(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】シールエレメントを有する電気化学的なシステムユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0286 20160101AFI20240605BHJP
H01M 8/0271 20160101ALI20240605BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20240605BHJP
H01M 8/0276 20160101ALI20240605BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240605BHJP
【FI】
H01M8/0286
H01M8/0271
H01M8/0247
H01M8/0276
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2021576783
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2020066293
(87)【国際公開番号】W WO2021001135
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】102019209583.6
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】リンゲル,アントン
(72)【発明者】
【氏名】リンク,アンドレアス
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-281528(JP,A)
【文献】特開平11-129396(JP,A)
【文献】特開2012-016877(JP,A)
【文献】特開2016-009658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0235744(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110783598(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0286
H01M 8/0271
H01M 8/0247
H01M 8/0276
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ陽極プレート(32)と陰極プレート(36)とシールエレメント(38)とを有する、並んで配置された層状の複数の電気化学的な電池(30)を備えた電気化学的なシステムユニットの製造方法であって、前記シールエレメント(38)が、前記陽極プレート(32)と前記陰極プレート(36)との間の空間をシールするために設けられており、前記電気化学的なシステムユニットの少なくとも2つの電気化学的な電池(30)が、前記シールエレメント(38)の異なる製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)を有しており、
前記シールエレメント(38)の前記異なる製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)が、射出成形法またはディスペンス法によって前記電気化学的な電池(30)の電極プレート(32,36)に塗布されて製造されており、
前記シールエレメント(38)の少なくとも2つの前記異なる製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)が、前記シールエレメント(38)の異なる部分領域に製造に基づく不規則性(12,40a,40b)を有しており、
前記シールエレメント(38)の少なくとも2つの前記異なる製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)が、前記シールエレメント(38)の形態に関連して射出成形法のゲートマーク(12)の、少なくとも2つの異なる位置によってもたらされる製造に基づく前記不規則性(12,40a,40b)を、前記シールエレメント(38)の異なる空間領域内に有している、電気化学的なシステムユニットの製造方法。
【請求項2】
それぞれ陽極プレート(32)と陰極プレート(36)とシールエレメント(38)とを有する、並んで配置された層状の複数の電気化学的な電池(30)を備えた電気化学的なシステムユニットの製造方法であって、前記シールエレメント(38)が、前記陽極プレート(32)と前記陰極プレート(36)との間の空間をシールするために設けられており、前記電気化学的なシステムユニットの少なくとも2つの電気化学的な電池(30)が、前記シールエレメント(38)の異なる製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)を有しており、
前記シールエレメント(38)の前記異なる製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)が、射出成形法またはディスペンス法によって前記電気化学的な電池(30)の電極プレート(32,36)に塗布されて製造されており、
前記シールエレメント(38)の少なくとも2つの前記異なる製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)が、前記シールエレメント(38)の異なる部分領域に製造に基づく不規則性(12,40a,40b)を有しており、
前記シールエレメント(38)の少なくとも2つの前記異なる製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)が、前記シールエレメント(38)の形態に関して前記ディスペンス法の開始点(40a,40b)の少なくとも2つの異なる位置によってもたされる製造に基づく前記不規則性(12,40a,40b)を、前記シールエレメント(38)の異なる空間領域内に有している、電気化学的なシステムユニットの製造方法。
【請求項3】
少なくとも1つの電気化学的な電池(30)の前記陽極プレート(32)と前記陰極プレート(36)とが、それぞれバイポーラプレートとして構成されている、請求項1または2記載の電気化学的なシステムユニットの製造方法。
【請求項4】
前記シールエレメント(38)の前記異なる製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)が、前記電気化学的な電池(30)内に挿入されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の電気化学的なシステムユニットの製造方法。
【請求項5】
前記シールエレメント(38)の前記異なる製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)が、前記射出成形法または前記ディスペンス法によって、前記陰極プレート(36)と前記陽極プレート(32)との間に一体成形されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の電気化学的なシステムユニットの製造方法。
【請求項6】
前記シールエレメント(38)が、それぞれの前記シールエレメント(38)の製造の開始部分領域(40a,40b)および/または終了部分領域(40a,40b)に、製造に基づく不規則性(12,40a,40b)を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の電気化学的なシステムユニットの製造方法。
【請求項7】
前記シールエレメント(38)の前記異なる製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)が、前記シールエレメント(38)の異なる空間領域に、前記シールエレメント(38)の製造の開始部分領域および/または終了部分領域を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の電気化学的なシステムユニットの製造方法。
【請求項8】
前記シールエレメント(38)の少なくとも2つの前記異なる製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)が、前記電気化学的なシステムユニット内に配置されていて、製造に基づく前記不規則性(12,40a,40b)が補正されるように相互作用するようになっている、請求項1から7までのいずれか1項記載の電気化学的なシステムユニットの製造方法。
【請求項9】
前記シールエレメント(38)の少なくとも2つの前記異なる製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)は、前記シールエレメント(38)の製造に基づく前記不規則性(12,40a,40b)が互いに三次元的にずらされるように前記電気化学的なシステムユニット内に配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の電気化学的なシステムユニットの製造方法。
【請求項10】
前記電気化学的な電池(30)の前記陰極プレート(36)と前記陽極プレート(32)との間の空間内に、薄膜電極装置(34)が配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の電気化学的なシステムユニットの製造方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の電気化学的なシステムユニットの製造方法において、前記シールエレメント(38)の少なくとも2つの前記製造形状(10a,10b,10c,10d,38a,38b)を、前記シールエレメント(38)の製造の
開始点の変化によって生ぜしめる、電気化学的なシステムユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールエレメントを有する電気化学的な電池スタックのための電気化学的なシステムユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的な装置は、電気エネルギを化学エネルギに変換するかまたは化学エネルギを電気エネルギに変換するための電気化学的な電池を有し得る。電気化学的な装置の例は、高分子電解質膜型(PEM)燃料電池、“Solid Oxide Fuel Cell「固体酸化物型燃料電池」(SOFC)”燃料電池、また一般的な高温型燃料電池または低温型燃料電池、並びに電解槽または“Redox-Flow-Batterien「レドックスフローバッテリ」”である。
【0003】
電気化学的な装置の例としての燃料電池またはバッテリは、一般的に、電動機または機械に供給するための電気的な電流源として、または定常の分散したエネルギシステムのための電気的な電流源として使用される。この場合、電気駆動が、電動自転車、電気自動車、ハイブリッド車両その他のための車両駆動装置の構成要素としてますます増えている。このようなシステムは、効果的なエネルギ供給を約束し、環境保護上の利点を有している。
【0004】
燃料電池は、化学的な反応物質、つまり燃料および酸化剤を、電極反応で反応生成物に変換し、この際に電気エネルギが生じる。燃料電池は、一般的に、2つの電極の間、つまり陰極と陽極との間に配置された電解質を使用する。触媒体は、一般的に電極における所望の電気化学的な反応を促進する。
【0005】
個別の燃料電池は、多くのエネルギを発生させることはなく、低い電圧(例えば概ね0.7~0.9ボルト)しか発生させないので、自動車を運転するための十分な電気エネルギまたは定常の電気を発生させるために、1つのスタック内に多数の燃料電池が共通に配置されていてよい。
【0006】
燃料電池、例えばプロトン交換膜型(PEM)燃料電池は、通常は膜電極接合体(MEA)を含有しており、この膜電極接合体は、1対のガス拡散層の間に配置された触媒コーティングされた薄膜によって形成されている。触媒コーティングされた薄膜自体は、通常は1対の触媒層間に配置された電解質薄膜を有している。
【発明の概要】
【0007】
通常は、電気化学的な電池は圧力ガスおよび液体の漏れ出しを阻止するためにシールで密封されている。圧力ガスおよび液体が電解質薄膜を迂回しないように保証するために、シールは一般的に電気化学的な電池の周縁部を取り囲んで形成される。
【0008】
押圧力によってシール作用が得られるシールエレメントを用いて燃料電池スタックをシールする際に、電気化学的な電池の内部に配置された膜電極接合体(MEA)の圧縮が強すぎると、陽極-陰極-層がそれぞれの電解質薄膜を貫いて接触し、それによって電気的な短絡が発生することを考慮しなければならない。相応に、圧縮が弱すぎると、燃料電池がシールエレメントによってシールされないことになる。
【0009】
燃料電池スタックまたは電気化学的な電池のスタックは、一般的に、数百の燃料電池若しくは電気化学的な電池を繰り返し層状に接合することによって製造される。このような電気化学的な電池のそれぞれが、電気化学的な電池内で反応ガスおよび冷却水を相互にシールするためにシールを備えている。
【0010】
数百の電気化学的な電池が所定の圧力負荷下で積み重ねられているので、各シールは電気化学的な電池若しくは燃料電池のスタックの耐用年数に亘って、例えば8万時間に亘って圧縮された状態のままにされる。
【0011】
燃料電池スタックまたは電気化学的な電池のスタックも、通常は、温度、圧力および相対的な湿気の様々な条件下で運転され、この場合、各個別の燃料電池は燃料電池スタックの耐用年数に亘ってシール性を、特に燃料ガスおよび相応の酸化ガスに関連して保証しなければならない。
【0012】
本発明は、独立請求項の特徴に記載した電気化学的なシステムユニットを開示する。好適な実施形態は、従属請求項並びに以下の説明の対象である。
【0013】
本発明は、シールエレメントの所定の部分領域に製造に基づく不規則性を有する同一のシールエレメントを使用することは、シール作用のために不都合であり得るという認識に基づいている。何故ならば、対応配置されたシールエレメントの不規則性は、非シール性が生じるように相互作用し得るからである。
【0014】
本発明の態様は、それぞれ陽極プレートと陰極プレートとシールエレメントとを有する、並んで配置された層状の複数の電気化学的な電池を備えた電気化学的なシステムユニットに関する。この場合、シールエレメントは、陽極プレートと陰極プレートとの間の室をシールするために設けられている。この電気化学的なシステムユニット内で、少なくとも2つの電気化学的な電池が、シールエレメントの異なる製造型式を有している。
【0015】
このような電気化学的なシステムユニットは、電気エネルギを化学エネルギに変換するかまたは化学エネルギを電気エネルギに変換するために使用され得る。このような変換のための例は、燃料電池、レドックスフロー電池または電解質電池である。
【0016】
このような電気化学的なシステムユニットによって、例えば燃料電池スタックとも呼ばれる燃料電池積層体が構成され得る。並んで配置された層状の複数の電気化学的な電池は、少数の電池、例えば2つまたは3つの電池を含んでいてよく、多数のものは100個の電池を含んでいてもよいかまたは、例えば燃料電池スタックを形成するために、それより多い数の電気化学的な電池が互いに接して並べられていてよい。
【0017】
このような、互いに接して並べられた、異なる製造型式のシールエレメントを使用すれば、これらのシールエレメントは、例えばシールエレメントの製造に基づく不規則性を補正するか、またはこのような不規則性が例えばシールエレメント部分領域内に少なくとも集合しないように相互に作用することができる。このような集合は、個別の燃料電池の同一に製造されたシールエレメント若しくは不規則性を有する電気化学的な電池が、対応する部分領域に互いに接して並べられて押圧力で負荷されると発生する。不規則性の対応する部分領域を有する、同一に製造されたシールエレメントが互いに接して並べられると、非気密性が発生し得る。
【0018】
このような不規則性は、シールエレメントの様々な部分領域に発生し得るものであり、例えば、この部分領域内におけるシールエレメントのシールの幅、圧縮率、硬さ、架橋密度、圧縮永久歪みまたはその他、特に機械特性である。
【0019】
シールエレメントの異なる製造型式において、違いは、主に幾何学的および機械的な特性に関連してできるだけ形状の同じシールエレメントの製造方法に関するものである。しかしながら、製造方法に応じて、製造に基づく局所的な違い、つまりシールエレメントの異なる部分領域内の違いはしばしば避けられないものである。
【0020】
特に、異なる製造型式の数は2つよりも著しく多くてもよく、これは、例えば隣接し合う燃料電池のシールエレメントの弾性が、局所的な不均一性または不規則性を補正するためには十分ではなく、隣接する燃料電池の複数のシールエレメントのこのような不規則性の補正のために必要とされるときに、特に考えられ得る。
【0021】
さらに、製造技術に基づく不規則性は、シールエレメントのこのような局所的な不規則性に基づく非気密性を低下させるかまたは避けるために、燃料電池スタックの例えばクリップの形の外部の力が作用するシールエレメントの部分領域に、局所的に配置されてよい。何故ならば、このような圧力が、燃料電池スタックのエンドプレートによって個別の燃料電池に作用し、このエンドプレートは変形可能であって、シールエレメントの異なる部分領域を介して異なる機械的な圧力を作用させるからである。
【0022】
相並んで配置された電気化学的な電池は、陰極プレートと陽極プレートとの間に膜電極接合体を有していてよく、この膜電極接合体で本来の電気化学的な反応が進行する。
【0023】
シールエレメントは、陰極プレートと陽極プレートとの間の異なる空間領域内で異なるシール機能を担っていてよい。一方では、シールエレメントは、燃料と酸化剤とが触媒の領域内でだけ、ぶつかり合うことができるように、陰極室を陽極室から分離し、他方では、シールエレメントは、陰極および陽極のそれぞれの反応室を冷却循環路に対してシールするために用いられるか、または電極室内でのガス分布のためのその他の機能も担っていてよい。
【0024】
別の態様によれば、少なくとも1つの電気化学的な電池の陽極プレートと陰極プレートとが、それぞれバイポーラプレートとして構成されているように提案される。この場合、バイポーラプレートは、少なくとも2つの電気化学的な電池の互いに接して並べた配置の一方側で例えば陽極プレートとして、また他方側で陰極プレートとして用いられる。このように構成された陽極若しくは陰極プレートは、複数の燃料電池にも関係しているか、またはそれぞれの外側の燃料電池、エンドプレートを除いたすべての燃料電池がバイポーラプレートして構成されていてよい。
【0025】
燃料電池若しくは電気機械的な電池がバイポーラプレートを備えて構成されていれば、すべての燃料電池スタックは、同じ数の燃料電池においてより小型に製造され得る。
【0026】
別の態様によれば、シールエレメントの異なる製造型式を、射出成形法またはディスペンス法によって電気化学的な電池の電極プレートに塗布することが提案される。
【0027】
シールエレメントを製造するためのこのような射出成形法において、それぞれの陽極プレート若しくは陰極プレートが射出成形型内にもたらされ、それによって、製造時にシールエレメントの厚さの非常に小さい変化を得ることができる。
【0028】
ディスペンス法の利点は、相応の射出成形型を製造するための費用が省かれるという点にある。
【0029】
この場合、シールエレメントは、2つの電極プレートのうちの一方、つまり陰極プレートまたは陽極プレートに施されるか、または両方に施されてよい。特に、シールエレメントは電極プレートの両側に施されてよい。
【0030】
シールエレメントを製造するために、射出成形法では、例えば熱可塑性樹脂(PET,PP,PE,EPDM)、熱可塑性のエラストマー(TPA-A,TPE-E,TPE―O,TPS,TPU,TPV)、エラストマーおよび熱硬化性樹脂(シリコーン、エポキシド、ウレタン、ビトン、アクリレート)が使用されてよい。
【0031】
ディスペンス法のために、例えばシリコーン、アクリレート、エポキシド、ウレタンが使用されてよく、挿入のために相応の材料が使用されてよい。
【0032】
一態様によれば、シールエレメントの異なる製造型式が、電気化学的な電池内に挿入されるように提案される。この場合、シールエレメントの異なる製造型式が、電気化学的な電池の外で、つまり2つの電極プレートのうちの一方に塗布することなしに異なる型式で製造され、次いで、燃料電池スタックの組み立てられた状態でそれぞれの燃料電池をシールするために、電極プレート間に挿入される。
【0033】
別の態様によれば、シールエレメントの異なる製造型式が、射出成形法またはディスペンス法によって、陰極プレートと陽極プレートとの間に一体成形されるように提案される。この方法において、シールエレメントが一体成形されるのに対して、燃料電池の2つの電極が互いに規定された間隔を有することが保証されなければならない。この方法において、それぞれの燃料電池の2つの電極に対する接着によりシール性を改善することができる。
【0034】
一態様によれば、シールエレメントの少なくとも2つの異なる製造型式が、シールエレメントの製造に基づく不規則性を異なる部分領域に有するように、提案される。
【0035】
それによって、同じシールエレメントの対応配置された不規則性により、これらの不規則性が相互作用して非気密性が生じることは避けられる。
【0036】
一態様によれば、シールエレメントが、それぞれのシールエレメントの製造の開始部分領域および/または終了部分領域に、製造に基づく不規則性を有するように提案される。例えば射出成形法によるシールエレメントの製造法において、シールエレメントの材料が型に押圧される箇所に、ゲートマークが生じる。さらに、この箇所若しくはシールエレメントの部分領域は、製造方法の実施中に、より高い熱負荷にさらされ、その結果、この箇所にシールエレメントの材料の不均一な特性が発生し得る。この箇所を識別できることによって、例えばそれぞれ1つの異なるゲートマークを有する相応の射出成形工具によって、またはいわゆる「Moving Inserts(ムービングインサート)」を用いて、ゲートマークを変えることができる。この場合、複数のゲートマークを有するシールエレメントが製造されてもよい。何故ならば、ゲートマークはシールエレメントの異なる部分領域内に配置されてもよいからである。この場合、複数のゲートマークの数は、複数の部分領域におけるシールエレメントの複数の不規則性の数に相当する。
【0037】
一態様によれば、シールエレメントの異なる製造型式が、シールエレメントの異なる空間領域に、シールエレメントの製造の開始部分領域および/または終了部分領域を有するように提案される。
【0038】
このことは、例えばシールエレメントをディスペンスするために、例えばシールエレメントの材料を施すための開始点および/または終了点が、シールエレメントと比較して三次元的な配置に関連して変えられ、それによって、このようなやり方および形式で、改善されたシール性を保証するために、例えば互いに接して並べられた燃料電池において互いにずらして配置される異なるシールエレメントが得られる、という意味である。
【0039】
一態様によれば、シールエレメントの少なくとも2つの異なる製造型式が、射出成形法のゲートマークの、シールエレメントの形態に関連して少なくとも2つの異なる位置によって、シールエレメントの異なる空間領域内に、製造に基づく不規則性を有するように、提案される。
【0040】
別の態様によれば、シールエレメントの少なくとも2つの異なる製造型式が、ディスペンス法のうちの1つの開始点の少なくとも2つの異なる位置によって、シールエレメントの形態に関する製造に基づく不規則性を、シールエレメントの異なる空間領域内に有するように、提案される。
【0041】
一態様によれば、シールエレメントの少なくとも2つの異なる製造型式が、電気化学的なシステムユニット内に配置されていて、製造に基づく不規則性が補正されるように相互作用するように、提案されている。この場合、例えば燃料電池のスタック内の配向に関連してずらして配置することによって、並んで配置された燃料電池のシールが、隣接するシールの不規則性または不均一性を例えば固有弾性を介して補正することができるか、または不規則性の対応する配置によってこの不規則性が非気密性を生ぜしめるように相互作用することが、少なくとも阻止されることが達成され得る。
【0042】
シールエレメントの他の部分領域にそれぞれ製造に基づく不規則性を有する2つよりも多い異なるシールエレメントを使用する場合、それぞれ適切にずらして配置することによって、このようなより不規則なシールエレメントの効果が、シール性に関する不都合な影響を最小限にするために、シールエレメントの部分領域に亘って均一に配分され得る。
【0043】
一態様によれば、シールエレメントの少なくとも2つの異なる製造型式は、電気化学的なシステムユニットにおいて、電気化学的なシステムユニットの内部で、シールエレメントの製造に基づく不規則性が互いに三次元的にずらされるように配置されているように、提案される。
【0044】
別の態様によれば、システムユニット内で互いに隣接し合う少なくとも2つの電気化学的な電池のシールエレメントの製造型式が、シールエレメントの不規則性が三次元的に対応しないように選択されることが、提案される。これによって、対応して配置された不規則性の相互作用が低減され、シールエレメントの改善されたシール性が得られる。
【0045】
一態様によれば、少なくとも1つの第1の電気化学的な電池の外側と、システムユニット内で隣接して配置された第2の電気化学的な電池との間にシールエレメントが設けられていて、2つの電気化学的な電池間の空間を、請求項3から12までのいずれか1項記載のシールエレメントによってシールすることが提案される。
【0046】
電気化学的な電池間にバイポーラプレートが使用されていない場合、この中間室は一般的に、電気化学的な電池を冷却するために使用される。この場合も、前記シールエレメントが使用され、ここでもシールエレメントの不規則性が、別の冷却中間室のシールエレメントと対応しないように配置されることによって、この中間室のシール性は改善され得る。特に、冷却中間室のシールエレメントの不規則性も、電気化学的な電池のシールエレメントの不規則性と協働して、全体で最適なシール性が得られるように、シールエレメントの部分領域に亘って配分され得る。
【0047】
別の態様によれば、電気化学的な電池の陰極プレートと陽極プレートとの間の空間内に膜電極接合体が配置されていることが提案される。
【0048】
別の態様によれば、互いに重なり合って配置された2つの電気化学的な電池が異なって製造されたシールエレメントを有することが提案される。
【0049】
別の態様によれば、このような異なる複数のシールエレメントを製造することが提案されており、これらのシールエレメントにおいて、並んで配置された電気化学的な電池とこのようなシールエレメントとの相互作用を介して電気化学的な電池のスタックのシール性に及ぼす影響を最小限にするために必要な、それぞれ製造に基づく不規則性が、シールエレメントの異なる部分領域内に配置されている。
【0050】
別の態様によれば、不規則性が電気化学的な電池のスタックの押圧力を生ぜしめるクリップの下に配置されるように、電気化学的な電池のシールエレメントの周囲に不規則性を配分することが提案される。つまり、不規則性は、より高い圧力を有する領域内に配置されていることによって、電気化学的な電池のシール性に及ぼす影響に関連してさらに減少され得る。
【0051】
別の態様によれば、シールエレメントの複数の異なる製造型式の数と同じ数だけ、不規則性が電気化学的な電池のシールエレメントの周囲に配分されるように提案される。
【0052】
前記のような電気化学的なシステムユニットを製造するための方法が提案されており、この場合、シールエレメントの少なくとも2つの製造型式が、シールエレメントの製造の開始点の変化によって得られる。
【0053】
移動式プラットホームへのエネルギ供給のために、前記のような電気化学的なシステムユニットの使用が提案される。
【0054】
移動式プラットホームとは、少なくとも部分的に自動化された移動可能なシステムおよび/または運転者支援システムであると解釈されてよい。一例は、少なくとも部分的に自動化された車両、若しくは運転者支援システムを備えた車両であってよい。つまり、これに関連して、少なくとも部分的に自動化されたシステムは、少なくとも部分的に自動化された機能性に関して移動式プラットホームを含有しており、また移動式プラットホームは、運転者支援システムを含む別の移動式機械および車両も含有している、ということである。移動式プラットホームのための別の例は、複数のセンサを有する運転者支援システム、移動式マルチセンサロボット、例えばロボット掃除機または芝刈り機、マルチセンサ式監視システム、製造機械、パーソナルアシスタントまたはアクセスコントロールシステムであってよい。これらの各システムは、完全にまたは部分的に自動化されたシステムであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】異なるゲートマークを有するシールエレメントを示す図である。
【
図2】4つの異なるゲートマークを有する射出成形工具を示す図である。
【
図3】隣接する冷却室を有する燃料電池の横断面図である。
【
図4】シールエレメントを有する電気化学的な電池の電極の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の実施例が
図1乃至
図4に示されていて、以下に詳しく説明されており、本発明のより良い理解のために役立つ。
【0057】
図面中、同じまたは類似の構成要素には同じまたは類似の符号が付けられており、この場合、個別のケースにおいてこの構成要素の繰り返しの説明は省かれている。
【0058】
図1には、シールエレメント38の4つの異なる製造型式10a乃至10dが概略的に示されていて、この例では、ゲートマーク12の形のシールエレメント38の不規則性12が存在し、シールエレメント38のこれらの4つの異なる製造型式10a乃至10dは、シールエレメント38の相応に4つの異なる部分領域に不規則性を有している。シールエレメント38の製造型式10aのための
図1には、シールエレメント38の型式10aの製造時にゲートマーク12を発生させる射出ノズル14が図示されている。この場合、シールエレメント38のこの製造型式10aの不規則性12は、この領域内でシール面の純粋な増大を超えて、この箇所における増大した熱供給に基づいて例えばシール面10a,38の材料の変化を生ぜしめる。
【0059】
図2は、射出成形工具20を概略的に示し、この射出成形工具20内に、シールエレメント38を製造するための例えば凹部24が設けられている。シールエレメント38の4つの異なる製造型式10a乃至10dを製造するために、射出成形工具20は例えば4つの異なる射出ノズル22a乃至22dを有している。このような射出成形工具20をシールエレメント38の異なる製造型式10a乃至10dを製造するために使用する場合、シールエレメント38の異なる部分領域に応じて配置された比較的多数の射出ノズル22a乃至22dが使用されてもよい。
図2に示した射出成形工具20の例では、例えば射出ノズル22a,22b,22cまたは22dのそれぞれ2つを使用する場合、それに応じてシールエレメントの2つの異なる製造型式を製造することができる。
【0060】
図3は、陽極プレート32、陰極プレート36、膜電極接合体34、陽極室31、陰極室33およびシールエレメント38を備えた、隣接する冷却室35を有する電気化学的な電池30の概略的な横断面図を示している。このように構成された燃料電池若しくは電気化学的な電池30の電極プレート32,36に組み立てられた燃料電池スタックに外から作用する力によって、シールエレメント38は、膜電極接合体34にも、またこれに相応に向かい合う電極32,36にも密着して接触せしめられ、それによって、シールエレメント38のシール作用が得られる。
【0061】
図4は、電極32,36の上端部若しくは下端部に間隙36a,36bを備えた電気化学的な電池30の電極36を概略的に示し、これらの間隙36a,36bは、電気化学的な電池30、例えば燃料電池を互いに接して配置した場合、燃料、酸化剤および冷却剤を供給および導出するための通路を形成し、電極32,36の上側にもまた下側にも配置され得るシールエレメント38a,38bによって、互いに分離される。
【0062】
図4では、シールエレメント38a,38bの対応する異なる部分領域に、製造に基づく不規則性40a若しくは40bを有する、シールエレメント38の2つの異なる製造型式38a,38bが使用されている。
【符号の説明】
【0063】
10a,10b,10c,10d 製造型式
12 不規則性
14 射出ノズル
20 射出成形工具
22a,22b,22c,22d 射出ノズル
30 電池
31 陽極室
32 陽極プレート、電極プレート
33 陰極室
34 膜電極接合体
35 冷却室
36 陰極プレート、電極プレート
36a,36b 間隙
38 シールエレメント
38a,38b シールエレメント、製造型式
40a,40b 不規則性