(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/08 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
D06F39/08 311C
(21)【出願番号】P 2020212845
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 雅文
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】実公昭53-018585(JP,Y1)
【文献】実開昭60-184463(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0081017(US,A1)
【文献】特表2018-525805(JP,A)
【文献】特開平08-000890(JP,A)
【文献】特開2011-092395(JP,A)
【文献】中国実用新案第204434995(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/08
F16K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が溜められる洗濯槽と、
前記洗濯槽内の水を排出するための排水路であって、一端に開口が設けられた管部によって一部が構成された排水路と、
前記排水路を開閉するバルブ機構と、を含み、
前記バルブ機構は、
前記開口を閉じる閉位置と、前記閉位置よりも前記開口から離れて配置されて前記開口を開く開位置との間で移動可能な開閉部を有して弾性変形可能であり、前記排水路の一部を構成するケースと、
前記開閉部よりも前記開口から離れて配置された出力軸を有し、通電されることによって作動するモータと、
弾性を有し、前記出力軸に連結されたレバーと、
前記レバーによって支持され、転動可能なローラと、を含み、
前記ローラは、前記モータの作動に応じて前記出力軸まわりに前記レバーとともに回転して前記開閉部を前記開位置から前記閉位置まで移動させる、洗濯機。
【請求項2】
前記開閉部の表面部には、補強板が設けられ、
前記補強板には、前記出力軸まわりに回転する前記ローラをガイドするガイド溝と、前記開閉部を前記閉位置まで移動させた前記ローラを位置決めする位置決め溝とが設けられる、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記バルブ機構は、前記ローラが前記開閉部を前記閉位置まで移動させたことを検出する検出部をさらに含み、
前記ローラが前記開閉部を前記閉位置まで移動させたことを前記検出部が検出したことに応じて、前記モータへの通電が停止される、請求項1又は2に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な洗濯機は、水が溜められる洗濯槽と、洗濯槽内の水を排出するための排水路と、排水路を開閉するバルブ機構とを含む。コインランドリに設置される業務用の洗濯機では、多くの客が利用できるように洗濯運転の時間短縮が求められるので、排水路及びバルブ機構は、多量の水を短時間で排出できるように構成される。
【0003】
図1では、業務用の洗濯機に用いられる従来の排水路1及びバルブ機構2が図示される。排水路1の一部は、縦に延びる管部3によって構成される。管部3の下端には、開口3Aが設けられる。バルブ機構2は、管部3を支持するフレーム4と、管部3の下端に取り付けられたゴム製のケース5と、フレーム4の途中の仕切壁4Aを貫通して縦に延びる操作軸6と、操作軸6の下側に配置された出力軸7を有してフレーム4に固定されたモータ8と、出力軸7に固定された略半円状のカム9とを含む。
【0004】
ケース5は、縦に扁平な中空体である変形部5Aと、変形部5Aから横に延びる筒部5Bとを一体的に有する。変形部5Aの内部空間と筒部5Bの内部空間とは互いにつながった状態にあり、排水路1の一部を構成する。変形部5Aは、フレーム4内における仕切壁4Aの上側のスペースに配置されて管部3の下端に固定される。変形部5Aでは、その底部をなす開閉部5Cが、管部3の開口3Aに下側から対向した状態にある。ケース5では、少なくとも変形部5Aは、開閉部5Cが上下に移動できるように弾性変形可能である。
【0005】
バルブ機構2は、仕切壁4Aに取り付けられて操作軸6を支持する上下一対の軸受10と、操作軸6の上端に取り付けられて開閉部5Cに下側から接触するスプリング11とを、フレーム4においてモータ8の出力軸7の周辺に配置されたマイクロスイッチ12とをさらに含む。
図2に示すように、カム9が操作軸6から下側へ離れた状態にあれば、開閉部5Cが管部3の開口3Aから下側へ離れた開位置にあって、開口3Aを介して管部3とケース5とがつながって排水路1が開通した状態にあるので、洗濯槽内の水が排水路1を流れて機外に排出される。
【0006】
開閉部5Cが開位置にある状態においてモータ8が通電されることによって出力軸7及びカム9が半回転すると(
図2の太線矢印を参照)、カム9が操作軸6を押し上げる。これにより、カム9の押上力がスプリング11を介して開閉部5Cに伝わるので、開閉部5Cが、
図3に示す閉位置まで持ち上げられて開口3Aを下側から閉じる。これにより、管部3とケース5とが分断されて排水路1が開口3Aにおいて遮断されるので、洗濯槽の排水が停止される。また、半回転したカム9がマイクロスイッチ12をONにすることにより、モータ8への通電が停止される。その後、モータ8が通電されると、マイクロスイッチ12がOFFになるとともに、カム9がさらに半回転して操作軸6から下側へ離れるので、開閉部5Cは、自重及び管部3内の水の重さによって開位置まで下降する(
図2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
業務用の洗濯機では、家庭用の洗濯機と比べて利用頻度が高いので、バルブ機構2は高頻度で作動する。そのため、カム9及び操作軸6において互いに接触する部分が摩耗しやすい。カム9及び操作軸6の摩耗が進行すると、カム9が回転しても操作軸6の押し上げ量が少なくなるので、ケース5の開閉部5Cは、閉位置に到達できず、管部3の開口3Aを完全に閉じることができなくなる。これでは、バルブ機構2による排水路1の水封力が低下するので、洗濯槽の排水停止時であるのに洗濯槽内の水が不意に漏れる不具合が生じ得る。また、従来のバルブ機構2では、部品点数が多い。特に、ゴム製のケース5にへたりが発生しても開閉部5Cが閉位置まで上昇できるようにスプリング11が設けられるので、バルブ機構2において開閉部5Cを昇降させる構成における部品点数の増加が不可避である。部品点数が多いと、バルブ機構2が複雑になるので、故障の発生が懸念される。
【0008】
この発明は、かかる背景のもとにおいてなされたものであり、排水用のバルブ機構の耐久性の向上を図れる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水が溜められる洗濯槽と、前記洗濯槽内の水を排出するための排水路であって、一端に開口が設けられた管部によって一部が構成された排水路と、前記排水路を開閉するバルブ機構と、を含む、洗濯機であって、前記バルブ機構が、前記開口を閉じる閉位置と、前記閉位置よりも前記開口から離れて配置されて前記開口を開く開位置との間で移動可能な開閉部を有して弾性変形可能であり、前記排水路の一部を構成するケースと、前記開閉部よりも前記開口から離れて配置された出力軸を有し、通電されることによって作動するモータと、弾性を有し、前記出力軸に連結されたレバーと、前記レバーによって支持され、転動可能なローラと、を含み、前記ローラが、前記モータの作動に応じて前記出力軸まわりに前記レバーとともに回転して前記開閉部を前記開位置から前記閉位置まで移動させる、洗濯機である。
【0010】
また、本発明は、前記開閉部の表面部には、補強板が設けられ、前記補強板には、前記出力軸まわりに回転する前記ローラをガイドするガイド溝と、前記開閉部を前記閉位置まで移動させた前記ローラを位置決めする位置決め溝とが設けられることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記バルブ機構が、前記ローラが前記開閉部を前記閉位置まで移動させたことを検出する検出部をさらに含み、前記ローラが前記開閉部を前記閉位置まで移動させたことを前記検出部が検出したことに応じて、前記モータへの通電が停止されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗濯機において排水路を開閉するバルブ機構は、排水路の一部を構成するケースと、ケースにおいて排水路の管部の開口を開閉する開閉部よりも開口から離れて配置された出力軸を有するモータと、出力軸に連結されたレバーと、レバーによって支持されたローラとを含む。開閉部が開位置にある場合には、開放された開口を介して管部とケースとがつながって排水路が開通するので、洗濯槽内の水を排水路から排出することができる。この状態でモータが通電されて作動すると、ローラが、レバーとともに出力軸まわりに回転して開閉部を開位置から閉位置まで移動させる。すると、管部の開口が閉位置の開閉部によって閉じられることにより、排水路が遮断されるので、洗濯槽の排水を停止することができる。
ローラは、開閉部を移動させる際に転動可能であるので、バルブ機構が高頻度で作動しても、開閉部及びローラにおいて互いに接触する部分が摩耗しにくい。そのため、排水用のバルブ機構の耐久性の向上を図れる。
また、ケースにへたりが発生しても、弾性を有するレバーが、その付勢力によって開閉部を閉位置まで移動させることができる。この場合には、前述した従来のスプリング11など(
図2参照)を省略して部品点数を削減することによってバルブ機構をシンプルに構成できるので、バルブ機構の故障を抑制できる。これにより、バルブ機構の耐久性の一層の向上を図れる。
【0013】
また、本発明によれば、開閉部では、実際には補強板がローラに接触することから、開閉部自体の摩耗を防止できる。これにより、バルブ機構の耐久性の一層の向上を図れる。さらに、補強板では、ガイド溝がローラをガイドし、位置決め溝が、開閉部を閉位置まで移動させたローラを位置決めするので、開閉部が閉位置に到達できるようにローラを正確に移動させることができる。
【0014】
また、本発明によれば、ローラが開閉部を閉位置まで移動させたことを検出部が検出したことに応じて、モータへの通電が停止される。そのため、モータへの通電が停止された状態において、開閉部の閉位置、つまり洗濯槽の排水停止を維持できるので、洗濯機における消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】本発明の一実施形態に係る洗濯機の斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る洗濯機に含まれる排水路及びバルブ機構の斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るバルブ機構に含まれるケースの斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る排水路及びバルブ機構の縦断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る排水路及びバルブ機構の縦断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る排水路及びバルブ機構の縦断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る排水路及びバルブ機構の斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る排水路及びバルブ機構の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る洗濯機50の斜視図である。
図4における上下方向を洗濯機50の上下方向Zという。上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。なお、上下方向Zは、垂直方向であってもよいし、垂直方向に対して若干傾斜した方向であってもよい。
【0017】
洗濯機50には、ドラム式洗濯機や、縦型洗濯機や、二槽式洗濯機や、乾燥機能を有する洗濯乾燥機も含まれるが、以下では、乾燥機能が省略されて洗濯運転だけを実行するドラム式洗濯機を例に取って洗濯機50について説明する。洗濯機50は、業務用であり、コインランドリなどに設置されて使用される。洗濯機50は、その外郭をなすボックス状の筐体51と、筐体51内に配置された洗濯槽52と、筐体51内において洗濯槽52から下側Z2へ延びてから横方向、例えば後側へ延びる排水路53と、排水路53を開閉するバルブ機構54とを含む。洗濯槽52は、水が溜められる水槽である。洗濯槽52は、回転駆動されるドラム(図示せず)を収容する。使用者は、筐体51の正面に設けられた扉55を開いてドラムに洗濯物を出し入れすることができる。
【0018】
図5は、排水路53及びバルブ機構54の斜視図である。排水路53の一部は、縦つまり上下方向Zに延びるゴム製の管部60によって構成される。管部60は、排水路53の途中部分である。管部60は、蛇腹部60Aと、蛇腹部60Aから上側Z1へ延びる円筒状の上筒部60Bと、蛇腹部60Aから下側Z2へ延びる円筒状の下筒部60Cとを一体的に有する。管部60の一端の一例である下端、つまり下筒部60Cの下端には、円形状の開口60Dが設けられる。
【0019】
バルブ機構54は、筐体51内において洗濯槽52の下側Z2に配置される(
図4参照)。バルブ機構54は、管部60を支持するフレーム61と、管部60の下端に取り付けられたケース62と、フレーム61に固定された電動のモータ63と、モータ63の出力軸64に固定されたレバー65と、レバー65の先端に取り付けられたローラ66とを含む。
【0020】
フレーム61は、平行に配置された一対の縦板61Aと、これらの縦板61Aの上端部61B間に架設された横板61Cとを有する。一対の縦板61Aにおける少なくとも一方の下端部61Dは、L字状に折り曲げられ、筐体51に固定される。一対の縦板61Aの上端部61Bは、互いに接近するように折り曲げられ、ボルトなどの締結部材(図示せず)によって横板61Cに固定される。横板61Cは、水平方向に対して傾斜するように配置される。横板61Cには、円形状の貫通穴61Eが形成される。一対の縦板61Aと横板61Cとによって囲まれた空間は、フレーム61の内側空間61Fである。管部60の下筒部60Cは、その下端の開口60Dが内側空間61Fに配置されるように、貫通穴61Eに嵌め込まれてフレーム61に固定される。
【0021】
ケース62は、上下方向Zに扁平な中空体である変形部62Aと、変形部62Aから斜め下側に延びる筒部62Bとを一体的に有し、そのほとんどがゴム製である。変形部62Aの内部空間と筒部62Bの内部空間とは互いにつながった状態にあり、排水路53の一部、具体的には排水路53の途中部分を構成する。変形部62Aは、フレーム61の内側空間61Fにおいて、横板61Cの下面部に沿って斜めに配置される。なお、変形部62Aの向きは、斜めとは限らず、水平でも垂直でもよく、これに応じて、バルブ機構54全体の取付角度も任意に変更できる。そのため、管部60が前後方向や左右方向に延びて、開口60Dが管部60の前端や左端に設けられる場合もあり得る。
【0022】
管部60の下筒部60Cは、変形部62Aの上面部に接続された状態にある。下筒部60Cの下端の開口60Dは、変形部62Aの内部空間に上側Z1から臨んだ状態にある。下筒部60Cにおける開口60Dの周縁部60Eは、変形部62Aの内部空間に突出して配置される(
図7参照)。下筒部60Cは、フレーム61の横板61Cよりも上側Z1の第1部分60CAと、横板61Cよりも下側Z2の第2部分60CBと、第1部分60CA及び第2部分60CBによって取り囲まれた内筒部60CCとに分割可能であって、第2部分60CBは、変形部62Aの一部であってもよい(
図7参照)。内筒部60CCは、例えば樹脂製である。そのため、内筒部60CCは、ゴム製の第1部分60CA及び第2部分60CBよりも剛性が高く、第1部分60CA及び第2部分60CBを補強する。
【0023】
変形部62Aでは、その底部をなす開閉部62Cが、管部60の開口60Dに下側から対向した状態にある。ケース62において、少なくとも変形部62Aは、開閉部62Cが昇降できるように弾性変形可能である。筒部62Bは、変形部62Aから上下方向Zに広がりながらフレーム61の内側空間61Fの外へ延びる連結部62BAと、連結部62BAにおいて変形部62A側とは反対側の開口62BBに差し込まれた円筒部62BCとを有する。連結部62BAがゴム製であるのに対して、円筒部62BCは、例えば樹脂製であって、連結部62BAよりも剛性が高い。筒部62Bは、変形部62Aから真下方向に延びてもよい。
【0024】
モータ63は、いわゆるギヤードモータであって、フレーム61の一対の縦板61Aにおける一方の縦板61AAにおいて内側空間61Fに臨む内面部とは反対側の外面部に固定された状態にある。この縦板61AAには、モータ63の出力軸64が挿通される貫通穴61Gが形成される。各縦板61Aには、肉抜き穴61Hが形成されてもよい。出力軸64は、内側空間61Fにおいて変形部62Aの開閉部62Cよりも下側Z2、つまり開口60Dから離れて配置されて、一対の縦板61Aの対向方向である第1横方向Xに延びる。第1横方向Xは、上下方向Zに直交する横方向の一つである。第1横方向X及び上下方向Zの両方に直交する第2横方向Yも、横方向の一つである。第1横方向Xが左右方向であって第2横方向Yが前後方向であってもよく、第1横方向Xが前後方向であって第2横方向Yが左右方向であってもよい。横方向は、水平方向であってもよいし、水平方向に対して若干傾斜した方向であってもよい。モータ63は、通電されることによって作動し、出力軸64が自転する。
【0025】
レバー65は、金属製の板ばねによって構成されることにより、弾性を有する。レバー65は、L字状の全体形状を有する。このようなレバー65は、円弧状に湾曲した屈曲部65Aと、屈曲部65Aから延びてモータ63の出力軸64に連結された根元部65Bと、屈曲部65Aから根元部65Bとは別の方向へ延びた先端部65Cとを一体的に有する。根元部65Bにおいて屈曲部65Aから最も離れた端部は、出力軸64を取り囲む環状に形成され、複数の小さなボルト67によって出力軸64に固定される。モータ8の作動に応じて出力軸64が回転すると、レバー65が、出力軸64まわりに出力軸64と一体回転する。
【0026】
先端部65Cにおいて屈曲部65Aから最も離れた端部には、U字状のホルダ65Dが一体的に設けられる。ホルダ65Dは、分岐して第1横方向Xに並ぶ一対の分岐部65Eを有する。ボルト68の軸部68A(
図7参照)が、第1横方向Xに延びて一対の分岐部65E間に架設される。軸部68Aの先端部は、一対の分岐部65E間からはみ出した状態にある。軸部68Aの先端部には、ナット69が組み付けられる。
【0027】
ローラ66は、円筒体であり、その中心軸が第1横方向Xに沿った状態でホルダ65Dの一対の分岐部65Eの間に配置された状態にある。ローラ66は、その中心部にボルト68の軸部68Aが挿通されることによって、ボルト68を介してレバー65によって支持される。ローラ66は、この状態で、ボルト68まわりに転動可能である。ローラ66の転動とは、ローラ66が自身の中心軸まわりに自転することである。また、モータ8の作動に応じて出力軸64が回転すると、ローラ66は、出力軸64及びレバー65とともに出力軸64まわりに回転する。
【0028】
図6は、下側Z2から見たケース62の斜視図である。ケース62の開閉部62Cの表面部の一例である下面部62CAには、補強板70が設けられる。補強板70は、管部60の下筒部60Cと同心をなすように配置される金属製の円板である。下面部62CAには、補強板70と同形状の上下方向Zに扁平な円柱状の下凸部62CBが設けられる。補強板70は、例えばインサート成型によって下凸部62CBに一体化される。なお、開閉部62Cにおいて筒部62B側とは反対側の外縁部62CDは、下凸部62CBと同心をなす円弧状に形成される。
【0029】
補強板70の下面部70Aには、第2横方向Yに沿って直線状に延びるガイド溝70Bと、第1横方向Xに沿って直線状に延びる位置決め溝70Cとが設けられる。ガイド溝70Bは、第2横方向Yに長手であり、そのほとんどの深さは一定である。位置決め溝70Cは、第1横方向Xに長手であり、円弧状の溝底を有する。ガイド溝70Bと位置決め溝70Cとは、互いの中央部において交差するように十字に配置される。ガイド溝70Bと位置決め溝70Cとの交点は、円形状の補強板70の中心と一致する。ガイド溝70Bと位置決め溝70Cとの交点では、位置決め溝70Cがガイド溝70Bよりも若干深くてもよい。
【0030】
補強板70の下面部70Aにおいてガイド溝70B及び位置決め溝70Cを避けた位置には、変形部62Aの開閉部62Cの位置を検出するための検出部71が取り付けられる。検出部71の一例は、マイクロスイッチである。検出部71は、小さいレバー状の作動片71Aを有する。作動片71Aは、位置決め溝70Cの端部の近傍に配置される。洗濯機50は、マイコンなどによって構成された制御部80を含む(
図4参照)。制御部80は、洗濯機50における洗濯運転を実行する。制御部80には、検出部71の検出結果が入力される。制御部80は、洗濯運転の一環として、モータ63への通電を制御して洗濯槽52から水を排出する排水処理を実行する。
【0031】
次に、バルブ機構54の動作について説明する。
図7は、排水路53及びバルブ機構54の縦断面図である。
図7に示すように、ローラ66がケース62の開閉部62Cから下側Z2へ離れた待機位置にある場合には、開閉部62Cは、管部60の開口60Dから下側Z2へ離れて開口60Dを開いた開位置にある。このときには、開放された開口60Dを介して管部60とケース62とがつながって排水路53が開通した状態にあるので、排水処理時には、洗濯槽52内の水が排水路53を流れて機外に排出される。
【0032】
開閉部62Cが開位置にある状態でモータ63が通電されて作動すると、今まで待機位置にあったローラ66が、モータ63の作動に応じて出力軸64まわりにレバー65とともに回転する。
図7では、出力軸64、レバー65及びローラ66は、時計回りの方向に回転する。その際、レバー65は、屈曲部65Aが根元部65B及び先端部65Cよりも回転方向の下流側、つまり先頭になるように回転する。そして、
図8に示すように、ローラ66は、出力軸64まわりの回転に応じてケース62の開閉部62Cに下側Z2から接触する。具体的には、ローラ66は、開閉部62Cの下面部62CAにおける補強板70の下面部70Aに接触して、転動しながら補強板70及び開閉部62Cを押し上げる。これにより、開閉部62Cは、管部60の開口60Dに下側Z2から接近する。
【0033】
そして、ローラ66は、出力軸64まわりにさらに回転することによって、補強板70の下面部70Aのガイド溝70Bに受け入れられて第2横方向Yにガイドされる。ガイド溝70Bに受け入れられたローラ66は、転動しつつ補強板70を押し上げながら、ガイド溝70Bの中央へ進む。そして、
図9に示すように、ガイド溝70Bに受け入れられたローラ66が下面部70Aの位置決め溝70Cに嵌ると、開閉部62Cは、上限の閉位置まで押し上げられて管部60の開口60Dおける周縁部60Eの全域に密着することによって、開口60Dを下側Z2から閉じる。これにより、排水路53が遮断されるので、洗濯槽52の排水を停止することができる。なお、開閉部62Cの上面部には、開口60D内に進入する円錐状の上凸部62CEが設けられる。
【0034】
このように、ローラ66は、モータ63の作動に応じて出力軸64まわりに出力軸64及びレバー65とともに回転して開閉部62Cを開位置から閉位置まで移動させる。その際、
図10に示すように、位置決め溝70Cは、開閉部62Cを閉位置まで移動させたローラ66と、ローラ66の周囲のボルト68及びナット69とを受け入れて、第1横方向X及び第2横方向Yのそれぞれにおいて位置決めする。
【0035】
また、開閉部62Cが閉位置まで上昇すると、ローラ66を支持するボルト67に組み付けられたナット69が検出部71の作動片71Aに接触して検出部71をONにする。これにより、制御部80(
図4参照)は、モータ63への通電を停止する。このように、検出部71は、ローラ66が開閉部62Cを閉位置まで移動させたことを検出し、検出部71の検出に応じて、モータ63への通電が停止される。そのため、モータ63への通電が停止された状態において、開閉部62Cの閉位置、つまり洗濯槽52の排水停止を維持できるので、洗濯機50における消費電力を削減することができる。このように開閉部62Cが開位置から閉位置まで上昇する間に、出力軸64、レバー65及びローラ66は、ほぼ半回転する。
【0036】
なお、フレーム61においてモータ63が取り付けられた縦板61AAでは、実際にモータ63が取り付けられた下部61ABが、上部61ACよりもレバー65に接近するようにクランク状に折れ曲がって構成される。縦板61AAは、下部61ABの上端と上部61ACの下端とをつないで第1横方向Xに延びる途中部61ADも有する。フレーム61の内側空間61Fは、上領域61FAが下領域61FBよりも第1横方向Xに広い逆L字状であり、上領域61FAにケース62の変形部62Aが配置され、下領域61FBに出力軸64及びレバー65が配置される。
【0037】
変形部62Aの開閉部62Cが閉位置にある状態において、制御部80の制御に応じて検出部71がOFFにされるとともに、モータ63が通電されることによって作動すると、レバー65及びローラ66は、出力軸64まわりに回転する。すると、まず、ローラ66、ボルト68及びナット69が位置決め溝70Cから外れる。そして、
図11に示すように、ローラ66が、転動しながらガイド溝70Bから外れて、開閉部62Cから下側Z2へ離れる。これにより、開閉部62Cは、自重や管部60内の水の重さによって、閉位置から下側Z2へ移動する。そして、開閉部62Cが閉位置にある状態からレバー65及びローラ66がほぼ半回転すると、開閉部62Cは、閉位置よりも下側Z2、つまり開口60Dから離れた開位置に配置される(
図7参照)。このように、開閉部62Cは、モータ63の作動に伴うレバー65及びローラ66の回転に応じて、開位置と閉位置との間で移動可能である。
【0038】
ローラ66は、開閉部62Cを押し上げる際に転動可能であるので、バルブ機構54が高頻度で作動しても、開閉部62C及びローラ66において互いに接触する部分が摩耗しにくい。そのため、排水用のバルブ機構54の耐久性の向上を図れる。また、経年変化などによってケース62にへたりが発生しても、弾性を有するレバー65が、その付勢力によって開閉部62Cを閉位置まで上昇させることができるので、排水停止時における管部60の開口60Dにおける水漏れを防止できる。また、この場合には、従来例のバルブ機構2と比べて、前述した軸受10やスプリング11を省略して部品点数を削減することによってバルブ機構54をシンプルに構成できるので、バルブ機構54の故障を抑制できる。これにより、バルブ機構54の耐久性の一層の向上を図れる。また、部品点数の削減により、バルブ機構54についてのコスト削減が図れるとともに、生産性の向上も図れる。
【0039】
また、開閉部62Cでは、実際には補強板70がローラ66に接触することから、開閉部62C自体の摩耗を防止できる。これにより、バルブ機構54の耐久性の一層の向上を図れる。さらに、補強板70の下面部70Aでは、ガイド溝70Bがローラ66をガイドし、位置決め溝70Cが、開閉部62Cを閉位置まで移動させたローラ66を位置決めするので、開閉部62Cが閉位置に到達できるようにローラ66を正確に移動させることができる。
【0040】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
50 洗濯機
52 洗濯槽
53 排水路
54 バルブ機構
60 管部
60D 開口
62 ケース
62C 開閉部
62CA 下面部
63 モータ
64 出力軸
65 レバー
66 ローラ
70 補強板
70A 下面部
70B ガイド溝
70C 位置決め溝
71 検出部
Z2 下側