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特許7498868アレイ導波路回折格子及びその製造方法、トランシーバ、並びに光通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】アレイ導波路回折格子及びその製造方法、トランシーバ、並びに光通信システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20240605BHJP
   G02B 6/13 20060101ALI20240605BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
G02B6/12 336
G02B6/13
G02B6/42
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023541611
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 CN2021144062
(87)【国際公開番号】W WO2022148327
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】202110025612.6
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウエンジュイン
(72)【発明者】
【氏名】スゥン,シュイ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ディーンシャン
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0172460(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0002583(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1387628(CN,A)
【文献】特開2007-286077(JP,A)
【文献】特開2001-042146(JP,A)
【文献】米国特許第07006729(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 - 6/14
G02B 6/28
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/42 - 6/43
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
SPIE Digital Library
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導波路、プレ拡散コンポーネント、第1結合器、アレイ導波路、第2結合器、及び第2導波路を有するアレイ導波路回折格子であって、
前記アレイ導波路はm個の導波路を有し、前記第1導波路はn個の導波路を有し、前記第2導波路はp個の導波路を有し、mは1より大きい正の整数であり、n及びpはともに正の整数であり、n及びpは異なり;
前記第1導波路は前記第1結合器にn個の光信号を入力するように構成され、前記第1結合器は前記n個の光信号を伝送のために前記m個の導波路に結合するように構成され、前記第2結合器は、伝送のために前記p個の導波路に、前記m個の導波路で伝送される前記光信号を結合するように構成され、前記第2導波路はp個の光信号を出力するように構成され;
前記プレ拡散コンポーネントは、前記第1導波路と前記第1結合器との間又は前記第2結合器と前記第2導波路との間に位置し、前記プレ拡散コンポーネントの延在方向に沿って配置されたサブ波長回折格子が、前記プレ拡散コンポーネントが位置する領域に配置され、前記プレ拡散コンポーネントは、前記アレイ導波路回折格子の出力スペクトルの頂部の平坦度を調整するように構成され
前記アレイ導波路回折格子の前記出力スペクトルの前記頂部の前記平坦度は、前記サブ波長回折格子の回折格子パラメータに関連し、前記回折格子パラメータは、回折格子周期及び/又はデューティサイクルを含む、
アレイ導波路回折格子。
【請求項2】
第1の方向に沿って配置されたサブ波長回折格子が前記プレ拡散コンポーネントにさらに配置され、前記第1の方向は前記プレ拡散コンポーネントの前記延在方向に垂直である、
請求項1に記載のアレイ導波路回折格子。
【請求項3】
前記サブ波長回折格子は、均一回折格子又は不均一回折格子である、
請求項1又は2に記載のアレイ導波路回折格子。
【請求項4】
前記アレイ導波路回折格子の等価屈折率が、前記サブ波長回折格子の回折格子パラメータに関連し、前記アレイ導波路回折格子の前記等価屈折率は、前記アレイ導波路回折格子の前記出力スペクトルの前記頂部の前記平坦度に関連する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアレイ導波路回折格子。
【請求項5】
前記プレ拡散コンポーネントは軸対称構造であり、前記プレ拡散コンポーネントの対称軸は前記プレ拡散コンポーネントの前記延在方向に平行である、
請求項1乃至のいずれか1項に記載のアレイ導波路回折格子。
【請求項6】
前記プレ拡散コンポーネントは、マルチモード干渉MMIコンポーネントである、又はY形構造である、
請求項に記載のアレイ導波路回折格子。
【請求項7】
前記第1導波路は軸対称構造であり、前記プレ拡散コンポーネントの前記対称軸は前記第1導波路の対称軸に整列される、
請求項に記載のアレイ導波路回折格子。
【請求項8】
光源、変調器、及び請求項1乃至のいずれか1項に記載のアレイ導波路回折格子を有する、トランスミッタ機械であって、
前記光源、前記変調器、及び前記アレイ導波路回折格子は、順に接続され、nはpより大きく;
前記光源は光信号を出力するように構成され、前記変調器は、多波長光信号を得るために受信した前記光信号を変調し、前記アレイ導波路回折格子に前記多波長光信号を入力するように構成される、
トランスミッタ機械。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のアレイ導波路回折格子と複数のレシーバとを有するレシーバ機械であって、
前記アレイ導波路回折格子は、前記複数のレシーバに別々に接続され、nはpより小さく;前記レシーバは、前記アレイ導波路回折格子によって出力される光信号を受信するように構成される、
レシーバ機械。
【請求項10】
請求項に記載のトランスミッタ機械と、請求項に記載のレシーバ機械と、前記トランスミッタ機械及び前記レシーバ機械にそれぞれ接続された光ファイバとを有する光通信システム。
【請求項11】
アレイ導波路回折格子の製造方法であって、前記方法は:
基板を提供するステップと;
前記基板上に第1導波路、プレ拡散コンポーネント、第1結合器、アレイ導波路、第2結合器、及び第2導波路を製造するステップと;を含み、
前記アレイ導波路はm個の導波路を有し、前記第1導波路はn個の導波路を有し、前記第2導波路はp個の導波路を有し、mは1より大きい正の整数であり、n及びpはともに正の整数であり、n及びpは異なり;
前記第1導波路は、前記第1結合器にn個の光信号を入力するように構成され、前記第1結合器は、伝送のために前記m個の導波路に前記n個の光信号を結合するように構成され、前記第2結合器は、伝送のために前記p個の導波路に、前記m個の導波路で伝送される前記光信号を結合するように構成され、前記第2導波路は、p個の光信号を出力するように構成され;
前記プレ拡散コンポーネントは、前記第1導波路と前記第1結合器との間又は前記第2結合器と前記第2導波路との間に位置し、前記プレ拡散コンポーネントの延在方向に沿って配置されたサブ波長回折格子が、前記プレ拡散コンポーネントが位置する領域に配置され、前記プレ拡散コンポーネントは、前記アレイ導波路回折格子の出力スペクトルの頂部の平坦度を調整するように構成され
前記基板上に第1導波路、プレ拡散コンポーネント、第1結合器、アレイ導波路、第2結合器、及び前記第2導波路を製造する前記ステップの前に、前記方法は、さらに:
製造される前記アレイ導波路回折格子の前記出力スペクトルの前記頂部の前記平坦度に基づいて前記サブ波長回折格子の回折格子パラメータを決定するステップを含み、前記回折格子パラメータは、回折格子周期及び/又はデューティサイクルを含む、
方法。
【請求項12】
前記基板上に第1導波路、プレ拡散コンポーネント、第1結合器、アレイ導波路、第2結合器、及び第2導波路を製造する前記ステップの前に、前記方法は、さらに:
製造される前記アレイ導波路回折格子の等価屈折率に基づいて、前記サブ波長回折格子の回折格子パラメータを決定するステップを含
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月8日に中国国家知識産権局に出願され、「ARRAYED WAVEGUIDE GRATING AND MANUFACTURING METHOD THEREOF, TRANSCEIVER, AND OPTICAL COMMUNICATION SYSTEM」と題する中国特許出願第202110025612.6号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、光通信の分野、特にアレイ導波路回折格子及びその製造方法、トランシーバ、並びに光通信システムに関する。
【背景技術】
【0003】
アレイ導波路回折格子(arrayed waveguide grating、AWG)は、波長分割多重化(wavelength division multiplexing、WDM)技術のコアコンポーネントである。
【0004】
AWGは、順に(sequentially)接続される第1導波路、第1スター結合器(star coupler)、アレイ導波路、第2スター結合器、及び第2導波路を含む。アレイ導波路を通過する光信号はガウス形スペクトル(ガウススペクトルとも呼ばれる)を形成するので、AWGにより出力される光信号のスペクトルはガウス形スペクトルである。ガウス形スペクトルの3dB帯域幅(パワースペクトル密度のピーク点がパワースペクトル密度の1/2まで減少したときに決定される周波数範囲)は小さい。光信号が小さい3dB帯域幅を持つAWGに基づいて伝送される場合、入力光信号の波長シフト(波長ドリフトとも呼ばれる)は大きな挿入損失(これは、略して挿入損失と呼ばれ、コンポーネント挿入損失とも呼ばれる)を容易に生じる。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、アレイ導波路回折格子及びその製造方法、トランシーバ、並びに光通信システムを提供する。技術的解決策は以下の通りである。
【0006】
第1の態様によれば、アレイ導波路回折格子が提供され、第1導波路、プレ拡散コンポーネント(pre-spreading component)、第1結合器、アレイ導波路、第2結合器及び第2導波路を含む。アレイ導波路は、m個の導波路を含み、第1導波路は、n個の導波路を含み、第2導波路は、p個の導波路を含む。mは、1より大きい正の整数であり、nとpは両方とも正の整数であり、nとpは異なる。
【0007】
第1導波路は、第1結合器にn個の光信号を入力するように構成される。第1結合器は、伝送のためにm個の導波路にn個の光信号を結合するように構成される。第2結合器は、伝送のためにp個の導波路に、m個の導波路で伝送される光信号を結合するように構成される。第2導波路は、p個の光信号を出力するように構成される。第1結合器及び/又は第2結合器は、スター結合器/スター結合器(複数)であり得る。スター結合器は、ローランド円構造を有する平面導波路(自由伝搬領域とも呼ばれる)である。ローランド円構造は、回折歪みを低減し、光パワーの均一分布を達成するためのものである。
【0008】
プレ拡散コンポーネントは、第1導波路と第1結合器との間、又は第2結合器と第2導波路との間に位置する。プレ拡散コンポーネントの延在方向に沿って配置されたサブ波長回折格子が、プレ拡散コンポーネントが位置する領域に配置され、プレ拡散コンポーネントは、アレイ導波路回折格子の出力スペクトルの頂部(top)の平坦度を調整するように構成される。例えば、プレ拡散コンポーネントが位置する領域にサブ波長回折格子が配置されていることは、プレ拡散コンポーネントの中にサブ波長回折格子が配置されていること、又はプレ拡散コンポーネントの境界で囲まれた領域にサブ波長回折格子が配置されていることを意味する。
【0009】
本出願で提供されるAWGによれば、サブ波長回折格子構造を持つプレ拡散コンポーネントは、第1導波路と第1結合器との間又は第2結合器と第2導波路との間に追加される。プレ拡散コンポーネントは、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度(flatness)を調整するように構成され、その結果、フラットトップスペクトル(flat-top spectrum)が最終的にAWGから出力される。フラットトップスペクトルの3dB帯域幅は大きいため、光信号の波長シフトによって生じる挿入損失を効果的に低減できる。さらに、AWGは光信号の波長シフトに抵抗できるため、追加の波長制御システムを配置する必要がなく、製造コストが低減され、AWGの構造複雑性が低減される。
【0010】
回折格子の回折格子パラメータ(grating parameter)は、回折格子周期(grating periodicity)及び/又はデューティサイクルを含む。回折格子周期は、回折格子の2つの隣接するスリット間の距離である。デューティサイクルは、回折格子周期に対する回折格子の隣接するスリット間のギャップの幅の比である。サブ波長回折格子は、その回折格子周期が動作波長より小さい回折格子である。サブ波長回折格子において、回折格子周期の値の範囲は[0.1μm、1μm]であり、デューティサイクルの値の範囲は(0、1)である。
【0011】
本出願では、プレ拡散コンポーネント上のサブ波長回折格子構造は、複数のタイプを有し得る。配置方向に基づいて、プレ拡散コンポーネント上のサブ波長回折格子構造は、以下の第1のオプションの例及び第2のオプションの例で提供される2つのタイプに分類され得る。回折格子パラメータに基づいて、プレ拡散コンポーネント上のサブ波長回折格子構造は、以下の第3のオプションの例及び第4のオプションの例で提供される2つのタイプに分類され得る。
【0012】
第1のオプションの例では、プレ拡散コンポーネント上のサブ波長回折格子は、1次元サブ波長回折格子である。言い換えれば、サブ波長回折格子は、1つの配列方向のみを有する。
【0013】
第2のオプションの例では、プレ拡散コンポーネント上のサブ波長回折格子は、2次元サブ波長回折格子(3Dサブ波長回折格子とも呼ばれる)である。AWGでは、プレ拡散コンポーネント上のサブ波長回折格子は2次元サブ波長回折格子であり、言い換えれば、プレ拡散コンポーネント上のサブ波長回折格子は2つの配置方向を有する。
【0014】
第3のオプションの例では、サブ波長回折格子は均一回折格子である。均一回折格子は、その回折格子周期とデューティサイクルの両方が固定値である回折格子である。
【0015】
第4のオプションの例では、サブ波長回折格子は不均一回折格子である。不均一回折格子は、その回折格子周期とデューティサイクルが固定値でない回折格子である。言い換えれば、不均一回折格子は、少なくとも2つの回折格子周期を有する回折格子及び/又は少なくとも2つのデューティサイクルを有する回折格子である。例えば、不均一回折格子は、勾配回折格子であり得る。勾配回折格子は、その回折格子周期が徐々に増加又は減少する回折格子である。
【0016】
実際の実装中、第1のオプションの例から第4のオプションの例までが状況に基づいて組み合わされ得る。例えば、プレ拡散コンポーネント上のサブ波長回折格子は、1次元サブ波長回折格子であり、均一回折格子である。あるいは、プレ拡散コンポーネント上のサブ波長回折格子は、2次元サブ波長回折格子であり、均一回折格子である。あるいは、プレ拡散コンポーネント上のサブ波長回折格子は、1次元サブ波長回折格子であり、不均一回折格子である。あるいは、プレ拡散コンポーネント上のサブ波長回折格子は、2次元サブ波長回折格子であり、不均一回折格子である。あるいは、プレ拡散コンポーネント上のサブ波長回折格子は、2次元サブ波長回折格子であり、サブ波長回折格子の1つのグループは、均一回折格子であり、サブ波長回折格子の他のグループは、不均一回折格子である。
【0017】
前述の説明は、サブ波長回折格子のスリットがストリップスリットである例を用いて提供されていることが留意されるべきである。実際の実装中、サブ波長回折格子のスリットは、他の形状のスリット、例えば、湾曲スリットであってもよい。サブ波長回折格子のスリットの長さは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0018】
AWGを製造する前に、まずサブ波長回折格子の回折格子パラメータが決定され得、決定された回折格子パラメータに基づいてAWGが製造される。このようにして、AWGの出力スペクトルの頂部は平坦である。実装では、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度は、サブ波長回折格子の回折格子パラメータに関連している。サブ波長回折格子の回折格子パラメータは、製造されるAWGの出力スペクトルの頂部の平坦度に基づいて決定することができる。別の実装では、AWGの等価屈折率はサブ波長回折格子の回折格子パラメータに関連し、AWGの等価屈折率はAWGの出力スペクトルの頂部の平坦度に関連する。サブ波長回折格子の回折格子パラメータは、製造されるAWGの等価屈折率に基づいて決定され得る回折格子周期が変化しない場合、デューティサイクルが大きいほどAWGの等価屈折率が大きいことを示す。デューティサイクルが変化しない場合、回折格子周期が大きいほどAWGの等価屈折率が大きいことを示す。
【0019】
オプションの実装では、プレ拡散コンポーネントは軸対称構造であり、プレ拡散コンポーネントの対称軸はプレ拡散コンポーネントの延在方向に平行である。軸対称プレ拡散コンポーネントは容易に製造でき、AWGの出力スペクトルの頂部が平坦で傾かないように、対称ダブルピーク光学場(symmetric double-peak optical field)を形成することができる。
【0020】
第1導波路は軸対称構造であり、プレ拡散コンポーネントの対称軸は第1導波路の対称軸と整列される。軸対称第1導波路は、容易に製造でき、対称ガウス形スペクトルを形成できる。プレ拡散コンポーネントの対称軸は、第1導波路の対称軸と整列して、光信号の安定伝送を容易にする。実際の実装中、プレ拡散コンポーネントの対称軸は代替的には第1導波路の対称軸と整列されなくてもよい。
【0021】
プレ拡散コンポーネントはマルチモードモード干渉(Multimode interference、MMI)コンポーネントである。MMIコンポーネントは矩形構造であり、サブ波長回折格子は、MMIコンポーネント上、すなわちMMIコンポーネントの矩形表面上に配置される。図8において、プレ拡散コンポーネントはY形構造(Y分岐構造とも呼ばれる)であり、サブ波長回折格子はY形構造の境界で囲まれた領域に配置される。本出願では、プレ拡散コンポーネントは、代替的に、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度を調整することができる別の構造、例えば、ダブルピーク光学場を生成することができる別の構造であってもよい。
【0022】
第2の態様によれば、トランスミッタ機械(transmitter machine)が提供され、光源、変調器、及び第1の態様のいずれか1つのアレイ導波路回折格子を含む。光源、変調器、及びアレイ導波路回折格子は、順に接続される。nはpより大きい。光源は光信号を出力するように構成される。変調器は、多波長光信号を得るために受信した光信号を変調し、その多波長光信号をアレイ導波路回折格子に入力するように構成される。
【0023】
第3の態様によれば、レシーバ機械が提供され、第1の態様のいずれか1つのアレイ導波路回折格子と複数のレシーバとを含む。アレイ導波路回折格子は、複数のレシーバに別々に接続され、ここで、nはpより小さい。レシーバは、アレイ導波路回折格子によって出力された光信号を受信するように構成される。
【0024】
第4の態様によれば、光通信システムが提供され、第2の態様のトランスミッタ機械、第3の態様のレシーバ機械、及びトランスミッタ機械及びレシーバ機械にそれぞれ接続された光ファイバを含む。
【0025】
第5の態様によれば、アレイ導波路回折格子の製造方法が提供され、以下を含む:
【0026】
基板を提供するステップと;基板上に第1導波路、プレ拡散コンポーネント、第1結合器、アレイ導波路、第2結合器、及び第2導波路を製造するステップであって、アレイ導波路はm個の導波路を含み、第1導波路はn個の導波路を含み、第2導波路はp個の導波路を含み、mは1より大きい正の整数であり、nとpは両方とも正の整数であり、nとpは異なる、ステップと;を含み;第1導波路は、第1結合器にn個の光信号を入力するように構成され、第1結合器は、伝送のためにm個の導波路にn個の光信号を結合するように構成され、第2結合器は、m個の導波路で伝送される光信号を伝送のためにp個の導波路に結合するように構成され、第2導波路は、p個の光信号を出力するように構成され;プレ拡散コンポーネントは、第1導波路と第1結合器との間又は第2結合器と第2導波路との間に位置し、プレ拡散コンポーネントの延在方向に沿って配置されたサブ波長回折格子が、プレ拡散コンポーネントが位置する領域に配置され、プレ拡散コンポーネントは、アレイ導波路回折格子の出力スペクトルの頂部の平坦度を調整するように構成される。
【0027】
サブ波長回折格子の回折格子パラメータは、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度又はAWGの等価屈折率に関連するため、回折格子パラメータは、以下の2つのオプションの実装を用いて決定され得る。
【0028】
オプションの実装では、基板上に第1導波路、プレ拡散コンポーネント、第1結合器、アレイ導波路、第2結合器、及び第2導波路を製造する前に、本方法は、さらに:製造されるアレイ導波路回折格子の出力スペクトルの頂部の平坦度に基づいてサブ波長回折格子の回折格子パラメータを決定するステップを含み、回折格子パラメータは、回折格子周期及び/又はデューティサイクルを含む。
【0029】
別のオプションの実装では、基板上に第1導波路、プレ拡散コンポーネント、第1結合器、アレイ導波路、第2結合器、及び第2導波路を製造する前に、本方法は、さらに:製造されるアレイ導波路回折格子の等価屈折率に基づいてサブ波長回折格子の回折格子パラメータを決定することを含み、ここで、回折格子パラメータは、回折格子周期及び/又はデューティサイクルを含む。
【0030】
本出願で提供されるAWGによれば、サブ波長回折格子構造を持つプレ拡散コンポーネントは、第1導波路と第1結合器との間又は第2結合器と第2導波路との間に追加される。プレ拡散コンポーネントは、最終的にフラットトップスペクトルがAWGから出力されるように、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度を調整するように構成される。フラットトップスペクトルの3dB帯域幅は大きいため、光信号の波長シフトによって生じる挿入損失を効果的に低減できる。さらに、AWGは光信号の波長シフトに抵抗できるため、追加の波長制御システムを配置する必要がなく、製造コストが低減され、AWGの構造複雑性が低減される。
【0031】
本出願で提供されるAWGによれば、サブ波長回折格子を持つプレ拡散コンポーネントにより、AWGの出力スペクトル頂部の平坦度が高いため、AWGにおける光信号の波長シフトによる挿入損失を低減することができる。また、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度はAWGの出力スペクトルを用いて調整される。したがって、追加の熱調整コンポーネントを配置する必要がなく、AWGの複雑性が低減され、AWGの電力消費が低減され、温度ドリフトによって生じる挿入損失が回避される。
【0032】
本出願で提供されるAWGによれば、サブ波長回折格子の回折格子パラメータはプレ拡散コンポーネントと協調するように調整されて、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度を調整するため、設計自由度が高く、互換性が高く、異なる基板材料及び光導波路材料に適用可能である。また、サブ波長回折格子を持つプレ拡散コンポーネントが配置されるため、AWGの全体的なコンポーネントサイズがほとんど増大せず、製造コストが低く、AWGを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】従来のAWGにより出力される光信号のスペクトルの概略図である。
【0034】
図2】本出願の一実施形態によるAWGの構造の概略図である。
【0035】
図3】本出願の一実施形態による他のAWGの構造の概略図である。
【0036】
図4】本出願の一実施形態による第1結合器の動作原理の概略図である。
【0037】
図5】本出願の一実施形態による第2結合器の動作原理の概略図である。
【0038】
図6】本出願の一実施形態によるAWGの動作原理の概略図である。
【0039】
図7】本出願の一実施形態によるAWGの構造の一部の概略図である。
【0040】
図8】本出願の一実施形態による他のAWGの構造の一部の概略図である。
【0041】
図9】本出願の一実施形態による他のAWGの動作原理の概略図である。
【0042】
図10】本出願の一実施形態によるAWGの構造の一部の概略図である。
【0043】
図11】本出願の一実施形態によるAWGの構造の一部の概略図である。
【0044】
図12】本出願の一実施形態によるAWGの断面の概略図である。
【0045】
図13】本出願の一実施形態によるAWGの出力スペクトルの概略図である。
【0046】
図14】本出願の一実施形態によるトランスミッタ機械の構造の概略図である。
【0047】
図15】本出願の一実施形態による他のトランスミッタ機械の構造の概略図である。
【0048】
図16】本出願の一実施形態によるレシーバ機械の構造の概略図である。
【0049】
図17】本出願の一実施形態による光通信システムの構造の概略図である。
【0050】
図18】本出願の一実施形態に係るAWGの製造方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本出願の原理と技術的解決策をより明確にするために、以下は添付図面を参照して本出願の実装をさらに詳細に説明する。
【0052】
従来のAWGは、順に接続される第1導波路、第1スター結合器、アレイ導波路、第2スター結合器、及び第2導波路を含む。図1は、従来のAWGによって出力される光信号のスペクトル(出力スペクトルともいう)の概略図である。スペクトルはガウス形スペクトルである。スペクトルの概略図では、横軸はマイクロメートル(μm)又はナノメートル(nm)の単位の波長を表している。縦軸は、デシベル(dB)の単位のパワー透過率(power transmittance)を表している(縦軸は、代わりにミリワット(mw)又はデシベルミリワット(dBm)の単位の光パワーを表してもよい)。パワー透過率は、光信号の出力光パワーの入力光パワーに対する比率である。図1に示すように、ガウス形スペクトルは、主に光信号がアレイ導波路を通過するときに発生するガウス形光学場によって生じる。ガウス形スペクトルの頂部は突出しており、3dB帯域幅は小さい。3dB帯域幅は、通常、ガウス形スペクトルの全帯域幅の約40%にすぎない。光信号が小さい3dB帯域幅でAWGに基づいて伝送されるとき、入力光信号の波長が不安定で小さい波長シフトが発生する場合、光パワーが低下することがあり、大きい挿入損失(略して挿入損失)が発生することがある。図1のスペクトルの概略図を参照のこと。波長シフトとは、光信号の波長が、最大のパワー透過率を持つ位置に対応する波長から、他の位置に対応する波長にシフトすることを意味する。挿入損失を低減する必要がある場合、波長制御システムが、入力光信号の波長を制御するために追加される必要がある。しかしながら、波長制御システムは、AWGの製造コストを増加させ、AWGの構造複雑性を増加させる。
【0053】
図2及び図3は、本出願の実施形態による2つのAWG10の構造の概略図である。AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度が高く、3dB帯域幅に対応する波長範囲が増加され得るため、AWG内の光信号の波長シフトによって生じる挿入損失が低減され、追加の波長制御システムを配置する必要がない。図2及び図3に示すように、AWG10は、第1導波路101、プレ拡散コンポーネント102、第1結合器103、アレイ導波路104、第2結合器105、及び第2導波路106を含む。
【0054】
アレイ導波路104はm個の導波路を含み、第1導波路101はn個の導波路を含み、第2導波路106はp個の導波路を含む。mは1より大きい正の整数であり、nとpは両方とも正の整数であり、nとpは異なる。図2では、m=10、n=1、p=5の例が説明のために使用される。図3では、m=10、n=5、p=1の例が説明のために使用される。m、n、pの値は、本出願の実施形態では限定されない。
【0055】
第1導波路101は、第1結合器103にn個の光信号を入力するように構成され、第2導波路106は、p個の光信号を出力するように構成される。
【0056】
第1結合器103は、n個の光信号を伝送用にm個の導波路に結合するように構成される。図4は、本出願の一実施形態による第1結合器の動作原理の概略図である。図4に示すように、第1結合器103では、n個の光信号の各々が、第1導波路101から入力され、第1結合器103の結合領域(すなわち、ローランド円)に入り、結合領域から分岐し、次いで、同時にm個の導波路に入る。第1結合器103は、n個の光信号のパワーをm個の導波路に均等に分配するように構成される。図4では、n=1及びm=5の例が説明のために使用されているが、n及びmの具体的な値は限定されない。例えば、波長1550nmを持つ光信号が第1結合器103の結合領域に入る場合、その波長を持つ光信号はアレイ導波路104のm個の導波路に同時に入る。
【0057】
アレイ導波路104は、マルチビーム干渉の原理を用いて光信号を伝送するように構成される。アレイ導波路104では、隣接する導波路間に固定長の差(fixed length difference)がある。m個の光信号がアレイ導波路104を通過した後に異なる波面傾斜を形成するために、光路差が導入され、第2結合器105の異なる位置に焦点を合わせる。したがって、m個の光信号は、第2結合器105を介して第2導波路106の異なる導波路によって受信される。
【0058】
第2結合器105は、m個の導波路で伝送される光信号を、伝送用にp個の導波路に結合するように構成される。図5は、本出願の一実施形態による第2結合器の動作原理の概略図である。図5に示すように、第2結合器105では、m個の光信号が固定長の差を持つアレイ導波路104から伝送された後、m個の光信号が、第2結合器105の結合領域(すなわち、ローランド円)で回折され、p位置に焦点を合わせ、第2導波路106のp個の導波路から別個に出力される。第2結合器105の結合領域では、同じ波長を持つ光信号が結合領域の同じ位置に焦点を合わせ、異なる波長をもつ光信号は結合領域の異なる位置に焦点を合わせる。第2結合器105は、デマルチプレクス(demultiplexing(多重分離))機能を実装し得る。具体的には、第2導波路106のp個の導波路に入射する光信号の波長は互いに異なる。図5では、m=5、p=3の例が説明のために使用される。第2結合器105は、波長λ1~λ3を持つ光信号である異なる波長をもつ3つの光信号を出力すると想定されている。ただし、m、p、λの具体的な値は限定されない。
【0059】
第1結合器103及び/又は第2結合器105は、スター結合器/スター結合器(複数)であってもよい。スター結合器は、ローランド円構造を持つ平面導波路(自由伝搬領域とも呼ばれる)である。ローランド円構造は、回折歪みを低減し、光パワーの均一分布を達成するためのものである。
【0060】
図2に示すように、プレ拡散コンポーネント102は、第1導波路101と第1結合器103との間に位置し、プレ拡散コンポーネント102は、第1導波路101と第1結合器103との間の遷移領域(transition area)を形成する。第1導波路101、プレ拡散コンポーネント102、及び第1結合器103の幅は、例えば、徐々に増加する又は徐々に減少する。あるいは、図3に示すように、プレ拡散コンポーネント102は、第2結合器105と第2導波路106との間に位置し、プレ拡散コンポーネント102は、第2結合器105と第2導波路106との間の遷移領域を形成する。第2結合器105、プレ拡散コンポーネント102、及び第2導波路106の幅は、例えば、徐々に増加する又は徐々に減少する。
【0061】
図2又は図3に示すように、プレ拡散コンポーネント102の延在方向(すなわち、長さ方向)r1に沿って配置されたサブ波長回折格子1021が、プレ拡散コンポーネント102が位置する領域に配置され、プレ拡散コンポーネント102の幅の方向r2は、プレ拡散コンポーネント102の延在方向r1に対して垂直である。プレ拡散コンポーネント102とサブ波長回折格子1021は、同一の合成技術(composition technology)を用いて製造することによって得られ得る。例えば、プレ拡散コンポーネントが位置する領域にサブ波長回折格子が配置されていることは、プレ拡散コンポーネントにサブ波長回折格子が配置されている、又は、プレ拡散コンポーネントの境界で囲まれた領域にサブ波長回折格子が配置されていることを意味する。
【0062】
プレ拡散コンポーネント102は、AWG10の出力スペクトルの頂部の平坦度を調整するように構成される。出力スペクトルの頂部の平坦度は、光信号の波長が変化するときのパワー透過率の振幅の変化度である。パワー透過率の振幅の変化が小さいほど平坦度が高いことを示す。プレ拡散コンポーネント102によって実行される調整に基づいて、AWG10はフラットトップスペクトルを出力し得る。フラットトップスペクトルの3dB帯域幅を大幅に改善することができるので、3dB帯域幅に対応する波長範囲は効果的に増加され、入力光信号の不安定性に起因する挿入損失はある程度低減される。
【0063】
本出願の本実施形態で提供されるAWGによれば、サブ波長回折格子構造を持つプレ拡散コンポーネントが第1導波路と第1結合器との間又は第2結合器と第2導波路との間に追加される。プレ拡散コンポーネントは、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度を調整するように構成されるため、フラットトップスペクトルが最終的にAWGから出力される。フラットトップスペクトルの3dB帯域幅は大きいため、光信号の波長シフトによって生じる挿入損失を効果的に低減できる。
【0064】
さらに、AWGは光信号の波長シフトに抵抗できるため、追加の波長制御システムを配置する必要がなく、そのため製造コストが低減され、AWGの構造複雑性が低減される。
【0065】
本出願の実施形態では、プレ拡散コンポーネント102は、ダブルピーク光学場(ダブルハンプ光学場又はハンプ光学場とも呼ばれる)を形成することができる。ダブルピーク光学場は、2つの波形ピーク(突起とも呼ばれる)と、2つの波形ピークの間に位置する1つの波形トラフ(窪みとも呼ばれる)とを有する光学場である。図6は、本出願の一実施形態によるAWG10の動作原理の概略図である。例えば、図6は、図2の光信号に対応する光学場が、光信号が第1導波路101、プレ拡散コンポーネント102、及び第1結合器103を通過する過程における変化過程を示している。第1導波路101から入力される光信号の光学場は、ガウス形光学場である。光信号がプレ拡散コンポーネント102を通過した後、第1結合器103に入力される光信号の光学場は、ダブルピーク光学場に変化する。
【0066】
オプションの方法では、プレ拡散コンポーネント102は、自己マッピング(self-mapping)原理を用いてダブルピーク光学場を形成する。自己マッピングは、自己イメージング(self-imaging)とも呼ばれ、マルチモード導波路の機能である。自己マッピング機能に基づいて、入力光学場の光学場N個複製像(Nは正の整数)が導波路の光信号伝送方向に沿った入力光学場の分布による間隔で周期的に再生される。異なる均等に分割された光学場、例えば、1対2の光学場(すなわち、ダブルピーク光学場)、1対3の光学場(すなわち、トリプルピーク光学場)、又は1対4の光学場(すなわち、4ピークの光学場)が、マルチモード導波路の光信号伝送方向に沿った異なる位置に現れる。本出願の実施形態では、プレ拡散コンポーネント102はマルチモード導波路である。プレ拡散コンポーネント102の長さは、1対2の光学場がプレ拡散コンポーネント102の出力端に現れることを確実にすることができる。図7は、本出願の一実施形態によるAWGの構造の一部の概略図である。図7では、プレ拡散コンポーネント102は、MMIコンポーネントであり、自己イメージング原理を利用してダブルピーク光学場を形成する。
【0067】
別のオプションの方法で、プレ拡散コンポーネント102は、パワー等分割原理(power equal division principle)を利用してダブルピーク光学場を形成する。パワー等分割原理に基づくプレ拡散コンポーネント102は、パワー分割構造である。プレ拡散コンポーネント102は、入力光信号のパワーを2つの等しい部分に分割し、分割後に得られた2つの光信号を2つの分岐導波路を用いて出力する。2つの分岐導波路間の距離が短い場合、2つの分岐上の光信号の光学場は、エッジエネルギーの重ね合わせによりダブルピーク光学場を形成する。図8は、本出願の一実施形態による他のAWGの構造の一部の概略図である。図8では、プレ拡散コンポーネント102は、Y形構造(Y分岐構造ともいう)である。Y形構造は、主導波路a1と、主導波路a1に接続された2つの分岐導波路a2とを含む。Y形構造では、パワー等分割原理を使用してダブルピーク光学場が形成される。
【0068】
本出願の実施形態では、プレ拡散コンポーネント102は、代替的に、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度を調整することができる別の構造、例えば、ダブルピーク光学場を生成することができる別の構造であり得る。これは、本出願の本実施形態では限定されない。
【0069】
例えば、図2及び図3に示すように、プレ拡散コンポーネント102は軸対称構造であり、プレ拡散コンポーネント102の対称軸はプレ拡散コンポーネント102の延在方向r1に平行である。軸対称プレ拡散コンポーネント102は、製造が容易であり、かつ、AWG10の出力スペクトルの頂部が平坦で傾かないように、対称なダブルピーク光学場を形成することができる。
【0070】
本出願の本実施形態では、第1導波路101は、軸対称構造であってもよく、プレ拡散コンポーネント102の対称軸は、第1導波路101の対称軸に整列される。軸対称第1導波路101は、容易に製造され、対称ガウス形スペクトルを形成することができる。プレ拡散コンポーネント102の対称軸は、ダブルピーク光学場の2つの突起(すなわち2つのピーク)のパワーが等しくなるように、第1導波路101の対称軸と整列される。したがって、ダブルピーク光学場の対称性が確保される。実際の実装中、第1導波路101は、代替的に非軸対称構造であってもよい。
【0071】
例えば、図9は、プレ拡散コンポーネント102によって出力され、アレイ導波路104によって出力される光信号及びガウス形光学場に対応するダブルピーク光学場の重ね合わせの概略図である。ダブルピーク光学場の窪みとガウス形光学場の突出は互いに打ち消すことができるため、AWG10から最終的に出力される光信号の光学場の頂部の平坦度は高くなる。この光学場は、フラットトップ光学場と呼ばれ、この光学場に対応する出力スペクトルがフラットトップスペクトルである。図9では、各光学場の概略図の横軸は、光信号が通過する導波路の幅であり、単位はマイクロメートルである。縦軸は光信号に対応する磁場強度であり、単位はa.u.であり、a.u.は相対値の単位を表し、任意の設定単位であり得る。図9は、各光学場の概略図の2つの座標軸を示していない。
【0072】
回折格子(グレーティング)は、大量の平行スリット(又はスケール)を含む光学部品である。回折格子の回折格子パラメータは、回折格子周期及び/又はデューティサイクルを含む。回折格子周期は、回折格子定数とも呼ばれ、回折格子の2つの隣接するスリット間の距離であり、2つのスリットの同じ側部の間の距離で表され得る。回折格子周期は、回折格子の1つのスリットの幅と、スリットと別のスリットとの間のギャップの幅の合計に等しくなり得る。デューティサイクルは、回折格子周期に対する回折格子の隣接するスリット間のギャップの幅の比である。図7に示すように、回折格子周期aが2つのスリットの右側部の間の距離であり、bがスリット間のギャップの幅(すなわち、2つのスリット間の領域の幅)である例が図7では識別のために使用されている。
【0073】
サブ波長回折格子は、回折格子周期が動作波長より小さい回折格子である。例えば、本出願の本実施形態で提供されるサブ波長回折格子の回折格子周期の値の範囲は[0.1μm、1μm]であり、デューティサイクルの値の範囲は(0、1)である。AWGでは、動作波長はAWGによってサポートされる光信号の波長である。例えば、AWGの出力端が1つの光チャネルを含む場合、動作波長は光チャネルに対応する光信号の波長である。AWGの出力端が複数の光チャネルを含む場合、AWGを通過する光信号は複数の光チャネルに対応する複数の光信号である。この場合、動作波長は、複数の光信号の指定された波長である。例えば、指定された波長は、中心波長、任意の波長、最小波長、最大波長、又は平均波長である。
【0074】
異なるタイプのプレ拡散コンポーネント102について、サブ波長回折格子は、プレ拡散コンポーネント102の異なる位置に配置され得る。例えば、図7では、プレ拡散コンポーネント102はMMIコンポーネントであり、MMIコンポーネントは矩形構造である。サブ波長回折格子は、MMIコンポーネント上、すなわち、MMIコンポーネントの矩形表面上に配置される。図8では、プレ拡散コンポーネント102は、Y形構造(Y分岐構造ともいう)であり、サブ波長回折格子は、Y形構造の境界で囲まれた領域、すなわち、2つの分岐導波路a2の間に配置される。
【0075】
本出願の本実施形態では、プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子1021は、複数のタイプを有し得る。配置方向に基づいて、プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子1021は、以下の第1のオプションの例及び第2のオプションの例で提供される2つのタイプに分類され得る。回折格子パラメータに基づいて、プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子1021は、以下の第3のオプションの例及び第4のオプションの例で提供される2つのタイプに分類され得る。
【0076】
第1のオプションの例では、プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子は、1次元サブ波長回折格子である。言い換えれば、サブ波長回折格子は1つの配置方向のみを有する。プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子の構造が図2図3図7、又は図8に示される。
【0077】
第2のオプションの例では、プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子は、2次元サブ波長回折格子(3Dサブ波長回折格子とも呼ばれる)である。図10は、本出願の一実施形態によるAWGの構造の一部の概略図である。AWGでは、プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子は2次元サブ波長回折格子であり、言い換えれば、プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子は2つの配置方向を有する。この場合、図10に示すように、プレ拡散コンポーネント102の延在方向r1に沿って配置されたサブ波長回折格子に加えて、別の方向r2に沿って配置されたサブ波長回折格子がプレ拡散コンポーネント102上にさらに配置される。別の方向r2は、プレ拡散コンポーネント102の延在方向r1に垂直である。このように、プレ拡散コンポーネント102の延在方向に沿って配置されたサブ波長回折格子と、別の方向に沿って配置されたサブ波長回折格子は、グリッド回折格子構造を形成する。オプションの実装では、プレ拡散コンポーネント102の延在方向r1に沿って配置されたサブ波長回折格子のスリットと、別の方向r2に沿って配置されたサブ波長回折格子のスリットとが、プレ拡散コンポーネントの表面上に配置され、グリッド回折格子内の各グリッドは、プレ拡散コンポーネントの表面に対して突出したブロック形状ボディである。
【0078】
第3のオプションの実施形態では、サブ波長回折格子は均一回折格子である。均一回折格子は、回折格子周期とデューティサイクルが両方とも固定値である回折格子である。均一回折格子の構造を図2,図3,図7,図8,又は図10に示す。図7に示すように、回折格子のデューティサイクルは、回折格子周期aに対するスリット間ギャップの幅bの比、すなわちb/aである。
【0079】
第4のオプションの例では、サブ波長回折格子は不均一回折格子である。不均一回折格子は、回折格子周期とデューティサイクルが固定値でない回折格子である。言い換えれば、不均一回折格子は、少なくとも2つの回折格子周期を有する回折格子及び/又は少なくとも2つのデューティサイクルを有する回折格子である。図11は、本出願の一実施形態によるAWGの構造の一部の概略図である。AWGでは、プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子は不均一回折格子である。例えば、不均一回折格子は勾配回折格子であり得る。勾配回折格子は、回折格子周期が徐々に増加又は減少する回折格子である。
【0080】
実際の実装中、第1のオプションの例から第4のオプションの例までが状況に基づいて組み合わされ得る。例えば、プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子は、1次元サブ波長回折格子であり、均一回折格子である。あるいは、プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子は、2次元サブ波長回折格子であり、均一回折格子である。あるいは、プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子は、1次元サブ波長回折格子であり、不均一回折格子である。あるいは、プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子は、2次元サブ波長回折格子であり、不均一回折格子である。あるいは、プレ拡散コンポーネント102上のサブ波長回折格子は、2次元サブ波長回折格子であり、サブ波長回折格子の1つのグループは、均一回折格子であり、サブ波長回折格子の他のグループは、不均一回折格子である。
【0081】
上述したすべての実施形態において、サブ波長回折格子のスリットが直線に沿って分布するスリットである例が説明のために使用されていることが留意されるべきである。実際の実装中、サブ波長回折格子のスリットは、他の形状のスリット、例えば湾曲スリットであってもよい。サブ波長回折格子のスリットの長さは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。プレ拡散コンポーネント102の出力スペクトルの頂部の平坦度を調整する機能を実装することができるサブ波長回折格子は、本出願の実施形態の保護範囲内にあるべきである。
【0082】
本出願の本実施形態では、ダブルピーク光学場の2つのピークの位置は、プレ拡散コンポーネント102の幅(図2図3、又は図10に示すように、幅方向はr2である)に基づいて決定される。プレ拡散コンポーネント102の等価屈折率は、ダブルピーク光学場のくぼみの深さに影響する。通常、プレ拡散コンポーネント102の等価屈折率は、ダブルピーク光学場の深さに負に相関する。言い換えれば、プレ拡散コンポーネント102のより小さい等価屈折率は、ダブルピーク光学場のより深いくぼみを示す。プレ拡散コンポーネントの等価屈折率は、プレ拡散コンポーネントが位置する領域の等価屈折率であることが留意されるべきである。例えば、プレ拡散コンポーネントがMMIである場合、プレ拡散コンポーネントが位置する領域は、MMIの境界で囲まれた領域である。プレ拡散コンポーネントがY形構造である場合、プレ拡散コンポーネントが位置する領域は、Y形構造の境界で囲まれた領域である。プレ拡散コンポーネント102がサブ波長回折格子を持たない場合、例えば、プレ拡散コンポーネントがサブ波長回折格子を持たないMMIコンポーネントである場合、MMIコンポーネントの幅及び等価屈折が固定されているため、MMIコンポーネントは、ダブル自己マッピング効果により発生するダブルピーク光学場の振幅分布を正確に調整及び制御することができない。MMIコンポーネントによって出力されるダブルピーク光学場では、2つの像点(すなわち2つのピーク)間の光学場が重なり合って全体として上昇する。その結果、光学場の中間領域(すなわち、くぼみ領域)のくぼみ度(depression degree)が不十分であり、くぼみの深さはAWGの出力スペクトルの平坦度要件を満たさない。したがって、サブ波長回折格子なしのプレ拡散コンポーネント102の使用は、AWG10の出力スペクトルの頂部を目標平坦度に到達させることができない。サブ波長回折格子は、AWG10の出力スペクトルの形状に影響を与えるために、プレ拡散コンポーネントの等価屈折率に影響を与えて(例えば、プレ拡散コンポーネントの等価屈折率を下げて)、ダブルピーク光学場のくぼみの深さを調整し得る。サブ波長回折格子を配置することにより、プレ拡散コンポーネント102は、プレ拡散コンポーネントの等価屈折率の調整を補助され、プレ拡散コンポーネント102の幅を有することを確実にすることを前提として、AWG10の出力スペクトルの頂部が目標平坦度に達するように、AWG10の出力スペクトルの頂部の平坦度を調整し得る。
【0083】
このように、AWG10を製造する前に、まずサブ波長回折格子の回折格子パラメータが決定され得、決定された回折格子パラメータに基づいてAWG10が製造される。このように、AWG10の出力スペクトルの頂部は平坦である。回折格子パラメータは、回折格子周期及び/又はデューティサイクルを含む。実装では、AWG10の出力スペクトルの頂部の平坦度は、サブ波長回折格子の回折格子パラメータに関連する。サブ波長回折格子の回折格子パラメータは、製造されるAWG10の出力スペクトルの頂部の平坦度に基づいて決定され得る。別の実施形態では、AWG10の等価屈折率(又はプレ拡散コンポーネントの等価屈折率)は、サブ波長回折格子の回折格子パラメータに関連し、AWGの等価屈折率はAWGの出力スペクトルの頂部の平坦度に関連する。回折格子周期が変化しない場合、デューティサイクルが大きいほどAWGの等価屈折率が大きいことを示す。デューティサイクルが変化しない場合、回折格子周期が大きいほどAWGの等価屈折率が大きいことを示す。この場合、サブ波長回折格子の回折格子パラメータは、製造されるAWG10の等価屈折率に基づいて決定され得る。2つの実装の具体的なプロセスについては、後続の方法の実施形態のプロセスを参照のこと。
【0084】
本出願の本実施形態で提供されるAWG10は、さらに基板(基板プレートとも呼ばれる)を含み得、AWGパターン(パターン)が基板上に配置される。AWGパターンは、第1導波路101、プレ拡散コンポーネント102、第1結合器103、アレイ導波路104、第2結合器105、及び第2導波路106を含む。異なる製造シナリオでは、基板の材料が異なってもよく、AWGパターンの材料も異なってもよい。例えば、基板の材料は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、III-V族半導体化合物、二酸化ケイ素(SiO2)、シリコン(Si)、ポリマー(Polymer)、又はガラスであり得る。AWGパターンを製造するための光導波路材料は、シリコン(Si)、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)、又は二酸化シリコンであり得る。
【0085】
オプションで、AWG10はさらに別の材料層を含み得る。例えば、AWG10はさらに、AWGパターンであって基板に近い側に位置する第1保護層、及び/又はAWGパターンであって基板に近い側に位置する第2保護層を含み得る。第1保護層及び第2保護層の両方は、AWGパターンを保護するように構成されて、AWGパターンの寿命を改善する。例えば、第1保護層及び第2保護層の両方の材料は、二酸化ケイ素である。図12は、本出願の一実施形態によるAWG10の断面の概略図である。AWG10は、基板107と、第1保護層108と、AWGパターンMと、第2保護層109とを含む。AWGパターンMは、前述の実施形態の、第1導波路101と、プレ拡散コンポーネント102と、第1結合器103と、アレイ導波路104と、第2結合器105と、第2導波路106とを含む。サブ波長回折格子1021は、プレ拡散コンポーネント102上に配置される。
【0086】
以下、理解を容易にするため、実際のAWGの構造が説明のために例として使用される。AWGでは、アレイ導波路は16個の導波路(16チャネルとも呼ばれる)を含み、隣接する導波路間の長さ差は100(GHz)、言い換えれば、チャネル間隔は100ギガヘルツ(GHz)であることが想定されている。チャネル間隔は、隣接する導波路の出力スペクトルの波形ピークに対応する波長の周波数間隔に対する比である。AWGパターンの材料は窒化シリコンであり、窒化シリコン層の厚さは80ナノメートル(nm)である。加えて、AWGは、AWGパターンの両側に配置された第1保護層及び第2保護層をさらに含む。第1保護層及び第2保護層の両方の材料は二酸化ケイ素である。第1導波路、第2導波路、及びアレイ導波路のそれぞれの幅は3.5マイクロメートルである。第1導波路のn個の導波路と、n個の導波路と第1結合器との間の接合部との間の間隔は8マイクロメートルであり、第2導波路のp個の導波路と、p個の導波路と第2結合器との間の接合部との間の間隔は8マイクロメートルである。アレイ導波路のm個の導波路と、m個の導波路と第1結合器との間の接合部及びm個の導波路と第2結合器との間の接合部の各々との間の間隔は10μmである。m=145、n=1、p=16である。第1結合器と第2結合器は共にローランド円構造を含み、ローランド円構造の直径は1.823ミリメートルである。1次元サブ波長回折格子を持つプレ拡散コンポーネントが第1導波路と第1結合器との間に配置され、プレ拡散コンポーネントはMMIである。
【0087】
図13は、本出願の一実施形態によるAWGの出力スペクトルの概略図である。AWGの出力スペクトルは、第2導波路に含まれる16個の導波路(出力チャネルとも呼ばれる)に対応するスペクトルを含む。出力スペクトルの概略図では、横軸はμm単位の波長を表し、縦軸はdB単位のパワー透過率を表す。サブ波長回折格子の導入により、ダブルピーク光学場の2つの突起の重ね合わせが効果的にブロックされ、くぼみ度が大きくなる。図13に示すように、得られた出力スペクトルでは、第2導波路における各導波路のスペクトル平坦度が良好である。例えば、1つの光信号では、0.5dB帯域幅(パワースペクトル密度のピーク点が0.5dB減少したときに決定される周波数範囲)は46GHzであり、1dB帯域幅は53GHzである。1dB帯域幅(パワースペクトル密度のピーク点が1dB減少したときに決定される周波数範囲)はチャネル間隔の53%に達し、3dB帯域幅はチャネル間隔の53%より大きいことは明らかである。この場合、得られたフラットトップスペクトルの3dB帯域幅を大幅に改善でき、入力光信号の不安定性に起因する挿入損失を効果的に低減できる。
【0088】
本出願の本実施形態で提供されるAWGによれば、サブ波長回折格子を持つプレ拡散コンポーネントにより、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度が高いため、AWGにおける光信号の波長シフトにより生じる挿入損失を低減することができる。また、製造誤差によるAWGコンポーネントの性能への影響をさらに低減でき、AWGコンポーネントの安定性を向上させることができる。
【0089】
関連技術では、AWGがさらに提案される。AWGは、第1導波路の入力端に配置された熱調整コンポーネント(thermal tuning component)を含み、熱調整コンポーネントは、入力光信号の波長シフトを低減するために第1導波路を加熱する。しかしながら、AWGの複雑さが増加し、AWGの電力消費は増加する。加えて、温度ドリフトも挿入損失をもたらす。本出願の本実施形態で提供されるAWGによれば、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度はAWGの出力スペクトルを用いて調整される。したがって、追加の熱調整コンポーネントが配置される必要がなく、AWGの複雑性が低減され、AWGの電力消費が低減され、温度ドリフトによって生じる挿入損失が回避される。
【0090】
また、本出願の本実施の形態で提供されるAWGによれば、サブ波長回折格子の回折格子パラメータがプレ拡散コンポーネントと協調するように調整され、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度を調整するため、設計の自由度が高く、互換性が高く、異なる基板材料及び光導波路材料に適用可能である。さらに、サブ波長回折格子を持つプレ拡散コンポーネントが配置されるため、AWGの全体的なコンポーネントサイズがほとんど増大せず、製造コストが低く、AWGを小型化することができる。
【0091】
図14及び図15は、それぞれ、本出願の実施形態による2つのトランスミッタ機械(光トランスミッタ機械とも呼ばれる)20の構造の概略図である。トランスミッタ機械20は、光源201、変調器202、及びAWG203を含む。AWG203は、本出願の実施形態で提供される任意のAWG10であり得る。
【0092】
図14及び図15では、光源201、変調器202、及びAWG203は、順に接続される。AWG203では、第1導波路に含まれる導波路の量nは、第2導波路に含まれる導波路の量pよりも大きい。例えば、p=1である。このように、AWG203は、複数の光信号を1つの光信号に多重化する。
【0093】
図14及び図15では、光源201は光信号を出力するように構成され、変調器202は、多波長光信号を得るために受信した光信号を変調し、その多波長光信号をAWG203に入力するように構成される。
【0094】
オプションの実装では、図14に示すように、トランスミッタ機械20は、1つの光源201及び1つ以上の変調器202を含む。固定波長を備え、光源201によって出力される光信号は、多波長の光信号を得るために、1つ以上の変調器202によって変調される。他のオプションの実施形態では、図15に示すように、トランスミッタ機械20は、複数の光源201及び複数の変調器202を含み、複数の光源201は、複数の変調器202に一対一で接続される。異なる光源201は異なる波長を有し、固定波長であり、各光源201から出力される光信号は、対応する変調器202によって変調される。複数の変調器202は、複数の波長を持つ光信号を出力し、AWG203に複数の波長を持つ光信号を入力する。
【0095】
本出願の本実施形態で提供されるトランスミッタ機械によれば、サブ波長回折格子構造を有するプレ拡散コンポーネントは、AWGの第1導波路と第1結合器との間又は第2結合器と第2導波路との間に追加される。プレ拡散コンポーネントは、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度を調整するように構成されるため、フラットトップスペクトルが最終的にAWGから出力される。フラットトップスペクトルの3dB帯域幅は大きいため、光信号の波長シフトによって生じる挿入損失を効果的に低減することができ、トランスミッタ機械の挿入損失がさらに低減される。
【0096】
また、AWGの挿入損失が小さいため、追加の波長制御システムを配置する必要がなく、その結果、製造コストを低減し、トランスミッタ機械のサイズが減少する。
【0097】
図16は、本出願の一実施形態によるレシーバ機械30の構造の概略図である。レシーバ機械30は、AWG301と複数のレシーバ302とを含む。AWG301は、本出願の実施形態で提供される任意のAWG10であり得る。
【0098】
図16において、AWG301は、複数のレシーバ302に別々に接続され、レシーバ302は、AWG301により出力された光信号を受信するように構成される。AWG301では、第1導波路に含まれる導波路の量nは、第2導波路に含まれる導波路の量pよりも少ない。例えば、n=1である。このように、AWG301は、1つの光信号を複数の光信号に分離する。例えば、AWG301は複数の光信号を出力し、複数の光信号はそれぞれ異なるレシーバ302に入力される。
【0099】
本出願の本実施形態で提供されるレシーバ機械によれば、サブ波長回折格子構造を持つプレ拡散コンポーネントがAWGの第1導波路と第1結合器との間、又は第2結合器と第2導波路との間に追加される。プレ拡散コンポーネントは、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度を調整するように構成されるため、フラットトップスペクトルが最終的にAWGから出力される。フラットトップスペクトルの3dB帯域幅は大きいため、光信号の波長シフトによって生じる挿入損失を効果的に低減でき、レシーバ機械の挿入損失はさらに低減される。
【0100】
また、AWGの挿入損失が小さいため、追加の波長制御システムを配置する必要がなく、その結果製造コストが低減され、レシーバ機械のサイズが低減される。
【0101】
図17は、本出願の一実施形態による光通信システム40の構造の概略図である。光通信システムは、トランスミッタ機械401、レシーバ機械402、及びトランスミッタ機械401及びレシーバ機械402にそれぞれ接続された光ファイバ403を含む。トランスミッタ機械401は前述の実施形態におけるトランスミッタ機械20であり得、レシーバ機械402は前述の実施形態におけるレシーバ機械30であり得る。
【0102】
図18は本出願の実施形態によるAWGの製造方法の概略フローチャートである。本発明の製造方法は、以下のステップを含む。
【0103】
S501:サブ波長回折格子の回折格子パラメータを決定し、回折格子パラメータは、回折格子周期及び/又はデューティサイクルを含む。
【0104】
上述したように、サブ波長回折格子の回折格子パラメータは、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度又はAWGの等価屈折率に関連するので、回折格子パラメータは、以下の2つのオプションの実装を用いて決定され得る。
【0105】
第1のオプションの実装では、サブ波長回折格子の回折格子パラメータは、製造されるAWGの出力スペクトルの頂部の平坦度に基づいて決定される。
【0106】
製造によって得られるAWGの出力スペクトルの頂部の平坦度が高いほど、光信号の波長シフトによりAWGによって生成される挿入損失が小さいことを示す。したがって、AWGを製造する前に、サブ波長回折格子の回折格子パラメータはAWGの出力スペクトルの頂部の達成されるべき平坦度に基づいて決定され得る。例えば、スタッフは、シミュレーションソフトウェアを使用して回折格子パラメータを継続的に調整し、シミュレーションを通じて得られAWGの出力スペクトルのものである頂部の平坦度の変化を観察し得る。シミュレーションを通じて得られ、AWGの出力スペクトルのものである頂部がほぼ水平である場合、対応する回折格子パラメータは、AWGを製造するために必要な回折格子パラメータとして決定される。サブ波長回折格子の回折格子周期及び/又はデューティサイクルが調整され、ダブルピーク光学場のくぼみ度をさらに正確に制御され、その結果、ダブルピーク光学場がAWGスペクトル平坦度設計で要求される入力場分布を満たす。したがって、AWGのスペクトルの要求される平坦度が達成される。
【0107】
上述のように、回折格子周期が変化しない場合、デューティサイクルが大きいほどAWGの等価屈折率が大きいことを示す。デューティサイクルが変化しない場合、回折格子周期が大きいほどAWGの等価屈折率が大きいことを示す。プレ拡散コンポーネントの等価屈折率はダブルピーク光学場のくぼみ度と負の相関がある。対応して、他のパラメータが変化しない場合、AWGの等価屈折率はダブルピーク光学場のくぼみ度と負の相関がある。この場合、例えば、AWGを製造する前に、スタッフは、回折格子周期を変化しないようにするためにシミュレーションソフトウェアを使用し、サブ波長回折格子のデューティサイクルを徐々に減少させ得る。例えば、スタッフは、1(又は0.99)のデューティサイクルから始めて、徐々にデューティサイクルを減らし得る。このようにして、AWGの等価屈折率は徐々に減少し(プレ拡散コンポーネントの等価屈折率も徐々に減少する)、ダブルピーク光学場のくぼみ度は徐々に増加する。スタッフは、AWGの出力スペクトルの平坦度が徐々に増加することを観察し得る。平坦度が最大値に達した後、サブ波長回折格子のデューティサイクルが減少し続ける場合、AWGの等価屈折率は減少し続け(プレ拡散コンポーネントの等価屈折率も徐々に減少する)、ダブルピーク光学場のくぼみ度は増加し続ける。スタッフは、AWGの出力スペクトルの平坦度が徐々に減少することを観察し得る。したがって、スタッフは、サブ波長回折格子のデューティサイクルと出力スペクトルの平坦度との間の対応を記録し、AWGの出力スペクトルの平坦度が最初に増加し、その後減少することを発見した後、平坦度のターニングポイント(具体的には、平坦度が最初に増加し、その後減少する変曲点)における平坦度を目標平坦度として見出し、目標平坦度に基づいて前述の対応を照会して目標デューティサイクルを決定し得る。
【0108】
別の例について、AWGを製造する前に、スタッフは、代替的に、デューティサイクルを変化しないようにし、回折格子周期を調整するためにシミュレーションソフトウェアを使用し得る。あるいは、スタッフは、デューティサイクルと回折格子周期を同時に調整する。回折格子パラメータを決定するプロセスについては、前述の目標デューティサイクルの決定プロセスを参照されたい。詳細については、本出願の本実施形態では説明しない。
【0109】
第2のオプションの実装では、サブ波長回折格子の回折格子パラメータは、製造されるAWGの等価屈折率に基づいて決定される。
【0110】
製造によって得られるAWGの出力スペクトルの頂部の高い平坦度は、光信号の波長シフトによるAWGによって生成される挿入損失が小さいことを示す。AWGの等価屈折率は、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度に基づいて変化する。したがって、AWGを製造する前に、AWGの等価屈折率は、AWGの出力スペクトルの頂部の達成されるべき平坦度に基づいて決定され得る。次いで、サブ波長回折格子の回折格子パラメータは、AWGの等価屈折率に基づいて決定される。例えば、スタッフは、出力スペクトルの頂部の目標平坦度(例えば、目標平坦度は、第1のオプション実装で提供される方法に基づいて決定され得る)を決定し、出力スペクトルの頂部の目標平坦度をAWGの目標等価屈折率に変換し得る。次に、シミュレーションソフトウェアを使用して回折格子パラメータが連続的に調整され、シミュレーションを通じて得られたAWGのものである等価屈折率の変化を観察する。シミュレーションによって得られAWGのものである等価屈折率が目標等価屈折率と等しいかそれに近い場合、対応する回折格子パラメータがAWGの製造に必要な回折格子パラメータとして決定される。プレ拡散コンポーネントの等価屈折率はAWGの等価屈折率にも影響するため、出力スペクトルの頂部の平坦度は代替的にプレ拡散コンポーネントの目標の等価屈折率に変換され得る。次に、シミュレーションソフトウェアを使用して回折格子パラメータが連続的に調整されて、シミュレーションを通じて得られプレ拡散コンポーネントのものである等価屈折率の変化を観察する。シミュレーションを通じて得られたプレ拡散コンポーネントのものである等価屈折率が目標等価屈折率と等しいかそれに近い場合、対応する回折格子パラメータがAWGの製造に必要な回折格子パラメータとして決定される。
【0111】
プレ拡散コンポーネントの等価屈折率は出力スペクトルの頂部の平坦度に影響し、プレ拡散コンポーネントの等価屈折率は材料及び厚さによっても影響されるため、AWGの製造前に、スタッフがプレ拡散コンポーネントの材料及び厚さを調整することによって目標材料及び目標厚さを決定して、製造プロセスで目標材料及び目標厚さを使用することによってAWGを製造し得る。
【0112】
S502:基板を提供する。
【0113】
例えば、基板の材料は、ニオブ酸リチウム、III-V族半導体化合物、シリコン、窒化シリコン、二酸化シリコン、シリコン、ポリマー、又はガラスであり得る。
【0114】
S503:基板上に、第1導波路、プレ拡散コンポーネント、第1結合器、アレイ導波路、第2結合器、及び第2導波路を製造する。
【0115】
アレイ導波路はm個の導波路を含み、第1導波路はn個の導波路を含み、第2導波路はp個の導波路を含む。mは1より大きい正の整数であり、nとpは両方とも正の整数であり、nとpは異なる。第1導波路は、第1結合器にn個の光信号を入力するように構成される。第1結合器は、伝送のためにm個の導波路にn個の光信号を結合するように構成される。第2結合器は、伝送のためにp個の導波路に、m個の導波路で伝送される光信号を結合するように構成される。第2導波路は、p個の光信号を出力するように構成される。プレ拡散コンポーネントは、第1導波路と第1結合器との間、又は第2結合器と第2導波路との間に位置する。プレ拡散コンポーネントの延在方向に沿って配置されたサブ波長回折格子が、プレ拡散コンポーネントが位置する領域に配置され、プレ拡散コンポーネントは、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度を調整するように構成される。
【0116】
第1導波路、プレ拡散コンポーネント、第1結合器、アレイ導波路、第2結合器、及び第2導波路は、1回又は複数回の合成技術(フォトエッチング技術とも呼ばれる)を使用して製造され得る。例えば、製造プロセスは:デポジション(deposition)、コーティング、又はスパッタリング技術を使用して基板プレート上に光導波路材料層を形成すること;及び、AWGパターンを得るために光導波路材料層上に1回合成技術を行うこと;を含む。AWGパターンは、第1導波路、プレ拡散コンポーネント、第1結合器、アレイ導波路、第2結合器、及び第2導波路を含む。オプションで、前述のAWGパターンはさらに別の構造を含んでもよい。1回合成技術は、フォトレジスト塗装、露光、現像、エッチング、及びフォトレジストリフトオフを含む。例えば、合成技術では、エッチングプロセスは、ドライエッチングプロセスを使用することによって完了され得る。
【0117】
例えば、光導波路材料は、シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、又は二酸化シリコンであり得る。
【0118】
実際の実装中に、別の材料層が、代替的に、実際の状況に基づいて、基板上に製造され得る。例えば、AWGパターンが基板上に製造される前に、第1保護層が、代替的に、デポジション、コーティング、又はスパッタリング技術を使用して形成され得る。オプションで、AWGパターンが基板上に製造された後に、第2保護層が、代替的に、デポジション、コーティング、又はスパッタリング技術を使用して形成され得る。第1保護層及び第2保護層の両方は、AWGパターンを保護するように構成され、AWGパターンの寿命を改善する。例えば、第1保護層及び第2保護層の両方の材料は、二酸化ケイ素である。
【0119】
本出願の本実施形態で提供されるAWGの製造方法によれば、サブ波長回折格子構造を持つプレ拡散コンポーネントは、AWGの第1導波路と第1結合器との間又は第2結合器と第2導波路との間に追加される。プレ拡散コンポーネントは、AWGの出力スペクトルの頂部の平坦度を調整するように構成され、その結果、フラットトップスペクトルが最終的にAWGから出力される。フラットトップスペクトルの3dB帯域幅は大きいため、光信号の波長シフトによって生じる挿入損失を効果的に低減できる。
【0120】
AWGの前述の製造方法は、従来のAWG製造技術と完全に互換性がある。AWGパターン内のサブ波長回折格子構造を持つプレ拡散コンポーネントと別のデバイスは、1回又は複数回合成技術を使用して同期的に製造され得、追加の技術ステップを追加する必要はない。製造プロセスは単純であり、実装は容易であり、製造コストは低い。
【0121】
本出願において、「第1」及び「第2」という用語は、単に説明のために使用されているにすぎず、相対的重要性の表示又は含意として理解することはできない。「複数」という用語は、特に明示的に限定されない限り、2以上を意味する。「AがBを指す」とは、AがBと同じであること、又はAがBの単純な変形であることを意味する。
【0122】
添付の図面では、図をわかりやすくするために、層及び領域のサイズが誇張されている可能性があることが留意されるべきである。さらに、要素又は層が別の要素又は層の「上」と呼ばれる場合、要素又は層は別の要素の上に直接存在してもよいし、中間層が存在してもよいことが理解され得る。さらに、要素又は層が別の要素又は層の「下」と呼ばれる場合、要素又は層は別の要素の直下に存在してもよいし、複数の中間層又は要素が存在してもよいことが理解され得る。さらに、層又は要素が2つの層又は2つの要素の「間」と呼ばれる場合、要素又は層は、2つの層又は2つの要素の間の一意の層であってもよく、又は1つ以上の中間層又は要素が存在してもよいことがさらに理解され得る。明細書全体にわたる類似の参照マークは、類似の要素を示す。
【0123】
上述した実施形態で提供されるAWG及びその製造方法、トランシーバ、並びに光通信システムは、同一の概念に属する。その具体的な実装プロセスについては、装置の実施形態を参照し、ここでは詳細を説明しない。
【0124】
以上の説明は、本出願のオプションの実施形態にすぎないが、本出願を限定することを意図するものではない。本出願の精神及び原理から逸脱することなくなされた修正、均等の置換、又は改良は、本出願の保護範囲内に入るべきものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16
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図18