(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】セルが電気的に接続される溶接なしコネクタ及び該コネクタを含むリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/581 20210101AFI20240605BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20240605BHJP
H01M 50/524 20210101ALI20240605BHJP
H01M 50/522 20210101ALI20240605BHJP
H01M 50/517 20210101ALI20240605BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20240605BHJP
【FI】
H01M50/581
H01M50/505
H01M50/524
H01M50/522
H01M50/517
H01M50/507
(21)【出願番号】P 2022539221
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 CN2020107304
(87)【国際公開番号】W WO2021135224
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】201911397763.3
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521437965
【氏名又は名称】ホーフェイ ゴション ハイテク パワー エナジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】張雅
(72)【発明者】
【氏名】程騫
(72)【発明者】
【氏名】蔡毅
(72)【発明者】
【氏名】李晨
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-105700(JP,A)
【文献】特開2013-206844(JP,A)
【文献】特開2014-110139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバー及び接続プレートを含み、前記バスバーは、接続プレートに係止可能であり、前記接続プレートは、バックプレート及びバックプレートの一側に間隔を隔てて固設された係止柱を含み、隣接する係止柱の間にバスバーと係止する溝が形成され、前記係止柱の外周又は溝の内側壁に熱分解材料層が塗布され、前記熱分解材料層は、感熱性樹脂及び変性材料で複合形成され、前記バックプレート及び係止柱は、いずれも高熱伝導性絶縁材料で製造され
、セルに熱暴走が発生した際に、前記熱分解材料層中の感熱性樹脂が熱分解され、タブと前記バスバーとの接続が遮断される、セルが電気的に接続される溶接なしコネクタ。
【請求項2】
前記熱分解材料層中の感熱性樹脂の質量百分率は、70%~95%であり、残部は、変性材料であり、前記感熱性樹脂は、ポリカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネートを含み、前記変性材料は、温度制御触媒を含む、請求項1に記載のセルが電気的に接続される溶接なしコネクタ。
【請求項3】
前記変性材料は、炭素材料及び/又はガラス繊維をさらに含み、前記温度制御触媒は、無機物又は官能基で修飾されたポリカーボネート系化合物のうちの少なくとも1種である、請求項2に記載のセルが電気的に接続される溶接なしコネクタ。
【請求項4】
前記炭素材料は、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素繊維、VGCFのうちの1種又は2種以上の組み合わせから選択され、
前記無機物は、塩酸塩、硫酸塩、水酸化カリウム、正炭酸塩又は酸性炭酸塩であり、
前記官能基で修飾されたポリカーボネート系化合物は、官能基で修飾されたポリカーボネート、ポリエチレンカーボネート又はポリプロピレンカーボネートを指し、前記官能基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン基又はグリシジル基である、請求項3に記載のセルが電気的に接続される溶接なしコネクタ。
【請求項5】
前記グラフェンのサイズは、5nm~200μmであり、カーボンブラック、ケッチェンブラックのサイズは、1nm~100nmであり、カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブであり、その直径が1nm~50nmであり、長さが10nm~1mmであり、炭素繊維、VGCFの直径は、80nm~8μmであり、BETが5m
2/g~1000m
2/gであり、長さが200nm~1mmであり、ガラス繊維の直径は、500nm~50μmである、請求項4に記載のセルが電気的に接続される溶接なしコネクタ。
【請求項6】
前記熱分解材料層の分解温度は、150℃~250℃であり、厚さが1mm~10mmである、請求項1に記載のセルが電気的に接続される溶接なしコネクタ。
【請求項7】
前記高熱伝導性絶縁材料は、セラミック材料、高熱伝導性ポリマー又は樹脂複合材料である、請求項1に記載のセルが電気的に接続される溶接なしコネクタ。
【請求項8】
前記セラミック材料は、Al
2O
3、AlN、BeO、Si
3N
4、SiCのうちの1種又は複数種を含み、前記高熱伝導性ポリマーは、ポリアセチレン、ポリアニリン又はポリピロールであり、前記樹脂複合材料は、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレートのうちの1種又は複数種と、金属酸化物、黒鉛繊維、炭素繊維のうちの1種又は複数種との混合物である、請求項7に記載のセルが電気的に接続される溶接なしコネクタ。
【請求項9】
前記熱分解材料層は、感熱性樹脂を溶融状態に加熱し、質量百分率が5%~30%の変性材料を添加して撹拌混合してスラリーを取得し、次に、スラリーを係止柱の外周又は溝の内側壁に塗布し、常温で硬化して熱分解材料層を形成するという製造方法で形成される、請求項1に記載のセルが電気的に接続される溶接なしコネクタ。
【請求項10】
バックプレート及びバックプレートの一側に間隔を隔てて固設された係止柱を含み、隣接する係止柱の間にバスバーと係止する溝が形成され、前記係止柱の外周又は溝の内側壁に熱分解材料層が塗布され、前記熱分解材料層は、感熱性樹脂及び変性材料で複合形成され、前記バックプレート及び係止柱は、いずれも熱伝導性絶縁材料で製造され
、セルに熱暴走が発生した際に、前記熱分解材料層中の感熱性樹脂が熱分解され、タブと前記バスバーとの接続が遮断される、セルが電気的に接続される溶接なし接続プレート。
【請求項11】
前記熱分解材料層中の感熱性樹脂の質量百分率は、70%~95%であり、残部は、変性材料であり、前記感熱性樹脂は、ポリカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネートを含み、前記変性材料は、温度制御触媒を含む、請求項10に記載のセルが電気的に接続される溶接なし接続プレート。
【請求項12】
前記変性材料は、炭素材料及び/又はガラス繊維をさらに含み、前記温度制御触媒は、無機物又は官能基で修飾されたポリカーボネート系化合物のうちの少なくとも1種である、請求項11に記載のセルが電気的に接続される溶接なし接続プレート。
【請求項13】
前記炭素材料は、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素繊維、VGCFのうちの1種又は2種以上の組み合わせから選択され、
前記無機物は、塩酸塩、硫酸塩、水酸化カリウム、正炭酸塩又は酸性炭酸塩であり、
前記官能基で修飾されたポリカーボネート系化合物は、官能基で修飾されたポリカーボネート、ポリエチレンカーボネート又はポリプロピレンカーボネートを指し、前記官能基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン基又はグリシジル基である、請求項12に記載のセルが電気的に接続される溶接なし接続プレート。
【請求項14】
前記グラフェンのサイズは、5nm~200μmであり、カーボンブラック、ケッチェンブラックのサイズは、1nm~100nmであり、カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブであり、その直径が1nm~50nmであり、長さが10nm~1mmであり、炭素繊維、VGCFの直径は、80nm~8μmであり、BETが5m
2/g~1000m
2/gであり、長さが200nm~1mmであり、ガラス繊維の直径は、500nm~50μmである、請求項13に記載のセルが電気的に接続される溶接なし接続プレート。
【請求項15】
前記熱分解材料層の分解温度は、150℃~250℃であり、厚さが1~10mmである、請求項10に記載のセルが電気的に接続される溶接なし接続プレート。
【請求項16】
前記熱伝導性絶縁材料は、セラミック材料、熱伝導性ポリマー又は樹脂複合材料である、請求項10に記載のセルが電気的に接続される溶接なし接続プレート。
【請求項17】
前記セラミック材料は、Al
2O
3、AlN、BeO、Si
3N
4、SiCのうちの1種又は複数種を含み、前記熱伝導性ポリマーは、ポリアセチレン、ポリアニリン又はポリピロールであり、前記樹脂複合材料は、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレートのうちの1種又は複数種と、金属酸化物、黒鉛繊維、炭素繊維のうちの1種又は複数種との混合物である、請求項16に記載のセルが電気的に接続される溶接なし接続プレート。
【請求項18】
前記熱分解材料層は、感熱性樹脂を溶融状態に加熱し、質量百分率が5%~30%の変性材料を添加して撹拌混合してスラリーを取得し、次に、スラリーを係止柱の外周又は溝の内側壁に塗布し、常温で硬化して熱分解材料層を形成するという製造方法で形成される、請求項10に記載のセルが電気的に接続される溶接なし接続プレート。
【請求項19】
請求項1~9のいずれか一項に記載の溶接なしコネクタ又は請求項10~15のいずれか一項に記載の接続プレートが設けられる、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に関し、具体的には、セルが電気的に接続される溶接なしコネクタ及び該コネクタを含むリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
過去の20年間に、リチウムイオン電池は、既に新エネルギー自動車の最も重要な動力源となっている。それを広く普及させるために、リチウムイオン電池の性能を向上させると同時に、そのコストをさらに低減する必要がある。また、電気自動車の航続距離を向上させるために、業界内で、リチウムイオン電池がより高いエネルギー密度を有することが追求されている。
【0003】
電池パック及びモジュールの設計において、セルの間において電気的に接続されたヒューズの設計は、常に難点であり、単一のセルに微小短絡のような問題が発生する場合、該セルとの電気的接続をタイムリーに遮断できれば、さらに該セルの熱暴走が発生することを防止することができる。しかし、現在の電流ヒューズには、信頼性が低く、急速充電する場合、意外に溶断しやすく、コストが高く、必要な取付数が多く、構造が複雑であるという多くの問題がある。
【0004】
また、熱暴走防止の面で、角型セルは、防爆弁及びガス流路の設計により単一のセルの熱ガスを導出することができ、セル間の断熱材料によりセル間の熱伝導を防止し、ある程度で角型セル間の熱拡散を制御することができる。角型セルに対して、ソフトパックセルは、形状設計を有するが、単一のセルが熱暴走を発声した後、角型セルの防爆弁に類似する設計により熱ガスを導出することが困難になり、これは、ソフトパックセルが破裂する箇所がランダムで、かつ生成された熱ガスにより周囲のセルが連続して熱暴走を発生するためである。したがって、ソフトパックモジュールの熱暴走制御は、現在のモジュール設計の難点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、セルが電気的に接続される溶接なしコネクタを提供することを1つの目的とする。
【0006】
本発明は、前記溶接なしコネクタの製造方法を提供することを他の目的とする。
【0007】
本発明は、前記コネクタを含むリチウムイオン電池を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段を提供する。
【0009】
本発明は、溶接なしコネクタを提供し、集電体に接続された係止柱には、高温分解性樹脂で製造された熱分解材料層が塗布され、セルに微小短絡が発生する場合、セル間の電気的接続が遮断されることにより、熱暴走の発生を防止し、電池の安全性能を大幅に向上させることができる。
【0010】
具体的には、一方では、本発明は、セルが電気的に接続される溶接なしコネクタを提供し、バスバー(集電バー)を含み、前記バスバーに接続プレートが係止され、前記接続プレートは、バックプレート及びバックプレートの一側に間隔を隔てて固設された係止柱を含み、隣接する係止柱の間にバスバーと係止する溝が形成され、前記係止柱の外周又は溝の内側壁に熱分解材料層が塗布され、前記熱分解材料層は、感熱性樹脂及び変性材料で複合形成され、前記バックプレート及び係止柱は、いずれも高熱伝導性絶縁材料で製造される。
【0011】
他方では、本発明は、セルが電気的に接続される溶接なし接続プレートをさらに提供し、該接続プレートは、バックプレート及びバックプレートの一側に間隔を隔てて固設された係止柱を含み、隣接する係止柱の間にバスバーと係止する溝が形成され、前記係止柱の外周又は溝の内側壁に熱分解材料層が塗布され、前記熱分解材料層は、感熱性樹脂及び変性材料で複合形成され、前記バックプレート及び係止柱は、いずれも熱伝導性絶縁材料で製造される。
【0012】
本発明に係る、セルが電気的に接続される溶接なしコネクタ及び接続プレートにおいて、熱伝導性絶縁材料は、好ましくは、高熱伝導性材料であり、例えば、熱伝導率が2W/m-Kより大きい絶縁材料である。
【0013】
本発明は、バスバー及びそれに配合して接続された接続プレートで構成された、常温で一定の機械的強度及び優れた熱伝導能力を備える電気的接続コネクタを用いる。常温で、タブをこのコネクタの溝に挿入し、溝によって印加された圧力により、タブとバスバーとを緊密に接続して、各セルの間の接続を実現し、一定の温度に達して熱暴走が発生する場合、温度が180℃以上に上昇すると熱分解材料層の分解温度(一般的に、200℃付近で熱分解が発生し、該温度が調整可能である)に達するため、熱分解材料層は、二酸化炭素、水及び炭素材料に分解される。すなわち、接続プレートの係止柱の外周又は溝の内側壁に塗布された熱分解材料層中の感熱性樹脂が熱分解され、コネクタの構造が変化して、タブと接続シートとの間の締付力がなくなり、タブと接続シートとの接続が遮断されて、セル間の接続が遮断されることにより、熱暴走の発生を防止し、電池の安全性を大幅に向上させることができる。
【0014】
さらなる解決手段において、前記熱分解材料中の感熱性樹脂の質量百分率は、70%~95%であり、残部は、変性材料であり、前記感熱性樹脂は、ポリカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート(PPC)のうちの1種又は複数種を含み、前記変性材料は、温度制御触媒を含む。感熱性樹脂の作用は、単一のセルに内部短絡などの事故が発生する場合、一定の温度で分解することができ、さらにバスバーへの圧力を緩め、該セルの電気的接続が遮断されて、モジュール全体に熱暴走現象が発生しないようにすることである。変性材料の作用は、該分解可能な感熱性樹脂の導電性能を向上させるか、又はその熱分解の温度を低下させることである。したがって、本発明の熱分解材料は、常温で優れた熱伝導能力を有し、一定の温度に達すると、該熱分解材料が熱分解されて、セル間の接続が遮断されることにより、熱暴走の発生を防止し、電池の安全性を大幅に向上させることができる。
【0015】
さらなる解決手段において、前記変性材料は、炭素材料及び/又はガラス繊維をさらに含み、前記温度制御触媒は、無機物又は官能基で修飾されたポリカーボネート系化合物のうちの少なくとも1種である。
【0016】
好ましくは、前記炭素材料は、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素繊維、VGCF(気相成長炭素繊維)などのうちの1種又は2種以上の組み合わせから選択されてもよい。常温で、感熱性樹脂と炭素材料を十分に混合して、それに十分な機械的強度及び熱伝導性能を備えさせ、高温で分解可能な感熱性樹脂が二酸化炭素及び水に分解され、被覆される高熱伝導性絶縁材料のみが残される。この場合、コネクタの構造が変化して、タブと接続シートとの間の締付力がなくなり、タブと接続シートとの接続が遮断されて、セルとの間の接続が遮断されることにより、熱暴走の発生を防止することができる。
【0017】
前記温度制御触媒中の無機物は、塩酸塩、硫酸塩、水酸化カリウム、正炭酸塩又は酸性炭酸塩などのうちの1種又は複数種であってもよく、
具体的な正炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウムを含み、酸性炭酸塩は、炭酸水素ナトリウムなどを含む。
【0018】
前記官能基で修飾されたポリカーボネート系化合物は、官能基で修飾されたポリカーボネート、ポリエチレンカーボネート又はポリプロピレンカーボネートを指し、前記官能基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン基又はグリシジル基である。官能基で修飾すること、又は無機物、塩、官能基で修飾されたポリカーボネート系化合物を添加することにより、感熱性樹脂の分解温度を低下させ、分解温度を150℃~400℃の間で調整することができる。感熱性樹脂の分子鎖を修飾し、特にグリシジルで修飾されたポリカーボネートを添加することにより、その分解温度を200℃~250℃から150℃付近に低下させることができる。
【0019】
好ましくは、前記ポリカーボネートは、3-メチルポリカーボネート、4-t-ブチルポリカーボネート、4-メチル-4-フェニルポリカーボネート、3,5-ジメチルポリカーボネートなどのうちの1種又は複数種を含む。
【0020】
より好ましくは、前記グラフェンのサイズは、5nm~200μmであり、カーボンブラック、ケッチェンブラックのサイズは、1nm~100nmであり、カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブであり、その直径が1nm~50nmであり、長さが10nm~1mmであり、炭素繊維、VGCFの直径は、80nm~8μmであり、BET(比表面積)が5m2/g~1000m2/gであり、長さが200nm~1mmであり、ガラス繊維の直径は、500nm~50μmである。
【0021】
さらなる解決手段において、前記熱分解材料層の分解温度は、150℃~250℃であり、厚さが1mm~10mmである。
【0022】
さらなる解決手段において、本発明に係る溶接なしコネクタにおける高熱伝導性絶縁材料は、基材として、無機セラミック材料又は有機材料であってもよい。具体的には、前記高熱伝導性絶縁材料は、セラミック材料、高熱伝導性ポリマー又は樹脂複合材料であってもよい。
【0023】
好ましくは、前記セラミック材料は、Al2O3、AlN、BeO、Si3N4、SiCなどの材料のうちの1種又は複数種を含んでもよい。前記高熱伝導性ポリマーは、ポリアセチレン、ポリアニリン又はポリピロールなどのうちの1種又は複数種であってもよい。前記樹脂複合材料は、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレートのうちの1種又は複数種と、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム)、黒鉛繊維、炭素繊維のうちの1種又は複数種との混合物であってもよい。
【0024】
本発明の別の態様は、上記溶接なしコネクタ又は接続プレートの製造方法を提供し、感熱性樹脂を溶融状態に加熱し、質量百分率が5%~30%の変性材料を添加して撹拌混合してスラリーを取得し、次に、スラリーを係止柱の外周又は溝の内側壁に塗布し、常温で硬化して熱分解材料層を形成するという前記熱分解材料層の製造方法を含む。
【0025】
本発明の第3態様は、上記のような溶接なしコネクタ又は接続プレートを含むリチウムイオン電池を提供する。リチウムイオン電池は、本発明に係る高温分解性樹脂で製造されたコネクタを含むため、高い安全性能を有する。
【発明の効果】
【0026】
以上より、本発明は、セルが電気的に接続される溶接なしコネクタ及び接続プレートを提供する。従来のセルの電気的接続は、一般的には、レーザ溶接のプロセスを用いるため、溶接点が多く、プロセスが複雑であり、かつ金属スパッタなどの金属不純物汚染が発生し、かつ溶接した後にセルの再修理と交換が困難である。本発明は、コネクタ式のバスバーを用いて接続すると、プロセスの複雑度を大幅に低下させ、信頼性を向上させ、かつ再修理しやすい。
【0027】
本発明のコネクタは、バスバー及び自己適応型・高熱伝導性・分解可能なプラスチック接続プレートの2つの部分で構成される。接続プレートは、高熱伝導性絶縁材料で製造され、係止柱の外周又は溝の内側壁に一層の熱分解材料層が塗布され、熱分解材料層は、感熱性樹脂及び変性材料で複合形成される。単一のセルに内部短絡が発生する場合、発生した高温により熱分解材料層を分解させ、バスバーへの圧力を低下させ、バスバーとタブを分離させ、最終的にモジュールが熱暴走を発生しないようにする。
【0028】
また、電池モジュールにおけるモジュールの各セルの電圧、温度などの信号を測定するBMS(Battery Management System)のスレーブを、高熱伝導性絶縁材料で製造されたバックプレートに直接貼り付けることができ、このように、モジュールの放熱を利用してBMSのスレーブに共有して、より大きなバランス電流を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係る接続プレートの第1種の概略構成図である。
【
図2】本発明に係る接続プレートの第2種の概略構成図である。
【
図3】本発明のコネクタ接続前の概略状態図である。
【
図4】本発明のコネクタ接続後の概略状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明確で完全に説明し、明らかに、説明する実施例は本発明の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに得られる全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0031】
図1、
図2に示すように、接続プレート1は、バックプレート11及びバックプレートの一側に間隔を隔てて固設された係止柱12を含み、隣接する係止柱の間にバスバーと係止する溝が形成され、前記係止柱12の外周に一層の熱分解材料層13(
図1)が塗布されるか、又は溝の内側壁に一層の熱分解材料層13(
図2)が塗布される。
【0032】
図3、
図4に示すように、セルが電気的に接続される溶接なしコネクタは、バスバー2を含み、前記バスバー2に接続プレート1が係止され、前記接続プレート1は、バックプレート及びバックプレートの一側に間隔を隔てて固設された係止柱を含み、隣接する係止柱の間にバスバー2と係止する溝が形成され、前記係止柱の外周又は溝の内側壁に一層の熱分解材料層が塗布され、前記熱分解材料層は、感熱性樹脂及び変性材料で複合形成され、前記バックプレート及び係止柱は、いずれも高熱伝導性絶縁材料で製造される。組み立てる場合、セル4のタブ3がバスバー2と共に接続プレート1上の溝に係入され、溝がバスバー2を押圧するため、バスバーがタブ3と緊密に接触して導通回路を形成する。あるセルに短絡が発生する場合、発生した高温は、バスバー2により熱分解材料層に伝達され、一定の温度に達する場合に熱分解材料層が分解されて、バスバー2への圧力を減少させ、バスバーとタブ3を分離させ、他のセルとの間の回路が遮断され、モジュールが熱暴走を発生しないようにする。
【0033】
熱分解材料層は、感熱性樹脂及び変性材料で複合形成され、感熱性樹脂の質量百分率は、70%~95%であり、残部は、変性材料であり、前記感熱性樹脂は、ポリカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネートのうちの1種又は複数種を含み、前記変性材料は、温度制御触媒、又は炭素材料、ガラス繊維のうちの少なくとも1種と、温度制御触媒との混合物である。
【0034】
前記温度制御触媒は、無機物又は官能基で修飾されたポリカーボネート系化合物のうちの少なくとも1種である。
【0035】
前記炭素材料は、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素繊維、VGCFのうちの1種又は2種以上の組み合わせから選択され、
前記無機物は、塩酸塩、硫酸塩、水酸化カリウム、塩類のうちの1種又は複数種であり、
前記塩類は、正炭酸塩又は酸性炭酸塩であり、
前記官能基で修飾されたポリカーボネート系化合物は、官能基で修飾されたポリカーボネート、ポリエチレンカーボネート又はポリプロピレンカーボネートを指し、前記官能基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン基又はグリシジル基である。前記ポリカーボネートは、例えば、3-メチルポリカーボネート、4-t-ブチルポリカーボネート、4-メチル-4-フェニルポリカーボネート、3,5-ジメチルポリカーボネートなどのうちの1種又は複数種を含んでもよい。
【0036】
前記グラフェンのサイズは、5nm~200μmであり、カーボンブラック、ケッチェンブラックのサイズは、1nm~100nmであり、カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブであり、その直径が1nm~50nmであり、長さが10nm~1mmであり、炭素繊維、VGCFの直径は、80nm~8μmであり、BETが5m2/g~1000m2/gであり、長さが200nm~1mmである。
【0037】
前記ガラス繊維の直径は、500nm~50μmである。
【0038】
前記熱分解材料層の分解温度は、150℃~250℃であり、厚さが1mm~10mmである。
【0039】
異なる成分で構成された熱分解材料層の分解開始温度、圧縮強度及び硬度を検証するために、特にそれに対して試験を行い、具体的には、実施例1~実施例7を参照し、以下の各実施例における%は、いずれも質量百分率を示す。
【0040】
比較例1
100%のポリプロピレンカーボネートを用いて、直径が25mmで、長さが80mmの円柱状試験片を製造する。
【0041】
実施例1
90%のポリプロピレンカーボネートと、10%の水酸化カリウムとを混合して、直径が25mmで、長さが80mmの円柱状試験片を製造する。
【0042】
実施例2
95%のポリエチレンカーボネートと、5%の炭酸ナトリウムとを均一に混合して、直径が25mmで、長さが80mmの円柱状試験片を製造する。
【0043】
実施例3
70%のポリカーボネートと、20%の水酸化カリウムと、10%の硫酸ナトリウムとを用いる。直径が25mmで、長さが80mmの円柱状試験片を製造する。
【0044】
実施例4
85%のポリプロピレンカーボネートと、10%のヒドロキシル化ポリカーボネートと、5%のカーボンブラック(50nm)を用いる。直径が25mmで、長さが80mmの円柱状試験片を製造する。
【0045】
実施例5
85%のポリカーボネートと、5%の炭酸水素ナトリウムと、10%の炭素繊維(直径が200nmで、長さが1μmである)とを用いる。直径が25mmで、長さが80mmの円柱状試験片を製造する。
【0046】
実施例6
85%のポリエチレンカーボネートと、10%の硫酸ナトリウムと、5%のグラフェン(サイズが2μmで、平均約8層である)とを用いる。直径が25mmで、長さが80mmの円柱状試験片を製造する。
【0047】
実施例7
80%のポリプロピレンカーボネートと、10%の硫酸ナトリウムと、10%のガラス繊維(直径が1μmで、長さが100μmである)とを用いる。直径が25mmで、長さが80mmの円柱状試験片を製造する。
【0048】
上記比較例1、実施例1~実施例7で製造された試験片の分解開始温度、圧縮強度、ショア硬度をそれぞれ検出し、熱重量分析TGの試験方法は、JIS K 7121-1987に準拠しており、重量変化が7.1%より高い場合に対応する温度が分解開始温度であると考えられ、
圧縮強度の試験は、JIS K 7208の試験方法に準拠しており、万能試験機MCT-1150により圧縮強度を試験し、
硬さ試験は、株式会社仲井精機製作所のmodel Dを用いて、JIS B 7727に準拠して行う。
【0049】
具体的な実験結果を以下の表1に示す。
【0050】
【0051】
一定割合の温度制御触媒を添加することにより、ポリカーボネート系有機物の分解温度を元の300℃から約200℃まで低下させることができ、かつ添加された物質及び量を制御することにより、その分解温度を正確に制御することができる。このように、セル間の電気的接続を遮断する時間を正確に制御することができる。また、炭素材料を添加することにより、該材料の圧縮強度及び表面の硬度を大幅に向上させて、使用要件に適応させることができる。
【0052】
異なる成分の熱分解材料層による電池モジュールの熱暴走の発生時間を検出するために、特に比較例2、比較例3と、実施例8、実施例9とを比較する。
【0053】
比較例2
24個のソフトパックセルが1つのモジュールを構成し、セルのサイズが536mm×102mm×8.5mmであり、各セルの容量が55Ahであり、セルの負極/正極材料が黒鉛/LFPであり、単一のセルのエネルギー密度が185Wh/kg、379Wh/Lである。モジュールの接続方式は、2P12Sであり、具体的には、
図3、
図4に示すように電気的に接続され、接続プレート1は、バックプレート及びバックプレートの一側に間隔を隔てて固設された係止柱を含み、隣接する係止柱の間にバスバー2と係止する溝が形成され、前記係止柱の外周又は溝の内側壁に熱分解材料層が塗布されていない。セル4のタブ3がバスバー2内に挿入され、次にバスバーと共に接続プレート1上の溝内に係止され、溝がバスバー2を押圧するため、バスバーがタブ3と緊密に接触して導通回路を形成する。
【0054】
実験方法は、単一のセルをSOC(State of Charge)150まで過充電して、電池モジュール全体の熱暴走の発生時間を観察することであり、具体的には、表2に示すとおりである。
【0055】
該比較例2における接続プレート1の全ての部材の材料は、100%ポリテトラフルオロエチレンである。
【0056】
比較例3
比較例2と同様に、相違点は、接続プレート1のバックプレート及び係止柱の材料が高熱伝導性絶縁材料であるポリアニリンであり、熱分解材料層の厚さが5mmであり、熱分解材料層が100%ポリプロピレンカーボネートで製造されることのみである。
【0057】
実施例8
比較例2と同様に、相違点は、接続プレート1のバックプレート及び係止柱の材料が高熱伝導性絶縁材料であるAl2O3セラミックスであり、熱分解材料層の厚さが5mmであり、熱分解材料層が85%のポリプロピレンカーボネート、10%の水酸化カリウム及び5%の炭素繊維(直径が200nmであり、長さが1μmである)で製造されることのみである。すなわち、まず、ポリプロピレンカーボネートを溶融状態に加熱し、次に、水酸化カリウム及び炭素繊維を添加して撹拌混合してスラリーを取得し、次に、スラリーを係止柱の外周又は溝の内側壁に塗布し、常温で硬化して熱分解材料層を形成する。
【0058】
実施例9
比較例2と同様に、相違点は、接続プレート1のバックプレートと係止柱の材料が高熱伝導性絶縁材料である80%のポリエチレンテレフタレートと20%の酸化アルミニウムナノ粒子(直径50nm)を混合して注型され、熱分解材料層の厚さが5mmであり、熱分解材料層が85%のポリプロピレンカーボネート、10%の水酸化カリウム、3%のグラフェン(サイズが2μmであり、平均8層程度である)、2%の多層カーボンナノチューブ(直径が30nmであり、長さが800nmである)で製造されることのみである。すなわち、まず、ポリプロピレンカーボネートを溶融状態に加熱し、次に、水酸化カリウム、グラフェン及び多層カーボンナノチューブを添加して撹拌混合してスラリーを取得し、次に、スラリーを係止柱の外周又は溝の内側壁に塗布し、常温で硬化して熱分解材料層を形成する。
【0059】
同じ条件で比較例2、比較例3及び実施例8、実施例9の電池モジュールの熱暴走時間を検出し、結果を表2に記録する。
【0060】
【0061】
表2の検出結果から分かるように、本発明に係るコネクタを用いる電池モジュールは、同様の場合に接続をタイムリーに遮断して、モジュール全体の熱暴走の発生を回避することができる。
【0062】
本明細書は、実施形態に従って記載されているが、各実施形態が独立した技術的解決手段を1つしか含まないものではなく、明細書の記載方法は、明瞭化のためのものにすぎず、当業者は、明細書を全体として扱い、各実施例に係る技術的解決手段は、当業者が理解可能な他の実施形態を形成するために適宜組み合わせられてもよいことを理解すべきである。
【0063】
したがって、上記内容は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の実施範囲を制限するものではない。すなわち、本発明に従って行われた様々な等価の変更は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるものとする。