(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】異動判読システム、異動判読方法及び異動判読プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/163 20240101AFI20240605BHJP
【FI】
G06Q50/163
(21)【出願番号】P 2023214139
(22)【出願日】2023-12-19
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000213909
【氏名又は名称】朝日航洋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153040
【氏名又は名称】川井 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】及川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】村田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】二井 啓
(72)【発明者】
【氏名】柳下 大
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-117245(JP,A)
【文献】特開2019-211952(JP,A)
【文献】特開2019-169078(JP,A)
【文献】特開2020-030730(JP,A)
【文献】特開2007-034808(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151553(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる二時期間における建物及び土地の異動を判読する異動判読システムであって、
異動判読の対象の客体に関する属性情報、異動の判読の結果を示す異動情報、判読結果の確からしさを示す確度を含む一次判読結果を取得する取得部と、
前記異動情報及び前記属性情報に関する所定条件ごとに確度の補正方法が関連づけられた確度調整ルールを用いて、前記一次判読結果に含まれる前記異動情報及び前記属性情報が、前記確度調整ルールにおける前記異動情報及び前記所定条件に該当する場合に、該異動情報及び該所定条件に関連づけられた前記確度の補正方法に従って、前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する確度調整部と、
前記確度調整部により補正された前記確度に基づいて決定された前記客体の異動判読結果である二次判読結果を出力する出力部と、
を備える異動判読システム。
【請求項2】
前記属性情報は、前記客体の建築時期を含み、
前記確度調整ルールは、前記異動情報が滅失に該当し、前記建築時期からの経過年数である建築年数が所定年数に該当することを前記所定条件として、該所定条件が成立する場合に前記確度を所定程度下げることを前記補正方法として含み、
前記確度調整部は、前記一次判読結果における前記異動情報が滅失であり、前記客体の建築年数が前記所定年数に該当する場合に、対応する前記補正方法に従って前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する、
請求項1に記載の異動判読システム。
【請求項3】
前記属性情報は、前記客体の所有者を含み、
前記確度調整ルールは、前記異動情報が新築に該当し、前記二時期間において前記所有者の変更があったことを前記所定条件として、該所定条件が成立する場合に前記確度を所定程度上げることを前記補正方法として含み、
前記確度調整部は、前記一次判読結果における前記異動情報が新築であり、前記客体の所有者の変更があった場合に、対応する前記補正方法に従って、前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する、
請求項1に記載の異動判読システム。
【請求項4】
前記属性情報は、前記客体である土地の地目を含み、
前記確度調整ルールは、前記異動情報が新築に該当し、前記地目が所定の種別に該当することを前記所定条件として、該所定条件が成立する場合に前記確度を所定程度調整することを前記補正方法として含み、
前記確度調整部は、前記一次判読結果における前記異動情報が新築であり、前記客体の地目が所定の種別に該当する場合に、対応する前記補正方法に従って前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する、
請求項1に記載の異動判読システム。
【請求項5】
前記属性情報は、前記客体の場所を示す位置情報を含み、
前記確度調整ルールは、前記異動情報が新築に該当し、前記客体の場所が所定地域に該当することを前記所定条件として、該所定条件が成立する場合に前記確度を所定程度下げることを前記補正方法として含み、
前記確度調整部は、前記一次判読結果における前記異動情報が新築であり、前記位置情報により示される前記客体の場所が、前記所定地域に該当する場合に、対応する前記補正方法に従って、前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する、
請求項1に記載の異動判読システム。
【請求項6】
前記確度調整ルールは、前記客体の場所が、土砂災害特別警戒区域、生産緑地及び用途地域の少なくともいずれか一つを前記所定地域として含み、
前記確度調整部は、前記客体の場所が前記所定地域に該当する場合に、該当する前記所定地域に応じて設定された前記補正方法に従って、前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する、
請求項5に記載の異動判読システム。
【請求項7】
前記確度調整部は、前記一次判読結果に含まれる前記確度が、所与の閾値以下である場合のみに前記確度を補正する、
請求項1に記載の異動判読システム。
【請求項8】
前記出力部は、前記確度調整部により補正された前記確度が所与の閾値以下である場合に、異動が発生していないことを前記二次判読結果として出力し、前記補正された前記確度が前記閾値を超える場合に、前記一次判読結果における異動情報を前記補正された確度と共に、前記二次判読結果として出力する、
請求項1に記載の異動判読システム。
【請求項9】
前記一次判読結果のおける客体の件数に対する、
前記一次判読結果における前記異動情報が前記二次判読結果において変更されなかった前記客体の件数の割合を異動統計値として、前記異動情報及び前記属性情報に関する所定条件ごとに算出し、
前記異動情報及び前記属性情報に関する所定条件ごとの現在の前記確度調整ルールにおける前記確度の補正方法に用いられる調整値に、算出された前記異動統計値を所定の重みを付けて適用することにより前記調整値を更新する、調整ルール更新部、を更に備える、
請求項1に記載の異動判読システム。
【請求項10】
少なくとも一つのプロセッサを備え、異なる二時期間における建物及び土地の異動を判読する異動判読システムによって実行される異動判読方法であって、
異動判読の対象の客体に関する属性情報、異動の判読の結果を示す異動情報、判読結果の確からしさを示す確度を含む一次判読結果を取得する取得ステップと、
前記異動情報及び前記属性情報に関する所定条件ごとに確度の補正方法が関連づけられた確度調整ルールを用いて、前記一次判読結果に含まれる前記異動情報及び前記属性情報が、前記確度調整ルールにおける前記異動情報及び前記所定条件に該当する場合に、該異動情報及び該所定条件に関連づけられた前記確度の補正方法に従って、前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する確度調整ステップと、
前記確度調整ステップにおいて補正された前記確度に基づいて決定された前記客体の異動判読結果である二次判読結果を出力する出力ステップと、
を有する異動判読方法。
【請求項11】
異なる二時期間における建物及び土地の異動を判読する異動判読システムとしてコンピュータを機能させるための異動判読プログラムであって、
異動判読の対象の客体に関する属性情報、異動の判読の結果を示す異動情報、判読結果の確からしさを示す確度を含む一次判読結果を取得する取得ステップと、
前記異動情報及び前記属性情報に関する所定条件ごとに確度の補正方法が関連づけられた確度調整ルールを用いて、前記一次判読結果に含まれる前記異動情報及び前記属性情報が、前記確度調整ルールにおける前記異動情報及び前記所定条件に該当する場合に、該異動情報及び該所定条件に関連づけられた前記確度の補正方法に従って、前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する確度調整ステップと、
前記確度調整ステップにおいて補正された前記確度に基づいて決定された前記客体の異動判読結果である二次判読結果を出力する出力ステップと、
を前記コンピュータに実行させる異動判読プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異動判読システム、異動判読方法及び異動判読プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば課税対象の調査等を目的として、2時期の航空写真を対比して、建物(家屋等)の異動(滅失、新築、建替え、増築及び部分滅失など)を判別することが行われている。例えば、前年度の航空写真データに基づく画像データと今年度航空写真データに基づく画像データとを比較するためにそれらを画面に表示するための技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、地図画像と航空写真とを重畳させた重畳画像を入力(説明変数)として、対応する領域における変化域を出力(目的変数)とする教師データにより機械学習して得られたモデルにより、変化域を推論する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-99316号公報
【文献】特開2022-11411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械学習モデル等を用いたAIによる家屋等の異動の自動的な検出及び航空写真等の目視による検出では、検出漏れの防止のために、一定量の過剰検出が発生していた。最終的な異動の検出結果における精度向上のために、AI等による自動的な異動の検出結果及び航空写真等による異動の検出結果から、過剰検出を除去することが望まれていた。
【0005】
そこで本発明は、過剰検出を含みうる異動の判読結果である一次判読結果から過剰検出を除去することにより、最終的な判読結果における精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る異動判読システムは、異なる二時期間における建物及び土地の異動を判読する異動判読システムであって、異動判読の対象の客体に関する属性情報、異動の判読の結果を示す異動情報、判読結果の確からしさを示す確度を含む一次判読結果を取得する取得部と、異動情報及び属性情報に関する所定条件ごとに確度の補正方法が関連づけられた確度調整ルールを用いて、一次判読結果に含まれる異動情報及び属性情報が、確度調整ルールにおける異動情報及び所定条件に該当する場合に、該異動情報及び該所定条件に関連づけられた確度の補正方法に従って、一次判読結果に含まれる確度を補正する確度調整部と、確度調整部により補正された確度に基づいて決定された客体の異動判読結果である二次判読結果を出力する出力部と、を備える。
【0007】
本発明の一形態に係る異動判読方法は、少なくとも一つのプロセッサを備え、異なる二時期間における建物及び土地の異動を判読する異動判読システムによって実行される異動判読方法であって、異動判読の対象の客体に関する属性情報、異動の判読の結果を示す異動情報、判読結果の確からしさを示す確度を含む一次判読結果を取得する取得ステップと、異動情報及び属性情報に関する所定条件ごとに確度の補正方法が関連づけられた確度調整ルールを用いて、一次判読結果に含まれる異動情報及び属性情報が、確度調整ルールにおける異動情報及び所定条件に該当する場合に、該異動情報及び該所定条件に関連づけられた確度の補正方法に従って、一次判読結果に含まれる確度を補正する確度調整ステップと、確度調整ステップにおいて補正された確度に基づいて決定された客体の異動判読結果である二次判読結果を出力する出力ステップと、を有する。
【0008】
本発明の一形態に係る異動判読プログラムは、異なる二時期間における建物及び土地の異動を判読する異動判読システムとしてコンピュータを機能させるための異動判読プログラムであって、異動判読の対象の客体に関する属性情報、異動の判読の結果を示す異動情報、判読結果の確からしさを示す確度を含む一次判読結果を取得する取得ステップと、異動情報及び属性情報に関する所定条件ごとに確度の補正方法が関連づけられた確度調整ルールを用いて、一次判読結果に含まれる異動情報及び属性情報が、確度調整ルールにおける異動情報及び所定条件に該当する場合に、該異動情報及び該所定条件に関連づけられた確度の補正方法に従って、一次判読結果に含まれる確度を補正する確度調整ステップと、確度調整ステップにおいて補正された確度に基づいて決定された客体の異動判読結果である二次判読結果を出力する出力ステップと、をコンピュータに実行させる。
【0009】
上記の形態によれば、異動判読の対象の客体の属性情報及び異動情報の種別ごとに予め定められた確度の補正方法に従って、一次判読結果における異動情報の確度が補正される。そして、補正された確度に基づいて異動判読結果が決定及び出力されるので、最終的な異動の判読結果の精度が向上する。
【0010】
別の形態に係る異動判読システムでは、属性情報は、客体の建築時期を含み、確度調整ルールは、異動情報が滅失に該当し、建築時期からの経過年数である建築年数が所定年数に該当することを所定条件として、該所定条件が成立する場合に確度を所定程度下げることを補正方法として含み、確度調整部は、一次判読結果における異動情報が滅失であり、客体の建築年数が所定年数に該当する場合に、対応する補正方法に従って一次判読結果に含まれる確度を補正することとしてもよい。
【0011】
上記の形態によれば、異動情報が滅失である場合において、客体の建築年数に応じて一次判読結果における確度が補正される。例えば、建築年数が短い場合において家屋が滅失される可能性が小さいので、異動判読結果が滅失である場合において、建築年数が短いほど確度が下がるように調整される。従って、建築年数に応じて滅失されることが非現実的又は可能性が低い客体に関する異動情報の確度を下げることができる。
【0012】
別の形態に係る異動判読システムでは、属性情報は、客体の所有者を含み、確度調整ルールは、異動情報が新築に該当し、二時期間において所有者の変更があったことを所定条件として、該所定条件が成立する場合に確度を所定程度上げることを補正方法として含み、確度調整部は、一次判読結果における異動情報が新築であり、客体の所有者の変更があった場合に、対応する補正方法に従って、一次判読結果に含まれる確度を補正することとしてもよい。
【0013】
上記の形態によれば、異動情報が新築である場合において、客体の所有者の変更の有無に応じて一次判読結果における確度が補正される。例えば、所有者の変更があった場合において家屋等が新築される可能性が大きいので、異動判読結果が新築である場合において、所有者の変更があった場合に確度が上がるように調整することができる。
【0014】
別の形態に係る異動判読システムでは、属性情報は、客体である土地の地目を含み、確度調整ルールは、異動情報が新築に該当し、地目が所定の種別に該当することを所定条件として、該所定条件が成立する場合に確度を所定程度調整することを補正方法として含み、確度調整部は、一次判読結果における異動情報が新築であり、客体の地目が所定の種別に該当する場合に、対応する補正方法に従って一次判読結果に含まれる確度を補正することとしてもよい。
【0015】
上記の形態によれば、地目に応じて家屋等が新築される可能性が異なるところ、異動情報が新築である場合において、当該客体の地目に応じて一次判読結果における確度が調整される。従って、地目の種別ごとの家屋等の新築の可能性に応じた確度を得ることができる。
【0016】
別の形態に係る異動判読システムでは、属性情報は、客体の場所を示す位置情報を含み、確度調整ルールは、異動情報が新築に該当し、客体の場所が所定地域に該当することを所定条件として、該所定条件が成立する場合に確度を所定程度下げることを補正方法として含み、確度調整部は、一次判読結果における異動情報が新築であり、位置情報により示される客体の場所が、所定地域に該当する場合に、対応する補正方法に従って、一次判読結果に含まれる確度を補正することとしてもよい。
【0017】
上記の形態によれば、法規制により地域ごとに家屋等の建築が制限されるところ、一次判読結果における異動情報が新築である場合において、当該客体の場所が所定の法規制の対象の地域に該当するか否かに応じて、確度が調整される。従って、当該客体の場所が属する地域に応じた確度を得ることができる。
【0018】
別の形態に係る異動判読システムでは、確度調整ルールは、客体の場所が、土砂災害特別警戒区域、生産緑地及び用途地域の少なくともいずれか一つを所定地域として含み、確度調整部は、客体の場所が所定地域に該当する場合に、該当する所定地域に応じて設定された補正方法に従って、一次判読結果に含まれる確度を補正することとしてもよい。
【0019】
上記の形態によれば、一次判読結果における異動情報が新築であり、当該客体の場所が、土砂災害特別警戒区域、生産緑地又は用途地域に該当する場合に、確度が下げられる。従って、当該客体の場所が該当する地域に応じた新築の可能性の低さが考慮された確度を得ることができる。
【0020】
別の形態に係る異動判読システムでは、確度調整部は、一次判読結果に含まれる確度が、所与の閾値以下である場合のみに確度を補正することとしてもよい。
【0021】
上記の形態によれば、一次判読結果における確度が閾値を超える場合には、異動情報に対する確度が補正されない。従って、一次判読結果の信頼性が高い場合には、一次判読結果における異動情報が最終的な二次判読結果として出力されるので、異動の検出漏れが防止できる。
【0022】
別の形態に係る異動判読システムでは、出力部は、確度調整部により補正された確度が所与の閾値以下である場合に、異動が発生していないことを二次判読結果として出力し、補正された確度が閾値を超える場合に、一次判読結果における異動情報を補正された確度と共に、二次判読結果として出力することとしてもよい。
【0023】
上記の形態によれば、補正された後の確度が低い場合に、異動が発生していない旨が二次判読結果として出力されるので、家屋等の異動の過剰検出を除去することが可能となる。
【0024】
別の形態に係る異動判読システムは、一次判読結果のおける客体の件数に対する、一次判読結果における異動情報が二次判読結果において確度の補正により変更されなかった客体の件数の割合を異動統計値として、異動情報及び属性情報に関する所定条件ごとに算出し、異動情報及び属性情報に関する所定条件ごとの現在の確度調整ルールにおける確度の補正方法に用いられる調整値に、算出された異動統計値を所定の重みを付けて適用することにより調整値を更新する、調整ルール更新部、を更に備えることとしてもよい。
【0025】
上記の形態によれば、異動判読結果の実績を用いて確度調整ルールを適宜更新することにより、異動判読結果の精度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本開示の一側面によれば、過剰検出を含みうる異動の判読結果である一次判読結果から過剰検出を除去することにより、最終的な判読結果における精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態に係る異動判読システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】異動判読装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図6】法規制情報に基づく確度の調整及び二次判読結果の決定の処理の例を示す図である。
【
図7】地域ごとに法規制の対象となっている所定地域に該当するか否かを示す法規制情報の構成の例を示す図である。
【
図8】法規制情報に基づく確度調整ルールの例を示す図である。
【
図9】課税情報に基づく確度の調整及び二次判読結果の決定の処理の例を示す図である。
【
図10】客体(家屋等)の属性情報の一種である課税情報の構成の例を示す図である。
【
図11】
図11(a)は、課税情報の一例である建築年数に基づく確度調整ルールの例を示す図である。
図11(b)は、課税情報の一例である土地及び家屋等の所有者の変更に基づく確度調整ルールの例を示す図である。
図11(c)は、課税情報の一例である土地の地目に基づく確度調整ルールの例を示す図である。
【
図12】確度調整ルールの更新処理の例を示す図である。
【
図13】異動判読システムにおいて実施される異動判読方法の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る異動判読システムの装置構成及び異動判読装置の機能的構成を示す図である。
図1に示すように、異動判読システム1は、一例として、異動判読装置10により構成される。異動判読システム1は、異なる二時期間における建物及び土地の異動を判読するシステムである。異動判読システム1は、一次判読結果記憶部21、確度調整ルール記憶部22、法規制情報記憶部23、課税情報記憶部24及び二次判読結果記憶部25といった記憶手段を含む。
【0030】
異動判読装置10は、取得部11、確度調整部12、出力部13及び調整ルール更新部14を備える。異動判読装置10の各機能部は、各記憶部21~25にアクセス可能に構成されている。各記憶部21~25は、
図1に例示されるように、異動判読装置10からアクセス可能に構成された他の装置に構成されてもよいし、異動判読装置10に構成されてもよい。
【0031】
異動判読装置10に含まれる各機能部は、複数の装置に分散されて構成されてもよい。また、異動判読装置10に含まれる各機能部は、ハードウェア及びソフトウェアのいずれか、または任意の組み合わせによって実現される。
【0032】
図2は、異動判読装置10のハードウェア構成図である。異動判読装置10は、物理的には、
図2に示すように、プロセッサ101、RAM及びROMといったメモリにより構成される主記憶装置102、ハードディスク等で構成される補助記憶装置103、通信制御装置104などを含むコンピュータシステムとして構成されている。異動判読装置10は、入力デバイスであるキーボード、タッチパネル、マウス等の入力装置105及びディスプレイ等の出力装置106をさらに含むこととしてもよい。
【0033】
プロセッサ101は、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを実行する演算装置である。プロセッサの例としてCPU(Central Processing Unit)およびGPU(Graphics Processing Unit)が挙げられるが、プロセッサ101の種類はこれらに限定されない。例えば、プロセッサ101は専用回路により構成されてもよい。専用回路はFPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラム可能な回路でもよいし、他の種類の回路でもよい。
【0034】
主記憶装置102は、異動判読装置10を実現させるためのプログラム、プロセッサ101から出力された演算結果などを記憶する装置である。主記憶装置102は例えばROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)のうちの少なくとも一つにより構成される。
【0035】
補助記憶装置103は、一般に主記憶装置102よりも大量のデータを記憶することが可能な装置である。補助記憶装置103は例えばハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶媒体によって構成される。補助記憶装置103は、コンピュータを異動判読装置10として機能させるためのプログラムP1(異動判読プログラム)と各種のデータとを記憶する。また、一次判読結果記憶部21、確度調整ルール記憶部22、法規制情報記憶部23、課税情報記憶部24及び二次判読結果記憶部25が異動判読装置10に含まれる場合には、一次判読結果記憶部21、確度調整ルール記憶部22、法規制情報記憶部23、課税情報記憶部24及び二次判読結果記憶部25は、主記憶装置102、補助記憶装置103及びその他の記憶素子のいずれかに構成されてもよい。
【0036】
通信制御装置104は、通信ネットワークを介して他のコンピュータ及び装置等との間でデータ通信を実行する装置である。通信制御装置104は例えばネットワークカードまたは無線通信モジュールにより構成される。
【0037】
図1に示した各機能部は、
図2に示すプロセッサ101、主記憶装置102等のハードウェア上にプログラムP1を読み込ませてプロセッサ101にそのプログラムP1を実行させることにより実現される。プログラムP1は、異動判読装置10の各機能要素を実現するためのコードを含む。プロセッサ101は、プログラムP1に従って通信制御装置104等を動作させるとともに、主記憶装置102及び補助記憶装置103におけるデータの読み出し及び書き込みを実行する。処理に必要なデータ及びデータベースは主記憶装置102及び補助記憶装置103内に格納される。なお、本実施形態では、各機能部11~14が、異動判読装置10に構成されることとしているが、複数のコンピュータに分散して構成されることとしてもよい。
【0038】
プログラムP1は、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、プログラムP1は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0039】
図1及び
図3を参照して、本実施形態の異動判読処理及び異動判読装置10の機能部を説明する。取得部11は、異動判読の対象の客体に関する異動の判読の結果を示す一次判読結果を取得する(S11)。異動判読の対象の客体は、家屋及び工場等の建物並びに土地等である。以下、本実施形態は、異動判読の客体が建物である場合を主として説明されるが、客体が土地等であることを排除するものではない。一次判読結果は、異動判読の対象の客体に関する属性情報、異動の判読の結果を示す異動情報、判読結果の確からしさを示す確度を含む。
【0040】
具体的には、取得部11は、一次判読結果記憶部21から一次判読結果を取得してもよい。一次判読結果記憶部21は、一次判読結果を記憶している記憶手段である。一次判読結果は、異なる二時期間における家屋及び工場等の建物の異動(滅失、新築、建替え、増築及び部分滅失など)の、一次の判読結果を示す情報である。
【0041】
図4は、一次判読結果記憶部21に記憶されている一次判読結果情報の例を示す図である。
図4に示されるように、一次判読結果情報は、異動判読対象の客体を識別するIDごとに、客体種別、位置情報、異動情報及び確度等を含む。
【0042】
客体種別は、判読対象の客体の種別を示す情報であって、例えば、家屋、工場等の情報を含む。位置情報は、客体の所在位置を示す情報であって、例えば、客体が所在する場所の代表位置、範囲、形状、地番・筆及びメッシュ識別子等の情報を含みうる。異動情報は、一次判読された異動の種別を示す情報である。確度は、適用された一次判読の手法における、判読結果に対する確からしさを示す情報である。
【0043】
一次判読結果は、例えば、異なる二時期の航空写真の目視による比較により取得された情報であってもよい。また、一次判読結果は、機械学習モデルを用いたAI技術により検出された異動の情報であってもよい。また、一次判読結果は、異なる二時期の、衛星画像(光学/SAR)、ドローン写真、レーザデータなどの種々の解析データの比較により取得された情報であってもよい。
【0044】
図5は、家屋の異動の例を示す図である。第1の時期における航空写真AP1に表されている家屋h11は、第2の時期における航空写真AP2には表されていない。即ち、家屋h11に関する一次判読結果は、異動情報「滅失」を含む。
【0045】
また、第1の時期の航空写真AP1において家屋等が存在しない場所に、第2の時期の航空写真AP2では家屋h22が表されている。即ち、家屋h22に関する一次判読結果は、異動情報「新築」を含む。
【0046】
これらの一次判読結果は、異動を漏れなく検出するために前述したような方法で取得されるので、ある程度の誤検出、即ち過剰検出を含みうる。本実施形態の異動判読方法は、この過剰検出を除去すること目的とする。
【0047】
確度調整部12は、確度調整ルールを用いて、一次判読結果に含まれる確度を補正する(S12)。確度調整ルールは、異動情報及び属性情報に関する所定条件ごとに確度の補正方法を関連づけて規定している。そして、出力部13は、確度調整部12により補正された確度に基づいて決定された客体の異動判読結果である二次判読結果を出力する。
【0048】
具体的には、確度調整部12は、一次判読結果に含まれる異動情報及び属性情報が、確度調整ルールにおける異動情報及び所定条件に該当する場合に、当該異動情報及び当該所定条件に関連づけられた確度の補正方法に従って、一次判読結果に含まれる確度を補正する。
【0049】
一例として、確度調整部12は、法規制情報に基づいて設定された確度調整ルールを用いて確度を補正してもよい(S12A)。
図6は、法規制情報に基づく確度の調整及び二次判読結果の決定の処理の例を示す図である。
【0050】
図6に示されるように、確度調整部12は、一例として、取得部11により取得された一次判読結果(客体種別「一般家屋」、異動情報「新築」、確度「85%」)の確度を補正する(S21)。確度調整部12は、法規制情報記憶部23を参照して、法規制情報を取得する。
図7は、法規制情報記憶部23に記憶されている法規制情報の構成の一例を示す図である。法規制情報は、法規制の対象となっている所定地域に該当するか否かを示す情報を地域(地域を示す位置情報)ごとに有している。
【0051】
確度調整部12は、法規制情報記憶部23を参照して、一次判読結果における判読対象の客体が所在する位置を示す位置情報を、法規制の一つである土砂災害特別警戒区域と照合する(S22)。そして、確度調整部12は、客体の所在位置が土砂災害特別警戒区域に該当するか否かを判定する(S23)。
【0052】
客体の所在位置が土砂災害特別警戒区域に該当すると判定された場合には、確度調整部12は、確度調整ルールに従って、一次判読結果における確度を補正する。
図8は、確度調整ルール記憶部22に記憶されている確度調整ルールの例を示す図である。
図8を参照すると、例えば、一次判読結果において、客体種別が「一般家屋」であり、異動種別が「新築」である場合に、客体の所在位置が土砂災害特別警戒区域に該当する場合には、確度に0.7を乗じることが確度調整ルールとして設定されている。
【0053】
ステップS23において、客体の所在位置が土砂災害特別警戒区域に該当すると判定された場合には、確度調整部12は、一次判読結果における確度「85%」に係数0.7を乗じることにより補正する(S24)。
【0054】
続いて、確度調整部12は、法規制情報記憶部23を参照して、一次判読結果における判読対象の客体が所在する位置を示す位置情報を、法規制の一つである生産緑地と照合する(S25)。そして、確度調整部12は、客体の所在位置が生産緑地に該当するか否かを判定する(S26)。
【0055】
ステップS26において、客体の所在位置が生産緑地に該当すると判定された場合には、確度調整部12は、一次判読結果における確度(又は補正された角度)に係数0.6(
図8参照)を乗じることにより補正する(S27)。
【0056】
更に、確度調整部12は、法規制情報記憶部23を参照して、一次判読結果における判読対象の客体が所在する位置を示す位置情報を、法規制の一つである用途地域と照合する(S28)。そして、確度調整部12は、客体の所在位置が用途地域に該当するか否かを判定する(S29)。
【0057】
ステップS29において、客体の所在位置が用途地域(例えば工業専用地域)に該当すると判定された場合には、確度調整部12は、一次判読結果における確度(又は補正された角度)に係数0.7(
図8参照)を乗じることにより補正する(S30)。
【0058】
なお、
図6では、客体の所在位置と各種の法規制との照合が、土砂災害特別警戒区域、生産緑地、用途地域の順で実施される例が示されているが、照合の順は、この例示に限定されず、また、いずれかの照合が実施されなくてもよく、更に他の法規制情報との照合が実施されてもよい。
【0059】
なお、
図6の確度の調整の例示において参照された土砂災害特別警戒区域に関する情報は、土砂災害防止法により規定され、生産緑地及び用途地域に関する情報は、都市計画法により規定される。
【0060】
続いて、出力部13は、法規制情報との照合の結果に応じて補正された確度が所与の閾値以下か否かを判断する(S31)。補正された確度が閾値以下である場合には、出力部13は、一次判読結果における異動情報を削除する(S32)。即ち、出力部13は、判読対象の当該客体において異動が発生していないこととする判読結果として出力する。一方、補正された確度が閾値以下ではない場合には、出力部13は、補正後の確度及び異動情報を含む判読結果を、最終的な異動判読結果である二次判読結果として出力する(S33)。出力部13は、出力の一態様として、二次判読結果を二次判読結果記憶部25に記憶させてもよい。二次判読結果記憶部25は、出力部13により出力された二次判読結果情報を記憶する記憶手段である。
【0061】
図6を参照して説明した例では、法規制情報のいくつかの例である土砂災害特別警戒区域、生産緑地、及び用途地域に客体の所在位置が該当する場合に、異動情報に対する確度が、予め設定された調整ルールにより調整されるが、法規制情報は、これらの例には限定されない。その他の法規制情報として、例えば、住居専用地域、商業地域、工業地域、農業用地域及び森林地域等が挙げられ、これらの法規制情報に基づく地域に客体の所在位置が該当する場合に、一次判読結果における異動情報に対する確度が調整されてもよい。
【0062】
また、確度調整部12は、更に、課税情報に基づいて設定された確度調整ルールを用いて確度を補正してもよい(S12B)。
図9は、課税情報に基づく確度の調整及び二次判読結果の決定の処理の例を示す図である。
【0063】
図9に示されるように、確度調整部12は、一例として、取得部11により取得された一次判読結果(異動情報「滅失」を含む)の確度を補正する(S41)。確度調整部12は、課税情報記憶部24を参照して、課税情報を取得する。
図10は、課税情報記憶部24に記憶されている課税情報の構成の一例を示す図である。課税情報は、課税に関する情報であって、課税の要否及び多寡等の決定に要する情報等であってもよい。
図10に示される一例では、課税情報は、課税対象の客体を一意に識別する地番等ごとに、家屋外形、所有者、登記地目、現況地目及び建築年月日等の情報を含んでもよい。
【0064】
確度調整部12は、課税情報記憶部24を参照して、一次判読結果における判読対象の客体を識別する情報(識別子(ID)、地番等)に基づいて、当該客体の課税情報を取得する。確度調整部12は、一次判読結果における判読対象の客体の課税情報が、確度調整ルールにおける異動情報及び所定条件に該当する場合に、確度調整ルールにおいて当該異動情報及び当該所定条件に関連づけられた補正方法に従って、確度を補正する。
【0065】
ステップS42において、確度調整部12は、課税情報の一つである建築年度による判定を実施する。
図11は、確度調整ルール記憶部22に記憶されている、課税情報に基づく確度調整ルールの例を示す図である。
図11(a)は、課税情報の一例である建築年数に基づく確度調整ルールの例を示す図である。
【0066】
確度調整部12は、判定対象の客体(例えば、種別「一般家屋」)の建築年数が20年未満であるか否かを判定する(S43)。建築年数が20年未満であると判定された場合には、確度調整部12は、確度調整ルールに従って、一次判読結果における確度を下げる(S44)。
【0067】
図11(a)の例に従えば、確度調整部12は、建築年数が19年である場合には、一次判読結果における確度(又は他の情報に基づいて補正された確度)に係数0.9を乗じ、建築年数が18年である場合には、一次判読結果における確度(又は他の情報に基づいて補正された確度)に係数0.8を乗じる等することにより、確度を下げる。
【0068】
一方、建築年数が20年未満であると判断されなかった場合には、確度調整部12は、一次判読結果における確度(又は他の情報に基づいて補正された確度)を維持する(S45)
【0069】
続いて、出力部13は、課税情報に基づいて補正された確度が所与の閾値以下か否かを判断する(S61)。補正された確度が閾値以下である場合には、出力部13は、一次判読結果における異動情報を削除する(S62)。即ち、出力部13は、判読対象の当該客体において異動が発生していないこととする判読結果として出力する。一方、補正された確度が閾値以下ではない場合には、出力部13は、補正後の確度及び異動情報を含む判読結果を、最終的な異動判読結果である二次判読結果として出力する(S63)。出力部13は、出力の一態様として、二次判読結果を二次判読結果記憶部25に記憶させてもよい。
【0070】
また、確度の調整の例として、確度調整部12は、取得部11により取得された一次判読結果(異動情報「新築」を含む)の確度を補正する(S51)。
【0071】
確度調整部12は、課税情報記憶部24を参照して、一次判読結果における判読対象の客体を識別する情報(識別子(ID)、地番等)に基づいて、当該客体の課税情報のうちの所有者の変更の有無の情報を取得する(S52)。そして、確度調整部12は、判定対象の客体(例えば、種別「一般家屋」)の所有者の変更の有無による判定を実施する。
図11(b)は、課税情報の一例である土地及び家屋等の所有者の変更に基づく確度調整ルールの例を示す図である。
【0072】
確度調整部12は、判定対象の客体の所有者の変更の有無に応じて、確度調整ルールに従って、確度を調整する。
図11(b)の例に従えば、所有者の変更があったと判定された場合には、確度調整部12は、一次判読結果における確度(又は他の情報に基づいて補正された確度)に係数1.05を乗じる。所有者の変更があったと判定されなかった場合には、確度調整部12は、一次判読結果における確度(又は他の情報に基づいて補正された確度)に係数0.9を乗じる。
【0073】
また、確度調整部12は、課税情報記憶部24を参照して、一次判読結果における判読対象の客体を識別する情報(識別子(ID)、地番等)に基づいて、当該客体の課税情報のうちの地目(現況地目)の情報を取得する(S53)。そして、確度調整部12は、判定対象の客体(例えば、種別「一般家屋」)に対応する土地の地目に基づく判定を実施する。
図11(c)は、課税情報の一例である土地の地目に基づく確度調整ルールの例を示す図である。
【0074】
確度調整部12は、判定対象の客体の土地の地目に応じて、確度調整ルールに従って、確度を調整する。
図11(c)の例に従えば、地目が宅地である場合には、確度調整部12は、一次判読結果における確度(又は他の情報に基づいて補正された確度)に係数1.0を乗じる。即ち、この場合には、確度調整部12は確度を変更しない。また、地目が雑種地、畑、田及び道路のそれぞれに該当する場合には、確度調整部12は、一次判読結果における確度(又は他の情報に基づいて補正された確度)に、係数0.8,0.3,0.1,0.05のそれぞれを乗じる。
【0075】
そして、ステップS54において、確度調整部12は、ステップS52,S53において取得された確度調整ルールに基づいて確度を調整する。
【0076】
続いて、出力部13は、所有者及び地目等の課税情報に基づいて補正された確度が所与の閾値以下か否かを判断する(S61)。補正された確度が閾値以下である場合には、出力部13は、一次判読結果における異動情報を削除する(S62)。即ち、出力部13は、判読対象の当該客体において異動が発生していないこととする判読結果として出力する。一方、補正された確度が閾値以下ではない場合には、出力部13は、補正後の確度及び異動情報を含む判読結果を、最終的な異動判読結果である二次判読結果として出力する(S63)。出力部13は、出力の一態様として、二次判読結果を二次判読結果記憶部25に記憶させてもよい。
【0077】
なお、確度の補正の対象となる一次判読は、異動判読対象の期間を画定する基準時期のうちの第1の時期の航空写真等データと、第1の時期の次の基準時期である第2の時期の航空写真等データとの比較に基づいて行われるが、確度の補正のために参照される、建築年度及び地目等の課税情報は、第1の時期における情報であってもよい。また、課税情報における所有者の変更は、第1の時期の前の基準時期における所有者に対する、第1の時期における所有者の異同に基づいてもよい。
【0078】
図9等を参照して説明した例では、課税情報のいくつかの例である建築年数、土地の所有者及び地目に基づいて、異動情報に対する確度が、予め設定された調整ルールにより調整されるが、課税情報は、これらの例には限定されない。その他の課税情報として、例えば、建物の構造、階層に関する情報、床面積、市街化区分等が挙げられ、客体が該当するこれらの課税情報に基づいて、課税情報ごとに予め設けられた確度調整ルールに従って、一次判読結果における異動情報に対する確度が調整されてもよい。
【0079】
なお、確度調整部12は、一次判読結果に含まれる確度が、所与の閾値以下である場合のみに確度を補正することとしてもよい。即ち、確度調整部12は、一次判読結果における確度が所与の閾値を超える場合には、法規制情報及び課税情報の如何によらず、確度の補正を実施しないこととしてもよい。この場合には、一次判読結果の信頼性が高い場合には、一次判読結果における異動情報が最終的な二次判読結果として出力されるので、異動の検出漏れが防止できる。
【0080】
再び
図1を参照して、調整ルール更新部14は、一次判読結果、及び異動に関する正解情報異動等に基づいて、確度調整ルールを更新する。
【0081】
図12は、確度調整ルールの更新処理の例を示す図である。
図1~
図11を参照して説明したように、異動判読システム1では、
一次判読結果21における異動情報に対する確度が補正され(S12)、補正された確度に基づいて決定された異動判読結果が
二次判読結果25として出力される。
【0082】
続いて、調整ルール更新部14は、二次判読結果25を用いて、確度調整ルール22を更新する(S80)。具体的には、調整ルール更新部14は、二次判読結果25に基づいて、法規制・課税情報ごとの異動統計値を算出する(S82)。なお、調整ルール更新部14は、正解情報d81が加味された二次判読結果25を取得してもよい。正解情報d81が、目視検査、自治体及び住民等の指摘に基づく異動の情報である。
【0083】
例えば、200棟(200件)の客体「一般家屋」の異動「新築」の一次判読結果に関して、客体が地目「雑種地」に該当することに基づいて確度を調整し、調整後の確度が閾値を超えること(ステップS61)を以て異動情報「新築」が維持(ステップS63)された(一次判読結果が正解であった)ような客体が150件であったことの二次判読結果が得られた場合に、調整ルール更新部14は、客体「一般家屋」、異動情報「新築」及び地目「雑種地」に関する異動統計値d82として75%(=(正解の件数:150)/(一次判読結果の件数:200))を算出する(S82)。
【0084】
続いて、調整ルール更新部14は、現在の確度調整ルール22及び異動統計値d82に基づいて、確度調整ルール22における係数(調整値)を更新する(S83)。具体的には、調整ルール更新部14は、現在の確度調整ルール22における係数と、算出された異動統計値d82との加重平均値により、確度調整ルールの係数を更新してもよい。
【0085】
例えば、現在の確度調整ルールにおける係数が0.8であり、この係数が、1000件の客体の情報に基づいて設定されていたものであった場合に、調整ルール更新部14は、以下の式のように、新たな確度調整ルールの係数を算出する。
(1000×0.8+200×75%)/(1000+200)
=950/1200
=79%
【0086】
調整ルール更新部14は、新たな係数79%を、確度調整ルール記憶部22における客体「一般家屋」、異動情報「新築」及び地目「雑種地」に関する調整ルール(係数)に設定する。このように、二次判読結果25に基づいて確度調整ルールを適宜更新することにより、異動判読結果の精度が向上する。
【0087】
次に、
図13を参照して、本実施形態の異動判読システム1の動作について説明する。
図13は、異動判読システム1において実施される異動判読方法の処理内容を示すフローチャートである。
【0088】
ステップS1において、異動判読の対象の客体に関する異動の判読の結果を示す一次判読結果を取得する。ステップS2において、確度調整部12は、確度調整ルールを用いて、一次判読結果に含まれる異動情報に対する確度を補正する。
【0089】
ステップS3において、
出力部13は、確度調整部12により補正された確度に基づいて、客体の異動判読結果としての二次判読結果を決定する。そして、ステップS4において、出力部13は、二次判読結果を出力する。
【0090】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0091】
本開示の要旨は、以下の[1]~[10]のとおりである。
[1]
異なる二時期間における建物及び土地の異動を判読する異動判読システムであって、
異動判読の対象の客体に関する属性情報、異動の判読の結果を示す異動情報、判読結果の確からしさを示す確度を含む一次判読結果を取得する取得部と、
前記異動情報及び前記属性情報に関する所定条件ごとに確度の補正方法が関連づけられた確度調整ルールを用いて、前記一次判読結果に含まれる前記異動情報及び前記属性情報が、前記確度調整ルールにおける前記異動情報及び前記所定条件に該当する場合に、該異動情報及び該所定条件に関連づけられた前記確度の補正方法に従って、前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する確度調整部と、
前記確度調整部により補正された前記確度に基づいて決定された前記客体の異動判読結果である二次判読結果を出力する出力部と、
を備える異動判読システム。
[2]
前記属性情報は、前記客体の建築時期を含み、
前記確度調整ルールは、前記異動情報が滅失に該当し、前記建築時期からの経過年数である建築年数が所定年数に該当することを前記所定条件として、該所定条件が成立する場合に前記確度を所定程度下げることを前記補正方法として含み、
前記確度調整部は、前記一次判読結果における前記異動情報が滅失であり、前記客体の建築年数が前記所定年数に該当する場合に、対応する前記補正方法に従って前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する、
[1]に記載の異動判読システム。
[3]
前記属性情報は、前記客体の所有者を含み、
前記確度調整ルールは、前記異動情報が新築に該当し、前記二時期間において前記所有者の変更があったことを前記所定条件として、該所定条件が成立する場合に前記確度を所定程度上げることを前記補正方法として含み、
前記確度調整部は、前記一次判読結果における前記異動情報が新築であり、前記客体の所有者の変更があった場合に、対応する前記補正方法に従って、前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する、
[1]または[2]に記載の異動判読システム。
[4]
前記属性情報は、前記客体である土地の地目を含み、
前記確度調整ルールは、前記異動情報が新築に該当し、前記地目が所定の種別に該当することを前記所定条件として、該所定条件が成立する場合に前記確度を所定程度調整することを前記補正方法として含み、
前記確度調整部は、前記一次判読結果における前記異動情報が新築であり、前記客体の地目が所定の種別に該当する場合に、対応する前記補正方法に従って前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する、
[1]~[3]のいずれか一項に記載の異動判読システム。
[5]
前記属性情報は、前記客体の場所を示す位置情報を含み、
前記確度調整ルールは、前記異動情報が新築に該当し、前記客体の場所が所定地域に該当することを前記所定条件として、該所定条件が成立する場合に前記確度を所定程度下げることを前記補正方法として含み、
前記確度調整部は、前記一次判読結果における前記異動情報が新築であり、前記位置情報により示される前記客体の場所が、前記所定地域に該当する場合に、対応する前記補正方法に従って、前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する、
[1]~[4]のいずれか一項に記載の異動判読システム。
[6]
前記確度調整ルールは、前記客体の場所が、土砂災害特別警戒区域、生産緑地及び用途地域の少なくともいずれか一つを前記所定地域として含み、
前記確度調整部は、前記客体の場所が前記所定地域に該当する場合に、該当する前記所定地域に応じて設定された前記補正方法に従って、前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する、
[5]に記載の異動判読システム。
[7]
前記確度調整部は、前記一次判読結果に含まれる前記確度が、所与の閾値以下である場合のみに前記確度を補正する、
[1]~[6]のいずれか一項に記載の異動判読システム。
[8]
前記出力部は、前記確度調整部により補正された前記確度が所与の閾値以下である場合に、異動が発生していないことを前記二次判読結果として出力し、前記補正された前記確度が前記閾値を超える場合に、前記一次判読結果における異動情報を前記補正された確度と共に、前記二次判読結果として出力する、
[1]~[7]のいずれか一項に記載の異動判読システム。
[9]
前記一次判読結果のおける客体の件数に対する、前記一次判読結果における前記異動情報が前記二次判読結果において変更されなかった前記客体の件数の割合を異動統計値として、前記異動情報及び前記属性情報に関する所定条件ごとに算出し、
前記異動情報及び前記属性情報に関する所定条件ごとの現在の前記確度調整ルールにおける前記確度の補正方法に用いられる調整値に、算出された前記異動統計値を所定の重みを付けて適用することにより前記調整値を更新する、調整ルール更新部、を更に備える、
[1]~[8]のいずれか一項に記載の異動判読システム。
[10]
少なくとも一つのプロセッサを備え、異なる二時期間における建物及び土地の異動を判読する異動判読システムによって実行される異動判読方法であって、
異動判読の対象の客体に関する属性情報、異動の判読の結果を示す異動情報、判読結果の確からしさを示す確度を含む一次判読結果を取得する取得ステップと、
前記異動情報及び前記属性情報に関する所定条件ごとに確度の補正方法が関連づけられた確度調整ルールを用いて、前記一次判読結果に含まれる前記異動情報及び前記属性情報が、前記確度調整ルールにおける前記異動情報及び前記所定条件に該当する場合に、該異動情報及び該所定条件に関連づけられた前記確度の補正方法に従って、前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する確度調整ステップと、
前記確度調整ステップにおいて補正された前記確度に基づいて決定された前記客体の異動判読結果である二次判読結果を出力する出力ステップと、
を有する異動判読方法。
[11]
異なる二時期間における建物及び土地の異動を判読する異動判読システムとしてコンピュータを機能させるための異動判読プログラムであって、
異動判読の対象の客体に関する属性情報、異動の判読の結果を示す異動情報、判読結果の確からしさを示す確度を含む一次判読結果を取得する取得ステップと、
前記異動情報及び前記属性情報に関する所定条件ごとに確度の補正方法が関連づけられた確度調整ルールを用いて、前記一次判読結果に含まれる前記異動情報及び前記属性情報が、前記確度調整ルールにおける前記異動情報及び前記所定条件に該当する場合に、該異動情報及び該所定条件に関連づけられた前記確度の補正方法に従って、前記一次判読結果に含まれる前記確度を補正する確度調整ステップと、
前記確度調整ステップにおいて補正された前記確度に基づいて決定された前記客体の異動判読結果である二次判読結果を出力する出力ステップと、
を前記コンピュータに実行させる異動判読プログラム。
【符号の説明】
【0092】
1…異動判読システム、10…異動判読装置、11…取得部、12…確度調整部、13…出力部、14…調整ルール更新部、21…一次判読結果記憶部、22…確度調整ルール記憶部、23…法規制情報記憶部、24…課税情報記憶部、25…二次判読結果記憶部、P1…プログラム(異動判読プログラム)。
【要約】
【課題】過剰検出を含みうる異動の判読結果である一次判読結果から過剰検出を除去することにより、最終的な判読結果における精度を向上させる。
【解決手段】異動判読システム1は、異動判読の対象の客体に関する属性情報、異動の判読の結果を示す異動情報、判読結果の確からしさを示す確度を含む一次判読結果を取得する取得部11と、異動情報及び属性情報に関する所定条件ごとに確度の補正方法が関連づけられた確度調整ルールを用いて、一次判読結果に含まれる異動情報及び属性情報が、確度調整ルールにおける異動情報及び所定条件に該当する場合に、該異動情報及び該所定条件に関連づけられた確度の補正方法に従って、一次判読結果に含まれる確度を補正する確度調整部12と、補正された確度に基づいて決定された客体の異動判読結果である二次判読結果を出力する出力部13と、を備える。
【選択図】
図1