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特許7498881セルロース繊維及びグルテンの多孔性材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】セルロース繊維及びグルテンの多孔性材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/30 20060101AFI20240606BHJP
   D21H 21/56 20060101ALI20240606BHJP
   D21H 17/22 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C08J9/30 CEP
D21H21/56
D21H17/22
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021500407
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2019067639
(87)【国際公開番号】W WO2020011587
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】1850873-9
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】522122857
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーイーユィ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リカルド・スレッテゴード
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第1996/014970(WO,A1)
【文献】特表2017-515007(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0146082(US,A1)
【文献】特表2009-541502(JP,A)
【文献】特開平05-077250(JP,A)
【文献】米国特許第05643359(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
D21H 21/56
D21H 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースパルプ繊維及びグルテンを含む多孔性材料であって、
セルロースパルプ繊維のグルテンに対する質量比が1:6~6:1であり、
多孔性材料の密度が、乾燥多孔性材料に基づいて計算して、5~50kg/mである、多孔性材料。
【請求項2】
グルテンが、グリアジン及びグルテニンを含む、請求項1に記載の多孔性材料。
【請求項3】
グルテンが、小麦グルテンである、請求項1又は2に記載の多孔性材料。
【請求項4】
乾燥多孔性材料の総質量に基づいて計算して、少なくとも30質量%のセルロースパルプ繊維を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項5】
乾燥多孔性材料の総質量に基づいて計算して、少なくとも12.5質量%のグルテンをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項6】
セルロースパルプ繊維が、0.01~0.05mmの平均幅を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項7】
セルロースパルプ繊維が、0.1~65mmの平均繊維長を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項8】
セルロースパルプ繊維が、木材に由来する、請求項1~のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項9】
セルロースパルプ繊維が、10を超えるアスペクト比を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項10】
多孔性材料内の空孔の総体積の少なくとも50%が、相互接続された細孔からなる、請求項1~のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項11】
疎水性である、請求項1~10のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項12】
セルロースパルプ繊維及びグルテンを含む多孔性材料を調製するための方法であって、
気体を導入することによって水を含有する溶媒中でセルロースパルプ繊維及びグルテンを泡立たせる工程を含み、
セルロースパルプ繊維のグルテンに対する質量比が1:6~6:1である方法。
【請求項13】
得られた多孔性材料を乾燥させて、乾燥された多孔性材料を得る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
乾燥させる工程を、前記多孔性材料に含まれる水が15質量%未満になるまで行う、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
乾燥多孔性材料の総質量に基づいて計算して、多孔性材料が少なくとも30質量%のセルロースパルプ繊維を含む、請求項1214のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
水を含有する溶媒中のセルロースパルプ繊維及びグルテンの混合物を形成させた後、その混合物を泡立たせる、請求項1215のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
水中のグルテンのフォームを形成させた後、そのグルテンのフォームにセルロースパルプ繊維の懸濁液を添加する、請求項1215のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
泡立たせる工程を、空気の導入によって行う、請求項1217のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
例えば前記セルロースパルプ繊維及びグルテンを泡立たせる工程の混合物にワックスを粉末又はエマルジョンとして導入すること又は前記多孔性材料を少なくとも150℃にさらすことによって、得られる材料が疎水性である、請求項1218のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
包装材料、緩衝材料、断熱材料、遮音材料、建築材料、水吸着材料、及び植物培地又は増殖培地のうちの1つ又は複数から選択される用途における、請求項1に記載の多孔性材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維とグルテンとを含む多孔性材料(多孔質材料)であって、セルロース繊維のグルテンに対する質量比が1:6~6:1であり、かつ、乾燥多孔性材料に基づいて計算して5~200kg/mの密度を有する、多孔性材料に関する。本発明は、この多孔性材料の調製方法、及びその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
私たちの日常生活では、石油ベースのポリマーでできていることが多いマクロ多孔性材料及びミクロ多孔性材料が、さまざまな形態及び組成で使用されている。これらの例としては、建物や飛行機の断熱材、包装用高分子多孔性材料、例えば、ポリウレタンフォーム(PU)、ポリエチレンフォーム(PE)、発泡スチロール(EPS)、又は発泡ポリプロピレン(EPP)等がある。このタイプの使用のための多孔性材料は、安定していて、軽く、製造が容易でなければならない。再生可能な材料を使用する必要性に対する意識が高まっているため、石油ベースのポリマーを再生可能な資源からのポリマーに置き換えることが強く求められている。再生可能資源から多孔性材料を見つけることには多くの課題があり、特に価格と性能の問題がある。多くのバイオベースの多孔性材料は、オイルベースの供給源からの確立されたフォーム(form)(発泡体)と比較して、製造コストが高く、機械的性能が低く、水又は高温での安定性が低い。厚い材料から水を除去するには大量のエネルギーが必要であるため、材料の厚さは、バイオベースの多孔性材料の水ベースの生産を制限する要因となることが多い。価格及び性能を除くオイルベースの多孔性材料の別の利点は、本来的に親水性である多くのバイオベースのフォームと比較して、当然に疎水性であるということである。
【0003】
セルロースは、その結晶構造と、工業規模で大量に調製する方法の利用可能性により、地球上で最も豊富に存在する再生可能な天然ポリマーとして、特別な可能性を秘めている。セルロースベースの多孔性材料は、通常、セルロース繊維の水懸濁液の出発材料を使用して製造される。重要な問題は、湿った多孔質セルロース材料の乾燥中に崩壊又は収縮を引き起こさずに水を除去することである。水を除去する間、三次元の湿った多孔質構造を無傷に保つために、いくつかの技術を使用することができる。1つの技術は、セルロース繊維の水懸濁液を凍結乾燥することによって達成され、ここでは、セルロース繊維を支持し、セルロース繊維ネットワークの構造を破壊することなく水の除去を可能にする氷晶が作り出され。次に、凍結乾燥技術を使用して氷を昇華させることによるか、水と混和性のある有機溶媒を使用して氷/水を置き換える溶媒乾燥によって、水を直接除去することができる。これらの手順により、連続気泡構造と、初期セルロース水分濃度に依存する様々な密度とを有する多孔質セルロース材料又はフォームが作り出される。
【0004】
別の技術は、湿式セルロースフォーム、例えば、気泡が界面活性剤と一緒にセルロース繊維によって安定化される湿式セルロースフォームなどを作成することであり、この技術では、乾燥の際に三次元構造を無傷に保つことができる。この手順では、フォームを安定させるために界面活性剤が必要である。界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、中性又は両親媒性の任意の種類のものであり得、気体は、例えば、機械的混合又は叩解を使用して、セルロース懸濁液に導入され得る。これを使用する成功例は、気泡をさらに安定させるためにナノセルロースを使用することである。セルロースナノ繊維(CNF)は、この手法を使用して独立気泡構造のフォームを作成するために使用されている(WO2014/011112)。その後、安定した湿ったフォームを、乾いたフォームを崩壊させることなく、熱を使用して乾燥させることができる。
【0005】
製紙用繊維及びゼラチンの開放低密度吸収性繊維構造を製造する方法が、WO1999/061518に開示されている。羊毛又はナイロン繊維とグルテンとの硬質フォームが、WO2008/096180に開示されている。セルロース繊維及びミクロフィブリル化セルロースを含む板紙の繊維状ウェブが、WO2013/160553に開示されている。セルロース繊維、ハイドロフォビン又はハイドロフォビン変異体、及び低分子量界面活性剤のフォームを調製するための方法が、WO2016/193547に開示されている。WO2015/036659は、天然繊維の水性懸濁液を泡立たせることによって成形繊維製品を形成する方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2014/011112号パンフレット
【文献】国際公開第1999/061518号パンフレット
【文献】国際公開第2008/096180号パンフレット
【文献】国際公開第2013/160553号パンフレット
【文献】国際公開第2016/193547号パンフレット
【文献】国際公開第2015/036659号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、時間とともに又は乾燥中に崩壊又は収縮しないという点で安定であるセルロース繊維ベースの多孔性材料を製造するための低コストの手順を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの側面は、セルロース繊維及びグルテンを含む多孔性材料であって、セルロース繊維のグルテンに対する質量比は、1:6~6:1であり、かつ、乾燥多孔性材料に基づいて計算して5~200kg/mの密度を有する、多孔性材料である。本発明の別の側面は、セルロース繊維及びグルテンを含む多孔性材料を調製するための方法であって、水を含む溶媒中でセルロース繊維及びグルテンを泡立たせる工程を含む方法である。本発明のさらなる側面は、多孔性材料の、包装及び緩衝用途、熱及び音の遮断、建築材料としての、及び水の吸着、並びに植物又は培地における使用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】左側に、セルロース繊維と、結合剤及び発泡剤としてのグルテンとを含む多孔性材料を示し、右側に、同じセルロース繊維と、発泡剤及び結合材料としての卵白とを含む材料を示す。右側の材料は、乾燥工程の間にほぼ50%の体積収縮があった。
図2】セルロース繊維及びグルテンを、6:1(左)、1.2:1(中央)、1:2(右)の質量比で含む3つの多孔性材料を示す。多孔性材料のいずれも、乾燥工程の間に有意な体積減少を示さなかった。
図3】セルロース繊維及びグルテンを1:9の質量比で含む材料の、A)は上面図を示し、B)は断面図を示す。
図4】セルロース繊維及びグルテンを2:1の比率で含み、密度が約46kg/mである多孔性材料の断面図を示す。
図5】セルロース繊維及びグルテンを2:1の比率で含み、密度が11kg/mのである多孔性材料の断面図を示す。
図6】A)はセルロース繊維及びグルテン調製された材料を示し、B)はセルロース繊維及びカゼインで調製された材料を示す。
図7】A)はセルロース繊維及びグルテンから調製された密度11kg/mの材料を示し、B)はセルロース繊維及びカゼインから調製された崩壊した材料を示す。
図8】平均アスペクト比が約3のセルロース粒子から調製された材料を示す。試料の厚さは約0.5cmである。
図9】A)は、アスペクト比が10をはるかに超えるセルロース繊維を示し、B)は、アスペクト比が約3のセルロース粒子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、セルロース繊維及びグルテンを含む多孔性材料であって、セルロース繊維のグルテンに対する質量比が1:6~6:1であり、かつ、乾燥多孔性材料に基づいて計算して5~200kg/mの密度を有する、多孔性材料に関する。
【0011】
本発明の側面及び/又は実施態様のうちの1つの文脈で説明される実施態様及び/又は特徴及び/又は利点は、本発明の他の全ての側面及び/又は実施態様にも準用することができることに留意されたい。本出願で使用される全ての単語及び略語は、別段の指示がない限り、関連技術においてそれらに通常与えられる意味を有すると解釈されるものとする。ただし、明確にするために、いくつかの用語を以下に具体的に定義する。
【0012】
「多孔性材料」という用語は、本明細書では、固体マトリックスと、相互接続された細孔の形態の空孔とを含む材料に使用される。空孔は、液体又は気体で満たされていてもよい。本発明による多孔性材料の空孔の総体積の少なくとも50%、少なくとも70%、又は少なくとも80%は、相互接続された細孔で占められ得る。「乾燥多孔性材料」という用語は、本明細書では、一定の質量に達するまで乾燥された多孔性材料に使用され、一定の質量とは、105℃±2℃の温度の乾燥を、105℃±2℃での少なくとも30分間の乾燥によって時間的に隔てられた2つの連続する計測値の差が0.1質量%を超えなくなるまで行った後に、多孔性材料が到達する質量である。
【0013】
「グルテン」という用語は、本明細書では、穀物の穀粒に存在し、架橋したグルテリン及びプロラミンから形成される水不溶性タンパク質に使用される。グルテリンとプロラミンとの間の架橋に起因して、グルテンは非常に弾力性のある物質である。グルテリンは、約20万から数百万の分子量を有する高分子量(HMW)サブユニット及び低分子量(LMW)サブユニットからなるタンパク質凝集体であり、分子間ジスルフィド結合、疎水性相互作用、及びその他の力によって安定化されている。グルテリンのグループには、小麦のグルテニン、ライ麦のセカリニン、大麦のホルデニン、及びトウモロコシのゼアニンが含まれる。グルテニンは、小麦粉の主要なタンパク質であり、水に不溶性である。プロラミンは、穀物の種子に含まれる植物貯蔵タンパク質のグループである。穀物のプロラミンには、小麦のグリアジン、大麦のホルデイン、ライ麦のセカリン、トウモロコシのゼイン、ソルガムのカフィリン、及びオート麦のアベニンが含まれ、スペルト小麦、コーラサンコムギ、エマー、アイコーン、ライコムギ、カムットなどの関連種にも含まれている。グリアジンは、小麦やイネ科Triticum内の他のいくつかの穀物に含まれる水溶性プロラミンであり、アルファグリアジン、ベータグリアジン、ガンマグリアジン、及びオメガグリアジンの4つのグループに分類できる単量体タンパク質のクラスである。好ましくは、本発明で使用されるグルテンは小麦グルテンである。
【0014】
グルテンは乳化剤及び発泡剤として機能し、したがって安定したフォームの形成を提供し得る。グルテンのプロラミン部分は、水中でのグルテンの発泡(フォーム形成)特性の要因となる。特にプロラミンであるグリアジンは良好な発泡特性を提供し得る。グルテンのグルテニン部分は、湿った多孔性材料に弾力性を提供し得る。本発明によるセルロース繊維からの多孔性材料の調製にグルテンを使用することにより、界面活性剤の存在は必要とされない。本明細書に開示される多孔性材料において、グルテンは、セルロース繊維ネットワークのための結合剤としても作用し得る。グルテンは、湿った多孔性材料に粘弾性特性を提供することができる。追加の利点は、グルテンの豊富な入手可能性と、その再生可能性及び低価格である。本発明による多孔性材料におけるグルテンの使用は、界面活性剤の存在を不必要にする。本明細書に開示される多孔性材料におけるセルロース繊維とグルテンとの間の相互作用は、乾燥プロセス中に崩壊しない安定な多孔性材料を得るためのさらなるタンパク質架橋剤、例えばグルタルアルデヒド等の存在を不要にする。
【0015】
セルロース繊維のグルテンに対する比率は、最終的なフォームの特性に影響を与える。本発明による材料において、セルロース繊維のグルテンに対する質量比は、1:6~6:1、1:4~6:1、1:5~5:1、1:4~5:1、1:4~4:1、1:2~4:1、1:3.5~3:1、又は1:2~2:1である。好ましくは、セルロース繊維のグルテンに対する質量比は、1:5~5:1、1:2~4:1、1:2~2:1であり、さらに好ましくは、1:2~2:1である。
【0016】
グルテンが多いと、材料に脆性と不均一性が生じる可能性がある。本材料による多孔性材料は、乾燥多孔性材料の総質量に基づいて計算して、少なくとも8質量%のグルテン、少なくとも12.5質量%のグルテン、少なくとも14質量%のグルテン、少なくとも17質量%のグルテン、少なくとも20質量%のグルテン、少なくとも25質量%、少なくとも35質量%のグルテン、又は少なくとも50質量%のグルテンを含み得る。本材料による多孔性材料は、乾燥多孔性材料の総質量に基づいて計算して、最大で85質量%のグルテン、最大で80質量%のグルテン、最大で75質量%のグルテン、最大で70質量%のグルテン、又は最大で65質量%のグルテンを含み得る。好ましくは、材料は、乾燥多孔性材料の総質量に基づいて計算して、最大で70質量%のグルテンを含む。
【0017】
セルロースは、全ての植物の細胞壁の主成分である。植物の種類や部分に応じて、さまざまな成分に存在し得る。たとえば木材では、セルロースはリグニンやヘミセルロースと共に存在する。葉では、セルロースはリグニンを含まないが、大量のヘミセルロースと共に存在する。綿の種子の毛では、セルロースはリグニンを含まないほぼ純粋な形で存在する。本発明による多孔性材料に適したセルロース繊維は、針葉樹又は広葉樹などの木材、葉、又は繊維作物(綿、亜麻及び麻を含む)に由来し得る。本発明による多孔性材料に適したセルロース繊維は、レーヨンやリヨセルなどの再生セルロース由来のものであってもよい。本発明で使用されるセルロース繊維は、リグニン又はヘミセルロース、あるいはその両方を含み得るか、又はセルロース繊維は、リグニン及びヘミセルロースを含まなくてもよい。好ましくは、セルロース繊維は木材に由来し、より好ましくは、セルロース繊維は、木材マトリックスから繊維を遊離させるパルプ化プロセスによって得られるパルプ繊維である。パルプ繊維は、機械パルプ化、例えば熱機械パルプ(TMP)又は化学熱機械パルプ(CTMP)などが得られる機械パルプ化、又は、化学パルプ化、例えば亜硫酸プロセス、ソーダプロセス又はオルガノソルブパルプ化により得られるクラフトパルプなどが得られる化学パルプ化によって遊離することができる。より好ましくは、セルロース繊維は、化学パルプ化プロセスによって遊離されたパルプ繊維である。各セルロースの様々な特性は、最終的な多孔性材料の特性に影響を与えます。セルロース繊維は、幅よりもかなり長い。セルロース繊維の平均幅は0.01~0.05mmであり得る。針葉樹の繊維長は2.5~4.5mm、広葉樹の繊維長は0.7~1.6mm、ユーカリの繊維長は0.7~1.5mmである。しかし、繊維長は、様々な成長場所などによってかなり変化する可能性がある。本明細書で開示す多孔性材料中のセルロース繊維は、0.1mm~65mm、0.1mm~10mm、又は0.5mm~65mm、又は0.5mm~10mm、又は0.5mm~7mmの長さを有し得る。繊維の長さは、材料に様々な機械的特性を提供し得る。繊維の長さに起因して、それらは互いに絡み合い、フォーム構造に強度をもたらす繊維相互結合を繊維にもたらし得る。本発明による多孔性材料中のセルロース繊維のアスペクト比、すなわち繊維長の繊維幅に対する比は、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、又は少なくとも100であり得る。これにより、乾燥手順中のフォーム構造の保存及び安定化がもたらされ、多孔質構造を崩壊させることなく、従来のオーブンで湿ったフォームを乾燥させることが可能になる。アスペクト比は最大6500、好ましくは最大2000にすることができる。
【0018】
セルロース繊維は、最終的な多孔性材料に様々な特性を提供するように改変することができる。例えば、本発明による多孔性材料を製造する場合、リン酸化繊維又は過ヨウ素酸塩酸化繊維を使用することもできる。本発明による多孔性材料は、乾燥多孔性材料の総質量に基づいて計算して、少なくとも8質量%、少なくとも12質量%、少なくとも14質量%、少なくとも17質量%、少なくとも20質量%、少なくとも25質量%、少なくとも30質量%、少なくとも40質量%、少なくとも50質量%、少なくとも55質量%、少なくとも60質量%、又は少なくとも65質量%のセルロース繊維を含み得る。本材料による多孔性材料は、乾燥多孔性材料の総質量に基づいて計算して、最大で85質量%のセルロース繊維、最大で80質量%のセルロース繊維、最大で75質量%のセルロース繊維、又は最大で70質量%のセルロース繊維を含み得る。好ましくは、多孔性材料は、乾燥多孔性材料の総質量に基づいて計算して、最大で80質量%のセルロース繊維を含む。
【0019】
多孔性材料は、乾燥工程の間に構造の崩壊又は体積の収縮に結果としてつながる可能性のある発泡又は乾燥の破壊を引き起こすことなく、多孔性材料に追加の所望の特性を導入することができる追加の成分、例えば防腐剤、難燃剤、疎水剤又は他の化学物質などを含み得る。このような添加剤の例は、ワックス、例えばカルナウバワックス、蜜蝋、又はアルケニルケテンダイマー(AKD)など;微結晶性セルロース;セルロースナノ材料、例えばセルロースナノ結晶、ミクロフィブリル化セルロース、又はナノフィブリル化セルロースなど;合成セルロース誘導体、例えばメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースなど;ヘミセルロース、例えばキシログルカン、キシランガラクトマンナン、又はガラクトグルコマンナンなど;他の多糖類、例えばデンプンや加工デンプンなど;ポリ酢酸ビニル(PVAc);ポリビニルアルコール(PVOH);キトサン;防腐剤、例えばプロピオン酸カルシウム及びソルビン酸カリウムなど;油、例えば菜種油又はひまし油などである。好ましい添加剤は、AKD及びキシログルカンである。本材料による多孔性材料は、グルテン、セルロース繊維、及び水のみから、他の成分なしで得ることができる。
【0020】
繊維間結合は、本発明に従って得られる多孔性材料の強度において重要な役割を果たす。遊離パルプ繊維は、木材チップ又は木粉などの他の木材粒子よりもアスペクト比が高く、この高いアスペクト比により、繊維間の結合強度が向上し、低密度(すなわち、50kg/m未満)であるが、強度と機械的特性は良好である多孔性材料の調製が可能になる。木材粒子は、荷重を担う繊維としてではなく、応力集中部として機能し得る。さらに、セルロース繊維を使用することによって得られる対向する表面間の機械的絡み合いによって、結合された繊維間の接合部の強度が決まる。
【0021】
多孔質セルロース繊維材料は、0.5cmよりも大きい厚さ、例えば0.5~50cm、0.5~20cm、又は1~10cmなどの厚さを有し得る。本発明による多孔性材料は、乾燥多孔性材料5~200kg/mの密度;乾燥多孔性材料5~150kg/m、5~100kg/m;5~70kg/m、5~50kg/m、8~200kg/m;8~150kg/m、8~100kg/m;8~70kg/m、又は8~50kg/m、20~200kg/m、20~150kg/m、20~100kg/m、20~70kg/m、又は30~70kg/mの密度を有し得る。好ましくは、材料は、乾燥多孔性材料20~200kg/m、20~150kg/m、20~100kg/m、20~70kg/m、又は30~70kg/mの密度を有する。密度の低い材料は、同じ組成の密度のより高い材料よりも構造が緩く、機械的特性が異なる可能性がある。これは、密度の低い材料では、材料の単位体積当たりに存在するセルロース繊維及びグルテンの量が少ないからである。多孔性材料の密度は、式(1)で計算される。
【数1】
ここで、密度は乾燥多孔性材料の密度(kg/m)、mは乾燥多孔性材料の質量(kg)、Vは乾燥多孔性材料の体積(m)である。
【0022】
本発明によるセルロース繊維及びグルテンを含む多孔性材料を調製するための方法は、セルロース繊維及びグルテンを、水を含む溶媒、好ましくは水中で、泡立たせることを含み、セルロース繊維のグルテンに対する質量比は1:6~6:1である。得られた多孔性材料は、湿った多孔性材料として、さらに排水又は乾燥することなしに使用することができる。しかし、多孔性材料を、続いて乾燥して、乾燥前の多孔性材料と本質的に同じ寸法を有する、すなわち、収縮なしの、例えば20%未満、又は15%未満、又は10%未満などしか体積が減少していない、乾燥多孔性材料を得ることができる。湿潤形態(例えば、例えば水性溶媒に懸濁されたときなど)のグルテンの粘弾性特性は、セルロース繊維及びグルテンの湿潤多孔性材料内への気泡の捕捉を促進する。グルテンの粘弾性特性も、乾燥前の湿った多孔性材料の安定性を高め、乾燥の際に多孔性材料が崩壊するのを防ぐ。グルテンを使用すると、セルロース繊維及びグルテンを含む混合物を水中で数日間保存することができ、後の段階で泡立たせることができる。さらに、水中のセルロース繊維及びグルテンのフォーム混合物、すなわち湿った多孔性材料を、乾燥する前に数日間保存することができる。
【0023】
本発明による方法の一実施態様では、水中のセルロース及びグルテンの混合物を形成させた後で、混合物を泡立たせる。混合物は、セルロース繊維を、グルテンの質量に対して、1:6~6:1、1:4~6:1、1:5~5:1、1:4~5:1、1:4~4:1、1:2~4:1、1:3.5~3:1、又は1:2~2:1で含む。混合物は、セルロース繊維懸濁液、例えばクラフトパルプ繊維懸濁液を混合し、グルテンを添加することによって得ることができる。セルロース繊維懸濁液は、最初に供給源からの乾燥セルロース繊維を温水又は冷水に浸し、続いて標準的な除細動型セルロース分解装置を使用して混合することによって達成することができる。実験室では、Vitamixer又はKenwoodミキサーを使用することもできる。セルロース懸濁液は、合計で計算されるように、水を含む溶媒、好ましくは水中で、セルロース懸濁液の総質量に基づいて計算して、1~40質量%、又は1~30質量%、又は2~20質量%又は4~17質量%のセルロース繊維濃度を有し得る。グルテンは、このセルロース懸濁液に、粉末として、あるいはグルテンを、水を含む溶媒、好ましくは水、と予備混合することによって得られる混合物として、添加することができる。このグルテン混合物は、水中でグルテン混合物の総質量に基づいて計算して、1~40質量%又は1~30質量%又は1~20質量%のグルテンの濃度を有し得る。セルロース懸濁液を、添加された水を含む溶媒中、好ましくは水中のグルテンと混合して、1~40質量%、又は1~30質量%、又は1~20質量%、3~20質量%、又は5~40質量%、又は5~20質量%、又は10~40質量%、又は10~20質量%の固形分濃度の、溶媒中のセルロース及びグルテンの混合物を形成する。より多くの固形分を使用することの利点は、材料を乾燥するときに蒸発させる必要のある溶媒の量がより少ないことである。セルロース懸濁液をグルテンと混合した後、混合物に気体を導入することによって泡立て(発泡)を行う。気体を導入するためのいくつかの異なる技術が可能であり、工業規模の場合、連続手順が好ましい。発泡、すなわち気体の導入は、混合物の機械的攪拌又はホイップ又は叩解によって、又は混合物に、気体、例えば空気、窒素又は二酸化炭素など、好ましくは空気を直接導入することによって行うことができる。気体は、例えば、混合物を気体で加圧することによって導入することができる。圧力を解放することにより、混合物は発泡する。空気含有量は、泡立て速度や攪拌の種類及び時間によって調整することができる。大量の気体又は空気を混合物に導入することができ、体積は最大数百パーセント、例えば200%以上まで、さらには最大1000%以上まで増加し得る。混合物中のセルロース及びグルテンの濃度は、導入できる気体又は空気の量に影響を与え得る。
【0024】
本発明による方法の代替の実施態様では、水を含む溶媒中、好ましくは水中のグルテンのフォームが形成された後、セルロース繊維の懸濁液がフォームに添加される。グルテンのフォームは、機械的混合又はホイップによって製造することができ、グルテンのフォームの総質量に基づいて計算して、1~40質量%、又は1~30質量%のグルテン濃度を有し得る。セルロース懸濁液は、最初に乾燥セルロース繊維を、高温又は低温の、水を含む溶媒、好ましくは水に浸漬し、続いて標準的なセルロース崩壊装置を使用して混合することによって準備することができる。実験室では、Vitamixer又はKenwoodミキサーを使用することができる。セルロース繊維懸濁液は、セルロース懸濁液の総質量に基づいて計算して、1~40質量%、又は1~30質量%、又は2~20質量%、又は4~17質量%の水中のセルロース繊維の濃度を有し得る。次に、このセルロース懸濁液をグルテンのフォームと混合して、セルロース、グルテン、及び水を含む溶媒、好ましくは水を含み、水中の固形分含量が1~40質量%、又は1~30質量%、又は1~20質量%、又は3~20質量%、又は5~20質量%、又は5~40質量%、又は10~40質量%、又は10~20質量%である、湿潤多孔性材料を形成させる。
【0025】
セルロース繊維は凝集する傾向があるため、セルロース繊維及びグルテンの十分に懸濁された混合物を準備した後で、混合物を泡立たせるために空気を導入することが有利である。発泡は、懸濁液中のセルロース繊維の分離を増強し、これにより、セルロース繊維間の複数の繊維間の相互結合が可能になる。繊維の相互結合はフォームを安定させ、材料に強度と構造を提供する。気泡がほとんどない低発泡性混合物では、セルロース繊維は、繊維間の相互結合がないか、又は非常に低い程度で、繊維の束がより多い程度で残存している。グルテンが発泡剤として作用する状態では、セルロース繊維のグルテンに対する比率も、セルロース繊維の凝集及び分離の程度に影響を及ぼす。グルテンを含むがセルロース繊維を含まない懸濁液では、グルテンの濃度が高いと、グルテンがそれ自体と架橋することがある。これは、混合が強すぎるため、又は水中でイオンや不純物が発生することにより、泡立てが妨げられる可能性があるからである。セルロース繊維をグルテンと混合した後に泡立たせることにより、湿った多孔性材料中のグルテン及びセルロース繊維のより高い濃度が可能になり、多孔性材料を乾燥させるために除去する必要のある水の量が少なくなる。
【0026】
湿った多孔性材料は、多孔性材料が15質量%未満、又は10質量%未満の水を含むまで乾燥させることができる。水の除去の最初の工程は、排水であり得る。排水は重力又は真空のいずれかによって促進され、それにより排水速度がさらに向上する。残留水は、湿った多孔性材料を、高められた温度、例えば20℃を超える温度、例えば25~150℃、50~100℃、又は50~125℃、又は50~150℃の温度にさらすことによって蒸発させることができる。あるいは、排水と加熱乾燥を同時に行うこともできる。さまざまなオーブン、例えばベーキングオーブン、硬化オーブン、乾燥オーブン、工業用バッチ及び連続オーブンなどを使用することができる。多孔性材料を内部から加熱するために、マイクロ波、又はマイクロ波と熱流との組み合わせを使用すると、乾燥時間をさらに短縮できる。多孔性材料の安定性に応じて、より低い温度及びより高い温度を使用することもできる。温度が高すぎると、多孔性材料が不均一になったり、材料が損傷したりする可能性がある。乾燥温度は、乾燥中に変更することもできる。例えば、低い初期温度を使用して、時間の経過とともに高くすることができる。水は、溶媒交換によって除去することもでき、例えばエタノールと溶媒交換によることができる。水は最初に排水によって除去し、次に残りの湿った多孔性材料を収集し、これをその後、型に充填するか又は形状を形作るために使用し、最終乾燥後に特定の形状を有する多孔性材料を得ることもできる。本発明による方法の利点は、多孔性材料を得るために適度な加熱のみ必要とされること、あるいは加熱さえも必要とされないことである。グルテンは安定性をもたらし、乾燥中に多孔性材料の内部に閉じ込められた空気を維持する。これは、界面活性剤を使用せずに得られる。グルテンは、多孔性材料のセルロース繊維ネットワークのためのバインダーとして機能し得る。したがって、グルテンの使用により、多孔性材料が乾燥中に収縮及び崩壊するのを防ぐ。本発明による乾燥多孔性材料は、湿気のある環境にある場合には、再び水を吸収し得る。
【0027】
様々な添加剤を、セルロース-グルテン混合物又は湿った多孔性材料に導入して、様々な所望の特性を導入する、例えば多孔性材料の疎水性を高めることができる。添加剤の例は、防腐剤、難燃剤、化学物質、例えばワックス、例えばカルナウバワックス、蜜蝋、又はアルケニルケテンダイマー(AKD)など;微結晶性セルロース;セルロースナノ材料、例えばセルロースナノ結晶、ミクロフィブリル化セルロース、又はナノフィブリル化セルロースなど;合成セルロース誘導体、例えばメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースなど;ヘミセルロース、例えばキシログルカン、キシランガラクトマンナン、又はガラクトグルコマンナンなど;他の多糖類、例えばデンプン及び加工デンプンなど;ポリ酢酸ビニル(PVAc);ポリビニルアルコール(PVOH);キトサン;防腐剤、例えばプロピオン酸カルシウム及びソルビン酸カリウムなど;油、例えば菜種油及びひまし油などである。好ましい添加剤は、AKD及びキシログルカンである。これらの添加剤は、湿潤状態で既に導入して、乾燥した多孔性材料でのより複雑な後修飾を回避することができる。これにより、既に乾燥した多孔性材料の後改質が、ほとんどの場合、表面の改質のみにつながり得ることと比較して、多孔性材料内の化学物質のより均一な分布がもたらされる。一部の添加剤は、排水と乾燥に影響を与え得る。多孔性材料は、ワックス、例えばAKD(アルケニルケテンダイマー)を使用することによって疎水性にすることができる。ワックスを粉末又はエマルジョンとして発泡混合物に導入すると、多孔質構造の崩壊を回避できるという利点がある。一方で、油又は溶解したワックスを使用すると、多孔質構造の崩壊が発生する可能性がある。水は、より低い温度、例えば約70℃での熱によって除去することができ、乾燥手順の最後に、温度を上げてワックスを溶かし、乾燥した多孔性材料を疎水性にすることができる。このアプローチにより、疎水性が多孔性材料内に外側から内側に均等に分散される。あるいは、疎水性特性は、多孔性材料を少なくとも150℃に、好ましくは短時間さらすことにより、添加剤を添加せずに得ることができる。
【0028】
本発明による方法は、セルロース、水、空気及びグルテンを含むセルロース繊維からの乾燥多孔質軽量材料の製造を可能にする。得られた多孔性材料は、生分解性であり、成分は再生可能である。湿った多孔性材料は、発泡直後に乾燥させることができ、材料の体積が維持される。つまり、排水及び乾燥中の収縮がないか、最小限に抑えられ、例えば体積の減少が、体積の20%未満、体積の15%未満、又は体積の10%未満などである。さらに、出発材料、セルロース繊維、グルテン、水及び空気が低コストの材料であるため、この方法は低コストのプロセスを提供する。本発明による方法で達成される湿った多孔性材料は、高い固形分も有し、これは、多孔性材料を乾燥させるために少量の水だけを除去すればよいことを意味する。泡立てが完了した直後に水を排出して、湿った多孔性材料を得ることができる。これは、乾燥に必要なエネルギーが少ないことを意味する。湿った多孔性材料の熱乾燥は、凍結乾燥又は有機溶媒乾燥を必要とせずに行うことができる。多孔性材料の密度は、湿った材料に導入する空気の量によって制御することができる。添加剤は、最終材料の密度にも影響を与え得る。多孔性材料は、AKDを使用するか、セルロース繊維とグルテン多孔性材料を単純に加熱処理するだけで、簡単に疎水性にすることができる。
【0029】
本発明による湿った多孔性材料は、収縮したり、乾燥した材料内にエアポケットを形成したりすることなく、高い厚さで乾燥させることができる。本発明による方法により、厚い多孔質セルロース繊維材料の製造、例えば最大で20cmまで又はそれ以上の厚さの多孔性材料などの製造を可能にする。好ましくは、本発明による方法は、0.5cmより大きい厚さ、例えば0.5~50cm、0.5~20cm、又は1~10cmなどの厚さを有する多孔質セルロース繊維材料の製造を可能にする。
【0030】
本発明による成分及び手順により、様々なサイズ及び制御された寸法の多孔性材料の製造が可能になる。湿った多孔性材料を使用して、所望の寸法を有する型に充填することができる。型に、対応する濡れた多孔性材料又は湿った多孔性材料を満たした後、乾燥させて、乾燥した多孔性材料を得る。型は、乾燥する前に余分な水の排水を可能にすることができる。乾燥中、水を、好ましくは、可能な限り多くの方向から、例えば、上部及び下部などの型の両側面から蒸発させることができる。
【0031】
本発明による多孔性材料は、包装及び緩衝用途、熱及び音の遮断、建築材料、及び水の吸着、並びに植物培地又は増殖培地に使用することができる。本発明は、包装材料、緩衝材料、断熱材料、遮音材料、建築材料、及び水吸着材料、並びに植物培地又は増殖培地のうちの1つ又は複数から選択される用途における多孔性材料の使用にも関する。本発明による多孔性材料は、良好な湿潤強度を有し、水などの液体に浸して使用して、材料の相互接続された細孔を前記液体で満たすことができる。多孔性材料を水性液体に浸すことにより、植物培地又は増殖培地としての有利な利点がもたらされる。したがって、本発明は、液体に浸漬された多孔性材料、及び液体に浸漬された多孔性材料の使用にも関する。
【実施例
【0032】
本発明による多孔性材料及びそれらの調製を、以下の実施例に例示す。
【0033】
湿った多孔性材料の体積増加の計算:
湿った多孔性材料の体積増加を、式(2)によって計算する。
【数2】
ここで、Vは、空気が混合物に導入される前の湿った材料のml単位の初期体積であり、Vは、空気が混合物に導入された後の湿った多孔性材料のml単位の最終体積である。このように、混合物の初期容量が250mlであり、最終体積が750mlになるまで混合物に空気を導入した場合、体積増加は200%になる。同じ式を使用して、既知の初期ボリューム(V)について、所望の体積増加を得るための最終ボリューム(Vf)を計算することができる。
【0034】
[例1]
熱DI水と粉末としてのグルテンとを使用して乾燥多孔性材料を調製する方法
60gのセルロース繊維(含水率5質量%の漂白軟材クラフトパルプ繊維)を、Vitamixerを使用して1300gの熱脱イオン(DI)水(80~100℃)に最高速度で1分間懸濁させた。30gの小麦グルテン(Lantmaenen)を、粉末として、このセルロース繊維懸濁液に添加し、続いてVitamixerを使用して最高速度で1分間、均一な混合物が得られるまで混合した。次に、混合物を室温に冷却した。次に、混合物を、ワイヤー泡立て器を備えたキッチンミキサー(我々の場合、ケンウッドシェフXLチタン)に移した。空気を、所望の体積増加に達するまで、最高速度で機械的に泡立てることによって混合物に導入させた(表1を参照)。泡立てが完了した後、得られた湿った(wet)多孔性材料を型(27cm*37cm*4.5cm)(底部は透水性ネット、フィルター、膜などであるもの)に入れた。これにより、多孔性材料の下から水を排出することができる。湿った多孔性材料を型に均一に適用し、湿った多孔性材料の表層をスパックルを使用して平らに作成した。次に、湿った多孔性材料を20℃で10~20分間放置して、湿った多孔性材料の下の透過性フィルター又はネットを通して水を排出させた。この排水の後、湿った多孔性材料を、空気流のある通常の乾燥オーブンを使用して、70℃で一晩乾燥させた。この方法で調製されたさまざまな多孔性材料(表1)は、排水中にも乾燥中にも有意な体積収縮を示さなかった。全ての試料は均質な多孔性材料を与えた。試料4は、試料1、2、及び3よりも低い凝集力を示した。
【0035】
【表1】
【0036】
表1の試料4の断面図を図5及び図7a)に示す。
【0037】
[例2]
グルテンの混合物を使用して乾燥多孔性材料を調製する方法
150gのセルロース繊維(含水率5質量%の漂白軟材クラフトパルプ繊維)を750gの水道水で湿らせた後、Kビーターを備えたKenwood Chef XLTitaniumを使用して混合した。150gの小麦グルテンを750gの水道水と、均一な懸濁液が得られるまで、Vitamixerを使用して、予め混合した。次に、グルテン懸濁液を、セルロース繊維懸濁液に、撹拌しながら加えた。このグルテン及びセルロース繊維の混合物に空気を導入することを、ワイヤー泡立て器を備えたケンウッドシェフXLチタン内で体積が300%に達するまで機械的に泡立てることによって行った。次に、得られた湿った多孔性材料を、底部に余分な水を排出できるネットを有する型(27cm*37cm*4.5cm)に均一に適用し、湿った多孔性材料の上面層を、スパックルを使用して平らに作製した。次に、湿った多孔性材料を、空気流のある通常の乾燥オーブンを使用して、80℃で一晩乾燥させた。得られた乾燥多孔性材料の密度は、約50kg/mであり、乾燥プロセス中に構造の何らの体積収縮も崩壊も見られなかった。この材料を、図1の左側に示す。
【0038】
[例3]
乾燥温度
60gのセルロース繊維(含水率5質量%の漂白軟材クラフトパルプ繊維)を、Vitamixerを使用して600gの水道水に最高速度で1分間懸濁させた。30gの小麦グルテン(Lantmaennen)を粉末としてセルロース繊維懸濁液に添加し、続いて、均質な懸濁液が得られるまで、Vitamixerを使用して最高速度で1分間混合した。次に、この混合物を、ワイヤー泡立て器を備えたケンウッドシェフXLチタンに移した。200%の体積増加に達するまで、最高速度で機械的泡立てることによって、混合物に空気を導入した。所望の体積増加に達したとき、得られた湿った多孔性材料を、底部にネットを有する型に入れて過剰な水を排出させ、湿った多孔性材料の上面層を、スパックルを使用して平らに作製した。乾燥温度を表2に従って調査した。湿った多孔性材料の6つの試料を上述したように準備し、対流式オーブン(Memmert、UF 110)で、乾燥するまでさまざまな温度及び最大気流で乾燥させた(表2を参照)。最高で150℃までの温度で乾燥された多孔性材料(試料1~5)は、乾燥プロセス中に体積収縮のない均質な構造を示した。しかし、多孔性材料を170℃で乾燥させると、多孔性材料の体積が増加した。この膨潤効果は、低温では観察されなかった。乾燥中の温度が高すぎる(170℃)と、多孔性材料に不均一性が生じた。
【0039】
【表2】
【0040】
[例4]
セルロース繊維のグルテンに対する様々な比率
セルロース繊維とグルテンの質量比(セルロース:グルテン)を表3に従って調査した。セルロース:グルテン比が異なる多孔性材料の試料を、以下に説明する方法に従って、表3に指定した成分及び体積増加で調製した。多孔性材料の調製中に使用した水の総量は800gであり、全ての異なる材料を200%の体積増加まで発泡させた。多孔性材料の調製方法は次のとおりである(例として表3の試料6を使用):60gのセルロース繊維(5質量%の含水量の漂白軟材クラフトパルプ繊維)を800gの水道水に、Vitamixerを使用して最高速度で1分間、懸濁させた。25gの小麦グルテン(Lantmaennen)を粉末としてセルロース繊維懸濁液に添加し、続いてVitamixerを使用して最高速度で1分間、均一な混合物が得られるまで混合した。次に、混合物を、ワイヤー泡立て器を備えたケンウッドシェフXLチタンに移した。空気を、200%の所望の体積増加に達するまで、最高速度で機械的に泡立てることによって混合物に導入した。泡立てが完了した後、得られた湿った多孔性材料を、底部が透水性ネット、フィルター、膜などである型に入れた。これにより、多孔性材料の下から水を排出することができる。湿った多孔性材料を型に均一に適用し、湿った多孔性材料の表層を、スパックルを使用して平らに作成した。
【0041】
試料1及び2は、ワイヤー泡立て器を備えたKenwood Chef XL Titaniumを使用して空気を導入した際に、体積が増加しなかった(つまり、材料が発泡しなかった)。したがって、2mlの界面活性剤(英国:Fairy(ブランド)、5~20%の陰イオン性界面活性剤、5~15%の非イオン性界面活性剤、メチルイソチアゾリノン、フェノキシエタノール、及び香水を含む、Procter&Gamble社による液体手動食器洗い用Yes洗剤)を水で50%wtに希釈して添加し、表3の残りの試料と同様に、体積が増加することを可能にした。全ての多孔性材料は、空気流のある通常の乾燥オーブンを使用して、80℃で一晩乾燥しました。
【0042】
【表3】
【0043】
試料3~11から得られた乾燥多孔性材料は、安定した(つまり、崩壊しない)均一な構造を有し、比較的硬く感じた。これらの試料が示した優れた構造的及び機械的特性の結果として、これらの試料は、例えばのこぎり、ナイフ、又はカッターを使用して、さまざまなサイズに切断することができた。試料1~2から得られた乾燥材料は、構造安定性がはるかに悪く、機械的特性が乏しいためにバラバラにならないように注意して取り扱う必要のある、境界のないセルロース繊維ネットワークに似ていた。試料12は、非常に脆く不均一であり、構造に大きな穴及び空洞があった。試料12の密度は計算することができなかった。試料3、8、及び10を図2に示す(5.7:1(左)、1.2:1(中央)、及び1:2.1(右))。試料12を図3a(上面図)及び3b(断面図)に示す。ここでは、構造内に大きな穴と空洞が見られる。
【0044】
[例5]
AKDによる疎水性多孔性材料の調製
AKDを、エマルジョン又は粉末のいずれかとして、発泡(すなわち、機械的ホイップによる空気の導入)手順に直接導入した。粉末としての導入は、その単純さから最終的に好まれた。60gのセルロース繊維(含水率5質量%の漂白クラフト軟材パルプ繊維)を300gの脱イオン水で湿らせた後、Kビーターを備えたKenwood Chef XLTitaniumを使用して懸濁させた。60gのグルテンを最初にVitamixerを使用して300gの脱イオン水に均質な懸濁液が得られるまで懸濁させ、次にパルプ混合物に移した。次に、AKD粉末(表4に指定したもの)を混合物に導入し、続いて、ワイヤー泡立て器を備えたKenwood Chef XLTitaniumを使用して、所望の体積増加(この場合は300%)まで混合物を発泡させた。このようにして得られた湿った多孔性材料を、底部にネットを有する型に均一に適用し、湿った多孔性材料の表層を、スパックルを使用して平らに作製した。乾燥は、最初に低温(60℃)で実行し、湿った多孔性材料の収縮を引き起こすAKDの溶融を回避した。乾燥工程の最後に、AKDを溶融させて繊維を疎水性にするために、温度を100℃に上げた。このようにして、得られた多孔性材料は、外側から内側まで、多孔性材料全体に均一に分布した疎水性特性を示しながら、有意な体積収縮を全く示さなかった。結果を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
[例6]
疎水性熱処理多孔性材料
湿った多孔性材料の試料を、表5に指定したグルテン及びセルロース繊維の量を使用して、以下に説明する方法に従って調製した。この湿った多孔性材料の調製の際に使用した水の総量は1500gであり、750gはセルロース繊維を懸濁するために使用し、750gはグルテンの懸濁液を調製するために使用した。多孔性材料の調製方法は、次のとおりである(例として表5の試料2を使用):150gのセルロース繊維(5質量%の含水率の漂白軟材クラフトパルプ繊維)を、750gの水道水で湿らせた後、Kビーターを備えたケンウッドシェフXLチタンを使用して混合した。75gの小麦グルテンを750gの水道水と、均一な懸濁液が得られるまで、Vitamixerを使用して予め混合した。次に、グルテン懸濁液を、セルロース繊維懸濁液に、混合しながら加えた。このグルテン及びセルロース繊維の混合物に、空気を、ワイヤー泡立て器を備えたケンウッドシェフXLチタンで、体積が300%に達するまで機械的に泡立てることによって導入した。次に、得られた湿った多孔性材料を、底部に余分な水を排出できるネットを有する型(27cm*37cm*4.5cm)に均一に適用し、湿った多孔性材料の上面層を、スパックルを使用して平らに作製した。次に、湿った多孔性材料を、空気流のある通常の乾燥オーブンを使用して、80℃で一晩乾燥させた。その後、乾燥した多孔性材料に疎水性を与えるために、150℃で3時間の第2の熱処理を行った。150℃での熱処理後も機械的特性は維持されたが、多孔性材料は、特にその表面が、褐色になった。組成物中に存在するグルテンが多いほど、褐変効果が大きくなる。表5に示すように、低グルテンレベルでも疎水性が観察された。
【0047】
【表5】
【0048】
[例7]
様々なセルロース繊維
多孔性材料を、以下に説明する方法に従って、ただし表6に指定した種類のセルロース繊維を使用して調製した。多孔性材料の調製方法は次のとおりである(例として表6の試料2を使用):60gのセルロース繊維(漂白針葉樹クラフトパルプ繊維)を、Vitamixerを使用して最高速度で1分間、600gの水道水に懸濁させた。30gの小麦グルテン(Lantmaennen)を粉末としてセルロース繊維懸濁液に添加し、続いてVitamixerを使用して最高速度で1分間、均一な混合物が得られるまで混合した。次に、混合物を、ワイヤー泡立て器を備えたケンウッドシェフXLチタンに移した。空気を、200%の所望の体積増加に達するまで最高速度で機械的に泡立てることによって、混合物に導入した。泡立てが完了した後、得られた湿った多孔性材料を、底部が透水性ネット、フィルター、膜などである型に入れた。これにより、多孔性材料の下から水を排出させることができる。湿った多孔性材料を型に均一に適用し、湿った多孔性材料の表層をスパックルを使用して平らに作成した。このように調製した多孔性材料はいずれも、乾燥プロセス中に有意な体積収縮を全く示さなかった。さまざまなセルロース繊維源から調製された多孔性材料の特性を、表6に示す。
【0049】
【表6】
【0050】
[例8]
多孔性材料の寸法
実施例2に従って調製した湿った多孔性材料を使用して、長さ37cm、幅27cm、及び厚さ20cmの型に充填した。乾燥工程の間、水を、可能な限り多くの方向から、通常は上下から蒸発させた。多孔性材料は乾燥工程の間に収縮しなかった。
【0051】
[例9]
様々な密度
150gのセルロース繊維(含水率5質量%の漂白軟材クラフトパルプ繊維)を1000gの水道水で湿らした後、Kビーターを備えたKenwood Chef XLTitaniumを使用して混合した。75gの小麦グルテンを500gの水と、均一な懸濁液が得られるまでVitamixerを使用して、予め混合した。次に、この混合物を、セルロース繊維懸濁液に混合しながら加えた。空気を、ワイヤー泡立て器を備えたKenwoodChef XL Titaniumで目的の体積増加に達するまで機械的に泡立てることのよって、混合物に導入した(表7を参照)。湿った多孔性材料を、底部にネットを設けて余分な水分を排出する型に均一に適用し、湿った多孔性材料の表層を、スパックルを使用して平らに作成した。次に、多孔性材料を、空気流のある通常の乾燥オーブンを使用して、80℃で一晩乾燥させた。個々の体積増加に対する得られた乾燥多孔性材料の密度を表7に示す。表7から分かるように、同じセルロース:グルテン比及び固形分において、湿った多孔性材料に導入される空気が多いほど(つまり、体積増加が大きいほど)、乾燥多孔性材料の密度が低くなる。
【0052】
【表7】
【0053】
表7の試料3の断面図を図4に示す。
【0054】
[例10]
剥離を減らすための添加剤
1125gのセルロース繊維(含水率5質量%の漂白軟材クラフトパルプ繊維)を6500gの水道水で湿らせた後、Kビーターを備えたRouletteC-Line60Lミキサーを使用して中速で15分間混合して、セルロース繊維の均質な懸濁液を得た。次に、Vitamixer XLを使用して、45gのキシログルカン(TKP)を1000gの熱湯に懸濁させた。次に、キシログルカン懸濁液を、セルロース繊維懸濁液に加え、得られた混合物を、ルーレットC-ライン60Lミキサーでさらに15分間混合した。次に、563gの小麦グルテンを2750gの水道水に、中速でVitamixer XLを使用して攪拌しながら、ゆっくりと連続的に添加した。混合を、グルテンの均一な水中懸濁液が得られるまで続けた。次に、グルテン懸濁液を、キシログルカン及びセルロース繊維の混合物に加え、その混合を、均一な混合物を得ることを確保するために、Kビーター(ルーレットミキサー)を使用して最高速度で5~10分間続けた。この時点で、ルーレットC-ライン60LミキサーのKビーターをワイヤー泡立て器に交換し、グルテン、セルロース繊維、キシログルカンの水性混合物に、体積が300%増加するまで機械的にホイップすることによって、空気を導入しました。次に、得られた湿った多孔性材料を、底部に水分を蒸発させるネットを有する型(95cm*55cm*4.5cm)に均一に適用し、湿った多孔性材料の上面層を、スパックルを使用して平らに作製した。次に、湿った多孔性材料を、空気流のある通常の乾燥オーブンを使用して、80℃で一晩乾燥させた。得られた乾燥多孔性材料の密度は約40kg/mであり、乾燥工程中に体積収縮も構造の崩壊も全く見られなかった。乾燥した多孔性材料は、キシログルカンの非存在下の同じ多孔性材料よりも剥離が少なかった。
【0055】
[例11]
比較例:結合剤及び発泡剤として卵白を使用
4℃の卵白300gを、ワイヤー泡立て器を備えたKenwood Chef XLTitaniumで固く泡立てた。乾燥質量が約95%のセルロース繊維(含水率5質量%の漂白軟材クラフトパルプ繊維)60gを細かく裂き、室温で500gの脱イオン水に浸した。その後、浸漬したセルロース繊維及び水を、Kビーターを備えたKenwood Chef XLTitaniumを用いて約10分間混合した。次に、泡立てた卵白を湿ったセルロース繊維に加え、この新しい混合物を、ワイヤー泡立て器を備えたケンウッドシェフXLチタンを使用して泡立てて、湿った多孔性材料を得た。泡立て/発泡は、湿った多孔性材料の体積が122%増加したときに、停止した。この湿った多孔性材料を、底部に余分な水を排出するためのネットを有する型(27cm*37cm*4.5cm)に均一に適用し、湿った多孔性材料の表層を、スパックルを使用して平らに作成した。次に、多孔性材料を、空気流のある通常の乾燥オーブンを使用して、80℃で一晩加熱した。このようにして得られた乾燥多孔性材料は、乾燥工程中にその厚さの半分に収縮し、乾燥多孔性材料の最終密度は61kg/mであった。この材料を、図1の右側に示した(図1の左側に示されている材料は、例3で得られた乾燥多孔性材料であり、小麦グルテンを結合及び発泡剤として使用して多孔性材料を製造し、乾燥プロセス中の収縮は全く見られなかった)。この乾燥多孔性材料は、引張強度が非常に弱く、材料をわずかに引っ張るとバラバラになるため、慎重に取り扱う必要があった。
【0056】
卵白を使った別の実験では、乾燥質量が約95%のセルロース繊維(含水率5 質量%の漂白軟材クラフトパルプ繊維)60gを細かく裂き、室温で1300gの脱イオン水に10分間浸した。次に、湿ったセルロース繊維及び水を、Vitamixerを使用して最高速度で1分間混合して、均一なセルロース繊維懸濁液を得た。懸濁液を室温で10分間放置した後、Vitamixerを使用して1分間再度混合した。卵白40g(4℃)を、セルロース繊維懸濁液に加えた後、Vitamixerを使用して最高速度で1分間、均一な混合物が得られるまで混合した。次に、混合物を、ワイヤー泡立て器を備えたケンウッドシェフXLチタンに移した。空気を、混合物に、最高速度での機械的泡立てによって導入したが、混合物は泡立たず(すなわち、混合物の体積が増加せず)、したがって、多孔質の湿った材料は得られなかった。多孔性材料を得ることができるようにするために、4mlのYes洗剤(脱イオン水で50%に希釈)を混合物に加え、湿った多孔性材料の体積が70%増加するまで機械的泡立てを続けた。これ以上の空気は、湿った多孔性材料により多くのホイップを適用しても、混合物に導入することはできなかった(すなわち、混合物の体積がそれ以上増加しなかった)。次に、この発泡材料を、底部にネットを有する型(27cm*37cm*4.5cm)に均一に適用し、過剰な水を排出させ、湿った材料の表層を、スパックルを使用して平らに作製した。次に、空気流のある通常の乾燥オーブンを使用して、湿った材料を一晩80℃で加熱した。このようにして得られた乾燥材料は、乾燥工程中に4.5cmから1.5cmに収縮し、乾燥材料の最終密度は80kg/mであった。このようにして得られた乾燥材料は、セルロース繊維と卵白を含み、卵白がセルロース繊維と混合する前に泡立てられた、前述の材料例と比較して、より強い引張強度を示した。
【0057】
[例12]
比較例:発泡剤としてゼラチンを使用
乾燥質量が約95%のセルロース繊維(含水率5質量%の漂白針葉樹クラフトパルプ繊維)60gを、細かく裂いた。室温の脱イオン水1300gを、このセルロース繊維に加え、約10分間浸したままにした。次に、湿ったセルロース繊維及び水を、Vitamixerを使用して最高速度で1分間混合して、均一な繊維懸濁液を得た。30gの乾燥ゼラチン粉末を、セルロース繊維懸濁液に添加し、続いてVitamixerを使用して最高速度で1分間、均一な混合物が得られるまで混合した。次に、混合物を、ワイヤー泡立て器を備えたケンウッドシェフXLチタンに移した。空気を、混合物に、最高速度で機械的に泡立てることによって導入し、その機械的泡立てを、湿った材料の体積が150%増加するまで続けた。次に、発泡材料を、底部にネットを有する型(27cm*37cm*4.5cm)に均一に適用して過剰な水を排出させ、湿った材料の表層を、スパックルを使用して平らに作製した。次に、空気流のある通常の乾燥オーブンを使用して、材料を一晩80℃で加熱した。このようにして得られた乾燥材料の厚さは、乾燥工程中に4.5cmから2cmに収縮し、乾燥した多孔性材料の最終密度は64kg/mであった。
【0058】
[例13]
比較例:結合剤及び発泡剤としてカゼインを使用
乾燥質量が約95%のセルロース繊維(含水率5%の漂白軟材クラフトパルプ繊維)120gを、600gの水で湿らせた後、Kビーターを備えたケンウッドシェフXLチタンを使用して混合した。60gのカゼイン(ウシのカゼインナトリウム塩、Sigma-Aldrich)を、600gの水と、均一な懸濁液が得られるまでVitamixerを使用して予め混合した。次に、この混合物を、セルロース繊維懸濁液に、混合しながら加えた。空気を、混合物に、ワイヤー泡立て器を備えたケンウッドシェフXLチタンを使用して機械的泡立て器で360%の体積増加に達するまで泡立てることによって、導入した。このようにして得られた湿った材料を、底部にネットを有する型(27cm*37cm*4.5cm)に均一に適用した。泡の表面を、スパックルで平らに作成した。次に、この材料を、空気流のある通常の乾燥オーブンを使用して、80℃で一晩乾燥させた。乾燥した材料は、崩壊した構造を示し(材料は、オーブン内でわずか10分後にすでに崩壊した)、40%を超える最終収縮を示した(材料は乾燥後の高さが約2.6cmであった)。さらに、乾燥した材料の構造は非常に弱く、層間剥離が見られ、材料が不均一であることを示唆する繊維束の存在が見られた(図6b)。フォームの最終密度は37.9kg/mであった。
【0059】
比較として、セルロース繊維及びカゼインについて上で説明したものと全く同じ材料と方法を使用して、セルロース繊維及びグルテンを含む多孔性材料を製造した。この場合、乾燥質量が約95%のセルロース繊維(含水率5%の漂白軟材クラフトパルプ繊維)120gを、600gの水で湿らせた後、Kビーターを備えたケンウッドシェフXLチタンを使用して混合した。60gの小麦グルテン(Lantmaennen)を、600gの水と、Vitamixerを使用して均一な懸濁液が得られるまで予め混合した。次に、この混合物を、セルロース繊維懸濁液に、混合しながら加えた。空気を、この混合物に、ワイヤー泡立て器を備えたケンウッドシェフXLチタンを使用して360%の体積増加に達するまで機械的泡立て器で泡立てることによって導入した。このようにして得られた湿った多孔性材料を、底部にネットを有する型(27cm*37cm*4.5cm)に均一に適用した。泡の表面は、スパックルで平らに作成した。次に、この多孔性材料を、空気流を備えた通常の乾燥オーブンを使用して、80℃で一晩乾燥させた。乾燥した材料は、乾燥中の収縮が最小限の安定した構造を示した(図6a)。セルロース繊維及びグルテンを含む多孔性材料の構造は、均一な構造であり、最終密度は約30kg/mであった。
【0060】
[例14]
比較例:低密度フォーム(約15kg/m)を調製するための結合剤及び発泡剤としてカゼインを使用
乾燥質量が約95%のセルロース繊維(含水率5%の漂白軟材クラフトパルプ繊維)60gを、600gの水で湿らせた後、Kビーターを備えたケンウッドシェフXLチタンを使用して混合した。30gのカゼイン(ウシのカゼインナトリウム塩、Sigma-Aldrich)を、700gの水と、Vitamixerを使用して均一な懸濁液が得られるまで予め混合した。次に、この混合物を、セルロース繊維懸濁液に、混合しながら加えた。空気を、この混合物に、ワイヤー泡立て器を備えたケンウッドシェフXLチタンを使用して機械的泡立て器で体積が510%に増加するまで泡立てることによって導入し、最終的な材料の密度が約15kg/mになるようにした。このようにして得られた湿った材料を、底部にネットを有する型(27cm*37cm*4.5cm)に均一に適用した。泡の表面を、スパックルで平らに作成した。次に、この材料を、空気流のある通常の乾燥オーブンを使用して80℃で一晩乾燥させた。乾燥した材料は、完全に崩壊した構造を示し(材料は、オーブン内で数分後にすでに崩壊し始めた)、3次元フォーム構造よりもフィルム(又はウェブ)に似た最終構造を示した(図7b)。高さの収縮は、乾燥前の初期値の90%以上であった。図7aは、例1(試料4)に従って得られた、セルロース繊維及びグルテンが約2:1の比率であり、最終密度が11kg/mであるフォームの写真を示す(図5のフォームの断面図)。
【0061】
[例15]
比較例:アスペクト比の低いセルロース微粒子を使用
セルロース粒子を、初期アスペクト比が10を超える長い繊維を、大部分の粒子が約3の低アスペクト比になるまで粉砕することによって得た。セルロース繊維(高アスペクト比>10)とセルロース粒子(アスペクト比約3)とを比較する図9を参照されたい。60gのセルロース粒子を、300gの水道水で湿らせた後、KenwoodのシェフXLチタンを使用して混合した。30gの小麦グルテンを、300gの水道水と、Vitamixerを使用して均一な懸濁液が得られるまで予め混合し、次にセルロース粒子懸濁液に加えた。グルテン、セルロース粒子、及び水のこの混合物は、グルテンとより高いアスペクト比を有するセルロース繊維との混合物ほど均一には見えず、明確な水の分離が見られた。空気を、この新しい混合物に、ケンウッドのシェフXLチタン(ワイヤー泡立て器を装備)を使用して機械的に泡立てることによって導入した。混合物は、体積が360%に増加するまで泡立てた(これにより、密度が約30kg/mになるはずである)。このようにして得られた湿った材料を、底部にネットを有する型(27cm*19cm*4.5cm)に均一に適用した。湿った発泡材料をオーブンに入れる前に、水を約5分間排出させた。材料を80℃で一晩乾燥させた。乾燥した材料は、高さが0.5cm未満の崩壊した構造を示した。これは、乾燥手順中に材料が高さのほぼ90%収縮したことを意味する。乾燥した材料の構造はコンパクトな板に似ていて、硬いが同時に非常に壊れやすく、その構造には多くの不均一性があった(図8)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A)】
図9B)】