(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/14 20060101AFI20240605BHJP
H10K 50/115 20230101ALI20240605BHJP
H10K 71/70 20230101ALI20240605BHJP
H10K 59/88 20230101ALI20240605BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20240605BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20240605BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20240605BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
H05B33/14 Z
H10K50/115
H10K71/70
H10K59/88
H10K50/11
H10K59/12
H10K59/35
G09F9/30 365
G09F9/30 338
(21)【出願番号】P 2022564981
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2020044437
(87)【国際公開番号】W WO2022113324
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】榊原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】久保 真澄
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-039311(JP,A)
【文献】特開2011-209369(JP,A)
【文献】特開2005-310708(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0354700(US,A1)
【文献】国際公開第2011/125109(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/14
H10K 50/00 - 50/88
H10K 59/00 - 59/95
H10K 71/70
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極および第2電極との間に設けられた発光層と、を含む複数の発光素子を備え、
前記複数の発光素子は
、少なくとも1つの主発光素子、および、前記少なくとも1つの主発光素子よりも小さい小型発光素子を複数含む少なくとも1セットの小型発光素子を有
し、
前記少なくとも1つの主発光素子の前記発光層および前記少なくとも1セットの小型発光素子の前記発光層のそれぞれに量子ドットが含有された、表示装置。
【請求項2】
前記少なくとも1セットの小型発光素子に含まれる前記複数の小型発光素子のそれぞれの発光色は同じである、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの主発光素子と、前記少なくとも1セットの小型発光素子に含まれる前記複数の小型発光素子のそれぞれとは、発光色が同じである、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記少なくとも1セットの小型発光素子は、前記発光層が一体として形成されている、請求項1から3の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの主発光素子の前記発光層に含まれる前記量子ドットと、
前記少なくとも1セットの小型発光素子の前記発光層に含まれる前記量子ドットとは、同じ種類の材料を含有する、請求項1から4の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数の小型発光素子は、それぞれ、短辺の長さが1μm以上20μm以下である、請求項1から5の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの主発光素子は、第1色の光を発光する第1主発光素子を含む、請求項1から6の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの主発光素子は複数の主発光素子であり、
前記複数の主発光素子は、
前記第1色の光よりもピーク波長が短い第2色の光を発光する第2主発光素子と、
前記第2色の光よりもピーク波長が短い第3色の光を発光する第3主発光素子と、を含む、請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記少なくとも1セットの小型発光素子は複数セットの小型発光素子であり、
前記複数セットの小型発光素子は、前記第1主発光素子、前記第2主発光素子および前記第3主発光素子毎に設けられている、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの主発光素子は複数の発光素子であり、
前記複数の主発光素子は、互いに交差する方向である行方向および列方向に並んで設けられており、
前記少なくとも1セットの小型発光素子は複数セットの小型発光素子であり、
前記複数セットの小型発光素子は、前記行方向に並ぶ複数の主発光素子毎に設けられている、請求項1から9の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記少なくとも1セットの小型発光素子は複数セットの小型発光素子であり、
前記複数セットの小型発光素子は前記複数の主発光素子毎に設けられている、請求項1から10の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項12】
前記少なくとも1セットの小型発光素子は、1セットである、請求項1から8の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項13】
前記少なくとも1セットの小型発光素子における、前記第1電極と前記第2電極との間の電圧を、前記複数の小型発光素子毎に取得する電圧取得部を備える、請求項1から12の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項14】
前記電圧取得部が取得した前記複数の小型発光素子毎の電圧に応じて、前記複数の主発光素子の前記第1電極または前記第2電極に供給する電流を制御する電源制御部を備える請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
前記少なくとも1セットの小型発光素子の駆動を制御する画素回路である少なくとも1セットの第1画素回路を備え、
前記少なくとも1セットの第1画素回路は、前記少なくとも1セットの小型発光素子に含まれる前記複数の小型発光素子それぞれの前記第1電極と電気的に接続される複数の駆動トランジスタを含む、請求項1から14何れか1項に記載の表示装置。
【請求項16】
前記複数の主発光素子の駆動を制御する画素回路である複数の第2画素回路を備え、
前記複数の第2画素回路は、それぞれ、前記複数の主発光素子の前記第1電極と電気的に接続される駆動トランジスタを含む、請求項1から15の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項17】
前記少なくとも1セットの第1画素回路に含まれる複数の駆動トランジスタそれぞれの面積と、
前記複数の第2画素回路それぞれに含まれる前記駆動トランジスタの面積とは、略同一である、請求項16に記載の表示装置。
【請求項18】
前記少なくとも1セットの小型発光素子の前記第1電極が分離されている個数は、2個以上5個以下である、請求項1から17の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項19】
前記少なくとも1セットの小型発光素子の前記第1電極が分離されている個数は、2個または4個である、請求項1~18の何れか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、赤色光を発光する有機EL(Electro Luminescence)素子、緑色光を発光する有機EL素子、および、青色光を発光する有機EL素子が設けられた画像表示装置が開示されている。特許文献1の画像表示装置では、有機EL素子は、サブ画素に設けられており、サブ画素内で2つの領域に分割されている。そして、サブ画素内の有機EL素子における2つの領域のうち、一方の領域で欠陥が発生すると、画像表示装置の製造工程において、欠陥が発生した領域は、レーザービームが照射されることで、発光しないようにする。これにより、サブ画素内において、欠陥が発生していない領域の有機EL素子を発光させる。このように、特許文献1では、画像表示装置におけるサブ画素の欠陥を修復している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の画像表示装置のような、サブ画素に設けられた有機EL素子の各領域のうち、欠陥が発生している領域を特定するには、製造工程において、各領域の輝度を作業者が目視確認するなど、手間がかかる。本開示の一態様は、発光層の膜状態のむらの検査が容易な表示装置を得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る表示装置は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極および第2電極との間に設けられた発光層と、を含む複数の発光素子を備え、前記複数の発光素子は、前記発光層に量子ドットが含有された、少なくとも1つの主発光素子、および、前記少なくとも1つの主発光素子よりも小さい小型発光素子を複数含む少なくとも1セットの小型発光素子を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る表示装置の概略構成を表す平面図である。
【
図2】実施形態に係る、主発光素子および1セットの小型発光素子の概略構成を表す平面図である。
【
図3】実施形態に係る主発光素子の概略構成を表す断面図である。
【
図4】実施形態に係る1セットの小型発光素子の概略構成を表す断面図である。
【
図5】実施形態に係る主発光素子の概略構成を表す断面であって、発光層に含まれる複数の量子ドットの疎密のむらを表す図である。
【
図6】実施形態に係る1セットの小型発光素子の概略構成を表す断面であって、発光層に含まれる複数の量子ドットの疎密のむらを表す図である。
【
図7】実施形態に係る主発光素子の概略構成を表す断面であって、発光層と第2電荷輸送層との界面の隙間むらを表す図である。
【
図8】実施形態に係る1セットの小型発光素子の概略構成を表す断面であって、発光層と第2電荷輸送層との界面の隙間むらを表す図である。
【
図9】実施形態に係る、主発光素子および1セットの小型発光素子それぞれの発光層の膜状態のむらが所定の範囲以内である場合の電流-電圧特性を表す図である。
【
図10】実施形態に係る、主発光素子および1セットの小型発光素子それぞれの発光層の膜状態のむらが所定の範囲以内である場合の発光輝度-電流特性を表す図である。
【
図11】実施形態に係る、主発光素子および1セットの小型発光素子それぞれの発光層の膜状態のむらが所定の範囲外である場合の電流-電圧特性を表す図である。
【
図12】実施形態に係る、主発光素子および1セットの小型発光素子それぞれの発光層の膜状態のむらが所定の範囲外である場合の発光輝度-電流特性を表す図である。
【
図13】実施形態に係る、実験において作成した発光素子の平面を模式的に表した図である。
【
図14】
図13に示す発光素子における明るさの様子を表す図である。
【
図15】所定長さ「z」に対するばらつきの変化を表す図である。
【
図16】実施形態に係る表示装置における1セットの小型発光素子および主発光素子それぞれの画素回路の配列の様子を表す図である。
【
図17】実施形態に係る第2画素回路の回路構成の一例を示す図である。
【
図18】実施形態に係る1セットの第1画素回路に含まれる複数の第1画素回路の回路構成の一例を示す図である。
【
図19】実施形態に係る表示装置における電源制御部のデータ信号の補正方法を説明する図である。
【
図20】実施形態の変形例1に係る1セットの第1画素回路に含まれる複数の第1画素回路の回路構成の一例を示す図である。
【
図21】実施形態の変形例2に係る1セットの第1画素回路に含まれる複数の第1画素回路の回路構成の一例を示す図である。
【
図22】実施形態の変形例3に係る表示装置の回路構成の一例を示す図である。
【
図23】実施形態の変形例4に係る表示装置の概略構成を表す平面図である。
【
図24】実施形態の変形例5に係る表示装置の概略構成を表す平面図である。
【
図25】実施形態の変形例5に係る表示装置の回路構成を表す図である。
【
図26】実施形態の変形例6に係る表示装置の回路構成を表す図である。
【
図27】実施形態の変形例7に係る表示装置の概略構成を表す平面図である。
【
図28】実施形態の変形例8に係る表示装置の概略構成を表す平面図である。
【
図29】実施形態の変形例8に係る表示装置の回路構成を表す図である。
【
図30】実施形態の変形例9に係る表示装置の概略構成を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る表示装置1の概略構成を表す平面図である。表示装置1は、例えば、複数の発光素子を備えている。表示装置1が備える複数の発光素子は、少なくとも1つの主発光素子11と、小型発光素子12を複数含む少なくとも1セットの小型発光素子13とを含む。
【0008】
表示装置1が備える少なくとも1つの主発光素子11は、1つであってもよいが、一例として、本実施形態では、表示装置1は複数の主発光素子11を備えるものとして説明する。また、表示装置1が備える少なくとも1セットの小型発光素子13のセット数は複数であってもよいが、一例として本実施形態では、表示装置1は、1セットの小型発光素子13(1セットの小型発光素子13が1つ)を備えるものとして説明する。
【0009】
例えば、複数の主発光素子11は、表示装置1が備える複数の発光素子のうち、主に画像を表示するための発光素子である。例えば、複数の主発光素子11は、画像を表示する領域である表示領域10に、マトリクス状に設けられている。例えば、複数の主発光素子11は単色の光を発光する。複数の主発光素子11の発光色は問わないが、一例として、複数の主発光素子11は、赤色光(第1色)を発光する複数の主発光素子11rである。なお、複数の主発光素子11が発光する光は、赤色光に限らず、赤色光よりもピーク波長が短い緑色光(第2色)、緑色光よりもピーク波長が短い青色光(第3色)、または、赤色光、緑色光、および青色光が混色した白色光など、赤色光以外の色の光であってもよい。
【0010】
ここで、例えば、赤色光は、ピーク波長が600nmより大きく780nm以下の波長の光である。また、例えば、緑色光は、ピーク波長が500nmより大きく600nm以下の光である。また、例えば、青色光は、ピーク波長が400nm以上500nm以下の光である。
【0011】
なお、複数の主発光素子11がマトリクス状に並ぶ方向のうち、行方向(
図1においては紙面左右方向)をX方向と称し、行方向に直交する列方向(
図1においては紙面上下方向)をY方向と称する場合がある。
【0012】
例えば、1セットの小型発光素子13は、表示装置1が備える複数の発光素子のうち、複数の発光素子に含まれる発光層の膜状態のむらの検査に用いられる発光素子である。例えば、1セットの小型発光素子13は表示領域10を囲む領域である額縁領域に設けられている。
【0013】
1セットの小型発光素子13は、複数の領域である複数の小型発光素子12を含む。例えば、1セットの小型発光素子13は、5個の小型発光素子12を含む。なお、1セットの小型発光素子13が有する小型発光素子12の個数は5個に限定されるものではなく、複数個であればよい。
【0014】
例えば、1セットの小型発光素子13と、主発光素子11とは、X方向の長さ同士、Y方向の長さ同士、および、面積が同じである。例えば、1セットの小型発光素子13と主発光素子11の平面形状は同じである。そして、1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12それぞれは、主発光素子11よりも面積が小さい。
【0015】
例えば、1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12それぞれの長辺の長さ(X方向の長さ)は、1セットの小型発光素子13および主発光素子11それぞれの長辺の長さ(Y方向の長さ)よりも短い。また、例えば、1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12それぞれ短辺の長さ(Y方向の長さ)は、1セットの小型発光素子13および主発光素子11それぞれの短辺の長さ(X方向の長さ)よりも短い。
【0016】
小型発光素子12の短辺の長さは、例えば、1μm以上20μm以下が好ましい。これにより、小型発光素子12の製造が可能な範囲で、精度よく、発光素子における発光層の膜状態のむらを検知することができる。
【0017】
例えば、1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12の個数は2個以上5個以下程度である。すなわち、1セットの小型発光素子13内において第1電極28が複数の第1電極27に分割されている個数は2個以上5個以下程度である。
【0018】
なお、例えば、1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12の個数は2個または4個であってもよい(
図20および
図21)。すなわち、1セットの小型発光素子13内において第1電極28が複数の第1電極27に分割されている個数は2個または4個であってもよい。
【0019】
また、
図1では、1セットの小型発光素子13、主発光素子11、1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12それぞれは、平面形状が長方形である例を示しているが、それぞれの平面形状は長方形に限らず、正方形、楕円形、または、その他の形状であってもよい。
【0020】
1セットの小型発光素子13の発光色は、主発光素子11の発光色と同じである。すなわち、1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12のそれぞれの発光色は同じである。また、1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12のそれぞれの発光色は、主発光素子11の発光色と同じである。
【0021】
例えば、1セットの小型発光素子13は、主発光素子11rと同じ赤色光を発光する1セットの小型発光素子13rである。すなわち、例えば、1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12は、主発光素子11rと同じ赤色光を発光する複数の小型発光素子12rである。
【0022】
なお、「発光色が同じ」とは、見た目の発光色が同じであること、ピーク波長が同じ色の波長範囲内にあること、または、発光波長範囲が重複する波長があること、を意味する。
【0023】
例えば、発光色のピーク波長が600nmより大きく780nm以下の波長の範囲であれば、「発光色が同じ」赤色光であるとみなすことができる。また、例えば、発光色のピーク波長が500nmより大きく600nm以下の波長の範囲であれば、「発光色が同じ」緑色光であるとみなすことができる。また、例えば、発光色のピーク波長が400nm以上500nm以下の波長の範囲であれば、「発光色が同じ」青色光であるとみなすことができる。
【0024】
1セットの小型発光素子13に隣接して、複数の薄膜トランジスタ(駆動トランジスタ)Tr11が設けられている。複数の薄膜トランジスタTr11は、複数の小型発光素子12それぞれを発光させたり非発光にしたりするスイッチング素子であり、複数の小型発光素子12それぞれと接続されている。
【0025】
図2は、実施形態に係る、主発光素子11および1セットの小型発光素子13の概略構成を表す平面図である。
図3は、実施形態に係る主発光素子11の概略構成を表す断面図である。
図4は、実施形態に係る1セットの小型発光素子13の概略構成を表す断面図である。なお、
図3および
図4は、主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれの発光層23の膜むらのうち膜厚むら)を表す図でもある。この発光層23の膜厚むらなどの膜むらの詳細は、
図3から
図8などを用いて後述する。
【0026】
表示装置1は、複数の主発光素子11および1セットの小型発光素子13に加え、アレイ基板5と、アレイ基板5上に設けられたバンク17とを備えている。
【0027】
バンク17は、複数の主発光素子11および1セットの小型発光素子13を区画するように、アレイ基板5に積層されている。バンク17は、例えば、ポリイミドまたはアクリル等の絶縁性材料を含有して構成することができる。バンク17で囲まれた領域内が画素である。
【0028】
アレイ基板5は、複数の主発光素子11の発光および非発光を制御するための複数の薄膜トランジスタ(駆動トランジスタ)Tr1と、1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12それぞれの発光および非発光を制御するための複数の薄膜トランジスタTr11が設けられた基板である。
【0029】
ここで、薄膜トランジスタは面積が小さくなると薄膜トランジスタ間の特性がばらつきやすくなる。そこで、1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12それぞれと接続された複数の薄膜トランジスタTr11それぞれの面積と、主発光素子11に接続された薄膜トランジスタTr1の面積とは略同一であることが好ましい。これにより、複数の薄膜トランジスタTr11の特性を薄膜トランジスタTr1の特性と同程度に安定化させることができる。これによって、複数の小型発光素子12それぞれの駆動を、主発光素子11の駆動と同程度に安定化させることができる。
【0030】
アレイ基板5は、例えば、柔軟性を有する基材と、基材に積層された無機絶縁層と、無機絶縁層に設けられた複数の薄膜トランジスタTr1・Tr11と、複数の薄膜トランジスタTr1・Tr11を覆って無機絶縁層に積層された層間絶縁層とを有する。
【0031】
柔軟性を有する基材は、例えば、ポリイミド等の有機絶縁材料を含有して構成することができる。無機絶縁層は、単層または多層構造であり、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、または、酸窒化シリコンを含有して構成することができる。層間絶縁層は、例えば、ポリイミドまたはアクリル系等の有機絶縁材料を含有して構成することができる。このようにして、柔軟性を有するアレイ基板5を構成することができる。なお、アレイ基板5は、柔軟性を有する基材に換えて、ガラス等の無機絶縁材料を含有する硬質の基材を有していてもよい。
【0032】
例えば、主発光素子11は、アレイ基板5側から順に積層された、第1電極21、第1電荷輸送層22、発光層23、第2電荷輸送層24、および、第2電極25を有する。また、例えば、1セットの小型発光素子13は、アレイ基板5側から順に積層された、第1電極28、第1電荷輸送層22、発光層23、第2電荷輸送層24、および、第2電極25を有する。
【0033】
例えば、主発光素子11の第1電極21と、1セットの小型発光素子13の第1電極28とは、同一材料を用いて同一工程にて形成される。また、主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれの第1電荷輸送層22は、例えば、同一材料を用いて同一工程にて形成される。また、主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれの発光層23は、例えば、同一材料を用いて同一工程にて形成される。また、主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれの第2電荷輸送層24は、例えば、同一材料を用いて同一工程にて形成される。また、主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれの第2電極25は、例えば、同一材料を用いて同一工程にて形成される。このように、例えば、主発光素子11と1セットの小型発光素子13との第1電荷輸送層22、発光層23および第2電荷輸送層24のうち少なくとも1つを、同一材料を用いて同一工程にて形成することで、主発光素子11と1セットの小型発光素子13において、各層の発光むらの程度を揃えることができ、高精度な不良品選別および発光輝度の補正が可能である。
【0034】
本実施形態では、例えば、主発光素子11において、第1電極21は陽極および反射電極であり、第2電極25は陰極および透明電極である。また、例えば、第1電荷輸送層22は正孔輸送層であり、第2電荷輸送層24は電子輸送層である。
【0035】
また、例えば、1セットの小型発光素子13において、第1電極28は陽極および反射電極であり、第2電極25は陰極および透明電極である。
【0036】
ここで、透明電極および反射電極のうち、透明電極とは、主発光素子11または1セットの小型発光素子13において、発光層23から発光された光を主発光素子11または1セットの小型発光素子13の外部へ取り出す側に設けられた電極である。透明電極は、可視光の透過率が高い透明電極である。可視光の透過率が高い透明電極は、例えば、ITO、IZO、ZnO、AZO、または、GZO等を用いて構成することができる。また、透明電極は、例えば、スパッタ法、または、蒸着法等により形成することができる。なお、透明電極は、例えば、可視光の透過率が80%以上となる材料を用いて構成されていることが好ましい。これにより、発光層23から、より多くの発光を取り出すことができる。
【0037】
また、透明電極および反射電極のうち、反射電極とは、主発光素子11または1セットの小型発光素子13において、発光層23から発光された光を、主発光素子11または1セットの小型発光素子13の外部へ取り出す側に設けられた電極とは反対側に設けられた電極である。言い換えると、反射電極は、主発光素子11または1セットの小型発光素子13において、発光層23から発光された光を反射する電極である。
【0038】
反射電極は、例えば、可視光の反射率が高い反射金属層を用いて構成することができる。可視光の反射率が高い反射金属層は、例えば、Al、Cu、Au、またはAg等の金属を含有させて構成することができる。なお、反射金属層は、例えば、可視光の反射率が80%以上となる材料を用いて構成されることが好ましい。これにより、発光層23から、より多くの発光を取り出すことができる。
【0039】
また、第1電極21・28は、それぞれ、反射金属層に加え、可視光の透過率が高い透明導電層を用いて構成してもよく、透明導電層は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、ZnO(酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、またはGZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)等の透明導電材料を含有させて構成することができる。なお、透明導電層は、例えば、可視光の透過率が80%以上となる材料を用いて構成されることが好ましい。これにより、発光層23から、より多くの発光を取り出すことができる。
【0040】
第1電極21・28を構成する各層は、例えば、スパッタ法、または、蒸着法等により形成することができる。なお、第1電極21・28は、2層構造に限定されず3層以上積層された多層構造であってもよいし、単層構造であってもよい。
【0041】
なお、主発光素子11において、第1電極21が、陰極および反射電極であり、第2電極25が陽極および透明電極であってもよい。また、1セットの小型発光素子13において、第1電極28が、陰極および反射電極であり、第2電極25が陽極および透明電極であってもよい。これらの場合、第1電荷輸送層22は電子輸送層であり、第2電荷輸送層24は正孔輸送層である。
【0042】
本実施形態では、例えば、主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれの発光方式は、第1電極21及び第2電極25間に電流が流れ、また、第1電極28及び第2電極25間に電流が流れることにより、主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれの発光層23に含まれる量子ドットが発光する、いわゆる、エレクトロルミネッセンス(EL)方式である。
【0043】
なお、本開示の量子ドットとは、最大幅が1nm以上100nm以下のドットを意味する。本開示の量子ドットの形状は、上記最大幅を満たす範囲内に収まる形状であれば特に制約されず、球形(断面円形)に限定されるものではない。例えば、本開示の量子ドットの形状は、断面多角形状、棒状、枝状、表面に凹凸を有した形状、またはそれらを組合せた形状であってもよい。
【0044】
例えば、主発光素子11において、第1電極21、第1電荷輸送層22、発光層23、および、第2電荷輸送層24は、それぞれ、複数の主発光素子11毎に分離した島状に設けられている。例えば、1セットの小型発光素子13において、第1電極28、第1電荷輸送層22、発光層23、および、第2電荷輸送層24は、それぞれ、主発光素子11から分離して島状に設けられている。
【0045】
また、例えば、第2電極25は、複数の主発光素子11および1セットの小型発光素子13毎に分離せず、複数の主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれに跨って連続した層として設けられている。
【0046】
例えば、1セットの小型発光素子13において、第1電極28は、複数の第1電極27に分離されている。複数の第1電極27は、1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12毎に設けられている。例えば、1セットの小型発光素子13において、第1電荷輸送層22、発光層23、第2電荷輸送層24および第2電極25は、複数の小型発光素子12毎に分離されておらず、一体として(すなわち、複数の小型発光素子12に連続する層として)形成されている。
【0047】
例えば、主発光素子11において、第1電極21は、第1電荷輸送層22に正孔を注入する。主発光素子11において、第1電極21は、層間絶縁層に形成されたコンタクトホールを通して、層間絶縁層の下層に設けられている薄膜トランジスタTr1と接続されている。
【0048】
例えば、1セットの小型発光素子13において、複数の第1電極27は、それぞれ、第1電荷輸送層22に正孔を注入する。
【0049】
複数の第1電極27は、それぞれ、複数の配線29と接続されており、複数の配線29は、1セットの小型発光素子13から1セットの小型発光素子13の外側に設けられた複数の薄膜トランジスタTr11と重なる位置まで延びている。そして、複数の配線29は、それぞれ、複数の薄膜トランジスタTr11と重なる位置において、層間絶縁層に形成されたコンタクトホールを通して、層間絶縁層の下層に設けられている複数の薄膜トランジスタTr11と接続されている。すなわち、複数の第1電極27は、それぞれ、複数の配線29を介して、複数の薄膜トランジスタTr11と接続されている。複数の配線29は、複数の第1電極27と同層に形成される。例えば、複数の配線29は、複数の第1電極27と同一の材料を用いて同一の工程にて形成されてもよい。
【0050】
第1電荷輸送層22は、例えば、正孔輸送層である。主発光素子11においては、第1電荷輸送層22は、第1電極21から注入された正孔を発光層23へと輸送する。1セットの小型発光素子13においては、第1電荷輸送層22は、第1電極28(すなわち、複数の第1電極27のそれぞれ)から注入された正孔を発光層23へと輸送する。
【0051】
第1電荷輸送層22は、例えば、正孔輸送材料を含有する。第1電荷輸送層22は、例えば、PEDOT:PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンサルフォネート)、PVK(ポリ-N-ビニルカルバゾール)、TFB(ポリ[(9,9‐ジオクチルフルオレニル‐2,7‐ジイル)‐コ‐(4,4'‐(N‐(4‐sec‐ブチルフェニル)ジフェニルアミン))])、またはpoly-TPD(N,N’‐ビス(4‐ブチルフェニル)‐N,N’‐ビス(フェニル)‐ベンジジン)を含んで構成されてもよく、または、これらの内の複数の材料を含んで構成されてもよい。
【0052】
第1電荷輸送層22は、例えば、インクジェット法による塗り分け、マスクを使用した蒸着、または、フォトリソグラフィ等により形成することができる。
【0053】
発光層23は、複数の量子ドット23aを含む。複数の量子ドット23aは、例えば、赤色光を発光する。なお、発光層23に含まれる複数の量子ドット23aの発光色は、赤色光に限らず、例えば、緑色光、または青色光など他の色の光であってもよい。
【0054】
発光層23は、インクジェット法による塗り分け、マスクを使用した蒸着、または、フォトリソグラフィ等により形成することができる。
【0055】
複数の量子ドット23aは、半導体ナノ粒子であってもよい。複数の量子ドット23aは、価電子帯準位(イオン化ポテンシャルに等しい)と伝導帯準位(電子親和力に等しい)とを有し、価電子帯準位の正孔と伝導帯準位の電子との再結合により発光する発光材料により形成することができる。粒経の揃った量子ドットが発光した光は、量子閉じ込め効果により狭いスペクトルを有するため、比較的深い色度の発光を得ることができる。
【0056】
複数の量子ドット23aは、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InN、InP、InAs、InSb、AlP、AlS、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、PbS、PbSe、Si、Ge、MgS、MgSe、MgTeおよびこれらの組み合せから成る群から選択される、1または複数の半導体材料を含有させて構成することができる。また、量子ドット16r・16g・16bは、二成分コア型、三成分コア型、四成分コア型、コアシェル型、コアマルチシェル型、ドープされたナノ粒子、組成傾斜した構造であってもよい。また、例えば、シェルの外周部には、リガンドが配位結合してもよい。リガンドは、例えば、チオールやアミン等の有機物により構成することができる。
【0057】
複数の量子ドット23aの粒径は、例えば、3nmから15nm程度とすることができる。複数の量子ドット23aの発光波長(ピーク波長)は、粒径により制御できる。このため、複数の量子ドット23aの粒径を制御することにより、例えば、赤色、緑色、または、青色の発光を得ることができる。
【0058】
例えば、主発光素子11の発光層23に含まれる複数の量子ドット23aと、1セットの小型発光素子13の発光層23に含まれる複数の量子ドット23aとは同じ種類の材料を含有する。
【0059】
ここで、「同じ種類の材料」とは、例えば、(i)化合物(組成比)が同じ(ii)量子ドット23aの平均粒径が略同じ(iii)量子ドット23aのコアの平均粒径が略同じ、のうち(i)および(ii)、または、(i)および(iii)の場合を挙げることができる。なお、略は±20%の範囲である。平均粒径とは発光層23の任意の断面を観察した時に近接する10個の粒子の断面の面積に相当する円の直径を算出し平均したものと定義することができる。
【0060】
また、コアがZnSeの場合においては、量子ドットのPLピーク波長をλp(nm)とすると、{6.1/[(1240/λp)-2.7]}^(1/2)は、ZnSeに対して有効質量近似を用いて算出したコア径に相当し、この値をコア径とする(コア径とみなす)ことができる。また、材料が異なる場合も、同様の近似計算を用いてPLピーク波長からコア径を算出することができる。
【0061】
第2電荷輸送層24は、例えば、電子輸送層である。第2電荷輸送層24は、第2電極25から注入された電子を発光層23へと輸送する。第2電荷輸送層24は、例えば、電子輸送性を有する複数のナノ粒子を含有する。第2電荷輸送層24は、例えば、インクジェット法による塗り分け、マスクを使用した蒸着、または、フォトリソグラフィ等により形成することができる。
【0062】
なお、第2電荷輸送層24は、発光層23から第2電極25へと正孔が輸送されることを抑制する機能(正孔ブロック機能)を有してもよい。
【0063】
第2電極25は、第2電荷輸送層24に電子を注入する。第2電極25は、発光層23に対し、第1電極21とは反対側に設けられている。すなわち、第2電極25は、第2電荷輸送層24およびバンク17上に積層されている。例えば、第2電極25は、主発光素子11および1セットの小型発光素子13に跨って連続する共通電極である。例えば、第2電極25は、表示装置1における表示領域10の全面に連続した層である、いわゆるベタ状に形成されている。
【0064】
また、第2電極25上には、封止層(図示省略)が設けられる。封止層は、例えば、第2電極25を覆う第1無機封止層と、第1無機封止層よりも上層に積層された有機バッファ層と、有機バッファ層よりも上層に積層された第2無機封止層とを含む。封止層は、水、酸素等の異物が表示装置1の内部へと浸透することを防ぐ。
【0065】
第1無機封止層および第2無機封止層は、それぞれ、酸化シリコン層、窒化シリコン層、または、酸窒化シリコン層などの無機絶縁性の材料を用いた単層構造であってもよいし、これらの層を組み合わせた多層構造であってもよい。第1無機封止層および第2無機封止層それぞれの各層は、例えば、CVD法等により形成することができる。
【0066】
有機バッファ層は、平坦化効果があり、例えば、可視光を透過する透光性の樹脂層である。有機バッファ層は、アクリル等の塗布可能な有機材料によって構成することができる。また、封止層上に、機能フィルム(図示省略)が設けられてもよい。機能フィルムは、例えば、光学補償機能、タッチセンサ機能、保護機能の少なくとも1つを有してもよい。
【0067】
第2電極25から第2電荷輸送層24へ注入された電子は、さらに、第2電荷輸送層24から発光層23へと輸送される。
【0068】
また、主発光素子11においては、第1電極21から第1電荷輸送層22へ注入された正孔は、さらに、第1電荷輸送層22から発光層23へと輸送される。また、1セットの小型発光素子13においては、複数の第1電極27から第1電荷輸送層22へ注入された正孔は、さらに、第1電荷輸送層22から発光層23へと輸送される。
【0069】
そして、主発光素子11および1セットの小型発光素子13において、発光層23へ輸送された電子および正孔が、複数の量子ドット23a内で再結合することで、励起子が生じる。そして、当該励起子が励起状態から基底状態へと戻ることにより、複数の量子ドット23aが発光する。すなわち、発光層23における複数の量子ドット23aは、例えば、赤色光を発光する。
【0070】
例えば表示装置1は、発光層23が発光した光を、第2電荷輸送層24および第2電極25を透過させることで、アレイ基板5とは逆側(
図3、
図4において発光層23より上側)へ取り出す、トップエミッション型である。なお、表示装置1は、発光層23が発光した光を、第1電荷輸送層22、第1電極21およびアレイ基板5を透過させることで、アレイ基板5側(
図3、4において発光層23より下側)へ取り出す、ボトムエミッション型であってもよい。ボトムエミッション型の場合、第2電極25を、可視光の反射率が高い反射金属層を含んで構成し、第1電極21を、可視光の透過率が高い透明導電層を用いて構成すればよい。
【0071】
なお、主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれの積層構造は、
図3および
図4に示す構造に限定されず、例えば、主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれは、さらに他の機能層を有していてもよい。例えば、主発光素子11および1セットの小型発光素子13は、第1電極21と、第1電荷輸送層22との間に、第1電極21から第1電荷輸送層22への正孔の注入効率を上げる正孔注入層を有してもよい。また、例えば、主発光素子11および1セットの小型発光素子13は、第2電極25と、第2電荷輸送層24との間に、第2電極25から第2電荷輸送層24への電子の注入効率を上げる電子注入層を有してもよい。
【0072】
ここで、上述のように、発光層23は、電子と正孔とが注入されることで、発光層23内の複数の量子ドット23aが発光する。このため、発光層23は、膜状態のむらに起因して発光効率が変化しやすく、その結果、膜状態のむらに起因する面内の輝度むらが生じやすい。特に、発光層23は、塗布などにより形成された場合は、蒸着等によって形成される場合と比べて膜状態のむらが生じやすい。
【0073】
そこで、本実施形態に係る1セットの小型発光素子13は、この発光層23の膜状態のむらを検査することが容易な構成となっている。
【0074】
ここで、量子ドット23aの発光効率が変化する発光層23の膜状態のむらとは、例えば、(1)膜厚むら、(2)複数の量子ドットの疎密のむら、(3)発光層23と発光層23に接触する電子輸送層(第2電荷輸送層24)との界面の隙間のむら、(4)発光層23と発光層23に接触する正孔輸送層(第1電荷輸送層22)との界面の隙間のむら、を挙げることができる。
【0075】
この発光層23の膜状態のむらについて、
図3から
図8を用いて説明していく。なお、例えば、電子輸送層(第2電荷輸送層24)はZnOなどを含有するナノ粒子が含まれておりナノ粒子同士の隙間のむらが生じやすい一方、正孔輸送層(第1電荷輸送層22)は、ナノ粒子が含まれた場合と比べて、分子同士が結合した長さがナノ粒子よりも長く、ナノ粒子を含む層よりも隙間のむらが生じにくい場合がある。
【0076】
そして、この場合、正孔輸送層(第1電荷輸送層22)と発光層23との界面と比べて、ナノ粒子が含まれた層同士、すなわち、電子輸送層(第2電荷輸送層24)と量子ドット23aが含まれた発光層23との界面の隙間のむらの方が、大きくなる場合がある。
【0077】
図3は上述のように主発光素子11の発光層23の膜厚むらの様子を表しており、
図4は、1セットの小型発光素子13の発光層23の膜厚むらの様子を表している。
【0078】
発光層23の膜厚が厚くなると、第1電極27と、第2電極25との間の電気抵抗が大きくなり、所定の電流を流すための駆動電圧が高くなる。また、発光層23の膜厚が薄くなると、第1電極27と、第2電極25との間の電気抵抗が小さくなり、所定の電流を流すための駆動電圧が低くなる。
【0079】
図3に示すように、主発光素子11の長辺の長さは、発光層23の膜厚むらのピッチよりも長い場合が多い。このため主発光素子11内の発光層23に、膜厚が厚い領域と膜厚が薄い領域とが含まれていても、主発光素子11の電流-電圧特性(J-V特性)と発光輝度-電流特性(L-J特性)は、主発光素子11において、発光層23の膜厚むらが平均された特性となる。
【0080】
図4に示すように、1セットの小型発光素子13は、複数の小型発光素子12を含む。すなわち、1セットの小型発光素子13に含まれる第1電極28は、複数の第1電極27に分離されている。
【0081】
例えば、1セットの小型発光素子13が有する複数の小型発光素子12を、順に、小型発光素子12a・12b・12c・12d・12eとする。小型発光素子12aが有する第1電極27を第1電極27aとし、小型発光素子12bが有する第1電極27を第1電極27bとし、小型発光素子12cが有する第1電極27を第1電極27cとし、小型発光素子12dが有する第1電極27を第1電極27dとし、小型発光素子12eが有する第1電極27を第1電極27eとする。
【0082】
図4に示す例では、1セットの小型発光素子13に含まれる発光層23のうち、小型発光素子12bに含まれている領域の平均膜厚は厚いため他の領域と比べて電気抵抗が大きい。そして、小型発光素子12dに含まれている領域の平均膜厚は薄いため他の領域と比べて電気抵抗が小さい。このため、所定の電流を流すための駆動電圧は、小型発光素子12bにおける第1電極27bと、第2電極25のうち第1電極27bに対向する領域との間の駆動電圧よりも、小型発光素子12dにおける第1電極27dと、第2電極25のうち第1電極27dに対向する領域との間の駆動電圧の方が低い。
【0083】
このように、1セットの小型発光素子13のうち、複数の小型発光素子12毎に、すなわち、複数の第1電極27毎に駆動電圧を示す情報を得ることができ、1セットの小型発光素子13内の発光層23の膜厚むらを検知することができる。
【0084】
図5は、実施形態に係る主発光素子11の概略構成を表す断面であって、発光層23に含まれる複数の量子ドットの疎密のむらを表す図である。
図6は、実施形態に係る1セットの小型発光素子13の概略構成を表す断面であって、発光層23に含まれる複数の量子ドットの疎密のむらを表す図である。
【0085】
発光層23に含まれる複数の量子ドット23aの密度(単位体積当たりの複数の量子ドット23aの個数)が高くなると(すなわち密の状態になると)、第1電極21・27と、第2電極25との間の電気抵抗が大きくなり、所定の電流を流すための駆動電圧が高くなる。
【0086】
また、
図5および
図6に示すように、発光層23内において部分的に複数の量子ドット23a間に隙間23dが大きく形成された領域は、発光層23に含まれる複数の量子ドット23aの密度が低く(すなわち疎の状態)なり、第1電極21・27と、第2電極25との間の電気抵抗が変化し、所定の電流を流すための駆動電圧が変化する。
【0087】
ここで、複数の量子ドット23aの疎密のむらを考える場合、相反する下記(1)(2)の2つの効果の大小を考慮する必要があり、複数の量子ドット23aの密度と電圧との相関は場合によって異なることになる。
(1)量子ドットの密度が変わることにより、同じ膜厚の層に含まれる量子ドットの数が変わる。
・量子ドットの密度が大きい場合:量子ドットの数が多く、所定の電流を流すため(所定の輝度を得るため)に発光素子に印加される駆動電圧が高電圧化する。
・量子ドットの密度が小さい場合:量子ドットの数が少なくなり、所定の電流を流すため(所定の輝度を得るため)に発光素子に印加される駆動電圧が低電圧化する。
(2)量子ドットの密度が変わることにより、量子ドット間の距離が変わる。
・量子ドットの密度が大きい場合:量子ドット間の距離は小さくなり、所定の電流を流すため(所定の輝度を得るため)に発光素子に印加される駆動電圧が低電圧化される。
・量子ドットの密度が小さい場合:量子ドット間の距離は大きくなり、所定の電流を流すため(所定の輝度を得るため)に発光素子に印加される駆動電圧が高電圧化される。
したがって、後述する量子ドットの疎密と駆動電圧との関係は、あくまで一例である。
【0088】
例えば、
図5に示すように、主発光素子11の長辺の長さは、発光層23に含まれる複数の量子ドット23aの疎密のむらのピッチよりも長い場合が多い。このため主発光素子11内の発光層23に含まれる複数の量子ドット23aの密度が高い領域と密度が低い領域とが含まれていても、主発光素子11の電流-電圧特性(J-V特性)と発光輝度-電流特性(L-J特性)は、主発光素子11において、発光層23に含まれる複数の量子ドット23aの疎密のむらが平均された特性となる。
【0089】
一方、例えば、
図6に示すように、1セットの小型発光素子13に含まれる発光層23のうち、小型発光素子12bに含まれている発光層23には大きい隙間23dが形成されておらず複数の量子ドット23aの密度が高いため、電気抵抗が大きい。また、小型発光素子12dに含まれている発光層23には大きい隙間23dが形成されており密度が低いため、電気抵抗が小さい。
【0090】
このため、所定の電流を流すための駆動電圧は、小型発光素子12bにおける第1電極27bと、第2電極25のうち第1電極27bに対向する領域との間の駆動電圧よりも、小型発光素子12dにおける第1電極27dと、第2電極25のうち第1電極27dに対向する領域との間の駆動電圧の方が低い。
【0091】
このように、1セットの小型発光素子13のうち、複数の小型発光素子12毎に、すなわち、複数の第1電極27毎に駆動電圧を情報として得ることができ、1セットの小型発光素子13内の発光層23における複数の量子ドット23aの疎密のむらを検知することができる。
【0092】
図7は、実施形態に係る主発光素子11の概略構成を表す断面であって、発光層23と第2電荷輸送層24との界面の隙間むらを表す図である。
図8は、実施形態に係る1セットの小型発光素子13の概略構成を表す断面であって、発光層23と第2電荷輸送層24との界面の隙間むらを表す図である。
【0093】
図7および
図8に示すように、発光層23と電子輸送層(第2電荷輸送層24)との界面のうち、隙間23eが形成されていない領域の界面における電気抵抗と比べて、隙間23eが形成された領域の発光層23と電子輸送層(第2電荷輸送層24)との界面の電気抵抗の方が大きくなる。このため、発光層23と電子輸送層(第2電荷輸送層24)との界面のうち、隙間23eが形成されていない領域の界面に所定の電流を流すための駆動電圧と比べて、隙間23eが形成された領域の発光層23と電子輸送層(第2電荷輸送層24)との界面に所定の電流を流すための駆動電圧の方が高くなる。
【0094】
例えば、
図7に示すように、主発光素子11の長辺の長さは、発光層23と電子輸送層(第2電荷輸送層24)との界面に形成される隙間23eのピッチよりも長い場合が多い。このため主発光素子11内の発光層23と電子輸送層(第2電荷輸送層24)と界面に部分的に隙間23eが形成されていても、主発光素子11の電流-電圧特性(J-V特性)と発光輝度-電流特性(L-J特性)は、主発光素子11において、発光層23と電子輸送層(第2電荷輸送層24)との界面に形成される隙間23eのむらが平均された特性となる。
【0095】
一方、例えば、
図8に示すように、1セットの小型発光素子13に含まれる発光層23のうち、小型発光素子12bに含まれている発光層23と電子輸送層(第2電荷輸送層24)との界面には隙間23eが形成されておらず、発光層23と電子輸送層(第2電荷輸送層24)とが密着しているため、電気抵抗が小さくなる。また、小型発光素子12dに含まれている発光層23と電子輸送層(第2電荷輸送層24)との界面には部分的に隙間23dが形成されているため、隙間23dが形成された部分において発光層23と電子輸送層(第2電荷輸送層24)とが離れているため、電気抵抗が大きくなる。
【0096】
このため、所定の電流を流すための駆動電圧は、小型発光素子12bにおける第1電極27bと、第2電極25のうち第1電極27bに対向する領域との間の駆動電圧よりも、小型発光素子12dにおける第1電極27dと、第2電極25のうち第1電極27dに対向する領域との間の駆動電圧の方が高い。
【0097】
このように、1セットの小型発光素子13のうち、複数の小型発光素子12毎に、すなわち、複数の第1電極27毎に駆動電圧を情報として得ることができ、1セットの小型発光素子13内の発光層23と電子輸送層(第2電荷輸送層24)との界面における隙間23eのむらを検知することができる。
【0098】
図9は、実施形態に係る、主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれの発光層23の膜状態のむらが所定の範囲以内である場合の電流-電圧特性(J-V特性)を表す図である。
図10は、実施形態に係る、主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれの発光層23の膜状態のむらが所定の範囲以内である場合の発光輝度-電流特性(L-J特性)を表す図である。
【0099】
図11は、実施形態に係る、主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれの発光層23の膜状態のむらが所定の範囲外である場合の電流-電圧特性(J-V特性)を表す図である。
図12は、実施形態に係る、主発光素子11および1セットの小型発光素子13それぞれの発光層23の膜状態のむらが所定の範囲外である場合の発光輝度-電流特性(L-J特性)を表す図である。
【0100】
図9および
図11において、縦軸は、主発光素子11および小型発光素子12それぞれに流れる電流を表し、横軸は、主発光素子11および小型発光素子12それぞれに供給される駆動電圧を表している。
図10および
図12において、縦軸は、主発光素子11および小型発光素子12それぞれの発光輝度を表し、横軸は、主発光素子11および小型発光素子12それぞれに流れる電流を表している。なお、
図9から
図12に示すグラフにおいて、主発光素子11のデータ系列を一点鎖線であらわし、小型発光素子12のデータ系列を実線で表している。
【0101】
図9に示すように、発光層23の膜状態のむらが所定の範囲内であれば、主発光素子11および小型発光素子12両方とも、所定の電流を流すための駆動電圧の範囲は所定の範囲以内である。
【0102】
また、
図10に示すように、発光層23の膜状態のむらが所定の範囲内であれば、主発光素子11および小型発光素子12両方とも、所定の発光輝度を得るために流す電流の範囲は所定の範囲以内である。
【0103】
図9および
図10に示すように、発光層23の膜状態のむらが所定の範囲以内、すなわち、発光層23の膜状態のむらが少ない場合、電流‐電圧特性のばらつきが少なく、発光効率が高くなり、かつ、発光輝度のばらつきも少ない。
【0104】
図11に示すように、発光層23の膜状態のむらが所定の範囲外であれば、主発光素子11および小型発光素子12両方とも、所定の電流を流すための駆動電圧の範囲は所定の範囲外となる。すなわち、主発光素子11および小型発光素子12両方とも、所定の電流を流すための駆動電圧のばらつきが、発光層23の膜状態のむらが所定の範囲以内の場合よりも大きくなる。
【0105】
また、
図12に示すように、発光層23の膜状態のむらが所定の範囲外であれば、主発光素子11および小型発光素子12両方とも、所定の発光輝度を得るために流す電流の範囲は所定の範囲外となる。すなわち、主発光素子11および小型発光素子12両方とも、所定の発光輝度を得るために流す電流のばらつきが、発光層23の膜状態のむらが所定の範囲以内の場合よりも大きくなる。
【0106】
図11および
図12に示すように、発光層23の膜状態のむらが所定の範囲以内の場合と比べて所定の範囲外の場合、すなわち、発光層23の膜状態のむらが多いと、発光層23内に電流を均一に流すことができなくなり、発光層23の発光効率が低下する。
【0107】
例えば、主発光素子11および小型発光素子12の発光層23の膜状態のむらが多い場合、主発光素子11および小型発光素子12に所定の発光輝度を得るための駆動電圧のばらつきが大きくなる。この結果、主発光素子11および小型発光素子12の発光効率が低下することになる。
【0108】
しかし、主発光素子11内では、発光層23の膜状態のばらつきが生じていても、主発光素子11内で電流-電圧特性および発光輝度-電流特性は平均化されてしまい、発光層23の膜状態のばらつきを検知することができない。
【0109】
そこで、本実施形態に係る表示装置1が備える複数の発光素子は、発光層23に量子ドット23aが含有された、少なくとも1つの主発光素子11、および、少なくとも1つの主発光素子11よりも小さい小型発光素子12を複数含む少なくとも1セットの小型発光素子13を有する。これにより、主発光素子11によって検知できない発光層23の膜状態のむらを、主発光素子11よりも小さい小型発光素子12を複数含む1セットの小型発光素子13によって、複数の小型発光素子12それぞれ毎に検知することができる。
【0110】
例えば、小型発光素子12における発光層23の膜厚が厚かったり、複数の量子ドットの密度が高かったり、発光層23と電子輸送層との界面の隙間のむらが多かったりすると、電気抵抗が上がるため、所定の電流を流すための駆動電圧も上がる。
【0111】
また、例えば、小型発光素子12における発光層23の膜厚が薄かったり、複数の量子ドットの密度が低かったり、発光層23と電子輸送層との界面の隙間のむらが少なかったりすると、電気抵抗が下がるため、所定の電流を流すための駆動電圧も下がる。
【0112】
そこで、例えば、1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12それぞれの駆動電圧のばらつきが所定の範囲外であれば、1セットの小型発光素子13に含まれる発光層23の膜状態のむらが所定の範囲外であると検知することができる。そして、1セットの小型発光素子13に含まれる発光層23と同じ材料および同じ工程でパターニングされた、主発光素子11に含まれる発光層23も、膜状態のむらが所定の範囲外であると推定(すなわち検知)することができる。例えば、
図1に示したように、1セットの小型発光素子13を表示装置1に設けることで、表示装置1を製品ごとに発光層23の不良品の有無を検知することができる。
【0113】
そして、発光層23の膜状態のむらが所定の範囲外であることが検知された場合(1セットの小型発光素子の電流-電圧特性が所定の閾値を超える場合)、表示装置1の製造過程における検査工程において、製造過程中の表示装置1は不良品として、製造ラインから排除されればよい。そうすることで、例えば、製造過程中の表示装置1における主発光素子11の発光輝度をモニタするような大掛かりな検査装置を設けることなく、1セットの小型発光素子13の電流‐電圧特性をモニタするだけで、製造過程中の表示装置1における発光層23の膜状態のむらの検査をすることができる。
【0114】
または、例えば、発光層23の膜状態のむらが所定の範囲外であることが検知された場合、表示装置1の完成後、主発光素子11に供給される駆動電圧を補正すればよい。つまり、表示装置1に設けられ複数の主発光素子11それぞれの発光効率が低下していると推定できるため、主発光素子11の発光輝度をモニタすることなく、予め設定した計算式(後述する)およびテーブルに基づいて、主発光素子11の駆動電圧を大きくすることで、所定の輝度を得ることができる。
【0115】
また、完成した表示装置1の使用によって発光層23の膜状態のむらが経時変化したときに、主発光素子11に供給される駆動電圧を補正するようにしてもよい。そうすることで、表示装置1の使用時の経時変化による表示品質の劣化にも対応して補正することができ、長期間にわたり劣化を抑制することができ、高い表示品質を保つことができる。
【0116】
1セットの小型発光素子13は、分割数が多く、小型発光素子12のサイズが小さいほど、小さい長さスケールのむらまで検知することができ、発光層23の膜状態のむらを高精度に検知できる。
【0117】
次に、
図13から
図15を用いて、発光層23の膜状態のむらと、小型発光素子12のサイズとの関係に関する実験結果を説明する。本実験において、発光素子を形成し、形成した発光素子の長辺に沿った明るさをデータとして取得した。
【0118】
図13は、実施形態に係る実験において作成した発光素子の平面を模式的に表した図である。本実験に係る発光素子では、TFB[ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-コ-(4,4'-(N-(4-sec-ブチルフェニル)ジフェニルアミン)]]を含む層の上に、量子ドットを分散させたオクタン溶媒を、塗布することで発光層をパターニングした。発光層には、コアにCdSeを含み、シェルにZnSを含むコアシェル構造であり、赤色光を発光する量子ドットを用いた。
【0119】
図13では、発光素子の長辺を一点鎖線A1で示し、長辺を示す一点鎖線A1に沿って10μmピッチで矩形を描いている。
図13に示す例では、矩形によって発光素子は10個の領域に分割されている。形成された発光素子を、顕微鏡を用いて平面視したときの明るさを観察すると、発光素子におけるそれぞれの矩形で囲まれた領域には、比較的発光輝度が一定である領域と、発光輝度が明るい箇所と暗い箇所とが混在している領域とが観察されたため、発光層の膜状態のむらがあると考えられる。
【0120】
この発光層の膜状態のむらは、量子ドットを分散させた溶媒を塗布する下地層の濡れ性、および、量子ドットを分散させた溶媒の粘度などによって決まると考えられる。
図13に示す例では、10μmピッチの矩形によって発光素子が10個に分割されている。このように、発光素子を細かく分割することで、各矩形によって、発光素子の面内の発光輝度むら、すなわち、膜状態のむらを高精細に検知できることが分かる。すなわち、1セットの小型発光素子13を複数の小型発光素子12に細かく分割することで、1セットの小型発光素子13内の膜状態のむらを高精細に検知が可能であることが分かる。
【0121】
図14は、
図13に示す発光素子における明るさの様子を表す図である。
図14の元データは、本実験において形成された発光素子のうち、顕微鏡を用いて平面視したときの画像の明るさ(グレースケール化した後の階調値0から255)を、
図13に示す長辺である一点鎖線A1に沿って取得したデータである。そして、元データを、整数個に分割し、小型発光素子のサイズを想定した所定長さ「z」(発光素子の長辺である一点鎖線A1の一部の長さ)ごとに平均した。この平均値のばらつき(ここでは最大値-最小値とした)を、zを変えて調べた。
【0122】
図14に示す「+」は元データ(すなわち発光素子の長辺)を9μm毎に約10分割してそれぞれのばらつきを示すデータである。
図14に示す「X」は元データ(すなわち発光素子の長辺)を30μm毎に約3分割してそれぞれのばらつきを示すデータである。
図15は、所定長さ「z」に対するばらつきの変化を表す図である。
【0123】
図15に示すように、zに示す小型発光素子のサイズは小さい方が、ばらつきが大きく、特に、ばらつきの変化は、zが約20μm以下で急激に大きくなっていることが分かる。これは、発光層の膜状態のむらの長さスケールが概ね20μmであるため、zをこのサイズより小さくすると、発光層の膜状態のむらを検知できるためと考えられる。このことは測定前に予想できたことではなく、発光層の膜状態のむらを測定して初めて概ねzが20μm以下から予想を超える程ばらつきが大きくなっていることが分かったものであり、すなわち、小型発光素子の短辺の長さを20μm以下にすることで発光層の膜状態のむらに起因した膜特性(電流-電圧特性等)のばらつきを、予想を超える程、顕著に精度よく効率的に検知できることが分かったものである。一方で、小型発光素子の製造が可能なサイズは、1μm程度である。
【0124】
以上より、小型発光素子の短辺の長さは、1μm以上20μm以下が好ましい。これにより、小型発光素子の製造が可能な範囲において、精度よく、発光素子の発光層の膜状態のむらの検知が可能であることが分かった。さらに、小型発光素子の短辺の長さは、1μm以上15μm以下がより好ましく、1μm以上10μm以下がさらに好ましく、1μm以上5μm以下がさらに好ましい。
【0125】
図16は、実施形態に係る表示装置1における1セットの小型発光素子13および主発光素子11それぞれの画素回路の配列の様子を表す図である。
図16に示すように、表示装置1は、少なくとも1セットの小型発光素子13の駆動を制御する画素回路である少なくとも1セットの第1画素回路50と、複数の主発光素子11の駆動を制御する画素回路である複数の第2画素回路40と、AD(アナログ・デジタル)コンバータ(電圧取得部)60と、電源制御部70とを備えている。また、表示装置1は、複数のデータ信号線DLと、複数の走査信号線GLとを備えている。
【0126】
複数のデータ信号線DLは、図示しないデータドライバから階調値に対応したデータ信号が供給される。複数の走査信号線GLは、図示しないゲートドライバから、複数の走査信号線GLの何れかを選択するための走査信号が供給される。複数のデータ信号線DLと複数の走査信号線GLは、表示領域10において交差するように設けられている。
【0127】
主発光素子11および第2画素回路40は、複数のデータ信号線DLと複数の走査信号線GLとの交差部分に対応して設けられている。第2画素回路40は、データ信号線DLおよび走査信号線GLそれぞれと接続されている。主発光素子11は、第2画素回路40と接続されている。
【0128】
少なくとも1セットの第1画素回路50は、少なくとも1セットの小型発光素子13に対応して同じ個数だけ設けられている。本実施形態では、例えば、少なくとも1セットの小型発光素子13の個数は1つなので、少なくとも1セットの第1画素回路50の個数も1つである。
【0129】
1セットの第1画素回路50は、少なくとも1セットの小型発光素子13に含まれる複数の小型発光素子12それぞれの第1電極27と電気的に接続される複数の薄膜トランジスタTr11(
図18)を含む。1セットの第1画素回路50は、複数の第1画素回路52を備えている。複数の第1画素回路52は、複数の小型発光素子12に対応して同じ個数だけ設けられている。本実施形態では、例えば、1セットの第1画素回路50は、5個の第1画素回路52を備えている。なお、1セットの第1画素回路50の個数は5個に限定されるものではない。
【0130】
第1画素回路52は、小型発光素子12の駆動を制御する。複数の第1画素回路52は、データ信号線DLと接続されている。小型発光素子12は第1画素回路52と接続されている。
【0131】
ADコンバータ60は、複数の第1画素回路52および複数の小型発光素子12と接続されている。ADコンバータ60は、複数の小型発光素子12それぞれのアナログの駆動電圧を取得し、当該取得したアナログの駆動電圧をデジタル信号に変換する。これにより小型発光素子12の電圧情報について、デジタル処理を行うことができ、高精度な不良品選別および発光輝度補正が可能である。
【0132】
電源制御部70は、ADコンバータ60と接続されている。電源制御部70は、ADコンバータ60が取得した複数の小型発光素子12毎の駆動電圧に応じて、複数の主発光素子11の第1電極21または第2電極25に供給する電流を制御する。例えば、電源制御部70は、複数の小型発光素子12毎の駆動電圧に応じて、ソースドライバから出力されるデータ信号の階調に応じた値を補正する。これにより、電源制御部70は、複数の小型発光素子12の膜状態のむらに応じて、複数の主発光素子11に供給する電流を制御する。
【0133】
なお、複数の小型発光素子12毎の駆動電圧に応じて主発光素子11の電流を補正しない場合、表示装置1は、電源制御部70を省略した構成としてもよい。
【0134】
図17は、実施形態に係る第2画素回路40の回路構成の一例を示す図である。
図17に示すように、第2画素回路40は、例えば、薄膜トランジスタTr1と、薄膜トランジスタTr2と、コンデンサC1とを備えている。薄膜トランジスタTr1は、主発光素子11を駆動させる駆動トランジスタである。薄膜トランジスタTr1のうち、ソース電極は第1レベル(例えばハイレベル)の電圧が印加されている電源線と接続されており、ゲート電極は薄膜トランジスタTr2のドレイン電極およびコンデンサC1の一方の端子と接続されており、ドレイン電極は、主発光素子11のアノード電極(例えば、第1電極21)と接続されている。薄膜トランジスタTr2は、走査信号線GLから供給される走査信号に応じて、発光させる主発光素子11を選択する選択トランジスタである。薄膜トランジスタTr2のうち、ソース電極はデータ信号線DLと接続されており、ゲート電極は走査信号線GLと接続されており、ドレイン電極は薄膜トランジスタTr1のゲート電極およびコンデンサC1の一方の端子と接続されている。
【0135】
主発光素子11のうち薄膜トランジスタTr1接続されたアノード電極とは反対側のカソード電極(例えば、第2電極25)およびコンデンサC1の一方の端子とは反対側の他方の端子は、それぞれ、第2レベル(例えばローレベル)の電圧が印加されている電源線と接続されることで接地されている。
【0136】
走査信号線GLから走査信号が薄膜トランジスタTr2に供給されることで、薄膜トランジスタTr2がオンになり、データ信号線DLからデータ信号が薄膜トランジスタTr2を介して薄膜トランジスタTr1へ供給される。これにより、データ信号に応じた電流が主発光素子11に流れることで、主発光素子11が発光する。
【0137】
なお、
図17を用いて説明した第2画素回路40の回路構成および回路の動作は一例であり、上述した説明に限定されるものではない。
【0138】
図18は、実施形態に係る1セットの第1画素回路50に含まれる複数の第1画素回路52の回路構成の一例を示す図である。複数の第1画素回路52は、それぞれ、例えば、薄膜トランジスタTr11と、コンデンサC2とを備えている。薄膜トランジスタTr11は、小型発光素子12を駆動させる駆動トランジスタである。薄膜トランジスタTr11のうち、ソース電極は第1レベル(例えばハイレベル)の電圧が印加されている電源線と接続されており、ゲート電極はデータ信号線DLおよびコンデンサC1の一方の端子と接続されており、ドレイン電極は、小型発光素子12のアノード電極(例えば、第1電極27)と接続されている。
【0139】
小型発光素子12のうち薄膜トランジスタTr11と接続されたアノード電極とは反対側のカソード電極(例えば、第2電極25)およびコンデンサC2の一方の端子とは反対側の他方の端子は、それぞれ、第2レベル(例えばローレベル)の電圧が印加されている電源線と接続されることで接地されている。
【0140】
データ信号線DLからデータ信号が薄膜トランジスタTr11へ供給される。これにより、データ信号に応じた電流が主発光素子11に流れることで、小型発光素子12が発光する。
【0141】
なお、複数の小型発光素子12は、それぞれ個別に選択される必要がないため、複数の第1画素回路52は、走査信号線GLとは接続されていなくてもよい。なお、複数の第1画素回路52は、第2画素回路40と同じ回路構成(すなわち走査信号線GLと接続される薄膜トランジスタTr2を備える回路構成)であってもよい。
【0142】
ADコンバータ60の複数の入力端子60aは、それぞれ、複数の小型発光素子12それぞれのアノード電極および薄膜トランジスタTr11のドレイン電極間に接続されている。そして、複数の入力端子60aそれぞれには、小型発光素子12それぞれに印加されたアナログの駆動電圧が入力され、ADコンバータ60は、複数の入力端子60aそれぞれに入力されたアナログの駆動電圧をデジタル信号に変換し、例えば、電源制御部70(
図16参照)へ出力する。
【0143】
なお、
図18を用いて説明した第1画素回路52の回路構成および回路の動作は一例であり、上述した説明に限定されるものではない。
【0144】
図19は、実施形態に係る表示装置1における電源制御部70(
図16参照)のデータ信号の補正方法を説明する図である。電源制御部70がADコンバータ60からのデジタル信号を取得して主発光素子11に供給されるデータ信号を補正する方法の一例について説明する。電源制御部70は、ADコンバータ60からのデジタル信号に基づいて、以下のように主発光素子11の電流密度の補正を行う。
【0145】
例えば、予め主発光素子11および1セットの小型発光素子13(1セットあたり小型発光素子12の個数をm個とする)を多く測定し、1セットの小型発光素子13の特性ばらつきと、主発光素子11との輝度および電流特性の相関を調べておく。ここで、1セットの小型発光素子13の特性ばらつきσとは、1個からm個の小型発光素子12に所定の電流密度J=J0を流した時の、小型発光素子12(i)の電圧値Viの標準偏差σ=1/(m-1)Σi(Vi―Vave)2とすることができる。ただし、Vave=1/mΣiViは各Viの平均値である。なお、これに限定されず、最大値と最小値の差σ=max[Vi]-min[Vi]としてもよい。また、所定の閾値VCより大きい(あるいは小さい)Viの数としてもよい。
【0146】
所定の電流密度J=J
0を流した時のσと主発光素子11の輝度Lの関係(
図19のグラフに示す関係)を求めておく。ばらつきσが大きい方が、主発光素子11の発光効率が低下し、輝度も低下する。この関係をテーブルとして記憶しておく。
【0147】
表示装置1の使用時における小型発光素子12の測定は、各小型発光素子12に流す電流密度をJ=J0としたときのばらつきσuを測定する。この結果をテーブルに対応させると、J=J0における素子輝度Luが求められる。所望の輝度をLdとするとき、主発光素子11は電流密度J=Ld/Lu*J0で駆動されればよい。
【0148】
図20は、実施形態の変形例1に係る1セットの第1画素回路50に含まれる複数の第1画素回路52の回路構成の一例を示す図である。
図21は、実施形態の変形例2に係る1セットの第1画素回路50に含まれる複数の第1画素回路52の回路構成の一例を示す図である。
【0149】
ADコンバータ60の入力端子60aの個数(すなわちチャンネル数)は、2個、4個、8個などが多い。そこで、1セットの小型発光素子13に含まれる小型発光素子12と、1セットの第1画素回路50に含まれる第1画素回路50それぞれの個数は、
図20に示すように2個であってもよく、または、
図21に示すように4個であってもよい。これにより、汎用性のあるADコンバータ60を用いることができる。
【0150】
図22は、実施形態の変形例3に係る表示装置1の回路構成の一例を示す図である。
図22に示すように、表示装置1は、ADコンバータ60に換えて、基準電圧線73、複数の比較器(電圧取得部)71および計数回路(電圧取得部)61を備えていてもよい。これによりADコンバータ60を省略することで、回路およびその出力の演算処理を簡単化することができる。
【0151】
図22に示す表示装置1では、複数の比較器71は、複数の小型発光素子12と対応して同じ個数、設けられている。複数の比較器71は、それぞれ、第1入力端子が小型発光素子12のアノード電極および薄膜トランジスタTr11のドレイン電極間に接続されており、第2入力端子が基準電圧線73と接続されており、出力端子が計数回路61の入力端子61aと接続されている。
【0152】
図23は、実施形態の変形例4に係る表示装置1の概略構成を表す平面図である。表示装置1は、複数の主発光素子11として、赤色光を発光する複数の主発光素子11rだけでなく、赤色光よりもピーク波長が短い緑色光(第2色の光)を発光する複数の主発光素子11g、および、赤色光および緑色光よりもピーク波長が短い青色光(第3色の光)を発光する複数の主発光素子11bを備えていてもよい。さらに、表示装置1は、少なくとも1セットの小型発光素子13として、複数セットの小型発光素子13を備えていてもよい。
【0153】
図23に示す例では、表示装置1は、複数セットの小型発光素子13として、主発光素子11r・11g・11bの発光色毎に1セットの小型発光素子13を備えている例を示している。例えば、表示装置1は、少なくとも1セットの小型発光素子13として、赤色光を発光する1セットの小型発光素子13rに加え、緑色光を発光する1セットの小型発光素子13g、および、青色光を発光する1セットの小型発光素子13bを備えている。このような構成によって、材料の異なる量子ドット毎にばらつきを検知することができるので、より高精度な不良品選別および発光輝度補正が可能となる。
【0154】
例えば、1セットの小型発光素子13gは複数の主発光素子11gと発光色が同じである。1セットの小型発光素子13gが備える発光層23と複数の主発光素子11gが備える発光層23とは、同一の材料を用いて同一の工程にて形成される。複数の主発光素子11gが備える発光層23に含まれる複数の量子ドット23と、1セットの小型発光素子13gが備える発光層23に含まれる複数の量子ドット23とは同じ種類の材料を含有する。1セットの小型発光素子13gは、複数の小型発光素子12g(例えば5個の小型発光素子12g)を備えている。このように、例えば、複数の主発光素子11gが備える発光層23と1セットの小型発光素子13gが備える発光層23とを同一材料を用いて同一工程にて形成することで、主発光素子11と1セットの小型発光素子13とにおいて、各層の発光むらの程度を揃えることができ、高精度な不良品選別および発光輝度補正が可能である。
【0155】
例えば、1セットの小型発光素子13bは複数の主発光素子11bと発光色が同じである。1セットの小型発光素子13bが備える発光層23と複数の主発光素子11bが備える発光層23とは、同一の材料を用いて同一の工程にて形成される。複数の主発光素子11bが備える発光層23に含まれる複数の量子ドット23と、1セットの小型発光素子13bが備える発光層23に含まれる複数の量子ドット23とは同じ種類の材料を含有する。1セットの小型発光素子13bは、複数の小型発光素子12b(例えば5個の小型発光素子12b)を備えている。このように、例えば、複数の主発光素子11bが備える発光層23と、1セットの小型発光素子13bが備える発光層23とを同一材料を用いて同一工程にて形成することで、主発光素子11bと1セットの小型発光素子13bにおいて、各層の発光むらの程度を揃えることができ、高精度な不良品選別および発光輝度補正が可能である。
【0156】
なお、表示装置1は、少なくとも1セットの小型発光素子13として、主発光素子11r・11g・11bの発光色毎に複数セットの小型発光素子13を備えるのではなく、特定の発光色のみ1セットの小型発光素子13を備えていてもよい。例えば、表示装置1は、赤色光、緑色光および青色光のうち青色光を発光する1セットの小型発光素子13bを備えていてもよい。赤色光、緑色光および青色光のうち青色光は量子ドットの発光効率が低い傾向がある。このため、表示装置1は、青色光を発光する1セットの小型発光素子13bを備えていることで、発光層23の膜状態のむらと発光効率との両立が難しい青色光を発光する発光層23の膜状態のむらを検知することができるので、特定の発光色のみ1セットの小型発光素子13を備えている場合であっても効果的に不良品選別および発光輝度補正が可能となる。
【0157】
図24は、実施形態の変形例5に係る表示装置1の概略構成を表す平面図である。
図24に示す表示装置1は、
図1に示した表示装置1に、少なくとも1セットの小型発光素子13rを、XY方向(行列方向)に並ぶ複数の主発光素子11rに対し、各行に、1セットの小型発光素子13rを設けた構成である。
図25は、実施形態の変形例5に係る表示装置1の回路構成を表す図である。
図25に示すように、表示装置1は、ADコンバータ60が各行に設けられ、それぞれ、1セットの小型発光素子13rと接続されている。
【0158】
図24および
図25に示す表示装置1は、行の数だけ1セットの小型発光素子13rを備えている。これにより、発光層23の膜状態のむらを、行ごとに検知することができ、より詳細に同一装置内での行ごとの膜状態のむらのばらつきがあった場合でも検知することができる。
【0159】
そして、発光層23の膜状態のむらが所定の範囲外である(1セットの小型発光素子13rの電流-電圧特性が所定の閾値を超える)行の数が規定値以上である場合、表示装置1の製造過程における検査工程において、製造過程中の表示装置1は不良品として、製造ラインから排除されればよい。そうすることで、例えば、製造過程中の表示装置1における主発光素子11rの発光輝度をモニタするような大掛かりな検査装置を設けることなく、各行の1セットの小型発光素子13rの電流-電圧特性をモニタするだけで、各行の発光層23の膜状態のむらを検査することができる。
【0160】
または、例えば、発光層23の膜状態のむらが所定の範囲外であることが検知された場合、表示装置1の完成後、主発光素子11rに供給される駆動電圧を所定の範囲外となった行ごとに補正すればよい。つまり、表示装置1に設けられ複数の主発光素子11rそれぞれの発光効率が低下していると推定できるため、主発光素子11rの発光輝度をモニタすることなく、より詳細に予め設定した計算式(後述する)およびテーブルに基づいて、主発光素子11rの駆動電圧を行ごとに大きくすることで、所定の発光輝度を得ることができる。
【0161】
また、完成した表示装置1の使用によって発光層23の膜状態のむらが経時変化したときに、主発光素子11rに供給される駆動電圧を補正するようにしてもよい。そうすることで、表示装置1の使用時の複数の主発光素子11rの経時変化による表示品質の劣化にも、より詳細に、すなわち行ごとに対応して補正することができる。この結果、長期間に渡り、発光層23の行ごとの膜状態のむらの劣化の違いに起因する行ごとの主発光素子11rの発光輝度の違いを抑制することができ、表示装置1の表示品質を高く保つことができる。
【0162】
なお、本変形例5に係る表示装置1においても、主発光素子11および1セットの小型発光素子13の発光色は、赤色光に限らず、緑色光、青色光、または、白色光など、赤色光以外の色の光であってもよい。
【0163】
図26は、実施形態の変形例6に係る表示装置1の回路構成を表す図である。
図26に示すように、
図24に示した表示装置1は、
図26に示す回路構成を備えていてもよい。
【0164】
図26に示すように、表示装置1は、ADコンバータ60を各行に設けるのではなく、1セットの小型発光素子13に含まれる小型発光素子12の個数分の薄膜トランジスタTr12と、複数の出力配線75と、1つのADコンバータ60とを備えていてもよい。
【0165】
各薄膜トランジスタTr12は、ゲート電極が走査信号線GLと接続され、ソース電極が第1画素回路および小型発光素子12のアノード電極と接続され、ドレイン電極が出力配線75と接続されている。そして、複数の出力配線75は、それぞれADコンバータ60と接続されている。
【0166】
これにより、走査信号線GLからの走査信号によって、薄膜トランジスタTr12がオンとなり、オンとなった薄膜トランジスタTr12を介して、小型発光素子12のアナログの駆動電圧が出力配線75を介してADコンバータ60へ入力される。そして、ADコンバータ60は、入力されたアナログの駆動電圧をデジタル信号へ変換し、電源制御部70へ出力する。これにより、ADコンバータ60の構成を減らし、回路構成を簡単にすることができる。
【0167】
図27は、実施形態の変形例7に係る表示装置1の概略構成を表す平面図である。表示装置1は
図27に示す構成であってもよい。
図27に示す表示装置1は、
図23に示した変形例4に係る表示装置1を、発光色毎の複数セットの小型発光素子13を行ごとに設けた構成である。
図27に示すように、表示装置1は、少なくとも1セットの小型発光素子13として、赤色光を発光する1セットの小型発光素子13r、緑色光を発光する1セットの小型発光素子13g、および、青色光を発光する1セットの小型発光素子13bを、行ごとに備える。
【0168】
そうすることで、さらに詳細に各行において色ごとに異なる膜状態のむらを検知することができるようになる。また、表示装置1の製造過程中の良品と不良品とを選別する検査精度をさらに向上させ、不良品をさらに精度よく排除することができる。また、表示装置1の完成後に、行ごと、かつ、色ごとに主発光素子11r・11g・11bそれぞれの駆動電圧の補正を行うことができるため、さらに詳細に、主発光素子11r・11g・11bそれぞれの発光輝度の低下に対応して駆動電圧を補正することで、主発光素子11r・11g・11bそれぞれの所定の発光輝度を得ることができる。さらに、表示装置1の完成後の各行における主発光素子11r・11g・11b毎の膜状態のむらの経時変化にもさらに詳細に対応して補正することができるため、長期間にわたりさらに高い表示品質を保つことができる。
【0169】
なお、表示装置1は、1セットの小型発光素子13r、1セットの小型発光素子13gおよび1セットの小型発光素子13bを行ごとに備えるのではなく、特定の発光色の1セットまたは複数セットの小型発光素子13を行ごとに備えていてもよい。例えば、表示装置1は、赤色光、緑色光および青色光のうち量子ドットの発光効率が低い青色光を発光する1セットの小型発光素子13bを行ごとに備え、1セットの小型発光素子13rおよび1セットの小型発光素子13gを備えていない構成であってもよい。これにより、発光層23の膜状態のむらと発光効率との両立が難しい青色光を発光する発光層23の膜状態のむらを、行ごとに検知することができる。
【0170】
図28は、実施形態の変形例8に係る表示装置1の概略構成を表す平面図である。表示装置1は
図28に示す構成であってもよい。
図28に示す表示装置1は、
図1に示した表示装置1を、複数の主発光素子11rそれぞれ毎に1セットの小型発光素子13rを設けた構成である。
【0171】
図29は、実施形態の変形例8に係る表示装置1の回路構成を表す図である。
図29に示すように、
図26に示した複数の出力配線75およびADコンバータ60を各列に設けてもよい。これにより、列ごとにADコンバータ60からのデジタル信号が電源制御部70へ出力される。
【0172】
図28および
図29に示す表示装置1によると、複数の主発光素子11rそれぞれごとに発光層23の膜状態のむらを1セットの小型発光素子13rによって検知することができる。すなわち、さらに詳細に表示装置1の表示面内で異なる膜状態のむらを検知することができるようになる。それによって、表示装置1の製造過程中の不良品の排除もさらに精度よく検査することができ、良品と不良品とを選別する検査精度をさらに向上させることができる。また、表示装置1の完成後に、複数の主発光素子11rそれぞれ毎に駆動電圧の補正を行うことができるため、さらに詳細に、複数の主発光素子11rそれぞれ毎の発光輝度の低下に対応して駆動電圧を補正することで、複数の主発光素子11rそれぞれの所定の発光輝度を得ることができる。さらに、表示装置1の完成後の複数の主発光素子11rそれぞれ毎の経時変化にも対応してさらに詳細に補正することができるため、長期間にわたりさらに高い表示品質を保つことができる。
【0173】
なお、
図28および
図29に示す表示装置1の場合、1セットの小型発光素子13rは表示領域10にマトリクス状に設けられることになり、1セットの小型発光素子13rを、画像を表示する際に主発光素子11と共に発光させてもよい。そうすることで、表示装置1をより明るくすることができる。ただし、複数の小型発光素子12rを備える1セットの小型発光素子13rよりも、主発光素子11の方が発光効率がよい。このため、表示装置1は、画像を表示する際は、複数の主発光素子11と複数の1セットの小型発光素子13rとのうち、複数の主発光素子11の方を発光させることが好ましい。
【0174】
なお、本変形例8に係る表示装置1においても、主発光素子11および1セットの小型発光素子13の発光色は、赤色光に限らず、緑色光、青色光、または、白色光など、赤色光以外の色の光であってもよい。
【0175】
図30は、実施形態の変形例9に係る表示装置1の概略構成を表す平面図である。表示装置1は
図30に示す構成であってもよい。
図30に示す表示装置1は、
図27に示した表示装置1のうち、少なくとも1セットの小型発光素子13を、発光色が同じ主発光素子11毎に設けた構成である。
図30に示す表示装置1は、赤色光を発光する主発光素子11rに隣接して発光色が同じ赤色光を発光する1セットの小型発光素子12rが設けられ、緑色光を発光する主発光素子11gに隣接して発光色が同じ緑色光を発光する1セットの小型発光素子12gが設けられ、青色光を発光する主発光素子11bに隣接して発光色が同じ青色光を発光する1セットの小型発光素子12bが設けられている。
【0176】
そうすることで、さらに詳細に表示装置1の表示面内で色ごとに異なる膜状態のむらを検知することができる。また、表示装置1の製造過程中の良品と不良品とを選別する検査精度をさらに向上させ、不良品をさらに精度よく排除することができる。また、表示装置1の完成後に、表示面内の複数の主発光素子11r・11g・11bそれぞれ毎に駆動電圧の補正を行うことができるため、さらに詳細に、複数の主発光素子11r・11g・11bそれぞれ毎に発光輝度の低下に対応して駆動電圧を補正することで、複数の主発光素子11r・11g・11bそれぞれ毎に所定の輝度を得ることができる。さらに、表示装置1の完成後の複数の主発光素子11r・11g・11bそれぞれの経時変化にもさらに詳細に対応して補正することができるため、長期間にわたりさらに高い表示品質を保つことができる。
【0177】
なお、表示装置1は、1セットの小型発光素子13r、1セットの小型発光素子13gおよび1セットの小型発光素子13bを、発光色が同じ主発光素子11ごとに備えるのではなく、特定の発光色の1セットの小型発光素子13を発光色が同じ主発光素子11に備えていてもよい。例えば、表示装置1は、赤色光、緑色光および青色光のうち量子ドットの発光効率が低い青色光を発光する1セットの小型発光素子13bを主発光素子11bに隣接して設け、1セットの小型発光素子13rおよび1セットの小型発光素子13gを備えていない構成であってもよい。これにより、発光層23の膜状態のむらと発光効率との両立が難しい青色光を発光する発光層23の膜状態のむらを、主発光素子11bごとに検知することができる。
【0178】
また、前述した実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【0179】
なお、上記実施形態では、主発光素子と1セットの小型発光素子が凡そ同じ大きさで記載しているが、図面に関しては特に言及しない限り必ずしもスケールは重要ではなく、単なる一例を示しているに過ぎず、本発明の一態様はそれに限定するものではない。例えば、1セットの小型発光素子は、主発光素子より大きくても、小さくても構わない。また、その小型発光素子の大きさも主発光素子を分割した大きさである必要はなく、すなわち、主発光素子の短辺と小型発光素子の長辺の長さが対応する長さである必要はなく、互いに全く関係のないサイズ、形状であっても構わない。
【0180】
また、小型発光素子は、製品の動作時において、主発光素子と共に発光させても発光させなくても構わない。発光させた場合は、表示装置の単位面積当たりの輝度を向上させることができ、発光させない場合でも、小型発光素子のサイズや発光色を気にせず作成することができ主発光素子の占有率を上げることができ、また主発光素子独自に効率よく設計でき発光効率をさらに高く設計できるので、単位面積当たり輝度および発光効率を向上させることができる。