(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】トンネル覆工施工システム、及びトンネル覆工施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
E21D11/10 A
(21)【出願番号】P 2019154116
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-07-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591284601
【氏名又は名称】株式会社演算工房
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】山本 将
(72)【発明者】
【氏名】木村 厚之
(72)【発明者】
【氏名】楠本 太
(72)【発明者】
【氏名】大久保 常秀
(72)【発明者】
【氏名】本田 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 勝之
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴之
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-328997(JP,A)
【文献】特開2019-112784(JP,A)
【文献】特開2003-301698(JP,A)
【文献】特開平06-212896(JP,A)
【文献】特開平06-221092(JP,A)
【文献】特開2000-345797(JP,A)
【文献】特開2009-155819(JP,A)
【文献】特開平08-135389(JP,A)
【文献】特開2015-206173(JP,A)
【文献】特開平06-066095(JP,A)
【文献】特開昭61-053999(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111350526(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル壁面と覆工型枠との間の打設領域にコンクリートを打ち込んでトンネルの覆工を構築するトンネル覆工施工システムであって、
前記覆工型枠のうち前記トンネル壁面の内周側に位置する型枠本体の切羽側の内周面においてトンネル周方向に沿って設けられた複数の打込み口から前記コンクリートを打ち込む打込みノズルと、
前記打込みノズルを前記トンネル周方向に移動させ、かつ前記打込み口に対して着脱させるノズル移動装置と、
前記コンクリートの打ち込み状況を前記覆工型枠に設けられたセンサで測定し、前記センサで測定した前記コンクリートの打ち込み状況に応じて前記ノズル移動装置をトンネル周方向に移動させ、所定の前記打込み口を選択して前記打込みノズルを着脱操作するように制御する制御部と、
を備え
、
一端が前記打込みノズルに接続され、他端が前記コンクリートの圧送ポンプに繋がる可動配管をさらに備え、
前記可動配管は、複数の関節部によって連結された多関節配管であり、
前記可動配管の一端が前記ノズル移動装置に搭載される前記打込みノズルの基端部に接続され、前記可動配管の他端が配管切替え装置と接続され、
前記配管切替え装置には、複数の可動配管が接続され、
前記配管切替え装置は、前記制御部からの制御信号に基づいて、前記複数の可動配管のうちいずれかの可動配管に前記コンクリートを送出し、
前記可動配管は、前記制御部からの制御信号に基づいて、各関節の姿勢が制御されることを特徴とするトンネル覆工施工システム。
【請求項2】
前記ノズル移動装置は、前記覆工型枠よりも切羽側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のトンネル覆工施工システム。
【請求項3】
前記打込み口には、前記覆工型枠よりも切羽側に向けて延びる打込み管が接続され、
前記打込みノズルは、前記打込み管に着脱可能に接続されることを特徴とする請求項1に記載のトンネル覆工施工システム。
【請求項4】
トンネル周方向に沿って延在するガイドレールが設けられ、
前記ノズル移動装置は、前記ガイドレールに沿って移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトンネル覆工施工システム。
【請求項5】
トンネル壁面と覆工型枠との間の打設領域にコンクリートを打ち込んでトンネルの覆工を構築するトンネル覆工施工方法であって、
ノズル移動装置をトンネル周方向に移動させる工程と、
前記覆工型枠のうち前記トンネル壁面の内周側に位置する型枠本体の切羽側の内周面において、トンネル周方向に沿って設けられた複数の打込み口に、前記ノズル移動装置を駆動することにより打込みノズルを接続する工程と、
前記打込みノズルから前記打設領域にコンクリートを打ち込む工程と、
を有し、
前記コンクリートの打ち込み状況を前記覆工型枠に設けられたセンサで測定し、前記センサで測定した前記コンクリートの打ち込み状況に応じて前記ノズル移動装置をトンネル周方向に移動させ、所定の前記打込み口を選択して前記打込みノズルを着脱操作するように制御
し、
一端が前記打込みノズルに接続され、他端が前記コンクリートの圧送ポンプに繋がる可動配管をさらに備え、
前記可動配管は、複数の関節部によって連結された多関節配管であり、
前記可動配管の一端が前記ノズル移動装置に搭載される前記打込みノズルの基端部に接続され、前記可動配管の他端が配管切替え装置と接続され、
前記配管切替え装置には、複数の可動配管が接続され、
前記配管切替え装置において、前記複数の可動配管のうちいずれかの可動配管に前記コンクリートを送出するように制御し、
前記可動配管は、各関節の姿勢が制御されることを特徴とするトンネル覆工施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル覆工施工システム、及びトンネル覆工施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、NATM工法により掘削されたトンネル壁面と覆工型枠との間の空隙にコンクリートを打ち込んでトンネルの覆工を構築するためのコンクリート打込み装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
コンクリート打込み装置としては、切羽側に設置される妻型枠においてトンネル周方向に複数の打込み口を設け、これら複数の打込み口に対して打込みノズルの切替えを自動で行いながら打ち込む構成のものがある。そして、このようなコンクリート打込み装置を使用し、妻型枠の切羽側の空間で打込みノズルをトンネル周方向とトンネル軸方向に移動させながら打設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような従来のコンクリート打込み装置では、覆工型枠が配置された箇所でコンクリート打込み区間に設置された妻型枠の切羽側の覆工区間内には次のコンクリートの打ち込みに備えて鉄筋が組み立てられた鉄筋組み区間が形成されている。
つまり、打込みノズルが鉄筋組み区間の鉄筋と干渉するため、コンクリート打込み装置による打設が困難になるという問題があった。そのため、鉄筋組み区間に鉄筋が設けられる場合であっても、打込みノズルをトンネル周方向に自動的に移動させてコンクリートの打設を行うことができるコンクリート打込み装置が求められており、その点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、覆工の無筋区間の自動打ち込みに加え、鉄筋組み区間における自動打ち込みを可能とするトンネル覆工施工システム、及びトンネル覆工施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るトンネル覆工施工システムは、トンネル壁面と覆工型枠との間の打設領域にコンクリートを打ち込んでトンネルの覆工を構築するトンネル覆工施工システムであって、前記覆工型枠のうち前記トンネル壁面の内周側に位置する型枠本体の切羽側の内周面においてトンネル周方向に沿って設けられた複数の打込み口から前記コンクリートを打ち込む打込みノズルと、前記打込みノズルを前記トンネル周方向に移動させ、かつ前記打込み口に対して着脱させるノズル移動装置と、前記コンクリートの打ち込み状況を前記覆工型枠に設けられたセンサで測定し、前記センサで測定した前記コンクリートの打ち込み状況に応じて前記ノズル移動装置をトンネル周方向に移動させ、所定の前記打込み口を選択して前記打込みノズルを着脱操作するように制御する制御部と、を備え、一端が前記打込みノズルに接続され、他端が前記コンクリートの圧送ポンプに繋がる可動配管をさらに備え、前記可動配管は、複数の関節部によって連結された多関節配管であり、前記可動配管の一端が前記ノズル移動装置に搭載される前記打込みノズルの基端部に接続され、前記可動配管の他端が配管切替え装置と接続され、前記配管切替え装置には、複数の可動配管が接続され、前記配管切替え装置は、前記制御部からの制御信号に基づいて、前記複数の可動配管のうちいずれかの可動配管に前記コンクリートを送出し、前記可動配管は、前記制御部からの制御信号に基づいて、各関節の姿勢が制御されることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係るトンネル覆工施工方法は、トンネル壁面と覆工型枠との間の打設領域にコンクリートを打ち込んでトンネルの覆工を構築するトンネル覆工施工方法であって、ノズル移動装置をトンネル周方向に移動させる工程と、前記覆工型枠のうち前記トンネル壁面の内周側に位置する型枠本体の切羽側の内周面において、トンネル周方向に沿って設けられた複数の打込み口に、前記ノズル移動装置を駆動することにより打込みノズルを接続する工程と、前記打込みノズルから前記打設領域にコンクリートを打ち込む工程と、を有し、前記コンクリートの打ち込み状況を前記覆工型枠に設けられたセンサで測定し、前記センサで測定した前記コンクリートの打ち込み状況に応じて前記ノズル移動装置をトンネル周方向に移動させ、所定の前記打込み口を選択して前記打込みノズルを着脱操作するように制御し、一端が前記打込みノズルに接続され、他端が前記コンクリートの圧送ポンプに繋がる可動配管をさらに備え、前記可動配管は、複数の関節部によって連結された多関節配管であり、前記可動配管の一端が前記ノズル移動装置に搭載される前記打込みノズルの基端部に接続され、前記可動配管の他端が配管切替え装置と接続され、前記配管切替え装置には、複数の可動配管が接続され、前記配管切替え装置において、前記複数の可動配管のうちいずれかの可動配管に前記コンクリートを送出するように制御し、前記可動配管は、各関節の姿勢が制御されることを特徴としている。
【0008】
本発明では、覆工型枠の型枠本体の切羽側の内周面に設けられた打込み口に打込みノズルを接続してコンクリートを打設領域に打ち込むことができる。つまり、打込み口が型枠本体の内周面に位置しているため、打込み口に接続される打込みノズルが型枠本体の内周面側に配置した状態で打ち込みを行うことができ、打ち込み時において覆工型枠の妻型枠の切羽側に打込みノズルを配置することがなくなる。
そのため、覆工コンクリート内に鉄筋が設けられる鉄筋区間の施工において、次のコンクリート打ち込み区間である妻型枠の切羽側に鉄筋が組み立てられた状態であっても、打込みノズルを型枠本体の内空側でトンネル周方向及びトンネル軸方向に移動させることができる。したがって、鉄筋と干渉することなく効率よくトンネル周方向に沿ってノズル移動装置とともに打込みノズルを移動させることが可能となるので、自動打ち込みを行うことができる。
【0009】
また、本発明に係るトンネル覆工施工システムは、前記ノズル移動装置は、前記覆工型枠よりも切羽側に配置されていることが好ましい。
【0010】
この場合には、覆工型枠の切羽側の空間にノズル移動装置を配置できる。そのため、覆工型枠のセット、脱型の動作に干渉することなく、ノズル移動装置を所定のトンネル周方向の位置に移動させる並行作業を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係るトンネル覆工施工システムは、前記打込み口には、前記覆工型枠よりも切羽側に向けて延びる打込み管が接続され、前記打込みノズルは、前記打込み管に着脱可能に接続されることが好ましい。
【0012】
この場合には、予めトンネル周方向に間隔あけて設けられる複数の打込み口のすべてに打込み管を接続しておくことで、それらの打込み管に対して選択的に打込みノズルを接続して所望の打込み口からコンクリートを打設領域に打ち込むことができる。
このとき、打込み口に接続される打込み管の端部が覆工型枠よりも切羽側に位置することから、打込み管の端部に打込みノズルを接続する際に、打込みノズルをトンネル軸方向に直交する径方向への移動させずに接続することが可能となる。そのため、コンクリート打ち込み前の準備作業を向上させることができるうえ、自動化の精度を高めることができる。
【0013】
また、本発明に係るトンネル覆工施工システムは、トンネル周方向に沿って延在するガイドレールが設けられ、前記ノズル移動装置は、前記ガイドレールに沿って移動可能に設けられていることを特徴としてもよい。
【0014】
この場合には、ノズル移動装置をガイドレールに沿ってトンネル周方向に移動させることができることから、ノズル移動装置の位置決めが容易になり、施工の効率化を図ることができるとともに、打ち込みの自動制御を容易にかつ精度よく行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトンネル覆工施工システム、及びトンネル覆工施工方法によれば、覆工の無筋区間の自動打ち込みに加え、鉄筋組み区間における自動打ち込みを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態によるトンネル覆工施工システムの構成を斜め切羽側から見た斜視図である。
【
図2】
図1に示すトンネル覆工施工システムを切羽側から見た正面図である。
【
図3】
図2に示すトンネル覆工施工システムにおける覆工型枠の切羽側でコンクリートを打ち込む状態を示した側面図である。
【
図4】打込み口に接続された打込み管に打込みノズルを接続する前の状態を示す側面図である。
【
図5】トンネル覆工施工システムにおいて打込み管と打込みノズルをトンネル内空側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態によるトンネル覆工施工システム、及びトンネル覆工施工方法について、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態によるトンネル覆工施工システム1は、NATM工法により掘削されたトンネル壁面100と覆工型枠10との間の空隙に自動でコンクリートを打ち込んでトンネルの覆工101を構築するための施工システムである。
【0019】
本実施形態で対象とするトンネル断面はアーチ型であり、
図2及び
図3に示すように、底盤103上のアーチ内周面に覆工が構築される。そして、トンネル覆工施工システム1によってコンクリートが打設されるトンネル壁面100には、吹付けコンクリートによる支保102が施されるとともに、防水シート(図示省略)が全面にわたって設けられている。
【0020】
打設されるコンクリートとしては、例えば、流動性に優れ、材料分離がない中流動覆工コンクリートを用いることができる。ここで、トンネル覆工施工システム1における覆工型枠10において、トンネルの長手方向に沿った軸であるトンネル軸方向X1で切羽側(妻側ともいう)を切羽部10aとし、坑口側(既設覆工101側、ラップ側ともいう)を坑口部10bとする。
覆工型枠10は、トンネル軸方向X1から見た形状は、アーチ状である。覆工型枠10は、トンネル軸方向X1に沿った所定長さに設けられ、切羽より後方位置(例えば100m後方の位置)で掘進と並行してコンクリートの打ち込みを行って覆工が構築される。このとき、覆工型枠10は既設覆工101(
図1参照)にオーバーラップさせて次に打設する箇所にセットされ、コンクリートの打ち込みが行われる。つまり、覆工型枠10を順次、切羽側に盛替えながら覆工が構築される。
【0021】
トンネル覆工施工システム1は、トンネルの底盤103上でトンネル進行方向に移動可能な覆工型枠10と、覆工型枠10の切羽側に配置され打込みノズル3を有する打込み装置20と、を備えている。
【0022】
覆工型枠10は、
図2に示すように、トンネル壁面100に一定の間隔をあけて対向するようにトンネル周方向X2に延在する型枠本体11と、打設領域Rの切羽側の妻部に着脱可能な妻型枠12と、を備えている。
【0023】
妻型枠12は、型枠本体11と同様にアーチ型にトンネル周方向X2に沿って延び、型枠本体11をセットした後に型枠本体11の切羽側端部に対して固定される。妻型枠12を型枠本体11に固定した状態で、打設領域Rの切羽側端部が妻型枠12によって保持される。
【0024】
型枠本体11は、トンネルの底盤103上を自走可能な走行装置を備えた架台(図示省略)により内周側から支持され、架台対して打設セット姿勢と脱型姿勢とを選択的に取り得るように設けられている。型枠本体11の切羽部10aの内周面11aには、後述する打込み管15が接続可能な複数(
図2において11箇所)の打込み口13がトンネル周方向X2に間隔をあけて設けられている。打込み口13は、トンネル内空側に向けて開口し、トンネル内空側と前記打設領域Rとが連通する。打込み口13は、トンネル周方向X2にコンクリートの打ち込み単位である例えば50cm~2mの間隔で設けられる。
【0025】
打込み口13には、
図4及び
図5に示すように、打込み口13を開閉する開閉シャッター14が備えられている。開閉シャッター14は、回動軸14aが型枠本体11の内周面11aに設けられ、開閉シリンダー14bの伸縮駆動によってトンネル内空側に回動することで開閉される構成となっている。開閉シャッター14は、開いた状態で打込み管15が着脱可能に接続され、打設後に打込み管15が取り外されたときに打込み口13を閉じるように構成されている。
なお、打込み口13には、洗浄水を噴射可能な図示しない洗浄装置を設けていてもよい。洗浄装置を設けることで、打設した後に打込みノズル3を切り離した後、洗浄装置で打込み口13、打込み管15、及び打込みノズル3を洗浄することができる。
【0026】
開閉シャッター14が開いた状態で打込み管15に対して打込みノズル3を挿入し、固定した後、コンクリートを打ち込む。当該打込み口13における打設が終わって打込みノズル3を引き出して打込み管15から離脱させる際には、開閉シリンダー14bを駆動させて開閉シャッター14が閉じられる。
【0027】
打込み管15は、打込み口13に接続された状態で、打込み口13から妻型枠12よりも切羽側に突出するように延びている。具体的に打込み管15は、打込み口13から切羽側に斜め下方に延びる傾斜部15Aと、傾斜部15Aから湾曲部15Bを介して略水平方向で切羽側に延びる水平部15Cと、を有する曲管を形成している。打込み管15の切羽側の端部には、打込みノズル3が接続される挿入口15aが形成されている。打込み管15は、打設時においてすべての打込み口13に接続した状態で設けられる。
【0028】
本実施形態では、打込み管15の挿入口15aは、ノズル移動装置5に保持される打込みノズル3の先端部3aと同軸線上になるように設けられている。このように打込み管15の挿入口15aと打込みノズル3の先端部3aとが同軸線上に設けられることで、打込みノズル3を打込み管15に接続する際にトンネル軸方向X1に移動させるだけで着脱することができる。
【0029】
型枠本体11の内周面11aには、
図3に示すように、所定の位置に複数の型枠バイブレータ(図示省略)が設けられている。型枠バイブレータは、稼働することにより型枠本体11を介して打設領域Rに打ち込まれたコンクリートに振動を与える。型枠バイブレータは、型枠本体11のトンネル周方向X2及びトンネル軸方向X1に沿ってそれぞれ間隔をあけた適宜な位置に設けられる。
【0030】
打込み装置20は、
図2及び
図3に示すように、打込み口13に打込み管15を介して着脱可能な打込みノズル3と、型枠本体11より切羽側に配置されトンネル周方向X2に沿って延在するガイドレール4と、打込みノズル3を備えてガイドレール4に案内されるノズル移動装置5と、コンクリートの打ち込み状態を検出するとともに、複数の打込み口13に対する打込みノズル3の接続位置を切り替える制御部6(
図3参照)と、を備えている。
なお、本実施形態では、打込みノズル3を装着したノズル移動装置5がガイドレール4上に2セット設けられている。
【0031】
打込みノズル3は、ノズル移動装置5に搭載され、打込みノズル3の基端部3bが
図1に示すコンクリートの圧送ポンプ31に繋がれている可動配管30に接続されている。打込みノズル3の先端部3aは、打込み管15の挿入口15aに着脱可能に挿入される。
【0032】
可動配管30は、
図1乃至
図3に示すように、複数の関節部によって連結された多関節配管であって、配管切替え装置32を備えている。可動配管30は、覆工型枠10をトンネル軸方向X1におけるコンクリートの打込み対象の位置に設置した後、覆工型枠10に対して固定するようにして設置される。具体的に可動配管30は、一端30aがノズル移動装置5に搭載される打込みノズル3の基端部3bに接続され、他端30bが配管切替え装置32と接続されている。可動配管30(30A、30B)は、切羽側から見て左右それぞれ1本ずつ設けられる。
【0033】
配管切替え装置32は、
図1に示すように、第1開口部32aと、第2開口部32bと、第3開口部32cとを有する。第1開口部32aには、圧送ポンプ31に接続されたコンクリート配管33に接続される。第2開口部32b及び第3開口部32cには、一方の可動配管30Aの打込みノズル3が設けられた端部(一端30a)とは反対側の端部(他端30b)が接続されるとともに、他方の可動配管30Bの他端30bが接続される。
【0034】
配管切り替え装置32は、制御部6からの制御信号に基づいて、第1開口部32aから取り込んだコンクリートを第2開口部32b又は第3開口部32cのいずれか一方に切り替えて排出する。これにより、圧送ポンプ31により圧送されたコンクリートは、一方の可動配管30A側の打込みノズル3と、他方の可動配管30B側の打込みノズル3のいずれか一方から打込まれる。
【0035】
可動配管30の関節部は、制御部6から出力される制御指示に基づいて油圧制御されることで、各関節の姿勢が制御される。可動配管30が駆動することで、各ノズル移動装置5が、ガイドレール4の外周面上をトンネル周方向X2に沿って移動する。これにより、打込みノズル3は、複数の打込み口13のうち、いずれの打込み口13の近傍まで移動することができ、コンクリートを打ち込むかを切り替えることができる。
【0036】
ガイドレール4は、
図3に示すように、型枠本体11の切羽側において、トンネル周方向X2に沿って設けられている。ガイドレール4は、型枠本体11を支持する架台の切羽側に固定されて支持されている。ガイドレール4は、ノズル移動装置5をトンネル周方向X2に移動させる。
【0037】
ノズル移動装置5は、2セット設けられている。そのため、トンネル軸方向X1から見た断面視で左右それぞれにノズル移動装置5とともに打込みノズル3を個別に移動させて配置することができ、左右の打設領域Rにおけるコンクリート打込み作業を並行して行うことができる。また、ノズル移動装置5には、打込みノズル3の打込み管15の挿入口15aへの脱着させる前後スライド部51が設けられている。前後スライド部51は、打込みノズル移動装置5のトンネル軸方向X1(前後方向)に打込みノズル3を延伸するように移動させる。
【0038】
制御部6は、コンクリートの打設状態を検出するセンサ61(
図1参照)と、センサ61の検出結果を取得する受信部62(
図3参照)と、受信した情報を表示する表示部63(
図3参照)と、操作部64(
図3参照)と、を有している。
【0039】
センサ61としては、トンネル壁面100と覆工型枠10等に適宜な位置に設けられ、例えば打ち込まれるコンクリートの打込み状況を測定する。センサ61で測定される打込み状況としては、例えばコンクリートの表面高さ、型枠本体11の側面における側圧、型枠本体11や妻型枠12の各部における温度と圧力、加速度等がある。センサ61は、コンクリートに接触したか否かを検出するコンクリートセンサ、加速度センサ、圧力温度センサ等を採用できる。
【0040】
次に、上述したトンネル覆工施工システム、及びトンネル覆工施工方法の動作と掘進方法について、図面を用いて詳細に説明する。
先ず、
図2及び
図3に示すように、覆工型枠10の型枠本体11をトンネル軸方向X1のうちコンクリートを打ち込む対象の位置まで移動させて配置する。次に、型枠本体11の切羽側の端部に妻型枠12を固定する。そして、覆工型枠10の型枠本体11の内周面11aに設けられている各打込み口13を開閉シャッター14により開放し、それらすべての打込み口13に打込み管15を接続する。
【0041】
続いて、覆工型枠10に対して打込み装置20及び可動配管30A、30Bを設置する。つまり、ガイドレール4上のノズル移動装置5の打込みノズル3の基端部3bに可動配管30の一端30aを接続する。これにより、圧送ポンプ31から供給されるコンクリートは配管切り替え装置32まで供給可能な状態となる。ここで打ち込み開始時においては、ノズル移動装置5の前後スライド部51を前進させて最も下方に位置する左右の打込み口13の打込み管15の挿入口15aに打込みノズル3の先端部3aを挿入して接続する。
【0042】
そして、作業員は、打込み開始の指示を操作盤から入力する。制御部6は、操作部64において打込み開始指示が入力されたことを検出すると、打込み処理を開始する。これにより打込みノズル3を所定の打込み口13に挿入するように指示し、ノズル移動装置5が打込みノズル3をトンネル軸方向X1の坑口側に向けて打込みノズル3を移動させ、打込みノズル3が打込み管15に挿入して接続する。
【0043】
次いで、打込みノズル3が打込み管15に接続されると、コンクリートの打ち込みを行う。ここでは、打込まれたコンクリートの表面の高さに応じて切羽側から見て覆工型枠10の左右に配管切り替え装置32によって切り替えながら打ち込むことで、打設領域Rの下端部から天端部まで打ち込む。打設中は、コンクリートの打込み状況に応じて上述した型枠バイブレータによってコンクリートに振動を与え、これにより締固めされる。
【0044】
打込み口13の切り替えは、コンクリート表面が上方の打込み口13に到達した時点で切り替える。
コンクリートを打込む対象の打込み口13は、打込みコンクリートの表面がその打込み口13よりも1つ上方の打込み口13に到達した時点で、現在打込みを行っている打込み口13の開閉シャッター14を閉める。そして、1つ上方の打込み口13まで打込みノズル3を移動させてガイドレール4に沿って移動させてから開閉シャッター14を開き、打込み管15に対して打込みノズル3を挿入し、固定することで切り替えを行う。
【0045】
上述したコンクリートの打ち込みは、覆工型枠10の下端部から天端部まで行われる。天端部へのコンクリートの打設が終了すると、コンクリートの打ち込みが終了する。その後、所定の養生時間が経過してから、覆工型枠10を脱型し、トンネル軸方向X1で前方(切羽側)に向けて覆工型枠10や打込み装置20等を移動し、次の打込み対象の位置に覆工型枠10を移動させてセットし、上記と同様の手順によりコンクリートを打ち込む。
【0046】
次に、上述したトンネル覆工施工システム、及びトンネル覆工施工方法の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、覆工型枠10の型枠本体11の切羽側の内周面11aに設けられた打込み口13に打込みノズル3を接続してコンクリートを打設領域Rに打ち込むことができる。つまり、打込み口13が型枠本体11の内周面11aに位置しているため、打込み口13に接続される打込みノズル3が型枠本体11の内周面11a側に配置した状態で打ち込みを行うことができ、打ち込み時において覆工型枠10の妻型枠12の切羽側に打込みノズル3を配置することがなくなる。
【0047】
そのため、覆工コンクリート内に鉄筋が設けられる鉄筋区間の施工において、次のコンクリート打ち込み区間である妻型枠12の切羽側に鉄筋が組み立てられた状態であっても、打込みノズル3を型枠本体11の内空側でトンネル周方向X2及びトンネル軸方向X1に移動させることができる。したがって、鉄筋と干渉することなく効率よくトンネル周方向に沿ってノズル移動装置5とともに打込みノズル3を移動させることが可能となるので、自動打ち込みを行うことができる。
【0048】
また、本実施形態では、覆工型枠10の切羽側の空間にノズル移動装置5を配置できるため、覆工型枠10のセット、脱型の動作に干渉することなく、ノズル移動装置5を所定のトンネル周方向X2の位置に移動させる並行作業を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態では、予めトンネル周方向X2に間隔あけて設けられる複数の打込み口13のすべてに打込み管15を接続しておくことで、それらの打込み管15に対して選択的に打込みノズル3を接続して所望の打込み口13からコンクリートを打設領域Rに打ち込むことができる。
このとき、打込み口13に接続される打込み管15の端部(挿入口15a)が覆工型枠10よりも切羽側に位置することから、打込み管15の挿入口15aに打込みノズル3を接続する際に、打込みノズル3をトンネル軸方向X1に直交する径方向への移動させずに接続することが可能となる。そのため、コンクリート打ち込み前の準備作業を向上させることができるうえ、自動化の精度を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態では、トンネル周方向X2に沿って延在するガイドレール4を設け、ノズル移動装置5をガイドレール4に沿ってトンネル周方向X2に移動させることができる。これにより、ノズル移動装置5の位置決めが容易になり、施工の効率化を図ることができるとともに、打ち込みの自動制御を容易にかつ精度よく行うことができる。
【0051】
上述のように本実施形態によるトンネル覆工施工システム、及びトンネル覆工施工方法では、覆工の無筋区間の自動打ち込みに加え、鉄筋組み区間における自動打ち込みを可能とする。
【0052】
以上、本発明によるトンネル覆工施工システム、及びトンネル覆工施工方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0053】
例えば、本実施形態では、打込み装置20のガイドレール4及びノズル移動装置5が覆工型枠10よりも切羽側に配置された構成としているが、この位置であることに限定されることはなく、例えば覆工型枠10の内空側に配置されていてもよい。このように覆工型枠10の内空側に配置される場合には、打込みノズル3をトンネル軸方向に直交する径方向への移動が必要となる。
【0054】
また、本実施形態では、打込み口13に覆工型枠よりも切羽側に向けて延びる打込み管15が接続されているが、この打込み管15を省略してもよい。
【0055】
さらに、本実施形態では、トンネル周方向に沿ってガイドレール4を設けた構成としているが、このようなガイドレール4を設けることに限定されることはい。要はノズル移動装置5をトンネル周方向の所定位置に移動し、位置決めできる機構であればよいのである。
【0056】
さらにまた、打込み口13の位置、数量は適宜設定することができる。また、覆工型枠10(型枠本体11、妻型枠12)、開閉シャッター14、打込みノズル3、ガイドレール4、ノズル移動装置5の形状、大きさ、数量等の構成もトンネルの断面形状、大きさに応じて適宜設定することができる。また、制御部6の構成、例えばセンサ61の種類、位置、数量等も適宜決めることが可能である。
【0057】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 トンネル覆工施工システム
3 打込みノズル
4 ガイドレール
5 ノズル移動装置
6 制御部
10 覆工型枠
11 型枠本体
11a 内周面
12 妻型枠
13 打込み口
14 開閉シャッター
15 打込み管
15a 挿入口
20 打込み装置
30、30A、30B 可動配管
32 配管切り替え装置
51 前後スライド部
100 トンネル壁面
R 打設領域
X1 トンネル軸方向
X2 トンネル周方向