(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】抗GM2AP抗体及びその応用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20240605BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240605BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240605BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240605BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240605BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
C07K16/18
C07K16/46
C07K19/00
C12Q1/02
G01N33/53 D
C12N15/13 ZNA
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022128089
(22)【出願日】2022-08-10
【審査請求日】2022-12-14
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】522320534
【氏名又は名称】微體生物醫學股▲分▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】522320545
【氏名又は名称】台灣創新整合服務有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】陳水田
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】Proteintech Group, Inc.,GN2A Monoclonal antibody,2013年01月31日,インターネット<URL : https://web.archive.org/web/20130131131341/https://www.ptglab.com/products/GM2A-Antibody-66080-1-Ig.htm>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12Q 1/00- 3/00
G01N 33/48-33/98
CAPLUS/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GM2活性化タンパク質(GM2-activator protein、GM2AP)と特異的に結合する組換え抗体又はその抗原結合断片であって、
SEQ ID NO:51、
RMS、及びSEQ ID NO:53の3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1~3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、
SEQ ID NO:54~56の3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1~3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、
を含むことを特徴とする組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記LCVRは、SEQ ID NO:5のアミノ酸配列からなる請求項1に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記HCVRは、SEQ ID NO:6のアミノ酸配列からなる請求項2に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
ダイアボディ(diabody)、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv断片、ジスルフィド結合によって安定化されたFv断片(disulfide stabilized Fv fragment、dsFv)、(dsFv)
2、二重特異性dsFv(dsfv-dsfv’)、ジスルフィド結合によって安定化されたダイアボディ(disulfide stabilized diabody、ds diabody)、一本鎖抗体分子(single-chain antibody molecule、scfv)、scfv二量体(scfv dimer、二価のダイアボディ(bivalent diabody))及びそれらの組合せからなる群より選ばれるものである請求項1に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
モノクローナル抗体、多重特異性抗体
、ヒト化抗体、キメラ抗体及びそれらの組合せからなる群より選ばれるものである請求項1に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
SEQ ID NO:28及び29からなる群より選ばれる核酸配列を含む、請求項1に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片をコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記LCVRをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:28である請求項
6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記HCVRをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:29である請求項
7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
生体試料においてGM2活性化タンパク質(GM2AP)を検出する方法であって、
(a)請求項1に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片を前記生体試料に投与するステップと、
(b)前記生体試料を検出可能なラベルが接合される二次抗体とともにインキュベートするステップと、
(c)前記検出可能なラベルを検出するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記生体試料は、全血、血清、血漿、尿又はそれらの組合せを含む請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記二次抗体は、前記抗体又はその抗原結合断片のFcドメインに結合されている請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記検出可能なラベルは、アルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase)を含む請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(c)は、前記検出可能なラベルをp-ニトロフェニルホスフェート(p-nitrophenyl phosphate)溶液とともにインキュベートし、OD
405での吸光度を測定することにより行われる請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(c)は、前記検出可能なラベルをテトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine、TMB)溶液とともにインキュベートし、OD
450での吸光度を測定することにより行われる請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規な組換え抗体又はその任意の抗原結合断片に関するものである。具体的に、本開示は、GM2活性化タンパク質(GM2AP)に対する新規な組換え抗体又はその任意の抗原結合断片及びその応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GM2活性化タンパク質(GM2AP)は、Asn結合グリコシル化部位を持つ小さな単量体タンパク質である。最初に前駆体として合成され、次に32Serでのグリコシル化、修飾、切断を経て成熟型となる。成熟したGM2APは、脱糖した状態(deglycosylated form)で分子量が17.6kDaである糖タンパク質である。補因子として、GM2APは、β-cupと呼ばれる疎水性ポケット構造(hydrophobic pocket)、オリゴ糖結合部位、Hex Aと相互作用する領域を含む少なくとも3つの機能的特徴を持つ。Hex Aと相互作用する領域は、リソソームβ-ヘキソサミンA(Hex A)によるGM2ガングリオシド(GM2 ganglioside)のGM3への分解に寄与している。しかし、合成されたGM2APの3分の1しか分泌されなかった。細胞は、炭水化物に依存しないメカニズムを介して、表皮角化細胞や線維芽細胞等の様々な細胞によってGM2APを再捕捉することが可能である。機能的なGM2APの欠如は、重度のリソソーム貯蔵障害であるGM2ガングリオシドーシスABバリアントの患者の組織におけるGM2ガングリオシドの異常な蓄積の原因である。GM2APの遺伝的欠損は、ガングリオシド及び腫瘍の発生に関与する腫瘍関連ガングリオシドの量の変化にも関連している。腫瘍関連ガングリオシドは、最初の発癌性形質転換の結果であり、浸潤と転移を誘発する役割を果す。腫瘍細胞は、その微小環境でガングリオシドを合成して放出し、その結果、血清中の腫瘍関連ガングリオシドの量が増加する。さらに、ガングリオシドは、細胞増殖、接着、細胞間相互作用、及びシグナル伝達において調節的役割を示すことが知られている。
【発明の概要】
【0003】
既存技術のニーズに応じて、本開示は、以下の実施例を提供する。
【0004】
一つの実施例において、本開示は、GM2活性化タンパク質(GM2AP)と特異的に結合する組換え抗体又はその抗原結合断片であって、(a)SEQ ID NO:51~53、57~59、63~65、69~71、75~77、81~83、87~89、96~98、102~104、108~110、114~116からなる群よりそれぞれ独立して選ばれる3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1~3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、(b)SEQ ID NO:54~56、60~62、66~68、72~74、78~80、84~86、90~92、93~95、99~101、105~107、111~113、117~119からなる群よりそれぞれ独立して選ばれる3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1~3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、を含む、組換え抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0005】
好ましくは、前記LCVRは、SEQ ID NO:5、7、9、11、13、15、17、20、22、24、26からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含み、及び/又は、前記HCVRは、SEQ ID NO:6、8、10、12、14、16、18、19、21、23、25、27からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含む。
【0006】
より好ましくは、前記LCVR/HCVR対は、それぞれSEQ ID NOs:5/6、7/8、9/10、11/12、13/14、15/16、17/18、17/19、20/21、22/23、24/25又は26/27のアミノ酸配列対を含む。
【0007】
好ましくは、前記LCDR1/LCDR2/LCDR3は、それぞれSEQ ID NO:51/52/53、57/58/59、63/64/65、69/70/71、75/76/77、81/82/83、87/88/89、96/97/98、102/103/104、108/109/110、又は114/115/116のアミノ酸配列を含む。
【0008】
好ましくは、前記HCDR1/HCDR2/HCDR3は、それぞれSEQ ID NO:54/55/56、60/61/62、66/67/68、72/73/74、78/79/80、84/85/86、90/91/92、93/94/95、99/100/101、105/106/107、111/112/113又は117/118/119のアミノ酸配列を含む。
【0009】
より好ましくは、前記LCDR1/LCDR2/LCDR3/HCDR1/HCDR2/HCDR3は、それぞれSEQ ID NO:51/52/53/54/55/56、57/58/59/60/61/62、63/64/65/66/67/68、69/70/71/72/73/74、75/76/77/78/79/80、81/82/83/84/85/86、87/88/89/90/91/92、87/88/89/93/94/95、96/97/98/99/100/101、102/103/104/105/106/107、108/109/110/111/112/113、又は114/115/116/117/118/119のアミノ酸配列を含む。
【0010】
上記の実施例のいずれかにおいて、前記組換え抗体又はその抗原結合断片は、ダイアボディ(diabody)、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスルフィド結合によって安定化されたFv断片(disulfide stabilized Fv fragment、dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsfv-dsfv’)、ジスルフィド結合によって安定化されたダイアボディ(disulfide stabilized diabody、ds diabody)、一本鎖抗体分子(single-chain antibody molecule、scfv)、scfv二量体(scfv dimer、二価のダイアボディ(bivalent diabody))及びそれらの組合せからなる群より選ばれるものである。
【0011】
上記の実施例のいずれかにおいて、前記組換え抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体及びそれらの組合せからなる群より選ばれるものである。
【0012】
上記の実施例のいずれかにおいて、前記組換え抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体である。
【0013】
一つの実施例において、本開示は、本開示に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドを提供する。前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:28~50からなる群より選ばれる核酸配列を含む。
【0014】
好ましくは、前記LCVRをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:28、30、32、34、36、38、40、43、45、47、50からなる群より選ばれるものであり、及び/又は、前記HCVRをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:29、31、33、35、37、39、41、42、44、46、48、49からなる群より選ばれるものである。
【0015】
上記の実施例のいずれかにおいて、前記LCVR/HCVRは、それぞれSEQ ID NO:28/29、30/31、32/33、34/35、36/37、38/39、40/41、40/42、43/44、45/46、47/48、又は50/49の核酸配列対によってコードされている。
【0016】
一つの実施例において、本開示は、本開示に記載のポリヌクレオチドのいずれか一つを含むベクターを提供する。
【0017】
一つの実施例において、本開示は、本開示に記載のベクターのいずれか一つを含む宿主細胞を提供する。
【0018】
好ましくは、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(Chinese Hamster Ovary(CHO)cell)、NSO細胞、BHK細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、HEK293EBNA細胞、PER.C6(登録商標)細胞、COS細胞、239F細胞、SF9細胞、SF21細胞及びその組み合わせからなる群より選ばれるものである。
【0019】
一つの実施例において、本開示は、本開示に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片を含み、生体試料においてGM2活性化タンパク質(GM2AP)を検出するためのキットを提供する。
【0020】
好ましくは、前記キットは、基質と、シグナル生成ユニットとコンジュゲートし、前記組換え抗体又はその抗原結合断片のFcドメインに結合する二次抗体と、を含む。前記基質は、シグナル生成ユニットと反応してシグナルを発生するように構成されている。
【0021】
上記の実施例のいずれかにおいて、前記生体試料は、全血、血清、血漿、尿又はそれらの組合せを含む。
【0022】
上記の実施例のいずれかにおいて、前記シグナル生成ユニットは、放射性マーカー、蛍光マーカー、燐光マーカー、化学発光マーカー、又は標識酵素を含む。好ましくは、標識酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)又はアルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase)を含んでも良い。
【0023】
上記の実施例のいずれかにおいて、シグナル生成ユニットが西洋ワサビペルオキシダーゼである場合、基質はテトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine、TMB)である。
【0024】
好ましくは、上記の実施例のいずれかにおいて、キットは、ブロッキング溶液(blocking solution)をさらに含む。ブロッキング溶液は、脱脂乳、ウシ血清アルブミン又はカゼインを含む。
【0025】
上記の実施例のいずれかにおいて、キットは、洗浄液(wash solution)をさらに含む。好ましくは、洗浄液は、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline、PBS)、トリス緩衝生理食塩水(Tris-buffered saline、TBS)、洗剤(detergent)を含むPBS、又は洗剤(detergent)を含むTBSを含む。
【0026】
一つの実施例において、本開示は、生体試料においてGM2活性化タンパク質(GM2AP)を検出する方法であって、(a)本開示に記載の生組換え抗体又はその抗原結合断片を前記生体試料に投与するステップと、(b)前記生体試料を検出可能なラベルが接合される二次抗体とともにインキュベートするステップと、(c)前記検出可能なラベルを検出するステップと、を含む方法を提供する。
【0027】
上記の実施例のいずれかにおいて、前記生体試料は、全血、血清、血漿、尿又はそれらの組合せを含む。
【0028】
上記の実施例のいずれかにおいて、前記二次抗体は、前記抗体又はその抗原結合断片のFcドメインに結合されている。
【0029】
上記の実施例のいずれかにおいて、前記検出可能なラベルは、アルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase)を含む。
【0030】
上記の実施例のいずれかにおいて、前記ステップ(c)は、前記検出可能なラベルをp-ニトロフェニルホスフェート(p-nitrophenyl phosphate)溶液とともにインキュベートし、OD405での吸光度を測定することにより行われる。
【0031】
上記の実施例のいずれかにおいて、前記ステップ(c)は、前記検出可能なラベルをテトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine、TMB)溶液とともにインキュベートし、OD405での吸光度を測定することにより行われる。
【0032】
1つの実施形態において、本開示は、本開示に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片のいずれか1つを誘導する方法であって、(a)SEQ ID NO:1~4のアミノ酸配列のいずれか1つを含むペプチド断片を個体に投与するステップと、(b)ハイブリドーマ細胞を形成するステップと、(c)グリコシル化GM2APと特異的に結合する抗体を分泌するハイブリドーマ細胞をスクリーニングするステップと、を含む、方法を提供する。
【0033】
上記の実施例のいずれかにおいて、前記ペプチド断片は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】GM2APモノクローナル抗体の選択手順を示す図である。
【
図2】(A)GM2AP-His8の流出液及び溶出液の採取、(B)クーマシーブルー(Coomassie Blue)を用いて流出液及び溶出液を分析した図である。
【
図3】GM2APにより免疫されたマウスの血清を間接ELISA法で分析した図である。
【
図4】4つの抗GM2AP抗体クローンGM6、GM8、GM9、GM10及び1つの市販のGM2AP抗体(Sigma)を用いたウェスタンブロットアッセイ(Western Blot Assay)の染色結果を示す図である。
【
図5】GM9がVITAEinタンパク質の様々な断片を識別したことを示す図である。
【
図6】GM10がVITAEinタンパク質の様々な断片を識別したことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示における上記及び他の点は、以下の他の実施例においてより詳しく説明される。本発明について、異なる形態で表すことができ、本開示に記載された実施形態に限定されると解釈すべきではないことを理解されたい。むしろ、これらの実施例は、単に本発明をより徹底的かつ完全に開示するためのものであって、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるために提供されるものである。
【0036】
本開示で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであって、本発明を限定することを意図するものではない。本開示及び添付の特許請求の範囲において、「一つ」(「a」、「an」)及び「当該」の単数形は、文脈から明らかに反対のことが示されていない限り、複数形も含む。
【0037】
本開示のように、「含む(comprises、comprising)」、「含有する(includes、including)」、「有する(has、having)」、「備える(contains、containing)」、「…を特徴とする」との用語、又はその他の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図しているが、明示的に記載された制限に従う必要がある。例えば、列挙された単位からなる組成物、混合物、手段又は方法は、必ずしもそれらの単位のみに限定されるわけではなく、明示的に列挙されなく、或は前記組成物、混合物、手段又は方法に固有の他の単位を含んでも良い。
【0038】
移行句「…からなる」は、特定されていないユニット、ステップ、又はコンポーネントを除外する。請求項の場合、当該請求項は、通常、それに関連する不純物を除いて、記載された材料のみを含めると制限されることになる。「…からなる」という用語が、標的の名称の直後ではなく、ある節に現れる場合、それはその節で指定された要素のみを制限し、他の要素は請求項の全体から除外されるわけではない。
【0039】
ある発明又はその一部を定義するために、例えば、「含む」とのような開放的な用語が使用される場合、特に断らない限り、その記載も「…からなる」という用語によってそのような発明を記述していると解釈されるべきであると理解される。
【0040】
本開示で使用される「約」という用語は、ある数値が、例えば、測定器固有の誤差のばらつき、その数値を確定するために使用される方法、或は、被験者の間に存在するばらつきを含むことを示すために使用される。通常の場合、この用語とは、具体的な状況に応じて、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%の変動率、或はそれよりも小さい変動率を含むことを指す。
【0041】
特許請求の範囲で使用される「又は」という用語は、本開示に代替物のみと「及び/又は」との定義が裏付けられているとしても、代替物のみ、或は、代替物が相互に排他的であることが明示されていない限り、「及び/又は」を意味する。
【0042】
本開示で使用する「個体」という用語は、ヒト又は動物を指す。例示的な個体は、ヒト、類人猿、イヌ、ブタ、ウシ、ネコ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、齧歯類、及び治療から利益を得る可能性のある病気を有する他の哺乳動物であり得る。
【0043】
「投与(administering、administration)」という用語は、本開示の抗体を個体に提供することを指す。例として、限定するものではないが、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内(intracartilaginous)、腔内(intracavitary)、体腔内(intracelial)、小脳内(intracerebellar)、脳室内、結腸内(intracolic)、子宮頸内、胃内、肝内、心筋内、骨内(intraosteal)、骨盤内、心膜内(intrapericardiac)、腹膜内、胸膜内(intrapleural)、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内(intrasynovial)、胸腔内(intrathoracic)、子宮内(intrauterine)、膀胱内(intravesical)、ボーラス(bolus)、膣、直腸、頬(buccal)、舌下、鼻腔内及び経皮により投与することができる。例えば、注射は、静脈注射(i.v.)、皮下注射(s.c.)、皮内注射(i.d.)、腹腔注射(i.p.)、又は筋肉注射(i.m.)によって行うことができる。これらの経路のうち、1つ又は複数を採用することができる。
【0044】
本開示で言及される「抗体」という用語は、無傷の抗体及び任意の抗原結合断片(即ち、「抗原結合部分」)又はその単鎖を含む。「抗体」は、ジスルフィド結合によって少なくとも2つの重鎖(H)及び2つの軽鎖(L)が互に接続された糖タンパク質又はその抗原結合部分を指す。各重鎖は、一つの重鎖可変領域(ここではVHと略す)及び一つの重鎖定常領域(ここではCHと略す)から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2、及びCH3の3つのドメインで構成される。各軽鎖は、一つの軽鎖可変領域(ここではVLと略される)及び一つの軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分化することができる。VH及びVLはそれぞれ、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FRI、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される。重鎖と軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する一つの結合ドメインが含まれる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0045】
「エピトープ」又は「抗原決定基(antigenic determinant)」は、抗体の抗原結合ドメインとの特定の相互作用を担う抗原分子の一部である。抗原結合ドメインは、1つ又は複数の抗体可変ドメインによって提供され得る。一つの抗原結合ドメインは、少なくとも1つの抗体軽鎖可変領域(VL)及び少なくとも1つの抗体重鎖可変領域(VH)を含み得る。1つの抗原結合ドメインは、VH領域のみ又はVL領域のみを含み得る。具体的に、本開示において、エピトープは、ヒトGM2APの一つの特定のドメイン又はドメインの組み合わせであり得る。本開示のいくつかの実施例では、特定のドメイン又はドメインの組み合わせは、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むヒトGM2APである。
【0046】
「相補性決定領域」(「CDR」)という用語は、抗体中の可変鎖の一部として定義され、ここで、これらの分子はそれらの特定の抗原に結合する。本開示において、重鎖中のCDR領域は、一般的にCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と呼ばれ、軽鎖ではCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3と呼ばれる。それらは、アミノ末端からカルボキシ末端への方向に順番に番号が付けられている。
【0047】
フレームワーク領域及びCDRの範囲は、Kabat等(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1991参照)、及び、ImMunoGeneTicsデーターベース(IMGT)(Lefranc, Nucleic Acids Res 29:207-9, 2001;及びネットimgt.cines.fr/IMGT_vquest/vquest?livret=O&Option=humanlg参照)に基づいて定義される。
【0048】
本開示における「Kabatシステム」とは、Kabat(1991;Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th edit.,NIH publication No.91-3242U.S. Department of Health and Human Services)、及び、Chothia(1987;J.Mol.Biol.196,901-917)に基づいて、一貫した方法で残基に番号を付ける基準を指す。この番号付けシステムは、当業者に広く使用されており、抗原結合活性にとって重要な配列の多様性及び可変ドメイン領域の三次元ループ構造に基づくものである。軽鎖又は重鎖のすべての残基は、Kabatシステムにおいて異なる位置を持つ。つまり、Kabatシステムは、CDR及びフレームワーク領域に適用される。任意の抗体における特定の残基の位置は、Kabatシステムに従って番号付けすることができる。Kabatシステムに従ってVH及びVL鎖のCDR領域を識別するための規則は、www.bioinf.org.uk/absに示されている。
【0049】
IMGT独自の番号付けシステムは、Kabatシステムに代わるものであり、抗原受容体、鎖のタイプ、又は種に関係なく可変ドメインを比較することを可能にする(Lefranc M.-P., Immunology Today 18, 509 (1997)/Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999)/Lefranc, M.-P., Pomrnie, C., Ruiz, M., Giudicelli, V., Foulquier, E., Truong, L., Thouvenin-Contet, V. and Lefranc, Dev. Comp.lmmunol., 27, 55-77 (2003))。IMGT独自の番号付けシステムでは、保存されたアミノ酸は常に同じ位置、例えばシステイン23(1st-CYS)、トリプトファン41(CONSERVED-TRP)、疎水性アミノ酸89、システイン104(2nd-CYS)、フェニルアラニン又はトリプトファン118(J-PHE又はJ-TRP)にある。IMGT独自の番号付けシステムは、フレームワーク領域(FR1-IMGT:位置1~26、FR2-IMGT:位置39~55、FR3-IMGT:位置66~104、FR4-IMGT:位置118~128)と相補性決定領域(CDR1-IMGT:27~38、CDR2-IMGT:56~65、CDR3-IMGT:105~117)の標準的な区切りを提供している。ボイドは占有されていない場所を表すため、CDR IMGTの長さ(例えば、[8.8.13]のように、ドットで区切られた括弧内に表示される)が重要な情報になる。IMGT独自の番号付けシステムは、IMGT Colliers de Perles[Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., Immunogenetics, 53, 857-883 (2002)/Kaas, Q. and Lefranc, M.-P. P., Current Bioinformatics, 2, 21-30 (2007)]、及び、IMGT/3D structure-DBにおける三次元元構造と指定される、20のグラフィック表示で使用されている。
【0050】
本開示で使用される「抗原結合断片」という用語は、例えば、ダイアボディ(diabody)、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスルフィド結合によって安定化されたFv断片(disulfide stabilized Fv fragment、dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsfv-dsfv’)、ジスルフィド結合によって安定化されたダイアボディ(disulfide stabilized diabody、ds diabody)、一本鎖抗体分子(single-chain antibody molecule、scfv)、scfv二量体(scfv dimer、二価のダイアボディ(bivalent diabody))、1つ又は複数のCDRを含む抗体の一部から形成される多重特異性抗体、又は抗原に結合するが無傷の抗体構造を含まない任意の他の抗体断片を指す。抗原結合断片は、その親抗体又は親抗体断片(例えば、親scFv)が結合する抗原と同様のものに結合することができる。ある場合、一つの抗原結合断片は、1つまたな複数の異なるヒト抗体由来のフレームワーク領域に移植された、特定のヒト抗体由来の1つまたな複数のCDRを含み得る。
【0051】
上記の抗原結合断片のうち、Fabとは、軽鎖と重鎖可変領域、軽鎖定常領域、重鎖第1定常領域(CH1)を有する構造であって、1つの抗原結合部位を有するものを指す。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に少なくとも1つのシステイン残基を含むヒンジ領域を有するという点でFabとは異なる。F(ab’)2は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合によって連結されたときに生成される。
【0052】
Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のみを有する最小の抗体断片である。Fv断片を作製するための組換技術は、当技術分野で周知のものである。「一本鎖Fv抗体」又は「scFv」とは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域が直接又はペプチドリンカー配列を介して互いに連結された工学的抗体を指す。二重鎖Fvは、重鎖可変領域が非共有結合によって軽鎖可変領域に連結された構造を有することができる。一本鎖Fvは一般的に、重鎖可変領域がペプチドリンカーを介して軽鎖可変領域に共有連結され、或は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域がそのC末端において直接連結される二量体構造(例えば、二重鎖Fv)を形成することができる。このリンカーは、任意の1から100又は2から50のアミノ酸を含むペプチドリンカーであっても良く、それに有用な適切な配列は当技術分野で周知のものである。
【0053】
抗原結合断片は、プロテアーゼを使用することによって得ることができ(例えば、抗体全体をパパインで消化してFab断片を得ても良く、ペプシンで消化してF(ab’)2断片を得ても良い)、又は遺伝子組み換え技術によって調製できる。
【0054】
本開示で使用される「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、均一な分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0055】
本開示で使用される「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する、可変領域を有する抗体を含むものを指す。さらに、当該抗体が一つの定常領域を含む場合、当該定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明におけるヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロ又はインビボでの体細胞突然変異によるランダム又は標的変異誘発によって導入された変異)を含み得る。しかしながら、本開示で使用される「ヒト抗体」という用語は、CDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されたマウス等の別の哺乳動物種の生殖系列に由来する抗体を含まない。
【0056】
「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、可変領域におけるフレームワーク及びCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する、単一の結合特異性を示す抗体を指す。
【0057】
本開示で使用される「組換え」という用語は、組換え技術によって調製、発現、確立、又は単離したすべての分子、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される多重特異性分子(例えば、二重特異性分子)、ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された多重特異性分子(例えば、二重特異性分子)(例えば、Taylor et al. (1992) Nucl. Acids Res. 20:6287-6295参照)、又はヒト免疫グロブリン及び/又はMHC遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシング(splicing)する他の方法によって調製、発現、確立又は単離した多重特定分子を含むことを指す。このような組換え多重特異性分子は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗原結合ドメインを含み得る。
【0058】
本開示で使用される「組換えヒト抗体」という用語は、組換え技術によって調製、発現、確立、又は単離されたすべてのヒト抗体、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニック又はトランス染色体である動物(例えば、マウス)又はそれから調製されたハイブリドーマ(以下でさらに説明する)から単離された抗体と、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマ(transfectoma)から単離された抗体と、(c)組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体と、(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列と他のDNA配列とのスプライシングに係わる他の方法によって調製、発現、確立、又は単離された抗体と、を含む。そのような組換えヒト抗体は、フレームワーク及びCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかしながら、特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(in vitro mutagenesis)(又は、ヒトIg配列を有するトランスジェニック動物が使用される場合、インビボ体細胞変異誘発が行われる)を受けることができる。したがって、組換えヒト抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し関連するものの、インビボのヒト抗体生殖系列レパートリー(human antibody germline repertoire)内に天然に存在しない可能性がある。
【0059】
「ヒト化抗体」という用語は、ヒトの自然発生抗体の変異体との類似性を高めるために改変されたタンパク質配列を含む、非ヒト種によって産生される抗体を指す。ヒト以外の由来の抗体をヒトに投与する際に、望ましくない免疫原性作用を回避するために、ヒト化のプロセスが必要な場合がある。これに対し、ここで言及される「キメラ抗体」という用語は、ある種の抗原結合領域(即ち、VH及びVL)を別の種の定常ドメインと融合させることによって作製される抗体を指す。
【0060】
本開示で使用される「Kassoc」又は「Ka」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度(association rate)を指し、本開示で使用される「Kdis」又は「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原の解離速度を指す。本開示で使用される「KD」という用語は解離定数を指し、これはKdとKaの比率(即ち、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)で表される。抗体のKD値は、当技術分野で公認されている方法を使用して決定することができる。
【0061】
「配列同一性パーセント(%)」又は「相同性(homology)」という用語は、参照配列中のアミノ酸残基又はヌクレオチドと同一である候補配列中のアミノ酸残基又はヌクレオチドのパーセントとして定義され、配列を整列(alignment)させた後、必要に応じてギャップを導入することで最大の配列同一性パーセントを達成するとともに、保存的核酸置換を排除することを指す。配列を比較するための最適なアラインメント(alignment)は、手動操作の他に、当該技術分野で知られている局所的な相同性アルゴリズムや、これらのアルゴリズムを用いたコンピュータプログラム(例えば、BLAST P)によって生成することもできる。
【0062】
以下の実施形態で言及するヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を表1~表3にまとめて示す。
表1.GM2APのアミノ酸配列
【0063】
【0064】
表2.本開示で例示される組換え抗体のアミノ酸断片
【0065】
【0066】
表3.本開示で例示される抗体のLCVR/HCVRをコードするヌクレオチド配列
【0067】
【0068】
以下、本開示に係わるいくつかの例示的な実施例について説明する。
【0069】
〔組換え抗GM2AP抗体又はその抗原結合断片〕
本開示における一つの実施例によれば、本開示は、GM2活性化タンパク質(GM2AP)と特異的に結合する組換え抗体(「抗GM2AP抗体」)又はその抗原結合断片を提供する。本実施例のGM2APは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含んでも良い。本実施例の抗GM2AP抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO:1のアミノ酸1~14、或はSEQ ID NO:2又はSEQ ID NO:3のアミノ酸57~70の一つ又は複数のアミノ酸残基と特異的に結合し得る。好ましくは、抗GM2AP抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO:2又はSEQ ID NO:3のアミノ酸57~70でGM2APと特異的に結合し得る。言い換えると、SEQ ID NO:1のアミノ酸1~14及びSEQ ID NO:2又はSEQ ID NO:3のアミノ酸57~70が本実施例における抗GM2AP抗体又はその抗原結合断片のエピトープを形成するものである。
【0070】
本開示で記載される「GM2APと特異的に結合する」抗体とは、1x10-8M未満、1x10-9M未満、1x10-10M未満、1x10-11未満、又はそれ以下の結合値KDでGM2APと結合する抗体を指す。
【0071】
抗GM2AP抗体又はその抗原結合断片は、一つの軽鎖可変領域(LCVR)及び一つの重鎖可変領域(HCVR)を含んでも良い。いくつかの実施形態では、LCVRは、SEQ ID NO:5、7、9、11、13、15、17、20、22、24又は26との同一性が少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%(或は、その間の任意の割合)であるアミノ酸配列を含んでも良い。一方、HCVRは、SEQ ID NO:6、8、10、12、14、16、18、19、21、23、25又は27との同一性が少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%(或は、その間の任意の割合)であるアミノ酸配列を含むことが好ましい。より好ましくは、前記LCVR/HCVR対のそれぞれは、SEQ ID NO:5/6、7/8、9/10、11/12、13/14、15/16、17/18、17/19、20/21、22/23、24/25又は26/27との同一性が少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%(或は、その間の任意の割合)であるアミノ酸配列対を含んでも良い。
【0072】
なお、LCVRは、三つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含んでも良い。LCDR1、LCDR2及びLCDR3の各々は、SEQ ID NO:51、52、53、57、58、59、63、64、65、69、70、71、75、76、77、81、82、83、87、88、89、96、97、98、102、103、104、108、109、110、114、115又は116との同一性が少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%(或は、その間の任意の割合)であるアミノ酸配列を含んでも良い。一方、HCVRは、三つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)を含んでも良い。HCDR1、HCDR2及びHCDR3の各々は、SEQ ID NO:54、55、56、60、61、62、66、67、68、72、73、74、78、79、80、84、85、86、90、91、92、93、94、95、99、100、101、105、106、107、111、112、113、117、118又は119との同一性が少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%(或は、その間の任意の割合)であるアミノ酸配列を含んでも良い。
【0073】
より好ましくは、LCDR1/LCDR2/LCDR3のそれぞれは、SEQ ID NO:51/52/53、57/58/59、63/64/65、69/70/71、75/76/77、81/82/83、87/88/89、96/97/98、102/103/104、108/109/110又は114/115/116との同一性が少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%(或は、その間の任意の割合)であるアミノ酸配列を有しても良い。なお、HCDR1/HCDR2/HCDR3のそれぞれは、SEQ ID NO:54/55/56、60/61/62、66/67/68、72/73/74、78/79/80、84/85/86、90/91/92、93/94/95、99/100/101、105/106/107、111/112/113又は117/118/119との同一性が少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%(或は、その間の任意の割合)であるアミノ酸配列を有しても良い。さらに好ましくは、LCDR1/LCDR2/LCDR3/HCDR1/HCDR2/HCDR3のそれぞれは、SEQ ID NO:51/52/53/54/55/56、57/58/59/60/61/62、63/64/65/66/67/68、69/70/71/72/73/74、75/76/77/78/79/80、81/82/83/84/85/86、87/88/89/90/91/92、87/88/89/93/94/95、96/97/98/99/100/101、102/103/104/105/106/107、108/109/110/111/112/113、又は114/115/116/117/119との同一性が少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%(或は、その間の任意の割合)であるアミノ酸配列を有しても良い。
【0074】
ここで使用される組換え抗体又はその抗原結合断片は、ダイアボディ(diabody)、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスルフィド結合によって安定化されたFv断片(disulfide stabilized Fv fragment、dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsfv-dsfv’)、ジスルフィド結合によって安定化されたダイアボディ(disulfide stabilized diabody、ds diabody)、一本鎖抗体分子(single-chain antibody molecule、scfv)、scfv二量体(scfv dimer、二価のダイアボディ(bivalent diabody))、又はそれらの組合せであっても良い。なお、組換え抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、又はそれらの組合せであっても良い。好ましくは、組換え抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体である。
【0075】
〔組換え抗GM2AP抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド、及びそれを含むベクターと宿主細胞〕
本開示における一つの実施例によれば、さらに、本開示に記載される抗GM2AP抗体又はその抗原結合断片のいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:28~50との同一性が少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%(或は、その間の任意の割合)である核酸配列を含んでも良い。いくつかの実施形態では、上記の実施例の組換え抗体又はその抗原結合断片のLCVRをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:28、30、32、34、36、38、40、43、45、47又は50とは少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%(或は、その間の任意の割合)の同一性を有しても良い。一方、上記の実施例の組換え抗体又はその抗原結合断片のHCVRをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:29、31、33、35、37、39、41、42、44、46、48又は49とは少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%(或は、その間の任意の割合)の同一性を有しても良い。
【0076】
なお、上記の実施例の抗GM2AP抗体又はその抗原結合断片のLCVR/HCVR対のそれぞれは、SEQ ID NO:28/29、30/31、32/33、34/35、36/37、38/39、40/41、40/42、43/44、45/46、47/48又は50/49との同一性が少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%(或は、その間の任意の割合)である核酸配列対によってコードされても良い。
【0077】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、前記アミノ酸配列をコードするものと実質的に同一である。実質的に同一の配列は、多型配列(polymorphicsequences)、即ち集団中の代替配列又は対立遺伝子であり得る。実質的に同一の配列はまた、サイレント変異を含む配列を含む、変異誘発された配列を含み得る。変異には、1つ又は複数のヌクレオチド残基の変化、1つ又は複数のヌクレオチド残基の欠失、又は1つ又は複数の追加のヌクレオチド残基の挿入が含まれ得る。実質的に同一の配列はまた、核酸コードの縮退に基づいて、本開示に記載されるアミノ酸配列中の任意のアミノ酸位置で同一のアミノ酸をコードする様々なヌクレオチド配列を含み得る。
【0078】
本開示の目的に基づいて、前記ポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。さらに、前記ベクターを含む宿主細胞も提供される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核細胞であっても良く、好ましくは、人工的に選択された、又は遺伝子工学的に操作されたものである。真核細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO細胞、BHK細胞、SP2/0細胞、HEK 293細胞、HEK 293 EBNA細胞、PER.C6細胞、COS細胞、239F細胞、SF9細胞、SF21細胞及びこれらの組み合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
一般的に、ポリヌクレオチド、ベクター及びそれを含む宿主細胞は、上記の実施例が提供する抗GM2AP抗体又はその抗原結合性断片の製造に使用されることができる。特に、本実施例のポリヌクレオチドは、例えば、DNA又はRNAであっても良く、イントロン配列を含んでも含まなくても良い。好ましくは、ポリヌクレオチドはcDNA分子であり得る。
【0080】
本実施例のポリヌクレオチドは、当技術分野で知られている任意の方法によって単離・取得することができる。例えば、抗体のヌクレオチド配列が既知の場合、抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドから組み立てることができる。例えば、抗体をコードする配列の一部を含むオーバーラップしたオリゴヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーション、ならびにライゲーションされたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅が含まれる。本開示に記載されるポリヌクレオチドはまた、抗体cDNAライブラリー、又は抗体を発現する任意の組織もしくは細胞(例えば、抗体を発現するように選択されたハイブリドーマ細胞)から単離されたcDNAライブラリー等の任意の他の適切な核酸源から生成することもできる。宿主細胞(例えば、ハイブリドーマ)によって作製された抗GM2AP抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、標準PCR増幅又はcDNAクローニング技術によって得ることができる。ファージディスプレイ技術(Phage display technology)を使用して得られる抗体については、前述の実施形態によって提供される抗GM2AP抗体をコードするポリヌクレオチドは、ライブラリーの様々なファージクローンから回収することができる。いくつかの実施形態では、開示されたポリヌクレオチド又は単離された核酸のいずれかが発現ベクターに組み込まれでも良い。様々なヒト及び動物細胞型における発現に適したベクターは、当技術分野で知られているものである。いくつかの実施形態では、ベクターを含む宿主細胞が提供される。好適な宿主細胞としては、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO細胞、BHK細胞、SP2/0細胞、HEK 293細胞、HEK 293 EBNA細胞、PER.C6細胞、COS細胞、239F細胞、SF9細胞、SF21細胞、及び/又はその他のヒト又は非ヒト細胞株が含まれる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、培養培地で培養されると、ベクター上のポリヌクレオチド又は単離された核酸を一過性又は安定的に発現し、それによって、本開示に記載される抗体又は断片を産生する方法を提供し得る。
【0081】
VH及びVL断片をコードするDNA断片が得られた場合、これらのDNA断片は、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子又はscFv遺伝子に変換する等の標準的な組み換えDNA技術によってさらに操作されることができる。これらの操作において、VL又はVHをコードするDNA断片は、別のDNA分子、又は抗体定常領域やフレキシブルリンカー等の別のタンパク質をコードする断片に操作可能に連結される。ここで、「操作可能に連結される」という用語は、例えば、2つのDNA断片によってコードされるアミン酸配列がインフレームのままであるように、あるいはンパク質が所望のプロモーターの制御下で発現されるように、2つのDNA断片が機能的に連結されることを意味する。
【0082】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に操作可能に連結することによって、全長重鎖遺伝子に変換することができる。マウス及びヒト(又は他の哺乳動物)の重鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で知られており(例えば、Kabat, E. A., et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91-3242参照)、これらの領域を含むDNA断片は、標準PCR増幅により得ることが可能である。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であり得る。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、IgG1アイソタイプの中から選択される。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に操作可能に連結することができる。
【0083】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に操作可能に連結することによって、全長軽鎖遺伝子(及びFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。マウス及びヒト(又は他の哺乳動物)の軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で知られており(例えば、Kabat, E. A., et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91-3242参照)、これらの領域を含むDNA断片は、標準PCR増幅により得ることが可能である。軽鎖定常領域は、kappa又はlambda定常領域であり得る。
【0084】
scFv遺伝子を確立するために、VH及びVLをコードするDNA断片は、VH及びVL配列が連続した一本鎖タンパク質として発現できるように、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードするようなフレキシブルリンカーをコードする別の断片に操作可能に連結され、VL及びVH領域はフレキシブルリンカーで連結されている(例えば、Bird et al., 1988 Science 242:423-426; Huston et at., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-554参照)。
【0085】
〔GM2APを検出するキット〕
本開示の一つの実施例によれば、生体試料中のGM2活性化タンパク質(GM2AP)を検出するためのキットも提供される。このキットは、本開示に記載される抗GM2AP抗体又はその抗原結合断片を含んでも良い。好ましくは、本実施形態のキットは、基質と、シグナル生成ユニットとコンジュゲートし、抗GM2AP抗体又はその抗原結合断片のFcドメインに結合する二次抗体とをさらに含んでも良い。基質は、シグナル生成ユニットと反応してシグナルを発生するように構成されている。なお、キットは、ブロッキング溶液及び/又は洗浄液をさらに含んでも良い。好ましくは、ブロッキング溶液は、脱脂乳、ウシ血清アルブミン、又はカゼインを含んでも良く、洗浄液は、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline、PBS)、トリス緩衝生理食塩水(Tris-buffered saline、TBS)、洗剤(detergent)を含むPBS、又は洗剤(detergent)を含むTBSを含んでも良い。
【0086】
いくつかの実施形態では、生体試料は、全血、血清、血漿、尿又はそれらの組合せを含む。なお、シグナル生成ユニットは、放射性マーカー、蛍光マーカー、燐光マーカー、化学発光マーカー、又は標識酵素を含んでも良い。好ましくは、標識酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)又はアルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase)を含んでも良い。
【0087】
好ましくは、シグナル生成ユニットが西洋ワサビペルオキシダーゼである場合、基質はテトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine、TMB)である。
【0088】
〔GM2APを検出する方法〕
本開示には、上記の抗GM2AP抗体又はその抗原結合断片によって、又はより具体的には上記の実施例のキットによって、生体試料中のGM2活性化タンパク質(GM2AP)を検出する方法も提供されている。本実施例の方法は、(a)本開示に記載される組換え抗体又はその抗原結合断片を生体試料に投与するステップと、(b)前記生体試料を検出可能なラベルが接合される二次抗体とともにインキュベートするステップと、(c)検出可能なラベルを検出するステップと、を含んでも良い。
【0089】
本開示の目的に基づいて、生体試料は、全血、血清、血漿、尿又はそれらの組合せを含んでも良く、二次抗体は、抗体又はその抗原結合断片のFcドメインに結合されている。さらに、検出可能なラベルは、アルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase)を含んでも良い。また、ステップ(c)は、検出可能なラベルをp-ニトロフェニルホスフェート(p-nitrophenyl phosphate)溶液とともにインキュベートし、OD405での吸光度を測定することにより行われることが可能である。
【0090】
また、検出可能なラベルは、西洋ワサビペルオキシダーゼを含んでも良く、 ステップ(c)は、検出可能なラベルをテトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine、TMB)溶液とともにインキュベートし、OD450での吸光度を測定することにより行われることが可能である。
【0091】
〔抗GM2AP抗体又はその抗原結合断片を誘導する方法〕
【0092】
本開示では、本開示に記載される組換え抗体又はその抗原結合断片のいずれか一つを誘導する方法も提供されている。本実施例の方法は、(a)SEQ ID NO:1~4のアミノ酸配列のいずれか1つを含むペプチド断片を個体に投与するステップと、(b)ハイブリドーマ(hybridoma)細胞を形成するステップと、(c)グリコシル化GM2APと特異的に結合する抗体を分泌するハイブリドーマ細胞をスクリーニングするステップと、を含む。
【0093】
好ましくは、ステップ(a)のペプチド断片は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含んでも良い。
【0094】
当業者にとって、開示された実施例に対して様々な修正及び変形を行うことができることは明らかである。以下の実験例は、例示的な説明を意図したものである。
【0095】
〔実験例〕
以下の実験例で使用される材料は、市販されるものから入手するか、又は当業者であれば、過度の実験をすることなく、関連する市販の材料から容易に入手することが可能である。
【0096】
〔GM2APの作製と精製〕
ここで、GM2AP又はGM2APのペプチド断片をBALB/Cマウスに静脈内注射し、モノクローナル抗体を作製する。具体的に、一つの実施形態では、(GlcNAc)2Fuc(Man)3に連結されたGM2AP(SEQ ID NO:1、PIIVPGNVTLSVG)のペプチド断片は、試験対象(例えば、マウス)における抗体の誘導に用いられる。別の実施形態では、(GlcNAc)2Fuc(Man)3に連結されたGM2AP(SEQ ID NO:2又はSEQ ID NO:3)は、試験対象における抗体の誘導に用いられる。別の実施形態では、精製を容易にするために、ポリHis(例えば、八つのヒスチジン)で標識されたGM2AP(SEQ ID NO:4)は、個体内での抗体の誘導に用いられる。例えば、FLAG、Myc、HA等、他のラベルも適用することが可能である。
【0097】
GM2APを特異的に認識するモノクローナル抗体を作製するために、簡単に言うと、組換えGM2AP(SEQ ID NO:4)をSF9細胞及び/又はSF21細胞で発現させた(
図1)。発現した組換えGM2APをNi Excellカラムで精製した(緩衝液A:0.3M塩化ナトリウム、25mMリン酸ナトリウム、20mMイミダゾール、pH8.0;緩衝液B:0.3M塩化ナトリウム、25mMリン酸ナトリウム、500mMイミダゾール、pH8.0;透析緩衝液:0.3M塩化ナトリウム、25mMリン酸ナトリウム、pH8.0)。SF21細胞溶解液は、最初に0.22uM膜を通して濾過された。Ni Excellカラムを緩衝液Aで予め平衡化し、濾過した細胞溶解液をカラムにロードした。カラムを緩衝液Aで洗浄し、組換えGM2APを4%、8%、16%、50%及び100%の緩衝液Bでカラムから溶出した。16%と8%の画分を収集し、透析緩衝液で透析した(
図2)。
【0098】
精製したGM2APをBALB/Cマウスに静脈内注射し、モノクローナル抗体を作製した。作製された抗GM2AP血清の力価は間接ELISAにより測定された。簡単に説明すると、GM2Aタンパク質(Hisで標識)とCD40(21-193)タンパク質(陰性対照)をELISAプレートにコートした。陽性対照としてマウス抗ヒスチジンタグモノクローナル抗体(1000X)を使用し、陰性対照として正常血清を使用した。D56及びD31の出血前血清を連続的に希釈し、コーティングされたウェルに加えた。二次抗体として、ヤギ抗マウスIgG-HRP(1500X)を使用した。検体混合物のOD
450での吸光度を測定した。結果を表4、5及び
図3に示す。
【0099】
その後、マウスを犠牲にし、活性化された脾臓細胞をメラノーマ細胞と融合させ、融合腫瘍を作製した。すべての融合腫瘍クローンの中で、GM2APに対して最も高い親和性を示すクローンをマウスに静脈注射して腹水を生成し、抗体を増幅させた。すべてのクローンの中で、GM2APに対して最も高い親和性を示す抗体クローン、例えば、クローンNO.21-2B5-F7、21-2H9-G2、21-4E3-C8、21-4B10-E1、21-G4-B11、22-5B1-B2、22-5F2-E10、22-4B11-B9、22-3E6-B11、22-2E9-G12等を研究のためにさらに選択した。
【0100】
[統計分析]
すべてのデータは、平均±標準偏差(STDEV)として示された。データの比較は、対応のないスチューデントt検定(Student t test)又は一元配置分散分析(ANOVA)によって決定された。0.05未満のP値は、統計的に有意であると見なされた。
[結果]
表4、5及び
図3に示すように、D56及びD31の両方の出血前血清には、GM2APと特異的に結合する抗体が含まれていたが、CD40(21-193)タンパク質には結合しなかった。抗GM2AP抗体の存在は、さらにウェスタンブロットアッセイにより確認された(データは示していない)。
【0101】
表4.抗GM2AP血清_D56の力価
【0102】
【0103】
表 5.抗GM2AP血清_D31の力価
【0104】
【0105】
さらに、すべての抗体クローンのうち、GM2APに対する親和性が最も高い抗体クローンを、さらなる研究のためにさらに選択した。即ち、クローンNO.21-2B5-F7、21-2H9-G2、21-4E3-C8、21-4B10-E1、21-4G4-B11、22-5B1-B2、22-5F2-E10、22-4B11-B9、22-3E6-B11及び22-2E9-G12の抗体に対して配列分析を行った。LCVR/HCVRのアミノ酸配列及び対応するCDRs(LCDR1~3及び HCDR1~3)を表2に示す。これらのモノクローナル抗体のLCVR/HCVRをコードする核酸配列を表3に示す。なお、モノクローナル抗体の濃度は以下の通りである。
【0106】
表6. モノクローナル抗GM2AP抗体の濃度
【0107】
【0108】
〔ウェスタンブロットアッセイによる本開示の抗GM2AP抗体と他の市販のELISAキットとの比較〕
上記の実施例で提供した4つの抗体クローン(21-4B10-E1、21-4E3-C8、21-2H9-G2及び21-2B5-F7)と市販の抗GM2AP抗体(Sigma)とを、ウェスタンブロットアッセイにより比較した。このアッセイは、以下の手順で行った。
【0109】
12mLの尿検体を、50kDaカットオフ(50kDa cut-off)のCentricon遠心フィルター装置(Millipore)を用いて、上部の検体体積が500μL未満になるまで遠心分離した。上部に脱イオン水を加えて最終体積を12mLとし、上部の検体体積が500μL未満になるまで遠心分離を行った。2回目に脱イオン水を加えて最終体積を12mLとし、上部の検体体積が500μL未満になるまで遠心分離した。収集した検体に対して脱塩、濃縮を行った後、検体緩衝液に還元剤を添加せずにSDS-PAGE分析を行った。SDS-PAGE分析では、各ウェルに収集した検体(タンパク質量にして約10μg)を25μLずつロードした。泳動後のゲルをニトロセルロース(NC)膜に移し、上記の実施例で提供した4つのクローン化抗GM2AP抗体(21-4B10-E1、21-4E3-C8、21-2H9-G2及び21-2B5-F7)と市販の抗GM2AP抗体(Sigma)とを一次抗体として、ラボでの標準手順で適当な二次抗Fc抗体を用いてウェスタンブロットアッセイを行うことによって、染色した。市販の抗GM2AP抗体(Sigma)は、使用前に1:1000に希釈した。4つの抗GM2AP抗体の濃度を表7にまとめた。
【0110】
表7.ウェスタンブロットアッセイの抗GM2AP抗体の濃度
【0111】
【0112】
その結果を
図4に示す。
図4に示すように、尿検体中のGM2APタンパク質は、上記の実施例で提供した4つの抗GM2AP抗体クローンのすべてで検出されたが、市販の抗GM2AP抗体(Sigma)で染色したレーンではそのようなシグナルは見られなかったことが明らかであった。
【0113】
〔ELISAとSPRで分析した抗GM2AP抗体の感度(Sensitivity〕
ストレプトアビジン(streptavidin)プレートのウェルに、N末端又はC末端のビオチン修飾を施した種々のGM2APタンパク質断片(50ng/well、表8)を添加した(C末端のビオチン修飾断片は「(C)」で示した)。37℃で1時間インキュベートした後、500ng/wellの一次抗体(GM9=検出抗体;GM10=捕捉抗体)を各ウェルに添加し、さらに37℃で1時間インキュベートした。二次抗体(抗マウス(HRP)、1:10000希釈)を各ウェルに添加し、37℃でさらに1時間インキュベートした。基質及び発色剤としてTMBを添加し、暗所で5分間反応させた。その後、終止液を加えて反応をクエンチし、各ウェルのOD450での吸光度を測定した。
【0114】
表8.VITAEin断片
【0115】
【0116】
図5及び6に示すように、GM9及びGM10は、VITAEin 1~30の部分を有意に識別し、GM2APの170~193の部分をわずかに識別している。構造解析後(データは示していない)、VITAEin 1~30とVITAEin 170~193は構造上密接に位置していることがわかった。したがって、この抗体は、VITAEin 1~30の部分を識別できるとともに、VITAEin 1~30とVITAEin 170~193の2つの部分を空間的に識別できると推測される。VITAEin 1~30及びVITAEin 170~193は、NCBIでBLASTされたタンパク質であった。VITAEin以外のタンパク質は、結果の最初の100ヒット(hits)に現れなかった。したがって、これらの抗体は、識別領域に対して高度に特異的であることが証明された。
【0117】
さらに、GM9及びGM10抗体対(GM10=捕捉;GM9=検出)のka(M-1s-1)、kd(s-1)及びKD(M)値を、GE BIAcore3000装置による表面プラズマ共鳴(SPR)によって分析し、表9にまとめた。
【0118】
表9.抗GM2AP抗体のKD値
【0119】
【0120】
表9から分かるように、SPR試験により、GM9及びGM10のKD値は、それぞれ1.25E-10M及び8.8E-10Mであることが示された。したがって、抗体GM9及びGM10は、抗原に対して高い親和性を有し、抗原からの解離が困難であることが示された。
【0121】
さらに詳しく述べることなく、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用できると考えられる。したがって、上記の具体例は、単に例示であって、本開示の残りの部分を何ら限定するものではないと理解されるべきである。
【0122】
本開示で引用されるすべての参考文献(例えば、刊行物又は特許又は特許出願)は、個々の参考文献(例えば、刊行物又は特許又は特許出願)が、全ての目的のためにその全体を参照により組み込むことが具体的かつ個別に示されているかのと同じ程度に、その全体が参考として本開示に組み込まれている。その他の実施例については、添付の特許請求の範囲に含まれている。
【配列表】