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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】ステアリング装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/24 20060101AFI20240605BHJP
   B62D 5/12 20060101ALI20240605BHJP
   B62D 5/083 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
B62D5/24
B62D5/12
B62D5/083
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022536121
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2021004209
(87)【国際公開番号】W WO2022014074
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2020122422
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596148478
【氏名又は名称】クノールブレムゼ商用車システムジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】與田 敏郎
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-248425(JP,A)
【文献】特開平01-301468(JP,A)
【文献】特開2013-129215(JP,A)
【文献】特開2019-014382(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103556(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/059403(WO,A1)
【文献】特開2015-009682(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0199865(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
B62D 5/083
B62D 5/24
B62D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵軸と、伝達機構と、パワーシリンダと、ロータリバルブとを含み、
前記操舵軸は、第1軸と、第2軸と、前記第1軸と前記第2軸との間に設けられたトーションバーを備え、
前記伝達機構は、前記操舵軸の回転を操舵輪に伝達可能であり、
前記パワーシリンダは、パワーシリンダ本体部と、前記伝達機構の一部を構成するボールねじ機構のナットとしてのピストンと、第1液室と、第2液室とを備え、前記伝達機構に対し前記操舵輪を操舵させる操舵力を付与可能であり、
前記ロータリバルブは、前記トーションバーの捩じれに応じてポンプ装置から供給される作動液を前記第1液室と前記第2液室に選択的に供給可能であるステアリング装置の製造方法であって、
前記ポンプ装置から前記ロータリバルブに作動液を供給する作動液供給工程と、
前記第1軸を捩じる第1軸操作工程と、
前記作動液供給工程と前記第1軸操作工程が行われているときの、前記第1軸の捩じれ量に対する前記ステアリング装置の出力値、または前記ステアリング装置の出力値に対する前記第1軸の捩じれ量、または前記第1軸の捩じれ量と前記ステアリング装置の出力値の関係を示すステアリング装置特性データを測定する特性データ測定工程と、
前記ステアリング装置特性データを記録媒体に記録する特性データ記録工程と、
前記記録媒体を前記ステアリング装置に取り付ける記録媒体取り付け工程と、
を有する、ステアリング装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記作動液供給工程は、前記ポンプ装置から前記ロータリバルブに所定時間内に供給される作動液の流量が所定量となるように前記ポンプ装置を駆動する、ステアリング装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記ステアリング装置特性データは、前記ステアリング装置の出力値が所定値のときの前記第1軸の捩じれ量に関するデータである、ステアリング装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記ステアリング装置特性データは、前記ステアリング装置の出力値が第1所定値のときの前記第1軸の捩じれ量に関する第1データと、前記ステアリング装置の出力値が第2所定値のときの前記第1軸の捩じれ量に関する第2データを含む、ステアリング装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記ステアリング装置特性データは、前記第1軸を所定量捩じったときの前記ステアリング装置の出力値である、ステアリング装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記伝達機構は、前記第2軸と前記操舵輪との間に設けられたボールねじ機構と、前記ピストンに設けられたラック歯と、前記ラック歯と噛み合うセクタギヤであり、
前記ステアリング装置特性データは、前記セクタギヤの出力である、ステアリング装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記第1軸操作工程は、前記第1軸を時計回りに捩じる工程と、前記第1軸を反時計回りに捩じる工程と、を含み、
前記ステアリング装置特性データは、前記第1軸を時計回りに捩じったときに得られるステアリング装置の時計回り出力値と、前記第1軸を反時計回りに捩じったときに得られるステアリング装置の反時計回り出力値と、を含む、ステアリング装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記ステアリング装置特性データは、前記第1軸の中立位置と、前記伝達機構に接続される操舵輪の中立位置とのずれ量に関する情報を含む、ステアリング装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記ステアリング装置特性データは、前記第1軸の捩じれ量と前記パワーシリンダの内部の液圧との関係を示すデータ、または前記第1軸の捩じれ量と前記パワーシリンダに供給される作動液の液圧との関係を示すデータである、ステアリング装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記ステアリング装置特性データは、前記ポンプ装置の特性データを更に含む、ステアリング装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記ポンプ装置の特性データは、前記ポンプ装置が所定回転数で駆動しているときの単位時間当たりの前記ポンプ装置の吐出流量である、ステアリング装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記ポンプ装置の特性データは、前記ポンプ装置が第1所定回転数で駆動しているときの単位時間当たりの前記ポンプ装置の吐出流量である第1吐出特性データと、前記ポンプ装置が第2所定回転数で駆動しているときの単位時間当たりの前記ポンプ装置の吐出流量である第2吐出特性データとを含む、ステアリング装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記ステアリング装置に取り付けられる前記記録媒体は、バーコードまたは2次元バーコードである、ステアリング装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記ステアリング装置に取り付けられる前記記録媒体は、ICチップである、ステアリング装置の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のステアリング装置の製造方法であって、
ステアリング装置特性データ読み取り工程と、ステアリング装置特性データ反映工程と、を更に含み、
前記ステアリング装置特性データ読み取り工程は、前記記録媒体を用いて前記ステアリング装置特性データを取得する工程であって、
前記ステアリング装置特性データ反映工程は、前記ステアリング装置と共に車両に搭載され、前記第1軸に回転力を付与する電動モータを駆動制御するコントローラのメモリ装置に前記ステアリング装置特性データを記憶させる工程である、ステアリング装置の製造方法。
【請求項16】
請求項1に記載のステアリング装置の製造方法であって、
指令電流出力工程と、電動サーボユニット部特性データ測定工程と、電動サーボユニット部特性データ記録工程と、電動サーボユニット部用記録媒体取り付け工程と、を更に含み、
前記ステアリング装置は、車両に搭載された状態において、電動サーボユニット部に接続可能であり、
前記電動サーボユニット部は、前記第1軸に回転力を付与する電動モータと、前記電動モータを駆動制御するコントローラと、を含み、
前記指令電流出力工程は、前記コントローラから前記電動モータに対し所定の指令電流値を出力する工程であって、
前記電動サーボユニット部特性データ測定工程は、前記指令電流出力工程が行われているときの前記電動モータの出力値である電動サーボユニット部特性データを測定する工程であって、
前記電動サーボユニット部特性データ記録工程は、前記電動サーボユニット部特性データを電動サーボユニット部用記録媒体に記録する工程であって、
前記電動サーボユニット部用記録媒体取り付け工程は、前記電動サーボユニット部用記録媒体を前記電動サーボユニット部に取り付ける工程である、ステアリング装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載のステアリング装置の製造方法であって、
前記電動サーボユニット部は、減速機をさらに含み、
前記減速機は、前記電動モータと前記第1軸との間に設けられ、
前記電動サーボユニット部特性データ測定工程は、前記指令電流出力工程が行われているときの前記減速機の出力値を測定する工程である、ステアリング装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置として、例えば以下の特許文献1に記載されたステアリング装置が知られている。
【0003】
特許文献1のステアリング装置は、運転者の操舵トルクの入力に供する入力軸を有する入力側ステアリング装置部と、入力軸からの操舵トルクをパワーシリンダ側へ出力する出力側ステアリング装置部とを備えている。入力側ステアリング装置部は、複数のボルトを介して出力側ステアリング装置部に取付固定されている。
【0004】
例えば、別々の工場や製造元から出荷された入力側ステアリング装置部および出力側ステアリング装置部同士を組み立てる際には、入力側ステアリング装置部および出力側ステアリング装置部は、製造誤差を含む個体差を有しており、この個体差を補正した制御が難しく、上記個体差に基づく操舵力のばらつきが生じてしまう虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-9682号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、従来の実情に鑑みて案出されたもので、入力側ステアリング装置部や出力側ステアリング装置部の個体差に基づく操舵力のばらつきを抑制可能なステアリング装置を提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、その一態様として、ステアリング装置の製造方法が、第1軸の捩じれ量に対するステアリング装置の出力値、またはステアリング装置の出力値に対する第1軸の捩じれ量、または第1軸の捩じれ量とステアリング装置の出力値の関係を示すステアリング装置特性データを測定する特性データ測定工程と、ステアリング装置特性データを記録媒体に記録する特性データ記録工程と、を含む。
【0008】
本発明によれば、入力側ステアリング装置部や出力側ステアリング装置部の個体差に基づく操舵力のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態のステアリング装置の縦断面図である。
図2図1のステアリング装置の部分的な拡大断面図である。
図3】検査用入力軸の操舵トルクに対するセクタシャフトの捩じりトルクを示すグラフである。
図4】検査用入力軸の操舵トルクに対するパワーシリンダに供給される作動液の液圧を示すグラフである。
図5】検査用ポンプ装置のポンプ回転数に対する吐出流量を示すグラフである。
図6】ステアリング装置の製造方法を示す第1の実施形態のフローチャートである。
図7】第1の実施形態のステアリング装置の製造方法で用いられる検査装置の概略図である。
図8】第2の実施形態のステアリング装置の斜視図である。
図9】第2の実施形態のステアリング装置の部分的な縦断面図である。
図10】第3の実施形態のステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
図11】ステアリング装置の製造方法を示す第4の実施形態のフローチャートである。
図12】第4の実施形態のステアリング装置の製造方法で用いられる検査装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の製造方法に適用されるステアリング装置の実施形態を図面に基づき説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
(ステアリング装置の構成)
図1は、第1の実施形態のステアリング装置の縦断面図、図2は、図1のステアリング装置の電動モータ2を含む部分の部分的な拡大断面図である。図1では、説明の便宜上、操舵軸7の回転軸Z方向のうち図示せぬステアリングホイールに連係する側(図中の上側)を「一端」とし、ピストン15に連係する側(図中の下側)を「他端」として説明する。また、図3は、検査用入力軸48の操舵トルクに対するセクタシャフト5の捩じりトルクを示すグラフである。図4は、検査用入力軸48の操舵トルクに対するパワーシリンダ6に供給される作動液の液圧を示すグラフである。図5は、検査用ポンプ装置52のポンプ回転数に対する吐出流量を示すグラフである。
【0012】
ステアリング装置は、大型車両等に用いられるインテグラル型のステアリング装置であり、ステアリング装置本体1、電動モータ2およびEPSコントローラ(ECU)3から主に構成されている。
【0013】
ステアリング装置本体1は、操舵機構4と、セクタシャフト5と、パワーシリンダ6と、を備えている。
【0014】
操舵機構4は、図示せぬステアリングホイールからの回転力の入力に供するものであり、操舵軸7を有している。操舵軸7は、一部がハウジング8内に収容されており、入力軸9、中間軸10および出力軸11を備えている。入力軸9は、一端側がステアリングホイールに連係されており、運転者の操舵トルクの入力に供する。入力軸9は、他端部が中間軸10の一端側に形成された開口凹部10a内に挿入されている。中間軸10は、一端側が第1トーションバー12を介して入力軸9と相対回転可能に連結されるとともに、外周に連結される電動モータ2の駆動トルクの入力に供する。中間軸10は、出力軸11の一端側拡径部に形成された開口凹部11a内に挿入されている。出力軸11は、一端側が第2トーションバー13を介して中間軸10と相対回転可能に連結され、この中間軸10により入力される操舵トルクを、変換機構であるボールねじ機構14を介してピストン15に出力する。
【0015】
ボールねじ機構14は、他端側の外周部に螺旋溝であるボール溝14aが形成されたねじ軸としての上記出力軸11と、該出力軸11の外周側に設けられて内周部にボール溝14aに対応する螺旋溝であるボール溝14bが形成されたナットとしての上記ピストン15と、ピストン15と出力軸11との間に設けられた複数のボール14cと、から構成されている。
【0016】
中間軸10と出力軸11と間には、コントロールバルブとしての周知のロータリバルブ16が構成されている。ロータリバルブ16は、中間軸10および出力軸11の相対回転角より導き出される第2トーションバー13の捩れ量および捩れの方向に応じて車両に搭載されたポンプ装置17により供給される作動液を後述する第1、第2液室(圧力室)P1,P2へと選択的に供給する。
【0017】
セクタシャフト5は、セクタギヤ5aを有し、セクタギヤ5aが操舵軸7の他端側外周に設けられたピストン15のラック歯15aと噛み合うことにより、ピストン15の軸方向移動に伴って回動する。セクタシャフト5は、図示せぬピットマンアームを介して転舵輪に連係され、転舵に供する。
【0018】
このように、上記ボールねじ機構14、セクタシャフト5およびピットマンアームは、操舵軸7に入力された回転力(操舵力)を転舵輪の転舵力へと変換させる伝達機構を構成する。なお、ボールねじ機構14等を用いずにステアリング装置が構成される場合には、上記伝達機構として、例えばラック&ピニオン機構を構成するラックバー、ピニオン軸等を用いることができる。
【0019】
パワーシリンダ6は、ハウジング8内において摺動可能に収容された筒状のピストン15が1対の液室である第1、第2液室P1,P2を画定することによって構成されており、操舵トルクを補助するアシストトルクを生成する油圧アクチュエータである。
【0020】
電動モータ(中空モータ)2は、入力軸9に回転トルクを付与する3相交流式のブラシレスモータとして構成されている。電動モータ2は、モータロータ18aおよびモータステータ18bから構成されるモータ要素18と、該モータ要素18を収容するモータハウジング19と、を備えている。
【0021】
モータロータ18aは、入力軸9の外周部に筒状の結合部材20を介して一体回転可能に取り付けられている。モータステータ18bは、モータロータ18aの外周側に所定の隙間を介して配置されており、かつハウジング8の外部に設けられたEPSコントローラ3に電気的に接続されている。
【0022】
結合部材20は、該結合部材20の内周面に形成された溝部20aに、中間軸10の外周部に突出形成されたキー21を嵌め込んでなる周知のキー接続を介して中間軸10に固定されている。上記キー接続により、結合部材20は、中間軸10と一体に回転し、第1軸受B1と第2軸受B2とによって支持されている。
【0023】
モータハウジング19は、金属材料、例えばアルミニウム合金から形成されている。モータハウジング19は、モータ要素18や後述する第1、第2レゾルバ22,23を収容する有底筒状のハウジング本体部24と、電動モータ2側からハウジング本体部24の開口部を閉塞する第1閉塞部25と、電動モータ2と反対側から拡張部24aの開口部を閉塞する第2閉塞部26と、を備えている。
【0024】
ハウジング本体部24は、入力軸9や結合部材20を挿入可能に形成された概ね円盤状の底部24bと、該底部24bの外周縁部から操舵軸7の他端側に立ち上がる円筒状の筒部24cと、底部24bの外周縁部から操舵軸7の一端側に立ち上がる円筒状の拡張部24aと、を有している。
【0025】
筒部24cの開口部は、入力軸9や結合部材20を挿入可能に形成された概ね円盤状の第1閉塞部25によって閉塞されている。第1閉塞部25は、固定部材、例えばボルト27を介して、筒部24cの開口端面24dに取付固定されている。第1閉塞部25、底部24b、筒部24cおよび結合部材20によって囲まれた空間は、モータ要素18を収容するモータ収容部28となっている。また、第1閉塞部25は、固定部材、例えばボルト29によってアダプタ部材30に取付固定されている。すなわち、このアダプタ部材30を介して、第1閉塞部25は、ハウジング8に固定されている。
【0026】
さらに、拡張部24aの開口部は、入力軸9や結合部材20を挿入可能に形成された概ね円盤状の第2閉塞部26によって閉塞されている。第2閉塞部26は、固定部材、例えばボルト31を介して、拡張部24aの開口端面24eに取付固定されている。第2閉塞部26、底部24b、拡張部24aおよび入力軸9によって囲まれた空間は、第1トーションバー12に生じた操舵トルクの演算に供するトルクセンサ32を収容するトルクセンサ収容部33となっている。第2閉塞部26と入力軸9との間は、環状のシール部材34によって気密にシールされている。
【0027】
トルクセンサ32は、トルクセンサ収容部33内において結合部材20の外周側に設けられた第1レゾルバ22と、トルクセンサ収容部33内において入力軸9の外周側に設けられた第2レゾルバ23と、によって構成されている。
【0028】
第1レゾルバ22は、結合部材20の一端側の外周に固定された第1レゾルバロータ22aと、該第1レゾルバロータ22aの外周側に設けられ、固定部材、例えばねじ部材35によって底部24bに取付固定された第1レゾルバステータ22bと、を備えている。第1レゾルバステータ22bは、操舵軸7の回転軸Z方向においてセクタシャフト5とオーバーラップする底部24bの厚肉部24fの内周面24gに突き当てられた状態で、ねじ部材35によって底部24bに取付固定されている。第1レゾルバステータ22bは、図示せぬ出力配線を介してEPSコントローラ3に電気的に接続されている。EPSコントローラ3には、第1レゾルバ22によって検出される中間軸10の後述する中間軸回転角θaが入力される。
【0029】
第2レゾルバ23は、第1レゾルバステータ22bよりも一端側の位置で入力軸9の外周に固定された第2レゾルバロータ23aと、該第2レゾルバロータ23aの外周側に設けられ、固定部材、例えばねじ部材36によってスペーサ37を介して厚肉部24fに取付固定された第2レゾルバステータ23bと、を備えている。第2レゾルバステータ23bは、第1レゾルバステータ22bと同様に、図示せぬ出力配線を介してEPSコントローラ3に電気的に接続されている。EPSコントローラ3には、第2レゾルバ23によって検出される入力軸9の後述する入力軸回転角θhが入力される。
【0030】
第1、第2レゾルバ22,23によって構成されるトルクセンサ32は、第2レゾルバ23によって検出される入力軸9の入力軸回転角θhと、第1レゾルバ22によって検出される中間軸10の中間軸回転角θaとの差分に、第1トーションバー12の捩りバネ定数g1を乗ずることにより、操舵トルクを演算する。
【0031】
なお、第1、第2レゾルバ22,23においては、第1、第2レゾルバステータ22b,23bが「第1レゾルバロータ22aの1回転あたりの振幅数Ax<360°/(所定角θx×2)」を満足する正弦波信号および余弦波信号を出力し、各出力信号に基づいてEPSコントローラ3において入力軸9および電動モータ2等の回転角を演算する。
【0032】
第1軸受B1は、底部24bの内周縁部付近から操舵軸7の他端側に突出形成された環状の第1軸受保持部24hの内周面に設けられており、結合部材20の一端側を回転可能に支持している。
【0033】
同様に、第2軸受B2は、第1閉塞部25の内周縁部付近から第1軸受保持部24hと対向するように突出形成された環状の第2軸受保持部24iの内周面に設けられており、結合部材20の他端側を回転可能に支持している。
【0034】
ここで、以下の説明の便宜上、ステアリング装置本体1のうち、入力軸9およびモータハウジング19を含む回転軸Z方向上側の部分を「入力側ステアリング装置部1a」と定義し、中間軸10、出力軸11およびハウジング8を含む回転軸Z方向下側の部分を「出力側ステアリング装置部1b」と定義する。入力側ステアリング装置部1aと出力側ステアリング装置部1bとは、別々の工場や製造元でそれぞれ製造されて共通の出荷先に出荷され、検査場で後述のステアリング装置特性データを取得した後で、作業場で組み立てられる。
【0035】
EPSコントローラ3は、メモリ装置3aや図示せぬマイクロコンピュータ等の電子部品を備えて構成されている。メモリ装置3aには、記録媒体であるバーコード45に記録されたステアリング装置特性データが後述のバーコードリーダ、コンピュータ(PC)および通信装置を介して記録される。バーコード45は、例えば出力側ステアリング装置部1bのハウジング8の第1ハウジング39の外周面など、外部から接続可能な箇所に設けられている。また、バーコード45を用いずに、コンピュータやサーバーにステアリング装置特性データを記録し、ステアリング装置特性データを参照可能な参照情報記録媒体、例えば2次元バーコードを用いてコンピュータやサーバー上のステアリング装置特性データを参照するようにしても良い。また、バーコード45や2次元バーコードの代わりに、記憶媒体としてICチップが用いられても良い。
【0036】
ステアリング装置特性データは、ステアリング装置の最終の組立前に、検査室で出力側ステアリング装置部1bに後述の検査用ステアリングホイール47、検査用入力軸48、第1トルク計49、第2トルク計50、検査用リザーバ51および検査用ポンプ装置52(図7参照)を接続した状態で測定されたデータであって、検査用入力軸48の操舵トルクとセクタシャフト5の捩じりトルクの関係により示されたデータである。本実施形態では、ステアリング装置特性データは、検査用入力軸48の操舵トルクに対するセクタシャフト5の捩じりトルクである。
【0037】
ここで、図3を参照することにより、検査用入力軸48の操舵トルクに対するセクタシャフト5の捩じりトルクを説明する。図3では、図3の右側の曲線C1が、検査用入力軸48を時計回りに捩じったときの検査用入力軸48の捩じれ量である操舵トルクに対するセクタシャフト5の捩じりトルクを示しており、一方、図3の左側の曲線C2が、検査用入力軸48を反時計回りに捩じったときの検査用入力軸48の捩じれ量である操舵トルクに対するセクタシャフト5の捩じりトルクを示している。
【0038】
図3に示すように、第1所定量だけ検査用入力軸48を時計回りに捩じったときの第1時計回り所定操舵トルクIR1に対するセクタシャフト5の捩じりトルクは、第1時計回り所定捩じりトルクOR1となる。また、図3に示すように、第1所定量よりも大きい第2所定量だけ検査用入力軸48を時計回りに捩じったときの第2時計回り所定操舵トルクIR2に対するセクタシャフト5の捩じりトルクは、第1時計回り所定捩じりトルクOR1よりも高い第2時計回り所定捩じりトルクOR2となる。第1時計回り所定捩じりトルクOR1および第2時計回り所定捩じりトルクOR2は、車両の自動操舵制御時のレーンキープを行うのに適した比較的小さい値に設定される。
【0039】
さらに、図3に示すように、第1所定量だけ検査用入力軸48を反時計回りに捩じったときの第1反時計回り所定操舵トルクIL1に対するセクタシャフト5の捩じりトルクは、第1反時計回り所定捩じりトルクOL1となる。また、第1所定量よりも大きい第2所定量だけ検査用入力軸48を反時計回りに捩じったときの第2反時計回り所定操舵トルクIL2に対するセクタシャフト5の捩じりトルクは、第1反時計回り所定捩じりトルクOL1よりも高い第2反時計回り所定捩じりトルクOL2となる。第1反時計回り所定捩じりトルクOL1および第2反時計回り所定捩じりトルクOL2は、車両の自動操舵制御時のレーンキープを行うのに適した比較的小さい値に設定される。
【0040】
なお、図3では、検査用入力軸48の時計回りおよび反時計回りの各々について2つの所定出力値を取得する例を説明したが、検査用入力軸48の時計回りおよび反時計回りの各々について1つの所定出力値または3つ以上の所定出力値を取得するようにしても良い。
【0041】
また、図3では、第1および第2時計回り所定捩じりトルクOR1,OR2や第1および第2反時計回り所定捩じりトルクOL1,OL2が第1および第2時計回り所定操舵トルクIR1,IR2や第1および第2反時計回り所定操舵トルクIL1,IL2に対して一義的に決定されるとみなすこともできるから、ステアリング装置特性データは、セクタシャフト5の捩じりトルクに対する検査用入力軸48の操舵トルクとしても良い。つまり、ステアリング装置特性データは、第1および第2時計回り所定捩じりトルクOR1,OR2や第1および第2反時計回り所定捩じりトルクOL1,OL2に対する第1および第2時計回り所定操舵トルクIR1,IR2や第1および第2反時計回り所定操舵トルクIL1,IL2としても良い。
【0042】
また、ステアリング装置特性データは、検査用入力軸48の操舵トルクとパワーシリンダ6に供給される作動液の液圧(またはパワーシリンダ6の内部の液圧)との関係を示すデータをさらに含む。
【0043】
ここで、図4を参照することにより、検査用入力軸48の操舵トルクとパワーシリンダ6に供給される作動液の液圧との関係について説明する。図4では、図4の右側の曲線C3が、検査用入力軸48を時計回りに捩じったときの検査用入力軸48の操舵トルクに対する作動液の液圧を示しており、一方、図4の左側の曲線C4が、検査用入力軸48を反時計回りに捩じったときの検査用入力軸48の操舵トルクに対する作動液の液圧を示している。
【0044】
図4に示すように、第1所定量だけ検査用入力軸48を時計回りに捩じったときの第1時計回り所定操舵トルクIR1に対する作動液の液圧は、第1時計回り液圧PR1となる。また、図4に示すように、第1所定量よりも大きい第2所定量だけ検査用入力軸48を時計回りに捩じったときの第2時計回り所定操舵トルクIR2に対する作動液の液圧は、第2時計回り液圧PR2となる。
【0045】
さらに、図4に示すように、第1所定量だけ検査用入力軸48を反時計回りに捩じったときの第1反時計回り所定操舵トルクIL1に対する作動液の液圧は、第1反時計回り液圧PL1となる。また、第1所定量よりも大きい第2所定量だけ検査用入力軸48を反時計回りに捩じったときの第2反時計回り所定操舵トルクIL2に対する作動液の液圧は、第2反時計回り液圧PL2となる。
【0046】
また、ステアリング装置特性データは、後述の検査用ポンプ装置52の特性データを更に含む。検査場には、一般に、検査ライン毎に検査用ポンプ装置52が設けられているので、検査用ポンプ装置52の個体差に基づいた特性データを取得しておく。
【0047】
ここで、図5を参照することにより、1つの検査用ポンプ装置52の特性データについて説明する。図5に示すように、作動液の吐出量は、ポンプ回転数がRevαまでは第1の増加量で増加しており、Revα以降は、第1の増加量よりも小さい第2の増加量で徐々に増加している。検査用ポンプ装置52の特性データは、検査用ポンプ装置52が第1所定回転数Rev1で駆動しているときの単位時間当たりの検査用ポンプ装置52の吐出流量Q1である第1吐出特性データと、検査用ポンプ装置52が第2所定回転数Rev2で駆動しているときの単位時間当たりの検査用ポンプ装置52の吐出流量Q2である第2吐出特性データとを含む。本実施形態では、第1所定回転数Rev1はポンプ回転数Revαよりも小さくなっており、一方、第2所定回転数Rev2はポンプ回転数Revαよりも大きくなっている。
【0048】
なお、検査用ポンプ装置52の特性データは、検査用ポンプ装置52が第1所定回転数Rev1で駆動しているときの単位時間当たりの検査用ポンプ装置52の吐出流量Q1である第1吐出特性データのみを含んでいても良い。また、検査用ポンプ装置52の特性データは、検査用ポンプ装置52の個体差に基づく特性データでなく、検査用ポンプ装置52の形式の違いに基づく特性データであっても良い。
また、ステアリング装置特性データは、検査用入力軸48の中立位置と伝達機構の中立位置とのずれ量に関する情報を含んでも良い。
【0049】
また、EPSコントローラ3は、運転者が自動運転用スイッチをオンにしたときに駐車やレーンキープ等の車両の自動運転(自動操舵)の制御に供するADASコントローラ38に電気的に接続されている。
【0050】
ADASコントローラ38は、図外のレーダー(例えばミリ波や赤外線レーザ)からの検出信号や図外のカメラからの映像等に基づいて車両の周囲状況を把握するとともに、GPS等からの自車位置情報に基づいて自車位置を把握する。そして、ADASコントローラ38は、自動操舵時に、例えば車両のレーンキープを行う際に、上記周囲状況および自車位置に基づいて、所定のレーン内に車両を維持するための目標の操舵角となる操舵角指令θrcを演算する。また、ADASコントローラ38は、運転者が自動運転用スイッチをオンにしたときに自動運転要求信号Xを生成し、CAN通信によりEPSコントローラ3へ送信するようになっている。
【0051】
ハウジング8は、一端側が開口し他端側が閉塞されてなる筒状を呈し、第1、第2液室P1,P2を画定する第1ハウジング39と、該第1ハウジング39の一端開口部を閉塞するように設けられ、内部にロータリバルブ16を収容する第2ハウジング40と、から構成されている。第1、第2ハウジング39,40同士は、これらの外周部に適宜設けられる図示せぬ複数の固定手段、例えばボルトによって締結されている。
【0052】
第1ハウジング39の内部には、操舵軸7の回転軸Z方向に沿って形成されたパワーシリンダ本体部39aと、該パワーシリンダ本体部39aと直交するように、かつ、一部がパワーシリンダ本体部39aへと臨むように形成されたシャフト収容部39bと、が設けられている。パワーシリンダ本体部39a内には、出力軸11に連係するピストン15が収容されることで、ピストン15をもって一端側の第1液室P1と他端側の第2液室P2とが画定されている。また、シャフト収容部39b内には、軸方向一端側がピストン15に連係すると共に他端側が図示せぬピットマンアームを介して転舵輪に連係されるセクタシャフト5が収容されている。
【0053】
ピストン15およびセクタシャフト5の各外周部には、相互に噛み合い可能なラック歯15aおよびセクタギヤ5aが設けられている。ラック歯15aおよびセクタギヤ5aが噛み合うことによりピストン15の軸方向移動に伴ってセクタシャフト5が回動し、これにより、ピットマンアームが車体幅方向に引っ張られることで、転舵輪の向きが変更される。なお、この際、シャフト収容部39bには、第1液室P1内の作動液が導かれ、これにより、ラック歯15aとセクタギヤ5aとの間の潤滑が行われる。
【0054】
第2ハウジング40の内周側には、互いに重なり合う中間軸10および出力軸11が挿入される軸挿入孔40aが、一端側から他端側へと回転軸Z方向に沿って段差縮径状に貫通している。そして、一端側の大径部には出力軸11を回転可能に支持する軸受Bnが設けられている。一方、他端側の小径部には、ポンプ装置17と連通する導入ポート41と、導入ポート41より導入された液圧を各液室P1,P2に給排する給排ポート42と、該給排ポート42を介して各液室P1,P2から排出された作動液をリザーバタンク43へ排出する排出ポート44と、が設けられている。なお、給排ポート42は、出力軸11の一端側拡径部に設けられた第1給排通路L1を介して第1液室P1と連通するとともに、第1ハウジング39内部に設けられた第2給排通路L2等を介して第2液室P2と連通している。
【0055】
かかる構成から、ステアリング装置では、運転者がステアリングホイールを操舵すると、ポンプ装置17により圧送された作動液がロータリバルブ16を介して操舵方向に応じた一方側の液室P1,P2に供給されるとともに、他方側の液室P1,P2から供給量に対応する作動液(余剰分)がリザーバタンク43へと排出される。そして、当該液圧によりピストン15が駆動される結果、ピストン15に作用する液圧に基づいたアシストトルクがセクタシャフト5へと付与される。
【0056】
図6は、ステアリング装置の製造方法を示す第1の実施形態のフローチャートである。図7は、第1の実施形態のステアリング装置の製造方法で用いられる検査装置の概略図である。
【0057】
以下、図6のフローチャートを参照しながら、ステアリング装置の製造方法(検査方法)について説明する。
【0058】
まず、図7に示すように、検査室において、出力側ステアリング装置部1bの開口部46が上向きとなる姿勢で、組み立てられた状態の出力側ステアリング装置部1bを設置しておく。そして、検査用ステアリングホイール47に接続された検査用入力軸48を出力側ステアリング装置部1bに取り付け、検査用入力軸48に、該検査用入力軸48の操舵トルクを検出する第1トルク計49を取り付ける。また、セクタシャフト5に、該セクタシャフト5の捩じりトルクを検出する第2トルク計50を取り付ける。また、出力側ステアリング装置部1bに、検査用リザーバ51と、該検査用リザーバ51内の作動液を出力側ステアリング装置部1bへ吐出する検査用ポンプ装置52と、を接続する。さらに、検査用ポンプ装置52と出力側ステアリング装置部1bとの間に、検査用ポンプ装置52の吐出圧力を検出する圧力計53と、検査用ポンプ装置52からの吐出流量を検出する流量計54とを設けておく。
【0059】
そして、ステップS1の作動液供給工程において、検査用ポンプ装置52から出力側ステアリング装置部1b内のロータリバルブ16に作動液を供給する。作動液の供給量は、車両に搭載されるポンプ装置の定格流量、例えば18(L/min)である。また、作動液の供給時には、検査用ポンプ装置52の作動液の吐出圧力が圧力計53によって測定される。測定された作動液の吐出圧力は、図示せぬコンピュータへ出力される。
【0060】
そして、作動液供給工程を継続しながら、ステップS2の入力軸操作工程において、検査用ステアリングホイール47を回転させることにより、検査用入力軸48を捩じる。より詳細には、第1所定量だけ検査用入力軸48を時計回りに捩り、さらに、第1所定量よりも大きい第2所定量だけ検査用入力軸48を時計回りに捻る。続いて、第1所定量だけ検査用入力軸48を反時計回りに捩り、さらに、第1所定量よりも大きい第2所定量だけ検査用入力軸48を反時計回りに捩る。これにより、所定操舵トルクIR1,IR2,IL1,IL2(図3参照)が第1トルク計49によって測定される。計測された所定操舵トルクIR1,IR2,IL1,IL2は、図示せぬコンピュータに出力される。
【0061】
続いて、作動液供給工程および入力軸操作工程を継続しながら、ステップS3の出力値測定工程において、第2トルク計50により、セクタシャフト5の捩じりトルクを測定する。つまり、第2トルク計50により、作動液供給工程および入力軸操作工程が行われているときのセクタシャフト5の所定捩じりトルクOR1,OR2,OL1,OL2(図3参照)を測定する。計測された所定捩じりトルクOR1,OR2,OL1,OL2は、図示せぬコンピュータに出力される。
【0062】
次に、ステップS4の特性データ記録工程において、コンピュータ内に格納された所定操舵トルクIR1,IR2,IL1,IL2に対する所定捩じりトルクOR1,OR2,OL1,OL2をバーコード45に記録する。つまり、図示せぬプリンタを用いて、所定操舵トルクIR1,IR2,IL1,IL2に対する所定捩じりトルクOR1,OR2,OL1,OL2を含むバーコード45を作製する。
【0063】
続いて、ステップS5の記録媒体取り付け工程において、出力側ステアリング装置部1bの外周面にバーコード45を取り付ける。
【0064】
その後、作業場において、出力側ステアリング装置部1bに入力側ステアリング装置部1aを取り付け、これらのステアリング装置部1a,1bをEPSコントローラ3と共に車両に搭載する。
【0065】
次に、ステップS6のステアリング装置特性データ読み取り工程において、図示せぬバーコードリーダを用いて、所定操舵トルクIR1,IR2,IL1,IL2に対する所定捩じりトルクOR1,OR2,OL1,OL2を読み取る。
【0066】
そして、ステップS7のステアリング装置特性データ反映工程において、この読み取った所定操舵トルクIR1,IR2,IL1,IL2に対する所定捩じりトルクOR1,OR2,OL1,OL2を、図示せぬコンピュータおよび通信装置を介して、EPSコントローラ3のメモリ装置3aに反映させる。
[第1の実施形態の効果]
第1の実施形態では、ステアリング装置は、その一態様として、操舵軸7と、伝達機構と、パワーシリンダ6と、ロータリバルブ16とを含み、操舵軸7は、入力軸9と、出力軸11と、入力軸9と出力軸11との間に設けられた第1および第2トーションバー12,13を備え、伝達機構は、操舵軸7の回転を操舵輪に伝達可能であり、パワーシリンダ6は、パワーシリンダ本体部39aと、ピストン15と、第1液室P1と、第2液室P2とを備え、パワーシリンダ6は、伝達機構に対し操舵輪を操舵させる操舵力を付与可能であり、ロータリバルブ16は、第1および第2トーションバー12,13の捩じれに応じてポンプ装置17から供給される作動液を第1液室P1と第2液室P2に選択的に供給可能である、ステアリング装置の製造方法は、検査用ポンプ装置52からロータリバルブ16に作動液を供給する作動液供給工程と、検査用入力軸48を捩じる第1軸操作工程と、作動液供給工程と第1軸操作工程が行われているときのセクタシャフト5の捩じりトルクを測定する出力値測定工程と、検査用入力軸48の操舵トルクに対するセクタシャフト5の捩じりトルク、またはセクタシャフト5の捩じりトルクに対する検査用入力軸48の操舵トルク、または検査用入力軸48の操舵トルクとセクタシャフト5の捩じりトルクの関係を示すステアリング装置特性データを測定する特性データ測定工程と、ステアリング装置特性データをバーコード45に記録する特性データ記録工程と、バーコード45またはステアリング装置特性データを参照可能な2次元バーコードをステアリング装置に取り付ける記録媒体取り付け工程と、を有する。さらに、ステアリング装置の製造方法は、ステアリング装置特性データ読み取り工程と、ステアリング装置特性データ反映工程と、を更に含み、ステアリング装置特性データ読み取り工程は、バーコード45からステアリング装置特性データを読み取る工程、または参照情報記録媒体を用いてステアリング装置特性データを参照し、ステアリング装置特性データを取得する工程であって、ステアリング装置特性データ反映工程は、ステアリング装置と共に車両に搭載され、入力軸9に回転力を付与する電動モータ2を駆動制御するEPSコントローラ3のメモリ装置3aにステアリング装置特性データを記憶させる工程である。
【0067】
より詳細には、ステアリング装置の製造方法は、出力側ステアリング装置部1bについて、検査用入力軸48の操舵トルクに対するセクタシャフト5の捩じりトルクを示すステアリング装置特性データを測定し、バーコード45や二次元バーコードに記憶し、この記憶したステアリング装置特性データを電動モータ2の制御のためのEPSコントローラ3のメモリ装置3aに反映させる。そして、EPSコントローラ3のメモリ装置3aは、電動モータ2を制御する際にメモリ装置3aに記録されたステアリング装置特性データを参照し、これにより、セクタシャフト5に所望の捩じりトルクを付与するのに適した操舵トルクが入力軸9に作用する。従って、EPSコントローラ3は、各出力側ステアリング装置部1bの製造誤差を含む個体差を補正するように操舵トルクを入力軸9に作用させ、個体差に基づく操舵力のばらつきを抑制することができる。これにより、ステアリング装置の動作を安定化させることができる。本実施形態に係るステアリング装置は、入力軸9を含む入力側ステアリング装置部1aと、出力軸11を含む出力側ステアリング装置部1bが、別々の工場や製造元でそれぞれ製造されて共通の出荷先に出荷され、該出荷先の作業場で組み立てられる場合や、既に組み立てられた入力側ステアリング装置部1aおよび出力側ステアリング装置部1bにおいて、故障等の理由により入力側ステアリング装置部1aの交換が必要となる場合に特に有利である。
【0068】
また、第1の実施形態では、作動液供給工程は、検査用ポンプ装置52からロータリバルブ16に所定時間内に供給される作動液の流量が所定量となるように検査用ポンプ装置52を駆動する。
【0069】
より詳細には、検査用入力軸48の操舵トルクとセクタシャフト5の捩じりトルクとの相関関係が、検査用ポンプ装置52の作動液の吐出流量の影響を受け易いことから、この影響を抑制するために、作動液の流量が所定量となるように検査用ポンプ装置52を駆動する。これにより、検査用入力軸48の操舵トルクに対するセクタシャフト5の捩じりトルクが安定し、これにより、メモリ装置3aに正確なデータを反映し、操舵力のばらつきを抑制することができる。
【0070】
さらに、第1の実施形態では、ステアリング装置特性データは、セクタシャフト5の捩じりトルクが所定値のときの検査用入力軸48の操舵トルクに関するデータである。
【0071】
このため、車両の操舵制御時に、セクタシャフト5の所定の捩じりトルクに対して検査用入力軸48の操舵トルクが一義的に決定された簡潔な制御ロジックにより、該制御ロジックを有していない場合と比べて、操舵力を容易に制御することができる。この制御は、所望の捩じりトルクが予め分かっている車両の自動操舵制御時に特に有利である。
【0072】
また、第1の実施形態では、ステアリング装置特性データは、セクタシャフト5の捩じりトルクが第1時計回り所定捩じりトルクOR1のときの検査用入力軸48の第1時計回り所定操舵トルクIR1に関する第1データと、セクタシャフト5の捩じりトルクが第2時計回り所定捩じりトルクOR2のときの検査用入力軸48の第1時計回り所定操舵トルクIR1に関する第2データを含む。
【0073】
より詳細には、上記第1時計回り所定捩じりトルクOR1および第2時計回り所定捩じりトルクOR2は、車両の自動操舵制御時のレーンキープを行うのに適した比較的小さい2つの値を示しており、このような2つの値を用いることで、操舵状態の変化に柔軟に対応することができる。具体的には、ステアリング装置に要求される出力値の変化に応じて操舵トルクを適宜決定し、操舵力のばらつきの抑制を柔軟に行うことができる。
【0074】
さらに、第1の実施形態では、ステアリング装置特性データは、検査用入力軸48を所定量捩じったときのセクタシャフト5の捩じりトルクである。
【0075】
このため、車両の操舵制御時に、検査用入力軸48の所定の操舵トルクに対してセクタシャフト5の所定の捩じりトルクが一義的に決定された簡潔な制御ロジックにより、該制御ロジックを有していない場合と比べて、操舵力を容易に制御することができる。
【0076】
また、第1の実施形態では、伝達機構は、出力軸11と操舵輪との間に設けられたボールねじ機構14と、ピストン15に設けられたラック歯15aと、ラック歯15aと噛み合うセクタギヤ5aであり、ステアリング装置特性データは、セクタギヤ5aの出力である。
【0077】
より詳細には、ステアリング装置特性データは、セクタギヤ5aを有するセクタシャフト5の捩じりトルクである。セクタシャフト5の出力には、製造誤差や組立誤差を含むパワーシリンダ6やボールねじ機構14の個体差が反映されている。従って、セクタシャフト5の出力を考慮することで、ステアリング装置特性データがより正確なデータとなり、この正確なデータに基づく電動モータ2の制御により、より適切な操舵トルクが入力軸9に付与される。よって、操舵力のばらつきが適切に抑制され、ステアリング装置の動作をさらに安定化させることができる。
【0078】
さらに、第1軸操作工程は、検査用入力軸48を時計回りに捩じる工程と、検査用入力軸48を反時計回りに捩じる工程と、を含み、ステアリング装置特性データは、検査用入力軸48を時計回りに捩じったときに得られるセクタシャフト5の第1および第2時計回り所定捩じりトルクOR1,OR2と、検査用入力軸48を反時計回りに捩じったときに得られるセクタシャフト5の第1および第2反時計回り所定捩じりトルクOL1,OL2と、を含む。
【0079】
例えば、検査用入力軸48の内部に設けられた第1トーションバーをピンにより固定する際の第1トーションバーの位置ずれ等の要因により、時計回りおよび反時計回りに検査用入力軸48を同じ回転量だけそれぞれ捩じったときに、セクタシャフト5の第1および第2時計回り所定捩じりトルクOR1,OR2と第1および第2反時計回り所定捩じりトルクOL1,OL2とが異なる値(異なる大きさ)となることがある。従って、このような第1および第2時計回り所定捩じりトルクOR1,OR2と第1および第2反時計回り所定捩じりトルクOL1,OL2との相違を考慮して電動モータ2を制御することにより、時計回り時および反時計回り時の操舵力のバランスを保ち、運転者に生じる操舵の違和感を抑制することができる。
【0080】
さらに、第1の実施形態では、ステアリング装置特性データは、検査用入力軸48の中立位置と、伝達機構に接続される操舵輪の中立位置とのずれ量に関する情報を含む。
【0081】
例えば、検査用入力軸48の中立位置から検査用入力軸48を時計周りに操舵した後、反時計回りへ切り返すという操舵操作を行う際には、検査用入力軸48の中立位置と伝達機構の中立位置とが一致しないことがあり、所望の出力特性が得られないことがある。従って、検査用入力軸48の中立位置と伝達機構の中立位置とのずれ量に関する情報を考慮した制御を行うことで、検査用入力軸48を時計周りに操舵した後、反時計回りへ切り返す際に、ステアリング装置の所望の出力特性を得ることができる。
【0082】
また、第1の実施形態では、ステアリング装置特性データは、検査用入力軸48の所定操舵トルクIR1,IR2,IL1,IL2とパワーシリンダ6の内部の液圧との関係を示すデータ、または検査用入力軸48の所定操舵トルクIR1,IR2,IL1,IL2とパワーシリンダ6に供給される作動液の液圧PR1,PR2,PL1,PL2との関係を示すデータである。
【0083】
パワーシリンダ6の内部の液圧やパワーシリンダ6に供給される作動液の液圧は、検査用入力軸48の操舵トルクの大きさに基づいて制御され得るものである。従って、検査用入力軸48の所定操舵トルクIR1,IR2,IL1,IL2とパワーシリンダ6の内部の液圧やパワーシリンダ6に供給される作動液の液圧PR1,PR2,PL1,PL2との関係をデータとして取得することで、検査用入力軸48の所定操舵トルクIR1,IR2,IL1,IL2の大きさに基づいてパワーシリンダ6の内部の液圧等が変化する制御が行われる場合にも、セクタシャフト5の所望の捩じりトルクが得られる。よって、操舵力のばらつきを正確に抑制し、ステアリング装置の動作をさらに安定化させることができる。
【0084】
さらに、第1の実施形態では、ステアリング装置特性データは、検査用ポンプ装置52の特性データを更に含む。
【0085】
ステアリング装置特性データの取得は出荷先の検査場で行われるが、この検査場には、検査ライン毎に検査用ポンプ装置52が設けられている場合がある。この場合、各検査用ポンプ装置52の個体差によって、検査用ポンプ装置52からの作動液の吐出流量が異なることがある。従って、作動液の吐出流量の違いを考慮して電動モータ2を適切に制御することにより、操舵力のばらつきを正確に抑制し、ステアリング装置の動作をさらに安定化させることができる。
【0086】
また、第1の実施形態では、検査用ポンプ装置52の特性データは、検査用ポンプ装置52が所定回転数で駆動しているときの単位時間当たりの検査用ポンプ装置52の吐出流量である。
【0087】
上述の各検査用ポンプ装置52の個体差により、所定回転数で駆動しているときの単位時間当たりの各検査用ポンプ装置52の吐出流量が異なる。従って、各検査用ポンプ装置52の個体差を考慮した吐出流量をデータとして取得しておくことで、ポンプ装置17の作動液の単位時間当たりの吐出流量に応じて電動モータ2を適切に制御し、これにより、操舵力のばらつきを正確に抑制し、ステアリング装置の動作をさらに安定化させることができる。
【0088】
さらに、第1の実施形態では、検査用ポンプ装置52の特性データは、検査用ポンプ装置52が第1所定回転数Rev1で駆動しているときの単位時間当たりの検査用ポンプ装置52の吐出流量Q1である第1吐出特性データと、検査用ポンプ装置52が第2所定回転数Rev2で駆動しているときの単位時間当たりの検査用ポンプ装置52の吐出流量Q2である第2吐出特性データとを含む。
【0089】
検査用ポンプ装置52の吐出流量は、駆動装置、例えばエンジンや電動モータ2の回転数に応じて異なる。従って、検査用ポンプ装置52の回転数の違いに応じた第1および第2吐出特性データを取得しておくことで、ポンプ装置17の回転数に応じて電動モータ2を適切に制御することができる。これにより、操舵力のばらつきを正確に抑制し、ステアリング装置の動作をさらに安定化させることができる。
【0090】
また、第1の実施形態では、出力側ステアリング装置部1bに取り付けられる記録媒体または参照情報記録媒体は、バーコード45または2次元バーコードである。
【0091】
このため、出力側ステアリング装置部1bの第1ハウジング39の広い外周面に、該外周面よりも非常に小さい面積を有するバーコード45または2次元バーコードを貼り付ければ良く、例えば異なる情報を有する複数のバーコード45を用いることで、EPSコントローラ3のメモリ装置3aに多くの情報を反映させることができる。
【0092】
さらに、第1の実施形態では、出力側ステアリング装置部1bに取り付けられる記録媒体は、ICチップであっても良い。
【0093】
これにより、バーコード45や2次元バーコードよりも小さな搭載面積で多くの情報を記録することができる。
[第2の実施形態]
図8は、第2の実施形態のステアリング装置の斜視図である。図9は、第2の実施形態のステアリング装置の部分的な縦断面図である。
【0094】
第2の実施形態では、電動モータ2が、中空モータではなく、ウォームシャフト59とウォームホイール60とを噛み合わせてなるウォームギヤからなる減速機55を介して、入力軸9の周囲に設けられた接続軸56に接続されている。
【0095】
電動モータ2は、EPSコントローラ3と一体に構成されており、入力軸9等を収容する入力側ハウジング57と一体に形成されたモータ用ハウジング58内に収容されている。電動モータ2は、図示せぬモータシャフトを有しており、このモータシャフトの軸方向一端部が、ウォームシャフト59に接続されている。ウォームシャフト59の外周には、ウォーム59aが一体に形成されており、該ウォーム59aは、ウォームホイール60の斜歯部60aと噛み合っている。ウォームホイール60は、図示せぬキーを介した周知のキー接続によって接続軸56の外周部に接続されている。接続軸56は、軸方向一端面に凹部56a内を有しており、該凹部56a内には、入力軸9の軸方向他端側の一部の領域が嵌め込まれている。また、接続軸56の軸方向他端部が、雄ねじ部56bを有しており、該雄ねじ部56bは、中間軸10の軸方向一端面に設けられた開口凹部10aの雌ねじ部10bにねじ込まれている。接続軸56は、軸方向一端側の外周面に設けられた第3軸受B3と、軸方向他端側の外周面に設けられた第4軸受B4とによって回転可能に支持されている。
【0096】
トルクセンサ32Aは、第1トーションバー12が環状のトルクセンサ32Aの内部を貫通した状態で、入力軸9の外周面に固定された接続軸56の周囲に設けられている。トルクセンサ32Aは、永久磁石62と、1対の第1、第2ヨーク63,64と、1対の第1、第2集磁リング65,66と、磁気センサ67と、から主に構成されている。永久磁石62、ヨーク63,64および集磁リング65,66は、いずれも操舵軸7の回転線Zとほぼ同心円上となるように配置されている。
【0097】
永久磁石62は、磁性材料によりほぼ円筒状に形成され、接続軸56の一端部外周に取付固定された磁性部材である。永久磁石62は、該永久磁石62の周方向に沿ってN極とS極が交互に配置(着磁)されることで構成されている。
【0098】
1対のヨーク63,64は、いずれも軟磁性体によりほぼ円筒状に形成されている。このヨーク63,64は、それぞれ中間軸10側となる一端側が周方向に沿って一列に整列し、永久磁石62と径方向で対向するように設けられている。一方、他端側は、第1ヨーク63が内周側に配置され、第2ヨーク64が外周側に配置されることで、径方向に対向している。
【0099】
1対の集磁リング65,66は、両ヨーク63,64の他端側へと漏洩した永久磁石62による磁束を所定の範囲に集約するほぼ円環状のリングであり、ヨーク63,64の他端側の径方向間に配置される。集磁リング65は外周側に配置され、集磁リング66は内周側に配置されており、両者は径方向に対向している。集磁リング65,66の径方向間には、ホール素子68が配置されている。集磁リング65の周方向の所定位置には、径方向内側へ押圧されてなる集磁部65aが設けられており、一方、集磁リング66の周方向における集磁部65aと対向する位置には、径方向外部へ突出させてなる集磁部66aが設けられている。
【0100】
磁気センサ67は、集磁部65aと集磁部66aとの間の径方向隙間に収容配置されたホール素子68と、このホール素子68をトルクセンサ32Aの上方に配置された制御基板69に接続するための接続端子70と、から構成されている。磁気センサ67は、ホール素子68によるホール効果を利用することでホール素子68により集磁部65a,66aの間を通過する磁束を検出し、この磁束に応じた信号を制御基板69に出力する。これにより、制御基板69における入力軸9と中間軸10との間の相対回転角の演算や、該相対回転角に基づく操舵トルクの演算が行われる。
[第2の実施形態の効果]
第2の実施形態では、電動モータ2の回転力が、減速機55を構成するウォーム59aと斜歯部60aとの噛み合い伝達を経て、接続軸56へと伝達される。
【0101】
このように電動モータ2が減速機55を介して接続軸56に接続されたステアリング装置によっても、出力側ステアリング装置部1bの個体差に基づく操舵力のばらつきを抑制するとともに、ステアリング装置の動作を安定化させることができる。
[第3の実施形態]
図10は、第3の実施形態のステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
【0102】
第3の実施形態では、電動モータ2が、入力軸9ではなく、中間軸10に回転力を付与するように構成されている。
【0103】
中間軸10の外周部には、外周に斜歯部60aを有したウォームホイール60が固定されている。斜歯部60aは、電動モータ2の図示せぬモータシャフトと一体に回転するウォームシャフト59のウォーム59aと噛み合っている。また、中間軸10は、連携軸71を介して出力軸11に接続されている。
【0104】
出力軸11は、その先端部にピニオン11bを有しており、該ピニオン11bは、ラックバー72の外周に一体に形成されたラック72aと噛み合うことで所謂ラック&ピニオン機構を構成する。ラックバー72の両端は、2つのタイロッド73A,73Bおよび2つのナックルアーム74A,74Bを介して対応する前輪75A,75Bにそれぞれ連結されている。また、出力軸11には、第2トーションバー13の捩じれ量および捩じれ方向に基づいて、リザーバタンク76に接続されたポンプ装置17からパワーシリンダ6への作動油の供給を制御するコントロールバルブ78が設けられている。
【0105】
パワーシリンダ6は、ラックバー72の軸方向一端部とラック72aとの間に設けられている。パワーシリンダ6は、ラックバー72と一体に設けられたピストン15と、該ピストン15によって仕切られた第1液室P1および第2液室P2と、を有している。第1液室P1は第1流路77を介してコントロールバルブ78に接続されており、一方、第2液室P2は第2流路79を介してコントロールバルブ78に接続されている。
[第3の実施形態の効果]
第3の実施形態では、電動モータ2が、中間軸10に回転力を付与するように構成されている。
【0106】
このような電動モータ2を有するステアリング装置によっても、出力側ステアリング装置部1bの個体差に基づく操舵力のばらつきを抑制するとともに、ステアリング装置の動作を安定化させることができる。
[第4の実施形態]
図11は、ステアリング装置の製造方法を示す第4の実施形態のフローチャートである。図12は、第4の実施形態のステアリング装置の製造方法で用いられる検査装置の概略図である。
【0107】
第4の実施形態では、第2の実施形態の入力側ステアリング装置部1aの電動モータ2およびEPSコントローラ3を有する電動サーボユニット部80について、電動モータ2の出力値である電動サーボユニット部特性データを測定する。
【0108】
以下、図11のフローチャートを参照しながら、本実施形態におけるステアリング装置の製造方法(検査方法)について説明する。
【0109】
まず、図12に示すように、検査室において、入力軸9に、該入力軸9の操舵トルクを計測する第3トルク計81を取り付けておく。
【0110】
次に、ステップS11のモータ指令電流値送信工程において、コンピュータ82が、所定のモータ指令電流値(モータ指令トルク)を算出し、通信装置83のCAN通信によって所定のモータ指令電流値をEPSコントローラ3に送信する。
【0111】
次に、ステップS12の指令電流出力工程において、EPSコントローラ3は、電動モータ2に対し所定のモータ指令電流値を出力する。
【0112】
そして、指令電流出力工程を継続しながら、ステップS13の電動サーボユニット部特性データ測定工程において、指令電流出力工程が行われているときの電動モータ2の出力値である電動サーボユニット部特性データ、つまり所定のモータ指令電流値に対する操舵トルクを測定する。より詳細には、所定のモータ指令電流値に基づき電動モータ2に電流を通電させているときに、電動モータ2は、図示省略した減速機を介して電動サーボユニット部80の入力軸9に操舵トルクを発生させ、この操舵トルクを第3トルク計81を用いて測定する。測定された操舵トルクは、コンピュータ82へ出力され、通信装置83のCAN通信を介してEPSコントローラ3に送信される。また、電動サーボユニット部特性データ測定工程中に、指令電流出力工程が行われているときの上記減速機の出力値を測定するようにしても良い。
【0113】
次に、ステップS14の電動サーボユニット部特性データ記録工程において、所定のモータ指令電流値に対する操舵トルクを電動サーボユニット部用バーコード84に記録する。つまり、図示せぬプリンタを用いて、所定のモータ指令電流値に対する操舵トルクを含む電動サーボユニット部用バーコード84を作製する。
【0114】
そして、ステップS15の電動サーボユニット部用記録媒体取り付け工程において、電動サーボユニット部用バーコード84を電動サーボユニット部80のEPSコントローラ3に取り付ける。なお、電動サーボユニット部用バーコード84の代わりに、所定のモータ指令電流値に対する操舵トルクを参照可能な電動サーボユニット部用2次元バーコードを用いても良い。また、電動サーボユニット部用バーコード84や電動サーボユニット部用2次元バーコードの代わりに、ICチップを用いても良い。
【0115】
次に、ステップS16の電動サーボユニット部特性データ反映工程において、車両を統合制御する統合コントローラに、所定のモータ指令電流値に対する操舵トルクを反映する。
[第4の実施形態の効果]
第4の実施形態では、ステアリング装置の製造方法は、指令電流出力工程と、電動サーボユニット部特性データ測定工程と、電動サーボユニット部特性データ記録工程と、電動サーボユニット部用記録媒体取り付け工程と、を更に含み、ステアリング装置は、車両に搭載された状態において、電動サーボユニット部に接続可能であり、電動サーボユニット部は、入力軸9に回転力を付与する電動モータ2と、電動モータ2を駆動制御するEPSコントローラ3と、を含み、指令電流出力工程は、EPSコントローラ3から電動モータ2に対し所定の指令電流値を出力する工程であって、電動サーボユニット部特性データ測定工程は、指令電流出力工程が行われているときの電動モータ2の出力値である電動サーボユニット部特性データを測定する工程であって、電動サーボユニット部特性データ記録工程は、電動サーボユニット部特性データを電動サーボユニット部用バーコード84に記録する工程であって、電動サーボユニット部用記録媒体取り付け工程は、電動サーボユニット部用バーコード84または電動サーボユニット部特性データを参照可能な電動サーボユニット部用2次元バーコードを電動サーボユニット部80に取り付ける工程である。
【0116】
より詳細には、出力側ステアリング装置部1bだけでなく、入力側ステアリング装置部1aにも個体差が存在する。つまり、入力側ステアリング装置部1aの電動サーボユニット部80にも、電動モータ2の機械的特性の差や、電流センサのばらつきに起因する電動サーボユニット部80の出力特性の差を含む個体差が存在する。従って、このような個体差を含む電動サーボユニット部特性データを、車両を統合制御する統合コントローラに反映させることにより、入力側ステアリング装置部1aの個体差に基づく操舵力のばらつきを抑制することができる。これにより、ステアリング装置の動作を安定化させることができる。
【0117】
また、本実施形態では、電動サーボユニット部80は、減速機をさらに含み、減速機は、電動モータ2と入力軸9との間に設けられ、電動サーボユニット部特性データ測定工程は、指令電流出力工程が行われているときの減速機の出力値を測定する工程である。
【0118】
より詳細には、減速機にも、機械的特性の差を含む個体差が存在しており、このような個体差を含む出力値を統合コントローラに反映させることにより、減速機の個体差に基づく操舵力のばらつきを抑制することができる。これにより、ステアリング装置の動作を安定化させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12