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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】車両用の成形ガラストリム要素
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20240605BHJP
   C03B 23/023 20060101ALI20240605BHJP
   B29C 33/18 20060101ALI20240605BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
B29C45/14
C03B23/023
B29C33/18
B29C45/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021549671
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2020055831
(87)【国際公開番号】W WO2020178383
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】19160844.7
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ヒック, ロバート
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/005646(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0178424(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013014420(DE,A1)
【文献】特表2021-531187(JP,A)
【文献】特表2016-517380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 -33/76
B29C 45/00 -45/84
C03B 23/023-23/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形された車両用トリム要素(1)を製造するための方法であって、
- 前記車両用トリム要素(1)の最終形状を形作るために、可動コア(101)とキャビティ(102)とを含む射出成形用の型(100)内に、キャリヤプレート(106)を与えるステップ、
- 前記型(100)内に、曲げられる少なくとも第1の領域を有するガラスパネル(107)を与えるステップ、
- 前記型(100)内で、求められる形状への前記ガラスパネル(107)の冷間曲げを行うステップ、
- 軟質材料(120)を射出して、前記軟質材料によって一緒に固定された、曲げられた前記キャリヤプレートと前記ガラスパネルで作製される前記車両用トリム要素(1)を形成するステップ、
- 前記型から前記車両用トリム要素(1)を取り出すステップ
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記車両用トリム要素は、車両用内装トリム要素(1)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガラスパネル(107)は、曲げられる第2の領域(117)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記キャリヤプレート(106)は、開口部を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記型(100)は、可動コア(101)及び/又はキャビティ(102)を含み、前記可動コア(101)及び/又はキャビティ(102)は、少なくとも前記キャリヤプレートの第1の領域(110)及び第2の領域(111)及び/又は少なくとも前記ガラスパネルの第1の領域(116)及び第2の領域(117)に冷間曲げを行う手段をさらに含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記可動コア(101)は、第2の可動部分(115)をさらに含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
固定部分(103)及び可動部分(104)を有する前記型の前記キャビティ(102)は、吸引カップ(113)などの、前記ガラスパネル(107)を維持するための手段をさらに含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記キャリヤプレート(106)は、熱可塑性材料又は金属材料で作製されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリヤプレート(106)は、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート-アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアミドPA6、ポリアミドコポリマーPA66、ポリオキシメチレン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー又は熱硬化性材料、例えばポリウレタン、充填材有り若しくは無しのエポキシから選択される材料で作製されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ガラスパネル(107)は、プライマー、好ましくはシラン成分を有するプライマーを与えられていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記軟質材料(120)は、熱可塑性エラストマー、ポリウレタン、軟質PVC及びシリコーンから選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
- 可動コア(101)及び固定キャビティ(102)を有する型(100)、及び
- 軟質材料(120)を射出するための射出装置(114)
を含む、曲げ型であって、前記可動コア(101)は、キャリヤプレート(106)を受け入れるように適合されており、前記キャリヤプレート上には、前記型の前記キャビティに設けられる射出装置(114)から射出される前記軟質材料(120)によって、ガラスパネル(107)が固定されることを意図され、前記可動コア(101)及び固定キャビティ(102)は、少なくとも前記キャリヤプレート(106)の第1の領域(110)及び第2の領域(111)及び少なくとも前記ガラスパネル(107)の第1の領域(116)及び第2の領域(117)に冷間曲げを行う手段をさらに含むことを特徴とする、曲げ型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、車両用内装トリムの製作方法に関する。さらに、本出願は、車両用トリム要素に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばミラーとして又は計器用ガラスとして、車両内部にガラスパネルを使用することが知られている。ガラスは、その高品質の光学的及び触覚的な外観で知られている。さらに、車両内部には、一般に、運転手又は乗客に情報を与えるためにディスプレイが設置されている。いくつかの用途では、ディスプレイは、光学的に透明なガラスパネルの後ろ側に配置されて、例えば、食べ物や飲み物がこぼれたり又は引っかき傷がついたりすることから、ディスプレイを保護することができる。
【0003】
しかしながら、今日では、ガラスパネルは、例えばディスプレイを保護するために、光学的に透明なガラスパネルとして使用されるだけではなく、動力車若しくは中央コンソールにガラス内装トリム要素としても、又はガラスアップリケとしても公知のガラス外装トリム要素としても、使用されることができる。
【0004】
車両の内装又は外装トリムは、自動車又は全般的に動力車(車、バス、列車など)の内部又は外部に付加されてその見た目を向上させるアイテムを指すことができる。車両用のトリムにはいくつかのタイプがある。それらのうちの一部は、乗客に起因する望ましくない損傷から車両の内部のいくつかの部分を保護するために使用されるが、他のものは、単に見た目の美しさのためである。
【0005】
しかしながら、今日では、車の製造者は、車両の内側及び/又は外側に、特にダッシュボードのカバーガラスとして、益々ガラスを使用し、これにより、特に、例えばアナログ-デジタルのハイブリッド型タッチパネル装置及びその認識方法として、カバーの後ろ側にディスプレイを有する傾向にある。
【0006】
また、見た目の美しさの観点からだけではなく、特に車両の内部及び/又は外部のいくつかの部分、特にトリム要素に益々多くの機能を追加するために、車の製造業者は、ガラスが引っかき傷に対してより耐性があり且つそれらにより多くの機能性を追加するため、プラスチック、木などのトリム要素をガラスで置き換えようと模索している。
【0007】
また、多くの車両、特に車では、車両コンソールは、左と右のフロントシート間に配置される。一般に、中央コンソールは、車のダッシュボードに固定されており、且つその部分に延在する。中央コンソールはまた、左と右の後部座席間にも設置されることができる。車の内部をより美しく且つ快適にするために、通常、中央コンソールの露出部分(例えばCDプレイヤー、オーディオ、車内気候、インフォテインメントなどの制御装置)を覆う装飾パネルは、中央コンソールに、特に中央コンソールの表側に装着される。
【0008】
一般的に、中央コンソールの最上部分は、プラスチック、ポリカーボネート要素で作製される(プラスチック材料は、コンソールシステム全体のカバーとして使用される)。この解決法は、見た目が美しいことが多いが、中央コンソールに、効率のよい「タッチスクリーン機能」などのいくつかの機能を直接追加することはできない。さらに、プラスチック成形された中央コンソールを有することの欠点は、以下の通りである:プラスチックではタッチ機能が可能にされないため、役に立たないボタンが、多すぎる位、コンソールに設置される必要がある。一日の最後には、多数のボタンが運転手を混乱させる(安全面)。さらに、シームレスにする効果がないため、ボタンの周りに埃がついたときなどに中央コンソールを清掃するのが困難である(衛生面での不都合な点)。中央コンソールを覆うために使用されるプラスチック材料は、ほとんどリサイクルできないが、ガラスは、際限なくリサイクルできる(環境問題)。プラスチック部分の成形加工は、結局廃棄物となるプラスチックを生じる(リサイクル可能なプラスチックの価格は、新しいプラスチックの価格と競合できないため、現在のところ、この環境への懸念に対処するための実行可能な代替物がない)。概して、プラスチック材料を使用したガラスカバーは、UVに対する抵抗性が高くないため、透明な色彩が時間と共に黄色に変色する(デザインの劣化)。さらに、ガラスと同様の剛性を示すためには、プラスチック製のカバーは、ガラス製のものよりも重くなる。それゆえ、プラスチック材料の解決法は、車を軽くするために車のこの部分のためには最適ではない。テクノロジーサイクルはどんどん速くなっているため、ガラス中央コンソールは、ITのアップグレードに対して柔軟性があることを可能にし、且つノマディックデバイスとのシームレスな接続を可能にする。ガラス中央コンソールを有することによって、一般に車によって支援されている多くの異なるソフトウェアを、同じ場所に位置し且つそこから命令される1つのオペレーティングシステムに、折り合いよくまとめる(reconcile)ことができる。さらに、中央コンソールの複数の部分として現在使用されているほとんどの材料とは対照的に、ガラスは、周囲の光の使用を支援することができる(乗客の快適性/利便性を向上させる)。さらに、乗客は、乗客の車の内部で、乗客の自宅や会社の室内と同様のプラスチックをこれ以上見たくないかもしれない。
【0009】
現在の内部の装飾又は機能性部分は、主に装飾的なプラスチックで作製されている。それゆえ、これらの部分に固定要素が直接組み込まれることができる。しかしながら、プラスチック部分は、耐摩耗性が低いことに起因して、触れられるとき及び車両の寿命にわたる損傷に関して不利である。さらに、ユーザインターフェース(目に見える装飾又は機能性パネル)のために車にプラスチックを有する効果は、ハイエンドの仕上げには最適ではなく、プラスチックは、低品質な材料であるとみなされている。別の基準は、プラスチックに触れるときの感触であり、ユーザが、脆い材料に触れて、指先の感覚が熱くて柔らかいと感じると、低価格の材料であるという印象を与える。それゆえ、現在の解決法では、アセンブリのために特定の中間部分を組み込む必要はない。
【0010】
それゆえ、ガラストリム要素又はガラスコンソールは、より見た目が美しく、且つ車両の魅力を高めることができることが好ましい。ガラストリム要素は、安全規則に準拠する必要があるため、車両の内部に固定することがより困難である。
【0011】
ガラストリム要素は、好ましくは、湾曲したガラスパネルである。湾曲したガラスパネルは、最初に、ガラスパネルを、ガラスパネルの軟化点を上回る温度まで加熱することによって、形成されることができる。それに続いて、ガラスパネルは、曲げ加工装置を使用してガラスパネルを能動的に曲げることか、又はガラスをそれ自体の重量で曲げることのいずれかによって、変形されることができる。或いは、ガラスパネルを曲げるときには、冷間成形加工が用いられてもよい。これらの加工は、消費されるエネルギー及び時間が少ないことが知られている。冷間成形加工では、ガラスパネルは、一般に、湾曲したフレーム上で、室温で曲げられる。ガラスパネルを曲げた後、例えば、ガラスパネルの湾曲が、湾曲したフレームの湾曲に一致するとき、ガラスパネルは、歪が生じているため、次第にその初期形状に戻る傾向がある。それゆえ、曲げられたガラスパネルは、一般に、ガラスパネルの湾曲を保持するために、曲げ後、湾曲したフレームに機械的に固定される必要がある。
【0012】
多数の可撓性の無機ガラス膜が、ガラス膜間に接着層を介在させて、層状にされる。成形型内で、ガラス層は圧縮され、且つ自立式のガラス成形部分が形成されるように接着剤が硬化するまで、ガラス転移温度を下回る温度に保持される。
【0013】
ディスプレイなどの機能性要素を含むガラスパネルが曲げられるとき、曲げ加工によって、機能性要素とガラスパネルとの間の接合境界面又は機能性要素自体に加えられる歪みに関連する問題が発生することがある。それゆえ、機能性要素の剥離又は破損が発生することがある。同様の問題が、ガラスパネルに、ディスプレイ、空気孔、又は回転ノブなどの機能性要素を受け入れるための穴があるときに、発生することがある。パネルは穴に起因して弱くなり、及びパネルにおける穴の周りの応力は、臨界値を超えて、望ましくない変形又はさらには破損という結果になる可能性がある。
【0014】
今日では、薄いガラスをキャリヤと呼ばれる支持体に固定するために、主に両面テープが使用される。そのため、キャリヤは、車両に作られるモジュールのアセンブリを行うために使用される。これは、ガラスと、一般的にキャリヤとして使用されるプラスチック部分との間を全面で接続することができるようにし、これは、認証検査を通過するために強く薦められる。この解決法は、容認可能な接合品質をもたらす。しかしながら、アセンブリを行うために使用される加工は、工業的に実施するのが困難である。実際、この種のテープ接合は、ガラスがこのテープに触れるとすぐにテープにガラスが接着してしまうという欠点がある。これは、アセンブリ加工の初期段階で、すなわちガラスがキャリヤに固定される必要があるときには、ガラスを正しい位置に固定することが必須であることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述の態様を考慮して、本発明の目的は、上述の欠点を克服するのを支援する、車両用内装及び/又は外装トリム要素を製作する方法を提案することにある。特に、本発明の目的は、1つ以上の機能性要素と曲げられたガラスパネルとの間のしっかりとした接続を可能にしながらも、ガラスパネル又は機能性要素の破損のリスクを低減させる、車両用内装及び/又は外装トリム要素を製作する方法を提案することにある。さらに、本出願の目的は、同様に好都合な車両用内装及び/又は外装トリム要素を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的は、独立請求項1のステップを含む方法によって、並びに別の独立請求項の特徴を備える車両用内装及び/又は外装トリム要素によって、達成される。任意選択的なさらなる特徴及びさらなる発展形態は、従属請求項及び添付図面と併せた詳細な説明から明らかとなる。
【0017】
車両用成形トリム要素を製造するために提案される方法は:
- 型内にキャリヤプレートを与えるステップ、
- 型内に、曲げられる少なくとも第1の領域を有するガラスパネルを与えるステップ、
- 型内で、求められる形状へのガラスパネルの冷間曲げを行うステップ、
- 90ショアA未満の硬さを有する軟質材料を射出し、この軟質材料によって一緒に固定されたキャリヤプレートとガラスパネルとを含む車両用トリム要素を形成するようにするステップ、
- アセンブリを取り出すステップ
を含む。
【0018】
本発明の実施形態によれば、90ショアA未満の硬さを有する軟質材料は、熱可塑性ポリマー、例えばポリプロピレン、熱可塑性エラストマー(TPE)、例えばオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリウレタン、ポリアミド又は軟質ポリ塩化ビニル、シリコーン又は同様の材料、又は反応性射出成形に好適な任意の材料である。
【0019】
本発明によれば、型は、ガラストリム要素の最終形状を形作るため、及びそれを、ガラスパネルとキャリヤとの間に軟質材料を射出することによって、キャリヤに固定するための双方のために、設計される。
【0020】
それゆえ、本発明は、これまで使用されてきたようなテープの使用に代わって、そのキャリヤへのガラスパネルの固定を工業化し、且つ製造コストを削減するための解決法を提案する。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、ガラスパネルとキャリヤとの間で、ガラスパネル及び/又はキャリヤの表面全体に軟質材料を射出して、キャリヤをガラスパネルに全面で接着する。
【0022】
ガラスパネル及び/又はキャリヤの表面全体に軟質材料を射出することによって、ガラスをキャリヤに接合するために使用される軟質材料に加えられる応力は、低減され、且つガラスパネルは、キャリヤのその表面全体にうまく接合される。それゆえ、ガラスパネルの変形が回避される。それゆえ、曲げ後、曲げられたガラスパネルが、湾曲したキャリヤに固定されて、ガラスパネルの湾曲を保持する。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、キャリヤは、ガラストリム要素の求められる最終形状に適合するために、求められる形状を備える射出成形型内に提供される。
【0024】
本発明の別の実施形態によれば、キャリヤは、平らな又は実質的に平らな形状の射出成形型に提供され、且つ射出成形型内へと求められる形状に曲げられる。それゆえ、型は、ガラスパネルを曲げるためだけではなく、キャリヤを曲げるためにも、及び射出材料を射出して、ガラスパネルをキャリヤに固定するためにも、使用される。それゆえ、車両用ガラストリム要素の製造方法は単純化され、且つ加工中の時間を稼ぐことができる。
【0025】
本発明によれば、射出成形型は、型の可動コア及び型の固定キャビティを含む。可動コア及び/又はキャビティは、ガラストリム要素に求められる形状を形作るように設計されている。
【0026】
本発明のある実施形態によれば、ガラストリム要素が異なる領域に異なる湾曲を有する必要がある場合、型の可動コア及び/又は型の固定キャビティは、さらに、ガラスパネルに、ガラスパネルの異なる領域において求められる曲率半径での冷間曲げを行うために、機械的な手段を含むことができる。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、ガラスパネルに複雑な形状(異なる領域における異なる曲率半径)を形作るための機械的な手段は、型の可動コアに付加された可動部分及び/又は型の固定キャビティから選択される。これらの可動システムは、機械的な手段(例えばバネ)、液圧手段又は空気圧手段によって操縦されることができる。ガラスをその最終形状に固定するために、真空カップが使用されることができる。従来の真空システムは、熱成形真空成形システムと同様に、それに従ってガラスを付形するためにも使用されることができる。
【0028】
曲げ後、ガラスパネルの裏面の曲率半径は、一般に数ミリメートル又はセンチメートルになることができる。わずかに曲げられたパネルでは、曲率半径は、遥かに大きくなることができる。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、機械的な手段は射出成形型に含まれている。その場合、いくつかの可動コアは、固定及び/又は可動の型に統合されている。これは、例えば、よく知られている2部品型(2K型としても公知)とすることができるため、キャリヤプレートは、この2Kプロセスの第1のショットの最中に作製される。その後、別のキャビティ内の部分の移送後又は射出成形型の回転後、ガラスは型内に配置される。固定は、例えばガラス上に圧縮状態になる真空カップ及び/又は機械的なコアを使用することによって、型内で行われる。その後、次のステップとして、型は、例えば閉じられて、ガラスの1つの区域を曲げる。その後、別の可動コアを使用して、ガラスの別の領域を曲げる。いくつかの特定のコアは、ここでも、キャリヤ用キャビティから曲げ用キャビティ(bending cavity)までの型の分割線に適合するために使用されることができる。この第1段階の最後には、ガラスは、所望の形状に合わせられ、且つ射出成形型に固定されたキャリヤと接触した状態に維持される。
【0030】
次に、第2段階が開始することができる。TPE射出が、例えばガラスをキャリヤに固定するために使用されることができる。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、軟質材料は、キャリヤプレート及びガラスの異なる材料の熱膨張差に耐えるように、適切な材料で作製される。それゆえ、異なる熱膨張係数から生じる寸法の変動にうまく対処するために、上述のような粘弾性材料、好ましくは10%~300%以上の適切なせん断歪みがある接着剤(PU、シリコーン、MSポリマー)又は熱可塑性エラストマーなどが、アセンブリにおいて使用される。
【0032】
さらに、プラスチックキャリヤプレートの形状は、例えば、中央コンソールの場合には収納ボックスを組み込むためにガラスに作られた穴を含め、ガラスの全ての幾何学的形状に合致するように適合されることができる。収納ボックスは、同じハイエンドのレベルの仕上げを与えるために、ガラスの可動カバーによっても閉鎖されることができ、且つこのカバーは、プラスチックプレートを通して同じインターフェースを使用して本体の残りの部分に接続されることができる。プラスチックインターフェース構造は、そのような用途のための機構を組み込むことができるという利点をもたらす。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、キャリヤプレートは、熱可塑性材料、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート-アクリロニトリルブタジエンスチレン(PC-ABS)、ポリアミド(PA6)、ポリアミドコポリマー(PA66)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性エラストマー(TPE)又は熱硬化性材料、例えばポリウレタン(PUR)、機械的に強化するためのガラスファイバーなどの、追加的な特性をもたらすための充填材有り又は無しのエポキシ(EP)などから選択される材料で作製される。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、動力車、特に車の内部本体に組み込まれるアセンブリを提供するためのキャリヤプレートは、zamac、アルミニウム、マグネシウム(Thixomolding)などの金属材料製のキャリヤプレート/フレームとすることができる。キャリヤプレートは、繊維強化プラスチック製とすることができる。
【0035】
本発明によれば、ガラスパネルとキャリヤプレートとの間への材料の射出は、車両用トリム要素に安全性バッキングを提供できるようにして、ガラスの安全性を高め、且つ破損した場合に破片が車両内に広がらないようにする。それゆえ、衝撃を受けたとき、ガラストリム要素は破損しないか、又は衝撃によって、ガラスの破片が飛ばないようにする。ガラスの破損は、ガラスにひびが入る可能性に限定される。
【0036】
本発明は、裏面でガラスと結合されるプラスチックフレームの使用、及びこのプラスチックフレームにいくつかの機能、例えば:負荷がかかったときに仕様を満たすための強化、車の内側本体への固定点、ガラスへの固定形状、機能/装飾要素への固定及び車両のインターフェースへの接続に関する予測に適合させるための幾何学的な側面を組み込むことに関する。
【0037】
キャリヤプレートの主な機能は:
- インターフェースのガラス/本体の役割を果たす
- 使用されるガラスに従って好都合に適合されるサブアセンブリを強化する
- 明るい成形エッジ、パネルなどの他の装飾要素の支持体として使用する、
- わずかに見えているため、ガラスによってもたらされる利点に影響を及ぼすことなく、いくつかの区域においては美的機能を有する
- 基材として使用する、及び/又はフレーム及び/又はガラスによってサブアセンブリに付加価値をもたらすための接続など、異なる機能をマスキングする。とりわけ、付加価値及びフレームを通した接続要素は、ガラスでのタッチ機能、ボタン、エッジ照明、LED、スクリーン、音響装置、振動装置などとすることができる
- 装飾的な側面をもたらすための、主コンソールに加えられる小さなガラス片の部分的な支持体として使用する。装飾は、とりわけ、色付きガラス、彫りのあるガラス、照明を組み込んだガラス、及びケーブルの支持体として使用されるフレームとすることができる。
- ガラスカバーと動力車の主要内側本体との間の騒音/振動を減少させる
- 特定の衝突/衝撃の発生時には、ガラスの変形を最小限にすることを保証するが、適切なエネルギー吸収を可能にする
としてリストされることができる。
【0038】
本発明によれば、キャリヤプレートには、少なくとも、ガラスパネルとキャリヤプレートとの間に軟質材料を射出するための穴が設けられている。
【0039】
キャリヤプレートには、ガラスパネルと接触すると予測されるその面上に凹部が設けられることができ、この凹部は、キャリヤプレート上へのガラスパネルの接着/固定を行うために射出材料で充填されている。
【0040】
ガラスパネルは、一般に、冷間曲げ加工前は平らであるが、わずかに曲がっていてもよい。キャリヤは、曲げ加工の最中、ガラスパネルがその形状に留まることを保証する。それゆえ、補強された領域は、要素に適合された形状の表面から恩恵を受ける機能性要素の取り付けに好適である。例えば、機能性要素は、フラットディスプレイとすることができる。機能性要素は、ガラスパネルを曲げる前又はガラスパネルを曲げた後、補強された領域に取り付けられることができる。機能性要素が、ガラスパネルを曲げる前に補強された領域に取り付けられる場合、提案した方法は、曲げ加工の最中の機能性要素の剥離及び機能性要素の破損を防止することができる。例えば、ディスプレイは、補強された領域に対応する領域においてガラスパネルの裏面に取り付けられる。この実施形態では、ガラスパネルは、少なくとも部分的に光学的に透明である。ディスプレイは、ガラスパネルを曲げる前、ガラスパネルの裏面に取り付けられる。
【0041】
本発明による冷間成形加工は、一般に平らであり、且つエネルギー効率が良く、それゆえ、生産コストの削減に役立つ。冷間成形加工は、一般に、室温及び/又はガラス軟化点未満で実施される。機能性要素が、曲げの前にガラスパネルに取り付けられる場合、温度は、機能性要素の劣化温度以下とすることができる。
【0042】
本発明は、さらに、車両用内装トリム部品に関する。車両用内装トリム部品は、実施形態のうちの1つにおいて射出成形によってキャリヤに固定された冷間成形ガラスパネルを含む。車両用内装トリム部品は、例えば曲げ領域に対応する領域においてガラスパネルの裏面に取り付けられるディスプレイを含むことができる。ガラスパネルの前面は、一般に車両内部に対面している。ガラスパネルの前面は、一般に、車両用内装トリム部品が車両に設置されるときの、車両用内装トリム部品の見える側を形成している。
【0043】
特に、トリム要素は、開口部及び/又は機能性要素、例えばディスプレイを含むことができる。ガラスパネルの開口部は、機能性モジュール、例えば空気孔及び/又はゴミ箱を受け入れるのに好適とすることができる。
【0044】
ガラスパネルは、ソーダ石灰及び/又はアルミノケイ酸を含むことができる。ガラスパネルは、化学的及び/又は熱的に強化されることができる。ガラスパネルの厚さは、少なくとも0.01mm及び/又は多くても2mmとすることができる。
【0045】
先の実施形態と組み合わせられることができる、本発明の別の好都合な実施形態によれば、ガラスシートは、例えばクロミウムの存在によって生成される色を修正又は中和することを可能にする層又はフィルムでコーティングされることができる(例えば色付きPVBフィルム)。
【0046】
本発明によるガラスシートは、好都合なことに、引っかき傷を回避し且つ中央コンソールの上側部分の抵抗性を高めるために、化学的又は熱的に強化(tempered)されることができる。
【0047】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つのトリム要素は、平らな又は曲げられた、化学的に強化されたガラスシートで作製されることができる。一般に、化学的な強化は、ガラス転移温度未満の温度でガラスシートを溶融塩浴に浸漬することにより、ガラスシートの表面においてNa+イオンをK+イオンと交換することによって、実施される。好都合なことに、浴は、高純度KNOからなり、及び処理は、350℃~470℃の温度で、1~24時間行われる。化学的な強化は、好ましくは、3mm未満、一層好ましくは2mm未満、さらに一層好ましくは1mm未満、又はさらに素晴らしくは0.7mm未満の厚さのガラスシートに行われる。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、ガラスシートは、少なくとも1つの透明で導電性の薄い層によってコーティングされる。本発明による透明で導電性の薄い層は、例えば、SnO:F、SnO:Sb又はITO(インジウムスズ酸化物)、ZnO:Al又は同様にZnO:Gaに基づく層とすることができる。
【0049】
本発明の別の好都合な実施形態によれば、ガラスシートは、少なくとも1つの反射防止層によってコーティングされる。本発明による反射防止層は、例えば、低屈折率の多孔質シリカに基づく層とするか、又は、いくつかの層(積み重ね)、特に、屈折率が低い層と高い層が交互になっている誘電材料の層であって、低屈折率の層で終わる層との積み重ねで構成されることができる。テクスチャー加工されたガラスシートも、車両の内側への反射を制限するために使用されることができる。エッチング又はコーティング技術も、反射を回避するために使用されることができる。
【0050】
別の実施形態によれば、ガラスシートは、少なくとも1つの指紋防止層でコーティングされるか、又は指紋を減少させる若しくは防止するように処理されている。この実施形態はまた、タッチスクリーンの前面として本発明のガラスシートを使用する場合に、好都合である。そのような層又はそのような処理は、対向する面に堆積された、透明で導電性の薄い層と組み合わせられる。そのような層は、同じ面に堆積された反射防止層と組み合わせられ、指紋防止層は、積み重ねの外側にあるため、反射防止層を覆っている。
【0051】
望まれる用途及び/又は特性に従って、本発明によるガラスシートの一方及び/又は他方の面に他の層が堆積されることができる。
【0052】
本発明によるガラスシートは、フロート法、延伸法、圧延法、又は溶融ガラス組成から始めてガラスシートを製造するために知られている任意の他の処理によって得られるガラスシートとすることができる。本発明による優先的な実施形態によれば、ガラスシートは、フロートガラスシートである。用語「フロートガラスシート」は、還元条件下で、溶融ガラスを溶融スズ浴に注ぎ入れることからなるフロートガラス加工によって形成されたガラスシートを意味すると理解される。フロートガラスシートは、公知の方法で、「スズ面(tin face)」、すなわちシートの表面近くの、ガラスの本体内でスズが豊富な面を含む。用語「スズが豊富」は、実質的にゼロ(スズがない)であっても又はそうでなくてもよいコアにおけるガラスの組成と比べて、スズの濃度が高いことを意味すると理解される。
【0053】
本発明によるガラスシートは、好ましくは、例えば重量を理由に、0.1~2mmで変動する厚さを有することができる。
【0054】
本発明によれば、ガラスシートは、中央コンソールの上側部分及びその特定の設計に正しく適合するような湾曲を示す。
【0055】
中央コンソールの見た目の美しさを高めるために、トリム要素は、デジタル又はシルクスクリーンが印刷されたガラスシート、エッチングされたガラスシート、塗装/エナメル塗布されたガラスシート、キャストされたガラスシート、抗菌性ガラスシート、着色フロートガラスシートで作製されることができる。
【0056】
本発明の別の実施形態によれば、トリム要素は、合わせガラスシートで作製される。この実施形態によれば、少なくとも1つの熱可塑性中間層は、少なくとも2枚のガラスシートを貼り合わせるために使用される。好都合なことに、着色された又は能動的な中間層が、少なくとも2枚のガラスシート間に存在することができる。中間層又はガラスと中間層との間の層は、低屈折率(例えば<1.43、<1.4、<1.38、...<1.3)を有して、IR吸収の観点から準拠する場合、上側のガラスのTIRを保証する。
【0057】
本発明は、ドアのハンドルの外形、ドアパネル、ダッシュボードのトリム要素、座席の背もたれなどとして車両の内部及び/又は外部に存在するトリム又は装飾要素に応用される。
【0058】
それゆえ、本発明はまた、動力車の内部、より詳細には、上述のようなガラストリム要素及びキャリヤプレートを含む、車の内部(又は外部)のためのアセンブリに関する。そのようなアセンブリの利点は、上述のものと同じである。
【0059】
本発明はまた、本発明の方法による、ガラスパネルに冷間曲げを行うための曲げ型、及びガラスパネルをキャリヤプレートに射出するための型に関する。本発明による曲げ型は:
- 可動コア及び固定キャビティを有する型であって、可動コア及び/又は固定キャビティがガラスパネルに冷間曲げを行うように設計されている型、及び
- 軟質材料を射出するための射出装置
を含む。
【0060】
本発明によれば、曲げ型は、好ましくは型のキャビティに提供される射出装置から射出される軟質材料によってガラスパネルが固定されるキャリヤプレートを受け入れるように適合された、可動コアを含む。
【0061】
曲げ型は、複雑な形状を有するガラスパネルに冷間曲げを行うために、機械的な手段を含むことができる。
【0062】
本発明は、上述の加工によって得られた車両用内装又は外装ガラストリムに関する。
【0063】
例示的な実施形態を、以下の図面と併せて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】キャリヤプレートの射出後の、本発明の一実施形態による2K射出成形型の断面図を示す。
図2】ガラスパネルを曲げる前の、開放位置にある、本発明の一実施形態による射出成形型の断面図を示す。
図3】型を閉じることによって、ガラスパネルの第1の領域を曲げた後の、本発明の一実施形態による射出成形型の断面図を示す。
図4】型の固定側に組み込まれた機械的な手段を使用することによって、ガラスパネルの第2の領域を曲げた後の、本発明の一実施形態による射出成形型の断面図を示す。
図5a-5b】ガラスパネルの第1の領域及び第2の領域を曲げ、且つ成形材料を射出した後の、本発明の一実施形態による射出成形型の断面図を示す。
図6】本発明の一実施形態による冷間成形及び射出加工後のガラスパネル及びキャリヤプレートの分解図を示す。
図7】本発明のある実施形態による車両用内装トリム要素の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1~7に示す対応する特徴は、以下の図面では、同じ参照符号を使用して示す。
【0066】
誤解を避けるために、本発明は、自動車、列車、飛行機などの全ての輸送手段に応用可能である。
【0067】
以下の説明は、車両用内装トリム要素の製造方法に関する。しかしながら、これは、車両外装トリム要素に応用可能である。
【0068】
図1は、本発明の一実施形態による車両用成形内装トリム要素を製造するための方法を実施するための型を示す。
【0069】
図1は、車両用内装トリム要素1を製造するための2部品(2K)の射出成形を可能にする型100を示す。この特定の実施形態ではキャリヤプレート106は、射出成型によって形成される。型100は、可動コア型101と、キャビティ型102とを含む。可動コア型101及びキャビティ型102は、車両用トリム要素に求められる最終形状に従って設計される。型100のキャビティ102は、キャリヤプレート106を作製するために使用される。キャビティ102は、キャリヤプレート106を作製するために使用される型の一方の側面とすることができる。型100は、キャビティ102を備えて、軟質材料120を射出し、且つガラスパネル107を付形し、可動コア101は、その位置を、キャビティ102に対面するように変更される。本発明の一実施形態によれば、キャリヤプレート106は、ポリプロピレンで作製されるが、ABSなどの別の射出成形用材料で作製されてもよいことが理解される。射出成形機はよく知られており、その機構については、ここでは詳細には説明しない。本発明によれば、キャリヤプレート106には、例えばディスプレイ内に配置するための開口部が設けられることができる。この特定の実施形態では、キャリヤプレートは、車両用のコンソール又はダッシュボードとして設計される。コンソール用トリム要素は、左と右の後部座席間に延在することができる。上側トリム要素は、中央コンソールの上側部分を、中央コンソールの中央部分からダッシュボードのすぐ上の部分まで覆うことができる。このトリム要素は、実質的に平らであっても、又は湾曲していてもよい。機能性部分へのいくつかのアクセスは、このトリム要素によってもたらされることができる。この中央部分は、中央コンソールの設計に正しく適合するための湾曲を提供する。中央部分は、例えば音、空調を制御するための機能ボタンへのアクセスを行うための開口部を示すことができる。開口部は、例えば摺動運動によって、開放可能とすることができる別のガラスシートによって覆われる。しかしながら、本発明の1つの他の実施形態では、トリム要素内に配置された機能ボタンは、リード線のあるタッチ機能によって置き換えられることができ、一般的に中央コンソールから突出する非感覚性機能ボタンをなくす。この特定の実施形態では、このトリム要素には、例えば収納用区画又はカップホルダーシステム用などのいくつかの穴がある。
【0070】
本発明の別の実施形態では、上側トリム要素は、ダッシュボードまで延在し、且つGPS、CD/オーディオプレイヤースクリーンなどのディスプレイパネル自体を組み込む。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、型100の可動コア101は、キャリヤプレート106に例えばディスプレイ用の開口部が設けられるとき、ガラスの取り扱いを支援する、第2の可動コア115を含むことができる。機械的な手段としての第2の可動コア115は、ガラスパネルに複雑な形状(異なる領域での異なる曲率半径)を形作るために、与えられる。第2の可動コア115は、機械的な手段(例えばバネ)、液圧手段又は空気圧手段によって操縦されることができる。
【0072】
図2に示すような本発明の一実施形態によれば、トリム要素に求められた最終形状に応じた形状を有するキャリヤプレート106は、型100の可動コア101に設けられる。キャリヤプレート106は、平らな又は第1の湾曲のある第1の領域110と、第2の湾曲のある第2の領域111とを有することができる。この実施形態によれば、ダッシュボードなどの車両用トリムは、複雑な形状を有する。ガラスパネル107に冷間曲げを行って、キャリヤプレート106に固定されるようにして車両用トリム要素を形成するために、ガラスパネル107は、例えば真空カップ113が備わっているおかげで、型100のキャビティ102によって型100内で扱われる。真空カップ113は、図2に示すように、ガラスパネル107を維持し且つガラスをその最終形状に固定するために使用されることができる。従来の真空システムは、熱成形真空成形システムと同様に、それに従ってガラスを付形するためにも使用されることができる。キャビティ102は、本発明に従って軟質材料をキャリヤプレート106とガラスパネル107との間に射出するためのキャビティである。この実施形態によれば、可動コア101は、キャリヤプレート106の場合で前述したように第2の可動コア115を備えることができ、且つガラスパネル107には開口部が設けられている。型100のキャビティは、ガラスパネルを扱い且つガラスパネルを複雑な形状に曲げるのを支援するために、可動コア104を備えることができる。キャビティ102は、ガラスパネルを第2の領域117において曲げるために、可動コア104を備えることができる。第2の可動コア104は、可動コア101の方に向かって動く。キャリヤプレート106が設けられる可動コア101は、型100のキャビティ102の方へ向かって動いて、キャリヤプレート106をガラスパネル107と接触させる。可動コア101とキャビティ102との間に加えられた圧力は、図3に示すように、ガラスパネルの第1の領域116の冷間曲げを可能にする。ガラスパネル107は、真空カップ113によって、その形状に固定される。そのため、型100のキャビティ102の可動コア104は、可動コア101の方へ向かって下向きに動いて、図4に示すように、キャリヤプレート106上のガラスパネル107の最終形状を形作るように、ガラスパネル107の第2の領域117を曲げる。
【0073】
図5bに示すように、ひとたび車両用トリム要素1の最終的な付形が行われたら、軟質材料120は、型100のキャビティ102に設けられた射出装置114によって、キャリヤプレート106とガラスパネル107との間に射出されて、車両用トリム要素1を固定する。軟質材料120は、例えば熱可塑性エラストマー(TPE)又はポリウレタン又は射出成形用の任意の好適な材料である。キャリヤプレートは、ガラスパネルと接触すると予測されるその面上に凹部が設けられることができ、その凹部には、軟質材料が充填されて、キャリヤプレートへのガラスパネルの接着/固定を行う。
【0074】
ひとたび軟質材料120がガラスパネル107とキャリヤプレート106との間に射出されたら、型100を開いて、図5bに示すように車両用トリム要素1を解放する。
【0075】
図6は、ガラスパネル107及びキャリヤプレート106のアセンブリ前の分解図を示す。キャリヤプレート106は、第1の領域110、第2の領域111及び第3の領域112を含む。3つの領域は異なる曲率半径を有して、トリム要素の形状の複雑さ、より詳しくは同様に第1の領域116、第2の領域117及び第3の領域118を含むガラスパネル107の曲がりの複雑さを決定する。
【0076】
図7は、軟質材料120を用いてガラスパネル107にアセンブリされたキャリヤプレート106を含む車両用トリム要素の断面を示す。
【0077】
本発明によれば、キャリヤプレートは、上述のような任意の材料で作製されることができる。ガラスパネルは、ソーダ石灰及び/又はアルミノケイ酸を含むことができる。ガラスパネルは、化学的及び/又は熱的に強化されることができる。ガラスパネルの厚さは、少なくとも0.01mm及び/又は多くても2mmとすることができる。軟質材料は、上述のような任意の材料で作製されることができる。トリム要素は、自動車メーカによって求められる異なる仕様に応じて、単純な形状としても、又は型内でガラスパネル(キャリヤパネル)を曲げる手段を必要とする複雑な形状としてもよい。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、トリム又は装飾要素は、ドアのハンドルの外形、ドアパネル、ダッシュボードのトリム要素、座席の背もたれなど、動力車、特に車の内部に存在することができる。
【0079】
本発明の別の実施形態によれば、機能性部分は、タッチパネルを提供する「タッチ機能」のおかげで、トリム要素から直接管理されることができる。それゆえ、ガラスシート製のそれぞれのトリム要素は、電子器具類及び車両制御情報を取り巻く、接続性、タッチ、ディスプレイ及びオーディオに関する異なる機能を支援(host)することができる。それゆえ、中央コンソールの上側部分は、中央コンソールの上側部分のより広い部分をガラスシートで作製することができ、非感覚性ボタンを使用せずに、例えばオーディオの音量制御及びオン/オフ、エンジン始動/停止システム、ヘッドアップディスプレイ制御システム、板ガラスの開放、ディスプレイシステムコントロールを制御し、車内で、異なるガラスパネル上での情報の表示の循環、SMART板ガラスの制御などを可能にする。この実施形態によれば、タッチパネルは、運転手/乗客の人間工学条件(視界の適合及びグレアに関連する問題)を向上させるために、湾曲されることができる。トリム要素上のキャビティは、タッチセンサーを簡単に検出できるようにするために(運転手の安全上の理由で)、平らなガラスシート上に触覚フィードバックをもたらすように処理されることができる。
【0080】
本発明の別の実施形態によれば、例えばOLED、LED、特殊なガラス用ペイント/エナメルバッキングなどのいくつかの照明手段が、中央コンソール内に又はその縁に組み込まれることができる。ポリカーボネートプレートがガラストリム要素の後ろ側に設けられて、光をより拡散することができる。
【0081】
本発明の別の好ましい実施形態では、トリム要素は、コンソール本体の後部からダッシュボードまで延在する1枚のガラスシートで作製され、開口部は、機能性部分へのアクセスをもたらすように配置されている。そのような開口部は、開放可能なガラスシートによって覆われることができる。
図1
図2
図3
図4
図5a-5b】
図6
図7