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特許7498733コルゲートチューブおよびワイヤハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】コルゲートチューブおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20240605BHJP
   F16L 11/118 20060101ALI20240605BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
H02G3/04 068
F16L11/118
H01B7/00 301
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022009841
(22)【出願日】2022-01-26
(65)【公開番号】P2023108678
(43)【公開日】2023-08-07
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】清田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】木内 勝
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-152714(JP,A)
【文献】特開2019-215060(JP,A)
【文献】特開2016-134955(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208790(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
F16L 11/118
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体形状をなして外側の層の部分になる第1層構造部と、
管体形状をなして前記第1層構造部の内側の層の部分になる第2層構造部と、
を備え、
内部に電線を収容可能であり、
前記第1層構造部と前記第2層構造部とは、互いに密着して配置されると共に、互いに相対移動自在に配置される、
ことを特徴とするコルゲートチューブ。
【請求項2】
前記第1層構造部の外面に対して外力が作用したときに、前記第1層構造部の外面の変形と前記第2層構造部の内面の変形とが非オフセットの状態になるように形成される、
請求項1に記載のコルゲートチューブ。
【請求項3】
前記第1層構造部の外面に対して外力が作用したときに、前記第1層構造部と前記第2層構造部との密着面が相対移動することで、前記第2層構造部の内面に対して傾斜する方向に衝撃力が伝達される、
請求項1または2に記載のコルゲートチューブ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のコルゲートチューブと、
前記コルゲートチューブに収容される1本以上の電線と、
を備えることを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルゲートチューブおよびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、搭載される各種の機器間を電気的に接続するためにワイヤハーネスが用いられる。ワイヤハーネスは、管体形状をなす外装部材と、外装部材に収容される電線とを備える。外装部材は、コルゲートチューブが適用され、このコルゲートチューブは、内部に収容する電線を保護する。
【0003】
コルゲートチューブは、多層構造部から構成されるのがある。コルゲートチューブの多層構造部は、例えば、外層構造部と、中間層構造部と、内層構造部とを有する。このようなコルゲートチューブとしては、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-143019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コルゲートチューブを構成する多層構造部は、外層構造部と中間層構造部と内層構造部とが互いにずれないように接着される。従来のコルゲートチューブは、外力が作用したとき、多層構造部としての外層構造部、中間層構造部、内層構造部が異なる変形をすることで衝撃力を効果的に吸収する。近年、コルゲートチューブは、外部からの衝撃力を吸収する機能の向上が求められている。
【0006】
本発明の目的は、衝撃力の吸収機能を向上することができるコルゲートチューブおよびワイヤハーネスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコルゲートチューブは、管体形状をなして外側の層の部分になる第1層構造部と、管体形状をなして前記第1層構造部の内側の層の部分になる第2層構造部と、を備え、内部に電線を収容可能であり、前記第1層構造部と前記第2層構造部とは、互いに密着して配置されると共に、互いに相対移動自在に配置される。
【0008】
本発明のワイヤハーネスは、前記コルゲートチューブと、前記コルゲートチューブに収容される1本以上の電線と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るコルゲートチューブおよびワイヤハーネスは、衝撃力の吸収機能を向上することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係るワイヤハーネスの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るコルゲートチューブの断面図である。
図3図3は、実施形態に係るコルゲートチューブの要部断面図である。
図4図4は、外層構造部と中間層構造部と内層構造部に適用する材料の組合せを表す概略図である。
図5図5は、外層構造部と中間層構造部と内層構造部に適用する材料の具体的な組合せを表す第1実施例の説明図である。
図6図6は、外層構造部と中間層構造部と内層構造部に適用する材料の具体的な組合せを表す第2実施例の説明図である。
図7図7は、コルゲートチューブに外力が作用する前の要部断面図である。
図8図8は、従来のコルゲートチューブに外力が作用したときの要部断面図である。
図9図9は、実施形態のコルゲートチューブに外力が作用したときの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係るコルゲートチューブにつき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
[実施形態]
図面を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、コルゲートチューブおよびワイヤハーネスに関する。図1は、実施形態に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【0013】
図1に示すように、ワイヤハーネス1は、コルゲートチューブ2と、電線3とを備える。コルゲートチューブ2は、円筒形状をなし、内部に電線3を収容する。本実施例にて、コルゲートチューブ2は、2本の電線3を収容するが、電線3の本数は限定されない。
【0014】
コルゲートチューブ2は、例えば、自動車等の車両に搭載される電線3を外部から保護する外装部材として使用される。電線3は、複数の導電性を有する金属素線からなる導体部(芯線)と、導体の外側を覆う絶縁性の被覆部とを有する。電線3の被覆部は、例えば、電線3の最外層に積層される。
【0015】
図2は、実施形態に係るコルゲートチューブの断面図である。
【0016】
図2に示すように、コルゲートチューブ2は、可撓性を有する。コルゲートチューブ2は、蛇腹の管体形状に形成される。但し、コルゲートチューブ2は、蛇腹形状に限るものではなく、例えば、直管形状、楕円管形状、多角管形状などであってもよい。コルゲートチューブ2は、外面側から見て、周方向に沿う外面凸部11と、周方向に沿う外面凹部12とを有する形状に形成される。コルゲートチューブ2は、外面凸部11と外面凹部12とが軸方向に交互に連続する形状に形成される。また、コルゲートチューブ2は、内面側から見て、周方向に沿う内面凹部21と、周方向に沿う内面凸部22とを有する形状に形成される。コルゲートチューブ2は、内面凹部21と内面凸部22とが軸方向に交互に連続する形状に形成される。
【0017】
そして、コルゲートチューブ2は、外面凸部11と内面凹部21とが径方向に対向し、外面凹部12と内面凸部22とが径方向に対向する。
【0018】
コルゲートチューブ2は、多層構造に構成される。コルゲートチューブ2は、外層構造部31と、中間層構造部32と、内層構造部33とを有する。外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33は、互いに隙間なく密着して配置されると共に、互いに相対移動自在に配置される。すなわち、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33は、互いに隙間なく密着するものの、層間でずれることができるように形成される。
【0019】
ここで、コルゲートチューブ2は、外層構造部31と中間層構造部32との関係においては、外側に位置する外層構造部31が「第1層構造部」を構成し、内側に位置する中間層構造部32が「第2層構造部」を構成する。また、コルゲートチューブ2は、中間層構造部32と内層構造部33との関係においては、外側に位置する中間層構造部32が「第1層構造部」を構成し、内側に位置する内層構造部33が「第2層構造部」を構成する。但し、コルゲートチューブ2は、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33とを有するものに限らない。例えば、コルゲートチューブ2は、外層構造部31と内層構造部33とにより構成してもよい。この場合、コルゲートチューブ2は、外側に位置する外層構造部31が「第1層構造部」を構成し、内側に位置する内層構造部33が「第2層構造部」を構成する。また、コルゲートチューブ2は、外層構造部31と、複数の中間層構造部32と、内層構造部33とにより構成してもよい。この場合、コルゲートチューブ2は、密着する2つの層構造部のうち外側に位置するものが「第1層構造部」を構成し、内側に位置するものが「第2層構造部」を構成することとなる。
【0020】
図3は、実施形態に係るコルゲートチューブの要部断面図である。
【0021】
図3に示すように、コルゲートチューブ2は、外側から、外層構造部31、中間層構造部32、内層構造部33が積層されて構成される。コルゲートチューブ2は、外面凸部11と外面凹部12とが軸方向に交互に連続して形成されると共に、内面凹部21と内面凸部22とが軸方向に交互に連続して形成される。外層構造部31と内層構造部33とは、ほぼ同じ厚さに設定され、中間層構造部32は、外層構造部31および内層構造部33より厚く設定される。但し、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33との厚さ関係は、上述した関係に限定されない。
【0022】
外層構造部31は、コルゲートチューブ2における最も外側に配置される。外層構造部31は、外面31aが外部に露出し、内面31bが中間層構造部32の外面32aに密着する。外層構造部31は、中間層構造部32よりも硬質な材料(硬質材料)を用いて形成される。適用される材料は、耐衝突性(耐衝撃性、強度アップ)の機能を持たせるような材料が適宜選定される。なお、耐衝突性の機能のみならず、ワイヤハーネス1の機能として必要とする、例えば、放熱性や耐熱性等の機能も持たせることができる材料であってもよい。
【0023】
内層構造部33は、コルゲートチューブ2における最も内側に配置される。内層構造部33は、外面33aが中間層構造部32の内面32bに密着し、内面33bが内部に露出する。内層構造部33は、外層構造部31と同様に、中間層構造部32よりも硬質な材料(硬質材料)を用いて形成される。適用される材料は、外層構造部31と同様に適宜選定される。
【0024】
中間層構造部32は、コルゲートチューブ2における厚さ方向の中間位置、つまり、外層構造部31と内層構造部33の間に配置される。中間層構造部32は、外面32aが外層構造部31の内面31bに密着し、内面32bが内層構造部33の外面33aに密着する。中間層構造部32は、外層構造部31および内層構造部33よりも軟質の材料(軟質材料)を用いて形成される。適用される材料は、衝撃吸収性の機能を持たせることができるような材料が適宜選定される。
【0025】
コルゲートチューブ2は、外層構造部31および内層構造部33が硬質材料を用いて形成され、中間層構造部32が軟質材料を用いて形成される。なお、コルゲートチューブ2は、外層構造部31が硬質材料を用いて形成され、中間層構造部32および内層構造部33が軟質材料を用いて形成されていてもよい。また、コルゲートチューブ2は、外層構造部31と内層構造部33とから構成されているとき、外層構造部31が硬質材料を用いて形成され、内層構造部33が軟質材料を用いて形成される。
【0026】
コルゲートチューブ2は、例えば、外力が作用したとき、外層構造部31および内層構造部33が耐衝撃性の機能を発揮し、中間層構造部32が衝撃吸収性の機能を発揮する。
【0027】
ここで、コルゲートチューブ2を構成する外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33の具体的な材料について説明する。図4は、外層構造部と中間層構造部と内層構造部に適用する材料の組合せを表す概略図である。
【0028】
コルゲートチューブ2は、上述したように、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33とが、互いに隙間なく密着して配置されると共に、互いに相対移動自在に配置される。外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33との相対移動方向は、主に面内方向である。
【0029】
コルゲートチューブ2は、図示しないが、押出成形により製造される。例えば、まず、押出機により、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33の各材料が厚さ方向に積層された管体部材が押し出されて形成される。次に、成形機により、管体部材を膨出させて上下の金型に押し付けることで、蛇腹部材が形成さけて冷却される。そして、引取機により、蛇腹部材が引き延ばされた後、巻取機に巻き取られるか、または、切断機により切断される。
【0030】
このとき、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33の各材料の種類が同じまたは類似するものであるとき、押出機での加熱により溶融された材料同士が溶着する。例えば、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33の材料の種類が同じまたは近いものであると、溶融した材料同士が相互に拡散して分子鎖が絡み合って溶着する。そのため、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33とが密着した接着状態になる。
【0031】
本実施形態のコルゲートチューブ2は、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33とが互いに隙間なく密着するものの、互いに相対移動自在である。すなわち、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33の各材料の種類を相違させることで、溶融した材料同士が相互に拡散して分子鎖が絡み合わないようにする。
【0032】
具体的に、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33に適用される材料のSP値(溶解パラメーター)を異なるものとする。外層構造部31に適用された材料のSP値と、中間層構造部32に適用された材料のSP値との差分が1.5以上となるような材料を使用することが好ましい。また、中間層構造部32に適用された材料のSP値と、内層構造部33に適用された材料のSP値との差分が1.5以上となるような材料を使用することが好ましい。SP値の差分が1.5未満となるような材料の組合せであると、層間の溶着が発生しやすい。
【0033】
図4に示す表は、SP値の差分が1.5以上になる材料の適切な組合せである。この場合、材料Aを外層構造部31をとしたとき、材料Bは、中間層構造部32であり、材料Aを中間層構造部32としたとき、材料Bは、内層構造部33である。そして、図4中の「〇」は、SP値の差分が1.5以上になるような材料の組合せである。
【0034】
図4に示すように、材料Aおよび材料Bの候補としては、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、動的架橋熱可塑性エラストマー(TPV)、アミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
以下、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33に適用される材料の具体例を説明する。図5は、外層構造部と中間層構造部と内層構造部に適用する材料の具体的な組合せを表す第1実施例の説明図である。
【0036】
図5の表は、外層構造部31の材料にPPを適用したときの中間層構造部32および内層構造部33の適切な材料を表すものである。図5に示すように、外層構造部31の材料にPPを適用すると、中間層構造部32の材料は、PA、TPA、TPUが適切である。そして、中間層構造部32の材料にPAを適用すると、内層構造部33の材料は、PP、PE、TPO、TPV、TPS、TPU、TPCが適切である。また、中間層構造部32の材料にTPAを適用すると、内層構造部33の材料は、PP、PE、TPO、TPV、TPSが適切である。また、中間層構造部32の材料にTPUを適用すると、内層構造部33の材料は、PP、PA、PE、TPO、TPVが適切である。
【0037】
図6は、外層構造部と中間層構造部と内層構造部に適用する材料の具体的な組合せを表す第2実施例の説明図である。
【0038】
図6の表は、外層構造部31の材料にPAを適用したときの中間層構造部32および内層構造部33の適切な材料を表すものである。図6に示すように、外層構造部31の材料にPAを適用すると、中間層構造部32の材料は、PP、PE、TPO、TPV、TPS、TPUが適切である。そして、中間層構造部32の材料にPPを適用すると、内層構造部33の材料は、PA、TPA、TPUが適切である。また、中間層構造部32の材料にPEを適用すると、内層構造部33の材料は、PA、TPA、TPUが適切である。また、中間層構造部32の材料にTPOを適用すると、内層構造部33の材料は、PA、TPA、TPUが適切である。また、中間層構造部32の材料にTPVを適用すると、内層構造部33の材料は、PA、TPA、TPUが適切である。また、中間層構造部32の材料にTPSを適用すると、内層構造部33の材料は、PA、TPAが適切である。また、中間層構造部32の材料にTPUを適用すると、内層構造部33の材料は、PP、PA、PE、TPO、TPVが適切である。また、中間層構造部32の材料にTPCを適用すると、内層構造部33の材料は、PAが適切である。
【0039】
ここで、本実施形態のコルゲートチューブ2の作用について説明する。図7は、コルゲートチューブに外力が作用する前の要部断面図、図8は、従来のコルゲートチューブに外力が作用したときの要部断面図、図9は、実施形態のコルゲートチューブに外力が作用したときの要部断面図である。
【0040】
図7に示すように、コルゲートチューブ2は、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33とが密着して配置される。コルゲートチューブ2に対して、外力Fが作用したときの外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33の挙動について説明する。このとき、外力Fは、外層構造部31の外面31aに対して直交する方向に入力する。また、外力Fは、外層構造部31の外面31aに対して点当たり、また、線当たりしたものとする。
【0041】
図8に示すように、従来のコルゲートチューブ2Aは、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33とが密着し、且つ、接着状態で配置された構造である。つまり、従来のコルゲートチューブ2Aは、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33とは、相対移動不能に配置された構造である。この場合、外層構造部31の外面31aに外力Fが作用したとき、外層構造部31の外面31aの変形と内層構造部33の内面33bの変形とが、オフセットの状態になる。そして、このとき、内層構造部33の内面33bの変形が、外層構造部31の外面31aの変形よりも緩くなる。そのため、コルゲートチューブ2Aの内層構造部33は、内面33bが電線3の外面に対して略面接触可能な状態(面当て状態)になる。
【0042】
すなわち、従来のコルゲートチューブ2Aは、外力Fの入力により外層構造部31が変形し、これに伴って中間層構造部32が潰れ、この潰れによって衝撃力(外力F)がある程度吸収される。続いて、中間層構造部32の変形に伴って内層構造部33が外層構造部31よりも緩く変形する。つまり、外層構造部31の外面31aの変形と内層構造部33の内面33bの変形とが異なるようになり、内層構造部33の内面33bは、電線3に対して面当て可能な状態になる。そして、このとき、外層構造部31に作用した外力Fは、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33に対して直交する方向に伝達する伝達力F1,F2になり、内層構造部33の内面33bは、電線3の外面に対して直交する方向に衝撃力が作用する面当て状態となる。
【0043】
一方、図9に示すように、本実施形態のコルゲートチューブ2は、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33とが密着するものの、互いに相対移動自在に配置された構造である。この場合、外層構造部31の外面31aに外力Fが作用したとき、外層構造部31の外面31aの変形と内層構造部33の内面33bの変形とが、非オフセットの状態になる。そして、このとき、内層構造部33の内面33bの変形が、外層構造部31の外面31aの変形よりも緩くなる。そのため、コルゲートチューブ2の内層構造部33は、内面33bが電線3の外面に対して略面接触可能な状態(面当て状態)になる。
【0044】
すなわち、本実施形態のコルゲートチューブ2は、外力Fの入力により外層構造部31が変形し、これに伴って中間層構造部32が潰れ、この潰れによって衝撃力(外力F)がある程度吸収される。続いて、中間層構造部32の変形に伴って内層構造部33が外層構造部31よりも緩く変形する。このとき、外層構造部31の内面31bと中間層構造部32の外面32aが互いに相対移動すると共に、中間層構造部32の内面32bと内層構造部33の外面33aが互いに相対移動する。つまり、外層構造部31の変形方向と、中間層構造部32の変形方向と、内層構造部33の変形方向とが異なる方向になり、層間に空洞部Sが形成やすくなる。そして、このとき、外層構造部31に対して直交する方向に作用した外力Fは、外層構造部31に対して直交する方向に伝達する伝達力F11になるものの、中間層構造部32で直交する方向に対して傾斜した方向に伝達する伝達力F12になる。続いて、伝達力F12は、内層構造部33で直交する方向に対して傾斜した方向に伝達する伝達力F13になる。そして、内層構造部33の内面33bは、電線3の外面に対して直交せずに傾斜した方向に衝撃力が作用する面当て状態となる。そのため、内層構造部33から電線3に作用する衝撃力が緩和され、コルゲートチューブ2は、破損せずに電線3の断線や漏電などにつながることもない。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係るコルゲートチューブ2は、管体形状をなして外側の層の部分になる外層構造部31と、管体形状をなして外層構造部31の内側の層の部分になる中間層構造部32と、管体形状をなして中間層構造部32の内側の層の部分になる内層構造部33とを備え、内部に電線3を収容可能であり、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33は、互いに密着して配置されると共に、互いに相対移動自在に配置される。
【0046】
本実施形態のコルゲートチューブ2によれば、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33とが相対移動自在に配置される。そのため、外層構造部31の外面31aに外力Fが作用すると、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33とが互いに相対移動し、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33の変形方向が相違する。すると、内層構造部33は、電線3に対して傾斜した方向に衝撃力が作用する面当て状態となり、電線3に作用する衝撃力を緩和することができる。その結果、衝撃力の吸収機能を向上することができる。
【0047】
また、本実施形態のコルゲートチューブ2は、外層構造部31の外面31aに対して外力Fが作用したときに、外層構造部31の外面31aの変形と内層構造部33の内面33bの変形とがオフセットの状態になるように形成される。そのため、外力Fに対して、外層構造部31と内層構造部33の変形方向が相違し、外層構造部31から内層構造部33に伝わる伝達力F13を緩和することができる。
【0048】
また、本実施形態のコルゲートチューブ2は、外層構造部31の外面31aに対して外力Fが作用したときに、外層構造部31と中間層構造部32と内層構造部33との密着面が相対移動することで、内層構造部33の内面33bに対して傾斜する方向に衝撃力が伝達される。そのため、内層構造部33から電線3に作用する衝撃力は、直交する方向に作用するよりも傾斜する方向に作用した方が緩和されることとなり、電線3に作用する衝撃力を低下させることができる。
【0049】
また、本実施形態のワイヤハーネス1は、コルゲートチューブ2と、コルゲートチューブ2に収容される1本以上の電線3とを備える。そのため、電線3に作用する衝撃力を緩和することで、衝撃力の吸収機能を向上することができる。
【0050】
なお、上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ワイヤハーネス
2 コルゲートチューブ
3 電線
11 外面凸部
12 外面凹部
21 内面凹部
22 内面凸部
31 外層構造部
31a 外面
31b 内面
32中間層構造部
32a 外面
32b 内面
33 内層構造部
33a 外面
33b 内面
F 外力
F1,F2,F11,F12,F13 伝達力
S 空洞部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9