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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】測定器
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20240605BHJP
【FI】
G01L3/10 311
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023046311
(22)【出願日】2023-03-23
【審査請求日】2024-03-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】山田 計
(72)【発明者】
【氏名】大島 良太
(72)【発明者】
【氏名】長塩 拓馬
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-21747(JP,U)
【文献】特開2005-134220(JP,A)
【文献】特開2013-140129(JP,A)
【文献】特開2021-135104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/00-3/26
G01L 1/00-1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象軸に固定される測定器であって、
起歪体である第1起歪体と、当該第1起歪体の両端にそれぞれ連結する第1固定部と第2固定部とを備えた第1起歪部と、
起歪体である第2起歪体と、当該第2起歪体の両端にそれぞれ連結する第3固定部と第4固定部を備えた第2起歪部と、
前記第1起歪体と前記第2起歪体の少なくとも一方に固定された歪ゲージと、
相互に締結される第1ブロックと第2ブロックとを備えた第1把持部と、
相互に締結される第3ブロックと第4ブロックとを備えた第2把持部とを備え、
前記第1ブロックと前記第2ブロックは、前記第1固定部と前記第3固定部で前記測定対象軸を挟持するように、前記第1ブロックと前記測定対象軸との間に前記第1固定部を挟むと共に、前記第2ブロックと前記測定対象軸との間に前記第3固定部を挟んで締結され、
前記第3ブロックと前記第4ブロックは、前記第2固定部と前記第4固定部で前記測定対象軸を挟持するように、前記第3ブロックと前記測定対象軸との間に前記第2固定部を挟むと共に、前記第4ブロックと前記測定対象軸との間に前記第4固定部を挟んで締結され、
前記第1固定部と前記第3固定部で前記測定対象軸を挟持し前記第2固定部と前記第4固定部で前記測定対象軸を挟持することにより当該測定器は前記測定対象軸に固定され、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、前記第1起歪体と前記第2起歪体が前記測定対象軸に接しない形状を、前記第1起歪部と前記第2起歪部は有することを特徴とする測定器。
【請求項2】
請求項1記載の測定器であって、
前記第1ブロックと前記第2ブロックと前記第3ブロックと前記第4ブロックの、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において当該測定対象軸と向き合う面である相対面は、当該状態において当該測定対象軸の軸方向に見て中央部が当該測定対象軸の径方向に凹む形状を有し、
前記第1ブロックの前記相対面には、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において前記測定対象軸の軸方向に伸びる溝であって、前記第1固定部が一部を当該溝から突出させた形態で嵌合する溝が設けられ、
前記第3ブロックの前記相対面には、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において前記測定対象軸の軸方向に伸びる溝であって、前記第2固定部が一部を当該溝から突出させた形態で嵌合する溝が設けられ、
前記第2ブロックの前記相対面には、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において前記測定対象軸の軸方向に伸びる溝であって、前記第3固定部が一部を当該溝から突出させた形態で嵌合する溝が設けられ、
前記第4ブロックの前記相対面には、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において前記測定対象軸の軸方向に伸びる溝であって、前記第4固定部が一部を当該溝から突出させた形態で嵌合する溝が設けられていることを特徴とする測定器。
【請求項3】
請求項1記載の測定器であって、
2つの前記第1起歪部と
2つの前記第2起歪部とを備え、
前記2つの第1起歪部の前記第1固定部は前記第1ブロックに、前記2つの第1起歪部の前記第2固定部は前記第3ブロックに、当該2つの第1起歪部が相互に干渉しない配置となるように固定されており、前記2つの第2起歪部の前記第3固定部は前記第2ブロックに、前記2つの第2起歪部の前記第4固定部は前記第4ブロックに、当該2つの第2起歪部が相互に干渉しない配置となるように固定されていることを特徴とする測定器。
【請求項4】
請求項3記載の測定器であって、
前記各第1起歪部の前記第1起歪体は、当該第1起歪部の前記第1固定部と前記第2固定部を直線状に連結する形状を有し、
前記各第2起歪部の前記第2起歪体は、当該第2起歪部の前記第3固定部と前記第4固定部を直線状に連結する形状を有し、
前記2つの第1起歪部の前記第1固定部は前記第1ブロックに、前記2つの第1起歪部の前記第2固定部は前記第3ブロックに、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、当該2つの第1起歪部の前記第1起歪体が前記測定対象軸の軸方向に平行して延びるように固定されており、
前記2つの第2起歪部の前記第3固定部は前記第2ブロックに、前記2つの第2起歪部の前記第4固定部は前記第4ブロックに、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、当該2つの第2起歪部の前記第2起歪体が前記測定対象軸の軸方向に平行して延びるように固定されていることを特徴とする測定器。
【請求項5】
請求項1記載の測定器であって、
前記第1固定部と前記第2固定部と前記第3固定部と前記第4固定部の、当該測定器が前記測定対象軸に固定されたときに当該測定対象軸と向き合う側となる面は、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、当該測定対象軸の軸方向と当該測定対象軸の当該面に向かう径方向との双方に直交する方向からみて、前記軸方向の中央部が前記測定対象軸の方向に膨らんだ曲面となっていることを特徴とする測定器。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の測定器であって、
前記歪ゲージは、前記第1起歪体と前記第2起歪体の少なくとも一方の前記測定対象軸の周方向側となる面に固定されていることを特徴とする測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、測定対象軸のトルクを測定する、後付け可能な測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸のトルクを計測する、後付け可能な測定器としては、図6に示す測定器が知られている(たとえば、特許文献1)。
図6aは回転軸の軸方向と直交する方向に見た測定器の構成を、図6bは回転軸の軸方向に見た(図6aの右側から見た)測定器の構成を示している。
この測定器は、回転軸600を挟持する2分割された第1上台座611と第1下台座612よりなる第1取付台座613と、第1取付台座613による挟持面から軸方向に所定距離だけ離隔された位置で回転軸600を挟持する2分割された第2上台座621と第2下台座622よりなる第2取付台座623と、第1取付台座613と第2取付台座623のそれぞれに両端が固定される梁状の起歪部630と、起歪部630の周方向側面の中間部に添着した歪ゲージ631を備えており、歪ゲージ631で検出したひずみ量より、回転軸600のトルクを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実登3029548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6に示した測定器は、回転軸600の捻れ量を起歪部630の歪み量に変換し、起歪部630の歪み量から回転軸600のトルクを検出する構成となっているが、回転軸600の捻れに伴い、第1取付台座613や第2取付台座623が有意に変形した場合、起歪部630の歪み量が回転軸600の捻れ量を正しく表さなくなり、回転軸600のトルクを正しく検出できなくなる。
【0005】
また、回転軸600の捻れに伴い加わる力によって、第1取付台座613と第2取付台座623の回転軸600に対する滑りによる正規の位置からのずれが生じたり、回転軸600の捻れが解消しても元の正規の位置に復帰しなくなったりすることがあり、これらの場合にも回転軸600のトルクを正しく検出できなくなる。
【0006】
そこで、本発明は、測定対象軸のトルク等を、より精度良く計測できる、後付け可能な測定器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、測定対象軸に固定される測定器に、起歪体である第1起歪体と、当該第1起歪体の両端にそれぞれ連結する第1固定部と第2固定部とを備えた第1起歪部と、起歪体である第2起歪体と、当該第2起歪体の両端にそれぞれ連結する第3固定部と第4固定部を備えた第2起歪部と、前記第1起歪体と前記第2起歪体の少なくとも一方に固定された歪ゲージと、相互に締結される第1ブロックと第2ブロックとを備えた第1把持部と、相互に締結される第3ブロックと第4ブロックとを備えた第2把持部とを備えたものである。
【0008】
前記第1ブロックと前記第2ブロックは、前記第1固定部と前記第3固定部で前記測定対象軸を挟持するように、前記第1ブロックと前記測定対象軸との間に前記第1固定部を挟むと共に、前記第2ブロックと前記測定対象軸との間に前記第3固定部を挟んで締結され、前記第3ブロックと前記第4ブロックは、前記第2固定部と前記第4固定部で前記測定対象軸を挟持するように、前記第3ブロックと前記測定対象軸との間に前記第2固定部を挟むと共に、前記第4ブロックと前記測定対象軸との間に前記第4固定部を挟んで締結される。
【0009】
そして、前記第1固定部と前記第3固定部で前記測定対象軸を挟持し前記第2固定部と前記第4固定部で前記測定対象軸を挟持することにより当該測定器は前記測定対象軸に固定され、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、前記第1起歪体と前記第2起歪体が前記測定対象軸に接しない形状を、前記第1起歪部と前記第2起歪部は有している。
【0010】
このような測定器によれば、歪ゲージによって歪みが検出される第1起歪部や第2起歪部を、第1把持部と第2把持部で測定対象軸に押止する形態で直接、測定対象軸に固定する。したがって、後付け可能な測定器において、図6に示した第1取付台座や第2取付台座などのような起歪部を測定対象軸に固定するための部材の変形による影響の発生を排除して、測定対象軸のトルク等を、より精度良く計測できる。
【0011】
この測定器は、前記第1ブロックと前記第2ブロックと前記第3ブロックと前記第4ブロックの、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において当該測定対象軸と向き合う面である相対面を、当該状態において当該測定対象軸の軸方向に見て中央部が当該測定対象軸の径方向に凹む形状としてよい。また、この場合、前記第1ブロックの前記相対面に、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において前記測定対象軸の軸方向に伸びる溝であって、前記第1固定部が一部を当該溝から突出させた形態で嵌合する溝を設け、前記第3ブロックの前記相対面には、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において前記測定対象軸の軸方向に伸びる溝であって、前記第2固定部が一部を当該溝から突出させた形態で嵌合する溝を設け、前記第2ブロックの前記相対面には、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において前記測定対象軸の軸方向に伸びる溝であって、前記第3固定部が一部を当該溝から突出させた形態で嵌合する溝を設け、前記第4ブロックの前記相対面には、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において前記測定対象軸の軸方向に伸びる溝であって、前記第4固定部が一部を当該溝から突出させた形態で嵌合する溝を設けてよい。
【0012】
また、この測定器に、2つの前記第1起歪部と2つの前記第2起歪部とを備えてもよい。この場合、前記2つの第1起歪部の前記第1固定部は前記第1ブロックに、前記2つの第1起歪部の前記第2固定部は前記第3ブロックに、当該2つの第1起歪部が相互に干渉しない配置となるように固定し、前記2つの第2起歪部の前記第3固定部は前記第2ブロックに、前記2つの第2起歪部の前記第4固定部は前記第4ブロックに、当該2つの第2起歪部が相互に干渉しない配置となるように固定する。
【0013】
この場合、前記各第1起歪部の前記第1起歪体を、当該第1起歪部の前記第1固定部と前記第2固定部を直線状に連結する形状とし、記各第2起歪部の前記第2起歪体を、当該第2起歪部の前記第3固定部と前記第4固定部を直線状に連結する形状とし、前記2つの第1起歪部の前記第1固定部を前記第1ブロックに、前記2つの第1起歪部の前記第2固定部を前記第3ブロックに、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、当該2つの第1起歪部の前記第1起歪体が前記測定対象軸の軸方向に平行して延びるように固定し、前記2つの第2起歪部の前記第3固定部を前記第2ブロックに、前記2つの第2起歪部の前記第4固定部を前記第4ブロックに、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、当該2つの第2起歪部の前記第2起歪体が前記測定対象軸の軸方向に平行して延びるように固定してよい。
【0014】
これらのように測定器を構成することにより、第1把持部や第2把持部が測定対象軸の中心軸と直交する軸まわりに回転してしまう挙動の発生を抑制できる。
また、この測定器において、前記第1固定部と前記第2固定部と前記第3固定部と前記第4固定部の、当該測定器が前記測定対象軸に固定されたときに当該測定対象軸と向き合う側となる面を、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、当該測定対象軸の軸方向と当該測定対象軸の当該面に向かう径方向との双方に直交する方向からみて、前記軸方向の中央部が前記測定対象軸の方向に膨らんだ曲面としてよい。
【0015】
このように測定器を構成することにより、前記第1固定部、前記第2固定部、前記第3固定部、前記第4固定部と、測定対象軸の接触を点接触として、第1把持部や第2把持部が測定対象軸の中心軸と直交する軸まわりに回転してしまうときの回転中心を固定化できる。そして、これにより、測定対象軸の捻れによって回転してしまった第1把持部や第2把持部が、当該捻れが無くなったあとに、元の状態に復帰することが期待できる。
【0016】
また、以上の測定器において前記歪ゲージは、前記第1起歪体と前記第2起歪体の少なくとも一方の前記測定対象軸の周方向側となる面に固定されたものとしてよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、測定対象軸のトルク等を、より精度良く計測できる、後付け可能な測定器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る測定器の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る測定器の使用形態を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る測定器の作用を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る測定器の作用を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る測定器の作用を示す図である。
図6】公知の測定器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1aに本実施形態に係る測定器を示す。
便宜上、図中に示すように測定器の前後上下左右を定めるものとして、測定器は、前後方向を高さ方向とする概略中空円筒形状の第1把持部1と、前後方向を高さ方向とする概略中空円筒形状の第2把持部2を、中心軸Cが一致するように、内周側で4本の起歪部3で前後方向に連結した構造を有する。
【0020】
第1把持部1は、中空円筒形状を2分割した上側部分の形状と下側部分の形状を、それぞれ概ね有する第1上部ブロック11と第1下部ブロック12とを、ボルト4で上下に連結した構造を有し、第2把持部2は、中空円筒形状を2分割した上側部分の形状と下側部分の形状を、それぞれ概ね有する第2上部ブロック21と第2下部ブロック22とを、ボルト4で上下に連結した構造を有する。
【0021】
第1上部ブロック11、第1下部ブロック12、第2上部ブロック21、第2下部ブロック22は同じ形状を有し、測定器に組み込む向きのみが異なる。
そこで、図1bに、第1上部ブロック11を代表にとり各ブロックの構成を示す。
図1b1は第1上部ブロック11の前面を、図1b2は第1上部ブロック11の上面を、図1b3は第1上部ブロック11の下面を、図1b4は第1上部ブロック11の左面を、図1b5は第1上部ブロック11の右面を表す。なお、第1上部ブロック11の後面は前面と同様に表れる。
【0022】
図示するように第1上部ブロック11の上方に湾曲した内周面には、前後方向に通った起歪部3の拘束用の溝111が左右に二つ設けられている。
また、第1上部ブロック11の左右外側の位置に第1下部ブロック12との連結用のボルト4のための上下方向に貫通したボルト穴112とネジ穴113が設けられ、第1上部ブロック11の左内周面の溝111と、第1上部ブロック11の外周面を弧とする円の径方向に重なる位置には、起歪部固定用のネジを径方向に通すネジ穴114が設けられている。
【0023】
次に、4本の起歪部3は、同じ構成を備えている。
便宜上、図1a中の中心軸Cの方向を起歪部3の軸方向、中心軸Cを、中心を通る法線とする円の径方向であって中心軸Cに近づく方向を起歪部3の内方向、当該円の径方向であって中心軸Cから遠ざかる方向を起歪部3の外方向、軸方向および内外方向と直交する方向(当該円の起歪部3の中心角の間の弧の弦の方向)を起歪部3の弦方向として、起歪部3の構成を6面図によって図1cに示す。
【0024】
図示するように起歪部3は、軸方向の両端に設けた2つの固定部31と、2つの固定部31を連結する固定部31よりも肉薄の梁状の起歪体32とを有する。
固定部31の外側の部分は起歪部3の拘束用の溝111に嵌まり込む形状を有する。固定部31の内側の部分は起歪体32よりも内側に突出する突出部311となっており、固定部31の内外方向の長さは起歪部3の拘束用の溝111の深さよりも大きい。また、突出部311の内側の面は、弦方向にみて軸方向の中央部が内側に膨らんだ曲面となっている。
【0025】
また、固定部31の弦方向の中央の位置には、外側から内側に伸びる、起歪部固定用のネジがネジ止めされるネジ穴33が設けられている。
次に、起歪体32の弦方向の側面には、1または複数の歪ゲージ34が接着などにより固定される。歪ゲージ34は、図1dに示す内外方向の軸まわりの曲げ歪みを検出するように配置する。また、歪ゲージ34は、起歪体32の軸方向の端部よりの位置に配置することが望ましい。
【0026】
このような、歪ゲージ34としては、たとえば、図1eに示す1素子、単軸の歪ゲージ34を用いることができる。
ここで、図示は省略したが、測定器には、歪ゲージ34を用いた検出回路や、検出回路で検出した値を外部に無線送信する無線通信部や、これらに電力を供給するバッテリなども内蔵されている。
次に、測定器の使用法について説明する。
使用時には、図2aに示すように、第1上部ブロック11と第2上部ブロック21の起歪部3の拘束用の溝111に、2本の起歪部3の固定部31を、2本の起歪部3が平行に第1上部ブロック11と第2上部ブロック21を連結するように嵌め込み、嵌め込んだ起歪部3を、ネジ穴114とネジ穴33を用いて、ネジ5で固定する。
【0027】
また、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22の起歪部3の拘束用の溝111に、2本の起歪部3の固定部31を、2本の起歪部3が平行に第1下部ブロック12と第2下部ブロック22を連結するように嵌め込み、嵌め込んだ起歪部3を、ネジ穴114とネジ穴33を用いて、ネジ5で固定する。
【0028】
ただし、必ずしも拘束用の溝111に嵌め込んだ固定部31をネジ5で固定する必要はなく、ネジ5で固定しない場合には、ネジ穴114、ネジ穴33、ネジ5は省いてよい。
そして、第1上部ブロック11と第1下部ブロック12の間と、第2上部ブロック21と第2下部ブロック22の間に測定対象の回転軸100が位置するように、各ブロックを配置した上で、図2b1、b2、b3に示すように、第1上部ブロック11と第1下部ブロック12、第2上部ブロック21と第2下部ブロック22を、ボルト穴112とネジ穴113を用いて、ボルト4で締結し、第1上部ブロック11と第1下部ブロック12、第2上部ブロック21と第2下部ブロック22で4本の起歪部3を回転軸100に押し付けて、回転軸100を4本の起歪部3で挟み込む形態で測定器を回転軸100に固定する。測定対象の回転軸100は、たとえば、自動車のドライブシャフトとすることができる。
【0029】
ここで、図2b1は、測定器の上方向からみた測定器と回転軸100の関係を、図2b2は測定器の左方からみた測定器と回転軸100の関係を、図2b3は測定器の後方からみた測定器と回転軸100の関係を示している。
図2cに図2b1の断面線A-Aによる断面を示すように、固定部31の内側は起歪体32よりも内側に突出した突出部311となっているので、測定器を回転軸100に固定した状態において、起歪部3は、固定部31の突出部311のみで回転軸100に接し、起歪部3の起歪体32は回転軸100と接触しない。
【0030】
さて、このように測定器を回転軸100に固定した状態で、図3a1、a2に示すように回転軸100にトルクが付加され回転軸100が回転しながら捻れると、図3b1に示すように回転軸100に固定されている各起歪部3の両端の固定部31間に捻れ角が発生し、捻れ角に応じた歪みが起歪体32に発生する。
【0031】
この歪みは、図3b2に起歪体32の弦方向側面の変形のようすを誇張して示すように、起歪部3の内外方向の軸まわりの曲げ歪みとして表れ、この曲げ歪みが、各歪ゲージ34を用いた検出回路で検出される。そして、検出された値は、無線通信装置により外部に無線送信され、外部の装置において検出された値をトルクに変換することによりトルクの測定が行われる。ただし、外部の装置は、各歪ゲージ34を用いた検出回路で検出された値より、回転軸100の歪みや応力を測定するものとしてもよい。
【0032】
さて、本実施形態では、図4a1に示すように第1上部ブロック11と第2上部ブロック21を2本の起歪部3で平行に連結し、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22を2本の起歪部3で平行に連結することにより、第1把持部1と第2把持部2を連結している。
【0033】
このように各ブロック間を平行に連結するように設けた2本の起歪部3は、図4a2に示すように、平行リンク的に作用し、第1上部ブロック11と第2上部ブロック21の向きを平行に保ち、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22の向きを平行に保つ働きをする。
【0034】
したがって、第1上部ブロック11と第2上部ブロック21、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22をそれぞれ1本の起歪部3で連結した場合には、回転軸100の捻れによって図4b1に示すように発生してしまう、第1把持部1や第2把持部2が回転軸100の中心軸と直交する軸まわりに回転してしまう挙動を、図4b2に示すように抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では、図5a1に示すように、起歪部3の固定部31の突出部311の内側の面を、起歪部3の弦方向にみて軸方向の中央部が内側に膨む曲面としている。
このような曲面とすることにより、図5a2に黒丸で示すように、起歪部3の固定部31と回転軸100の接触を、ほぼ点接触とすることができる。
なお、起歪部3の固定部31の突出部311の内側の面の形状としては、起歪部3の弦方向にみて軸方向の中央部が内側に膨らんだ曲面となる形状であれば、球面の一部となる曲面などの他の曲面の形状を用いてよい。
ここで、図5b1に黒塗り潰しの四角形で示すように、起歪部3の固定部31の突出部311の内側の面を平面とした場合には、起歪部3の固定部31と回転軸100の接触は線状の面接触となる。
そして、このような面接触である場合には、図5cに示すように、第1把持部1や第2把持部2が回転軸100の中心軸と直交する軸まわりに回転する際の回転中心が定まらず、回転軸100の捻れによって第1把持部1や第2把持部2が回転してしまった場合に、当該捻れが無くなったあとに、第1把持部1や第2把持部2が元の状態に復帰できなくなる。
【0036】
一方、本実施形態によれば、起歪部3の固定部31と回転軸100の接触はほぼ点接触であるので回転中心は固定となり、回転軸100の捻れによって第1把持部1や第2把持部2が回転してしまった場合でも、当該捻れが無くなったあとに、第1把持部1や第2把持部2が元の状態に復帰できることが期待できる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明した。
本実施形態によれば、歪ゲージ34によって歪みが検出される起歪部3の固定部31を、第1把持部1と第2把持部2で測定対象の回転軸100に押止する形態で直接、起歪部3を回転軸100に固定する。したがって、後付け可能な測定器において、起歪部3を回転軸100に固定するための部材の変形による影響の発生を排除して、回転軸100のトルク等を、より精度良く計測できる。
【符号の説明】
【0038】
1…第1把持部、2…第2把持部、3…起歪部、4…ボルト、5…ネジ、11…第1上部ブロック、12…第1下部ブロック、21…第2上部ブロック、22…第2下部ブロック、31…固定部、32…起歪体、33…ネジ穴、34…歪ゲージ、100…回転軸、111…溝、112…ボルト穴、113…ネジ穴、114…ネジ穴、311…突出部、600…回転軸、611…第1上台座、612…第1下台座、613…第1取付台座、621…第2上台座、622…第2下台座、623…第2取付台座、630…起歪部、631…歪ゲージ。
【要約】
【課題】後付け可能な測定器によって、回転軸のトルクを精度良く計測する。
【解決手段】
第1上部ブロック11と第1下部ブロック12、第2上部ブロック21と第2下部ブロック22を、回転軸100を間に配置して締結する。各ブロックの内周側には、第1上部ブロック11と第2上部ブロック21、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22を、それぞれ連結する起歪部3の端部の固定部31が各ブロックの内周面より固定部31の突出部311が内周側に突出する形態で固定されており、各固定部31の突出部311で回転軸100を挟み込む形態で測定器は回転軸100に固定される。起歪部3の固定部31の間は、固定部31の突出部311より外周側を通る梁状の起歪体32となっており、起歪体32に固定した歪ゲージ34で、回転軸100に加わるトルクによる起歪体32の変形量を検出する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6