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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】情報提供装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0203 20230101AFI20240606BHJP
【FI】
G06Q30/0203
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023175997
(22)【出願日】2023-10-11
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2023146427
(32)【優先日】2023-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 柴田書店,月刊食堂,2023年5月号,2023年4月20日発行 柴田書店,月刊食堂,2023年7月号,2023年6月20日発行 柴田書店,月刊食堂,2023年9月号、2023年8月20日発行
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507027896
【氏名又は名称】株式会社ファンくる
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】山口 敬人
(72)【発明者】
【氏名】徳田 修治
(72)【発明者】
【氏名】黒木 勝巳
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-146949(JP,A)
【文献】特開2021-105907(JP,A)
【文献】末吉 正成 他,EXCELマーケティング リサーチ&データ分析 [ビジテク] ,初版,株式会社翔泳社,2014年01月24日,p.256~261、308~321
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思、再購入意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する調査データ取得手段と、
前記評価データに基づいて再来店意思、再購入意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数として多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、
前記複数の説明変数間の関連性を算出する相関分析手段と、
前記多変量解析手段および前記相関分析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力手段と、を備え、
前記分析結果出力手段が、前記寄与度に対応する大きさの図形により前記複数の説明変数を正多角形の頂点に配置して前記情報端末に表示させること、並びに、前記図形のペアを接続する線であって、前記関連性の強さに応じた太さおよび/または種類の線を前記情報端末に表示させることを特徴とする情報提供装置。
【請求項2】
前記図形が、円、多角形またはイラストであることを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記図形のペアの関連性が所定値未満である場合には、当該図形のペアを接続する線を前記情報端末に表示させないことを特徴とする請求項1または2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
さらに、前記複数の説明変数のそれぞれについての基準値を設定する基準値設定手段を備え、
前記分析結果出力手段が、前記説明変数を前記基準値との差に応じて異なる色で着色して表示させることを特徴とする請求項1または2に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記基準値設定手段が、前記複数の説明変数のそれぞれについて算出した同一または類似の業種・業態における評点の平均値を算出し、前記基準値に設定する機能を備えることを特徴とする請求項4に記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記分析結果出力手段が、前記説明変数が前記基準値よりも高い値の場合は第1の色で着色し、前記説明変数が前記基準値よりも低い値の場合は第1の色と異なる第2の色で着色することを特徴とする請求項4に記載の情報提供装置。
【請求項7】
前記分析結果出力手段が、前記説明変数を前記基準値との差が大きくなるほど濃く着色して表示させることを特徴とする請求項に記載の情報提供装置。
【請求項8】
対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思、再購入意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する調査データ取得手段と、
前記評価データに基づいて再来店意思、再購入意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数として多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、
前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力手段と、を備え、
前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目を含み、
前記多変量解析手段が、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目を目的変数とし、前記レベル2の評価項目を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とする情報提供装置。
【請求項9】
前記分析結果出力手段が、前記寄与度に対応する大きさの図形により前記複数の説明変数を前記情報端末に表示させる請求項8に記載の情報提供装置。
【請求項10】
前記レベル3の評価項目が、前記レベル2の評価項目の下位概念の評価項目である、請求項8または9に記載の情報提供装置。
【請求項11】
対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思、再購入意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する工程、
前記評価データに基づいて再来店意思、再購入意思または他者推奨意思の評価値を算出する工程、
前記再来店意思、再購入意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析工程、
前記複数の説明変数間の関連性を算出する相関分析工程、
前記多変量解析工程および前記相関分析工程における分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力工程、をコンピューターが実行する情報提供方法であって、
前記分析結果出力工程において、前記寄与度に対応する大きさの図形により前記複数の説明変数を正多角形の頂点に配置して前記情報端末に表示させること、並びに、前記図形のペアを接続する線であって、前記関連性の強さに応じた太さおよび/または種類の線を前記情報端末に表示させることを特徴とする情報提供方法。
【請求項12】
コンピューターに、
対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思、再購入意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する手段と、
前記評価データに基づいて再来店意思、再購入意思または他者推奨意思の評価値を算出する手段と、
前記再来店意思、再購入意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、
前記複数の説明変数間の関連性を算出する相関分析手段と、
前記多変量解析手段および前記相関分析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力手段と、を実行させるプログラムであって、
前記分析結果出力手段が、前記寄与度に対応する大きさの図形により前記複数の説明変数を正多角形の頂点に配置して前記情報端末に表示させること、並びに、前記図形のペアを接続する線であって、前記関連性の強さに応じた太さおよび/または種類の線を前記情報端末に表示させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客のリピート意思または推奨意思に寄与する情報を提供するための情報提供装置、方法およびプログラムに関する。本発明におけるリピート意思は、商品およびサービスの再購入意思のみならず、店舗への再来店意思を含む概念である。なお、本発明における対象店舗には、物理的な店舗(リアル店舗)のみならず仮想空間上の店舗も含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、モニター調査の調査結果や店内アンケートを集計することで、対象店舗に対する顧客の評価を分析し、対象店舗のサービス改善に活用することが行われている。また、特許文献1では、対象店舗に対する顧客の心理状態(たとえば、満足度が高いまたは低い)を示す表示を、対象店舗の地図情報に重畳して表示する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-089035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来の方法では、調査結果やアンケート結果を単に集計したものを表示しており、どの要因が、顧客のリピート意思(または推奨意思)にどの程度寄与しているかを把握することはできなかった。また、評価因子の寄与度を高精度に算出するだけではなく、容易に把握するための表示手段が求められている。
【0005】
本発明は、顧客のリピート意思または推奨意思に対する評価因子の寄与度を視覚的に把握することを可能とする情報提供装置、方法およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
サービス業において、再来店率(リピート意思)を向上させるためにオペレーション品質改善施策を指南することが行われているが、店舗のオペレーション品質や来店客の期待内容に応じた提案になっておらず、改善効果が限定的であるという課題がある。このような課題が生じることの背景には、店舗のオペレーション品質や来店客の期待内容は、店舗の取り扱い内容、店舗側の改善取組の状況、来店客セグメントなどに応じて変化することにあるとの仮説を発明者は立てた。商品販売においても、再購入率(リピート意思)を向上させるために、再購入意思に影響を与えている評価要素を適確に把握し、商品に改良を加えることやプロモーションのクリエイティブの改善に活かすことは重要である。そこで、発明者は、顧客のリピート購入に効果があると期待される評価要素を因子分析した上で、リピート客の評価を統計的に有意になる数を収集し、統計分析した結果を図形により視覚的に表示することにより、リピート率を向上させるために有効な打ち手を容易に把握することを可能とする情報提供装置およびプログラムを発明した。
【0007】
本発明に係る情報提供装置は、対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思、再購入意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する調査データ取得手段と、前記評価データに基づいて再来店意思、再購入意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数として多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力手段と、を備え、前記分析結果出力手段が、前記寄与度に対応する大きさの図形により前記複数の説明変数を前記情報端末に表示させる構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記分析結果出力手段が、前記寄与度に応じて異なる太さおよび/または種類の線により前記目的変数と前記複数の説明変数とを接続して表示させる構成とすることができる。
上記情報提供装置において、さらに、前記複数の説明変数間の関連性を算出する相関分析手段を備え、前記分析結果出力手段が、前記説明変数のペアを接続する線であって、前記関連性の強さに応じた太さおよび/または種類の線を前記情報端末に表示させる構成とすることができる。
上記情報提供装置において、さらに、前記複数の説明変数のそれぞれについての基準値を設定する基準値設定手段を備え、前記分析結果出力手段が、前記説明変数を前記基準値との差に応じて異なる色で着色して表示させる構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記基準値設定手段が、前記複数の説明変数のそれぞれについて算出した同一または類似の業種・業態における評点の平均値を算出し、前記基準値に設定する機能を備える構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記分析結果出力手段が、前記説明変数が前記基準値よりも高い値の場合は第1の色で着色し、前記説明変数が前記基準値よりも低い値の場合は第1の色と異なる第2の色で着色する構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記分析結果出力手段が、前記図形を放射状に配置して表示させる構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目を含み、前記多変量解析手段が、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目を目的変数とし、前記レベル2の評価項目を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行する構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記レベル3の評価項目が、前記レベル2の評価項目の下位概念の評価項目である構成とすることができる。
【0008】
本発明の情報提供方法は、対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思、再購入意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する工程、前記評価データに基づいて再来店意思、再購入意思または他者推奨意思の評価値を算出する工程、前記再来店意思、再購入意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析工程、前記多変量解析工程における分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力工程、をコンピューターが実行する情報提供方法であって、前記分析結果出力工程において、前記寄与度に対応する大きさの図形により前記複数の説明変数を前記情報端末に表示させることを特徴とする。
【0009】
本発明のプログラムは、コンピューターに、対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思、再購入意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する手段と、前記評価データに基づいて再来店意思、再購入意思または他者推奨意思の評価値を算出する手段と、前記再来店意思、再購入意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力手段と、を実行させるプログラムであって、前記分析結果出力手段が、前記寄与度に対応する大きさの図形により前記複数の説明変数を前記情報端末に表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、顧客の再購入意思、再来店意思または推奨意思に対する各評価因子の寄与度を容易に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る情報提供システムの構成図である。
図2】第1実施形態に係る情報提供装置の機能を説明する図である。
図3】本実施形態のモニター調査による調査票の一例を示す図である。
図4】本実施形態のアンケート調査による調査票の一例を示す図である。
図5】第1実施形態に係る多変量解析手段を説明する図である。
図6】第1実施形態に係るラーメン業態における再来店意思に対する各説明変数の寄与度を示す分析結果を示す図である。
図7】第1実施形態に係る居酒屋業態における再来店意思に対する各説明変数の寄与度を示す分析結果を示す図である。
図8図6の各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を第1実施形態に係る分析結果出力手段によりグラフィカルに表示した図である。
図9図7の各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を第1実施形態に係る分析結果出力手段によりグラフィカルに表示した図である。
図10】再来店意思に対する各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を分析結果出力手段によりグラフィカルに放射状に比較表示した変形例の図であり、(A)はラーメン業態の図であり、(B)は居酒屋業態の図である。
図11】第2実施形態に係る焼き肉業態における再来店意思に対する各説明変数の寄与度を示す分析結果を示す図である。
図12図11の各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を第2実施形態に係る分析結果出力手段によりグラフィカルに表示した図である。
図13】第3実施形態に係る対象店舗における再来店意思に対する各説明変数の寄与度を示す分析結果を示す図である。
図14図13の各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を第3実施形態に係る分析結果出力手段によりグラフィカルに放射状に表示した図である。
図15】第4実施形態に係る飲料における再購入意思に対する各説明変数の寄与度を示す分析結果を示す図である。
図16図15の各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を第4実施形態に係る分析結果出力手段によりグラフィカルに放射状に表示した図である。
図17】化粧品における各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を第4実施形態に係る分析結果出力手段によりグラフィカルに放射状に表示した図である。
図18】歯磨き粉における各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を第4実施形態に係る分析結果出力手段によりグラフィカルに放射状に表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
第1実施形態の情報提供システム1は、特定業態における評価因子を分析することにより、再来店意思または推奨意思に影響を及ぼす評価因子をグラフィカルに表示することで容易に把握することを可能とするものであり、以下に説明する構成を備えている。
【0013】
図1は、本実施形態に係る情報提供システムの構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る情報提供システム1は、サーバーとして機能する情報提供装置10と、管理用クライアントとして機能する管理用情報端末20と、調査票回答者が利用する情報端末30と、調査データ収集装置40と、インターネット50とから構成されている。なお、図1に示す例では、情報提供装置10、管理用情報端末20および調査データ収集装置40を各1台例示しているが、この構成に限定されず、各2台以上の構成とすることができる。
【0014】
情報提供装置10は、たとえばPCサーバーであり、演算部11と、分析プログラム121を記憶している記憶部12と、情報端末30および調査データ収集装置40との通信を可能とする通信部13とを有している。
【0015】
管理用情報端末20は、情報提供装置10および調査データ収集装置40へのデータ入力操作や分析プログラム121および調査データ収集プログラム141の実行操作をするための情報端末であり、たとえばパーソナルコンピュータである。ユーザは、管理用情報端末20から後述の分析プログラム121を実行することにより、管理用情報端末20の表示装置に各種分析結果(たとえば、図6~18)を出力することが可能である。
【0016】
情報端末30は、調査票回答者が利用する情報端末であり、調査データをデータベース122に入力するために利用される。図1の例では、スマートフォンである情報端末30を開示しているがこれに限定されず、パソコンやタブレット等のウェブブラウザが起動する任意の情報端末により構成することができる。
【0017】
調査データ収集装置40は、たとえばPCサーバーであり、演算部41と、データベース122および入力プログラム123を記憶している記憶部42と、情報提供装置10および情報端末30との通信を可能とする通信部13とを有している。入力プログラム123は、データベース122に、情報端末30から調査データを入力することを可能とするためのウェブページを提供する調査データ入力手段を備えている。
本実施形態では、調査データの取得は、入力プログラム123により情報端末30からウェブブラウザを用いて店舗利用者がアンケートに回答する形態で入力する構成を採用したが、紙媒体などの別の手段により調査票回答者から収集した調査データを加工して管理用情報端末20からデータベース122にアップロードする構成を採用してもよい。
【0018】
図2に示すように、情報提供装置10の演算部11は、記憶部12に記憶した分析プログラム121を実行することで、(1)調査データ取得手段と、(2)多変量解析手段と、(3)分析結果出力手段と、を実現する。以下、これらの各手段について説明する。
【0019】
(1)調査データ取得手段
調査データ取得手段は、多変量解析手段で用いる調査データを記憶部12に記憶するための手段である。本実施形態においては、データベース122から調査データを取得するためのクエリを入力する画面を管理用情報端末20に提供する。本実施形態における調査データは、店舗の利用者からの回答に基づく顧客満足度に関するデータであり、モニター調査データとアンケート調査データの2種類のデータからなる。
【0020】
本実施形態におけるモニター調査は、モニター(調査員)が実際に店舗のサービスを利用し、自身の経験に基づき所定の設問に回答をする形式の調査である。モニター調査は、調査員に報酬が支払われることから、設問数を多くすることができる。反面、アンケート調査と比べると、N数によっては、モニター調査のみで信頼度のある多変量解析を行うことは難しい場合がある。
【0021】
本実施形態におけるアンケート調査は、所定の評価項目を有する店内アンケートであり、設問数はモニター調査と比べると半分以下であり、多変量解析を行うのに適した質問で構成されている。反面、モニター調査と比べるとN数を多くとることができる(たとえば、1店舗単月で100件以上収集可能である)ので、統計分析を行うのに適している。アンケート調査は、N数が多いことから、性別、年代、地域などの属性で分類した顧客セグメント別の評価傾向を把握することが可能である。
本実施形態では、モニター調査データとアンケート調査データを併用することも可能であり、業態別の総合満足度に対する主要評価項目の影響度の強さを統計分析することを可能としながら、モニター調査により具体的業務レベルでの課題把握を可能としている。
【0022】
各調査票に記載する評価項目としては、QSCA(Quality Service Cleanliness Atmosphere)に関する項目とすることが例示される。飲食ジャンルの対象店舗については、「接客」、「提供スピード」、「料理」、「清潔感」、「空間・雰囲気」および「コストパフォーマンス」などの項目が例示される。また、美容ジャンルの対象店舗については、「接客」、「カウンセリング」、「技術」、「清潔感」、「雰囲気」および「コストパフォーマンス」などの項目が例示される。
いずれの業種においても、再来店意思との回帰を演算するために必要な設問を設ける。また、対象店舗の利用を他者に推奨したいかという他者推奨意思との回帰を演算するための設問を設けてもよい。
なお、上述した項目は一例であり、対象店舗の業種(ジャンル)や規模、季節などに応じて、数十の項目とすることができる。
【0023】
図3は、本実施形態のモニター調査による調査票の一例を示す図である。
属性情報の各項目には、モニター調査を行う調査員の属性情報を入力する。なお、モニター調査員の年齢、性別、居住地等の情報は予め登録されているので、調査票には記入しない。
レベル1質問は、推奨意思と再来店意思からなる。レベル1質問は、後述の重回帰分析の目的変数となる。レベル1質問の評価は、たとえば、0~10点の多段階評価とする。レベル2質問は、目的変数であるレベル1質問に影響を及ぼす因子である。レベル3質問は、レベル2質問を従属変数として重回帰分析をする場合の説明変数である。ここで、レベル2質問とレベル3質問は、上位概念と下位概念の関係にある。たとえば、レベル2質問の小分類Aにおける「接客に対する評価」の下位概念が、レベル3質問の小分類Aにおける「挨拶についての評価」および「料理提供対応についての評価」となる。ただし、レベル2質問の全ての小分類について、レベル3質問が設けられている訳ではない。また、レベル2質問に相当するその他の質問として、フィット感についての評価を設けてもよい。フィット感についての質問は、たとえば、「当店はあなたの好みに合っていると感じますか?」といった質問に対する多段階評価とする。本実施形態では、フィット感についての質問を説明するレベル3質問を設けていないが、レベル3質問を設けてもよい。
【0024】
図4は、本実施形態のアンケート調査による調査票の一例を示す図である。
属性情報の各項目には、アンケート回答者の属性情報を入力する。アンケート回答者は、モニター調査の調査員のように登録された回答者ではないため、年代、性別等の情報も入力してもらう。
レベル1質問は、モニター調査と同じであり、推奨意思と再来店意思の項目からなる。アンケート調査は、回答者の負担を軽減するため、観測変数となる質問は少なく設定されており、本実施形態では、レベル2質問およびレベル2チェックから構成している。ここで、レベル2質問とレベル2チェックは、小分類において対応関係にある。たとえば、レベル2質問の小分類Aにおける「接客に対する評価」に対応するレベル2チェックは、「接客について不満足な点(複数選択)」である。別の観点からは、レベル2チェックは、多段階評価で行っていたレベル3質問を、複数階評価に置き換えたものと説明することもできる。アンケート調査においても、レベル2質問に相当するその他の質問として、フィット感や満足感についての評価がある。
【0025】
本実施形態におけるフィット感とは、個人の対象への選好、ある個人甲がある選択肢 a よりも選択肢 b をより好ましく感じている、効用 a よりも効用 b が大きいといった、甲が持つ選好構造を変数化したものである。調査対象の空間・雰囲気に対する居心地もしくは調和を説明変数として、ライフスタイル要因や準拠集団効果などを内包した変数として位置づける。モニター調査およびアンケート調査の回答者の趣向性を汲みしたフィット感を評価項目に含めることにより、フィット感とクラスター化された顧客属性との相関関係を出力可能とする機能を後述の多変量解析手段に設けてもよい。
【0026】
(2)多変量解析手段
本実施形態の多変量解析手段は、推奨意思と再来店意思のスコア(以下、「再来店意思スコア」という)に各評価項目がどのように影響を与えているかを重回帰分析により分析する。ここで、回帰分析とは、結果を示す数値(目的変数)と要因になる数値(説明変数)の関係を明らかにする統計手法であり、重回帰分析では、目的変数を説明する際に、どの説明変数が、どの程度結果を左右しているのかを数値化して将来の予測を行う統計手法のことをいう。
重回帰分析により説明変数の影響の大きさを数値化することにより、サービスの改善方法の立案がしやすくなる。また、予想される説明変数の変化に伴う目的変数の変化の未来予測をすることが可能となる。
【0027】
本実施形態では、取り組みにより改善が可能な評価因子を説明変数に設定し、立地や外観といった取り組みによる改善が困難な評価因子は説明変数に設定していない。具体的には、飲食店の説明変数として「接客」、「料理」、「清潔感」、「空間・雰囲気」、「コストパフォーマンス」等を設定し、当該説明変数に係る評価項目と再来店意思スコアを算出するための評価項目を設問とするモニター調査およびアンケート調査を実施した。図6は、対象店舗がラーメン業態である場合における、再来店意思スコア(目的変数)に対する各説明変数の寄与度を、重回帰分析により算出した結果の一例を示す図である。ここで、VIF(Variance Inflation Factor:分散拡大要因)とは、重回帰分析における多重共線性を評価する際の指標である。多重共線性とは、説明変数間に高い関連性があることであり、VIFの値が大きい場合には、その変数を分析から除いた方がよいと考えられている。ここで、決定係数(R)とは、重回帰分析によって求められた目的変数の予測値が、実際の目的変数の値とどのくらい一致しているかを表している指標である。一般には、決定係数が1に近いほど説明力が高いとされる。
【0028】
図5は、本実施形態に係る多変量解析手段を説明する図である。
本実施形態の多変量解析手段は、(a)レベル2とレベル3の重回帰分析、(b)レベル3の評価因子の単相関、(c)レベル1とレベル2の重回帰分析、および、(d)レベル2の評価因子の単相関、を分析する。本実施形態では、階層化された重回帰分析を行うことにより、推奨意思または再来店意思に与えるレベル2の評価因子の影響(寄与度)の説明力を高めることができる。換言すれば、レベル3の評価因子を説明変数とし、レベル1の評価項目の評価値を目的変数として重回帰分析すると、どの評価因子が支配的であるかを正確に把握できない場合があるが、本実施形態では中間概念にあたるレベル2の評価因子を設けることにより、この問題を解決している。
【0029】
(a)の分析は、レベル2の評価項目を目的変数(中間目的変数)とし、レベル3の評価項目を説明変数とする第1の重回帰分析である。この分析により、レベル2の評価項目(中間目的変数)に影響を及ぼしているレベル3の評価項目(評価因子)を把握することができる。たとえば、図3においては、料理の味についての評価(B-1)、料理の品揃えについての評価(B-2)および料理の量についての評価(B-3)のそれぞれが、料理についての評価(B)に与える影響(寄与度)を数値化することができる。
(b)の分析は、レベル3の評価因子間の相関関係を数値化する。たとえば、図3においては、単相関分析法により、料理の品揃えについての評価(B-2)と料理の量についての評価(B-3)の間に高い相関関係が認められる場合には、一方の評価が上がると他方の評価も上がることが分かる。
(c)の分析は、レベル1の評価項目を目的変数とし、レベル2の評価項目を説明変数とする第2の重回帰分析である。この分析により、レベル1の評価項目に影響を及ぼしているレベル2の評価項目(評価因子)を把握することができる。たとえば、図3においては、接客に対する評価(A)、料理についての評価(B)、清潔感に対する評価(C)、空間・雰囲気に対する評価(D)およびコストパフォーマンスに対する評価(E)のそれぞれが、推奨意思または再来店意思に与える影響(寄与度)を数値化することができる。
(d)の分析は、レベル2の評価因子間の相関関係を数値化した相関係数を算出する。たとえば、図3においては、単相関分析法により、料理についての評価(B)とコストパフォーマンスに対する評価(E)の間に高い相関関係が認められる場合には、一方の評価が上がると他方の評価も上がることが分かる。
【0030】
図6は、ラーメン業態におけるレベル1の再来店意思を目的変数とした場合のレベル2の各説明変数(評価因子)の寄与度を示す分析結果を示す図である。図6に示す例においては、「料理」が最も再来店意思に対する寄与度が高いことがわかり、次に「コストパフォーマンス」の寄与度が高いことがわかる。また、各説明変数のVIFも大きな数値となっていないことから、多重共線性の問題は生じていないことがわかる。また、図6において、決定係数Rは.583であるため、十分な説明力がある分析であることがわかる。
【0031】
図7は、居酒屋業態におけるレベル1の再来店意思を目的変数とした場合のレベル2の各説明変数(評価因子)の寄与度を示す分析結果を示す図である。図7に示す例においては、「コストパフォーマンス」が最も再来店意思に対する寄与度が高いことがわかり、次に「接客」および「料理」の寄与度が高いことがわかる。また、各説明変数のVIFも大きな数値となっていないことから、多重共線性の問題は生じていないことがわかる。
【0032】
(3)分析結果出力手段
本実施形態の分析結果出力手段は、図6~7,11,13,15のような表形式で分析結果を出力することに加え、顧客の再来店意思に対する説明変数の寄与度をグラフィカルに表示することで視覚的に把握することを可能とする(8~10,12,14,16~18参照)。
図8は、図6に示したラーメン業態における再来店意思に対する各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を分析結果出力手段によりグラフィカルに表示した図である。再来店意思への寄与度が高い説明変数を大きい円で表示し、寄与度が低い説明変数を小さい円で表示している。本実施形態では、円の大きさは寄与度と比例した大きさとしているが、寄与度が一定以下の場合には予め定めた最小半径で描画し、最小半径以下の大きさにはならないようにしている。もっとも、円の大きさは寄与度の数値と必ずしも比例関係となるようにする必要はなく、強調表示(たとえば、最上位の2つの説明変数を寄与度の数値に係数をかけて大きく表示)してもよい。
【0033】
また、目的変数である再来店意思と説明変数を結ぶ寄与度表示線は、寄与度に応じた太さおよび種類で描画されている。すなわち、再来店意思への寄与度が高い説明変数と目的変数を結ぶ線を太く表示し、寄与度が中程度の説明変数と目的変数を結ぶ線を細く表示し、寄与度が低い説明変数については目的変数と結ぶ線を点線で描画している。このように、寄与度の大小に応じて寄与度表示線の線の太さや種類を変えて描画することで、各説明変数の目的変数に対する寄与度を視覚的に把握することが可能である。
【0034】
また、特定の相関係数を有する説明変数同士を、相関度表示線により接続して表示することもできる。図8の例では、相関係数が最上位の2ペアの説明変数を相関度表示線で接続すると共に、相関係数の値を表示している。相関度表示線および相関係数の表示方法は、任意のルールを設定することができ、たとえば、有効数字の最小桁を四捨五入して0.4以上となる上位5ペアを表示するのでもよい。また、本実施形態の相関度表示線は、有効数字の最小桁を四捨五入して0.7以上となるものを二重線、0.7未満~0.6以上となるものを太い実線、0.6未満~0.5以上となるものを通常の太さの実線、0.5未満~0.4以上となるものを細い点線で表示し、0.4未満は表示しないルールを採用している。このように、各説明変数の相関係数を太さや種類が異なる相関度表示線でグラフィカルに表示することで、ラーメン業態では料理とコストパフォーマンスに高い相関があり、次いで空間・雰囲気と清潔感に高い相関があることを容易に把握することが可能である。なお、相関度表示線で接続する説明変数は、最上位の2ペアに限られず、任意の数の相関度表示線を表示させることができる。
【0035】
また、図8の例では、各円や各線を単色で表示をしているが、着色表示をしてもよい。たとえば、寄与度が最上位の2つの説明変数の円を異なる色(たとえば緑色)に着色し、寄与度が最下位の2つの説明変数の円を最上位とは異なる色(たとえば赤色)に着色してもよい。寄与度表示線および相関度表示線についても、寄与度および相関度の大小に応じて異なる色で着色表示できることは同様である。
【0036】
図9は、図7に示した居酒屋業態における再来店意思に対する各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を分析結果出力手段によりグラフィカルに表示した図である。図8と同様、再来店意思への寄与度の大小を円の大きさにより視覚的に把握できるようになっている。
【0037】
また、図8と同様、目的変数である再来店意思と説明変数を寄与度表示線は、寄与度に応じた太さで描画されている。また、図8と同様、相関係数が最上位の2ペアの説明変数を相関度表示線で接続し、相関係数の値を表示している。
【0038】
図10は、再来店意思に対する各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を分析結果出力手段によりグラフィカルに放射状に比較表示した変形例の図であり、(A)は図6に示したラーメン業態の図であり、(B)は図7に示した居酒屋業態の図である。図10においては、各説明変数を表す円が正六角形の頂点に配置されている。図10においても、円の大きさが目的変数となる再来店意思に対する寄与度の大きさを表している。また、図10においても、相関係数が最上位の2つの説明変数を寄与度表示線で接続して描画している。本実施形態の分析結果手段は、図10に例示するように、2つの異なる業態についての分析結果を並べて表示することが可能である。この際、説明変数の表示場所は、各業態で対称となる場所に表示することが好ましく、これにより業態別の再来店構造を比較することが容易となる。
【0039】
このように、分析結果出力手段は、店舗改善の取り組みに伴い変化する各評価因子の再来店意思スコアに対する寄与度の大小をグラフィカルに可視化して提供することで、店舗改善の取り組みを効率的に行うための知見を与えることができる。なお、本実施形態では、説明変数を寄与度と比例する大きさの円により表現したが、寄与度を示す図形はこれに限定されず任意の図形を用いることができ、たとえば、多角形であってもよいし、食べ物やキャラクターのイラストであってもよい。また、説明変数を示す図形の配置順序を、ドラッグ操作により入れ替え可能に構成してもよい。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る情報提供システム1によれば、目的変数および説明変数(評価因子)を多変量解析して得られた分析結果をグラフィカルに可視化して提供することで、改善の取り組みを効率的に行うための目的変数を瞬時に把握することが可能である。
また、相関係数の高い説明変数をグラフィカルに可視化して提供することで、説明変数を改善した際の影響度を容易に予測することが可能となる。
【0041】
なお、本実施形態に係る情報提供システム1は、特定の商品の再購入意思または推奨意思を目的変数とした多変量解析を実行した結果をグラフィカルに可視化して提供することも可能である。特定の商品への適用については、第4実施形態において後述する。
【0042】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る情報提供システム1は、サーバーとして機能する情報提供装置10と、管理用クライアントとして機能する管理用情報端末20と、来店者が利用する情報端末30と、調査データ収集装置40と、インターネット50とを備えており、ハードウェア構成は、第1実施形態と同じである。第2実施形態は、情報提供装置10で実行される分析プログラム121の分析結果出力手段が、評価値別着色機能を備える点で、第1実施形態と相違する。
【0043】
図11は、焼き肉業態におけるレベル1の再来店意思を目的変数とした場合のレベル2の各説明変数(評価因子)の寄与度を示す分析結果を示す図である。図11に示す例においては、「コストパフォーマンス」が最も再来店意思に対する寄与度が高いことがわかり、次に「空間・雰囲気」の寄与度が高く、続いて「料理」の寄与度が高いことがわかる。また、各説明変数のVIFも大きな数値となっていないことから、多重共線性の問題は生じていないことがわかる。また、図11において、決定係数Rは.801であるため、高い説明力がある分析であることがわかる。さらに、図11では、各説明変数について焼き肉業態における基準評点との差分値についても算出している。基準評点は、焼き肉業態(同一業態)における評点データの平均点を用いることもできれば、対象店舗が目標とする任意の評点を用いることもできる。また、類似業態における評点データの平均点を用いることもでき、たとえば、飲食業態などの焼き肉業態を上位概念化した業態や鉄板焼き業態などの食材に共通性がある類似業態における基準評点との差分値を用いてもよい。なお、図示していないが、再来店意思スコアについての焼き肉業態における基準評点との差分値も算出しており、差分値は-6.0であった。
【0044】
図12は、図11の各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を分析結果出力手段によりグラフィカルに表示した図である。なお、図12中、斜線は第1の色である緑色を示し、ドットは第2の色である赤色を示している。
図12に示す例においては、同じ業態の平均評点よりも高い評点の説明変数は緑色(斜線)で着色され、同じ業態の平均評点よりも低い評点の説明変数は赤色(ドット)で着色されている。ここで、本実施形態では、説明変数の評点と平均評点との差が大きくなるほど着色が濃く描画される仕様となっている。なお、図12の例とは異なり、差分値を示す数字を目的変数および各説明変数の近傍に表示させてもよい。図12では、「料理」のみが緑色で着色されているので、「料理」のみが同じ業態の平均評点よりも高い評点であること、赤色で着色された各説明変数および目的変数が同じ業態の平均評点よりも低い評点であることを瞬時に看取することができる。また、再来店意思、接客および空間・雰囲気が濃く着色されていることから、平均評点よりも大幅に低い評点であることが分かる。
【0045】
また、相関係数の値に応じた太さおよび種類の相関度表示線により2つの説明変数を接続している。第2実施形態では、相関係数が0.4以上となるペアを表示するルールを採用したところ、全ての説明変数が少なくとも1本の相関度表示線に接続される描画結果となった。相関度表示線は、第1実施形態と同様の基準により、二重線、太い実線、通常の太さの実線および細い点線で描画される。
【0046】
図12からは、料理のおいしさについての評価は悪くないものの、空間・雰囲気や接客の評価の低さが足を引っ張り、コストパフォーマンスに影響を与えていることが分かる。そして、目的変数への寄与度が高い説明変数のうち、同じ業態の平均評点よりも低い評価の説明変数を看取することができるので、改善策を効率よく立案することが可能となる。ここで、説明変数の配置順序を、寄与度による昇順または降順整列、もしくは、評点による昇順または降順整列する機能を付加してもよい。
【0047】
以上に説明した第2実施形態に係る情報提供システム1によれば、目的変数に対する説明変数の寄与度、各目的変数間の相関係数および基準評点に対する評価点の高低を視覚的に把握することができるので、改善作業を効率的に行うことが可能となる。
【0048】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る情報提供システム1は、サーバーとして機能する情報提供装置10と、管理用クライアントとして機能する管理用情報端末20と、来店者が利用する情報端末30と、調査データ収集装置40と、インターネット50とを備えており、ハードウェア構成は、第1実施形態と同じである。第3実施形態は、情報提供装置10で実行される分析プログラム121の分析結果出力手段が、再来店意思に対する各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を放射状に配置して表示する機能を備える点で、第1実施形態と相違する。
【0049】
図13は、対象店舗における再来店意思を目的変数とした場合の各説明変数(評価因子)の寄与度を示す分析結果を示す図である。図13に示す例においては、「コストパフォーマンス」が最も再来店意思に対する寄与度が高いことがわかり、次に「接客」の寄与度が高く、続いて「空間・雰囲気」の寄与度が高いことがわかる。また、各説明変数のVIFも大きな数値となっていないことから、多重共線性の問題は生じていないことがわかる。また、図13において、決定係数Rは.658であるため、十分な説明力がある分析であることがわかる。さらに、図13では、各説明変数について対象店舗における同一業態との平均評点との差分値についても算出している。なお、図示していないが、再来店意思スコアについての同一業態における平均評点との差分値も算出しており、差分値は-0.1であった。
【0050】
図14は、図13の各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を分析結果出力手段によりグラフィカルに放射状に表示した図である。なお、図14中、斜線は第1の色である緑色を示し、ドットは第2の色である赤色を示している。
第3実施形態は、同じ業態の平均評点よりも高い評点の説明変数は緑色(斜線)で着色され、同じ業態の平均評点よりも低い評点の説明変数は赤色(ドット)で着色して表示する仕様である。ここで、本実施形態では、説明変数の評点と平均評点との差が大きくなるほど着色が濃く描画される仕様となっている。図14では、「接客」および「提供スピード」が濃い赤色で着色されているので、「接客」および「提供スピード」が同じ業態の平均評点よりも特に低い評点であることを瞬時に看取することができる。そして、「料理」が二重線の相関度表示線で接続されている「コストパフォーマンス」に強い影響を与えていること、「接客」が太い実線の相関度表示線で接続されている「コストパフォーマンス」に大きな影響を与えていること、「接客」が実線の相関度表示線で接続されている「空間・雰囲気」および「料理」にも少なくない影響を与えていることを看取することができる。
【0051】
また、図14において、各説明変数は、再来店意思スコアに対する寄与度の数値に応じた大きさの円により描画されている。円の大きさから、「コストパフォーマンス」が再来店意思スコアに最も強い影響を及ぼしていることが分かり、「コストパフォーマンス」と二重線で接続されている「料理」が「コストパフォーマンス」にとても強い影響を与えていることが分かる。また、「提供スピード」および「清潔感」の評点がマイナス評価であることから、当たり前のオペレーションができていないことが推測できる。そして、「料理」の円の大きさが小さいここと他の説明変数の状況を踏まえると、本来の提供価値である「料理」に目が向かずコストパフォーマンスの勝負に陥っているとの評価を、寄与度の数字を吟味せずとも図14のグラフィカルな放射状表示から判断することが可能である。なお、本実施形態では、正六角形の頂点に各説明変数に対応する円を配置したが描画方法はこれに限定されず、説明変数の数に応じて任意の正多角形の頂点に配置してもよいし、円周上に等間隔に配置してもよい。また、説明変数を示す図形の配置順序を、ドラッグ操作により入れ替え可能に構成してもよい。
【0052】
以上に説明した第3実施形態に係る情報提供システム1によれば、目的変数に影響する説明変数が放射状に配置されており視認性が良いので、改善作業を効率的に行うことが可能となる。
【0053】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る情報提供システム1は、サーバーとして機能する情報提供装置10と、管理用クライアントとして機能する管理用情報端末20と、来店者が利用する情報端末30と、調査データ収集装置40と、インターネット50とを備えており、ハードウェア構成は、第1実施形態と同じである。第4実施形態は、情報提供装置10で実行される多変量解析手段が、特定の商品について再購入意思のスコアに各評価項目がどのように影響を与えているかを重回帰分析により分析する機能を備える点、分析結果出力手段が、再購入意思に対する各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を放射状に配置して表示する機能を備える点で、第1実施形態と相違する。
【0054】
図15は、特定の飲料(いわゆるエナジードリンク)におけるレベル1の再購入意思を目的変数とした場合のレベル2の各説明変数(評価因子)の寄与度を示す分析結果を示す図である。図15に示す例においては、「フィット感」が最も再購入意思に対する寄与度が高いことがわかり、次に「味」の寄与度が高いことがわかる。また、各説明変数のVIFも大きな数値となっていないことから、多重共線性の問題は生じていないことがわかる。また、図15において、決定係数Rは.565であるため、十分な説明力がある分析であることがわかる。さらに、図15では、各説明変数について同種の飲料との平均評点との差分値についても算出している。
【0055】
本実施形態の分析結果出力手段は、顧客の再購入意思に対する説明変数の寄与度をグラフィカルに表示することで視覚的に把握することが可能である。
図16は、図15に示した特定の飲料に対する再購入意思に対する各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を分析結果出力手段によりグラフィカルに表示した図である。第3実施形態と同様、再購入意思への寄与度が高い説明変数を大きい円で表示し、寄与度が低い説明変数を小さい円で表示している。また、略正七角形の頂点に各説明変数に対応する円を配置している。なお、図16中、斜線は第1の色である緑色を示し、ドットは第2の色である赤色を示している。
【0056】
本実施形態においても、第3実施形態と同様、基準評点よりも高い評点の説明変数は緑色(斜線)で着色され、基準評点よりも低い評点の説明変数は赤色(ドット)で着色され、説明変数の評点と基準評点との差が大きくなるほど着色が濃く描画される仕様となっている。図16では、「パッケージ」が濃い緑色で着色されているので、基準評点よりも特に高い評点であることを瞬時に看取することができる。また、「再購入意思」および「効果・効能」が赤く着色されているので、基準評点よりも低い評点であり、「効果・効能」が「再購入意思」に影響を与えていることを瞬時に看取することができる。
【0057】
また、第1および第3実施形態と同様、特定の相関係数を有する説明変数同士を、相関度表示線により接続して表示することもできる。本実施形態の相関度表示線は、有効数字の最小桁を四捨五入して0.7以上となるものを二重線、0.7未満~0.6以上となるものを太い実線、0.6未満~0.5以上となるものを通常の太さの実線、0.5未満~0.4以上となるものを細い点線で表示し、0.4未満は表示しないルールを採用している。このように、各説明変数の相関係数を太さや種類が異なる相関度表示線でグラフィカルに表示することで、たとえば、対象商品のフィット感とは味、パッケージおよびブランドに高い相関があること、対象商品の味とはフィット感、パッケージ、量・成分およびコストパフォーマンスに高い相関があることを容易に把握することが可能である。
【0058】
図17は、特定の化粧品に対する再購入意思に対する各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を分析結果出力手段によりグラフィカルに表示した図である。説明変数は、「使用感」、「量・成分」、「効果・効能」、「パッケージ」、「フィット感」および「ブランド」の6つである。図16と同様に、再購入意思への寄与度が高い説明変数を大きい円で表示し、寄与度が低い説明変数を小さい円で表示している。また、正六角形の頂点に各説明変数に対応する円を配置している。斜線は第1の色である緑色を示し、ドットは第2の色である赤色を示している。相関度表示線の表示ルールは、図16と同じである。図17では、目的変数および全ての説明変数が緑色に着色されており、基準評点よりも高いことを瞬時に把握することが可能である。
【0059】
図17の円の大きさから、「フィット感」および「使用感」が再購入意思に対する寄与度が高いことがわかる。また、「パッケージ」および「使用感」が濃い緑色で着色されていることから、基準評点と比べ高評価であることが分かる。また、相関度表示線から、対象商品の「使用感」の評価と「効果・効能」、「フィット感」および「量・成分」に高い相関があること、対象商品の「フィット感」の評価と「ブランド」、「使用感」および「パッケージ」に高い相関があることを容易に把握することが可能である。
【0060】
図18は、特定の歯磨き粉に対する再購入意思に対する各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を分析結果出力手段によりグラフィカルに表示した図である。説明変数は、「使用感」、「効果・効能」、「SNSシェア」、「パッケージ」、「ブランド」および「フィット感」の6つである。図16および17と同様に、再購入意思への寄与度が高い説明変数を大きい円で表示し、寄与度が低い説明変数を小さい円で表示している。また、正六角形の頂点に各説明変数に対応する円を配置している。斜線は第1の色である緑色を示し、ドットは第2の色である赤色を示している。相関度表示線の表示ルールは、図16および17と同じである。図18では、赤色に着色された「再購入意思」および「効果・効能」のみが、基準評点よりも低いことを瞬時に把握することが可能である。
【0061】
図18の円の大きさから、「効果・効能」および「使用感」が再購入意思に対する寄与度が高いことがわかる。また、「再購入意思」および「効果・効能」が濃い赤色に着色されていることから、基準評点と比べ低評価であり、「効果・効能」が「再購入意思」にマイナスな影響を与えていることを瞬時に看取することができる。また、相関度表示線から、対象商品の「効果・効能」の評価と、「使用感」、「フィット感」および「SNSシェア」に高い相関があること、対象商品の「ブランド」と「パッケージ」に高い相関があることなどを容易に把握することが可能である。
【0062】
以上に説明した第4実施形態に係る情報提供システム1によれば、目的変数に影響する説明変数が放射状に配置されており視認性が良いので、商品改良作業を効率的に行うことが可能となる。なお、第4実施形態に係る情報提供システム1による多変量解析の対象は、例示の商品に限定されるものではなく、任意の商品を対象とすることができる。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
たとえば、上述した実施形態では、多変量解析のうち重回帰分析を用いて、各評価因子の、再来店意思スコアに対する寄与度を求める構成を例示したが、この構成に限定されず、主成分分析、因子分析、コレスポンデンス分析、多次元尺度構成法、クラスター分析、パス解析、分散分析、コンジョイント分析、回帰分析、ロジスティクス回帰分析などを用いてもよい。
また、上述した実施形態に加えて、情報提供装置10は、顧客セグメントや利用シーン(日常利用や記念日利用など)、季節、天候などの条件情報も収集することで、これら条件情報を加味として、リピート意思または推奨意思に寄与する評価因子を分析する構成とすることもできる。また、アンケートにグラフィック属性やサイコグラフィック属性を加えることにより、顧客セグメント別の分析も可能である。また、POS(Point of Sales)や購買履歴を管理するシステムと連携することにより、注文商品別の評価傾向を把握することも可能である。
【0065】
また、上述したサービス業についての第1~第3実施形態では、飲食店を対象とした調査データを用いた例を説明したが、本発明はそれ以外の業種に適用することも可能であり、たとえば、宿泊業、飲食サービス業、娯楽業、理美容や公衆浴場など生活関連サービス業、教養・技能教授業、金融業、保険業、小売業、情報通信業、物品賃貸業、専門サービス業(士業等)、広告業、不動産業、運輸業などに適用することも可能である。
なお、上述した実施形態では、階層化された重回帰分析を行うことにより、推奨意思またはリピート意思に与える評価因子の影響(寄与度)の説明力を高める例を説明したが、本発明の技術思想は階層化されていない評価因子を用いた多変量解析にも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…情報提供システム
10…情報提供装置
20…管理用情報端末
30…情報端末
40…調査データ収集装置
50…インターネット
【要約】
【課題】顧客の再購入意思または推奨意思に対する評価因子の寄与度を視覚的に把握することを可能とする情報提供装置、方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】 対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思、再購入意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する調査データ取得手段と、前記評価データに基づいて再来店意思、再購入意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数として多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力手段と、を備え、前記分析結果出力手段が、前記寄与度に対応する大きさの図形により前記複数の説明変数を前記情報端末に表示させる情報提供装置。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18