータを交換することもしばしば必要であり、このデータ交換は全体的処理速度を大幅に低下させる。したがって、異なる処理システム間のデータ交換を可能な限り減らす必要がある。このデータ交換を回避することができない場合、異なる処理システム間のデータ交換を、全体的処理速度が可能な限りわずかしか影響を受けないように編成する必要がある。本発明によると、これは、第1の層における処理システム間のデータ交換が基本的にまたは完全に回避され、第2の層における異なる処理システム間のデータ交換が可能にされる、多層アーキテクチャによって達成される。
【0010】
本発明によると、第1の層の第1の複数の処理システムは、基本的にまたは完全に、第1の複数の処理システムのうちの異なる処理システム間のいかなるデータ交換もなしにデータの処理を行うように構成される。これは、異なる処理システム間のデータ交換が、処理される総データレートと比較して少ないことを意味する。好ましくは、データ交換は処理される総データレートの10%未満である。より好ましくは、データ交換はデータレート全体の5%未満または1%未満である。
【0011】
好ましくは、第1の層の第1の複数の処理システム、および/または、第2の層の第2の複数の処理システムは、データのリアルタイム処理を行うように構成される。好ましくは、リアルタイムデータ処理は、中間でデータを不揮発性メモリに記憶する必要がないほど高速であることを意味する。したがって、データ処理は基本的に像取得プロセスと同程度に高速、さらにはより高速である。
【0012】
マルチビーム粒子顕微鏡を動作させるための荷電粒子は、例えば電子、陽電子、ミューオン、イオンまたはその他の荷電粒子である。本開示のシステムは、特に3Dサンプルを、特にレイヤごとに結像するのに適している。しかし、本発明のシステムを使用して2Dサンプルを結像することも有利である。
【0013】
本発明によると、異なる検出チャネルがいかに定義されるか、およびそれぞれの検出チャネルのデータがいかに処理されるかが重要な側面である。複数の検出領域と割り当てられた複数のトランスデューサとが、それぞれ、複数の検出チャネルを形成する。言い換えると、単純なシナリオでは、単一粒子ビームによって表面を結像することにより、1本の検出チャネルのデータを作成する。しかし、より複雑なシナリオでは、単一の粒子ビームによって結像するすることによって数本の検出チャネルのデータを生成することも可能である。単純なシナリオの説明を続けると、サンプルをm本の第1の粒子ビームで結像することにより(mは自然数を表す)少なくともm本の検出チャネルのデータを生成する。1本の単一粒子ビームを使用して1本の検出チャネルを介して収集されたデータは、いわゆる単一視野(sFOV)のデータを出力する。複数の第1の粒子ビームによって生成されたデータは、いわゆる多視野(mFOV)のデータを表す。次に、一方におけるビームの第2のアレイと他方における3Dサンプルとの間の相対移動によって、多数のmFOVが生成され、これらが全体で最終的に3Dサンプルの完全なレイヤのデータセットを表すことができる。本発明によると、複数の検出チャネルは、複数の検出チャネルグループに割り当てられ、それぞれの検出チャネルグループのデータが同じ処理システムによって処理される、好ましくは、グループは複数の検出チャネルを含む。しかし、検出チャネルグループが1本の検出チャネルのみを含むことも可能である。好ましい実施形態によると、グループは8本の検出チャネルを含む。各グループが同じ数の検出チャネルを含むことが可能であるが、異なるグループが異なる数の検出チャネルを含むことも可能である。
【0014】
本発明によると、第1の層において、基本的にまたは完全に、異なる処理システム間のいかなるデータ交換もなしに、したがって、基本的にまたは完全に、異なる検出チャネルから供給されるデータのいかなる交換もなしに、データの処理が行われる。それぞれの像処理は、例えばヒストグラム解析および/またはヒストグラム補正、露出過度像および/または露出不足像の検出、像鮮鋭度の(例えばフーリエ変換またはエッジ検出による)計算、信号対雑音比(SNR)の計算、および/または例えば離散ウェーブレット変換(DWT)によるコントラスト対ノイズ比(CNR)の計算、例えばスラリー粒子またはスクラッチなどの局所的特徴および/またはアーチファクトの検出、複数のsFOVを結合してmFOVを形成するための、スティッチングのための像上の特徴検出、例えばスプライン補間による像歪み補正、例えばjpeg2000などの可逆または不可逆のデータ圧縮、輪郭検出を伴う。上記で列挙した像処理は、検出チャネルごとに別々に行うことができ、別の検出チャネルからの情報または入力は必要がない。したがって、この場合、基本的にまたは完全に、異なる検出チャネルから供給されるデータのいかなるデータ交換もなしに高度に並列化された、極めて高速な像処理を行うことができる。
【0015】
本発明によると、第2の層におけるデータの処理は、第2の層の異なる処理システム間のデータ交換、特に最近取得されたデータに対するデータ交換を含むデータ処理である。好ましくは、これは、正常なこの種の像処理には、第2の層の異なる処理システム間の、および/または、異なるチャネルから供給されるデータのデータ交換が必要であることを意味する。好ましくは、異なる検出チャネルから供給されるデータの必要なデータ交換は、隣接する検出チャネルから供給されるデータの(またはより正確には隣接するsFOV間での)データ交換を含むが、データ交換は互いに隣接していない異なる検出チャネルから供給されるデータのデータ交換を含むことも可能である。層2におけるデータ処理、特にリアルタイムデータ処理は、例えば以下の種類のデータ処理のうちの1つまたは複数を含む。
- sFOV間のスティッチングおよび/またはmFOV間のスティッチング。スティッチングは、例えば特徴検出および/または位相相関に基づくことができる。
- シェーディングおよび/またはブレンディング、
- 例えば多くのsFOVおよび/またはmFOVにわたる長距離位相相関による、1つのレイヤ内の高い周期性を有する3Dサンプルの高度なスティッチング、
- レイヤ内での輝度補正、
- レイヤ内での欠陥などの特徴および/またはアーチファクト検出、
- 輪郭検出、特にレイヤ内での輪郭検出および/または輪郭補正、特にレイヤ内での輪郭補正、
- 例えば最新のデータセットが、例えば位置および/またはヒストグラムについて、および/または他のパラメータについて、最近取得されたデータセットにどの程度よく適合しているかを示すキーパフォーマンスインジケータ(KPI)の計算、
- ローカルデータベース比較。
【0016】
第2の層における異なる処理システム間で交換され、および/または異なる検出チャネルから供給されるデータは、好ましくは、特にsFOVおよび/またはmFOVにおける、像データ自体および/または像のメタデータを表す。異なる検出チャネルおよび/または処理システム間のデータ交換は、好ましくは最近取得されたデータのそれぞれのデータ交換を含む。好ましくは、この最近取得されたデータは、現在結像されているそれぞれのレイヤについて取得されたデータである。言い換えると、好ましい一実施形態によると、第2の層内のデータ交換は、特定のレイヤ内のデータに関する。1つのレイヤのデータがレイヤデータセットを表す。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態によると、多層アーキテクチャを備えたコンピュータシステムは、データを処理するための第3の複数の処理システムを有する第3の層をさらに含み、第3の層の第3の複数の処理システムは、第2の層の複数の第2の処理システムのうちの少なくとも1つの処理システムからデータを受け取るように構成され、第3の層の異なる処理システム間のデータ交換、好ましくはすべての既存データに対するデータ交換を含む、データの処理を行うように構成される。好ましくは、データ処理はリアルタイムデータ処理である。好ましくは、第3の層内でのデータ交換は、異なるレイヤのレイヤデータセットに属するデータのデータ交換を含む。したがって、第3の層におけるデータ交換の複雑さは、通常、第2の層よりも高い。しかし、好ましくは、第3の層におけるデータ交換の量は、第2の層におけるデータ交換の量よりも少なく、したがってネットワーク負荷もより低い。
【0018】
好ましい一実施形態によると、第3の層におけるデータの処理、好ましくはリアルタイムデータ処理は、以下の種類のデータ処理のうちの1つまたは複数を含む。
- レイヤ間のスティッチングおよび/または像位置補正、
- レイヤ間のシェーディングおよび/またはブレンディング、
- 3Dデータセット全体の輝度が補正されるような大域的輝度補正、
- 例えば3Dの大域的特徴および/またはアーチファクト検出、
- 輪郭検出、特に大域的輪郭検出および/または輪郭補正、特に大域的輪郭補正、および/またはレンダリングの準備、
- 最新のデータセットが、例えば位置および/またはヒストグラムについて、および/または他のパラメータについて、データセット全体にいかによく適合しているかを示すキーパフォーマンスインジケータ(KPI)の計算、
- 3Dデータセット全体の、またはそのそれぞれの部分の視覚化、好ましくは変動マップ視覚化、および/または
- レポートファイルの生成。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態によると、処理システムが、中央演算処理装置(CPU)、グラフィクスプロセッシングユニット(GPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/またはデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、あるいはこれらの任意の組み合わせを含む。処理システムは、第1の層、第2の層、または第3の層または別の層の処理システムとすることができる。
【0020】
本発明の別の好ましい一実施形態によると、処理システムは、多重処理ユニットを含む。好ましくは、多重処理ユニットは複数のCPUおよび/または複数のGPUを含む。
【0021】
別の好ましい一実施形態によると、第1の層の第1の複数の処理システムのうちの少なくとも1つの第1の処理システムが、複数のトランスデューサから電気信号を受け取るように構成され、複数の検出チャネルについて像処理、特にリアルタイム像処理を行うように構成され、上記複数の検出チャネルのデータが、その少なくとも1つの処理システムの同じメモリ、特に同じRAMに記憶される。好ましくは、メモリは高速メインメモリであり、第1の層の少なくとも1つの処理システムの1つまたは複数のプロセッサによるアドレッシングが可能である。このアーキテクチャは、像処理全体の高速化にも寄与する。
【0022】
本発明の好ましい一実施形態によると、複数の検出チャネルは、複数の検出チャネルグループに割り当てられ、それぞれの検出チャネルグループのデータが同じ処理システムによって処理され、それぞれの検出チャネルグループへの検出チャネルの割り当ては、トポロジ設計上の考慮に基づいて、異なる処理システム間の像処理中のデータ交換を最小限にするように構成される。この実施形態によると、検出チャネルは単に構築上の利便性および空間の考慮に基づいてグループ化されるだけではなく、グループ化は異なる処理システム間のデータ交換を最小限にし、したがってデータ処理速度を最適化する、トポロジ上の考慮に基づいて行われる。好ましい一実施形態によると、同じ処理システム、例えば現況技術による像取得システムに、異なる検出チャネルが割り当てられる。その場合、どの検出チャネルが一緒にグループ化されるかが重要である。処理速度にとって決定的なパラメータは、異なる処理システム間のデータ交換によって生じるネットワーク負荷であることを繰り返しておく。したがって、この好ましい実施形態によると、1つの処理システムによって処理される特定の検出チャネルグループへの特定の検出チャネルの最適化された割り当てによって、過剰なネットワーク負荷を解消することができる。また、異なる検出チャネルから供給されるデータのデータ交換が必要な場合、このデータ交換を同じ処理システム内で、好ましくはデフォルトにより1つの像処理システムの同じRAMで行うことができれば、はるかに高速である。像処理全体の高速化に関するトポロジ最適化のさらなる実施例について、以下で示す。
【0023】
本発明の別の好ましい一実施形態によると、第1の層、第2の層および/または第3の層の実現および/または分散は少なくとも部分的に仮想的である。あるいは、第1の層、第2の層および/または第3の層の実現および/または分散は、少なくとも部分的に現実のものである。当然ながら、1つまたは複数の層の実現は、完全に現実のものとすることもできる。
【0024】
好ましくは、多層アーキテクチャを備えたコンピュータシステムは、パイプライン処理を行うように構成される。これにより、像処理のさらなる高速化が可能になる。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態によると、第1の層は、マルチビーム粒子顕微鏡の制御コンピュータシステムにフィードバック信号を送るように構成される。複数のフィードバック信号が送られることも可能である。1つのフィードバック信号または複数のフィードバック信号は、例えばマルチビーム粒子顕微鏡の特定の動作をトリガする(trigger:引き起こす)ことができる。あるいは、1つのフィードバック信号または複数のフィードバック信号は、他の層における後のデータ検査のためのフラグを表すことができる。
【0026】
別の実施形態によると、第2の層は、マルチビーム粒子顕微鏡の制御コンピュータシステムおよび/または第1の層にフィードバック信号を送るように構成される。この場合も、1つまたは複数のフィードバック信号は、マルチビーム粒子顕微鏡の特定の動作を引き起こすことができ、および/または少なくとも1つのフィードバック信号が後のデータ検査のためのフラグを設定することができる。この実施形態によると、データの正確さを向上させることができる。
【0027】
別の好ましい一実施形態によると、制御コンピュータシステムに送られるフィードバック信号は、マルチビーム粒子顕微鏡による3Dサンプルのレイヤの少なくとも一部の即時再結像を引き起こす。即時再結像を引き起こすフィードバック信号は、3Dサンプルの結像を3Dサンプルの破壊的ディレイヤリングと組み合わせることを可能にするシステムにおいて特に重要である。レイヤデータセットにおけるデータの正確さが所要の質を有しない場合、必要な十分な質のそれぞれのレイヤの別のデータセットが取られる前に3Dサンプルのそれぞれのレイヤが破壊されるのを回避する必要がある。したがって、3Dサンプルのレイヤの少なくとも一部の即時再結像を引き起こすフィードバック信号は、3Dデータセットのすべての部分がデータの所要の正確さを有する3Dデータセットを作成するために不可欠である。
【0028】
本発明の別の好ましい一実施形態によると、第3の層は、少なくとも1つのフィードバック信号をマルチビーム粒子顕微鏡の制御コンピュータシステムおよび/または第2の層に送るように構成される。第3の層から供給されるフィードバック信号は、異なるトリガアクションを引き起こすことができる。しかし、第3の層内で処理されるデータは好ましくは3Dデータセットのいくつかのレイヤ、特にすでに破壊されたレイヤに関するものであるため、特定のレイヤの再結像は、好ましくはこのフィードバック信号によってトリガされない。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態によると、特許請求されるシステムは、3Dサンプルをディレイヤリングするためのディレイヤリングユニットをさらに含む。好ましくは、ディレイヤリングユニットは、イオンビームミリングによって動作する。しかし、ディレイヤリングユニットによる他のディレイヤリング方法も適用可能である。好ましくは、3Dサンプルのディレイヤリングは、3Dサンプルの破壊的ディレイヤリングを含む。したがって、好ましくは、3Dサンプルのレイヤは、次に結像するレイヤを作成するために表面がディレイヤリングされる前に正確に結像される必要がある。別の実施形態によると、ディレイヤリングユニットは、非破壊的ディレイヤリング方法に従って動作する。
【0030】
本発明の第2の態様によると、本発明は、特に上述のようなシステムによって、3Dサンプルをレイヤごとに結像するための方法を目的とし、この方法は、
a.3Dサンプルをディレイヤリングし、それによって結像する3Dサンプルの層を生成するステップと、
b.マルチビーム荷電粒子顕微鏡によって3Dサンプルのレイヤを結像し、それによってレイヤデータセットを取得するステップと、
c.レイヤデータセットの妥当性をリアルタイムで検査するステップと、
妥当性が肯定的な場合にステップa.からc.までを繰り返し実行するステップとを含む。
【0031】
本発明による方法は、特に、本発明の第1の態様に関して上述したような、3Dサンプルの結像のためのマルチビーム粒子顕微鏡と、多層アーキテクチャを備えるコンピュータシステムとを含むシステムが適用される場合に、きわめて高速かつ確実である。また、層データセットの妥当性を検査することで、すでに取得されたレイヤデータセットがデータの所要の正確さを示す場合にのみ、3Dサンプルのさらなるディレイヤリングが行われるように保証される。好ましくは、レイヤデータセットの妥当性の検査は、第1の層および/または第2の層によって制御コンピュータシステムまたはより上位階層の層に送られる1つまたは複数のフィードバック信号に基づく。第3の層のフィードバック信号は、通常、次のレイヤを作成するために現在のレイヤがディレイヤリング可能であるか否かを決定するためには好ましくない。ただし、システムおよびシステムを動作させる別のシナリオも可能である。
【0032】
レイヤデータセットの妥当性をリアルタイムで検査することは、妥当性の検査が高速で行われ、ディレイヤリングプロセス全体の速度を有意に低下させないことを意味する。好ましくは、妥当性の検査に要する時間は、データ取得/サンプルの結像に必要な時間の10%未満である。より好ましくは、妥当性の検査に要する時間は、データ取得/サンプルの結像に必要な時間の5%未満または1%未満である。あるいは、リアルタイムでの妥当性検査は、妥当性を5分未満で、より好ましくは3分未満または1分未満で検査することで定義され得る。別の実施形態によると、レイヤデータセットの妥当性のリアルタイムの検査は、リアルタイム結像がシステムコンピュータアーキテクチャに関して上記のように定義される、リアルタイム像処理を含む。
【0033】
本発明の好ましい一実施形態によると、レイヤデータセットの妥当性の検査は、非妥当である場合に次のディレイヤリング工程が行われる前に3Dサンプルの現在のレイヤの即時再結像をトリガする。これによって、必要な妥当性/正確さを有するレイヤデータセットが得られる前にレイヤを破壊するのを防ぐ。
【0034】
別の好ましい実施形態によると、レイヤデータセットの妥当性の検査は、次のディレイヤリング工程が行われる前に3Dサンプルの再ディレイヤリングをトリガする。例えば、実際のディレイヤリングが十分に正確に行われておらず、それによって所要の正確さでのそれぞれのレイヤの結像を複雑化させる可能性がある。そのような場合、再ディレイヤリングは、好ましくは、所要の質を有する物理レイヤがマルチビーム粒子顕微鏡に提示されることができるように、現在のディレイヤリングを改善することを含む。典型的には、再ディレイヤリングでは、再ディレイヤリング後に依然として元の層と同じ構造を示している物理レイヤをマルチビーム粒子顕微鏡に提示することができるように、サンプルのディレイヤリングで除去されるよりも薄いレイヤが除去される。したがって、再ディレイヤリング時に除去されることになるレイヤの厚さは、ディレイヤリングプロセス時に典型的に除去されることになるレイヤの厚さの最大で50%であり、より好ましくは、ディレイヤリングプロセス時に典型的に除去されることになるレイヤの厚さの20%未満、または10%未満である。あるいは、3Dサンプルの再ディレイヤリングは、厳密に同じ種類の別の3Dサンプルが新たにディレイヤリングされる必要があるという意味で、3Dサンプルの完全なディレイヤリングを含み得る。
【0035】
本発明の好ましい一実施形態によると、レイヤデータセットの妥当性の検査は、非妥当である場合に次のディレイヤリング工程が実行される前にマルチビーム粒子顕微鏡の再キャリブレーションをトリガする。ここで、再キャリブレーション(recalibration:再調整)は、その後の結像動作が所要の正確さで実行されるように保証する。すでに収集されたデータセットが必ず再取得されなければならないというわけではない。しかし、この再取得も行うことができる。
【0036】
本発明の別の好ましい一実施形態によると、レイヤデータセットの妥当性の検査は、後の検査ためのフラグの設定をトリガする。後の検査は、後の自動検査または後の手動検査またはこれらの組み合わせとすることができる。
【0037】
本発明の第3の態様によると、本発明は、上述のような方法を行うためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品を目的とする。プログラムコードは、いくつかの部分を含み、任意の適切なプログラム言語でプログラムされ得る。
【0038】
技術的矛盾が生じない限り、本発明の記載されている実施形態を互いに組み合わせることも可能である。
【0039】
本発明については、添付図面を参照すればよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】マルチビーム荷電粒子システムの一実施形態を示す略図である。
【
図2】第1の実施形態による、3Dサンプルをレイヤごとに結像するためのマルチビーム粒子顕微鏡と多層アーキテクチャを備えたコンピュータシステムとを含むシステムを示す略図である。
【
図3】一実施形態による、フィードバックループの実装形態を示す略図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態による、3Dサンプルをレイヤごとに結像するためのマルチビーム粒子顕微鏡と多層アーキテクチャを備えたコンピュータシステムとを含むシステムを示す略図である。
【
図5】検出チャネルのグループ化を示す略図である。
【
図6】91個の単一視野(sFOV)を有する多視野(mFOV)を示す略図である。
【
図7】1つのmFOV内の最適化された検出チャネルグループを示す略図である。
【
図8】mFOV間の最適化された検出チャネルグループを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、複数の粒子ビームを採用する粒子ビームシステム1を示す略図である。粒子ビームシステム1は、対象物から電子を放射させ、その後それらの電子を検出するために、被検対象物に入射する複数の粒子ビームを発生する。粒子ビームシステム1は、対象物7の表面上の場所5に入射する複数の一次電子ビーム3を採用する走査電子顕微鏡型(SEM)であり、電子ビームは複数の電子ビームスポットを生じさせる。被検対象物7は、任意の所望の種類のものであってよく、例えば半導体ウエハ、生体サンプルまたは材料サンプル、および微小素子の配列などを含み得る。対象物7の表面は対物レンズ系100の対物レンズ102の対物面101に配置される。
【0042】
図1の拡大部分I
1に、対物面101内に形成される入射場所5の規則的な矩形アレイ103を有する対物面101の上面図を示す。
図1の入射場所の数は25であり、これらが5×5アレイ103を形成する。入射場所の数25は、表現を簡略にする理由で選択されたわずかな数である。実際には、ビームおよび/または入射場所の数は、例えば、20×30、100×100などはるかに多い数を選択可能である。
【0043】
図の実施形態では、入射場所5のアレイ103は、隣接する入射場所間の一定した距離P1を有する実質的に規則的な矩形のアレイである。距離P1の値の例は、1マイクロメートル、10マイクロメートルおよび40マイクロメートルである。しかし、アレイ103が、例えば六方対称などの他の対称を有することも可能である。
【0044】
対物面101に形成されるビームスポットの直径は微小とすることができる。直径の値の例は、1ナノメートル、5ナノメートル、100ナノメートル、および200ナノメートルである。ビームスポットの形成のための粒子ビーム3の集束は、対物レンズ系100によって行われる。
【0045】
対象物に入射する粒子は、対象物7の表面から放出される電子を発生させる。対象物7の表面から放出される電子は、対物レンズ102によって電子ビーム9として形成される。検査システム1は、多数の電子ビーム9を検出システム200に供給するための電子ビーム経路11を提供する。検出システム200は、電子ビーム9を電子マルチ検出器209に方向付けるための投影レンズ205を有する電子光学系を含む。
【0046】
図1の部分I
2に、電子ビーム9が特定の場所213に入射する個別の検出領域が位置する面211の上面図を示す。入射場所213は互いに一定の距離P
2でアレイ217状に位置している。距離P
2の値の例は10マイクロメートル、100マイクロメートル、および200マイクロメートルである。
【0047】
一次電子ビーム3は、少なくとも1つの電子源301と、少なくとも1つのコリメーションレンズ303と、マルチアパーチャ(multi-aperture:マルチ開口)配列305と、視野レンズ307とを含むビーム発生デバイス300において発生される。電子源301は、発散電子ビーム309を発生し、この発散電子ビーム309は、マルチアパーチャ配列305に照射するビーム311を形成するためにコリメーションレンズ303によってコリメートされる。
【0048】
図1の部分I
3に、マルチアパーチャ配列305の上面図を示す。マルチアパーチャ配列305は、複数の開口またはアパーチャ315が形成されたマルチアパーチャプレート313を含む。開口315の中心317は、対物面101内のビームスポット5によって形成されたアレイ103に対応するアレイ319状に配置されている。アパーチャ315の中心317の互いからの距離P
3は、例えば、5マイクロメートル、100マイクロメートル、および200マイクロメートルの値を有し得る。アパーチャ315の直径Dは、アパーチャの中心の距離P
3よりも小さい。直径Dの値の例は、0.2×P
3、0.4×P
3、および0.8×P
3である。
【0049】
照射ビーム311の電子がアパーチャ315を貫通し、電子ビーム3を形成する。面313に入射する照射ビーム311の電子は面313によって捕捉され、電子ビーム3の形成には寄与しない。
【0050】
生じた静電界のため、マルチアパーチャ配列305は、ビーム焦点323が面325内に形成されるように電子ビーム3を集束させる。あるいは、ビーム焦点323は仮想焦点とすることもできる。焦点323の直径は、例えば、10ナノメートル、100ナノメートル、および1マイクロメートルである。視野レンズ307と対物レンズ102とが、入射場所5のアレイ103または対象物7の表面上のビームスポットを形成するように、対物面101上に焦点が形成される面325を結像するための第1の結像粒子光学系を提供する。対物レンズ102と投影レンズ205とが、検出面211上に対物面101を結像するための第2の結像粒子光学系を提供する。したがって、対物レンズ102は、第1の粒子光学系と第2の粒子光学系の両方の一部であるレンズであり、一方、視野レンズ307は第1の粒子光学系のみに属し、投影レンズ205は第2の粒子光学系のみに属する。
【0051】
マルチアパーチャ配列305と対物レンズ系100との間の第1の粒子光学系のビーム経路にビームスイッチ400が配置されている。ビームスイッチ400は、対物レンズ系100と検出システム200との間のビーム経路内の第2の粒子光学系の一部でもある。
【0052】
また、このようなマルチビーム検査システムおよびその中で採用される、例えば粒子源、マルチアパーチャプレートおよびレンズなどの構成要素に関する情報は、国際特許出願WO2005/024881号、WO2007/028595号、WO2007/028596号、およびWO2007/060017号と、出願番号DE10 2013 016 113.4およびDE10 2013 014 976.2のドイツ特許出願から入手可能であり、これらの開示の内容は参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【0053】
図のマルチビーム粒子顕微鏡1は、制御コンピュータシステム10によって制御可能である。制御コンピュータシステム10は、1つまたは複数のコンピュータおよび/または部品を含み得る。制御コンピュータシステム1は、例えば像取得システム(図示せず)を含む、本発明による多層アーキテクチャを備えたコンピュータシステムにも接続され得る。
【0054】
図2は、3Dサンプルをレイヤごとに結像するためのマルチビーム粒子顕微鏡1と多層アーキテクチャを備えたコンピュータシステムとを含むシステムの略図である。マルチビーム粒子顕微鏡1は、
図1に関連して説明したタイプのものである。しかし、マルチビーム粒子顕微鏡1は異なるタイプのものとすることもできる。図の例における多層アーキテクチャを備えたコンピュータシステムは、コントローラ(図示せず)によって制御される3つの異なる層を含む。マルチビーム粒子顕微鏡1による測定によって生成されるデータはまず層1に入る。その後、層1で処理されたデータの少なくとも一部が、層2でさらに処理される。その後、層2で処理されたデータの少なくとも一部が層3に送られ、さらに処理される。層1、層2、および層3で行われるデータ処理のシーケンスはデータフローを示す。ただし、これは、層1、層2、および層3におけるデータ処理が異なるデータに対して同時に行われることを明白に排除しない。層3で処理されたデータはユーザインターフェース520を介してアクセス可能である。
【0055】
より詳細には、複数の検出チャネルからのデータが層1に入る。層1は、4つの処理システム5001、5002、5003および5004を含む。ただし、層1における4つの処理システムの数は一例に過ぎない。好ましくは、第1の層における処理システムの数はより多く、例えば7、8、10、15、20、50、100またはそれ以上の数の処理システムとすることができる。しかし、図の実施例では、検出チャネルの数が4であり、第1の層における処理システムの数も4である。4本の検出チャネルは、マルチビーム粒子顕微鏡1から始まり、第1の層の複数のプロセッサ5001、5002、5003および5004に入る矢印で示されている。処理システム5001、5002、5003および5004のそれぞれが、1本の検出チャネルのみのデータを処理する。ここでは、この単純な概略的に示す実施形態では、検出チャネルグループも1つのみの検出チャネルを含む。層1では、異なる検出チャネルから供給されるデータを処理する異なる処理システム間のデータ交換はまったくないか、またはごくわずかしかない。
【0056】
層2は、第1の層の処理システム5001、5002、5003および5004からデータを受け取る4つの処理システム5005、5006、5007および5008を含む。しかし、第1の層の処理システム5001、5002、5003および5004と第2の層の処理システム5005、5006、5007および5008とのデータ接続の固定した割り当てはない。これは、層2のボックスですでに終わっている矢印によって示されている。図の実施例では、各層における処理システムの数は4であり、この数は等しい。しかし、必ずしもこれには限らない。好ましくは、第2の層における処理システムの数は、第1の層の処理システムの数より少ない。これは、層1で行われる必要があるデータ処理の量と比較した層2で行われるデータ処理の量によるものである。詳細については後述する。層2では、異なる処理システム5005、5006、5007および5008間のデータ交換を含む、データのリアルタイム処理が行われる。層2で行われるこのデータ交換は、異なる検出チャネル間のデータ交換も含む。好ましくは、異なる検出チャネルから供給されるデータも含み得る、第2の層における異なる処理システム5005、5006、5007および5008間のこのデータ交換は、好ましくは特定のレイヤに関連するデータである最近取得されたデータに対して行われる。好ましくは、層1および層2で行われる像処理によって、特定のレイヤに関連するすべてのデータを処理することができる。
【0057】
多層アーキテクチャを備えるコンピュータシステムの第3の層は、データを処理するための第3の複数の処理システム5009、50010、および50011を含む。層3は層2からデータを受け取る。好ましくは、1つの層から次の層へのデータフローは、層1から層3までの間に減少する。層3内では、処理システム5009、50010、および50011が互いにデータを交換することができる。したがって、層3では、異なる検出チャネルから供給されるデータが交換可能である/交換される。また、これは特定の単一のレイヤに関連するデータについてのみ当てはまるのではなく、複数のレイヤに関連するデータ、具体的にはすべてのレイヤに関連するデータにも当てはまる。好ましくは、データ交換は収集された3Dデータセットのすべての既存データについて可能である。
【0058】
異なる処理システム間のデータ交換によって生じるネットワーク負荷の量は、層1から層3までの間に徐々に増加する。少なくとも一部は、この増加したデータ交換の結果として、処理速度の低下が生じる。図の実施形態では、第1の層で異なるチャネル間のデータ交換がまったくまたはほぼ行われずに最高速のデータ処理が行われる。次に、層2では、異なる処理システム間、および/または、1つのレイヤ内の異なる検出チャネルから供給されるデータの、比較的単純なデータ交換が可能とされる。最後に、層3内で、異なる処理システム間、および/または、異なる検出チャネルから供給されるデータの、および異なるレイヤに属するデータの、より大きなデータ交換が行われる。処理速度の低下は、例えばより複雑な計算の結果として生じ得る、層1から層3までの計算負荷の増加の結果としても起こり得る。したがって、この3層アーキテクチャは、3Dサンプルをレイヤごとに結像する場合の基本的側面を反映している。ただし、多層アーキテクチャに特定の像処理を実施する第4の層、第5の層などを含めることも可能である。
【0059】
原則として、処理システム5001~50011は任意の種類のものとすることができ、この種類は、異なる処理システム5001~50011について同一、部分的に同一、または完全に異なっていてもよい。好ましくは、処理システム5001~50011は、中央演算処理装置(CPU)、グラフィクスプロセッシングユニット(GPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/またはデジタルシグナルプロセッサ(DSP)あるいはこれらの任意の組み合わせを含む。第1の層、第2の層、第3の層または任意のその他の層の実現および/または分散は、少なくとも部分的に仮想的とすることができる。これに代えて、またはこれに加えて、多層アーキテクチャを備えたコンピュータシステムは、パイプライン処理を行うように構成され得る。具体的には、好ましくはパイプライン処理を実現するために、各層を部分層に細分することができる。
【0060】
図3は、本発明の別の実施形態によるフィードバックループの実装形態を示す略図である。フィードバック信号は、
図3の下半分に矢印で示されている。基本的に、各層、ここでは層1、層2および層3からのフィードバック信号は、階層的に次の上位の層と、マルチビーム粒子顕微鏡1とに送られ得る。したがって、層1は、フィードバック信号をマルチビーム粒子顕微鏡1のみに返すことができる。層2は、フィードバック信号を層1および/またはマルチビーム粒子顕微鏡1に返すことができる。層3は、フィードバック信号を層2とマルチビーム粒子顕微鏡1とに返すことができる。フィードバック信号は
図3の下半分に矢印で示されている。
【0061】
層1からマルチビーム粒子顕微鏡1に返されるフィードバックは、以下の事項のうちの1つまたは複数の事項に対処し得る。
- 単一のビームまたはすべてのビームにおける輝度および/またはコントラストを再調整する必要がある。
- 焦点および/または無非点収差再調整が必要である。
- 結像のコントラストが不十分である。
-輪郭および/またはアーチファクト検出が不良である。
【0062】
したがって、層1のフィードバック信号によって以下のアクションをトリガすることができる。好ましい一実施形態によると、像の即時再撮影がトリガされ得る。例えば、試料台が、像データがフラグ信号を発生させた現在位置にまだあるときに即時に像を再撮影することが好ましい。より後の時点での再撮影は、試料台を再び移動させる必要があり、さらに、再撮影のための正しい位置を見つける必要があるため、より時間がかかる。また、1つまたは複数の像に、層2および/または層3において後に検査するためのフラグを付けることも可能である。像中のアーチファクトが多過ぎる場合、再ディレイヤリングを考慮する、および/または自動的に実施する必要がある。データが状況にうまく適合しない場合、例えば不良スティッチング結果が検出された場合に、マルチビーム粒子顕微鏡1を再キャリブレーションする必要があることをフィードバック信号によって示すことができる。
【0063】
層2は、層1および/またはマルチビーム粒子顕微鏡1にフィードバックを送ることができる。フィードバックは、例えば、以下の局面のうちの1つまたは複数の局面についての情報に関し得る。
- 単一のビーム、数ビームまたはすべてのビームの輝度および/またはコントラストを再調整する必要がある。
- 焦点および/または無非点収差再調整が必要である。
【0064】
フィードバック信号がアクションをトリガする場合、それらのアクションは以下のアクションのうちの1つまたは複数のアクションを含み得る。
- 1つまたは複数の像の即時再撮影、
- 層3における、またはユーザによる後の検査のために領域にフラグを付ける、
- 層3における後の検査のために1つまたは複数の像にフラグを付ける、
- アーチファクトが多過ぎるため、再ディレイヤリングを考慮する必要がある、
- データがデータコンテキストおよび/またはデータベースにうまく適合しない - ユーザに警告する、
- スティッチングが不良 - マルチビーム粒子顕微鏡1を再キャリブレーションする、
- 輪郭検出が不良- マルチビーム粒子顕微鏡を再キャリブレーションする、および/またはディレイヤリングパラメータを変更する、
- ディレイヤリングアーチファクトが見える - 再ディレイヤリングする、および/またはディレイヤリングパラメータを変更する。
【0065】
層3は、層2および/またはマルチビーム粒子顕微鏡1にフィードバックを送ることができる。考えられるトリガアクションは、以下のうちの1つまたは複数を含む。
- 像位置の修正が再調整を必要とする、
- ユーザによる後の検査のために1つまたは複数の像にフラグを付ける、
- 再ディレイヤリングを考慮する必要がある - アーチファクトが多過ぎる、
- データがデータコンテキスト/データベースにうまく適合しない - ユーザに警告する、
- 3Dスティッチングが不良であり、マルチビーム粒子顕微鏡1を再キャリブレーションする、
- 輪郭検出および/またはレンダリングが不良 - マルチビーム粒子顕微鏡1を再キャリブレーションする、および/またはディレイヤリングパラメータを変更する、
- ディレイヤリングアーチファクトが見える - 再ディレイヤリングする、および/またはディレイヤリングパラメータを変更する。
【0066】
その他のフィードバック信号および/またはトリガアクションも可能である。
【0067】
層1、層2および層3とそれぞれの処理システムとは、コントローラCTRLによって制御される。コントローラは、データ処理動作、特に、層1、層2および/または層3において実施されるデータ補正を制御する。具体的には、データ補正は個別にオンとオフを切り換えることができる。別個のコントローラを設ける代わりに、層1、層2または/および層3の制御機能を別のコンピュータシステムまたは処理システム、例えば層1の処理システムに組み込むことも可能である。あるいは、制御機能を、マルチビーム粒子顕微鏡1を制御するための制御コンピュータシステム10に組み込むことができる(
図4参照)。
【0068】
図4は、マルチビーム粒子顕微鏡1と、3つの層を含む多層アーキテクチャを備えたコンピュータシステムとを含むシステムの一実施形態の略図である。
図4に図示する実施形態は、すでに図示し、
図2(多層アーキテクチャ)と
図3(フィードバック信号)とに関連して説明した本発明の態様の組み合わせである。さらに、
図4は、システム全体におけるネットワーク負荷の量/データフローを示す。
図4ではデータの量が矢印の太さで示されている。太い矢印は大量のデータを示し、細い矢印はより少量のデータを示す。完全を期するために、最終的に処理されたデータのストレージ530も示されている。
【0069】
マルチビーム粒子顕微鏡1から層1の処理システム5001~5007に送られるデータの量は膨大である。層1では、異なる処理システムおよび/または検出チャネル間でデータの交換が行われずにデータの並列処理が行われる。層1で処理されたデータの大部分はストレージ530に直接入る。ストレージ530への書き込みのデータレートは、毎秒10ギガバイト以上に達し得る。このストレージ530内のデータの量もそれに対応して膨大であり、数10ペタバイト程度にもなり得る。
【0070】
層1のデータの一部が層2およびその処理システム5008~5011に送られる。ここで、異なる検出チャネルから供給されるデータの交換を含む、異なる処理システム5008~50011間のデータ交換が行われる。次に、この場合も、層2で処理されたデータの一部がストレージ530に直接入る。データの残り部分は、3つの処理システム50012~50014を有する層3に送られる。ここで、異なる処理システム間のデータ交換が可能とされ、これには異なる検出チャネルから供給されるデータの処理と、さらに、3Dサンプルを表す3Dデータセットの異なるレイヤに属するレイヤデータセット間のデータ交換も含まれる。層3で処理された後、残りのデータはストレージ530に入る。ストレージ530にはユーザインターフェース520がアクセスすることができ、データをさらに調べることができる。
【0071】
さらに、
図4には、前の層に戻り、および/または、マルチビーム粒子顕微鏡1に、ここではより正確にはマルチビーム粒子顕微鏡1を制御するための制御コンピュータシステム10に、直接戻る、フィードバックループも図示されている。また、制御コンピュータシステム10は、マルチビーム粒子顕微鏡1から距離を置いて設けられ、および/または、層1、層2および層3で行われる像処理に使用されるハードウェアに組み込まれることができる。この場合も、層1、層2および層3の実現は、少なくとも部分的に仮想的であってもよいことに留意されたい。
【0072】
図5に、検出チャネルのグループ化を示す略図を示す。ここでは、層1の各処理システム500
1~500
nが複数の検出チャネルからそれぞれデータを受け取る。図の実施例では、8本の検出チャネルがグループ化され、それぞれ1つの処理システム500
1~500
nに入力を送り込む。完全を期するため、検出チャネルのデータの供給源も概略的に示されている。すなわち、マルチビーム粒子顕微鏡1の検出システム200は、粒子検出器と光検出器とを含み得る。粒子検出器からの信号を光に変換し、次に検出チャネルごとにそれぞれの光検出器によって光を検出することはきわめて一般的である。
図5は、検出領域に割り当てられたそれぞれの光検出器241を示している。光検出器241は、例えばアバランシェフォトダイオード(APD)によって実現され得る。光検出器241は、フレーム取り込み器507に接続された信号線245を介して電気信号を送出する。フレーム取り込み器507は、それぞれ、検出された粒子強度を像の濃淡値に変換し、それらを像内の場所に割り当てることによって像情報を生成する。この像情報は、2次元であり、後でアドレッシングすることができるように、列ごとまたは行ごとに線形データストレージ手段に記憶することができる。検出された像の各1つの像の像情報は、フレーム取り込み器507から処理システム500
1~500
nに送られ、そこでメインメモリに直接書き込まれる。
【0073】
光検出器241とフレーム取り込み器507はトランスデューサの一例となる。トランスデューサは、各検出領域に割り当てられ、その検出領域に入射した粒子強度を表す電気信号を発生するように構成される。他の種類のトランスデューサを含む他の検出器システム、例えば電子/正孔対が生成される障壁レイヤを含む検出器も可能である。
【0074】
したがって、層1の複数の処理システム500
1および500
nは、像記録コンピュータシステムを提供する。図の実施例では、第1の層において処理システム500
1および500
nの各1つに接続されたフレーム取り込み器507の数は、複数のフレーム取り込み器507によって生成された像データが処理システム500
1および500
nによってリアルタイムで処理されることができるような数である。図の例示の実施形態では、1つの処理システム500に最大8個のフレーム取り込み器507が接続される。処理システム500
1および500
nのそれぞれが高速メモリを有し、その中にフレーム取り込み器507によって生成された像データがさらなる処理のために記憶される。好ましくは、像プロセッサ500
1および500
nは多重処理ユニットを含み、1つの処理システム500
1および500
n内のすべての多重処理ユニットが、それぞれの処理システム500
1および500
n内のメインメモリをアドレッシングすることができる。同じ処理システム内での像処理はかなり高速であり、異なる検出チャネル間でデータを交換する必要がある場合でも、その交換は、それぞれの検出チャネルを表すデータが同じメモリ、特に処理システム500の同じRAMメモリに記憶される場合には比較的高速に実施可能である。したがって、異なる検出チャネルがどのようにグループ化されるか、およびそれらの検出チャネルがどのように特定の処理システム500に割り当てられるかが、可能な処理速度に影響を与える。本発明によると、この知見は、多層アーキテクチャが少なくとも部分的に仮想的に実現される場合に特に重要である。これは、ハードウェア処理システム500が層1の一部と層2の一部とに同時に相当し得ることを意味する。共通の像処理システムにおけるデータ処理を、仮想層アーキテクチャで行うことができる。それでもやはり、ハードウェア処理システムへの検出チャネルの物理割り当ては、処理速度を最適化するために重要である。チャネルをグループ化する概念について、
図6~
図8を参照しながらさらに説明する。
【0075】
図6は、91個の単一視野(sFOV)を有する多視野(mFOV)を示す単純化された略図である。原則として、これらのsFOVの番号付けは恣意的である。図の実施例では、中央のsFOVに1が付されている。この中央sFOV番号1の周囲に、さらに6個のsFOV2~7を有する外郭が示されている。次の外郭はsFOV8~19を含む、などのようになっている。全体として、91個のsFOVを有する六角構造が1つのmFOVを形成している様子が示されている。
【0076】
図7は91個のsFOVを有する1つのmFOV内内の最適化された検出チャネルグループ化を示す略図である。検出チャネルの異なるグループには異なる文字が付されている。91個のsFOVを有する本実施例では、12のグループA~Lが図示されている。各検出チャネルグループのデータが層1および/または層2内の同じ処理システム500によって処理される。それぞれのチャネルグループA~Lへの検出チャネルの割り当ては、トポロジ設計上の考慮に基づいて、像処理中の異なる像処理システム間のデータ交換を少なくするように構成される。好ましくは、グループ化を最適にする規則は以下の通りである。
- 2つ以上の検出チャネル間のできるだけ多くのデータ転送が1つの処理システム/取得システム500内部で行われるように多視野mFOVにおける検出器をグループ化する。
- 異なる検出チャネル間のできるだけ少ないデータ転送がいずれか2つの処理システム/像取得システム500間で行われる。
- トポロジ最適化:「面積」(これは1つの処理/像取得システム500上の検出器数である)と「円周」(これは異なる処理システム/像取得システム500上に隣接検出器を有する検出器の数である)との比をできるだけ大きくする。
【0077】
図7に図示するグループ化は、第1の層および/または第2の層において1つの処理システム500によって最大8本の検出チャネルを処理することができる場合に好適なグループ化である。他の解決策も存在する。
【0078】
複数のmFOVによって3Dサンプルの完全なレイヤの像が構築されることを考慮して、追加のトポロジ設計上の考慮にも配慮することが好ましい。例えば、データ交換、例えばレイヤ内のスティッチング手順のために、異なるmFOVのいずれの検出チャネルをペアにする必要があるかが重要な側面である。ペアリングは、異なる処理システム間のデータ交換、したがってネットワーク負荷を低減し、それによって全体的な像処理速度を高速化するために、トポロジ設計上の考慮に基づき得る。
【0079】
そのようなシナリオの好ましい解決策を
図8に示す。
図8は、mFOVの検出チャネルグループを示す略図である。4つのmFOV1~mFOV4が示されており、試料台が移動されるときのsFOVの隣接関係が示されている。mFOV1とmFOV2との境界において、mFOV1の検出チャネルグループLが最も外側の位置に3本の検出チャネルを有し、それぞれがmFOV2上の検出チャネルグループJに属する検出チャネルに対向している。このグループ化はボックス601によって示されている。同様に、検出チャネルグループFに属するmFOV1の2本の検出チャネルが、mFOV2上の検出チャネルグループIに属する2本の検出チャネルに対向しており、これはボックス602によって示されている。また、mFOV3との境界に位置するmFOV1上の検出チャネルグループHに属する3本の検出チャネルが、mFOV3上の検出チャネルグループLに属する3本の検出チャネルと対向しており、これはボックス610によって示されている。mFOV1の検出チャネルグループIに属する3本の検出チャネルが、mFOV3上の検出チャネルグループKに属する3本の検出チャネルに対向しており、これはボックス609によって示されている。参照符号603~608も、異なるmFOV間の検出グループのペアリングを示すボックスを示している。したがって、最大1つまたは2つの異なる検出チャネルグループに属する隣接検出チャネルのペアを含むボックスを可能な限り大きくすることによって、異なる処理システム間のデータ交換を少なくすることができる。
【0080】
91個のsFOVを有する図の実施例におけるペアリングに関して唯一のより複雑な領域は、領域608の周囲である。ここで、mFOV4では、検出チャネル70と71(
図6に示す番号付けを使用)が異なる検出グループDとKに属している。それでも、隣接mFOV1上において、検出チャネル83と84とが両方とも検出チャネルグループGに属している。