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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】車両用標識灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/241 20180101AFI20240605BHJP
   F21S 43/15 20180101ALI20240605BHJP
   F21S 43/245 20180101ALI20240605BHJP
   F21S 43/20 20180101ALI20240605BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20240605BHJP
   F21W 103/20 20180101ALN20240605BHJP
   F21W 103/35 20180101ALN20240605BHJP
   F21W 103/55 20180101ALN20240605BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240605BHJP
【FI】
F21S43/241
F21S43/15
F21S43/245
F21S43/20
F21W103:00
F21W103:20
F21W103:35
F21W103:55
F21Y115:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023111166
(22)【出願日】2023-07-06
(62)【分割の表示】P 2018172138の分割
【原出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2023118907
(43)【公開日】2023-08-25
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】山崎 翔平
(72)【発明者】
【氏名】松本 将和
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0129386(US,A1)
【文献】特開2005-347144(JP,A)
【文献】特開2017-004636(JP,A)
【文献】実開昭54-011088(JP,U)
【文献】特開2008-166072(JP,A)
【文献】特開2009-040362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/241
F21S 43/15
F21S 43/245
F21S 43/20
F21W 103/00
F21W 103/20
F21W 103/35
F21W 103/55
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用標識灯であって、
光源と、
前記光源からの光の一部を受けて発光し、灯具前方から見て斜め上方を向く上向き発光面を有する第1光学部材と、
前記上向き発光面とは異なる位置に設けられた光出射口と、
前記光源からの光の他の一部が前記上向き発光面から出る光に対して下向きに前記光出射口を通じて出射するように構成された第2光学部材と、
第1灯室と前記第1灯室の下側に隣接して配置される第2灯室とに区画された灯具筐体と、を備え、
前記車両用標識灯は、前記第1灯室に配置された第1灯具と、前記第2灯室に配置され、前記第1灯具とは異なる用途に使用される第2灯具とを備え、前記第1灯具が、前記光源、前記第1光学部材、および前記第2光学部材を備えており、
前記第1灯具は、第1出射光を前記上向き発光面から灯具外に出射するとともに、第2出射光を前記光出射口および前記第2灯室を通じて灯具外に出射することを特徴とする車両用標識灯。
【請求項2】
前記車両用標識灯は、車両後部の左右に1つずつ配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用標識灯。
【請求項3】
前記光出射口は、前記上向き発光面から下側に離間した位置に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用標識灯。
【請求項4】
前記光出射口は、前記第2灯室に開口し、前記第2出射光は、前記第2光学部材から前記光出射口および前記第2灯室を通じて灯具外に出射することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用標識灯。
【請求項5】
前記光出射口は、灯具前方から視認不能に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用標識灯。
【請求項6】
光源と、
前記光源からの光の一部を受けて発光し、灯具前方から見て斜め上方を向く上向き発光面を有する第1光学部材と、
前記上向き発光面とは異なる位置に設けられた光出射口と、
前記光源からの光の他の一部が前記上向き発光面から出る光に対して下向きに前記光出射口を通じて出射するように構成された第2光学部材と、を備え、
前記上向き発光面から出る前記光および前記光出射口を通じて出射する光が、ひとつの標識灯を形成し、
前記第2光学部材は、前記光源からの光の一部が前記第1光学部材へと透過するインナーレンズ部と、前記光源からの光の他の一部を受け前記光出射口へと導光する導光部とを備えることを特徴とする車両用標識灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用標識灯、例えば、自動車などの車両に使用される車両用標識灯に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、テールランプとして使用されうる車両用灯具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-76249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、車両用標識灯に関して検討し、以下の課題を認識するに至った。車両用標識灯は車両の外観の一部をなすから、車両の意匠と調和することが望まれる。そうした観点から、車両用標識灯の意匠として、例えば、斜め上方を向く上向きの発光面のみから構成されるもの、または上向き発光面を主とするものが望まれる場合がある。一方で、車両用標識灯は、規定された配光要件を満たす必要がある。例えば、水平面に対して上下の角度範囲および左右の角度範囲にわたって基準を超える明るさを保証することが要請されている。しかし、配光要件を満たしつつ所望の意匠を実現することは、必ずしも容易でない。例えば、上向き発光面を有する意匠の場合には、下向きの配光が不足しやすくなる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望の意匠を実現しながら配光要件を満たすことを容易にする車両用標識灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用標識灯は、光源と、光源からの光の一部を受けて発光し、灯具前方から見て斜め上方を向く上向き発光面を有する第1光学部材と、上向き発光面とは異なる位置に設けられた光出射口と、光源からの光の他の一部が上向き発光面から出る光に対して下向きに光出射口を通じて出射するように構成された第2光学部材と、を備える。
【0007】
この態様によると、光源からの光は、上向き発光面を発光させるとともに、光出射口を通じて上向き発光面から出る光に対して下向きにも出射する。配光要件を満たすために、この下向きの出射光を利用することができる。また、光出射口は、上向き発光面とは異なる位置に設けられている。そのため、光出射口は、上向き発光面を避けて配置し、上向き発光面を用いた車両用標識灯の意匠への影響を低減することができる。したがって、車両用標識灯は、所望の意匠を実現しながら配光要件を満たすことが容易となる。
【0008】
光出射口は、上向き発光面から下側に離間した位置に設けられていてもよい。
【0009】
車両用標識灯は、光源、第1光学部材、および第2光学部材が配置された第1灯室を有する第1灯具と、第1灯室の下側に隣接する第2灯室を有する第2灯具とを備えてもよい。光出射口は、第2灯室に開口し、第2光学部材からの出射光が光出射口および第2灯室を通じて灯具外に出射してもよい。
【0010】
光出射口は、灯具前方から視認不能に配置されていてもよい。
【0011】
第2光学部材は、光源からの光の一部が第1光学部材へと透過するインナーレンズ部と、光源からの光の他の一部を受け光出射口へと導光する導光部とを備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所望の意匠を実現しながら配光要件を満たすことを容易にする車両用標識灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る車両用標識灯の概略正面図である。
図2図1に示される車両用標識灯のA-A線断面を概略的に示す。
図3図1に示される車両用標識灯の一部を斜め下方から見た概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に用いられる「第1」、「第2」等の用語は、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0015】
図1は、実施の形態に係る車両用標識灯10の概略正面図である。図2は、図1に示される車両用標識灯10のA-A線断面を概略的に示す。図3は、図1に示される車両用標識灯10の一部を斜め下方から見た概略斜視図である。
【0016】
車両用標識灯10は、例えばテールランプとして使用される第1灯具10aと、例えばストップランプとして使用される第2灯具10bとを備える。なお、車両用標識灯10は、例えばターンシグナルランプとして使用される第3灯具またはその他の用途の灯具をさらに備えてもよい。車両用標識灯10は、例えば車両後部の左右に1つずつ配置されるものであり、その構造は実質的に左右同等である。従って、ここでは代表して車両右側に配置される車両用標識灯10の構造を説明する。
【0017】
車両用標識灯10は、灯具前方側に開口部を有するランプボディ12と、ランプボディ12の開口部を覆うようにしてランプボディ12に取り付けられたアウターレンズ14(または透光性をもつカバー)とを備える。ランプボディ12とアウターレンズ14とによって灯具筐体16が構成され、第1灯具10aおよび第2灯具10bは灯具筐体16の内部に収容されている。第1灯具10aおよび第2灯具10bは、ランプボディ12に支持されている。
【0018】
灯具筐体16の内部空間は、第1灯具10aが配置される第1灯室18aと、第2灯具10bが配置される第2灯室18bとに区画されている。第2灯室18bは、第1灯室18aの下側に隣接している。よって、第2灯具10bは、第1灯具10aの下側に隣接して配置されている。
【0019】
第1灯具10aは、灯具前方から見て斜め上方を向く上向き発光面20を有する。このように、第1灯具10aの発光部の意匠は正面視において上向き面のみからなる。言い換えると、第1灯具10aは、灯具前方から視認可能な発光面がすべて上向きとなっている。
【0020】
本明細書において、「上向き」とは、灯具が満たすべき規定の配光要件に準拠して配光特性を測定するための上下方向の角度の基準となる水平面に対して上方に向く方向を意味しうる。同様に、「下向き」とは、当該水平面に対して下方に向く方向を意味しうる。
【0021】
車両用標識灯10は、上向き発光面20とは異なる位置に設けられた光出射口22を備える。後述するように、光出射口22は、上向き発光面20から下側に離間した位置に設けられている。光出射口22は、灯具前方から視認不能に配置されている。
【0022】
図2に示されるように、第1灯具10aは、光源24と、第1光学部材としての第1インナーレンズ26と、第2光学部材としての第2インナーレンズ28とを備える。第2インナーレンズ28は、インナーレンズ部28a、導光部28b、および光出射部28cを有する。また、第1灯具10aは、第1リフレクタ30および第2リフレクタ32を備える。光源24、第1インナーレンズ26、第2インナーレンズ28、第1リフレクタ30、および第2リフレクタ32は、第1灯室18aに配置されている。
【0023】
光源24は、1つ又は複数の発光素子24aを有し、発光素子24aは、例えばLED素子またはその他の半導体発光素子である。発光素子24aは、プリント基板などの実装基板24b上に実装され、一列にまたは複数列に配列されている。発光素子24aは、電源(図示せず)から実装基板24bを介して給電される。光源24は、第1灯室18aにおいて後方かつ下側に配置されている。光源24、第2インナーレンズ28、第1リフレクタ30、および第2リフレクタ32は、互いに結合された1つのアセンブリを構成してもよい。
【0024】
第1インナーレンズ26は、第1灯室18aにおいて前方に配置され、アウターレンズ14に隣接している。第1インナーレンズ26は、第2インナーレンズ28のインナーレンズ部28aを透過した光、および第2リフレクタ32で反射された光が入射するように配置されている。第1インナーレンズ26は、図示されないエクステンション部材に固定され、エクステンション部材を介してランプボディ12に取り付けられていてもよい。
【0025】
上向き発光面20は、光源24からの光の一部を受けて発光し、灯具前方から見て斜め上方を向いている。第1インナーレンズ26は、その下端部から斜め上方かつ後方に向けてアウターレンズ14に沿って延在する。こうして、上向き発光面20が第1インナーレンズ26の前面に形成されている。上向き発光面20は、アウターレンズ14の内面と対向している。
【0026】
第2インナーレンズ28は、光源24からの光の他の一部が上向き発光面20から出る光に対して下向きに光出射口22を通じて出射するように構成されている。
【0027】
第2インナーレンズ28は、第1灯室18aにおいて前後方向に中間部に配置されている。よって、第1インナーレンズ26および第2リフレクタ32が第2インナーレンズ28に対して前方に配置され、光源24および第1リフレクタ30が第2インナーレンズ28に対して後方に配置されている。
【0028】
第2インナーレンズ28のインナーレンズ部28a、導光部28b、および光出射部28cは、一体形成されている。インナーレンズ部28aは、第1インナーレンズ26と第1リフレクタ30との間に位置し、上下方向に沿って、または上下方向に対しいくらか傾斜して延在する。導光部28bは、インナーレンズ部28aの下端部から前方に向けて概ね水平面に沿って板状に延出している。光出射部28cは、導光部28bの前端部の下側に付加され、導光部28bと光出射部28cとの間には段差が形成されている。光出射部28cは、第1インナーレンズ26の下端部の近傍に位置する。
【0029】
第2インナーレンズ28は、光源24から発せられた光、および第1リフレクタ30で反射された光がインナーレンズ部28aおよび導光部28bに入射するように配置されている。インナーレンズ部28aは、入射した光の大半が前方へと透過するように配置されている。導光部28bは、受け取った光を光出射部28cへと導光するように構成されている。光出射部28cは、導光部28bからの光を出射するように光出射口22に配置されている。
【0030】
アウターレンズ14、第1インナーレンズ26、第2インナーレンズ28は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成されている。これらのレンズ部材は、標識灯としての用途に応じて適切な色を有し、または無色であってもよい。
【0031】
第1リフレクタ30は、光源24の上方に配置されている。第1リフレクタ30は、例えば樹脂製の本体と、その本体上に例えばアルミニウムなど金属材料の蒸着によって形成された反射面30aとを有する。第1リフレクタ30は、発光素子24aが発する光を反射面30aが前方へと反射するように配置されている。反射面30aは、例えば放物面またはその他の曲面状に形成されている。
【0032】
第2リフレクタ32は、第1インナーレンズ26と第2インナーレンズ28との間に配置されている。第2リフレクタ32の後端部は、第2インナーレンズ28のインナーレンズ部28aおよび導光部28bの接合部(すなわち、インナーレンズ部28aの下端部および導光部28bの後端部)の近傍に位置する。第2リフレクタ32は、導光部28bの上側に隣接して導光部28bに沿って前方へと板状に延在する。第2リフレクタ32の前端部は、第1インナーレンズ26の下端部および第2インナーレンズ28の光出射部28cの近傍に位置する。
【0033】
第2リフレクタ32は、例えば、樹脂製の白色部材である。第2リフレクタ32の上面は、第2インナーレンズ28のインナーレンズ部28aを出た光を第1インナーレンズ26へと反射する反射面として使用される。第2リフレクタ32は、必要に応じて、第1リフレクタ30と同様に金属製の反射面を有してもよい。また、第2リフレクタ32は、外から見えないように第2インナーレンズ28の導光部28bおよび光出射部28cを覆い隠すためのカバーとしても機能する。
【0034】
光出射口22は、第2灯室18bに開口している。光出射口22は、第2インナーレンズ28からの出射光が光出射口22および第2灯室18bを通じて灯具外に出射するように配置されている。
【0035】
光出射口22は、上向き発光面20から下側に離間した位置に設けられている。光出射口22は、第1インナーレンズ26の下端部の近傍または直下に位置する。光出射口22は、第2リフレクタ32の前端部の近傍または直下に位置する。また、光出射口22は、灯具前方から視認不能に配置されている。光出射口22は、図3に示されるように車両用標識灯10を斜め下方(例えば、配光要件により規定される下向きの視認角方向)から見たときには観察されるが、図1に示されるように正面視では見えない場所に配置されている。
【0036】
光出射口22は、左右に延びるスリットとして形成されている。このスリットは、第1灯室18aと第2灯室18bとの間に配置された壁部34を第1灯具10a側から第2灯具10b側へと貫通している。壁部34は、任意の部材であってもよく、例えば、第2灯具10bの一部を構成するエクステンション部材であってもよい。あるいは、壁部34は、第2灯具10b(または第1灯具10a)の構成要素を支持するブラケットであってもよい。また、光出射口22は、単一の部材を貫通して形成されることは必須ではなく、隣接する2つの部材間に形成された隙間であってもよい。
【0037】
第2灯具10bは、種々の公知の構成を適宜採用することができるので、ここでは詳述しない。
【0038】
図2および図3においては、説明の便宜上、上向き発光面20からの出射光L1を破線の矢印で図示し、光出射口22からの下向きの出射光L2を実線の矢印で図示している。
【0039】
車両用標識灯10の点灯中に、光源24から発せられた光は、第1リフレクタ30に向かう。第1リフレクタ30の反射面30aで反射された光は、第2インナーレンズ28のインナーレンズ部28aに入射する。なお光源24から発せられた光の一部は、反射面30aで反射されることなく、第2インナーレンズ28に直接入射してもよい。
【0040】
第2インナーレンズ28のインナーレンズ部28aは、入射した光を第1インナーレンズ26へと透過させる。インナーレンズ部28aを透過した光の一部が第2リフレクタ32で反射されて第1インナーレンズ26に向けられてもよい。第1インナーレンズ26に入射した光は、第1インナーレンズ26を透過し、上向き発光面20から出射され、アウターレンズ14を通じて灯具外に出射される。こうして、車両用標識灯10は、上向きの出射光L1を提供することができる。
【0041】
光源24および第1リフレクタ30からの光の一部は導光部28bに入射する。また、インナーレンズ部28aに入射した光の一部も導光部28bへと進入しうる。光は導光部28bを進み、光出射部28cから出射される。こうして第2インナーレンズ28を出た光が光出射口22および第2灯室18bを通じて灯具外に出射される。車両用標識灯10は、下向きの出射光L2を提供することができる。
【0042】
例えば、第1灯具10aが上述のようにテールランプである場合、配光要件の1つとして、定められた下方向の視認角(例えば、下向き15°)において所定の左右角度範囲にわたって規定の光度値を上回ることが要請されている。ところが、正面視における第1灯具10aの意匠は発光部として上向き発光面20のみを有する。上向き発光面20からの出射光L1は、その大半が上向きに出射される。出射光L1を利用して上方向の視認角での光度条件を満たすことは容易であるが、出射光L1のみでは下向きの配光が不足しがちである。
【0043】
実施の形態に係る車両用標識灯10によると、第1インナーレンズ26が上向き発光面20を有し、第2インナーレンズ28が上向き発光面20からの出射光L1に対して下向きの出射光L2を光出射口22を通じて出射するように構成されている。光出射口22からの下向きの出射光L2は、下方向の視認角での光度条件を満たすべく利用できる。すなわち、上向き発光面20からの出射光L1と光出射口22からの下向きの出射光L2との相互補完により、上述の配光要件を満たすように車両用標識灯10を設計することが容易になる。光出射口22は、上向き発光面20とは異なる位置に設けられているので、上向き発光面20を用いた車両用標識灯10の意匠に影響が無いか、または影響の少ない場所に光出射口22を配置することができる。したがって、車両用標識灯10は、所望の意匠を実現しながら配光要件を満たすことが容易となる。
【0044】
光出射口22は、上向き発光面20から下側に離間した位置に設けられている。この構成は、光出射口22を他の場所(例えば、上向き発光面20の上側、右側、左側など)に配置する場合に比べて、下向きの出射光L2を光出射口22を通じて出射しやすくなる点で有利である。
【0045】
光出射口22は、第2灯室18bに開口し、出射光L2が光出射口22および第2灯室18bを通じて灯具外に出射する。このように、下向きの出射光L2の出口として第2灯具10bを利用することは、車両用標識灯10の意匠への影響が低減されるように光出射口22を配置することに役立つ。
【0046】
光出射口22は、灯具前方から視認不能に配置されている。このようにすれば、発光部として上向き発光面20のみから構成された車両用標識灯10の意匠を提供することができる。
【0047】
第2インナーレンズ28は、光源24からの光の一部が第1インナーレンズ26へと透過するインナーレンズ部28aと、光源24からの光の他の一部を受け光出射口22へと導光する導光部28bとを備える。このようにすれば、光源24からの光を第2インナーレンズ28という一つの光学部材によって第1インナーレンズ26と光出射口22の両方に光を導くことができ、車両用標識灯10の構成を簡素化できる。
【0048】
本発明は、上述した実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、実施の形態及び変形例を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などのさらなる変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくはさらなる変形が加えられた実施の形態や変形例も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態や変形例、及び上述した実施の形態や変形例と以下の変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、変形例及びさらなる変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0049】
上述の実施の形態では、光出射口22は、灯具前方から視認不能となるように上向き発光面20から下側に離間した位置に配置されているが、これは本発明に必須ではない。光出射口22は、光出射口22の少なくとも一部が灯具前方から視認されるように設けられていてもよい。光出射口22は、例えば、上向き発光面20に対して側方(例えば左側または右側)に離間した位置に配置されてもよい。あるいは、光出射口22が存在しない場合に比べて配光要件を満たすことに寄与すること、及び/または、車両用標識灯10の意匠に顕著な影響を与えないことを条件として、光出射口22は、上向き発光面20と異なる任意の位置に設けられてもよい。
【0050】
上述の実施の形態では、車両用標識灯10が発光部として上向き発光面20のみから構成された意匠を有する場合を例に挙げて説明したが、これは本発明に必須ではない。例えば、上述の光出射口22は、車両用標識灯10が主要な発光部として上向き発光面20を有する場合(例えば、意匠に顕著な影響を及ぼさない付加的な発光部を上向き発光面20の近傍またはその他の部位に有する場合)に適用されてもよい。
【0051】
上述の実施の形態では、車両用標識灯10がテールランプおよびストップランプとして使用される場合を例に挙げて説明したが、車両用標識灯10はこの具体例に限られない。車両用標識灯10は、ターンシグナルランプ、クリアランスランプ、デイタイムランニングランプなどその他の標識灯、またはその他の車両用灯具であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 車両用標識灯、 10a 第1灯具、 10b 第2灯具、 18a 第1灯室、 18b 第2灯室、 20 上向き発光面、 22 光出射口、 24 光源、 28a インナーレンズ部、 28b 導光部。
図1
図2
図3