(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240605BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240605BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20240605BHJP
F15B 11/028 20060101ALI20240605BHJP
F15B 21/14 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
E02F9/22 K
E02F9/20 M
F15B11/02 V
F15B11/028 G
F15B21/14 B
(21)【出願番号】P 2023508684
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2022001835
(87)【国際公開番号】W WO2022201792
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2021050506
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】土方 聖二
(72)【発明者】
【氏名】釣賀 靖貴
(72)【発明者】
【氏名】星野 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 遼
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119974(JP,A)
【文献】特開2019-135406(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056442(WO,A1)
【文献】特開2011-017427(JP,A)
【文献】特開2018-151013(JP,A)
【文献】特開2010-060056(JP,A)
【文献】特開2016-205497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 9/20
F15B 11/02
F15B 11/028
F15B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンにより駆動され圧油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより吐出される圧油により動作する油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータから排出される圧油を蓄圧する蓄圧装置と、
前記油圧アクチュエータと前記蓄圧装置との間に設けられ、前記油圧アクチュエータの圧力と前記蓄圧装置の圧力との前後差圧を発生させる差圧制御弁と、
前記蓄圧装置の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサの検出結果に基づいて前記差圧制御弁を制御する制御装置と、を備えた作業機械において、
走行体と、
前記走行体に旋回可能に設けられた旋回体と、をさらに備え、
前記油圧アクチュエータは、前記旋回体を旋回させる旋回モータであり、
前記差圧制御弁は、前記制御装置により出力されソレノイドに供給される制御電流に応じて設定差圧が調整される圧力制御弁であり、前記旋回モータのブレーキ圧と前記蓄圧装置の圧力との差が、前記設定差圧以下では閉弁し、前記設定差圧を超えると開弁し、
前記制御装置は、
前記蓄圧装置の圧力が増加するほど、前記差圧制御弁の前記設定差圧が減少し、前記蓄圧装置の圧力が変化した場合であっても、前記差圧制御弁の上流側の圧力である前記旋回モータのブレーキ圧が一定に保たれるように、予め定められた差圧特性と、
前記差圧制御弁の前記設定差圧が増加するほど制御電流値が増加するように、予め定められた制御電流特性と、を記憶しており、
前記差圧特性を参照し、前記圧力センサにより検出される前記蓄圧装置の圧力に基づいて、前記差圧制御弁の前記設定差圧を演算し、
前記制御電流特性を参照し、演算された前記設定差圧に基づいて、前記差圧制御弁の前記制御電流値を演算し、
演算された前記制御電流値に応じた制御電流を前記差圧制御弁の前記ソレノイドに出力する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキュムレータを備えた油圧ショベル等の作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業装置が有する位置エネルギを、ブームシリンダを介してアキュムレータに蓄えるとともに旋回体が有する運動エネルギを、旋回モータを介してアキュムレータに蓄えて、エンジンパワーのアシストに利用するエンジンパワーアシストシステムを備えた作業機械が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、旋回モータの駆動回路が逆止弁を介して旋回エネルギ回収用の通路に連通され、旋回エネルギ回収用の通路がシーケンス弁を介してアキュムレータに接続された油圧回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシーケンス弁で発生する差圧は、ばね力によって予め設定した値に定まる。このため、旋回モータから排出される圧油をアキュムレータで蓄圧する際に、シーケンス弁のアキュムレータ側の背圧が変化すると、シーケンス弁の入口側の元圧が変化して旋回モータの動作が不安定になるおそれがある。
【0006】
本発明は、油圧アクチュエータから排出される圧油を蓄圧装置に蓄圧する際に、安定して油圧アクチュエータを動作させることのできる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による作業機械は、エンジンと、前記エンジンにより駆動され圧油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより吐出される圧油により動作する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータから排出される圧油を蓄圧する蓄圧装置と、前記油圧アクチュエータと前記蓄圧装置との間に設けられ、前記油圧アクチュエータの圧力と前記蓄圧装置の圧力との前後差圧を発生させる差圧制御弁と、前記蓄圧装置の圧力を検出する圧力センサと、前記圧力センサの検出結果に基づいて前記差圧制御弁を制御する制御装置と、を備える。作業機械は、走行体と、前記走行体に旋回可能に設けられた旋回体と、をさらに備える。前記油圧アクチュエータは、前記旋回体を旋回させる旋回モータであり、前記差圧制御弁は、前記制御装置により出力されソレノイドに供給される制御電流に応じて設定差圧が調整される圧力制御弁であり、前記旋回モータのブレーキ圧と前記蓄圧装置の圧力との差が、前記設定差圧以下では閉弁し、前記設定差圧を超えると開弁する。前記制御装置は、前記蓄圧装置の圧力が増加するほど、前記差圧制御弁の前記設定差圧が減少し、前記蓄圧装置の圧力が変化した場合であっても、前記差圧制御弁の上流側の圧力である前記旋回モータのブレーキ圧が一定に保たれるように、予め定められた差圧特性と、前記差圧制御弁の前記設定差圧が増加するほど制御電流値が増加するように、予め定められた制御電流特性と、を記憶しており、前記差圧特性を参照し、前記圧力センサにより検出される前記蓄圧装置の圧力に基づいて、前記差圧制御弁の前記設定差圧を演算し、前記制御電流特性を参照し、演算された前記設定差圧に基づいて、前記差圧制御弁の前記制御電流値を演算し、演算された前記制御電流値に応じた制御電流を前記差圧制御弁の前記ソレノイドに出力する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油圧アクチュエータから排出される圧油を蓄圧装置に蓄圧する際に、安定して油圧アクチュエータを動作させることのできる作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る油圧ショベルが備える油圧システムについて示す図である。
【
図3】
図3は、制御装置のハードウェア構成図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る制御装置による差圧制御弁の制御について示すブロック図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る油圧ショベルが備える油圧システムについて示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る制御装置による差圧制御弁の制御について示すブロック図である。
【
図7】
図7は、変形例1に係る油圧ショベルが備える油圧システムについて示す図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係る制御装置による第1ブーム制御弁の制御について示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る作業機械について説明する。本実施形態では、作業機械がクローラ式の油圧ショベルである例について説明する。作業機械は、作業現場において、土木作業、建設作業、解体作業、浚渫作業等の作業を行う。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る油圧ショベル100の側面図である。
図1に示すように、油圧ショベル100は、機体105と、機体105に取り付けられた作業装置104と、を備える。機体105は、クローラ式の走行体102と、走行体102上に旋回可能に設けられた旋回体103と、を有する。走行体102は、左右一対のクローラを走行モータ102Aによって駆動することにより走行する。旋回体103は、旋回モータ103Aを有する旋回装置を介して走行体102に連結され、旋回モータ103Aによって駆動されて走行体102に対して旋回する。
【0012】
旋回体103は、オペレータが搭乗する運転室118と、原動機であるエンジン32及びエンジン32により駆動される油圧ポンプ等の油圧機器が収容されるエンジン室119と、を備える。
【0013】
運転室118内には、作業装置104、旋回体103及び走行体102の油圧アクチュエータ(111A,112A,113A,103A,102A)を操作するための電気式の操作装置が設けられている。また、運転室118内には、油圧ショベル100の各部の動作を制御する制御装置120が設けられている。
【0014】
作業装置104は、旋回体103に取り付けられる多関節型の作業装置であって、複数の油圧アクチュエータ、及び複数の油圧アクチュエータにより駆動される複数の駆動対象部材を有する。作業装置104は、3つの駆動対象部材(ブーム111、アーム112及びバケット113)が直列的に連結された構成である。ブーム111は、その基端部が旋回体103の前部に、ブームピンを介して回動可能に連結される。アーム112は、その基端部がブーム111の先端部に、アームピンを介して回動可能に連結される。バケット113は、アーム112の先端部に、バケットピンを介して回動可能に連結される。
【0015】
ブーム111は、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)であるブームシリンダ111Aの伸縮動作によって回転駆動される。アーム112は、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)であるアームシリンダ112Aの伸縮動作によって回転駆動される。バケット113は、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)であるバケットシリンダ113Aの伸縮動作によって回転駆動される。油圧ショベル100は、作業装置104を動作させることにより、土砂の掘削作業、均し作業、地面を締め固める転圧作業等を行うことができる。
【0016】
図2は、第1実施形態に係る油圧ショベル100が備える油圧システム106について示す図である。なお、
図2では、油圧アクチュエータである旋回モータ103A及びブームシリンダ111Aを駆動するための構成について図示し、その他の油圧アクチュエータを駆動するための構成については、図示を省略している。
【0017】
油圧システム106は、第1油圧ポンプ13、第2油圧ポンプ27及び第3油圧ポンプ29と、第1油圧ポンプ13から供給される作動流体としての作動油によって駆動される油圧モータである旋回モータ103Aと、低圧アキュムレータ4または高圧アキュムレータ21から供給される作動油によって伸長駆動されるブームシリンダ111Aと、ブームシリンダ111Aから排出される圧油を蓄圧する低圧アキュムレータ4と、旋回モータ103Aから排出される圧油を蓄圧する高圧アキュムレータ21と、を備える。
【0018】
また、油圧システム106は、第1油圧ポンプ13から旋回モータ103Aに供給される作動油の流れを制御する制御弁である方向制御弁14と、ブームシリンダ111Aのボトム側油室110aの圧力が低い状態のときに低圧アキュムレータ4からブームシリンダ111Aのボトム側油室110aに供給される作動油の流量を制御する制御弁である第1ブーム制御弁2と、ブームシリンダ111Aのボトム側油室110aの圧力が高い状態のときに高圧アキュムレータ21からブームシリンダ111Aのボトム側油室110aに供給される作動油の流量を制御する制御弁である第2ブーム制御弁19と、を備える。
【0019】
さらに、油圧システム106は、第2油圧ポンプ27から低圧アキュムレータ4に供給される作動油の流れを制御する制御弁である第1蓄圧制御弁26と、第3油圧ポンプ29から高圧アキュムレータ21に供給される作動油の流れを制御する制御弁である第2蓄圧制御弁28と、旋回モータ103Aと高圧アキュムレータ21との間に設けられ、旋回モータ103A側の圧力と高圧アキュムレータ21側の圧力との差である前後差圧を発生させる制御弁である差圧制御弁130と、作動油を貯留するタンク107と、を備える。
【0020】
第1油圧ポンプ13、第2油圧ポンプ27及び第3油圧ポンプ29は、エンジン32に接続されている。第1~第3油圧ポンプ13,27,29は、エンジン32によって駆動され、タンク107から作動油を吸い上げ、圧油として吐出する。第1~第3油圧ポンプ13,27,29は、それぞれ可変容量型の油圧ポンプである。エンジン32は、油圧ショベル100の動力源であり、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関により構成される。
【0021】
低圧アキュムレータ4は、ブームシリンダ111Aの収縮時に、ブームシリンダ111Aのボトム側油室110aから排出され第1ブーム制御弁2を通じて導かれる作動油を蓄圧する蓄圧装置である。つまり、低圧アキュムレータ4は、ブームシリンダ111Aから排出される圧油(以下、戻り油とも記載する)を蓄圧する。低圧アキュムレータ4は、ブームシリンダ111Aの伸長時に、第1ブーム制御弁2を通じて、蓄えられている圧油をブームシリンダ111Aのボトム側油室110aに供給する。
【0022】
高圧アキュムレータ21は、旋回モータ103Aの左旋回ブレーキ時または右旋回ブレーキ時に、旋回モータ103Aから排出され差圧制御弁130を通じて導かれる旋回ブレーキ圧を超える圧力の作動油を蓄圧する蓄圧装置である。つまり、高圧アキュムレータ21は、旋回モータ103Aから排出される圧油(以下、戻り油とも記載する)を蓄圧する。高圧アキュムレータ21は、ブームシリンダ111Aの伸長時に、第2ブーム制御弁19を通じて、蓄えられている圧油をブームシリンダ111Aのボトム側油室110aに供給する。
【0023】
高圧アキュムレータ21の設定圧力(上限圧力)は、低圧アキュムレータ4の設定圧力(上限圧力)よりも高い。この理由は、旋回モータ103Aの旋回ブレーキ圧が、ブームシリンダ111Aのボトム側油室110aの圧力よりも高いためである。油圧アクチュエータの戻り油をアキュムレータで回収する際、戻り油の圧力に近い設定圧力のアキュムレータで回収する方が、アキュムレータと油圧アクチュエータとの間の圧力損失が小さくなるため好ましい。本実施形態では、旋回モータ103Aの戻り油を高圧アキュムレータ21で回収し、ブームシリンダ111Aのボトム側油室110aからの戻り油を低圧アキュムレータ4で回収することにより、油圧アクチュエータとアキュムレータとの間の圧力損失を低く抑えることができ、効率的にエネルギを回収することができる。
【0024】
ブームシリンダ111Aのボトム側油室110aに接続されるボトム側管路と、ブームシリンダ111Aのロッド側油室110bに接続されるロッド側管路とは、連通路161で連通されている。連通路161には、ブーム下げ動作時にブームシリンダ111Aのボトム側油室110aとロッド側油室110bとを連通させることにより、ボトム側油室110a及びロッド側油室110bを昇圧する連通制御弁7が設けられている。
【0025】
ブームシリンダ111Aのロッド側油室110bの作動油をタンク107へ導く排出通路には、ブームシリンダ111Aのロッド側油室110bからタンク107へ排出される作動油の流れを制御する制御弁である排出制御弁3が設けられている。
【0026】
旋回モータ103Aに接続される第1旋回通路131及び第2旋回通路132には、それぞれ第1分岐通路133a及び第2分岐通路133bが接続される。第1分岐通路133a及び第2分岐通路133bは合流して、旋回モータ103Aからの作動油を高圧アキュムレータ21に導くための回収通路135に接続される。第1分岐通路133aには、第1旋回通路131から回収通路135への作動油の流れのみを許容するチェック弁23が設けられる。第2分岐通路133bには、第2旋回通路132から回収通路135への作動油の流れのみを許容するチェック弁24が設けられる。チェック弁23,24は、第1旋回通路131及び第2旋回通路132のうち高圧側の通路の作動油を差圧制御弁130に送る。
【0027】
高圧アキュムレータ21に接続される回収通路135には、旋回ブレーキ圧を保持するための保持弁として機能する差圧制御弁130が設けられている。差圧制御弁130、方向制御弁14、第1蓄圧制御弁26、第2蓄圧制御弁28、第1ブーム制御弁2、第2ブーム制御弁19、連通制御弁7、及び、排出制御弁3は、制御装置120から出力される制御信号(制御電流)により制御される。
【0028】
図3は、制御装置120のハードウェア構成図である。
図3に示すように、制御装置120は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ151、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ152、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ153、入力インタフェース154、出力インタフェース155、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。なお、制御装置120は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。
【0029】
不揮発性メモリ153には、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、不揮発性メモリ153は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。プロセッサ151は、不揮発性メモリ153に記憶されたプログラムを揮発性メモリ152に展開して演算実行する処理装置であって、プログラムに従って入力インタフェース154、揮発性メモリ152及び不揮発性メモリ153から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。
【0030】
入力インタフェース154は、各センサ(5b,9,18b,30,31)等から入力された信号をプロセッサ151で演算可能なデータに変換する。また、出力インタフェース155は、プロセッサ151での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を各制御弁(2,3,7,14,19,26,28,130)、エンジン32等に出力する。
【0031】
図2に示すように、制御装置120には、ブーム操作装置5及び旋回操作装置18が接続される。ブーム操作装置5は、オペレータによる操作に応じて、ブーム111の上げ動作及び下げ動作を指示する操作装置である。ブーム操作装置5は、傾動操作可能な操作レバー(操作部材)5aと、操作レバー5aの操作量(操作角)に応じた操作信号を制御装置120に出力する操作センサ5bと、を有する。旋回操作装置18は、オペレータによる操作に応じて、旋回体103の左旋回動作及び右旋回動作を指示する操作装置である。旋回操作装置18は、傾動操作可能な操作レバー(操作部材)18aと、操作レバー18aの操作量(操作角)に応じた操作信号を制御装置120に出力する操作センサ18bと、を有する。
【0032】
制御装置120には、ボトム圧センサ9、第1圧力センサ30及び第2圧力センサ31が接続される。ボトム圧センサ9は、ブームシリンダ111Aのボトム側油室110a内の作動油の圧力を検出し、その検出結果を制御装置120に出力する圧力センサである。第1圧力センサ30は、低圧アキュムレータ4内の作動油の圧力を検出し、その検出結果を制御装置120に出力する圧力センサである。第2圧力センサ31は、高圧アキュムレータ21内の作動油の圧力を検出し、その検出結果を制御装置120に出力する圧力センサである。
【0033】
制御装置120は、第1圧力センサ30により検出される圧力が低圧下限側閾値未満であるか否かを判定する。制御装置120は、第1圧力センサ30により検出された圧力が低圧下限側閾値未満であると判定した場合、第1蓄圧制御弁26によって第2油圧ポンプ27と低圧アキュムレータ4とを連通し、第2油圧ポンプ27から吐出される作動油を低圧アキュムレータ4に蓄圧する。制御装置120は、第1圧力センサ30により検出された圧力が低圧上限側閾値以上であると判定した場合、第1蓄圧制御弁26によって第2油圧ポンプ27と低圧アキュムレータ4との連通を遮断する。なお、低圧上限側閾値は、低圧下限側閾値以上の値が予め設定される。低圧上限側閾値及び低圧下限側閾値は、不揮発性メモリ153に記憶されている。
【0034】
制御装置120は、第2圧力センサ31により検出される圧力が高圧下限側閾値未満であるか否かを判定する。制御装置120は、第2圧力センサ31により検出された圧力が高圧下限側閾値未満であると判定した場合、第2蓄圧制御弁28によって第3油圧ポンプ29と高圧アキュムレータ21とを連通し、第3油圧ポンプ29から吐出される作動油を高圧アキュムレータ21に蓄圧する。制御装置120は、第2圧力センサ31により検出された圧力が高圧上限側閾値以上であると判定した場合、第2蓄圧制御弁28によって第3油圧ポンプ29と高圧アキュムレータ21との連通を遮断する。なお、高圧上限側閾値は、高圧下限側閾値以上の値が予め設定される。高圧上限側閾値及び高圧下限側閾値は、不揮発性メモリ153に記憶されている。
【0035】
制御装置120は、ブーム操作装置5の操作センサ5bからの操作信号及びボトム圧センサ9の検出結果に基づいて、制御弁(2,3,7,19)を制御することで、ブーム111を動作させる。
【0036】
以下、制御装置120が、ブーム111を下げ動作させるための制御内容について説明する。ブーム操作装置5の操作レバー5aが下げ方向に操作されると、操作センサ5bからブーム下げ操作信号が制御装置120に出力される。制御装置120は、連通制御弁7を開き、ブームシリンダ111Aのボトム側油室110aとロッド側油室110bとを連通し、ボトム側油室110a及びロッド側油室110bを昇圧させる。
【0037】
連通制御弁7の開弁後のボトム側油室110aの圧力Pbcは、ボトム側油室110aの受圧面積をAb、ロッド側油室110bの受圧面積をAr、連通制御弁7の開弁前のボトム側油室110aの圧力をPbとすると、次式で表される。
Pbc=Ab/(Ab-Ar)×Pb
したがって、例えば、ボトム側油室110aの受圧面積Abがロッド側油室110bの受圧面積Arの2倍であれば、連通制御弁7が開いた後のボトム側油室110aの圧力は、連通制御弁7が開く前のボトム側油室110aの圧力の2倍まで上昇する。なお、制御装置120は、連通制御弁7の開度を調整することにより、ボトム側油室110aの昇圧の度合いを調整することができる。
【0038】
また、制御装置120は、ブーム下げ操作信号が入力されると、第1ブーム制御弁2を開いて、ブームシリンダ111Aのボトム側油室110aからの戻り油を低圧アキュムレータ4に蓄圧する。ボトム側油室110aの作動油は、連通制御弁7を通じてロッド側油室110bに導かれるとともに、第1ブーム制御弁2を通じて低圧アキュムレータ4に導かれる。これにより、ブームシリンダ111Aが収縮し、ブーム111が下方向に回動する。なお、上述したように連通制御弁7により、ボトム側油室110aとロッド側油室110bとが連通し、ボトム側油室110aが昇圧される。このため、低圧アキュムレータ4によるエネルギの回収効率が向上する。
【0039】
以下、制御装置120が、ブーム111を上げ動作させるための制御内容について説明する。ブーム操作装置5の操作レバー5aが上げ方向に操作されると、操作センサ5bからブーム上げ操作信号が制御装置120に出力される。制御装置120は、ボトム圧センサ9により検出された圧力が、圧力閾値未満であるか否かを判定する。圧力閾値は、予め定められた定数でもよいし、第1圧力センサ30により検出された圧力が大きいほど、大きくなる変数としてもよい。
【0040】
制御装置120は、ボトム圧センサ9により検出された圧力が圧力閾値未満であると判定した場合、すなわちボトム側油室110aが低圧状態である場合には、第1ブーム制御弁2及び排出制御弁3を開く。これにより、低圧アキュムレータ4から吐出される圧油がボトム側油室110aに供給されるとともにロッド側油室110bからタンク107に作動油が排出される。その結果、ブームシリンダ111Aが伸長し、ブーム111が上方向に回動する。
【0041】
制御装置120は、ボトム圧センサ9により検出された圧力が圧力閾値以上であると判定した場合、すなわちボトム側油室110aが高圧状態である場合には、第2ブーム制御弁19及び排出制御弁3を開く。これにより、高圧アキュムレータ21から吐出される圧油がボトム側油室110aに供給されるとともにロッド側油室110bからタンク107に作動油が排出される。その結果、ブームシリンダ111Aが伸長し、ブーム111が上方向に回動する。
【0042】
このように、制御装置120は、ボトム側油室110aが低圧状態である場合には低圧アキュムレータ4によってブームシリンダ111Aを駆動し、ボトム側油室110aが高圧状態である場合には高圧アキュムレータ21によってブームシリンダ111Aを駆動する。これにより、ブームシリンダ111Aと、ブームシリンダ111Aを駆動するアキュムレータとの間の圧力損失を低減することができる。このため、本実施形態によれば、ブームシリンダ111Aを効率よく駆動することができる。
【0043】
なお、低圧アキュムレータ4の圧力は、第2油圧ポンプ27から作動油が供給されることにより一定に保たれ、高圧アキュムレータ21の圧力は、第3油圧ポンプ29から作動油が供給されることにより一定に保たれる。このため、任意のタイミングで第1ブーム制御弁2または第2ブーム制御弁19を開くことにより、ブームシリンダ111Aを伸長駆動させることができる。
【0044】
制御装置120は、旋回操作装置18の操作センサ18bからの操作信号に基づいて、方向制御弁14を制御することで、旋回体103を動作させる。
【0045】
以下、制御装置120が、旋回体103を旋回動作させるための制御内容について説明する。旋回操作装置18の操作レバー18aが操作されると、操作センサ18bから旋回操作信号が制御装置120に出力される。制御装置120は、旋回操作信号に基づき、操作レバー18aが左旋回操作されたか、右旋回操作されたかを判定する。
【0046】
制御装置120は、操作レバー18aが左旋回操作されたと判定した場合、操作レバー18aの操作量に応じた制御電流を方向制御弁14の第1ソレノイドに出力し、方向制御弁14のスプールを第1方向D1に駆動する。これにより、第1油圧ポンプ13から吐出された作動油が、方向制御弁14及び第1旋回通路131を通じて旋回モータ103Aに供給され、旋回モータ103Aが正方向に回転する。旋回モータ103Aからの戻り油は、第2旋回通路132及び方向制御弁14を通じてタンク107に排出される。これにより、旋回体103が左方向に旋回する。
【0047】
制御装置120は、操作レバー18aが右旋回操作されたと判定した場合、操作レバー18aの操作量に応じた制御電流を方向制御弁14の第2ソレノイドに出力し、方向制御弁14のスプールを第1方向D1とは逆の第2方向D2に駆動する。これにより、第1油圧ポンプ13から吐出された作動油が、方向制御弁14及び第2旋回通路132を通じて旋回モータ103Aに供給され、旋回モータ103Aが正方向とは反対の方向に回転する。旋回モータ103Aからの戻り油は、第2旋回通路132及び方向制御弁14を通じてタンク107に排出される。これにより、旋回体103が右方向に旋回する。
【0048】
旋回体103が旋回しているときに、操作レバー18aが中立位置に戻されると、方向制御弁14のスプールが中立位置に戻る。方向制御弁14のスプールが中立位置に戻ると、方向制御弁14のアクチュエータポートが閉じられる。つまり、方向制御弁14を通じた旋回モータ103Aへの作動油の供給、及び旋回モータ103Aからの方向制御弁14を通じた作動油の排出が遮断される。
【0049】
これにより、第1旋回通路131及び第2旋回通路132のうち、旋回モータ103Aから作動油が排出される通路(以下、高圧側通路とも記す)の圧力が上昇する。旋回モータ103Aの背圧、すなわち高圧側通路の圧力が上昇することにより、旋回体103の旋回速度を減少させるブレーキ力が旋回モータ103Aに作用する。つまり、高圧側通路の圧力が、ブレーキ圧として旋回モータ103Aに作用する。高圧側通路の圧力が差圧制御弁130の設定差圧を超えると、高圧側通路から差圧制御弁130を通じて高圧アキュムレータ21に作動油が導かれ、高圧アキュムレータ21が蓄圧される。したがって、本実施形態の油圧システム106では、必要なブレーキ力を確保しながら、旋回モータ103Aの戻り油を高圧アキュムレータ21に送り、エネルギの回収を行うことができる。
【0050】
差圧制御弁130は、自身の上流側の圧力である旋回モータ103Aの背圧と、自身の下流側の圧力である高圧アキュムレータ21の圧力との差(すなわち前後差圧)が、設定差圧以下では閉弁し、設定差圧を超えると開弁する。差圧制御弁130は、制御装置120により出力されソレノイド130aに供給される制御電流に応じて設定差圧の変更が可能な電磁比例式の圧力制御弁である。差圧制御弁130の設定差圧は、制御装置120から出力される制御電流に応じて調整される。制御装置120は、第2圧力センサ31の検出結果に基づいて差圧制御弁130を制御する。
【0051】
差圧制御弁130は、周知の電磁比例リリーフ弁と同様の構成を有しており、例えば、弁体であるポペットと、ソレノイド130aの可動鉄心に固定されるロッドと、ロッドとポペットとの間に設けられるばねと、を有している。ばねは、ポペットを弁座に押し付ける向きにポペットを付勢する。ソレノイド130aに流れる制御電流が増加すると、可動鉄心とともにロッドが移動し、ポペットとロッドとの間のばねが圧縮され、設定差圧が増加する。ポペットには、ばねの付勢力とソレノイド130a推力と下流側の圧力が、ポペットを弁座に押し付ける向きに作用する。
【0052】
図4を参照して、制御装置120による差圧制御弁130の設定差圧の調整方法について詳しく説明する。制御装置120は、第2圧力センサ31により検出される高圧アキュムレータ21の圧力の上昇に応じて差圧制御弁130の設定差圧を低減する。つまり、制御装置120は、第2圧力センサ31により検出される高圧アキュムレータ21の圧力の上昇に応じて差圧制御弁130の前後差圧が低減するように、差圧制御弁130を制御する。
図4は、第1実施形態に係る制御装置120による差圧制御弁130の制御について示すブロック図である。
図4に示すように、制御装置120は、不揮発性メモリ153に記憶されているプログラムが実行されることにより、差圧演算部121及び出力変換部122として機能する。
【0053】
差圧演算部121は、不揮発性メモリ153に予め記憶されている差圧特性Cpを参照し、第2圧力センサ31により検出された高圧アキュムレータ21の圧力に基づいて、差圧制御弁130の設定差圧ΔPを演算する。差圧特性Cpは、高圧アキュムレータ21の圧力が増加するほど、差圧制御弁130の設定差圧ΔPが減少する特性であり、例えば、テーブル形式で不揮発性メモリ153に記憶されている。
【0054】
差圧特性Cpは、高圧アキュムレータ21の圧力が変化した場合であっても、差圧制御弁130の上流側の圧力である旋回モータ103Aのブレーキ圧が一定に保たれるように、予め定められる。例えば、旋回モータ103Aのブレーキ圧を30MPaに設定する場合、高圧アキュムレータ21の圧力が20MPaならば、差圧は10MPaとなる。高圧アキュムレータ21の圧力が21MPaならば、差圧は9MPaとなる。
【0055】
出力変換部122は、不揮発性メモリ153に予め記憶されている制御電流特性Ciを参照し、差圧演算部121で演算された設定差圧ΔPに基づいて、差圧制御弁130のソレノイド130aに供給する制御電流値Icを演算する。出力変換部122は、演算結果に応じた制御電流を差圧制御弁130のソレノイド130aに出力する。制御電流特性Ciは、設定差圧ΔPが増加するほど制御電流値Icが増加する特性である。
【0056】
第1実施形態に係る油圧ショベル100の主な動作について説明する。例えば、オペレータが、
図2に示す旋回操作装置18の操作レバー18aを左旋回方向に操作し、旋回体103を左旋回させる。その後、オペレータが、旋回操作装置18の操作レバー18aを中立位置に戻すと、方向制御弁14のスプールが中立位置に戻る。これにより、方向制御弁14及び第1旋回通路131を通じた旋回モータ103Aへの作動油の供給が遮断されるとともに、第2旋回通路132及び方向制御弁14を通じた作動油の排出が遮断される。その結果、第2旋回通路132の圧力が上昇する。第2旋回通路132の圧力が上昇し、差圧制御弁130の前後差圧が設定差圧ΔPを超えると、差圧制御弁130が開く。差圧制御弁130が開くと、第2旋回通路132の作動油は、第2分岐通路133bのチェック弁24及び回収通路135の差圧制御弁130を通り、高圧アキュムレータ21に導かれる。差圧制御弁130は、その前後差圧が設定差圧ΔPで保持されるように動作する。
【0057】
ここで、本実施形態の比較例として、差圧制御弁130に代えて、設定差圧がばね力によって一定値に定まる制御弁が設けられている場合について説明する。この制御弁は、ソレノイド130aを有していない。この比較例では、高圧アキュムレータ21の圧力が上昇すると、旋回モータ103A側の圧力も上昇することになる。比較例では、高圧アキュムレータ21の圧力に応じてブレーキ力が変化するため、旋回モータ103Aの動作が不安定になるおそれがある。その結果、比較例では、オペレータの望む操作性を実現できないおそれがある。
【0058】
これに対して、本実施形態に係る差圧制御弁130は、ばね力と制御電流に応じて発生するソレノイド推力によって設定差圧ΔPが定まる。上述したように、差圧制御弁130の設定差圧ΔPは、高圧アキュムレータ21の圧力が増加するほど小さくなる。これにより、旋回モータ103Aの背圧、すなわちブレーキ圧の変化を小さくすることができる。つまり、本実施形態によれば、高圧アキュムレータ21の圧力が変化した場合でも旋回モータ103Aのブレーキ力を安定して発生させることができるので、旋回体103の減速動作が安定する。その結果、本実施形態では、オペレータの望む操作性を実現できる。
【0059】
なお、アキュムレータは、容量が小さいほど圧力変動が大きくなる。このため、本実施形態の比較例において、高圧アキュムレータ21を小型化した場合、高圧アキュムレータ21の圧力変動が大きくなることにより、安定したブレーキ圧力を発生させることがより難しくなる。これに対して、本実施形態によれば、高圧アキュムレータ21を小型化した場合であっても、高圧アキュムレータ21の圧力変動に応じて差圧制御弁130の設定差圧が変化するので、安定したブレーキ圧力を発生させることができる。つまり、本実施形態によれば、高圧アキュムレータ21の小型化によるコストの低減、及び高圧アキュムレータ21の小型化による搭載性の向上を図ることもできる。
【0060】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0061】
(1)油圧ショベル(作業機械)100は、エンジン32と、エンジン32により駆動され圧油を吐出する第1油圧ポンプ(油圧ポンプ)13と、第1油圧ポンプ13により吐出される圧油により動作する旋回モータ(油圧アクチュエータ)103Aと、旋回モータ103Aから排出される圧油を蓄圧する高圧アキュムレータ(蓄圧装置)21と、旋回モータ103Aと高圧アキュムレータ21との間に設けられ、旋回モータ103Aの圧力と高圧アキュムレータ21の圧力との前後差圧を発生させる差圧制御弁130と、高圧アキュムレータ21の圧力を検出する第2圧力センサ(圧力センサ)31と、第2圧力センサ31の検出結果に基づいて差圧制御弁130を制御する制御装置120と、を備える。制御装置120は、第2圧力センサ31により検出される高圧アキュムレータ21の圧力の上昇に応じて上記前後差圧が低減するように、差圧制御弁130を制御する。
【0062】
上記構成によれば、高圧アキュムレータ21の圧力の上昇に応じて差圧制御弁130の前後差圧が低減するため、旋回モータ103Aの下流側の圧力であるブレーキ圧の変化が抑えられる。つまり、上記構成では、安定したブレーキ力を発生させることができる。したがって、本実施形態によれば、旋回モータ103Aから排出される圧油を高圧アキュムレータ21に蓄圧する際に、安定して旋回モータ103Aを動作させることのできる油圧ショベル100を提供することができる。
【0063】
(2)差圧制御弁130は、制御装置120により出力される制御電流に応じて設定差圧ΔPが調整される電磁比例弁により構成される。差圧制御弁130は、設定差圧ΔP以下では閉弁し、設定差圧ΔPを超えると開弁する。制御装置120は、第2圧力センサ31により検出される高圧アキュムレータ21の圧力の上昇に応じて差圧制御弁130の設定差圧ΔPを低減する。この構成では、高圧アキュムレータ21の圧力と旋回モータ103Aの下流側の圧力であるブレーキ圧との差が、設定差圧ΔPを超えると、差圧制御弁130が開弁し、ブレーキ圧の上昇が抑えられる。
【0064】
<第2実施形態>
図5及び
図6を参照して、第2実施形態に係る油圧ショベル200について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。
【0065】
第2実施形態に係る油圧ショベル200の旋回体103には、旋回体103の旋回の角速度を検出するジャイロスコープ等の角速度センサ33が取り付けられている。角速度センサ33は制御装置220に接続され、検出結果を制御装置220に出力する。第2実施形態に係る制御装置220は、第2圧力センサ31により検出される高圧アキュムレータ21の圧力の上昇に応じて差圧制御弁230の開口面積が大きくなるように、差圧制御弁230を制御する。また、制御装置220は、角速度センサ33により検出される旋回の角速度が大きいほど差圧制御弁230の開口面積が大きくなるように、差圧制御弁230を制御する。
【0066】
図5は、
図2と同様の図であり、第2実施形態に係る油圧ショベル200が備える油圧システム206について示す図である。第2実施形態に係る油圧システム206では、第1実施形態で説明した差圧制御弁130に代えて、スプール式の電磁比例弁である差圧制御弁230が設けられている。
【0067】
差圧制御弁230は、弁体であるスプール230bと、スプール230bを保持する保持部材であるスリーブ230cとを有する。差圧制御弁230は、制御装置220により出力されソレノイド230aに供給される制御電流に応じてスプール230bがスリーブ230c内を摺動することにより、回収通路135の開口を構成する差圧制御弁230の開口の面積(以下、差圧制御弁230の開口面積とも記す)の変更が可能な制御弁である。制御装置220は、差圧制御弁230のソレノイド230aに供給する制御電流を調整することにより、差圧制御弁230の開口面積、すなわち、旋回モータ103Aから高圧アキュムレータ21に向かって流れる作動油の流路の断面積を調整する。制御装置220は、差圧制御弁230の開口をオリフィスとして機能させ、その開口面積を調整することにより、差圧制御弁230の前後差圧を調整する。
【0068】
制御装置220は、旋回モータ103Aから排出される作動油の流量と高圧アキュムレータ21の圧力からオリフィスの式に基づいて、差圧制御弁230の開口面積を制御することにより、所望のブレーキ圧力を発生させる。
【0069】
オリフィスの式は一般的に絞りの前後差圧と流量、絞りの開口面積の関係を表したもので、単位換算を省略すると以下の式(1)のように表すことができる。
【0070】
【0071】
ここで、Qは絞りに流れる流量、Aは絞りの開口面積、P1はオリフィスの上流側圧力、P2はオリフィスの下流側圧力、Cは流量係数であり一般的には0.7が使われている。
【0072】
式(1)を開口面積Aについて解くと、以下の式(2)が導かれる。
【0073】
【0074】
本実施形態の場合、Qは旋回モータ103Aから排出される作動油の流量、Aは差圧制御弁230の開口面積、P1は差圧制御弁230の上流側圧力、P2は差圧制御弁230の下流側圧力となる。なお、旋回モータ103Aから排出される作動油の流量Qは、旋回体103の角速度と比例関係にある。したがって、流量Qは、旋回体103の角速度に比例定数(後述するゲインK1)を乗じることにより算出できる。
【0075】
図6を参照して、制御装置220による差圧制御弁230の制御内容について詳しく説明する。
図6は、第2実施形態に係る制御装置220による差圧制御弁230の制御について示すブロック図である。
図6に示すように、制御装置220は、不揮発性メモリ153に記憶されているプログラムが実行されることにより、第1ゲイン乗算部223、減算部225、開平部226、第2ゲイン乗算部227、除算部228及び出力変換部229として機能する。
【0076】
第1ゲイン乗算部223は、角速度センサ33により検出された旋回体103の角速度ωに予め定められたゲインK1を乗算することにより、旋回モータ103Aから排出される作動油の流量Qを演算する(Q=ω・K1)。
【0077】
減算部225は、例えば、予め定められ不揮発性メモリ153に記憶されている目標旋回ブレーキ圧力(すなわち差圧制御弁230の上流側圧力P1の目標値)から第2圧力センサ31により検出された高圧アキュムレータ21の圧力(すなわち差圧制御弁230の下流側圧力P2の実測値)を減算し、目標前後差圧(P1-P2)を演算する。
【0078】
開平部226は、減算部225で演算された目標前後差圧(P1-P2)の平方根を演算する。第2ゲイン乗算部227は、開平部226の演算結果に予め定められたゲインK2を乗算する。ゲインK2は、式(2)における流量係数Cに相当する。
【0079】
除算部228は、第1ゲイン乗算部223の演算結果を第2ゲイン乗算部227の演算結果で除することにより、差圧制御弁230の目標とする開口面積(目標開口面積とも記す)Aを演算する。
【0080】
出力変換部229は、不揮発性メモリ153に予め記憶されている制御電流特性Ci2を参照し、除算部228で演算された目標開口面積Aに基づいて、差圧制御弁230のソレノイド230aに供給する制御電流値Icを演算する。出力変換部229は、演算結果に応じた制御電流を差圧制御弁230のソレノイド230aに出力する。制御電流特性Ci2は、目標開口面積Aが増加するほど制御電流値Icが増加する特性である。
【0081】
このように、本第2実施形態では、差圧制御弁230が、制御装置220により出力される制御電流に応じて開口面積が調整される電磁比例弁により構成される。制御装置220は、第2圧力センサ31により検出される高圧アキュムレータ21の圧力の上昇に応じて差圧制御弁230の開口面積が大きくなるように、差圧制御弁230を制御する。また、制御装置220は、角速度センサ33により検出される旋回体103の旋回の角速度が大きいほど差圧制御弁230の開口面積が大きくなるように、差圧制御弁230を制御する。この構成では、高圧アキュムレータ21の圧力の上昇に応じて差圧制御弁230の開口面積が大きくなるため、高圧アキュムレータ21の圧力の上昇に起因するブレーキ圧の上昇が抑えられる。また、旋回モータ103Aの流量の変化に起因するブレーキ圧の変化も抑えられる。したがって、本第2実施形態によれば、旋回モータ103Aから排出される圧油を高圧アキュムレータ21に蓄圧する際に、安定して旋回モータ103Aを動作させることができる。
【0082】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0083】
<変形例1>
上記実施形態では、制御装置120,220が、旋回体103を旋回させる旋回モータ103Aの戻り油を蓄圧する高圧アキュムレータ21と、旋回モータ103Aとの間に設けられた差圧制御弁130,230の前後差圧を調整する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。制御装置120,220は、ブームシリンダ111Aの戻り油を蓄圧する低圧アキュムレータ4と、ブームシリンダ111Aとの間に設けられた第1ブーム制御弁2の開口面積を制御して、第1ブーム制御弁2の前後差圧を調整するようにしてもよい。
【0084】
以下、
図7及び
図8を参照して、本変形例1に係る油圧ショベル300について説明する。なお、第2実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照符号を付し、相違点を主に説明する。
図7は、
図2と同様の図であり、変形例1に係る油圧ショベル300が備える油圧システム306について示す図である。
【0085】
図7に示すように、本変形例1に係る油圧ショベル300のブームシリンダ111Aには、ブームシリンダ111Aのストロークを検出するストロークセンサ34が設けられている。制御装置320は、ストロークセンサ34の検出結果に基づいてブームシリンダ111Aの伸縮速度(以下、シリンダ速度とも記す)を演算する。第1ブーム制御弁2は、第2実施形態で説明した差圧制御弁230と同様、制御装置320により出力されソレノイド2aに供給される制御電流に応じて開口面積の変更が可能なスプール式の電磁比例弁である。
【0086】
制御装置320は、ブーム下げ操作信号が入力されると、第1ブーム制御弁2を開いて、ブームシリンダ111Aのボトム側油室110aからの戻り油を低圧アキュムレータ4に蓄圧する。このとき、制御装置320は、第1ブーム制御弁2のソレノイド2aに供給する制御電流を調整することにより、第1ブーム制御弁2の開口面積、すなわち、ブームシリンダ111Aから低圧アキュムレータ4に向かって流れる作動油の流路の断面積を調整する。制御装置320は、第1ブーム制御弁2の開口をオリフィスとして機能させ、その開口面積を調整することにより、第1ブーム制御弁2の前後差圧を調整する。
【0087】
図8を参照して、制御装置320による第1ブーム制御弁2の制御内容について詳しく説明する。
図8は、第3実施形態に係る制御装置320による第1ブーム制御弁2の制御について示すブロック図である。
図8に示すように、制御装置320は、不揮発性メモリ153に記憶されているプログラムが実行されることにより、速度演算部322、第1ゲイン乗算部323、減算部325、開平部326、第2ゲイン乗算部327、除算部328及び出力変換部329として機能する。
【0088】
速度演算部322は、ストロークセンサ34により検出されたブームシリンダ111Aのストロークの時間変化に基づいてシリンダ速度Vsを演算する。第1ゲイン乗算部323は、速度演算部322で演算されたシリンダ速度Vsに予め定められたゲインKaを乗算することにより、ブームシリンダ111Aのボトム側油室110aから排出される作動油の流量Qを演算する(Q=Vs・Ka)。
【0089】
減算部325は、例えば、予め定められ不揮発性メモリ153に記憶されている目標ボトム圧(すなわち第1ブーム制御弁2の上流側圧力P1の目標値)から第1圧力センサ30により検出された低圧アキュムレータ4の圧力(すなわち第1ブーム制御弁2の下流側圧力P2の実測値)を減算し、目標前後差圧(P1-P2)を演算する。
【0090】
開平部326は、減算部325で演算された目標前後差圧(P1-P2)の平方根を演算する。第2ゲイン乗算部327は、開平部326の演算結果に予め定められたゲインKbを乗算する。ゲインKbは、式(2)における流量係数Cに相当する。
【0091】
除算部328は、第1ゲイン乗算部323の演算結果を第2ゲイン乗算部327の演算結果で除することにより、第1ブーム制御弁2の目標とする開口面積(目標開口面積とも記す)A2を演算する。
【0092】
出力変換部329は、不揮発性メモリ153に予め記憶されている制御電流特性Ci3を参照し、除算部328で演算された目標開口面積A2に基づいて、第1ブーム制御弁2のソレノイド2aに供給する制御電流値Icを演算する。出力変換部329は、演算結果に応じた制御電流を第1ブーム制御弁2のソレノイド2aに出力する。制御電流特性Ci3は、目標開口面積A2が増加するほど制御電流値Icが増加する特性である。
【0093】
このように、本変形例では、第1ブーム制御弁2が、ブームシリンダ111Aの下げ動作時に、前後差圧を発生させる差圧制御弁として機能する。第1ブーム制御弁2は、ソレノイド2aに供給される制御電流に応じて開口面積の変更が可能な制御弁である。制御装置320は、ストロークセンサ34により検出されるブームシリンダ111Aのストロークに基づいてシリンダ速度を演算する。制御装置320は、第1圧力センサ30により検出される低圧アキュムレータ4の圧力の上昇に応じて第1ブーム制御弁2の開口面積が大きくなるように、第1ブーム制御弁2を制御する。また、制御装置320は、シリンダ速度が大きいほど第1ブーム制御弁2の開口面積が大きくなるように、第1ブーム制御弁2を制御する。この構成では、低圧アキュムレータ4の圧力の上昇に応じて第1ブーム制御弁2の開口面積が大きくなるため、低圧アキュムレータ4の圧力の上昇に起因するブームシリンダ111Aのボトム圧の上昇が抑えられる。その結果、安定してブームシリンダ111Aを動作させることができる。
【0094】
油圧ショベル300は、バケット113の背部に設けられたフックにワイヤーを掛けて吊り荷を吊り上げるクレーン作業を行うことがある。クレーン作業では、ブーム111の上げ動作及び下げ動作により、吊り荷の上下方向の移動を行う。
【0095】
オペレータが、ブーム操作装置5の操作レバー5aをブーム下げ側に操作すると、ブームシリンダ111Aが収縮し、ブーム111が下方向に回動する。ブームシリンダ111Aのボトム側油室110aからの戻り油は、第1ブーム制御弁2を通じて低圧アキュムレータ4に導かれる。これにより、低圧アキュムレータ4が蓄圧される。本変形例1では、制御装置320は、第1圧力センサ(圧力センサ)30により検出される低圧アキュムレータ(蓄圧装置)4の圧力の上昇に応じて第1ブーム制御弁(差圧制御弁)2の開口面積が大きくなるように、第1ブーム制御弁2を制御する。これにより、低圧アキュムレータ4の圧力の上昇に応じて第1ブーム制御弁2の前後差圧が低減する。したがって、低圧アキュムレータ4の圧力が上昇している間、ブームシリンダ111Aのボトム側油室110aの圧力が一定に保たれ、ブームシリンダ111Aの速度変化が抑えられる。ブームシリンダ111Aが安定して動作することになるため、クレーン作業において吊り荷が揺れることを防止できる。したがって、本変形例1によれば、クレーン作業の効率を向上することができる。
【0096】
<変形例2>
上記実施形態では、作業機械がクローラ式の油圧ショベル100,200,300である場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。ホイール式の油圧ショベル、ホイールローダ等の種々の作業機械に本発明を適用することができる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0098】
2…第1ブーム制御弁(差圧制御弁)、2a…ソレノイド、4…低圧アキュムレータ(蓄圧装置)、5…ブーム操作装置、13…第1油圧ポンプ(油圧ポンプ)、18…旋回操作装置、21…高圧アキュムレータ(蓄圧装置)、27…第2油圧ポンプ(油圧ポンプ)、29…第3油圧ポンプ(油圧ポンプ)、30…第1圧力センサ(圧力センサ)、31…第2圧力センサ(圧力センサ)、32…エンジン、33…角速度センサ、34…ストロークセンサ、100…油圧ショベル(作業機械)、102…走行体、103…旋回体、103A…旋回モータ(油圧アクチュエータ)、104…作業装置、105…機体、106…油圧システム、110a…ボトム側油室、110b…ロッド側油室、111…ブーム、111A…ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)、120…制御装置、121…差圧演算部、122…出力変換部、130…差圧制御弁、130a…ソレノイド、151…プロセッサ、152…揮発性メモリ、153…不揮発性メモリ、200…油圧ショベル(作業機械)、206…油圧システム、220…制御装置、223…第1ゲイン乗算部、225…減算部、226…開平部、227…第2ゲイン乗算部、228…除算部、229…出力変換部、230…差圧制御弁、230a…ソレノイド、230b…スプール、230c…スリーブ、300…油圧ショベル(作業機械)、306…油圧システム、320…制御装置、322…速度演算部、323…第1ゲイン乗算部、325…減算部、326…開平部、327…第2ゲイン乗算部、328…除算部、329…出力変換部