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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】画像検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240606BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240606BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G06T7/00 350B
G06T7/00 610
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020024531
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021128130
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】池田 泰之
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/092614(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/155123(WO,A1)
【文献】特開2007-114843(JP,A)
【文献】特開2009-266839(JP,A)
【文献】特開2008-082821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01N 23/00-G01N 23/2276
G06T 1/00-G06T 7/90
G06N 3/00-G06N 99/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の画像を撮影する撮影部と、
前記画像から複数の特徴量を抽出する抽出部と、
前記複数の特徴量がそれぞれ閾値を越えるか否かによって、前記対象物が良品であるか欠陥品であるかの分類を行う分類部と、
前記良品であるか前記欠陥品であるかのラベル付けがされた複数の学習用画像から得られた複数の特徴量それぞれについて、前記複数の学習用画像に含まれる前記欠陥品のラベル付けがされた任意の学習用画像の対象物を前記分類部が前記良品であると分類することである前記欠陥品の見逃しを所定割合以下とし、前記複数の学習用画像に含まれる前記良品のラベル付けがされた任意の学習用画像の対象物を前記分類部が前記欠陥品であると分類することである前記欠陥品の誤検出が少なくなるように前記閾値を決定する決定部と、
を備え
前記決定部は、前記複数の特徴量それぞれに関する前記閾値の初期値を、前記欠陥品の誤検出がなくなるように設定し、前記複数の特徴量いずれかについて、前記欠陥品の見逃しが減少し、前記欠陥品の誤検出の増加が小さくなるように、前記閾値を更新することを繰り返し、前記閾値を決定する、画像検査装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記複数の特徴量それぞれについて、前記欠陥品の見逃しがなくなり、前記欠陥品の誤検出が最小となるように前記閾値を決定する、
請求項1に記載の画像検査装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記閾値についての複数の候補について、前記欠陥品の見逃しをゼロとし且つ前記欠陥品の誤検出が最小となる組み合わせを探索する、 請求項に記載の画像検査装置。
【請求項4】
ユーザ入力に基づいて、前記閾値を調整する調整部をさらに備え、
前記分類部は、調整前後の前記閾値を用いて前記対象物が前記良品であるか前記欠陥品であるかの分類を行い、
前記決定部は、ユーザ入力に基づいて、前記閾値を調整前の値とするか、前記閾値を調整後の値とするか決定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像検査装置。
【請求項5】
前記分類部は、調整前後の前記閾値を用いて、前記複数の学習用画像について前記対象物が前記良品であるか前記欠陥品であるかの分類を行い、前記欠陥品の見逃し及び前記欠陥品の誤検出の少なくともいずれかの数又は割合を算出する、
請求項4に記載の画像検査装置。
【請求項6】
調整前後の前記閾値を用いて前記対象物が前記良品であるか前記欠陥品であるかを前記分類部によって分類した結果を、前記複数の特徴量のうち少なくとも2つの特徴量を座標軸とする散布図として表示する表示部をさらに備える、
請求項4又は5に記載の画像検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物が良品であるか欠陥品であるか検査するため、対象物の画像を撮影して、画像に基づいて検査を行う画像検査装置が用いられている。画像検査装置は、画像から特徴量を算出し、特徴量と閾値を比較することで、対象物の検査を行うことがある。
【0003】
例えば下記特許文献1には、異常の検知対象から収集されたデータを学習した学習結果と、テスト期間において異常の検知対象から観測されたデータとに基づいて異常度を算出し、当該異常度を閾値と比較することで異常の発生を検知し、異常の見逃し及び誤検知の有無に基づいて閾値を決定する閾値決定装置が記載されている。閾値決定装置は、誤検知が発生した場合には閾値を増加させ、見逃しが発生した場合には閾値を減少させる。
【0004】
また、下記特許文献2には、誤検出データの特徴ベクトルをクラスタリングして複数のクラスタに分類し、複数のクラスタの1つを分割する分割面を決定する分割面を決定し、その分割面に基づいて学習対象の分岐ノードにおけるパラメータを決定するパラメータ学習方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-148350号公報
【文献】特開2009-282631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献1に記載の技術では、単一の異常度と閾値とを比較しているが、対象物の画像から算出される複数の特徴量それぞれについて閾値を設定して、対象物が良品であるか欠陥品であるか検査する場合がある。その場合、特徴量の数が増えるに従って閾値の組み合わせが急激に増加し、適切な閾値を設定するために要する時間が増大する。また、時間をかけても適切な閾値が設定できない場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、対象物の画像から算出される複数の特徴量について、より適切な閾値をより迅速に決定することができる画像検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る画像検査装置は、対象物の画像を撮影する撮影部と、画像から複数の特徴量を抽出する抽出部と、複数の特徴量がそれぞれ閾値を越えるか否かによって、対象物が良品であるか欠陥品であるかの分類を行う分類部と、良品であるか欠陥品であるかのラベル付けがされた複数の学習用画像から得られた複数の特徴量それぞれについて、欠陥品の見逃しを所定割合以下とし、欠陥品の誤検出が少なくなるように閾値を決定する決定部と、を備える。
【0009】
この態様によれば、画像から複数の特徴量を抽出する場合であっても、複数の特徴量について適切な閾値を迅速に決定することができ、欠陥品の見逃しを所定割合以下とすることができる。
【0010】
上記態様において、決定部は、複数の特徴量それぞれについて、欠陥品の見逃しがなくなり、欠陥品の誤検出が最小となるように閾値を決定してもよい。
【0011】
この態様によれば、欠陥品の見逃しをゼロとして、欠陥品の誤検出が最小となるように、複数の特徴量に関する閾値を決定することができる。
【0012】
上記態様において、決定部は、複数の特徴量それぞれに関する閾値の初期値を、欠陥品の誤検出がなくなるように設定し、複数の特徴量いずれかについて、見逃しが減少し、誤検出の増加が小さくなるように、閾値を更新することを繰り返し、閾値を決定してもよい。
【0013】
この態様によれば、欠陥品の見逃しを所定割合以下としつつ、欠陥品の誤検出ができるだけ少なくなるように閾値を決定することができる。
【0014】
上記態様において、ユーザ入力に基づいて、閾値を調整する調整部をさらに備え、分類部は、調整前後の閾値を用いて対象物が良品であるか欠陥品であるかの分類を行い、決定部は、ユーザ入力に基づいて、閾値を調整前の値とするか、閾値を調整後の値とするか決定してもよい。
【0015】
この態様によれば、複数の特徴量に関する閾値をユーザ入力に基づいて調整し、分類性能が向上するか否かを確認しながら、閾値を調整前の値とするか、調整後の値とするか決定することができる。
【0016】
上記態様において、分類部は、調整前後の閾値を用いて、複数の学習用画像について対象物が良品であるか欠陥品であるかの分類を行い、欠陥品の見逃し及び欠陥品の誤検出の少なくともいずれかの数又は割合を算出してもよい。
【0017】
この態様によれば、複数の特徴量に関する閾値をユーザ入力に基づいて調整した場合に、欠陥品の見逃し及び欠陥品の誤検出の少なくともいずれかの数又は割合を確認しながら、閾値を調整前の値とするか、調整後の値とするか決定することができる。
【0018】
上記態様において、調整前後の閾値を用いて対象物が良品であるか欠陥品であるかを分類部によって分類した結果を、複数の特徴量のうち少なくとも2つの特徴量を座標軸とする散布図として表示する表示部をさらに備えてもよい。
【0019】
この態様によれば、対象物が良品であるか欠陥品であるかを分類した結果を、視覚的に把握することができ、分類の妥当性が判断しやすくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、対象物の画像から算出される複数の特徴量について、より適切な閾値をより迅速に決定することができる画像検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る画像検査装置の構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る画像検査装置の検査部の物理的構成を示す図である。
図3】本実施形態に係る画像検査装置により設定された閾値の初期値を示す図である。
図4】本実施形態に係る画像検査装置により更新された閾値を示す図である。
図5】本実施形態に係る画像検査装置により決定された閾値を示す図である。
図6】本実施形態に係る画像検査装置により実行される閾値決定処理のフローチャートである。
図7】本実施形態に係る画像検査装置により実行される閾値調整処理のフローチャートである。
図8】本実施形態に係る画像検査装置により設定された閾値の初期値を示す図である。
図9】本実施形態に係る画像検査装置により決定された閾値を示す図である。
図10】本実施形態に係る画像検査装置により摂動を加えた閾値を示す図である。
図11】本実施形態に係る画像検査装置により決定された閾値を示す図である。
図12】本実施形態に係る画像検査装置により実行される閾値決定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る画像検査装置100の構成を示す図である。画像検査装置100は、検査部10、照明20及び撮影部30を備える。
【0024】
照明20は、対象物200に光を照射する。照明20は、拡散光を対象物200に照射するものであってよく、リング状やドーム状の形状を有するものであってよい。
【0025】
撮影部30は、照明20によって照らされた対象物200の画像を撮影する。撮影部30は、可視光の画像を撮影してよいが、赤外線や紫外線等の画像を撮影してもよい。また、撮影部30は、静止画を撮影するものであってよいが、動画を撮影するものであってもよい。
【0026】
検査部10は、抽出部11、分類部12、決定部13、調整部14及び表示部を有する。抽出部11は、画像から複数の特徴量を抽出する。特徴量は、画像に基づいて算出される任意の量を含んでよい。分類部12は、複数の特徴量がそれぞれ閾値を越えるか否かによって、対象物200が良品であるか欠陥品であるかの分類を行う。閾値は、1つの特徴量について上限閾値と下限閾値とが設定されてよい。分類部12は、複数の特徴量それぞれが下限閾値以上、上限閾値以下である場合に良品であると分類し、複数の特徴量のいずれかが下限閾値未満であるか、上限閾値より大きい場合に欠陥品であると分類してよい。
【0027】
決定部13は、対象物200が良品であるか欠陥品であるかのラベル付けがされた複数の学習用画像から得られた複数の特徴量それぞれについて、欠陥品の見逃しを所定割合以下とし、欠陥品の誤検出が少なくなるように閾値を決定する。このように閾値を決定することで、画像から複数の特徴量を抽出する場合であっても、複数の特徴量について適切な閾値を迅速に決定することができ、欠陥品の見逃しを所定割合以下とすることができる。
【0028】
決定部13は、複数の特徴量それぞれについて、欠陥品の見逃しがなくなり、欠陥品の誤検出が最小となるように閾値を決定してもよい。これにより、欠陥品の見逃しをゼロとして、欠陥品の誤検出が最小となるように、複数の特徴量に関する閾値を決定することができる。
【0029】
また、決定部13は、複数の特徴量それぞれに関する閾値の初期値を、欠陥品の誤検出がなくなるように設定し、複数の特徴量いずれかについて、見逃しが減少し、誤検出の増加が小さくなるように、閾値を更新することを繰り返し、閾値を決定してもよい。これにより、欠陥品の見逃しを所定割合以下としつつ、欠陥品の誤検出ができるだけ少なくなるように閾値を決定することができる。
【0030】
調整部14は、ユーザ入力に基づいて、閾値を調整する。その場合、分類部12は、調整前後の閾値を用いて対象物200が良品であるか欠陥品であるかの分類を行い、決定部13は、ユーザ入力に基づいて、閾値を調整前の値とするか、閾値を調整後の値とするか決定する。このように、複数の特徴量に関する閾値をユーザ入力に基づいて調整し、分類性能が向上するか否かを確認しながら、閾値を調整前の値とするか、調整後の値とするか決定することができる。
【0031】
また、分類部12は、調整前後の閾値を用いて、複数の学習用画像について対象物200が良品であるか欠陥品であるかの分類を行い、欠陥品の見逃し及び欠陥品の誤検出の少なくともいずれかの数又は割合を算出してもよい。これにより、複数の特徴量に関する閾値をユーザ入力に基づいて調整した場合に、欠陥品の見逃し及び欠陥品の誤検出の少なくともいずれかの数又は割合を確認しながら、閾値を調整前の値とするか、調整後の値とするか決定することができる。
【0032】
表示部は、調整前後の閾値を用いて対象物200が良品であるか欠陥品であるかを分類部12によって分類した結果を、複数の特徴量のうち少なくとも2つの特徴量を座標軸とする散布図として表示する。なお、表示部は、調整部14による調整が行われない場合であっても、分類部12によって分類した結果を、複数の特徴量のうち少なくとも2つの特徴量を座標軸とする散布図として表示してよい。表示部によって、対象物200が良品であるか欠陥品であるかを分類した結果を、視覚的に把握することができ、分類の妥当性が判断しやすくなる。
【0033】
図2は、本実施形態に係る検査部10の物理的構成を示す図である。検査部10は、演算部に相当するCPU(Central Processing Unit)10aと、記憶部に相当するRAM(Random Access Memory)10bと、記憶部に相当するROM(Read Only Memory)10cと、通信部10dと、入力部10eと、表示部10fと、を有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例では検査部10が一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、検査部10は、複数のコンピュータが組み合わされて実現されてもよい。また、図2で示す構成は一例であり、検査部10はこれら以外の構成を有してもよいし、これらの構成のうち一部を有さなくてもよい。
【0034】
CPU10aは、RAM10b又はROM10cに記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である。CPU10aは、良品であるか欠陥品であるかのラベル付けがされた複数の学習用画像から得られた複数の特徴量それぞれについて、閾値を決定するプログラム(画像検査プログラム)を実行する演算部である。CPU10aは、入力部10eや通信部10dから種々のデータを受け取り、データの演算結果を表示部10fに表示したり、RAM10bに格納したりする。
【0035】
RAM10bは、記憶部のうちデータの書き換えが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。RAM10bは、CPU10aが実行するプログラム、画像、画像から抽出された複数の特徴量及び閾値といったデータを記憶してよい。なお、これらは例示であって、RAM10bには、これら以外のデータが記憶されていてもよいし、これらの一部が記憶されていなくてもよい。
【0036】
ROM10cは、記憶部のうちデータの読み出しが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。ROM10cは、例えば画像検査プログラムや、書き換えが行われないデータを記憶してよい。
【0037】
通信部10dは、検査部10を他の機器に接続するインターフェースである。通信部10dは、インターネット等の通信ネットワークに接続されてよい。
【0038】
入力部10eは、ユーザからデータの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード及びタッチパネルを含んでよい。
【0039】
表示部10fは、CPU10aによる演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されてよい。表示部10fは、例えば、対象物が良品であるか欠陥品であるかを分類した結果を、複数の特徴量のうち少なくとも2つの特徴量を座標軸とする散布図として表示してよい。
【0040】
画像検査プログラムは、RAM10bやROM10c等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部10dにより接続される通信ネットワークを介して提供されてもよい。検査部10では、CPU10aが画像検査プログラムを実行することにより、図1を用いて説明した様々な動作が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、検査部10は、CPU10aとRAM10bやROM10cが一体化したLSI(Large-Scale Integration)を備えていてもよい。
【0041】
図3は、本実施形態に係る画像検査装置100により設定された閾値の初期値を示す図である。同図では、横軸に第1特徴量f1を示し、縦軸に第2特徴量f2を示している。同図は、複数の学習用画像から得られた第1特徴量f1及び第2特徴量f2に基づいて良品であるか欠陥品であるかを分類した結果を、第1特徴量f1及び第2特徴量f2を座標軸とする散布図として表示し、第1特徴量f1及び第2特徴量f2に関する閾値の初期値を表示した例である。なお、本明細書では、便宜上特徴量が2種類の場合を例にとって説明するが、特徴量が2種類より多い場合にも本実施形態に係る画像検査装置100による処理を行うことができる。例えば、特徴量の10種類あれば、10次元の特徴量空間で処理を進めることになる。
【0042】
第1特徴量f1の初期値は、下限閾値f1_min_thと、上限閾値f1_max_thとを含む。また、第2特徴量f2の初期値は、下限閾値f2_min_thと、上限閾値f2_max_thとを含む。第1特徴量f1及び第2特徴量f2の初期値は、欠陥品の誤検出がなくなるように設定されている。
【0043】
同図では、良品に対応する点を白抜きの丸印で示し、欠陥品に対応する点を、ハッチングを含む丸印で示している。学習用画像は、10の良品の画像と、7つの欠陥品の画像とを含み、第1点e1から第7点e7は、7つの欠陥品の第1特徴量f1及び第2特徴量f2に対応する。
【0044】
画像検査装置100は、複数の特徴量それぞれが下限閾値以上、上限閾値以下である場合に良品であると分類し、複数の特徴量のいずれかが下限閾値未満であるか、上限閾値より大きい場合に欠陥品であると分類する。図3に示す初期値の場合、10の良品の画像は、すべて良品であると正しく分類され、欠陥品の誤検出はゼロとなっている。一方、7つの欠陥品の画像のうち、第3点e3、第5点e5及び第7点e7に対応する画像は、誤って良品であると分類されることになる。すなわち、図3に示す初期値の場合、欠陥品の見逃しが3つ生じることになる。
【0045】
画像検査装置100は、複数の特徴量それぞれについて、欠陥品の見逃しがなくなり、欠陥品の誤検出が最小となるように閾値を決定する。
【0046】
図4は、本実施形態に係る画像検査装置100により更新された閾値を示す図である。同図では、横軸に第1特徴量f1を示し、縦軸に第2特徴量f2を示して、第2特徴量f2の下限閾値f2_min_thを更新した例である。
【0047】
画像検査装置100は、複数の特徴量いずれかについて、欠陥品の見逃しが減少し、欠陥品の誤検出の増加が小さくなるように、閾値を更新することを繰り返す。同図に示す例の場合、第2特徴量f2の下限閾値f2_min_thを更新することで、第5点e5に関する欠陥品の見逃しが減少し、欠陥品の誤検出が1つ増加することになる。
【0048】
図5は、本実施形態に係る画像検査装置100により決定された閾値を示す図である。同図では、横軸に第1特徴量f1を示し、縦軸に第2特徴量f2を示して、最終的に決定された第1特徴量f1の下限閾値f1_min_th及び上限閾値f1_max_th並びに第2特徴量f2の下限閾値f2_min_th及び上限閾値f2_max_thを示している。
【0049】
画像検査装置100は、複数の特徴量いずれかについて、欠陥品の見逃しが減少し、欠陥品の誤検出の増加が小さくなるように、閾値を更新することを、欠陥品の見逃しがなくなるまで繰り返す。その結果、本例の場合、図5に示す第1特徴量f1の下限閾値f1_min_th及び上限閾値f1_max_th並びに第2特徴量f2の下限閾値f2_min_th及び上限閾値f2_max_thが最終的な閾値として決定される。この場合、欠陥品の見逃しがゼロであり、欠陥品の誤検出が5つで最小となる。
【0050】
図6は、本実施形態に係る画像検査装置100により実行される閾値決定処理のフローチャートである。はじめに、画像検査装置100は、学習用画像から複数の特徴量を抽出する(S10)。
【0051】
画像検査装置100は、閾値の初期値を、欠陥品の誤検出がなくなるように設定する(S11)。なお、閾値の初期値は、画像検査装置100のユーザからの入力に基づいて設定してもよい。また、画像検査装置100は、複数の特徴量いずれかについて、欠陥品の見逃しが減少し、欠陥品の誤検出の増加が小さくなるように、閾値を更新する(S12)。
【0052】
閾値を更新した後に、欠陥品の見逃しが残る場合(S13:NO)、画像検査装置100は、再び、複数の特徴量いずれかについて、欠陥品の見逃しが減少し、欠陥品の誤検出の増加が小さくなるように、閾値を更新する(S12)。一方、欠陥品の見逃しがない場合(S13:YES)、画像検査装置100は、更新後の値で閾値を決定する(S14)。
【0053】
図7は、本実施形態に係る画像検査装置100により実行される閾値調整処理のフローチャートである。閾値調整処理は、画像検査装置100によって閾値決定処理が行われた後に実行されてよい。
【0054】
はじめに、画像検査装置100は、ユーザ入力に基づいて、閾値を調整する(S20)。そして、画像検査装置100は、調整前後の閾値を用いて、学習用画像について対象物が良品であるか欠陥品であるか分類する(S21)。
【0055】
その後、画像検査装置100は、欠陥品の見逃し及び欠陥品の誤検出の少なくともいずれかの数又は割合を算出する(S22)。また、画像検査装置100は、分類した結果を、複数の特徴量のうち少なくとも2つの特徴量を座標軸とする散布図として表示する(S23)。ここで、画像検査装置100は、算出した欠陥品の見逃し及び欠陥品の誤検出の少なくともいずれかの数又は割合をあわせて表示してもよい。また、画像検査装置100は、散布図の座標軸として用いる特徴量の指定をユーザ入力に基づいて定めてもよい。例えば、10種類の特徴量がある場合、そのまま表示すれば散布図の次元数は10次元となるが、画像検査装置100は、2つ又は3つの特徴量の選択を受け付け、2次元又は3次元の散布図を表示してもよい。また、画像検査装置100は、欠陥品の見逃しや誤検出が発生している場合には、その発生原因となっている特徴量を自動的に選択して、それらを他の特徴量と異なる態様で表示してもよい。ユーザは、散布図や欠陥品の見逃し及び欠陥品の誤検出の少なくともいずれかの数又は割合を確認し、閾値を調整後の値とするか、調整前の値とするか判断する。なお、画像検査装置100は、データ番号を横軸に示し、いずれか1つの特徴量を縦軸に示して、散布図又は折れ線図を表示してもよい。また、画像検査装置100は、3種類の特徴をそれぞれ異なる軸に示し、3次元散布図を表示してもよい。
【0056】
画像検査装置100は、ユーザ入力に基づいて、閾値を確定しない場合(S24:NO)、処理S20~S23を再び実行する。一方、ユーザ入力に基づいて、閾値を確定する場合(S24:YES)、画像検査装置100は、調整後の値で閾値を決定する(S25)。
【0057】
図8は、本実施形態に係る画像検査装置100により設定された閾値の初期値を示す図である。同図では、横軸に第1特徴量f1を示し、縦軸に第2特徴量f2を示している。同図は、複数の学習用画像から得られた第1特徴量f1及び第2特徴量f2に基づいて良品であるか欠陥品であるかを分類した結果を、第1特徴量f1及び第2特徴量f2を座標軸とする散布図として表示し、第1特徴量f1及び第2特徴量f2に関する閾値の初期値を表示した例である。本例では、散布図とあわせて、欠陥品の見逃し及び欠陥品の誤検出の数及び割合を表として表示している。
【0058】
第1特徴量f1の初期値は、下限閾値f1_min_thと、上限閾値f1_max_thとを含む。また、第2特徴量f2の初期値は、下限閾値f2_min_thと、上限閾値f2_max_thとを含む。第1特徴量f1及び第2特徴量f2の初期値は、欠陥品の誤検出がなくなるように設定されている。
【0059】
同図では、良品に対応する点を白抜きの丸印で示し、欠陥品に対応する点を、ハッチングを含む丸印で示している。学習用画像は、14の良品の画像と、6つの欠陥品の画像とを含み、第1点e1から第6点e6は、6つの欠陥品の第1特徴量f1及び第2特徴量f2に対応する。
【0060】
画像検査装置100は、複数の特徴量それぞれが下限閾値以上、上限閾値以下である場合に良品であると分類し、複数の特徴量のいずれかが下限閾値未満であるか、上限閾値より大きい場合に欠陥品であると分類する。図8に示す初期値の場合、14の良品の画像は、すべて良品であると正しく分類され、欠陥品の誤検出はゼロとなっている。一方、6つの欠陥品の画像のうち、第4点e4及び第5点e5に対応する画像は、誤って良品であると分類されることになる。すなわち、図8に示す初期値の場合、欠陥品の見逃しが2つ生じることになる。同図の表に示すとおり、本例の場合、欠陥品の見逃しの割合は10%である。
【0061】
画像検査装置100は、複数の特徴量それぞれについて、欠陥品の見逃しがなくなり、欠陥品の誤検出が最小となるように閾値を決定する。
【0062】
図9は、本実施形態に係る画像検査装置100により決定された閾値を示す図である。同図では、横軸に第1特徴量f1を示し、縦軸に第2特徴量f2を示して、第2特徴量f2の下限閾値f2_min_thを更新した例である。本例では、散布図とあわせて、更新後の欠陥品の見逃し及び欠陥品の誤検出の数及び割合を表として表示している。
【0063】
画像検査装置100は、複数の特徴量いずれかについて、欠陥品の見逃しが減少し、欠陥品の誤検出の増加が小さくなるように、閾値を更新することを繰り返す。同図に示す例の場合、第2特徴量f2の下限閾値f2_min_thを一度更新することで、第5点e5に関する欠陥品の見逃しがなくなり、欠陥品の誤検出が2つ増加する。同図の表には、「欠陥品の見逃し(1)」の数が1であり、その割合が5%であることと、「欠陥品の誤検出(1)」の数が2であり、その割合が10%であることが示されている。さらに、下限閾値f2_min_thをもう一度更新することで、第4点e4に関する欠陥品の見逃しがなくなり、欠陥品の誤検出が2つ増加することになる。同図の表には、「欠陥品の見逃し(2)」の数が0であり、「欠陥品の誤検出(2)」の数が4であり、その割合が20%であることが示されている。このように、更新前後で欠陥品の見逃し及び誤検出がどのように変化するか数値を示し、散布図とあわせて確認できるようにすることで、閾値の妥当性が判断しやすくなる。
【0064】
図9に示す最終的な閾値を用いることで、欠陥品の見逃しがゼロとなり、欠陥品の誤検出が4つになる。しかしながら、本例の場合、欠陥品の見逃しをゼロとしつつ、欠陥品の誤検出を4つ未満にする閾値の組み合わせが存在する。このように、必ずしも最適でない閾値が選択される場合があるため、画像検査装置100は、閾値に摂動を加えて、欠陥品の見逃しをゼロに保ちつつ、欠陥品の誤検出をより少なくすることができる閾値の組み合わせが存在しないか試行する。
【0065】
図10は、本実施形態に係る画像検査装置100により摂動を加えた閾値を示す図である。同図では、横軸に第1特徴量f1を示し、縦軸に第2特徴量f2を示して、第1特徴量f1に関する複数の閾値候補f1_min_th,f1_max_th_1,f1_max_th_2と、第2特徴量f2に関する複数の閾値候補f2_min_th_1,f2_min_th_2,f2_min_th_3,f2_max_th_1,f2_max_th_2とを示している。
【0066】
画像検査装置100は、複数の閾値候補について、欠陥品の見逃しをゼロとして、欠陥品の誤検出が最小となる組み合わせを探索する。本例の場合、f1_min_th,f1_max_th_2,f2_min_th_1,f2_max_th_1という組み合わせが最適となる。
【0067】
図11は、本実施形態に係る画像検査装置100により決定された閾値を示す図である。同図では、横軸に第1特徴量f1を示し、縦軸に第2特徴量f2を示して、第1特徴量f2の上限閾値f1_max_thを摂動後の値に更新した例である。本例では、散布図とあわせて、欠陥品の見逃し及び欠陥品の誤検出の数及び割合を表として表示している。
【0068】
図11に示す閾値を用いることで、欠陥品の見逃しがゼロとなり、欠陥品の誤検出が3つになる。同図の表には、欠陥品の見逃しの数が0であり、欠陥品の誤検出の数が3であり、その割合が15%であることが示されている。すなわち、図9に示す摂動前の閾値を用いる場合に比べて、欠陥品の誤検出を1つ減らすことができる。このように、画像検査装置100は、決定された閾値が局所最適解になっている可能性を考慮して、より良い閾値を探索することができる。
【0069】
図12は、本実施形態に係る画像検査装置100により実行される閾値決定処理のフローチャートである。はじめに、画像検査装置100は、学習用画像から複数の特徴量を抽出する(S30)。
【0070】
画像検査装置100は、閾値の初期値を、欠陥品の誤検出がなくなるように設定する(S31)。また、画像検査装置100は、複数の特徴量いずれかについて、欠陥品の見逃しが減少し、欠陥品の誤検出の増加が小さくなるように、閾値を更新する(S32)。
【0071】
閾値を更新した後に、欠陥品の見逃しが残る場合(S33:NO)、画像検査装置100は、再び、複数の特徴量いずれかについて、欠陥品の見逃しが減少し、欠陥品の誤検出の増加が小さくなるように、閾値を更新する(S32)。一方、欠陥品の見逃しがない場合(S33:YES)、画像検査装置100は、更新後の閾値の少なくともいずれかに摂動を加える(S34)。
【0072】
欠陥品の見逃しがなく、誤検出が減少する閾値の組み合わせが存在する場合(S35:YES)、画像検査装置100は、摂動後の値で閾値を決定する(S36)。一方、欠陥品の見逃しがなく、誤検出が減少する閾値の組み合わせが存在しない場合(S35:NO)、画像検査装置100は、摂動前の値で閾値を決定する(S37)。
【0073】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0074】
[附記]
対象物(200)の画像を撮影する撮影部(30)と、
前記画像から複数の特徴量を抽出する抽出部(11)と、
前記複数の特徴量がそれぞれ閾値を越えるか否かによって、前記対象物(200)が良品であるか欠陥品であるかの分類を行う分類部(12)と、
前記良品であるか前記欠陥品であるかのラベル付けがされた複数の学習用画像から得られた複数の特徴量それぞれについて、前記欠陥品の見逃しを所定割合以下とし、前記欠陥品の誤検出が少なくなるように前記閾値を決定する決定部(13)と、
を備える画像検査装置(100)。
【符号の説明】
【0075】
10…検査部、10a…CPU、10b…RAM、10c…ROM、10d…通信部、10e…入力部、10f…表示部、11…抽出部、12…分類部、13…決定部、14…調整部、20…照明、30…撮影部、100…画像検査装置
図1
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図12