(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 25/22 20060101AFI20240605BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
F16H25/22 C
F16H25/24 B
F16H25/24 L
(21)【出願番号】P 2022509086
(86)(22)【出願日】2019-08-17
(86)【国際出願番号】 NO2019050168
(87)【国際公開番号】W WO2021034200
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】522055603
【氏名又は名称】エクセス エンジニアリング エイエス
【氏名又は名称原語表記】EXCESS ENGINEERING AS
【住所又は居所原語表記】Strandgata 151 4307 Sandnes (NO)
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルヴァッテン,オヴェ
(72)【発明者】
【氏名】モクルジンスキ,アダム
(72)【発明者】
【氏名】エリングセン,ジャン
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-059048(JP,A)
【文献】特開昭50-078759(JP,A)
【文献】特開平05-029134(JP,A)
【文献】特開平09-303514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/00-37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動を直線運動に又これらをその逆に変換するリニアアクチュエータであって、
ボールねじナット(2)を軸線方向および半径方向に支持するケース(1)を有し、
前記ボールねじナット(2)は、ボールが循環する溝が形成された内側らせんボール転動面を有し、動力伝達部材(5)を軸線方向に動かすため複数のボール(9)によって外側リードスクリュー(3)上で回転するように構成され、
前記ボールねじナットは駆動ユニットを有し、
前記外側リードスクリュー(3)は、内側リードスクリュー(4)につながるボール入口およびボール出口を含む溝を有するボール転動面を有し、
前記内側リードスクリュー(4)は、前記外側リードスクリュー(3)とは溝のピッチが異なる少なくとも一つの溝を有し、該内側リードスクリュー(4)の溝は、前記外側リードスクリュー(3)につながるボール入口およびボール出口を有し、
前記ボールねじナット(2)は、前記ケース(1)内で回転し、前記複数のボール(9)を介して前記外側リードスクリュー(3)と螺合し、
前記外側リードスクリュー(3)及び前記内側リードスクリュー(4)は、回転せず、前記ボールねじナット(2)と前記複数のボール(9)によって動力伝達要素として機能し、前記動力伝達部材(5)を制御された速度で一方向または両方向に移動させ、
少なくとも1つの電気コネクタを有
し、
前記外側リードスクリュー(3)、前記内側リードスクリュー(4)、及び前記動力伝達部材(5)は、それぞれ別体の部品である、
リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記動力伝達部材(5)を軸線方向へ移動させるため、前記外側リードスクリュー(3)及び前記内側リードスクリュー(4)は結合される、
請求項1に記載の
リニアアクチュエータ。
【請求項3】
複数の転動部材が、前記ボールねじナット(2)及び前記外側リードスクリュー(3)の前記各溝と、前記内側リードスクリュー(4)内の前記溝との間を転がる、
請求項1又は2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記内側リードスクリュー(4)の前記溝の最大深さは、ボールの直径よりもわずかに大きい、
請求項1から3のいずれか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記動力伝達部材(5)は棒体である、
請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
リニアアクチュエータ自体は回転しない、
請求項1、2、及び5のいずれか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記ケース(1)は、前記ボールねじナット(2)を軸線方向および半径方向に支持し、
前記ボールねじナット(2)は、回転エネルギーをトルクとして供給する電気モータに接続されている、
請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの電気コネクタは、誘導結合により送電およびデータ伝送を行う、
請求項1又は
7に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの電気コネクタは、ウェットメイト(wet-mate)コネクタである、
請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項10】
前記電気コネクタは、複数の電気コネクタからなる、
請求項
9に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項11】
遠隔操作ビークルによって
操作可能である、
請求項
8から10のいずれか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転運動を直線運動に又これらをその逆に変換する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の産業界は、陸上、海上、及び海中における作業を実施するにあたり、その効率、自然環境への影響、及びデジタル化に高い関心を寄せている。近年、非効率な油圧システムに代えて、これよりも効率的な電力を用いて作業を行うことが注目されている。現在、すでに多くの作業が電気モータで行われている。油圧システムの主な利点は、油圧シリンダーとアクチュエータにより、コンパクトなシステムで大きな力が得られることである。油圧アクチュエータに対抗すべく幾多のシステムが特許を取得し開発されてきたが、その効率の低さと躯体の大きさとが、電気エネルギーが好ましい方法となることを阻んできた。そこで本発明は、回転トルクを直線状の力に変換する、改良されたより効率的なシステムに関する。本発明は、ベアリングボールの再循環を用いた小型のボールねじリニアアクチュエータ機構からなり、産業界の求める効率と精度とを叶えるものである。本発明によれば、より多くの油圧システムを電力に置き換えることができ、これにより、より精密な試験が可能となり、より環境に優しく、より作業効率の高い、よりリモート操作に適した、デジタル化されたシステムが実現される。
【0003】
なおここでいう「リニアアクチュエータ」とは、スラスト部材を直線運動により進退させることを本質とするあらゆるプロセスを広く指す抽象的な語である。広範な意味の用語「リニアアクチュエータ」は、宇宙、地表、海中、及びダウンホールにおけるシステムの説明に使用される。リニアアクチュエータは、油圧、空気圧、電動、手動によるものなど、種々の公知機構で動作する。また、「リニアアクチュエータ」という用語の中の「リニア」という語は、本願が直線運動を行うために回転運動を用いることを制限するものではない。このことがさらに混乱を招く。ここでいう「リニア」という語は、スラスト部材を進退させるために回転運動を直線運動に変換する装置も含む。スラスト部材の先端には、作業のためにワークピースが固定されることもある。
【0004】
リニアアクチュエータは高速かつ高精度であり、比較的容易に使用することができる。本発明の主目的の一つは、海中機器に小型で信頼性の高い解決手段を提供することである。産業界は長年にわたり、海中のバルブ操作を油圧から電気エネルギーに転換することを研究し、開発してきた。本発明は、リニアボールねじ機構を電気モータで作動させることにより、そのような用途において必要となる小型化を実現し、これにより要求を満たす効率と信頼性とを与えるものである。本発明は、陸上、海上、浅海、深海、超深海のいずれの場所にも適している。
【0005】
本実施形態の他の主目的は、システムにおいて機構的なオーバーライド機能も提供する海中作業用の電動アクチュエータを提供することである。アクチュエータを作動させるこのような二次的手段は、一次的な作業方法が失敗した状況においてしばしばコンティンジェンシーと称される。これは、典型的には、海中システムや坑井制御システムの重要なバルブについて必要となる。
【0006】
本実施形態の他の目的は、意図しない動作を防止するため、アクチュエータを一箇所にロックする機構を提供することである。これは、典型的には、振動や他の外力により坑井制御システムのバルブが動くのを防ぐために必要となる。
【0007】
市場には現在、ボールねじ機構によって回転運動を直線運動に変換する機器が多く出回っている。従来のボールねじ及びナットアセンブリは、その長さ方向に沿って連続するらせん状の溝やねじ山(及びランド部)を有する円形のリードスクリューと、これと対になり、リードスクリューの外面の溝に組み合わされて通路を形成し、複数のボールが一列に並ぶようにサイズを決める、連続したらせん状の溝やねじ山を有するフォロワーナット又はナットとを含む。ボールは、一方が他方に対して回転すると、リードスクリューの溝およびフォロワーナット(又はナット)の溝の両方に対して転がりながら接触する。このような機構は一般にねじとナットを含んでおり、これらは回転運動を直線運動に又その逆に変換する循環ボールを有している。
【0008】
この種のボールねじは、他の種類のねじ機構に比べて摩擦抵抗が少なく、滑らかに回転する。ボールねじにより実現される滑らかな横方向の動きは、例えば製造装置やロボットシステムで要求される正確かつ高速な動作を容易にする。
【0009】
ボールねじとナットの機構では、ねじとナットの相対運動により、ボールは、その流路または走路に沿って転がりながら循環する。そのため、ボールを循環させるためのバイパス構造が必要となる。従来のボールねじとナットの機構では、外部および内部の循環系を含む様々な技術が使用されいている。
【0010】
本発明の目的は、以下の説明およびそれに続く特許請求の範囲で特定される特徴により達成される。
【0011】
米国特許第5337627号公報には、工作機械または成形機において対象物を移送/固定するために用いられるボールねじが開示されている。外部循環システムを備えるこの種の機構は、全体のサイズが大型化しやすく、小型のシリンダーに適用することが難しいという欠点がある。
【0012】
米国特許第6357100号公報は、遊星ねじを介して大きな力を鋲打ち機に伝達する装置や、自動締結装置の一部としての工作器具を操作する装置を開示している。
【0013】
米国特許出願第2004/0103734号公報には、複数のボールの内部循環システムを備えるボールねじとナットアセンブリにより回転運動を直線運動に変換する装置が開示されている。これは製造が容易である。この設計における欠点は、ねじ機構を中心ねじ(横方向に移動する軸)に依存することで、中心ねじが周辺圧力や塵埃のために密閉される必要がある場合、機構全体のサイズが大型化することである。
【0014】
米国特許出願第2009/0064811号公報には、ナットが小型化され、複数のボールの循環構造が簡略化されたボールねじが開示されている。ねじ軸とナット部材は、互いにボールを介在させて螺合される。欠点は、ねじ機構が横方向に移動するねじに依存していることである。
【0015】
米国特許出願第2013/0133453号公報には、内部循環型ボールねじとねじ軸が開示されている。引き抜きねじ(The drawb screw)。そのため機構のサイズが大型化し、小型のリニアアクチュエータに適用することが難しい。また、この仕組みではリードスクリューが回転する必要がある。
【0016】
米国特許出願第2007/0240532号公報には、連続したボール通路を有する、ボールねじ用のスピンドルナットが開示されている。
【0017】
欧州特許第2916042号公報には、ハウジングの損傷や摩耗が低減され、また、単純な構造でナットの回転を止めることができ、これにより信頼性と製造コストが改善された電動リニアアクチュエータが開示されている。この機構はねじ軸のらせん状の溝に依存しており、長さがピストンロッドのストロークに比例する駆動ねじ軸が用いられることで全体のサイズが大型化しやすいという欠点がある。
【0018】
米国特許出願第2004/0200303号公報には、内周面にねじ溝を有するナットと、外周面にねじ溝を有するねじ軸と、これらねじ溝の間に挟まれる複数のボールと、を備えるボールねじ装置が開示されている。ねじ軸のねじ溝は少なくとも実質的に1周である。ねじ軸には、ねじ溝の下流側と上流側とをつなぐボール循環溝が設けられており、ボールは下流側から上流側に戻されて循環する。この設計における欠点は、ボール循環溝33及び34に配置されたボールが半径方向の荷重も軸線方向の荷重も受けられないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許第5337627号公報
【文献】米国特許第6357100号公報
【文献】米国特許出願第2004/0103734号公報
【文献】米国特許出願第2009/0064811号公報
【文献】米国特許出願第2013/0133453号公報
【文献】米国特許出願第2007/0240532号公報
【文献】欧州特許第2916042号公報
【文献】米国特許出願第2004/0200303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の第一の目的は、回転運動を直線運動(横方向の運動)に効率的に変換し、またその逆も可能な小型装置を提供することにある。
【0021】
他の目的は、円形のリードスクリューを油圧シリンダーのピストンとして形成し、リードスクリューのピストン部分にのみらせん状の溝を設け、リードスクリューの残りの部分をシリンダロッドとして形成したボールねじ装置を提供することである。
【0022】
他の目的は、リードスクリューのピストン部を複数のボールの循環に使用し、ナットとの転がり接触で荷重を伝達する、ボールねじ装置を提供することである。
【0023】
他の目的は、ピストン及びロッドとして形成されたリードスクリューが回転せず、油圧シリンダーとして機能するボールねじ装置を提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、制御可能な速度による高い位置決め精度を実現する正確かつ精密なツールを提供することである。
【0025】
本発明のもう一つの目的は、油圧手段を一切使用せず、電力のみにより回転運動を直線運動に変換し又その逆も行うリニアアクチュエータ機構を提供することである。
【0026】
本発明の他の目的は、アクチュエータを作動させる二次的な手段として遠隔操作ビークル等による回転運動の機構的な冗長化(override)を図ることである。
【0027】
本発明の他の目的は、地表、海中、及びダウンホールにおける掘削作業または介入作業を可能にすることである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本開示に係る実施形態の概略図であり、ケースに収容されたボールねじリニアアクチュエータ装置の一例を示している。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係るボールねじリニアアクチュエータ装置の断面図であり、ボールねじの機構と駆動ユニットの一例を示している。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係るボールねじリニアアクチュエータ装置の等角図であり、電気接続部を有する駆動ユニットと、ボールねじ機構と、前端部および後端部と、ケースとを示している。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係るボールねじリニアアクチュエータ装置の分解図である。
【
図5】
図5は、本開示に係る実施形態の分解図であり、動力伝達部材(5)、外側リードスクリュー(3)、及び内側リードスクリュー(4)を示している。
【
図6】
図6は,本開示に係る実施形態の説明図であり、外側リードスクリュー(3)、内側リードスクリュー、及び複数のボール(4)が組み付けられた動力伝達部材(5)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の特徴と利点、並びに追加的な機能とその効果は、本発明の実施形態に関する以下の説明を考慮し、添付の図面を参照すれば、当業者には明白であろう。本明細書の説明および添付の図面に示される実施形態は例示であり、本特許出願、これに基づく特許の請求の範囲、又はこれに基づく優先権を主張するいかなる特許もしくは特許出願の請求の範囲を制限するものではないことが理解されるべきである。逆に、特許請求の範囲およびその思想に含まれるすべての修正物、等価物および代替物を網羅することを意図したものである。このような思想および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された実施形態および細部に対して多くの変更を行うことができる。本発明の目的、利点、及び特徴は、本明細書に添付された図面を参照することでより明らかになるであろう。図面には本発明の実施形態が図示されており、同様の番号は同様の部品を示している。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態であるボールねじリニアアクチュエータ装置の代表的な構成を示している。
図1のボールねじ式リニアアクチュエータは、前端部(7)及び後端部(8)を有し、密閉空間を形成するハウジングであるケース(1)を備えており、動力伝達部材(5)と、
図1ではケーブル(14)として描かれる電力・通信インタフェースと、がその密閉空間を貫通している。
【0031】
また、
図1及び
図2の実施形態は、ボールねじリニアアクチュエータのケース(1)内の好ましい配置例を示している。ボールねじリニアアクチュエータは、動力伝達部材(5)、内側リードスクリュー(4)、外側リードスクリュー(3)、内側リードスクリュー(4)及び外側リードスクリュー(3)を動力伝達部材(5)に固定する留め具(12)、外側リードスクリュー(3)とボールねじナット(2)との間にらせん状に噛み込まれた複数のベアリングボール(9)を有している。ボールねじナット(2)はケース(1)内で図示横方向(10)に、かつ半径方向(11)に支持されている。ボールねじナット(2)はケース内を回転する。また、本実施形態では、ボールねじナット(2)を半径方向に支持するベアリング(11)間にスペーサ(6)が配置されている。なお、ボールねじナット(2)は、駆動ユニット(13)に接続されていてもよい。
【0032】
図4は、本発明に含まれる構成要素をより明確にするために、ボールねじリニアアクチュエータの好ましい実施形態を、いわゆる分解図で示したものである。
【0033】
図2は、ボールねじナット(2)の好ましい実施形態を示している。ボールねじナット(2)は、動力伝達部材(5)の図示横方向への移動を実現すべく、ピストンリードスクリュー(3)上で一式のベアリングボール(9)を介して回転するよう構成されたボール循環溝が形成された内側らせんボール転動面を有している。ボールねじナットはさらに、これを回転させる駆動ユニット(13)に接続されてもよい。ボールねじナット(2)の回転は、これを動力伝達部材(5)上で図示横方向に強制的に移動させることによっても生じ得る。
【0034】
図6は、らせん状溝に複数のベアリングボール(9)が挿入された本発明の外側リードスクリュー(3)を示している。外側リードスクリュー(3)は回転しないが、留め具、摩擦、又は、ここでは動力伝達部材(5)に対する楕円形の接触面として示される非円形の接触面のいずれかにより、若しくはこれらの組み合わせにより動力伝達部材(5)に対して固定されている。外側リードスクリュー(3)のねじ部はベアリングボールの入口から出口まで延びている。ボールねじナット(2)の回転方向によって、ベアリングボールの入口側と出口側は入れ替わる。ベアリングボール(9)の入口と出口は、その溝が、ボールねじナット(2)が回転した時にベアリングボール(9)が進入する導管、流路、又は走路を形成するように、内側リードスクリュー(4)に接している。
【0035】
図6は、本発明の内側リードスクリュー(4)を示している。内側リードスクリュー(4)はその外周面にらせん状の溝を有している。溝は、外側リードスクリュー(3)と組み合わされることで、ベアリングボールが通過する導管を形成する。内側リードスクリューの溝は、その溝幅がベアリングボール(9)の直径よりも僅かに大きい。内側リードスクリューは回転しないが、留め具、摩擦、又は、ここでは動力伝達部材(5)に対する楕円形の接触面として示される非円形の接触面のいずれかにより、若しくはこれらの組み合わせにより動力伝達部材(5)に対して固定されている。内側リードスクリュー(4)の溝の間隔は、外側リードスクリューの溝の間隔とは異なっていてもよい。内側リードスクリューは、外側リードスクリュー(3)の溝の出入口を通してベアリングボールを再循環させるために用いられる。本発明が組み立てられると、内側リードスクリュー及び外側リードスクリューは、ベアリングボールが転がりながら循環する連続した溝路を形成する。ベアリングボールが転がる方向は、ボールねじナット(2)の回転方向により決定される。
【0036】
図5は、内側・外側リードスクリューの溝の一構成例を示している。内側リードスクリュー(4)の溝は、ベアリングボールの直径よりも僅かに大きい溝幅になるよう徐々に傾斜している。外側リードスクリュー(3)の溝の深さはベアリングボールの直径の半分以下である。その溝には、隣接する溝との間の陸部にベアリングボールの通行が妨げられないよう、十分なクリアランスが設けられている。
【0037】
ボールねじナット(2)、外側リードスクリュー(3)、及び内側リードスクリュー(4)の構造による協働は本発明の動作にとって不可欠である。これによりボールベアリング(9)は、内側リードスクリュー(4)の回帰ルートに沿って再循環する。
【0038】
動力伝達要素(5)は、ボールねじナット(2)を回転させることにより移動する。ボールねじナット(2)を右に回転させると動力伝達要素はケース(1)から突き出す方向に移動する。ボールねじナット(2)を左に回転させると動力伝達要素(5)はケース(1)内に収納される。ボールねじナットと外側および内側の溝は、ピッチを逆にして配置してもよい。この場合、ボールねじナット(2)を左に回転させると動力伝達要素(5)がケース(1)の外に突き出し、右に回転させるとその逆となる。
【0039】
図1及び
図2に示される実施形態は電気駆動ユニットを使用する。電力と通信は適当な電力制御線(14)又は制御線を介して供給される。制御線(14)は、海中または地表の適当な場所に設置された電源に接続されている。実施形態によっては、電力制御線(14)は制御モジュール(不図示)と組み合わされ、例えば電力とデータ信号(通信)など、所望の電気信号の送信を可能とする。
【0040】
以下、再び
図1及び
図2を参照する。動力伝達部材(5)は、電気モータや他の種類の駆動部材により任意に動作させることができる可動軸、又は他の適当な可動部材を有している。これらは、地表又は海中にあるホスト装置内のバルブや他の可動部品を作動させる。実施形態によっては、海中の電動ボールねじリニアアクチュエータは後面と前面とを有するアクチュエータ本体を備えている。少なくとも1つの電気コネクタと機械的な接続部は、両方とも後面に沿って配置される。
【0041】
ボールねじリニアアクチュエータは、その用途に応じ、様々なタイプのホスト装置と組み合わせて用いることができる。例えば海中における用途では、海中のホスト装置は、様々な海中製造装置や処理装置を備えることがある。このような海中ホスト装置の構造の例としては、海中ツリー、マニホールド、ポンプ、パイプラインエンドマニホールド(PLEM)、パイプラインエンドターミネーション(PLET)、又は他の海中ホスト装置が挙げられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、ボールねじリニアアクチュエータは、コーン貫入試験装置のような海中作業に用いられる。コーン貫入試験装置は土壌状態の地質学的な調査に用いられる。このような用途において、ボールねじリニアアクチュエータは、電力や通信を供給するためのケーブルに接続されるか、又はリニアボールねじアクチュエータを動作させるためのバッテリーを備える。
【0043】
実施形態によっては、アクチュエータの機械的な連結部は、ホスト装置側の機械的な接続部であるバケツ型の従動器(a bucket receiver)に適合するサイズ・構造のバケツ型連結器(a bucket coupling)を有してもよい。例えば、バケツ型連結器、及びこれに対応するバケツ型従動器は、それぞれ、遠隔操作ビークル(ROV)用のバケツ型連結器とバケツ型従動器の形態であってよい。回転駆動部材の場合、ROV用バケツ型連結器およびバケツ型従動器間のROVインタフェースは、例えばISO13628-8やAPI17Hに説明される標準規格など、種々の協調構成に基づいて設計されてもよい。
【0044】
海中作業の性質によっては、電気制御線は、海中制御モジュールとホスト装置の電気コネクタ間を接続する電気フライングリード(EFL)の一部であってもよい。さらに、アクチュエータの電気コネクタとこれに対応するホスト装置の電気コネクタは、電動アクチュエータの単純な直線運動による液体環境下での結合および切断を容易にするため、ウェットメイト(wet-mate)コネクタとして構成されてもよい。ホスト装置に対する電動アクチュエータの設置および撤去は、通電を伴わずに実施することができる。すなわち、電動アクチュエータに対して電力を供給することなくこれをホスト装置に組み付け、またこれを取り外すことができる。
【0045】
アクチュエータの機械的な接続部は、リンクや他の適当な機構を介して、例えばバルブなどの被駆動部品と自動的に接続される駆動部材を含んでいてもよい。図示された実施形態では、リンクがホスト装置の機械的な接続部まで延び、リンクはその接続部の一部を形成している。駆動部材は、アクチュエータ内の可動部材によって直線的に移動する軸体であってもよい。
【0046】
例として、ボールねじリニアアクチュエータが海中作業に用いられる場合、電気的なインタフェースは、その後面に沿って配置された少なくとも1つの電気コネクタを有する。図示の例では、電気コネクタは、ホスト電気インタフェースの対応する電気コネクタと電気的に係合するために後面に沿って位置決めされている。例として、電気コネクタは、それぞれオス/メスコネクタにより構成されてもよく、又その逆であってもよい。
【0047】
電気コネクタ(例えばオス/メスコネクタ)は、所望の電気信号の伝送、例えば送電や、制御信号、データ信号の送受信に利用することができる。
【0048】
ボールねじリニアアクチュエータを操作するために、様々なタイプの電気コネクタ及び/又は関連部品を利用することができる。一例としてはスタブプレートコネクタである。ホスト装置の電気コネクタは、用途により、例えばホスト装置の構造的なパネルなどの固定位置に設置されてもよいが、公差補償のために一定量遊動可能であってもよい。電気コネクタはまた、電力および/またはデータ信号を伝送可能な誘導結合の形態で構築されてもよい。