(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】超高分子量ポリエチレンの重合方法及びその触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 4/6592 20060101AFI20240605BHJP
C08F 10/02 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F10/02
(21)【出願番号】P 2022189997
(22)【出願日】2022-11-29
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】10-2022-0007430
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515253049
【氏名又は名称】ハンファ トタルエナジーズ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,スンヨプ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジンウ
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-129006(JP,A)
【文献】特開平02-020510(JP,A)
【文献】特開平06-199927(JP,A)
【文献】特開昭59-210907(JP,A)
【文献】特開平06-279529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4、10、110、210
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニウム活性点を含有する主触媒、
トリエチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムを混合した有機アルミニウム助触媒
並びに有機シラン化合物を反応して超高分子量ポリエチレンを重合する超高分子量ポリエチレンの重合方法。
【請求項2】
前記主触媒は、二塩化マグネシウム(MgCl
2)にチタニウムが担持されたチーグラー・ナッタ系触媒である請求項1に記載の超高分子量ポリエチレンの重合方法。
【請求項3】
前記主触媒は下記の方法で製造される請求項2に記載の超高分子量ポリエチレンの重合方法:
前記二塩化マグネシウム(MgCl
2)をアルコールと反応させてマグネシウム化合物溶液を製造する第1段階;
前記マグネシウム化合物溶液に四塩化チタニウムと反応させて前駆体を製造する第2段階;及び
前記前駆体を四塩化チタニウムと1次反応後、下記式(1)で表されるジエステル化合物と反応させて触媒を製造する第3段階、
R
1OOCR
2COOR
3 (1)
前記式(1)において、R
1、R
3は炭素原子1ないし10個の線状または分岐状アルキル基であり、R
2は炭素原子1~20個の炭化水素である。
【請求項4】
前記超高分子量ポリエチレンを重合する際に用いる溶媒は、線状、分岐状及び環状のいずれかの飽和炭化水素である請求項1に記載の超高分子量ポリエチレンの重合方法。
【請求項5】
前記有機アルミニウム助触媒の量は、前記主触媒のチタニウム原子のモル当たり前記助触媒のアルミニウム原子のモルが0.1から100である請求項
1に記載の超高分子量ポリエチレンの重合方法。
【請求項6】
前記超高分子量ポリエチレンを重合する際に用いる有機シラン化合物は、下記式(2)で表される化合物である請求項1に記載の超高分子量ポリエチレンの重合方法、
【化1】
前記式(2)において、R
4及びR
5、R
6、R
7はそれぞれ独立に線状、分岐及び環状炭素原子1~20個のアルキル基、炭素原子1~20個のアルコキシ基、炭素原子6~20個のアリール基及びヘテロ原子を含む炭素原子1~20個のアルキル基である。
【請求項7】
前記有機シラン化合物の量は、前記主触媒のチタニウム原子のモル当たり0.2~50モルである請求項
6に記載の超高分子量ポリエチレンの重合方法。
【請求項8】
前記超高分子量ポリエチレンを重合する際の重合反応は1~60Kg/cm
2Gの圧力条件、60~95℃の温度条件下で反応物の滞留時間が1から4時間の間行われる請求項1に記載の超高分子量ポリエチレンの重合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子量の大きい超高分子量ポリエチレンの重合方法及びその触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超高分子量ポリエチレンはポリエチレン樹脂の一種であって、分子量が最小106g/mol以上のポリエチレンを意味し、ASTM 4020では「デカヒドロナフタレン溶液100mlに0.05%で含有され、135℃下で相対粘度が2.30ないしそれ以上の値を有する線状ポリエチレン」と定義されている。超高分子量ポリエチレンは汎用ポリエチレンに比べて分子量が非常に大きいため、剛性、耐摩耗性、耐環境応力均一性、自己潤滑性、耐化学薬品性及び電気的物性などに優れる特性を有している。このように、優れた物性により超高分子量ポリエチレンは汎用原料から得られる高品質の特殊素材と言える。
【0003】
重合工程を経て製造された超高分子量ポリエチレンは分子量が大きく、汎用ポリエチレンのようにペレット化が不可能であってパウダーで生産販売するため、重合体パウダーの大きさ及び分布が非常に重要であり、重合体の粒子分布及び微粒子の存在有無などが重要な触媒の特性と言える。
【0004】
従来技術としては、マグネシウムを含み、チタニウムに基づく超高分子量ポリエチレン製造用触媒及び触媒製造工程が報告されてきた。特に、前記に言及したの見掛け密度の高いオレフィン重合触媒を得るためにマグネシウム溶液を用いた方法が知られているが、特許文献1においてはマグネシウムハライド化合物とチタニウムアルコキシド化合物の反応物と、アルミニウムハライドとシリコンアルコキシド化合物の反応物とを反応させて得た触媒製造工程を公開しており、このように、製造された触媒は比較的高い見掛け密度を提供するが、まだ改善すべき点があり、且つ触媒の活性面でも改善すべき余地がある。また、特許文献2においてはチタニウム(IV)ハライドを有機アルミニウム化合物に還元させた後、有機アルミニウム化合物で後処理工程を経て粒子分布が狭く、見掛け密度の高い重合体を製造する方法を報告しているが、触媒の活性が相対的に低い問題がある。
【0005】
特許文献3においては、触媒活性が高く、見掛け密度が高く、分子量分布の狭い超高分子量ポリオレフィン重合体が製造できるマグネシウム、ハロゲンチタン及びシラン化合物を含む、チタン含有触媒の製造方法を開示している。特許文献4においては、ハロゲン化マグネシウム化合物とアルミニウムまたはボロン(boron)化合物の混合物をアルコールと接触反応させてマグネシウム化合物溶液を製造し、ここに少なくとも1つのヒドロキシ基を含むエステル化合物とアルコキシ基を有するシリコーン化合物とを反応させた後、チタニウム化合物とシリコーン化合物との混合物を添加して製造される、高い触媒活性と見掛け密度が高く、重合体の粒子分布が狭い超高分子量ポリエチレン製造用触媒及びその製造方法を開示している。前記2つの方法は、バッチ重合で製造して連続式重合法に比べて生産性が低下するという短所がある。
【0006】
超高分子量ポリエチレンは、重合条件によって活性、見掛け密度、分子量が大きく異なる。分子量を高めるために温度を下げて重合する場合、低い活性による低い生産性の問題が生じるため、一般的にはポリエチレン重合温度で超高分子量ポリエチレンを重合できる技術が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第4,962,167号
【文献】米国特許第5,587,440号
【文献】韓国登録特許第0822616号
【文献】韓国特許第0351386号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高い活性、高い見掛け密度、高い分子量、少ない粒子束を有する超高分子量ポリエチレンを効率的に重合する超高分子量ポリエチレン重合方法及びその触媒の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、チタニウム活性点を含有する主触媒、2種以上の有機アルミニウムを混合した有機アルミニウム助触媒及び有機シラン化合物を反応して超高分子量ポリエチレンを重合する超高分子量ポリエチレンの重合方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、チタニウム活性点を含有する主触媒、2種以上の有機アルミニウムを混合した有機アルミニウム助触媒及び有機シラン化合物を反応して超高分子量ポリエチレンを重合する際、用いられる主触媒の触媒製造方法を提供する。この触媒の製造方法は、二塩化マグネシウム(MgCl2)をアルコールと反応させてマグネシウム化合物溶液を製造する段階;マグネシウム化合物溶液に四塩化チタニウムと反応させて前駆体を調製する段階;及び前駆体を四塩化チタニウムと一次反応後、ジエステル化合物と反応させて触媒を製造する段階を含む。
【0011】
また、本発明は、重合活性(kg-PE/g-触媒)が5以上40以下であり、粘度平均分子量(x106g/ml)が2.0以上10.0以下であり、見掛け密度(bulk density、g/ml)は0.30以上0.50以下であり、1μm以上の粒子束(wt%)は、8.0以下である超高分子量ポリエチレンを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施例による超高分子量ポリエチレン重合方法を用いると、高い活性、高い見掛け密度、高い分子量、少ない粒子束を有する超高分子量ポリエチレンを効率的に重合することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一部実施例を例示的な図面を参照して詳細に説明する。各図面の構成要素に参照符号を付加するにあたり、同一の構成要素についてはたとえ異なる図面に表示されても、できる限り同一の符号を有することができる。また、本実施例を説明にあたり、関連する公知の構成または機能に対する具体的な説明が本技術思想の要旨をぼかすことができると判断される場合には、その詳細な説明は省略することができる。本明細書に言及された「含む」、「有する」、「からなる」などが用いられる場合、「~のみ」を用いない限り、他の部分が追加され得る。構成要素を単数で表現した場合に、特別な明示的な記載事項がない限り、複数を含む場合が含まれ得る。
【0014】
また、本開示の構成要素を説明するにあたり、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を用いることができる。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものであり、その用語によって当該構成要素の本質、順番、順序、または数などが限定されない。
【0015】
構成要素の位置関係についての説明において、2つ以上の構成要素が「連結」、「結合」または「接続」などされると記載された場合、2つ以上の構成要素が直接的に「連結」、「結合」または「接続」することもできるが、2つ以上の構成要素と他の構成要素とがさらに「介在」して「連結」、「結合」または「接続」することもできると理解すべきである。ここで、他の構成要素は、互いに「連結」、「結合」または「接続」される2つ以上の構成要素のうちの1つ以上に含まれてもよい。
【0016】
構成要素や、動作方法や作製方法などに関連する時間的流れ関係についての説明において、例えば、「~後に」、「~に次いで」、「~後」、「~前に」などで時間的先後関係あるいは、流れの先後関係が説明される場合、「直ちに」または「直接」が用いられない限り、連続的ではない場合も含まれ得る。
【0017】
一方、構成要素に対する数値またはその対応情報(例えば、レベルなど)が言及された場合、別途の明示的な記載がなくても、数値またはその対応情報は各種要因(例えば、工程上の要因、内部または外部衝撃、ノイズなど)によって発生できる誤差範囲を含むものと解釈され得る。
【0018】
本明細書において、有機シラン化合物は有機シラン外部ドナーまたは有機シラン外部電子供与体と用いられることもあるが、この用語に限定されない。
【0019】
本発明は、チタニウム活性点を含有する主触媒、2種以上の有機アルミニウムを混合した有機アルミニウム助触媒及び有機シラン化合物を反応して超高分子量ポリエチレンを重合する超高分子量ポリエチレンの重合方法を提供する。これにより製造された超高分子量ポリエチレンは、重合活性に優れながら高い見掛け密度及び高い分子量を有することができる。
【0020】
例えば、本発明は、チタニウム活性点を有する主触媒と2種以上のアルキルアルミニウム助触媒との混合物及び有機シラン化合物を一緒に連続式エチレン重合反応器に投入して超高分子量ポリエチレンを製造する方法を提供する。
【0021】
さらに本発明は、連続式重合条件において主触媒、2種以上の有機アルミニウム助触媒及び有機シラン化合物の適正割合の組み合わせを通じて高い活性と見掛け密度を有すると共に高い分子量を有する超高分子量ポリエチレンを製造することができる重合方法を提供する。
【0022】
前述の主触媒は、マグネシウムにチタニウムが担持されたチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)系触媒であってよい。前記マグネシウム化合物は、マグネシウムハライド化合物、一例として、塩化マグネシウム、例えば二塩化マグネシウム(MgCl2)であってよい。例えば、前述の主触媒は二塩化マグネシウム(MgCl2)にチタニウムが担持されたチーグラー・ナッタ系触媒であってよい。
【0023】
主触媒は、二塩化マグネシウム(MgCl2)にチタニウムが担持されたチーグラー・ナッタ系触媒である場合、二塩化マグネシウム(MgCl2)をアルコールと反応させてマグネシウム化合物溶液を製造する第1段階;マグネシウム化合物溶液に四塩化チタニウムと反応させて前駆体を製造する第2段階;及び前駆体を四塩化チタニウムと一次反応後、下記式(1)で表されるジエステル化合物と反応させて触媒を製造する第3段階を含む触媒の製造方法により製造することができる。
R1OOCR2COOR3 (1)
前記式(1)において、R1、R3は炭素原子1ないし10個の線状または分岐状アルキル基であり、R2は炭素原子1~20個の炭化水素である。
【0024】
触媒の製造方法において、前記アルコールはその種類が特に限定されないが、炭素原子が4ないし20のアルコールが好ましい。一例として、前記アルコールはノーマルブタノールであり得る。
【0025】
前記アルコールは前記二塩化マグネシウム化合物1重量に対して3ないし7重量部、例えば、3ないし5重量部の割合で混合することができる。前記炭化水素溶媒は前記二塩化マグネシウム化合物1重量に対して9ないし16重量部、例えば、10ないし15重量部の割合で混合することができる。
【0026】
R2は炭素原子1~20個の炭化水素であるが、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素であってもよい。
【0027】
前述の炭素原子1ないし10個の線状または分岐状アルキル基であるが、炭素原子1~20個の炭化水素は置換または非置換である。置換は重水素、C1~C20のアルキル基、C1~C20のアルコキシ基、C1~C20のアルキルアミン基、C1~C20のアルキルチオフェン基、C6~C20のアリールチオフェン基、C2~C20のアルケニル基、C2~C20のアルキニル基、C3~C20のシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、重水素で置換されたC6~C60のアリール基、C8~C20のアリールアルケニル基、及びO、N、S、Si及びPからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC2~C20のヘテロ環基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されることを意味することができ、これらの置換基に制限されるものではない。
【0028】
超高分子量ポリエチレンを重合する際に用いる溶媒は炭化水素溶媒であることができる。炭化水素溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン及びケロセンなどの炭素原子1ないし20の脂肪族炭化水素であるか、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素であることができる。例えば、超高分子量ポリエチレンを重合する際に用いる溶媒は、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンのような線状、分岐状及び環状飽和炭化水素であることができる。
【0029】
超高分子量ポリエチレンを重合する際に用いる前記有機アルミニウム助触媒は、AlRnX3-n(nは1から3、Rは炭素原子1から8の間の線状または分岐状アルキル基を表し、XはF、Cl、Brなどのハロゲン原子または水素原子)である構造を有する2種以上の混合物であることができる。
【0030】
有機アルミニウム助触媒の量は、主触媒のチタニウム原子のモル当たりの助触媒のアルミニウム原子のモルが0.1から100であることができるが、これに制限されない。
【0031】
超高分子量ポリエチレンを重合する際に用いる有機シラン化合物は、下記式(2)で表される化合物であってもよい。
【0032】
【化1】
前記式(2)において、R
4及びR
5、R
6、R
7はそれぞれ独立に、線状、分岐状及び環状炭素原子1~20個のアルキル基、炭素原子1~20個のアルコキシ基、炭素原子6~60個のアリール基及びヘテロ原子を含む炭素原子1~20個のアルキル基である。
【0033】
「アリール基」は、他の説明がない限り、それぞれ6ないし60の炭素原子を有するが、これに制限されるものではない。本出願において、アリール基は、単環式、環集合体、接合した複数の環系、スパイロ化合物などを含むことができる。例えば、アリール基は、フェニル基、ビフェニル、ナフチル、アントリル、インデニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレンイル、ペリレンイル、クライセニル、ナフタセニル、フルオランテンイルなどを含むが、これに制限されるものではない。前記ナフチルは1-ナフチル及び2-ナフチルを含み、前記アントリルは1-アントリル、2-アントリル及び9-アントリルを含むことができる。
【0034】
「ヘテロ原子」は、他の説明がない限り、N、O、S、PまたはSiを示すが、これに制限されない。
【0035】
線状、分岐状及び環状炭素原子1~20個のアルキル基、炭素原子1~20個のアルコキシ基、炭素原子6~60個のアリール基及びヘテロ原子を含む炭素原子1~20個のアルキル基は置換または非置換であることができる。置換は重水素、C1~C20のアルキル基、C1~C20のアルコキシ基、C1~C20のアルキルアミン基、C1~C20のアルキルチオフェン基、C6~C20のアリールチオフェン基、C2~C20のアルケニル基、C2~C20のアルキニル基、C3~C20のシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、重水素で置換されたC6~C60のアリール基、C8~C20のアリールアルケニル基、及びO、N、S、Si及びPからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC2~C20のヘテロ環基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されることを意味することができ、これらの置換基に制限されるものではない。
【0036】
有機シラン化合物の量は、前記主触媒のチタニウム原子の1モル当たり0.2~50モルであってもよいが、これに制限されない。
【0037】
一例として、超高分子量ポリエチレンを重合する際の重合反応は、1~60Kg/cm2Gの圧力条件、60~95℃の温度条件下で反応物の滞留時間1~4時間の間行うことができる。
【0038】
他の実施例による超高分子量ポリエチレンは、重合活性(kg-PE/g-触媒)が5以上40以下であって重合反応を調節し易い。また、超高分子量ポリエチレンは、粘度平均分子量(x106g/ml)が2.0以上10.0以下であり、見掛け密度(bulk density、g/ml)は0.30以上0.50以下であり、平均粒径(μm)は100以上150以下であり、1μm以上の粒子束(wt%)は8.0以下であってUHMWPE加工工程に使用することが容易である。
【0039】
[実施例1]
(超高分子量ポリエチレン製造用の固体触媒の製造)
第1段階:マグネシウムハライドアルコール付加物(adduct)溶液の製造
機械式攪拌機が設けられた1L反応器を窒素雰囲気に置換した後、固体二塩化マグネシウム(MgCl2)20g、トルエン200ml、ノマルブタノール120mlを投入し、350rpmで攪拌した。温度を1時間の間65℃に昇温した後、2時間保持して溶媒によく溶けた均一なマグネシウムハライドアルコール付加物溶液を得た。
【0040】
第2段階:マグネシウムハライド担体の製造
第1段階において製造された溶液の温度を20℃に冷却した後、TiCl420mlを40分間ゆっくり仕込んだ(0.5ml/min)。その後、TiCl462.5mlを100分間より速く仕込んだ(0.625ml/min)。この際、反応器の温度が25℃以上に上昇しないように注意して温度を保持した。
仕込みが完了したら、反応器の温度を1時間の間60℃に昇温し、さらに1時間保持した。
全ての過程が完了すると反応器を静置して固体成分を完全に沈め、上澄液を除去した後、反応器内の固体成分を300mlのトルエンで1回洗浄及び沈殿させ、液状の不純物を完全に除去し、清浄な塩化マグネシウム担体を固体として得た。
【0041】
第3段階:チタニウム及びジメチルフタレート(dimethyl phthalate)が担持された触媒の製造
前記塩化マグネシウム担体にトルエン200mlを仕込み、250rpmで撹拌しながら25℃を保持した。その後、TiCl430mlを一度に仕込み、1時間の間保持して一次反応させた。その後、ジメチルフタレート(dimethyl phthalate)2mlを仕込んだ後、反応器温度を60℃に昇温した後、1時間保持してTiCl4と担体との間の二次反応を行った。
全ての過程が完了すると反応器を静置して固体成分を完全に沈めた後、上澄液を除去した。製造された固体触媒はトルエン200mlで1回、ヘキサン200mlで6回洗浄及び沈殿して不純物を除去した。
【0042】
(超高分子量ポリエチレン重合)
4リットル容量の連続式重合反応器にエチレンを連続的に流し込み、内部をエチレンで満たした。トリイソブチルアルミニウム0.5M、トリエチルアルミニウム0.5Mとなるように有機アルミニウム混合物のヘキサン希釈液を調製した。チタニウム1.0Mの触媒ヘキサン希釈液、有機シラン1.0M希釈液をそれぞれ別のタンクに調製した。
反応器温度を80℃に保持しながら有機アルミニウム希釈液、触媒希釈液、有機シラン希釈液をTi:TEAl:TIBA:Si=1:0.5:0.5:5となるように一定の速度で仕込んだ。反応器内のヘキサンスラリーが計2リットルになるように持続的にヘキサンを仕込んだ。反応器の内圧は5Kg/cm2G、滞留時間を2時間に保持した。反応器から排出されたヘキサンスラリーをフィルター及び乾燥して超高分子量ポリエチレン粒子を得た。
【0043】
[実施例2]
実施例1から重合時のトリイソブチルアルミニウムを0.25ミリモル、トリエチルアルミニウムを0.75ミリモルに変更したことを除き、実施例1と同様の方法で超高分子量ポリエチレンを製造した。
【0044】
[実施例3]
実施例1から重合時のトリイソブチルアルミニウムを0.75ミリモル、トリエチルアルミニウムを0.25ミリモルに変更したことを除き、実施例1と同様の方法で超高分子量ポリエチレンを製造した。
【0045】
[実施例4]
実施例1から重合時のトリイソブチルアルミニウムを1ミリモル、トリエチルアルミニウムを1ミリモルに変更したことを除き、実施例1と同様の方法で超高分子量ポリエチレンを製造した。
【0046】
[実施例5]
実施例1から重合時のトリイソブチルアルミニウムを0.25ミリモル、トリエチルアルミニウムを0.25ミリモルに変更したことを除き、実施例1と同様の方法で超高分子量ポリエチレンを製造した。
【0047】
[比較例1]
実施例1から重合時のトリイソブチルアルミニウムを0ミリモル、トリエチルアルミニウムを1ミリモルに変更したことを除き、実施例1と同様の方法で超高分子量ポリエチレンを製造した。
【0048】
[比較例2]
実施例1から重合時のトリイソブチルアルミニウムを1ミリモル、トリエチルアルミニウムを0ミリモルに変更したことを除き、実施例1と同様の方法で超高分子量ポリエチレンを製造した。
【0049】
[比較例3]
実施例1から重合時のジシクロペンチルジメトキシシランを投入していないことを除き、実施例1と同様の方法で超高分子量ポリエチレンを製造した。
前述の実施例1ないし5及び比較例1ないし3をトリイソブチルアルミニウム及びトリエチルアルミニウムの含量を基準としてまとめると、下記表1のとおりである。
【0050】
【0051】
<物性測定/評価項目及びその試験法>
前述の実施例1ないし5及び比較例1ないし3により製造された超高分子量ポリエチレン重合体の物性を測定した結果は表2のとおりであった。
【0052】
重合活性(kg-PE/g-触媒)
重合活性(kg-PE/g-触媒)は、用いた触媒量当たりに生成された重合体の重量比で計算した。
【0053】
見掛けの密度(bulk density、g/ml)
ASTM D1895-96にしたがって測定した。
【0054】
粘度平均分子量(x106g/ml)
重合体の分子量(Mv)は固有粘度を測定し、マーゴリーズの方程式を介して計算した。
具体的には、分子量(MW)をASTM D 4020にしたがい固有粘度[η]から算出した。高分子の場合、希薄濃度の溶液上で粘度が有用な情報を提供することができ、高分子の粘度を溶液の粘度と濃度で割った値を比粘度(specific viscosity)とし、高分子の濃度が0になるとき比粘度の外挿値を固有粘度(Intrinsic Viscosity、IV)と定義する。直鎖状の高分子は、IV値が高分子のサイズに主に影響されるため、分子量と高い相関性を有し、超高分子量ポリエチレンの場合にはマーゴリーズの方程式(Margoliesequation)が広く用いられている。
Mw=5.37×104×[η]1.49
Mw=average molecular weight(g/mol)
[η]=intrinsic viscosity(dl/g)
【0055】
平均粒子サイズ(μm)
重合体の粒子サイズの分布図は、レーザ粒子分析器(Mastersizer X、Malvern Instruments)を用いて測定し、結果は平均粒子サイズはD(v,0.5)、粒子サイズ分布は(D(v,0.9)-D(v,0.1))/D(v,0.5)で示した。
ここで、D(v,0.5)はサンプルに含まれた粒子のサイズの中間値を表し、D(v,0.9)とD(v,0.1)はそれぞれサイズ分布基準90%と10%に位置する粒子サイズを意味する。粒子サイズ分布の数が小さいほど粒子サイズ分布が狭いことを意味する。
【0056】
1μm以上の粒子束(wt%)
重合体の粒子束は、1μmの孔を有する金属篩を用いて総重量に対して固まった粒子の量を測定した。
【0057】
【0058】
前記表2に示すように、実施例1の方法で重合された超高分子量ポリエチレンの場合、高い活性、高い見掛け密度及び高い分子量を有し、非常に低いレベルの大きな粒子束を示すことが分かる。
【0059】
投入した有機アルミニウム助触媒の混合割合によって活性の急激な減少あるいは分子量の急激な減少が示されることを見ると、有機アルミニウムの混合割合の最適値があることが分かる。
【0060】
実施例4、5を通じて有機アルミニウムの総量が増加する場合、分子量が急激に減少し、有機アルミニウムの総量が減少する場合、触媒の活性化が阻害され、活性が非常に低下し、粒子束が急激に増加する。
【0061】
また、比較例1、2のように単一の有機アルミニウム助触媒を用いる場合、比較例1の場合、分子量が非常に低く示され、比較例2の場合、活性が非常に低いと共に粒子束が大きく示されることが分かる。
【0062】
また、比較例3のように有機アルミニウム助触媒の混合物を適正割合で用いても、有機シラン外部ドナーなしに重合する場合、非常に低い分子量を有することが確認できる。
【0063】
表2を通じて超高分子量ポリエチレンの重合の際、高い活性、分子量、見掛け密度を同時に有しながら粒子束の少ない超高分子量ポリエチレンを得るためには、主触媒、有機アルミニウム助触媒と有機シラン外部ドナーを適宜組み合わせられるべきであることが分かる。
【0064】
前述のとおり、本発明は超高分子量ポリエチレンの重合において、主触媒、2種以上の有機アルミニウムを混合した助触媒、及び有機シラン外部電子供与体を反応器に一緒に投入及び重合し、高い活性、高い見掛け密度、高い分子量を同時に有しながら低い粒子束を示す超高分子量ポリエチレン粒子を得る方法を提供する。
【0065】
以上の説明は、本開示の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本開示が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本技術思想の本質的な特性から外れない範囲で様々な修正及び変形が可能であろう。なお、本実施例は、本開示の技術思想を限定するものではなく説明するためのものであるので、このような実施例によって本技術思想の範囲が限定されるものではない。本開示の保護範囲は以下の特許請求の範囲により解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にある全ての技術思想は、本開示の権利範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。