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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/514 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
H01R13/514
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021101382
(22)【出願日】2021-06-18
(65)【公開番号】P2023000511
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西谷 章弘
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-357557(JP,A)
【文献】特開2002-367714(JP,A)
【文献】特開平2-223171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/514
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層される複数の扁平形状をなすハウジングと、複数の前記ハウジングのうち少なくとも1つの前記ハウジングに収容される端子金具と、前記端子金具に固着されて、前記ハウジングの後方へ導出される電線と、を備えるコネクタであって、
前記電線を貫通させる貫通孔を有し、単一部品又は単一部位として成形された後壁部を備え、
前記後壁部には、前記ハウジングの積層方向に並ぶ前記電線が前記積層方向で他の前記電線とは反対方向へ離隔することを規制する離隔規制部が形成されており、
前記後壁部は、いずれか1つの前記ハウジングに一体に形成されているコネクタ。
【請求項2】
複数の前記ハウジングのうち少なくとも1つの前記ハウジングは、前記積層方向と交差する方向に並ぶ複数の端子収容室を有し、
前記端子収容室に前記端子金具が収容され、
前記貫通孔は、複数の前記端子収容室と個別に連通するように仕切られている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記後壁部は、いずれか1つの前記ハウジングのみに一体に形成されている請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記後壁部は、前記後壁部の形成されていない前記ハウジングの後方に位置する請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
複数の前記ハウジングのうち少なくとも1つの前記ハウジングは、前記積層方向と交差する方向に並ぶ複数の端子収容室を有し、
前記後壁部が形成されていない前記ハウジングの前記端子収容室の後端開口縁部には、テーパ状の誘導部が形成されている請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
複数の前記ハウジングは、複数の前記ハウジングを積層状態に保持する係止部を有し、
前記係止部は、前記電線の導出方向と交差する幅方向において、前記ハウジングの両端部のみに形成されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の積層コネクタは、互いに積層される第1ハウジングおよび第2ハウジングを備える。各ハウジングには、後方から電線に固着した端子金具が挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-68098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の積層コネクタでは、第1ハウジング(下側のハウジング)から突出する電線が下方に引っ張られ、第2ハウジング(上側のハウジング)から突出する電線が上方に引っ張られと、ハウジング間のロックが外れて、積層状態のハウジングが分離してしまう。
【0005】
本開示は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、積層状態のハウジングの分離を抑制できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
積載される複数のハウジングと、前記ハウジングに収容される端子金具と、前記端子金具に固着されて、前記ハウジングの後方へ導出される電線と、を備えるコネクタであって、
前記電線を貫通させる貫通孔を有し、単一部品又は単一部位として成形された後壁部を備え、
前記後壁部には、前記ハウジングの積層方向に並ぶ前記電線が前記積層方向で他の前記電線とは反対方向へ離隔することを規制する離隔規制部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、積層状態のハウジングの分離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1におけるコネクタの前側から見た斜視図である。
図2図2は、コネクタの後側から見た斜視図である。
図3図3は、端子金具を除くコネクタの前側から見た分解斜視図である。
図4図4は、端子金具を除くコネクタの後側から見た分解斜視図である。
図5図5は、端子金具の斜視図である。
図6図6は、コネクタの正面図である。
図7図7は、コネクタの背面図である。
図8図8は、図9のA-A断面図である。
図9図9は、図6のB-B断面図である。
図10図10は、図9のC-C断面図である。
図11図11は、コネクタの製造工程を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)積載される複数のハウジングと、前記ハウジングに収容される端子金具と、前記端子金具に固着されて、前記ハウジングの後方へ導出される電線と、を備えるコネクタであって、
前記電線を貫通させる貫通孔を有し、単一部品又は単一部位として成形された後壁部を備え、
前記後壁部には、前記ハウジングの積層方向に並ぶ前記電線が前記積層方向で他の前記電線とは反対方向へ離隔することを規制する離隔規制部が形成されている。
本開示の構成によれば、離隔規制部が単一部品又は単一部位として成形された後壁部に形成されているので、電線が離隔方向(他の電線とは反対方向)へ引っ張られても、電線に対する引っ張り力を後壁部に受けさせることができる。そのため、電線に対する引っ張り力がハウジングに及びにくくなり、積層状態のハウジングが分離することを抑制できる。
(2)前記ハウジングは、前記積層方向と交差する方向に並ぶ複数の端子収容室を有し、前記端子収容室に前記端子金具が収容され、前記貫通孔は、複数の前記端子収容室と個別に連通するように仕切られていることが好ましい。
この構成によれば、貫通孔が複数の端子収容室と個別に連通する構成であるため、貫通孔に電線を貫通させる際に、端子収容室への端子金具の挿入が容易になる。端子収容室への端子金具の誤挿入も防止できる。
(3)前記後壁部は、1つの前記ハウジングに一体に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、後壁部をハウジングとは別体の部品とした場合に比べると、部材点数を少なくできる。
(4)前記後壁部は、前記後壁部の形成されていない前記ハウジングの後方に位置することが好ましい。
この構成によれば、後壁部が形成されていないハウジングが後方へ位置ずれすることを防止できるので、後方変位規制用のロックを設ける必要がなくなる。
(5)前記ハウジングは、前記積層方向と交差する方向に並ぶ複数の端子収容室を有し、前記後壁部が形成されていない前記ハウジングの前記端子収容室の後端開口縁部には、テーパ状の誘導部が形成されていることが好ましい。
この構成によれば、端子金具が後壁部の貫通孔を通過した直後に、テーパ状の誘導部によって前方に誘導させられるため、端子収容室の後端開口縁に引っ掛かることを防止できる。
(6)複数の前記ハウジングは、複数の前記ハウジングを積層状態に保持する係止部を有し、前記係止部は、前記電線の導出方向と交差する幅方向において、前記ハウジングの両端部のみに形成されていることが好ましい。
この構成によれば、係止部をハウジングの両端部のみに設けることで、ハウジングの構造を簡素化できる。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示のコネクタを具体化した実施例1を、図1図11を参照して説明する。本実施例1において、上下の方向については、図1図11にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。前後の方向については、図1図2図5図7図9図11にあらわれる左方、右方を、それぞれ前方、後方と定義する。左右の方向は、図4図8図10にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。
【0011】
(コネクタの構成)
本実施例1のコネクタ1は、図1図2に示すように、第1ハウジング10と、第2ハウジング20と、第3ハウジング30と、後壁部40と、端子金具50(図9参照)と、電線60と、を備えている。第1ハウジング10、第2ハウジング20、及び第3ハウジング30は、本開示の「ハウジング」に相当する。第1ハウジング10、第2ハウジング20、及び第3ハウジング30は、積層されている。後壁部40は、コネクタ1の後側の壁部を構成している。端子金具50は、第1ハウジング10、及び第2ハウジング20に収容されている。電線60は、端子金具50に固着されている。電線60は、第1ハウジング10又は第2ハウジング20から後方へ導出されている。
【0012】
第1ハウジング10、第2ハウジング20、及び第3ハウジング30は、それぞれ合成樹脂製の単一部品である。コネクタ1は、第1ハウジング10、第2ハウジング20、第3ハウジング30の順に下側から積層されている。
【0013】
第1ハウジング10は、図3図4に示すように、左右方向を長手とする扁平形状をなしている。第1ハウジング10には、複数の第1端子収容室11が設けられている。第1端子収容室11は、「端子収容室」の一例に相当する。第1端子収容室11には、端子金具50が収容されている。なお、図2図6図8図10では、一部の端子収容室11にのみ端子金具50が収容されている状態を例示する。複数の第1端子収容室11は、積層方向と交差する方向(左右方向)に一列に並んで配置されている。なお、積層方向とは、第1ハウジング10、第2ハウジング20、及び第3ハウジング30の積層方向(上下方向)を意味する。第1端子収容室11は、図3に示すように、前後方向に長い。第1端子収容室11の後端側には、上方に開放された開口部11Aが設けられている。
【0014】
第1ハウジング10は、図3に示すように、一対の側壁12を有している。側壁12は、第1ハウジング10の前端側から後端側にかけて前後方向に長く形成されている。側壁12の前端には、左右方向内側(他方の側壁12側)に膨出する前側膨出部13Aが設けられている。前側膨出部13Aには、左右方向外側(他方の側壁12とは反対側)に凹む第1凹部13Bが設けられている。第1凹部13Bは、前方に開放されている。
【0015】
図3に示すように、側壁12の前後方向中央には、左右方向外側に凹む凹み部14Aが設けられている。凹み部14Aは、左右方向から見て前後方向に長い長方形状である。凹み部14Aの下端側には、左右方向内側に突出する被係止片14Bが設けられている。被係止片14B、凹み部14A前後方向の全長に亘って細長い形状である。
【0016】
図3に示すように、側壁12の後端には、左右方向外側かつ上方に膨出する後側膨出部15Aが設けられている。側壁12における後側膨出部15Aの左右方向内側には、第1凸部15Bと、第2凹部15Cと、が設けられている。第1凸部15Bは、後側膨出部15Aの上端から左右方向内側に突出している。第2凹部15Cは、第1凸部15Bの下側に隣接して設けられている。第2凹部15Cは、左右方向外側に凹んでいる。
【0017】
後壁部40は、合成樹脂製の単一部位である。後壁部40は、図3図9に示すように、第1ハウジング10に一体に形成されている。ここで、「単一部位」とは、成形されたときの状態での単一部位のことである。「単一部位」とは、複数の独立した部品の組み合わせを含まない。第1ハウジング10及び後壁部40は、1つの部品を構成している。そのため、後壁部40を各ハウジング10,20,30とは別体の部品とした場合に比べると、部材点数を少なくできる。後壁部40は、第1ハウジング10の後端から上方に立ち上がっている。後壁部40は、左右方向に長い板状の壁部である。後壁部40の上端は、側壁12の上端よりも下方に位置している。図7に示すように、後壁部40と一対の側壁12との間には、それぞれスリット41が設けられている。これにより、側壁12が左右方向に撓み変形し易くなっている。
【0018】
後壁部40は、図7図9に示すように、複数の貫通孔42が設けられている。貫通孔42は、後壁部40以外の部品、部材には形成されていない。貫通孔42は、上下に二段、左右方向に複数並んで形成されている。貫通孔42は、前後方向から見て四角形状である。貫通孔42は、端子金具50、及び端子金具50に接続される電線60を貫通させる。貫通孔42は、第1端子収容室11及び後述する第2端子収容室21と個別に連通するように仕切られている。貫通孔42が複数の端子収容室(複数の第1端子収容室11及び複数の第2端子収容室21)と個別に連通する構成であるため、貫通孔42に電線60を貫通させる際に、各端子収容室11,21への端子金具50の挿入が容易になる。各端子収容室11,21への端子金具50の誤挿入も防止できる。具体的には、図9に示すように、下段の貫通孔42は、第1端子収容室11と前後方向で一体的に連通している。図9に示すように、上段の貫通孔42は、第1ハウジング10に第2ハウジング20が積層された状態で、第2端子収容室21と前後方向で連通している。
【0019】
後壁部40は、図9に示すように、第1ハウジング10に第2ハウジング20が積層された状態で、第2ハウジング20の後方に位置している。具体的には、後壁部40は、第2ハウジング20に後方から接触している。後壁部40は、第1ハウジング10及び第2ハウジング20に第3ハウジング30が積層された状態で、第3ハウジング30の後方に位置している。具体的には、後壁部40は、第3ハウジング30に後方から接触している。以上のように、後壁部40が形成されていないハウジング(第2ハウジング20および第3ハウジング30)が後方へ位置ずれすることを防止できるので、後方変位規制用のロックを設ける必要がなくなる。
【0020】
後壁部40には、図7図9に示すように、第1離隔規制部43及び第2離隔規制部44が形成されている。第1離隔規制部43及び第2離隔規制部44は、本開示の「離隔規制部」の一例に相当する。第1離隔規制部43及び第2離隔規制部44は、後述するように、第1ハウジング10、第2ハウジング20、及び第3ハウジング30の積層方向に並ぶ電線60が積層方向で他の電線60とは反対方向へ離隔することを規制する。第1離隔規制部43は、下段の貫通孔42の下壁部によって構成されている。第1離隔規制部43は、前後方向及び左右方向に平行な壁面(上方に面する壁面)を有する壁部によって構成されている。第2離隔規制部44は、上段の貫通孔42の上壁部によって構成されている。第2離隔規制部44は、前後方向及び左右方向に平行な壁面(下方に面する壁面)を有する壁部によって構成されている。
【0021】
第2ハウジング20は、図3図4に示すように、左右方向を長手とする扁平形状をなしている。第2ハウジング20には、後壁部40が形成されていない。第2ハウジング20には、複数の第2端子収容室21が設けられている。第2端子収容室21は、「端子収容室」の一例に相当する。第2端子収容室21には、端子金具50が収容されている。なお、図2図6図8図10では、一部の第2端子収容室21にのみ端子金具50が収容されている状態を例示する。複数の第2端子収容室21は、積層方向と交差する方向(左右方向)に一列に並んで配置されている。第2端子収容室21は、図3に示すように、前後方向に長い。第2端子収容室21の後端側には、上方に開放された開口部21Aが設けられている。開口部21Aの前方には、第2ハウジング20の左右方向全体に亘って延びる上壁部22が設けられている。上壁部22は、第2ハウジング20の前端よりも上方に一段高くなっている。
【0022】
図9に示すように、第2端子収容室21の後端開口縁部には、誘導部21Bが形成されている。第2端子収容室21の後端開口縁部は、後方から見て上方に開放されたU字状である。誘導部21Bは、後方に向かってテーパ状である。具体的には、誘導部21Bは、第2端子収容室21の後端開口縁部の下側部分では後方に向かって下り傾斜になっており、第2端子収容室21の後端開口縁部の左右両側部分では後方に向かって左右方向外側に傾斜している。このような構成により、端子金具50が後壁部40の貫通孔42を通過した直後に、テーパ状の誘導部21Bによって前方に誘導させられるため、第2端子収容室21の後端開口縁に引っ掛かることを防止できる。
【0023】
第2ハウジング20の左右両端には、図3図8に示すように、係止片23が設けられている。係止片23は、左右方向外側に突出している。係止片23は、前後方向に長い。係止片23は、第2ハウジング20において上壁部22よりも後側に設けられている。係止片23は、図8に示すように、第1ハウジング10に第2ハウジング20が積層された状態で、被係止片14Bに係止している。具体的には、係止片23は、図8に示すように、第1ハウジング10に第2ハウジング20が積層された状態で、被係止片14Bの下方に入り込み、被係止片14Bに下方側から接触している。このようにして、第1ハウジング10及び第2ハウジング20は、係止片23及び被係止片14Bによって、積層状態に保持される。係止片23及び被係止片14Bは、本開示の「係止部」の一例に相当する。係止片23は、左右方向(電線60の導出方向と交差する幅方向)において、第2ハウジング20の両端部のみに形成されている。そのため、第2ハウジング20の構造を簡素化できる。被係止片14Bは、左右方向において、第1ハウジング10の両端部のみに形成されている。そのため、第1ハウジング10の構造を簡素化できる。
【0024】
第2ハウジング20の下面には、図4に示すように、複数の第1端子収容室11に対応するように、複数の第1引掛り部24が設けられている。第1引掛り部24は、第2ハウジング20の下面から下方に突出している。第1引掛り部24は、図9に示すように、第1端子収容室11の開口部11Aに上方から入り込み、開口部11Aの前縁と、後述する端子金具50の突起54に後方から対向する。これにより、端子金具50の後方への抜け止めと、第2ハウジング20の第1ハウジング10に対する前方への移動を規制する。
【0025】
第3ハウジング30は、図3図4に示すように、左右方向を長手とする扁平形状をなしている。第3ハウジング30には、後壁部40が形成されていない。第3ハウジング30における上面の左右方向の中央部に、片持ち状に突出する撓み可能なロックアーム31が設けられている。第3ハウジング30の前側かつ下側の角部には、左右方向外側に突出する第2凸部32Aが設けられている。第3ハウジング30の左右両側壁には、第2凸部32Aを囲むように、左右方向内側に凹む第3凹部32Bが設けられている。図6に示すように、第2ハウジング20に第3ハウジング30が積層された状態で、第3凹部32Bに前側膨出部13Aが入り込んでいる。第2凸部32Aは、第1凹部13Bに入り込んでいる。
【0026】
図3に示すように、第3ハウジング30の左右側壁の後端には、左右方向内側に凹む第4凹部33Aが設けられている。第3ハウジング30における第4凹部33Aの後方には、左右方向外側に突出する第3凸部33Bが設けられている。図10に示すように、第2ハウジング20に第3ハウジング30が積層された状態で、第1凸部15Bが第4凹部33Aに入り込んでいる。第1凸部15Bは、図2に示すように後方に位置する第3凸部33Bによって、後方への移動が規制される。
【0027】
第3ハウジング30の下面には、図4に示すように、複数の第2端子収容室21に対応するように、複数の第2引掛り部34が設けられている。第2引掛り部34は、第3ハウジング30の下面から下方に突出している。第2引掛り部34は、図9に示すように、第2端子収容室21の開口部21Aに上方から入り込み、開口部21Aの前縁(上壁部22の後縁)と、後述する端子金具50の突起54に後方から対向する。これにより、端子金具50の後方への抜け止めと、第3ハウジング30の第2ハウジング20に対する前方への移動を規制する。
【0028】
図4図9に示すように、第3ハウジング30の下面において複数の第2引掛り部34の前方には、下方に一段下がる段差部35が設けられている。段差部35は、図9に示すように、上壁部22の前端に前方から接触している。これにより、第3ハウジング30の第2ハウジング20に対する後方への移動が規制される。
【0029】
端子金具50は、図5に示すように、例えば雌型の端子金具である。端子金具50は、金属板材を所定形状に打ち抜いてから曲げ加工を施して形成されている。端子金具50は、角筒部51と、第1バレル52と、第2バレル53と、を有している。角筒部51は、筒状をなしており、相手の雄側端子金具のタブ(図示せず)と接触する接触片(図示せず)を収容している。角筒部51の上面の後端には、上方に突出する突起54が設けられている。第1バレル52は、電線60から導出される導線61を加締めている。第2バレル53は、加締めることによって電線60に固着されている。
【0030】
(ハウジングの分離抑制構造)
上述したように、単一部位として成形された後壁部40に、図9に示すように、第1離隔規制部43及び第2離隔規制部44が形成されている。そのため、電線60が離隔方向(他の電線60とは反対方向)へ引っ張られても、電線60に対する引っ張り力を後壁部40に受けさせることができる。例えば、図9に示す下側の電線60が下方に引っ張られるとともに、図9に示す上側の電線60が上方に引っ張られる場合に、第1離隔規制部43によって下側の電線60が受けられるとともに、第2離隔規制部44によって上側の電線60が受けられる。このように、単一部位として成形された後壁部40で異なる方向への引っ張り力が受けられることで、電線60に対する引っ張り力が各ハウジング10,20,30に及びにくくなり、積層状態の各ハウジング10,20,30が分離することを抑制できる。
【0031】
(コネクタの製造工程)
図11に示すように、コネクタ1が製造される。まず、図11(A)に示すように、第1ハウジング10を用意する。続いて、図11(B)に示すように、後壁部40の下側の貫通孔42を介して、第1ハウジング10の第1端子収容室11に、電線60が接続された端子金具50を挿入する。
【0032】
続いて、第1ハウジング10の両側壁12間に第2ハウジング20を収めるようにして、図11(C)に示すように、第1ハウジング10上に第2ハウジング20を積層する。このとき、第2ハウジング20の係止片23を、第1ハウジング10の被係止片14Bに係止させる。具体的には、両側壁12が左右方向外側に撓み変形することで、図9に示すように、係止片23が被係止片14Bを乗り越え被係止片14Bに対して下方から接触する状態となる。
【0033】
図11(C)に示すように、第2ハウジング20の後端が、後壁部40の前端に接触する。これにより、後壁部40の貫通孔42が、第2端子収容室21に連通する。第2ハウジング20の第1引掛り部24を、第1端子収容室11の開口部11Aに上方から入り込ませ、開口部11Aの前縁と、端子金具50の突起54(図9参照)に後方から対向させる。これにより、端子金具50の後方への抜け止めと、第2ハウジング20の第1ハウジング10に対する前方への移動が規制される。
【0034】
続いて、図11(D)に示すように、後壁部40の上側の貫通孔42を介して、第2ハウジング20の第2端子収容室21に、電線60が接続された端子金具50を挿入する。
【0035】
続いて、第1ハウジング10の両側壁12間に第3ハウジング30を収めるようにして、図9に示すように、第2ハウジング20上に第3ハウジング30を積層する。第3ハウジング30の後端は、後壁部40の前端に接触する。
【0036】
第3ハウジング30を第2ハウジング20に積層させる際に、図6に示すように、第3凹部32Bに前側膨出部13Aを入り込ませる。第2凸部32Aを、第1凹部13Bに入り込ませる。図10に示すように、第1凸部15Bを第4凹部33Aに入り込ませる。第1凸部15Bは、図2に示すように後方に位置する第3凸部33Bによって、後方への移動が規制される。
【0037】
図9に示すように、第3ハウジング30の第2引掛り部34を、第2端子収容室21の開口部21Aに上方から入り込ませ、開口部21Aの前縁(上壁部22の後縁)と、端子金具50の突起54に後方から対向させる。これにより、端子金具50の後方への抜け止めと、第3ハウジング30の第2ハウジング20に対する前方への移動が規制される。段差部35を、上壁部22の前端に前方から接触させる。これにより、第3ハウジング30の第2ハウジング20に対する後方への移動が規制される。
【0038】
(本実施例の効果)
以上のように、本開示のコネクタ1によれば、第1離隔規制部43及び第2離隔規制部44が単一部位として成形された後壁部40に形成されているので、電線60が離隔方向(他の電線60とは反対方向)へ引っ張られても、電線60に対する引っ張り力を後壁部40に受けさせることができる。そのため、電線60に対する引っ張り力が各ハウジング10,20,30に及びにくくなり、積層状態の各ハウジング10,20,30が分離することを抑制できる。
【0039】
後壁部40の貫通孔42は、複数の第1端子収容室11及び複数の第2端子収容室21と個別に連通するように仕切られている。この構成によれば、貫通孔42に電線60を貫通させる際に、第1端子収容室11及び第2端子収容室21への端子金具50の挿入が容易になる。第1端子収容室11及び第2端子収容室21への端子金具50の誤挿入も防止できる。
【0040】
後壁部40は、第1ハウジング10に一体に形成されている。この構成によれば、後壁部40を第1ハウジング10とは別体の部品とした場合に比べると、部材点数を少なくできる。
【0041】
後壁部40は、後壁部40の形成されていないハウジング(第ハウジング20及び第ハウジング30)の後方に位置する。この構成によれば、後壁部40が形成されていないハウジング(第ハウジング20及び第ハウジング30)が後方へ位置ずれすることを防止できるので、後方変位規制用のロックを設ける必要がなくなる。

【0042】
第2ハウジング20の第2端子収容室21の後端開口縁部には、テーパ状の誘導部21Bが形成されている。この構成によれば、端子金具50が後壁部40の貫通孔42を通過した直後に、テーパ状の誘導部21Bによって前方に誘導させられるため、第2端子収容室21の後端開口縁に引っ掛かることを防止できる。
【0043】
係止片23は、左右方向(電線60の導出方向と交差する幅方向)において、第2ハウジング20の両端部のみに形成されている。そのため、第2ハウジング20の構造を簡素化できる。被係止片14Bは、左右方向において、第1ハウジング10の両端部のみに形成されている。そのため、第1ハウジング10の構造を簡素化できる。
【0044】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例1において、後壁部40が第1ハウジング10に一体に形成されていたが、その他のハウジング(第2ハウジング20、第3ハウジング30)に一体に形成されていてもよい。
上記実施例1のように端子収容室が多段に設けられる場合には、後壁部40の貫通孔が、全ての端子収容室と連通するように大きく開口した1つの開口であってもよい。
上記実施例1において、貫通孔が、1つのハウジングに形成された全ての端子収容室と連通する1つのスリット状をなしていてもよい。
上記実施例1において、後壁部40が第1ハウジング10に一体に形成されていたが、後壁部を第1ハウジング10とは別体の単一部品として成形してもよい。ここで、「単一部品」とは、成形されたときの状態での単一部品のことである。「単一部品」とは、複数の独立した部品の組み合わせを含まない。
上記実施例1において、係止片23が、左右方向において、第2ハウジング20の両端部のみに形成されていたが、左右方向中央部に形成してもよい。同様に、被係止片14Bが、左右方向において、第1ハウジング10の両端部のみに形成されていたが、左右方向中央部に形成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…コネクタ
10…第1ハウジング(ハウジング)
11…第1端子収容室(端子収容室)
11A…開口部
12…側壁
13A…前側膨出部
13B…第1凹部
14A…凹み部
14B…被係止片(係止部)
15A…後側膨出部
15B…第1凸部
15C…第2凹部
20…第2ハウジング(ハウジング)
21…第2端子収容室(端子収容室)
21A…開口部
21B…誘導部
22…上壁部
23…係止片(係止部)
24…第1引掛り部
30…第3ハウジング(ハウジング)
31…ロックアーム
32A…第2凸部
32B…第3凹部
33A…第4凹部
33B…第3凸部
34…第2引掛り部
35…段差部
40…後壁部
41…スリット
42…貫通孔
43…第1離隔規制部(離隔規制部)
44…第2離隔規制部(離隔規制部)
50…端子金具
51…角筒部
52…第1バレル
53…第2バレル
54…突起
60…電線
61…導線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11