(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16F 3/02 20060101AFI20240606BHJP
F16F 1/18 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
F16F3/02
F16F1/18 Z
(21)【出願番号】P 2023043785
(22)【出願日】2023-03-20
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2022185303
(32)【優先日】2022-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519366237
【氏名又は名称】NatureArchitects株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 海
(72)【発明者】
【氏名】谷道 鼓太朗
(72)【発明者】
【氏名】山村 悟史
(72)【発明者】
【氏名】夏目 大彰
(72)【発明者】
【氏名】新谷 国隆
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-033237(JP,A)
【文献】特開2012-036935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00-6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体であって、
所定方向に延在し、且つ、前記所定方向における第1両端部分と前記第1両端部分の間の部分である第1中間部分とを有する第1弾性部材と、
前記第1弾性部材の一面側に配置され、且つ、前記所定方向における第2両端部分が前記第1両端部分にそれぞれ接続されると共に前記第2両端部分の間の部分である第2中間部分の少なくとも一部が前記第1中間部分から離間する側に凸形状になっている第2弾性部材と、
前記第1弾性部材の他面側に配置され、且つ、前記所定方向における第3両端部分が前記第1両端部分にそれぞれ接続されると共に前記第3両端部分の間の部分である第3中間部分の少なくとも一部が前記第1中間部分から離間する側に凸形状になっている第3弾性部材と、
を備え、
前記構造体は、前記第2、第3中間部分を前記第1中間部分に接近させるような押圧力が加えられると、前記第2、第3弾性部材の曲げ変形を伴って、前記第2、第3弾性部材に圧縮応力が生じると共に前記第1弾性部材に引張応力が生じる、
構造体。
【請求項2】
請求項1記載の構造体であって、
前記第2中間部分は、滑らかな曲線状の前記凸形状になっている、
構造体。
【請求項3】
請求項1記載の構造体であって、
前記第2中間部分は、複数の円弧を組み合わせた曲線状の前記凸形状になっている、
構造体。
【請求項4】
請求項1記載の構造体であって、
前記第1両端部分には、前記所定方向の引張力が予め加えられており、
前記第2、第3両端部分には、前記所定方向の圧縮力が予め加えられている、
構造体。
【請求項5】
請求項1または4記載の構造体であって、
前記第2、第3中間部分は、前記第1弾性部材に対して対称の形状である、
構造体。
【請求項6】
所定方向に延在し、且つ、前記所定方向における第1両端部分と前記第1両端部分の間の部分である第1中間部分とを有する第1弾性部材と、
前記第1弾性部材の一面側に配置され、且つ、前記所定方向における第2両端部分が前記第1両端部分にそれぞれ接続されると共に前記第2両端部分の間の部分である第2中間部分の少なくとも一部が前記第1中間部分から離間する側に凸形状になっている第2弾性部材と、
前記第1弾性部材の他面側に配置され、且つ、前記所定方向における第3両端部分が前記第1両端部分にそれぞれ接続されると共に前記第3両端部分の間の部分である第3中間部分の少なくとも一部が前記第1中間部分から離間する側に凸形状になっている第3弾性部材と、
を備え
る構造体で、
前記構造体は、前記第2、第3中間部分を前記第1中間部分に接近させるような押圧力が加えられると、前記第2、第3弾性部材の曲げ変形を伴って、前記第2、第3弾性部材に圧縮応力が生じると共に前記第1弾性部材に引張応力が生じる、
構造体の製造方法であって、
(A)前記第3、第1、第2弾性部材の順に並ぶように前記第1、第2、第3弾性部材を配置する工程と、
(B)前記第1弾性部材を前記所定方向に引張ながら、前記第1両端部分と前記第2、第3両端部分とを接続する工程と、
を含む構造体の製造方法。
【請求項7】
所定方向に延在し、且つ、前記所定方向における第1両端部分と前記第1両端部分の間の部分である第1中間部分とを有する第1弾性部材と、
前記第1弾性部材の一面側に配置され、且つ、前記所定方向における第2両端部分が前記第1両端部分にそれぞれ接続されると共に前記第2両端部分の間の部分である第2中間部分の少なくとも一部が前記第1中間部分から離間する側に凸形状になっている第2弾性部材と、
前記第1弾性部材の他面側に配置され、且つ、前記所定方向における第3両端部分が前記第1両端部分にそれぞれ接続されると共に前記第3両端部分の間の部分である第3中間部分の少なくとも一部が前記第1中間部分から離間する側に凸形状になっている第3弾性部材と、
を備え
る構造体で、
前記構造体は、前記第2、第3中間部分を前記第1中間部分に接近させるような押圧力が加えられると、前記第2、第3弾性部材の曲げ変形を伴って、前記第2、第3弾性部材に圧縮応力が生じると共に前記第1弾性部材に引張応力が生じる、
構造体の製造方法であって、
(A)前記第3、第1、第2弾性部材の順に並ぶように前記第1、第2、第3弾性部材を配置する工程と、
(B)前記第2、第3両端部分をそれぞれ前記所定方向に沿って互いに近づく方向に圧縮しながら、前記第1両端部分と前記第2、第3両端部分とを接続する工程と、
を含む構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに対向する第1被押圧体と第2被押圧体との間に配置される構造体として、1つの帯状の部材からなり、湾曲した主面を有する基部と、基部の両端部分からそれぞれ延びて基部の湾曲態様とは逆の態様で湾曲する2つの延在部と、2つの延在部の端部であって基部に連なる側とは反対側の端部からそれぞれ延びて延在部の湾曲態様とは逆の態様で湾曲する2つの屈曲部とを有する構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造体では、第1被押圧体と第2被押圧体とが互いに接近する方向の押圧力により印加されるエネルギーを、その押圧力により生じる基部の曲げ変形に起因して基部の内部に生じるひずみに伴うひずみエネルギーとして蓄えることにより、その押圧力による反力を生じさせる。
【0005】
一般に、板状部材に曲げ変形を生じさせたときには、板状部材の内部では、曲げ変形の中立軸から曲げ変形の内周側に向かうにつれて圧縮ひずみが大きくなると共に、曲げ変形の中立軸から外周側に向かうにつれて引張ひずみが大きくなり、曲げ変形の中立軸近傍ではひずみが小さい。このため、板状部材の全体で見たときには、曲げ変形の際に蓄えることができるひずみエネルギーは、板状部材が本来的に蓄えることが可能な最大ポテンシャルのひずみエネルギーに比して比較的小さい。
【0006】
したがって、特許文献1に開示された構造体の基部が蓄えることができるひずみエネルギーは、最大ポテンシャルのひずみエネルギーに比して比較的小さい。このため、構造体が蓄えることができるひずみエネルギーを、最大ポテンシャルのひずみエネルギーにより近づけることが可能な構造を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、構造体であって、所定方向に延在し、且つ、前記所定方向における第1両端部分と前記第1両端部分の間の部分である第1中間部分とを有する第1弾性部材と、前記第1弾性部材の一面側に配置され、且つ、前記所定方向における第2両端部分が前記第1両端部分にそれぞれ接続されると共に前記第2両端部分の間の部分である第2中間部分の少なくとも一部が前記第1中間部分から離間する側に凸形状になっている第2弾性部材とを備え、前記構造体は、前記第2中間部分を前記第1中間部分に接近させるような押圧力が加えられると、前記第2弾性部材の曲げ変形を伴って、前記第2弾性部材に圧縮応力が生じると共に前記第1弾性部材に引張応力が生じる。
【0008】
本開示の他の特徴事項および利点は、例示的且つ非網羅的に与えられている以下の説明及び添付図面から理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る構造体を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示した構造体の第1弾性部材に加えられる引張力と、第2、第3弾性部材にそれぞれ加えられる圧縮力とを概念的に示す図である。
【
図6】
図1に示した構造体に、図示上下方向から構造体を挟み込むように押圧力を加えたときに第1弾性部材及び第2、第3弾性部材に生じる応力及び反力Rの関係を示す概略図である。
【
図7】構造体を挟み込むように押圧力が加えられたときの変位と反力との関係を示す図である。
【
図8】構造体を挟み込むように押圧力が加えられたときの変位と反力との関係を示す図である。
【
図9】構造体を挟み込むように押圧力が加えられたときの変位と第2、第3弾性部材の最大ひずみとの関係を示す図である。
【
図10】構造体を挟み込むように押圧力が加えられたときの変位と構造体に蓄えられるエネルギーとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0011】
最初に、本開示の一実施形態に係る構造体10の全体構成について説明する。
図1は本開示の一実施形態に係る構造体を示す斜視図であり、
図2は
図1に示した構造体の正面図である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の構造体10は、前後方向及び左右方向に延在する矩形平板状の第1弾性部材12と、少なくとも一部が図示上方に凸形状になるように撓んだ状態で第1弾性部材12の両端部分12a,12bの図示上面側に図示左右方向の両端部分14a,14bが接続(固定)された第2弾性部材14と、少なくとも一部が図示下方に凸形状になるように撓んだ状態で第1弾性部材12の両端部分12a,12bの図示下面側に図示左右方向の両端部分16a,16bが接続(固定)された第3弾性部材16とを含んでいる。
【0013】
第2弾性部材14のうち両端部分14a,14bの間の部分である中間部分14cは、上下左右方向に延在する所定平面で切断したときの断面である所定断面において、概ね逆V字の角を滑らかにした(丸くした)形状になっている。具体的には、中間部分14cは、所定断面において、滑らかな曲線状(具体的には、複数の円弧を組み合わせた曲線状)で、両端部分14a,14bから離間する(左右方向における中央に向かう)につれて第1弾性部材12の中間部分12cから離間する、図示上方に凸形状になっている。第3弾性部材16のうち両端部分16a,16bの間の部分である中間部分16cは、所定断面において、概ねV字の角を滑らかにした(丸くした)形状になっている。具体的には、中間部分16cは、所定断面において、滑らかな曲線状(具体的には、複数の円弧を組み合わせた曲線状)で、両端部分16a,16bから離間する(左右方向における中央に向かう)につれて第1弾性部材12の中間部分12aから離間する、図示下方に凸形状になっている。
【0014】
図3は、
図1に示した構造体10の第1弾性部材12に加えられる引張力と、第2、第3弾性部材14,16にそれぞれ加えられる圧縮力とを概念的に示す図である。
【0015】
図3に示すように、本実施形態の構造体10は、第2、第3弾性部材14,16の両端部分14a,14b,16a,16bに図示左右方向に沿って互いに近づく方向に圧縮力が予め加えられ、これにより第1弾性部材12の両端部分12a,12bに図示左右方向に沿って互いに離れる方向に引張力が予め加えられた状態で、第1弾性部材12の両端部分12a,12bに第2、第3弾性部材14,16の両端部分14a,14b,16a,16bがそれぞれ固定されている。第2、第3弾性部材14,16の両端部分14a,14b,16a,16bは、上記圧縮力によってそれぞれ中央部分が
図1(b)に示すように図示上側ないし下側に凸になるように撓み変形した状態で第1弾性部材12の両端部分12a,12bに固定されている。第1弾性部材12の両端部分12a,12bと第2、第3弾性部材14,16の両端部分14a,14b,16a,16bとの固定は、溶接やリベット止め等の任意の適切な固定手法を用いて行うことができる。したがって、構造体10は、製造完了状態(
図1及び
図2の状態)において、第2、第3弾性部材14,16の両端部分14a,14b,16a,16bに図示左右方向に沿って互いに近づく方向に圧縮力が加えられていると共に、第1弾性部材12の両端部分12a,12bに図示左右方向に沿って互いに離れる方向に引張力が加えられている。即ち、構造体10は、プレストレスがかけられている。
【0016】
第1弾性部材12及び第2、第3弾性部材14,16は、金属材料、樹脂材料、ゴム材料、炭素繊維強化プラスチック(CRFP)等の複合材料などによって構成され得る。これらを構成する材料は、構造体10に求められる耐荷重等の諸要件に応じて適宜選択される。
【0017】
本実施形態の構造体10は、例えば、
図4の第1製造方法又は
図5の第2製造方法により製造される。以下、順に説明する。なお、上下方向、前後方向、左右方向は、
図1及び
図2と同様とする。
【0018】
図4の第1製造方法では、最初に、下側から第3弾性部材16、第1弾性部材12、第2弾性部材14の順に並ぶように、第1、第2、第3弾性部材12,14,16を配置する(工程S100)。続いて、第1弾性部材12を左右方向に引張ながら、第1弾性部材12の両端部分12a,12bと第2弾性部材14の両端部分14a,14bと第3弾性部材16の両端部分16a,16bとを接続(固定)する(工程S110)。これにより、構造体10が完成する。構造体10は、製造完了状態において、第2、第3弾性部材14,16の両端部分14a,14b,16a,16bに
図1及び
図2の左右方向に沿って互いに近づく方向に圧縮力が加えられていると共に、第1弾性部材12の両端部分12a,12bに
図1及び
図2の左右方向に沿って互いに離れる方向に引張力が加えられている。即ち、構造体10は、プレストレスがかけられている。
【0019】
図5の第2製造方法では、最初に、工程S100と同様に、下側から第3弾性部材16、第1弾性部材12、第2弾性部材14の順に並ぶように、第1、第2、第3弾性部材12,14,16を配置する(工程S200)。続いて、第2、第3弾性部材14,16の両端部分14a,14b,16a,16bを
図1及び
図2の左右方向に沿って互いに近づく方向に圧縮しながら、第1弾性部材12の両端部分12a,12bと第2弾性部材14の両端部分14a,14bと第3弾性部材16の両端部分16a,16bと、を接続(固定)する(工程S210)。これにより、構造体10が完成する。第2製造方法により構造体10を製造した場合でも、第1製造方法により構造体10を製造した場合と同様に、構造体10は、プレストレスがかけられている。
【0020】
図6は、
図1に示した構造体10に、図示上下方向から構造体10を挟み込むように押圧力Fを加えたときに第1弾性部材12及び第2、第3弾性部材14,16に生じる応力σ1,σ2及び反力Rの関係を示す概略図である。
【0021】
上記のように構成された本実施形態の構造体10によれば、図示上下方向から構造体10を挟み込むように押圧力Fが加えられたとき、第2、第3弾性部材14,16は平面状に展開するように変形し、上記押圧力Fが第2、第3弾性部材14,16の図示左右方向に作用する軸力に変換される。このとき、第2、第3弾性部材14,16の内部には圧縮応力σ1が生じる。そして、第2、第3弾性部材14,16の軸力が、第2、第3弾性部材14,16の図示左右方向の両端部分14a,14b,16a,16bに固定された第1弾性部材12に引張力として伝わる。このとき、第1弾性部材12の内部には引張応力σ2が生じる。このようにして、構造体10を図示上下方向に挟み込むように加えられる押圧力Fが、第1弾性部材12を図示左右方向に引っ張る引張力Pに変換される。構造体10は、第1弾性部材12及び第2、第3弾性部材14,16の内部応力に起因して、押圧力Fに対する反力Rを生じる。
【0022】
さらに、本実施形態の構造体10では、第2、第3弾性部材14,16の両端部分14a,14b,16a,16bに図示左右方向に沿って互いに近づく方向に圧縮力が予め加えられている(プレストレスがかけられている)。これにより、構造体10を挟み込むように押圧力Fが加えられて構造体10が図示上下方向に圧縮するように変形したときに構造体10の剛性(あるいは構造体10からの反力)が所望の範囲内に収まることを保証しながら、第2、第3弾性部材14,16の曲率をより大きくすることができ、それにより、第2、第3弾性部材14,16の高さをより高くすることが可能になる。その結果として、以下に説明するような効果を得ることができる。
(1)上記のようなプレストレスがかけられて曲率がより大きくなり、高さがより高くなった第2、第3弾性部材14,16は、プレストレスがかけられていない場合(曲率がより小さく、高さがより低い場合)に比べて、上記押圧力に対する第2、第3弾性部材14,16の剛性を高くすることができる(言い換えれば、上記押圧力に抗して第2、第3弾性部材14,16に生じる反力を大きくすることができる)。
(2)第2、第3弾性部材14,16に上記のようなプレストレスをかけることにより、上記押圧力によって第2、第3弾性部材14,16が平面状に展開するように変形する際の変位の増加に伴って構造体10の剛性を軟化させる特性(フラットな荷重変位特性)をもたせることができる。
(3)第2、第3弾性部材14,16が平面状に展開するように変形したときに第2、第3弾性部材14,16及び第1弾性部材12に吸収されるひずみエネルギーの総量を増大させることができる。
(4)第2、第3弾性部材14,16の曲率を大きくして第2、第3弾性部材14,16の変位ストロークを大きくしても、第2、第3弾性部材14,16における圧縮応力の最大値を小さくすることができる。
(5)プレストレスが無い場合には、押圧力Fによる第2、第3弾性部材14,16の変形時に曲げ応力と圧縮応力とが混合して第2、第3弾性部材14,16に生じてしまうので第1弾性部材12の引張りに使える圧縮応力が比較的小さくなるが、プレストレスをかけた場合には、押圧力Fによる第2、第3弾性部材14,16の変形時に第2、第3弾性部材14,16に生じる曲げ応力が微小となり、より大きな圧縮応力を第1弾性部材12の引張りに用いることができる。
【0023】
図7は、
図1に示した構造体10に
図1及び
図2の上下方向から構造体10を挟み込むように押圧力が加えられたときの変位と反力との関係を示す図である。本実施形態では、以下の材料等の条件に従って構成した構造体10について解析を行なった。
図7中、変位は、構造体10の高さ(図示上下方向における長さ)H(
図2参照)の製造完了状態からの変化量を意味する。また、変位について、構造体10が製造完了状態のときの変位を0とし、第2、第3弾性部材14,16が平板状になっている、即ち、構造体10が完全に潰れているときの変位を最大値(7.8mm)とした。
【0024】
(材料)
第1、第2、第3弾性部材12,14,16:構造用鋼(ヤング率200GPa、ポアソン比0.3)
(寸法)
・構造体10全体:横(図示左右方向)210mm、奥行き(図示紙面方向)100mm、高さ(図示上下方向)21.3mm
・第2、第3弾性部材14,16:厚み2.0mm
・第1弾性部材12:厚み1.5mm
(プレストレス)
・プレストレスによる第2、第3弾性部材14,16の圧縮応力288MPa
・プレストレスによる第1弾性部材12の引張応力60MPa
【0025】
図7に示すように、構造体10に上記押圧力を加えていくと、第2、第3弾性部材14,16が平面状に展開するように変形するのに伴って、反力が増加、略一定、減少、略一定、増加の順に変化する。具体的には、構造体10の反力は、変位が0mm~4.0mm付近の領域では、変位が増加するにつれて正の範囲内で徐々に小さくなる傾きをもって増加し(正剛性で軟化し)、変位が4.0mm付近~5.0mm付近の領域では、略一定となる(略ゼロ剛性となる)。また、構造体10の反力は、変位が5.0mm付近~7.2mm付近の領域では、変位が増加するにつれて負の範囲内で徐々に小さくなる(絶対値が大きくなる)傾きをもって減少し(負剛性となり)、変位が7.2mm付近~7.4mm付近の領域では、略一定となる(略ゼロ剛性となる)。さらに、構造体10の反力は、変位が7.4mm付近~最大値付近の領域では、正の範囲内で徐々に大きくなる傾きをもって増加する(正剛性で硬化する)。構造体10のこうした特性は、上記のプレストレスをかけられた第2、第3弾性部材14,16により、構造体10の剛性が向上するとともに、第2、第3弾性部材14,16が平面状に展開するように変形する際の変位の増加に伴って剛性が軟化するという、プレストレスをかけることによってもたらされる作用によるものと認められる。
【0026】
このように、本実施形態の構造体10によれば、構造体10に加えられる押圧力を第1弾性部材12に作用する引張力に変換することで、より多くのひずみエネルギーを蓄えることができる。しかも、第2、第3弾性部材14,16に予めプレストレスを加えておくことで構造体10の初期剛性(変位が小さいときの剛性)を高めつつ、変位の増加に伴って剛性が軟化する特性を付与することにより、限られた設計空間内において、比較的高いストローク比を生じさせる構造体10を提供することが可能となる。
【0027】
ここで、本実施形態の構造体10と、第1変形例の構造体10Bと、比較例の構造体10Cとの比較について説明する。本実施形態の構造体10は、
図1及び
図2に示した形状であり、上述したように、製造完了状態において、第2、第3弾性部材14,16の両端部分14a,14b,16a,16bに
図1及び
図2の左右方向に沿って互いに近づく方向に圧縮力が加えられていると共に、第1弾性部材12の両端部分12a,12bに
図1及び
図2の左右方向に沿って互いに離れる方向に引張力が加えられている。即ち、構造体10は、プレストレスがかけられている。第1変形例の構造体10Bは、構造体10と同一形状であり、且つ、製造完了状態において、第2、第3弾性部材14,16の両端部分14a,14b,16a,16bに
図1及び
図2の左右方向に沿って互いに近づく方向に圧縮力が加えられていないと共に、第1弾性部材12の両端部分12a,12bに
図1及び
図2の左右方向に沿って互いに離れる方向に引張力が加えられていない。即ち、構造体10Bは、プレストレスがかけられていない。構造体10Bは、例えば、金属材料、樹脂材料、ゴム材料、炭素繊維強化プラスチック(CRFP)等の複合材料などの一体成形によって構成されたり、第1、第2、第3弾性部材12,14,16が別体に形成されて互いに接続されて構成されたりする。比較例の構造体10Cは、構造体10Bから第1弾性部材12が取り除かれ、且つ、第2弾性部材14の両端部分14a,14bと第3弾性部材16の両端部分16a,16bとが互いに接続(固定)されている。構造体10Cは、例えば、金属材料、樹脂材料、ゴム材料、炭素繊維強化プラスチック(CRFP)等の複合材料などの一体成形によって構成されたり、第2、第3弾性部材14,16が別体に形成されて互いに接続されて構成されたりする。
【0028】
図8は、本実施形態、第1変形例、比較例の構造体10,10B,10Cに、
図1及び
図2の上下方向から構造体10,10B,10Cを挟み込むように押圧力が加えられたときの変位と反力との関係を示す図である。
図9は、構造体10,10B,10Cにこうした押圧力が加えられたときの変位と構造体10,10B,10Cの最大ひずみとの関係を示す図である。
図10は、構造体10,10B,10Cにこうした押圧力が加えられたときの変位と構造体10,10B,10Cに蓄えられるエネルギーとの関係を示す図である。
図8~
図10中、実線は、本実施形態の構造体10の関係を示し、点線は、第1変形例の構造体10Bの関係を示し、破線は、比較例の構造体10Cの関係を示す。なお、構造体10の材料等の条件は、
図7の解析結果を得るための解析に用いた上述の条件と同一である。したがって、
図8の構造体10の関係(実線)は、
図7と同一である。構造体10Bの材料等の条件は、構造体10の材料等の条件に対して、プレストレスによる第2、第3弾性部材14,16の圧縮応力とプレストレスによる第1弾性部材12の引張応力とを何れも0にした点を除いて、構造体10の材料等の条件と同一である。構造体10Cの材料等の条件は、構造体10Bの材料等の条件に対して、第1弾性部材12を用いない分だけ構造体10全体の高さが低くなる点を除いて、構造体10Bの材料等の条件と同一である。構造体10は、プレストレスがかけられているため、製造完了状態の第2、第3弾性部材14,16の曲率は、プレストレスがかけられる前の第2、第3弾性部材14,16の曲率である初期曲率に比して大きくなっている。一方、構造体10B,10Cは、プレストレスがかけられていないため、製造完了状態の第2、第3弾性部材14,16の曲率は、第2、第3弾性部材14,16の初期曲率と同一である。即ち、構造体10の第2、第3弾性部材14,16の初期曲率は、構造体10B,10Cの第2、第3弾性部材14,16の初期曲率に比して小さくなっている。
図8~
図10中、変位の定義、変位が0や最大値のときの構造体10,10B,10Cの状態は、
図7と同一である。
【0029】
図8の関係について説明する。
図8の破線に示すように、構造体10Cの反力は、変位が0mm~5.0mm付近の領域では、線形性をもって増加する(正剛性で略一定である)。また、構造体10Cの反力は、変位が5.0mm付近~最大値の領域では、変位が増加するにつれて徐々に大きくなる傾きをもって増加し(正剛性で硬化し)、特に変位が最大値付近の領域では急増する。
図8の点線に示すように、構造体10Bの反力は、変位が0mm~5.0mm付近の領域では、変位が増加するにつれて正の範囲内で徐々に小さくなる傾きをもって増加し(正剛性で軟化し)、変位が5.0mm付近~7.0mm付近の領域では、略一定となる(略ゼロ剛性となる)。また、構造体10Bの反力は、変位が7.0mm付近~最大値の領域では、変位が増加するにつれて徐々に増加し(正剛性で硬化し)、特に変位が最大値付近の領域では急増する。
図8の実線の構造体10の反力は、
図7を用いて上述した。
【0030】
構造体10,10Bと構造体10Cとを比較すると、構造体10,10Bは、構造体10Cに比して、変位が0~3.0mm付近の領域で大きな傾きをもって反力が増加する、即ち、剛性が高くなっている。また、変位が0~7.0mm付近の領域で、構造体10,10Bは、構造体10Cに比して反力が大きくなっている。さらに、変位が2.0~5.0mm付近の領域で、構造体10Cは変位と反力との関係が概ね線形性を有し、構造体10B,10は変位と反力との関係が概ね非線形性を有する。これらは、第1弾性部材12を備えているか否かによるものである。即ち、構造体10,10B,10Cに挟み込むように押圧力が加えられたときに、第2、第3弾性部材14,16の中央部分14c,16cの曲げ変形に伴って、第2、第3弾性部材14,16に圧縮応力が生じると共に第1弾性部材12に引張応力が生じるか否かによるものである。
【0031】
構造体10と構造体10Bとを比較すると、変位が0~3.0mm付近の領域では、互いに反力が略等しくなっている。構造体10は、構造体10Bに比して、変位が3.0~7.0mm付近の領域では、変位が増加するにつれて反力の傾きがより小さくなる(剛性がより軟化する)。構造体10は、構造体10Bに比して、変位が最大値のときの反力が小さくなる。これらは、構造体10,10Bの初期曲率の相違によるものである。
【0032】
なお、構造体10,10B,10Cにおいて、変位が最大値付近の領域で反力が急増するのは、以下の理由による。構造体10,10B,10Cよりも高剛性で
図1及び
図2の左右方向および前後方向にある程度の長さの平面を有する平面体により構造体10,10B,10Cに挟み込むように押圧力が加えられたときに、変位が小さいときには第2、第3弾性部材14,16における平面体との接触範囲が十分に狭いのに対し、変位が或る値のときから第2、第3弾性部材14,16と平面体との接触範囲が急増し、反力が急増する。この反力の急増程度は、第2、第3弾性部材14,16の初期曲率が大きいほど大きくなる。このため、構造体10は、構造体10B,10Cに比して反力の急増程度が小さくなっている。
【0033】
図9の関係について説明する。
図9の破線に示すように、構造体10Cの第2、第3弾性部材14,16の最大ひずみは、変位が0~5.0mm付近の領域では、線形性をもって増加し、変位が5.0mm付近~最大値の領域では略一定である。構造体10Cにおける変位の5.0mm付近については上述した。
図9の点線に示すように、構造体10Bの第2、第3弾性部材14,16の最大ひずみは、変位が0~3.0mm付近の領域では、変位が増加するにつれて傾きが徐々に(緩やかに)小さくなりながら増加し、変位が3.0~3.2mm付近の領域では、傾きが急峻に小さくなりながら増加し、変位が3.2mm~最大値の領域では傾きが徐々に小さくなりながら増加する。構造体10Bにおいて、変位が3.2mm付近~最大値の領域でも最大ひずみが徐々に増加するのは、第2、第3弾性部材14,16に第1弾性部材12を介した圧縮応力が生じるためである。
図9の実線に示すように、構造体10の第2、第3弾性部材14,16の最大ひずみは、変位が0mmのとき(製造完了状態)で正の値となっている。これは、構造体10にプレストレスがかけられているためである。構造体10の第2、第3弾性部材14,16の最大ひずみは、変位が0mm超過~1.5mm付近の領域では、変位が増加するにつれて徐々に減少する。これは、構造体10にかけられているプレストレスが解消する変形が生じているためである。構造体10の第2、第3弾性部材14,16の最大ひずみは、変位が1.5mm付近~3.7mm付近の領域では、変位が増加するにつれて傾きが徐々に(緩やかに)小さくなりながら増加し、変位が3.7~3.9mm付近の領域では、傾きが急峻に小さくなりながら増加し、変位が3.9mm~最大値の領域では、傾きが徐々に小さくながら増加する。これは、構造体10Bと同様の理由によるものである。
【0034】
構造体10Bと構造体10Cとを比較すると、構造体10Bは、構造体10Cに比して、第2、第3弾性部材14,16の最大ひずみが大きくなっている。これは、第1弾性部材12を備えているか否かによるものである。即ち、構造体10B,10Cに挟み込むように押圧力が加えられたときに、第2、第3弾性部材14,16の中央部分14c,16cの曲げ変形に伴って、第2、第3弾性部材14,16に圧縮応力が生じると共に第1弾性部材12に引張応力が生じるか否かによるものである。構造体10と構造体10Bとを比較すると、構造体10は、構造体10Bに比して、変位が0.7mm付近~最大値の領域で、第2、第3弾性部材14,16の最大ひずみが小さくなっている。これは、構造体10,10Bにプレストレスがかけられているか否かによるものである。
【0035】
図10の関係について説明する。
図10の実線、点線、破線に示すように、構造体10,10B,10Cの何れでも、変位が増加するにつれて、構造体10,10B,10Cが蓄えるエネルギーが増加している。構造体10,10Bと構造体10Cとを比較すると、構造体10,10Bは、構造体10Cに比して、変位が5mm程度のときに4倍程度のエネルギーを蓄えている。これは、構造体10,10B,10Cに挟み込むような押圧力が加えれたときに、構造体10Cは、第2、第3弾性部材14,16の曲げ変形に起因するひずみエネルギーとして蓄えるのに対し、構造体10,10Bは、第2、第3弾性部材14,16の曲げ変形および圧縮応力と第1弾性部材12の引張応力とに起因するひずみエネルギーとして蓄えるためである。構造体10と構造体10Bとを比較すると、構造体10は、構造体10Bに比して、蓄えるエネルギーが若干少なくなっている。これは、構造体10,10Bにプレストレスがかけられているか否かによるものである。
【0036】
本実施形態や第1変形例の構造体10,10Bによれば、第2、第3弾性部材14,16に加えて第1弾性部材12を備えることにより、挟み込むように押圧力が加えられたときに、第2、第3弾性部材14,16の中間部分14c,16cの曲げ変形に伴って、第2、第3弾性部材14,16に圧縮応力が生じると共に第1弾性部材12に引張応力が生じる。これに対して、構造体10Cは、第1弾性部材12を備えていないから、挟み込むように押圧力が加えられたときに、第2、第3弾性部材14,16の中間部分14c,16cの曲げ変形が生じるだけである。したがって、構造体10,10Bは、構造体10Cに比して、挟み込むように押圧力が加えられたときに、より大きなずみエネルギーを蓄えることができる(
図10参照)。即ち、構造体が蓄えることができるひずみエネルギーを、構造体が本来的に蓄えることができる最大ポテンシャルのひずみエネルギーにより近づけることができる。また、構造体10,10Bは、構造体10Cに比して、変位が比較的小さい領域から、ある程度大きな反力を生じることができる(
図8参照)。
【0037】
また、本実施形態の構造体10によれば、プレストレスがかけられていることにより、、第1変形例の構造体10Bに比して、挟み込むように押圧力が加えられたときに、変位の増加に伴って剛性をより軟化する特性を付与することができる(
図8参照)と共に、第2、第3弾性部材14,16の最大ひずみが大きくなるのを抑制することができる(
図9参照)。一方、第1変形例の構造体10Bによれば、第1変形例の構造体10Bに比して、挟み込むように押圧力が加えられたときに、蓄えることができるひずみエネルギーをより大きくすることができる(
図10参照)。
【0038】
さらに、本実施形態や第1変形例の構造体10,10Bによれば、第2、第3弾性部材14,16が所定断面において滑らかな曲線状(具体的には、複数の円弧を組み合わせた曲線状)になっていることにより、曲率の十分に大きい部分が生じないようにすることができる。これにより、構造体10に押圧力が加えられたときに、第2、第3弾性部材14,16の特定箇所に応力集中が生じるのを抑制することができる。
【0039】
加えて、本実施形態や第1変形例の構造体10,10Bによれば、第2、第3弾性部材14,16が第1弾性部材12に対して対称の形状に形成されていることにより、構造体10に上下から押圧力が加えられたときに、第2、第3弾性部材14,16の中間部分14c,16cを同様の変形を生じさせると共に、第2、第3弾性部材14,16に同様の圧縮応力を生じさせることができる。
【0040】
上述した実施形態や変形例の構造体10,10Bでは、
図1及び
図2に示したように、第2、第3弾性部材14,16の中間部分14c,16cは、それぞれ、所定断面において概ね逆V字、V字の角を滑らかにした(丸くした)形状、即ち、第1弾性部材12から離間する側に1つの凸を有する形状になっているものとした。しかし、中間部分14c,16cの形状は、これに限定されない。
図11は、第2変形例の構造体を示す斜視図であり、
図12は、
図11に示した構造体の正面図である。
図13は、第3変形例の構造体を示す斜視図であり、
図14は、
図13に示した構造体の正面図である。
【0041】
図11及び
図12に示すように、第2変形例の構造体110は、第2、第3弾性部材14,16の中間部分114c,116cの形状が、実施形態の構造体10の第2、第3弾性部材14,16の中間部分14c,16cの形状から変更されている点で構造体10とは異なる。中間部分114c、116cは、逆W字、W字の角を滑らかにした(丸くした)形状、即ち、図示左右方向に間隔をおいて第1弾性部材12から離間する側に2つの凸を有する形状になっている。中間部分114c、116cが2つの凸を有することにより、高剛性で
図1及び
図2の左右方向および前後方向にある程度の長さの平面を有する平面体により押圧力が加えられたときに、2つの凸で平面体に接触するため、1つの凸で平面体に接触する場合に比して、構造体110が
図12の時計回りや反時計回りに回転するのを抑制することができる。
【0042】
図13及び
図14に示すように、第3変形例の構造体210は、第2、第3弾性部材14,16の中間部分214c,216cの形状が、変形例の構造体110の第2、第3弾性部材14,16の中間部分114c,116cの形状から変更されている点で構造体110とは異なる。中間部分214c,216cは、中間部分114c、116cの2つの凸の間を直線状(平面状)に繋いだ形状になっている。
【0043】
第2、第3変形例の構造体110,210でも、比較例の構造体10Cに対して、実施形態の構造体10と同様の効果を奏することができる。
【0044】
上述した実施形態や第1変形例の構造体10,10Bでは、
図1及び
図2に示したように、第2、第3弾性部材14,16の中間部分14c,16cは、所定断面において、複数の円弧を組み合わせた曲線状で凸形状になっているものとした。しかし、中間部分14c、16cの曲線状は、所定断面において、複数の円弧の一部または全部が楕円弧やサイン波の一部などに置き換えられた形状であってもよいし、複数の円弧の全部がサイン波の1周期に置き換えられた形状であってもよい。また、中間部分14c,16cは、所定断面において、一部に直線を含む形状であってもよい。
【0045】
上述した実施形態や第1変形例の構造体10,10Bでは、
図1及び
図2に示したように、第2、第3弾性部材14,16は、第1弾性部材12に対して対称の形状になっているものとした。しかし、第2、第3弾性部材14,16は、第1弾性部材12に対して対称の形状になっていなくてもよい。例えば、構造体10,10Bにおいて、第3弾性部材16が第3弾性部材116や第3弾性部材216に置き換えられてもよい。第2、第3変形例の構造体110,210についても同様である。
【0046】
上述した実施形態や第1変形例の構造体10,10Bでは、
図1及び
図2に示したように、第1弾性部材12は、平板状の部材であるものとした。しかし、第1弾性部材12は、例えば、1以上の棒状の部材であるものとしてもよい。
【0047】
上述した実施形態や第1変形例の構造体10,10Bでは、第1弾性部材12と第2、第3弾性部材14,16とを備えるものとした。しかし、第1弾性部材12と第2、第3弾性部材14,16のうちの何れか一方だけとを備えるものとしてもよい。
【0048】
以上、開示の実施形態及び実施例を通じて本開示を説明したが、上述の実施形態及び実施例は、請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、本開示の実施形態及び実施例の中で説明されている特徴を組み合わせた形態も本開示の技術的範囲に含まれ得る。
【0049】
[付記]
[1]本開示の構造体は、構造体であって、所定方向に延在し、且つ、前記所定方向における第1両端部分と前記第1両端部分の間の部分である第1中間部分とを有する第1弾性部材と、前記第1弾性部材の一面側に配置され、且つ、前記所定方向における第2両端部分が前記第1両端部分にそれぞれ接続されると共に前記第2両端部分の間の部分である第2中間部分の少なくとも一部が前記第1中間部分から離間する側に凸形状になっている第2弾性部材とを備え、前記構造体は、前記第2中間部分を前記第1中間部分に接近させるような押圧力が加えられると、前記第2弾性部材の曲げ変形を伴って、前記第2弾性部材に圧縮応力が生じると共に前記第1弾性部材に引張応力が生じることを要旨とする。
【0050】
本開示の構造体は、第2中間部分を第1中間部分に接近させるような押圧力が加えられると、第2弾性部材の曲げ変形を伴って、第2弾性部材に圧縮応力が生じると共に第1弾性部材に引張応力が生じる。これにより、構造体に蓄えることができるひずみエネルギーをより大きくすることができる。即ち、構造体に蓄えることができるひずみエネルギーを、構造体に本来的に蓄えることができる最大ポテンシャルのひずみエネルギーにより近づけることができる。
【0051】
[2]本開示の構造体(上述の[1]に記載の構造体)において、前記第1両端部分には、前記所定方向の引張力が予め加えられており、前記第2両端部分には、前記所定方向の圧縮力が予め加えられているものとしてもよい。こうすれば、第2弾性部材が、第2中間部分を第1中間部分に接近させるような押圧力を受けて変形するときの第2弾性部材の最大ひずみが大きくなるのを抑制することができる。
【0052】
[3]本開示の構造体(上述の[1]または[2]に記載の構造体)において、前記第2中間部分は、滑らかな曲線状の前記凸形状になっているものとしてもよい。
【0053】
[4]この場合(上述の[3]に記載の構造体)において、前記第2中間部分は、複数の円弧を組み合わせた曲線状の前記凸形状になっているものとしてもよい。
【0054】
[5]本開示の構造体(上述の[1]記載の構造体)において、前記第1弾性部材の他面側に配置され、且つ、前記所定方向における第3両端部分が前記第1両端部分にそれぞれ接続されると共に前記第3両端部分の間の部分である第3中間部分の少なくとも一部が前記第1中間部分から離間する側に凸形状になっている第3弾性部材を更に備え、前記構造体は、前記第2、第3中間部分を前記第1中間部分に接近させるような押圧力が加えられると、前記第2、第3弾性部材の曲げ変形を伴って、前記第2、第3弾性部材に圧縮応力が生じると共に前記第1弾性部材に引張応力が生じるものとしてもよい。
【0055】
[6]本開示の構造体(上述の[5]に記載の構造体)において、前記第1両端部分には、前記所定方向の引張力が予め加えられており、前記第2、第3両端部分には、前記所定方向の圧縮力が予め加えられているものとしてもよい。
【0056】
[7]本開示の構造体(上述の[5]または[6]に記載の構造体)において、前記第2、第3中間部分は、前記第1弾性部材に対して対称の形状であるものとしてもよい。
【0057】
[8]本開示の第1の構造体の製造方法は、所定方向に延在し、且つ、前記所定方向における第1両端部分と前記第1両端部分の間の部分である第1中間部分とを有する第1弾性部材と、前記第1弾性部材の一面側に配置され、且つ、前記所定方向における第2両端部分が前記第1両端部分にそれぞれ接続されると共に前記第2両端部分の間の部分である第2中間部分の少なくとも一部が前記第1中間部分から離間する側に凸形状になっている第2弾性部材とを備え、前記構造体は、前記第2中間部分を前記第1中間部分に接近させるような押圧力が加えられると、前記第2弾性部材の曲げ変形を伴って、前記第2弾性部材に圧縮応力が生じると共に前記第1弾性部材に引張応力が生じる構造体の製造方法であって、(A)前記第1、第2弾性部材の順に並ぶように前記第1、第2弾性部材を配置する工程と、(B)前記第1弾性部材を前記所定方向に引張ながら、前記第1両端部分と前記第2両端部分とを接続する工程と、を含むことを要旨とする。
【0058】
本開示の第1の構造体の製造方法により構造体を製造することにより、構造体は、第1弾性部材には所定方向の引張力が予め加えられていると共に、第2弾性部材の第2両端部分には所定方向の圧縮力が予め加えられている。これにより、上述の[2]に記載の構造体と同様の効果を奏することができる。
【0059】
[9]本開示の第2の構造体の製造方法は、所定方向に延在し、且つ、前記所定方向における第1両端部分と前記第1両端部分の間の部分である第1中間部分とを有する第1弾性部材と、前記第1弾性部材の一面側に配置され、且つ、前記所定方向における第2両端部分が前記第1両端部分にそれぞれ接続されると共に前記第2両端部分の間の部分である第2中間部分の少なくとも一部が前記第1中間部分から離間する側に凸形状になっている第2弾性部材とを備え、前記構造体は、前記第2中間部分を前記第1中間部分に接近させるような押圧力が加えられると、前記第2弾性部材の曲げ変形を伴って、前記第2弾性部材に圧縮応力が生じると共に前記第1弾性部材に引張応力が生じる構造体の製造方法であって、(A)前記第1、第2弾性部材の順に並ぶように前記第1、第2弾性部材を配置する工程と、(B)前記第2両端部分をそれぞれ前記所定方向に沿って互いに近づく方向に圧縮しながら、前記第1両端部分と前記第2両端部分とを接続する工程と、を含むことを要旨とする。
【0060】
本開示の第2の構造体の製造方法により構造体を製造することにより、構造体は、第1弾性部材には所定方向の引張力が予め加えられていると共に、第2弾性部材の第2両端部分には所定方向の圧縮力が予め加えられている。これにより、上述の[2]に記載の構造体と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0061】
10,10B,10C,110,210 構造体、12 第1弾性部材、12a,12b,14a,14b,16a,16b 端部分、12c,14c,16c,114c,116c,214c,216c 中間部分、14 第2弾性部材、16 第3弾性部材。