(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】車両用ホイール
(51)【国際特許分類】
B60B 5/02 20060101AFI20240605BHJP
B60B 7/00 20060101ALI20240605BHJP
B60B 27/00 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
B60B5/02 G
B60B7/00 R
B60B27/00 K
(21)【出願番号】P 2021553083
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2020057242
(87)【国際公開番号】W WO2020187892
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-11-24
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】514091231
【氏名又は名称】ムベア カルボ テック ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】MUBEA CARBO TECH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】レンナー, クリストフ
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0255462(US,A1)
【文献】特表2016-531796(JP,A)
【文献】特表2015-505767(JP,A)
【文献】特表2020-531343(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107009815(CN,A)
【文献】国際公開第2020/038534(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 5/02
B60B 7/00
B60B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム(2)と、
ホイールセンター部(3)と、
金属材で製造された支持カバー(7)と、を備え、
前記ホイールセンター部(3)は、
中央開口(6)を含むハブ(5)から前記リム(2)に向かって半径方向外方に延びる幾つかのスポーク(4)を有し、
前記ハブ(5)は、繊維強化プラスチック材で製造されており、
車軸方向外側を前記支持カバー(7)によって覆われ、
前記ハブ(5)は複数の締結開口(8)を含み、
、前記締結開口(8)は前記中央開口(6)の周囲に配置されており、前記支持カバー(7)は前記締結開口(8)の周囲を取り囲み、
前記支持カバー(7)は、1つ以上の第1ブッシュ(9)と結合しており、前記1つ以上の第1ブッシュ(9)は、前記ハブ(5)における前記繊維強化プラスチック材を部分的又は全面的に通って延びており、前記1つ以上の第1ブッシュ(9)は、前記ハブ(5)における前記繊維強化プラスチック材のそれぞれのブッシュ開口(10)に配置され、
前記1つ以上の第1ブッシュ(9)は円錐状の外側面(11)を有し、前記外側面(11)は、前記取り付け位置において、前記ハブ(5)の前記繊維強化材の対応する内側面(12)に、前記ブッシュ開口(10)を拡張するよう作用する、ことを特徴とする車両用ホイール(1)。
【請求項2】
繊維強化プラスチック材料中に配された前記強化繊維は、前記
1つ以上の第1ブッシュ(9)を
部分的又は全面的に取り囲む
ように配置される、請求項
1記載のホイール(1)。
【請求項3】
前記強化繊維は、前記ホイール(1)の半径方向に、
1つ以上のスポーク(4)を通って前記リム(200)に向かってさらに延在する
ように配置される、請求項
2記載のホイール(1)。
【請求項4】
前
記支持カバー(7)は、前記ホイールセンター部(3)の外側輪郭に
組付けられている、請求項1から
3までのいずれか1項記載のホイール(1)。
【請求項5】
前記ハブ(5)の前記繊維強化材は、前
記支持カバー(7)が埋め込まれる凹部(13)を含む、請求項1から
4までのいずれか1項記載のホイール(1)。
【請求項6】
前
記支持カバー(7)は、前記スポーク(4)のうち
1つ以上の内部に
部分的又は全面的に延在する、請求項1から
5までのいずれか1項記載のホイール(1)。
【請求項7】
前
記支持カバー(7)は溝状凹部(14)を含み、前記溝状凹部(14)において、繊維強化材が前記ハブ(5)からスポーク(4)内に延びて配置され、且つ、前記繊維強化材を外部から支持する、請求項1から
6までのいずれか1項記載のホイール(1)。
【請求項8】
前
記支持カバー(7)は、前記ホイール(1)の前記中央開口(6)を
部分的又は全面的に包囲する中央フランジ(15)であって、前記溝状凹部(14)に対して
車軸方向内側に後退して設置される中央フランジ(15)を備える、請求項
7記載のホイール(1)。
【請求項9】
前記ハブ(5)は、金属材で製造された内側支持カバー(16)によって
車軸方向内側を覆われている、請求項1から
8までのいずれか1項記載のホイール(1)。
【請求項10】
前記内側支持カバー(16)は、
1つ以上の第2ブッシュ(17)と
結合されており、前記
1つ以上の第2ブッシュ(17)は、前記ハブ(5)における前記繊維強化プラスチック材を少なくとも部分的に通って前記ブッシュ開口(10)内に延びている、請求項
9記載のホイール(1)。
【請求項11】
請求項1から
10までのいずれか1項記載の、支持カバー(7)を有するホイール(1)の製造方法であって、
前記ホイール(1)の前記外側面に
部分的又は全面的に対応し、前記支持カバー(7)のための位置保持部を備える金型を提供するステップと、
前記繊維が前記位置保持部の周囲を
部分的又は全面的に取り囲むように
、前記金型の内部に繊維を配置するステップと、
前記金型を閉鎖し、射出開口を通して樹脂を前記金型の内部に導入するステップと、
前記樹脂及びその中に埋め込まれた強化繊維を硬化させるステップと、
前記金型を開き、前記金型から前記ホイールを取り外すステップと、
前記支持カバー(7)を前記ホイールセンター部(3)におけるそれぞれの凹部(13)に挿入するステップと、を備える製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に繊維強化プラスチック材料で製造されたホイールに関する。本発明はさらに、このようなホイールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも部分的に繊維強化プラスチック材料で製造された車両用ホイールは、従来から知られている。
【0003】
WO2015/027271A1は、Carbon Revolution PTY Ltd.のために2015年3月5日に公表され、センターロック締結具と当該センターロック締結具に締結可能なセンターロック締結ナットとを使用して複合ホイールをマウントに取り付けるセンターロック取付構成を開示する。複合ホイールは中央取付け領域を含んでおり、当該中央取付け領域は中央取付け開口を有し、これを通してセンターロック締結具が挿入される。同様に、複合ホイールは、センターロック締結具が挿入される取付け開口を有する前側要素と、センターロック締結具が挿入される取付け開口を含む後側要素とを含む。当該文献は、複合ホイール、前側要素、及び、後側要素の取付け開口の周囲に環状に間隔を置いて配置された複数の締結開口をさらに開示している。使用時には、前側要素及び後側要素の整列した開口を通して受け入れられるように構成された複数の細長い締結具が、複合ホイールの中央取付け領域の上方及び周囲で前側要素及び後側要素を緊締する。
【0004】
WO2013/000009A1は、Carbon Revolution PTY Ltd.のために2013年1月3日に公表され、細長い締結要素と当該細長い締結要素に締結可能な締結ナットとを使用して複合ホイールをマウントに取り付ける際に使用する取付構成を開示している。当該取付構成は、複合ホイールと共に使用されるものであり、当該複合ホイールは、細長い締結要素が挿入される少なくとも1つの取付け開口を含む。当該取付構成は締結ワッシャを含んでおり、当該締結ワッシャは、使用時に細長い締結要素を挿入することができる締結開口を有する。締結開口は、半径方向中央の締結軸線を含む。また、締結ワッシャは、取付け開口を中心として複合ホイールの表面と対向するように構成されたベースを有する。加えて、締結ワッシャは、取付け開口から実質的に軸線方向外方を向く締結側面を有する。締結側面は少なくとも1つの係合面を含んでおり、当該係合面は、締結ナットが細長い締結要素に取付けられたときに、締結ナットの相補的部分と動作可能に係合するように構成されている。また、締結構成はスリーブを含んでおり、当該スリーブは、締結開口を中心としてベースから外方に締結軸線に対して軸方向に延びる。スリーブは、複合ホイールの取付け開口内に延在するように構成される。また、スリーブは遠位端を含んでおり、当該遠位端は、マウントまたは当該マウントに隣接して配置された要素内に配置された相補的な形状のスリーブ開口に受容されるように構成されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
車両ホイールの総質量を最小限に抑えるために、少なくとも部分的に繊維強化プラスチック材料で製造されたホイールが開発されており、当該繊維強化プラスチックは、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、玄武岩繊維、またはそれらの組み合わせを、プラスチック材料に埋め込まれた強化繊維として含んでいる。
【0006】
この種のホイールは、異種材料間における腐食現象を防止するとともに、異種材料が混在する複数の領域で(それぞれ均等な応力、歪分布を得るため)応力集中を防止するように特別な対策が必要となる場合が多い。従って、車両のハブへのこれらのホイールの取り付けは、車両のハブからホイールのハブ領域内へ、そしてそこからリム内へ、ホイール中心の周囲領域における効率的な荷重伝達が必要とされるので、しばしば重要であることが判明する。
【0007】
一態様では、本発明は、ホイールを車両に取り付けるために改良されたハブを有するホイールに関する。改良されたハブは、好ましくは金属材料、または代替的に同質材料から製造された支持カバーを備える。支持カバーは、通常、ハブの不可欠な部品を形成しており、繊維強化プラスチック材料で製造されたハブの一区分を支持している。これは、締結手段とホイールとの間の機械的に有利な荷重伝達を得ることの助けとなる。さらに、ハブにおける応力分布/歪分布を改善できる。
【0008】
本発明によるホイールは、リムとホイールセンター部とを備え、当該ホイールセンター部は、ハブからリムに向かって半径方向外方に延びる幾つかのスポークを有する。リムはリム落とし込み部を有し、当該リム落とし込み部は、内側フランジと外側フランジとの間で、横方向(ホイールの回転軸の方向)に延びており、その上に取り付けられるタイヤを受け入れるのに適している。ホイールセンター部は、好ましくは繊維強化プラスチック材料で製造されている。ハブは少なくとも1つの締結開口を備えており、当該締結開口によって、ホイールは、当該ホイールの内側面で車両における対応するハブに相互接続されることが意図されている。ホイールを車両に取付けるため、例えばボルトまたはねじ等の少なくとも1つの締結手段が、それぞれの締結開口を通じて挿入される。ハブは、相互接続のための中央開口をさらに備える。
【0009】
好ましい変形例では、ハブは、金属材料で製造された三次元形状の支持カバーによって外側で支持される。用途に応じて、当該支持カバーは、少なくとも1つのウィングを含んでいてもよく、当該ウィングは、スポーク内に及び/又はスポーク間の空間内に少なくとも部分的に延びている。質量慣性の理由から、支持カバーは、好ましくは全てのスポーク内に又は異なる数のスポーク内に延び、ホイールの周囲に均等に分布している。それぞれのスポークに沿って延在する複数のウィングが存在する場合、支持カバーは、全体的に星形状または花形の形状を有する。
【0010】
支持カバーは、好ましくはホイールセンター部の外側輪郭に一体化されている。従って、支持カバーはホイール構造体に埋め込まれてよく、これによりホイールの連続した外側面が維持されており、当該支持カバーはホイールの輪郭にわたって大きく延びているわけではなく、これにより局所的なピーク荷重が回避される。さらに、ハブの繊維強化材は、(外側)凹部を備えることができ、当該外側凹部に三次元形状の支持カバーを配置できる。それによって、支持カバーは、ホイールの外側から材料の付加層における付加部分によってそれぞれ覆われ、さらに保護されてもよい。
【0011】
支持カバーは、締結手段を受け入れることが意図されるハブの中央開口及び/又は少なくとも1つの締結開口を包囲することができる。支持カバーは、中央開口の周囲にリング形状であってもよく、ハブにおける多数の締結開口を取り囲んでいてもよい。変形例では、支持カバーは、中央開口を少なくとも部分的に包囲する中央フランジを備えることができる。有利には、中央フランジは、組み立てられた状態で、ホイールの中央開口内に部分的に延在している。
【0012】
支持カバーは溝状凹部をさらに備えてもよく、当該溝状凹部において、繊維強化材はハブからスポーク内に延在して配され、外側から繊維強化材を支持している。好ましくは上述したように、中央フランジは、溝状凹部に対して横断方向にホイール内に後退して配置されている。溝状凹部は、長方形または台形の断面(1つの側面で開口している)を有していてもよく、この場合、少なくとも2つの側面が半径方向に延在している。しかしながら、他の形状の断面も可能である。
【0013】
有利には、支持カバーは、繊維強化プラスチック材と共に横方向にアンダーカットを形成してもよい。例えば、溝状凹部の周囲の支持カバーは、半径方向においてクランプ状断面を有してもよく、横断方向における少なくとも1つの溝状凹部の両側面にアンダーカットが形成されることで、ホイールセンター部またはスポークの一部の周囲に部分的にクランプすることができる。支持カバーが少なくとも1つのアンダーカットを形成する構成は、熱膨張、クリープ、または他の影響に起因してホイールの耐用年数中に生じるわずかな角度不整合を補償することを可能にし得るので、有利である。
【0014】
支持カバーは、好ましくは第1ブッシュと一体化しており、当該第1ブッシュは、ハブの繊維強化プラスチック材を少なくとも部分的に通って横方向に延びている。少なくとも1つの第1ブッシュは、支持カバーと一体の部分であってもよく、又は支持カバーに相互接続された別個の部分であってもよい。ホイールの組み立て状態では、少なくとも1つの第1ブッシュは、ハブにおける繊維強化プラスチック材のそれぞれのブッシュ開口に配置され、締結開口を有利に取り囲んでいる。複数の第1ブッシュ、それぞれ複数のブッシュ開口は、中央開口を中心として周方向に配置されてよい。複数の第1ブッシュは更に、組み立てられた状態で、ホイールの複数のスポーク間において周方向に配置されてもよい。しかしながら、ホイールの設計に応じて、第1ブッシュは、円周方向において異なる位置に配置されてもよい。
【0015】
本発明の変形例において、少なくとも1つの第1ブッシュは円錐状の(第1)外側面を有しており、当該外側面は、組み立てられた位置において、ハブの繊維強化材のブッシュ開口における対応する(第1)内側面と相互作用する。少なくとも1つの第1ブッシュをブッシュ開口に挿入する際、横方向にあまり大きな変形をすることなく、ブッシュ開口の拡張が得られる。ブッシュ開口の拡張によりホイールセンター部の繊維に予張力が加えられ、それによって後述するようにホイールセンター部をさらに安定させ、荷重伝達が改善される。
【0016】
好ましくは、第1ブッシュにおける少なくとも1つの(第1)外側面は、(弧度)5°から20°の外側開口角度を有する実質的に切頭円錐形状を有しており、これにより特定の均等な拡張を誘発する。特に、(弧度)10°程度の外側開口角度を用いれば良好な結果が得られる。
【0017】
本発明の変形例によれば、ブッシュ開口の少なくとも1つの(第1)内側面は実質的に切頭円錐形状を有しており、当該切頭円錐形状は、上記外側開口角度と実質的に等しい内側開口角度を有する。ただし、用途によっては、内側開口角度は、外側開口角度から例えばプラスまたはマイナス5°(弧度)だけずれてもよい。
【0018】
本発明の変形例によれば、ホイールセンター部は、プラスチック材料内に配された強化繊維を含み、当該繊維は、外側支持カバーの少なくとも1つの第1ブッシュを少なくとも部分的に取り囲んでいる。強化繊維は、例えば1つのスポークから出て、第1ブッシュを部分的に取り囲み、隣接するスポークに続くことができる。例えば、(繊維強化)プラスチック材料内に配置された強化繊維は、少なくとも1つの第1ブッシュを少なくとも240°取り囲むことができる。これは、第1ブッシュがスポークの間に配置される場合に有利であり得る。少なくとも1つの第1ブッシュがスポークと同じ位置で円周方向に配向されている場合、強化繊維も1つのスポークから出てよく、同じスポークに戻る前に、第1ブッシュを部分的または完全に囲む。用途に応じて、繊維は、第1ブッシュを複数回取り囲むこともできる。さらに、第1ブッシュは、異なる方法で異なる繊維によって取り囲まれてもよい。追加の強化繊維は、半径方向外側から複数の第1ブッシュを取り囲み、構造をさらに安定させることができる。好ましくは、少なくとも1つの第1ブッシュを取り囲む強化繊維は少なくとも1つの繊維束を形成しており、当該繊維束は、例えば、ロービング、テープ、織物、または編組構造であってもよく、またはそれらの一部であってもよい。ブッシュ開口を拡張することにより、強化繊維の予張力を得ることができる。中央開口の周囲におけるブッシュ開口の周方向位置に応じて、外側支持カバーは、周方向に沿って及び半径方向に均等に予張力をかけることができる。繊維の予張力はハブにおける応力分布/歪分布を改善し、ハブへの荷重伝達に確かに影響を与える。
【0019】
変形例では、少なくとも1つの第1ブッシュを部分的に包囲する強化繊維又は強化繊維束の第1及び第2端部は、ホイールのリムに向かってホイールの異なるスポーク内に延在してもよい。これに代えて、またはこれに加えて、これらはホイールの同じスポーク内でホイールのリムに向かって延びていてもよい。いくつかのタイプのホイールでは、第1および第2端部分は、ホイールのリムに向かってまたはホイールのリムの内部にさえ、ホイールの半径方向にさらに延在する。機械的に特に有利なホイールは、第1及び第2端部がリムの円周方向カラーを介してリムに延びる場合に得られる。
【0020】
特に良好な結果は、繊維又は繊維束の少なくとも一部が、ブッシュ開口の少なくとも1つの(第1)内側面から5mm(ミリメートル)未満、好ましくは2mm未満の距離に配置される場合に得ることができる。いくつかの用途では、少なくともいくつかの繊維または少なくとも1つの繊維束は、(第1)内側面に直に整列されてもよい。
【0021】
代替的に又は追加的に、ホイールは、当該ホイールの内側からハブを覆う、内側支持カバーを備えてもよい。内側カバーは、三次元形状を有していてもよい。外側支持カバーと同様に、内側支持カバーは、ホイールセンター部の内側面の外側輪郭に有利に一体化されている。従って、内側カバーは、ハブの繊維強化材と共にホイール構造体に埋め込まれてもよく、当該ハブは、当該内側カバーが埋め込まれる対応する(内側)凹部を含む。しかしながら、ハブが内側で車両に相互接続されることが意図されるという事実のために、内側支持カバーは、有利には車両ハブとの相互接続のための(平坦な)相互接続面を有しており、そこから、以下に説明するように第2ブッシュが延びることができる。更に、内側支持カバーは、中央開口の周囲に付加的な中央フランジを特徴としてもよいし、及び/又は外側方向に延びる内側支持カバーの半径方向外端部に設けられた円周方向フランジを特徴とすることができる。
【0022】
内側支持カバーが少なくとも1つの第2ブッシュを含み、これがホイールの内側からブッシュ開口内にハブの繊維強化プラスチック材を少なくとも部分的に通って延びている場合、良好な結果が得られることがある。少なくとも1つの第2ブッシュは、内側支持カバーと一体の部分であってもよく、又は内側支持カバーに相互接続された別個の部分であってもよい。好ましくは、外側支持カバー及び内側支持カバーはそれぞれ、同じ数の第1、第2ブッシュを有しており、第1および第2ブッシュそれぞれは互いに同心円状に配置されている。第1及び第2ブッシュは、それぞれ異なる側面からブッシュ開口に挿入されるように構成されている。
【0023】
本発明の変形例では、外側支持カバーは少なくとも1つの第1ブッシュを備え、内側支持カバーは少なくとも1つの対応する第2ブッシュを備える。少なくとも1つの第1ブッシュは、ブッシュ開口の第1内側面に第1の拡張力を加えるように構成された第1外側面を備える。代替的にまたはこれに加えて、第2ブッシュは、ブッシュ開口の第2内側面に第2の拡張力を加えるように構成された第2外側面を備える。これに関連して、第1および/または第2ブッシュは、円筒形状の(第1および/または第2)外側面を有してもよく、当該円筒形状の外側面はブッシュ開口のそれぞれの(第1および/または第2)内側面にいかなる拡張力も加えない。また、第1ブッシュの第1外側面は、上述したように、実質的に切頭円錐形状を有していてもよい。このような変形例では、ブッシュ開口の第1内側面は実質的に切頭円錐形状を有しており、当該切頭円錐形状は、第1外側開口角度と実質的に等しい第1内側開口角度を有する。特に良好な結果が得られるのは、第1外側開口角度が約10°(弧度)である場合である。本発明の変形例において、第2ブッシュの第2外側面は、5°から20°(弧度)の第2外側開口角度を有する実質的に切頭円錐形状を有する。このような変形例では、ブッシュ開口の第2内側面は実質的に切頭円錐形状を有しており、当該切頭円錐形状は、第2外側開口角度と実質的に等しい第2内側開口角度を有する。第2外側開口角度が約10°であれば、特に良好な結果が得られる。ホイールの種類に応じて、第1及び第2外側開口角度は等しくてもよいし、異なる角度であってもよい。
【0024】
切頭円錐形状の代わりにまたはそれに加えて、(第1および/または第2)外側面および/または(第1および/または第2)内側面は湾曲した輪郭を有してもよく、それぞれ(第1および/または第2)外側ブッシュの直径は横方向に非線形に変化してもよい。切頭円錐形状のブッシュと比較すると、そのような変形例は典型的には製造されるのがより複雑であろう。このような(二次元的に)湾曲した面は、ブッシュ開口の高度に特異的な拡張を可能にし、従ってホイールセンター部の周囲における応力分布/歪分布を得ることができる。
【0025】
第1ブッシュ及び第2ブッシュの位置合わせを比較的良好にするとともに、望ましくない応力集中を防止するために、第1ブッシュは、組み立てられた状態でブッシュ開口内に配置され且つ凸形状を有する第1前側面を備え、第2ブッシュは、組み立てられた状態でブッシュ開口内に配置され且つ第1前側面を受け入れるように構成された凹形状を有する第2前側面を備える。これにより、第1及び第2ブッシュを互いに整列させることができる。代替的に、第1前側面が凹形状を有し、第2前側面が対応する凸形状を有するものでもよいことは明らかである。しかしながら、用途に応じて、第1及び第2前側面は、直線的に直に隣接する面のような他の形状を有することができる。いくつかの用途では、第1および第2ブッシュは接着剤またはねじ接続によって互いに機械的に相互接続されてもよく、他の用途では、第1および第2ブッシュそれそれが互いに解放可能であってもよく、またはある距離だけ離間されていてもよい。
【0026】
好ましくは、外側支持カバー及び/又は内側支持カバーは、アルミニウム、マグネシウム又はチタンのような軽量金属で作られる。本発明の文脈内で、「アルミニウム」、「マグネシウム」および「チタン」は、それらの合金も意味するものとして理解されるべきである。あるいは、外側支持カバーおよび/または内側支持カバーは、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの別の同質な材料から製造されてもよい。支持カバーと繊維強化プラスチック材との異種材料間の腐食現象のために、並びに応力集中を防止するために、ハブは追加の中間層を含むことができる。中間層は、外側支持カバーと繊維強化プラスチック材との間、及び/又は内側支持カバーと繊維強化プラスチック材との間に配置することができる。中間層は電気絶縁材料を含んでもよく、当該絶縁材料は、接触腐食現象のさらなる低減-それぞれの防止-を可能にする。このような電気絶縁材料は、プラスチック材料であってもよい。好ましくは、絶縁材料は更に高温耐性材料である。適切な材料は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)またはポリフタルアミド(PPA)またはポリエーテルケトン(PEK)(例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリ(エーテルケトン-エーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK))であってもよい。しかしながら、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)および低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリアミド(PA)などの材料も適切な材料である。また、ガラス、セラミックス、玄武岩等の材料を用いてもよい。例えば、中間層は、ガラスまたは玄武岩繊維から製造された織物、またはこれらの繊維によって強化された複合構造を含んでもよい。ガラスまたは玄武岩繊維を使用することは、良好な電気絶縁を提供するために有利であり得る。
【0027】
本発明の変形例において、外側支持カバーは、それぞれ内側からブッシュ開口に挿入された複数の個々のブッシュと組み合わされてもよい。支持カバーの第1ブッシュの前側面および個々のブッシュの前側面は、上述した前側面と同等に設計されてもよい。
【0028】
本発明の変形例では、少なくとも1つの中間ブッシュが、外側支持カバーと内側支持カバーとの間に配置されてもよい。中間ブッシュは、外側又は内側支持カバーの一部、又は支持カバーのいずれかに相互接続された別個の要素のいずれかである。これらの中間ブッシュは、上述したように、第1及び/又は第2ブッシュと同じ形状及び機能を有することができる。
【0029】
上述したような外側支持カバー及び/又は内側支持カバーを有するホイールの製造プロセスは、以下の方法ステップ、即ち、ホイールの外側面に少なくとも部分的に対応する上部及び下部を含む金型を提供するステップを含むことができる。少なくとも1つの金型部分は、外側支持カバー及び/又は内側支持カバーのための三次元位置保持部を含む。位置保持部は、少なくとも1つの別個の部品であってもよいしまたは金型の一体部品であってもよく、これにより、金型は支持カバーなしでホイールの輪郭に局所的に対応する。更に、上述のように、強化繊維が少なくとも1つの位置保持部を少なくとも部分的に取り囲むように、繊維を所定の方法で金型内に配置するステップを含む。また、金型を閉鎖し、射出開口を通して樹脂を金型に導入するステップを含む。また、樹脂およびその中に埋め込まれた繊維を硬化するステップを含む。金型を開き、金型からホイールを取り外すステップを含む。また、支持カバーを取り付けるためのホイールの表面を準備するステップを含む。また、外側支持カバーおよび/または内側支持カバーをホイールセンター部のそれぞれの凹部に挿入するステップを含む。外側支持カバー及び/又は内側支持カバーは、接着剤によってホイールセンター部に取り付けられてもよい。
【0030】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方が実施形態を提示しており、これらは、開示の性質および特徴を理解するための概観またはフレームワークを提供する意図であることを理解されたい。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、当該明細書の一部を構成する。図面は様々な実施形態を示し、詳細な説明とともに、開示された概念の原理および動作を説明するのに役立つ。
【0031】
本明細書に記載された発明は、以下に記載される発明を実施するための形態および添付の図面からより完全に理解され、これらの記載は、添付の特許請求の範囲に記載された発明を限定するものとみなされるべきではない。図面は概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】部分的に分解された外側支持カバー及び内側支持カバーを有する本発明によるホイールの実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1に示す外側支持カバー及び内側支持カバーである。
【
図3】組み立てられた状態の
図1に示すホイールの正面図である。
【
図5】組み立てられた状態の
図4に示すI部の詳細図である。
【
図6】部分的に分解された状態の
図4に示すI部の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
添付の図面に例が示されている特定の実施形態を詳細に説明し、ここでは全てではないが幾つかの特徴が示されている。実際に、本明細書に開示される実施形態は多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして理解されるべきではなく、むしろこれらの実施形態は、本開示により適用可能な法的要件を満たすように提供される。可能な限り、同様の参照番号は、同様の構成要素または部品を示すために使用される。
【0034】
図1から
図6は、本発明によるホイール1の第1実施形態を示す。ホイール1は、リム2とホイールセンター部3とを備えており、当該ホイールセンター部3は、中央開口6を含むハブ5からリム2に向かって半径方向外側に延びるいくつかのスポーク4を有する。ホイールセンター部3は、数層の繊維強化プラスチック材で製造されている。リム2は、内側フランジと外側フランジとの間で横断方向に延びるリム落とし込み部を有しており、内側フランジ及び外側フランジは、その上に取り付けられるタイヤ(図示せず)を受け入れるのに適したものである。ハブ5は、部分的に繊維強化プラスチック材で製造されており、金属材料で製造された三次元形状の支持カバー7によって外側で覆われている。ハブ5は、ホイールボルト/ホイールねじまたは類似の締結手段(図示せず)によって、内側で車両(図示せず)と相互接続されるようになっており、当該ホイールボルト/ホイールねじ、または類似の締結手段は、車両に対するホイールの取付け状態でホイール1の締結開口8を通って延在している。
【0035】
(外側)支持カバー7は、中央開口6と締結開口8を含む。三次元形状の支持カバー7は更に、少なくとも1つの第1ブッシュ9と一体化しており、当該第1ブッシュ9は、ホイールの内側に向かってホイールの横断方向にハブ5の繊維強化プラスチック材を少なくとも部分的に通って延在する。図示の形態では、合計5つの第1ブッシュ9が見られる。しかしながら、異なる数の第1ブッシュ9が選択されてもよい。
【0036】
第1ブッシュは、ハブ5の繊維強化プラスチック材におけるそれぞれのブッシュ開口10内に配置されている。第1ブッシュ9は(切頭)円錐形状の第1外側面11を有し、当該第1外側面11は、取り付けられた位置で、ハブ5の繊維強化材におけるブッシュ開口の対応する第1内側面12と相互作用する。
【0037】
各第1外側面11は、第1ブッシュ9がブッシュ開口10に挿入されたときに、ハブ5における繊維強化材の対応する第1内側面12に膨張力を加えるように構成されている。これによりブッシュ開口10を拡張することができ、この結果、少なくとも1つの第1ブッシュ9を部分的に取り囲むハブ5の強化繊維に張力が加えられる。好ましくは、繊維強化プラスチック材中に配された強化繊維は、少なくとも1つの第1ブッシュ9を少なくとも240°取り囲む。強化繊維又は繊維束23は
図2に概略的に示されている。しかし、当該繊維は、それぞれの第1ブッシュ9の周りに円形構造を形成することもできる。強化繊維は更に、スポーク4を通ってリム2に向かってホイール1の半径方向に延在してもよい。これにより、繊維は、異なるスポーク4又は同じスポーク4において延在することができる。
【0038】
図3から
図5は、三次元形状の支持カバー7がハブ5の外側輪郭に一体化されていることを示している。したがって、ハブ5の繊維強化材は、三次元形状の支持カバー7が埋め込まれる外側凹部13を備える(
図6)。外側凹部13ひいては支持カバー7は、ハブ5を覆って、且つスポーク4を少なくとも部分的に覆って延びている。支持カバー7はホイール1の中央開口6を少なくとも部分的に包囲する中央フランジ15を備えており、当該中央フランジ15は、溝状凹部14に対して後退してセットされている。中央フランジ15は、ホイールセンター部3の中央開口内に延びている。三次元形状の支持カバー7はさらに溝状凹部14を含んでおり、当該溝状凹部14において、繊維強化材がハブ5からスポーク4内に延びて配置され、外部から繊維強化材を支持する。
【0039】
ハブ5は、同様に金属材料から製造された内側支持カバー16によって内側で覆われている。内側カバー16は、少なくとも1つの第2ブッシュ17と一体化しており、当該第2ブッシュ17は、ハブ5の繊維強化プラスチック材を少なくとも部分的に通ってブッシュ開口10内に延びる。各々の外側支持カバー7及び内側支持カバー16は、それぞれの(第1及び第2)ブッシュと共に、それぞれ異なる側面(ホイールセンター部の外側及び内側)からブッシュ開口10に挿入されるように構成されている。少なくとも1つの第2ブッシュ17は(切頭)円錐形状の第2外側面21を有し、当該第2外側面21は、取り付けられた位置で、上述した(第1)ブッシュ9に対応して、ハブ5の繊維強化材における第2内側面20と相互作用する。強化繊維又は繊維束23は、第1ブッシュ及び/又は第2ブッシュの各々を部分的に取り囲んで、
図2に概略的に示されている。しかしながら、当該繊維は、それぞれの第1ブッシュ9および/または第2ブッシュ17(図示せず)の周りに円形構造を形成することもできる。
【0040】
図5は、組立状態における
図4に係るホイール1の断面図を示し、
図6は、これに対応する分解された状態の詳細を示す。図面から分かるように、第1ブッシュ9の各第1外側面11は切頭円錐形状を有し、これは、好ましくは約15°の第1外側開口角度を有する。また、対応する第1内側面12は、当該外側開口角度と実質的に等しい内側開口角度の切頭円錐形状を有する。同様に、第2ブッシュ16の各第2外側面21も、約15°の第2外側開口角度を有する切頭円錐形状を有する。また、ブッシュ開口10の各第2内側面20は、当該第2外側開口角度と実質的に等しい第2内側開口角度の切頭円錐形状を有する。しかしながら、上述したように、第1及び第2ブッシュ9、17の他の形状でもよい。
【0041】
第1ブッシュ9は、それぞれ、組み立てられた状態で、第2ブッシュ17のそれぞれの前側面18に当接する第1前側面18を備える(
図6)。図示された第1及び第2ブッシュ9、17は、それぞれの前側面18で互いに当接する直線状の端部を有する。しかしながら、前側面18は、対応する凹形状/凸形状を有するものでもよい。
【0042】
本明細書で使用される用語は、限定的なものではなく説明のための用語であり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることを理解されたい。
【符号の説明】
【0043】
1 ホイール
2 リム
3 ホイールセンター部
4 スポーク
5 ハブ
6 中央開口
7 外側支持カバー
8 締結開口
9 第1ブッシュ
10 ブッシュ開口
11 (第1)外側面
12 (第1)内側面
13 外側凹部
14 溝状凹部
15 中央フランジ
16 内側支持カバー
17 第2ブッシュ
18 前側面
19 内側凹部
20 第2内側面
21 第2外側面
22 側面
23 強化繊維