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特許7498835半導体層を形成するための方法及び材料堆積システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】半導体層を形成するための方法及び材料堆積システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/28 20100101AFI20240605BHJP
   H01L 33/04 20100101ALI20240605BHJP
   H01L 21/365 20060101ALI20240605BHJP
   H01L 21/363 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
H01L33/28
H01L33/04
H01L21/365
H01L21/363
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023114349
(22)【出願日】2023-07-12
(62)【分割の表示】P 2020567913の分割
【原出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2023145516
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】62/682,005
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518236616
【氏名又は名称】シランナ・ユー・ブイ・テクノロジーズ・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SILANNA UV TECHNOLOGIES PTE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アタナコビク,ペタル
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0237344(US,A1)
【文献】特開2016-132691(JP,A)
【文献】特開2009-021540(JP,A)
【文献】特開2006-269822(JP,A)
【文献】特開2017-204642(JP,A)
【文献】特開2004-349600(JP,A)
【文献】特開2012-164955(JP,A)
【文献】特開2001-237460(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106876504(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子デバイスであって、
酸化マグネシウムから形成された基板と、
前記基板上にエピタキシャル堆積された多領域積層体とを含み、前記多領域積層体は、成長方向に沿って非極性結晶材料構造を含み、前記多領域積層体は、
結晶構造改善層を含む第1の領域と、
前記第1の領域上に設けられ、第1の導電型を含む第2の領域と、
固有導電型層を含む第3の領域と、
第2の導電型を含む第4の領域とを含み、前記第2の導電型は、前記第1の導電型と反対であり、前記第3の領域は、前記第2の領域と前記第4の領域との間に位置しており、
前記多領域積層体の少なくとも1つの領域は、Mg(x)Zn(1-x)Oを含むバルク半導体材料であり、
前記多領域積層体の少なくとも1つの領域は、MgOおよびMg(x)Zn(1-x)Oを含む超格子であり、
前記バルク半導体材料または前記超格子のMg(x)Zn(1-x)Oは、非極性岩塩であり、x>0.55である、光電子デバイス。
【請求項2】
前記第2の領域または前記第4の領域の少なくとも1つは、シリコン、ゲルマニウム、窒素、アルミニウム、ガリウム、ニッケルまたはリンの少なくとも1つを前記非極性結晶材料構造に導入することによって形成される、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項3】
前記第2の領域または前記第4の領域の少なくとも1つは、第2の超格子を含み、前記第2の超格子は、Mg(x)(1-x)OおよびMg(y)(1-y)Oから形成された複数の二重層対を有し、式中x≠y、Mは、Zn、Al、Ga、Ni、NおよびPから選択され、
前記第2の超格子は、前記第2の超格子の有効合金組成の組成勾配を用いて形成され、
前記第2の超格子の前記有効合金組成は、成長方向に沿って変化する、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項4】
前記多領域積層体は、Mg(x)(1-x)O組成からなり、式中0.55<x≦1.0、Mは、Zn、Al、Ga、Ni、NおよびPから選択される、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項5】
前記基板と前記第1の領域との間のバッファ層をさらに含む、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項6】
前記バッファ層は、MgZnOから形成される、請求項5記載の光電子デバイス。
【請求項7】
前記第1の領域は、MgOとMg(x)Zn(1-x)Oの複数の交互の副層から形成された前記超格子を含む、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項8】
光電子デバイスであって、
酸化マグネシウムから形成された基板と、
前記基板上にエピタキシャル堆積された多領域積層体とを含み、前記多領域積層体は、成長方向に沿って酸素極性結晶構造または金属極性結晶構造を有する結晶極性を含み、前記多領域積層体は、
結晶構造改善層を含む第1の領域と、
前記第1の領域上に設けられ、第1の導電型を含む第2の領域と、
固有導電型層を含む第3の領域と、
第2の導電型を含む第4の領域とを含み、前記第2の導電型は、前記第1の導電型と反対であり、前記第3の領域は、前記第2の領域と前記第4の領域との間に位置しており、
前記多領域積層体の少なくとも1つの領域は、Mg(x)Zn(1-x)Oを含むバルク半導体材料であり、
前記多領域積層体の少なくとも1つの領域は、MgOおよびMg(x)Zn(1-x)Oを含む超格子であり、
前記バルク半導体材料または前記超格子のMg(x)Zn(1-x)Oは、x<0.45を有する、光電子デバイス。
【請求項9】
前記第2の領域または前記第4の領域の少なくとも一方は、シリコン、ゲルマニウム、窒素、アルミニウム、ガリウム、ニッケル、またはリンの少なくとも1つを前記酸素極性結晶構造または前記金属極性結晶構造に導入することによって形成される、請求項8に記載の光電子デバイス。
【請求項10】
前記第2の領域または前記第4の領域の少なくとも一方は、前記バルク半導体材料のMg(x)Zn(1-x)Oの組成勾配を用いて形成され、xは、空間的に依存し、成長方向に沿って変化する、請求項8に記載の光電子デバイス。
【請求項11】
前記第2の領域または前記第4の領域の少なくとも一方は、前記超格子を含み、前記超格子は、Mg(x)Zn(1-x)OおよびMg(y)Zn(1-y)Oから形成された複数の二重層対を有し、x≠yであり、
前記超格子は、前記超格子の有効合金組成の組成勾配を用いて形成され、
前記超格子の前記有効合金組成は、成長方向に沿って空間的に変化する、請求項8に記載の光電子デバイス。
【請求項12】
前記組成勾配は、Mg(x)Zn(1-x)OとMg(y)Zn(1-y)Oの交互の副層を含み、xとyは、成長方向に沿って変化する、請求項11に記載の光電子デバイス。
【請求項13】
前記基板と前記第1の領域との間のバッファ層をさらに含む、請求項8記載の光電子デバイス。
【請求項14】
前記バッファ層は、MgZnOから形成される、請求項13記載の光電子デバイス。
【請求項15】
前記第1の領域は、MgOとMg(x)Zn(1-x)Oの複数の交互の副層から形成された前記超格子を含む、請求項8に記載の光電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年6月7日に出願された「材料堆積システム及び方法」という表題の米国仮特許出願第62/682,005号に基づく優先権を主張し、この出願は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、薄膜材料は、例えば反応チャンバー内の供給源材料を使用して、平面状の堆積面上に堆積される。分子線エピタキシー(MBE)は、反応チャンバー内で単結晶薄膜を堆積させるいくつかの方法のうちの1つである。分子線エピタキシーは、高真空(HV)または超高真空(UHV)(例えば10-6~10-9Pa)で行われる。MBEの最も重要な特徴は、(1)供給源材料種の選択における柔軟性、(2)堆積された異種膜間の界面の急峻性、(3)堆積された膜の低い不純物レベル、及び(4)堆積された膜の正確かつ均一な厚さである。最後の特徴は、典型的には1時間あたり10,000nmを超える化学蒸着(CVD)などの他の従来の堆積プロセスよりも比較的遅い(典型的には1時間あたり1,000nm未満)堆積速度を使用することによって得られる。MBEの遅い堆積速度(または成長速度)は、薄膜をエピタキシャル成長させるために有利に使用される。しかしながら、MBEでは、他の堆積技術(例えばCVD)で達成される低い不純物レベルに合わせるために、それに比例した反応器のより高い真空が必要とされる。
【0003】
MBEのような堆積プロセスでは、高品質の膜は、堆積面全体で約99%以上の厚さ均一性を有することができる。別の言い方をすると、高品質の膜は、堆積面全体で約1%以下の厚さ不均一性を有し得る。成長速度とエピタキシャル成長した膜の品質との間には直接的な相関関係が存在するため、現行のMBEプロセスでは堆積面全体の均一性が重要である。すなわち、堆積速度が遅いと、堆積面全体にわたって均一な原子単層スケールの被覆性が制御されて、2次元(2D)の「レイヤー・バイ・レイヤー」(LbL)成長モードを実現することができる。LbL成長モードを使用した薄膜堆積により、後続の層の成長の前に完全な2D層を形成することができ、これは単結晶薄膜及び多層異種膜のエピタキシャル成長に最も望ましい方法である。典型的には、LbL成長モードは、少なくとも以下の基準:(i)高度に非平衡な温度-圧力条件、(ii)堆積面全体での種の均一な到達率、(iii)成長表面に付与できる高度に均一な空間温度、の下、技術的に関連する半導体(例えばAlGaAs、AlGaN、SiGeなど)で実現される。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施形態では、光電子デバイスは、基板と、基板上にエピタキシャル堆積された多領域積層体とを含む。多領域積層体は、成長方向に沿って酸素極性結晶構造または金属極性結晶構造を有する結晶極性を含む。多領域積層体は、バッファ層を含む第1の領域、結晶構造改善層を含む第2の領域、第1の導電型を含む第3の領域、真性導電型層を含む第4の領域、及び第2の導電型を含む第5の領域を含み、第2の導電型は第1の導電型の反対である。多領域積層体の少なくとも1つの領域は、Mg(x)Zn(1-x)Oを含むバルク半導体材料である。多領域積層体の少なくとも1つの領域は、ZnO、MgO、及びMg(x)Zn(1-x)Oのうちの少なくとも2つを含む超格子である。
【0005】
いくつかの実施形態では、光電子デバイスは、基板と、基板上にエピタキシャル堆積された多領域積層体とを含む。多領域積層体は、成長方向に沿って非極性結晶材料構造を含む。多領域積層体は、バッファ層を含む第1の領域、結晶構造改善層を含む第2の領域、
第1の導電型を含む第3の領域、真性導電型層を含む第4の領域、及び第2の導電型を含む第5の領域を含み、第2の導電型は第1の導電型の反対である。多領域積層体の少なくとも1つの領域は、Mg(x)Zn(1-x)Oを含むバルク半導体材料である。多領域積層体の少なくとも1つの領域は、ZnO、MgO、及びMg(x)Zn(1-x)Oのうちの少なくとも2つを含む超格子である。
【0006】
いくつかの実施形態では、材料堆積システムを構成する方法は、基板の基板堆積面の中心軸の周りで基板を回転させる回転機構を準備することを含む。基板に材料を供給する材料供給源が選択され、この材料供給源は、i)出口開口面を有する出口開口部、及びii)出口開口面からの既定の材料放出空間分布、を有する。既定の材料放出空間分布は、中心軸からずれた地点で基板と交差する対称軸を有する。出口開口部は、基板の中心軸に対して、ある直交方向距離、ある横方向距離、及びある傾斜角で配置される。方法は、i)傾斜角、またはii)材料供給源の出口開口部の直交方向距離及び横方向距離、のいずれかを設定することも含む。基板上への材料の望まれる堆積は、望まれる成長速度での望まれる層の堆積均一性を実現するように選択される。方法は、i)設定された傾斜角を使用して望まれる層の堆積均一性を実現するための直交方向距離及び横方向距離の最小値、またはii)設定された直交方向距離及び設定された横方向距離を使用して望まれる層の堆積均一性を実現するための傾斜角、のいずれかを決定する。基板及び材料供給源は、真空環境内に含まれる。
【0007】
いくつかの実施形態では、半導体層の形成方法は、基板の基板堆積面の中心軸の周りで基板を回転させること、基板を加熱すること、及び基板に材料を供給する材料供給源を準備することを含む。この材料供給源は、i)出口開口面を有する出口開口部、及びii)出口開口面からの既定の材料放出空間分布、を有し、既定の材料放出空間分布は、中心軸からずれた地点で基板と交差する対称軸を有する。出口開口部は、基板の中心軸に対して、ある直交方向距離、ある横方向距離、及びある傾斜角で配置される。方法は、真空環境内に基板及び材料供給源を収容すること、及び材料供給源から材料を放出して基板上に半導体層を形成することを含む。出口開口部は、i)設定された傾斜角に対して直交方向距離及び横方向距離を最小化することで基板上の半導体層の望まれる層成長速度での望まれる層の堆積均一性を実現するように、またはii)設定された直交方向距離及び設定された横方向距離に対して傾斜角を決定することで基板上の半導体層の望まれる層成長速度での望まれる層の堆積均一性を実現するように、配置される。
【0008】
いくつかの実施形態では、材料堆積システムは、基板堆積面の中心軸の周りで基板の基板堆積面を回転させる回転機構、基板を加熱するように構成されたヒーター、基板に材料を供給する材料供給源、及び位置調整機構を有する。材料供給源は、i)出口開口面を有する出口開口部、及びii)出口開口面からの既定の材料放出空間分布を有する。既定の材料放出空間分布は、中心軸からずれた地点で基板と交差する対称軸を有し、この出口開口部は、基板の中心軸に対して、ある直交方向距離、ある横方向距離、及びある傾斜角で配置される。位置調整機構により、直交方向距離、横方向距離、または傾斜角を動的に調整することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、酸化物に基づく半導体層の形成方法は、基板の基板堆積面の中心軸の周りで基板を回転させること、基板を加熱すること、及び基板に面する複数の材料供給源を配置することを含む。複数の材料供給源は、マグネシウム(Mg)源及び窒素または酸素のプラズマ源を含む。複数の材料供給源のそれぞれは、i)出口開口面を有する出口開口部、及びii)出口開口面からの既定の材料放出空間分布を有し、材料放出空間分布は、中心軸からずれた地点で基板と交差する対称軸を有する。出口開口部は、基板の中心軸に対して、ある直交方向距離、ある横方向距離、及びある傾斜角で配置される。方法は、複数の材料供給源から基板上に材料を放出して、基板上に酸化物に基づく層を形
成することも含む。出口開口部は、i)設定された傾斜角に対して直交方向距離及び横方向距離を最小化することで基板上の酸化物に基づく層の望まれる層成長速度での望まれる層の堆積均一性を実現するように、またはii)設定された直交方向距離及び設定された横方向距離に対して傾斜角を決定することで基板上の酸化物に基づく層の望まれる層成長速度での望まれる層の堆積均一性を実現するように、配置される。
【0010】
いくつかの実施形態では、半導体層の形成方法は、基板堆積面の中心軸の周りで基板の基板堆積面を回転させること、基板を加熱すること、及び基板に面する複数の材料供給源を配置することを含む。複数の材料供給源は、マグネシウム(Mg)源、亜鉛(Zn)源、及び窒素または酸素のプラズマ源を含み、複数の材料供給源のそれぞれは、i)出口開口面を有する出口開口部、及びii)出口開口面からの既定の材料放出空間分布を有する。材料放出空間分布は、中心軸からずれた地点で基板と交差する対称軸を有する。出口開口部は、基板の中心軸に対して、ある直交方向距離、ある横方向距離、及びある傾斜角で配置される。複数の材料供給源からの材料は、基板上に放出されて基板上にp型ドープ層を形成する。出口開口部は、i)設定された傾斜角に対して直交方向距離及び横方向距離を最小化することで基板上のp型ドープ層の望まれる層成長速度での望まれる層の堆積均一性を実現するように、またはii)設定された直交方向距離及び設定された横方向距離に対して傾斜角を決定することで基板上のp型ドープ層の望まれる層成長速度での望まれる層の堆積均一性を実現するように、配置される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来の高真空反応チャンバーの等角図である。
図2】いくつかの実施形態による、材料堆積システムの等角図である。
図3】いくつかの実施形態による、材料供給源の特定の余弦N係数に対応するビームフラックスプロファイルの例のプロットである。
図4】いくつかの実施形態による、形成面に対する材料供給源の特定の位置の構成空間のプロットの例であり、計算された膜の不均一性が、材料供給源の座標X及びZの関数としてプロットされている。
図5】いくつかの実施形態による、形成面に対する材料供給源の特定の位置の構成空間のプロットの例であり、計算された膜の不均一性が、材料供給源の座標X及びZの関数としてプロットされている。
図6】いくつかの実施形態による、形成面に対する材料供給源の特定の位置の構成空間のプロットの例であり、計算された膜の不均一性が、材料供給源の座標X及びZの関数としてプロットされている。
図7】いくつかの実施形態による、形成面に対する材料供給源の特定の位置の構成空間のプロットの例であり、計算された膜の不均一性が、材料供給源の座標X及びZの関数としてプロットされている。
図8】いくつかの実施形態による、膜品質と膜成長速度との間のバランスを改善するために高真空反応チャンバー内に軸外供給源を構成する方法の一例の流れ図である。
図9】いくつかの実施形態による、酸化物に基づく高品質膜などの半導体層を形成するために使用されるプラズマ処理システムの一例の側面図である。
図10A】いくつかの実施形態による酸化物系LEDデバイス構造の断面図である。
図10B】いくつかの実施形態による酸化物系LEDデバイス構造の断面図である。
図11】いくつかの実施形態による、図10A~10Bに示されているLEDデバイス構造を形成する方法の一例の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、該して、半導体製造プロセス、より詳しくは、膜品質と膜成長速度との間の
バランスを改善するために高真空反応チャンバー内に軸外材料供給源を有する材料堆積システムに関する。材料供給源の位置を決定を行い、材料供給源の配置に応じた反応チャンバー全体のサイズのスケーリングも行うことによる、材料堆積システムを構成する方法が開示される。本開示は、発光ダイオード(LED)などの高品質な酸化物系半導体構造、並びにそのような構造を形成するためのシステム及び方法にも関する。
【0013】
UHV堆積技術を使用して実現することができる高い膜品質は、従来、他の成熟した高圧CVD半導体製造プロセスと比較して大幅に増加した処理時間をかけることにより実現される。残念なことに、最善の事例であるMBEなどの従来のUHV堆積方法では、シリコン系半導体の製造業者が要求する高スループット処理に適切に対応することができない。加えて、現行のMBEプロセスは、直径6インチ以下の基板など、比較的小さな面積の堆積面での高均一性膜の成長に限定されている。シリコン系半導体業界では、単位面積あたりの堆積コスト($/m)を十分に低く維持するために、製造プロセスを8インチ、12インチ、更には18インチの堆積面などのより大きな堆積面にスケーリングすることの重要性が強調されている。したがって、MBEプロセスをより大きな堆積面にスケーリングし、かつ高い堆積速度で高膜品質を提供するために、新しいアプローチが求められている。
【0014】
半導体デバイスの製造では、III族窒化物(III-N)半導体(例えば窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化アルミニウム-窒化ガリウム、窒化インジウム)は、LEDやレーザーダイオード(LD)などの深紫外(DUV)光学デバイスの製造に使用されるワイドバンドギャップ半導体を製造するための最も有望な半導体群のうちの1つに属すると広く認識されている。残念なことに、従来の製造装置及び方法に固有のいくつかの課題のため、高品質のIII族-N膜の製造が制限されている。
【0015】
例えば、高品質の膜堆積に必要な成長温度及び前駆体ガスレベルを制御することは、上述したように、直径が4インチを超える基板では困難である。膜形成面全体での不均一な温度プロファイルは、低品質であったり使用できなかったりするデバイスを生じさせる可能性がある。更に、従来のIII族-N膜形成は、比較的非効率であり、低スループットであり、高コスト供給源材料の利用効率が低い費用がかかるプロセスである。最後に、従来のIII族-N膜は、デバイスのバンドギャップ調整能力に限界を有している。このため、半導体デバイスの設計と利用、特にDUV LEDの製造における設計と利用についての柔軟性が低下する。半導体業界が、より大きな基板上での高品質膜の製造、製造スループットの増加、及び製造コストの削減をますます重要視していくのに伴って、デバイス製造のための新しいアプローチが必要とされている。
【0016】
本開示では、膜品質と膜成長速度との間のバランスを改善することに関して、高真空反応チャンバー内にオフセット材料供給源を設定する方法が提供される。例えば、複数の実施形態は、従来の技術と比較して膜品質と膜成長速度との間の改善されたバランスを提供する高真空反応チャンバー内の膜形成面に対して、材料供給源(例えばクヌーセン蒸発セル、ガス注入源、リモートプラズマ源、イオンビーム源、スパッタリング源、荷電粒子ビーム、熱蒸発源、またはアブレーション源)の位置を決定するために使用される。より具体的には、膜品質と膜成長速度との間のバランスを改善するために、特定の特性または特徴を有する所定の材料供給源について、及び材料供給源の所定の傾斜角設定について、形成面に対する材料供給源の横方向距離及び直交方向距離を決定するために方法が使用される。他の実施形態では、材料供給源の横方向距離及び直交方向距離を設定することができ、望まれる膜品質及び膜成長速度を実現するために傾斜角を決定することができる。
【0017】
高品質の酸化物系DUV LEDを形成するためのシステム及び方法も開示される。酸化物系半導体は、II-VI半導体群に分類されるワイドバンドギャップ半導体である。
一般に、これらは、優れた透明性、高い電子移動度、広いバンドギャップ、及び室温での強い発光を示す。酸化物系半導体は本質的にn型であり、従来の方式では酸化物のp型ドーピングは達成が困難である。本実施形態におけるこれらの半導体のP型ドーピングは、活性原子状窒素(N*)または分子状窒素(N*)のプラズマを使用して行われる。本明細書に開示の方法は、プラズマ反応チャンバーを利用し、フッ化カルシウムなどの材料から作られた基板上に膜を形成する。いくつかの実施形態では、酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)のバッファ層が基板上に形成され、MgO-MgZnO多重層がバッファ層の上に形成される。次いで、n型のMgZnOが、MgO-MgZnO多重層の上に形成され、MgZnOまたはMgOの非意図的にドープされた(NID)層が、n型MgZnO層の上に形成される。その後、N*またはN*のプラズマからのp型ドーピングを使用して、p型MgZnO層が形成される。最後に、従来のリソグラフィー及びメタライゼーションプロセスを使用して、デバイス構造上に金属接点が形成される。動作の一例では、n型MgZnO層は、NID層に移動する電子を生成し、そこで電荷キャリアが相互作用し、再結合して、約100nm~約280nmのUV波長範囲でLEDデバイス構造から光を放出する。
【0018】
高品質の酸化物系DUV LEDを形成するために使用される方法及び材料は、従来の方法及び材料よりも優れた利点を示す。例えば、III族-N膜の高品質な膜堆積に必要な成長温度と前駆体ガスレベルを従来の方法で制御することは、特に直径が4インチを超える基板では困難である。更に、従来のIII族-N膜形成は、比較的非効率であり、低スループットであり、高コスト供給源材料の利用効率が低い費用がかかるプロセスである。最後に、従来のIII族-N膜は、限定的なバンドギャップ調整能力しか有していない。これは、特にDUV LEDの製造において、半導体デバイスの設計と利用の柔軟性を制限する。対照的に、本明細書に開示の方法は、より大きな基板上での高品質膜の製造、デバイス利用のより大きな柔軟性、製造スループットの増加、及び製造コストの削減を重視している。
【0019】
MBEは、複数の薄い結晶膜が高真空環境でエピタキシャル成長されるプロセスの一例にすぎない。このような膜は、例えば元素の周期表から選択された化合物半導体から構成される。例えば、IIIA-VA半導体は、Al、Ga、及びInのうちの少なくとも1つから選択されるIIIA族金属と、As、P、及びNから選択されるVA族種とを含むことで、化学量論組成のAlGa1-xAs1-y及びAlGa1-xNを形成することができる。別の例では、II-VI半導体は、Cd及びZnから選択されるII族金属と、Te、S、及びSeから選択されるVI族種とを含むことで、化合物ZnCd1-xTeを形成することができる。更なる例としては、IV-IV(例えばSiGe)及び金属酸化物MOが挙げられる。金属酸化物の他の例は、RE-酸化物及びRE-酸窒化物(REは希土類元素の群からの少なくとも1つの種、すなわちランタニド系列金属種またはアルカリ土類金属種から選択される)またはIIA-IB-VIA(例えばMgZn1-xO)の形態の混合酸化物であり、これらも本明細書に開示のMBE法を使用して製造される例示的な材料である。本発明の方法は、改善された成長速度で高均一性膜を形成するために、アモルファス酸窒化物及び金属合金などの他の材料も利用することができる。すなわち、本明細書に開示の物理的原理は、アドアトム及び基板に固有の表面化学とは無関係である。
【0020】
更に、堆積プロセスにおいて化合物半導体材料を使用すると、堆積面上に逐次的に堆積される複数の異種のエピ層を製造する能力が付与される。これにより、量子工学による構造を具体的な電気光学及び電子用途(例えばLED、レーザー、パワートランジスタ、及び高周波デバイス)に合わせて調整及び最適化することができる。
【0021】
したがって、本発明の方法及びシステムにおいて、膜品質と膜成長速度との間のバラン
スを改善するために形成面に対して配置される材料供給源は、MBEシステムを使用する連続的な高スループット膜形成プロセスの支援に適している。本開示は、MBEシステムの製造業者によって固定された材料供給源の物理的配置に起因する遅い成長速度及び低い堆積均一性のうちの少なくとも1つを従来特徴としていた既存のシステム及び方法に対する改善を提供する。
従来の材料堆積システム
図1は、当該技術分野で公知の高真空反応チャンバー10の一部の等角図であり、これは、基板22の膜形成面26に対して軸外にあり、かつある角度で配置されている材料供給源18を含む。高真空反応チャンバー10は、MBEシステム5の反応チャンバーであってもよい。真空環境14は、真空ポンプ16によって高真空反応チャンバー10内で維持される。例えば、真空環境14は、約10-12torr~約10-7torr、約10-11torr~約10-9torr、または約10-11torr~10-5torrの範囲であってもよい。十分に準備され、実質的に漏れのない反応器は、反応器のポンピング速度と供給源によって生成する入射ビーム圧力とに直接関連するベース圧力及び成長圧力(すなわち堆積中)を有する。
【0022】
材料供給源18は、高真空反応チャンバー10の内側の基板22に対して配置される。基板22は、その上に材料の膜または層が形成され得る任意のベース材料であってもよい。基板22は、回転中心軸AXを中心に回転可能である。材料供給源18に面している基板22の側は、膜形成面26を提供する。基板22は、半径RSUBを有する。
【0023】
形成面26は、材料供給源18から運ばれる材料の標的である。すなわち、形成面26は、エピタキシーなどによって膜が形成され得る基板22の側である。エピタキシーとは、結晶性基板上に結晶性の被覆層を堆積させることを指し、被覆層は基板に記録される。言い換えると、エピタキシャル成長と呼ばれるためには、基板に関して被覆層の1つ以上の好ましい結晶配向が存在しなければならない。被覆層はエピタキシャル膜またはエピタキシャル層と呼ばれ、エピ層と呼ばれる場合もある。
【0024】
材料供給源18は、形成面26上に膜を形成することができる任意の元素供給源または純粋種であってもよい。例えば、図1に示されている材料供給源18はクヌーセン蒸発セルであってもよい。典型的なクヌーセン蒸発セルは、成形るつぼ(高純度の熱分解窒化ホウ素、溶融石英、タングステン、または黒鉛製)、複数の抵抗加熱フィラメント、水冷システム、るつぼ本体内に熱を封じ込めるための熱シールド、るつぼオリフィス、及びオリフィスシャッターを含む。これらはいずれも図示されていないものの、当業者には周知である。材料供給源18は、出口開口部30を含む。クヌーセン蒸発セルの場合、出口開口部30は形成面26に面したるつぼの端部の開口部である。るつぼの加熱の結果として、るつぼ内の材料(例えば液体)も加熱され、材料原子が蒸発する(例えば液体表面から)。単位時間あたりの単位面積あたりに蒸発する原子の数は、るつぼの温度を制御することによってよく制御することができる。蒸発する原子または種は、出口開口部30から加圧下で運ばれ、明確に規定された出口速度かつ供給源から基板までの距離を超える平均自由工程(反応器内の高真空レベルによって維持される)で移動し、形成面26の材料とこれらが衝突及び/または相互作用する場所である形成面26に向けられる。すなわち、材料供給源18の出口開口部30を出る材料(または種)のプルーム34が形成面26に向けられる。プルーム34は対称軸SAを有する。
【0025】
従来の市販のMBE堆積システムは、フラックス均一性と成長速度の両方の同時最適化を最初に考慮せずに、比較的小さな堆積面領域上で適切な材料フラックス均一性のために空間的に構成された材料供給源を利用する。図1は、基板の回転中心軸AXを概略的に示している。材料供給源18は、基板22の回転中心軸AXからの特定の横方向距離X、形成面26の平面からの特定の直交(垂直)方向距離Z、かつ形成面26の平面に対して仮
想フラックス面(VFP)傾斜角αに位置している。したがって、材料供給源18は「軸外」材料供給源である。横方向距離X及び直交方向距離Zは、基板堆積面26の中心に対する材料供給源18の座標である。
【0026】
実際には、従来のMBEシステムにおける材料供給源の最適ではない空間配置は、基板から供給源までの距離RSrc-Subを増加させることによって(すなわち、最適な配置に必要な距離よりも大幅に遠くに供給源を配置することによって)経験的に補われる。この増加した基板から供給源までの距離は、基板から供給源までの距離の二乗に反比例する成長速度の低下、及び放出された供給材料の利用率の低下を直接もたらす。加えて、従来のMBEシステムでは、材料供給源からの種のプルームは、典型的には形成面26の中心に向けられる。
【0027】
従来のMBEシステムは、以下によって規定される構成空間を有する反応器システムとして一般化及びまとめることができる:
(i)堆積面の絶対回転中心を標的にするように配置された材料供給源プルームの対称軸SA、
(ii)供給源から基板までのRsrc-sub、及び堆積面の中心に対して円筒対称または球対称で構成される基板回転軸AXに対する供給源VFP重心の横方向距離X、
(iii)X≦Rsrc-subかつβ=tan-1(X/Rsrc-sub)≦45°(βは垂直軸Zと対称軸SAの間の角度である)となるような割合の反応器寸法、及び
(iv)0≦α≦45°の範囲に制限された仮想フラックス面傾斜角。
供給源の配置が最適化された材料堆積システム
図2は、いくつかの実施形態による、材料堆積システム50の一部の等角図である。分子線エピタキシーシステムである材料堆積システム50は、高真空反応チャンバー100を有する。材料堆積システム50は、軸外に、基板122の基板堆積面126に対してある角度で、かつ量Roffsetだけずらされて配置されている材料供給源118を含む。すなわち、材料供給源118は、絶対中心ではなく、量Roffsetだけ基板122の絶対中心からずらされた地点に向けられた対称軸SAを有する。材料供給源118は、基板堆積面126の領域122P上に材料を堆積する。真空環境114は、真空ポンプ116によって高真空反応チャンバー110内で維持される。例えば、真空環境114は、一例では約10-12torr~約10-7torr、別の例では約10-11torr~約10-9torr、または更に別の例では約10-11torr~10-5torrの範囲であってもよい。
【0028】
材料供給源118は、高真空反応チャンバー100内部の基板122に対して配置されて、高スループットを維持しながらも高い均一性を有する堆積層を生成する。基板122は、材料の膜または層を上に形成することができる任意のベース材料であってもよい。例えば、基板122は、きれいな原子面を有するシリコン(例えば単結晶)、サファイア、MgO、またはGaのウェーハであってもよい。基板122は、回転の中心軸AXの周りで回転可能である。基板堆積面126は、エピタキシーなどによって膜が形成され得る側の基板122の面、例えば前面である。基板122は、特定の半径RSUBを有する。例えば、8インチの基板122は4インチのRSUBを有し、12インチの基板122は6インチ(約150mm)のRSUBを有する、などである。図1で示されている基板122は円形であるが、本発明のシステム及び方法はこれに限定されない。例えば、基板122は、正方形またはその他の円形ではない形状であってもよい。別の実施形態では、材料供給源118は、1枚以上の基板が上に取り付けられているプラテンなどに対して配置される。
【0029】
当業者は、高真空反応チャンバー100が、図2に示されていない他の構成要素(例えば基板ヒーター、材料供給源開口部、感知装置、追加の真空ポンプシステム構成要素など
)を含み得ることを認識するであろう。
【0030】
材料供給源118は、基板堆積面126上に膜を形成することができる任意の元素または純粋種の供給源であってもよい。いくつかの実施形態では、材料供給源は窒素または酸素のプラズマ源であってもよい。材料供給源118の例としては、ガス状前駆体インジェクター、予熱されたガスインジェクター、昇華した固体材料または蒸発した液体材料を収容するためのクヌーセンタイプの熱駆動るつぼ(すなわちクヌーセン蒸発セル)、供給源材料の電子ビーム蒸発器による加熱、及びガス状原料用のリモートプラズマ活性化源(すなわち、プラズマ領域が完全に供給源の中に含まれ、供給源から基板表面に向かって延びていない供給源)が挙げられる。一例では、アルミニウム(Al)が基板堆積面126上にエピタキシャル成長される材料である場合、材料供給源118は、実質的に相互作用しないるつぼの中に含まれる実質的に純粋なアルミニウムを含むクヌーセン蒸発セルであってもよい。
【0031】
材料供給源118は、出口開口部130及び材料供給源118内の材料の材料レベル132を含む。クヌーセン蒸発セルの場合、出口開口部130は、基板堆積面126に面しているるつぼの端部の開口部である。材料供給源118の出口開口部130を出る材料(または種)のプルーム134は、基板堆積面126に向けられる。別の実施形態では、材料供給源118は複数の出口(出口開口部130)を含む。
【0032】
基板122に対する材料供給源118の位置は、望まれる層堆積の均一性と望まれる層成長速度を実現するために基板122に対する材料供給源118の傾斜角、横方向距離、及び/または直交方向距離を製造実施の合間に変更できるように動的に調整可能である。傾斜角、横方向距離、及び直交方向距離の設定は、材料供給源の材料放出空間分布に依存する。位置調整は、互いに異なる材料を放出する複数の材料供給源を同時に使用することによっても影響を受ける場合がある。いくつかの実施形態では、材料供給源の傾斜角を最初に設定することができ、直交方向距離及び横方向距離の最小値は、設定された傾斜角を使用して決定することができる。他の実施形態では、直交方向距離及び横方向距離を最初に設定することができ、傾斜角は、望まれる成長速度で望まれる層堆積の均一性が得られるように決定することができる。いくつかの実施形態では、基板122が固定されている間、材料供給源118の位置は移動可能であり、あるいは基板122は、材料供給源118の代わりに、または材料供給源118に加えて移動可能であってもよい。例えば、位置調整機構は、材料供給源、基板、または材料供給源と基板の両方と連結されていてもよい。位置調整機構は、例えば、スロットに沿って固定されるブラケット、調節可能な長さを有するアームもしくはポスト、リニアアクチュエータ、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0033】
材料(または種)のプルーム134は、実質的に相互作用しない粒子のフラックスであり、これは、材料供給源118から前方向に放出される種の角度分布によって特徴付けることができる空間ビームフラックスプロファイル(BFP)を有する。BFPは、材料供給源の既定の材料放出空間分布と呼ばれる場合もある。ビームフラックスプロファイルは、プルーム134の対称軸SAに対するBFP角度θの関係によって特徴付けられる。したがって、材料供給源118は、特定の余弦N係数で近似することができ、またこれを有することにより特徴付けられる。余弦N係数は、図3を参照してより詳しく説明される。
【0034】
図3は、材料供給源の特定の余弦N係数に対応するビームフラックスプロファイルの例のプロット200である。プロット200は、BFP角度θの関数としての特定のビームフラックスプロファイルの角度ビーム分散を示している。例えば、プロット200には、余弦N係数が1であり、実質的に球形であり、等方性の点源とみなされるBFP210が示されている。N>1のcos(θ)を有するBFPは、図3に示されているように、
より指向性を有している。例えば、プロット200には、余弦N係数が6であり、球形ではなく、BFP210よりも細長くて狭いビームフラックスプロファイルであるBFP214が示されている。プロット200には、余弦N係数が1から6の間であるBFP210とBFP214との間の他のBFPの例も示されている。例として、余弦N係数が1及び余弦N係数が6の光源は、前方に投影されたビームの80%がそれぞれ±36.4°及び±15.5°の角度範囲内に含まれるという点で異なる。したがって、余弦N係数材料供給源及び回転堆積面に対する相対的な構成配置の賢明な選択によって、フラックス利用率の改善を実現することができる。例えば、余弦N係数を有する供給源を使用すると、より指向性が得られ、そのため無駄になる材料の量が減らされる。
【0035】
材料供給源118は、余弦N因子によって特徴付けられる任意の供給源であってもよい。この余弦N因子の特徴付けは、材料供給源118が材料を蒸発させる液体供給源であるか、昇華材料である昇華供給源であるか、ガス供給源であるかなどの供給源のタイプとは無関係である。
【0036】
従来のMBEシステムは、約1~約2の範囲の余弦N係数を有する材料供給源を利用する。実質的に球形のプルームが高いフラックス均一性に有利であると当業者には広く考えられている。更に、従来の材料供給源では、有効な余弦N係数は、供給源材料の減少に応じて変化する可能性がある。これは、供給源材料が減少するのに伴い堆積面全体の空間フラックスの不均一性の変化をもたらし、材料供給源が堆積面に対して最適ではない位置に構成されている場合、この問題は悪化する。したがって、本実施形態では、有効な余弦N係数の変動に耐える最適な供給源構成を有する堆積反応器を設計することが望ましい。
【0037】
更に、従来のMBEシステムでは、材料供給源は形成面から比較的長い距離に配置され、典型的には最適距離をはるかに超えている。従来技術のシステムは、典型的には、堆積面の直径をはるかに超えるRscr-subを使用する(すなわちα<45°でRscr-sub>>2Rsub)。余弦N係数が1<N≦2であることを特徴とする従来の材料供給源の典型的なBFPは、供給源ビームを構成する種が移動しなければならない長い距離と相まって、(1)最適ではない成長速度、(2)堆積面全体にわたるフラックスの不十分な均一性、(3)堆積された膜に悪影響を与え得る多量の残留バックグラウンド不純物種、及び(4)堆積面を横断するフラックスに対する供給源から放出された合計のフラックスの比率により測定される不十分なフラックス利用率、うちの少なくとも1つをもたらす。すなわち、従来のシステムにおける材料供給源からの種は、形成面に向けられるのとは対照的に、チャンバーのかなりの体積全体に放出される傾向がある。
【0038】
本方法及びシステムでは、材料供給源118によって生成されるプルーム134の対称軸SAは、基板122の基板堆積面126の周囲の明確に規定された部分に向けられる。具体的には、プルーム134の対称軸SAはずらされ、基板堆積面126の回転中心から離れた地点に向けられる。すなわち、材料供給源118は、回転軸AXから量Roffsetだけ離れた地点で基板122と交差する対称軸SAを有する。
【0039】
更に、基板122の基板堆積面の回転中心軸AXからの材料供給源118の配置を表す横方向距離X及び直交方向距離Zは、RSUBにスケーリングされる。RSUBに対する横方向距離X及び垂直距離Zの関係は、高真空反応チャンバー100のサイズをスケーリングするために使用することができる。反応チャンバー100内の材料供給源118を基板122に近づけることを可能にすることにより、反応システム(材料堆積システム50)の全体のサイズをより小さくすることができ、結果としてコストを削減することができる。
【0040】
材料供給源118の出口である出口開口部130は、図2の詳細図Aに示されているよ
うに有効面積Asrcを有する。有効面積Asrcは、半径Rsrcで定義することができる。有効面積ASRCを有する出口開口部130は、複数の独立した余弦N元素供給源として特徴付けまたは設計することができる。例えば、i={1、…、j、…、m}の添え字が付けられた元素供給源の整数m(m>1)は、cosNi(θ)で示される既定の材料放出空間分布(BFP)によってそれぞれ特徴付けられる。元素供給源は、Nがiの全ての値について一定であるように選択することができ、あるいは少なくとも2種の異種の元素供給源をN≠Nで選択することができる。
【0041】
材料堆積システムにおける材料供給源の配置を決定する一例では、半径RSUB=1.5である円形の基板堆積面126を使用して、直径300mmの基板122を表すことができる。半径RSRC=0.2によって定義される円形領域の化合物供給源(すなわち材料供給源)は、基板堆積面126に対して正のz方向の半空間に配置され、中心はS(S0x、S0y、S0z)に配置され、VFP傾斜角α=45°である。供給源は、ΔρSRC=0.1の3つの半径方向のステップで離散化され、離散化された要素はΔθSRC=36°の角度間隔で配置され、それにより21の元素で化合物供給源平面が形成される。元素の各供給源は、修正された余弦エミッタ
【0042】
【数1】
【0043】
としてモデル化される。VFP上の各供給源元素は、VFPの表面法線
【0044】
【数2】
【0045】
に平行な基板堆積面126に向けられたフラックスを放出する。その後、方向付けられたフラックスセグメントと基板堆積面126上の一般的な点Pとの交点が、ユークリッド距離ノルム
【0046】
【数3】
【0047】
と共に計算される。基板122または基板堆積面126は、同様に、ΔRSUB=0.1及びΔθSUB=10°の半径方向及び角度の増分で離散化され、それにより、デカルト座標P(xSUB、ySUB、zSUB)を有する541点のサンプリングメッシュが得られる。
【0048】
材料堆積システムの真空環境は、供給源開口部から放出された材料の弾道粒子形態を、材料供給源出口開口部と、材料放出空間分布の対称軸と交差する堆積面上の地点との間をユークリッド距離以上に維持するための平均自由行程の長さに対して十分である。反応チャンバー内の残留バックグラウンド不純物種が大幅に減少する、適切な高真空条件が提供
される。材料供給源の余弦N係数は、所定の真空レベルでの反応チャンバー内の残留バックグラウンド不純物種の量にも直接影響する。供給源材料が十分に高純度の材料から構成されていると仮定すると、成長膜に組み込むためにその後利用される(すなわち望ましい材料供給源フラックスに追加の望ましくない不純物フラックス成分を形成する)不純物濃度は、堆積中に維持される堆積速度と真空レベルに主に依存する。すなわち、供給源材料フラックスの導入前の反応器内の所定のベース真空レベルに対し、十分に準備された清浄な堆積面が望ましくない不純物表面被覆を堆積する定量可能な時間量が存在する。そのため、小さなフラックスの不均一性、高い成長速度、及び低いバックグラウンド不純物濃度を同時に達成することが望ましい。
【0049】
本開示では、ずらされた供給源である材料供給源118は、従来のMBEシステムと比較して、基板堆積面126全体にわたる改善されたフラックス不均一性と、短縮された供給源から基板までの距離の両方を提供する。すなわち、最適な位置は、従来のMBEシステムと比較して、所定の基板堆積面126領域に対して低減されたフラックス不均一性及び増加した成長速度を実現する所定の材料供給源のタイプについて決定される。
【0050】
更に、本実施形態は、大面積の堆積面の実用性のために明確に高真空反応器内で利用される材料供給源(複数可)の最適な構成空間を提供する。加えて、大きい堆積面積の反応器は、N≧2の有効余弦N係数や供給源VFP面積などの、材料供給源の特徴を適切に選択することにより、本方法に従って更に最適化することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、材料供給源118は、2≦N≦6の範囲などの0<N≦10の範囲の余弦N係数を有する。更に、複数の実施形態では、材料供給源118は、従来技術の最適ではない構成と比較して、基板堆積面126に最適かつ近くに配置される。結果として、堆積種の放出されたプルーム134は、従来のMBEシステムの場合よりも高い効率で基板堆積面126に堆積される。供給源材料種の移動距離が大幅に短いと、堆積面での堆積種の堆積速度が逆二乗で増加する。これにより、材料供給源から放出される堆積種に必要とされる平均自由行程が大幅に小さくなり、したがって、実質的に衝突のない領域をより高い作動圧力(すなわちより低い真空レベル)で維持することができる。成長速度が改善されるという更に有利な特性は、堆積された膜内の残留バックグラウンド不純物種の影響が低減されることである。
【0052】
「供給源利用率」は、基板堆積面126を横断する材料供給源118から物理的に放出される材料の量(すなわち体積単位)を指す。従来の軸外MBE反応器の構成は、最大でも25%の供給源使用率しか得られない。対照的に、本実施形態は、最適化された標的フラックスの不均一性のために空間的に構成されたプルーム134を提供することから、最大化された堆積速度、したがってより高いフラックス利用率が実現される。更に、本実施形態は、従来のMBE(例えば約1~2の余弦N係数)よりも高い指向性材料供給源(例えば最大約6の余弦N係数)を使用する。したがって、最適に構成された場合、本実施形態は、供給源利用率を更に増加させる。例えば、本実施形態を使用する供給源利用率は、約30%~約50%とすることができる。したがって、本実施形態により、従来のMBEよりも効率的であり、従来のMBEと比較して最も速い堆積速度で最適な標的フラックスの不均一性を実現する膜形成プロセスが得られる。
【0053】
更に、本実施形態は、膜形成種の十分に大きな平均自由行程を維持するための最適な高真空条件を提供し、これにより、高品質のエピタキシャル膜を形成することができる。平均自由行程は、移動する粒子(例えば原子、分子、光子)が連続する衝撃(または衝突)間で進む平均距離であり、これはその方向、エネルギー、またはその他の特性を変更する。より具体的には、複数の実施形態は、基板堆積面126からの材料供給源118の距離よりも大きい膜形成種の平均自由行程を維持する高真空条件を提供する。例えば、300
°Kの不活性分子窒素(N)で完全に均一に満たされた反応器に向けられたΦAl=5×1019atoms・m-2・s-1のフラックスを生成する単体Al原子のみから構成された材料供給源ビームの例の場合、LMFP=1メートルのAl原子の平均自由行程を得るためには、最大作動チャンバー圧力は10-6torrに制限され、好ましくはそれ未満である。実際には、原子が供給源から堆積面まで移動するのに必要な、妨げられない最長の光路長は、最大でLMFP/2である必要がある。それに加えた更なる制限は、堆積される膜のタイプに特有のバックグラウンド不純物の種類及び量の影響である。本実施形態は、成長速度(すなわち堆積面上に目的材料の1つの単分子層を堆積するための時間τML)が、不純物種の同等の単分子層を堆積するのに必要な時間τimpよりも少なくとも係数λ≧10~10倍速いことが望まれる場合(すなわちτimp≧λ・τML)に、高品質の膜を得ることができる。これにより、反応器内の許容可能な残留不純物圧力の上限が10-9~10-10torrほどにされる。
【0054】
したがって、材料供給源によって生成された放出される種の平均自由行程は、堆積面との相互作用まで弾道的であり衝突がないとみなされる。更に、反応器のベース圧力は、不純物種を含んでおらず、堆積面で生成されるフラックスプロファイルに寄与しないとみなされる。
【0055】
再び図2及び図3を参照すると、材料堆積システムを構成する方法は、膜品質と膜成長速度との間のバランスを改善する目的で材料供給源の位置を決定することを含む。2種以上の材料供給源を最適化することができ、各材料供給源の対称軸は、基板の回転軸からずれた地点に向けられる。例えば、複数の実施形態は、所定の材料供給源についての最小横方向距離X及び最小直交方向距離Z並びに傾斜角を決定することを含み、材料供給源は、出口開口部及び材料放出空間分布などの所定のパラメータ(例えば所定の余弦N係数)を有する。別の例では、複数の実施形態は、所定の材料供給源の傾斜角並びに所定の横方向距離X及び直交方向距離Zを決定することを含み、材料供給源は、出口開口部及び材料放出空間分布などの所定のパラメータ(例えば所定の余弦N係数)を有する。いくつかの実施形態では、提案された材料供給源の位置(及び/または角度)を試験することができ、望まれる層の均一性を満たすために、試験後に傾斜角α、横方向距離、直交方向距離、望まれる成長速度、及び出口開口部形状のうちの1つ以上を動的に変更することができる。いくつかの実施形態では、望まれる層の均一性が満たされない場合、例えば達成できないとみなされる場合、望まれる層の均一性を新しい値に変更することができ、その後、新しい材料供給源の位置パラメータが、新しい値を満たすように決定される。いくつかの実施形態では、材料供給源と基板との間の相対位置の計算は、一緒に使用される複数の材料供給源について行うことができる。すなわち、いくつかの実施形態では、材料供給源の位置の決定は、材料供給源と追加の材料供給源が一緒に使用される場合を考慮する。本発明の方法は、図8を参照してより詳しく説明される。
材料供給源配置の最適化
図4図7は、基板堆積面126に対する材料供給源118の特定の位置の構成空間のプロットの例であり、計算された膜の不均一性は、材料供給源118の座標X及びZの関数としてプロットされている。図4図7のそれぞれのプロットで示されている構成空間は、特定のVFP傾斜角α、材料供給源118の特定の余弦N係数、及び基板堆積面126の特定のRSUB(膜形成の領域を示す)に対して一意である。方法は、図4図7のプロットに示されている構成空間のみに限定されず、これらの構成空間は例示にすぎない。MBEを使用した連続的な高スループット膜形成プロセスの支援に適した、VFP傾斜角α、余弦N係数、及びRSUB値の任意の組み合わせについての構成空間が存在する。表1は、図4図7に示されているプロットに対応する構成空間を示す。
【0056】
【表1】
【0057】
図4では、プロット300は、余弦N係数=2、VFP傾斜角α=45°、かつRSUB=1.5である場合の材料供給源118の位置の構成空間を示している。プロット300のX座標、Z座標、及びRSUBは無次元であることに留意されたい。プロット300は、>15%の膜不均一領域、10%の膜不均一領域、5%の膜不均一領域、2%の膜不均一領域、1%の膜不均一領域、0.5%の膜不均一領域、及び0.3%の膜不均一領域を示しており、これらのそれぞれは、基板堆積面126に対する材料供給源118の距離X及びZの関数としてプロットされている。曲線310は、>15%と10%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線312は、10%と5%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線314は、5%と2%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線316は、2%と1%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線318は、1%と0.5%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線320は、0.5%と0.3%の膜不均一領域の間の境界を形成する。1%の膜不均一性の特定の島317が、2%の膜不均一領域(すなわち曲線316の頂点の近く)に存在し得ることに留意されたい。同様に、0.5%の膜不均一性の特定の島が、1%の膜不均一領域(すなわち曲線318の頂点の近く)に存在し得る。同様に、0.3%の膜不均一性の特定の島が、0.5%の膜不均一領域(すなわち曲線320の頂点の近く)に存在し得る。
【0058】
所定の不均一性値に対して、材料供給源118の出口開口部130から基板堆積面126までの可能な最短距離を提供することによって、最も速い成長速度を達成することができる。したがって、できるだけ短いXとZの距離を与える所定の不均一領域内の地点(すなわちRsrc-sub=(X+Z1/2が最小化される場所)を選択することによって最も速い成長速度を達成することができる。供給源から形成面までの距離が短いほど成長速度が速くなる、すなわちMBEシステムのスループットが高くなるため、短いXとZの距離が望ましい。例として、プロット300を参照すると、2%の不均一性が膜形成プロセスの目標であり、かつできるだけ速い成長速度が望まれる場合、頂点に近く、曲線314のすぐ内側にある点Aは、できるだけ短い距離X及びZが得られるように、ひいてはできるだけ速い成長速度が得られるように選択される。この例では、点Aに対応して、VFP傾斜角α=45°を有する材料供給源118(余弦N係数=2を有する)が、約2%の不均一性を達成するために約2.4の距離X及び約2の距離Zに設定される。別の例では、点Bに対応して、VFP傾斜角α=45°を有する材料供給源118(余弦N係数=2を有する)が、約1%の不均一性でできるだけ速い成長速度が得られるように約3の距離X及び約2.6の距離Zに設定される。
【0059】
図5では、プロット400は、材料供給源118が余弦N係数=3、VFP傾斜角α=45°、かつRSUB=1.5である場合の材料供給源118の位置の構成空間を示している。プロット400のX座標、Z座標、及びRSUBは無次元であることに留意されたい。プロット400は、材料供給源118の座標X及びZの関数としてプロットされている、>15%の膜不均一領域、10%の膜不均一領域、5%の膜不均一領域、2%の膜不均一領域、1%の膜不均一領域、及び0.5%の膜不均一領域を示している。曲線410
は、>15%と10%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線412は、10%と4%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線414は、4%と2%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線416は、2%と1%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線418は、1%と0.5%の膜不均一領域の間の境界を形成する。0.5%の膜不均一性の特定の島が、1%の膜不均一領域(すなわち曲線418の頂点の近く)に存在し得ることに留意されたい。
【0060】
一例では、プロット400の点Aに対応して、VFP傾斜角α=45°を有する材料供給源118(余弦N係数=3を有する)が、約1%の不均一性を達成するために約3.2の距離X及び約2.6の距離Zに設定される。別の例では、プロット400の点Bに対応して、VFP傾斜角α=45°を有する材料供給源118(余弦N係数=3を有する)が、約0.5%の不均一性を達成するために約4.2の距離X及び約3.5の距離Zに設定される。したがって、1%の不均一性では、材料供給源118は、余弦係数2(プロット300の点B)よりも余弦係数3(プロット400の点A)の場合でより大きいX距離に配置する必要がある。
【0061】
図6では、プロット500は、材料供給源が余弦N係数=6、VFP傾斜角α=45°、かつRSUB=1.5である場合の材料供給源118の位置の構成空間を示している。プロット500のX座標、Z座標、及びRSUBは無次元であることに留意されたい。プロット500は、材料供給源118の座標X及びZの関数としてプロットされている、>15%の膜不均一領域、10%の膜不均一領域、5%の膜不均一領域、2%の膜不均一領域、1%の膜不均一領域、及び0.5%の膜不均一領域を示している。曲線510は、>15%と10%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線512は、10%と5%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線514は、5%と2%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線516は、2%と1%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線518は、1%と0.5%の膜不均一領域の間の境界を形成する。5%の膜不均一性の特定の島が、10%の膜不均一領域(すなわち曲線512の頂点の近く)に存在し得ることに留意されたい。同様に、2%の膜不均一性の特定の島が、5%の膜不均一領域(すなわち曲線514の頂点の近く)に存在し得る。同様に、1%の膜不均一性の特定の島が、2%の膜不均一領域(すなわち曲線516の頂点の近く)に存在し得る。
同様に、0.5%の膜不均一性の特定の島が、1%の膜不均一領域(すなわち曲線518の頂点の近く)に存在し得る。
【0062】
一例では、プロット500の点Aに対応して、VFP傾斜角α=45°を有する材料供給源118(余弦N係数=6を有する)が、約1%の不均一性を達成するために約3.6の距離X及び約2.6の距離Zに設定される。別の例では、プロット500の点Bに対応して、VFP傾斜角α=45°を有する材料供給源118(余弦N係数=6を有する)が、同様に約1%の不均一性であるが点Aよりもわずかに遅い成長速度を達成するために約3.7の距離X及び約2.7の距離Zに設定される。したがって、1%の不均一性では、材料供給源118は、余弦係数2(プロット300の点B)よりも余弦係数3(プロット400の点A)よりも余弦係数6(プロット500の点AまたはB)の場合で更に大きなX距離に配置する必要がある。
【0063】
図7を参照すると、プロット600は、VFP傾斜角α=30°、材料供給源118余弦N係数=3、かつRSUB=1.5である場合の材料供給源118の位置の構成空間を示している。プロット600のX座標、Z座標、及びRSUBは無次元であることに留意されたい。プロット600は、材料供給源118の座標X及びZの関数としてプロットされている、>15%の膜不均一領域、10%の膜不均一領域、5%の膜不均一領域、2%の膜不均一領域、1%の膜不均一領域、及び0.5%の膜不均一領域を示している。曲線610は、>15%と10%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線612は、10
%と5%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線614は、5%と2%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線616は、2%と1%の膜不均一領域の間の境界を形成する。曲線618は、1%と0.5%の膜不均一領域の間の境界を形成する。1%の膜不均一性の特定の島が、2%の膜不均一領域(すなわち曲線616の頂点の近く)に存在し得ることに留意されたい。同様に、0.5%の膜不均一性の特定の島が、1%の膜不均一領域(すなわち曲線618の頂点の近く)に存在し得る。
【0064】
一例では、プロット600の点Aに対応して、VFP傾斜角α=30°を有する材料供給源118(余弦N係数=3を有する)が、約1%の不均一性を達成するために約3の距離X及び約3.3の距離Zに設定される。別の例では、プロット600の点Bに対応して、VFP傾斜角α=30°を有する材料供給源118(余弦N係数=3を有する)が、同様に約1%の不均一性であるが点Aよりもわずかに遅い成長速度を達成するために約3.05の距離X及び約3.35の距離Zに設定される。プロット600の点AまたはBをプロット400の点Aと比較すると、同じ余弦係数=3では、傾斜角αの30°から45°への変更が、1%の不均一性の目標を達成するためのX距離とZ距離に影響を及ぼすことが分かる。
【0065】
図8は、膜品質と膜成長速度との間のバランスを改善するために、材料堆積システムにおいてずらして材料供給源を構成する方法700の例の流れ図である。方法の実施形態は、特定の変数の値を選択し、他の変数を最適化するために材料堆積プロセスを数学的にモデル化することを含む。例えば、望まれる層成長速度で望まれる層堆積の均一性を実現するためにXとZを最小化するなど、所定の材料供給源のタイプと傾斜角に対して、横方向距離Xと直交方向距離Zを最適化することができる。他の例示的な実施形態では、距離X及びZは固定されてもよく、傾斜角は、望まれる成長速度で望まれる層の堆積均一性を実現するために決定することができる。更に他の実施形態では、望まれる堆積均一性及び成長速度を満たすために、基板(RSUB)のサイズまたは余弦N供給源のタイプを変更することができる。
【0066】
従来のMBEシステムは、正確なエピ層の厚さ、高均一性のフラックス、異種のエピ層間の急峻な界面、高均一性の膜、高構造膜、及び高い電子品質の結晶膜を実現するための手段として、比較的遅い成長速度を使用することを特徴とする。例えば、従来のMBEシステムにおける成長速度は、約0.1単層/秒(ML/秒)から約10ML/秒である場合がある。更に、MBEシステムは、典型的には、堆積膜への意図しない不純物の取り込みを少なくするために必要とされる低い残留ベース圧力を得るために、特殊であるが簡単な高真空準備方法を要する。高品質のエピタキシーに適した真空状態の実現に向けた反応器準備におけるこの先行投資は、高圧CVD反応器と比較した場合の重要な差別化要因である。更に、材料供給源(固液蒸発型の供給源など)は、反応器へのフロントエンドの大気予圧を必要とし、その後、反応器が再度真空になると、材料供給源にアクセスできなくなる。したがって、高スループットの膜形成プロセスでは、材料供給源の機能(campaign)の所定の寿命と総堆積膜厚についての単位面積あたりのエピ層コスト($/m)を管理するために高いフラックス利用効率が必要とされる。更に望ましい特性は、低いフラックスの不均一性を維持しながら所定の堆積サイクルの総堆積面積を増加させるための反応器サイズのスケーラビリティである。これにより、面積あたりのコスト(例えば$/m)及び所有コストを更に削減することができる。増加した堆積表面積には、単一の大面積基板または有利には堆積面を横切るように配置された複数のより小さな基板が含まれ得ることが理解される。
【0067】
従来のMBEシステムでは、成長速度と、材料供給源と形成面との間の距離(以下供給源から形成面までの距離と呼ぶ)との間に直接的な相関関係が存在する。より具体的には、供給源から形成面までの距離が短いほど、潜在的な成長速度は速くなる。供給源から形
成面までの距離が長いほど、成長速度は遅くなる。したがって、高い均一性の膜を得るために、従来のMBEシステムは、本明細書で教示される最適位置を超えて形成面から遠い距離に材料供給源を配置することによって遅い成長速度を満たす。結果として、従来のMBEシステムで高い成長速度を実現するためには、供給源から形成面までの距離を大幅に短くする必要があるが、そのようにすると、通常、堆積面全体の膜の均一性が損なわれ、最大堆積表面積が制限される(すなわちプロセスのスケーラビリティが制限される)。
【0068】
対照的に、方法700は、いくつかの実施形態によれば、高品質の膜を実現しながらも、MBEプロセスにおいて高い成長速度を満たすための技術を提供する。一例では、方法700は、堆積面全体で約≧95%の厚さの均一性を有する(すなわち約≦5%不均一である)膜を提供する。別の例では、方法700は、約≧99%の均一性(すなわち約≦1%の不均一性)を有する膜を提供する。方法700は、以下のステップを含み得る。
【0069】
ステップ710において、回転機構が設けられる。回転機構は、基板の基板堆積面の中心軸の周りで基板を回転させる。いくつかの実施形態では、基板は、6インチ(150mm)以上の直径を有する。
【0070】
ステップ714では、材料の元素種や材料供給源のタイプなど、材料供給源が選択される。材料供給源と基板は真空環境内に含まれる。材料供給源を選択する一例では、形成される膜がガリウムを含む場合、選択される種はガリウム種である。別の例では、形成される膜がアルミニウムを含む場合、選択される種はアルミニウム種である。次いで、材料供給源118のタイプ(すなわち気体、液体、及び固体)が、選択された種に基づいて選択される。一例では、選択された種がガリウムである場合、ガリウムの液体蒸発のためのクヌーセン蒸発セルが選択される。いくつかの実施形態では、材料供給源は、例えば約N=1から約N=6までの範囲のビームフラックスプロファイルを有する余弦N供給源であってもよく、これは、従来のMBEを使用する他の方法では不可能である。材料供給源と追加の材料供給源が一緒に使用される場合には、すなわち異なる材料を同時に基板に堆積するために使用される場合には、追加の(すなわち複数の)材料供給源が含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、材料供給源は、活性窒素を放出する窒素プラズマ源、及び酸素プラズマ材料源を含む。
【0071】
各材料供給源118は、出口開口面を備えた出口開口部130、及び出口開口面からの既定の材料放出空間分布を有する。2種以上の材料供給源が使用される場合には、各材料供給源の既定の材料放出空間分布が取得される。いくつかの実施形態では、出口開口部は、出口開口部形状を有し、この方法は、出口開口部形状を選択することを更に含む。既定の材料放出空間分布は、中心軸からずれた地点で基板と交差する対称軸を有しており、出口開口部は、ある直交方向距離、ある横方向距離、及び基板の中心軸に対するある傾斜角で配置されることになる。余弦N係数材料供給源については、(例えば経験的に)あらかじめ定められた余弦N係数及び材料放出空間分布は、選択された材料供給源118の供給業者から入手することができる。一例では、選択された材料供給源118の余弦N係数は、約3または最大約6などの2以上である。
【0072】
ステップ718では、i)選択された材料供給源118を設置するためのVFP傾斜角αが設定されるか、ii)材料供給源の出口開口部の直交方向距離及び横方向距離が設定される。選択された材料供給源118のVFP傾斜角αは、一例では約30°から90°未満、別の例では約30°から約60°、更に別の例では約45°であってもよい。一例では、選択されたVFP傾斜角αは45°である。材料供給源118のプルーム134が基板堆積面126に実質的に直交して供給される従来のMBEとは異なり、材料供給源118のプルーム134は傾斜した角度で供給される。
【0073】
ステップ726では、望まれる成長速度で望まれる層の堆積均一性を実現するための、基板上の材料の望まれる堆積が選択される。いくつかの実施形態では、目標とする(望まれる)均一性(または不均一性)値は、フラックスとして表すことができる。いくつかの実施形態では、フラックスまたは膜の均一性は、許容値として表すことができる。一例では、基板堆積面126にわたる選択された目標とされる厚さの均一性は、99%(すなわち1%の不均一性に相当)である。本開示では、目標値は、望まれる値と呼ばれることもある。堆積表面積(すなわち基板堆積面126の面積)は、望まれる層の均一性及び望まれる成長速度のためのパラメータの決定において考慮される。一例では、基板122は3インチのウェーハ(RSUB=1.5)である。別の例では、基板122は6インチのウェーハ(RSUB=3)である。更に別の例では、基板122は8インチのウェーハ(RSUB=4)である。更に別の例では、基板122は12インチ(300mm)のウェーハ(すなわちRSUB=6)である。
【0074】
ステップ730では、傾斜角がステップ718で設定された場合には、望まれる層の堆積均一性を実現するための直交方向距離及び横方向距離の最小値が決定される。すなわち、材料供給源118を配置するための最短距離X及びZが、ステップ714、718、及び726のそれぞれで行われた選択に対応する構成空間のプロットを使用して決定される。例えば、図5のプロット400は、RSUB=1.5での、余弦N係数=3(ステップ714で選択される)、VFP傾斜角α=45°(ステップ718で選択される)、及び目標不均一性=1%(ステップ726で選択される)に対応する構成空間を示している。膜の成長速度は、選択された目標均一性に対応する最短距離X及びZを決定することにより改善される。いくつかの実施形態では、基板堆積面からの材料供給源の決定された直交方向距離及び決定された横方向距離は、材料供給源から放出された材料の平均自由行程以下である。
【0075】
ステップ730では、直交方向距離及び横方向距離がステップ718で設定された場合には、設定された直交方向距離及び設定された横方向距離を使用して、望まれる層の堆積均一性を実現するために傾斜角が決定される。
【0076】
いくつかの実施形態では、追加の材料供給源が使用されてもよく、ステップ730は、全ての材料供給源が一緒に使用される場合の傾斜角または直交方向距離及び横方向距離のいずれかを決定することを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、材料堆積システムを構成する方法は、例えば、決定された直交方向距離及び垂直距離が望まれる層の堆積均一性及び成長速度を達成する場合、ステップ730の後に完了する。例示的な状況では、プロット400の1%の膜不均一領域内で、最短またはほぼ最短の可能な距離X及びZに対応する点が選択される。一例では、プロット400の曲線416の頂点近くの点Aが選択される。点Aは、約3.2の距離X及び約2.6の距離Zに対応する。プロット400の1%の膜不均一領域内の他の点は、より長い距離X及びZをもたらし、それにより遅い成長速度になる可能性がある。したがって、曲線416の頂点に近いプロット400内の点Aを選択することによって、基板堆積面126に対する材料供給源118の位置を設定するために、最短またはほぼ最短の可能な距離X及びZが利用される。それにより、材料供給源118が基板堆積面126に近いほど成長速度が速くなるため、成長速度が改善される。
【0078】
更なる実施形態では、更に最適化を行うことが必要か否かを確認するために、決定された傾斜角または直交方向距離及び横方向距離の決定された最小値を試験することができる。ステップ734では、ステップ714、718、726、及び730で決定された基板堆積面126に対する材料供給源118の構成を物理的に実施及び試験することで、高スループット膜形成プロセスを支援するための適切な成長速度と組み合わされた目標とする
膜の不均一性が得られるか否かを決定する。例えば、図2を参照すると、(ステップ714で決定される)特定の余弦N係数を有する材料供給源118は、ステップ730で決定された基板堆積面126からの距離X及びZ、並びにステップ718で選択されたVFP傾斜角α=45°で配置される。高真空反応チャンバー100の真空環境114は、ポンプで特定の真空圧力(例えば約10-11torr~約10-7torr)にされ、ステップ710の回転機構が基板122を回転させるために使用され、材料供給源118が活性化される。定期的に、基板堆積面126に沿った複数のサンプル点でエピタキシャル成長膜の厚さが測定される。この測定は、例えば、基板堆積面126に向けられた反射高速電子線回折(RHEED)システムを使用して行うことができる。
【0079】
決定ステップ738では、ステップ734で行われた測定に基づいて、ステップ726で選択された望まれる不均一性と、高スループット膜形成プロセスを支援するのに適切に高い成長速度の両方が得られたか否かが決定される。目標とする不均一性と成長速度の両方が達成された場合、方法700は終了する。基板堆積面126に対する材料供給源118のいずれの構成も、膜品質と膜成長速度との間のバランスである。したがって、目標とする不均一性及び成長速度が得られない場合、望まれる膜品質または望まれる膜成長速度のいずれかがわずかに緩和されてもよい。一例では、目標とする不均一性が得られない場合、方法700は、ステップ742に進むことができる。
【0080】
ステップ742では、望まれる層の堆積均一性を試験が満たさない場合、傾斜角、望まれる成長速度、横方向距離、及び直交方向距離のうちの少なくとも1つが変更される。例えば、その具体的な用途(半導体製品、製造/コストの目標)で望まれる成長速度を下げることができる。次に、方法700は、構成空間の特定のプロットの望まれる膜不均一領域内で別の点が選択されるステップ730に戻り、ここでの新しい点は、わずかに大きい距離XもしくはZ、またはその両方に、したがってわずかに低下した成長速度に対応する。別の例では、より遅い成長速度が許容される場合には値を増加させるなど、横方向及び/または直交方向距離が調整される。更なる例では、傾斜角または出口開口部形状が変更され、方法700の別の反復が実行され、ここで新しい傾斜角または出口開口部形状に対応する材料放出空間分布を使用して直交方向距離及び横方向の距離が再び決定される。
【0081】
いくつかの実施形態では、膜の望まれる層の堆積均一性は、望まれる目標が達成されていない場合、ステップ746で変更することができる。例えば、膜の望まれる均一性を減らすこと、または特定の用途のための膜の不均一性を増やすことが許容されてもよい。方法700は、均一性の値が減らされた(すなわち不均一性の値が増やされた)ステップ726に戻り、その後、方法700の別の反復が開始される。
【0082】
いくつかの実施形態では、回転機構及び材料供給源は反応チャンバー内に収容され、方法700は、反応チャンバーのサイズをスケーリングするために基板の半径RSUBに対する横方向距離及び直交方向距離の関係を使用する、ステップ750も含むことができる。例えば、材料供給源を配置するための最小距離が決定された後、反応チャンバーのサイズを小型化することができる。反応チャンバーのサイズを小さくすると、チャンバーの製造コストが削減され、製造施設で占有するスペースが少なくなるなどの利点を得ることができる。
【0083】
方法700は、半導体層を形成するために材料を放出するステップ760も含んでいてもよい。材料が基板上に放出される間、基板は加熱される。ステップ760は、ステップ710からステップ738で決定される基板に対する材料供給源の最適な配置を使用することを含むことができる。傾斜角、直交方向距離、及び横方向距離は、実行ごとに異なっていてもよい使用される材料供給源(複数可)に応じて配置を調整できるように動的に調整可能である。傾斜角、直交方向距離、及び横方向距離は、基板の位置を調整することに
より、または材料供給源の配置を調整することにより、動的に調整可能であってもよい。
【0084】
VFP傾斜角は、選択された材料供給源118のタイプを事前に参照して、ステップ718で選択することができる。例えば、材料供給源118が液体蒸発源の単一の開放端のオリフィスのるつぼである場合、その傾斜角は、出口オリフィスである出口開口部130に対する所定の材料体積容量及び溶融表面位置に関して、るつぼの垂直方向(重力場に配置されている場合)に対する傾斜によって制限される。通常、溶融表面が出口開口部130から十分にずれている場合、明確に定義されたVFPは、本体直径Dの円筒形るつぼの単一の出口開口部130によって規定される出口平面で形成される。更に、出口開口部130でのVFPは、D/L<1かつD<Dとなるような開口部直径D及び開口部深さLによって特徴付けることができる。したがって、実際には、液体供給源は、0°<α<70°の場合、より好ましくは30°<α<60°の場合、典型的には40°<α<50°の場合に適している。このタイプの大容量材料供給源の標準的な構成はα=45°である。対照的に、ガスインジェクター材料供給源は、供給源の内部詳細構造によっては制約されず、0°≦α<90°の場合に使用することができる。明らかに、ガスインジェクター材料供給源のタイプは、70°<α<90°の斜入射の利用が可能である。
【0085】
方法700に従って材料供給源118の位置が基板堆積面126に対して改善された高真空反応チャンバー100の運転では、一例では、基板堆積面126(すなわち、基板122)が回転している。種が材料供給源118から放出される速度が存在し、したがって、基板堆積面126への種の到着率が存在する。到着率は、例えば、単位時間あたりの単位面積あたりの原子または種の数で表すことができる。高真空反応チャンバー100が作動している時に、基板122の回転速度は、例えば約1rpm~約1000rpmであってもよい。しかしながら、基板122の最小回転速度は、単位面積あたりの単位時間あたりの種の到着率によって決定される。すなわち、基板122の周りを1回転するのに要する時間と種の到着率との間には相関関係が存在する。材料の堆積は、基板122の1回転に対して平均化される。高スループットシステムを支援するのに適した速い成長速度では、基板122の回転速度は、例えば、約数十rpmから約数百rpm程度とすることができる。種の最小入射到着率に対する基本堆積面回転速度には下限が存在するが、通常は速い回転速度ほど有利であろう。
【0086】
まとめると、方法700は、基板堆積面126に対する材料供給源118の位置を構成して、連続的な高スループット半導体製造プロセスなどの連続的な高スループット膜形成プロセスを支援するのに適した成長速度で高品質の膜をエピタキシャル成長させる。基板堆積面126からの材料供給源118の距離は、従来のMBEを使用する他の方法では不可能な高スループットの膜形成プロセスを支援するのに適切な高い膜成長速度に対して適切に短い。例えば、この方法は、従来のMBEよりも少なくとも1オングストローム/秒の膜成長速度の改善を提供することができる。
酸化物系半導体の構造
高スループットの成長速度で高度に均一な膜層を得るために材料供給源が特別に設計された位置及び角度に配置された上述のシステムは、酸化物系半導体デバイスを製造するために使用することができる。p型にドープされたMg系層などの、様々な材料のp型ドープを行うこともできる。例えば、MgZn1-xO(x>0)の酸化物に基づく層、p型にドープされたMgZn1-xO層(0≦x<0.45)、またはMgZnON層などのマグネシウム系及び亜鉛系の酸化物を形成することができる。いくつかの実施形態では、酸化物に基づく層は、a)MgO及びZnO、b)MgZnO及びZnO、またはc)MgZnO及びMgOの副層を含む超格子である。いくつかの実施形態では、酸化物に基づく層は、p型ドープ層であり、材料は、活性窒素プラズマ、亜酸化窒素(NO)、アンモニア(NH)、リン、酸素プラズマ、または欠陥のあるMgもしくはZnのうちの少なくとも1つを使用して放出される。本開示は、DUV LEDを説明するものとさ
れているが、他のタイプの半導体も同じ技術を使用して製造することができる。
【0087】
図9は、基板901上に酸化物に基づく高品質膜を形成するために使用され得るプラズマ処理システム900の一例の側面図である。プラズマ処理システム900は、反応チャンバー904、ヒーター908、窒素種916を生成する窒素プラズマ源912、Mg種924を生成するMg(マグネシウム)源920、P種932を生成するP(リン)源928、Al種940を生成するAl(アルミニウム)源936、Zn種948を生成するZn(亜鉛)供給源944、及び酸素種956を生成する酸素プラズマ源952を含む。Mg種924の放出は、シャッター960により制御される。Zn種948の放出は、シャッター964により制御される。窒素プラズマ源912、P源928、Al源936、及び酸素プラズマ源952の放出は、明確にする目的で図9には示されていないシャッターによってそれぞれ同様に制御される。プラズマ処理システム900は、反応チャンバー904に流体連結された真空ポンプ972も備えている。望まれる層堆積の仕様を満たすために、位置調整機構(図示せず)を材料供給源912、920、928、936、944、及び952のそれぞれに連結して、基板901に対する材料供給源の位置(横方向距離、直交方向距離、及び傾斜角)を調整することができる。位置調整機構(図示せず)を基板901に連結して、基板の位置を水平に(基板の平面方向に)または垂直に(基板の平面に直交方向に)調整及び移動することもできる。
【0088】
プラズマ処理システム900は、光学検出器(図示せず)及び/または反射高速電子線回折(RHEED)システム(図示せず)も含んでいてもよい。プラズマ処理システム900は、コントローラ(図示せず)を含み、これは、携帯式コンピュータ、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、集中型サーバ、モバイルコンピュータデバイスなどの任意のコンピュータデバイスであってもよい。
【0089】
基板901は、反応チャンバー904の中に配置され、そこでプラズマ処理プロセスを受けて基板901上に欠陥のない酸化物に基づく膜を形成する。基板901は、回転中心軸AXの周りで回転可能である。基板901は、例えば、ウェーハハンドリングシステム(図示せず)を使用して保持または操作することができる。基板901は、特定の半径RSUBを有する。例えば、6インチの基板901は3インチの半径RSUBを有し、8インチの基板901は4インチの半径RSUBを有し、12インチの基板901は6インチの半径RSUBを有するなどである。材料供給源に面する基板901の側は、膜形成面906である。膜形成面906は、後続の膜形成プロセスの準備においてプラズマ処理プロセスを受けることになる基板901の表面である。基板901は、ヒーター908から熱を吸収するための裏側コーティング(図示せず)も有していてもよい。
【0090】
材料供給源が基板901の膜形成面906側に配置されている一方で、ヒーター908は、基板901の反対側に配置されている。ヒーター908は、基板901を加熱し、次いで基板901の膜形成面906を約300℃~約700℃の成長温度Tなどの膜成長に適した成長温度Tまで加熱するために使用される。一例では、ヒーター908は、レニウム製の加熱要素を有する輻射式ヒーターである。
【0091】
窒素プラズマ源912は、例えば、窒素種916として示される、N*またはN*から形成されるプラズマを放出する誘導結合プラズマ(ICP)源である。活性窒素は窒素の同素体であり、窒素の流れを通る放電の通過によって形成される。結合エネルギーが非常に高く、2,700ケルビン(K)もの高温でしか解離できない従来の膜形成で使用される非活性窒素とは異なり、活性窒素は比較的低温(例えば700~800K)で解離し得る。窒素プラズマ源912は、励起装置(図示せず)及び減圧開口部プレート(図示せず)を備える。更に、MFC976として示されている1つ以上のマスフローコントローラ(MFC)が、ガスライン980を介して窒素プラズマ源912に流体連結される。M
FC976は、例えばNを含むガス源(図示せず)からのガス流量を制御する。作動中、N原料ガスは、MFC976を介して窒素プラズマ源912に供給され、その後励起装置(図示せず)により付与されるエネルギーによって解離されて、窒素種916を生成する。窒素種916は、脱イオン装置/開口部(図示せず)に入り、ここで、励起(すなわちイオン化)状態にある実質的に全ての窒素種916が、脱イオン装置/開口部(図示せず)を出る前に中和される。一例では、窒素種916のビーム圧力は10-8Torrであり、これはエピタキシャル膜のドーピングに適したビーム圧力である。
【0092】
Mg源920は、例えば、シャッター960を使用して制御できるMg種924を放出する蒸発セルである。別の例では、Mg源920は、前駆体ガスとしてのMg種924を生成する。蒸発セル及び前駆体ガスを利用してMg種924を生成することにより、プラズマ処理システム900に関連する煩雑さ及び処理コストが低減される。Mg種924は、Mg源920内の固体マグネシウムの昇華によって放出される。Mg種924のフラックスはΦ(Mg)として表される。フラックスは、基板表面に衝突する1秒あたりの原子数の尺度であり、ビーム圧力として表される。一例では、Φ(Mg)は約10-7Torrである。
【0093】
P源928は、シャッター(図示せず)を使用して制御することができるP種932を放出する蒸発セルである。P種932は、リン単体もしくはリンの同素体、例えばリン化ガリウム(GaP)を昇華させるか、従来のクラッカーを使用して四リン(P)をクラッキングすることによって生成する二リン(P)であってもよい。P種932は、膜形成中にp型ドーパントとして機能し、非常に均一な酸化物に基づく膜の形成に寄与する。P種932のフラックスはΦ(P)として表される。一例では、Φ(P)は約10-7Torrである。
【0094】
Al源936は、例えば、シャッター(図示せず)を使用して制御できるAl種940を放出する蒸発セルである。別の例では、Al源936は、前駆体ガスとしてAl種940を生成する。蒸発セル及び前駆体ガスを利用してAl種940を生成することにより、プラズマ処理システム900に関連する煩雑さ及び処理コストが低減される。Al種940は、例えばアルミニウム単一種(例えば純アルミニウム)である。Al種940のフラックスは、Φ(Al)として表される。一例では、Φ(Al)は約10-7Torrである。別の実施形態では、アルミニウム種の代わりに、インジウム単種またはガリウム単種が使用される。
【0095】
Zn源944は、例えば、シャッター964を使用して制御することができるZn種948を放出する蒸発セルである。別の例では、Zn源944は、前駆体ガスとしてZn種948を生成する。蒸発セル及び前駆体ガスを利用してZn種948を生成することにより、プラズマ処理システム900に関連する煩雑さ及び処理コストが低減される。Zn源944が蒸発セルの例では、Zn種948は、Zn源944内の固体亜鉛の昇華によって形成される。Zn種948のフラックスは、Φ(Zn)として表される。一例では、Φ(Zn)は約10-7Torrである。
【0096】
酸素プラズマ源952は、例えば、活性原子酸素(O*)、分子酸素(O*)、酸素-窒素(ON)、N*、及びN*からなる群から選択される1種以上のガスから形成されるプラズマを放出するICP源である。得られたプラズマは、酸素種956として示されている。別の例では、酸素源952は、反応チャンバー904に供給される純粋な酸素の供給源である。酸素プラズマ源952がプラズマ源である例では、酸素プラズマ供給源952は、励起装置(図示せず)、及び脱イオン装置/開口部(図示せず)を備える。更に、MFC984、MFC988、及びMFC992として示されている、1つ以上のマスフローコントローラ(MFC)は、ガスライン996を介して酸素プラズマ源952に
流体連結されている。MFC984、MFC988、MFC992は、例えば、N、O、またはNOを含むガス源(図示せず)からのガス流量を制御する。運転の一例では、N及びOは、固定比率で混合され、酸素プラズマ源952に供給され、その後、励起装置(図示せず)により付与されたエネルギーによってそれらの混合形態で解離されて酸素種956を生成する。酸素種956は、脱イオン装置/開口部(図示せず)に入り、励起(すなわちイオン化)状態にある実質的に全ての酸素種956は、ここで中和されてから脱イオン装置/開口部(図示せず)を出る。一例では、99%のOが1%のNと混合されて酸素種965のプラズマを生成し、次いでこれが膜形成面906上にp型ドープ膜を生成する。酸素種956は、プラズマ処理システム900の必要とされる処理温度レベル及び運転コストを下げることにより、プラズマ処理システム900の運転効率を高める。いくつかの実施形態では、酸化物のp型ドーピング(すなわちp型酸化物層の形成)は、i)半導体結晶構造中の一部の酸素原子(例えば1000個に1個の酸素原子)を窒素に置換する(すなわち置き換える)ことにより、ii)結晶構造中の一部のMgもしくはZn原子(例えば10個に1個のMgまたはZn原子)をAlもしくはGaに置換する(すなわち置き換える)ことにより、または(i)と(ii)の両方により、独自に達成される。
【0097】
プラズマ処理システム900における酸化物に基づく膜の膜堆積は、一例では約500℃~約700℃で起こり、別の例では約600℃で起こる。システム効率を高めるために酸素プラズマ源952が適切な場所にあると、プラズマ処理システム900における膜成長は、350℃の低い温度でも起こり得る。対照的に、III族-N材料の従来の膜堆積温度は約900℃~約1,200℃の範囲であり、成長温度の許容誤差を5℃以内に制御しなければならない。本実施形態のプラズマ処理システム900によって支援されるより低い堆積温度は、従来のシステムよりも(1)煩雑さが少なく低コストな処理装置、(2)低いプロセスエネルギーの使用、及び(3)大きな成長温度許容誤差、を可能にする。成長温度が低いことと成長温度許容誤差が大きいことにより、より大きな基板上での高品質の膜成長が促進され、そのためより高い製造スループットが促進される。
【0098】
真空環境968は、真空ポンプ972によって反応チャンバー904内で維持される。真空ポンプ972は、ポンピング速度として知られる特定の速度で反応チャンバー904を排気することができる従来の可変速度の真空ポンプであってもよい。バルブ(図示せず)が真空ポンプ972に関連付けられてもよい。反応チャンバー904内の真空圧力を監視するために圧力センサ(図示せず)が設けられてもよい。真空ポンプ972は、反応チャンバー904内を適切な真空圧力に維持するために使用される。膜形成中の反応チャンバー904内の真空圧力は、例えば約10-11torr~約10-5torrである。
【0099】
プラズマ処理システム900の別の実施形態では、純酸素(O)は、酸素プラズマ源952ではなく、加熱された配管(図示せず)を介して反応チャンバー904に供給される。反応チャンバー904に入る酸素の温度は、例えば約200℃~約300℃である。一例では、加熱された配管(図示せず)はサファイアから形成される。
【0100】
基板901の膜形成面906は、窒素プラズマ源912、Mg源920、P源928、Al源936、Zn源944、及び酸素プラズマ供給源952から供給される材料の標的である。シャッター960は、Mg源920から放出されるMg種924の経路に配置される。シャッター960は、開いている際にMg種924が基板901の膜形成面906に衝突することを可能にする。シャッター960は、閉じている際にMg種924が基板901の膜形成面906に衝突するのを防止する。シャッター964は、Zn源944から放出されるZn種948の経路に配置される。シャッター964は、開いている際にZn種948が基板901の膜形成面906に衝突することを可能にする。シャッター964は、閉じている際にZn種948が基板901の膜形成面906に衝突するのを防止す
る。他のシャッター(図示せず)も同様に、基板901の膜形成面906上への窒素種916、P種932、Al種940、及び酸素種956の衝突を制御する。
【0101】
反応チャンバー904が望まれる膜成長温度T及び真空圧力にある際に、窒素プラズマ源912、Mg源920、P源928、Al源936、Zn源944、及び酸素プラズマ源952が作動する。基板901の膜形成面906への窒素種916、Mg種924、P種932、Al種940、Zn種948、及び酸素種956の組み合わされた衝突により、膜形成面906上に酸化物に基づく層が形成される。
【0102】
図9は、Mg源920及びZn源944が、基板901の回転中心軸AXから一定の横方向距離X、及び膜形成面906の平面から一定の垂直方向距離Zに位置していることを示している。この位置調整は例示の目的で示されている。横方向距離X及び垂直距離Zは、膜形成面906の中心に対するMg源920及びZn源944の座標である。更に、Mg源920及びZn源944は、膜形成面906の平面に対する仮想フラックス面(VFP)の傾斜角αに配置されている。窒素プラズマ源912、P源928、Al源936、及び酸素プラズマ源952は、基板901の回転中心軸AXからの横方向距離X及び膜形成面906の平面からの垂直方向距離Zでそれぞれ同様に配置されている。したがって、Mg源920、Zn源944、窒素プラズマ源912、P源928、Al源936、及び酸素プラズマ源952は、「軸外」材料供給源である。
【0103】
図10Aは、LEDデバイス構造1000の一例の断面図であり、これはいくつかの実施形態に従って製造される酸化物に基づく構造の一例である。LEDデバイス構造1000は、例えば、DUV LEDの形成に有用である。DUV LEDは、約100nm~約280nmのUVC波長範囲で作動することができる。LEDデバイス構造1000は、単一の完成デバイスを形成するために使用されてもよく、あるいは大容量高スループットの製造プロセスの一部としてマルチデバイスを形成するために使用されてもよい。LEDデバイス構造1000は、基板1004を含み、その上に、酸化物に基づく複数の層が堆積される。具体的には、LEDデバイス構造1000は、MgZnOバッファ層1008、MgO-MgZnO多重層1012、n型MgZnO層1016、NID層1020、p型MgZnO層1024の順にこれらが上に堆積された基板1004を含む。
【0104】
LEDデバイス構造1000は、横型PINダイオードの一例である。NID層1020は、n型MgZnO層1016とp型MgZnO層1024との間の真性のヘテロ接合として機能する。ヘテロ接合は、同等でないバンドギャップを特徴とする異種結晶半導体の2つの層の間の界面として定義される。
【0105】
一例では、基板1004は、光(例えば光1028)に対して実質的に透明なサファイア、塩化カルシウム、または酸化マグネシウムから形成される。この例では、基板1004の厚さは約500μm~約1,000μmであり、更に基板1004の直径は約4インチ~約12インチである。別の例では、基板1004は、炭化ケイ素、シリコン、または窒化ガリウム(GaN)から形成され、これは光を吸収し、そのため光1028を透過しない。
【0106】
MgZnOバッファ層1008は、MgZnOから形成され、例えば約200nm~約1μmの厚さを有する。MgZnOバッファ層1008は、貫通転位を最小限に抑えるように機能し、そのため、MgZnOバッファ層1008の上に形成された膜の欠陥密度を低減する。
【0107】
MgO-MgZnO多重層1012は、複数の交互のMgO副層1013aとMgZnO副層1013bとから形成される超格子層であり、簡略化のために各副層1013aと
1013bのうちの2つが示されているが、これよりも多くの副層を含んでいてもよい。MgO-MgZnO多重層1012は、貫通転位を更に最小化するように機能し、そのため、MgO-MgZnO多重層1012の上に形成された膜の欠陥密度を低減する。
【0108】
n型MgZnO層1016は、MgZnOから形成され、例えば、アルミニウム、ガリウム、またはインジウムがドープされたn型である。アルミニウムは、例えば、高度に蒸発しやすいという望ましい特性を有するIII族金属である。n型MgZnO層1016は、例えば約200nm~約1μmの厚さを有する。
【0109】
NID層1020は、交互の副層1021aと1021bとの超格子層であり、簡略化のために各副層1021aと1021bのうちの2つが示されているが、これよりも多くの副層を含んでいてもよい。一部の副層は、例えば真性のMgZnOまたはMgOから形成されていてもよい。更に、NID層1020は、狭いバンドギャップの材料から形成された1つ以上の量子井戸構造を含んでいてもよい。一例では、NID層1020は、主に副層1021aのMgO(すなわちバリア材料)から形成され、1つ以上の狭いバンドギャップのZnO量子井戸の副層1021bを含む。NID層1020は、例えば約10nm~約50nmの厚さを有する。別の例では、NID層1020は、MgZnOまたはMgZnO-ZnO合金を使用して超格子構造として形成される。
【0110】
p型MgZnO層1024は、例えば窒素ドープされたMgZnOから形成され、例えば約200nmの最小厚みを有する。p型MgZnO層1024のp型ドーピングは、例えば、図11を参照して以下で説明する方法に従って、N*またはN*のプラズマを使用して達成される。別の例では、p型MgZnO層1024のp型ドーピングは、亜酸化窒素(NO)またはアンモニア(NH)の独立した供給源を使用して達成される。p型MgZnO層1024は、広い波長範囲にわたってデバイスのバンドギャップを調整する能力を備えているが、従来のIII族-N膜はバンドギャップ調整能力が限定的である。例えば、AlNのみを使用して190nm(すなわち6eV)以下で作動するUV LEDを形成することは非常に困難である。場合によっては、ホウ素-AlN化合物が使用されることもある。しかしながら、この材料は、高レベルの窒素及び高い堆積温度を必要とし、これらは共に非常にコストがかかり、技術的に実行不可能であり、及び/または商業的に実行不可能な場合がある。更に、ホウ素-AlN化合物を導電型にドープすることは非常に問題がある。対照的に、p型MgZnO膜は、容易に達成できる堆積温度で製造することができ、容易に達成できるレベルの窒素でp型導電型にドープすることができる。
【0111】
p型MgZnO層1024の形成に続いて、電気接点(例えばアノード及びカソード、図示せず)が、標準的なメタライゼーション及びリソグラフィープロセスを使用して形成される。電気接点は、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、窒化チタン(TiN)、またはチタンアルミニウム(TiAl)から形成される。
【0112】
一例では、電荷キャリア(すなわち電子及び正孔)が垂直に移動し、図10Aで光1028として示されている光(すなわち光子)も垂直方向に放出されるように、LEDデバイス構造1000のエピタキシャル層が堆積される。別の例では、電荷キャリアが横方向に移動し、光も横方向に放出されるようにLEDデバイス構造1000のエピタキシャル層が堆積される。図10Aにおける「横方向」は、層成長の面に実質的に沿った方向を指し、一方「垂直方向」は、層成長の面に実質的に直交するまたは垂直な方向を指す。
【0113】
作動中、n型MgZnO層1016は、NID層1020の中に垂直に移動する電子を生成する。例を続けると、p型MgZnO層1024は、NID層1020の中に垂直に
移動する正孔を放出する。電荷キャリアはNID層1020の中で相互作用及び再結合し、LEDデバイス構造1000から光1028として放出される。LEDデバイス構造1000がUVC LEDである例では、NID層1020は、約100nm~約280nmの波長範囲の光を放出するように設計される。基板1004が光に対して実質的に透明である例では、NID層1020から放出された光の一定割合が、基板1004を通して直接放出される。
【0114】
図10Bは、LEDデバイス構造1030として具体化された光電子デバイスの断面図であり、この中の多領域積層体1031は、成長方向1032に沿って酸素極性結晶構造または金属極性結晶構造のいずれかを有する結晶極性を含む。図10Bでは、成長方向1032は、多領域積層体1031の層の水平面に対して垂直である。LEDデバイス構造1030は、例えばDUV LEDの形成に有用である。DUV LEDは、約100nm~約280nmのUVC波長範囲で作動することができる。LEDデバイス構造1030は、単一の完成デバイスを形成するために使用されてもよく、あるいは大容量高スループットの製造プロセスの一部としてマルチデバイスを形成するために使用されてもよい。LEDデバイス構造1030は、基板1034を有し、その上に、少なくとも5つの領域の結晶極性多領域積層体1031がエピタキシャル堆積される。多領域積層体1031は、領域(すなわち層)1038、1042、1046、1050、及び1054を含む。
【0115】
一実施形態では、基板1034は、光(例えば光1058)に対して実質的に透明であるサファイア、塩化カルシウム、または酸化マグネシウムから形成される。この例では、基板1034の厚さは、約500μm~約1,000μmであってもよい。基板1034の直径は、約4インチ~約12インチであってもよい。別の例では、基板1034は、炭化ケイ素、シリコン、または窒化ガリウム(GaN)から形成されており、これは、これは光を吸収し、そのため光1058を透過しない。
【0116】
多領域積層体1031の第1の領域1038は、基板1034の表面上に形成されるバッファ層である。第1の領域1038は、貫通転位を最小限に抑えることにより基板1034の原子表面品質を改善するように機能し、そのため、第1の領域1038の上に形成される膜の欠陥密度を低減する。バッファ層1038上の第2の領域1042は、結晶構造改善層として機能する。第2の領域1042は、貫通転位を更に最小化し、したがって第2の領域1042の上に形成される膜の欠陥密度を低減する。
【0117】
第2の領域1042上の第3の領域1046は、n型またはp型の導電型などの第1の導電率型を有する。第5の領域1054は、第2の導電型を有し、第4の領域1050は、第3の領域1046と第5の領域1054との間の真性の導電型(NID)層である。第2の導電型は、第1の導電型の反対である。例えば、第3の領域1046がn型である場合には第5の領域1054はp型である。逆に、第3の領域1046がp型である場合には第5の領域1054はn型である。
【0118】
多領域積層体1031は、Mg(x)Zn(1-x)Oを含むバルク半導体材料である少なくとも1つの領域(すなわち層)と、超格子である少なくとも1つの領域とを含み、この超格子は、ZnO、MgO、及びMg(x)Zn(1-x)Oから選択される少なくとも2つの組成を含む。一実施形態では、バッファ層(第1の領域1038)は、例えば、約200nm~約1μmの厚さを有するMgZnOから製造することができる。一実施形態では、第2の領域1042は複数の交互のMgO副層1043aとMgZnO副層1043bとから形成される超格子層であり、分かりやすくするために各副層1043aと1043bのうちの2つが示されているが、これよりも多くの副層を含んでいてもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、第3の領域1046または第5の領域1054(n型または
p型導電層)のうちの少なくとも1つは、シリコン、ゲルマニウム、窒素、アルミニウム、ガリウム、ニッケル、またはリンのうちの少なくとも1つを多領域積層体1031の酸素極性結晶構造または金属極性結晶構造の中に導入することによって形成される。いくつかの実施形態では、第3の領域1046または第5の領域1054のうちの少なくとも1つは、Mg(x)Zn(1-x)Oの形態のバルクまたはバルク状の組成の組成勾配を使用して形成される。Xは、成長方向に沿って変化する空間依存値である。すなわち、第3の領域1046または第5の領域1054は、酸素極性または金属極性(図10Bの垂直)の成長方向1032に沿って変化するMg(x)Zn(1-x)Oの空間依存組成から構成することができる。組成勾配の例は、図10Bの第3の領域1046の勾配が付けられた濃淡によって表されている。
【0120】
いくつかの実施形態では、第3の領域1046または第5の領域1054(n型またはp型導電層)のうちの少なくとも1つは、超格子の有効合金組成の組成勾配を使用して形成される。超格子は、Mg(x)Zn(1-x)OとMg(y)Zn(1-y)O(x≠y)の交互の層から形成された複数の二重層対を有している。超格子の有効合金組成は、成長方向に沿って空間的に変化する。すなわち、x及びyによって決定される超格子の空間依存有効合金は、酸素極性または金属極性の成長方向1032に沿って変化する。超格子の組成勾配の例は、図10Bの第5の領域1054により表され、この中の副層1055a1及び1055a2は、Mg(x)Zn(1-x)Oであってもよく、副層1055b1及び1055b2はMg(y)Zn(1-y)Oであってもよい。Mg(x)Zn(1-x)OとMg(y)Zn(1-y)Oの交互の副層は二重層を形成する。副層1055a1及び1055a2では、xは成長方向1032に沿って変化する。同様に、副層1055b1及び1055b2では、yは成長方向1032に沿って変化する。
【0121】
別の実施形態では、図10Bは、非極性結晶材料構造を有するLEDなどの光電子デバイスを表すこともできる。そのような実施形態では、多領域積層体1031は成長方向1032に沿った非極性結晶材料構造を含む。上述した極性結晶構造と同様に、非極性結晶構造の多領域積層体1031は、領域(すなわち層)1038、1042、1046、1050、及び1054を含む。多領域積層体1031の第1の領域1038は、基板1034の表面に形成されるバッファ層である。バッファ層1038上の第2の領域1042は、結晶構造改善層として機能する。第2の領域1042上の第3の領域1046は、n型またはp型導電型などの第1の導電型を有する。第4の領域1050は、真性導電型(NID)層である。第5の領域1054は、第1の導電型と反対の第2の導電型を有する。多領域積層体1031の少なくとも1つの領域は、Mg(x)Zn(1-x)Oを含むバルクまたはバルク状の半導体材料である。多領域積層体1031の少なくとも1つの領域は超格子であり、超格子は、ZnO、MgO、及びMg(x)Zn(1-x)Oから選択される少なくとも2つの組成を含む。
【0122】
図10Bの非極性結晶構造のいくつかの実施形態では、第3の領域1046または第5の領域1054のうちの少なくとも1つは、シリコン、ゲルマニウム、窒素、アルミニウム、ガリウム、ニッケル、またはリンのうちの少なくとも1つを非極性結晶材料構造に導入することによって形成される。いくつかの実施形態では、第3の領域1046または第5の領域1054(n型またはp型導電性領域)のうちの少なくとも1つは、超格子の選択的合金組成の組成勾配を使用して形成され、この超格子は、Mg(x)(1-x)O/Mg(y)(1-y)O(x≠yであり、Mは、Zn、Al、Ga、Ni、N、及びPから選択される)から形成される複数の二重層対を有する。超格子の有効合金組成は、成長方向に沿って変化する(つまり、xとyは成長方向に空間的に依存する)。例えば、第5の領域1054では、副層1055a1及び1055a2はMg(x)(1-x)Oとすることができる一方で、副層1055b1及び1055b2はMg(y)(1-y)Oとすることができる。いくつかの実施形態では、多領域積層体1031は、Mg
x)(1-x)O組成(0.55<x≦1.0であり、Mは、Zn、Al、Ga、Ni、N、及びPから選択される)からなる(すなわち多領域積層体1031の全ての組成がこれらから選択される)。
【0123】
図11は、例えば、図9のプラズマ処理システム900を使用して高品質の酸化物系LEDデバイス構造を形成するための方法1100の一例の流れ図である。方法1100は、図10Aのデバイス構造1000を使用して説明される以下のステップを含むが、これは図10B及びその他の酸化物デバイスのデバイス構造にも適用することができる。
【0124】
ステップ1110は、基板の基板堆積面の中心軸の周りで基板を回転させ、基板を加熱することを含む。高品質の酸化物系LEDを製造する準備として、基板は反応チャンバーにロードされる。基板は、例えばフッ化カルシウム、MgO(111)及び(001)表面配向、Ga(-201)及び(010)表面配向、Al(c面及びr面)、Si(111)、Si(001)、希土類酸化物バッファ層、またはMgZnO超格子バッファ層から形成される。真空ポンプを使用して、反応チャンバー内の真空圧力が約10-5Torr以下までポンプで下げられ、基板が真空環境内に含まれるようにチャンバーが排気される。更に、基板の膜形成面を望まれる成長温度Tにするためにヒーターが起動される。
【0125】
ステップ1115は、基板に材料を供給する少なくとも1つの材料供給源を準備することを含む。材料供給源は、反応チャンバーの真空環境内に含まれている。各材料供給源は、i)出口開口面を有する出口開口部、及びii)出口開口面からの既定の材料放出空間分布を有する。既定の材料放出空間分布は、中心軸からずれた地点で基板と交差する対称軸を有する。出口開口部は、基板の中心軸に対してある直交方向距離、ある横方向距離、及びある傾斜角で配置される。プラズマ反応チャンバー内の全ての材料供給源は、シャッターが閉じたままの状態で活性化される。材料供給源は、例えば基板の膜形成面に衝突する種がないように関連するシャッターが閉じたままで活性化された、窒素プラズマ源、Mg源、P源、Al源、Zn源、亜酸化窒素(NO)源、アンモニア(NH)源、及び酸素プラズマ源のうちの1つ以上を含むことができる。
【0126】
ステップ1120は、材料供給源から材料を放出して、基板上に酸化物に基づく層及びp型ドープ層などの半導体層を形成することを含む。ステップ1120は、半導体デバイスの個々の層を形成するためのステップ1122、1125、1130、1135、1140、及び1145を含んでいてもよい。ステップ1120の放出中、少なくとも1つの材料供給源の出口開口部は、i)基板上の半導体層の望まれる層成長速度での望まれる層の堆積均一性を実現するために、設定された傾斜角に対して直交方向距離及び横方向距離が最小化されるように、またはii)基板上の半導体層の望まれる層成長速度での望まれる層の堆積均一性を実現するために、設定された直交方向距離及び設定された横方向距離に対して傾斜角が決定されるように配置される。
【0127】
図11の工程を説明するために図10Aのデバイス構造1000の層を以降で使用するが、本明細書に開示の方法及びシステムを使用して他の層を形成することもできる。ステップ1122では、MgZnOバッファ層(例えば1008)が望まれる厚さに形成される。すなわち、酸素プラズマ源、Mg種(例えばシャッター960)、及びZn種(例えばシャッター964)に関連するシャッターが開けられ、それにより酸素種が基板の膜形成面に衝突する。一例では、形成されるMgZnOバッファ層の厚さは約200nmである。膜の成長中、反応チャンバー内の真空圧力は、Mg種、Zn種、及び酸素種を基板の膜形成面に確実に弾道輸送するために、真空ポンプにより約10-5Torr以下に維持される。
【0128】
ステップ1125では、MgO-MgZnO多重層(例えば層1012)が、望まれる厚さに形成される。すなわち、酸素プラズマ源、Mg種、及びZn種に関連するシャッターが開けられ、それにより酸素種が基板の膜形成面に衝突して、MgO-MgZnO多重層のMgZnO成分(副層)を形成する。次いで、Zn種のシャッター(例えばシャッター964)が閉じられて、MgO-MgZnO多重層のMgO成分(副層)が形成される。望まれる層の厚さが得られるまで、超格子MgO-MgZnO多重層の複数のそれぞれの副層の形成中にZnシャッターが交互に開閉される。
【0129】
ステップ1130では、n型MgZnO層(例えば層1016)が望まれる厚さに形成される。すなわち、酸素プラズマ源、Mg種、及びZn種に関連するシャッターが開けられ、それにより酸素種が基板の膜形成面に衝突して、n型MgZnO層のMgZnO成分を形成する。それと同時に、Al供給源を制御するシャッターが開けられ、Al種が基板の膜形成面に衝突して、n型MgZnO層のn型ドーパントとして機能する。
【0130】
ステップ1135では、NID層(例えば層1020)が望まれる厚さに形成される。狭いバンドギャップの酸化亜鉛(ZnO)量子井戸副層から形成された1つ以上の量子井戸構造をNID層が含む例では、MgOバリア材料は、Mg種及び酸素種が基板の膜形成面に衝突できるようにMgシャッター(例えばシャッター260)及び酸素プラズマ源に関連するシャッターを開けることによって形成される。ZnO量子井戸副層は、Mgシャッターを閉じると同時にZn種が基板の膜形成面に衝突できるようにZnシャッター(例えばシャッター264)を開けることによって形成される。望まれる層の厚さが得られるまで、NID層の複数のそれぞれの副層の形成中にMgシャッターとZnシャッターが交互に開閉される。一例では、NID層の厚さは約25nmである。
【0131】
ステップ1140では、p型MgZnO層(例えば層1024)が、望まれる厚さまで形成される。すなわち、酸素プラズマ源、Mg種、及びZn種に関連するシャッターが開けられ、それにより酸素種が基板の膜形成面に衝突してp型MgZnO層のMgZnO成分を形成する。同時に、窒素プラズマ源に関連するシャッターが開けられ、それにより窒素種が基板の膜形成面に衝突する。窒素種は、例えばN*またはN*であり、p型MgZnO層においてp型ドーパントとして機能する。窒素種のフラックスを監視するために、RHEEDシステムなどのビームフラックスモニターが使用されてもよい。
【0132】
ステップ1145では、従来のリソグラフィー及びメタライゼーションプロセスを使用して、LEDデバイス構造(例えばデバイス1000)上に電気接点が形成される。LEDデバイス構造は、電荷キャリアがNID層内で相互作用及び再結合してLEDデバイス構造から放出される光を生成する垂直伝導LEDである。別の例では、発光が横方向に生じる横方向導電型のLEDを形成するために方法1100が使用される。
【0133】
まとめると、高品質の酸化物に基づくデバイス(例えばDUV LED)を形成するプラズマ処理システム及び方法は、エピタキシャル成長を使用してIII族-N膜を形成するための従来のシステム及び方法よりも優れた利点を示す。従来の半導体製造装置及びエピタキシャルプロセスでは、特に直径4インチを超える基板の場合、高品質の膜堆積に必要な膜成長温度の許容誤差と前駆体ガスレベルを維持することができない。この制約のため、膜形成面全体で温度プロファイルが不均一になり、そのため低品質であるか使用できないデバイスが生成される可能性がある。最後に、従来のIII族-N膜は、デバイスのバンドギャップ調整能力に限界がある。このため、半導体デバイスの設計及び利用における柔軟性、特にDUV LEDの製造における柔軟性が制限される。対照的に、本明細書に開示の本発明のプラズマ処理システム及び方法は、より大きな基板上での高品質膜の製造、デバイス利用のより大きな柔軟性、製造スループットの増加、及び製造コストの削減を重視している。
【0134】
本発明の方法及びシステムは、1つ以上のMgZnO層を有する構造を形成するために通常使用することができ、そのため、金属を多く含む及び/または酸素を多く含む組成を提供する。これらは非化学量論材料として分類され、結晶に導入された結晶学的欠陥に応じて過剰な電子または正孔を示すように設計できる酸素及び/または金属の空孔を示す。いくつかの実施形態では、構造は、MgZn1-yO/MgZn1-xO超格子またはMgZn(O、N)酸窒化物組成である。例えば、半導体層は、a)MgO及びZnO、b)MgZnO及びZnO、またはc)MgZnO及びMgOの副層を含む超格子であってもよい。
【0135】
本実施形態に従って成長するMgZnO構造の例としては、層及び基板としてのMgO、MgZn1-xO(x>0.5)の層(岩塩)、及びMgO/MgZn1-xO(x>0.55)の層(非極性岩塩)が挙げられる。いくつかの実施形態では、MgZn1-xO(0≦x<0.45)の超格子、[MgZn1-xO、0≦x<0.45]/[MgZn1-yO、0≦y<0.45](x≠y)の超格子、及びバルクMgZn1-xO(0≦x<0.45)の勾配組成などのウルツ鉱型MgZn1-xO(x<0.45)を含む極性構造を製造することができる。バルクMgZn1-xOの勾配組成には、誘導されるp型またはn型のドーピングを含めることができる。例えばいくつかの方法は、実質的なC面配向上でO極性についてWBGからNBGに勾配を付けることにより、または実質的なC面配向上で金属極性についてNBGからWBGに勾配を付けることにより、p型を誘導することができる。別の例では、方法は、実質的なC面配向上で金属極性についてWBGからNBGに勾配を付けることにより、または実質的なC面配向上でO極性についてNBGからWBGに勾配を付けることにより、n型を誘導することができる。いくつかの実施形態では、勾配付けされた有効合金組成は、バルクMgZn1-xOについて記載したバルク基準を使用して超格子ユニットセルに勾配を付けることによって形成することができる。
【0136】
前段落で説明した分極型ドーピングに加えて、不純物型ドーピングも使用することができる。いくつかの実施形態では、不純物及と分極の両方のタイプのドーピングを使用することができる。
【0137】
別の実施形態は、組成x<0.45のMgZnOの分極ドーピングを使用してデバイスを形成することを含む。また別の実施形態は、MgO/ZnOまたは[MgZn1-xO、0≦x≦1]/[MgZn1-yO、0≦y≦1](x≠y)の超格子を含む混合型超格子を形成することを含む。更に別の実施形態は、非極性MgZn1-xO構造(x>0.55)を形成することを含む。
【0138】
構造は、MgO(111)及び(001)表面配向、Ga(-201)及び(010)表面配向、Al(c面及びr面)、ウルツ鉱型MgZnO(x<0.45)で使用するためのSi(111)、MgZnO(x>0.55)で使用するためのSi(001)、希土類酸化物バッファ層、及びMgZnO超格子バッファ層などの様々な基板上で成長させることができる。
【0139】
MgZnO超格子及び多重量子井戸(MQW)は、量子化効果のためのより厚い層を可能にし、またAlGaNまたはAlN/GaNの超格子よりも成長しやすい。
【0140】
開示された発明の実施形態を詳細に言及してきたが、その1つ以上の例が添付の図面に示されている。それぞれの例は、本発明の技術の限定としてではなく、本発明の技術の説明として提供されている。実際、本明細書は本発明の特定の実施形態に関して詳しく説明してきたが、前述の事項を理解することで、当業者がこれらの実施形態の変更、変形、及
び均等物を容易に想到できることが理解されるであろう。例えば、1つの実施形態の一部として図示または説明された特徴を、別の実施形態と共に使用して、更に別の実施形態を得ることができる。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内の全てのそのような修正及び変形を網羅することが意図されている。本発明に対するこれら及び他の修正及び変形は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者が実施することができ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の中により具体的に記載されている。更に、当業者は、前述した説明が例示にすぎず、本発明を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11