(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】エアロゾルボックス
(51)【国際特許分類】
A61G 10/00 20060101AFI20240606BHJP
A61B 46/20 20160101ALI20240606BHJP
A61G 12/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A61G10/00 Z
A61B46/20
A61G12/00 Z
(21)【出願番号】P 2020128907
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】才木 直史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 政至
(72)【発明者】
【氏名】中力 直樹
(72)【発明者】
【氏名】舩木 一美
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-019506(JP,A)
【文献】特許第6889347(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 10/00
A61B 46/20
A61G 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認用開口部と腕挿入孔が形成された紙製本体と、前記視認用開口部を覆う透明体からな
ると共に、
上面視において台形形状であり、左右の側面に前記腕挿入孔が形成されていることを特徴とするエアロゾルボックス。
【請求項2】
前記視認用開口部が上面と前面に連結していることを特徴とする請求項1に記載のエアロゾルボックス。
【請求項3】
上面の前記視認用開口部が傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のエアロゾルボックス。
【請求項4】
前記腕挿入孔は傾斜した長孔形となっていることを特徴とする請求項1に記載のエアロゾルボックス。
【請求項5】
前記腕挿入孔にフィルムが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のエアロゾルボックス。
【請求項6】
前記紙製本体は、展開状態からの組み立て式となっていることを特徴とする請求項1に記載のエアロゾルボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の頭部を覆うように配置され、患者からの飛沫感染を防止するエアロゾルボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
2019年末より発生したCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行のために、「エアロゾルボックス」と呼称される製品が現在、複種類市販されている。これは、以前のSARS-CoV2の感染を防止する目的に、台湾のDr. Hsien Yung Lai(頼賢勇医師)が考案して、その設計図が公開されたものである。非特許文献1の動画に示されるように、エアロゾルボックスは、医療行為中の患者の口鼻から飛散するウイルスの飛沫(エアロゾル)から医療従事者への感染を防止するための隔壁ボックスであり、患者の頭部を覆うように配置される。COVID-19は重篤になると肺炎で人工呼吸が必要になり、エアロゾルボックスを使用して気管挿管が行われる。また、エアロゾルボックスは気管挿管だけでなく、非特許文献1の動画に示されるように、挿入された器具を抜くときにも飛沫防止として使用される。また、PCR検査の飛沫感染の予防としても使用することができる。
【0003】
例えば、公知となっている非特許文献1~5のエアロゾルボックスは、5mm程度の厚みの透明アクリルあるいは透明ポリカーボネイト製である。そしてこれらは消毒用アルコールや0.05~0.1%の次亜塩素酸ナトリウム等で消毒され、再使用される。また、これらには、医療従事者側(患者の頭部側)の平面に円形の腕挿入孔が形成されている。これらの透明アクリルや透明ポリカーボネイト製のエアロゾルボックスは、高額であり、重たい。
【0004】
また、非特許文献6のエアロゾルボックスは、非特許文献1~5とは異なり、不透明なプラスチック段ボールで作られ、都度アルコール消毒を行うためのポリプロピレン(PP)などを材料としたプラスチック製であり、こちらも再使用が前提となっている。また、非特許文献1~5と同様、前面に医療従事者の腕を挿入する腕挿入孔が設けられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】アクリル加工屋|エアロゾルボックス(Aerosol Box)、[令和2年6月21日検索]、インターネット〈http://acrylate.jp/service/aerosol-box〉
【文献】KOTOBUKI Medical株式会社|腹腔鏡トレーニングボックスのお店、[令和2年6月21日検索]、インターネット〈https://www.tech-kg-shop.com/SHOP/ASB-R.html〉
【文献】株式会社キュリオ|PR Times、[令和2年6月21日検索]、インターネット〈https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000056621.html〉
【文献】コッカーマリン|ロスジェネ勤務医の資産形成ブログ、[令和2年6月21日検索]、インターネット〈https://www.cokermarin.com/entry/2020/05/27/173000〉
【文献】ミノル化学工業株式会社|Aerosol Box 台形 4.14、[令和2年6月21日検索]、インターネット〈https://www.dbym.jp/ab〉
【文献】石原工芸株式会社|医療用簡易防護ボックス|エアロゾルボックス、[令和2年6月21日検索]、インターネット〈http://ishiharakougei.com/box.html〉
【文献】youtube |シミュレータによる喉頭展開と気管挿管、[令和2年6月21日検索]、インターネット〈https://www.youtube.com/watch?v=gZ12zDZtsls〉
【文献】JA広島総合病院 |麻酔科|ニュース・お知らせ|気管挿管とビデオ喉頭鏡の導入、[令和2年6月21日検索]、インターネット〈https://www.hirobyo.jp/services/departments/outpatient/anesthesia/2014/06/post-36.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1~6のエアロゾルボックスは、何れも再使用する前提で作られたものである。しかしながら、消毒をすること自体が医療従事者の感染リスクを高めてしまうことになる。また、消毒の作業自体が医療従事者にとっては手間となる。
【0007】
従って、本発明は、再使用できるエアロゾルボックスではなく、使い捨てできるよう安価でありながら、使いやすいエアロゾルボックスを提供することを目的とする。
【0008】
また、非特許文献1~6のエアロゾルボックスは、医療従事者の腕を挿入する腕挿入孔が前面に設けられている。しかしながら、腕挿入孔が前面にあること自体、医療従事者の飛沫感染リスクが高まることになる。つまり、気管挿管時の体位である患者のスニッフィングポジションにおいて、患者の口腔は医療従事者側に向けられており、医療従事者の対面に患者とつながる孔(腕挿入孔)が存在するため、その孔を介して飛沫感染リスクが高まることになる。
【0009】
一方で、飛沫感染リスク低減のために腕挿入孔を小さく(直径100mm)してしまうと、腕の可動が制限されるので、手技がし難いという問題がある。例えば、非特許文献1の動画では、腕挿入孔が腕と略同一の円形であるので、医療従事者の腕があまり動かずに手首がしきりに動いている。これに対して、エアロゾルボックスを使用しない非特許文献7の気管挿管のシミュレータでは腕が自由に動くので、手首の動きが少ない。
従って、本発明は、飛沫感染のリスクを抑えると共に、十分な腕の可動域を確保できるエアロゾルボックスを提供することを目的とする。
【0010】
また、モニターが無い喉頭鏡では気管を直視で確認することになる。一方、モニターがあるビデオ喉頭鏡(非特許文献8参照)ではモニターの画像で気管を確認する。非特許文献6のエアロゾルボックスは、不透明なプラスチック段ボール製であるため、医者から見て前面と上面に掛かる稜が不透明なプラスチックとなっている。このため、例えば、ビデオ喉頭鏡を用いて、非特許文献6のようなエアロゾルボックスを使用すると不透明な稜によって、気管を確認する視野が遮られるという問題がある。また、気管挿管を行う際、気管を確認する角度によって、医者は、前面或いは上面にわざわざ顔を大きく動かす必要がある。
従って、本発明は、前面と上面に掛かる不透明な稜によって視野が遮られることがないエアロゾルボックスを提供することを目的とする。
【0011】
また、非特許文献1~6のエアロゾルボックスは、いずれも組立済みであり、保管、及び運搬時に大きな容積を占めてしまうことになる。従って、本発明は、保管、及び運搬が容易なエアロゾルボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のエアロゾルボックスは、視認用開口部と腕挿入孔が形成された紙製本体と、前記視認用開口部を覆う透明体からなることを特徴とする。
【0013】
材質が紙製本体と透明体であるので、安価なエアロゾルボックスを提供することができる。これにより、使い捨てが容易となるので、使い捨てによりエアロゾルボックスの消毒が不要となり、医療従事者の感染リスクが低減する。また、材質が紙であるので、容易に焼却処理場で廃棄できる。なお、紙製本体として段ボールや厚紙等を用いることができる。また、透明体として透明なプラスチックフィルム等を用いることができる。
また、本発明のエアロゾルボックスにおいては、上面視において台形形状で、左右の側面に腕挿入孔が形成されることが好ましい。
医療従事者の前に腕挿入孔がないので、感染リスクが低い。また、腕挿入孔を大きくすることができるので手技がし易い。
また、本発明のエアロゾルボックスにおいては、前記視認用開口部が上面と前面に連結していることが好ましい。
【0014】
一般的な喉頭鏡や、気管の画像を見るモニターを備えたビデオ喉頭鏡など、喉頭鏡の種類は様々あり、喉頭鏡によって気管挿管時の目線が異なる。また、手技中にも気管や喉頭鏡のモニターを見る目線が移動する。したがって、できるだけ目線の邪魔にならないよう、視野を広く確保できる方が好ましい。本発明のように、エアロゾルボックスが不透明な材質の場合であっても、上面と前面との間が不透明な稜で遮られることがないため、どのような喉頭鏡を用いても気管挿管を行いやすい。
【0015】
また、本発明のエアロゾルボックスにおいては、上面の前記視認用開口部が傾斜していることが好ましい。これにより、医療従事者が患者の顔により近づけられる。また、天井等からの光反射を防ぐことができる。
【0016】
また、本発明のエアロゾルボックスにおいては、前記腕挿入孔は傾斜した長孔形となっていることが好ましい。感染リスクを低減するためには、腕挿入孔はできるだけ小さな孔であることが望ましいが、小さな孔であっても腕の可動域を増やすことでき、手技がし易くなる。
【0017】
また、本発明のエアロゾルボックスにおいては、前記腕挿入孔にシートが取り付けられていることが好ましい。腕と孔との隙間から飛沫が漏れるのを防止することができる。なお、シートには放射状のスリットが形成されているとよい。
【0018】
また、本発明のエアロゾルボックスにおいては、前記紙製本体は、展開状態からの組み立て式となっていることが好ましい。展開状態からの組み立て式となっているので、通常は展開状態としておき、必要な時にだけ組み立てを行えばよいので、保管や運搬において省スペースを実現でき、保管コストや運搬コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】Aは本発明の第1実施形態のエアロゾルボックスの要部を示す斜視図であり、BはAを背面側から見た斜視図である。
【
図2】Aは第2実施形態のエアロゾルボックスの要部を示す斜視図であり、BはAを背面側から見た斜視図である。
【
図3】Aは本発明の第3実施形態のエアロゾルボックスの要部を示す斜視図であり、BはAを背面側から見た斜視図である。
【
図4】Aは本発明の第3実施形態のエアロゾルボックスの試作品の撮像であり、Bは第3実施形態の内部の広さを示す第1撮像であり、Cは内部の広さを示す第2撮像である。
【
図5】本発明の第4実施形態のエアロゾルボックスの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0021】
[第1実施形態]
図1を用いて本発明の第1実施形態のエアロゾルボックス100を説明する。
図1Aはエアロゾルボックスの医療従事者側から見た斜視図であり、
図1Bは
図1Aを背面からから見た斜視図である。
【0022】
エアロゾルボックス100は、視認用開口部と腕挿入孔が形成された紙製本体と、視認用開口部を覆う透明体からなる。より具体的には、エアロゾルボックス100は、手技する医療従事者側から見て四角形の前面1Fとなる段ボール製の前板1と、四角形の上面2Fとなる段ボール製の天板2と、左右の四角形の側面3Fとなる段ボール製の2つの側板3と、四角形の底面4Fとなる段ボール製の底板4と、前面1Fに設けられる前面視認用開口部51と、上面2Fに設けられる上面視認用開口部52と、左右の側面3Fに設けられる2つの側面視認用開口部53と、前面1Fに設けられて腕が挿入される左右一対の腕挿入孔61と、前面視認用開口部51を塞ぐ前面透明フィルム71と、上面視認用開口部52を塞ぐ天面透明フィルム72と、左右の側面視認用開口部53を塞ぐ2つの側面透明フィルム73と、からなる。
【0023】
前板1、天板2、2つの側板3と底板4は、1枚の紙製段ボールを繰り抜いたものであり、前面1Fの4辺が上面2F、2つの側面3Fと底面4Fのそれぞれの1辺で連通する紙製段ボールとなっている。
図1に示すように、紙巾方向(いわゆる段ボールの目方向)Wは上下方向である。なお、紙製段ボールは表ライナーと裏ライナーが清潔感を与える白色である。
【0024】
図1に示すように、天板2と側板3とは、天板2から延在する2つの天板曲げフランジ21によって接着で連結されている。底板4と側板3とは、底板4から延在する2つの底板曲げフランジ41によって接着で連結されている。これにより、エアロゾルボックス100は、後方が開口した箱型となる。なお、補強の為に側板3の天板2側には天板曲げフランジ31が形成され、底板4側には底板曲げフランジ32が形成されている。
【0025】
そして、エアロゾルボックス100の後方より患者の頭が挿入されることで、エアロゾルボックス100が患者の頭を覆う。このとき、底板4に患者の頭が位置することになるので、軽量なエアロゾルボックス100が簡単に動くことはない。つまり、前面腕挿入孔61に挿入された腕の動きによって、エアロゾルボックス100が簡単に移動してしまうようなことはない。
なお、天面2と2つの側面3とをわずかに傾斜させておくことにより、複数のエアロゾルボックス100を重ね入れて未使用状態で保管しておくことができる。
【0026】
前面透明フィルム71と天面透明フィルム72と側面透明フィルム73は、透明なプラスチック(例えば、ポリプロピレン、セロファン、PET、PVCなど。)のシートであり、接着剤や粘着剤などでそれぞれの紙製段ボールの面に固着されている。また、腕挿入孔61は、飛沫の漏れ防止のために、腕が通る最小限の円形(例えば直径100mm)孔になっている。
【0027】
このように、第1実施形態のエアロゾルボックス100は、紙製段ボールに透明フィルムを貼ったものであり、アクリルやポリカーボネイト製のエアロゾルボックスと比較して格段に安価で提供できるため、容易に使い捨てとすることができる。また、可燃焼却炉での廃棄ができる。また、軽量であるため扱い易い。
【0028】
[第2実施形態]
図2を用いて第2実施形態のエアロゾルボックス100Aを説明する。
図2Aはエアロゾルボックスの医療従事者側から見た斜視図であり、
図2Bは
図2Aを背面部から見た斜視図である。また、エアロゾルボックス100Aにおいては、第1実施形態のエアロゾルボックス100と構成が同一の部分については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略し、構成が異なる同一名の部分については参照符号に添え字「A」を付す。
【0029】
エアロゾルボックス100Aは、第1実施形態のエアロゾルボックス100の腕挿入孔61を前面1Fから側面3Fに移動させると共に、その形状を楕円とし、腕挿入孔61が無くなった分、前面1FAの幅を狭くしたものである。
【0030】
より具体的には、
図2に示すように、エアロゾルボックス100Aの前面1FAからは挿入孔61が無くなって、その分、前面1FAの幅が狭くなっている。これに伴って、上面2FAと底面3FAの前面1FA側の辺は狭くなっており、上面視(平面図)においてエアロゾルボックス100Aは、台形形状となっている。なお、前面1FAの幅は、一般的な頭部の幅程度とし、医療従事者による患者への処置において必要な視野を確保するとともに、その手技が容易に行える幅となっている。
【0031】
また、左右の側面3FAに腕挿入孔61Aが設けられている。腕挿入孔61Aは、第1実施形態とは異なり楕円形となっており、長軸の方向が、医療従事者の腕が患者の口腔に向かう方向(例えば、医療従事者から見て下奥方向に45度程度)になっている。このために、医療従事者は腕を容易に挿入することができ、また、楕円であるため患者の口腔に向けて肘を曲げたり腕を動かしたりすることもできる。なお、本発明の腕挿入孔61Aは楕円に限定するものではなく、例えば、長円や長方形からなる長孔を採用することもできる。
【0032】
また、腕挿入孔61Aには透明で変形可能なプラスチック(たとえば、PVCなど)の腕挿入シート74が、腕挿入孔61Aを塞ぐように、接着剤などで側板3に固着されている。そして、腕挿入シート74には腕を挿入することができるように、放射状のスリットSが形成されている。
【0033】
このように、エアロゾルボックス100Aは、腕挿入孔61Aが前面1FAには無いので、医療従事者の顔に向かって飛沫が漏れることは無く、感染防止となる。
【0034】
また、側面3FAに設けられた腕挿入孔61Aには、スリットSを備えた腕挿入シート74が貼り付けられているので、腕と腕挿入孔61Aの隙間から飛沫が漏れるのを防止することができる。なお、腕挿入孔61Aに腕が挿入されていないときは、腕挿入シート74により腕挿入孔61Aからの飛沫の漏れが防止されている。
【0035】
なお、腕を入れる方法としては、スリットSを形成しておく方法が飛沫の漏れ防止方法として好ましいが、腕挿入シート74の上方のみ固着させてシートを垂らし、腕挿入シート74の下方を捲って腕を挿入させる方法でもよい。
【0036】
また、
図2に示すように、左右2つの側面視認用開口部53Aは、腕挿入孔61Aの移動により小さくなっている。なお、側面視認用開口部53Aは、必須のものではないが、この側面視認用開口部53Aから患者を見ることができ、また、患者は箱の外を見ることができるので箱の圧迫感を低減することができる。また、側面視認用開口部53Aに貼り付けられ側面透明フィルム73Aは、看護師の腕を挿入できるように、腕挿入シート74と同一または一体の材料にして、放射状のスリットを設けてもよい。これにより、看護師の介助(輪状軟骨の圧迫、気管チューブの渡し、口角の拡張、スタイレットの抜去、カフへの空気注入、バイトブロックの挿入、医師の聴診介助など)が容易になる。
【0037】
[第3実施形態]
図3、
図4を用いて第3実施形態のエアロゾルボックス100Bを説明する。
図3Aは医療従事者側から見たエアロゾルボックス100Bの斜視図であり、
図3Bは
図2Aを背面からから見た斜視図である。
図4Aは試作品の撮像であり、
図4Bは第3実施形態の内部の広さを示す第1撮像であり、
図4Cは内部の広さを示す第2撮像である。エアロゾルボックス100Aにおいては、構成が異なる同一名の部分については参照符号に添え字「B」を付す。
【0038】
なお、エアロゾルボックス100Bは、第2実施形態のエアロゾルボックス100Aの上面2FAを前面1FA側に傾斜させ、前面視認用開口部51Aと上面視認用開口部52Aを連通させたものである。
【0039】
具体的には、
図3に示すように、上面2FBは前面1FB側に傾斜している。これにより、前面1FBと上面2FB間の稜が下方に下がるので、医療従事者の目を患者の口腔により近づけることができる。また、通常室内の天井には照明が設置されているが、上面視認用開口部52Bの上面透明フィルム72Bにこの照明が写り込むことを防止することができる。
【0040】
また、
図3に示すように、前面1FBの前面視認用開口部51Bと上面2FBの上面視認用開口部52Bとは、連通して一体の前面・上面視認用開口部54になっており、これに一枚の前面・上面透明フィルム75(71B、72B)が貼り付けられている。これにより、前面・上面透明フィルム75の稜が透明となるので、視界が広くなる。上下の視界が連通して広くなることによって、モニター有無の種々の喉頭鏡に対応でき、手技時の目線の上下移動が容易となる。
【0041】
また、側面視認用開口部53Bと腕挿入孔61Bは、1枚の透明で変形可能なプラスチックの腕挿入・側面シート76で塞がれている。そして腕挿入孔61B部分には放射状のスリットSが設けられている。なお、段ボールをコーティングすることで、前面・上面透明フィルム75と左右2つの挿入・側面シート76を一体の透明シートにしてもよい。
【0042】
また、エアロゾルボックス100Bの底板4Bは、別体になっており、底板4Bの上に患者の頭を載せることができないときなど、使用状況によっては底板4Bを除外することが可能である。
【0043】
また、天板2Bの曲げフランジ21Bと側板3Bとの接合、及び底板4Bの曲げフランジ41Bと側板3Bの接合は、接着剤ではなくて、雄と雌からなる一対のワンタッチ式のスナップボタンHとしている(
図4A参照)。スナップボタンHでの接合にすることで、廃棄時の分解を容易に行うことができる。
【0044】
そして、
図4Bに示すように、第3実施形態のエアロゾルボックス100Bの内部はバックバルブマスクPを無理なく使用できる広さ、例えば400~500mmとなっており、
図4Cに示すように、内部の高さは上方にモニターを備えたビデオ喉頭鏡Vも無理なく使用できる高さ、例えば550~650mmとなっている。
【0045】
[第4実施形態]
図4を用いて第4実施形態のエアロゾルボックス100Cを説明する。
図4は、第3実施形態のエアロゾルボックス100Bを展開した図である。ただし、エアロゾルボックス100Cの底板4Cは、第3実施形態のエアロゾルボックス100Cとは異なり、別体ではなくて前板1Cと繋がっている。
【0046】
エアロゾルボックス100Cは、
図4の展開図の状態で販売され、使用者によって組み立てられる。その組み立て方法は、天板2Cの曲げフランジ21Cと側板3Cの対応するスナップボタンHとを接合し、また、底板4Cの曲げフランジ41Cと側板3Cの対応するスナップボタンHとを接合する。
【0047】
このように、第4実施形態のエアロゾルボックス100Cは使用されるときに組み立てられるので、使用する前は展開した状態で保管することができ、省スペースで収納しておくことができる。なお、本発明のエアロゾルボックスの組み立て方法はスナップボタンに限定するものではなく、たとえば、返りが付いた舌片を溝に差し込む方法や、剥離紙を剥がして粘着させる方法などでもよい。
【0048】
以上のような本発明のエアロゾルボックスは、主な材料として紙製本体と透明体を用いて構成されているため、安価なエアロゾルボックスを提供することができる。従って、従来のような再使用ではなく、使い捨てタイプとして用いることができる。なお、本発明の実施形態においては、紙製本体の具体例として紙製段ボールを用いていたが、厚紙等、紙製段ボール以外のものを用いることもできる。また、透明体としてフィルム状のものを用いていたがフィルムよりも厚いシート状のもの等、折り曲げ可能な透明体であれば用いることができる。
【0049】
また、本発明のエアロゾルボックスは、上面視において台形形状となっており、視認用開口部と腕挿入孔が形成された段ボールからなり、腕挿入孔が左右の側面に形成されている。従って、従来のように医療従事者の前に腕挿入孔がないので、感染リスクが低い。また、腕挿入孔を大きくすることができるので手技がし易い。なお、この構成は、紙製段ボール等、紙製に限定されることはなく、非特許文献1~5のような透明アクリルや透明ポリカーボネイト、非特許文献6のようなプラスチック段ボールにおいても採用することができる。
【0050】
また、本発明のエアロゾルボックスは、上面と前面とに連結する視認用開口部が形成されている。従って、不透明な材質からなるエアロゾルボックスの場合であっても、上面と前面との間が不透明な稜で遮られることがないため、どのような喉頭鏡を用いても気管挿管を行いやすい。なお、この構成は、紙製段ボール等、紙製に限定されることはなく、不透明や半透明な材質、例えば、樹木や竹からなる木材やポリプロピレンやポリエチレン、ナイロンなどの樹脂、アルミ箔などの金属からなるエアロゾルボックスであれば採用することができる。
【0051】
なお、本発明の実施形態においてエアロゾルボックスは、前面と、上面と、左右の側面と、底面とからなるものであったが、底面のない構成を採用することもできる。また、上面の形状についても、板状に限定さる必要はなく、湾曲した形状でも構わない。また、前面と上面のような構成ではなく、前面と上面とを一枚の板面で形成し、左右の側面を三角形の板面とする構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0052】
100、100A~C:エアロゾルボックス
1F、1FA、1FB:前面
2F、2FA、2FB:上面
3F、3FA:側面
4F:底面
51、51A、51B:前面視認用開口部
52、52A:上面視認用開口部
53、53A、53B:側面視認用開口部
54:前面・上面認用開口部
61、61A、61B:腕挿入孔
71:前面透明フィルム
72、72B:上面透明フィルム
73:側面透明フィルム
74:腕挿入シート
75:前面・上面透明フィルム
76:腕挿入・側面シート
H:スナップボタン
S:スリット