IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デイタム デンタル リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-コラーゲン膜を含むインプラント 図1
  • 特許-コラーゲン膜を含むインプラント 図2
  • 特許-コラーゲン膜を含むインプラント 図3
  • 特許-コラーゲン膜を含むインプラント 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】コラーゲン膜を含むインプラント
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/24 20060101AFI20240605BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20240605BHJP
   A61L 27/06 20060101ALI20240605BHJP
   A61L 27/04 20060101ALI20240605BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20240605BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240605BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
A61L27/24
A61L27/40
A61L27/06
A61L27/04
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/54
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021575336
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 IL2020050686
(87)【国際公開番号】W WO2020255143
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】PCT/IL2019/050690
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】520370027
【氏名又は名称】デイタム デンタル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カプリ、ラン
(72)【発明者】
【氏名】ベイヤー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドラスト、アリー
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-526793(JP,A)
【文献】特表2010-535052(JP,A)
【文献】特開平07-116242(JP,A)
【文献】特開平09-031334(JP,A)
【文献】国際公開第2008/016163(WO,A1)
【文献】再公表特許第2013/157638(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの生体適合性骨格足場と、前記骨格足場表面の少なくとも一部に堆積した少なくとも1つの生体適合性および生分解性架橋コラーゲン膜とを含む移植可能構造体であって、
前記骨格足場は生分解することなく移植される組織に永久的な機械的支持を与え、
前記コラーゲン膜の生分解速度が制御可能に構成されており、
前記コラーゲン膜が、異なる架橋度および異なる密度の一方またはその両方を有する領域を有し、
前記異なる架橋度および前記異なる密度の一方またはその両方が、架橋度または密度に対する分解速度の段階的な変化を提供し、
前記コラーゲン膜の前記密度が、前記骨格足場に近い内側の膜では低く、外側の膜では高くなっており、
再生細胞が移動して再増殖できる空間を維持するための保隙装置をさらに含み、前記保隙装置が、ヒアルロナン、石灰化凍結乾燥骨、徐タンパク骨、合成ヒドロキシアパタイト、オステオカルシンもしくはビトロネクチンを濃縮した他の結晶性物質、熱処理された脱灰骨、またはヒアルロナンとこれらとの組み合わせのうちのいずれか1つを含む、移植可能構造体。
【請求項2】
前記骨格足場が、チタン、ニチノール、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(登録商標))、ステンレス鋼、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、シリコン、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つから形成されている、請求項1に記載の移植可能構造体。
【請求項3】
前記骨格足場が、織布または不織布のメッシュ、ワイヤ、ロッド、またはそれらの任意の組み合わせから形成されている、請求項1に記載の移植可能構造体。
【請求項4】
前記コラーゲン膜が、少なくとも1つの薬学的活性剤をさらに含む、請求項1に記載の移植可能構造体。
【請求項5】
前記薬学的活性剤が、抗菌剤、抗炎症剤、組織再生誘導特性を有する因子、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項4に記載の移植可能構造体。
【請求項6】
請求項1~に記載の移植可能構造体を調製する方法であって、
少なくとも1つの生体適合性骨格足場を提供するステップと、
前記骨格足場の少なくとも一部を、コラーゲンを含む溶液中に浸漬するステップと、
前記コラーゲンをフィブリル化するステップと、
フィブリル化した前記コラーゲンに圧力を加えることによりフィブリル化した前記コラーゲンを圧縮するステップと、
前記コラーゲンを架橋することにより、前記骨格足場の表面上に堆積した架橋コラーゲン膜を提供するステップとを含む、方法。
【請求項7】
前記溶液が少なくとも1つのフィブリル化剤を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの前記フィブリル化剤が、リン酸ナトリウム、トリスHCl、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記コラーゲン膜が、酵素媒介処理、熱、UV照射、少なくとも1つの架橋剤、またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つによって架橋される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの前記架橋剤が、グリセロース、トレオース、エリスロース、リキソース、キシロース、アラビノース、リボース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、もしくは任意の他のジオース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、セプトース、オクトース、ナノース、もしくはデコース、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記コラーゲン膜が1つまたは複数の領域を含み、各前記領域が異なる架橋度によって架橋されている、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記コラーゲン膜を洗浄して残留反応物を除去するステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記コラーゲン膜を脱水するステップをさらに含む、請求に記載の方法。
【請求項14】
歯科または整形外科の骨再生、ヘルニア修復、硬膜修復、およびそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つで使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の移植可能構造体。
【請求項15】
再生細胞が移動して再増殖できる空間を維持するための少なくとも1つの保隙装置と組み合わせて使用するための、移植可能構造体であって、前記保隙装置が、ヒアルロナン、石灰化凍結乾燥骨、徐タンパク骨、合成ヒドロキシアパタイト、オステオカルシンもしくはビトロネクチンを濃縮した他の結晶性物質、熱処理された脱灰骨、またはヒアルロナンとこれらとの組み合わせのうちのいずれか1つを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の移植可能構造体。
【請求項16】
請求項1~のいずれか一項に記載の移植可能構造体を含む、キット。
【請求項17】
少なくとも1つの生体適合性骨格足場、少なくとも1つのコラーゲン溶液、フィブリル化剤、架橋剤、およびそれらの使用説明書を含むキットであって、請求項1~のいずれか一項に記載の移植可能構造体を提供するために用いられるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの生体適合性骨格足場(backbone scaffold)と、その上に堆積(deposit)した少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜とを含む移植可能構造体に関するものであり、その調製方法、ならびに、歯科または整形外科での骨再生、硬膜修復、ヘルニア修復および構造的なインプラントを必要とする同様の処置におけるその使用を含む。
【背景技術】
【0002】
多くの医療処置では、さまざまな種類の足場や膜の体内への移植を必要とする。このような足場は、例えば、癒着の防止、ある臓器や靭帯の支持、ならびに/または軟骨、靭帯および骨などの様々な種類の組織を再生するための手段の提供において使用することができる。あらゆる種類の足場は、一定の期間、体内に留めておく必要がある。例えば、ヘルニア修復の場合、足場を永久に体内に留めておき、その間、胃壁を機械的に支持させることにより、内臓の位置がずれることを防止する必要がある。このような永久的な移植用足場は、生体適合性を有することに加えて、長期間にわたって支持力を発揮し、かつ、その近傍での感染症などを引き起こさないような設計であることがさらに必要とされている。組織や骨の再生誘導に使用される他の種類の足場は、少なくとも組織/骨の再生が開始されるまで、場合によっては組織/骨の再生が完了するまで、短い期間、体内に留めておく必要がある。このような足場は、その近傍での感染を防ぐ必要があるが、永久的な移植用足場とは異なり、永久的に体内に留めておくことを予定していないため、生体適合性および生分解性の両方を兼ね備えた設計であってもよい。
【0003】
既知の生体適合性および生分解性材料の1種として、コラーゲンがある。コラーゲンタンパク質は、生体内のタンパク質の約30%を構成し、骨や細胞の接着をサポートする。したがって、コラーゲンは、例えば細胞培養基質として使用される有用な生体材料であるというだけでなく、軟骨、骨、靭帯、角膜間質、および皮膚などの組織工学を含む再生医療のための足場材料であることが知られている。たとえば、創傷被覆材、骨移植材、止血材、または接着防止材として使用されている。
【0004】
コラーゲンは生体適合性を有するため、身体から拒絶されることがなく、その近傍での感染症等を防止することができるが、一方で、コラーゲンから調製されたインプラントは、一般に、所望の機械的支持をもたらさない。さらに、コラーゲンインプラントは生分解される傾向があるため、永久的なインプラントを予定している場合には使用することができない。また、コラーゲン膜は、一般的に組織を加工して調製されるため、理論的にはコラーゲン膜に機械的な力を与えることができるような他の材料との組み合わせの可能性は限られている。
【0005】
チタン、テフロン(登録商標)、様々な種類のポリマーなどから調製されたインプラントなど、いくつかの種類の永久インプラントがこの分野で知られている。しかしながら、生体適合性が高くても、合成材料によるインプラントを使用すると、その近傍での感染症の発生やバイオフィルム形成のリスクがあり、外科手術で除去・交換しなければならないことが多い。したがって、生体適合性が高く、さらに、その近傍での感染症を防ぐ永久インプラントが所望されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1つの生体適合性骨格足場と、骨格足場表面の少なくとも一部に堆積した少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜とを含む移植可能構造体を提供する。
【0007】
実施形態によっては、少なくとも1つの生体適合性骨格足場と、骨格足場表面の少なくとも一部に堆積した少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜とを含む移植可能構造体を提供する。ここで、コラーゲン膜の生分解速度が制御可能に構成されている。他の実施形態において、コラーゲン膜の分解速度は、コラーゲン膜の密度および/または架橋レベルに基づいて制御可能に構成されている。
【0008】
実施形態によっては、骨格足場は、金属、ポリマー剤、およびそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つから形成される。実施形態によっては、骨格足場は、チタン、ニチノール、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(登録商標))、ステンレス鋼、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、シリコン、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つで形成されている。実施形態によっては、骨格足場は、織布または不織布のメッシュ、ワイヤ、ロッド、またはそれらの任意の組み合わせから形成される。
【0009】
実施形態によっては、少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜は、1つまたは複数の領域を含み、それぞれ異なる分解速度を有する。実施形態によっては、少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜は、少なくとも1つの薬学的に活性な薬剤をさらに含む。実施形態によっては、少なくとも1つの薬学的活性剤は、抗菌剤、抗炎症剤、組織再生誘導特性を有する因子、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。実施形態によっては、少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜は、架橋コラーゲンを含む。実施形態によっては、少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜は、保隙装置をさらに含む。
【0010】
本発明はさらに、本明細書の上記および以下に定義される移植可能構造体を調製する方法を提供する。該方法は、少なくとも1つの生体適合性骨格足場を提供するステップと、生体適合性骨格足場の少なくとも一部を、コラーゲンを含む溶液中に浸漬するステップと、コラーゲンをフィブリル化するステップと、コラーゲンを架橋することにより、生体適合性骨格足場の表面上に堆積したコラーゲン膜を提供するステップとを含む。他の実施形態では、フィブリル化したコラーゲンは、コラーゲンに圧力(例えば、1kg)を加えることにより任意に圧縮され、それにより、高密度のコラーゲンを形成する。他の実施形態では、コラーゲンは、架橋されるステップの前または後に圧縮される。
【0011】
実施形態によっては、少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜の形状は、それらのコラーゲン膜が形成される骨格足場の形状に従って画定される。実施形態によっては、溶液は、少なくとも1つのフィブリル化剤を含む。実施形態によっては、少なくとも1つのフィブリル化剤は、リン酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムから選択される。
【0012】
実施形態によっては、少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜は、酵素媒介プロセス、熱、UV照射、還元糖もしくは還元糖誘導体を含む化学架橋剤、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つによって架橋される。実施形態によっては、還元糖または還元糖誘導体は、水溶液中においてα-炭素がアルデヒドまたはケトンの状態にあるアルデヒド、ケトン単糖、または単糖誘導体を含む。
【0013】
実施形態によっては、少なくとも1つの架橋剤には、グリセロース、トレオース、エリスロース、リキソース、キシロース、アラビノース、リボース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、もしくは任意の他のジオース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、セプトース、オクトース、ナノースもしくはデコース、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0014】
実施形態によっては、少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜は、1または複数の領域を含み、各領域は、異なる架橋度によって架橋されている。
【0015】
実施形態によっては、この方法は、少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜を洗浄して、残留反応物を除去するステップをさらに含む。実施形態によっては、この方法は、少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜を脱水するステップをさらに含む。
【0016】
実施形態によっては、本発明の移植可能構造体は、歯科または整形外科の骨再生、ヘルニア修復、または硬膜修復のための移植デバイスとして使用される。いくつかの実施形態によれば、本発明の移植可能構造体は、少なくとも1つの保隙装置と組み合わせて使用される。
【0017】
本発明はさらに、本明細書の上記および以下に定義される移植可能構造体を含むキットを提供する。
【0018】
他の態様では、本発明は、少なくとも1つの生体適合性骨格足場少なくとも1つのコラーゲン溶液、およびそれらの使用説明書を含むキットを提供する。実施形態によっては、キットは、少なくとも1つのフィブリル化剤をさらに含む。実施形態によっては、キットは、少なくとも1つの架橋剤をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明とみなされる主題は、明細書の結論部分において特に指摘され、明確に主張されている。しかしながら、本発明は、組織および操作方法の両方、また、その目的、特徴および利点に関して、添付図面とともに読まれるときに、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解することができる。本発明の実施形態は、添付図面の図に例示されているが、それらの例に限定されるものではなく、当該図面において、同様の参照数字は、対応する、類似する、または同様の要素を示し、その中で、以下のように示される。
【0020】
図1】本発明の移植可能構造体を示しており、骨格足場は金属メッシュである。
図2】本発明の移植可能構造体を示しており、骨格足場はポリマーメッシュである。
図3】本発明の移植可能構対造を示しており、骨格足場はチタンメッシュである。
図4】本発明の実施形態の3次元移植可能構造体の例を提示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、少なくとも1つの生体適合性骨格足場と、骨格足場表面の少なくとも一部に堆積した少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜とを含む移植可能構造体に関する。特に、コラーゲン膜および骨格足場の両方が生体適合性であるのに対し、生分解性であるのはコラーゲン膜のみである。したがって、コラーゲン膜は主に、生体適合性、生分解性、および感染予防などの所望の生物学的特性を移植可能構造体に提供し、一方で、骨格足場は主に、長期間にわたる機械的強度を含む、所望の物理的および構造的特性を移植可能構造体に提供する。
【0022】
実施形態によっては、本発明は、少なくとも1つの生体適合性骨格足場と、骨格足場表面の少なくとも一部に堆積した少なくとも1つの生体適合性および生分解性コラーゲン膜とを含む移植可能構造体を提供する。ここで、膜の生分解速度は制御可能に構成されている。他の実施形態において、コラーゲン膜の分解速度は、コラーゲン膜の密度および/または架橋レベルに基づいて制御可能に構成されている。
【0023】
実施形態によっては、本発明のコラーゲン膜内の「コラーゲン」は、純粋な非変性コラーゲンであることが本明細書で定義される。コラーゲンは、フィブリル化および/または架橋されてもよい(したがって、フィブリル化/架橋剤がコラーゲン内に見出される可能性がある)。コラーゲンと、例えば他のポリマー、ヒドロキシアパタイト、カーボンナノチューブ、グラフェン等との複合体は、この定義から除外される。共有結合で変性されたコラーゲン、特に(ただし、これに限定されないが)コラーゲンとポリマーのコンジュゲートも除外される。
【0024】
「移植可能構造体」(全体を通して用語「インプラント」、「物品」、「構造」、「デバイス」と互換的に用いられる)に言及する場合、軟組織、硬組織もしくは臓器を再生するため、損傷した軟組織もしくは硬組織を支持するため、または既存の軟組織もしくは臓器を強化するために製造された医療デバイスを包含することを理解されたい。本発明の移植可能構造体は、表面が少なくとも1つのコラーゲン膜でカバー/コーティングされているインプラントの一般的な構造的三次元形態を提供する少なくとも1つの生体適合性骨格足場を含む。実施形態によっては、骨格足場の一部のみが少なくとも1つの膜でカバー/コーティングされている。他の実施形態では、バックボーンの全てが少なくとも1つの膜でカバー/コーティングされている(いくつかの実施形態では、また、骨格足場内のボイドおよび内部空間または孔を含む)。
【0025】
骨格足場表面の少なくとも一部への少なくとも1つのコラーゲン膜の堆積に関連して「堆積(沈着)した」という用語に言及する場合、化学的もしくは機械的またはそれらの組み合わせの任意の形式でのコーティング、カバリング、浸漬、当該膜の形成、配置(putting)、配置(placing)、およびそれらの任意の組み合わせを含む堆積の任意の可能な形態を包含すると理解されたい。
【0026】
実施形態によっては、移植時に移植可能構造体を取り囲む組織は、コラーゲン膜に取って代わるように、少なくとも部分的に、時間の経過とともに再生される。したがって、コラーゲン膜は、周囲の組織の成長のために、所望の構造を提供することができる。これは、例えば、骨格足場が支持を行う一方で、周囲の組織、例えば骨が充填すべき体積(容積)を提供することができない場合に、不可欠となることがある。したがって、コラーゲン膜が分解すると、周囲の組織がコラーゲン膜に取って代わり、本質的に内部の骨格足場の周りに構築される可能性がある。
【0027】
実施形態によっては、移植可能構造体のコラーゲン膜は、高度な骨促進性(osteo-promotive)を有するように調製される。「高度な骨促進性」という用語は、その近傍に骨細胞が存在する場合には、他の種類の細胞が存在していても、とりわけ骨細胞の増殖を促すコラーゲン膜を意味する。一方で、骨細胞が存在しない場合には、生分解性コラーゲンに代わって、骨細胞ではない他の種類の組織が再生されることを意味していることを理解されたい。例えば、本発明の移植可能構造体を、口腔内の骨材と歯肉の間に埋め込んだ場合、時間の経過とともにコラーゲン膜が生分解すると、歯肉組織に隣接する側であっても骨細胞がコラーゲン膜に取って代わることになる。さらに、例えば、本発明による移植可能構造体が頭蓋骨を修復するために移植され、したがって、頭蓋骨とそれをカバーする皮膚との間に配置される場合、生分解したコラーゲン膜は、皮膚に隣接する膜の側でも、骨細胞に取って代わられることになる。とは言うものの、本発明による移植可能構造体が、軟組織のみが存在する場所に移植される場合、例えば、ヘルニア修復の場合には、コラーゲン膜は、時間とともに周囲の軟組織に取って代わられることになる。
【0028】
実施形態によっては、骨格足場は完全に内部にあり、すなわち、それは本発明の構造体のコラーゲン膜によって完全にカバーされている。したがって、生体に触れる材料が生体適合性の高いコラーゲン膜のみであるため、特に移植時期から間もない時期に発生しやすいインプラント近傍の感染症を予防することができる。また、コラーゲン膜は、骨格足場をゆっくりと露出させることができるため、移植された異物の構造体に対する組織の反応を抑えることができる。コラーゲン膜の生体適合性が高いため、インプラントの拒絶も防止することができる。
【0029】
実施形態によっては、コラーゲン膜は生分解性であり、したがって、本発明の移植可能構造体は部分的に生分解性である。少なくとも部分的に生分解されると、骨格足場が露出する。一方で、本発明の移植可能構造体は、すでに一定期間配置されており、組織は治癒しており、感染症のリスクは低い。実施形態によっては、コラーゲン膜は、約3~24ヶ月以内に生分解される。実施形態によっては、コラーゲン膜は、約4~8ヶ月以内に生分解される。実施形態によっては、コラーゲン膜は、約5~7ヶ月以内に生分解される。実施形態によっては、コラーゲン膜は、約3~10ヶ月以内に生分解される。実施形態によっては、コラーゲン膜は、約10~17ヶ月以内に生分解される。実施形態によっては、コラーゲン膜は、約17~24ヶ月以内に生分解される。実施形態によっては、コラーゲン膜は、約6ヶ月以内に生分解される。なお、コラーゲン膜は、約70、80、90、または95%以上が分解された場合に、生分解されたと判断される。
【0030】
実施形態によっては、骨格足場は、チタン、ニチノール、ステンレス鋼、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(登録商標))、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、シリコン、またはそれらの任意の組み合わせなどの任意の種類のポリマーのうちの少なくとも1つから調製される。
【0031】
実施形態によっては、骨格足場は、開孔表面、織布または不織布メッシュ、ワイヤ、ロッドなど、またはそれらの任意の組み合わせの形態など、任意の適切な形態を有する。骨格足場またはその任意の部分の厚さは、約0.05~1.0mmの範囲であってもよい。骨格足場またはその任意の部分の厚さは、約0.2~2.0mmの範囲であってもよい。骨格足場またはその任意の部分の厚さは、約1.0~3.0mmの範囲であってもよい。骨格足場またはその任意の部分の厚さは、約3.0~5.0mmの範囲であってもよい。骨格足場またはその任意の部分の厚さは、約5.0~7.0mmの範囲であってもよい。骨格足場の形状は、骨格足場を含む本発明の移植可能構造体の所望の形状に従って設計することができ、これは、シート、円柱、複数の円柱、プリズム、複数のプリズム、立方体、複数の立方体、直方体、複数の直方体、ディスク、プラグ、それらの任意の組み合わせなどを含む、任意の適切な形状であってもよい。骨格足場のサイズは、骨格足場を含むコラーゲン膜の所望のサイズに従って設計されてもよく、その最終的な用途に応じて任意の適切なサイズとすることができる。実施形態によっては、本発明の移植可能構造体のサイズは、0.5~50cmの範囲である。実施形態によっては、本発明の移植可能構造体のサイズは、0.5~1.0cmの範囲である。実施形態によっては、本発明の移植可能構造体のサイズは、1.0~5.0cmの範囲である。実施形態によっては、本発明の移植可能構造体のサイズは、5.0~20cmの範囲である。実施形態によっては、本発明の移植可能構造体のサイズは、20~50cmの範囲である。実施形態によっては、本発明の移植可能構造体のサイズは、調製後に、例えば、切断またはトリミングによって変更することができる。実施形態によっては、本発明の移植可能構造体のサイズが、調製後に変更される場合、本発明の移植可能構造体は、本明細書に詳述されるように、骨格足場において露出した任意の端部をコラーゲンでカバーするための追加のプロセスを受けることができる。
【0032】
本発明は、少なくとも1つの生体適合性骨格足場と、骨格足場表面の少なくとも一部に堆積した少なくとも1つの生体適合性コラーゲン膜とを含む移植可能構造体を調製する方法をさらに提供し、当該方法は、以下のステップを含む。少なくとも1つの骨格足場を提供するステップと、生体適合性骨格足場の少なくとも一部を、コラーゲンを含む溶液中に浸漬するステップと、コラーゲンをフィブリル化するステップと、コラーゲンを架橋することにより、生体適合性骨格足場の表面上に堆積した架橋コラーゲン膜を提供するステップと、を含む。
【0033】
他の実施形態では、フィブリル化したコラーゲンは、コラーゲンに圧力(例えば、1kg)を加えることにより任意に圧縮され、それにより、高密度のコラーゲンを形成する。他の実施形態では、コラーゲンは、架橋されるステップの前または後に圧縮される。
【0034】
本発明は、少なくとも1つの生体適合性骨格足場および少なくとも1つの生体適合性コラーゲン膜を含む移植可能構造体を調製する方法をさらに提供し、ここで、コラーゲン膜は、骨格足場の表面の少なくとも一部に堆積した異なる架橋レベル/領域の膜を含む。それにより、コラーゲン膜の分解速度が制御可能に構成されており、この方法は以下のステップを含む。a)少なくとも1つの生体適合性骨格足場を提供するステップ。生体適合性骨格足場の少なくとも一部を、コラーゲンを含む溶液に浸漬するステップ。コラーゲンをフィブリル化するステップ。および、コラーゲンを架橋することにより、骨格足場の表面に堆積した架橋コラーゲン膜を提供するステップ。b)コラーゲン堆積膜を部分的に架橋溶液に浸漬するステップ(ここで、コラーゲン堆積膜の一部のみが架橋溶液に曝される)。それにより、少なくとも1つの生体適合性骨格足場と少なくとも1つの生体適合性コラーゲン膜を含む移植可能構造体を提供する。ここで、コラーゲン膜は骨格足場の表面の少なくとも一部に堆積したコラーゲン膜の異なる架橋レベル/領域を含む。それにより、膜の分解速度は制御可能に構成されている。
【0035】
全体を通して、特に明記しない限り、少なくとも1つのコラーゲン膜は、骨格足場の表面の少なくとも一部に堆積していることに留意されたい。実施形態によっては、少なくとも1つのコラーゲン膜は、骨格足場の全ての表面に堆積する。骨格足場の表面に言及する場合、骨格足場の表面のコーティングに加え、骨格足場の内部表面をコーティングし、骨格足場および/または骨格足場に含まれる任意の孔を貫通するコラーゲン膜を含むことを理解されたい。例えば、骨格足場がメッシュの形態である場合、調製されたコラーゲン膜は、実施形態によっては、メッシュの全面をコーティングし、さらに、メッシュの孔の中にも形成されることにより、コラーゲン膜がそれらのメッシュの孔を通過し、メッシュの端から端まで達するようになる。
【0036】
実施形態によっては、コラーゲン膜の形状は、骨格足場の形状に従って定められ、それに応じて、上記の方法に従って得られ、かつ、利用される骨格足場は、調製されたコラーゲン膜の所望の形状に従って定められる形状を有する。
【0037】
実施形態によっては、コラーゲン溶液は、少なくとも1つのフィブリル化剤を含む。溶液中のコラーゲンは、当技術分野で既知の任意の方法によりフィブリル化および架橋されてもよく、フィブリル化および架橋の間に溶液中の骨格足場が存在すると、コラーゲン膜が骨格足場をコーティングすることになる。
【0038】
実施形態によっては、コラーゲンは、そのpHを中和することにより、例えば、中性または塩基性のpHを有する緩衝液によってフィブリル化される。実施形態によっては、フィブリル化剤は、リン酸ナトリウム、トリスHCl、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムなどの1つまたは複数の塩基および/または塩を含んでもよい。
【0039】
コラーゲンがフィブリル化されると、当技術分野で既知の任意の方法に従って架橋されてもよい。実施形態によっては、コラーゲンは、酵素媒介処理、物理的処理(例えば、熱、UV照射)、または化学的架橋剤の少なくとも1つによって架橋され、架橋剤は、還元糖または還元糖誘導体などの還元剤、またはそれらの任意の組み合わせから構成されている。
【0040】
実施形態によっては、少なくとも1つの架橋剤は、アルデヒドまたはケトン単糖または単糖誘導体を含み、ここで、α-炭素は、水溶液中においてアルデヒドまたはケトン状態にある。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの架橋剤は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許明細書第6,346,515号に詳述されているような、化合物および試薬を含む。上記の明細書に詳述されているように、還元糖は、コラーゲン分子のアミノ酸のαまたはεアミノ基とシッフ塩基を形成してもよい。次いで、シッフ塩基はアマドリ転位を受けてケトアミン生成物を形成してもよい。次いで、2つの隣接するケトアミン基が凝縮して、安定した分子間または分子内架橋を形成してもよい。
【0041】
少なくとも1つの還元剤は、例えば、グリセロース、トレオース、エリスロース、リキソース、キシロース、アラビノース、リボース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、もしくは任意の他のジオース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、セプトース、オクトース、ナノース、もしくはデコース、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。例えば、架橋剤がリボースを含む場合、ペントシジン基による安定な架橋を形成することができる。
【0042】
上記で詳述したように、本発明の移植可能構造体は、少なくとも1つのコラーゲン膜および骨格足場を含み、一定期間後、コラーゲン膜は生分解し、骨格足場近傍での感染症がより起こりにくい時期に、支持等を与えるために、骨格足場を所定の位置に残す。実施形態によっては、コラーゲン膜の分解速度は、コラーゲン原繊維間の架橋の程度によって制御することができる。架橋の程度は、例えば、少なくとも1つの架橋剤の濃度、コラーゲン原線維が少なくとも1つの架橋剤に曝される温度および時間によって制御することができる。実施形態によっては、架橋は、濃度が約0.01%~5%の範囲の少なくとも1つの架橋剤で実施されてもよい。実施形態によっては、架橋は、約20~40℃の範囲の温度で実施されてもよい。実施形態によっては、架橋は、約6~360時間の範囲の持続時間で実施されてもよい。
【0043】
実施形態によっては、コラーゲン溶液に少なくとも1つの架橋剤を導入することにより、コラーゲン原線維を少なくとも1つの架橋剤と接触させる。実施形態によっては、コラーゲン原線維は、その一部のみを少なくとも1つの架橋剤に曝すことを可能にするレセプタクルに配置されてもよい。例えば、少なくとも1つの架橋剤をレセプタクルの部分にのみ添加してもよく、コラーゲン原繊維の所望の部分のみを少なくとも1つの架橋剤に曝してもよい。他の実施形態によれば、コラーゲン原線維は、コラーゲン原線維の一部のみまたは全部が少なくとも1つの架橋と接触するように、内部の骨格足場の周りに形成されたコラーゲン原線維を架橋溶液に浸漬することにより、少なくとも1つの架橋剤に接触する。いくつかの実施形態によれば、コラーゲン膜は、コラーゲンが骨組織に取って代わることが所望される場合に、骨組織の方向に移植されることを意図されるその部分が、骨組織から離れた方向に移植されることを意図される部分よりも高い割合で分解するように調製される。
【0044】
実施形態によっては、本発明の移植可能構造体は、少なくとも2つのコラーゲン膜を含む。実施形態によっては、当該少なくとも2つのコラーゲン膜は同じものである。他の実施形態では、少なくとも2つのコラーゲン膜は異なるものである(例えば、骨格足場に最も近い内側の膜が、骨格足場からさらに離れたところにある外側の膜よりも低い/より高い密度を有し、外側の膜はそれに応じてより高い/より低い密度を有するというように、異なる密度を有する)。
【0045】
実施形態によっては、本発明の移植可能構造体は、異なる密度を有する少なくとも1つのコラーゲン膜を含む。実施形態によっては、コラーゲン膜の密度は、内側の膜(骨格足場に近い)で高く、外側の膜(骨格足場から離れている)で低い。実施形態によっては、コラーゲン膜の密度は、内側の膜(骨格足場に近い)で低く、外側の膜で高い。異なる密度は、コラーゲン膜の異なる密度領域をもたらす「圧縮ステップ」を含む移植可能構造体の調製のためのプロセスによるものである。実施形態によっては、「圧縮ステップ」(例えば、1kg)は、本発明の方法による架橋ステップの前または後に行われる。実施形態によっては、コラーゲン膜の異なる密度領域/レベルは、分解速度の段階的な変化(gradient)をもたらす。
【0046】
実施形態によっては、コラーゲン膜は、その様々な領域が異なる分解速度で分解されるように調製される。例えば、分解速度が遅い特定の領域を、膜の他の領域よりも先に、ある期間、少なくとも1つの架橋剤と接触させ、その後、膜全体を少なくとも1つの架橋剤と接触させる。したがって、少なくとも1つの架橋剤とより長期間接触している領域は、より高い架橋度を有し、したがって、より遅い速度で分解する。実施形態によっては、コラーゲン膜の異なる架橋度は、分解速度の段階的な変化をもたらす。
【0047】
実施形態によっては、本発明のコラーゲン膜は、異なる架橋度、異なる密度、またはその両方を有する領域を含む。他の実施形態では、コラーゲン膜の分解速度は、コラーゲンの架橋度および/またはその密度に基づいて制御可能に構成されている。
【0048】
実施形態によっては、コラーゲンが架橋されると、骨格足場を含む調製されたコラーゲン膜は、フィブリル化剤、架橋剤、非架橋コラーゲンなどの反応物質の残留物を除去するために洗浄される。さらなる実施形態によれば、コラーゲン膜は、次に、圧縮、空気乾燥、凍結乾燥、臨界点乾燥、またはそれらの任意の組み合わせなどの任意の適切な手段によって脱水される。乾燥処理は、コラーゲン膜がその三次元形状を維持し、手順がコラーゲン膜中のコラーゲン成分の生分解能力に影響を及ぼさないように工夫されている。乾燥処理は、コラーゲン膜をさらに滅菌し、それらを乾燥させ、それらの有効期間を効果的に延長することができる。
【0049】
実施形態によっては、コラーゲン膜は、様々な治療効果を有する少なくとも1つの医薬活性剤を含んでいてもよい。実施形態によっては、少なくとも1つの医薬活性剤は、少なくとも1つの架橋剤、例えば還元糖によって、またはコラーゲンに結合するその本来の性質により、コラーゲン膜内に固定化される。コラーゲン膜が徐々に生分解される間に、このような少なくとも1つの医薬活性物質が徐々に体内に放出される。そのような少なくとも1つの医薬活性剤は、抗菌剤、抗炎症剤、組織再生誘導特性を有する成長因子等、およびそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。
【0050】
抗菌剤は、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、スルホンアミド、ミコナゾールなどを含んでいてもよい。抗炎症剤は、コルチゾン、その合成誘導体等を含んでいてもよい。組織再生誘導因子は、分化因子、骨形成タンパク質、付着因子、および線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、トランスフォーミング増殖因子、セメント質増殖因子、インスリン様成長因子などの成長因子が含まれ得る。
【0051】
実施形態によっては、本発明の移植可能構造体は、空間維持材料(「保隙装置」)と組み合わせて使用されてもよい。「組み合わせて」という用語は、保隙装置がコラーゲン膜に隣接しているか、適切な手段によりコラーゲン膜に付着しているか、またはコラーゲン膜のコラーゲン成分に組み込まれているような用途を包含していることを指す。
【0052】
保隙装置は、再生中の細胞が移動し、再増殖できる空間を維持するために、いくつかの処理で使用されてもよい。場合によっては、例えば、腫瘍が骨から切除されたときに、そのような空間が自然に発生する。他の例では、例えば、様々な種類の歯周病や骨の病変では、そのような空間が利用できない。このような場合、コラーゲン膜および再生組織の間への充填材の挿入が必要となることがある。保隙装置の例は、(i)ヒアルロナン(ヒアルロン酸)、(ii)石灰化凍結乾燥骨、(iii)除タンパク骨、(iv)合成ヒドロキシアパタイト、(v)(ii)~(iv)以外の結晶性物質で、オステオカルシンまたはビトロネクチンを濃縮したもの、および(vi)熱処理された脱灰骨(骨由来物質はヒト由来のものであってもよい)。また、ヒアルロナンおよび他の1つまたは複数の保隙装置の組み合わせなど、上記の保隙装置のいずれかの組み合わせも可能である。
【0053】
再生部位のサイズ、形態および場所に依存する様々な用途のために、保隙装置は、上記の抗菌、抗炎症および組織誘導因子のうちの1つまたは複数で強化(enrich)されてもよく、保隙装置マトリックスの形状維持を補助することを意図した物質、例えば、コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、オステオネクチン、オステオポンテン、テナシン、トロンボスポンジン、および/またはヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイン硫酸、ケラタン硫酸等を含むグリコサミノグリカを含む群から選択される1つまたは複数のマトリックス蛋白で強化されてもよい。
【0054】
実施形態によっては、本発明の移植可能構造体は、組織が再生される空間を充填するように設計されている。したがって、組織が再生され、生分解性コラーゲン成分に取って代わる可能性があるため、保隙装置の使用を必要としない場合がある。実施形態によっては、本明細書に詳述されるように、本発明の移植可能構造体は、任意のサイズまたは形状、特に内部の骨格足場のサイズおよび形状に従って定まるように調製されてもよい。本発明の移植可能構造体は、特定の容積(堆積)を充填するために、所定の容積をふさぐように設計された骨格足場から調製されてもよい。例えば、骨格足場は、コラーゲン膜が内部足場のすべての面および内部容積をカバーする、任意の形状およびサイズを有する三次元実体として調製されてもよい。例えば、骨格足場は、複数の隣接する円柱、球体、プリズム、もしくはそれらの任意の組み合わせ、または任意の波状、三次元的もしくは部分的な三次元的形状に形成されたメッシュから調製されてもよい。実施形態によっては、コラーゲン膜は、骨格足場をコーティングしてもよく、骨格足場の内部容積および/または空隙、例えば、メッシュシリンダーの内部容積のいずれかまたはすべてを充填してもよいし、充填しなくてもよい。移植されると、周囲の組織は、時間の経過とともに、骨格足場によって形成された内容積を含め、生分解性コラーゲン膜に取って代わってもよい。ここで、図4に、内部容積を含む3次元骨格足場の例を示す。
【0055】
本発明はさらに、骨格足場および少なくとも1つのコラーゲン膜を含む移植可能構造体を含むキットを提供する。本発明はさらに、少なくとも1つの生体適合性骨格足場、少なくとも1つのコラーゲン溶液、およびそれらの使用説明書を含むキットを提供する。実施形態によっては、キットは架橋剤、フィブリル化剤、またはその両方のうちの少なくとも1つをさらに含む。さらなる実施形態は、移植されたデバイス、例えば、歯科または整形外科の骨再生移植デバイス、ヘルニア修復移植デバイス、硬膜修復移植デバイスとしての移植可能構造体の使用に関する。例えば、コラーゲン膜は、頭蓋骨骨折だけでなく、偽関節骨折の修復にも使用することができる。
【0056】
本発明による移植可能構造体の実施形態を示す図1~3を参照されたい。図1は、コラーゲン膜(101および103)が、金属メッシュの内部骨格足場(102)の外側の表面をカバーし、さらにその内部で絡み合っている、移植可能構造体(100)を示している。図2は、骨格足場としてのポリマーメッシュ(202)と、メッシュをカバーし、それを貫通してさらに絡み合っているコラーゲン膜(201)とを有する移植可能な構造(200)を示している。図3では、本発明の移植可能構造体(300)は、チタンメッシュの骨格足場(302)と、メッシュをカバーし、さらにその内部で絡み合っているコラーゲン膜(310)とから形成されている。図4は、外面(401)と内空隙(402)を有する本発明の三次元移植可能構造体(400)の例を示している。図示しないが、本発明のインプラントの三次元構造体を形成する骨格足場メッシュはコラーゲン膜でカバーされており、さらにその内部で絡み合っている。
【0057】
本発明がどのように実施され得るかをより良く理解するために、本開示によるプロセスを示す、以下の実施例を提供する。
【0058】
【0059】
例1-異なる密度を有する生体適合性骨格足場上でのコラーゲン膜の調製
【0060】
コラーゲン640mlのアリコートを、pH11.2の200mMリン酸ナトリウムを含むフィブリル化緩衝液の60mlと混合した。短時間混合した後、コラーゲンを11×16cmの成形プレートに注いだ。ステンレス鋼メッシュを底から約1.7cmのところまで沈めた。37℃で18時間、フィブリル化を進行させた。得られたゲルを、1kgの重りを使用して37℃で20時間圧縮した。コラーゲン/ステンレス鋼メッシュを、1%のリボース、70%のエタノール、29%のPBSの培地で、37°Cで11日間架橋した。次に、調製したコラーゲン膜を水で洗浄し、凍結乾燥により乾燥させた。図1は、調製したコラーゲン膜を示す。
【0061】
ステンレス鋼メッシュの代わりに高分子メッシュを使用して同じ処理を実行し、図2に示すコラーゲン膜を調製した。さらに、チタンメッシュを使用して同じ処理を実行し、図3に示すコラーゲン膜を調製した。
【0062】
例2-生体適合性骨格上で異なる架橋度および異なる密度を有するコラーゲン膜の調製
【0063】
低速分解領域と高速分解領域を有するコラーゲン膜を調製するために、640mlのコラーゲンのアリコートを、pH11.2の200mMリン酸ナトリウムを含む60mlのフィブリル化緩衝液と混合する。短時間混合した後、コラーゲンを成形プレートに注ぐ。ステンレス鋼メッシュを溶液に浸漬する。フィブリル化を37℃で18時間進行させる。得られたゲルを1kgの重りを使用して37℃で20時間圧縮する。コラーゲン/ステンレス鋼メッシュが、1%のリボース、70%のエタノール、29%のPBSの媒体で架橋させる。
【0064】
メッシュ上に不均一なコラーゲン膜を形成するために、はじめに、コラーゲン/ステンレス鋼メッシュ全体を架橋培地に37℃で約5~10日間浸漬する。所定の時間経過後、形成膜を架橋培地から部分的に除去する。例えば、形成膜を培地の表面に懸垂し、その一方の面を培地中/培地上に配置し、その他方の面が周囲の空気に曝されるようにする。培地と接触しているメッシュの側または部分にはコラーゲンが架橋され続けるが、培地と接触していないメッシュの側または部分には架橋されないように、メッシュは、任意の適切な手段により、約5~10日間保持される。このように、コラーゲン成分はメッシュ上に不均一に形成され、一方の側の架橋度は他方の側の架橋度よりも高くなる。したがって、2つの領域が形成され、一方の領域は架橋度が高く、したがって分解速度が遅い。他方の領域は架橋度が比較的低く、したがって分解速度が高い。
【0065】
次に、形成されたコラーゲン膜を水で洗浄し、凍結乾燥によって乾燥させる。ステンレス鋼メッシュの代わりにポリマーメッシュやチタンを使用しても、同様の処理となる。
【0066】
本明細書では、本発明の特定の特徴を図示し、説明したが、当業者には多くの修正、置換、変更、および等価物が生じ得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神の範囲内にあるすべてのそのような修正および変更をカバーすることを意図していることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4