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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/15 20230101AFI20240605BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240605BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20240605BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20240605BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240605BHJP
【FI】
H10K50/15
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K50/12
H10K85/30
H10K85/60
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021572796
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2021002068
(87)【国際公開番号】W WO2021149773
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2020008577
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507074834
【氏名又は名称】エスエフシー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛史
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】駿河 和行
(72)【発明者】
【氏名】林 秀一
(72)【発明者】
【氏名】チャ スンウク
(72)【発明者】
【氏名】ジュ ソンフン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ビョンソン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジファン
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199743(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/164331(WO,A1)
【文献】特開2020-083896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00 ― H10K 102/20
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極および陰極を備え、
前記陽極と前記陰極との間に、前記陽極側から少なくとも第一正孔輸送層と第二正孔輸送層と青色発光層と電子輸送層とをこの順に備え、
前記第一正孔輸送層と前記電子輸送層との間に配置される層のうちの少なくとも一層が、下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有し、
前記青色発光層が、青色発光性ドーパントを含有し、
前記青色発光性ドーパントが、下記一般式(2)または(3)で表される化合物である、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
(式中、Ar、Ar2、ArおよびArは相互に同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表し、
、RおよびRは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、
nは1~3の整数を表す。)
【化2】
【化3】
(式(2)及び(3)中、Q ~Q は相互に同一でも異なってもよく、Q およびQ は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素、または置換もしくは無置換の芳香族複素環を表し、Q は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。
XはB、P、P=O、またはP=Sを表す。
~Y は相互に同一でも異なってもよく、N-R 、C-R 、O、S、SeまたはSi-R の中から選択されるいずれか1つであり、
~R は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。
また、R とR 、R とR はそれぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
ただし、Y ~Y がN-R 、C-R 、またはSi-R の場合、R ~R はそれぞれ隣接するQ ~Q と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、一置換アミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記第一正孔輸送層と前記青色発光層との間に配置される層のうちの少なくとも一層が、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有する、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記青色発光層よりも前記陽極側に配置される層のうちの前記青色発光層と隣接する層が、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有する、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記第二正孔輸送層が、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記一般式(1)中のR、Rが相互に同一でも異なってもよく、水素原子または重水素原子である、請求項1~4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記一般式(1)中のnが1または2である、請求項1~5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記一般式(1)中のLが置換もしくは無置換のフェニレン基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記青色発光層が、アントラセン骨格を有するアントラセン誘導体を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものであリ、詳しくは特定のアリールアミン化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は自己発光性素子であるため、液晶素子にくらべて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であることから、活発な研究がなされてきた。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック社のC.W.Tangらは各種の役割を各材料に分担した積層構造素子を開発することにより有機材料を用いた有機EL素子を実用的なものにした。彼らは電子を輸送することのできる蛍光体と正孔を輸送することのできる有機物とを積層し、両方の電荷を蛍光体の層の中に注入して発光させることにより、10V以下の電圧で1000cd/m以上の高輝度が得られるようになった(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
現在まで、有機EL素子の実用化のために多くの改良がなされ、積層構造の各種の役割をさらに細分化して、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極を設けた電界発光素子によって高効率と高耐久性が達成されるようになってきた(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、発光効率の更なる向上を目的として三重項励起子の利用が試みられ、燐光発光性化合物の利用が検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
そして、熱活性化遅延蛍光(TADF)による発光を利用する素子も開発されている。2011年に九州大学の安達らは、熱活性化遅延蛍光材料を用いた素子によって5.3%の外部量子効率を実現させた。(例えば、非特許文献3参照)
【0006】
発光層は、一般的にホスト材料と称される電荷輸送性の化合物に、蛍光性化合物や燐光発光性化合物または遅延蛍光を放射する材料をドープして作製することもできる。前記非特許文献に記載されているように、有機EL素子における有機材料の選択は、その素子の効率や耐久性など諸特性に大きな影響を与える。(例えば、非特許文献2参照)
【0007】
有機EL素子においては、両電極から注入された電荷が発光層で再結合して発光が得られるが、正孔、電子の両電荷を如何に効率良く発光層に受け渡すかが重要であり、キャリアバランスに優れた素子とする必要がある。また、正孔注入性を高め、陰極から注入された電子をブロックする電子阻止性を高めることによって、正孔と電子が再結合する確率を向上させ、更には発光層内で生成した励起子を閉じ込めることによって、高発光効率を得ることができる。そのため、正孔輸送材料の果たす役割は重要であり、正孔注入性が高く、正孔の移動度が大きく、電子阻止性が高く、さらには電子に対する耐久性が高い正孔輸送材料が求められている。
【0008】
また、素子の寿命に関しては材料の耐熱性やアモルファス性も重要である。耐熱性が低い材料では、素子駆動時に生じる熱により、低い温度でも熱分解が起こり、材料が劣化する。アモルファス性が低い材料では、短い時間でも薄膜の結晶化が起こり、素子が劣化してしまう。そのため使用する材料には耐熱性が高く、アモルファス性が良好な性質が求められる。
【0009】
これまで有機EL素子に用いられてきた正孔輸送材料としては、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)ベンジジン(NPD)や種々の芳香族アミン誘導体が知られていた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。NPDは良好な正孔輸送能力を持っているが、耐熱性の指標となるガラス転移点(Tg)が96℃と低く、高温条件下では結晶化による素子特性の低下が起こってしまう(例えば、非特許文献4参照)。また、前記特許文献に記載の芳香族アミン誘導体の中には、正孔の移動度が10-3cm/Vs以上と優れた移動度を有する化合物が知られているが(例えば、特許文献1および特許文献2参照)、電子阻止性が不十分であるため、電子の一部が発光層を通り抜けてしまい、発光効率の向上が期待できないなど、更なる高効率化のため、より電子阻止性が高く、薄膜がより安定で耐熱性の高い材料が求められていた。また、耐久性の高い芳香族アミン誘導体の報告があるが(例えば、特許文献3参照)、電子写真感光体に用いられる電荷輸送材料として用いたもので、有機EL素子として用いた例はなかった。
【0010】
耐熱性や正孔注入性などの特性を改良した化合物として、置換カルバゾール構造を有するアリールアミン化合物が提案されているが(例えば、特許文献4および特許文献5参照)、これらの化合物を正孔注入層または正孔輸送層に用いた素子では、耐熱性や発光効率などの改良はされているものの、未だ十分とはいえず、さらなる低駆動電圧化や、さらなる高発光効率化が求められている。
【0011】
有機EL素子の素子特性の改善や素子作製の歩留まり向上のために、正孔および電子の注入・輸送性能、薄膜の安定性や耐久性に優れた材料を組み合わせることで、正孔および電子が高効率で再結合できる、発光効率が高く、駆動電圧が低く、長寿命な素子が求められている。
【0012】
また、有機EL素子の素子特性を改善させるために、正孔および電子の注入・輸送性能、薄膜の安定性や耐久性に優れた材料を組み合わせることで、キャリアバランスのとれた高効率、低駆動電圧、長寿命な素子が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】日本国特開平8-048656号公報
【文献】日本国特許第3194657号公報
【文献】日本国特許第4943840号公報
【文献】日本国特開2006-151979号公報
【文献】国際公開第2008/62636号
【文献】日本国特許第5040216号公報
【文献】国際公開第2014/009310号
【非特許文献】
【0014】
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集55~61ページ(2001)
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集23~31ページ(2001)
【文献】Appl.Phys.Let.,98,083302(2011)
【文献】有機EL討論会第三回例会予稿集13~14ページ(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、高効率、高耐久性の有機EL素子用の材料として、正孔の注入・輸送性能、電子阻止能力、薄膜状態での安定性、耐久性に優れた有機EL素子用の材料を提供し、さらには、該材料および、正孔および電子の注入・輸送性能、電子阻止能力、薄膜状態での安定性、耐久性に優れた有機EL素子用の各種材料を、それぞれの材料が有する特性が効果的に発揮できるように組み合わせることで、高効率、低駆動電圧、長寿命の有機EL素子を提供することにある。
【0016】
本発明が提供しようとする有機化合物が具備すべき物理的な特性としては、(1)正孔の注入特性が良いこと、(2)正孔の移動度が大きいこと、(3)薄膜状態が安定であること、(4)耐熱性に優れていることをあげることができる。また、本発明が提供しようとする有機EL素子が具備すべき物理的な特性としては、(1)発光効率および電力効率が高いこと、(2)発光開始電圧が低いこと、(3)実用駆動電圧が低いこと、(4)長寿命であること、をあげることができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで本発明者らは上記の目的を達成するために、特定の構造を有するアリールアミン化合物が、正孔の注入・輸送能力、薄膜の安定性および耐久性に優れている点に着目し、種々のアリールアミン化合物を選択して、有機EL素子を作製し、素子の特性評価を鋭意行った。その結果、本発明者らは、特定の構造を有するアリールアミン化合物を正孔輸送層の材料として選択すると、陽極側から注入された正孔を効率良く輸送できるという知見を得た。更に、特定の構造を有する発光材料等を組み合わせた種々の有機EL素子を作製し、素子の特性評価を鋭意行った。その結果、本発明を完成するに至った。
【0018】
上記課題を解決することのできる本発明の有機EL素子は、
陽極および陰極を備え、
前記陽極と前記陰極との間に、前記陽極側から少なくとも第一正孔輸送層と第二正孔輸送層と青色発光層と電子輸送層とをこの順に備え、
前記第一正孔輸送層と前記電子輸送層との間に配置される層のうちの少なくとも一層が、下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有する、
有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【化1】

(式中、Ar、Ar2、ArおよびArは相互に同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表し、
、RおよびRは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、
nは1~3の整数を表す。)
【発明の効果】
【0019】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は、有機EL素子の正孔輸送層の構成材料として使用することができる。前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は、(1)正孔の注入特性が良い、(2)正孔の移動度が大きい、(3)電子阻止能力に優れている、(4)薄膜状態が安定であり、(5)耐熱性に優れている、という特性を有している。
【0020】
本発明の有機EL素子は、従来の正孔輸送材料より正孔の移動度が大きく、優れた電子の阻止能力を有し、優れたアモルファス性を有し、かつ薄膜状態が安定な、アリールアミン化合物を用いているため、高効率、低駆動電圧、長寿命の有機EL素子を実現することが可能である。
【0021】
さらに、本発明においては、正孔輸送層を第一正孔輸送層と第二正孔輸送層の2層構造とし、発光層に隣接する側に位置する第二正孔輸送層を、前記一般式(1)のアリールアミン化合物により形成することにより、該アリールアミン化合物が有する電子阻止性能を最大限に活用することができ、より高効率で長寿命の有機EL素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の例示として、化合物1-1~1-15の構造式を示す図である。
図2】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の例示として、化合物1-16~1-30の構造式を示す図である。
図3】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の例示として、化合物1-31~1-45の構造式を示す図である。
図4】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の例示として、化合物1-46~1-60の構造式を示す図である。
図5】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の例示として、化合物1-61~1-75の構造式を示す図である。
図6】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の例示として、化合物1-76~1-90の構造式を示す図である。
図7】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の例示として、化合物1-91~1-105の構造式を示す図である。
図8】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の例示として、化合物1-106~1-120の構造式を示す図である。
図9】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の例示として、化合物1-121~1-135の構造式を示す図である。
図10】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の例示として、化合物1-136~1-150の構造式を示す図である。
図11】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の例示として、化合物1-151~1-165の構造式を示す図である。
図12】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の例示として、化合物1-166~1-178の構造式を示す図である。
図13】一般式(2)で表される化合物の例示として、化合物2-1~2-15の構造を示す図である。
図14】一般式(2)で表される化合物の例示として、化合物2-16~2-24の構造式を示す図である。
図15】一般式(3)で表される化合物の例示として、化合物3-1~3-6の構造を示す図である。
図16】実施例16~27、比較例1~2の有機EL素子構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。まず、本実施形態について、その態様を列挙して説明する。
【0024】
1)陽極および陰極を備え、
前記陽極と前記陰極との間に、前記陽極側から少なくとも第一正孔輸送層と第二正孔輸送層と青色発光層と電子輸送層とをこの順に備え、
前記第一正孔輸送層と前記電子輸送層との間に配置される層のうちの少なくとも一層が、下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有する、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化2】

(式中、Ar、Ar2、ArおよびArは相互に同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表し、
、RおよびRは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、
nは1~3の整数を表す。)
【0025】
2)前記第一正孔輸送層と前記青色発光層との間に配置される層のうちの少なくとも一層が、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有する、前記1)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0026】
3)前記青色発光層よりも前記陽極側に配置される層のうちの前記青色発光層と隣接する層が、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有する、前記1)または2)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0027】
4)前記第二正孔輸送層が、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有する、前記1)~3)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0028】
5)前記一般式(1)中のR、Rが相互に同一でも異なってもよく、水素原子または重水素原子である、前記1)~4)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0029】
6)前記一般式(1)中のnが1または2である、前記1)~5)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0030】
7)前記一般式(1)中のLが置換もしくは無置換のフェニレン基である、前記1)~6)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0031】
8)前記青色発光層が、青色発光性ドーパントを含有する、前記1)~7)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0032】
9)前記青色発光性ドーパントが、下記一般式(2)または(3)で表される化合物である、前記8)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化3】

【化4】

(式(2)及び(3)中、Q~Qは相互に同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素、または置換もしくは無置換の芳香族複素環を表す。
XはB、P、P=O、またはP=Sを表す。
~Yは相互に同一でも異なってもよく、N-R、C-R、O、S、SeまたはSi-Rの中から選択されるいずれか1つであり、
~Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。
また、RとR、RとRはそれぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
ただし、Y~YがN-R、C-R、またはSi-Rの場合、R~Rはそれぞれ隣接するQ~Qと、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、一置換アミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0033】
10)前記青色発光層が、アントラセン骨格を有するアントラセン誘導体を含有する、前記1)~9)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0034】
一般式(1)中のAr~Arで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、およびカルボリニル基などをあげることができる。
【0035】
一般式(1)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基などのアリールビニル基;アセチル基、ベンゾイル基などのアシル基などをあげることができる。これらの置換基は、さらに前記例示した置換基が置換していても良い。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0036】
一般式(1)中のLで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」における「芳香族炭化水素の2価基」、「芳香族複素環の2価基」または「縮合多環芳香族の2価基」としては、具体的に、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、テトラキスフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、フルオレニレン基、フェナントロリレン基、インデニレン基、ピレニレン基、ペリレニレン基、フルオランテニレン基、トリフェニレニレン基、ピリジニレン基、ピリミジニレン基、キノリレン基、イソキノリレン基、インドリレン基、カルバゾリレン基、キノキサリレン基、ベンゾイミダゾリレン基、ピラゾリレン基、ナフチリジニレン基、フェナントロリニレン基、アクリジニレン基、チオフェニレン基、ベンゾチオフェニレン基、ベンゾチアゾリレン基、ジベンゾチオフェニレン基などをあげることができる。また、nが2または3の場合、複数個存在するLは同一でも異なっていてもよい。
【0037】
一般式(1)中のL1で表される「置換芳香族炭化水素の2価基」、「置換芳香族複素環の2価基」または「置換縮合多環芳香族の2価基」における「置換基」としては、上記一般式(1)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0038】
一般式(1)中のR~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基などをあげることができる。これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0039】
一般式(1)中のR~Rで表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基などをあげることができる。これらの置換基はさらに、前記例示した置換基が置換していても良い。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0040】
一般式(1)中のR~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基などをあげることができる。これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0041】
一般式(1)中のR~Rで表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「置換基」としては、上記一般式(1)中のR~Rで表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0042】
一般式(1)中のR~Rで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、上記一般式(1)中のAr~Arで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、上記一般式(1)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0043】
一般式(1)中のR~Rで表される「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、具体的に、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ペリレニルオキシ基などをあげることができる。これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、上記一般式(1)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0044】
一般式(1)中のAr、Arとしては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基がより好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、置換基を有するフルオレニル基が特に好ましい。ここで、フェニル基の置換基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基が好ましく、フルオレニル基の置換基としては、メチル基、フェニル基が好ましい。また、ArおよびArは互いに異なると好ましい。
一般式(1)中のAr、Arとしては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基がより好ましく、無置換のフェニル基、無置換のビフェニリル基、無置換のナフチル基、置換基を有するフルオレニル基が特に好ましい。ここで、フルオレニル基の置換基としては、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0045】
一般式(1)中のLとしては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」が好ましく、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、またはフェナントレンから水素原子を2個取り除いてできる2価基がより好ましく、ベンゼンから水素原子を2個取り除いてできる2価基、すなわちフェニレン基が特に好ましい。この場合、無置換のフェニレン基が好ましく、フェニレン基の結合様式としては、パラ位-メタ位での結合、またはパラ位同士での結合、すなわち1,3-フェニレン基、または1,4-フェニレン基であることが好ましい。
の個数を表すnは、1~3の整数を表すが、1または2であることが好ましい。
【0046】
一般式(1)中のR、Rとしては、水素原子、重水素原子が好ましく、合成上の観点から、水素原子がより好ましい。一般式(1)中のRとしては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基がより好ましく、無置換のフェニル基、無置換のビフェニリル基、無置換のナフチル基、置換基を有するフルオレニル基が特に好ましい。ここで、フルオレニル基の置換基としては、メチル基、フェニル基が好ましい。Ar、ArおよびRは互いに同一であると好ましい。
【0047】
ここで、上記一般式(1)中のArは置換もしくは無置換のフェニル基でもよく、置換フェニルにおける置換基としては、置換もしくは無置換のフェニル基、ナフチル基でもよい。上記一般式(1)中のArは置換フェニル基でもよく、置換フェニルにおける置換基としては、置換もしくは無置換のフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基でもよい。上記一般式(1)中のAr、ArおよびRは無置換のフェニル基、無置換のビフェニリル基、無置換のナフチル基、置換基を有するフルオレニル基でもよく、無置換のフェニル基でもよい。
【0048】
一般式(2)及び式(3)中のQ~Qで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素」または「置換もしくは無置換の芳香族複素環」における「芳香族炭化水素」または「芳香族複素環」としては、具体的に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピロール、フラン、チオフェン、キノリン、イソキノリン、インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、インドリン、カルバゾール、カルボリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノキサリン、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ナフチリジン、フェナントロリン、アクリジンなどをあげることができる。
【0049】
また、これらは置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR~Rで表される「置換基を有する炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0050】
一般式(2)及び式(3)中のXはB、P、P=O、またはP=Sを表す。Bはホウ素原子、Pはリン原子、P=Oは酸素原子が二重結合したリン原子、またはP=Sは硫黄原子が二重結合したリン原子と定義する。XがP=OまたはP=Sの場合、リン原子が一般式(2)及び式(3)中の他の原子との結合箇所となる。
【0051】
一般式(2)及び式(3)中のY~Yは相互に同一でも異なってもよく、N-R、C-R、O、S、SeまたはSi-Rの中から選択されるいずれか1つである。N-RはRを置換基として有する窒素原子、C-RはR及びRを置換基として有する炭素原子、Oは酸素原子、Sは硫黄原子、Seはセレン原子、またSi-RはR及びRを置換基として有するシリコン原子と定義する。Y~YがN-R、C-RまたはSi-Rの場合、それぞれ窒素原子、炭素原子またはシリコン原子が一般式(2)及び式(3)中の他の原子との結合箇所となる。なお、R~Rの定義は更に下記の記載で詳細な説明する。
【0052】
一般式(2)及び式(3)中のY~YがN-R、C-R、またはSi-Rの場合、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基などをあげることができる。また、これらは置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR~Rで表される「置換基を有する炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。
【0053】
一般式(2)及び式(3)中のY~YがN-R、C-R、またはSi-Rの場合、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基などをあげることができる。
【0054】
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR~Rで表される「置換基を有する炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。
【0055】
一般式(2)及び式(3)中のY~YがN-R、C-R、またはSi-Rの場合、R~Rで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」における「芳香族炭化水素基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基などをあげることができる。また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR~Rで表される「置換基を有する炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。
【0056】
一般式(2)及び式(3)中のY~YがN-R、C-R、またはSi-Rの場合、R~Rで表される「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、具体的に、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ペリレニルオキシ基などをあげることができる。また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR~Rで表される「置換基を有する炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。
【0057】
一般式(2)及び式(3)において、Q~Qの「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素」または「置換もしくは無置換の芳香族複素環」における「芳香族炭化水素」または「芳香族複素環」としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ピリジン、ピリミジン、インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドールが好ましく、ベンゼン、ナフタレンがより好ましい。
【0058】
一般式(2)及び式(3)において、Yとしては、N-R、O、Sが好ましく、O、Sがより好ましい。また、一般式(2)において、YとYのうち少なくとも一方はN-Rであることが好ましく、どちらもN-Rであることがより好ましい。Rとしては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基がより好ましい。一般式(2)及び式(3)中のXはBであってもよい。
【0059】
本実施形態の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の中で、好ましい化合物の具体例を図1図12に示すが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0060】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の精製はカラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法、昇華精製法などによって行ってもよい。化合物の同定は、NMR分析によって行なってもよい。物性値として、融点、ガラス転移点(Tg)と仕事関数の測定を行ってもよい。融点は蒸着性の指標となるものであり、ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となり、仕事関数は正孔輸送性や正孔阻止性の指標となるものである。その他、本実施形態の有機EL素子に用いられる化合物は、カラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法、昇華精製法などによって精製を行った後、最後に昇華精製法によって精製したものを用いてもよい。
【0061】
融点とガラス転移点(Tg)は、粉体を用いて高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によって測定される。一般式(1)で表される化合物のガラス転移点は、特に限定されるものではないが、形成された薄膜の安定性の観点から80℃以上であると好ましく、100℃以上であると更に好ましく、110℃以上であると特に好ましい。ガラス転移点の上限は特に限定されるものではないが、例えば250℃以下の化合物を採用できる。
【0062】
仕事関数は、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって求められる。一般式(1)で表される化合物を用いてITO基板の上に作成した、膜厚100nmの蒸着膜における仕事関数は、特に限定されるものではないが、5.4eVよりも大きいと好ましい。この蒸着膜の仕事関数の上限は特に限定されるものではないが、例えば7.0eV以下の蒸着膜とすることができる。
【0063】
本実施形態の有機EL素子の構造としては、基板上に順次に、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および陰極からなるもの、また、陽極と正孔輸送層の間に正孔注入層を有するもの、発光層と電子輸送層の間に正孔阻止層を有するもの、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を有するものがあげられる。これらの多層構造においては有機層を何層か省略あるいは兼ねることが可能であり、例えば正孔注入層と正孔輸送層を兼ねた構成とすること、電子注入層と電子輸送層を兼ねた構成とすること、などもできる。また、同一の機能を有する有機層を2層以上積層した構成とすることが可能であり、正孔輸送層を2層積層した構成、発光層を2層積層した構成、電子輸送層を2層積層した構成、などもできる。本実施形態の有機EL素子の構造として、正孔輸送層が第一正孔輸送層と第二正孔輸送層の2層構造であることが好ましく、この場合の第二正孔輸送層は発光層と隣接しており、電子阻止層としての機能を有する。
【0064】
本実施形態の有機EL素子の陽極としては、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。本実施形態の有機EL素子の正孔注入層として、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、種々のトリフェニルアミン4量体などの材料;銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物;ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物や塗布型の高分子材料、などを用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0065】
本実施形態の有機EL素子の正孔輸送層として、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物が用いられる。前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物と混合もしくは同時に使用できる、正孔輸送性の材料としては、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン(TPD)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)ベンジジン(NPD)、N,N,N’,N’-テトラビフェニリルベンジジンなどのベンジジン誘導体、1,1-ビス[4-(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、前記一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体のほか、種々のトリフェニルアミン誘導体などの化合物を用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0066】
また、正孔注入層あるいは正孔輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、ラジアレン誘導体(例えば、特許文献7参照)などをPドーピングしたものや、TPDなどのベンジジン誘導体の構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いることができる。
【0067】
本実施形態の有機EL素子の正孔輸送層が第一正孔輸送層と第二正孔輸送層の2層構造を有する場合、発光層と隣接する第二正孔輸送層としては、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物が用いられる。前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物と混合もしくは同時に使用できる、正孔輸送性の材料としては、4,4’,4’’-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]フルオレン、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(mCP)、2,2-ビス(4-カルバゾール-9-イルフェニル)アダマンタン(Ad-Cz)などのカルバゾール誘導体、9-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-9-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]-9H-フルオレンに代表されるトリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物などの電子阻止作用を有する化合物をあげることができる。
【0068】
これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0069】
本実施形態の有機EL素子の発光層として、Alqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体の他、各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などを用いることができる。また、発光層をホスト材料とドーパント材料とで構成しても良く、ホスト材料として、アントラセン誘導体が好ましく用いられるが、そのほか、前記発光材料に加え、インドール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物、カルバゾール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物、カルバゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを用いることができる。またドーパント材料としては、ピレン誘導体、前記一般式(2)で表される化合物が好ましく用いられるが、そのほか、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレン、およびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、インデノフェナントレン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。
【0070】
また、発光材料として燐光発光体を使用することも可能である。燐光発光体としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。Ir(ppy)などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、BtpIr(acac)などの赤色の燐光発光体などが用いられ、このときのホスト材料としては正孔注入・輸送性のホスト材料として4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(CBP)やTCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などを用いることができる。電子輸送性のホスト材料として、p-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)や2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(TPBI)などを用いることができ、高性能の有機EL素子を作製することができる。
【0071】
燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1~30重量パーセントの範囲で、共蒸着によってドープすることが好ましい。
【0072】
また、発光材料としてPIC-TRZ、CC2TA、PXZ-TRZ、4CzIPNなどのCDCB誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である。(例えば、非特許文献3参照)
【0073】
これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0074】
本実施形態の有機EL素子の正孔阻止層として、バソクプロイン(BCP)などのフェナントロリン誘導体や、アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナート)-4-フェニルフェノレート(以後、BAlqと略称する)などのキノリノール誘導体の金属錯体の他、各種の希土類錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体など、正孔阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねてもよい。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0075】
本実施形態の有機EL素子の電子輸送層として、Alq、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体、各種金属錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、アントラセン誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、ピリドインドール誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0076】
本実施形態の有機EL素子の電子注入層として、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、リチウムキノリノールなどのキノリノール誘導体の金属錯体、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、あるいはイッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)などの金属などを用いることができるが、電子輸送層と陰極の好ましい選択においては、これを省略することができる。
【0077】
さらに、電子注入層あるいは電子輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにセシウムなどの金属をNドーピングしたものを用いることができる。
【0078】
本実施形態の有機EL素子の陰極として、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金が電極材料として用いられる。
【0079】
本実施形態において、第一正孔輸送層と電子輸送層との間に配置される層のうちの少なくとも一層が、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有する。本実施形態において、第一正孔輸送層と青色発光層との間に配置される層のうちの少なくとも一層が、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有すると好ましい。本実施形態において、青色発光層よりも陽極側に配置される層のうちの青色発光層と隣接する層が、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有するとさらに好ましい。本実施形態において、第二正孔輸送層が、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有するとさらに好ましい。
【0080】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0081】
<N-(4-ナフタレン-1-イル-フェニル)-N,3’,5’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’:4’’,1’’’クォーターフェニル]-4’’’-アミン(化合物1-80)の合成>
窒素置換した反応容器に、アニリン14.3g、4-ブロモ-4’-ヨードビフェニル50.0g、トルエン500mL、t-ブトキシナトリウム16.1gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム3.2gを加えて加熱し、72℃で27時間撹拌した。室温まで冷却した後、濾過して得た濾液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、4’-ブロモ-N-フェニル-[1,1’-ビフェニル]-4-アミンの褐色粉体34.2g(収率75.7%)を得た。
【0082】
窒素置換した反応容器に、4’-ブロモ-N-フェニル-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン34.1g、トルエン340mL、ビスピナコラートジボロン32.0g、酢酸カリウム31.0gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。ジフェニルホスフィノフェロセンパラジウムジクロリド1.7gを加えて加熱し、100℃で19時間撹拌した。室温まで冷却した後、濾過して得た濾液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、N-フェニル-4’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-アミンの淡黄色粉体24.5g(収率62.6%)を得た。
【0083】
窒素置換した反応容器に、1-ブロモ-2,4,6-トリフェニルベンゼン30.4g、N-フェニル-4’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン24.4g、トルエン150mL、エタノール90mL、炭酸カリウム13.6gを水60mLに溶解した溶液を加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム3.8gを加えて加熱し、72℃で24時間撹拌した。室温まで冷却し、反応液を分液し、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を濾過により除き、濾液を濃縮した。残渣をクロロベンゼン、アセトンで晶析し、N,3’,5’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’:4’’,1’’’クォーターフェニル]-4’’’-アミンの白色粉体24.5g(収率67.8%)を得た。
【0084】
窒素置換した反応容器に、N,3’,5’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’:4’’,1’’’クォーターフェニル]-4’’’-アミン8.6g、1-(4-ブロモフェニル)ナフタレン5.3g、トルエン86mL、t-ブトキシナトリウム2.3gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム0.35g、t-ブチルホスフィンの50%(w/v)トルエン溶液0.31gを加えて加熱し、100℃で24時間撹拌した。反応液を80℃まで冷却し、熱濾過して得た濾液を濃縮した。残渣をトルエン、アセトンで晶析し、N-(4-ナフタレン-1-イル-フェニル)-N,3’,5’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’:4’’,1’’’クォーターフェニル]-4’’’-アミン(化合物1-80)の白色粉体8.8g(収率75%)を得た。
【0085】
【化5】
【0086】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の41個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.04-8.09(1H)、8.7.85-7.96(2H)、7.73-7.78(4H)、7.07-7.57(32H)、6.93-6.97(2H)。
【実施例2】
【0087】
<N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-3’,5’-ジフェニル-[1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’クォーターフェニル]-4’’’-アミン(化合物1-120)の合成>
実施例1のN,3’,5’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’:4’’,1’’’クォーターフェニル]-4’’’-アミンを、N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-3’,5’-ジフェニル-[1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’クォーターフェニル]-4’’’-アミンに変え、1-(4-ブロモフェニル)ナフタレンを2-(4-ブロモフェニル)ナフタレンに変えて、同様の操作を行い、N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-3’,5’-ジフェニル-[1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’クォーターフェニル]-4’’’-アミン(化合物1-120)の白色粉体9.1g(収率69%)を得た。
【0088】
【化6】
【0089】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の45個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.08(1H)、7.88-7.96(3H)、7.75-7.82(5H)、7.62-7.70(4H)、7.06-7.30(31H)、6.85-6.88(1H)。
【実施例3】
【0090】
<N-(4-ナフタレン-2-イル-フェニル)-N,3’,5’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’:4’’,1’’’クォーターフェニル]-4’’’-アミン(化合物1-81)の合成>
実施例1の1-(4-ブロモフェニル)ナフタレンを2-(4-ブロモフェニル)ナフタレンに変えて、同様の操作を行い、N-(4-ナフタレン-2-イル-フェニル)-N,3’,5’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’:4’’,1’’’クォーターフェニル]-4’’’-アミン(化合物1-81)の白色粉体9.9g(収率76%)を得た。
【0091】
【化7】
【0092】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の41個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.06(1H)、7.88-7.96(3H)、7.74-7.79(5H)、7.63-7.68(2H)、7.07-7.56(28H)、6.95-6.97(2H)。
【実施例4】
【0093】
<N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N,3’,5’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’:4’’,1’’’クォーターフェニル]-4’’’-アミン(化合物1-79)の合成>
窒素置換した反応容器にN-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-4’-ブロモ-N-フェニル-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン26.0g、トルエン340mL、ビスピナコラートジボロン15.2g、酢酸カリウム8.0gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。ジフェニルホスフィノフェロセンパラジウムジクロリド0.4gを加えて加熱し、100℃で19時間撹拌した。室温まで冷却した後、濾過して得た濾液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、N-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-4’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-N-フェニル-[1,1’-ビフェニル]-4-アミンの淡黄色粉体18.4g(収率64.3%)を得た。
【0094】
窒素置換した反応容器に、1-ブロモ-2,4,6-トリフェニルベンゼン7.5g、N-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-4’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-N-フェニル-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン12.2g、トルエン50mL、エタノール30mL、炭酸カリウム4.0gを水20mLに溶解した溶液を加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.50gを加えて加熱し、72℃で16時間撹拌した。室温まで冷却し、反応液を分液し、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を濾過により除き、濾液を濃縮した。残渣をトルエン、アセトンで晶析し、N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N,3’,5’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’:4’’,1’’’クォーターフェニル]-4’’’-アミン(化合物1-79)の白色粉体8.3g(収率61%)を得た。
【0095】
【化8】
【0096】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の39個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.77-7.80(4H)、7.62-7.65(2H)、7.07-7.55(31H)、6.96-6.99(2H)。
【実施例5】
【0097】
<N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-4’,6’-ジフェニル-[1,1’:2’,1’’ターフェニル]-4-アミン(化合物1-18)の合成>
窒素置換した反応容器にN-(4-ブロモフェニル)-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン117.0g、テトラヒドロフラン1.0Lを加え、ドライアイス-メタノール浴で冷却した。1.6Mのn-ブチルリチウムのヘキサン溶液170mLを加え、30分撹拌した。トリメチルボレート34.6gを加え、徐々に温度を上げながら一晩撹拌した。2規定塩酸を加え、酸性とし、テトラヒドロフランを減圧留去した。残渣を酢酸エチル、水で抽出した。有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過により乾燥剤を除き、濾液を濃縮した。残渣をトルエン、ヘプタンで晶析し、(4-{[1,1’-ビフェニル]-4-イル}(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)アミノフェニル)ボロン酸の黄白色粉体107g(収率98.2%)を得た。
【0098】
窒素置換した反応容器に、1-ブロモ-2,4,6-トリフェニルベンゼン40.0g、(4-{[1,1’-ビフェニル]-4-イル}(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)アミノフェニル)ボロン酸61.2g、1,4-ジオキサン720mL、リン酸カリウム66.2gを水80mLに溶解した溶液を加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム2.9g、トリシクロヘキシルホスフィン7.3gを加えて加熱し、100℃で16時間撹拌した。室温まで冷却し、析出した固体を濾過により採取した。固体をクロロベンゼンで晶析し、N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-4’,6’-ジフェニル-[1,1’:2’,1’’ターフェニル]-4-アミン(化合物1-18)の白色粉体53.0g(収率67.9%)を得た。
【0099】
【化9】
【0100】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の41個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.08(1H)、7.89-7.98(3H)、7.77-7.82(5H)、7.64-7.67(4H)、7.28-7.58(20H)、7.13-7.18(4H)、6.86-6.95(4H)。
【実施例6】
【0101】
<(ビフェニル-4-イル)-(3’,5’-ジフェニル-1,1’:2’,1’’-ターフェニル-3’’-イル)-(4-ナフタレン-2-イル-フェニル)-アミン(化合物1-138)の合成>
窒素置換した反応容器に(ビフェニル-4-イル)-(2-ナフタレニルフェニル)-4-アミン20.0g、1-ブロモ-3-ヨードベンゼン17.5g、トルエン200mL、t-ブトキシナトリウム7.8g、ヨウ化銅1.0g、ジメチルエチレンジアミン0.9gを加え、100℃で12時間撹拌した。80℃に冷却し、熱濾過し、濾液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、N-(3-ブロモフェニル)-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-ビフェニル-4-アミンの黄色オイル28.0g(収率98.7%)を得た。
【0102】
N-(3-ブロモフェニル)-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-ビフェニル-4-アミン28.0g、ジオキサン280mL、ビスピナコラートジボロン17.6g、酢酸カリウム15.7gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。ジフェニルホスフィノフェロセンパラジウムジクロリド1.3gを加えて加熱し、100℃で16時間撹拌した。80℃まで冷却し、熱濾過し、濾液を濃縮した。残渣に、トルエン300mLを加え、撹拌、加熱し、80℃でシリカゲル28g、活性白土28gを加え、1時間撹拌した。熱濾過し、濾液を濃縮し、N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-N-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-ビフェニル-4-アミンの黄色オイル30.5g(収率100%)を得た。
【0103】
反応容器に、2,4,6-トリフェニル-ブロモベンゼン11.0g、N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-N-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-ビフェニル-4-アミン24.6g、ジフェニルホスフィノフェロセンパラジウムジクロリド0.5g、炭酸水素ナトリウム5.6gを仕込み、テトラヒドロフラン、水混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内に酢酸エチル、水を加え、抽出および分液操作にて有機層を取り出し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製を行うことで、(ビフェニル-4-イル)-(3’,5’-ジフェニル-1,1’:2’,1’’-ターフェニル-3’’-イル)-(4-ナフタレン-2-イル-フェニル)-アミン(化合物1-138)の白色粉体15.5g(収率:72.0%)を得た。
【0104】
【化10】
【0105】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の41個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.00(1H)、7.83-7.89(3H)、7.64-7.73(5H)、7.20-7.58(24H)、6.95-6.97(1H)、6.81-6.90(6H)、6.64-6.66(1H)。
【実施例7】
【0106】
<N,4’,6’-トリフェニル-N-(4-(3-フェニルナフタレン-1-イル)フェニル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミン(化合物1-151)の合成>
窒素置換した反応容器に、2,4,6-トリフェニル-ブロモベンゼン40.0g、N-フェニル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)アニリン33.7g、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド1.7g、炭酸水素ナトリウム13.1gを仕込み、テトラヒドロフラン、水混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、系内に酢酸エチル、水を加え、抽出および分液操作にて有機層を取り出し、濃縮して粗生成物を得た。残渣にトルエン500mLを加え、撹拌、加熱し、80℃で活性白土、シリカゲルを加え、1時間撹拌した。熱濾過で固体を除去し、濾液を濃縮した。残渣をトルエン-ヘプタンで再結晶し、N,4’,6’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミンの赤白色粉体44.3g(収率90.2%)を得た。
【0107】
窒素置換した反応容器に、N,4’,6’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミン7.5g、1-(4-ブロモフェニル)-3-フェニルナフタレン7.4g、トルエン75mL、t-ブトキシナトリウム2.3gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。酢酸パラジウム0.1g、t-ブチルホスフィンの50%(w/v)トルエン溶液0.3gを加えて加熱し、100℃で4時間撹拌した。反応液を80℃まで冷却し、熱濾過して得た濾液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、N,4’,6’-トリフェニル-N-(4-(3-フェニルナフタレン-1-イル)フェニル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミン(化合物1-151)の白色粉体3.9g(収率33%)を得た。
【0108】
【化11】
【0109】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の41個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=7.93-8.03(3H)、7.70-7.76(7H)、7.34-7.52(10H)、7.19-7.24(12H)、6.99-7.07(5H)、6.78-6.86(4H)。
【実施例8】
【0110】
<N-([1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-イル)-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-4’,6’-ジフェニル-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミン(化合物1-156)の合成>
窒素置換した反応容器に、N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-アミン28.3g、1-ブロモ-4-ヨードベンゼン19.7g、トルエン400mL、t-ブトキシナトリウム8.6gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。酢酸パラジウム0.28g、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン0.37gを加えて加熱し、100℃で一晩撹拌した。80℃まで冷却し、熱濾過した。濾液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、N-(4-ブロモフェニル)-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-アミンの黄白色粉体17.0g(収率44.6%)を得た。
【0111】
窒素置換した反応容器に、N-(4-ブロモフェニル)-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-アミン17.0g、トルエン170mL、ビスピナコラートジボロン8.6g、酢酸カリウム5.5gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。ジフェニルホスフィノフェロセンパラジウムジクロリド0.5gを加えて加熱し、100℃で一晩撹拌した。80℃まで冷却し、熱濾過し、濾液を濃縮した。残渣に、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-N-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-アミンの褐色オイル18.0g(収率98.2%)を得た。
【0112】
窒素置換した反応容器に、2,4,6-トリフェニル-ブロモベンゼン10.0g、N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-N-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-アミン18.0g、ジフェニルホスフィノフェロセンパラジウムジクロリド0.4g、炭酸水素ナトリウム3.3gを仕込み、テトラヒドロフラン、水混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、反応液に酢酸エチル、水を加え、抽出および分液操作にて有機層を取り出し、濃縮した。残渣をトルエンに溶解し、撹拌、加熱し、80℃でシリカゲル、活性炭を加え、1時間撹拌し、熱濾過により固体を除いた。濾液を濃縮し、ジクロロメタン、アセトンで再結晶し、N-([1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-イル)-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-4’,6’-ジフェニル-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミン(化合物1-156)の白色粉体15.8g(収率:73.5%)を得た。
【0113】
【化12】
【0114】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の45個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.00(1H)、7.83-7.90(3H)、7.70-7.74(5H)、7.57-7.59(2H)、7.06-7.50(30H)、6.78-6.92(4H)。
【実施例9】
【0115】
<N-(4-(ナフタレン-2-イル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-イル)-N,4’,6’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミン(化合物1-159)の合成>
窒素置換した反応容器に3-アミノビフェニル13.3g、ジメチルホルムアミド130mLを加え、5℃に冷却した。N-ブロモスクシンイミド14.0gをジメチルホルムアミド50mLに溶解した溶液を30分かけて滴下した。5℃で3時間撹拌した後、反応液にジクロロメタン、水を加え、分液した。有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾過により除き、濾液を濃縮し、2-ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-5-アミンの褐色オイル19.5g(収率100%)を得た。
【0116】
窒素置換した反応容器に、2-ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-5-アミン10.0g、4-(2-ナフタレニル)フェニルボロン酸12.0g、テトラヒドロフラン120mL、炭酸水素ナトリウム5.1gを水30mLに溶解した溶液を加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。ジフェニルホスフィノフェロセンパラジウムジクロリド0.7gを加えて加熱し、還流下16時間撹拌した。室温まで冷却し、反応液に酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を濾過により除き、濾液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、4-(ナフタレン-2-イル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-アミンの白色粉体10.2g(収率68.1%)を得た。
【0117】
窒素置換した反応容器に、4-(ナフタレン-2-イル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-アミン10.1g、ブロモベンゼン3.9g、トルエン100mL、t-ブトキシナトリウム3.2gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム0.5g、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル0.6gを加えて加熱し、100℃で4時間撹拌した。反応液を80℃まで冷却し、熱濾過して得た濾液を濃縮した。残渣をジクロロメタン、ヘプタンで晶析し、4-(ナフタレン-2-イル)-N-フェニル-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-アミンの白色粉体10.4g(収率93.5%)を得た。
【0118】
窒素置換した反応容器に、2,4,6-トリフェニル-ブロモベンゼン50.0g、4-クロロフェニルボロン酸24.4g、ジフェニルホスフィノフェロセンパラジウムジクロリド2.1g、炭酸水素ナトリウム16.4gを仕込み、テトラヒドロフラン、水混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、反応液に酢酸エチル、水を加え、抽出および分液操作にて有機層を取り出し、濃縮した。残渣をジクロロメタン、アセトンで晶析し、4’’-クロロ-3’,5’-ジフェニル-1,1’:2’,1’’-ターフェニルの白色粉体46.0g(収率:85.0%)を得た。
【0119】
窒素置換した反応容器に、4-(ナフタレン-2-イル)-N-フェニル-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-アミン10.4g、4’’-クロロ-3’,5’-ジフェニル-1,1’:2’,1’’-ターフェニル8.8g、トルエン100mL、t-ブトキシナトリウム4.1gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。ビス(トリt-ブチルホスフィン)パラジウム0.22gを加えて加熱し、100℃で4時間撹拌した。反応液を80℃まで冷却し、熱濾過して得た濾液を濃縮した。残渣をジクロロメタン、アセトンで晶析し、N-(4-(ナフタレン-2-イル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-イル)-N,4’,6’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミン(化合物1-159)の白色粉体10.5g(収率60.1%)を得た。
【0120】
【化13】
【0121】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の45個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.20(1H)、7.82-7.87(3H)、7.69-7.76(5H)、7.56-7.59(2H)、7.43-7.50(4H)、6.95-7.38(26H)、6.76-6.87(4H)。
【実施例10】
【0122】
<N-([1,1’:4’,1’’-ターフェニル]-4-イル)-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-4’,6’-ジフェニル-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミン(化合物1-162)の合成>
窒素置換した反応容器に、4-ブロモ-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)アニリン10.0g、トルエン100mL、ビスピナコラートジボロン8.1g、酢酸カリウム5.2gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。ジフェニルホスフィノフェロセンパラジウムジクロリド0.4gを加えて加熱し、100℃で一晩撹拌した。80℃まで冷却し、熱濾過し、濾液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、4-(ナフタレン-2-イル)-N-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)アニリンの褐色粉体5.8g(収率51%)を得た。
【0123】
窒素置換した反応容器に、2,4,6-トリフェニル-ブロモベンゼン4.8g、4-(ナフタレン-2-イル)-N-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)アニリン5.8g、ジフェニルホスフィノフェロセンパラジウムジクロリド0.2g、炭酸水素ナトリウム1.6gを仕込み、テトラヒドロフラン、水混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。放冷した後、反応液に酢酸エチル、水を加え、抽出および分液操作にて有機層を取り出し、濃縮した。残渣をジクロロメタン、ヘプタンで晶析し、N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-4’,6’-ジフェニル-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミンの白色粉体5.5g(収率:73%)を得た。
【0124】
窒素置換した反応容器に、N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-4’,6’-ジフェニル-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミン5.5g、4-ブロモターフェニル2.6g、トルエン60mL、t-ブトキシナトリウム1.0gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。酢酸パラジウム0.1g、トリt-ブチルホスフィンの50%(w/v)トルエン溶液0.1gを加えて加熱し、100℃で4時間撹拌した。反応液を80℃まで冷却し、熱濾過し、濾液を80℃に加熱し、シリカゲル、活性白土を加え、1時間撹拌した。熱濾過により固体を除去し、濾液を濃縮した。残渣をジクロロメタン、アセトンで晶析し、N-([1,1’:4’,1’’-ターフェニル]-4-イル)-N-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-4’,6’-ジフェニル-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミン(化合物1-162)の白色粉体6.1g(収率87%)を得た。
【0125】
【化14】
【0126】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の45個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.00(1H)、7.82-7.90(3H)、7.57-7.74(13H)、7.21-7.52(20H)、7.07-7.11(4H)、6.79-6.87(4H)。
【実施例11】
【0127】
<N,4’,6’-トリフェニル-N-(4-([1,2’]ビナフタレニル-3-イル)フェニル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミン(化合物1-167)の合成>
窒素置換した反応容器に、N,4’,6’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミン6.0g、3-(4-クロロフェニル)-[1,2’]ビナフタレニル8.6g、トルエン60mL、t-ブトキシナトリウム3.2gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0)0.2gを加えて加熱し、100℃で一晩撹拌した。反応液を室温まで冷却してメタノールを加えて析出した粗生成物を濾過して得た。得られた粗生成物をトルエン/アセトン混合溶媒にて晶析精製を行ったところ、N,4’,6’-トリフェニル-N-(4-([1,2’]ビナフタレニル-3-イル)フェニル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4-アミン(化合物1-167)の白色粉体10.5g(収率80%)を得た。
【0128】
【化15】
【0129】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の43個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.05(1H)、8.01(1H)、7.98(1H)、7.97-7.88(4H)、7.78(1H)、7.70(3H)、7.69(2H)、7.61(2H)、7.55(2H)、7.51(1H)、7.46(2H)、7.41(1H)、7.38(1H)、7.25-7.18(12H)、7.05(2H)、7.01(2H)、6.99(1H)、6.78(4H)。
【実施例12】
【0130】
<N,2’,6’-トリフェニル-4’-ナフタレン-2-イル-N-(4-ナフタレン-2-イル-フェニル)-ビフェニル-4-アミン(化合物1-171)の合成>
窒素置換した反応容器に、N,2’,6’-トリフェニル-4’-ナフタレン-2-イル-ビフェニル-4-アミン9.5g、4-ブロモ-(ナフタレン-2-イル)-ベンゼン5.7g、トルエン85mL、t-ブトキシナトリウム2.3gを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。酢酸パラジウム0.1g、トリt-ブチルホスフィンの50%(w/v)キシレン溶液0.2gを加えて加熱し、100℃で一晩撹拌した。反応液を80℃まで冷却し、シリカゲル、活性白土を加え、1時間撹拌した。熱濾過により固体を除去し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をジクロロメタン/メタノール混合溶媒にて晶析精製を行ったところ、N,2’,6’-トリフェニル-4’-ナフタレン-2-イル-N-(4-ナフタレン-2-イル-フェニル)-ビフェニル-4-アミン(化合物1-171)の白色粉体8.0g(収率61%)を得た。
【0131】
【化16】
【0132】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の39個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.17(1H)、7.99(1H)、7.92(1H)、7.90-7.83(6H)、7.83(2H)、7.72(1H)、7.56(2H)、7.53-7.42(4H)、7.31-7.19(12H)、7.07-6.96(5H)、6.80(4H)。
【実施例13】
【0133】
<化合物(2-11)の合成>
反応容器に1-ブロモベンゼン(D-置換):45.0g、4-tert-ブチルアニリン:58.0g、酢酸パラジウム(II):1.0g、t-ブトシキナトリウム:30.0g、ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル:2.0g、トルエン:450mLを加えて24時間還流撹拌した。放冷した後、濃縮してカラムクロマトグラフにより精製を行うことで、下記化合物(2-11a)の粉体:49.9g(収率78%)を得た。
【0134】
【化17】
【0135】
反応容器に上記化合物(2-11a):20.0g、下記化合物(2-11b):18.4g、酢酸パラジウム(II):0.5g、t-ブトシキナトリウム:18.9g、トリ(t-ブチル)ホスフィン:0.8g、トルエン:200mLを加えて24時間還流撹拌した。放冷した後、濃縮してカラムクロマトグラフにより精製を行うことで、下記化合物(2-11c)の粉体:21.5g(収率84%)を得た。
【0136】
【化18】
【0137】
【化19】
【0138】
反応容器に上記化合物(2-11c):12.0g、tert-ブチルベンゼン120mlを加えて-78℃でn-ブチルリチウム42.5mlを滴下した後、60℃で3時間撹拌ながら窒素ガスを通気した。次に、-78℃でボロントリブロミド11.3gを滴下した後、常温で1時間撹拌して、0℃でN,N-ジイソプロピルエチルアミン5.9gを滴下した後、120℃で2時間撹拌した。放冷した後、酢酸ナトリウム水溶液を入れて撹拌して、酢酸エチルで抽出して、有機層を濃縮した後、カラムクロマトグラフにより精製を行うことで、下記化合物(2-11)の粉体:1.7g(収率11%)を得た。
【0139】
【化20】
【実施例14】
【0140】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物について、高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によってガラス転移点を測定した。
ガラス転移点
実施例1の化合物 128.8℃
実施例2の化合物 136.3℃
実施例3の化合物 127.3℃
実施例4の化合物 120.0℃
実施例5の化合物 115.0℃
実施例6の化合物 112.2℃
実施例7の化合物 117.7℃
実施例8の化合物 126.4℃
実施例9の化合物 124.1℃
実施例10の化合物 125.7℃
実施例11の化合物 128.9℃
実施例12の化合物 105.5℃
【0141】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は100℃以上のガラス転移点を有しており、薄膜状態が安定であることを示すものである。
【実施例15】
【0142】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を用いて、ITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって仕事関数を測定した。
仕事関数
実施例1の化合物 5.78eV
実施例2の化合物 5.69eV
実施例3の化合物 5.74eV
実施例4の化合物 5.76eV
実施例5の化合物 5.70eV
実施例6の化合物 5.74eV
実施例7の化合物 5.80eV
実施例8の化合物 5.76eV
実施例9の化合物 5.78eV
実施例10の化合物 5.69eV
実施例11の化合物 5.73eV
実施例12の化合物 5.71eV
【0143】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物はNPD、TPDなどの一般的な正孔輸送材料がもつ仕事関数5.4eVと比較して、好適なエネルギー準位を示しており、良好な正孔輸送能力を有していることが分かる。
【実施例16】
【0144】
本実施例における有機EL素子は、図16に示すように、ガラス基板1上に透明陽極2として反射ITO電極をあらかじめ形成したものを用意し、その上に、正孔注入層3、第一正孔輸送層4、第二正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8、陰極9、およびキャッピング層10をこの順に蒸着して作製した。
【0145】
具体的には、膜厚50nmのITO、膜厚100nmの銀合金の反射膜、膜厚5nmのITOを順に成膜したガラス基板1をイソプロピルアルコール中にて超音波洗浄を20分間行った後、250℃に加熱したホットプレート上にて10分間乾燥を行った。その後、UVオゾン処理を15分間行った後、このITO付きガラス基板を真空蒸着機内に取り付け、0.001Pa以下まで減圧した。続いて、下記構造式の電子アクセプター(Acceptor-1)と下記構造式の化合物(HTM-1)を、蒸着速度比がAcceptor-1:化合物(HTM-1)=3:97となる蒸着速度で透明陽極2に二元蒸着し、透明陽極2を覆う正孔注入層3を膜厚10nmとなるように形成した。この正孔注入層3の上に、下記構造式の化合物(HTM-1)によって第一正孔輸送層4を膜厚140nmとなるように形成した。この第一正孔輸送層4の上に、実施例1の化合物(1-80)によって第二正孔輸送層5を膜厚5nmになるように形成した。この第二正孔輸送層5の上に、実施例6の化合物(2-11)と下記構造式の化合物(EMH-1)を、蒸着速度比が化合物(2-11):(EMH-1)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着して、発光層6を膜厚20nmとなるように形成した。この発光層6の上に、下記構造式の化合物(ETM-1)と下記構造式の化合物(ETM-2)を、蒸着速度比が化合物(ETM-1):(ETM-2)=50:50となる蒸着速度で二元蒸着して、電子輸送層7を膜厚30nmとなるように形成した。この電子輸送層7の上に、フッ化リチウムによって電子注入層8を膜厚1nmとなるように形成した。この電子注入層8の上に、マグネシウム銀合金によって陰極9を膜厚12nmとなるように形成した。最後に、下記構造式の化合物(CPL-1)によってキャッピング層10を膜厚60nmとなるように形成した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で物性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加した発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0146】
【化21】
【0147】
【化22】
【0148】
【化23】
【0149】
【化24】
【0150】
【化25】
【0151】
【化26】
【0152】
【化27】
【0153】
【化28】
【実施例17】
【0154】
実施例16において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-80)に代えて実施例2の化合物(1-120)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0155】
【化29】
【実施例18】
【0156】
実施例16において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-80)に代えて実施例3の化合物(1-81)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0157】
【化30】
【実施例19】
【0158】
実施例16において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-80)に代えて実施例4の化合物(1-79)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0159】
【化31】
【実施例20】
【0160】
実施例16において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-80)に代えて実施例5の化合物(1-18)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0161】
【化32】
【実施例21】
【0162】
実施例16において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-80)に代えて実施例6の化合物(1-138)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0163】
【化33】
【実施例22】
【0164】
実施例16において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-80)に代えて実施例7の化合物(1-151)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0165】
【化34】
【実施例23】
【0166】
実施例16において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-80)に代えて実施例8の化合物(1-156)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0167】
【化35】
【実施例24】
【0168】
実施例16において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-80)に代えて実施例9の化合物(1-159)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0169】
【化36】
【実施例25】
【0170】
実施例16において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-80)に代えて実施例10の化合物(1-162)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0171】
【化37】
【実施例26】
【0172】
実施例16において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-80)に代えて実施例11の化合物(1-167)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0173】
【化38】
【実施例27】
【0174】
実施例16において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-80)に代えて実施例12の化合物(1-171)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0175】
【化39】
【0176】
[比較例1]
比較のために、実施例16において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-80)に代えて下記構造式の化合物(HTM-2)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0177】
【化40】
【0178】
[比較例2]
比較のために、実施例16において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-80)に代えて下記構造式の化合物(HTM-3)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0179】
【化41】
【0180】
実施例16~27および比較例1~2で作製した有機EL素子を用いて、素子寿命を測定した結果を表1にまとめて示した。素子寿命は、発光開始時の発光輝度(初期輝度)を2000cd/mとして定電流駆動を行った時、発光輝度が1900cd/m(初期輝度を100%とした時の95%に相当:95%減衰)に減衰するまでの時間として測定した。
【0181】
【表1】
【0182】
表1に示す様に、電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光効率は、比較例1~2の有機EL素子の8.97~9.15cd/Aに対し、実施例16~27の有機EL素子では9.45~10.46cd/Aと高効率であった。また、電力効率においても、比較例1~2の有機EL素子の8.19~8.23lm/Wに対し、実施例16~27の有機EL素子では8.63~9.53lm/Wと高効率であった。さらに、素子寿命(95%減衰)においては、比較例1~2の有機EL素子の245~269時間に対し、実施例16~27の有機EL素子では307~662時間と長寿命化していることが分かる。
【0183】
以上の結果から明らかなように、一般式(1)で表される特定の構造を有するアリールアミン化合物は、比較例1~2の従来アリールアミン化合物と比べて、正孔の移動度が大きく、優れた電子の阻止能力を有している。そのため、本開示の発光層と共に用いている有機EL素子は、従来の有機EL素子と比較して、高発光効率であって、かつ長寿命の有機EL素子を実現できることがわかった。
【0184】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本願は、2020年1月22日付で出願された日本国特許出願(特願2020-8577)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明の、特定の構造を有するアリールアミン化合物を用いた有機EL素子は、発光効率が向上するとともに、有機EL素子の耐久性を改善させることができ、例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能となった。
【0186】
1 ガラス基板
2 透明陽極
3 正孔注入層
4 第一正孔輸送層
5 第二正孔輸送層
6 発光層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
10 キャッピング層
図1
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