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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】ワーク搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/86 20060101AFI20240606BHJP
   B62D 65/18 20060101ALI20240606BHJP
   B65G 35/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B65G47/86 B
B62D65/18 A
B65G35/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019189774
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021054643
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】598096452
【氏名又は名称】イズテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金田 吉史
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-226167(JP,A)
【文献】特開平03-104538(JP,A)
【文献】特開平07-257729(JP,A)
【文献】特開昭62-032688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/86
B65G 35/00
B62D 65/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレームと、
前記ベースフレームに回転自在に支持された本体部と、
平面視で前記本体部から放射状に広がるように設けられ、かつ複数のワークをそれぞれ支持する複数のアーム部材と、
前記本体部を回転させる回転駆動手段と、
前記複数のアーム部材をそれぞれ独立して上下動させる複数の上下動手段と、
前記回転駆動手段及び前記上下動手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記回転駆動手段によって前記本体部を回転させることにより、前記複数のワークのそれぞれにコーティングを行うためのコーティング槽の配置位置に、前記いずれかのアーム部材を搬送させ、
搬送された前記アーム部材を前記上下動手段によって下降させることにより、前記コーティング槽に前記アーム部材に支持された前記ワークを浸漬させ、
前記ワークの浸漬後、前記アーム部材を繰り返し細かく上下動させることにより、浸漬された前記ワークを繰り返し細かく上下動させるとともに、
前記複数のワークのそれぞれを洗浄するための洗浄槽の次の配置位置に、前記コーティング槽に浸漬された前記ワークと異なる他のワークを支持する、前記アーム部材と異なる他のアーム部材を搬送させ、
前記上下動手段によって前記他のアーム部材を繰り返し細かく上下動させることにより、前記他のワークを繰り返し細かく上下動させることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
前記本体部は、
その下部にリング状の回転自在なリング部材が設けられ、
前記回転駆動手段は、
モータと、前記モータが駆動することにより回転する車輪とを有し、
前記リング部材と前記車輪とが互いの周面同士で接触されており、
前記リング部材は、
前記回転した車輪との摩擦力により前記モータの駆動力が伝達されるフリクション駆動によって回転駆動される、請求項1に記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記モータの回転を制御することにより前記リング部材を回転及び停止させる、請求項2に記載のワーク搬送装置
【請求項4】
前記本体部は、
上下方向に延びる複数のガイドレールが設けられ、
前記上下動手段は、
エアシリンダと、前記ガイドレールに案内されながら前記エアシリンダによって上下動される上下方向に延びたフレーム部材とを有し、
前記アーム部材は、
前記フレーム部材に接続されていることにより上下動自在とされる、請求項1ないし3のいずれかに記載のワーク搬送装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記エアシリンダに供給する空気圧を制御することにより、前記フレーム部材を上下動させるとともに、前記アーム部材を上下動させる、請求項4に記載のワーク搬送装置。
【請求項6】
前記本体部を所定の停止位置で停止させる位置決め手段を備える、請求項1ないし5のいずれかに記載のワーク搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばワークを加工処理するためのワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や二輪車等のシャーシ部品等からなるワークを塗装する前には、洗浄、乾燥あるいはコーティング等を行う前処理工程が行われる。前処理工程は、例えば連続的に延びる搬送ラインにおいて実施される。搬送ラインでは、ワークがハンガー等に吊下げられながら搬送ライン上を移動するとともに、各種のディップ槽に浸漬され、これにより、洗浄やコーティング等が行われる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-338870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記搬送ラインは、複数のワークが連なって搬送され、洗浄やコーティング等の工程が連続的に行われるため、比較的広大なスペースを必要とする。特に、この種の搬送ラインは通常、直線状に設けられるため、工場内でそのスペースを確保する必要がある場合には大きな課題となっていた。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、小スペースでワークの加工処理を行うことのできる新規な構成のワーク搬送装置を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供されるワーク搬送装置は、ベースフレームと、前記ベースフレームに回転自在に支持された本体部と、平面視で前記本体部から放射状に広がるように設けられ、かつ複数のワークをそれぞれ支持する複数のアーム部材と、前記本体部を回転させる回転駆動手段と、前記複数のアーム部材をそれぞれ独立して上下動させる複数の上下動手段と、前記回転駆動手段及び前記上下動手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記回転駆動手段によって前記本体部を回転させることにより、前記複数のワークのそれぞれにコーティングを行うためのコーティング槽の配置位置に、前記いずれかのアーム部材を搬送させ、搬送された前記アーム部材を前記上下動手段によって下降させることにより、前記コーティング槽に前記アーム部材に支持された前記ワークを浸漬させ前記ワークの浸漬後、前記アーム部材を繰り返し細かく上下動させることにより、浸漬された前記ワークを繰り返し細かく上下動させるとともに、前記複数のワークのそれぞれを洗浄するための洗浄槽の次の配置位置に、前記コーティング槽に浸漬された前記ワークと異なる他のワークを支持する、前記アーム部材と異なる他のアーム部材を搬送させ、前記上下動手段によって前記他のアーム部材を繰り返し細かく上下動させることにより、前記他のワークを繰り返し細かく上下動させることを特徴としている。
【0007】
本発明のワーク搬送装置において、前記本体部は、その下部にリング状の回転自在なリング部材が設けられ、前記回転駆動手段は、モータと、前記モータが駆動することにより回転する車輪とを有し、前記リング部材と前記車輪とが互いの周面同士で接触されており、前記リング部材は、前記回転した車輪との摩擦力により前記モータの駆動力が伝達されるフリクション駆動によって回転駆動されるとよい。
【0008】
本発明のワーク搬送装置において、前記制御手段は、前記モータの回転を制御することにより前記リング部材を回転及び停止させるとよい。
【0009】
本発明のワーク搬送装置において、前記本体部は、上下方向に延びる複数のガイドレールが設けられ、前記上下動手段は、エアシリンダと、前記ガイドレールに案内されながら前記エアシリンダによって上下動される上下方向に延びたフレーム部材とを有し、前記アーム部材は、前記フレーム部材に接続されていることにより上下動自在とされるとよい。
【0010】
本発明のワーク搬送装置において、前記制御手段は、前記エアシリンダに供給する空気圧を制御することにより、前記フレーム部材を上下動させるとともに、前記アーム部材を上下動させるとよい。
【0011】
本発明のワーク搬送装置において、前記本体部を所定の停止位置で停止させる位置決め手段を備えるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転駆動部によって本体部が回転されると、本体部から放射状に広がるように設けられた複数のアーム部材は、本体部の周りを回転される。各アーム部材は、制御手段によってその回転及び停止並びに上下動が制御される。そのため、各アーム部材の停止位置に例えば洗浄槽やコーティング槽等を設置すれば、各アーム部材に支持されたワークを洗浄槽等に浸漬することができる。
【0013】
特に、ワークがコーティング槽に浸漬された状態で、アーム部材(ワーク)を制御手段によって繰り返し細かく上下動させると、ワークの表面に残る気泡を除去することができ、ワークの表面に対する処理液の付着を促進させることができる。また、ワークが繰り返し細かく上下動されると、コーティング槽内で処理液が循環し処理液の付着がより一層促進され、ひいてはコーティング時間を短縮することができる。また、洗浄槽に浸漬した後にワークが上下動されると、ワークの表面に残る水滴等を確実に除去することができる。さらに、アーム部材の数や回転速度等を適正に設定すれば、ワークの加工処理を好適に行うことができる。したがって、本発明では、ワークの洗浄等を含む前処理工程を本体部の周囲において行うことができ、小スペースで前処理工程を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るワーク搬送装置を示す正面図である。
図2図1に示すワーク搬送装置の平面図である。
図3】支持ローラとリング部材との位置関係を示す図である。
図4】位置決めドックの側面を示し、図3のA-A線端面図である。
図5図1に示すワーク搬送装置の内部構成を示す図である。
図6】ガイドレールの一部省略平面図である。
図7】アーム部材の一部とフレーム部材の外形であり、(a)は正面図を示し、(b)は側面図を示す。
図8】ガイドアームの第1コ字状レールと、ガイドフレームの第2コ字状レールの位置関係を示すための図である。
図9】フリクション駆動装置を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
図10】第1ないし第3リミットスイッチの設置状態を示す平面図である。
図11】クランプ装置を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
図12】ワーク搬送装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るワーク搬送装置を示す正面図、図2は、ワーク搬送装置の平面図である。
【0017】
本実施形態に係るワーク搬送装置1は、例えば乗用車や二輪車等の部品(以下、ワークという)を吊下げながら搬送し、複数のエリアにおいて塗装の前処理工程(例えば洗浄、乾燥、コーティング等)を行うための装置である。特にこのワーク搬送装置1は、例えばワークWを所定の円周(図2のA参照)上に沿って、回転方向Bで搬送するものである。
【0018】
ワーク搬送装置1は、大別して、ベースフレーム2と、その上部に回転可能に支持された略円柱状の本体部3と、本体部3に昇降自在に支持されワークWを吊下げ可能な複数のアーム部材4とを備えている。本実施形態のワーク搬送装置1では、図2に示すように、10本のアーム部材4が本体部3に対して放射状に広がるように配置されている。
【0019】
上記複数のエリアは、ワーク搬送装置1の周囲に予め設定された上記円周A上に設定されている(図2のE1~E10参照)。これらのエリアには、例えば図略の洗浄槽やコーティング槽等が設けられている。また、本実施形態では、例えば、図2のエリアE1ではワークWが着荷され、エリアE2~E9では各種の工程が行われ、エリアE10ではワークWが脱荷される。
【0020】
ベースフレーム2は、図2に示すように、平面視略四角形状の枠体によって構成され、その中央に略円形平板状の支持部5が配置されている(図1参照)。支持部5は、それから放射状に設けられた複数の図示しない連結部材を介してベースフレーム2に連結されている。
【0021】
ベースフレーム2の4辺のうちの3辺には、略L字状のブラケット6がそれぞれ設けられ、各ブラケット6の上部内側には支持ローラ7が回転自在にそれぞれ支持されている。各支持ローラ7は、後述するリング部材8の回転軌跡を安定的に保持するためのものである。
【0022】
リング部材8は、リング状に形成され、後述する複数のガイドレール18の下端同士に連結されて支持されている。リング部材8は、図3及び図4に示すように、水平面9とその周縁から下方向に延びる外周面10とを有し、外周面10を上記支持ローラ7が転動する。また、水平面9には、後述する第1ないし第3リミットスイッチ51~53に当接される複数の位置決めドック11がそれぞれ備えられている。
【0023】
位置決めドック11は、上記エリアE1~E10と同数(10個)が備えられ、その本体12は外側に放射状に広がる方向に延びている。また、本体12の内方側には、下方にかつ鉛直方向に延びた棒状の被挟持部13が形成されている。被挟持部13は、アーム部材4の停止位置を決定するために用いられるものであり、後述するクランプ装置54によって挟持される。すなわち、被挟持部13が挟持されることにより、リング部材8(本体部3)の回転が停止され、同時にアーム部材4が停止する。この停止位置は、アーム部材4に吊下げられたワークWの停止位置であり、図2に示すエリアE1~E2に予め設定されている。
【0024】
図5は、ワーク搬送装置1の内部構成を示す図である。上記ベースフレーム2の支持部5には、略円柱状のポスト14が立設されている。ポスト14は、それ自体が回転せず、アーム部材4等の回転する各種部材を支持するためのものである。ポスト14の上端には回転軸15が回転自在に設けられ、回転軸15には略円形状の円形部材16を介して複数(本実施形態では10本)の回転フレーム17が放射状に広がるように連結されている。各回転フレーム17は杆状であり、円形部材16は、図略の部材によって回転フレーム17を挟持している。
【0025】
各回転フレーム17の他端部には、上下方向に延びた複数のガイドレール18の上端がそれぞれ連結されている。ガイドレール18の下端には、リング部材8が連結されている。ガイドレール18は、図5及び図6に示すように、上下方向に延びた一対の側面部19と、両側面部19を所定の高さ位置で接続するとともに水平方向に広がる複数の水平面部20とを有している。各側面部19には、内側に凹んだ凹部21が形状され、側面部19は、この凹部21を維持したまま上下方向に延びている。水平面部20は、平面視で略扇状に形成されている。
【0026】
隣り合うガイドレール18では、上記凹部21同士が対向するようになり、これらのガイドレール18同士の間は、平面視で略十字状に形成された隙間Sを有することになる。この隙間Sには、図5及び図7に示す、上下方向に延びた複数(本実施形態では10本)のフレーム部材22が所定のストロークで昇降移動される。
【0027】
ガイドレール18の外側であってその中央部分には、アーム部材4の下方向への移動を規制するストッパ部材23が設けられている。また、ストッパ部材23の下方には、昇降カバー24が配されている。
【0028】
フレーム部材22には、後述する回転自在な複数のローラが設けられている。すなわち、フレーム部材22は、図7に示すように、上下両端近傍に設けられた一対の第1ローラ25及び第2ローラ26と、上下両端近傍にかつ装置の外方に向けて設けられた第3ローラ27及び第4ローラ28と、装置の内方に向けて設けられた第5ローラ29とを備えている。これらの第1ないし第5ローラ25~29は、上記側面部19同士の内面を転動する。また、フレーム部材22の上端近傍には、装置の内方に向けて第6ローラ30が設けられ、この第6ローラ30は、後述するガイドアーム36の第1コ字状レール37の内側あるいはガイドフレーム40の第2コ字状レール41の内側でそれぞれ転動される。
【0029】
各フレーム部材22には、水平方向に延びたアーム部材4がそれぞれ連結されている。各アーム部材4の先端には、ワークWを吊下げるための吊下げ部材31がそれぞれ設けられている(図5参照)。なお、吊下げ部材31は、吊下げるワークWの形状に応じて異なる機構のものが用いられてもよい。また、吊下げられるワークWに代えて、例えばワークWを収納するための例えば籠等の収納部材が用いられてもよい。
【0030】
上記したポスト14には、上部に上部フランジ32が、下部に下部フランジ33がそれぞれ形成されている。上部フランジ32と下部フランジ33との間には、それらを接続するように複数のシャフト34がそれぞれ設けられている。各シャフト34には、摺動部材35が摺動自在にそれぞれ設けられ、摺動部材35には略L字状に形成されたガイドアーム36がそれぞれ接続されている。
【0031】
ガイドアーム36の先端には、断面視コ字状に形成された第1コ字状レール37が設けられている(図5の円C内参照)。第1コ字状レール37の内側では、フレーム部材22の第6ローラ30が転動する。ガイドアーム36の水平部分には、上下方向に延びた、エアシリンダ38のピストンロッド39の一端が連結されている。エアシリンダ38は、その下端がベースフレーム2に固定されている。
【0032】
なお、図示していないが、ワーク搬送装置1の近傍には、各エアシリンダ38に空気圧を供給するためのエアコンプレッサーや減圧弁が設けられ、後述する電磁弁V1~V8によってエアコンプレッサー等からの各エアシリンダ38に対する空気圧が制御される。
【0033】
上記構成により、エアシリンダ38に対する空気圧が制御されると、そのピストンロッド39が上下動され、これにともなってガイドアーム36及びフレーム部材22が上下動し、これによりアーム部材4が上下動する(図5の矢印D参照)。この場合、フレーム部材22は、第1ないし第5ローラ25~29がガイドレール18同士の隙間S内を転動することにより、アーム部材4の上下動を支持する。また、ガイドアーム36に接続された摺動部材35は、シャフト34を摺動することにより、アーム部材4が上下動するときのバランスを維持している。
【0034】
なお、これらのアーム部材4を上下動させるための機構は、アーム部材4が上下動されるエリア(図2のE2~E9参照)に対応してそれぞれ設けられている。よって、ワークWをこの前処理装置1に着荷または脱荷するためのエリア(図2のE1、E10参照)では、アーム部材4を上下動させる必要がないので、このエリアに対応するエアシリンダ38及びピストンロッド39は設けられていない。
【0035】
ポスト14の上部フランジ32の上面には、複数のガイドフレーム40が設けられている。ガイドフレーム40は、棒状とされ、放射状に広がるように上部フランジ32に配置されている。ガイドフレーム40の一端側には断面視コ字状の第2コ字状レール41が形成され(図5の円E内参照)、この第2コ字状レール41の内側にフレーム部材22の第6ローラ30が転動される。
【0036】
なお、ガイドアーム36の第1コ字状レール37及びガイドフレーム40の第2コ字状レール41は、図8に示すように、平面視において交互に配置されながら同一円周上に並設されている。したがって、フレーム部材22がガイドレール18とともに回転することにより、第6ローラ30は、これら第1コ字状レール37及び第2コ字状レール41の内側で転動する。
【0037】
図9は、リング部材8(本体部3)を回転駆動させるためのフリクション駆動部44を示す図である。リング部材8及び本体部3は、このフリクション駆動部44によって回転される。フリクション駆動部44は、モータ45と、このモータ45の回転方向を変換するための回転変換部46と、この回転変換部46を介してモータ45の駆動力が伝達される車輪47とを備えている。
【0038】
車輪47は、その周面が上述したリング部材8の外周面10と接触されている。リング部材8は、いわゆるフリクション駆動によって回転駆動される。すなわち、車輪47が回転すると、リング部材8との間で摩擦力が生じ、この摩擦力により車輪47の駆動力がリング部材8に伝達され、リング部材8が回転駆動される。なお、車輪47のリング部材8の当接面の裏側には、車輪47の回転駆動力を維持するための補助ローラ48が回転自在に設けられている。
【0039】
上記構成により、モータ45によって車輪47が回転されることにより、リング部材8が回転し、それにともないリング部材8に連結されたガイドレール18(本体部3)が回転する。よって、ガイドレール18内を上下動するフレーム部材22に接続されているアーム部材4は、例えば図2に示す回転方向(矢印参照)に回転動作される。
【0040】
なお、車輪47は、フリクション駆動によりリング部材8に駆動力を伝達するため、駆動力の伝達効率が劣る反面、例えば作業者の手動による停止動作によって、回転するガイドレール18を容易に停止させることができるようになっている。
【0041】
ベースフレーム2の上部には、図10に示すように、平面視で円弧状に延びた取付レール50が設けられ、取付レール50上には、3つの第1ないし第3リミットスイッチ51~53がそれぞれ備えられている。
【0042】
第1リミットスイッチ51は、回転するリング部材8を減速させるためのものである。すなわち、リング部材8の回転中に第1リミットスイッチ51がいずれかの位置決めドック11に当接されると、リング部材8(本体部3)の回転が減速される。
【0043】
また、第2リミットスイッチ52は、減速されたリング部材8を停止させるためのものである。すなわち、リング部材8の減速中に第2リミットスイッチ52が上記の位置決めドック11に当接されると、リング部材8(本体部3)の回転が停止される。
【0044】
第3リミットスイッチ53は、停止されるはずのリング部材8を緊急停止させるためのものである。すなわち、第2リミットスイッチ52が位置決めドック11に当接されても、何らかの要因によりリング部材8が停止されないとき、第3リミットスイッチ53が上記の位置決めドック11に当接されると、リング部材8(本体部3)の回転を緊急停止させる。
【0045】
さらに、リング部材8の上部であって上記第2リミットスイッチ52の設置位置近傍には、図11に示すように、アーム部材4を位置決めするためのクランプ装置54が設けられている。クランプ装置54は、上述した位置決めドック11の被挟持部13を挟持する一対の位置決め爪部材55と、一対の位置決め爪部材55を約90度の回動角度でそれぞれ回動させる一対の回動部材56と、一対の回動部材56を動作させるためのクランプ用シリンダ57とを備えている。
【0046】
すなわち、いずれかの位置決めドック11が第1リミットスイッチ51に当接されると、車輪47の回転速度が低下し、続いて同じ位置決めドック11が第2リミットスイッチ52に当接されると、車輪47の回転が停止する。これと同時に、クランプ装置54のクランプ用シリンダ57によって一対の回動部材56が動作し、一対の位置決め爪部材55が位置決めドック11の被挟持部13を挟持し、リング部材8(本体部3)の回転停止位置、すなわちアーム部材4の停止位置を決定する。
【0047】
なお、上記クランプ用シリンダ57は、例えばエアクッション付きとされ、一対の位置決め爪部材55の挟持動作において被挟持部13を挟持する際の衝撃を緩和させる機能を有する。
【0048】
図12は、ワーク搬送装置1の電気的構成を示すブロック図である。このワーク搬送装置1には、制御部60が備えられている。制御部60は、例えばシーケンサからなり、このワーク搬送装置1の各構成機器を統括的に制御するものである。
【0049】
制御部60は、前処理開始スイッチ61及び前処理停止スイッチ62を接続し、前処理開始スイッチ61及び前処理停止スイッチ62からの作業員の手動操作による前処理開始信号及び前処理停止信号を入力する。制御部60は、第1ないし第3リミットスイッチ51~53を接続し、これらから出力されるオン信号を入力する。
【0050】
制御部60は、モータ45を接続し、モータ45に対し駆動信号を出力する。なお、この駆動信号には、モータ45による回転速度を減速させる信号を含む。制御部60は、第1ないし第8電磁弁V1~V8を接続している。第1ないし第8電磁弁V1~V8は、第1ないし第8エアシリンダC1~C8にそれぞれ対応しており、制御部60は、第1ないし第8電磁弁V1~V8に制御信号を出力することにより、第1ないし第8エアシリンダC1~C8を動作させる。なお、第1ないし第8電磁弁V1~V8は、図2に示すエリアE2~E9に対応している。制御部60は、クランプ用電磁弁63を接続している。制御部60は、クランプ用電磁弁63に制御信号を出力することにより、クランプ用シリンダ57を動作させる。
【0051】
なお、制御部60には、アーム部材4の回転、停止及び上下動等の各種動作タイミングが予め設定されて記憶されているが、必要に応じて変更可能とされてもよい。
【0052】
次に、ワーク搬送装置1の動作の一例を説明する。
【0053】
このワーク搬送装置1では、動作が開始されると、本体部3の周りを各アーム部材4が回転する。このとき、各アーム部材4は、図2に示した各エリアE1~E10に到達するたびに停止し、所定の昇降動作を行った後、次のエリアE1~E10に搬送される。なお、隣り合うエリア間の搬送角度は約36°とされる。
【0054】
ワークWは、作業員によってエリアE1で着荷され、本体部3の周りをアーム部材4によって搬送された後、エリアE10で脱荷される。なお、本体部3に対する各アーム部材4の高さ位置は、図1に示す位置が基準とされ、アーム部材4は、この高さ位置にある場合にのみ回転される。
【0055】
まず、作業員は、エリアE1においてワークWをアーム部材4に吊り下げ、前処理開始スイッチ61を操作すると、制御部60はモータ45に対し駆動信号を送出する。これにより、モータ45は回転駆動し、それにともないリング部材8及び本体部3が回転し、アーム部材4が本体部3周りに回転される。この場合、例えば本体部3の回転速度は、最大で約12m/分とされる。
【0056】
ここで、アーム部材4は、回転前の初期位置から次のエリアがある位置に向かう。このとき、次のエリアの手前で位置決めドック11が第1リミットスイッチ51に当接する。制御部60は、第1リミットスイッチ51からのオン信号を受けると、モータ45の回転速度を減速するとともに、クランプ装置54のクランプ用電磁弁63に制御信号を送出し、クランプ用シリンダ57の動作を開始させる。これにより、一対の回動部材56の回動動作が開始される。
【0057】
本体部3の回転速度が減速された後、回転動作が継続されると、位置決めドック11が第2リミットスイッチ52に当接する。制御部60は、第2リミットスイッチ52からのオン信号を受けると、モータ45の回転を停止させる。この場合、クランプ装置54の一対の位置決め爪部材55は、位置決めドック11の被挟持部13を挟持する。これにより、アーム部材4は、各エリアE1~E10の所定位置において位置決めされて停止する。
【0058】
次に、制御部60は、第1ないし第8電磁弁V1~V8に制御信号を送出し、第1ないし第8エアシリンダC1~C8の各ピストンロッド39をエアシリンダ本体に退入するように移動させる。これにより、ガイドアーム36が下降し、これにともなってアーム部材4が下降する。ピストンロッド39のストロークは予め決められており(例えば約650mm)、所定の高さ位置にアーム部材4が到達すると、制御部60は、第1ないし第8電磁弁V1~V8に対する制御信号の送出を停止する。これにより、各アーム部材4は、所定の高さ位置で停止する。
【0059】
ここで、例えばエリアE4の位置に図略の洗浄槽が設けられ、エリアE7の位置に図略のコーティング槽が設けられている場合、各アーム部材4が下降することにより、それらに吊下げられたワークWは、エリアE4の位置で洗浄槽に浸漬され、エリアE7の位置でコーティング槽に浸漬される。
【0060】
次いで、制御部60は、エリアE7の位置にあるアーム部材4を上下動させるために、第6電磁弁V6のみに制御信号を送出する。これにより、第6エアシリンダC6のみに対する空気圧が制御され、そのピストンロッド39がエアシリンダ本体に対して進出及び退入する。この場合、制御部60は、第6電磁弁V6に対する制御信号の送出を複数回頻繁に繰り返す。これにより、エリアE7の位置にあるアーム部材4が繰り返し細かく上下動し、当該アーム部材4に吊下げられたワークWも繰り返し細かく上下動される。よって、ワークWは、コーティング槽内にある処理液中で浸漬されつつ上下動されることになる。
【0061】
そのため、ワークWにおけるコーティングを確実に行うことができる。また、コーティング槽に浸漬された状態でワークWが繰り返し細かく上下動されると、ワークWの表面に残る気泡を除去することができ、ワークWの表面に対する処理液の付着を促進させることができる。さらに、ワークWが繰り返し上下動されると、コーティング槽内で処理液が循環し処理液の付着がより一層促進され、ひいてはコーティング時間を短縮することができる。
【0062】
その後、制御部60は、エリアE5の位置にあるアーム部材4を上下動させるために、第4電磁弁V4のみに制御信号を送出する。これにより、第4エアシリンダC4のみに対する空気圧が制御され、そのピストンロッド39がエアシリンダ本体に対して進出及び退入する。この場合、制御部60は、第4電磁弁V4に対する制御信号の送出を複数回繰り返す。これにより、エリアE5の位置にあるアーム部材4が繰り返し上下動し、当該アーム部材4に吊下げられたワークWも繰り返し上下動される。これは、例えば、エリアE4において洗浄槽に浸漬されたワークWの表面に残る水滴等を、ワークWを複数回上下動させることにより、除去するために行われる動作である。
【0063】
エリアE5におけるアーム部材4の繰り返しの上下動動作が終了すれば、制御部60は、第1ないし第8電磁弁V1~V8に対する制御信号を送出し、全てのアーム部材4を基準位置に上昇させる。その後、アーム部材4が次のエリアに進むように、制御部60はモータ45を駆動し、アーム部材4が次のエリアに到達した場合、上記したのと同様の動作を行う。
【0064】
エリアE5及びE7を除く他のエリアでは、ワークWは、洗浄槽やコーティング槽に浸漬されないため、自然乾燥される。なお、ワークWは、所定のエリア位置で、風力等による乾燥が行われてもよい。また、ワークWの乾燥時間は、アーム部材4の数や本体部3の回転速度等を適正に設定すれば、より適切な時間に設定することができる。
【0065】
なお、作業員は、上記のような前処理工程を終了させたい場合には、前処理停止スイッチ62を操作する。これにより、制御部60は、前処理工程を終了するよう各構成部材を制御する。
【0066】
上記のように、エリアE1において着荷されたワークWは、本体部3の周りを一周することにより、洗浄、乾燥、コーティング等の工程がそれぞれ行われ、エリアE10において脱荷される。ここで、アーム部材4が次のエリアに回転移動するたびに、ワークWを着荷するとともに、他のワークWを脱荷するようにすれば、複数のワークWに対して洗浄、乾燥、コーティング等の工程を連続的に行うことができる。
【0067】
このように、本実施形態におけるワーク搬送装置1によれば、本体部3の周りを、ワークWを回転させて搬送させ、各所定の停止位置で、洗浄、乾燥、コーティング等の前処理工程が行われるので、より小スペースで塗装前の前処理工程を行うことができる。従来の構成では、このような工程は直線状に連続ラインで実施され広大なスペースを必要とされたが、ワーク搬送装置1では円状の小スペースで行うことができる。
【0068】
また、本ワーク搬送装置1によれば、ワークWの着荷及び脱荷が隣り合うエリアE1,E10で行い得るので、例えば作業員がワークWの着荷及び脱荷の作業を一人で行うことができる。従来の構成では、搬送ラインが直線状であるので、ワークWの着荷及び脱荷は離れた位置にあり、一人の作業員で行うことはできないことになる。
【0069】
また、本実施形態によれば、リング部材8(本体部3)の回転にフリクション駆動が用いられているため、緊急時にも作業員が手動で本体部3の回転を中断させることができるので、安全性に優れたワーク搬送装置1とすることができる。
【0070】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施形態における各部材の形態、大きさ、数量及び構造等は、上記実施形態に限るものではなく適宜設計変更可能である。
【0071】
また、上記実施形態では、洗浄、乾燥、コーティング等の前処理工程を上記手順で行うようにしたが、前処理工程の手順は、上記手順に限るものではない。また、上記ワーク搬送装置は、上記した前処理工程において用いられるものではなく、他の分野における部材、例えば農作物等を搬送するものであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 ワーク搬送装置
2 ベースフレーム
3 本体部
4 アーム部材
8 リング部材
11 位置決めドック
14 ポスト
18 ガイドレール
22 フレーム部材
36 ガイドアーム
38 エアシリンダ
40 ガイドフレーム
44 フリクション駆動部
45 モータ
47 車輪
60 制御部
W ワーク
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