(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】電磁リリーフバルブシステム及び電磁リリーフバルブの制御方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240605BHJP
【FI】
F16K31/06 310C
F16K31/06 330
(21)【出願番号】P 2024507377
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2022012451
(87)【国際公開番号】W WO2023175869
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2024-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達夫
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-165055(JP,A)
【文献】特開平10-198431(JP,A)
【文献】特開2017-101695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/00-17/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁リリーフバルブシステムであって、
弁体に作用する付勢部材の付勢力を変化させて前記弁体が開弁する設定圧を調整するソレノイド部を有する電磁リリーフバルブと、
前記電磁リリーフバルブを制御する制御部と、を備え、
前記ソレノイド部は、
電流の供給によって磁界を形成するコイルと、
ハウジングに摺動自在に収容され、前記コイルが形成する磁界により前記付勢部材の前記付勢力に抗する推力が付与されるプランジャと、を有し、
前記制御部は、
前記ソレノイド部の前記コイルに電流を供給する駆動制御部と、
前記コイルに供給される前記電流に第一ディザ信号と、前記第一ディザ信号とは振幅または周波数が異なる第二ディザ信号と、のいずれかを付与し前記プランジャにディザを発生させるディザ発生部と、を有し、
前記ディザ発生部は、前記駆動制御部から前記コイルに供給される前記電流を変化させる前記設定圧の調整中には前記駆動制御部から前記コイルに供給される前記電流に前記第一ディザ信号を付与し、前記設定圧の調整が行われない状態では前記駆動制御部から前記コイルに供給される前記電流に前記第二ディザ信号を付与する電磁リリーフバルブシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁リリーフバルブシステムであって、
前記第二ディザ信号は、前記第一ディザ信号よりも振幅が小さい電磁リリーフバルブシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁リリーフバルブシステムであって、
前記第二ディザ信号は、前記第一ディザ信号よりも周波数が大きい電磁リリーフバルブシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁リリーフバルブシステムであって、
前記制御部は、前記設定圧の調整の開始及び終了を検知する検知部をさらに有する電磁リリーフバルブシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の電磁リリーフバルブシステムであって、
前記検知部は、前記設定圧の調整の開始後に所定時間が経過すると、前記設定圧の調整の終了を検知する電磁リリーフバルブシステム。
【請求項6】
弁体に作用する付勢部材の付勢力を変化させて前記弁体が開弁する設定圧を調整するソレノイド部を有する電磁リリーフバルブの制御方法であって、
前記ソレノイド部は、電流の供給によって磁界を形成するコイルと、ハウジングに摺動自在に収容され、前記コイルが形成する磁界により前記付勢部材の前記付勢力に抗する推力が付与されるプランジャと、を有し、
前記電磁リリーフバルブの制御方法は、
操作者により入力された所望の設定圧に基づいて前記コイルに供給する電流値である指令信号を生成する指令信号生成ステップと、
前記コイルに供給される前記電流を変化させる前記設定圧の調整中には第一ディザ信号と前記指令信号に基づいた電流値で前記コイルに電流を供給し、前記設定圧の調整が行われない状態では前記第一ディザ信号とは振幅または周波数が異なる第二ディザ信号と前記指令信号に基づいた電流値で前記コイルに電流を供給する電流供給ステップと、を備える電磁リリーフバルブの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁リリーフバルブシステム及び電磁リリーフバルブの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JPH2-256984Aには、電気信号の入力により発生する磁力でスプリングによるポペットの弁口閉鎖力を減じて設定圧力を低下させる設定圧力調整用ソレノイドを備える電磁圧力制御弁が開示されている。設定圧力調整用ソレノイドは、電気信号の入力により磁力を発生するコイルを有する固定子と、固定子にロッドを介して軸方向に摺動自在に支持されたプランジャと、を有し、ロッドがポペットに当接する。ポペットに作用する作動流体の圧力が設定圧を超えると、ポペットが開弁し作動流体がリリーフされる。
【発明の概要】
【0003】
JPH2-256984Aに記載のような電磁圧力制御弁では、プランジャの摺動面に作用する静摩擦力等の影響により、電磁圧力制御弁の設定圧の調整時に実際にセットされるセット圧にばらつきが生じることが考えられる。これに対して、JP2001-173556Aに記載のように、コイルに供給する電流にディザを付与し、プランジャを振動させ、プランジャの摺動面に動摩擦力が作用する状態にすることも考えられる。しかしながら、この場合は、プランジャの振動はロッドを介してポペットに伝達されるため、電磁圧力制御弁の動作が不安定となるおそれがある。
【0004】
本発明は、電磁リリーフバルブシステムにより、電磁リリーフバルブにおけるセット圧のばらつきを小さくするとともに動作を安定とすることを目的とする。
【0005】
本発明のある態様によれば、電磁リリーフバルブシステムであって、弁体に作用する付勢部材の付勢力を変化させて前記弁体が開弁する設定圧を調整するソレノイド部を有する電磁リリーフバルブと、前記電磁リリーフバルブを制御する制御部と、を備え、前記ソレノイド部は、電流の供給によって磁界を形成するコイルと、ハウジングに摺動自在に収容され、前記コイルが形成する磁界により前記付勢部材の前記付勢力に抗する推力が付与されるプランジャと、を有し、前記制御部は、前記ソレノイド部の前記コイルに電流を供給する駆動制御部と、前記コイルに供給される前記電流に第一ディザ信号と、前記第一ディザ信号とは振幅または周波数が異なる第二ディザ信号と、のいずれかを付与し前記プランジャにディザを発生させるディザ発生部と、を有し、前記ディザ発生部は、前記駆動制御部から前記コイルに供給される前記電流を変化させる前記設定圧の調整中には前記駆動制御部から前記コイルに供給される前記電流に前記第一ディザ信号を付与し、前記設定圧の調整が行われない状態では前記駆動制御部から前記コイルに供給される前記電流に前記第二ディザ信号を付与する。
【0006】
本発明の別の態様によれば、弁体に作用する付勢部材の付勢力を変化させて前記弁体が開弁する設定圧を調整するソレノイド部を有する電磁リリーフバルブの制御方法であって、前記ソレノイド部は、電流の供給によって磁界を形成するコイルと、ハウジングに摺動自在に収容され、前記コイルが形成する磁界により前記付勢部材の前記付勢力に抗する推力が付与されるプランジャと、を有し、前記電磁リリーフバルブの制御方法は、操作者により入力された所望の設定圧に基づいて前記コイルに供給する電流値である指令信号を生成する指令信号生成ステップと、前記コイルに供給される前記電流を変化させる前記設定圧の調整中には第一ディザ信号と前記指令信号に基づいた電流値で前記コイルに電流を供給し、前記設定圧の調整が行われない状態で前記第一ディザ信号とは振幅または周波数が異なる第二ディザ信号とは前記指令信号に基づいた電流値で前記コイルに電流を供給する電流供給ステップと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る電磁リリーフバルブシステムの概略図である。
【
図2】
図2は本発明の実施形態に係る電磁リリーフバルブの断面図である。
【
図3】
図3は電磁リリーフバルブの起動時において、制御部がコイルに電流を供給する処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は電磁リリーフバルブの起動後において、制御部がコイルに電流を供給する処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5はソレノイド部のプランジャにディザを発生させない状態においてコイルに供給される電流と電磁リリーフバルブの設定圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る電磁リリーフバルブシステム100について説明する。
【0009】
図1,2に示すように、電磁リリーフバルブシステム100は、弁体としてのパイロットポペット9(
図2参照)に作用する付勢部材としてのスプリング74(
図2参照)の付勢力を変化させてパイロットポペット9が開弁する設定圧を調整するソレノイド部70(
図2参照)を有する電磁リリーフバルブ90と、電磁リリーフバルブ90を制御する制御部91(
図1参照)と、を備える。電磁リリーフバルブシステム100は、例えばパワーショベル等の作業機に用いられる。本実施形態では、作業機がパワーショベルである場合について説明するが、電磁リリーフバルブシステム100は、他の作業機にも適用可能である。
【0010】
図示しないが、パワーショベルは、クローラ式の走行部と、走行部の上部に旋回可能に設けられる旋回部と、旋回部に設けられる掘削部と、を備える。走行部は、左右一対のクローラを有する。走行部の左右一対のクローラが駆動されることにより、パワーショベルが走行する。掘削部は、旋回部に回動可能に取り付けられるブームと、ブームに回動可能に取り付けられるアームと、アームに回動可能に取り付けられるバケットと、を備える。本実施形態における電磁リリーフバルブ90は、ブームを駆動するブームシリンダに取り付けられ、ブームシリンダのリリーフ圧を規定する。なお、電磁リリーフバルブ90は、ブームシリンダ以外の他のシリンダ等のリリーフ圧を規定するものであってもよい。また、本実施形態では、作動流体として作動油が用いられるが、作動水や圧縮空気などの他の流体を用いてもよい。
【0011】
まず、
図2を参照して、電磁リリーフバルブ90について説明する。
【0012】
電磁リリーフバルブ90は、ブームシリンダ等の駆動を制御する機器本体1に連通する高圧通路H内の作動油の圧力が設定圧に達すると開弁し、高圧通路Hから低圧通路Lへ作動油を逃がすことにより、高圧通路H内の作動油の圧力が異常に高圧となることを防止する。また、電磁リリーフバルブ90は、後述するようにソレノイド部70が駆動されることによって、開弁する設定圧を変更することが可能である。
【0013】
電磁リリーフバルブ90は、スプリング74により付勢されるパイロットポペット9と、パイロットポペット9に作用するスプリング74の付勢力を変化させるソレノイド部70と、パイロットポペット9を収容するバルブハウジング2と、ソレノイド部70を収容しソレノイド部70のプランジャ72が挿入される開口部71bを有するソレノイドハウジング71と、バルブハウジング2とソレノイドハウジング71とを連結する連結部材80と、を備える。
【0014】
バルブハウジング2には有底円筒状のサクションポペット3が収容され、サクションポペット3には、メインポペット5と、パイロットポペット9が収容されるスリーブ7と、が収容される。サクションポペット3は高圧通路Hと低圧通路Lの間に着座し、メインポペット5はサクションポペット3に着座する。これにより、機器本体1とサクションポペット3との間及びサクションポペット3とメインポペット5との間を通じた高圧通路Hと低圧通路Lとの連通が遮断される。メインポペット5には、高圧通路Hと背圧室8とを連通するパイロット通路10が設けられる。スリーブ7内には、サクションポペット3の外周面とバルブハウジング2の内周面との間の隙間2dを通じて低圧通路Lに連通するドレン室12が形成される。ドレン室12は、スリーブ7内に形成される通路11を通じて背圧室8に連通する。スリーブ7内には、通路11を開閉するパイロットポペット9が収容され、摺動支持される。
【0015】
パイロットポペット9は、略円柱状に形成された部材であり、円錐状に形成された弁部9aを一端に有し、径方向外側へと環状に突出して形成されたフランジ部9bを他端に有している。通路11には、パイロットポペット9の弁部9aが着座する。パイロットポペット9のフランジ部9bとスリーブ7との間には、後述するソレノイド部70のロッド73にパイロットポペット9の他端を当接させるようにパイロットポペット9を付勢するスプリング83が設けられる。
【0016】
ソレノイド部70は、電流の供給によって磁界を形成するコイル75と、コイル75の内側に設けられソレノイドハウジング71に摺動自在に収容され、コイル75が形成する磁界によりスプリング74の付勢力に抗する推力が付与されるプランジャ72と、プランジャ72に一端部側が連結され他端部がパイロットポペット9に当接するロッド73と、ソレノイドハウジング71内に係止されプランジャ72を介してパイロットポペット9を付勢するスプリング74と、を有する。なお、コイル75を覆うハウジングもソレノイドハウジング71に含まれる。
【0017】
ソレノイドハウジング71には、開口部71bと軸方向に連続してスプリング室77が形成される。スプリング室77内には、一端がプランジャ72に係止され他端がソレノイドハウジング71内に係止されるスプリング74が配置される。スプリング74の付勢力は、プランジャ72及びプランジャ72の軸心に連結されるロッド73を介してパイロットポペット9に作用する。つまり、スプリング74は、パイロットポペット9の弁部9aが通路11に着座するようにパイロットポペット9を付勢している。
【0018】
ソレノイド部70のコイル75には、制御部91から電流が供給される。コイル75に電流が供給されると、プランジャ72には、スプリング74の付勢力に抗する推力が作用する。このため、プランジャ72及びロッド73を介してパイロットポペット9に作用するスプリング74の付勢力が小さくなり、結果として、パイロットポペット9の弁部9aを通路11から離座させるために必要となる圧力、いわゆるクラッキング圧は小さくなる。このように、コイル75への通電を制御しパイロットポペット9に作用するスプリング74の付勢力を変化させることによって、電磁リリーフバルブ90の設定圧、具体的には、パイロットポペット9が開弁する設定圧を調整することができる。以下では、電磁リリーフバルブ90の設定圧を単に「設定圧」とも称する。
【0019】
このような電磁リリーフバルブ90では、高圧通路H内の圧力が設定圧に達すると、パイロットポペット9が開く。パイロットポペット9が開くことにより、背圧室8内の作動油は、通路11を通じてドレン室12に流れ、サクションポペット3の外周面とバルブハウジング2の内周面との間の隙間2dを通じて低圧通路Lに排出される。
【0020】
次に、
図1を参照して、電磁リリーフバルブ90を制御する制御部91について説明する。
【0021】
制御部91は、コイル75に電流を供給する駆動制御部92と、操作者により設定圧の調整操作がされる入力部95と、を有する。
【0022】
駆動制御部92は、パワーショベルの制御を行うものであり、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)などを備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラムなどを予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAMなどをROMに格納されたプログラムに従って動作させることによってパワーショベルの制御が実現される。駆動制御部92は、パワーショベルの車両に設けられ、土木作業等の作動中及び設定圧の調整中においてソレノイド部70の駆動を制御する。
【0023】
入力部95には、操作者により所望の設定圧が入力される。入力部95は、例えば、ダイヤルつまみ型の部材であり、周方向に回転されることで所望の設定圧が入力される。入力部95は、所望の設定圧が入力可能なタッチパネル等であってもよい。入力部95は、駆動制御部92に接続される。駆動制御部92は、後述するように、コイル75に電流を供給して設定圧が入力部95に入力されたものとなるように制御する。
【0024】
駆動制御部92は、コイル75に供給する電流を制御する電流制御部92aと、設定圧の調整の開始及び終了を検知する検知部92bと、コイル75に供給される電流にディザ信号を付与しプランジャ72にディザ(小さい振れ幅の振動)を発生させるディザ発生部92cと、を有する。
【0025】
電流制御部92aは、コンデンサやトランジスタ等を用いた電子回路で構成される。電流制御部92aは、入力部95に接続され、入力部95が示す圧力、言い換えれば、入力部95に入力された所望の設定圧に基づいて指令信号を生成する。具体的には、例えば、駆動制御部92には設定圧と当該設定圧とするためにコイル75に供給する電流値との関係が予め記憶される。電流制御部92aは、入力部95に入力された所望の設定圧と駆動制御部92に予め記憶された設定圧と電流値との関係からコイル75に供給する電流値である指令信号を生成する。電流制御部92aは、後述するように指令信号に基づいて制御信号を生成し、制御信号によりコイル75に電流を供給して設定圧が入力部95に入力されたものとなるように制御する。
【0026】
検知部92bは、コンデンサ、トランジスタやタイマー等を用いた電子回路で構成される。検知部92bは、イグニッションスイッチ(図示せず)のオンへの切り換えを検知する。これにより、検知部92bは、パワーショベルのエンジン(図示せず)の始動を検知する。検知部92bがエンジンの始動を検知すると、後述するように、コイル75に電流が供給されていない状態から、設定圧が入力部95の示す圧力になるように電流制御部92aによりコイル75に電流が供給される。これにより、電磁リリーフバルブ90の起動がされる。なお、検知部92bは、回転数センサ等でエンジンの始動を検知してもよい。
【0027】
本実施形態では、検知部92bは、電磁リリーフバルブ90の起動後においては、設定圧の調整の開始及び終了を検知する。ここで、「設定圧の調整の開始及び終了」とは、コイル75に供給する電流が実際に変化している時間だけでなく、コイル75に供給する電流を変化させるために予め設定された時間も含む。つまり、設定圧を調整するために設定される所定の時間内であれば、電流が実際には変化していなくても設定圧の調整中である。検知部92bは、電磁リリーフバルブ90の起動後に、駆動制御部92の入力部95に所定の操作がされたことを検知する。具体的には、入力部95の周方向の変位量が所定値を超えたことを検知する。これにより、検知部92bは、設定圧の調整の開始を検知する。ここで、「所定値」とは、操作者が誤って入力部95に触れる等の意図しない操作により想定される入力部95の変位量よりも大きく設定される。加えて、検知部92bは、設定圧の調整の開始を検知後に入力部95の操作がされずに所定時間が経過すると、設定圧の調整の終了を検知する。ここで、「所定時間」は、設定圧の調整の開始から、パワーショベルの作業開始までの時間よりも短く設定される。つまり、パワーショベルの土木作業等の作業中は、検知部92bにより既に設定圧の調整の終了が検知された後の状態や、電磁リリーフバルブ90の起動後に設定圧が変更されずに検知部92bにより設定圧の調整の開始が検知される前の状態となる。検知部92bの検知結果は、ディザ発生部92cに出力される。このように、電磁リリーフバルブ90の起動後に入力部95に所定の操作がされてから所定時間の経過までの時間が、設定圧を調整するために設定された時間である。
【0028】
また、上記のように、電磁リリーフバルブ90の起動時には、コイル75に電流が供給されていない状態から、設定圧が入力部95の示す圧力になるように電流制御部92aによりコイル75に電流が供給される。よって、電磁リリーフバルブ90の起動は、駆動制御部92の入力部95は操作されないものの、コイル75に供給する電流が変化するため、「設定圧の調整」に含まれる。電磁リリーフバルブ90の起動時には、検知部92bは、設定圧の調整の終了を検知する。具体的には、検知部92bは、エンジンの始動を検知後(言い換えれば、設定圧の調整の開始後)に所定時間が経過すると、設定圧の調整の終了を検知する。なお、本実施形態においては、検知部92bがエンジンの始動を検知することは、検知部92bが設定圧の調整の開始を検知することとは異なる。また、「所定時間」は、設定圧の調整の開始からパワーショベルの作業開始までの時間よりも短く設定されればよく、電磁リリーフバルブ90の起動後の設定圧の調整における「所定時間」とは異なってもよい。
【0029】
このように、検知部92bは、エンジンの始動と、エンジンの始動から所定時間が経過したこと(設定圧の調整の終了)と、入力部95に所定の操作がされたこと(設定圧の調整の開始)と、入力部95に所定の操作がされてから入力部95の操作がされずに所定時間が経過したこと(設定圧の調整の終了)と、を検知する。電磁リリーフバルブ90の起動時においては、検知部92bがエンジンの始動を検知してから、所定時間が経過したことを検知するまでの間が「設定圧の調整」となる。また、電磁リリーフバルブ90の起動後においては、検知部92bが入力部95に所定の操作がされたことを検知してから、入力部95の操作がされずに所定時間が経過したことを検知するまでの間が「設定圧の調整」となる。
【0030】
ディザ発生部92cは、コンデンサやトランジスタ等を用いた電子回路である。ディザ発生部92cは、一定の周波数及び振幅をパラメータとして有する第一ディザ信号と第二ディザ信号のいずれかを駆動制御部92の電流制御部92aに出力する。言い換えれば、ディザ発生部92cは、コイル75に供給される電流に第一ディザ信号と第二ディザ信号のいずれかを付与する。第一ディザ信号及び第二ディザ信号は、コイル75に供給する電流にディザを付与するためのものである。第一ディザ信号の振幅及び周波数は、後述するように電流制御部92aが第一制御信号に基づいた電流値でコイル75に電流を供給した状態で、プランジャ72が軸方向に振動するように設定される。また、第二ディザ信号の振幅及び周波数は、後述するように電流制御部92aが第二制御信号に基づいた電流値でコイル75に電流を供給した状態で、プランジャ72が変位しないように設定される。本実施形態では、第二ディザ信号は、第一ディザ信号よりも振幅が小さく、第一ディザ信号と周波数が同じである。
【0031】
ディザ発生部92cは、設定圧の調整中には電流制御部92aからコイル75に供給される電流に第一ディザ信号を付与する。具体的には、ディザ発生部92cは、検知部92bがエンジンの始動を検知してから所定時間が経過して設定圧の調整の終了を検知するまでの間と、電磁リリーフバルブ90の起動後に入力部95に所定の操作がされて検知部92bが設定圧の調整の開始を検知してから所定時間が経過して設定圧の調整の終了を検知するまでの間では、電流制御部92aに第一ディザ信号を出力する。
【0032】
また、ディザ発生部92cは、設定圧の調整が行われない状態では電流制御部92aからコイル75に供給される電流に第二ディザ信号を付与する。具体的には、ディザ発生部92cは、検知部92bが設定圧の調整の終了を検知した後と、検知部92bが設定圧の調整の終了を検知してから設定圧の調整の開始を検知するまでの間では、電流制御部92aに第二ディザ信号を出力する。つまり、パワーショベルの土木作業等の作業中では、ディザ発生部92cは電流制御部92aに第二ディザ信号を出力する。
【0033】
電流制御部92aは、ディザ発生部92cから第一ディザ信号が出力されると、指令信号と第一ディザ信号を合成して第一合成信号を生成する。電流制御部92aは、第一合成信号と実際の電流値の直流成分とを比較しながら第一制御信号を生成し、第一制御信号によりコイル75に電流を供給する。この場合、生成された第一制御信号は第一ディザ信号に基づく周波数及び振幅をパラメータとして有し、周期的に数値が変動する。そのため、コイル75に供給される電流は、周波数に応じて電流値が変化するものとなる。コイル75に供給する電流に第一ディザ信号によりディザが付与されると、プランジャ72は、軸方向に振動しながら設定圧の調整のために移動する。電磁リリーフバルブ90の起動時には、ディザ発生部92cから電流制御部92aに第一ディザ信号が出力され、電流制御部92aは第一制御信号によりコイル75に電流を供給する。
【0034】
電流制御部92aは、ディザ発生部92cから第二ディザ信号が出力されると、指令信号と第二ディザ信号を合成して第二合成信号を生成する。電流制御部92aは、第二合成信号と実際の電流値の直流成分とを比較しながら第二制御信号を生成し、第二制御信号によりコイル75に電流を供給する。この場合、生成された第二制御信号は、第一制御信号と同様に周期的に数値が変動する。そのため、コイル75に供給される電流は、周波数に応じて電流値が変化するものとなる。第二ディザ信号は、第一ディザ信号よりも振幅が小さく、コイル75に供給する電流に第二ディザ信号によりディザが付与されても、プランジャ72は変位しない。言い換えれば、第二制御信号によりコイル75に電流が供給される状態(設定圧の調整が行われない状態)では、プランジャ72は変位しない。なお、本実施形態の電流制御部92aは、コンデンサやトランジスタ等を用いたハードウェアによる電子回路により、上記のように制御信号を生成する。
【0035】
図3,4は、制御部91がコイル75に電流を供給する上記の処理手順、言い換えれば、電磁リリーフバルブ90の制御方法をフローチャートにまとめたものである。
図3は、電磁リリーフバルブ90の起動時の電磁リリーフバルブ90の制御方法をまとめたものである。
図4は、電磁リリーフバルブ90の起動後の電磁リリーフバルブ90の制御方法をまとめたものである。制御部91は、エンジンの始動を検知後にまず
図3に示す処理を実行して電磁リリーフバルブ90を起動し、その後、
図4に示す処理を所定の時間間隔ごとに繰り返して実行する。
【0036】
図3に示すように、制御部91は、まず、ステップS101において、電流制御部92aが入力部95の示す設定圧に基づいてコイル75に供給する電流値である指令信号を生成する。続いて、ステップS102へと進み、ディザ発生部92cが電流制御部92aに第一ディザ信号を出力する。なお、ステップS102の後にステップS101が行われてもよく、ステップS101とステップS102が並列して行われてもよい。そして、ステップS103へと進み、電流制御部92aが、生成された指令信号とディザ発生部92cから出力された第一ディザ信号を合成して第一合成信号を生成する。続いて、ステップS104へと進み、電流制御部92aが第一合成信号に基づいて第一制御信号を生成する。そして、ステップS105へと進み、電流制御部92aが第一制御信号に基づいた電流値でコイル75に電流を供給する。コイル75に電流を供給すると、ステップS106へと進む。
【0037】
ステップS106では、検知部92bが、エンジンの始動を検知後に所定時間が経過したかを判定する。ここで、エンジンの始動を検知後に所定時間が経過するまでの間は、設定圧の調整中の状態であり、検知部92bが設定圧の調整の終了を検知する前の状態である。エンジンの始動を検知後に所定時間が経過した後は、設定圧の調整が終了した状態であり、検知部92bが設定圧の調整の終了を検知した後の状態である。
【0038】
ステップS106において、検知部92bがエンジンの始動を検知後に所定時間が経過していないと判定すると、ステップS101へと戻り、入力部95の示す設定圧に基づいて再度指令信号を生成し、処理を継続する。つまり、電磁リリーフバルブ90の起動時には、入力部95の示す設定圧が変更されると、変更後の設定圧に基づいた指令信号が生成される。ステップS106において、検知部92bがエンジンの始動を検知後に所定時間が経過した(言い換えれば、設定圧の調整が終了した)と判定すると、ステップS107へと進み、ディザ発生部92cが電流制御部92aに第一ディザ信号に代えて第二ディザ信号を出力してステップS108へと進む。ステップS108では、電流制御部92aがステップS103,ステップS104と同様にして、指令信号と第二ディザ信号を合成した第二合成信号に基づく第二制御信号を生成する。そして、ステップS109へと進み、電流制御部92aが第二制御信号に基づいた電流値でコイル75に電流を供給して、電磁リリーフバルブ90の起動を終了する。その後、
図4に示す電磁リリーフバルブ90の起動後の電磁リリーフバルブ90の制御を所定時間ごとに実行する。
図4に示す電磁リリーフバルブ90の起動後の電磁リリーフバルブ90の制御は、電流制御部92aが第二制御信号に基づいた電流値でコイル75に電流を供給する状態で開始される。
【0039】
図4に示すように、ステップS201では、制御部91は、コイル75に供給される電流を変化させる設定圧の調整中かどうかを判定する。具体的には、検知部92bが、設定圧の調整中であるか設定圧の調整中ではないかを判定する。ステップS201においては、「設定圧の調整中である」とは、検知部92bが設定圧の調整の開始を検知してから設定圧の調整の終了を検知するまでの状態である。「設定圧の調整中ではない」とは、電磁リリーフバルブ90の起動後から検知部92bが設定圧の調整の開始を検知するまでの状態や、検知部92bが設定圧の調整の終了を検知してから再度設定圧の調整の開始を検知するまでの状態である。ステップS201において、検知部92bが設定圧の調整中ではないと判定すると、電流制御部92aが第二制御信号に基づいた電流値でコイル75に電流を供給する状態を維持して、処理を終了する。
【0040】
ステップS201において、検知部92bが設定圧の調整中であると判定すると、ステップS202へと進み、ディザ発生部92cが電流制御部92aに第二ディザ信号に代えて第一ディザ信号を出力してステップS203へと進む。ステップS203では、ステップS101と同様に、電流制御部92aが入力部95の示す設定圧に基づいて指令信号を生成し、ステップS204へと進む。ステップS204では、生成された指令信号とディザ発生部92cから出力された第一ディザ信号を合成して第一合成信号を生成する。続いて、ステップS205へと進み、電流制御部92aが第一合成信号に基づいて第一制御信号を生成する。そして、ステップS206へと進み、電流制御部92aが第一制御信号に基づいた電流値でコイル75に電流を供給する。コイル75に電流を供給すると、ステップS207へと進む。
【0041】
ステップS207では、検知部92bが、設定圧の調整の開始を検知してから所定時間が経過して設定圧の調整の終了を検知したかどうかを判定する。言い換えれば、検知部92bが、設定圧の調整が終了したかどうかを判定する。ステップS207において、検知部92bが、設定圧の調整の開始を検知してから所定時間が経過していないと判定すると、ステップS204へと戻り、ステップS204~ステップS207を繰り返す。言い換えれば、ステップS207において設定圧の調整の開始を検知してから所定時間が経過したと判定するまで、第一制御信号に基づいてコイル75に電流を供給する状態を維持する。この際、ステップS204において、入力部95の示す設定圧に基づいて再度指令信号が生成される。つまり、電磁リリーフバルブ90の起動後には、入力部95の示す設定圧が変更されると、変更後の設定圧に基づいた指令信号が生成される。
【0042】
ステップS207において、検知部92bが、設定圧の調整の開始を検知してから所定時間が経過したと判定すると、ステップS208へと進み、ディザ発生部92cが電流制御部92aに第一ディザ信号に代えて第二ディザ信号を出力してステップS209へと進む。ステップS209では、電流制御部92aがステップS204,ステップS205と同様にして、指令信号と第二ディザ信号を合成した第二合成信号に基づく第二制御信号を生成する。そして、ステップS210へと進み、電流制御部92aが第二制御信号に基づいた電流値でコイル75に電流を供給して、処理を終了する。
【0043】
このように、本実施形態の電磁リリーフバルブシステム100では、操作者により入力された所望の設定圧に基づいてコイル75に供給する電流値である指令信号を制御部91が生成する指令信号生成ステップ(ステップS101、ステップS203)と、コイル75に供給される電流を変化させる設定圧の調整中には第一ディザ信号と指令信号に基づいた電流値でコイル75に電流を供給し(ステップS102~ステップS105、ステップS202、ステップS204~ステップS206)、設定圧の調整が行われない状態(言い換えれば、設定圧の調整が終了した状態)では第二ディザ信号と指令信号に基づいた電流値でコイル75に電流を供給する電流供給ステップ(ステップS107~ステップS109、ステップS208~ステップS210)と、により電磁リリーフバルブ90を制御する。
【0044】
電磁リリーフバルブシステムでは、
図5に示すように、コイルに供給する電流にディザを付与せずに電磁リリーフバルブの設定圧を調整すると、プランジャの摺動面に作用する静止摩擦力により、設定圧の調整時にヒステリシスが発生するおそれがある。これにより、設定圧の調整時に実際にセットされる電磁リリーフバルブの設定圧にばらつきが生じる。具体的には、電磁リリーフバルブの設定圧は、
図5に矢印で示すようにソレノイド部に供給する電流を大きくしていく場合と電流を小さくしていく場合とで、同じ電流値であっても異なる。
【0045】
さらに、電磁リリーフバルブシステムでは、コイルに供給する電流にディザを付与せずに電磁リリーフバルブの設定圧を調整すると、コイルへの電流の供給により生じる磁界の強さと、当該磁界により生じスプリングの付勢力に抗するプランジャの推力と、の関係にばらつきが生じ、設定圧の調整時にヒステリシスが発生するおそれがある。
【0046】
これに対して、本実施形態の電磁リリーフバルブシステム100では、設定圧を調整中であると、ディザ発生部92cが第一ディザ信号によりコイル75に供給する電流にディザを付与する。これにより、設定圧の調整中において、プランジャ72が軸方向に振動し動摩擦の状態になるため、プランジャ72が静止している場合と比較して摺動面に作用する摩擦力が小さくなる。そのため、設定圧の調整時にヒステリシスが発生することが抑制される。さらに、プランジャ72にディザを発生させることで、コイル75への電流の供給により生じる磁界の強さと、当該磁界により生じスプリング74の付勢力に抗するプランジャ72の推力と、の関係のばらつきが低減される。これにより、設定圧の調整時にヒステリシス(磁気ヒステリシス)が発生することがより抑制される。よって、電磁リリーフバルブ90におけるセット圧のばらつきを小さくすることができる。さらに、設定圧の調整時に磁気ヒステリシスが発生することが抑制されるため、設定圧の調整時の電流の大きさを小さくすることができる。
【0047】
また、プランジャ72の振動はロッド73を介してパイロットポペット9に伝達されるため、仮にパワーショベルの土木作業中にプランジャ72が振動していると、電磁リリーフバルブ90の動作が不安定となるおそれがある。しかしながら、本実施形態の電磁リリーフバルブシステム100では、設定圧の調整が行われない状態では、第一ディザ信号よりも振幅が小さい第二ディザ信号によりコイル75に供給する電流にディザを付与する。よって、コイル75に供給する電流に小さなディザ(具体的には、プランジャ72が変位しない程度のディザ)を付与することで、電磁リリーフバルブ90の動作を安定とするとともに、コイル75への電流の供給量と、スプリング74の付勢力に抗するプランジャ72の推力と、の関係のばらつきが低減され、設定圧の調整時にヒステリシスが発生することが抑制される。このように、電磁リリーフバルブシステム100では、電磁リリーフバルブ90におけるセット圧のばらつきを小さくするとともに動作を安定とすることができる。
【0048】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0049】
電磁リリーフバルブシステム100では、設定圧を調整中であると、ディザ発生部92cが第一ディザ信号によりコイル75に供給する電流にディザを付与する。これにより、設定圧の調整中において、プランジャ72が動摩擦の状態になるため、電磁リリーフバルブ90におけるセット圧のばらつきを小さくすることができる。さらに、電磁リリーフバルブシステム100では、設定圧の調整が行われない状態では、ディザ発生部92cが第一ディザ信号よりも振幅が小さい第二ディザ信号よりコイル75に供給する電流にディザを付与する。コイル75に供給する電流に小さなディザを付与することで、電磁リリーフバルブ90におけるセット圧のばらつきを小さくするとともに動作を安定とすることができる。
【0050】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0051】
<変形例1>
上記実施形態では、入力部95がダイヤルつまみ型の部材であり、検知部92bは、電磁リリーフバルブ90の起動後に入力部95の周方向の変位量が所定値を超えた場合に設定圧の調整の開始を検知する。これに限らず、入力部95は、タッチパネル等であってもよい。入力部95がタッチパネルである場合は、検知部92bは、電磁リリーフバルブ90の起動後に現状の設定圧とは異なる設定圧が入力された場合に設定圧の調整の開始を検知し、異なる設定圧の入力完了後に所定時間が経過すると設定圧の調整の終了を検知する。また、入力部95の近くに設定圧調整時に押下するスイッチ(図示せず)を設け、スイッチがオンになると検知部92bが設定圧の調整の開始を検知してもよい。この場合では、検知部92bは、スイッチがオフになる、または、スイッチがオンになってから所定時間が経過すると設定圧の調整の終了を検知する。この場合は、スイッチがオンになっていることを操作者にランプ等で知らせてもよい。
【0052】
この構成であっても、上記実施形態と同様に、電磁リリーフバルブ90の設定圧の調整においてセット圧のばらつきを小さくすることができる。例えば、アクチュエータを交換する場合や、作業内容に応じてアクチュエータのリリーフ圧を変更する場合にも適用することができる。
【0053】
<変形例2>
上記実施形態では、第二ディザ信号は、第一ディザ信号よりも振幅が小さく、コイル75に供給する電流に第二ディザ信号によりディザが付与されても、プランジャ72は変位しない。これに限らず、第二ディザ信号は、第一ディザ信号よりも周波数が大きくてもよい。第二ディザ信号の周波数を大きくすると、コイル75に供給する電流の周期的な変化に対するプランジャ72の応答性が低下する。そのため、上記実施形態と同様に、コイル75に供給する電流に第二ディザ信号によりディザが付与されても、プランジャ72が変位しない構成とすることができる。これにより、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0054】
<変形例3>
上記実施形態では、検知部92bは、エンジンの始動を検知後(設定圧の調整の開始後)に所定時間が経過することや、設定圧の調整の開始を検知後に入力部95の操作がされずに所定時間が経過することで、設定圧の調整の終了を検知する。これに限らず、検知部92bは、入力部95の近くに設定圧の調整終了時に押下するスイッチ(図示せず)を設け、スイッチが操作されると設定圧の調整の終了を検知してもよい。この構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。なお、検知部92bは、設定圧の調整の開始の検知後に所定時間が経過すると、設定圧の調整の終了を検知するようにすることで、設定圧の調整の終了を検知するスイッチの操作等を操作者がし忘れても、電磁リリーフバルブ90の動作中においてプランジャ72に供給される電流に第一ディザ信号が付与されることが防止される。
【0055】
<変形例4>
上記実施形態では、電流制御部92a及びディザ発生部92cは、コンデンサやトランジスタ等を用いた電子回路、つまりハードウェアであり、当該電子回路により制御信号及びディザ信号を生成する。これに限らず、電流制御部92a及びディザ発生部92cは、ソフトウェアにより上記実施形態のように制御信号及びディザ信号を生成してもよい。具体的には、電子回路をソフトウェアのプログラムに置き換え、プログラムの処理により制御信号を生成してもよい。この構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0056】
<変形例5>
上記実施形態では、駆動制御部92は、電流制御部92aと、検知部92bと、ディザ発生部92cと、を有する。これに限らず、検知部92b及びディザ発生部92cは、駆動制御部92とは別体に設けられてもよく、パワーショベルの車両とは別体に設けられてもよい。つまり、電磁リリーフバルブシステム100は、少なくとも、制御部91が駆動制御部92と検知部92bとディザ発生部92cとを有する構成であればよい。さらに、ディザ発生部92cが、設定圧の調整中に電流に第一ディザ信号を付与し、設定圧の調整を行っていない状態では電流に第二ディザ信号を付与する構成であれば、検知部92bが設定圧の調整の開始及び終了を検知することは必須ではない。言い換えれば、検知部92bは電磁リリーフバルブシステム100に必須の構成ではない。
【0057】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0058】
電磁リリーフバルブシステム100は、弁体としてのパイロットポペット9に作用する付勢部材としてのスプリング74の付勢力を変化させてパイロットポペット9が開弁する設定圧を調整するソレノイド部70を有する電磁リリーフバルブ90と、電磁リリーフバルブ90を制御する制御部91と、を備え、ソレノイド部70は、電流の供給によって磁界を形成するコイル75と、ソレノイドハウジング71に摺動自在に収容され、コイル75が形成する磁界によりスプリング74の付勢力に抗する推力が付与されるプランジャ72と、を有し、制御部91は、ソレノイド部70のコイル75に電流を供給する駆動制御部92と、コイル75に供給される電流に第一ディザ信号と、第一ディザ信号とは振幅または周波数が異なる第二ディザ信号と、を付与しプランジャ72にディザを発生させるディザ発生部92cと、を有し、ディザ発生部92cは、駆動制御部92からコイル75に供給される電流を変化させる設定圧の調整中には駆動制御部92からコイル75に供給される電流に第一ディザ信号を付与し、設定圧の調整が行われない状態では駆動制御部92からコイル75に供給される電流に第二ディザ信号を付与する。
【0059】
この構成では、パイロットポペット9が開弁する設定圧を調整中であると、ディザ発生部92cが第一ディザ信号によりコイル75に供給する電流にディザを付与する。これにより、設定圧の調整中において、プランジャ72が動摩擦の状態になるため、プランジャ72が静止している場合と比較して摺動面に作用する摩擦力が小さくなる。よって、電磁リリーフバルブ90における設定圧の調整時に実際にセットされるセット圧のばらつきを小さくすることができる。さらに、電磁リリーフバルブシステム100では、設定圧の調整が行われない状態では、ディザ発生部92cが第二ディザ信号によりコイル75に供給する電流にディザを付与する。これにより、電磁リリーフバルブ90におけるセット圧のばらつきを小さくするとともに動作を安定とすることができる。
【0060】
電磁リリーフバルブシステム100では、第二ディザ信号は、第一ディザ信号よりも振幅が小さい。
【0061】
電磁リリーフバルブシステム100では、第二ディザ信号は、第一ディザ信号よりも周波数が大きい。
【0062】
これらの構成では、電磁リリーフバルブ90におけるセット圧のばらつきを小さくするとともに動作を安定とすることができる。
【0063】
電磁リリーフバルブシステム100では、制御部91は、設定圧の調整の開始及び終了を検知する検知部92bをさらに有する。
【0064】
この構成では、検知部92bにより設定圧の調整の開始や終了を検知しディザ発生部92cによる第一ディザ信号または第二ディザ信号の付与を制御することで、電磁リリーフバルブ90におけるセット圧のばらつきを小さくするとともに動作を安定とすることができる。
【0065】
電磁リリーフバルブシステム100では、検知部92bは、設定圧の調整の開始後に所定時間が経過すると、設定圧の調整の終了を検知する。
【0066】
この構成では、設定圧の調整の終了を検知するスイッチの操作等を操作者がし忘れても、電磁リリーフバルブ90の動作中においてプランジャ72に供給される電流に第一ディザ信号が付与されることが防止される。
【0067】
パイロットポペット9に作用するスプリング74の付勢力を変化させてパイロットポペット9が開弁する設定圧を調整するソレノイド部70を有する電磁リリーフバルブ90の制御方法であって、ソレノイド部70は、電流の供給によって磁界を形成するコイル75と、ソレノイドハウジング71に摺動自在に収容され、コイル75が形成する磁界によりスプリング74の付勢力に抗する推力が付与されるプランジャ72と、を有し、電磁リリーフバルブ90の制御方法は、操作者により入力された所望の設定圧に基づいてコイル75に供給する電流値である指令信号を制御部91が生成する指令信号生成ステップ(ステップS101、ステップS203)と、コイル75に供給される電流を変化させる設定圧の調整中には第一ディザ信号と指令信号に基づいた電流値でコイル75に電流を供給し(ステップS102~ステップS105、ステップS202、ステップS204~ステップS206)、設定圧の調整が行われない状態では第一ディザ信号とは振幅または周波数が異なる第二ディザ信号と指令信号に基づいた電流値でコイル75に電流を供給する電流供給ステップ(ステップS107~ステップS109、ステップS208~ステップS210)と、を備える。
【0068】
この構成では、電磁リリーフバルブ90における設定圧の調整時に実際にセットされるセット圧のばらつきを小さくすることができるとともに、電磁リリーフバルブ90における動作を安定とすることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。