(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】梱包用緩衝具
(51)【国際特許分類】
B65D 59/00 20060101AFI20240605BHJP
B65D 81/113 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
B65D59/00 A
B65D81/113 120Z
(21)【出願番号】P 2023057880
(22)【出願日】2023-03-31
(62)【分割の表示】P 2020011878の分割
【原出願日】2020-01-28
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】和田 耕一
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-331798(JP,A)
【文献】特表2009-511373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 59/00
B65D 81/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの表面によって構成された梱包対象の突出角部に設けられる梱包用緩衝具であって、
前記梱包対象の3つの表面を覆うように配置される3つの主カバー部と、
前記主カバー部において頂角側となる部分に設けられ、前記
突出角部の頂角となる部分及びその周囲表面から離隔して緩衝空間を確保する状態で配置される緩衝体部と、
前記緩衝体部よりも前記主カバー部の底辺側となる部分に設けられ、前記梱包対象の3つの表面に当接する凹状部と
を備え、前記緩衝体部は、複数の突状部を有して構成されていることを特徴とする梱包用緩衝具。
【請求項2】
前記主カバー部において
前記凹状部よりも底辺側となる端部には、外周側に膨らむように支持体部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の梱包用緩衝具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具等の多角形状を成す梱包対象の突出部分に設けられる梱包用緩衝具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
枠体や障子等のように、板厚の大きな平板状を成す面材を梱包する場合には、突出部分となる四隅の出隅部にそれぞれ梱包用緩衝具を装着するようにしている。梱包用緩衝具としては、2つの補助カバー部と、2つの主カバー部とを有したものがある。補助カバー部は、面材の表面を覆うものである。主カバー部は、面材の出隅部を構成する2つの見込み面を覆うものである。2つの主カバー部において互いに近接側となる端部には、面材の外周側に膨らむように緩衝体部が設けられている。この梱包用緩衝具を適用した場合には、面材の出隅部が緩衝体部によって覆われた状態となるため、例えば搬送中に異物に当接した場合にも、出隅部の損傷を防止することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した梱包用緩衝具は、2つの主カバー部にわたる広い範囲に唯一の緩衝体部が構成されたものであり、緩衝体部と面材の出隅部との間には空気のみが介在することになる。このため、緩衝体部に加えられる外力の大きさによっては、緩衝体部が潰れて出隅部に接触し、外力が出隅部に伝わるおそれがある。なお、上述の問題は、梱包対象の突出部分であれば面材の四隅の出隅部に設けられる梱包用緩衝具に限るものではなく、例えば立方体や直方体のように、3つの表面によって構成された突出角部に設けられる梱包用緩衝具においても同様に生じ得るものである。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、梱包対象の突出部分が損傷する事態をより確実に防止することのできる梱包用緩衝具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る梱包用緩衝具は、3つの表面によって構成された梱包対象の突出角部に設けられる梱包用緩衝具であって、前記梱包対象の3つの表面を覆うように配置される3つの主カバー部と、前記主カバー部において頂角側となる部分に設けられ、前記突出角部の頂角となる部分及びその周囲表面から離隔して緩衝空間を確保する状態で配置される緩衝体部と、前記緩衝体部よりも前記主カバー部の底辺側となる部分に設けられ、前記梱包対象の3つの表面に当接する凹状部とを備え、前記緩衝体部は、複数の突状部を有して構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、緩衝体部に複数の突状部が設けられているため、外力が加えられた場合にも緩衝体部全体が潰れることがなく、梱包対象に外力が伝わる事態を招来するおそれがなくなり、梱包対象の出隅部や突出角部に損傷を来す事態をより確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態である梱包用緩衝具を適用した梱包対象の梱包状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した梱包用緩衝具の外観を示す平面図である。
【
図3】
図1に示した梱包用緩衝具の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示した梱包用緩衝具の内観を示す斜視図である。
【
図5】
図1に示した梱包用緩衝具の一部を破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る梱包用緩衝具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態である梱包用緩衝具を適用した梱包対象の梱包状態を示したものである。ここで例示する梱包対象は、例えば内部に建具用の部品を収容した立方体状の箱体Eであり、8つの突出角部3′を有している。すなわち、本実施の形態において突出角部3′とするのは、箱体Eにおいて互いに直角方向に延在する3つの表面Pが互いに交わることによって構成されたものである。
【0011】
上述の箱体Eを梱包対象とする梱包用緩衝具20は、ポリプロピレン等の樹脂によって真空成型したもので、後述する各部がほぼ一定の板厚を有するように構成してある。
図2~
図5に示すように、梱包用緩衝具20は、3つの主カバー部21を有して構成してある。主カバー部21は、箱体Eの突出角部3′を構成する3つの表面Pを覆うように配置されるもので、底面が開口した略三角錐状を成している。個々の主カバー部21は、略直角二等辺三角形状を成し、等辺部分を相互に連結することによって互いの間に三角錐状の収容部22を構成している。
【0012】
それぞれの主カバー部21には、幅広の底辺側となる部分に支持体部23が設けてあるとともに、頂角側となる部分に緩衝体部24が設けてあり、支持体部23と緩衝体部24との間に凹状部25が設けてある。支持体部23は、凹状部25から箱体Eの外周側に膨らむように突出した台状部分である。より具体的に説明すると、支持体部23は、凹状部25から外周側に向けて屈曲するように延在した脚壁部23aと、脚壁部23aの延在縁部から凹状部25とほぼ平行となるように延在した当接壁部23bとを有したものである。
【0013】
緩衝体部24は、凹状部25から箱体Eの外周側に膨らむように延在した後、頂角に向けて延在することによって構成したものである。より具体的に説明すると、緩衝体部24は、凹状部25から外周側に向けて屈曲するように延在した突壁部24aと、突壁部24aの延在縁部から頂角に向けて延在した基壁部24bとを有したもので、互いの間に緩衝空間26を構成している。この緩衝空間26は、収容部22に連通し、かつ収容部22から外周側に膨らんだものである。
【0014】
凹状部25は、緩衝体部24と支持体部23との間に隙間を確保することによって平坦状に構成したものである。凹状部25の外表面25aは、外周側に突出する緩衝体部24の外表面24c及び当接壁部23bの外表面23cに対して相対的に窪むように内周側に位置している。同様に、凹状部25において箱体Eに対向する内表面25bについても、緩衝体部24の内表面24d及び支持体部23の内表面23dに対して相対的に窪むように内周側に位置している。
【0015】
さらに、梱包用緩衝具20には、緩衝体部24の基壁部24bに複数の突状部27が設けてある。本実施の形態では、基壁部24bに複数の溝28を縦横に設けることにより、頂角から底辺に向けて漸次数が増えるように突状部27が設けてある。それぞれの突状部27の凹状部25からの突出高さは互いに等しい。これら複数の突状部27は、それぞれが独立して外周側に突出している。従って、隣接する突状部27に潰れ等の形状変化が生じた場合にもその影響を受け難くなっている。また、基壁部24bに複数の突状部27を設けた緩衝体部24では、個々の突状部27を構成する周壁部分27aや溝28の底壁部分28aが緩衝空間26に突出するように配置された状態となっている。
【0016】
上記のように構成した梱包用緩衝具20は、
図1に示すように、それぞれの突出角部3′を収容部22の内部に配置した状態で箱体Eの8つの突出角部3′に配設される。それぞれの梱包用緩衝具20の相互間には、樹脂フィルム製の梱包用テープを巻き掛けるようにしても良い。
【0017】
上記のようにして箱体Eに配設された梱包用緩衝具20は、突出角部3′となる部分に緩衝体部24が対応して配置されることになる。緩衝体部24の内表面は、凹状部25の内表面25bが箱体Eの表面Pに当接することにより、箱体Eの表面Pから離隔した状態となる。しかも、緩衝体部24には、外周側に突出するように複数の突状部27が設けられている。これらの突状部27は、上述したように、隣接する突状部27に形状変化が生じた場合にもその影響を受け難く、それぞれの周壁部分27aや溝28の底壁部分28aが緩衝空間26に突出するように配置されるものである。従って、搬送中において異物が当接する等、突出角部3′に向けて外力が加えられた場合には、突状部27の周壁部分27aや溝28の底壁部分28aが順次箱体Eに当接しながら突状部27が段階的に潰れて外力を吸収することになる。これにより、緩衝体部24全体が潰れることがなく、箱体Eの突出角部3′に外力が伝わる事態を招来するおそれがなくなり、突出角部3′に損傷を来す事態をより確実に防止することが可能となる。
【0018】
なお、上述した実施の形態では、立方体状の箱体Eを梱包対象としているが、3つの表面Pによって突出角部3′が設けられたものであれば、直方体状のもの等、その他のものを梱包対象として梱包用緩衝具20を適用することが可能である。この場合、3つの表面Pは必ずしも互いに直角方向に延在している必要はない。また、3つの主カバー部21にわたって一つの緩衝体部24を設けるようにしているが、個々の主カバー部21に独立した緩衝体部24を設けるようにしても良い。この場合、突出角部3′の頂点が異物と当接しない状態であれば良く、必ずしも緩衝体部24が突出角部3′の頂点を覆っている必要はない。
【0019】
本発明に係る梱包用緩衝具は、3つの表面によって構成された梱包対象の突出角部に設けられる梱包用緩衝具であって、前記梱包対象の3つの表面を覆うように配置される3つの主カバー部と、前記主カバー部において頂角側となる部分に設けられ、前記梱包対象の表面から離隔する状態で配置される緩衝体部とを備え、前記緩衝体部は、複数の突状部を有して構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、緩衝体部に複数の突状部が設けられているため、外力が加えられた場合にも緩衝体部全体が潰れることがなく、梱包対象に外力が伝わる事態を招来するおそれがなくなり、突出角部に損傷を来す事態をより確実に防止することが可能となる。
【0020】
また本発明は、上述した梱包用緩衝具において、前記主カバー部において前記緩衝体部から離隔した端部には、前記緩衝体部との間に隙間を確保した状態で外周側に膨らむように支持体部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、緩衝体部から離隔した部分に支持体部が設けられているため、梱包対象を安定した状態で設置させることが可能となる。また、凹状部に対して梱包用のテープを巻き掛ければ、搬送中においてもテープに擦り切れ等の損傷を来すことがなくなり、梱包対象から梱包用緩衝具が不用意に脱落するおそれもなくなる。
【符号の説明】
【0021】
3′ 突出角部、20 梱包用緩衝具、21 主カバー部、23 支持体部、24 緩衝体部、25 凹状部、27 突状部、E 箱体、P 表面