(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】吸収体製造装置及び吸収体製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240605BHJP
【FI】
A61F13/15 370
A61F13/15 380
A61F13/15 390
A61F13/15 321
(21)【出願番号】P 2022538676
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2021025249
(87)【国際公開番号】W WO2022019094
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2020123745
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】100114502
【氏名又は名称】山本 俊則
(72)【発明者】
【氏名】島田 崇博
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/097988(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する円筒状の外周面を有し、
回転中心線が水平に延在するように配置され、前記外周面を介して外側から内側に向かって空気を吸引するように構成され、前記外周面に基材を沿わせて搬送する搬送ドラムと、
前記搬送ドラムの前記外周面に対向する散布口を有し、前記散布口から粉粒状の吸収性物質を吐出して、前記搬送ドラムの前記外周面に沿って搬送されている前記基材に
、前記吸収性物質のみが捕捉されるように前記吸収性物質を散布する散布装置と、
前記散布装置のうち少なくとも前記散布口の位置を変更する散布位置変更装置と、
前記吸収性物質が前記搬送ドラムの前記外周面に散布されている範囲を検出する検出装置と、
前記検出装置によって検出される前記吸収性物質の散布位置又は散布状態を監視しながら、前記散布位置変更装置を制御して、前記基材に前記吸収性物質が散布される
前記散布位置を制御する
制御装置と、
を備え
、
前記制御装置は、
前記搬送ドラムの前記回転中心線に垂直かつ前記散布位置を通る直線が水平面となす角度をθとすると、前記角度θが0°≦θ≦60°を満たす所定範囲内に収まるように前記散布位置変更装置を制御する、吸収体製造装置。
【請求項2】
前記
制御装置は、前記角度θの前記所定範囲内にθ=45°が含まれるように、前記散布位置
変更装置を制御する、請求項
1に記載の吸収体製造装置。
【請求項3】
製造条件の入力を受け付ける操作装置と、
前記製造条件に対応付けて散布位置情報を記憶する記憶装置と、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記操作装置に入力された前記製造条件に対応つけて記憶されている前記散布位置情報を前記記憶装置から読み出し、読み出した前記散布位置情報が示す最適散布位置に前記吸収性物質が散布されるように、前記散布位置変更装置を制御する、請求項1
又は2に記載の吸収体製造装置。
【請求項4】
回転する円筒状の外周面を有し、回転中心線が水平に延在するように配置され、前記外周面を介して外側から内側に向かって空気を吸引するように構成された搬送ドラムの回転する
前記外周面に
基材を沿わせて搬送する搬送工程と、
散布位置変更装置を用いて前記搬送ドラムの前記外周面に対向する
位置を変更できるように構成された散布口から粉粒状の吸収性物質を吐出して、前記搬送ドラムの前記外周面に沿って搬送されている前記基材に
、前記吸収性物質のみが捕捉されるように前記吸収性物質を散布する散布工程と、
を備え、
前記散布工程において、
前記吸収性物質が前記搬送ドラムの前記外周面に散布されている範囲を検出する検出装置を用いて、前記吸収性物質の散布位置又は散布状態を監視しながら、前記搬送ドラムの前記回転中心線に垂直かつ前記散布位置を通る直線が水平面となす角度をθとすると、前記角度θが0°≦θ≦60°を満たす所定範囲内に収まるように前記散布位置変更装置を制御して、前記基材に前記吸収性物質が散布される
前記散布位置を制御する、吸収体製造方法。
【請求項5】
前記基材は、
前記搬送ドラムの前記外周面に沿わせて搬送する通気性を有する支持シートと、
前記支持シートの上に、粉砕されダクトにより搬送されたパルプが所定パターンに吸引されて積繊されたパルプ層と、
を含み、
前記散布工程において、前記パルプ層に前記吸収性物質が散布される、請求項
4に記載の吸収体製造方法。
【請求項6】
前記基材は、前記搬送ドラムの前記外周面に沿わせて搬送する不織布シートを含み、
前記散布工程において、前記不織布シートの一方主面に前記吸収性物質が散布され、
前記搬送工程において、前記不織布シートは、前記一方主面の少なくとも一部を構成し前記吸収性物質が入り込むため空隙を有する嵩高構造を含んでいる、請求項
4に記載の吸収体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体製造装置及び吸収体製造方法に関し、詳しくは、基材に吸収性物質を散布して吸収体を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、使い捨てパンツ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に、液体を吸収し保持することが可能な吸収性物質を含んでいる吸収体が用いられている。
【0003】
吸収体は、例えば、
図6の概略構成図に示す吸収体製造装置を用いて製造する。
図6に示すように、回転する搬送ドラム104の外周面141に沿って基材101が搬送される。搬送ドラム104は、外周面141を介して外側から内側に向かって空気を吸引するように構成されている。粉粒状の吸収性物質103が散布装置のタンク105に貯留され、少しずつ、搬送ドラム104に向かって落下する。吸収性物質8が落下する領域104を基材101が通過するときに、基材101に吸収性物質8が散布される。吸収性物質8が散布された基材101の上に被覆シート102が重ねられ、超音波ホーン193によって被覆シート102と基材101とが互いに超音波接合されて、吸収体120が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように搬送ドラムで搬送されている基材に吸収性物質を散布して吸収体を製造する場合、基材に到達した吸収性物質を捕捉するように吸引圧を調整する。
【0006】
しかしながら、吸収性物質の到達位置(散布位置)が適切でない場合、吸収性物質が基材に衝突して跳ね返り、吸引圧を調整しても吸収性物質の飛び散りを抑制できないことがある。
【0007】
また、例えば搬送ドラムの回転速度を上げると、ドラムの回転方向に生じる気流によって、吸収性物質の到達位置(散布位置)にずれが生じることにより、吸収性物質が基材に衝突して跳ね返り、吸引圧を調整しても吸収性物質の飛び散りを抑制できないことがある。
【0008】
かかる実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、吸収性物質を基材に散布する際に、吸収性物質の飛び散りを抑制できる吸収体製造装置及び吸収体製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した吸収体製造装置を提供する。
【0010】
吸収体製造装置は、(a)回転する円筒状の外周面を有し、回転中心線が水平に延在するように配置され、前記外周面を介して外側から内側に向かって空気を吸引するように構成され、前記外周面に基材を沿わせて搬送する搬送ドラムと、(b)前記搬送ドラムの前記外周面に対向する散布口を有し、前記散布口から粉粒状の吸収性物質を吐出して、前記搬送ドラムの前記外周面に沿って搬送されている前記基材に、前記吸収性物質のみが捕捉されるように前記吸収性物質を散布する散布装置と、(c)前記散布装置のうち少なくとも前記散布口の位置を変更する散布位置変更装置と、(d)前記吸収性物質が前記搬送ドラムの前記外周面に散布されている範囲を検出する検出装置と、(e)前記検出装置によって検出される前記吸収性物質の散布位置又は散布状態を監視しながら、前記散布位置変更装置を制御して、前記基材に前記吸収性物質が散布される前記散布位置を制御する制御装置と、を備える。
【0011】
上記構成によれば、吸収性物質を基材に散布する際に吸収性物質の飛び散りが抑制されるように、基材に吸収性物質が散布される散布位置を制御できる。
【0012】
上記構成において、搬送ドラムの外周面が下向きに移動する領域に吸収性物質が散布されてもよいし、搬送ドラムの外周面が上向きに移動する領域に吸収性物質が散布されてもよい。
【0013】
前記制御装置は、前記搬送ドラムの前記回転中心線に垂直かつ前記散布位置を通る直線が水平面となす角度をθとすると、前記角度θが0°≦θ≦60°を満たす所定範囲内に収まるように前記散布位置変更装置を制御する。
【0014】
この場合、散布された吸収性物質を基材に捕捉することが容易である。
【0015】
なお、前記角度θは、後述する実施例1、2に示した角度θのみならず、後述する変形例1に示した角度θ'も含む。
【0016】
好ましくは、前記制御装置は、前記角度θの前記所定範囲内にθ=45°が含まれるように、前記散布位置変更装置を制御する。
【0017】
この場合、散布された吸収性物質を基材に捕捉することがより容易である。
【0018】
好ましくは、(f)製造条件の入力を受け付ける操作装置と、(g)前記製造条件に対応付けて散布位置情報を記憶する記憶装置と、をさらに備える。前記制御装置は、前記操作装置に入力された前記製造条件に対応つけて記憶されている前記散布位置情報を前記記憶装置から読み出し、読み出した前記散布位置情報が示す最適散布位置に前記吸収性物質が散布されるように、前記散布位置変更装置を制御する。
【0019】
この場合、吸収性物質の散布位置の制御が容易である。
【0020】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した吸収体製造方法を提供する。
【0021】
吸収体製造方法は、(i)回転する円筒状の外周面を有し、回転中心線が水平に延在するように配置され、前記外周面を介して外側から内側に向かって空気を吸引するように構成された搬送ドラムの回転する前記外周面に基材を沿わせて搬送する搬送工程と、(ii)散布位置変更装置を用いて前記搬送ドラムの前記外周面に対向する位置を変更できるように構成された散布口から粉粒状の吸収性物質を吐出して、前記搬送ドラムの前記外周面に沿って搬送されている前記基材に、前記吸収性物質のみが捕捉されるように前記吸収性物質を散布する散布工程と、を備える。前記散布工程において、前記吸収性物質が前記搬送ドラムの前記外周面に散布されている範囲を検出する検出装置を用いて、前記吸収性物質の散布位置又は散布状態を監視しながら、前記搬送ドラムの前記回転中心線に垂直かつ前記散布位置を通る直線が水平面となす角度をθとすると、前記角度θが0°≦θ≦60°を満たす所定範囲内に収まるように前記散布位置変更装置を制御して、前記基材に前記吸収性物質が散布される前記散布位置を制御する。
【0022】
上記方法によれば、吸収性物質を基材に散布する際に吸収性物質の飛び散りが抑制されるように、基材に吸収性物質が散布される散布位置を制御できる。
【0023】
好ましい一態様において、前記基材は、(a)前記搬送ドラムの前記外周面に沿わせて搬送する通気性を有する支持シートと、(b)前記支持シートの上に、粉砕されダクトにより搬送されたパルプが所定パターンに吸引されて積繊されたパルプ層と、を含む。前記散布工程において、前記パルプ層に前記吸収性物質が散布される。
【0024】
好ましい他の態様において、前記基材は、前記搬送ドラムの前記外周面に沿わせて搬送する不織布シートを含む。前記散布工程において、前記不織布シートの一方主面に前記吸収性物質が散布される。前記搬送工程において、前記不織布シートは、前記一方主面の少なくとも一部を構成し前記吸収性物質が入り込むため空隙を有する嵩高構造を含んでいる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、吸収性物質を基材に散布する際に、吸収性物質の飛び散りを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は吸収体製造装置の略図である。(実施例1)
【
図2】
図2は吸収体製造装置の要部略図である。(実施例1)
【
図3】
図3は吸収体製造装置のブロック図である。(実施例1)
【
図4】
図4は吸収体製造装置の略図である。(実施例2)
【
図5】
図5は散布位置の説明図である。(変形例1)
【
図6】
図6は吸収体製造装置の概略構成図である。(従来例1)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
<実施例1> 実施例1の吸収体製造装置10及び吸収体製造方法について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、吸収体製造装置10の構成を示す略図である。
図2は、吸収体製造装置10の要部略図である。
図1及び
図2に示すように、吸収体製造装置10は、搬送ドラム12の周りに、パルプ層2bを形成するためのダクト22と、形成されたパルプ層2bに粉粒状の吸収性物質8を散布する散布装置30とが配置されている。搬送ドラム12は矢印12rで示す方向に搬送し、第1及び第2のシート2a,4が矢印2x,4xで示す方向に搬送され、吸収体6が矢印6xで示す方向に搬送される。
【0030】
搬送ドラム12は、円筒状の外周面12sを有し、回転中心線12xが水平に延在するように配置される。搬送ドラム12の外周面12sは通気性を有し、例えば、外周面12sの所定領域に多数の吸引孔(図示せず)が形成されている。搬送ドラム12の内部に不図示の吸引ボックが配置され、所定範囲(例えば、搬送ドラム12の上半分の略180°の範囲)において、搬送ドラム12の外周面12sを介して外側から内側に向かって空気を吸引するように構成されている。
【0031】
搬送ドラム12の外周面12sには、第1の案内ロール14を介して、第1のシート2aが巻き掛けられ、第1のシート2aは搬送ドラム12の外周面12sに沿って搬送される。
【0032】
ダクト22は、一方端に、搬送ドラム12の外周面12sに対向する開口24を有し、他方端に粉砕機20が接続され、粉砕機20で粉砕されたパルプ(図示せず)がダクト22内を通って開口24まで搬送される。粉砕されたパルプは、開口24から排出されると、搬送ドラム12の外周面12sに沿って搬送されている第1のシート2aの上に所定パターンに吸引され、積繊されたパルプ層2b(
図2参照)を形成する。第1のシート2a及びパルプ層2bは基材2であり、一体となって搬送される。第1のシート2aは、パルプ層2bを支持する支持シート2aである。
【0033】
散布装置30は、搬送ドラム12の外周面12sに対向する散布口32(
図2参照)を有し、散布口32から、液体を吸収し保持することが可能な粉粒状の吸収性物質8(
図2参照)を吐出する。吸収性物質8は、例えば、粉状や粒状のSAP(Superabsorbent polymer、高吸水性高分子)である。散布口32から吐出された粉粒状の吸収性物質8は、パルプ層2bに散布される。散布装置30は、適宜に構成すればよく、例えば、複数種類の吸収性物質を混合して吐出するように構成してもよい。
【0034】
粉粒状の吸収性物質8が散布されたパルプ層2bの上に、第2の案内ロール16及び圧縮ロール17を介して第2のシート4が重ねられて、第1のシート2aと第2のシート4との間に、吸収性物質8が散布されたパルプ層2bが挟まれた吸収体6が形成される。吸収体6は、搬送ドラム12と圧縮ロール17との間を通過するときに厚み方向に圧縮された後、第3の案内ロール18を介して後工程に搬送される。
【0035】
図3は、吸収体製造装置10のブロック図である。
図3に示すように、吸収体製造装置10は、吸収体製造装置10全体の動作の制御を統括する制御装置50に、搬送ドラム12を回転駆動する搬送用モータ52と、吸引用モータ54と、散布装置30を駆動する散布用モータ56と、吸収体製造装置10を操作するための操作装置58とが接続されている。さらに、後述する散布位置変更装置60、検出装置62、及び記憶装置64が制御装置50に接続されている。制御装置50は、例えば、シーケンサ等の制御用コンピュータである。
【0036】
図1に示すように、粉粒状の吸収性物質8の散布位置は、角度θによって定義できる。角度θは、搬送ドラム12の回転中心線12xに垂直、かつ、散布位置内の点Pを通る直線Lと水平面Hとがなす角度である。吸収性物質8の散布位置、すなわち角度θは、0°≦θ≦60°を満たす所定範囲内が好ましく、θ=45°が最も好ましい。
【0037】
吸収体製造装置10は、吸収性物質8の散布位置を制御する散布位置制御手段を備え、吸収体6の製造条件に応じて、粉粒状の吸収性物質8の散布位置を制御できるように構成されている。
【0038】
例えば、散布位置制御手段は、散布装置30の散布口32の位置、又は、散布装置30の散布口32から吸収性物質8を吐出する吐出角度を制御する。この場合、散布位置制御手段は、(a)粉粒状の吸収性物質8の散布位置を変更する散布位置変更装置60(
図3参照)と、(b)吸収性物質8の散布位置又は散布状態を検出する検出装置62(
図3参照)と、(c)制御装置50とを含む。
【0039】
散布位置変更装置60は、搬送ドラム12の外周面12sに対する散布装置30の散布口32の位置、又は、搬送ドラム12の外周面12sに対して散布装置30の散布口32から吸収性物質8を吐出する吐出角度を変更する。散布装置30の散布口32の位置を変更する場合、散布位置変更装置60は、散布装置30のうち少なくとも散布口32を、
図1に示す上下方向Z及び/又は左右方向Y移動させるように構成してもよいし、上下方向Z及び左右方向Yと交差する斜め方向に移動させるように構成してもよいし、搬送ドラム12の周りを円弧状に移動させるように構成してもよい。
【0040】
検出装置62は、例えば、吸収性物質8の散布位置とその周りを撮像するカメラや、吸収性物質8の散布位置近傍を通過するセンサ光によって吸収性物質8が散布されている範囲(例えば、前述の吸収性物質8の散布位置の角度θ)を検出するセンサである。
【0041】
制御装置50は、検出装置62によって検出される吸収性物質8の散布位置又は散布状態を監視しながら、吸収性物質8の散布位置の角度θが0°≦θ≦60°を満たす所定範囲内になるように、散布位置変更装置60を制御する。
【0042】
例えば、搬送ドラム12の回転速度がV1のときに、吸収性物質8の散布位置の角度θが45°以下になるように、制御装置50は散布位置変更装置60を制御する。
【0043】
搬送ドラム12の回転速度がV2(V2>V1)に変更されて、吸収性物質8の散布位置の角度θが30°以下に低下すると、制御装置50は、吸収性物質8の散布位置の角度θが45°以下になるように散布位置変更装置60を制御する。
【0044】
このように、散布位置制御手段によって吸収性物質8の散布位置を制御することによって、吸収性物質8を基材2に散布する際の吸収性物質8の飛び散りを抑制でき、吸収性物質8の散布状態が安定する。
【0045】
散布位置制御手段は、吸収体6の製造条件に応じて、吸収性物質8の散布位置を自動制御してもよい。
【0046】
この場合、散布位置制御手段は、例えば、吸収体6の製造条件と対応付けて吸収性物質8の最適な散布位置、すなわち散布位置情報を予め記憶している記憶装置64(
図3参照)を含む。吸収体6の製造条件は、例えば、搬送ドラム12の回転速度や、散布する吸収性物質8の種類や散布量や散布パターン、吸収性物質8を散布する基材の種類(例えば、粉砕されたパルプ等が積繊されたフラッフ、嵩高に加工された不織布シート)や特性(例えば、厚み、密度)等である。
【0047】
散布位置制御手段の制御装置50は、操作装置58が搬送ドラム12の回転速度などの製造条件の入力を受け付けると、入力を受け付けた製造条件に対応付けて予め記憶されている散布位置情報を記憶装置64から読み出し、読み出した散布位置情報が示す最適な散布位置に吸収性物質8が散布されるように、検出装置62によって検出される吸収性物質8の散布位置又は散布状態を監視しながら、散布位置変更装置60を制御する。
【0048】
このように、吸収体6の製造条件に応じて吸収性物質8の散布位置を自動制御すると、吸収体6の製造条件の変更が容易になる。
【0049】
散布位置制御手段は、操作装置58によって散布位置を手動で制御できるように構成してもよい。
【0050】
次に、吸収体製造装置10を用いる実施例1の吸収体製造方法について説明する。
【0051】
実施例1の吸収体製造方法は、(i)基材2を搬送ドラム12の回転する外周面12sに沿わせて搬送する搬送工程と、(ii)前記搬送ドラム12の前記外周面12sに対向する散布口32から粉粒状の吸収性物質8を吐出して、前記搬送ドラム12の前記外周面12sに沿って搬送されている前記基材2に前記吸収性物質8を散布する散布工程と、を備える。前記散布工程において、前記基材2に前記吸収性物質8が散布される散布位置を制御する。
【0052】
上記方法によれば、粉粒状の吸収性物質8を基材2に散布する際に吸収性物質8の飛び散りが抑制されるように、吸収性物質8の散布位置を制御できる。
【0053】
詳しくは、前記搬送ドラムの前記外周面は通気性を有する。前記基材2は、(a)前記搬送ドラム12の前記外周面12sに沿わせて搬送する通気性を有する支持シート2aと、(b)前記支持シート2aの上に、粉砕されダクト22により搬送されたパルプが所定パターンに吸引されて積繊されたパルプ層2bと、を含む。前記散布工程において、前記パルプ層2bに前記吸収性物質8が散布される。
【0054】
<実施例2> 基材として不織布を用いる実施例2の吸収体製造装置10a及び吸収体製造方法について、
図4を参照しながら説明する。以下では、実施例1と同様の構成部分には同じ符号を用い、実施例1との相違点を中心に説明する。
【0055】
図4に示すように、実施例2の吸収体製造装置10aは、実施例1と同様に、搬送ドラム12のまわりに、散布装置31が配置されている。
【0056】
実施例1と異なり、搬送ドラム12の外周面12sに不織布シート3を沿わせて搬送し、不織布シート3の一方主面3sに粉粒状の吸収性物質8を散布する。不織布シート3は、他方主面3tが搬送ドラム12の外周面12sに支持される。
【0057】
不織布シート3は、一方主面3sの少なくとも一部を構成し粉粒状の吸収性物質8が入り込むため空隙を有する嵩高構造3kを、予め含んでいる。例えば、不図示の起毛装置によって、不織布シート3の一方主面3sに沿って起毛させて、嵩高構造3kを形成する。不織布シート3には、適宜な種類の不織布を用いればよいが、例えば、エアスルー加工された不織布を用いる。不織布シート3は、複数枚の不織布が貼り合わされた複合シートでもよい。
【0058】
散布装置31は、実施例1と同様に、搬送ドラム12の外周面12sに対向する不図示の散布口から、粉粒状の吸収性物質8を吐出する。散布装置31は、適宜に構成すればよいが、例えば複数種類の吸収性物質を混合して吐出するように構成する。吐出された吸収性物質8は、搬送ドラム12によって搬送されている不織布シート3の一方主面3sに散布される。散布された吸収性物質8の少なくとも一部は、不織布シート3の一方主面3sから、不織布シート3の嵩高構造3kの内部に入り込む。
【0059】
搬送ドラム12の外周面12sを介して外側から内側に向かって空気を吸引する構成でなくても、散布された吸収性物質8は不織布シート3の嵩高構造3kの内部に入り込むが、搬送ドラム12の外周面12sが通気性を有し、搬送ドラム12の外周面12sを介して外側から内側に向かって空気を吸引するように構成すると、散布された吸収性物質8が不織布シート3の嵩高構造3kの内部に入り込みやすいため、好ましい。
【0060】
吸収性物質8が散布された不織布シート3に、第1の案内ロール16a及び圧縮ロール17aを介して被覆シート5が重ねられる。被覆シート5の不織布シート3に対向する主面には、圧縮ロール17aよりも搬送方向上流側に配置された第1の接着剤塗布装置40によって、予め接着剤が塗布される。不織布シート3と被覆シート5とは、搬送ドラム12と圧縮ロール17aとの間を通過するときに圧縮され、吸収性物質8が散布された不織布シート3の一方主面3sに被覆シート5が接着された吸収体7が形成される。
【0061】
例えば、被覆シート5の幅は不織布シート3の幅より大きく、不織布シート3の幅方向一方側又は両側に被覆シート5が食み出るように、被覆シート5が不織布シート3に重ねられる。吸収体7は、被覆シート5の不織布シート3から食み出た部分に、第2の接着剤塗布装置42によって接着剤が塗布される。次いで、折り装置44によって、被覆シート5の不織布シート3から食み出た部分が、不織布シート3の他方主面3tに重なるように折り曲げられる。次いで、矢印46m,46nで示す方向一対の圧縮ロール46p,46qの間を通過するときに、厚み方向に圧縮される。
【0062】
被覆シート5が不織布シート3の幅方向に食み出ないように、被覆シート5を不織布シート3に重ねて吸収体7を製造してもよい。
【0063】
実施例2の吸収体製造装置10aは、実施例1の吸収体製造装置10と同様に、吸収性物質8の散布位置を制御する散布位置制御手段を備え、吸収性物質8の散布位置を制御できるように構成されている。そのため、吸収性物質を基材に散布する際に、吸収性物質の飛び散りを抑制できる。
【0064】
次に、吸収体製造装置10aを用いる実施例2の吸収体製造方法について説明する。
【0065】
実施例2の吸収体製造方法は、実施例1の吸収体製造方法と同じ搬送工程と散布工程とを備え、前記散布工程において、前記基材に前記吸収性物質が散布される散布位置を制御する。ただし、実施例1の吸収体製造方法と異なり、前記基材3は、前記搬送ドラム12の前記外周面12sに沿わせて搬送する不織布シート3を含む。前記散布工程において、前記不織布シート3の一方主面3sに前記吸収性物質8が散布される。前記搬送工程において、前記不織布シート3は、前記一方主面3sの少なくとも一部を構成し前記吸収性物質8が入り込むため空隙を有する嵩高構造3kを含んでいる。
【0066】
<変形例1>
図5は、散布位置の説明図である。
図5に示すように、実施例1及び2では、矢印12rで示す方向に回転する搬送ドラム12の外周面12sが下向きに移動する領域(搬送ドラム12の回転中心線12xに垂直、かつ、散布位置内の点Pを通る直線Lと水平面Hとがなす角度をθとすると、例えば、0°≦θ≦60°を満たす所定範囲内)に吸収性物質が散布される場合を例示したが、搬送ドラム12の外周面12sが上向きに移動する領域に吸収性物質が散布されてもよい。
【0067】
搬送ドラム12の外周面12sが上向きに移動する領域に吸収性物質が散布される場合、実施例1、2と同様に、粉粒状の吸収性物質の散布位置は、角度θ'によって定義できる。角度θ'は、搬送ドラム12の回転中心線12xに垂直、かつ、散布位置内の点P'を通る直線L'と水平面Hとがなす角度である。吸収性物質の散布位置、すなわち角度θ'は、0°≦θ'≦60°を満たす所定範囲内が好ましく、θ'=45°が最も好ましい。
【0068】
<まとめ> 以上に説明したように、吸収性物質8の散布位置を制御することによって、吸収性物質8を基材2,3に散布する際に、吸収性物質8の飛び散りを抑制できる。
【0069】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0070】
例えば、吸収性物質8は、間欠的に散布してもよい。この場合、吸収性物質8が散布されていない領域で吸収体6,7を切断すると、吸収性物質8がこぼれない吸収体6,7の個片を形成できる。
【0071】
また、実施例1の第1のシート2a及び/又は第2のシート4の幅方向一方側又は両側が折り返された吸収体6を製造しても構わない。
【符号の説明】
【0072】
2 基材
2a 第1のシート(支持シート)
2b パルプ層
3 不織布シート(基材)
3k 嵩高構造
3s 一方主面
5 被覆シート
6,7 吸収体
8 吸収性物質
10,10a 吸収体製造装置
12 搬送ドラム
12s 外周面
12x 回転中心線
22 ダクト
24 開口
30,31 散布装置
32 散布口
50 制御装置(散布位置制御手段)
58 操作装置(散布位置制御手段)
60 散布位置変更装置(散布位置制御手段)
62 検出装置(散布位置制御手段)
64 記憶装置(散布位置制御手段)